以下、図面を用いて、本発明に係る車両用データ記録装置の具体的な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施例である車両用データ記録装置10を備える車載システムの構成図を示す。本実施例の車両用データ記録装置10は、車両に搭載されて、走行中などに車両の使用状態や走行状態などの車両状態を示すデータを記録する装置であって、車両走行後などに走行中における車両の使用状態や走行状態の解析のために適宜、記録したデータを外部出力するものである。
図1に示す如く、本実施例の車載システムは、車両用データ記録装置10を備えている。車両用データ記録装置10は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと称す)12を主体に構成されたデータ記録ECUである。マイコン12は、中央演算処理装置(CPU)14と、RAM16と、を有している。CPU14は、データ記録のための各種演算を行う。また、RAM16は、一時記録領域である書き換え可能な揮発性のメモリであって、車両のイグニションスイッチがオンであるときにのみ記録可能である。
車両用データ記録装置10は、マイコン12に接続するメモリ18を備えている。メモリ18は、恒久記録領域である書き換え可能な不揮発性のメモリであって、車両のイグニションスイッチがオンであってもオフであっても記録可能である。尚、メモリ18は、マイコン12に外付けされたEEPROMであってもよいが、マイコン12に内蔵されたフラッシュROMであってもよい。
車両用データ記録装置10には、各種のセンサ20や電子制御ユニット(ECU)22が直接に又はCANなどの車載通信ネットワーク24を介して接続されている。センサ20は、車両の使用状態又は走行状態を示す車速や前後加速度,横加速度,車両ヨーレート,アクセル開度,ブレーキオン/オフ,ブレーキマスタシリンダ油圧,ブレーキホイールシリンダ油圧,シフトレバーのポジション,ステアリング角度,ステアリングトルク,タイヤ空気圧などの対象パラメータに応じた電気信号を出力するセンサである。また、ECU22は、マイクロコンピュータを主体に構成された、車両の使用状態又は走行状態を示す上記の対象パラメータや車両制御装置(例えば、アンチロックブレーキシステムや衝突防止警報装置など)の作動状態に応じた電気信号を出力する制御回路である。
尚、センサ20及びECU22は、車両の特定の一つの使用状態や走行状態を示す信号を出力するものが少なくとも一つ設けられればよいが、車両の互いに異なる使用状態や走行状態を示す信号を出力するものが二以上設けられていてもよい。例えば、センサ20は、前後加速度に応じた電気信号を出力する前後加速度センサであって、ECU22は、エンジン制御を行うエンジン制御ECUやブレーキ制御を行うブレーキ制御ECU,ステアリング制御を行うステアリング制御ECU,車両のメータ表示などの制御を行うメータECUなどであればよい。
但し、図1には、センサ20の例として、車両の前後加速度及び横加速度に応じた電気信号を出力する車両前後/横加速度センサ20aが、また、ECU22の例として、車両の走行制御を行う車両制御ECU(例えば、アンチロックブレーキ制御を行うABS−ECUやプリクラッシュ制御を行うPCS−ECUなど)22a及び車両のメータ表示などの制御を行うメータECU22bが、それぞれ示されている。
また、本実施例において、車両用データ記録装置10には、図1に示す如く、センサ20が直接に接続され、かつ、ECU22が車載通信ネットワーク24を介して接続されるものとする。そして、センサ20の出力信号は直接に車両用データ記録装置10に供給され、また、ECU22の出力信号は車載通信ネットワーク24を介して車両用データ記録装置10や他のECUに供給されるものとする。車両用データ記録装置10及びECU22はそれぞれ、車載通信ネットワーク24に適したプロトコルに従って相互通信を行うことが可能である。
次に、図2及び図3を参照して、本実施例の車両用データ記録装置10の動作について説明する。図2は、本実施例の車両用データ記録装置10においてマイコン12が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。また、図3は、本実施例の車両用データ記録装置10におけるデータ記録動作を説明するための図を示す。
本実施例の車両用データ記録装置10において、マイコン12のCPU14は、車両のイグニションスイッチのオン中において、定期的に所定のサンプリング間隔s(例えば、50msや500ms)で、センサ20からの信号及びECU22からの信号に基づいて車両の各種の使用状態や走行状態などの車両状態をサンプリングする(ステップ100)。尚、所定のサンプリング間隔sは、センサ20やECU22からの信号ごとに、その周波数帯域に応じて変更されるものとしてもよい。
そして、CPU14は、それらのサンプリングした略同じタイミングにおける車両状態を示すデータを一括してRAM16に一時記録させる(ステップ110)。このRAM16へのデータの一時記録は、所定のデータ記録周期Tごとに行われる。尚、この所定のデータ記録周期Tは、上記した所定のサンプリング間隔s以上の時間(例えば1秒や5秒など)であればよい。RAM16には、過去所定時間(例えば、10秒や1分,10分など;尚、この所定時間は、上記した所定のサンプリング間隔s及び所定のデータ記録周期T以上の時間に設定されている。)内にサンプリングされたすべての車両状態を示すデータが一時記録され、そして、記録残量が無くなった場合はサンプリングされた最新の車両状態を示すデータが最古のデータが記録されていた箇所に上書きされて記録される(リングバッファ)。
CPU14は、また、車両状態をサンプリングすると、そのサンプリングした車両状態に基づいて、車両状態を示すデータを不揮発性メモリ18に記録すべき所定のイベントが自車両において発生したか否かを判別する(ステップ120)。尚、このイベント発生有無の判別に用いられるパラメータとしてのデータは、今回のサンプリングでセンサ20やECU22を用いて得られたデータのうちの少なくとも一つであればよい。また、2つ以上のデータが共にそれぞれの条件を満たす場合にイベントが発生したと判別するものとしてもよい。更に、不揮発性メモリ18に記録されるべきデータは、上記の判別パラメータとしてのデータを少なくとも含み、他のデータを含むものとしてもよい。
尚、上記のイベントとしては、例えば、(a)所定値以上の車両加速度が発生したこと、(b)所定値以上のアクセル開度が発生したこと、(c)所定値以上のアクセル開度と所定値以上のブレーキ油圧(又はブレーキオン)とが所定の時間内に発生したこと、(d)所定値以上のアクセル開度と所定のシフトポジション変化とが所定の時間内に発生したこと、(e)上記の(a)〜(d)の条件に更に所定の速度に関する条件をAND条件で追加したもの、(f)アンチロックブレーキシステム(ABS)の作動やトラクションコントロールシステム(TRC)の作動,旋回挙動制御(VSC)の作動が行われたこと、(g)プリクラッシュセーフティシステム(PCS)の作動(例えば、警報やシートベルトの巻き取り,警報ブレーキ作動,介入ブレーキ作動など)が行われたこと、などが挙げられる。
CPU14は、上記ステップ120において自車両に所定のイベントが発生したと判別
した場合は、その発生時点で、その今回発生したと判別したイベント(以下、今回イベン
トと称す)の発生前に発生したイベント(以下、前回イベントと称す)に基づく不揮発性
メモリ18へのデータ記録が現に実行中であるか否かを判別する(ステップ130)。
その結果、前回イベントに基づくデータ記録が現には実行されていないと判別した場合
は、今回イベントに基づいて不揮発性メモリ18に記録すべきデータの対象を、(a)そ
の今回イベントの発生時にRAM16に一時記録されているその今回イベントの発生まで
の過去所定時間内のすべての車両状態を示すデータ(以下、イベント発生前データと称す
)と、(b)その今回イベントが発生した時にサンプリングされた車両状態を示すデータ
(以下、イベント発生時データと称す)と、(c)その今回イベントの発生から所定時間
が経過するまでにサンプリングされて所定のデータ記録周期TごとにRAM16に一時記
録されるすべての車両状態を示すデータ(以下、イベント発生後データと称す)と、に設
定する(ステップ140)。一方、前回イベントに基づくデータ記録が現に実行されてい
ると判別した場合は、今回イベントに基づいて不揮発性メモリ18に記録すべきデータの
対象を、(b)イベント発生時データのみに設定する(ステップ150)。
CPU14は、上記ステップ140又は150において今回イベントに基づいて不揮発性メモリ18に記録すべきデータの対象を設定すると、次に、その設定した対象のデータを不揮発性メモリ18に記録する処理を行う(ステップ160)。
また、CPU14は、上記ステップ120において自車両に所定のイベントが発生していないと判別した場合は、その判別時点で、イベントに基づく不揮発性メモリ18へのデータ記録が未完了であるか否か、すなわち、イベントの発生からイベント発生後データが不揮発性メモリ18に記録される所定時間が未経過であるか否かを判別する(ステップ170)。
その結果、肯定判定がなされる場合は、イベント発生によって不揮発性メモリ18に記録すべきデータが未だ残っていると判断し、上記したステップ160の処理を継続して行う。一方、否定判定がなされる場合は、イベント発生によって不揮発性メモリ18に記録すべきデータが残っていないと判断し、今回の処理を終了する。
このように、本実施例の車両用データ記録装置10においては、車両において所定のイベントが発生した場合に、そのイベント発生前後の車両状態を示すデータを恒久記録領域である不揮発性メモリ18に記録することができる。また、車両において車両状態を示すデータを不揮発性メモリ18に記録すべき所定のイベントが発生した場合にその今回イベントに基づいて不揮発性メモリ18に記録すべきデータの対象を、その発生時点で前回イベントに基づく不揮発性メモリ18への車両状態を示すデータの記録が現に行われているか否かに応じて変更することができる。
具体的には、その今回イベントに基づいて不揮発性メモリ18に記録すべきデータの対象として、今回イベントの発生時点で前回イベントに基づく不揮発性メモリ18への車両状態を示すデータの記録が現には行われていないときは、イベント発生前データ、イベント発生時データ、及びイベント発生後データを設定し、一方、今回イベントの発生時点で前回イベントに基づく不揮発性メモリ18への車両状態を示すデータの記録が現に行われているときは、イベント発生時データのみを設定することができる。
例えば、図3(A)に示す如く、イベントAが発生することによりそのイベントAの発生に基づくイベント発生前データ、イベント発生時データ、及びイベント発生後データの不揮発性メモリ18への記録が行われ、その記録が完了した後にイベントBが発生した場合は、そのイベントBに基づいて不揮発性メモリ18に記録すべきデータの対象が、通常どおり、そのイベントBの発生に基づくイベント発生前データ、イベント発生時データ、及びイベント発生後データに設定される。
一方、図3(B)に示す如く、イベントAが発生することによりそのイベントAの発生に基づくイベント発生前データ、イベント発生時データ、及びイベント発生後データの不揮発性メモリ18への記録が行われ、その記録が完了する前にイベントBが発生した場合は、そのイベントBに基づいて不揮発性メモリ18に記録すべきデータの対象が、そのイベントBの発生に基づくイベント発生時データのみに限定される。
かかる構成においては、先発のイベント発生に基づく不揮発性メモリ18へのデータ記録が完了した後に後発のイベントが発生したときは、その後発のイベント発生に基づく不揮発性メモリ18へのデータ記録が、通常の対象範囲(イベント発生前データ、イベント発生時データ、及びイベント発生後データ)に対して行われる。一方、先発のイベント発生に基づく不揮発性メモリ18へのデータ記録が完了する前に後発のイベントが発生したときは、その後発のイベント発生に基づく不揮発性メモリ18へのデータ記録が、上記した通常の対象範囲に代えて、限定的な対象範囲(イベント発生時データのみ)に対して行われる。
このため、本実施例の車両用データ記録装置10によれば、車両における所定のイベントの発生が短時間に複数回連続した場合、それぞれのイベント発生に基づく不揮発性メモリ18へのデータ記録がそれぞれ別個に行われることはなく、複数のイベント発生に起因して同じ時刻の同じ車両状態を示すデータが重複して不揮発性メモリ18に記録されるのは回避される。従って、本実施例によれば、複数のイベント発生が短時間に連続した際に不揮発性メモリ18が無駄に消費されるのを抑止することができ、これにより、不揮発性メモリ18へのデータ記録を効率よく行うことが可能である。
また、本実施例の車両用データ記録装置10においては、車両に所定のイベントが発生したとき、そのイベント発生時点における車両状態を示すイベント発生時データが不揮発性メモリ18に記録される。また、先発のイベント発生に基づく不揮発性メモリ18へのデータ記録が完了する前に後発のイベントが発生したとき、その後発のイベント発生時点における車両状態を示すイベント発生時データが不揮発性メモリ18に記録される。イベント発生前データ及びイベント発生後データは共に、所定のサンプリング間隔sでサンプリングされて所定のデータ記録周期TごとにRAM16に一時記録されるものであるので、その所定のデータ記録周期Tごとの車両状態を示すデータである。これに対して、イベント発生時データは、イベントが発生した時点における車両状態を示すデータである。
従って、本実施例によれば、車両において所定のイベントが発生した場合、そのイベント発生前の所定期間分のイベント発生前データ及びそのイベント発生後の所定期間分のイベント発生後データだけでなく、そのイベント発生時点における車両状態を示すイベント発生時データをも、恒久記録領域である不揮発性メモリ18に記録することができ、これにより、イベント発生時点における車両状態を後の車両状態解析に利用することが可能である。
本発明の第2実施例である車両用データ記録装置10は、マイコン12のCPU14に、上記第1実施例における図2に示すルーチンに代えて、図4に示すルーチンを実行させることにより実現される。
以下、図4及び図5を参照して、本実施例の車両用データ記録装置10の動作について説明する。図4は、本実施例の車両用データ記録装置10においてマイコン12が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。尚、図4において、図2に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。また、図5は、本実施例の車両用データ記録装置10におけるデータ記録動作を説明するための図を示す。
本実施例の車両用データ記録装置10において、マイコン12のCPU14は、上記ステップ130において前回イベントに基づくデータ記録が現には実行されていないと判別した場合は、今回イベントに基づいて不揮発性メモリ18に記録すべきデータの対象を、イベント発生前データ、イベント発生時データ、及びイベント発生後データに設定する(ステップ140)。
一方、CPU14は、上記ステップ130において前回イベントに基づくデータ記録が現に実行されていると判別した場合は、今回イベントに基づいて不揮発性メモリ18に記録すべきデータの対象をイベント発生時データに設定すると共に、かつ、その前回イベントに基づくイベント発生後データの記録の終了時期を遅くして車両状態を示すデータの記録を延長させる(ステップ200)。
尚、この記録延長が行われる場合、上記した前回イベントに基づくデータ記録の終了時期は、今回イベントに基づく通常のデータ記録であれば今回イベントの発生時刻を起点として不揮発性メモリ18へのイベント発生後データの記録が完了する所定時間の経過する時点であればよい。
CPU14は、上記ステップ140又は200において今回イベントに基づいて不揮発性メモリ18に記録すべきデータの対象を設定し又はデータの記録延長を設定すると、次に、その設定した対象のデータを不揮発性メモリ18に記録する処理を行い、更に場合によってはそのデータ記録の記録期間を延長する処理を行う(ステップ210)。
このように、本実施例の車両用データ記録装置10においては、車両において車両状態を示すデータを不揮発性メモリ18に記録すべき所定のイベントが発生した場合にその今回イベントに基づいて不揮発性メモリ18に記録すべきデータの対象を、その発生時点で前回イベントに基づく不揮発性メモリ18への車両状態を示すデータの記録が現に行われているか否かに応じて変更することができる。
具体的には、今回イベントの発生時点で前回イベントに基づく不揮発性メモリ18への車両状態を示すデータの記録が現には行われていないときは、その今回イベントに基づいて不揮発性メモリ18に記録すべきデータの対象として、イベント発生前データ、イベント発生時データ、及びイベント発生後データを設定することができる。一方、今回イベントの発生時点で前回イベントに基づく不揮発性メモリ18への車両状態を示すデータの記録が現に行われているときは、その今回イベントに基づいて不揮発性メモリ18に記録すべきデータの対象としてイベント発生時データを設定することができる。
また、本実施例の車両用データ記録装置10においては、先発のイベント発生に基づく不揮発性メモリ18へのデータ記録が完了する前に後発のイベントが発生したときは、先発のイベントに基づくイベント発生後データの記録の終了時期が遅延されて、車両状態を示すデータの記録が延長される。例えば、図5に示す如く、イベントAが発生することによりそのイベントAの発生に基づくイベント発生前データ、イベント発生時データ、及びイベント発生後データの不揮発性メモリ18への記録が行われ、その記録が完了する前にイベントBが発生した場合は、車両状態を示すデータの不揮発性メモリ18への記録が、イベントAの発生からそのイベントAに基づくイベント発生後データの記録が完了する所定時間が経過するまでではなく、イベントBの発生からそのイベントBに基づくイベント発生後データの記録が完了する所定時間が経過するまでに延長される。
かかる構成においては、先発のイベント発生に基づく不揮発性メモリ18へのデータ記録が完了した後に後発のイベントが発生したときは、その後発のイベント発生に基づく不揮発性メモリ18へのデータ記録が、通常の対象範囲(イベント発生前データ、イベント発生時データ、及びイベント発生後データ)に対して行われる。一方、先発のイベント発生に基づく不揮発性メモリ18へのデータ記録が完了する前に後発のイベントが発生したときは、その後発のイベント発生に基づく不揮発性メモリ18へのデータ記録が、上記した通常の対象範囲に代えて、限定的な対象範囲に対して行われると共に、車両状態を示すデータの不揮発性メモリ18への記録が、先発のイベント発生に基づく不揮発性メモリ18へのデータ記録のみに比べて延長される。
このため、本実施例の車両用データ記録装置10によれば、車両における所定のイベントの発生が短時間に複数回連続した場合、それぞれのイベント発生に基づく不揮発性メモリ18へのデータ記録がそれぞれ別個に行われることはなく、複数のイベント発生に起因して同じ時刻の同じ車両状態を示すデータが重複して不揮発性メモリ18に記録されるのは回避されると共に、後発のイベント発生後における車両状態を示すデータが適切な時期まで不揮発性メモリ18に記録される。
従って、本実施例によれば、複数のイベント発生が短時間に連続した際に後発のイベント発生後における車両状態を示すデータを必要十分に不揮発性メモリ18に記録しつつ不揮発性メモリ18が無駄に消費されるのを抑止することができ、これにより、不揮発性メモリ18への必要十分な量のデータ記録を効率よく行うことが可能である。
また、本実施例においても、車両において所定のイベントが発生した場合、そのイベント発生前の所定期間分のイベント発生前データ及びそのイベント発生後の所定期間分のイベント発生後データだけでなく、そのイベント発生時点における車両状態を示すイベント発生時データをも、恒久記録領域である不揮発性メモリ18に記録することができ、これにより、イベント発生時点における車両状態を後の車両状態解析に利用することが可能である。
ところで、上記の第2実施例においては、今回イベントの発生時点で前回イベントに基づく不揮発性メモリ18への車両状態を示すデータの記録が現に行われている場合、今回イベントに基づいて不揮発性メモリ18に記録すべきデータの対象をイベント発生時データに設定すると共に、かつ、その前回イベントに基づくイベント発生後データの記録の終了時期を遅くして車両状態を示すデータの記録を延長させることとするが、本発明はこれに限定されるものではなく、今回イベントに基づいて不揮発性メモリ18に記録すべきデータの対象をイベント発生時データ及びイベント発生後データに設定すると共に、かつ、上記の記録延長に代えて、前回イベントに基づくデータ記録の終了時期をそのままに保持しつつ、今回イベントに基づくイベント発生後データの記録の開始時期を遅くすることとしてもよい。この場合、上記した今回イベントに基づくデータ記録の開始時期は、前回イベントに基づくイベント発生後データの記録が終了する時点であればよい。かかる変形例においても、上記第2実施例の構成と同様の効果を得ることが可能である。
本発明の第3実施例である車両用データ記録装置10は、マイコン12のCPU14に、上記第1又は第2実施例における図2又は図4に示すルーチンに代えて、図6に示すルーチンを実行させることにより実現される。
以下、図6乃至図8を参照して、本実施例の車両用データ記録装置10の動作について説明する。図6は、本実施例の車両用データ記録装置10においてマイコン12が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。尚、図6において、図2に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。また、図7及び図8はそれぞれ、本実施例の車両用データ記録装置10におけるデータ記録動作を説明するための図を示す。
本実施例の車両用データ記録装置10において、マイコン12は、車両状態をサンプリングする所定のサンプリング間隔sを計数するためのタイマーカウンタ(サンプリングタイマー)とは異なる、車両におけるイベント発生時刻を算出するためのタイマーカウンタ(イベント発生時刻計測タイマー)を有している。このイベント発生時刻計測タイマーは、車両のイグニションスイッチのオン中において原則として所定のイベントが発生した際にリセット起動され、以後、そのイベント発生時を起点として所定の時間間隔でカウントを行い、そのイベント発生時を起点とした経過時間を計数するタイマーである。尚、このカウントアップを行う所定の時間間隔は、上記したサンプリング間隔sとは別のものであって、その所定のサンプリング間隔sよりも短く設定される。
上記したイベント発生時刻計測タイマーのカウント値は、上記のリセット起動後、イベント発生に基づく不揮発性メモリ18へのデータ記録が完了するまでに、最初に到来するRAM16への一時記録時点、及び、次回以降のイベント発生ごとにその発生時点で不揮発性メモリ18に記録される。
本実施例において、CPU14は、上記ステップ130において前回イベントに基づくデータ記録が現には実行されていないと判別した場合は、上記したイベント発生時刻計測タイマーをリセット起動すると共に、今回イベントに基づいて不揮発性メモリ18に記録すべきデータの対象をイベント発生前データ、イベント発生時データ、及びイベント発生後データに設定し、かつ、その今回イベントの発生に基づく不揮発性メモリ18へのデータ記録が完了するまでに最初に到来するRAM16への一時記録時点で得られるイベント発生時刻計測タイマーのカウント値を不揮発性メモリ18に記録する対象に設定する(ステップ300)。
一方、CPU14は、上記ステップ130において前回イベントに基づくデータ記録が現に実行されていると判別した場合は、今回イベントに基づいて不揮発性メモリ18に記録すべきデータの対象をイベント発生時データに設定し、かつ、その今回イベントの発生時点で得られるイベント発生時刻計測タイマーのカウント値を不揮発性メモリ18に記録する対象に設定する(ステップ310)。尚、この記録対象のイベント発生時刻計測タイマーのカウント値は、今回イベントの発生に基づいて不揮発性メモリ18に記録されるデータとリンクされて不揮発性メモリ18に記録される。
CPU14は、上記ステップ300又は310の処理を実行すると、次に、その設定した対象のデータを不揮発性メモリ18に記録する処理を行う(ステップ320)。尚、上記ステップ310の処理後の記録処理においては、イベント発生時刻計測タイマーのカウント値が、今回イベントの発生に基づいて不揮発性メモリ18に記録されるデータとリンクされて不揮発性メモリ18に記録される。
このように、本実施例の車両用データ記録装置10においては、上記した第1実施例と同様に、車両において車両状態を示すデータを不揮発性メモリ18に記録すべき所定のイベントが発生した場合にその今回イベントに基づいて不揮発性メモリ18に記録すべきデータの対象を、その発生時点で前回イベントに基づく不揮発性メモリ18への車両状態を示すデータの記録が現に行われているか否かに応じて変更することができるので、上記した第1実施例と同様の効果を得ることが可能である。
また、本実施例の車両用データ記録装置10においては、イベント発生時刻計測タイマーのカウント値が不揮発性メモリ18に記録される。このイベント発生時刻計測タイマーは、車両のイグニションスイッチのオン中において所定のイベントが発生した時点で前回イベントに基づく不揮発性メモリ18への車両状態を示すデータの記録が行われていない場合にリセット起動され、以後、そのイベント発生時を起点として所定の時間間隔でカウントを行う。そして、このイベント発生時刻計測タイマーのカウント値は、上記のリセット起動後、イベント発生に基づく不揮発性メモリ18へのデータ記録が完了するまでに、最初に到来するRAM16への一時記録時点、及び、次回以降のイベント発生ごとにその発生時点で不揮発性メモリ18に記録される。
例えば図7に示す如く、リセット起動後、イベント発生に基づく不揮発性メモリ18へのデータ記録が完了するまでに、最初に到来するRAM16への一時記録時点で得られるイベント発生時刻計測タイマーのカウント値が"A"であるときは、そのカウント値Aに基づいてイベント発生からそのRAM16への一時記録時点までの時間xが算出され、その算出された時間xに基づいて、CPU14によるRAM16への一時記録時点(すなわち、所定のサンプリング間隔sを計数するためのサンプリングタイマーのカウント値)に対するイベント発生時刻が特定される。
また図8に示す如く、リセット起動後、イベント発生に基づく不揮発性メモリ18へのデータ記録が完了するまでに、次回以降のイベント発生ごとにその発生時点で得られるイベント発生時刻計測タイマーのカウント値が順に"B1"、"B2"、及び"B3"であるときは、それぞれのカウント値B1,B2,B3に基づいてイベント発生からそのRAM16への一時記録時点までの時間x1,x2,x3が算出され、その算出された時間x1,x2,x3に基づいて、CPU14によるRAM16への一時記録時点(すなわち、所定のサンプリング間隔sを計数するためのサンプリングタイマーのカウント値)に対するそれぞれのイベント発生時刻が特定される。
従って、本実施例の車両用データ記録装置10によれば、イベント発生時点を起点とした経過時間を計数するためのイベント発生時刻計測タイマーのカウント値を、車両において所定のイベントが発生した時刻として不揮発性メモリ18に記録することができ、これにより、上記した所定のサンプリング間隔sを計数するためのサンプリングタイマーの精度に依存することなくイベント発生時刻を特定することができる。
このため、本実施例によれば、イベント発生時刻の分解能を上げるうえでイベント発生時刻計測タイマーのカウント間隔を短くすることとすればよく、サンプリングタイマーによるデータサンプリングを短くすることは不要であるので、イベント発生時刻の分解能を上げるためにCPU14における処理負荷が増大しコストアップが生じるのを抑止することができる。
尚、上記の第3実施例においては、上記のサンプリングタイマーが特許請求の範囲に記載した「第1のタイマー」に、上記のイベント発生時刻計測タイマーが特許請求の範囲に記載した「第2のタイマー」に、それぞれ相当している。また、マイコン12のCPU14が、図6に示すルーチン中ステップ300及び320の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「第1のデータ記録制御手段」が、ステップ310及び320の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「第2のデータ記録制御手段」が、上記のイベント発生時刻計測タイマーのカウント値をイベント発生時刻として不揮発性メモリ18に記録することにより特許請求の範囲に記載した「発生時刻記録制御手段」が、また、ステップ300において上記のイベント発生時刻計測タイマーのカウント値をリセット起動することにより特許請求の範囲に記載した「タイマー制御手段」が、それぞれ実現されている。
本発明の第4実施例である車両用データ記録装置10は、マイコン12のCPU14に、上記第1〜第3実施例における図2、図4、又は図6に示すルーチンに代えて、図9に示すルーチンを実行させることにより実現される。
以下、図9及び図10を参照して、本実施例の車両用データ記録装置10の動作について説明する。図9は、本実施例の車両用データ記録装置10においてマイコン12が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。尚、図9において、図2に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。また、図10は、本実施例の車両用データ記録装置10におけるデータ記録動作を説明するための図を示す。
本実施例の車両用データ記録装置10において、マイコン12のCPU14は、上記ステップ120において自車両に所定のイベントが発生したと判別した場合は、そのイベントが発生した時にサンプリングされた車両状態を示すイベント発生時データを不揮発性メモリ18に記録すると共に、そのイベントの発生時にRAM16に一時記録されているそのイベント発生までの過去所定時間内の車両状態を示すイベント発生前データを以下の記録間隔で不揮発性メモリ18に記録する処理を行う(ステップ400)。
図10に示す如く、イベントの発生時にRAM16に一時記録されているそのイベント発生までの過去所定時間内のすべての車両状態を示すイベント発生前データのうち、イベント発生時点を起点として過去第1の時刻T1から第2の時刻T2までにRAM16に一時記録されていたものでは、その中のすべてのイベント発生前データから第1の時間間隔r1で抽出が行われて、その抽出されたイベント発生前データが不揮発性メモリ18に記録される。一方、イベント発生時点を起点として過去第2の時刻T2からそのイベント発生時点までにRAM16に一時記録されていたものでは、その中のすべてのイベント発生前データから第2の時間間隔r2で抽出が行われて、その抽出されたイベント発生前データが不揮発性メモリ18に記録される。
尚、第1の時間間隔r1は、サンプリングデータがRAM16に一時記録される所定のデータ記録周期Tよりも長くなるように設定されている。また、第2の時間間隔r2は、その所定のデータ記録周期T以上の長さに設定されており、データ記録周期Tと一致していてもよく、第1の時間間隔r1よりも短い時間間隔である。
また、CPU14は、上記ステップ170において自車両に所定のイベントが発生していないとの判別時点でイベントに基づく不揮発性メモリ18へのデータ記録が未完了であると判別した場合は、イベント発生から所定時間が経過するまでにサンプリングされて所定のデータ記録周期TごとにRAM16に一時記録される車両状態を示すイベント発生後データを以下の記録間隔で不揮発性メモリ18に記録する処理を行う(ステップ410)。
図10に示す如く、イベント発生から所定時間が経過するまでにサンプリングされて所定のデータ記録周期TごとにRAM16に一時記録されるすべての車両状態を示すイベント発生後データのうち、イベント発生時点から第3の時刻T3までに得られるものでは、その中のすべてのイベント発生後データから第3の時間間隔r3で抽出が行われて、その抽出されたイベント発生後データが不揮発性メモリ18に記録される。一方、上記の第3の時刻T3から第4の時刻T4までに得られるものでは、その中のすべてのイベント発生後データから第4の時間間隔r4で抽出が行われて、その抽出されたイベント発生後データが不揮発性メモリ18に記録される。
尚、第3の時間間隔r3は、サンプリングデータがRAM16に一時記録される所定のデータ記録周期T以上の長さに設定されており、データ記録周期Tと一致していてもよい。また、第4の時間間隔r4は、その所定のデータ記録周期Tよりも長くなるように設定
されており、第3の時間間隔r3よりも長い時間間隔である。また、第3の時間間隔r3は、上記の第2の時間間隔r2と同一であってもよく、第4の時間間隔r4は、上記の第1の時間間隔r1と同一であってもよい。更に、第3の時刻T3は、イベント発生前とイベント発生後とで異なるが、イベント発生時点を起点として時間的長さを第2の時刻T2と同じとしてもよく、第4の時刻T4は、イベント発生前とイベント発生後とで異なるが、イベント発生時点を起点として時間的長さを第1の時刻T1と同じとしてもよい。
このように、本実施例の車両用データ記録装置10においては、車両において所定のイベントが発生した場合に、そのイベント発生前後の車両状態を示すデータを恒久記録領域である不揮発性メモリ18に記録することができる。具体的には、車両におけるイベントの発生時から近い時点ほど比較的短い時間間隔r2,r3が設定されて、その短い時間間隔r2,r3でイベント発生前後の車両状態を示すデータが不揮発性メモリ18に記録される。また、車両におけるイベントの発生時から遠い時点ほど比較的長い時間間隔r1,r4が設定されて、その長い時間間隔r1,r4でイベント発生前後の車両状態を示すデータが不揮発性メモリ18に記録される。
かかる構成においては、イベント発生近傍の車両状態を示すデータが木目細かく不揮発性メモリ18に記録される一方、イベント発生から時間的に離れるほど車両状態を示すデータが粗く不揮発性メモリ18に記録される。このため、本実施例の車両用データ記録装置10によれば、不揮発性メモリ18の消費量が増大するのを抑止しつつ、後の車両状態解析をイベント発生近傍については詳細に行うことができ、これにより、不揮発性メモリ18へのデータ記録を効率よく行うことが可能である。
ところで、上記の第4実施例においては、車両に所定のイベントが発生した場合に車両状態を示すデータを不揮発性メモリ18に記録する時間間隔を、イベント発生前後のそれぞれにおいて2段階に切り替えることとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、3段階以上やリニアに切り替えることとしてもよい。この場合、その時間間隔は、イベント発生時から近いほど短く設定され、イベント発生時から遠いほど長く設定されることとすればよい。