JP2016034259A - 耐熱性微生物の作製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】活性酸素消去酵素をコードする遺伝子を微生物に導入し、前記遺伝子を前記微生物内で発現させて耐熱性微生物を作製する。活性酸素消去酵素をコードする遺伝子が、スーパーオキシドディスムターゼ、細胞質カタラーゼ、ペルオキシゾームカタラーゼ、チトクロムcペルオキシダーゼ、アルキルヒドロペルオキシダーゼ、鉄依存性ペルオキシダーゼ、アルキルヒドロペルオキシダーゼ、ペルオキシレドキシン、ペルオキシレドキシン レダクターゼ、チオレドキシンからなる群から選択される少なくとも1つの酵素をコードする遺伝子であることが好ましい。
【選択図】なし
Description
(1)活性酸素消去酵素をコードする遺伝子を微生物に導入し、前記遺伝子を前記微生物内で発現させることを特徴とする耐熱性微生物の作製方法。
(2)活性酸素消去酵素をコードする遺伝子が、スーパーオキシドディスムターゼ、細胞質カタラーゼ、ペルオキシゾームカタラーゼ、チトクロムcペルオキシダーゼ、アルキルヒドロペルオキシダーゼ、鉄依存性ペルオキシダーゼ、ペルオキシレドキシン、ペルオキシレドキシン レダクターゼ、チオレドキシンからなる群から選択される少なくとも1つの酵素をコードする遺伝子であることを特徴とする上記(1)記載の方法。
(3)活性酸素消去酵素をコードする遺伝子が、次の(a)〜(e)に示される酵素から選択される少なくとも1つの酵素をコードする遺伝子であることを特徴とする上記(2)記載の方法。
(a)コリネ型細菌由来のスーパーオキシドディスムターゼ;
(b)酵母由来の細胞質カタラーゼ、ペルオキシゾームカタラーゼ、又はチトクロムcペルオキシダーゼ;
(c)ザイモモナス属細菌由来のアルキルヒドロペルオキシダーゼ、スーパーオキシドディスムターゼ、又は鉄依存性ペルオキシダーゼ;
(d)大腸菌由来のカタラーゼ、又はスーパーオキシドディスムターゼ;
(e)酢酸菌由来のアルキルヒドロペルオキシダーゼ、ペルオキシレドキシン、ペルオキシレドキシン レダクターゼ、スーパーオキシドディスムターゼ、又はチオレドキシン;
(4)活性酸素消去酵素をコードする遺伝子を、前記遺伝子の由来源となる微生物に導入することを特徴とする上記(3)記載の方法。
(5)活性酸素消去酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクターを微生物に導入することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の方法。
(コリネバクテリウム・グルタミクムの染色体sodA遺伝子破壊株の作製)
プライマーSodA-L(配列番号1:5’-CAACTTCGCCGTCTGGATTGTAG-3’)とプライマーSodA-R(配列番号2:5’-CCTTGCTATCTATTGCTTGGCTCAT-3’)を用い、コリネバクテリウム・グルタミクムKY9714株(Hirasawa T. et al., J Bacteriol. 182(10):2696-701(2000):以下、単に「KY9714株」ともいう)のゲノムDNAをテンプレートとしてPCR(PrimeSTAR GXL(Takara-bio社製),95℃ 30sec,45℃ 30sec,75℃ 1.5min,35サイクル)を行い、3.7kbのKY9714株sodA遺伝子断片を増幅した。増幅した断片をpGEM(登録商標)-Teasyベクター(プロメガ社製)に連結して組換えプラスミドpT-3.7SodAを作製した。pTKm(Yoshida et al., Microbiology 149:431-444(2003))プラスミドのEcoRV部位から分離したカナマイシン耐性遺伝子カセットをpT-3.7SodAに連結し、AatIで処理した。得られたプラスミドpT-3.7SodA-Kmを用い、エレクトロポレーション法によりコリネバクテリウム・グルタミクムKY9002株(Kinoshita et al.,(1958)、以下、単に「KY9002株」ともいう)を形質転換し、カナマイシン耐性クローンを選択してKY9002-sodA遺伝子破壊株を得た。カナマイシンカセットがこれらのクローンのsodA遺伝子に連結していることはPCRによって確認した。
自己のプロモーターを含む全sodA遺伝子をPCRによって増幅することによって、コリネバクテリウム・グルタミクムのsodA遺伝子の発現プラスミドを作製した。
5mLのLB培地で18時間培養して調製した前培養液1mLを、0.01%の酵母エキスを添加した100mLのグルコース最少培地を入れた500mLの三角フラスコに移して、上記で作製した各菌体を30℃にて、200rpmで振とう培養した。グルコース最少培地の組成は、1L中に10gのグルコース又は20mLの乳酸ナトリウム、1gのKH2PO4、3gのK2HPO4、3gのNH4Cl、2gの尿素、0.5gのMgSO4−7H2O、10mgのFeSO4−7H2O、1mgのMnSO4−7H2O、30μgのビオチン、1mgのthiamin‐HCl、20mgのcystein−HCl、0.5gのカザミノ酸、1mLの金属混合液とした。金属混合液の組成は、1L中に990mgのFeSO4−7H2O、880mgのZnSO4−7H2O、393mgのCuSO4−5H2O、72mgのMnCl2−4H2O、88mgのNa2B4O7−10H2O、37mgの(NH4)6Mo7O24−4H2Oとした。
5mLのLB培地で18時間培養して調製した前培養液1mLを、0.01%の酵母エキスを添加した100mLのグルコース最少培地を入れた500mLの三角フラスコに移して、上記で作製したKY9002株のsodA遺伝子破壊株、sodA発現株及び野生株(vector control)を30℃、37℃、39℃、40℃にて、200rpmで振とう培養した。グルコース最少培地の組成は、上述と同様である。菌体の生育はクレットサマーソン光電光度計によって濁度を測定することによって調べた。
(クルイベロマイセス・マルシアヌスにおけるカタラーゼ(CTT1)遺伝子の発現株とチトクロムcペルオキシダーゼ(CCP1)遺伝子の発現株とペルオキシゾーム・カタラーゼ(CTA1)遺伝子の発現株の作製)
図4に示すプラスミドp[KmCDC19p-yEmRFP-ADE2c-KmCenD-ARS7-URA3]をテンプレートとして、プライマーにURA3+771c(配列番号5)とADE2+1716c(配列番号6)を用いて、PCR(PrimeSTAR GXL(Takara-bio社製),98℃ 10sec,60℃ 15sec,68℃ 6.0min,35サイクル)により、ベクターとなるDNA断片(URA3+771)c-KmCenD-KmARS7-ADE2を増幅した。実施例2で用いる上記配列番号5、6及び後述する配列番号7〜22の配列を表1に示す。
宿主に K. marxianus ade2- ura3-株(RAK10330株)を用いて,複数の活性酸素消去酵素をコードする遺伝子を発現させた。
(ザイモモナス・モビリスにおけるアルキルヒドロペルオキシダーゼ遺伝子の発現株とスーパーオキシドディスムターゼ遺伝子の発現株と鉄依存性ペルオキシダーゼ遺伝子の発現株の作製)
ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)において、活性酸素消去酵素をコードする遺伝子の高発現による耐熱化を試みるため、Z. mobilisTISTR548株のゲノムを鋳型として、活性酸素消去酵素をコードする遺伝子であるアルキルヒドロペルオキシダーゼ(alkyl hydroperoxidase:AhpC)、スーパーオキシドディスムターゼ(superoxide dismutase:Sod)及び鉄依存性ペルオキシダーゼ(iron-dependent peroxidase:ZMO1573)遺伝子を、プライマーにそれぞれzmahpc-pdc-p-5’(配列番号23)とzmahpc-3’(配列番号24)(AhpC遺伝子増幅用)、sod-pdc-p-5’(配列番号25)とzmsod-3’(配列番号26)(Sod遺伝子増幅用)、zmo1573-pdc-p-5’(配列番号27)とzmo1573-3’(配列番号28)(ZMO1573遺伝子増幅用)を用いてPCR(PrimeSTAR HS(Takara-bio社製),98℃ 10sec,55℃ 5sec,72℃ 2min,30サイクル)により増幅した(図7)。これらの活性酸素消去酵素をコードする遺伝子を恒常的に発現させるためにZ. mobilisTISTR548株のゲノムを鋳型として、pyruvate decarboxylase(Pdc)遺伝子のプロモーター領域を、プライマーにpdc-p-SalI-5’(配列番号29)とpdc-p-zmahpc-3’(配列番号30)(AhpC遺伝子との融合用)、pdc-p-EcoRV-5’(配列番号31)とpdc-p-zmosod-3’(配列番号32)(Sod遺伝子との融合用)、pdc-p-BamHI-5'(配列番号33)とpdc-p-zmo1573-3’(配列番号34)(ZMO1573との融合用)を用いてPCR(PrimeSTAR HS(Takara-bio社製),98℃ 10sec,55℃ 5sec,72℃ 50sec,30サイクル)により増幅した。得られたそれぞれの遺伝子の増幅産物とプロモーター領域の増幅産物とをテンプレートとして、プライマーにpdc-p-SalI-5’(配列番号29)とzmahpc-3’(配列番号24)、pdc-p-EcoRV-5’(配列番号31)とzmsod-3’(配列番号26)、pdc-p-BamHI-5'(配列番号33)とzmo1573-3’(配列番号28)を用いてFusionPCR(PrimeSTAR HS(Takara-bio社製),98℃ 10sec,55℃ 5sec,72℃ 3min,30サイクル)により、pdcプロモーターとそれぞれの活性酸素消去酵素をコードする遺伝子を融合したDNA断片(Ppdc-ahpC、Ppdc-sod、Ppdc-zmo1573)を得た。上記配列番号23〜34の配列を表2に示す。
(大腸菌におけるカタラーゼ遺伝子の発現株とスーパーオキシドディスムターゼ遺伝子の発現株の作製)
Mobile Plasmidコレクション(Saka K. et al., DNA Res. 12:63-68(2005))のうち、大腸菌のカタラーゼ(KatEとKatG)をコードしているpNTRKATE、pNTRKATGと、大腸菌のスーパーオキシドディスムターゼ(SodA)をコードしているpNTRSODAと、コントロールとして空ベクターpNTR-SDとを大腸菌W3110にエレクトロポレーション法により導入し形質転換を行った。得られた形質転換体を2mLの終濃度50μg/mLのアンピシリン添加LB培地に植菌して一晩前培養を行った。前培養液の細胞濃度がOD600=0.01になるようにLB培地で希釈した後、30mLの終濃度50μg/mLのアンピシリン添加LB培地にOD600で濁度が0.001になるように植菌して、37℃、100rpmの条件で本培養を行った。本培養開始6時間後に終濃度が0.1mMのIPTG(イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド)を本培養液に加えて上記活性酸素消去酵素をコードする遺伝子の発現を誘導し、その影響をLB寒天培地上のコロニー数で測定することで検討した。なお、pNTRKATE、pNTRKATG、pNTRSODA、pNTR-SDの遺伝子型を表3に示す。
(酢酸菌の活性酸素消去酵素をコードする遺伝子の同定)
一般的な酢酸菌の生育限界温度は33℃程度であるが、日本の食酢醸造に使用されてきた酢酸菌アセトバクター パスツリアヌス(Acetobacter pasteurianus)の生育限界温度は38℃であり、この高い生育限界温度が日本の温暖な地域でさえも食酢醸造が可能であった1つの理由といえる。その準耐熱性酢酸菌であるAcetobacter pasteurianus(IFO3283-01:Ap01株)を元株として、42℃まで生育が可能となった耐熱性酢酸菌Acetobacter pasteurianus IFO3283-01/42C(Ap01/42C株)を育種し、そのゲノムDNA配列を文献(Azuma Y. et al, Nucleic Acid Research 37(17):5768-83 (2009))に記載の方法に従い、次世代DNAシークエンサーであるIllumia社HiSeqを用いて決定し、サンガー法によりその変異部位を同定した。
Ap01/42C株のゲノムDNAと表4に示すプライマーを用いてPCR法により標的遺伝子を増幅し、それぞれの遺伝子を、発明者らが自ら作製した複数のアンピシリン耐性遺伝子を含む大腸菌−酢酸菌シャトルベクターpAp01に導入した。得られたA. pasteurianusの活性酸素消去酵素をコードする遺伝子を含む4つの大腸菌−酢酸菌シャトルベクター、及び大腸菌−酢酸菌シャトルベクターコントロールを使って、表5に示す各酢酸菌を形質転換した。
Claims (5)
- 活性酸素消去酵素をコードする遺伝子を微生物に導入し、前記遺伝子を前記微生物内で発現させることを特徴とする耐熱性微生物の作製方法。
- 活性酸素消去酵素をコードする遺伝子が、スーパーオキシドディスムターゼ、細胞質カタラーゼ、ペルオキシゾームカタラーゼ、チトクロムcペルオキシダーゼ、アルキルヒドロペルオキシダーゼ、鉄依存性ペルオキシダーゼ、ペルオキシレドキシン、ペルオキシレドキシン レダクターゼ、チオレドキシンからなる群から選択される少なくとも1つの酵素をコードする遺伝子であることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 活性酸素消去酵素をコードする遺伝子が、次の(a)〜(e)に示される酵素から選択される少なくとも1つの酵素をコードする遺伝子であることを特徴とする請求項2記載の方法。
(a)コリネ型細菌由来のスーパーオキシドディスムターゼ;
(b)酵母由来の細胞質カタラーゼ、ペルオキシゾームカタラーゼ、又はチトクロムcペルオキシダーゼ;
(c)ザイモモナス属細菌由来のアルキルヒドロペルオキシダーゼ、スーパーオキシドディスムターゼ、又は鉄依存性ペルオキシダーゼ;
(d)大腸菌由来のカタラーゼ、又はスーパーオキシドディスムターゼ;
(e)酢酸菌由来のアルキルヒドロペルオキシダーゼ、ペルオキシレドキシン、ペルオキシレドキシン レダクターゼ、スーパーオキシドディスムターゼ、又はチオレドキシン; - 活性酸素消去酵素をコードする遺伝子を、前記遺伝子の由来源となる微生物に導入することを特徴とする請求項3記載の方法。
- 活性酸素消去酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクターを微生物に導入することを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の方法。
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