JP2016027685A - 伝送線路および電子部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を効率よく伝搬させる伝送線路を提供する。【解決手段】本発明の伝送線路は、第1の誘電体とその誘電体中に分散した導体フィラーより構成され、第1の比誘電率をもつ線路部と、第2の比誘電率を有する第2の誘電体よりなる周囲誘電体部とを備えている。周囲誘電体部は、線路部における電磁波の伝搬方向に直交する断面において、線路部の周囲に存在する。線路部の比誘電率は、600以上である。第2の誘電体の比誘電率は、線路部の比誘電率よりも小さい。これにより線路部は、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を効率よく伝搬させることができる。【選択図】図1

Description

本発明は10GHz以下の周波数帯で共振器を構成するマイクロ波伝送線路および電子部品に関する。
近距離無線通信や移動体通信に、マイクロ波帯、特に1GHz〜10GHzの周波数帯が多く利用されている。これらの通信に用いられる通信装置には、小型化、薄型化が強く求められ、その通信装置に用いられる電子部品にも小型化、薄型化が強く求められている。
一般的に、1GHz〜10GHzの周波数帯の高周波信号の伝送には、同軸線路、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路等、導体と誘電体を組み合わせた構造の伝送線路が用いられている。
通信装置に用いられる電子部品には、バンドパスフィルタのように共振器を含むものがある。この共振器には、分布定数線路を用いたものや、インダクタとキャパシタを用いたものなどがあるが、いずれも伝送線路を含んでいる。共振器には、無負荷Q値が大きいことが求められ、共振器の無負荷Q値は、共振器における損失を小さくすることによって大きくすることができる。
伝送線路の損失には、誘電体損、導体損および放射損がある。信号の周波数が高くなるほど、表皮効果が顕著になって、導体損は顕著に増大する。共振器における損失は、ほとんど導体損に起因する。そのため、共振器の無負荷Q値を大きくするためには、導体損を小さくすることが効果的である。導体損を小さくして共振器の無負荷Q値を大きくする技術としては、特許文献1、2に記載された技術が知られている。
特許文献1には、対称型ストリップライン共振器において、一対の接地導体間に、互いに誘電体を介して隔てられた複数枚のストリップ導体電極を接地導体に平行に配置することによって、ストリップ導体電極の導体損を低減して、共振器の無負荷Q値を大きくする技術が記載されている。
特許文献2には、ストリップライン電極を有する共振器において、ストリップライン電極を、誘電体層と導体層が交互に積層された多層部と導体とを有する多層電極とし、多層部を構成する各層の面が接地電極の面に対して垂直になるように配置することによって、ストリップライン電極の導体損を低減して、共振器の無負荷Q値を大きくする技術が記載されている。
一方、50GHz程度のミリ波帯の電磁波を伝搬させる伝送線路としては、誘電体線路が知られている。例えば、特許文献3には、平行に配置された2つの平行導体板の間に高誘電率テープを配置し、2つの平行導体板と高誘電率テープの間に、低誘電率材料よりなる充填誘電体を配置して構成された伝送線路が記載されている。この伝送線路では、電磁波の電界は充填誘電体内に分布する。特許文献3には、実際に作製された伝送線路が、30GHz〜60GHzの周波数帯で低分散な特性であることが記載されている。
特開平4−43703号公報 特開平10−13112号公報 特開2007−235630号公報
前述のように、従来の1GHz〜10GHzの周波数帯用の伝送線路は、導体で作製された電極を用いた線路を用いる構造のものである。この伝送線路では、特許文献1、2に記載された技術のように導体電極の表面積を大きくする等の対策を行っても、導体損を大幅に小さくすることは困難である。そのため、この伝送線路を用いた共振器では、無負荷Q値を大きくすることには限界がある。
一方、前述のように、50GHz程度のミリ波帯の電磁波を伝搬させる誘電体線路は知られているが、1GHz〜10GHzの周波数帯の電磁波を伝搬させる誘電体線路は知られていない。
電磁波の波長は、周波数に反比例する。1GHz〜10GHzの周波数帯の電磁波の波長は、50GHz程度のミリ波帯の電磁波の波長の5倍から50倍程度になる。一般的に、従来の誘電体線路の大きさは、伝搬させる電磁波の波長が長くなるほど大きくなる。そのため、仮に、従来の誘電体線路を用いて、1GHz〜10GHzの周波数帯用の共振器等の電子部品を構成しようとしても、電子部品が大型化して、実用的な電子部品を実現することができない。
なお、誘電体線路を伝搬する電磁波の波長は、誘電体の波長短縮効果により、真空中を伝搬する電磁波の波長よりも短くなる。しかし、従来の誘電体線路では、大幅な波長短縮効果は得られない。例えば、特許文献3には、充填誘電体の比誘電率は例えば4以下であることが記載されている。比誘電率を4とすると、波長短縮率は0.5である。そのため、従来の誘電体線路を用いても、誘電体の波長短縮効果による電子部品の大幅な小型化はできない。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を効率よく伝搬させる伝送線路、およびそれを含む電子部品を提供することにある。
本発明の伝送線路は、第1の誘電体とその誘電体中に分散した導体フィラーより構成され、第1の比誘電率をもつ線路部と、第2の比誘電率を有する第2の誘電体よりなる周囲誘電体部とを備えている。周囲誘電体部は、線路部における電磁波の伝搬方向に直交する断面において、線路部の周囲に存在する。前記第1の比誘電率は、600以上である。前記第2の比誘電率は、前記第1の比誘電率よりも小さい。なお、本出願において、比誘電率とは、複素比誘電率の実部を言う。また、本発明における線路部は、電磁波を一方向に伝搬させるものに限らず、例えば進行波と反射波のように、互いに反対方向に進む2つの電磁波を伝搬させるものであってもよい。
前記第2の誘電体の比誘電率は、前記第1の比誘電率の1/10以下であってもよい。
前記第1の誘電体の誘電体中に分散した導体フィラーの割合は、前記線路部全体の4〜74体積%であってもよい。
前記第1の誘電体中に分散した導体フィラーの大きさは、5μm以下であってもよい。
また前記周囲誘電体部の少なくとも一部は、1.02以上の比透磁率を有していてもよい。なお、本出願において、比透磁率とは、複素比透磁率の実部を言う。
本発明の電子部品は、本発明の伝送線路を含むものである。本発明の電子部品は、1GHz〜10GHzの範囲内の共振周波数を有する共振器を備えていてもよい。この共振器は、本発明の伝送線路を用いて構成されている。
本発明の伝送線路および電子部品では、第1の誘電体とその誘電体中に分散した導体フィラーよりなる線路部の比誘電率が600以上であり、周囲誘電体部を構成する第2の誘電体の比誘電率は第1の比誘電率よりも小さい。これにより、線路部が、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を、効率よく伝搬させることが可能になる。従って、本発明によれば、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を効率よく伝搬させる伝送線路、およびそれを含む電子部品を実現することが可能になるという効果を奏する。
本発明の実施の形態に係る伝送線路および電子部品を示す斜視図である。 図1におけるA方向から見た電子部品を示す側面図である。 図1に示した伝送線路の断面を示す断面図である。 図1に示した電子部品の回路構成を示す回路図である。
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。始めに、図1ないし図3を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る伝送線路および電子部品の構造について説明する。図1は、本実施の形態に係る伝送線路および電子部品を示す斜視図である。図2は、図1におけるA方向から見た電子部品を示す側面図である。図3は、図1に示した伝送線路の断面を示す断面図である。
図1ないし図3に示したように、本実施の形態に係る電子部品1は、本実施の形態に係る伝送線路2を含んでいる。伝送線路2は、第1の誘電体とその誘電体中に分散した導体フィラーより構成される第1の比誘電率をもつ線路部10と、第2の比誘電率E2を有する第2の誘電体よりなる周囲誘電体部20とを備えている。線路部10は、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を伝搬させる。周囲誘電体部20は、線路部10における電磁波の伝搬方向に直交する断面において、線路部10の周囲に存在する。本実施の形態では、特に、上記断面において、周囲誘電体部20は、線路部10の外周全体に接している。線路部10の第1の比誘電率E1は、600以上である。第2の比誘電率E2は、第1の比誘電率E1よりも小さい。
本実施の形態では、線路部10は円柱形状を有している。線路部10における電磁波の伝搬方向は、円柱の中心軸方向である。周囲誘電体部20は直方体形状を有している。線路部10における電磁波の伝搬方向に直交する断面において、線路部10の形状は円形であり、周囲誘電体部20の形状は長方形である。ここで、図1に示したように、上記断面における周囲誘電体部20の形状である長方形の長辺に平行な方向をX方向と定義し、この長方形の短辺に平行な方向をY方向と定義する。また、線路部10における電磁波の伝搬方向、すなわち線路部10の形状である円柱の中心軸方向をZ方向と定義する。X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する。図3は、線路部10における電磁波の伝搬方向すなわちZ方向に直交する断面を示している。
周囲誘電体部20は、Z方向の両端に位置する上面20aおよび下面20bと、X方向の両端に位置する2つの側面20c,20dと、Y方向の両端に位置する2つの側面20e,20fとを有している。
電子部品1は、更に、それぞれ周囲誘電体部20の上面20a、下面20b、側面20e,20fに配置された導体層3,4,5,6を備えている。導体層3のX方向の長さは、上面20aのX方向の長さよりも小さい。導体層3のY方向の長さは、上面20aのY方向の長さと等しい。導体層3は、上面20aの一部のみを覆っている。導体層4のX方向の長さは、下面20bのX方向の長さよりも小さい。導体層4のY方向の長さは、下面20bのY方向の長さと等しい。導体層4は、下面20bの一部のみを覆っている。導体層5は、側面20eの全体を覆い、導体層3,4に電気的に接続されている。導体層6は、側面20fの全体を覆い、導体層3,4に電気的に接続されている。導体層3,4,5,6は、グランドに接続される。
電子部品1は、更に、導体層4に対して所定の間隔をあけて対向するように周囲誘電体部20の内部に配置された導体層7を備えている。導体層4と導体層7の間には、周囲誘電体部20の一部が介在している。
線路部10のZ方向の一端は、導体層7に接続されている。導体層7は、周囲誘電体部20の側面20cに露出した端部7aを有している。線路部10のZ方向の他端は、導体層3に接続されている。
次に、図4の回路図を参照して、本実施の形態に係る電子部品1の回路構成について説明する。本実施の形態に係る電子部品1は、並列に接続されたインダクタ31とキャパシタ32とを有する共振器30と、入出力端子33とを備えている。インダクタ31の一端とキャパシタ32の一端は、入出力端子33に電気的に接続されている。インダクタ31の他端とキャパシタ32の他端は、グランドに電気的に接続されている。インダクタ31とキャパシタ32は、並列共振回路を構成している。共振器30は、1GHz〜10GHzの範囲内の共振周波数を有している。
共振器30は、伝送線路2を用いて構成されている。より具体的に説明すると、共振器30を構成するインダクタ31が、伝送線路2の線路部10によって構成されている。キャパシタ32は、図1に示した導体層4,7と、その間の周囲誘電体部20の一部によって構成されている。入出力端子33は、図1に示した導体層7の端部7aによって構成されている。なお、周囲誘電体部20の側面20cに、導体層7の端部7aに接続された導体層を設け、この導体層を入出力端子33としてもよい。
次に、本実施の形態に係る伝送線路2および電子部品1の作用について説明する。導体層7の端部7aによって構成された入出力端子33には、1GHz〜10GHzの範囲内の周波数を含む任意の周波数の電力が供給される。この電力に起因して、導体層7に接続された線路部10に電磁波が励起される。線路部10は、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を伝搬させる。線路部10が伝搬させる電磁波の1つ以上の周波数は、共振器30の共振周波数を含む。共振器30は、1GHz〜10GHzの範囲内の共振周波数で共振する。入出力端子33の電位は、入出力端子33に供給される電力の周波数が共振周波数と一致するときに最大値になり、入出力端子33に供給される電力の周波数が共振周波数から離れるに従って減少する。
本実施の形態において、第1の誘電体とその誘電体中に分散した導体フィラーより構成された線路部10における比誘電率E1は600以上であり、周囲誘電体部20を構成する第2の誘電体の第2の比誘電率E2は線路部10の比誘電率E1よりも小さい。線路部10において誘電体中に導体フィラーを分散させることにより、第1の誘電体の比誘電率に対し、比誘電率E1を高めることが可能となり、かつ伝送線路における損失を抑え、効率的よく電磁波を伝搬させることが可能となる。600以上という線路部10の比誘電率E1の値は、50GHz程度のミリ波帯の電磁波を伝搬させる従来の誘電体線路に用いられる誘電体の比誘電率に比べて、非常に大きい。線路部の比誘電率E1の値を、このような大きな値にすることにより、線路部10は、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を効率よく伝搬させることが可能になる。なお第1の誘電体の材質は必ずしも限定されるわけではないが、好ましい例としてはSrTiO、CaTiO、BaTiOおよびこれらの2種以上の組み合わせを用いることができる。また線路部10の比誘電率E1の上限は必ずしも限定されないが、E1が50万以上になると伝送線路における損失抑制効果はほぼ一定となると予想されるため、比誘電率E1は50万以下であることが好ましい。
前記線路部10において誘電体中に導体フィラーを分散させることにより、第1の誘電体の比誘電率に対し、比誘電率E1が高まる原理は必ずしも定かではないが、導体フィラーが誘電体中に分散することにより実質的な誘電体の厚みが小さくなることや、導体フィラー中においては電子が電場により完全に分極することなどが要因として考えられる。なお導体フィラーの金属種については必ずしも限定されるわけではないが、好ましい例としてはPd、Ag、Cu、Mo、Wおよびこれらの2種以上の組み合わせを用いることができる。
本実施の形態において、前記伝送線路2における第2の誘電体の比誘電率E2は、線路部10の比誘電率E1の1/10以下であることが好ましい。1/10以下とすることにより伝送線路における損失を抑え、より効率的に電磁波を伝搬させることが可能になる。なおE2の下限は求められないが、実用上2以下の比誘電率の材料を用いることは困難であることから、比誘電率E2は2以上であることが好ましい。また第2の誘電体の材質については必ずしも限定されるわけではないが、好ましい例としてはSrTiO、CaTiO、MgSiO、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)およびこれらの2種以上の組み合わせを用いることができる。
本実施の形態において、前記線路部10における第1の誘電体中に分散した導体フィラーの割合は、線路部10の全体の4〜74体積%であってもよい。4%以上とすることで線路部の比誘電率E1が大幅に向上するとともに、伝送線路2における損失を抑え、より効率的に電磁波を伝搬させることが可能になる。また同様に74体積%以下とすることにより、伝送線路2における損失を抑え、より効率的に電磁波を伝搬させることが可能になる。なお導体フィラーの割合は、焼結後はアルキメデス法により測定される実際の比重と、誘電体部理論比重、金属部理論比重よりその体積%を算出することもできる。
本実施の形態において、前記線路部10における第1の誘電体中に分散した導体フィラーの大きさは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下であってもよい。5μm以下とすることで表皮効果による損失の増大を最小限に抑制することができ、より効率的に電磁波を伝搬させることが可能になる。なお導体フィラーの大きさの下限は求められないが、実用上0.01μm以下の導体フィラーを凝集させることなく均等に分散させることが困難であることから、導体フィラーの大きさは0.01μm以上であることが好ましい。また導体フィラーの大きさは、線路部を平面状に内部まで研磨し、走査型電子顕微(Scanning Electron Microscope:SEM)により5000倍10視野を観察し、そのSEM像における導体部の平均面積径より求められる。また導体フィラーは球状、扁平状、針状、柱状等いずれの形状であっても差し支えない。
本実施の形態において、前記伝送線路2における周囲誘電体部20の少なくとも一部は、磁性を有する誘電体すなわち磁性誘電体によって構成されていてもよい。言い換えると、周囲誘電体部20の少なくとも一部は、1より大きい比透磁率を有していてもよい。この場合、周囲誘電体部20の少なくとも一部(磁性誘電体)の比透磁率は、1.02以上であることが好ましい。周囲誘電体部20が1.02以上の比透磁率をもつことで、より効率的に電磁波を伝搬させることが可能になる。なお、本出願において、比透磁率とは、複素比透磁率の実部を言う。
周囲誘電体部20が磁性誘電体である場合における第2の誘電体を構成する誘電体材料としては、必ずしも限定されるわけではないが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、またはCaTiO、SrTiO、MgSiO、Alおよびこれらの2種以上の組み合わせ等の磁性を有さない誘電体材料中にニッケル(Ni)、パーマロイ(Fe−Ni合金)、鉄(Fe)およびそれらの合金よりなる金属磁性体粒子を分散させたものを用いることができる。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。また、本発明の電子部品は、本発明の伝送線路を用いて構成された共振器を備えたものに限らず、本発明の伝送線路を含むものであればよい。例えば、本発明の電子部品は、それぞれ本発明の伝送線路を用いて構成されたアンテナ、方向性結合器、整合回路、変成器等の、共振器以外の回路を備えたものであってもよい。
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、伝送線路の材料作製について詳細に説明する。ただし以下の実施例に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
[実施例1]
BaTiO、SrTiO、MnO粉末をモル比で0.25、0.75、0.002の割合で秤量し、純水と市販のアニオン系分散剤と共に、ボールミルで24時間混合を行い、混合スラリーを得た。混合スラリーを120℃で加熱乾燥した後、瑪瑙乳鉢で解砕し、#300メッシュふるいを通過させ整粒し、アルミナ坩堝に入れ1200〜1240℃の温度範囲内で2時間仮焼をし、第1の誘電体材料(0.25BaO・0.75SrO)TiO+0.002MnOを得た。
前記第1の誘電体材料を分取し、粒径1μmのPd金属粉末を、前記第1の誘電体材料とPd金属粉末を合わせた体積の30体積%となるように秤量し、エタノールと一緒にボールミルで24時間混合を行った。混合スラリーを80℃〜120℃で段階的に加熱乾燥した後、瑪瑙乳鉢で解砕し、#300メッシュふるいを通過させ整粒し、第1の誘電体材料と導体粉の混合品を得た。
前記の方法で得られた第1の誘電体材料と導体粉の混合粉に、市販のアクリル樹脂系ラッカー溶液を誘電体と金属の合計質量に対して樹脂固形分8質量%添加した後、瑪瑙乳鉢にて混練し、#300メッシュふるいを通過させ整粒し、造粒粉を得た。この造粒粉を金型に入れ、加圧成形し、円柱状の成形体試料を得た。この試料を空気中にて350℃で脱バインダー処理を施した後、1400℃で一定時間熱処理をして、第1の誘電体とその誘電体中に分散した導体フィラーより構成された線路部の焼結体を得た。
またMgCO、SiO粉末をモル比で2、1の割合で秤量し、純水と市販のアニオン系分散剤と共に、ボールミルで24時間混合を行い、混合スラリーを得た。混合スラリーを120℃で加熱乾燥した後、瑪瑙乳鉢で解砕し、#300メッシュふるいを通過させ整粒し、アルミナ坩堝に入れ1200〜1240℃の温度範囲内で2時間仮焼をし、第2の誘電体材料となるフォルステライトMgSiOを得た。
[実施例2]
CaCO、TiO粉末をモル比で1、1の割合で秤量し、第2の誘電体材料としてCaTiOを得たこと以外は、実施例1と同様の方法で伝送線路の材料を作製した。
[実施例3]
CaCO、SrCO、TiO粉末をモル比で0.9、0.1、1.0の割合で秤量し、第2の誘電体材料として(0.9CaO・0.1SrO)TiOを得たこと以外は、実施例1と同様の方法で伝送線路の材料を作製した。
[実施例4−14、比較例1]
粒径1μmのPd金属粉末を、第1の誘電体材料と混合する際に、表1に記したような体積割合で秤量・混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で伝送線路の材料を作製した。
Figure 2016027685
[実施例15−18]
第1の誘電体材料と混合させるPd金属粉末の粒径について、表1に記したように変化させたこと以外は、実施例1と同様の方法で伝送線路の材料を作製した。
[実施例19]
BaTiO、SrTiO、MnO粉末をモル比で0.45、0.55、0.002の割合で秤量し、第1の誘電体材料として(0.45BaO・0.55SrO)TiO+0.002MnOを得たこと以外は、実施例1と同様の方法で伝送線路の材料を作製した。
[実施例20]
BaTiO、SrTiO、MnO粉末をモル比で0.55、0.45、0.002の割合で秤量し、第1の誘電体材料として(0.55BaO・0.45SrO)TiO+0.002MnOを得たこと以外は、実施例1と同様の方法で伝送線路の材料を作製した。
[実施例21−27]
第1の誘電体材料と混合させる金属粉末の金属元素種について、表1に記したように変化させた。第1の誘電体材料と金属粉末を混合する際に、適宜焼結助剤としてLiOを加え、線路部焼結体を得る際の熱処理温度を900−1400℃の間で調整したこと、また線路部焼結体を得る際の熱処理について、適宜、空気中または窒素と水素の混合ガス雰囲気で行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で伝送線路の材料を作製した。
[実施例28]
第2の誘電体材料として以下に示すような作製法にて磁性誘電体を得たこと以外は、実施例1と同様の方法で伝送線路の材料を作製した。すなわち、まず、金属磁性粉末として、平均粒径0.3μmのパーマロイの粉末を用意し、ポリシクロオレフィン樹脂を、樹脂ワニスとして、金属磁性粉末含有量が3体積%になる量を添加して、高速遊星攪拌機(公転速度2000rpm、自転速度800rpm)にて5分間混合し、第2の誘電体材料として磁性をもつものを作製した。
[実施例29]
第2の誘電体材料として以下に示すような作製法にて磁性誘電体を得たこと以外は、実施例1と同様の方法で伝送線路の材料を作製した。
すなわち、まず、金属磁性粉末として、平均粒径0.3μmのパーマロイの粉末を用意し、ポリシクロオレフィン樹脂を、樹脂ワニスとして、金属磁性粉末含有量が20体積%になる量を添加して、高速遊星攪拌機(公転速度2000rpm、自転速度800rpm)にて5分間混合し、第2の誘電体材料として磁性をもつものを作製した。
[実施例30]
第2の誘電体材料として以下に示すような作製法にて磁性誘電体を得たこと以外は、実施例1と同様の方法で伝送線路の材料を作製した。
すなわち、まず、金属磁性粉末として、平均粒径0.3μmのパーマロイの粉末を用意し、ポリシクロオレフィン樹脂を、樹脂ワニスとして、金属磁性粉末含有量が40体積%になる量を添加して、高速遊星攪拌機(公転速度2000rpm、自転速度800rpm)にて5分間混合し、第2の誘電体材料として磁性をもつものを作製した。
[実施例31]
第2の誘電体材料として以下に示すような作製法にて磁性誘電体を得たこと以外は、実施例1と同様の方法で伝送線路の材料を作製した。
すなわち、ポリシクロオレフィン樹脂のみを高速遊星攪拌機(公転速度2000rpm、自転速度800rpm)にて5分間混合し、第2の誘電体材料を作製した。
<評価>
得られた第1、第2の誘電体、線路部焼結体の比誘電率、比透磁率について算出し、結果を表1に記した。また得られた伝送線路材料を用いて、図1に示したような伝送線路および電子部品形状を形成し、共振周波数と無負荷Q値について、各々測定し、結果を表1に記した。
[誘電特性の測定]
本実施形態に係る誘電体についての誘電特性は、日本工業規格「マイクロ波用ファインセラミックスの誘電特性の試験方法」(JIS R1627 1996年度)に従って測定することができる。
誘電特性の評価として、両端短絡形誘電体共振器法により共振周波数fを求めた。焼成体(焼結体)の寸法とfより、比誘電率を算出した。
[磁気特性の測定]
比透磁率の測定は、6mm×6mm×0.8mmの板状に加工した試験片を使用し、ネットワークアナライザ(アジレント・テクノロジー(株)製、HP8753D)と超高周波帯域透磁率測定装置(凌和電子(株)製、PMF−3000)を用いて測定した。
[伝送線路および電子部品形状での共振周波数と無負荷Q値]
図1に示したように、本実施の形態に係る電子部品1は、本実施の形態に係る伝送線路2を含んでいる。伝送線路2は、第1の誘電体とその誘電体中に分散した導体フィラーより構成され、第1の比誘電率をもつ線路部10と、第2の比誘電率を有する第2の誘電体よりなる周囲誘電体部20とを備えている。前記実施例において得られた伝送線路材料を用いて、この形状を形成し、共振周波数と無負荷Q値を各々測定し、表1に記した。表1には、線路部10に従来の伝送線路で使用されてきた金属Ag単体の導体電極を使用した場合の無負荷Q値:300と比較し、良否の判定を行った結果も記載した。
表1の結果から、実施例1−27はいずれも発明の範囲内にあるため、共振周波数が1GHz〜10GHzの範囲内となり、無負荷Q値が、線路部に金属Ag単体の導体電極を使用し、表皮効果の影響を大きく受けてしまう場合のQ値300より大きくなることがわかる。
比較例1の結果から、導体フィラーを混合させず、誘電体のみの線路部焼結体を使用した場合、線路部の比誘電率E1が580と低く、共振周波数が12GHzと1GHz〜10GHzの範囲外となってしまうことがわかる。また無負荷Q値が290と、線路部に金属Ag単体の導体電極を使用した場合のQ値300より低くなってしまうことがわかる。
実施例1、2、3の結果から、第2の誘電体の比誘電率が線路部の比誘電率の1/10以下となったときに、無負荷Q値がより大きくなっていることがわかる。
実施例1、4−14の結果から、線路部の導体フィラーの体積割合を4%以上とすることで、線路部の比誘電率E1が第1の誘電体の比誘電率に対してより大きくなり、また無負荷Q値も大きくなり、明確な効果が得られていることがわかる。
また線路部の導体フィラーの体積割合を74%以下とすることで、無負荷Q値がより大きくなっていることがわかる。
実施例1、15−18の結果から、線路部の導体フィラーの大きさを5μm以下とした場合に、表皮効果の影響を最小限に抑えることができ、無負荷Q値がより大きくなっていることがわかる。
実施例1、19、20の結果から、第1の誘電体の材質を変更した場合でも、共振周波数が1GHz〜10GHzの範囲内となり、無負荷Q値が線路部に金属Ag単体の導体電極を使用した場合のQ値300より大きくなることがわかる。
実施例1、21−27の結果から、線路部の導体フィラーの金属元素種を変更した場合でも、共振周波数が1GHz〜10GHzの範囲内となり、無負荷Q値が線路部に金属Ag単体の導体電極を使用した場合のQ値300より大きくなることがわかる。
実施例28、29、30、31の結果から、第2の誘電体において磁性を持たせ、その比透磁率が1.02以上となった場合に無負荷Q値がより大きくなっていることがわかる。
[符号の説明]
1・・・電子部品
2・・・伝送線路
10・・・線路部
20・・・周囲誘電体

Claims (8)

  1. 第1の誘電体とその誘電体中に分散した導体フィラーより構成され、
    第1の比誘電率をもつ線路部と、
    第2の比誘電率を有する第2の誘電体よりなる周囲誘電体部とを備えた伝送線路であって、
    前記周囲誘電体部は、前記線路部における電磁波の伝搬方向に直交する断面において、線路部の周囲に存在し、
    前記第1の比誘電率は600以上であり、
    前記第2の比誘電率は、前記第1の比誘電率よりも小さいことを特徴とする伝送線路。
  2. 前記第2の比誘電率は、前記第1の比誘電率の1/10以下であることを特徴とする請求項1記載の伝送線路。
  3. 前記線路部は、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を伝搬させることを特徴とする請求項1または2に記載の伝送線路。
  4. 前記第1の誘電体中に分散した導体フィラーの割合は、
    前記線路部全体の4〜74体積%であることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載の伝送線路。
  5. 前記第1の誘電体中に分散した導体フィラーの大きさが5μm以下であることを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載の伝送線路。
  6. 前記周囲誘電体部は、1.02以上の比透磁率を有することを特徴とする請求項1〜5いずれか一項に記載の誘電体線路。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の伝送線路を含むことを特徴とする電子部品。
  8. 1GHz〜10GHzの範囲内の共振周波数を有する共振器を備え、前記共振器は、請求項1〜6いずれか一項に記載の伝送線路を用いて構成されていることを特徴とする電子部品。
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