以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき、図面を参照しつつ説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るシール構造を備えた半導体製造装置を模式的に示す断面図である。図2は、実施形態1に係るシール構造を模式的に示す断面図である。図1および図2は、シャフト31の回転中心軸Zrを含み、かつ回転中心軸Zrと平行な平面でシール構造1を切った断面を示している。なお、実施形態1において、軸方向とは、回転中心軸Zrと平行な方向であり、径方向とは、回転中心軸Zrに対して直交する方向である。図3は、図2のA−A断面図である。図4は、実施形態1に係るシール部材の周辺部分の拡大図である。図5は、シール部材のリップ部材周辺を拡大して示す図である。図5は、説明のために各部の縮尺関係が調整されているため、実際の縮尺関係と異なる場合がある。シール構造1は、例えば、真空環境、減圧環境、プロセスガス充填環境等の特殊環境下におかれる密封空間Vの密封を保ちながら回転を伝達する機械要素である。密封空間Vと隔てられた非密封空間Eは、密封空間Vに対して高圧である空間または大気雰囲気の空間である。シール構造1は、半導体製造または工作機械製造等の製造装置、搬送装置、回転駆動装置に適用される。ここでは、一例として、半導体製造のための製造装置において、スピンドルを回転軸として備える回転駆動装置(スピンドルユニット)にシール構造1を適用する場合を説明するが、シール構造1の適用対象はこれに限定されるものではない。
図1に示すように、例えば半導体製造に用いられる半導体製造装置100は、シール構造1と、筐体10と、電動機8と、電動機8を制御する制御装置91を含む。シール構造1と、電動機8とは、回転駆動装置6として、電動機8の回転を伝達して、搬送テーブルとしての可動部材32を回転させる。半導体製造装置100は、筐体10の密封空間Vを真空環境、減圧環境、プロセスガス充填環境にした上で、密封空間Vにある被搬送物(例えば、半導体基板、工作物または工具)を可動部材32に搭載して移動させる。被搬送物を移動させる場合、電動機8を密封空間Vに設置すると、電動機8の動作により異物が発生する可能性がある。そこで、半導体製造装置100は、密封空間Vに可動部材32を残したまま、電動機8を非密封空間Eに設置する。そして、シール構造1は、密封空間Vと非密封空間Eを隔てて密封性を高めながら、非密封空間Eに設置された電動機8の動力を密封空間Vに伝える。電動機8は、例えば、ダイレクトドライブモータ、ベルトドライブを用いた駆動装置、リニアモータ、サーボモータなどである。制御装置91は、入力回路と、中央演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、記憶装置であるメモリと、出力回路とを含む。メモリに記憶させるプログラムに応じて、電動機8を制御し、密封空間Vにある被搬送物(例えば、半導体基板、工作物または工具)を搬送テーブル(可動部材)32に搭載して移動させ、半導体製造装置100は、所望の製品を製造することができる。
実施形態1に係るシール構造1は、筐体10に対して鉛直方向で下側に配置されている。実施形態1に係るシール構造1において、回転中心軸Zrは鉛直方向に平行である。図1および図2中の上方は鉛直方向の上方に等しく、図1および図2中の下方は鉛直方向の下方に等しい。
図2に示すように、シール構造1は、ハウジング2と、シャフト31と、第1シール部材51と、第2シール部材52と、第3シール部材53と、第4シール部材54と、を備える。実施形態1において、ハウジング2は、例えばアルミニウム合金、鉄またはステンレス鋼等の金属で形成されている。ハウジング2は、第1本体部21と、第2本体部22と、シール押え部材23と、を備える。第1本体部21は、円筒状の部材であって、一端部に板状の鍔部材であるフランジ211を有している。第2本体部22は、円筒状の部材であって、一端部に板状の鍔部材であるフランジ221を有している。第2本体部22は、フランジ221を貫通するボルト25によって第1本体部21に固定されている。実施形態1において、フランジ211およびフランジ221の形状は、平面視で円形であるが、これらの形状は円形に限定されない。シール押え部材23は、円環状の板状部材であって、ボルト26によって第2本体部22の他端に固定されている。ハウジング2は、第1本体部21のフランジ211を筐体10の外部から筐体10の開口部10eを覆うようにあてがい、フランジ211と筐体10の壁面とをボルト24で締結することで筐体10に固定されている。これにより、ハウジング2は、筐体10の開口部10eを筐体10の外部から塞ぐことができる。
フランジ211は、平面視で筐体10と重なり合う部分に環状溝を有し、この環状溝にOリング11がはめ込まれている。Oリング11は、フランジ211と筐体10との間の隙間を密封し、シール構造1の密封性を向上させている。また、フランジ221は、平面視で第1本体部21と重なり合う部分に環状溝を有し、この環状溝にOリング12がはめ込まれている。Oリング12は、フランジ221と第1本体部21との間の隙間を密封し、シール構造1の密封性を向上させている。
図2に示すように、ハウジング2は、第1排気流路41と、第2排気流路42と、第1潤滑剤流路43と、第2潤滑剤流路44と、空気抜き孔45と、を備える。第1排気流路41は、例えば第1本体部21を径方向に貫通する流路であり、図1に示すようにハウジング2の外部でポンプP1に接続されている。第2排気流路42は、例えば第2本体部22を径方向に貫通する流路であり、図1に示すようにハウジング2の外部でポンプP2に接続されている。第1潤滑剤流路43は、例えば第1排気流路41とは異なる位置で第1本体部21を径方向に貫通する流路である。第1潤滑剤流路43は、半導体製造装置100の稼働時には塞がれており、メンテナンス時にハウジング2の内部に潤滑剤を供給するために用いられる。第2潤滑剤流路44は、例えば第2排気流路42とは異なる位置で第2本体部22を径方向に貫通する流路である。第2潤滑剤流路44は、半導体製造装置100の稼働時には塞がれており、メンテナンス時にハウジング2の内部に潤滑剤を供給するために用いられる。空気抜き孔45は、例えばシール構造1の組み立て時において第2本体部22に設けられる貫通孔であって、第2潤滑剤流路44に対向する位置で第2本体部22を径方向に貫通する。空気抜き孔45は、シール構造1の組み立てが完了したのち塞がれる。
シャフト31は、例えばアルミニウム合金、鉄またはステンレス鋼等の金属で形成されている。シャフト31は、ハウジング2を貫通している。より具体的には、シャフト31は、第1本体部21、第2本体部22およびシール押え部材23を貫通している。密封空間Vに位置するシャフト31の一端部には、可動部材32が設けられている。シャフト31の他端部は非密封空間Eに位置し、電動機8に接続されている。シャフト31の他端部は、例えば電動機8と一体に設けられた軸受によって回転可能に支持されている。電動機8が駆動すると、シャフト31が回転中心軸Zrを中心に回転する。
なお、実施形態1における可動部材32は電動機8によって回転運動させられるが、可動部材32の動作は必ずしも回転運動でなくてもよい。例えば、電動機8がリニアモータであって、可動部材32の動作がストロークを限定された軸方向の直線運動であってもよい。
第1シール部材51、第2シール部材52、第3シール部材53および第4シール部材54は、例えばオイルシールであって、図3に示すように環状に形成されている。図2に示すように、第1シール部材51、第2シール部材52、第3シール部材53および第4シール部材54は、ハウジング2の内壁とシャフト31との間の隙間7に配置されている。より具体的には、第1シール部材51および第2シール部材52は、第1本体部21の内側に圧入され、第1本体部21の内壁とシャフト31とに挟まれる位置に配置されている。第1シール部材51は、第1本体部21の内側に設けられた突出部212で位置決めされている。第2シール部材52は、第1シール部材51に対して非密封空間E側に配置されている。第2シール部材52は、第2本体部22の内側に設けられた突出部222で位置決めされている。また、第3シール部材53および第4シール部材54は、第2本体部22の内側に圧入され、第2本体部22の内壁とシャフト31とに挟まれる位置に配置されている。第3シール部材53は、突出部222で位置決めされている。第4シール部材54は、第3シール部材53に対して非密封空間E側に配置されている。第4シール部材54は、シール押え部材23で位置決めされている。
図4に示すように、第1シール部材51は、外周部材5aと、補強部材5bと、リップ部材5cと、バネ部材5dと、を備える。外周部材5aは、例えば合成ゴムで形成されている。回転中心軸Zrを含む平面で外周部材5aを切った断面形状は、略L字状である。補強部材5bは、例えばアルミニウム合金、鉄またはステンレス鋼等の金属で形成されている。回転中心軸Zrを含む平面で補強部材5bを切った断面形状は、略L字状である。補強部材5bは、外周部材5aの内側の表面に沿って配置されている。リップ部材5cは、例えば合成ゴムで形成されている。リップ部材5cは、例えば外周部材5aと一体に形成されており、外周部材5aの一端部から回転中心軸Zrに平行な方向に突出している。リップ部材5cは、シャフト31に対向する第1表面5eおよび第2表面5fを備える。バネ部材5dは、例えば環状のコイルバネである。バネ部材5dは、リップ部材5cのうち第1表面5eおよび第2表面5fとは反対側の表面に接している。バネ部材5dは、弾性力により、リップ部材5cをシャフト31に向かって押し付けている。これにより、リップ部材5cがシャフト31に接した状態が保持されやすくなっている。
リップ部材5cの第1表面5eは、第2表面5fに対して外周部材5a側に配置されている。すなわち、第1表面5eは、リップ部材5cのうち第2表面5fよりも根元側に配置されている。回転中心軸Zrを含む平面でリップ部材5cを切った断面において、第1表面5eおよびシャフト31がなす角度θ1と、第2表面5fおよびシャフト31がなす角度θ2と、は互いに異なっている。具体的には、角度θ1が角度θ2よりも小さくなっている。これにより、リップ部材5cとシャフト31との間に進入した流体には、図5に示す圧力分布pdで圧力がかかる。このため、リップ部材5cとシャフト31との間に進入した流体には、第1表面5e側から第2表面5f側に向かう力Fが作用する。このような力Fは、ポンプ力とも呼ばれる。このため、第1シール部材51は、非密封空間Eから密封空間Vに向かう方向である第1方向D1の流体の流れを阻むことができる。
第2シール部材52、第3シール部材53および第4シール部材54は、例えば第1シール部材51と同様に、外周部材5aと、補強部材5bと、リップ部材5cと、バネ部材5dと、を備える。第2シール部材52は、第1シール部材51に対して、回転中心軸Zr方向に逆向き(鉛直方向で逆さま)で配置されている。このため、第2シール部材52は、密封空間Vから非密封空間Eに向かう第2方向D2の流体の流れを阻むことができる。第3シール部材53は、第1シール部材51と同じ向きで配置されている。このため、第3シール部材53は、第1方向D1の流体の流れを阻むことができる。第4シール部材54は、第2シール部材52と同じ向きで配置されている。このため、第4シール部材54は、第2方向D2の流体の流れを阻むことができる。
図2に示すように、第1排気流路41は、第1シール部材51および第2シール部材52に挟まれた空間72に接続されている。第2排気流路42は、第2シール部材52および第3シール部材53に挟まれた空間73に接続されている。図1で示したポンプP1が稼働すると、空間72にある気体が第1排気流路41を介してハウジング2の外部へ排気される。図1で示したポンプP2が稼働すると、空間73にある気体が第2排気流路42を介してハウジング2の外部へ排気される。空間72および空間73が排気されている状態において、空間72および空間73は、密封空間Vに比較すると高圧になっている。
図2に示すように、第1潤滑剤流路43は空間72に接続されている。ただし、第1潤滑剤流路43は、上述したように半導体製造装置100の稼働時には塞がれており、メンテナンス時に開かれる。メンテナンス時には、第1潤滑剤流路43を介して空間72に潤滑剤が供給される。また、第2潤滑剤流路44は空間74に接続されている。ただし、第2潤滑剤流路44は、上述したように半導体製造装置100の稼働時には塞がれており、メンテナンス時に開かれる。メンテナンス時には、第2潤滑剤流路44を介して空間74に潤滑剤が供給される。
図1〜図4におけるドットパターンのハッチングは、潤滑剤を示している。図2に示すように、ハウジング2の内壁とシャフト31との間の隙間7のうち、第1シール部材51に対して鉛直方向上側に隣接する空間71に潤滑剤が配置されている。これにより、第1シール部材51とシャフト31との間に潤滑剤がある状態が保持される。例えば、空間71に貯留されている潤滑剤の液面は、フランジ211の端面よりも鉛直方向上側に位置している。また、空間71に貯留されている潤滑剤は、例えばフッ素系合成油または合成炭化水素油であることが好ましい。これにより、フッ素系合成油または合成炭化水素油の蒸気圧が極めて低いので、空間71に貯留されている潤滑剤の密封空間Vに与える影響が小さくなる。
図2に示すように、ハウジング2の内壁とシャフト31との間の隙間7のうち、第2シール部材52に対して鉛直方向上側に隣接する空間72に潤滑剤が配置されている。これにより、第2シール部材52とシャフト31との間に潤滑剤がある状態が保持される。例えば、空間72に貯留されている潤滑剤の液面は、第1排気流路41よりも鉛直方向下側に位置している。
図2に示すように、ハウジング2の内壁とシャフト31との間の隙間7のうち、第3シール部材53に対して鉛直方向下側に隣接する空間74に潤滑剤が配置されている。例えば、空間74に貯留されている潤滑剤の液面は、第3シール部材53の第1表面5eよりも鉛直方向上側に位置している。これにより、第3シール部材53とシャフト31との間、および第4シール部材54とシャフト31との間に潤滑剤がある状態が保持される。
実施形態1に係るシール構造1の組み立て時において、空間74に潤滑剤を十分に充填するために、空気抜き孔45が用いられる。具体的には、回転中心軸Zrが水平になるよう配置されたシール構造1に対して、第2潤滑剤流路44を介して空間74に潤滑剤が供給される。このように潤滑剤が供給されるとき、空気抜き孔45が設けられていることにより、空間74内の空気が空気抜き孔45を介して抜ける。このため、シール構造1の組み立て時において、潤滑剤が空間74に円滑に充填される。
図6は、実施形態1に係るシール構造の起動方法を示すフローチャートである。シール構造1を起動する際は、まず密封空間Vの排気および第2排気流路42を介した空間73(第2空間)の排気が行われる(ステップS11)。これにより、密封空間Vおよび空間73が低圧な状態となる。その後、第1排気流路41を介した空間72(第1空間)の排気が行われる(ステップS12)。これにより、密封空間Vよりも空間72の方が高圧である状態で空間72が排気される。このため、密封空間Vから空間72への、流体の急激な流入が抑制される。具体的には、空間71に配置された潤滑剤の空間72への急激な流入が抑制される。また、空間73の排気が空間72の排気よりも先に行われるので、第2シール部材52がシャフト31に密着した状態で、空間72の排気が開始される。これにより、空間72から空間73への、流体の急激な流入が抑制される。具体的には、空間72の潤滑剤の空間74への流入が抑制される。
空間73が排気されているので、非密封空間Eから第4シール部材54および第3シール部材53を通過して空間73に至った気体が、第2排気流路42を介してハウジング2の外部に排出される。また、第2シール部材52が第2方向D2の流体の流れを阻むように配置されているものの、非密封空間Eから空間73に流入してきた気体の一部は、第2シール部材52を第1方向D1に通過して空間72に流入する。
空間72が排気されているので、非密封空間Eから第4シール部材54、第3シール部材53および第2シール部材52を通過して空間72に至った気体が、第1排気流路41を介してハウジング2の外部に排出される。一方、第1シール部材51が第1方向D1の流体の流れを阻むように配置されているので、空間72から密封空間Vへの気体の漏洩が抑制される。
以上説明したように、実施形態1に係るシール構造1は、空間を密封空間Vと非密封空間Eとに隔て、ハウジング2と、ハウジング2に挿入されるシャフト31と、第1シール部材51と、第2シール部材52と、第3シール部材53と、第4シール部材54と、第1排気流路41と、第2排気流路42と、を備える。第1シール部材51は、ハウジング2とシャフト31との間の隙間7に配置され、隙間7における非密封空間Eから密封空間Vに向かう第1方向D1の流体の流れを阻み、空間71に設けられた潤滑剤に接する環状部材である。第2シール部材52は、第1シール部材51よりも非密封空間E側の位置で隙間7に配置され、隙間7における密封空間Vから非密封空間Eに向かう第2方向D2の流体の流れを阻み、空間72に設けられた潤滑剤に接する環状部材である。第3シール部材53は、第2シール部材52よりも非密封空間E側の位置で隙間7に配置され、隙間7における第1方向D1の流体の流れを阻み、空間74に設けられた潤滑剤に接する環状部材である。第4シール部材54は、第3シール部材53よりも非密封空間E側の位置で隙間7に配置され、隙間7における第2方向D2の流体の流れを阻み、空間74に設けられた潤滑剤に接する環状部材である。第1排気流路41は、隙間7のうち第1シール部材51と第2シール部材52との間に位置する空間72(第1空間)に接続され、空間72(第1空間)を排気する。第2排気流路42は、隙間7のうち第2シール部材52と第3シール部材53との間に位置する空間73(第2空間)に接続され、空間73(第2空間)を排気する。
これにより、第4シール部材54および第3シール部材53によって、空間73が非密封空間Eから隔てられる。空間73が排気されているので、非密封空間Eから第4シール部材54および第3シール部材53を通過して空間73に至った気体が、第2排気流路42を介してハウジング2の外部に排出される。また、第2シール部材52が第2方向D2の流体の流れを阻むように配置されているものの、非密封空間Eから空間73に流入してきた気体の一部は、第2シール部材52を第1方向D1に通過して空間72に流入する。さらに、空間72が排気されているので、非密封空間Eから第4シール部材54、第3シール部材53および第2シール部材52を通過して空間72に至った気体が、第1排気流路41を介してハウジング2の外部に排出される。一方、第1シール部材51が第1方向D1の流体の流れを阻むように配置されているので、空間72から密封空間Vへの気体の流入が抑制される。このため、シール構造1は、密封性を向上させることができる。また、シャフト31と各シール部材との間に進入した潤滑剤がポンプ力により押し戻されるため、潤滑剤が所定の空間から流出する可能性が低減する。これにより、シャフト31と各シール部材との間に潤滑剤が保持される状態が維持される。よって、シール構造1は、密封性を向上させ、且つシール部材の寿命を向上させることができる。
また、実施形態1に係るシール構造1は、空間72(第1空間)に接続され空間72(第1空間)に潤滑剤を供給する第1潤滑剤流路43と、隙間7のうち第3シール部材53と第4シール部材54との間の空間74(第3空間)に接続され、空間74(第3空間)に潤滑剤を供給する第2潤滑剤流路44と、を備える。
これにより、空間72に設けられた潤滑剤が低減した場合は、第1潤滑剤流路43によって空間72への潤滑剤の供給が可能となる。空間74に設けられた潤滑剤が低減した場合は、第2潤滑剤流路44によって空間74への潤滑剤の供給が可能となる。このため、シャフト31と各シール部材との間に潤滑剤がある状態がより維持されやすくなる。よって、シール構造1は、シール部材の寿命をより向上させることができる。
また、実施形態1に係るシール構造1の起動方法は、密封空間Vの排気および空間73(第2空間)の排気を行う第1ステップS11と、第1ステップS11の後に、空間72(第1空間)の排気を行う第2ステップS12と、を備える。
これにより、密封空間Vよりも空間72の方が高圧である状態で空間72が排気される。このため、密封空間Vから空間72への、流体の急激な流入が抑制される。また、空間73の排気が空間72の排気よりも先に行われるので、第2シール部材52がシャフト31に密着した状態で、空間72の排気が開始される。これにより、空間72から空間73への、流体の急激な流入が抑制される。このため、実施形態1に係るシール構造1の起動方法は、シール構造1による密封開始時における潤滑剤の漏洩を抑制することができる。
なお、密封空間Vが減圧環境である場合、密封空間Vの排気設備は、図1に示したポンプP2と兼用されていてもよい。密封空間Vが真空環境であって、密封空間Vの排気設備として粗引きポンプとターボ分子ポンプ等の主ポンプとが設けられている場合、当該粗引きポンプは、図1に示したポンプP2と兼用されていてもよい。
なお、停電等によって電源が失われた場合、空間72に窒素またはアルゴン等の不活性ガスが導入されることが好ましい。これにより、空間72内の圧力が非密封空間Eの圧力よりも高くなるので、第1シール部材51における漏洩を抑制することができる。また、空間72に窒素等の不活性ガスを導入した後に、密封空間Vおよび空間74に窒素等の不活性ガスが導入されてもよい。また、停電等によって電源が失われた場合、密封空間V、空間72および空間74の内部の圧力が等しくなるように、それぞれの排気系統が連結されていてもよい。
なお、単一のシール部材で空間74を密封できるのであれば、第3シール部材53および第4シール部材54は、単一のシール部材に代えてもよい。なお、隙間7に設けられる潤滑剤は、シャフト31を冷却するための液体に代えてもよい。シャフト31を冷却するための液体は、例えば純水である。
(実施形態2)
図7は、実施形態2に係るシール構造を模式的に示す断面図である。上述した実施形態1と同じ構成要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。実施形態2に係るシール構造1Aは、筐体10に対して鉛直方向で上側に配置されている。実施形態2に係るシール構造1Aにおいて、回転中心軸Zrは鉛直方向に平行である。図7中の上方は鉛直方向の上方に等しく、図7中の下方は鉛直方向の下方に等しい。
図7におけるドットパターンのハッチングは、潤滑剤を示している。図7に示すように、ハウジング2の内壁とシャフト31との間の隙間7のうち、第1シール部材51に対して鉛直方向上側に隣接する空間72に潤滑剤が配置されている。これにより、第1シール部材51とシャフト31との間に潤滑剤がある状態が保持される。例えば、空間72に貯留されている潤滑剤の液面は、第1排気流路41よりも鉛直方向下側に位置している。
図7に示すように、ハウジング2の内壁とシャフト31との間の隙間7のうち、第2シール部材52に対して鉛直方向上側に隣接する空間73に潤滑剤が配置されている。これにより、第2シール部材52とシャフト31との間に潤滑剤がある状態が保持される。例えば、空間73に貯留されている潤滑剤の液面は、第2排気流路42よりも鉛直方向下側に位置している。
図7に示すように、ハウジング2の内壁とシャフト31との間の隙間7のうち、第3シール部材53に対して鉛直方向上側に隣接する空間74に潤滑剤が配置されている。例えば、空間74に貯留されている潤滑剤の液面は、第4シール部材54の第1表面5eよりも鉛直方向上側に位置している。これにより、第3シール部材53とシャフト31との間、および第4シール部材54とシャフト31との間に潤滑剤がある状態が保持される。
図7に示すように、ハウジング2は、第3潤滑剤流路46を備える。第3潤滑剤流路46は空間73に接続されている。ただし、第3潤滑剤流路46は、半導体製造装置100の稼働時には塞がれており、メンテナンス時に開かれる。メンテナンス時には、第3潤滑剤流路46を介して空間73に潤滑剤が供給される。
なお、実施形態2に係るシール構造1Aの起動方法は、実施形態1に係るシール構造1の起動方法と同じである。すなわち、実施形態2に係るシール構造1Aの起動方法は、図6に示したように、密封空間Vの排気および第2排気流路42による排気を行う第1ステップS11と、第1ステップS11の後に、第1排気流路41による排気を行う第2ステップS12と、を備える。
(実施形態3)
図8は、実施形態3に係るシール構造を模式的に示す断面図である。上述した実施形態1と同じ構成要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。実施形態3に係るシール構造1Bは、筐体10に対して水平方向に隣接して配置されている。実施形態3に係るシール構造1Bにおいて、回転中心軸Zrは水平方向に平行である。図8中の上方は鉛直方向の上方に等しく、図8中の下方は鉛直方向の下方に等しい。
図8におけるドットパターンのハッチングは、潤滑剤を示している。図8に示すように、空間72、空間73および空間74のそれぞれにおいて、少なくとも鉛直方向下寄りの一部に潤滑剤が配置されている。例えば、空間72、空間73および空間74に貯留されている潤滑剤の液面は、リップ部材5cのシャフト31との接触部分のうちの、鉛直方向で最も下側に位置する部分よりも、鉛直方向上側に位置している。すなわち、水平面に対して直交し且つ回転中心軸Zrを含む平面でシール部材1Bを切った断面(図8に示す断面)を見た時、潤滑剤の液面は、リップ部材5cの上端部よりも鉛直方向上側に位置している。これにより、シャフト31が回転すると、シャフト31の表面に付着した潤滑剤が鉛直方向上側に移動する。このため、潤滑剤がシャフト31の全周に行き渡る。このようにして、第1シール部材51、第2シール部材52、第3シール部材53および第4シール部材54のそれぞれとシャフト31との間に潤滑剤がある状態が保持される。
図8に示すように、実施形態3に係るシール構造1Bにおいて、第1潤滑剤流路43、第2潤滑剤流路44および第3潤滑剤流路46は、ハウジング2のうち鉛直方向下側に配置されている。メンテナンス時には、例えば、第1潤滑剤流路43、第2潤滑剤流路44および第3潤滑剤流路46を介して鉛直方向下側から空間73に潤滑剤が供給される。
なお、シール構造1Bにおいて、空間73には潤滑剤が貯留されていなくてもよい。すなわち、シール構造1Bにおいては、空間72および空間74のそれぞれにおいて、少なくとも鉛直方向下寄りの一部に潤滑剤が配置されていてもよい。
なお、実施形態3に係るシール構造1Bの起動方法は、実施形態1に係るシール構造1の起動方法と同じである。すなわち、実施形態3に係るシール構造1Bの起動方法は、図6に示したように、密封空間Vの排気および第2排気流路42による排気を行う第1ステップS11と、第1ステップS11の後に、第1排気流路41による排気を行う第2ステップS12と、を備える。
(実施形態4)
図9は、実施形態4に係るシール構造を模式的に示す断面図である。上述した実施形態1と同じ構成要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。実施形態4に係るシール構造1Cは、筐体10に対して鉛直方向で下側に配置されている。実施形態4に係るシール構造1Cにおいて、回転中心軸Zrは鉛直方向に平行である。図9中の上方は鉛直方向の上方に等しく、図9中の下方は鉛直方向の下方に等しい。
シール構造1Cは、実施形態1に係るシール構造1の第1シール部材51に代えて、第1シール部材55を備える。第1シール部材55は、例えばオイルシールであって、環状に形成されている。第1シール部材55は、第1本体部21の内壁とシャフト31とに挟まれる位置に配置されている。第1シール部材55は、第1本体部21の内側に設けられた突出部213および筐体10で位置決めされている。第1シール部材55は、例えば実施形態1に係るシール構造1の第1シール部材51と同様に、図4に示した外周部材5aと、補強部材5bと、リップ部材5cと、バネ部材5dと、を備える。第1シール部材55は、第2シール部材52と同じ向きで配置されている。このため、第1シール部材55は、密封空間Vから非密封空間Eに向かう第2方向D2の流体の流れを阻むことができる。
図9におけるドットパターンのハッチングは、潤滑剤を示している。図9に示すように、ハウジング2の内壁とシャフト31との間の隙間7のうち、第1シール部材55に対して鉛直方向上側に隣接する空間75に潤滑剤が配置されている。これにより、第1シール部材55とシャフト31との間に潤滑剤がある状態が保持される。例えば、空間75に貯留されている潤滑剤の液面は、フランジ211の端面よりも鉛直方向上側に位置している。また、空間75に貯留されている潤滑剤は、例えばフッ素系合成油または合成炭化水素油であることが好ましい。これにより、フッ素系合成油または合成炭化水素油の蒸気圧が極めて低いので、空間75に貯留されている潤滑剤の密封空間Vに与える影響が小さくなる。
図10は、実施形態4に係るシール構造の起動方法を示すフローチャートである。シール構造1Cを起動する際は、まず第2排気流路42を介した空間73(第2空間)の排気が行われる(ステップS21)。これにより、空間73が低圧な状態となる。その後、第1排気流路41を介した空間72(第1空間)の排気が行われる(ステップS22)。これにより、空間72が低圧な状態となる。その後、密封空間Vの排気が行われる(ステップS23)。空間73の排気が空間72の排気よりも先に行われるので、第2シール部材52がシャフト31に密着した状態で、空間72の排気が開始される。これにより、空間72から空間73への、流体の急激な流入が抑制される。具体的には、空間72の潤滑剤の空間74への流入が抑制される。また、空間72の排気が密封空間Vの排気よりも先に行われるので、第1シール部材55がシャフト31に密着した状態で、空間72の排気が開始される。これにより、空間75から空間72への、流体の急激な流入が抑制される。具体的には、空間75の潤滑剤の空間72への流入が抑制される。このため、実施形態4に係るシール構造1Cの起動方法は、シール構造1Cによる密封開始時における潤滑剤の漏洩または密封空間V内の気体の漏洩を抑制することができる。
空間73が排気されているので、非密封空間Eから第4シール部材54および第3シール部材53を通過して空間73に至った気体が、第2排気流路42を介してハウジング2の外部に排出される。また、第2シール部材52が第2方向D2の流体の流れを阻むように配置されているものの、非密封空間Eから空間73に流入してきた気体の一部は、第2シール部材52を第1方向D1に通過して空間72に流入する。
空間72が排気されているので、非密封空間Eから第4シール部材54、第3シール部材53および第2シール部材52を通過して空間72に至った気体が、第1排気流路41を介してハウジング2の外部に排出される。一方、第1シール部材55が第2方向D2の流体の流れを阻むように配置されているので、密封空間Vから空間72への気体の漏洩が抑制される。
なお、実施形態4に係るシール構造1Cと比較すると、実施形態1に係るシール構造1の方が、密封空間Vをより高真空にすることができる。一方、実施形態4に係るシール構造1Cは、密封空間Vが減圧環境であって且つガス雰囲気である場合に対して好適である。実施形態4に係るシール構造1Cにおいては、第1シール部材55が密封空間Vから空間72への流体の流れを阻むことができるので、密封空間V中のガスの空間72への流出が抑制される。これにより、密封空間Vが減圧環境であって且つガス雰囲気である場合にシール構造1Cを用いた場合、ガス雰囲気の形成に使用するガスの量を低減することができる。
以上説明したように、実施形態4に係るシール構造1Cは、空間を密封空間Vと非密封空間Eとに隔て、ハウジング2と、ハウジング2に挿入されるシャフト31と、第1シール部材55と、第2シール部材52と、第3シール部材53と、第4シール部材54と、第1排気流路41と、第2排気流路42と、を備える。第1シール部材55は、ハウジング2とシャフト31との間の隙間7に配置され、隙間7における第2方向D2の流体の流れを阻み、空間75に設けられた潤滑剤に接する環状部材である。第2シール部材52は、第1シール部材55よりも非密封空間E側の位置で隙間7に配置され、隙間7における第2方向D2の流体の流れを阻み、空間72に設けられた潤滑剤に接する環状部材である。第3シール部材53は、第2シール部材52よりも非密封空間E側の位置で隙間7に配置され、隙間7における第1方向D1の流体の流れを阻み、空間74に設けられた潤滑剤に接する環状部材である。第4シール部材54は、第3シール部材53よりも非密封空間E側の位置で隙間7に配置され、隙間7における第2方向D2の流体の流れを阻み、空間74に設けられた潤滑剤に接する環状部材である。第1排気流路41は、隙間7のうち第1シール部材55と第2シール部材52との間に位置する空間72(第1空間)に接続され、空間72(第1空間)を排気する。第2排気流路42は、隙間7のうち第2シール部材52と第3シール部材53との間に位置する空間73(第2空間)に接続され、空間73(第2空間)を排気する。
これにより、第4シール部材54および第3シール部材53によって、空間73が非密封空間Eから隔てられる。空間73が排気されているので、非密封空間Eから第4シール部材54および第3シール部材53を通過して空間73に至った気体が、第2排気流路42を介してハウジング2の外部に排出される。また、第2シール部材52が第2方向D2の流体の流れを阻むように配置されているものの、非密封空間Eから空間73に流入してきた気体の一部は、第2シール部材52を第1方向D1に通過して空間72に流入する。さらに、空間72が排気されているので、非密封空間Eから第4シール部材54、第3シール部材53および第2シール部材52を通過して空間72に至った気体が、第1排気流路41を介してハウジング2の外部に排出される。一方、第1シール部材55が第2方向D2の流体の流れを阻むように配置されているので、密封空間Vから空間72への気体の漏洩が抑制される。このため、シール構造1は、密封性を向上させることができる。また、シャフト31と各シール部材との間に進入した潤滑剤がポンプ力により押し戻されるため、潤滑剤が所定の空間から流出する可能性が低減する。これにより、シャフト31と各シール部材との間に潤滑剤が保持される状態が維持される。よって、シール構造1Cは、密封性を向上させ、且つシール部材の寿命を向上させることができる。
また、実施形態4に係るシール構造1Cの起動方法は、空間73(第2空間)の排気を行う第1ステップS21と、第1ステップS21の後に、空間72(第1空間)の排気を行う第2ステップS22と、第2ステップS22の後に、密封空間Vの排気を行う第3ステップS23と、を備える。
これにより、空間73の排気が空間72の排気よりも先に行われるので、第2シール部材52がシャフト31に密着した状態で、空間72の排気が開始される。これにより、空間72から空間73への、流体の急激な流入が抑制される。また、空間72の排気が密封空間Vの排気よりも先に行われるので、第1シール部材55がシャフト31に密着した状態で、空間72の排気が開始される。これにより、空間75から空間72への、流体の急激な流入が抑制される。このため、実施形態4に係るシール構造1Cの起動方法は、シール構造1Cによる密封開始時における潤滑剤の漏洩または密封空間V内の気体の漏洩を抑制することができる。
(実施形態5)
図11は、実施形態5に係るシール構造を模式的に示す断面図である。上述した実施形態4と同じ構成要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。実施形態5に係るシール構造1Dは、筐体10に対して鉛直方向で上側に配置されている。実施形態5に係るシール構造1Dにおいて、回転中心軸Zrは鉛直方向に平行である。図11中の上方は鉛直方向の上方に等しく、図11中の下方は鉛直方向の下方に等しい。
図11におけるドットパターンのハッチングは、潤滑剤を示している。図11に示すように、ハウジング2の内壁とシャフト31との間の隙間7のうち、第1シール部材55に対して鉛直方向上側に隣接する空間72に潤滑剤が配置されている。これにより、第1シール部材55とシャフト31との間に潤滑剤がある状態が保持される。例えば、空間72に貯留されている潤滑剤の液面は、第1排気流路41よりも鉛直方向下側に位置している。
図11に示すように、ハウジング2の内壁とシャフト31との間の隙間7のうち、第2シール部材52に対して鉛直方向上側に隣接する空間73に潤滑剤が配置されている。これにより、第2シール部材52とシャフト31との間に潤滑剤がある状態が保持される。例えば、空間73に貯留されている潤滑剤の液面は、第2排気流路42よりも鉛直方向下側に位置している。
図11に示すように、ハウジング2の内壁とシャフト31との間の隙間7のうち、第3シール部材53に対して鉛直方向上側に隣接する空間74に潤滑剤が配置されている。例えば、空間74に貯留されている潤滑剤の液面は、第4シール部材54の第1表面5eよりも鉛直方向上側に位置している。これにより、第3シール部材53とシャフト31との間、および第4シール部材54とシャフト31との間に潤滑剤がある状態が保持される。
図11に示すように、ハウジング2は、第3潤滑剤流路46を備える。第3潤滑剤流路46は空間73に接続されている。ただし、第3潤滑剤流路46は、半導体製造装置100の稼働時には塞がれており、メンテナンス時に開かれる。メンテナンス時には、第3潤滑剤流路46を介して空間73に潤滑剤が供給される。
なお、実施形態5に係るシール構造1Dの起動方法は、実施形態4に係るシール構造1Cの起動方法と同じである。すなわち、実施形態5に係るシール構造1Dの起動方法は、図10に示したように、第2排気流路42による排気を行う第1ステップS21と、第1ステップS21の後に第1排気流路41による排気を行う第2ステップS22と、第2ステップS22の後に密封空間Vの排気を行う第3ステップS23と、を備える。
(実施形態6)
図12は、実施形態6に係るシール構造を模式的に示す断面図である。上述した実施形態4と同じ構成要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。実施形態6に係るシール構造1Eは、筐体10に対して水平方向に隣接して配置されている。実施形態6に係るシール構造1Eにおいて、回転中心軸Zrは水平方向に平行である。図12中の上方は鉛直方向の上方に等しく、図12中の下方は鉛直方向の下方に等しい。
図12におけるドットパターンのハッチングは、潤滑剤を示している。図12に示すように、空間72、空間73および空間74のそれぞれにおいて、少なくとも鉛直方向下寄りの一部に潤滑剤が配置されている。例えば、空間72、空間73および空間74に貯留されている潤滑剤の液面は、リップ部材5cのシャフト31との接触部分のうちの、鉛直方向で最も下側に位置する部分よりも、鉛直方向上側に位置している。すなわち、水平面に対して直交し且つ回転中心軸Zrを含む平面でシール部材1Eを切った断面(図12に示す断面)を見た時、潤滑剤の液面は、リップ部材5cの上端部よりも鉛直方向上側に位置している。これにより、シャフト31が回転すると、シャフト31の表面に付着した潤滑剤が鉛直方向上側に移動する。このため、潤滑剤がシャフト31の全周に行き渡る。このようにして、第1シール部材55、第2シール部材52、第3シール部材53および第4シール部材54のそれぞれとシャフト31との間に潤滑剤がある状態が保持される。
図12に示すように、実施形態6に係るシール構造1Eにおいて、第1潤滑剤流路43、第2潤滑剤流路44および第3潤滑剤流路46は、ハウジング2のうち鉛直方向下側に配置されている。メンテナンス時には、例えば、第1潤滑剤流路43、第2潤滑剤流路44および第3潤滑剤流路46を介して鉛直方向下側から空間73に潤滑剤が供給される。
なお、実施形態6に係るシール構造1Eの起動方法は、実施形態4に係るシール構造1Cの起動方法と同じである。すなわち、実施形態6に係るシール構造1Eの起動方法は、図10に示したように、第2排気流路42による排気を行う第1ステップS21と、第1ステップS21の後に第1排気流路41による排気を行う第2ステップS22と、第2ステップS22の後に密封空間Vの排気を行う第3ステップS23と、を備える。
以上、実施形態1〜6を説明したが、実施形態は前述した内容により限定されるものではない。また、実施形態1〜6の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換および変更のうち少なくとも1つを行うことができる。