JP2016035870A - 燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池システムの構成を簡略化しながら暖機運転を行う。
【解決手段】燃料電池システムAは、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池スタック10と、燃料電池スタック内に形成された酸化剤ガス通路の入口に連結された酸化剤ガス供給管41と、酸化剤ガス供給管内に配置され、酸化剤ガスを圧送するターボコンプレッサ44と、酸化剤ガス通路の出口に連結されたカソードオフガス管46と、カソードオフガス管内に配置され、酸化剤ガス通路の圧力を調整するカソードオフガス調圧弁47とを備え、ターボコンプレッサから酸化剤ガス供給管へ供給される酸化剤ガスの全量が酸化剤ガス通路の入口へ供給され、暖機運転時に、フラッディングが発生するように酸化剤ガスの流量及び圧力を制御し、フラッディングが発生しないときと比較して燃料電池スタックが発生する熱量を増加させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池システムに関する。
燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により電力を発生する燃料電池スタックと、燃料電池スタック内に形成された酸化剤ガス通路の入口に連結された酸化剤ガス供給管と、酸化剤ガス供給管内に配置され、酸化剤ガスを圧送するコンプレッサと、酸化剤ガス通路の出口に連結されたカソードオフガス管と、カソードオフガス管内に配置され、酸化剤ガス通路の圧力を調整するカソードオフガス調圧弁と、コンプレッサ下流の酸化剤ガス供給管とカソードオフガス調圧弁下流のカソードオフガス管とを連結するスタックバイパス管と、酸化剤ガス供給管からスタックバイパス管へ流れ込む酸化剤ガスの量を制御するスタックバイパス弁と、を備え、暖機運転時に、エアストイキ比が1.0未満になるように燃料電池スタックへ供給される酸化剤ガスの流量及び圧力を制御し、通常運転の場合と比較して燃料電池スタックが発生する熱量を増加させる、燃料電池システムが公知である(特許文献1参照)。ただし、エアストイキ比とは、発電に必要な空気(酸素ガス)に対して、燃料電池システムに供給された空気(酸素ガス)の量である。例えば、エアストイキ比が1.0の場合には、供給された空気中の酸素ガスは供給された水素ガスと過不足なく反応する。
エアストイキ比を1.0未満に設定する運転、すなわち低エアストイキ比運転を行うと、カソード極側の酸素ガスが不足しているので、燃料電池スタックの内部抵抗が増加する。そのため、燃料電池スタックで発生する電力のうち、内部抵抗により損失となる分が増加して、その損失分が熱となることで、燃料電池スタックが暖機される。一方、カソードオフガスを車外へ排出するときには、安全性の面からカソードオフガス中の水素ガス濃度を所定の濃度以下に希釈する必要がある。そのためには、カソードオフガスの流量を増加させる必要がある。ところが、燃料電池スタックは低エアストイキ比運転を行っている、すなわち燃料電池スタックに供給される酸化剤ガスの流量を少なくしている。そのため、燃料電池スタックから送出されるカソードオフガスの流量を増加させることはできない。そこで、特許文献1では、スタックバイパス弁及びスタックバイパス管を設けることにより、燃料電池スタックをバイパスさせた酸化剤ガスをカソードオフガス管へ供給するようにしている。これにより、暖機運転において、低エアストイキ比運転を行いながら、カソードオフガスに混入される水素ガスの希釈に十分な量の酸化剤ガスをカソードオフガスに供給している。
特開2007−317471号公報
しかしながら、特許文献1では、上述したように、暖機運転を行うためにスタックバイパス弁及びスタックバイパス管を設置する必要があり、燃料電池システムの構成が複雑になるという問題が生じる。また、燃料電池システムにかかるコストが増加する、燃料電池システムに必要な設置スペースが増加する、燃料電池システムのメンテナンスに手間がかかる、燃料電池システムの制御が複雑になるといった問題も生じる。燃料電池システムの構成を簡略化しつつ、暖機運転することが可能な技術が望まれる。
本発明によれば、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により電力を発生する燃料電池スタックと、前記燃料電池スタック内に形成された酸化剤ガス通路の入口に連結された酸化剤ガス供給管と、前記酸化剤ガス供給管内に配置され、酸化剤ガスを圧送するターボコンプレッサと、前記酸化剤ガス通路の出口に連結されたカソードオフガス管と、前記カソードオフガス管内に配置され、前記酸化剤ガス通路の圧力を調整するカソードオフガス調圧弁と、を備え、前記ターボコンプレッサから前記酸化剤ガス供給管へ供給される酸化剤ガスの全量が前記酸化剤ガス通路の入口へ供給され、暖機運転時に、フラッディングが発生するように前記酸化剤ガスの流量及び圧力を制御し、フラッディングが発生しないときと比較して前記燃料電池スタックが発生する熱量を増加させる、燃料電池システムが提供される。
燃料電池システムの構成を簡略化しつつ、暖機運転を行うことができる。
燃料電池システムの構成図である。 ターボコンプレッサの特性を模式的に示すグラフである。 ターボコンプレッサの特性を模式的に示すグラフである。 燃料電池スタックの出力電流−出力電圧特性を模式的に示すグラフである。 燃料電池スタックの出力電流−出力電圧特性と発生する熱量との関係を模式的に示すグラフである。 温度と要求電力との関係を示す表である。 要求電力と目標電流値との関係を示すグラフである。 ターボコンプレッサの特性の一例を示すグラフである。 フラッディング判定の出力電圧の変動幅を説明するグラフである。 暖機運転制御のルーチンを示すフローチャートである。
図1を参照すると、燃料電池システムAは燃料電池スタック10を備える。燃料電池スタック10は積層方向に互いに積層された複数の燃料電池単セルを備える。各燃料電池単セルは膜電極接合体20を含む。膜電極接合体20は膜状の電解質と、電解質の一側に形成されたアノード極と、電解質の他側に形成されたカソード極とを備える。
複数の燃料電池単セルは直列又は並列に電気的に接続されている。燃料電池スタック10の電極はDC/DCコンバータ11を介してインバータ12に電気的に接続され、インバータ12はモータジェネレータ13に電気的に接続される。また、燃料電池システムAは蓄電器14を備えており、この蓄電器14はDC/DCコンバータ15を介して上述のインバータ12に電気的に接続される。DC/DCコンバータ11は燃料電池スタック10からの電圧を高めてインバータ12に送るためのものであり、インバータ12はDC/DCコンバータ11又は蓄電器14からの直流電流を交流電流に変換するためのものである。DC/DCコンバータ15は燃料電池スタック10又はモータジェネレータ13から蓄電器14への電圧を低くし、又は蓄電器14からモータジェネレータ13への電圧を高くするためのものである。なお、図1に示される燃料電池システムAでは蓄電器14はバッテリから構成される。
また、燃料電池単セル内には、アノード極に燃料ガスを供給するための燃料ガス流通路と、カソード極に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス流通路と、燃料電池単セルに冷却水を供給するための冷却水流通路とがそれぞれ形成される。複数の燃料電池単セルの燃料ガス流通路、酸化剤ガス流通路、及び冷却水流通路をそれぞれ直列又は並列に接続されることにより、燃料電池スタック10には燃料ガス通路30、酸化剤ガス通路40、及び冷却水通路50がそれぞれ形成される。
燃料ガス通路30の入口には燃料ガス供給管31が連結され、燃料ガス供給管31は燃料ガス源32に連結される。図1に示される実施例では、燃料ガスは水素ガスから形成され、燃料ガス源32は水素タンクから形成される。燃料ガス供給管31内には上流側から順に、遮断弁33と、燃料ガス供給管31内の燃料ガスの圧力を調整するレギュレータ34と、燃料ガス源32からの燃料ガスを燃料電池スタック10に供給するための燃料ガスインジェクタ35と、が配置される。一方、燃料ガス通路30の出口にはアノードオフガス管36が連結される。遮断弁33が開弁されかつ燃料ガスインジェクタ35が開弁されると、燃料ガス源32内の燃料ガスが燃料ガス供給管31を介して燃料電池スタック10内の燃料ガス通路30内に供給される。このとき燃料ガス通路30から流出するガス、すなわちアノードオフガスはアノードオフガス管36内に流入する。アノードオフガス管36内にはアノードオフガス管36内を流れるアノードオフガスの量を制御するアノードオフガス制御弁37が配置される。
また、酸化剤ガス通路40の入口には酸化剤ガス供給管41が連結され、酸化剤ガス供給管41は酸化剤ガス源42に連結される。図1に示される実施例では、酸化剤ガスは空気から形成され、酸化剤ガス源42は大気から形成される。酸化剤ガス供給管41内には上流側から順に、ガスクリーナ43と、酸化剤ガスを圧送するターボコンプレッサ44と、ターボコンプレッサ44から燃料電池スタック10に送られる酸化剤ガスを冷却するためのインタークーラ45と、が配置される。一方、酸化剤ガス通路40の出口にはカソードオフガス管46が連結される。ターボコンプレッサ44が駆動されると、酸化剤ガスが酸化剤ガス供給管41を介して燃料電池スタック10内の酸化剤ガス通路40内に供給される。このとき酸化剤ガス通路40から流出するガス、すなわちカソードオフガスはカソードオフガス管46内に流入する。カソードオフガス管46内にはカソードオフガス管46内を流れるカソードオフガスの量又は燃料電池スタック10の酸化剤ガス通路40内の圧力を制御するカソードオフガス調圧弁47が配置される。ここで、図1に示される実施例では、特許文献1に記載されているようなスタックバイパス管とスタックバイパス弁とを備えていない。言い換えると、ターボコンプレッサ44下流の酸化剤ガス供給管41とカソードオフガス調圧弁47下流のカソードオフガス管46とを連結するスタックバイパス管と、酸化剤ガス供給管41からスタックバイパス管へ流れ込む酸化剤ガスの量を制御するスタックバイパス弁とを備えていない。したがって、ターボコンプレッサから酸化剤ガス供給管41へ供給される酸化剤ガスの全量が燃料電池スタック10の酸化剤ガス通路40の入口へ供給される。そして、酸化剤ガス通路40の出口から送出されるカソードオフガスの全量が外部へそのまま排出される。図示されない別の実施例では、酸化剤ガス通路40の出口から送出されるカソードオフガスは他の用途、例えばアノードオフガスの希釈に利用される。また、図1に示される実施例では、ターボコンプレッサ44は遠心式又は軸流式のターボコンプレッサから構成される。小型化・軽量化などの面から、遠心式のターボコンプレッサが好適に用いられる。
また、冷却水通路50の入口には冷却水供給管51の一端が連結され、冷却水供給管51の出口には冷却水供給管51の他端が連結される。冷却水供給管51内には冷却水を圧送する冷却水ポンプ52と、ラジエータ53とが配置される。ラジエータ53上流の冷却水供給管51と、ラジエータ53と冷却水ポンプ52間の冷却水供給管51とはラジエータバイパス管54により互いに連結される。また、ラジエータバイパス管54内を流れる冷却水量を制御するラジエータバイパス制御弁55が設けられる。図1に示される燃料電池システムAではラジエータバイパス制御弁55は三方弁から形成され、ラジエータバイパス管54の入口に配置される。冷却水ポンプ52が駆動されると、冷却水ポンプ52から吐出された冷却水は冷却水供給管51を介して燃料電池スタック10内の冷却水通路50内に流入し、次いで冷却水通路50を通って冷却水供給管51内に流入し、ラジエータ53又はラジエータバイパス管54を介して冷却水ポンプ52に戻る。
電子制御ユニット60はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス61によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)62、RAM(ランダムアクセスメモリ)63、CPU(マイクロプロセッサ)64、入力ポート65及び出力ポート66を具備する。ターボコンプレッサ44と燃料電池スタック10との間における酸化剤ガス供給管41には酸化剤ガス供給管41内の圧力を検出する圧力センサ70が取り付けられる。また、燃料電池スタック10の近傍には外気温を測定する温度センサ71が取り付けられる。また、燃料電池スタック10内の冷却水通路50に隣接する冷却水供給管51には冷却水の温度を検出する温度センサ72が取り付けられる。圧力センサ70及び温度センサ71、72の出力信号は対応するAD変換器67を介して入力ポート65に入力される。一方、出力ポート66は対応する駆動回路68を介して遮断弁33、レギュレータ34、燃料ガスインジェクタ35、アノードオフガス制御弁37、ターボコンプレッサ44、カソードオフガス調圧弁47、冷却水ポンプ52及びラジエータバイパス制御弁55に電気的に接続される。
ところで、燃料電池スタック10で発電すべきときには遮断弁33及び燃料ガスインジェクタ35が開弁され、水素ガスが燃料電池スタック10に供給される。また、ターボコンプレッサ44が駆動され、空気が燃料電池スタック10に供給される。その結果、燃料電池単セルにおいて電気化学反応(H→2H+2e,(1/2)O+2H+2e→HO)が起こり、電気エネルギが発生される。この発生された電気エネルギはモータジェネレータ13に送られる。その結果、モータジェネレータ13が車両駆動用の電気モータとして作動され、電動車両が駆動される。一方、例えば車両制動時にはモータジェネレータ13が回生装置として作動し、このとき回生された電気エネルギは蓄電器14に蓄えられる。
図1に示される燃料電池システムAでは、発電すべきときには、例えばアクセルペダルの踏み込み量により表されるモータジェネレータ13の負荷及び蓄電器14の蓄電量に応じて燃料電池スタック10の目標電力値、すなわち目標電圧値及び目標電流値が求められる。次いで、燃料電池スタック10の出力電流値を目標電流値にするのに必要な燃料ガス流量、すなわち目標燃料ガス流量が求められ、出力電流値を目標電流値にするのに必要な酸化剤ガス流量に予め設定されたエアストイキ比をかけて目標酸化剤ガス流量が求められる。次いで、燃料電池スタック10に送られる燃料ガス流量が目標燃料ガス流量となるようにレギュレータ34及び燃料ガスインジェクタ35が制御され、燃料電池スタック10に送られる酸化剤ガス流量が目標酸化剤ガス流量となるようにターボコンプレッサ44が制御される。
次に、図2及び図3を参照しながら、ターボコンプレッサ44の特性について説明する。図2及び図3はターボコンプレッサ44の特性を模式的に示している。図2及び図3において、縦軸はターボコンプレッサ44の入口における圧力に対するターボコンプレッサ44の出口における圧力の比である圧力比を示しており、横軸はターボコンプレッサ44から吐出される酸化剤ガスの流量を示している。なお、ターボコンプレッサ44の入口における圧力は大気圧と考えることができる。一方、ターボコンプレッサ44の出口における圧力は圧力センサ70により検出されると共に、カソードオフガス調圧弁47により制御される酸化剤ガス通路40内の圧力に応じて定まる。
図2は、圧縮比及び酸化剤ガス流量により定まるターボコンプレッサ44の作動可能領域WATと、圧縮比及び酸化剤ガス流量により定まるターボコンプレッサ44以外のコンプレッサ、すなわち回転式や往復式の容積型コンプレッサの作動可能領域WACとを模式的に示している。図に示すように、ターボコンプレッサ44は、ターボコンプレッサ44以外のコンプレッサと比較して、高流量・高圧力比の範囲を含む幅広い範囲でまで運転可能である。また、図3は、ターボコンプレッサ44の作動効率がターボコンプレッサ44以外のコンプレッサの作動効率よりも優れる作動領域HEAを模式的に示している。図に示すように、酸化剤ガス流量がQHEA以上の作動領域HEAではターボコンプレッサ44の作動効率が優れており、酸化剤ガス流量がQHEA未満の作動領域LEAではターボコンプレッサ44以外のコンプレッサの作動効率が優れている。すなわち、ターボコンプレッサ44は、ターボコンプレッサ44以外のコンプレッサと比較して、高流量・高圧力比の範囲を含む幅広い範囲で作動効率が優れている。以上に示されるように、ターボコンプレッサ44は、ターボコンプレッサ44以外のコンプレッサと比較して、高流量・高圧力比の範囲を含む幅広い範囲において、高効率で作動可能であるという大きな優位性を有している。
次に、図4を参照しながら、燃料電池スタック10の特性について説明する。図4は燃料電池スタック10の電気的な特性を模式的に示している。図4において、縦軸は燃料電池スタック10が出力する電圧、すなわち出力電圧を示しており、横軸は燃料電池スタック10が出力する電流、すなわち出力電流を示している。曲線Aは、暖機運転以外の運転時、すなわち通常運転時の出力電流−出力電圧特性を示す。曲線Bは、図1に示す実施例で行う暖機運転であるフラッディング運転時の出力電流−出力電圧特性を示す。ただし、フラディング運転では、エアストイキ比は1.0以上であり、低エアストイキ比ではない。曲線Cは、特許文献1に開示された暖機運転である低エアストイキ比運転時の出力電流−出力電圧特性を示している。ただし、フラッディングとは、カソード極側で生成された水分が凝縮してカソード極上を少なくとも部分的に覆い、電気化学反応に必要な酸化剤ガスがカソード極の水分で覆われた部分に到達し難くなる現象である。また、フラッディング運転とは、フラッディングが発生している状態で、燃料電池スタック10を運転することをいう。
通常運転時では、燃料ガス及び酸化剤ガスが十分に足りていて、フラッディングも発生していないため、燃料電池スタック10の内部抵抗による損失が少ない。そのため、曲線Aに示されるように、良好な出力電流−出力電圧特性を示している。しかし、フラッディング運転時では、カソード極を覆う凝縮水によりカソード極で酸素ガスが不足し、内部抵抗が増加する。そのため、曲線Bに示されるように、通常運転時と比較して同じ出力電流に対して、出力電圧が低くなり、出力電流の上限も低くなる。同様に、低エアストイキ比運転時では、カソード極側に供給される酸化剤ガスが少ないためカソード極で酸素ガスが不足し、内部抵抗が増加する。そのため、曲線Cに示されるように、通常運転時と比較して同じ出力電流に対して、出力電圧が低くなり、出力電流の上限も低くなる。このように、燃料電池スタック10のフラッディング運転時の状態と、低エアストイキ比運転時の状態とは、酸素ガス不足で内部抵抗が増加しているという点で概ね同じであると考えることができる。したがって、燃料電池スタック10の暖機運転として、低エアストイキ比運転の代わりに、フラッディング運転を利用することができる。例えば、曲線Bの出力電圧VBかつ出力電流I0の状態PBについて考えてみると、電圧(V0−VB)が内部抵抗にかかり、出力電圧VBが外部負荷にかかる。したがって、内部抵抗により消費される電力、すなわち燃料電池スタック10の加熱に使用できる熱量は(VO−VB)×I0であり、これは図5に示すように領域(S1+S2)の面積に相当する。一方、通常運転での出力電圧VAかつ出力電流I0の状態PAで考えてみると、電圧(V0−VA)が内部抵抗にかかり、出力電圧VAが外部負荷にかかることになる。したがって、熱量は(VO−VA)×I0であり、これは図5に示すように領域S1の面積に相当する。このように、フラッディング運転時に発生する熱量は通常運転時に発生する熱量よりも非常に大きく、燃料電池スタック10の暖機運転として、フラッディングの状態を利用できる。
また、特に、フラッディング運転の状態として、曲線Bと曲線Cとが交差する状態PBを選択すれば、この状態PBでは、燃料電池スタック10の発熱に使用できる熱量は、フラッディング運転時の状態と、低エアストイキ比運転時の状態とで同じである。すなわち、出力電流及び出力電圧を適切に選択すれば、フラッディング運転を利用することで、低エアストイキ運転を利用するのと同等の熱量を確保することができる。それにより、フラッディング運転でも、低エアストイキ運転と同等の時間で暖機運転を終了することができる。すなわち、フラッディング運転を採用しても、低エアストイキ比運転と同等の暖機性能を得ることができる。また、出力電流をI0よりも大きくすれば、このときのフラッディング運転時の出力電圧(曲線C)は低エアストイキ比運転時の出力電圧(曲線B)よりも低いので、フラッディング運転は、低エアストイキ比運転と比較して、より大きな熱量を発生させることができる。
フラッディングの状態を発生させるためには、まず、酸化剤ガスの流量を通常運転での酸化剤ガスの流量よりも多くし、かつ、酸化剤ガスの圧力比を通常運転での酸化剤ガスの圧力比よりも高くして、ターボコンプレッサ44から燃料電池スタック10のカソード極側へ酸化剤ガスを供給する。それにより、酸化剤ガスの濃度が高まり燃料電池スタック10の内部抵抗が減少するなどの理由により、燃料電池スタック10の出力電圧−出力電流特性を向上させて、水分の生成量を増加させることができる。更に、カソードオフガス調圧弁47の開度を小さくして、すなわち閉じ気味にして、燃料電池スタック10の酸化剤ガス通路40の圧力を通常運転での酸化剤ガス通路40の圧力よりも高くする。それにより、燃料電池スタック10のカソード極側に生成した水分をカソード極側にそのまま残存させ、凝縮させ易くできる。すなわち、酸化剤ガスの流量及び圧力比を相対的に高く、燃料電池スタック10のカソード極側の圧力を相対的に高くするようにターボコンプレッサ44及びカソードオフガス調圧弁47を制御することで、意図的にカソード極側にフラッディングを起こさせることができる。その結果、フラッディング運転が可能となり、燃料電池スタック10で発生する熱量を増加させて、燃料電池スタック10を暖機することができる。
ここで、フラッディングの状態では、凝縮水によりカソード極への酸素ガスの供給が阻害されているため、カソード極側の酸素ガスが不足することは、低エアストイキ比の状態と同じである。しかし、図1に示す実施例の燃料電池システムAでは、酸化剤ガスが高流量に供給されているため、カソードオフガスを希釈するための追加の酸化剤ガス供給が不要である。すなわち、特許文献1のようなスタックバイパス管やスタックバイパス弁を設ける必要はない。
また、ターボコンプレッサ44は、図2及び図3で示されるように、フラッディング運転を行う高流量・高圧力比の作動条件において高効率で作動が可能である。そのため、燃料電池スタック10が発電した電力を内部抵抗で熱に変換するという発電効率が低下する運転を行っても、その燃費効率の低下を大幅に抑制できる。
次に、燃料電池スタック10の暖機運転方法について説明する。
燃料電池スタック10の温度が低いと発電効率が低いため、燃料電池システムAが起動したとき燃料電池スタック10の温度が低い場合には、燃料電池スタック10の温度を高くするべく暖機運転を行う必要がある。そこで、燃料電池システムAが起動したとき、温度センサ71で外気の温度Tが測定される。この外気の温度Tは、燃料電池スタック10の温度を表しているとみなすことができる。燃料電池システムAが起動したとき、温度センサ71で計測された外気の温度Tが予め設定された閾値温度T0よりも低い場合、燃料電池スタック10には暖機運転が必要であると判断される。閾値温度T0は、0℃に例示される。別の実施例では、燃料電池スタック10の温度として、燃料電池スタック10の冷却水の温度が温度センサ72で測定される。そして、計測された燃料電池スタック10の冷却水の温度が予め設定された閾値温度よりも低い場合、燃料電池スタック10には暖機運転が必要であると判断される。
続いて、燃料電池スタック10には暖機運転が必要であると判断された場合、その時の外気の温度Tに基づいて、暖機運転に要求される要求電力OUTDが決定される。暖機運転に要求される要求電力OUTDは、例えば、温度Tの関数として予め求められており、図6に示されるテーブルの形でROM62内に予め記憶されている。この場合、温度Tが低いほど、要求電力OUTDは大きくなる。
続いて、決定された要求電力OUTDに基づいて、目標電流値ITAGが決定される。ここで、目標電流値ITAGは、例えば、要求電力OUTDの関数として求めることができる。具体的には、フラッディング運転時の出力電圧−出力電流特性、すなわち図7に示される曲線B(図4又は図5と同じ)に基づいて、図7のハッチング部分の面積((VO−VTAG)×ITAG)=要求電力OUTDとなるときの状態PTAGが算出され、状態PTAGの電流値ITAGが目標電流値ITAGとして算出される。図7の曲線Bは予め求められており、ROM62内に予め記憶されている。この場合、要求電力OUTDが大きいほど、目標電流値ITAGは大きくなる。図示されない別の実施例では、目標電流値ITAGは、例えば、要求電力OUTDの関数として予め求められており、テーブルの形でROM62内に予め記憶されている。なお、図7のハッチング部分の下側の面積(VTAG×ITAG)分の電力は、電動車両の駆動に使用されるか、又は、蓄電器14に蓄えられる。
続いて、決定された目標電流値ITAGに基づいて、必要となる燃料ガス流量及び酸化剤ガス流量、すなわち目標燃料ガス流量及び目標酸化剤ガス流量QOXが決定される。ただし、目標酸化剤ガス流量については、必要な酸化剤ガス流量に予め設定されたエアストイキ比をかけて求められる。
続いて、決定された目標酸化剤ガス流量QOXに基づいて、ターボコンプレッサ44での酸化剤ガスを吐出するときの目標圧力比Prが決定される。ここで、目標圧力比Prは、例えば、目標酸化剤ガス流量QOXの関数として求めることができる。図8は、ターボコンプレッサ44の特性の一例を示し、図2のターボコンプレッサ44の作動可能領域WATを具体的に示している。酸化剤ガス流量が目標酸化剤ガス流量QOXの場合、目標圧力比Prは、ターボコンプレッサ44の作動可能領域WAT内におけるできるだけ高い圧力比となるように決定される。この図の例では、作動可能領域WATの低流量側の境界、すなわちターボコンプレッサ44がサージングを起こす境界を示すサージラインSCの近傍に目標圧力比Prが設定される。このようにして、ターボコンプレッサ44の動作点Ea(QOX、Pr)が決定される。図8のグラフは予め求められており、ROM62内に予め記憶されている。
続いて、酸化ガス流量及び圧力比がそれぞれ目標酸化剤ガス流量QOX及び目標圧力比Prとなるように、ターボコンプレッサ44の回転数が制御されると共に、カソードオフガス調圧弁47の弁の開度が制御される。そして、燃料電池スタック10の温度、例えば温度センサ72で示される冷却水の温度TXが予め設定された閾値温度TX0以上になるまで暖機運転が続けられる。閾値温度TX0としては60℃が例示される。
また、暖機運転では、燃料電池スタック10のカソード極側でフラッディングが発生している必要がある。フラッディングが発生していると、出力電圧が継続的に増えたり減ったりする出力電圧の変動(揺らぎ)が観測される。したがって、フラッディングが発生しているか否かの判別は、その出力電圧変動が観測されるか否かで判別する。具体的には、図9に示すように、出力電圧の変動幅ΔVが予め設定された閾値電圧幅ΔV0を超えれば、フラッディングが発生していると判別する。予め設定された閾値電圧幅ΔV0としては、フラッディングが発生しない条件で燃料電池スタック10を発電したときの出力電圧の変動幅ΔV1を計測し、その変動幅ΔV1をそのまま閾値電圧幅ΔV0とするか、又は、その変動幅ΔV1に安全率(フラッディングの誤判定防止のため)を掛けた値を閾値電圧幅ΔV0とする。フラッディングが発生していない場合には、フラッディングが発生するように、例えば、酸化剤ガス流量を所定量だけ増やす、酸化剤ガス圧力比をサージングが発生しない範囲で所定量だけ高める、及び、出力電流を所定量だけ増やす、のうちの少なくとも一つを実行する制御が行われる。
図10は図1の燃料電池システムAにおける暖機運転制御ルーチンを示している。このルーチンは一定時間ごとの割り込みによって実行される。
図10を参照すると、ステップ100では外気の温度Tが予め設定された閾値温度T0より低いか否かが判別される。温度T≧閾値温度T0のときにはプロセスは終了する。温度T<閾値温度T0のときにはステップ101に進み、温度Tに基づいて、図6に示されるテーブルを参照して、要求電力OUTDが決定される。次いでステップ102では要求電力OUTD及び図7に示される曲線Bに基づいて、目標電流値ITAGが算出される。続いてステップ103では目標電流値ITAG及び予め設定されたエアストイキ比に基づいて、目標燃料ガス流量及び目標酸化剤ガス流量QOXが決定される。次いでステップ104では目標酸化剤ガス流量QOX及び図8に示されるグラフに基づいて、目標圧力比Prを決定する。続いてステップ105では目標酸化剤ガス流量QOXに基づいて、ターボコンプレッサ44から吐出される酸化剤ガスの流量が制御される。次いでステップ106では目標圧力比Prに基づいて、カソードオフガス調圧弁47が制御される。続いてステップ107では燃料電池スタック10でフラッディングが発生していること、すなわち出力電圧の変動幅ΔVが閾値電圧幅ΔV0を超えることが確認される。フラッディングが発生していない場合には、フラッディングが発生するように、酸化剤ガス流量、酸化剤ガス圧力比及び出力電流のうちの少なくとも一つを所定量だけ増やす制御が行われる。次いでステップ108では燃料電池スタック10の冷却水の温度TXが予め設定された閾値温度TX0より高いか否かが判別される。その後、温度TX≧閾値温度TX0となるまで、ステップ101〜107が繰り返される。
以上のように、図1に示される実施例では、燃料電池システムの構成を簡略化しつつ、暖機運転することが可能となる。また、燃料電池システムにかかるコストを低減できる。更に、燃料電池システムに必要な設置スペースを減少できる。加えて、燃料電池システムのメンテナンスにかかる手間を低減できる。
なお、燃料電池システムの暖気運転に関しては、燃料電池スタックの冷却水供給管に電気ヒータを搭載し、冷却水を温めることで、燃料電池スタックの温度を高くするという従来技術も知られている。しかし、この従来技術では、電気ヒータの搭載が必要であり、搭載スペースが必要であり、コストも増加する。また、冷却水全体を加熱する必要があり、必要な熱量が大きく、暖機完了までの時間がかかる、又は、暖機完了までの時間を短縮するには大型の電気ヒータが必要となる。一方、図1に示される実施例では、電気ヒータが不要であり、フラッディングのときに生成される水分の量は、冷却水の量と比較して極めて少ないので、暖機完了までの時間を短縮できる。
A 燃料電池システム
10 燃料電池スタック
41 酸化剤ガス供給管
44 ターボコンプレッサ
46 カソードオフガス管
47 カソードオフガス調圧弁

Claims (1)

  1. 燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により電力を発生する燃料電池スタックと、
    前記燃料電池スタック内に形成された酸化剤ガス通路の入口に連結された酸化剤ガス供給管と、
    前記酸化剤ガス供給管内に配置され、酸化剤ガスを圧送するターボコンプレッサと、
    前記酸化剤ガス通路の出口に連結されたカソードオフガス管と、
    前記カソードオフガス管内に配置され、前記酸化剤ガス通路の圧力を調整するカソードオフガス調圧弁と、
    を備え、
    前記ターボコンプレッサから前記酸化剤ガス供給管へ供給される酸化剤ガスの全量が前記酸化剤ガス通路の入口へ供給され、
    暖機運転時に、フラッディングが発生するように前記酸化剤ガスの流量及び圧力を制御し、フラッディングが発生しないときと比較して前記燃料電池スタックが発生する熱量を増加させる
    燃料電池システム。
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