JP2016019620A - ゴルフボール - Google Patents

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Abstract

【課題】耐久性に優れたゴルフボールを提供する。
【解決手段】球状コアと球状コアを被覆する少なくとも一層以上のカバー12とを有するゴルフボールであって、球状コアは、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤、(d)石油樹脂を含有し、(b)共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸のみを含有する場合には、さらに(e)金属化合物を含有するゴム組成物から形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、耐久性に優れたゴルフボールに関するものであり、より詳細には、ゴルフボールのコアの改良に関するものである。
ゴルフボールの耐久性を増大させる方法としては、例えば、コアやカバー、中間層に無機充填剤を配合する方法(例えば、特許文献1参照)や、コアの表面処理によりカバーとの接着を向上させる方法(例えば、特許文献2参照)があるが、これらの方法でゴルフボールの耐久性を向上させるのには限界があり、より耐久性を向上させたゴルフボールの開発が望まれている。
特開2003−126298号公報 特開平7−155401号公報
本発明は、前記課題を解決し、耐久性に優れたゴルフボールを提供することを目的とする。
本発明のゴルフボールは、球状コアと前記球状コアを被覆する少なくとも一層以上のカバーとを有するゴルフボールであって、前記球状コアは、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤、(d)石油樹脂を含有し、(b)共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸のみを含有する場合には、さらに(e)金属化合物を含有するゴム組成物から形成されていることを特徴とする。
前記ゴム組成物は、(a)基材ゴム100質量部に対して、(d)石油樹脂を0.01質量部〜15.0質量部含有するものであることが好ましい。
前記ゴム組成物は、(b)共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩を含有するものであることが好ましい。
(d)石油樹脂は、主鎖に不飽和結合を持たない構造を基本骨格とする化合物であることが好ましい。
前記ゴム組成物は、さらに(f)有機硫黄化合物を含有することが好ましい。
(f)有機硫黄化合物は、チオフェノール類、ジフェニルジスルフィド類、チオナフトール類、チウラムジスルフィド類、または、これらの金属塩であることが好ましい。
前記ゴム組成物は、(a)基材ゴム100質量部に対して、(f)有機硫黄化合物を0.05〜5質量部含有するものであることが好ましい。
前記ゴム組成物は、(a)基材ゴム100質量部に対して、(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩を15〜50質量部含有するものであることが好ましい。
本発明によれば、球状コアと前記球状コアを被覆する少なくとも一層以上のカバーとを有するゴルフボールであって、前記球状コアは、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤、(d)石油樹脂を含有し、(b)共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸のみを含有する場合には、さらに(e)金属化合物を含有するゴム組成物から形成されていることを特徴とするゴルフボールであるので、耐久性に優れたゴルフボールを提供することができる。
本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された一部切り欠き断面図。
本発明のゴルフボールは、球状コアと前記球状コアを被覆する少なくとも一層以上のカバーとを有するゴルフボールであって、前記球状コアは、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤、(d)石油樹脂を含有し、(b)共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸のみを含有する場合には、さらに(e)金属化合物を含有するゴム組成物から形成されていることを特徴とする。
基材ゴム、所定の共架橋剤、架橋開始剤、必要に応じて金属化合物を含む特定の配合ゴムに、更に石油樹脂を添加することにより、これを球状コアに用いたゴルフボールの耐久性が顕著に改善され、他の配合ゴムに添加する場合に比べ、大幅に改善することが可能となる。
まず、本発明で使用する(a)基材ゴムについて説明する。(a)基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、特に、反発に有利なシス−1,4−結合を、40質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上有するハイシスポリブタジエンが好適である。
前記ハイシスポリブタジエンは、1,2−ビニル結合の含有量が2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.7質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。1,2−ビニル結合の含有量が多すぎると反発性が低下する場合がある。
前記ハイシスポリブタジエンは、希土類元素系触媒で合成されたものが好適であり、特に、ランタン系列希土類元素化合物であるネオジム化合物を用いたネオジム系触媒の使用が、1,4−シス結合が高含量、1,2−ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得られるので好ましい。
前記ハイシスポリブタジエンは、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が、30以上であることが好ましく、より好ましくは32以上、さらに好ましくは35以上であり、140以下が好ましく、より好ましくは120以下、さらに好ましくは100以下、最も好ましくは80以下である。なお、本発明でいうムーニー粘度(ML1+4(100℃))とは、JIS K6300に準じて、Lローターを使用し、予備加熱時間1分間、ローターの回転時間4分間、100℃の条件下にて測定した値である。
前記ハイシスポリブタジエンとしては、分子量分布Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が、2.0以上であることが好ましく、より好ましくは2.2以上、さらに好ましくは2.4以上、最も好ましくは2.6以上であり、6.0以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下、最も好ましくは3.4以下である。ハイシスポリブタジエンの分子量分布(Mw/Mn)が小さすぎると作業性が低下し、大きすぎると反発性が低下するおそれがある。なお、本明細書では、重合体や樹脂の分子量分布、重量平均分子量、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー社製、「HLC−8120GPC」)により、検知器として示差屈折計を用いて、カラム:GMHHXL(東ソー社製)、カラム温度:40℃、移動相:テトラヒドロフランの条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として算出した値である。
次に、(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩について説明する。(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は、共架橋剤として、ゴム組成物に配合されるものであり、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有する。本発明で使用するゴム組成物が、共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸のみを含有する場合、ゴム組成物は、必須成分として(e)金属化合物をさらに含有する。ゴム組成物中で炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸を金属化合物で中和することにより、共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩を使用する場合と実質的に同様の効果が得られるからである。また、共架橋剤として、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とその金属塩とを併用する場合においては、任意成分として(e)金属化合物を用いてもよい。
炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等を挙げることができる。
炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの一価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属イオン;アルミニウムなどの三価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。前記金属成分は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。これらの中でも、前記金属成分としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属が好ましい。炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の二価の金属塩を用いることにより、ゴム分子間に金属架橋が生じやすくなるからである。特に、二価の金属塩としては、得られるゴルフボールの反発性が高くなるということから、アクリル酸亜鉛が好適である。なお、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用しても良い。
(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量が15質量部未満では、ゴム組成物から形成される部材を適当な硬さとするために、後述する(c)架橋開始剤の量を増加しなければならず、ゴルフボールの反発性が低下する傾向がある。一方、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量が50質量部を超えると、ゴム組成物から形成される部材が硬くなりすぎて、ゴルフボールの打球感が低下するおそれがある。
(c)架橋開始剤は、(a)基材ゴム成分を架橋するために配合されるものである。(c)架橋開始剤としては、有機過酸化物が好適である。前記有機過酸化物は、具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でもジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。
(c)架橋開始剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは2.5質量部以下である。0.2質量部未満では、ゴム組成物から形成される部材が柔らかくなりすぎて、ゴルフボールの反発性が低下する傾向があり、5.0質量部を超えると、ゴム組成物から形成される部材を適切な硬さにするために、前述した(b)共架橋剤の使用量を減少する必要があり、ゴルフボールの反発性が不足したり、耐久性が悪くなるおそれがある。
次に、(d)石油樹脂について説明する。前記(a)〜(c)成分に更に(d)石油樹脂を配合することで、耐久性が向上する。
本発明で使用する(d)石油樹脂とは、石油化学工業で用いられるナフサ分解の副生油の一部(C5留分やC9留分など)の重合により生成した樹脂を指し、C5の鎖状オレフィン混合物をカチオン重合したC5系石油樹脂、ジシクロペンタジエン留分を熱重合したジシクロペンタジエン系石油樹脂、C9芳香族オレフィン類混合物をカチオン重合したC9系石油樹脂、C5C9共重合石油樹脂、C9留分に含有されるアルファメチルスチレンを抜き取り、純アルファメチルスチレンで製造したピュアモノマーレジンと呼ばれる石油樹脂、およびこれらを水素添加した樹脂などが挙げられる。なかでも、耐久性の点から、C9系石油樹脂、C5C9共重合石油樹脂が好ましい。
また、(d)石油樹脂は、主鎖に不飽和結合を持たない構造を基本骨格とする化合物(重合体)を好適である。例えば、前記(a)〜(c)成分にテルペンやロジンを基本骨格とする重合体を添加した球状コアに比べ、石油樹脂を添加したものを用いた方が、ゴルフボールの耐久性が大幅に改善される。
(d)石油樹脂の重量平均分子量(Mw)は、500以上が好ましく、800以上がより好ましい。また、該Mwは、50000以下が好ましく、10000以下がより好ましく、5000以下が更に好ましい。上記範囲内に調整することで、良好な耐久性が得られる。
(d)石油樹脂の軟化点は、70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。また、該軟化点は、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。上記範囲内に調整することで、良好な耐久性が得られる。
なお、(d)石油樹脂の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
本発明では、(d)石油樹脂として市販品を使用でき、東ソー社製「ペトコール」(C9系石油樹脂)、「ペトロタック」(C5C9系共重合石油樹脂)などが挙げられる。
(d)石油樹脂の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、より好ましくは0.05質量部以上であって、好ましくは15.0質量部以下、より好ましくは10.0質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下である。0.01質量部未満では、添加による耐久性の向上効果が低くなる傾向がある。15.0質量部を超えると、ゴルフボールの反発性が低下する傾向がある。
本発明に用いられるゴム組成物が、共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸のみを含有する場合、ゴム組成物は、必須成分として、(e)金属化合物をさらに含有する。(e)前記金属化合物としては、ゴム組成物中において(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸を中和することができるものであれば、特に限定されない。(e)前記金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。(e)前記金属化合物として好ましいのは、二価金属化合物であり、より好ましくは亜鉛化合物である。二価金属化合物は、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸と反応して、金属架橋を形成するからである。また、亜鉛化合物を用いることにより、反発性の高いゴルフボールが得られる。これらの(e)金属化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いられるコア用ゴム組成物は、さらに(f)有機硫黄化合物を含有することが好ましい。(f)有機硫黄化合物としては、分子内に硫黄原子を有する有機化合物であれば、特に限定されず、例えば、チオール基(−SH)、または、硫黄数が2〜4のポリスルフィド結合(−S−S−、−S−S−S−、または、−S−S−S−S−)を有する有機化合物、あるいはこれらの金属塩(−SM、−S−M−S−、−S−M−S−S−,−S−S−M−S−S−,−S−M−S−S−S−など、Mは金属原子)を挙げることができる。また、(f)前記有機硫黄化合物は、脂肪族化合物(脂肪族チオール、脂肪族チオカルボン酸、脂肪族ジチオカルボン酸、脂肪族ポリスルフィドなど)、複素環式化合物、脂環式化合物(脂環式チオール、脂環式チオカルボン酸、脂環式ジチオカルボン酸、脂環式ポリスルフィドなど)、および、芳香族化合物のいずれであってもよい。(f)有機硫黄化合物としては、例えば、チオフェノール類、チオナフトール類、ポリスルフィド類、チオカルボン類、ジチオカルボン類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、チアゾール類などを挙げることができる。球状コアの硬度分布が大きくなるという観点から、(f)有機硫黄化合物としては、チオール基(−SH)を有する有機硫黄化合物、または、その金属塩が好ましく、チオフェノール類、チオナフトール類、ジフェニルジスルフィド類、チウラムジスルフィド類、または、これらの金属塩がより好ましい。金属塩としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、銅(I)、銀(I)などの一価の金属塩、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン(II)、マンガン(II)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、ジルコニウム(II)、スズ(II)等の二価の金属塩が挙げられる。
チオフェノール類としては、例えば、チオフェノール;2−フルオロチオフェノール、4−フルオロチオフェノール、2,4−ジフルオロチオフェノール、2,5−ジフルオロチオフェノール、2,6−ジフルオロチオフェノール、2,4,5−トリフルオロチオフェノール、2,4,5,6−テトラフルオロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノールなどのフルオロ基で置換されたチオフェノール類;2−クロロチオフェノール、4−クロロチオフェノール、2,4−ジクロロチオフェノール、2,5−ジクロロチオフェノール、2,6−ジクロロチオフェノール、2,4,5−トリクロロチオフェノール、2,4,5,6−テトラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノールなどのクロロ基で置換されたチオフェノール類;2−ブロモチオフェノール、4−ブロモチオフェノール、2,4−ジブロモチオフェノール、2,5−ジブロモチオフェノール、2,6−ジブロモチオフェノール、2,4,5−トリブロモチオフェノール、2,4,5,6−テトラブロモチオフェノール、ペンタブロモチオフェノールなどのブロモ基で置換されたチオフェノール類;2−ヨードチオフェノール、4−ヨードチオフェノール、2,4−ジヨードチオフェノール、2,5−ジヨードチオフェノール、2,6−ジヨードチオフェノール、2,4,5−トリヨードチオフェノール、2,4,5,6−テトラヨードチオフェノール、ペンタヨードチオフェノールなどのヨード基で置換されたチオフェノール類;または、これらの金属塩が挙げられる。金属塩としては、亜鉛塩が好ましい。
ナフタレンチオール類(チオナフトール類)としては、例えば、2−ナフタレンチオール、1−ナフタレンチオール、2−クロロ−1−ナフタレンチオール、2−ブロモ−1−ナフタレンチオール、2−フルオロ−1−ナフタレンチオール、2−シアノ−1−ナフタレンチオール、2−アセチル−1−ナフタレンチオール、1−クロロ−2−ナフタレンチオール、1−ブロモ−2−ナフタレンチオール、1−フルオロ−2−ナフタレンチオール、1−シアノ−2−ナフタレンチオール、1−アセチル−2−ナフタレンチオール、またはこれらの金属塩を挙げることができ、1−ナフタレンチオール、2−ナフタレンチオール、または、これらの亜鉛塩が好ましい。
ジフェニルジスルフィド類としては、例えば、ジフェニルジスルフィド;ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(4−シアノフェニル)ジスルフィド等のモノ置換体;ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−クロロ−5−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−5−ブロモフェニル)ジスルフィド等のジ置換体;ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−4−クロロ−6−ブロモフェニル)ジスルフィド等のトリ置換体;ビス(2,3,5,6−テトラクロロフェニル)ジスルフィド等のテトラ置換体;ビス(2,3,4,5,6−ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニル)ジスルフィド等のペンタ置換体;または、これらの金属塩が挙げられる。金属塩としては、亜鉛塩が好ましい。
スルフェンアミド類としては、例えば、N−シクロへキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドが挙げられる。チウラム類としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラムモノスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラムテトラスルフィド類;が挙げられる。ジチオカルバミン酸塩類としては、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸銅(II)、ジメチルジチオカルバミン酸鉄(III)、ジエチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルルなどを挙げることができる。チアゾール類としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、亜鉛塩、銅塩、または、シクロヘキシルアミン塩、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モリホリノチオ)ベンゾチアゾールなどを挙げることができる。
(f)前記有機硫黄化合物は、単独もしくは二種以上を混合して使用することができる。
(f)有機硫黄化合物の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは2.0質量部以下である。0.05質量部未満では、(f)有機硫黄化合物を添加した効果が得られず、ゴルフボールの反発性が向上しないおそれがある。また、5.0質量部を超えると、得られるゴルフボールの圧縮変形量が大きくなって、反発性が低下するおそれがある。
本発明に用いられるゴム組成物は、更に(g)カルボン酸および/またはその塩を含有することが好ましい。(g)カルボン酸および/またはその塩は、コア成形時にコア中心部において、(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩による金属架橋を切断する作用を有するものと考えられる。
(g)カルボン酸および/またはその塩は、脂肪族カルボン酸(本発明において、単に「脂肪酸」と称する場合がある)および/またはその塩、あるいは、芳香族カルボン酸および/またはその塩のいずれであってもよい。前記カルボン酸および/またはその塩としては、炭素数が1〜30のカルボン酸および/またはその塩が好ましく、炭素数が4〜25のカルボン酸および/またはその塩がより好ましい。なお、(g)カルボン酸および/またはその塩には、共架橋剤として使用する(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は含まれないものとする。
前記脂肪酸は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれであっても良いが、飽和脂肪酸であることが好ましい。
前記脂肪酸の具体例としては、例えば、ギ酸(C1)、酢酸(C2)、プロピオン酸(C3)、酪酸(C4)、吉草酸(C5)、カプロン酸(C6)、エナント酸(C7)、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、ミリストレイン酸(C14)、ペンタデシル酸(C15)、パルミチン酸(C16)、パルミトレイン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、エライジン酸(C18)、バクセン酸(C18)、オレイン酸(C18)、リノール酸(C18)、リノレン酸(C18)、12−ヒドロキシステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ガドレイン酸(C20)、アラキドン酸(C20)、エイコセン酸(C20)、ベヘニン酸(C22)、エルカ酸(C22)、リグノセリン酸(C24)、ネルボン酸(C24)、セロチン酸(C26)、モンタン酸(C28)、メリシン酸(C30)などを挙げることができる。前記脂肪酸は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。
芳香族カルボン酸は、芳香環とカルボキシル基とを有する化合物であれば特に限定されない。芳香族カルボン酸の具体例としては、例えば、安息香酸(C7)、フタル酸(C8)、イソフタル酸(C8)、テレフタル酸(C8)、ヘメミリット酸(ベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸)(C9)、トリメリット酸(ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸)(C9)、トリメシン酸(ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸)(C9)、メロファン酸(ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸)(C10)、プレーニト酸(ベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボン酸)(C10)、ピロメリット酸(ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸)(C10)、メリット酸(ベンゼンヘキサカルボン酸)(C12)、ジフェン酸(ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸)(C12)、トルイル酸(メチル安息香酸)(C8)、キシリル酸(C9)、プレーニチル酸(2,3,4−トリメチル安息香酸)(C10)、γ−イソジュリル酸(2,3,5−トリメチル安息香酸)(C10)、ジュリル酸(2,4,5−トリメチル安息香酸)(C10)、β−イソジュリル酸(2,4,6−トリメチル安息香酸)(C10)、α−イソジュリル酸(3,4,5−トリメチル安息香酸)(C10)、クミン酸(4−イソプロピル安息香酸)(C10)、ウビト酸(5−メチルイソフタル酸)(C9)、α−トルイル酸(フェニル酢酸)(C8)、ヒドロアトロパ酸(2−フェニルプロパン酸)(C9)、ヒドロケイ皮酸(3−フェニルプロパン酸)(C9)などを挙げることができる。これらの中でも、前記芳香族カルボン酸として好ましいのは、安息香酸である。
(g)カルボン酸塩としては、上述したカルボン酸の塩を用いることできる。カルボン酸塩のカチオン成分としては、例えば、金属イオン、アンモニウムイオン、および、有機陽イオンを挙げることができる。金属イオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀などの一価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウム、銅、コバルト、ニッケル、マンガンなどの二価の金属イオン;アルミニウム、鉄などの3価の金属イオン;錫、ジルコニウム、チタンなどのその他のイオンが挙げられる。前記カチオン成分は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。
前記有機陽イオンとは、炭素鎖を有する陽イオンである。前記有機陽イオンとしては、特に限定されず、例えば、有機アンモニウムイオンが挙げられる。前記有機アンモニウムイオンとしては、例えば、ステアリルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオンなどの1級アンモニウムイオン、ドデシル(ラウリル)アンモニウムイオン、オクタデシル(ステアリル)アンモニウムイオンなどの2級アンモニウムイオン;トリオクチルアンモニウムイオンなどの3級アンモニウムイオン;ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオンなどの4級アンモニウムイオンなどが挙げられる。これらの有機陽イオンは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(g)カルボン酸および/またはその塩の含有量は、例えば、(a)基材ゴム100質量部に対して、1.0質量部以上が好ましく、より好ましくは1.5質量部以上、さらに好ましくは2.0質量部以上であって、40.0質量部未満が好ましく、より好ましくは30.0質量部以下であり、さらに好ましくは20.0質量部以下、特に好ましくは10.0質量部以下である。(g)カルボン酸および/またはその塩の含有量が少なすぎると、(g)カルボン酸および/またはその塩を添加した効果が十分ではなく、球状コアの外剛内柔度合が小さくなるおそれがある。また、含有量が多すぎると、得られるコアの硬度が全体的に低下して、反発性が低下するおそれがある。
なお、共架橋剤として使用されるアクリル酸亜鉛の表面は、ゴムへの分散性を向上するためにカルボン酸および/またはその塩で処理されている場合がある。このようなカルボン酸および/またはその塩で表面処理されたアクリル酸亜鉛を使用する場合、本発明では、表面処理剤であるカルボン酸および/またはその塩の量は、(g)成分の含有量に含まれないものとする。このような、アクリル酸亜鉛の表面処理に用いられている(g)カルボン酸および/またはその塩は、(b)共架橋剤とのカチオン交換反応にほとんど寄与しないと考えられる。
本発明に用いられるゴム組成物は、必要に応じて、顔料、重量調整などのための充填剤、老化防止剤、しゃく解剤、軟化剤などの添加剤を含有してもよい。また上述したように、本発明で使用するゴム組成物が、共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸のみを含有する場合、ゴム組成物は、(e)金属化合物をさらに含有することが好ましい。
ゴム組成物に配合される顔料としては、例えば、白色顔料、青色顔料、紫色顔料などを挙げることができる。前記白色顔料としては、酸化チタンを使用することが好ましい。酸化チタンの種類は、特に限定されないが、隠蔽性が良好であるという理由から、ルチル型を用いることが好ましい。また、酸化チタンの含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは2質量部以上であって、8質量部以下が好ましく、より好ましくは5質量部以下である。
ゴム組成物が白色顔料と青色顔料とを含有することも好ましい態様である。青色顔料は、白色を鮮やかに見せるために配合され、例えば、群青、コバルト青、フタロシアニンブルーなどを挙げることができる。また、前記紫色顔料としては、例えば、アントラキノンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、メチルバイオレットなどを挙げることができる。
前記青色顔料の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.001質量部以上が好ましく、より好ましくは0.05質量部以上であって、0.2質量部以下が好ましく、より好ましくは0.1質量部以下である。0.001質量部未満では、青みが不十分で、黄色味がかった色に見え、0.2質量部を超えると、青くなりすぎて、鮮やかな白色外観ではなくなる。
ゴム組成物に用いる充填剤としては、主として最終製品として得られるゴルフボールの重量を調整するための重量調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤として特に好ましいのは、酸化亜鉛である。酸化亜鉛は、加硫助剤として機能して、球状コア全体の硬度を高めると考えられる。前記充填剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であって、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。充填剤の含有量が0.5質量部未満では、重量調整が難しくなり、30質量部を超えるとゴム成分の重量分率が小さくなり反発性が低下する傾向があるからである。
前記老化防止剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
本発明で使用するゴム組成物は、(a)基材ゴム、(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤、(d)石油樹脂、および、必要に応じてその他の添加剤などを混合して、混練することにより得られる。混練の方法は、特に限定されず、例えば、混練ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの公知の混練機を用いて行えばよい。
本発明のゴルフボールが有する球状コアは、混練後のゴム組成物を金型内で成形することにより得ることができる。球状コアに成形する温度は、120℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、160℃以上がさらに好ましく、170℃以下が好ましい。成形温度が170℃を超えると、コア表面硬度が低下する傾向がある。また、成形時の圧力は、2.9〜11.8MPaが好ましい。成形時間は、10〜60分間が好ましい。
前記球状コアの直径は、34.8mm以上が好ましく、より好ましくは36.8mm以上、さらに好ましくは38.8mm以上であり、42.2mm以下が好ましく、41.8mm以下がより好ましく、さらに好ましくは41.2mm以下であり、最も好ましくは40.8mm以下である。前記球状コアの直径が34.8mm以上であれば、カバーの厚みが厚くなり過ぎず、反発性がより良好となる。一方、球状コアの直径が42.2mm以下であれば、カバーが薄くなり過ぎず、カバーの機能がより発揮される。
本発明のゴルフボールのカバーは、樹脂成分を含有するカバー用組成物から形成される。前記樹脂成分としては、例えば、アイオノマー樹脂、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーなどが挙げられる。
前記アイオノマー樹脂としては、例えば、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、あるいは、これらの混合物を挙げることができる。前記オレフィンとしては、炭素数が2〜8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンが好ましい。前記炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。これらのなかでも、前記アイオノマー樹脂としては、エチレン−(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物、エチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。
前記アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM3711(Mg)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、ハイミラン1856(Na)、ハイミラン1855(Zn)など)」が挙げられる。
さらにデュポン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン6320(Mg)、HPF1000(Mg)、HPF2000(Mg)など)」が挙げられる。
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)など)」が挙げられる。
なお、前記アイオノマー樹脂の商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。前記アイオノマー樹脂は、単独で若しくは2種以上を混合して使用しても良い。
本発明のゴルフボールのカバーを構成するカバー用組成物は、樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンエラストマーまたはアイオノマー樹脂を含有することが好ましい。アイオノマー樹脂を使用する場合には、熱可塑性スチレンエラストマーを併用することも好ましい。カバー用組成物の樹脂成分中のポリウレタンまたはアイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
前記カバー用組成物は、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、酸化亜鉛、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
前記白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、カバーを構成する樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であって、10質量部以下が好ましく、より好ましくは8質量部以下である。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるカバーの耐久性が低下する場合があるからである。
前記カバー用組成物のスラブ硬度は、所望のゴルフボールの性能に応じて適宜設定することが好ましい。例えば、飛距離を重視するディスタンス系のゴルフボールの場合、カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で50以上が好ましく、55以上がより好ましく、80以下が好ましく、70以下がより好ましい。カバー用組成物のスラブ硬度を50以上にすることにより、ドライバーショットおよびアイアンショットにおいて、高打出角で低スピンのゴルフボールが得られ、飛距離が大きくなる。また、カバー用組成物のスラブ硬度を80以下とすることにより、耐久性に優れたゴルフボールが得られる。また、コントロール性を重視するスピン系のゴルフボールの場合、カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で、50未満が好ましく、20以上が好ましく、25以上がより好ましい。カバー用組成物のスラブ硬度が、ショアD硬度で50未満であれば、ドライバーショットでは、本発明のコアにより、高飛距離化がはかれるとともに、アプローチショットのスピン量が高くなり、グリーン上で止まりやすいゴルフボールが得られる。また、スラブ硬度を20以上とすることにより、耐擦過傷性が向上する。複数のカバー層の場合は、各層を構成するカバー用組成物のスラブ硬度は、上記範囲内であれば、同一あるいは異なっても良い。
本発明のゴルフボールのカバーを成形する方法としては、例えば、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する方法(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、あるいは、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する方法を挙げることができる。
圧縮成形法によりカバーを成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。カバー用組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いてカバーを成形する方法としては、例えば、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形してカバーに成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一なカバー厚みを有するゴルフボールカバーを成形できる。
カバー用組成物を射出成形してカバーを成形する場合、押出して得られたペレット状のカバー用組成物を用いて射出成形しても良いし、あるいは、基材樹脂成分や顔料などのカバー用材料をドライブレンドして直接射出成形してもよい。カバー成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形によるカバーの成形は、ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、カバー用組成物を注入して、冷却することによりカバーを成形することができ、例えば、9〜15MPaの圧力で型締めした金型内に、200〜250℃に加熱したカバー用組成物を0.5〜5秒で注入し、10〜60秒間冷却して型開きすることにより行う。
カバーには、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。ディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
前記カバーの厚みは、4.0mm以下が好ましく、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下である。カバーの厚みが4.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。前記カバーの厚みは、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、さらに好ましくは0.8mm以上、特に好ましくは1.0mm以上である。カバーの厚みが0.3mm未満では、カバーの耐久性や耐摩耗性が低下する場合がある。複数のカバー層の場合は、複数のカバー層の合計厚みが上記範囲であることが好ましい。
カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。前記塗膜の膜厚は、特に限定されないが、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。膜厚が5μm未満になると継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなり、膜厚が50μmを超えるとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するからである。
本発明のゴルフボールは、直径40〜45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)は、2.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.2mm以上であり、さらに好ましくは2.4mm以上であり、最も好ましくは2.6mm以上であり、5.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは4.5mm以下である。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を5.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
本発明のゴルフボールの構造は、球状コアと、前記球状コアを被覆する一層以上のカバーとを有するものであれば、特に限定されない。図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール2が示された一部切り欠き断面図である。ゴルフボール2は、球状コア4と、球状コア4を被覆するカバー12とを有する。このカバーの表面には、多数のディンプル14が形成されている。このゴルフボール2の表面のうち、ディンプル14以外の部分は、ランド16である。このゴルフボール2は、カバー12の外側にペイント層およびマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
前記球状コアは、単層構造であることが好ましい。単層構造の球状コアは、多層構造の界面における打撃時のエネルギーロスがなく、反発性が向上するからである。また、カバーは、一層以上の構造であればよく、単層構造、あるいは、少なくとも二層以上の多層構造を有していてもよい。本発明のゴルフボールとしては、例えば、球状コアと前記球状コアを被覆するように配設された単層のカバーとからなるツーピースゴルフボール;球状コアと前記球状コアを被覆するように配設された二層以上のカバーを有するマルチピースゴルフボール(スリーピースゴルフボールを含む);球状コアと前記球状コアの周囲に設けられた糸ゴム層と、前記糸ゴム層を被覆するように配設されたカバーとを有する糸巻きゴルフボールなどを挙げることができる。上記いずれの構造のゴルフボールにも本発明を好適に利用できる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
[評価方法]
(1)圧縮変形量(mm)
ゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にコアまたはゴルフボールが縮む量)を測定した。
(2)スラブ硬度(ショアD硬度)
カバー用組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、ASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて測定した。
(3)耐久性
ツルーテンパー社製のスイングロボットにメタルヘッド製ウッド1番クラブ(ドライバー)を取り付けて、ヘッドスピードを45m/秒に設定して各ゴルフボールを打撃し、衝突板に衝突させて評価した。評価基準はゴルフボールが壊れるまでの打撃回数を測定し、比較例1を100として指数化した。指数が大きいほどゴルフボールの耐久性が優れていることを示す。
[ゴルフボールの作製]
(1)コアの作製
表1に示す配合のゴム組成物を混練ロールにより混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃、20分間加熱プレスすることにより直径39.8mmの球状コアを得た。
(2)カバーの作製
次に、表2に示した配合のカバー用材料を、二軸混練型押出機により押し出して、ペレット状のカバー用組成物を調製した。押出は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35で行った。配合物は、押出機のダイの位置で150〜230℃に加熱された。得られたカバー用組成物を上述のようにして得られた球状コア上に射出成形して、球状コアと前記コアを被覆するカバーを有するゴルフボールを作製した。
Figure 2016019620
BR730:JSR社製、ハイシスポリブタジエン(シス−1,4−結合含有量=96質量%、1,2−ビニル結合含有量=1.3質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))=55、分子量分布(Mw/Mn)=3)
サンセラーSR:三新化学工業社製アクリル酸亜鉛(10質量%ステアリン酸コーティング品)
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製「銀嶺R」
硫酸バリウムBD:堺化学社製「硫酸バリウムBD」
ジクミルパーオキサイド(DCP):日油社製、「パークミル(登録商標)D(ジクミルパーオキサイド)」
2−チオナフトール:東京化成工業社製
安息香酸:東京化成工業社製(純度98%以上)
ペトコール140:東ソー社製石油樹脂(C9系石油樹脂、Mw=1900、軟化点=135℃)
ペトロタック90:東ソー社製石油樹脂(C5C9系共重合石油樹脂、Mw=1600、軟化点=95℃)
ペトロタック90HM:東ソー社製石油樹脂(C5C9系共重合石油樹脂、Mw=3500、軟化点=87℃)
ペトロタック100V:東ソー社製石油樹脂(C5C9系共重合石油樹脂、Mw=3800、軟化点=96℃)
Figure 2016019620
ハイミラン1605:三井・デュポンポリケミカル社製、ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
ハイミラン1706:三井・デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
表1の結果から、球状コアと前記球状コアを被覆する少なくとも一層以上のカバーとを有するゴルフボールであって、前記球状コアは、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤、(d)石油樹脂を含有するゴルフボールは、いずれも、耐久性に優れる。
本発明のゴルフボールは、耐久性に優れる。

Claims (8)

  1. 球状コアと前記球状コアを被覆する少なくとも一層以上のカバーとを有するゴルフボールであって、
    前記球状コアは、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤、(d)石油樹脂を含有し、(b)共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸のみを含有する場合には、さらに(e)金属化合物を含有するゴム組成物から形成されていることを特徴とするゴルフボール。
  2. 前記ゴム組成物は、(a)基材ゴム100質量部に対して、(d)石油樹脂を0.01〜15.0質量部含有するものである請求項1に記載のゴルフボール。
  3. 前記ゴム組成物は、(b)共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩を含有するものである請求項1又は2に記載のゴルフボール。
  4. (d)石油樹脂は、主鎖に不飽和結合を持たない構造を基本骨格とする化合物である請求項1〜3のいずれかに記載のゴルフボール。
  5. 前記ゴム組成物は、さらに(f)有機硫黄化合物を含有する請求項1〜4のいずれかに記載のゴルフボール。
  6. (f)有機硫黄化合物は、チオフェノール類、ジフェニルジスルフィド類、チオナフトール類、チウラムジスルフィド類、または、これらの金属塩である請求項5に記載のゴルフボール。
  7. 前記ゴム組成物は、(a)基材ゴム100質量部に対して、(f)有機硫黄化合物を0.05〜5.0質量部含有するものである請求項5又は6に記載のゴルフボール。
  8. 前記ゴム組成物は、(a)基材ゴム100質量部に対して、(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩を15〜50質量部含有するものである請求項1〜7のいずれかに記載のゴルフボール。
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