JP2016026948A - 船舶甲板用防熱性床構造体の施工方法及びその構造体 - Google Patents

船舶甲板用防熱性床構造体の施工方法及びその構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】 火災等による加熱時においても防熱性床構造体の貫通クラックを抑制し、安定した防熱性を有する防熱性床構造体の施工方法を提供すること目的とする。【解決手段】 接着材層形成工程と、モルタル施工第一工程と、硬化体形成第一工程と、を有する防熱性床構造体の施工方法であって、当該施工方法が、さらに、第一の防熱性モルタル硬化体層の上面に、補強材層を設ける補強材設置工程と、補強材層の上面に、防熱性水硬性組成物と水とを混練して調製した第二の防熱性モルタル組成物を施工するモルタル施工第二工程と、第二の防熱性モルタル組成物を硬化させて、第二の防熱性モルタル硬化体層を形成する硬化体形成第二工程と、を有する。【選択図】 図1

Description

本発明は、防熱性を必要とする船舶の甲板床構造物等に用いられる甲板用接着材と流動性を有する防熱性水硬性組成物と補強材を用いた船舶甲板用防熱性床構造体の施工方法、及びその構造体に関する。
防熱性が求められる船舶用のA60級仕切り甲板などの床構造体において、防熱性を有する乾式ボードを敷き、モルタル等で仕上げる工法が一般的に用いられる。
しかし、実際の下地鋼板は溶接部の存在により、凹凸があるため、乾式ボードでは部分的な浮き部が発生し、荷重によりクラックが発生するといった問題がある。また、乾式ボードは、設置に時間がかかること、ジョイント部分の隙間や段差を無くす等の理由により、保護モルタルによる仕上げが入るなど、複数の工程を必要とするため、施工が複雑で時間を要する。また、細かく入り組んだ場所では乾式ボードを切って使用する必要があり、廃材の発生によるロスも発生することから、乾式ボードの代わりに湿式施工による、セメント、混和材、吸水性を有する中空骨材、補強材、混和剤、および水を含む密度が0.6〜1.2g/cmであり、且つ吸水性を有する中空骨材が容積比で55%〜90%含む断熱材組成物と、その断熱性組成物と補強仕上材層から成る断熱性構造体の施工方法が特許文献1に開示されている。
特許文献2には、軽量で耐水性や断熱性を有し、特にクラック発生を抑制することができる、ポルトランドセメント、アルミナセメント、及び石膏の和に対して0.15〜1.5重量倍のポリマーディスパージョンと骨材として軽量発泡骨材(バーミキュライト、パーライト、シリカバルーン等の無機系発泡体)を配合してなるモルタル組成物が開示されている。
特許文献3には、水硬性成分としてアルミナセメント、ポルトランドセメント、石膏を含み、船舶甲板等の鋼板下地への適応が可能な、施工性に優れたレベリング材を使用した複合床構造体及びその施工方法が開示されている。
特開2007−290946号公報 特開昭61−40862号公報 特開2010−77702号公報
しかしながら、防熱材を湿式とした上記発明は、平坦性及び平滑性のある床面の形成に高い技能と長い施工時間が必要であり、施工後に次工程へ移行するための歩行可能な硬化表面状態となるまでに長い養生期間が必要であることから、さらなる改良を必要としていた。また、湿式の防熱材に関しては、階下での火災時に、セメント水和物の分解に伴う収縮等により、ひび割れ(クラック)が発生し、そのクラックが防熱材層を貫通することにより防熱材の表面温度上昇を招き、本来の断熱効果(防熱性)を妨げるリスクが高くなるため、火炎による貫通クラックを抑制することが課題であった。
そこで、本発明は、船舶甲板床との隙間、浮き、クラックを抑制し、良好な流動性による優れた施工性や短時間で平坦性及び平滑性のある床面を形成することができ、優れた速硬性により次工程を早期に実現でき、火災等による加熱時においても防熱性床構造体の貫通クラックを抑制し、安定した防熱性を有する防熱性床構造体の施工方法を提供すること目的とする。
上記目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明者らは、接着材施工工程と、モルタル施工第一工程と、硬化体形成第一工程を有する防熱性床構造体の施工方法において、さらに、特定の補強材を設置する補強材設置工程と、モルタル施工第二工程と、硬化体形成第二工程と、を有し、接着材層の厚み及び全体の防熱性硬化体層の厚みを調製することで、さらに火災時の昇温においても防熱性硬化体層を貫通するクラックの発生を抑制できることで、安定した防熱性能を発揮でき、船舶甲板床との十分な接着性を有し、低火炎伝搬性にも優れた防熱性床構造体を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、船舶甲板床上面に、甲板用接着材を塗布し、接着材層を形成する接着材層形成工程と、接着材層の上面に、防熱性水硬性組成物と水とを混練して調製した第一の防熱性モルタル組成物を施工するモルタル施工第一工程と、第一の防熱性モルタル組成物を硬化させて、第一の防熱性モルタル硬化体層を形成する硬化体形成第一工程と、を有する防熱性床構造体の施工方法であって、当該施工方法が、さらに、第一の防熱性モルタル硬化体層の上面に、補強材層を設ける補強材設置工程と、補強材層の上面に、防熱性水硬性組成物と水とを混練して調製した第二の防熱性モルタル組成物を施工するモルタル施工第二工程と、第二の防熱性モルタル組成物を硬化させて、第二の防熱性モルタル硬化体層を形成する硬化体形成第二工程と、を有し、接着材層が、厚み0mmを超えて、0.45mm以下の範囲で形成され、補強材層が、メタルラスを少なくとも2枚を積層して設置され、第一の防熱性硬化体層の厚み及び第二の防熱性硬化体層の厚みを合わせた、全厚みが20〜40mmである、防熱性床構造体の施工方法を提供する。
本発明の防熱性床構造体の施工方法の好ましい態様[(1)〜(8)]を以下に示す。本発明では、これらの態様を適宜組み合わせることがより好ましい。
(1)本実施形態の防熱性床構造体の施工方法に用いられる補強材層が、少なくとも2枚のメタルラスを互いに直行する方向に積層して設置されてなることが好ましい。これにより、貫通クラックの発生をより高度に抑制できる。
(2)本実施形態の防熱性床構造体の施工方法の接着材層形成工程の後に、船舶甲板床から上方に伸びる突出部の側面に接するように緩衝材を設置して緩衝帯を形成する緩衝帯形成工程を有し、緩衝材の密度が15〜150kg/mであり、緩衝帯の幅が5〜35mmであることが好ましい。これにより、突出部により働く熱応力を緩和して、火災等の加熱時においてもクラック発生を抑制することができる。
(3)本実施形態の防熱性床構造体の施工方法に用いられる防熱性水硬性組成物が、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分と、無機粉体と、軽量骨材と、流動化剤とを含み、当該無機粉体が、高炉スラグ微粉末及び水酸化アルミニウム微粉末から選ばれる一種又は二種以上であり、当該軽量骨材が、ガラスを主成分とする原料を焼成して得られたものであり、吸水時間2時間における吸水率が9%以下であることが好ましい。これにより、船舶甲板床との隙間、浮き、クラックを抑制し、良好な流動性による優れた施工性や短時間で平坦性及び平滑性のある床面を形成することをより確実にする。
(4)本実施形態の防熱性床構造体の施工方法に用いられる防熱性水硬性組成物中の水硬性成分が、水硬性成分100質量%中にアルミナセメント30〜60質量%、ポルトランドセメント15〜50質量%及び石膏10〜40質量%含むことが好ましい。これにより、より優れた施工性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。また、より優れた速硬性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができ、施工後の早期開放がより確実となる。また、良好な強度特性や低収縮性を有する防熱性モルタル硬化体を得ることができる。
(5)本実施形態の防熱性床構造体の施工方法に用いられる防熱性水硬性組成物が、水硬性成分100質量部に対して、無機粉体30〜200質量部、軽量骨材10〜120質量部含むことが好ましい。これにより、より優れた施工性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。また、より軽量で防熱性に優れる防熱性モルタル硬化体を得ることができる。
(6)本実施形態の防熱性床構造体の施工方法に用いられる防熱性水硬性組成物中の軽量骨材が、粒子径800μm以上の粒子を含まず、且つ粒子径212μm以上であり且つ600μm未満である粒子の質量割合が85〜100質量%であり、見かけ比重が0.15〜0.8kg/Lであることが好ましい。これにより、より優れた施工性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。また、より軽量で防熱性に優れる防熱性モルタル硬化体を得ることができる。
(7)本実施形態の防熱性床構造体の施工方法に用いられる防熱性水硬性組成物が、さらに増粘剤、消泡剤、凝結調整剤及び樹脂粉末から選ばれる成分を1種以上含むことが好ましい。これにより、より良好な表面性状のモルタル組成物の硬化体が得られる。
(8)本実施形態の防熱性床構造体の施工方法に用いられる甲板用接着材が、アルミナセメント、細骨材及び無機充填材を含むセメント組成物、及び合成樹脂エマルジョンを含み、セメント組成物100質量部に対して、合成樹脂エマルジョン中の固形分量が1〜50質量部であり、合成樹脂エマルジョンは、(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂成分及びエチレン・酢酸ビニル系共重合樹脂成分の群から選ばれる成分を少なくとも1種類含むことが好ましい。これにより、より優れた接着性を有する船舶甲板用接着材を得ることができる。また、より低火炎伝搬性に優れる船舶甲板用接着材を得ることができる。
また、本発明では、上述の防熱性床構造体の施工方法により得られる防熱性床構造体を提供する。本発明の防熱性床構造体は、上記特徴を有する施工方法により得られることから、火災等による加熱時においても貫通クラックを抑制し、安定した防熱性を有する。
本発明によれば、優れた流動性、施工性及び平滑性を有し、軽量で良好な強度特性を有し、収縮が小さく、クラックの発生を抑制できる防熱性モルタル硬化体を形成可能で、優れた速硬性により施工後の早期開放(次工程への早期移行)が可能であり、火災等による加熱時においても防熱性床構造体の貫通クラックを抑制し、安定した防熱性を有する防熱性床構造体の施工方法を提供することができる。また、この施工方法により、船舶甲板床との十分な接着性を有し、火災等による加熱時においても防熱性床構造体の貫通クラックを抑制し、安定した防熱性を有する防熱性床構造体を提供することができる。
メタルラス(平ラス)を示す模式図である。 2枚のメタルラス(平ラス)を互いに直行する方向に積層して設置した模式図である。 耐火試験用試験体を示す模式図である。 耐火試験装置を示す模式図であり、(a)は図4(b)のX−X線断面図であり、(b)は正面図である。 耐火試験装置に試験体を設置した模式図であり、(a)は図5(b)のX−X線断面図であり、(b)は正面図である。 (a)は長さ変化測定装置を示す模式図であり、(b)は図6(a)のX−X線断面図である。 第一の実施形態における防熱性床構造体の構成(積層断面)を示す模式図である。 第二の実施形態における防熱性床構造体の構成を示す模式図であり、(a)は突出部を含む積層断面図であり、(b)は図8(a)のX−X線断面図である。 第二の実施形態における防熱性床構造体の構成を示す模式図であり、図8(b)の突出部の一つの側面が壁と接する場合の断面図である。
本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
<防熱性床構造体の施工方法>
(第一の実施形態)
本発明の防熱性床構造体の施工方法の好適な第一の実施形態について以下に説明する。本実施形態の防熱性床構造体の施工方法は、防熱性を必要とする船舶甲板床に用いられる施工方法であり、接着材層形成工程と、モルタル施工第一工程と、硬化体形成第一工程と、を有し、さらに、補強材設置工程と、モルタル施工第二工程と、硬化体形成第二工程と、を含む。以下、各工程の詳細について図7を用いて説明する。
接着材層形成工程は、図7に示すように船舶甲板床30上面に、甲板用接着材を塗布して接着材層31を形成する工程である。具体的には、まず、船舶甲板床30の上面を箒または掃除機等を用いて埃等を清掃する。次に、甲板用接着材を船舶甲板床の上面に塗布(施工)し、乾燥させて接着材層31を形成する。塗布にあたっては刷毛やコテ等を適宜選択して用いることができる。船舶甲板用接着材の塗布量は、接着材層31の厚みが0mmを超えて、0.45mm以下の範囲で形成される塗布量とする。上述の範囲にすることによって、船舶甲板床30との優れた接着性を確保しつつ、低火炎伝搬性に優れた接着材層31を得ることができる。また、接着材層31の厚みが、0.1〜0.4mmであることが好ましく、0.15〜0.35mmであることがより好ましく、0.20〜0.30mmであることが更に好ましい。上記甲板用接着材の詳細な説明については後述する。
モルタル施工第一工程は、上記接着材層31の上面に、防熱性水硬性組成物と水とを混練して調製した第一の防熱性モルタル組成物を施工する工程である。具体的には、防熱性水硬性組成物と水とを所定量配合して混練して第一の防熱性モルタル組成物を調製し、接着材層31の上面に施工(流し込み)する。その後、コテあるいはトンボを用いて第一の防熱性モルタル組成物表面が平坦及び平滑になるように表面を均す作業を行い、第一の防熱性モルタル組成物表面を平坦及び平滑にする。混練には、ハンドミキサーやモルタルミキサー等を適宜選択して用いることができる。また、混練時間は、2〜5分間が好ましい。
さらに、後述する硬化体形成第一工程及び硬化体形成第二工程によりそれぞれ形成される、第一の防熱性モルタル硬化体層32の厚み及び第二の防熱性モルタル硬化体層34の厚みを合わせた、全厚みが20〜40mmであることから、第一の防熱性モルタル組成物の施工厚みは、好ましくは2〜38mmであり、より好ましくは5〜35mmであり、さらに好ましくは10〜30mmである。上記全厚みは、好ましくは22〜35mmであり、より好ましくは24〜32mmであり、さらに好ましくは25〜30mmである。第一の防熱性モルタル硬化体層32の厚み及び第二の防熱性モルタル硬化体層34の厚みを合わせた、全厚みが上述の範囲であることによって、防熱性と軽量性をバランス良く得ることができる。上記防熱性水硬性組成物及び防熱性モルタル組成物の詳細な説明については後述する。
硬化体形成第一工程は、上記第一の防熱性モルタル組成物を硬化させて、第一の防熱性モルタル硬化体層32を形成する工程である。具体的には、施工した第一の防熱性モルタル組成物が水和反応により表面硬度が次工程に移行できる程度に硬化する工程であり、当該表面硬度が10以上になれば次工程に移行できる。また、材齢3時間の第一の防熱性モルタル硬化体層32の表面硬度が、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上であり、さらに好ましくは30以上であり、特に好ましくは40以上である。表面硬度が上述の範囲であることによって、工程時間が短く、また第一の防熱性モルタル硬化体層32及び後述する補強材層33と第二の防熱性モルタル硬化体層34とがより一体化し、強固な構造体を形成できる。防熱性モルタル硬化体の詳細な説明については後述する。
補強材設置工程は、第一の防熱性モルタル硬化体層32の上面に、補強材層33を設ける工程である。具体的には、補強材としてメタルラスを少なくとも2枚を積層して設置する。少なくとも2枚重ねて設置することにより、より強い補強効果を得ることができる。メタルラスが1枚である場合、補強効果が不十分となり、火災等の加熱によって防熱性モルタル硬化体に収縮応力が働き、貫通クラックが発生し、クラック発生部付近の表面の温度上昇を大きくし、防熱性を低下させる恐れがある。
メタルラスとしては、平ラス、波ラス、コブラス等、市販のものを使用できるが、JIS A 5505−1995に規定されるメタルラスを用いることが好ましい。また、施工厚みや施工性の観点から図1に示す平ラスが好ましく、Rは26〜32mm及びSは13〜16mmが好ましい。また、メタルラスの薄板の厚さは、好ましくは0.4〜0.8mmであり、より好ましくは0.4〜0.7mmであり、更に好ましくは0.4〜0.6mmであり、特に好ましくは0.4〜0.55mmである。メタルラスの薄板の厚みが上述の範囲であることによって、十分な補強効果が得られるとともに、施工時の切断加工も容易となる。
メタルラスを少なくとも2枚を積層して設置する際には、上下に位置するメタルラスの網目を図2に示すように互いに直行する方向に積層して設置することが好ましい。これにより、火災等の加熱による収縮応力を分散させてより補強効果を向上することができる。
モルタル施工第二工程は、上記補強材層33の上面に、防熱性水硬性組成物と水とを混練して調製した第二の防熱性モルタル組成物を施工する工程である。具体的には、上記モルタル施工第一工程と同様の防熱性水硬性組成物と水とを所定量配合して混練して第二の防熱性モルタル組成物を調製し、補強材層33の上面に施工(流し込み)する。その際、第二の防熱性モルタル組成物は、補強材層33の隙間を埋めるように浸透し、第一の防熱性モルタル硬化体層32と接する。その後、コテあるいはトンボを用いて第二の防熱性モルタル組成物表面が平坦及び平滑になるように表面を均す作業を行い、第二の防熱性モルタル組成物表面を平坦及び平滑にする。混練には、ハンドミキサーやモルタルミキサー等を適宜選択して用いることができる。また、混練時間は、2〜5分間が好ましい。
硬化体形成第二工程は、上記第二の防熱性モルタル組成物を硬化させて、第二の防熱性モルタル硬化体層34を形成する工程である。具体的には、施工した第二の防熱性モルタル組成物が水和反応により表面硬度が次工程に移行できる程度に硬化する工程であり、当該表面硬度が10以上になれば次工程に移行できる。また、材齢3時間の第二の防熱性モルタル硬化体層34の表面硬度が、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上であり、さらに好ましくは30以上であり、特に好ましくは40以上である。表面硬度が上述の範囲であることによって、工程時間が短く、また第一の防熱性モルタル硬化体層32、補強材層及び第二の防熱性モルタル硬化体層34がより一体化し、強固な構造体を形成できる。防熱性モルタル硬化体の詳細な説明については後述する。ここで、第二の防熱性モルタル硬化体層34の下層側は補強材層33の隙間を埋めるように形成され、第一の防熱モルタル硬化体層32と一体化している。言い換えれば、補強材層33は第二の防熱性モルタル硬化体層34の下層側に取り込まれた状態となっている。
本実施形態の防熱性床構造体の施工方法は、さらに仕上げ材施工工程を好適に用いることができる。具体的には、第二の防熱性モルタル硬化体層34の上面に建築用途で用いられるシートやタイル等の張り物及び塗り床材等の仕上げ材を施工する工程である。なかでも難燃性を有する仕上げ材を用いることが好ましい。
以上述べたような施工方法により、防熱性床構造体を得ることができる。防熱性床構造体を構成する防熱性モルタル硬化体は、軽量で防熱性に優れ、良好な強度特性を有し、収縮が小さく、クラックの発生を抑制できる。このため、防熱性床構造体は耐久性に優れ、船舶甲板床との十分な接着性を有する。また、火災等による加熱時においても貫通クラックを抑制し、安定した防熱性を有する。
また、本実施形態の施工方法は、特定の防熱性水硬性組成物及び防熱性モルタル組成物を用いていることから、優れた流動性、施工性及び平滑性を有し、さらに、施工後の早期開放(次工程への早期移行)が可能な優れた速硬性を有する。
(第二の実施形態)
次に、本発明の防熱性床構造体の施工方法の好適な第二の実施形態について以下に説明する。本実施形態の防熱性床構造体の施工方法は、防熱性を必要とする船舶甲板床に用いられる施工方法であり、接着材層形成工程の後に、緩衝帯形成工程を有し、モルタル施工第一工程と、硬化体形成第一工程と、を有し、さらに、補強材設置工程と、モルタル施工第二工程と、硬化体形成第二工程と、を含む。以下、各工程の詳細について図8及び図9を用いて説明する。
接着材層形成工程は、図8に示すように船舶甲板床30上面に、甲板用接着材を塗布して接着材層31を形成する工程である。具体的には、まず、船舶甲板床の上面を箒または掃除機等を用いて埃等を清掃する。次に、甲板用接着材を船舶甲板床30の上面に塗布(施工)し、乾燥させて接着材層31を形成する。塗布にあたっては刷毛やコテ等を適宜選択して用いることができる。船舶甲板用接着材の塗布量は、接着材層31の厚みが0mmを超えて、0.45mm以下の範囲で形成される塗布量とする。上述の範囲にすることによって、船舶甲板床30との優れた接着性を確保しつつ、低火炎伝搬性に優れた接着材層31を得ることができる。また、接着材層31の厚みが、0.1〜0.4mmであることが好ましく、0.15〜0.35mmであることがより好ましく、0.20〜0.30mmであることが更に好ましい。上記甲板用接着材の詳細な説明については後述する。
緩衝帯形成工程は、上記接着材層31が形成された後に、船舶甲板床30から上方に伸びる突出部40の側面に接するように緩衝材を設置して緩衝帯35を形成する工程である。緩衝帯35は図8(b)のように、突出部40の側面に接し、突出部40の四つの側面に接するように特定の幅L3を有して形成される。緩衝材としては市販のものを使用でき、例えばJIS A 9504「人造鉱物繊維保温材」又はJIS A 9510「無機多孔質保温材」に規定される製品を用いることができる。中でも、グラスウール製やケイ酸カルシウム製の製品が好ましい。緩衝性の観点から密度が15〜150kg/mであり、好ましくは18〜100kg/mであり、より好ましくは20〜40kg/mであり、更に好ましくは22〜35kg/mである。また、緩衝材としては、不燃認定を受けたものが好ましく、70℃における熱伝導率が0.050W/(m・K)以下又は100℃における熱伝導率が0.054W/(m・K)以下のものが好ましい。緩衝材の設置により形成される緩衝帯35の幅L3は、その優れた緩衝性を効率良く奏するために5〜35mmであり、好ましくは10〜30mmであり、より好ましくは15〜25mmである。図8(a)のように緩衝帯35の表面は後述する補強材層33よりも上に位置し、且つ後述する第二の防熱性モルタル硬化体層34の表面を超えない程度に位置することが好ましい。言い換えれば、第二の防熱性モルタル硬化体層34の表面から緩衝帯35の表面の距離L1と緩衝帯35の厚みL2の合計は、後述する第一の防熱性モルタル硬化体層32の厚み及び第二の防熱性モルタル硬化体層34の厚みを合わせた、全厚みを超えないことが好ましい。したがって、第二の防熱性モルタル硬化体層34の表面から緩衝帯35の表面の距離L1が0〜5mmであることが好ましく、0.5〜4mmであることがより好ましく、1.0〜3.0mmであることが更に好ましい。また、図9のように突出部40の一つの側面が壁41と接する場合、壁41と接しない他の側面に接するように緩衝帯35を形成する。その際、緩衝帯35の端部は壁41と接する。このように、船舶甲板床30から上方に伸びる突出部40の側面に接するように緩衝材を設置して緩衝帯35を形成することにより、突出部40により働く熱応力を緩和して、火災等の加熱時においてもクラック発生を抑制することができる。
モルタル施工第一工程は、上記接着材層31の上面に、防熱性水硬性組成物と水とを混練して調製した第一の防熱性モルタル組成物を施工する工程である。具体的には、防熱性水硬性組成物と水とを所定量配合して混練して第一の防熱性モルタル組成物を調製し、接着材層31の上面に施工(流し込み)する。その際、緩衝帯35の表面が後述する補強材層33よりも上に位置するように、第一の防熱性モルタル組成物を施工する。その後、コテあるいはトンボを用いて第一の防熱性モルタル組成物表面が平坦及び平滑になるように表面を均す作業を行い、第一の防熱性モルタル組成物表面を平坦及び平滑にする。混練には、ハンドミキサーやモルタルミキサー等を適宜選択して用いることができる。また、混練時間は、2〜5分間が好ましい。
さらに、後述する硬化体形成第一工程及び硬化体形成第二工程によりそれぞれ形成される、第一の防熱性モルタル硬化体層32の厚み及び第二の防熱性モルタル硬化体層34の厚みを合わせた、全厚みが20〜40mmであることから、第一の防熱性モルタル組成物の施工厚みは、好ましくは2〜38mmであり、より好ましくは5〜35mmであり、さらに好ましくは10〜30mmである。上記全厚みは、好ましくは22〜35mmであり、より好ましくは24〜32mmであり、さらに好ましくは25〜30mmである。また、第一のモルタル硬化体層32の厚みは、緩衝帯35の厚みL2よりも小さい。第一の防熱性モルタル硬化体層32の厚み及び第二の防熱性モルタル硬化体層34の厚みを合わせた、全厚みが上述の範囲であることによって、防熱性と軽量性をバランス良く得ることができる。上記防熱性水硬性組成物及び防熱性モルタル組成物の詳細な説明については後述する。
硬化体形成第一工程は、上記第一の防熱性モルタル組成物を硬化させて、第一の防熱性モルタル硬化体層32を形成する工程である。具体的には、施工した第一の防熱性モルタル組成物が水和反応により表面硬度が次工程に移行できる程度に硬化する工程であり、当該表面硬度が10以上になれば次工程に移行できる。また、材齢3時間の第一の防熱性モルタル硬化体層32の表面硬度が、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上であり、さらに好ましくは30以上であり、特に好ましくは40以上である。表面硬度が上述の範囲であることによって、工程時間が短く、また第一の防熱性モルタル硬化体層32及び後述する補強材層33と第二の防熱性モルタル硬化体層34とがより一体化し、強固な構造体を形成できる。防熱性モルタル硬化体の詳細な説明については後述する。
補強材設置工程は、第一の防熱性モルタル硬化体層32の上面に、補強材層33を設ける工程である。また、補強材層33は、緩衝帯35に緩衝しない(重ならない)ように設置するが、緩衝帯35の効果を阻害しない程度に補強材層33を緩衝帯35に緩衝する(重ねる)ことは可能である。補強材層33は具体的には、補強材としてメタルラスを少なくとも2枚を積層して設置する。少なくとも2枚重ねて設置することにより、より強い補強効果を得ることができる。メタルラスが1枚である場合、補強効果が不十分となり、火災等の加熱によって防熱性モルタル硬化体に収縮応力が働き、貫通クラックが発生し、クラック発生部付近の表面の温度上昇を大きくし、防熱性を低下させる恐れがある。
メタルラスとしては、平ラス、波ラス、コブラス等、市販のものを使用できるが、JIS A 5505−1995に規定されるメタルラスを用いることが好ましい。また、施工厚みや施工性の観点から図1に示す平ラスが好ましく、Rは26〜32mm及びSは13〜16mmが好ましい。また、メタルラスの薄板の厚さは、好ましくは0.4〜0.8mmであり、より好ましくは0.4〜0.7mmであり、更に好ましくは0.4〜0.6mmであり、特に好ましくは0.4〜0.55mmである。メタルラスの薄板の厚みが上述の範囲であることによって、十分な補強効果が得られるとともに、施工時の切断加工も容易となる。
メタルラスを少なくとも2枚を積層して設置する際には、上下に位置するメタルラスの網目を図2に示すように互いに直行する方向に積層して設置することが好ましい。これにより、火災等の加熱による収縮応力を分散させてより補強効果を向上することができる。
モルタル施工第二工程は、上記補強材層33の上面に、防熱性水硬性組成物と水とを混練して調製した第二の防熱性モルタル組成物を施工する工程である。具体的には、上記モルタル施工第一工程と同様の防熱性水硬性組成物と水とを所定量配合して混練して第二の防熱性モルタル組成物を調製し、補強材層33の上面に施工(流し込み)する。その際、第二の防熱性モルタル組成物が上記緩衝帯35の表面よりも低くならないように施工する。言い換えれば、緩衝帯35の表面が後述する第二の防熱性モルタル硬化体層34の表面を超えない程度に位置するように、第二の防熱性モルタル組成物を施工する。より詳細には、第二の防熱性モルタル硬化体層34の表面から緩衝帯35の表面の距離L1が0〜5mmであることが好ましく、0.5〜4mmであることがより好ましく、1.0〜3.0mmであることが更に好ましい。また、第二の防熱性モルタル組成物は、補強材層33の隙間を埋めるように浸透し、第一の防熱性モルタル硬化体層32と接する。その後、コテあるいはトンボを用いて第二の防熱性モルタル組成物表面が平坦及び平滑になるように表面を均す作業を行い、第二の防熱性モルタル組成物表面を平坦及び平滑にする。混練には、ハンドミキサーやモルタルミキサー等を適宜選択して用いることができる。また、混練時間は、2〜5分間が好ましい。
硬化体形成第二工程は、上記第二の防熱性モルタル組成物を硬化させて、第二の防熱性モルタル硬化体層34を形成する工程である。具体的には、施工した第二の防熱性モルタル組成物が水和反応により表面硬度が次工程に移行できる程度に硬化する工程であり、当該表面硬度が10以上になれば次工程に移行できる。また、材齢3時間の第二の防熱性モルタル硬化体層34の表面硬度が、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上であり、さらに好ましくは30以上であり、特に好ましくは40以上である。表面硬度が上述の範囲であることによって、工程時間が短く、また第一の防熱性モルタル硬化体層32、補強材層33及び第二の防熱性モルタル硬化体層34がより一体化し、強固な構造体を形成できる。防熱性モルタル硬化体の詳細な説明については後述する。ここで、第二の防熱性モルタル硬化体層34の下層側は補強材層33の隙間を埋めるように形成され、第一の防熱モルタル硬化体層32と一体化している。言い換えれば、補強材層33は第二の防熱性モルタル硬化体層34の下層側に取り込まれた状態となっている。
本実施形態の防熱性床構造体の施工方法は、さらに仕上げ材施工工程を好適に用いることができる。具体的には、第二の防熱性モルタル硬化体層34の上面に建築用途で用いられるシートやタイル等の張り物及び塗り床材等の仕上げ材を施工する工程である。なかでも難燃性を有する仕上げ材を用いることが好ましい。
以上述べたような施工方法により、防熱性床構造体を得ることができる。防熱性床構造体を構成する防熱性モルタル硬化体は、軽量で防熱性に優れ、良好な強度特性を有し、収縮が小さく、クラックの発生を抑制できる。このため、防熱性床構造体は耐久性に優れ、船舶甲板床との十分な接着性を有する。また、火災等による加熱時においても貫通クラックを抑制し、安定した防熱性を有する。さらに、船舶甲板床30から上方に伸びる突出部40の側面に接するように緩衝材を設置して緩衝帯35を形成することにより、突出部40により働く熱応力を緩和して、火災等の加熱時においてもクラック発生を抑制することができる。
また、本実施形態の施工方法は、特定の防熱性水硬性組成物及び防熱性モルタル組成物を用いていることから、優れた流動性、施工性及び平滑性を有し、さらに、施工後の早期開放(次工程への早期移行)が可能な優れた速硬性を有する。
次に、本実施形態の防熱性床構造体の施工方法に用いられる甲板用接着材、防熱性水硬性組成物、防熱性モルタル組成物及び防熱性モルタル硬化体の一例を説明する。
<甲板用接着材>
上記甲板用接着材は、アルミナセメント、細骨材及び無機充填材を含むセメント組成物、及び合成樹脂エマルジョンを含むことが好ましい。
アルミナセメントは、鉱物組成の異なるものが数種知られ市販されているが、それらの主成分はモノカルシウムアルミネート(CA)であり、市販品はその種類によらず使用することができる。なかでも、2800〜4000cm/gのブレーン比表面積を有するアルミナセメントを用いることが好ましい。アルミナセメントのブレーン比表面積は、JIS R 2521:1995「耐火物用アルミナセメントの物理試験方法」に準じて求められる。
細骨材としては、表面精度の面から7〜8号の使用が適当であり、最大粒子径が425μm以下であり、細骨材100質量%中に300μm超の粒子径を有する粗粒分を5質量%未満含むことが好ましい。このような細骨材として、珪砂、川砂、陸砂、海砂、砕砂等の砂類、スラグ細骨材、再生細骨材、から適宜選択して用いることができる。特に細骨材としては、珪砂、川砂、陸砂、海砂及び砕砂等の砂類から選択したものを好適に用いることができる。
細骨材の粒子径は、JIS Z 8801:2006に規定される呼び寸法の異なる数個の篩いを用いて測定することができる。また、本発明において、「300μm超の粒子径を有する粗粒分」とは、300μm篩いを用いたときの篩上残分の粒子の質量割合のことをいう。
細骨材中に300μm超の粒子径を有する粗粒分を5質量%以上含む場合、下地接着モルタルの施工性が低下する傾向にある。上記粗粒分の下限値は特に制限がなく、0質量%であってもよい。優れた自己流動性を得るため、細骨材中の上記粗粒分は、
より好ましくは0〜5質量%であり、
さらに好ましくは0〜2質量%であり、
特に好ましくは0〜1質量%である。
無機充填材は、特に、酸化チタン等の無機顔料、又はタルク微粉末等の層状珪酸塩であるフィロケイ酸塩鉱物微粉末から選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。
フィロケイ酸塩鉱物微粉末としては、タルク、蛇紋岩、雲母、パイロフィライを使用することができるが、特にタルクが好ましい。さらに、作業性及び増粘性の面から5〜20μm程度の平均粒子径を持つものの使用が好ましい。平均粒子径が上述の範囲であることによって、良好な強度特性を有する甲板用接着材を得ることができる。
無機顔料としては、酸化チタンやカーボンブラックを使用することが好ましい。
甲板用接着材に含まれるセメント組成物の配合割合は、アルミナセメント100質量部に対して、細骨材150〜300質量部、無機充填材1〜100質量部含むことが好ましく、細骨材170〜280質量部、無機充填材1〜75質量部含むことがより好ましく、細骨材190〜260質量部、無機充填材2〜50質量部含むことが更に好ましく、細骨材200〜250質量部、無機充填材3〜40質量部含むことが特に好ましい。
セメント組成物の配合割合が上述の範囲であることによって、より優れた施工性を有する甲板用接着材を得ることができる。また、良好な強度特性の甲板用接着材層を得ることができる。
合成樹脂エマルジョンは、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョン及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体エマルジョンから選ばれる成分を少なくとも1種含む合成樹脂エマルジョンである。また、合成樹脂エマルジョンは、本発明の性質を損なわない範囲で、エチレン酢酸ビニル共重合体成分及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体成分以外の他の重合体成分や、他の樹脂エマルジョンを含むことができる。
合成樹脂エマルジョンは、合成樹脂を含む固形分を水に分散させたものであり、合成樹脂エマルジョン100質量%中の固形分量が、好ましくは40〜70質量%、さらに好ましくは45〜65質量%、より好ましくは50〜60質量%、特に好ましくは52〜58質量%含むものである。
なお、合成樹脂エマルジョンの固形分量とは、合成樹脂エマルジョン中の水分を蒸発させて残った固形分の質量である。合成樹脂エマルジョンから固形分を差し引いたものを合成樹脂エマルジョン中の水分とする。
合成樹脂エマルジョンのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは10℃以下、さらに好ましくは0℃以下、より好ましくは−10℃以下、特に好ましくは−20℃以下であることが、低温下での下地追従性に優れているために好ましい。
甲板用接着材に含まれる合成樹脂エマルジョンの含有量は、セメント組成物100質量部に対して、合成樹脂エマルジョン中の固形分1〜50質量部である。また、好ましくは5〜46質量部であり、より好ましくは10〜43質量部であり、更に好ましくは15〜40質量部であり、特に好ましくは20〜37質量部である。合成樹脂エマルジョンの含有量を上述の範囲にすることによって、船舶甲板床との接着性に優れるとともに、より低火炎伝搬性に優れる甲板用接着材を得ることができる。
甲板用接着材は、セメント組成物と合成樹脂エマルジョンとを所定の割合で配合して混練することにより調製することができる。必要に応じてさらに水を添加することもできる。混練には、ハンドミキサーやモルタルミキサー等を適宜選択して用いることができ、混練時間は、2〜5分間が好ましい。
甲板用接着材は、乾燥時間や流動性等を調整するため、本発明の特性を損なわない範囲でさらに添加剤を含むことができる。添加剤としては、一般的に用いられる凝結調整剤、消泡剤、増粘剤又は流動化剤などを挙げることができる。
<防熱性水硬性組成物>
防熱性水硬性組成物は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分と、無機粉体と、軽量骨材と、流動化剤とを含むことが好ましい。
アルミナセメントは、鉱物組成の異なるものが数種知られ市販されているが、それらの主成分はモノカルシウムアルミネート(CA)であり、市販品はその種類によらず使用することができる。なかでも、2800〜4000cm/gのブレーン比表面積を有するアルミナセメントを用いることが好ましい。また、化学分析値として求められるアルミナセメント中のAl量は、30〜60質量%が好ましく、Fe量は、0.5〜20質量%が好ましい。アルミナセメントのブレーン比表面積は、JIS R 2521:1995「耐火物用アルミナセメントの物理試験方法」に準じて求められる。
ポルトランドセメントは、水硬性材料として一般的なものであり、いずれの市販品も使用することができる。これらのなかでも、JIS R 5210:2009「ポルトランドセメント」で規定されるポルトランドセメントを用いることが好ましい。速硬性の観点から、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント又は超早強ポルトランドセメントの使用が好ましい。
石膏は、例えば、二水石膏、半水石膏及び無水石膏が挙げられ、排煙脱硫やフッ酸製造工程等で副産される石膏、又は天然に産出される石膏のいずれも使用することができる。施工性の観点から、無水石膏の使用が好ましい。
水硬性成分の配合割合は、水硬性成分100質量%中に、好ましくはアルミナセメント30〜60質量%、ポルトランドセメント15〜50質量%及び石膏10〜40質量%含み、
より好ましくはアルミナセメント35〜55質量%、ポルトランドセメント20〜45質量%、無水石膏15〜35質量%含み、
さらに好ましくはアルミナセメント40〜50質量%、ポルトランドセメント25〜40質量%、無水石膏18〜30質量%含み、
特に好ましくはアルミナセメント41〜47質量%、ポルトランドセメント27〜37質量%、無水石膏20〜28質量%含む。
水硬性成分の配合割合が上述の範囲であることによって、より優れた施工性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。また、より優れた速硬性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができ、施工後の早期開放がより確実となる。また、良好な強度特性や低収縮性を有する防熱性モルタル硬化体を得ることができる。
無機粉体は、高炉スラグ微粉末及び水酸化アルミニウム微粉末から選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。
高炉スラグ微粉末は、JIS A 6206「コンクリート用高炉スラグ微粉末」で規定される高炉スラグ微粉末であることが好ましい。高炉スラグ微粉末を用いることで、強度発現性及び寸法安定性をより高めることができる。また、高炉スラグ微粉末は、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に従い測定されるブレーン比表面積が、
好ましくは3000cm/g以上であり、
より好ましくは3000〜8000cm/gであり、
さらに好ましくは3500〜6000cm/gであり、
特に好ましくは4000〜5000cm/gである。
ブレーン比表面積が上述の範囲であることによって、寸法安定性及び防熱性に優れ、良好な強度特性を有する防熱性モルタル硬化体を得ることができる。
水酸化アルミニウム微粉末は、製造方法に特に限定されるものではなく、一般的な方法で製造された水酸化アルミニウム微粉末を使用することができる。また、水酸化アルミニウム微粉末の純度(アルミニウム微粉末中におけるAl(OH)の割合)は95質量%が好ましく、96質量%以上がより好ましく、97質量%がさらに好ましく、98質量%以上が特に好ましい。さらに、水酸化アルミニウム微粉末の平均粒子径は、50〜85μmの範囲であることが好ましく、55〜80μmの範囲であることがより好ましく、60〜75μmの範囲であることが特に好ましい。水酸化アルミニウム微粉末の純度や平均粒子径が上述の範囲であることによって、防熱性に優れ、良好な強度特性を有するモルタル硬化体を得ることができる。ここで、平均粒子径とは乾式ふるいによる測定により得られる値である。
無機粉体の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは30〜200質量部含み、より好ましくは35〜100質量部含み、さらに好ましくは40〜80質量部含み、特に好ましくは45〜75質量部含む。無機粉体の含有量が上述の範囲であることによって、寸法安定性及び防熱性に優れ、良好な強度特性を有する防熱性モルタル硬化体を得ることができる。
軽量骨材は、ガラスを主成分とする原料(例えば、ガラスの含有量が80質量%以上)を焼成する焼成工程を有する製造方法によって得られるガラス発泡体からなる軽量骨材(ガラス発泡骨材)であることが好ましい。原料に含まれるガラスとしては、ビンや板ガラス等の廃ガラスを用いることができる。また、ガラス発泡骨材は軽量であり、主成分としてガラスを含有する球状物であるため、強度が高いうえに吸水量も少ない。したがって、モルタル硬化体の強度を確保しながら、一層の軽量化を図ることができる。
軽量骨材(ガラス骨材)の製造方法は、例えば、主成分として廃ガラスを含む原料をボールミル等の粉砕機で粉砕して調合する調合工程と、調合した原料を造粒機又はスプレードライヤーで球状化して粒状物を得る球状化工程と、粒状物をロータリーキルン等で焼成する焼成工程と、振動篩機により分級する分級工程と、を有する。
軽量骨材の見かけ比重は、
好ましくは0.15〜0.8kg/L(リットル)であり、
より好ましくは0.2〜0.6kg/Lであり、
さらに好ましくは0.25〜0.5kg/Lであり、
特に好ましくは0.3〜0.45kg/Lである。
軽量骨材の見かけ比重を、上述の範囲にすることによって、より軽量で防熱性に優れる防熱性モルタル硬化体を得ることができる。ここで、見かけ比重は、パウダーテスタを用いて測定することにより得られる値である。
軽量骨材の吸水率は、吸水時間2時間において、
好ましくは9%以下であり、
より好ましくは8%以下であり、
さらに好ましくは7%以下であり、
特に好ましくは6%以下である。
また、軽量骨材の吸水率は、給水時間24時間において、
好ましくは12%以下であり、
より好ましくは11%以下であり、
さらに好ましくは10%以下であり、
特に好ましくは9%以下である。
軽量骨材の吸水率を、上述の値以下にすることによって、より優れた施工性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。また、より軽量で防熱性に優れる防熱性モルタル硬化体を得ることができる。ここで、吸水率は、JIS A 1134:2006「構造用軽量細骨材の密度及び吸水率試験方法」に準じて求められる。
軽量骨材は、粒子径が800μm以上の粒子を含まず、且つ粒子径が212μm以上であり且つ600μm未満である粒子の質量割合が85〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることがより好ましく、95〜100質量%であることがさらに好ましく、97〜100質量%であることが特に好ましい。軽量骨材の質量割合を、上述の範囲にすることによって、より優れた施工性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。また、より軽量で防熱性に優れる防熱性モルタル硬化体を得ることができる。
軽量骨材の粒子径は、JIS Z 8801:2006に規定される呼び寸法の異なる数個の篩いを用いて測定することができる。また、本明細書において、「粒子径212μm以上であり且つ600μm未満である粒子の質量割合」とは、篩目600μmの篩いを用いたとき、篩目600μmの篩いを通過し、且つ篩目212μmの篩を用いたとき、篩目212μmの篩上に残る粒子の軽量骨材全体に対する質量割合のことをいう。
軽量骨材の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは10〜120質量部であり、より好ましくは15〜110質量部であり、さらに好ましくは20〜105質量部であり、特に好ましくは25〜100質量部である。軽量骨材の含有量を上述の範囲にすることによって、より軽量で防熱性に優れる防熱性モルタル硬化体を得ることができる。
流動化剤は、減水効果を合わせ持つ、メラミンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、カゼイン、カゼインカルシウム、ポリカルボン酸系、ポリエーテル系及びポリエーテル・ポリカルボン酸系等の市販の流動化剤が、その種類を問わず使用でき、特にポリエーテル系及びポリエーテル・ポリカルボン酸等の市販の流動化剤を用いることが好ましい。
流動化剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、
好ましくは0.01〜2質量部であり、
より好ましくは0.05〜1.5質量部であり、
さらに好ましくは0.1〜1質量部であり、
特に好ましくは0.15〜0.5質量部である。
流動化剤の含有量を上述の範囲にすることによって、より優れた施工性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。
本実施形態の防熱性床構造体の施工方法に用いられる防熱性水硬性組成物は、さらに増粘剤、消泡剤、凝結調整剤及び樹脂粉末から選ばれる成分を少なくとも1種以上を含むことが好ましい。
増粘剤は、セルロース系、蛋白質系、ラテックス系、及び水溶性ポリマー系などの市販品が挙げられる。中でもセルロース系増粘剤は価格や入手のし易さの観点から好ましい。セルロース系増粘剤には、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等があり、その種類を問わず組み合わせて用いることができる。増粘剤を用いることで、防熱性水硬性組成物の材料分離抵抗性を向上することができる。
増粘剤の20℃における2%水溶液の粘度は、
好ましくは20000〜40000mPa・sであり、
より好ましくは22000〜38000mPa・sであり、
さらに好ましくは24000〜36000mPa・sであり、
特に好ましくは25000〜35000mPa・sである。
増粘剤の粘度を上述の範囲にすることによって、より優れた施工性や材料分離抵抗性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。ここで、増粘剤の粘度は、増粘剤を2質量%含む水溶液(20℃)をB型粘度計を用いて測定することにより得ることができる。
増粘剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、
好ましくは0.1〜2質量部であり、
より好ましくは0.15〜1質量部であり、
さらに好ましくは0.2〜0.9質量部であり、
特に好ましくは0.25〜0.8質量部である。
増粘剤の含有量を上述の範囲にすることによって、より優れた施工性や材料分離抵抗性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。
消泡剤は、シリコーン系、アルコール系及び/又はポリエーテル系などの合成物質及び/又は植物由来の天然物質など、公知のものが挙げられる。中でもポリエーテル系消泡剤は価格や入手のし易さの観点から好ましい。消泡剤を用いることで、防熱性水硬性組成物の消泡効果を向上することができる。
消泡剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、
好ましくは0.01〜0.3質量部であり、
より好ましくは0.03〜0.2質量部であり、
さらに好ましくは0.04〜0.15質量部であり、
特に好ましくは0.05〜0.12質量部である。
消泡剤の含有量を上述の範囲にすることによって、より優れた施工性や消泡性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。
凝結調整剤は、水硬性成分の水和反応を促進する凝結促進剤と水硬性成分の水和反応を遅延する凝結遅延剤があり、使用する水硬性成分の配合に応じてこれらの成分や含有量を適宜選択し、組み合わせて使用することができる。
凝結遅延剤は、公知のものを用いることができる。一例として、オキシカルボン酸類等の有機酸や、グルコース、マルトース、デキストリン等の糖類、重炭酸ナトリウムやリン酸ナトリウム等を、それぞれの成分を単独で又は2種以上の成分を併用して用いることができる。
オキシカルボン酸類は、オキシカルボン酸及びこれらの塩を含む。オキシカルボン酸としては、例えば、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸等の脂肪族オキシ酸、サリチル酸、m−オキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、没食子酸、マンデル酸及びトロパ酸等の芳香族オキシ酸を挙げることができる。
オキシカルボン酸の塩としては、例えば、アルカリ金属塩(具体的にはナトリウム塩及びカリウム塩等)及びアルカリ土類金属塩(具体的にはカルシウム塩、バリウム塩及びマグネシウム塩等)を挙げることができ、ナトリウム塩がより好ましい。また、特に、酒石酸ナトリウムが、凝結遅延効果、入手容易性及び価格の面から好ましく、重炭酸ナトリウムと併用することが更に好ましい。
凝結促進剤としては、公知の凝結を促進する成分を用いることができる。例えば、凝結促進効果を有するリチウム塩、硫酸アルミニウム及び塩化カルシウムを好適に用いることができ、これらを数種組み合わせて使用することができる。
リチウム塩の一例として、炭酸リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム及び水酸化リチウム等の無機リチウム塩や、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、酒石酸リチウム、リンゴ酸リチウム及びクエン酸リチウム等の有機酸有機リチウム塩を挙げることができる。特に炭酸リチウムは、凝結促進効果、入手容易性及び価格の面から好ましい。
公知の凝結遅延剤及び凝結促進剤を組み合わせて使用する凝結調整剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、
好ましくは0.01〜1.0質量部であり、
より好ましくは0.05〜0.8質量部であり、
さらに好ましくは0.1〜0.7質量部であり、
特に好ましくは0.2〜0.6質量部である。凝結調整剤の含有量を上述の範囲で用いることによって、より優れた施工性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。
樹脂粉末は、特にその種類及び製造方法は限定されず、公知の製造方法で製造されたものを用いることができる。また、樹脂粉末としては、ブロッキング防止剤を主に樹脂粉末の表面に付着しているものを好適に用いることができる。また、樹脂粉末としては、水性ポリマーディスパージョンを噴霧やフリーズドライなどの方法で、溶媒を除去し乾燥した再乳化形の樹脂粉末を用いることができる。本発明では、樹脂粉末として保護コロイドアクリルエマルジョンから製造されたアクリル共重合系の再乳化形樹脂粉末を用いることができる。特に、保護コロイドアクリルエマルジョンから製造されたアクリル酸エステル/メタクリル酸エステル供重合体の再乳化形樹脂粉末を用いることが好ましい。
樹脂粉末の1次粒子(エマルジョン)の平均粒子径は、好ましくは0.2〜0.8μmの範囲であり、より好ましくは0.25〜0.75μmの範囲であり、さらに好ましくは0.3〜0.7μmの範囲であり、特に好ましくは0.35〜0.65μmの範囲のものを選択して用いることが好ましい。平均粒子径が上述の範囲であることにより、良好な施工性と、緻密なポリマーフィルムの形成によって得られる優れた接着性や耐久性・耐候性とを併せて得ることができる。
1次粒子の平均粒子径が上述の範囲の樹脂粉末を用いた防熱性水硬性組成物は、防熱性モルタル組成物の施工作業を行う過程で、より良好な施工性を得ることができる。
樹脂粉末の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは2〜7質量部であり、より好ましくは2.5〜6.5質量部であり、さらに好ましくは3〜6質量部であり、特に好ましくは3.5〜5.5質量部である。樹脂粉末の含有量を上述の範囲とすることによって、より優れた施工性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。また、より優れた防熱性や接着性を有する防熱性モルタル硬化体を得ることができる。
本実施形態の防熱性床構造体の施工方法に用いられる防熱性水硬性組成物は、防熱性を必要とする船舶甲板床の床構造体に好適に用いることができる。上記の防熱性水硬性組成物を用いて、優れた流動性、施工性、平滑性及び速硬性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。
<防熱性モルタル組成物>
上述の防熱性水硬性組成物と水とを配合し混練することによって防熱性モルタル組成物を調製することができる。防熱性モルタル組成物は、防熱性を必要とする船舶甲板床の床構造体に好適に用いることができる。防熱性モルタル組成物を調製する際に、水の配合量を適宜変更することによって、防熱性モルタル組成物のフロー値を調整することができる。このように水の配合量を変更することによって、用途に適した防熱性モルタル組成物を調製することができる。ここで、フロー値とは、社団法人日本建築学会JASS 15M−103「セルフレベリング材の品質基準」に準拠して測定される値(単位:mm)である。
水の配合量は、防熱性水硬性組成物100質量部に対し、好ましくは25〜60質量部であり、より好ましくは28〜55質量部であり、さらに好ましくは30〜53質量部であり、特に好ましくは34〜52質量部である。
防熱性モルタル組成物の20℃におけるフロー値は、好ましくは170〜230mmであり、より好ましくは180〜220mmであり、さらに好ましくは190〜210mmであり、特に好ましくは195〜205mmである。フロー値が上述の範囲であることによって、より優れた施工性を有する防熱性モルタル組成物とすることができる。
また、防熱性モルタル組成物は、施工後の早期開放(次工程への早期移行)を行うために、施工後に速やかに硬化を開始することができる。材齢3時間の防熱性モルタル硬化体層の表面硬度が、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上であり、さらに好ましくは30以上であり、特に好ましくは40以上である。
<防熱性モルタル硬化体>
上述の防熱性モルタル組成物を硬化させることによって防熱性モルタル硬化体を得ることができる。防熱性モルタル硬化体は、防熱性を必要とする船舶甲板床の床構造体に好適に用いることができる。すなわち、上述の防熱性モルタル組成物が硬化して形成される防熱性モルタル硬化体は、軽量で防熱性に優れ、良好な強度特性を有し、収縮が小さく、クラックの発生を抑制できる。また、本実施形態の防熱性床構造体の施工方法により施工された防熱性床構造体は、耐久性に優れ、船舶甲板床との十分な接着性を有する。また、火災等による加熱時においても貫通クラックを抑制し、安定した防熱性を有する。
防熱性モルタル硬化体の材齢28日の比重は、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1.4以下であり、さらに好ましくは1.35以下であり、特に好ましくは1.3以下である。比重が上述の値以下であることによって、優れた軽量性を有することがより確実となる。
防熱性モルタル硬化体の防熱性の指標の一つとして、耐火試験における60分昇温後の最高温度が、
好ましくは250℃以下であり、
より好ましくは225℃以下であり、
さらに好ましくは200℃以下であり、
特に好ましくは175℃以下である。
また、耐火試験における60分昇温後の平均温度が、
好ましくは220℃以下であり、
より好ましくは200℃以下であり、
さらに好ましくは180℃以下であり、
特に好ましくは160℃以下である。
最高温度及び平均温度が上述の値以下であることによって、優れた防熱性を有する。ここで、耐火試験の方法については後述する。
防熱性モルタル硬化体の防熱性の指標の一つとして、熱伝導率が、
好ましくは0.50W/m・K以下であり、
より好ましくは0.45W/m・K以下であり、
さらに好ましくは0.40W/m・K以下であり、
特に好ましくは0.35W/m・K以下である。
熱伝導率が上述の値以下であることによって、優れた防熱性を有する。ここで、熱伝導率の測定方法については後述の防熱性モルタル組成物及びモルタル硬化体の物性の評価方法にて詳細を説明する。
防熱性モルタル硬化体の材齢28日の圧縮強度は、好ましくは5N/mm以上であり、より好ましくは10N/mm以上であり、特に好ましくは15N/mm以上である。圧縮強度が上述の値以上であることによって、良好な強度特性を有する。ここで、圧縮強度とは、社団法人日本建築学会JASS 15M−103「セルフレベリング材の品質基準」に準拠して測定される値(単位:N/mm)である。
モルタル硬化体の材齢28日の収縮率は、好ましくは−0.100%〜0であり、より好ましくは−0.090%〜0であり、さらに好ましくは−0.080%〜0であり、特に好ましくは−0.060%〜0である。収縮率が上述の範囲であることによって、収縮が小さく、クラックの発生を抑制できる(優れた低収縮性を有する)。ここで、(−)マイナスは収縮を表す。また、収縮率の測定方法については後述の防熱性モルタル組成物及び防熱性モルタル硬化体の物性の評価方法にて詳細を説明する。
鋼板(船舶甲板床)に甲板用接着材を施工し、その上に防熱性モルタル組成物を施工した防熱性床構造体の材齢14日の接着強度は、
好ましくは1N/mm以上であり、
より好ましくは1.2N/mm以上であり、
さらに好ましくは1.4N/mm以上であり、
特に好ましくは1.5N/mm以上である。
接着強度が上述の範囲であることによって、防熱性床構造体は、鋼板との十分な接着性を有する。
<防熱性床構造体>
上述の施工方法により防熱性床構造体を得ることができる。防熱性床構造体は、防熱性を必要とする船舶甲板床の床構造体に好適に用いることができる。優れた防熱性の指標として、国際海事機関が定めるIMO FTPコードパートIII A級仕切り甲板の標準火災試験において、60分間の加熱による7点の表面上昇温度が各々180℃以下であることが好ましく、且つ7点の表面上昇温度の平均が140℃以下であることが好ましい。さらに、表面上昇温度に影響を与える貫通クラックが発生しないことが好ましい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
以下に実験例を挙げて本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
(実験例1)
[使用材料]
<甲板用接着材>
甲板用接着材については、以下(1)〜(4)に示す原材料を用いた。
(1)アルミナセメント
・A:(ターナルLC、ブレーン比表面積3100cm/g、ケルネオス社製)
・B:(フォンジュ、ブレーン比表面積3100cm/g、ケルネオス社製)
(2)無機充填材
・A:タルク(Sタルク、平均粒径9μm、日本滑石製錬社製)
・B:顔料(酸化チタン:TPR−5N、平均粒子径0.26μm、堺化学工業社製)
平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定器により測定した。
(3)細骨材
・A:珪砂7号(市販品、JIS篩を使用して測定した珪砂の粒度構成を表1に示す。)
・B:珪砂8号(市販品、JIS篩を使用して測定した珪砂の粒度構成を表1に示す。)
また、表1の細骨材A+Bは、表2の船舶甲板用接着材1〜4に用いる細骨材の粒度構成である。
(4)合成樹脂エマルジョン
・A:(メタ)アクリル酸エステル共重合体エマルジョン(固形分55質量%、Tg=−34℃)
・B:エチレン・ 酢酸ビニル共重合体エマルジョン(固形分55質量%、Tg=−19℃)
Figure 2016026948
上述の(1)アルミナセメント、(2)無機充填材、(3)細骨材、を表2に示す割合で混合し、甲板用接着材用のセメント組成物の配合を調製した。更に、(4)合成樹脂エマルジョンを2に示す割合でセメント組成物と混練し、甲板用接着材を調製した。調製方法は後述する。
Figure 2016026948
<防熱材水硬性組成物>
防熱性水硬性組成物については、以下(5)〜(12)に示す原材料を用いた。
(5)水硬性成分
・AC:アルミナセメント(Al量39質量%、Fe量14質量%、ブレーン比表面積3100cm/g、ケルネオス社製)
・PC:ポルトランドセメント(早強ポルトランドセメント、ブレーン比表面積=4500cm/g、宇部三菱セメント社製)
・GG:石膏(フッ酸無水石膏、ブレーン比表面積3880cm/g、セントラル硝子社製)
上記材料を表3に示す割合で配合し、水硬性成分を調製した。
Figure 2016026948
(6)高炉スラグ微粉末(ブレーン比表面積4400cm/g)
(7)軽量骨材
・ガラス質骨材(見かけ比重0.38kg/L、吸水率[6%/2時間、9%/24時間]、JIS篩を使用して測定した珪砂の粒度構成を表4に示す。)
軽量骨材の見かけ比重は、ホソカワミクロン社製のパウダーテスタE型を用いて測定した。軽量骨材の吸水率は、JIS A 1134:2006「構造用軽量細骨材の密度及び吸水率試験方法」に準じて測定した。
Figure 2016026948
(8)流動化剤
・ポリエーテル・ポリカルボン酸系流動化剤(花王社製)
(9)増粘剤
・セルロース系増粘剤(ヒドロキシエチルメチルセルロース、20℃における2%水溶液粘度28800mPa・s、松本油脂社製)
増粘剤の粘度は、B型粘度計(東京計器社製デジタル粘度計:DVL−B)を用い、増粘剤を2質量%含む水溶液(20℃)について、ローターNo.4、ローター回転数12rpmの条件で測定した。
(10)消泡剤
・ポリエーテル系消泡剤(サンノプコ社製)
(11)凝結調整剤
・凝結調整剤(炭酸リチウム、酒石酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム)
(12)樹脂粉末
・アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル供重合体の再乳化形樹脂粉末(1次粒子(エマルジョン)の平均粒子径0.5μm)
上述の(5)水硬性成分、(6)無機粉体、(7)軽量骨材、(8)流動化剤、(9)増粘剤、(10)消泡剤、(11)凝結遅延剤、(12)樹脂粉末を表5に示す割合で混合し、防熱性水硬性組成物の配合を調製した。
Figure 2016026948
[甲板用接着材の調製]
1Lのポリ容器に表2に示す配合割合で合計1250gになるように各材料を加えて、ケミスターラーを使用して650rpmの条件下で3分間混練し、甲板用接着材を得た。調製は全て20℃の恒温室にて行い、各材料は20℃恒温室中に12時間以上静置したものを使用した。
[防熱性モルタル組成物の調製]
防熱性モルタル組成物及び防熱性モルタル硬化体の評価においては、次の方法で調製した。2Lのポリ容器に表5に示す配合割合で合計1000gになるように各材料をあらかじめ混合したものを投入し、水350gを加えて混練し、防熱性モルタル組成物を調製した。混練は、温度20℃、相対湿度65%の条件下で、ケミスターラーを用いて回転数650rpmで3分間行った。各材料は20℃恒温室中に12時間以上静置したものを使用した。
防熱性床構造体の評価においては、次の方法で調製した。45Lのポリ容器に表5に示す配合割合で合計30kgになるように各材料をあらかじめ混合したものを投入し、水10.5kgを加えて混練し、防熱性モルタル組成物を調製した。混練は、温度20℃、相対湿度65%の条件下で、ハンドミキサーを用いて回転数1100rpmで3分間行った。各材料は20℃恒温室中に12時間以上静置したものを使用した。
[甲板用接着材の評価方法]
調製した各配合の甲板用接着材における船舶甲板床(鋼板)との接着強度を測定した。温度20℃、相対湿度65%の条件下で、調製した表1に示す各配合の甲板用接着材を鋼板の上に厚さ0.3mmとなるように塗布し、3時間乾燥して甲板用接着材層を形成した後、その上に防熱性モルタル組成物を、40×40×厚み30mmとなるように設置した型枠に施工し、7日および14日間養生して試験体を作製した。試験体の防熱性モルタル硬化体上面に40×40mmの鋼製のアタッチメントをエポキシ系接着剤を用いて接着させ、建研式引張試験機を用いて接着強度を測定した。測定結果は表6に示すとおりであった。
Figure 2016026948
表6のとおり、全ての試験体において十分な接着性を示し、船舶甲板床(鋼板)との十分な接着性を有することが確認された。
[防熱性モルタル組成物及び防熱性モルタル硬化体の評価方法]
調製した防熱性水硬性組成物の防熱性モルタル組成物のフロー値、表面硬度、及び防熱性モルタル硬化体の硬化体比重、簡易耐火試験、熱伝導率、圧縮強度、収縮率を測定した。測定結果は表3に示す通りであった。また、各測定は以下に示す方法で行った。
(1)フロー値の測定方法
社団法人日本建築学会JASS 15M−103「セルフレベリング材の品質基準」に記載の試験方法に準拠してフロー値を測定した。結果を表7に示す。
(2)表面硬度の測定方法
20℃で調製した混練直後の防熱性モルタル組成物を、内寸130×190mmのプラスチック容器に厚み10mmになるように施工し、材齢3時間の表面硬度をスプリング式硬度計タイプD型((株)上島製作所製)を用いて、任意の4カ所の表面硬度を測定し、そのスプリング式硬度計タイプD型のゲージの読み取り値の平均値をその時間の表面硬度とした。結果を表7に示す。
(3)硬化体比重の測定方法
材齢28日の圧縮強度用試験体の体積と重量を測定し、硬化体比重を求めた。結果を表7に示す。
(4)簡易耐火試験による防熱性の評価方法
図3に示すように温度20℃、相対湿度65%の条件下で防熱性モルタル組成物を610×305×25mmとなるように型枠に施工し、7日間養生した。その後、脱型して、温度60℃で24時間乾燥し、さらに温度20℃で24時間養生することで、防熱性モルタル硬化体3を形成した。鋼板2の上に防熱性モルタル硬化体3を設置することで、測定用の試験体1を調製した。耐火試験用のガス炉5は、図4に示すように内寸600×500×595mmで開口部を1面有するガス炉であり、開口部の対面に炉内加熱用のガスバーナー7が中心線Xに沿って縦に3基設置され、熱電対6がガスバーナー7と同じ高さになるように、開口部付近の左面より縦に3基設置されている。まず、調製した試験体1を、図5に示すように鋼板2が炉内側になるようにガス炉5の開口部に設置し、試験体1を固定するための固定具10を設置した。次に、隙間にセラミックウール断熱材9を詰め、試験体1のモルタル硬化体3に接するように表面温度測定用センサー8を中心線Xに沿って縦に5基設置した。炉内加熱温度を標準温度曲線(T=3451log10(8t+1)+20)に沿って60分間でT=945℃となるように昇温制御し、測定開始(昇温開始)から60分後の5点の表面温度を測定し、最高温度及び5点の平均温度を算出した。表面温度測定用センサー8は、株式会社佐藤計量器社製防水型デジタル温度計(本体:SK−1250MCIIIα、センサーヘッド:MC−K307III)を使用した。結果を表7に示す。
(5)熱伝導率の測定方法
京都電子工業社製QTM500を用いて熱伝導率を測定した。20℃で調製した混練直後の防熱性モルタル組成物を内寸100×200×30mmの型枠に施工し、材齢28日養生したものを試験体とし、両面側より測定を行い、その平均値より算出した。測定温度は23℃とした。結果を表7に示す。
(6)圧縮強度の測定方法
社団法人日本建築学会JASS 15M−103「セルフレベリング材の品質基準」に記載の試験方法に準拠して材齢28日の圧縮強度を測定した。結果を表7に示す。
(7)収縮率の測定方法
収縮率の測定は、図6に示す長さ変化測定装置21を用いた。図6(a)は測定装置21の上面図であり、(b)は測定装置21の断面図である。20℃で調製した混練直後の防熱性モルタル組成物を型枠22内部に、型枠22の高さc(10mm)まで施工し、施工直後より長さ変化の測定を開始し、測定間隔は5分毎に行い、材齢28日まで気温20℃、相対湿度65%の環境下にて測定した。収縮率は、測定間隔毎における、図6(a)に示すSUS製円盤25bと渦電流式変位センサー24の端部(SUS製円盤25b側の端部)との間隔の変化量(mm)を、測定開始時のSUS製円盤25aとSUS製円盤25cとの間隔b(480mm)で除して、百分率で表した値とした。収縮率にマイナスの符号がつく場合は測定開始より収縮していることを意味し、長さ変化率に符号がつかない場合は測定開始より膨張していることを意味する。結果を表7に示す。
Figure 2016026948
表7に示す通り、本実施形態の防熱性床構造体の施工方法で用いられる防熱性水硬性組成物から得られる防熱性モルタル硬化体は、硬化体比重が小さく、熱電度率が低い結果を示し、耐火試験の60分昇温の最高温度及び平均温度が低く、防熱性は良好であった。防熱性モルタル組成物のフロー値も200mmと良好であった。また、材齢3時間の表面硬度も10以上であり、優れた速硬性を示した。また、材齢28日の圧縮強度が大きく、収縮率が小さく、より良好であった。
以上のことから、本実施形態の防熱性床構造体の施工方法に用いられる防熱性水硬性組成物は、軽量で防熱性に優れ、良好な強度特性を有し、収縮が小さく、クラックの発生を抑制できる防熱性モルタル硬化体を形成可能で、且つ優れた流動性、施工性及び平滑性を有し、さらに、施工後の早期開放(次工程への早期移行)が可能な優れた速硬性を有する防熱性モルタル組成物を調製することが可能であることが確認された。
[防熱性床構造体の評価方法]
防熱性床構造体としての総合的な防熱性を評価するため、国際海事機関が定めるIMO FTPコードパートIII A級仕切り甲板の標準火災試験に準拠して試験を実施した。60分間の加熱により、測定点7点における表面温度上昇を測定した。試験体は、表8及び図7に示す試験体構造に従って作製し、防熱性水硬性組成物は表5の配合を使用し、甲板用接着材は表2の配合4を使用した。実施例1の試験体の作製手順は次のとおりである。清掃した甲板(鋼板)に甲板用接着材を施工し、18時間乾燥させて接着材層を形成した。接着材層の上面に、防熱性水硬性組成物と水とを混練して調製した第一の防熱性モルタル組成物を13mm厚になるように施工し、硬化させて第一の防熱性モルタル硬化体層を形成した。第一の防熱性モルタル組成物の施工の約2時間後、第一の防熱性モルタル硬化体層の上面に、補強材層を設置し、補強材層の上面に、防熱性水硬性組成物と水とを混練して調製した第二の防熱性モルタル組成物を12mm厚になるように施工し、硬化させて第二の防熱性モルタル硬化体層を形成した。1か月間気中雰囲気にて養生した後、試験用の防熱性床構造体を得た。なお、補強材には、メタルラスの平ラス(薄板の厚み0.5mm、R=32mm、S=16mm)を用い、2枚のメタルラスを互いに直行する方向に積層して設置した。補強材なしの比較例1の試験用構造体については、接着材層の形成までは同じであるが、第一の防熱性モルタル組成物の施工のみにより、防熱性モルタル硬化体を形成し、1か月間気中雰囲気にて養生した後、試験用の防熱性床構造体を得た。比較例2の試験用構造体は補強材を1枚とした。標準火災試験の結果を表9に示す。
Figure 2016026948
Figure 2016026948
実施例1は、表面上昇の温度基準(各測定点および平均値の上限値)を全て満たしており、構造体(甲板を除く)を貫通するクラックの発生は無かった。一方、比較例1は、貫通クラックが試験体全体に多数発生し、表面上昇温度も基準に達しないものが1点あった。比較例2は、試験体中心部に2本の貫通クラックが発生し、表面上昇温度も基準に達しないものが1点あった。
以上のことから、本実施例の防熱性床構造体の施工方法によって得られる防熱性床構造体は、高い断熱性と貫通クラックの抑制により、安定して高い防熱性を有することが確認された。
1…試験体、2…鋼板、3…モルタル硬化体、5…ガス炉、6…熱電対、7…ガスバーナー、8…表面温度測定用センサー、9…セラミックウール断熱材、10…固定具、21…長さ変化測定装置、22…型枠、23…緩衝材、24…渦電流式変位センサー、25…SUS製円盤(25a,25b,25c)、26…SUS棒(26a,26b)、27…フッ素樹脂シート、30…船舶甲板床(鋼板)、31…接着材層、32…第一の防熱性モルタル硬化体層、33…補強材層、34…第二の防熱性モルタル硬化体層、35…緩衝帯、40…突出部、41…壁。

Claims (10)

  1. 船舶甲板床上面に、甲板用接着材を塗布し、接着材層を形成する接着材層形成工程と、
    前記接着材層の上面に、防熱性水硬性組成物と水とを混練して調製した第一の防熱性モルタル組成物を施工するモルタル施工第一工程と、
    前記第一の防熱性モルタル組成物を硬化させて、第一の防熱性モルタル硬化体層を形成する硬化体形成第一工程と、を有する防熱性床構造体の施工方法であって、
    前記施工方法が、さらに、前記第一の防熱性モルタル硬化体層の上面に、補強材層を設ける補強材設置工程と、
    前記補強材層の上面に、前記防熱性水硬性組成物と水とを混練して調製した第二の防熱性モルタル組成物を施工するモルタル施工第二工程と、
    前記第二の防熱性モルタル組成物を硬化させて、第二の防熱性モルタル硬化体層を形成する硬化体形成第二工程と、を有し、
    前記接着材層が、厚み0mmを超えて、0.45mm以下の範囲で形成され、
    前記補強材層が、メタルラスを少なくとも2枚を積層して設置され、
    前記第一の防熱性硬化体層の厚み及び第二の防熱性硬化体層の厚みを合わせた、全厚みが20〜40mmである、
    防熱性床構造体の施工方法。
  2. 前記補強材層が、少なくとも2枚のメタルラスを互いに直行する方向に積層して設置されてなる、
    請求項1に記載の防熱性床構造体の施工方法。
  3. 前記接着材層形成工程の後に、前記船舶甲板床から上方に伸びる突出部の側面に接するように緩衝材を設置して緩衝帯を形成する緩衝帯形成工程を有し、
    前記緩衝材の密度が15〜150kg/mであり、
    前記緩衝帯の幅が5〜35mmである、
    請求項1又は請求項2に記載の防熱性床構造体の施工方法。
  4. 前記防熱性水硬性組成物が、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分と、無機粉体と、軽量骨材と、流動化剤とを含み、
    前記無機粉体が、高炉スラグ微粉末及び水酸化アルミニウム微粉末から選ばれる一種又は二種以上であり、
    前記軽量骨材が、ガラスを主成分とする原料を焼成して得られたものであり、吸水時間2時間における吸水率が9%以下である、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の防熱性床構造体の施工方法。
  5. 前記水硬性成分が、水硬性成分100質量%中にアルミナセメント30〜60質量%、ポルトランドセメント15〜50質量%及び石膏10〜40質量%含む、
    請求項4に記載の防熱性床構造体の施工方法。
  6. 前記水硬性成分100質量部に対して、無機粉体30〜200質量部、軽量骨材10〜120質量部含む、
    請求項4又は請求項5に記載の防熱性床構造体の施工方法。
  7. 前記軽量骨材が、粒子径800μm以上の粒子を含まず、且つ粒子径212μm以上であり且つ600μm未満である粒子の質量割合が85〜100質量%であり、見かけ比重が0.15〜0.8kg/Lである、
    請求項4〜6のいずれか1項に記載の防熱性床構造体の施工方法。
  8. 前記防熱性水硬性組成物は、さらに増粘剤、消泡剤、凝結調整剤及び樹脂粉末から選ばれる成分を1種以上含む、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載の防熱性床構造体の施工方法。
  9. 前記甲板用接着材が、アルミナセメント、細骨材及び無機充填材を含むセメント組成物、及び合成樹脂エマルジョンを含み、
    前記セメント組成物100質量部に対して、前記合成樹脂エマルジョン中の固形分量が1〜50質量部であり、
    前記合成樹脂エマルジョンは、(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂成分及びエチレン・酢酸ビニル系共重合樹脂成分の群から選ばれる成分を少なくとも1種類含む、
    請求項1〜8のいずれか1項に記載の防熱性床構造体の施工方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の施工方法により得られる、防熱性床構造体。
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