以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1〜4には、本発明の1実施形態としての薬液自己注入装置10が示されている。この薬液自己注入装置10には、薬液の流入路と流出路に接続されたリザーバ12がハウジング14の内部に収容されている。更に、ハウジング14の内部には、外部からの操作によりリザーバ12を押圧してリザーバ12内の薬液を流出路を通じて流出させる押圧部材16が設けられている。なお、以下の説明において、上下方向とは、基本的には、図3中の上下方向を言う。
より詳細には、ハウジング14は、全体として長手状とされていると共に、長さ方向(図2の左右方向)中間部分において、曲がり部18が形成されている。これにより、ハウジング14は、曲がり部18から延びる一方の側(図2中の左方)と他方の側(図2中の右方)とが、相対的に、上下方向に屈曲する形状とされている。なお、本実施形態では、曲がり部18は、ハウジング14の長さ方向略中央部分に湾曲形状をもって形成されており、曲がり部18を挟んで両側に延び出す領域の長さ寸法が略等しくされている。更に、ハウジング14において、曲がり部18を含む表面の角部は、意匠的な検討や手で握った感触などを考慮して、角を丸めた適宜の湾曲形状をもって形成されている。
また、かかる曲がり部18は、曲率半径の大きい側の面が外周側面20とされている一方、曲率半径の小さい側の面が内周側面22とされており、外周側面20および内周側面22の曲率がそれぞれ略一定とされている。そして、ハウジング14において曲がり部18を挟んだ両側は直線状に延びており、即ちハウジング14の外周側面は、曲がり部18の外周側面20を挟んで両側に直線的に延び出していると共に、ハウジング14の内周側面は、曲がり部18の内周側面22を挟んで両側に直線的に延び出している。
また、ハウジング14は中空構造とされており、ハウジング14の内部空間24にリザーバ12や押圧部材16、およびこれらを外部から押圧するための押ボタン26が収容配置されている。これらリザーバ12、押圧部材16および押ボタン26は、ハウジング14の曲がり部18から延びる一方の側に設けられており、ハウジング14において、曲がり部18から延びる当該一方の側が押ボタン26を操作するための操作部28とされている。即ち、曲がり部18の外周側面20から操作部28側に連続する面上に押ボタン26が設けられている。一方、図1に示されているように、ハウジング14において、曲がり部18から延びる他方の側が、患者の手指30によって握るように把持される把持部32とされている。
なお、ハウジング14の幅方向寸法(図2中の上下方向寸法)は、操作部28の先端から把持部32の先端になるにつれて、次第に小さくなるようにされている。即ち、操作部28側では、縦横の比が大きくされた扁平な略矩形枠形状の横断面とされているが、曲がり部18から把持部32の先端側へ近くなるにつれて、横断面における縦横の比が次第に小さくなるようにされている。
さらに、ハウジング14の内部空間24には、リザーバ12に接続された流入側チューブ34と流出側チューブ36が配置されており、これら両チューブ34,36におけるリザーバ12と接続される側と反対側の端部が、把持部32の先端から外部に延び出している。そして、この流入側チューブ34により薬液自己注入装置10の外部からリザーバ12の内部に至る薬液の流入路が形成されている一方、流出側チューブ36によりリザーバ12の内部から薬液自己注入装置10の外部に至る薬液の流出路が形成されている。
また、操作部28と把持部32とが屈曲していることにより、薬液自己注入装置10の内周側(図3中の下方)において、操作部28と把持部32との間には、隙間38が形成される。これにより、例えば、図1に示されるように、隙間38に、例えば人差指以下4本の手指を差し入れ易くなって、患者が把持部32を容易に握ることができる。
なお、本実施形態では、ハウジング14の内周側面(図2中の下面)において、把持部32には、曲がり部18の内周側面22から延びる方向に対して傾斜して、且つ内周側面22から連続して広がる平坦面40が形成されている。即ち、ハウジング14の内周側面は、曲がり部18から把持部32の先端に至る領域の長さ方向中間部分で屈曲している。
そして、この平坦面40には、幅方向の中央部分を把持部32の先端側から曲がり部18側に向かって延びるクリップ42が設けられている。かかるクリップ42を設けることにより、患者が薬液自己注入装置10を衣服のベルトやポケット等に装着して携帯することが可能となる。
特に、本実施形態では、操作部28の先端部分における内周側面、クリップ42の先端および基端の3点が同一平面上に位置するようにされている。即ち、図3中に2点鎖線で示される平坦な載置面44を想定して、当該載置面44上に薬液自己注入装置10を載置した場合に、上記の各点が、載置面44に重ね合わされる載置部46a,46b,46cとされている。なお、これらの載置部46a,46b,46cは、それぞれ所定の幅方向寸法を有しており、これにより、薬液自己注入装置10が載置面44上に安定して載置され得る。これにより、薬液自己注入装置10を、載置面44上に載置したままの状態で、押ボタン26および押圧部材16を内方側に押し込む操作が可能とされる。尤も、載置部は3点必要なものでなく、操作部28側の載置部46aと、把持部32側の載置部46b、46cの少なくとも一方を備えていればよい。
ここにおいて、ハウジング14は、図5,6に示される如き上ハウジング48と図7,8に示される如き下ハウジング50との分割構造とされている。即ち、下方に開口する上側凹所52を備える上ハウジング48と上方に開口する下側凹所54を備える下ハウジング50とを、上下凹所52,54の開口部を対向させて重ね合わせることで、内部空間24を備える中空のハウジング14が構成される。そして、これら上下ハウジング48,50は、ハウジング14外周面の高さ方向中間部分において、全周に亘って連続して延びる分割ライン56をもって上下凹所52,54の開口周縁部が重ね合わされる。
また、上ハウジング48の操作部28側には、厚さ方向に貫通して窓部58が形成されている。この窓部58は、角丸の略矩形状で、押ボタン26と略同じ寸法か僅かに大きな寸法とされている。更に、上ハウジング48の上面において、窓部58の開口周縁部には、上方に向かって突出する保護突部60が形成されている。
この保護突部60は、窓部58の開口周縁部において、曲がり部18側を除く領域に連続して形成されており、曲がり部18側から滑らかに立ち上がるようにされている。なお、かかる保護突部60の突出先端部は、押ボタン26よりも外方(図4中の上方)に突出しており、押ボタン26の誤操作防止が図られている。また、保護突部60において、操作部28の先端側の壁面には、曲がり部18側に開口する溝状の凹溝62が高さ方向の全長に亘って設けられており、ハウジング14の内部空間20と外部空間が連通されている。
更にまた、上ハウジング48の下面において、窓部58の開口周縁部には、下方に向かって所定の突出寸法で突出する制限突部64が形成されている。この制限突部64は、窓部58の開口周縁部において、周方向の半分以上の長さに亘って設けられることが好適であり、本実施形態では曲がり部18側を除く領域に連続して形成されている。なお、かかる制限突部64の内周面の操作部28側は、下方に向かって内径寸法が次第に拡径するテーパ面とされている。
さらに、上ハウジング48の上側凹所52における上底壁面には、下方に向かって突出する複数の位置決め突起66が形成されている。本実施形態では、これらの位置決め突起66は、幅方向(図5中の上下方向)両側で互いに対をなすように設けられており、操作部28の先端部分、操作部28の基端部分、把持部32の先端部分の計6カ所に形成されている。
一方、下ハウジング50の操作部28側において、下側凹所54の底面からは上方に所定の突出寸法をもって突出する当接部としての囲繞突部68が設けられている。この囲繞突部68は、周方向に連続して1周未満の長さで延びており、好適には1/2周以上の長さをもって形成されるものであって、本実施形態では3/4周以上の長さをもって形成されている。そして、かかる囲繞突部68の周上開口部70が、曲がり部18側に向かって開口するように配置されている。
この囲繞突部68の突出先端面72は、後述する押圧部材16の押込時において、リザーバ12と相互に当接する相互当接面とされている。また、かかる突出先端面72は、内周側になるにつれて突出寸法が小さくされており、後述する押圧部材16の押込時において、押圧部材16をリザーバ12に対してセンタリングする傾斜案内面とされている。
さらに、下ハウジング50の把持部32側の先端には、下側凹所54の壁面を貫通する切欠状の溝構造をもって、流路導入口74および流路導出口76が形成されている。そして、図4等にも示されているように、囲繞突部68の内周側にリザーバ12が収容配置されると共に、リザーバ12から延び出す流入側チューブ34および流出側チューブ36が、それぞれ囲繞突部68の周上開口部70と、流路導入口74および流路導出口76とにそれぞれ差し入れられており、流路導入口74と流路導出口76を通じて薬液自己注入装置10の外部に延び出している。
更にまた、これら流入側チューブ34および流出側チューブ36の幅方向(図7中の上下方向)両側には、下側凹所54の底面から上方に突出する支持壁部78,78が設けられている。これらの支持壁部78は、下ハウジング50における曲がり部18から把持部32先端までに亘って断続的に形成されており、リザーバ12から薬液自己注入装置10の外部に至る両チューブ34,36が、一対の支持壁部78,78間に嵌め入れられて支持されている。なお、これら一対の支持壁部78,78の対向面間距離は、両チューブ34,36の外径寸法と略同じか、僅かに小さくされて、両チューブ34,36への位置決め保持力を及ぼし得ることが好ましい。
さらに、これら一対の支持壁部78,78の延出方向(図7中の左右方向)において、曲がり部18の両側には、流入側及び流出側チューブ34,36を固定する流路固定部80,80が設けられている。これらの流路固定部80,80では、両支持壁部78,78の上端が対向方向に向かって延び出しており、所定距離を隔てて対向している。これらの流路固定部80,80における支持壁部78,78上端の対向距離は、両チューブ34,36の外径寸法より小さくされており、支持壁部78,78間に嵌め入れられた両チューブ34,36が、支持壁部78,78間の上方開口部から抜け出さないようにされている。
また、曲がり部18における下側凹所54の底壁面には、流入側及び流出側チューブ34,36の幅方向間において、上方に開口する支持筒部82が突設されている。そして、この支持筒部82には、上下方向に延びる支持部スプリング84の下部が差し入れられて固定的に取り付けられている。
さらに、支持筒部82よりも把持部32側において、流入側及び流出側チューブ34,36の幅方向外方には、下側凹所54から上方に突出する突出壁部85,85が形成されている。これら両突出壁部85,85は、上ハウジング48には至らない突出寸法をもって内部空間24内に突出している。なお、本実施形態では、突出壁部85,85は略板状とされており、両チューブ34,36の幅方向外方に位置する支持壁部78,78に対して一体的に形成されている。そして、両突出壁部85,85の先端部分には、回動孔86,86が貫通して形成されている。
更にまた、下ハウジング50の下側凹所54における底壁面には、上方に向かって突出する複数の位置決め筒部87が形成されている。これらの位置決め筒部87は、上ハウジング48の位置決め突起66に対応する位置と形状で形成されており、上方に開口している。そして、各位置決め筒部87の凹所に対して位置決め突起66が上方から圧入され、必要に応じて接着や溶着されることで、上下ハウジング48,50が固着されて、内部空間24を備えるハウジング14が形成されるようになっている。また、本実施形態では、操作部28の先端部分および基端部分における4本の位置決め筒部87aにより、後述する押圧部材16の押込時において、押圧部材16をリザーバ12に対して接近および離隔方向に案内するガイド部が形成されている。
ここにおいて、かかる上下ハウジング48,50間の内部空間24には、押ボタン26を備える操作部材88とリザーバ12が収容配置されている。詳細には、操作部材88における押ボタン26とリザーバ12とが上下方向で対向配置されており、更に、これら押ボタン26とリザーバ12との間に、押圧部材16が配置されている。
操作部材88は、図9,10に示されているように、全体として長手状の部材とされており、長手方向の一方の端部に押ボタン26が設けられていると共に、当該押ボタン26からは、長手方向の他方に向かって湾曲部90が延び出している。また、操作部材88の両側面には、長さ方向の略全長に亘って延びる一対の補強リブ92,92が形成されている。
この操作部材88における押ボタン26は、ハウジング14の窓部58内で上下方向の移動が許容されるように、窓部58の内周面より僅かに小さい外周形状とされており、中央が僅かに窪んだ角丸の矩形板形状とされている。そして、ハウジング14の窓部58を通じて外部へ露呈されることとなる押ボタン26の上面が、当該押ボタン26を外部から操作するための押圧操作面94とされている。なお、かかる押圧操作面94の表面には、患者が、手指30で押圧操作面94に触れていることを認識し易いように、凹凸が付されている。一方、押ボタン26の下面には、下方に突出する支持筒部96が一体形成されている。
また、押ボタン26の長手方向における他方の端部からは、湾曲部90が延び出している。この湾曲部90は、略全長に亘って一定の幅寸法および厚さ寸法を有しており、長手方向の他方に向かうにつれて下方に湾曲する略板形状とされている。そして、かかる湾曲部90における長さ方向の他方の端部には、幅方向一方の側(図2中の上方)において、押圧弁部98が突出して一体形成されており、押圧弁部98が流出側チューブ36に押し付けられることで流出側チューブ36を閉止することが可能とされている。なお、この押圧弁部98は略矩形板形状とされており、図4などに示される初期状態では、操作部材88の中間部分に湾曲部90が設けられることによって、押圧弁部98が押ボタン26に対して略垂直に下方向へ突出して広がっている。
さらに、湾曲部90の下面において、長手方向における押圧弁部98と反対側の端部付近には、下方に突出する筒状の支持部100が形成されている。この支持部100は、操作部材88の長さ方向および幅方向の略中央部分に形成されており、図4などに示される製品状態において、下ハウジング50の支持筒部82と対向する位置に形成されている。また、支持部100の外径寸法は、支持筒部82の内径寸法より僅かに小さくされている。
更にまた、補強リブ92,92において湾曲部90に相当する部分からは、長手方向で支持部100よりも押圧弁部98側に位置して、操作部材88の幅方向外方に向かって突出する回動軸101,101が設けられている。この回動軸101,101の外径寸法は、下ハウジング50の突出壁部85,85における回動孔86,86の内径寸法と略等しくされており、回動孔86,86に対して回動軸101,101を挿し入れて回動可能に支持させ得るようになっている。
一方、押ボタン26と上下方向で対向して配置されるリザーバ12は、図4にも示されているように平面円形袋状を呈している。このリザーバ12は薄肉の合成樹脂等の可撓性シート材により形成されており、例えば2枚の熱可塑性樹脂シートを重ね合わせて外周縁部を溶着等の手段により相互に固着されることで、中央部分102が両シートの重ね合わせ方向に離隔及び接近して拡縮可能な袋状とされている。また、このリザーバ12の上面が、押圧部材16と上下方向で対向する対向面104とされている。かかるリザーバ12が、下ハウジング50における囲繞突部68の内周側に配置されると共に、リザーバ12に対して流入側チューブ34および流出側チューブ36が接続されている。
さらに、かかる押ボタン26とリザーバ12との上下方向間には、図11〜13に示される如き押圧部材16が配設されている。この押圧部材16は、全体として薄肉の平板形状とされており、長さ方向(図11中の左右方向)および幅方向(図11中の上下方向)の両端の四隅にはそれぞれ切欠形状の係合凹部106が形成されている。また、押圧部材16の中央部分には、下方に突出する押圧筒部108が一体形成されていると共に、当該押圧筒部108の下方開口部が底壁部110によって覆蓋されてピストン形状とされている。換言すれば、底壁部110によって下方開口部が覆蓋された有底筒形状の押圧筒部108において、上方開口部の開口周縁部から水平方向にフランジ状の平板部112が広がることによって、押圧部材16が形成されている。更に、押圧部材16の上面中央には、押圧筒部108よりも大きな内径寸法を有する円形凹部114が設けられて、上方に開口している。また、底壁部110の下面は、リザーバ12の対向面104と対向する押圧面116とされており、押圧面116の径寸法が、リザーバ12における対向面104側の外径寸法より小さくされている。
更にまた、平板部112の下面には、下方に突出する当接部としての当接突部118が形成されている。この当接突部118は、押圧筒部108の外周側を周方向に連続して形成されており、好適には1/2周以上の長さをもって形成されるものであって、本実施形態では下ハウジング50の囲繞突部68に対応して3/4周以上1周未満の長さをもって形成されている。そして、かかる当接突部118の周上開口部120が、曲がり部18側に向かって開口するように配置されている。なお、囲繞突部68と当接突部118とは、後述する押圧部材16の押込時において、リザーバ12の外周側で当接するように対向配置されており、当接突部118の突出先端面122が、囲繞突部68の突出先端面72と当接する相互当接面とされている。また、突出先端面122は、外周側になるにつれて突出寸法が小さくされており、押圧部材16をリザーバ12に対してセンタリングする傾斜案内面とされている。特に、本実施形態では、囲繞突部68の突出先端面72と押圧部材16の突出先端面122との傾斜角度が略等しくされており、囲繞突部68と当接突部118とが略対応する形状とされている。
また、押圧部材16と押ボタン26との対向面間には、上下方向に延びる操作部スプリング124が配設されている。なお、この操作部スプリング124の下端は、押圧部材16における円形凹部114で位置決めされて固定的に取り付けられている。
上記の如き構造とされた操作部材88と押圧部材16とリザーバ12とが、ハウジング14の内部空間24の所定位置にそれぞれ収容されて上下方向で互いに重なるように配置されている。即ち、下ハウジング50の囲繞突部68の内周側にリザーバ12が位置決め配置されており、必要に応じてリザーバ12の下面と下側凹所54の底壁面とが接着等により固着されている。そして、当該リザーバ12から延び出す流入側及び流出側チューブ34,36がそれぞれ、流路固定部80,80で固定されつつ支持壁部78,78間に嵌め入れられて、流路導入口74および流路導出口76から外部へ延び出している。
また、リザーバ12の上部には押圧部材16が重ね合わされて配置されている。即ち、操作部28の先端部分と基端部分において、下ハウジング50から上方に突出する4本の各位置決め筒部87aに対して、押圧部材16の四隅に設けられた各係合凹部106を位置合わせさせることにより、押圧部材16が下ハウジング50の下側凹所54内の所定位置に配置されている。具体的には、切欠状の各係合凹部106内に各位置決め筒部87aが位置することで、押圧部材16が各位置決め筒部87aの内側で位置決めされる。この際、下ハウジング50に設けられた囲繞突部68と押圧部材16に設けられた当接突部118とが上下方向に所定距離を隔てて対向していると共に、押圧部材16の押圧面116がリザーバ12の中央部分102の上面である対向面104に対向するようにされている。なお、各位置決め筒部87aと各係合凹部106とは、ゼロタッチで当接していてもよいし、僅かな離隔距離をもって対向していてもよい。また、リザーバ12の対向面104と押圧部材16の押圧面116とは接着されていてもよいし、非接着であってもよい。
さらに、押圧部材16の上部には操作部材88が所定距離を隔てて重ね合わされて配置されており、押圧部材16と操作部材88の押ボタン26とが対向している。そして、下ハウジング50の支持筒部82で下端を支持された支持部スプリング84の上端部分が、操作部材88に設けられた支持部100に外挿されて、湾曲部90の下面に固定的に取り付けられている。また、下ハウジング50の突出壁部85,85における回動孔86,86に対して、操作部材88の幅方向両側に突出する回動軸101,101が挿入されている。これにより、操作部材88が、下ハウジング50に対して、回動軸101,101を中心として揺動可能に軸支されて位置決め保持されている。一方、押圧部材16における押圧筒部108の開口部に設けられた円形凹部114で下端を支持された操作部スプリング124の上端部分が、押ボタン26の下面に設けられた支持筒部96に外挿されて固定的に取り付けられている。なお、この操作部スプリング124は、押圧部材16と押ボタン26との間において、圧縮状態で装着されていてもよい。
かかる操作部材88の上方から上ハウジング48が被せられて、上下ハウジング48,50における上下凹所52,54の開口周縁部が重ね合わされる。それと共に、各位置決め筒部87に対して位置決め突起66が圧入されて、必要に応じて接着等の処理が施されることにより、本実施形態の薬液自己注入装置10が構成されている。かかる薬液自己注入装置10の組立状態では、押ボタン26がハウジング14の窓部58と位置合わせされて、押ボタン26の押圧操作面94が窓部58を通じて外周側に露出しており、押ボタン26が薬液自己注入装置10の外周側から操作可能とされている。また、流入側チューブ34において、リザーバ12と接続されていない側の端部は、薬液が貯留されている薬液タンク等が接続される一方、流出側チューブ36において、リザーバ12と接続されていない側の端部は、血管に穿刺された状態で留置された留置針などが接続される。これにより、薬液タンク等から流入側チューブ34、リザーバ12、流出側チューブ36および留置針などを経て、体内へと至る流体流路が構成される。なお、流入側及び流出側チューブ34,36に接続される薬液タンクや留置針などの図示は省略する。
ここにおいて、流入側チューブ34は常時連通状態とされており、図4等に示される初期状態では、薬液タンクから流入側チューブ34を経てリザーバ12に薬液が充填されている。かかる初期状態では、リザーバ12が拡張して押圧部材16が初期位置まで押し上げられている。なお、押圧部材16の初期位置は、押圧部材16の押圧面116がリザーバ12の対向面104と当接していると共に、平板部112の上面が上ハウジング48における制限突部64の突出先端面と当接することで規定されている。
また、リザーバ12の拡張に伴い、かかる押圧部材16の上部に設けられた操作部スプリング124により、操作部材88の一方の端部である押ボタン26の押圧操作面94が窓部58を通じて外部に露呈する初期位置に押し上げられる。なお、押ボタン26は、外部からの押圧操作時以外は、リザーバ12の拡縮状態や押圧部材16の位置に拘わらず、操作部スプリング124の付勢力により、かかる初期位置へ押し上げられた状態に弾性的に保持されるようになっていることが望ましい。一方、操作部材88には、支持部スプリング84の付勢力により回動軸101,101回りの回動力が及ぼされており、支持部100を支点として、操作部材88の他方の端部に設けられた押圧弁部98が下方へ押し下げられている。これにより、本実施形態では、操作部材88を押圧方向と反対の回動方向へ付勢する付勢手段が支持部スプリング84により構成されており、押圧弁部98が流出用チューブ36を押し潰すように遮断した状態に保持されていることから、初期状態では流体流路が閉鎖状態とされている。
そして、患者が痛みを感じてリザーバ12に貯留された鎮痛剤等の薬液を投与する場合には、例えば薬液自己注入装置10を図1に二点鎖線で示されるように握り、親指等で押ボタン26を内側に押し込むことで、患者の体内に薬液が注入される。即ち、図14,15に示されているように、押ボタン26に及ぼされる押込操作力が操作部材88に対して支持部スプリング84の付勢力と反対向きに及ぼされて、操作部材88が回動軸101,101回りで図4中の左回りに回動変位させられる。そして、この操作部材88の回動変位により、押ボタン26への押込力が操作部スプリング124を介して押圧部材16に及ぼされて、押圧部材16をリザーバ12の押圧方向である下方に変位させる。それと合わせて、操作部材88において長さ方向で押ボタン26と反対側の端部に設けられた押圧弁部98が上方へと変位して流出側チューブ36から離隔させられる。これにより、リザーバ12からの流出流体圧の上昇に伴う流出側チューブ36の膨張力作用に加えて、押圧弁部98が押し付けられることによる流出側チューブ36の遮断が解除されて、流出側チューブ36、即ち流体流路が連通状態とされる。
そして、かかる押ボタン26および押圧部材16の押込操作に際して、押圧部材16の各係合凹部106内に、下ハウジング50の下側凹所54から上方に延び出す位置決め筒部87aが入り込んでいることから、押圧部材16が位置決め筒部87aに案内されつつ、リザーバ12に対して接近方向に変位する。
さらに、押圧部材16の当接突部118における突出先端面122と、リザーバ12の外周側に設けられた囲繞突部68における突出先端面72とが、略等しい傾斜角度で対向していることから、両突出先端面72,122が相互に当接して、押圧部材16の押圧面116がリザーバ12の中央部分102へ案内される。
かかる案内作用が発揮されつつ押圧部材16が下方に変位させられることにより、押圧部材16の押圧面116がリザーバ12の中央部分102へ押し付けられると共に、リザーバ12に貯留されていた薬液が押し出されて、患者の体内へと注入される。なお、押圧部材16の下方への変位は、押圧部材16の当接突部118と下ハウジング50の囲繞突部68とのそれぞれの突出先端面122,72が相互に当接することに加えて、押圧部材16の押圧面116がリザーバ12を介して下ハウジング50における下側凹所54の底壁面と当接することにより規定されてもよい。
なお、保護突部62に凹溝62が設けられてハウジング14の内部空間24と外部空間が連通されていることにより、押ボタン26の押込みによるリザーバ12の圧縮時や押込力解除によるリザーバ12の復元時において、内部空間24の密閉性が回避されて、リザーバ12のスムーズな変形が許容されている。更に、制限突部64の内周面が下方に向かって内径寸法が次第に拡径するテーパ面とされていることにより、押ボタン26の押込み時において、押ボタン26と制限突部64が当接して押込み操作に不具合が発生するおそれが低減されている。
また、薬液の注入後は、親指を押ボタン26から離したりして押込力を解除することで、薬液タンクから流入側チューブ34を経てリザーバ12に薬液が流入して、リザーバ12が再び拡張されると共に、押圧部材16が押圧方向と反対の方向に移動して初期位置へと押し上げられる。これにより、押圧弁部98が再び下方へ押し下げられて流出側チューブ36、即ち流体流路が遮断される。かかる押圧部材16におけるリザーバ12の押圧方向と反対の方向への変位量は、制限突部64の突出先端面と平板部112の上面が当接することにより制限されて、これらが当接する位置まで押圧部材16が押し上げられることで、図4に示される初期状態に戻ることとなる。なお、操作部スプリング124の付勢力は、流入側チューブ34に接続される薬液タンクからリザーバ12へ薬液を流入させる圧力によって、リザーバ12が図4に示すように初期状態へ膨らむことを許容する程度とされている。
ここにおいて、上記の如き上下ハウジング48,50、操作部材88、押圧部材16等は、硬質の合成樹脂等により好適に形成され得る。また、流入側及び流出側チューブ34,36の材質としては、軟質の合成樹脂の他、流路固定部80が設けられる場合には、比較的剛性の大きい合成樹脂により形成されてもよい。
上記の如き構造とされた本実施形態の薬液自己注入装置10では、押圧部材16の押込時において、押圧部材16のリザーバ12に対する接近方向の変位が、押圧部材16の当接突部118と、リザーバ12の外周側に設けられた囲繞突部68との当接によって規定される。その際、当接突部118の突出先端面122と囲繞突部68の突出先端面72とが相互に対応する傾斜面形状とされていることから、両突出先端面72,122が相互に当接しながら、押圧部材16の押圧面116を確実にリザーバ12の中央部分102に案内させることができる。これにより、押圧部材16の押圧面116が、リザーバ12の中央部分102を外れた位置を押圧することが回避されて、所定量の薬液を安定して排出することが可能とされている。
特に、本実施形態では、押圧部材16の周囲に設けられた係合凹部106に対して下ハウジング50から上方に突出する位置決め筒部87aが入り込んでおり、押圧部材16のリザーバ12に対する接近および離隔方向の変位が、これらの位置決め筒部87aに案内されるようにされている。これにより、押ボタン26の押圧操作に際して、押圧部材16が当接突部118と囲繞突部68とが当接するより前から、押圧部材16にはリザーバ12に対してある程度のセンタリング作用が発揮されることとなり、例えばリザーバ12の押圧初期から押圧位置の精度が確保されることで、最終的に押圧部材16が押圧端に至るまでの作動がよりスムーズとされ得る。また、位置決め筒部87aの案内作用で、押圧部材16の傾斜も抑えられることから、リザーバ12に対する押圧面116の傾斜が低減または回避され得て、リザーバ12における薬液の給排量の更なる高精度化と安定化が図られ得る。
また、本実施形態では、リザーバ12における対向面104側の外径寸法に対して、押圧部材16の押圧面116の径寸法が小さくされていると共に、リザーバ12と押圧面116とが略同一中心軸上に配されて押圧面116でリザーバ12の中央部分102の所定位置が押圧されるようになっていることから、少量の薬液流出量の設定も、流量の精度と安定性を高度に確保しつつ容易に実現可能となる。しかも、リザーバ12の外周縁部が溶着されて凹凸がある場合や、流入側チューブ34および流出側チューブ36の接続部分における剛性が大きくされる場合でも、これらを避けて、押圧部材16の押圧面116がリザーバ12の中央部分102を精度良く安定して押圧することが可能となる。これにより、一層精度良く、所定量の薬液が排出され得る。
さらに、本実施形態では、操作部材88が設けられて長さ方向一方の側に押ボタン26が設けられると共に、他方の側に押圧弁部98が設けられて、この押ボタン26の押込みおよび解除により流出側チューブ36、即ち流体流路が連通および閉鎖される。従って、押ボタン26を押込むだけの簡単な操作により、患者自らが薬液を体内に注入することができる。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明は上述の具体的な記載によって何等限定的に解釈されるものでない。
例えば、前記実施形態では、ハウジング14に曲がり部18が設けられて、操作部28と把持部32が相互に屈曲する形状とされていたが、曲がり部は必須なものではなく、ハウジングは直線状であってもよい。或いは、長さ方向で複数の湾曲部や屈曲部を連続的に組み合わせて曲がり部を構成することも可能である。なお、ハウジングに曲がり部が設けられる場合には、操作部と把持部との屈曲角θ(図3参照)は、適宜、設計変更することができるが、把持のし易さを考慮すると、0°<θ≦135°とされて、好適には0°<θ≦90°、更に好適には、30°≦θ≦60°の範囲内に設定される。屈曲角θをこの範囲に設定することにより、図1に示されるように、薬液自己注入装置10の内周側(図3中の下方)における操作部28と把持部32との間の隙間38に、例えば人差指以下4本の手指を差し入れ易くなって、患者が把持部32を容易に握ることができる。かかる屈曲角θは、一般には、ハウジングの厚さ方向の中央をつないだ中心軸で設計することとなるが、本実施形態では、操作部28における分割ライン56と平行な直線126(図3参照)と、把持部32における分割ライン56と平行な直線128(図3参照)とが作る角とされている。
また、前記実施形態では、把持部32には平坦面40が設けられて、把持部32の内周側面は長さ方向中間部分で屈曲していたが、かかる形状に限定されない。即ち、操作部が長さ方向中間部分で屈曲または湾曲していたり、把持部に対して平坦面を設けなくてもよい。なお、把持部32における分割ライン56と平行な直線128と平坦面40との傾斜角をα(図3参照)とすると共に、把持部32における分割ライン56と平行な直線128と載置面44との傾斜角をβ(図3参照)とすると、5°≦α,β≦60°とされることが好ましく、より好適には10°≦α,β≦30°の範囲内に設定される。傾斜角α,βの大きさを上記の数値範囲内に設定することにより、薬液自己注入装置10の隙間38に手指を差し入れて把持し易くなると共に、クリップ42を設けるための領域を巧く確保することができる。
また、前記実施形態では、押圧部材16の押圧面116によりリザーバ12の中央部分102が押圧されていたが、リザーバ12を押圧する押圧面116の大きさは、一回の押圧操作で流出させる薬液の流量を設定するに際して適宜に調節することが可能であり、例えば一回の押圧操作に際しての流出薬液量を大きく設定する場合には、押圧面によりリザーバの上面の全体を押圧するようにしてもよい。更に、押圧部材の形状は前記実施形態の形状に限定されず、例えば押ボタンと押圧部材が一体とされた形状であってもよい。尤も、本発明において、押ボタンは必須ではなく、例えば窓部を通じて直接押圧部材を押圧してもよい。
さらに、前記実施形態では、当接部としての囲繞突部68および当接突部118が、それぞれ周方向に連続して形成されていたが、少なくとも一方が周方向において断続的に形成されていてもよい。また、それぞれの突出先端面72,122がそれぞれ傾斜案内面とされていたが、その必要はなく、少なくとも一方の突出先端面が傾斜案内面とされればよい。
更にまた、前記実施形態では、操作部28の先端部分の内周側面、クリップ42の先端部分および基端部分が、それぞれ載置面44に対する当接部46a,46b,46cとされていたが、本発明において、クリップは必須ではない。クリップが設けられない場合は、例えば下ハウジングの内周側面に突起物を設けて当接部としたり、下ハウジングの内周側面自体を当接部としてもよい。尤も、かかる当接部は必須なものではない。
さらに、ハウジングの横断面は、前記実施形態の如き矩形枠形状に限定されず、三角形の枠形状や半円形の枠形状など、任意の形状が採用され得る。
更にまた、前記実施形態では、流路固定部80は、一対の支持壁部78,78の上端部分が相互の対向方向に延び出す形状とされていたが、かかる態様に限定されない。即ち、例えば上ハウジングから下方に延び出す突起などを設けて、流入側及び流出側チューブを上下方向で固定するなどしてもよい。尤も、流路固定部は必須なものではない。
また、押ボタンはハウジングの外周側に設けられる必要はなく、ハウジングの内周側や側方側に設けられてもよい。更に、流入側及び流出側チューブは、把持部先端から外部に延び出す必要はなく、操作部やハウジングの側方側から延び出していてもよい。尤も、流入側チューブと流出側チューブは同一の方向に延び出す必要はない。
更にまた、前記実施形態では、操作部材88を回動軸101,101回りで付勢する支持部スプリング84が採用されていたが、押ボタン26に及ぼされる操作力とは反対回りの方向に操作部材を付勢する構造であればよく、回動軸101にスプリングを外挿装着したり、操作部スプリング124で代用したり、実施形態の圧縮コイルスプリングに代えて引張コイルスプリングを採用して回動軸101,101よりも押圧弁部98側に配することなども可能である。
さらに、前記実施形態では、押圧部材16に設けられた各係合凹部106に対して、下ハウジング50に設けられたガイド部としての各位置決め筒部87aが入り込んで、位置決めおよび案内作用が発揮されていたが、かかる態様に限定されない。即ち、例えば位置決め筒部に代えて、または加えて、ハウジング内に押圧部材の移動方向に延びる複数本の平行なガイドレールを設けてもよい。または、ハウジングに凹部や貫通孔が設けられる一方、押圧部材に、それらに対応するガイド部が設けられてもよい。尤も、本発明において、押圧部材の移動を案内するガイド機構は必須ではない。
なお、本発明において使用される薬液としては、鎮痛剤や麻酔剤の他、定期的にまたは緊急的に血管内に注入されることで症状を和らげる薬液などが好適に採用される。