本発明のゴルフボールは、球状コアと前記球状コアを被覆する少なくとも一層以上のカバーとを有するゴルフボールであって、前記球状コアが、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)一般式(1)で表される有機過酸化物および(d)芳香族カルボン酸および/またはその塩を含有し、前記(b)共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸のみを含有する場合には、さらに(e)金属化合物を含有するゴム組成物から形成されていることを特徴とする。
[式(1)中、R
1〜R
10は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルキルアリール基を示す。これらのアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルキルアリール基はエステル基を介して結合していてもよい。]
まず、本発明で使用する(a)基材ゴムについて説明する。(a)基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、特に、反発に有利なシス−1,4−結合を、40質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上有するハイシスポリブタジエンが好適である。
前記ハイシスポリブタジエンは、1,2−ビニル結合の含有量が2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.7質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。1,2−ビニル結合の含有量が多すぎると反発性が低下する場合がある。
前記ハイシスポリブタジエンは、希土類元素系触媒で合成されたものが好適であり、特に、ランタン系列希土類元素化合物であるネオジム化合物を用いたネオジム系触媒の使用が、1,4−シス結合が高含量、1,2−ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得られるので好ましい。
前記ハイシスポリブタジエンは、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が、30以上であることが好ましく、より好ましくは32以上、さらに好ましくは35以上であり、140以下が好ましく、より好ましくは120以下、さらに好ましくは100以下、最も好ましくは80以下である。なお、本発明でいうムーニー粘度(ML1+4(100℃))とは、JIS K6300に準じて、Lローターを使用し、予備加熱時間1分間、ローターの回転時間4分間、100℃の条件下にて測定した値である。
前記ハイシスポリブタジエンとしては、分子量分布Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が、2.0以上であることが好ましく、より好ましくは2.2以上、さらに好ましくは2.4以上、最も好ましくは2.6以上であり、6.0以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下、最も好ましくは3.4以下である。ハイシスポリブタジエンの分子量分布(Mw/Mn)が小さすぎると作業性が低下し、大きすぎると反発性が低下するおそれがある。なお、分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー社製、「HLC−8120GPC」)により、検知器として示差屈折計を用いて、カラム:GMHHXL(東ソー社製)、カラム温度:40℃、移動相:テトラヒドロフランの条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として算出した値である。
次に、(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩について説明する。(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は、共架橋剤として、ゴム組成物に配合されるものであり、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有する。本発明で使用するゴム組成物が、共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸のみを含有する場合、ゴム組成物は、必須成分として、(e)金属化合物をさらに含有する。ゴム組成物中で炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸を金属化合物で中和することにより、共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩を使用する場合と実質的に同様の効果が得られるからである。また、共架橋剤として、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とその金属塩とを併用する場合においては、任意成分として、(e)金属化合物を用いてもよい。
炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等を挙げることができる。
炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの一価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属イオン;アルミニウムなどの三価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。前記金属成分は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。これらの中でも、前記金属成分としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属が好ましい。炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の二価の金属塩を用いることにより、ゴム分子間に金属架橋が生じやすくなるからである。特に、二価の金属塩としては、得られるゴルフボールの反発性が高くなるということから、アクリル酸亜鉛が好適である。なお、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用しても良い。
(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、35質量部以下がさらに好ましい。(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量が15質量部未満では、ゴム組成物から形成される部材を適当な硬さとするために、後述する(c)有機過酸化物の量を増加しなければならず、ゴルフボールの反発性が低下する傾向がある。一方、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量が50質量部を超えると、ゴム組成物から形成される部材が硬くなりすぎて、ゴルフボールの打球感が低下するおそれがある。
前記(c)一般式(1)で表される有機過酸化物は、架橋開始剤として作用する。架橋開始剤は、(a)基材ゴム成分を架橋するために配合される。
[式(1)中、R
1〜R
10は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルキルアリール基を示す。これらのアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルキルアリール基はエステル基を介して結合していてもよい。]
式中R1〜R10で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などの直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基などの分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などの環状アルキル基;が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜11のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、さらに好ましくはメチル基またはエチル基である。また、アルキル基としては、直鎖状が好ましい。
式中R1〜R10で示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、フェナントリル基、フルオレニル基などが挙げられ、これらの中でも、フェニル基が好ましい。式中R1〜R10で示されるアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基などが挙げられる。式中R1〜R10で示されるアルキルアリール基としては、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基などが挙げられる。
前記R1、R5、R6およびR10は、炭素数1〜11のアルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基またはエチル基である。前記R2〜R4およびR7〜R9はアリール基または炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基、フェニル基である。
前記(c)有機過酸化物の具体例としては、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、3,6−ジメチル−3,6−ジ(t−ブチルペルオキシ)オクチン−4、2,5−ジメチル−2−[(トリフェニルシリル)ペルオキシ]−5−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−[(トリフェニルシリル)ペルオキシ]ヘキシン−3などが挙げられる。前記(c)有機過酸化物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(c)有機過酸化物の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.2質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下である。0.1質量部未満では、ゴム組成物から形成される部材が柔らかくなりすぎて、ゴルフボールの反発性が低下する傾向があり、5.0質量部を超えると、ゴム組成物から形成される部材を適切な硬さにするために、前述した(b)共架橋剤の使用量を減量する必要があり、ゴルフボールの反発性が不足したり、耐久性が悪くなるおそれがある。
本発明で使用するゴム組成物は、前記(c)有機過酸化物とともに、他の架橋開始剤を含有してもよい。他の架橋開始剤としては、前記(c)有機過酸化物以外の他の有機過酸化物が好適である。前記他の有機過酸化物は、具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。他の架橋開始剤を用いる場合、前記(c)有機過酸化物および他の架橋開始剤の合計100質量%中、前記(c)有機過酸化物の含有率は60質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。なお、架橋開始剤として、前記(c)有機過酸化物のみを配合することも好ましい。
本発明で使用し得る(d)芳香族カルボン酸および/またはその塩について説明する。(d)芳香族カルボン酸および/またはその塩は、コア成形時にコア中心部において、(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩による金属架橋を切断する作用を有するものと考えられる。
本発明で使用する(d)芳香族カルボン酸、または芳香族カルボン酸塩を構成する芳香族カルボン酸は、特に限定されないが、共架橋剤として使用する(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸は含まれないものとする。前記芳香族カルボン酸としては、分子中にベンゼン環を有するもの、分子中に複素芳香環を有するものが挙げられる。前記芳香族カルボン酸は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(d)ベンゼン環を有するカルボン酸としては、例えば、ベンゼン環にカルボキシル基が直接結合した芳香族カルボン酸、ベンゼン環に脂肪族カルボン酸が結合した芳香族−脂肪族カルボン酸、縮合ベンゼン環にカルボキシル基が直接結合した多核芳香族カルボン酸、縮合ベンゼン環に脂肪族カルボン酸が結合した多核芳香族−脂肪族カルボン酸などを挙げることができる。前記縮合ベンゼン環構造としては、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、テトラセニル、ピレンなどが挙げられる。
前記(d)ベンゼン環を有するカルボン酸のカルボキシル基の個数は、1個(モノカルボン酸)または2個以上(ポリカルボン酸)でもよいが、1個が好ましい。前記ベンゼン環または縮合ベンゼン環は、カルボキシル基以外に当該ベンゼン環または縮合ベンゼン環に直接結合する置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基)、アリール基(好ましくは、フェニル基)、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシル基(好ましくは、炭素数1〜4のアルコキシル基)、オキソ基、ハロゲン基などが挙げられる。
ベンゼン環にカルボキシル基が直接結合した芳香族カルボン酸の具体例としては、例えば、安息香酸(C7)、フタル酸(C8)、イソフタル酸(C8)、テレフタル酸(C8)、ベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸(C9)、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸(C9)、ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸(C9)、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸(C10)、ベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボン酸(C10)、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸(C10)、ベンゼンヘキサカルボン酸(C12)などを挙げることができる。ベンゼン環に脂肪族カルボン酸が結合した芳香族−脂肪族カルボン酸の具体例としては、フェニル酢酸(C8)、2−フェニルプロパン酸(C9)、3−フェニルプロパン酸(C9)などを挙げることができる。
また、アルキル基、アリール基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、またはオキソ基で置換されたベンゼン環を有するカルボン酸としては、例えば、メチル安息香酸(C8)、ジメチル安息香酸(C9)、2,3,4−トリメチル安息香酸(C10)、2,3,5−トリメチル安息香酸(C10)、2,4,5−トリメチル安息香酸(C10)、2,4,6−トリメチル安息香酸(C10)、3,4,5−トリメチル安息香酸(C10)、4−イソプロピル安息香酸(C10)、4−tert−ブチル安息香酸(C11)、5−メチルイソフタル酸(C9)、ビフェニル−4−カルボン酸(C13)、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸(C14)、4−ジメチルアミノ安息香酸(C9)、2−ヒドロキシ安息香酸(C7)、メトキシ安息香酸(C8)、ヒドロキシ(メチル)安息香酸(C8)、2−ヒドロキシ−3−メチル安息香酸(C8)、2−ヒドロキシ−4−メチル安息香酸(C8)、2−ヒドロキシ−5−メチル安息香酸(C8)、2,3−ジヒドロキシ安息香酸(C7)、2,4−ジヒドロキシ安息香酸(C7)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸(C7)、3,4−ジヒドロキシ安息香酸(C7)、3,5−ジヒドロキシ安息香酸(C7)、4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸(C8)、3−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸(C8)、3,4−ジメトキシ安息香酸(C9)、2,3−ジメトキシ安息香酸(C9)、2,4−ジメトキシ安息香酸(C9)、2,4−ジヒドロキシ−6−メチル安息香酸(C8)、4,5−ジメトキシフタル酸(C10)、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸(C7)、4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシ安息香酸(C9)、2,4,5−トリメトキシ安息香酸(C10)、ヒドロキシ(フェニル)酢酸(C8)、ヒドロキシ(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)酢酸(C9)、(4−メトキシフェニル)酢酸(C9)、(2,5−ジヒドロキシフェニル)酢酸(C8)、(3,4−ジヒドロキシフェニル)酢酸(C8)、(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)酢酸(C9)、(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)酢酸(C9)、(3,4−ジメトキシフェニル)酢酸(C10)、(2,3−ジメトキシフェニル)酢酸(C10)、2−(カルボキシメチル)安息香酸(C9)、3−(カルボキシメチル)安息香酸(C9)、4−(カルボキシメチル)安息香酸(C9)、2−(カルボキシカルボニル)安息香酸(C9)、3−(カルボキシカルボニル)安息香酸(C9)、4−(カルボキシカルボニル)安息香酸(C9)、2−ヒドロキシ−2−フェニルプロパン酸(C9)、3−ヒドロキシ−2−フェニルプロパン酸(C9)、3−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン酸(C9)、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸(C9)、3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン酸(C9)、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロパン酸(C10)、3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロパン酸(C10)、3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリル酸(C9)、3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)アクリル酸(C9)、3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)アクリル酸(C9)、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリル酸(C10)、3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)アクリル酸(C10)、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル)アクリル酸(C11)などを挙げることができる。
ハロゲンで置換されたベンゼン環を有するカルボン酸としては、フルオロ安息香酸、ジフルオロ安息香酸、トリフルオロ安息香酸、テトラフルオロ安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸などの安息香酸の水素の少なくとも一つがフルオロ基で置換されたカルボン酸;クロロ安息香酸、ジクロロ安息香酸、トリクロロ安息香酸、テトラクロロ安息香酸、ペンタクロロ安息香酸などの安息香酸の水素の少なくとも一つがクロロ基で置換されたカルボン酸;ブロモ安息香酸、ジブロモ安息香酸、トリブロモ安息香酸、テトラブロモ安息香酸、ペンタブロモ安息香酸などの安息香酸の水素の少なくとも一つがブロモ基で置換されたカルボン酸;ヨード安息香酸、ジヨード安息香酸、トリヨード安息香酸、テトラヨード安息香酸、ペンタヨード安息香酸などの安息香酸の水素の少なくとも一つがヨード基で置換されたカルボン酸を挙げることができる。
縮合ベンゼン環にカルボキシル基が直接結合した多核芳香族カルボン酸の具体例としては、例えば、1−ナフタレンカルボン酸、2−ナフタレンカルボン酸、1−アントラセンカルボン酸、2−アントラセンカルボン酸、9−アントラセンカルボン酸、フェナントレンカルボン酸、ピレンカルボン酸などが挙げられる。縮合ベンゼン環に脂肪族カルボン酸が結合した多核芳香族−脂肪族カルボン酸の具体例としては、ナフチル酢酸、ナフチルプロピオン酸などを挙げることができる。
ハロゲンで置換された縮合ベンゼン環を有するカルボン酸としては、フルオロナフタレンカルボン酸、クロロナフタレンカルボン酸、ブロモナフタレンカルボン酸、フルオロアントラセンカルボン酸、クロロアントラセンカルボン酸、ブロモアントラセンカルボン酸などを挙げることができる。
前記複素芳香環を有するカルボン酸としては、例えば、複素芳香環に直接カルボキシル基が結合したものが挙げられる。複素芳香環が含むヘテロ原子の種類は、1種でもよいし、2種以上でもよい。前記ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが挙げられ、これらの中でも酸素原子、硫黄原子が好ましい。また、複素芳香環構造中のヘテロ原子の個数は特に限定されないが、2個以下が好ましく、1個がより好ましい。前記複素芳香環としては、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、インドール環、キノリン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環などが挙げられる。
前記(d)複素芳香環を有するカルボン酸は、複素芳香環に置換基としてカルボキシル基のみを有する化合物でもよいし、カルボキシル基の他に、この複素芳香環に直接結合する置換基を有していてもよい。なお、置換基は、複素芳香環を構成する窒素原子に結合してもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル基、メルカプト基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基、アルコキシル基、置換されていてもよいアミノ基、シアノ基、チオカルボキシル基などが挙げられる。
(d)複素芳香環を有するカルボン酸および/またはその塩の具体例としては、例えば、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、チオフェンカルボン酸、イミダゾールカルボン酸、ピラゾールカルボン酸、オキサゾールカルボン酸、チアゾールカルボン酸などの五員複素芳香環を有するカルボン酸;ピリジンカルボン酸、ピラジンカルボン酸などの六員複素芳香環を有するカルボン酸;インドールカルボン酸、キノリンカルボン酸、ベンゾフランカルボン酸、ベンゾチオフェンカルボン酸などの縮合複素芳香環を有するカルボン酸などが挙げられる。
(d)芳香族カルボン酸塩としては、上記芳香族カルボン酸の塩が挙げられる。前記芳香族カルボン酸塩は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。芳香族カルボン酸塩のカチオン成分としては、アンモニウムイオン、金属イオン、および、有機陽イオンのいずれであってもよい。金属イオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀などの一価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウム、銅、コバルト、ニッケル、マンガンなどの二価の金属イオン;アルミニウム、鉄などの三価の金属イオン;錫、ジルコニウム、チタンなどのその他のイオンが挙げられる。前記カルボン酸塩のカチオン成分としては、亜鉛イオンが好ましい。前記カチオン成分は、単独または2種以上の混合物であってもよい。
前記有機陽イオンとは、炭素鎖を有する陽イオンである。前記有機陽イオンとしては、特に限定されず、例えば、有機アンモニウムイオンが挙げられる。前記有機アンモニウムイオンとしては、例えば、ステアリルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオンなどの1級アンモニウムイオン、ドデシル(ラウリル)アンモニウムイオン、オクタデシル(ステアリル)アンモニウムイオンなどの2級アンモニウムイオン;トリオクチルアンモニウムイオンなどの3級アンモニウムイオン;ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオンなどの4級アンモニウムイオンなどが挙げられる。これらの有機陽イオンは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記(d)芳香族カルボン酸および/またはその塩としては、特に、安息香酸、ブチル安息香酸、アニス酸(メトキシ安息香酸)、ジメトキシ安息香酸、トリメトキシ安息香酸、ジメチルアミノ安息香酸、クロロ安息香酸、ジクロロ安息香酸、トリクロロ安息香酸、アセトキシ安息香酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、アントラセンカルボン酸、フランカルボン酸もしくはテノイル酸、または、これらのカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩が好ましい。
(d)芳香族カルボン酸および/またはその塩の含有量は、例えば、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であって、40質量部以下が好ましく、より好ましくは35質量部以下であり、さらに好ましくは30質量部以下である。(d)芳香族カルボン酸および/またはその塩の含有量が少なすぎると、(d)芳香族カルボン酸および/またはその塩を添加した効果が十分ではなく、球状コアの外剛内柔度合が小さくなるおそれがある。また、含有量が多すぎると、得られるコアの硬度が全体的に低下して、反発性が低下するおそれがある。
本発明に用いられるゴム組成物が、共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸のみを含有する場合、ゴム組成物は、必須成分として(e)金属化合物をさらに含有する。前記(e)金属化合物としては、ゴム組成物中において(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸を中和することができるものであれば、特に限定されない。前記(e)金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。前記(e)金属化合物として好ましいのは、二価金属化合物であり、より好ましくは亜鉛化合物である。二価金属化合物は、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸と反応して、金属架橋を形成するからである。また、亜鉛化合物を用いることにより、反発性の高いゴルフボールが得られる。(e)金属化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。(e)金属化合物の含有量は、所望とする(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の中和度に応じて、適宜調整すればよい。
本発明に用いられるゴム組成物は、さらに(f)有機硫黄化合物を含有することが好ましい。前記ゴム組成物が(c)有機過酸化物、(d)芳香族カルボン酸および/またはその塩に加えて、(f)有機硫黄化合物を含有することにより、コアの外剛内柔構造の度合を、より高度に制御することができる。
前記(f)有機硫黄化合物としては、分子内に硫黄原子を有する有機化合物であれば、特に限定されず、例えば、チオール基(−SH)、または、硫黄数が2〜4のポリスルフィド結合(−S−S−、−S−S−S−、または、−S−S−S−S−)を有する有機化合物、あるいはこれらの金属塩(−SM、−S−M−S−、−S−M−S−S−,−S−S−M−S−S−,−S−M−S−S−S−など、Mは金属原子)を挙げることができる。金属塩としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、銅(I)、銀(I)などの1価の金属塩、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン(II)、マンガン(II)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、ジルコニウム(II)、スズ(II)等の2価の金属塩が挙げられる。また、(f)有機硫黄化合物は、脂肪族化合物(脂肪族チオール、脂肪族チオカルボン酸、脂肪族ジチオカルボン酸、脂肪族ポリスルフィドなど)、複素環式化合物、脂環式化合物(脂環式チオール、脂環式チオカルボン酸、脂環式ジチオカルボン酸、脂環式ポリスルフィドなど)、および、芳香族化合物のいずれであってもよい。
前記(f)有機硫黄化合物としては、例えば、チオール類(チオフェノール類、チオナフトール類)、ポリスルフィド類、チウラム類、チオカルボン酸類、ジチオカルボン酸類、スルフェンアミド類、ジチオカルバミン酸塩類、チアゾール類などを挙げることができる。
チオール類としては、例えば、チオフェノール類、チオナフトール類が挙げられる。前記チオフェノール類としては、例えば、チオフェノール;4−フルオロチオフェノール、2,5−ジフルオロチオフェノール、2,6−ジフルオロチオフェノール、2,4,5−トリフルオロチオフェノール、2,4,5,6−テトラフルオロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノールなどのフルオロ基で置換されたチオフェノール類;2−クロロチオフェノール、4−クロロチオフェノール、2,4−ジクロロチオフェノール、2,5−ジクロロチオフェノール、2,6−ジクロロチオフェノール、2,4,5−トリクロロチオフェノール、2,4,5,6−テトラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノールなどのクロロ基で置換されたチオフェノール類;4−ブロモチオフェノール、2,5−ジブロモチオフェノール、2,6−ジブロモチオフェノール、2,4,5−トリブロモチオフェノール、2,4,5,6−テトラブロモチオフェノール、ペンタブロモチオフェノールなどのブロモ基で置換されたチオフェノール類;4−ヨードチオフェノール、2,5−ジヨードチオフェノール、2,6−ジヨードチオフェノール、2,4,5−トリヨードチオフェノール、2,4,5,6−テトラヨードチオフェノール、ペンタヨードチオフェノールなどのヨード基で置換されたチオフェノール類;または、これらの金属塩が挙げられる。金属塩としては、亜鉛塩が好ましい。
前記チオナフトール類(ナフタレンチオール類)としては、2−チオナフトール、1−チオナフトール、1−クロロ−2−チオナフトール、2−クロロ−1−チオナフトール、1−ブロモ−2−チオナフトール、2−ブロモ−1−チオナフトール、1−フルオロ−2−チオナフトール、2−フルオロ−1−チオナフトール、1−シアノ−2−チオナフトール、2−シアノ−1−チオナフトール、1−アセチル−2−チオナフトール、2−アセチル−1−チオナフトール、またはこれらの金属塩を挙げることができ、2−チオナフトール、1−チオナフトール、またはこれらの金属塩が好ましい。金属塩としては、好ましくは2価の金属塩、より好ましくは亜鉛塩である。金属塩の具体的としては、例えば、1−チオナフトールの亜鉛塩、2−チオナフトールの亜鉛塩が挙げられる。
ポリスルフィド類とは、ポリスルフィド結合を有する有機硫黄化合物であり、例えば、ジスルフィド類、トリスルフィド類、テトラスルフィド類が挙げられる。前記ポリスルフィド類としては、ジフェニルポリスルフィド類が好ましい。
ジフェニルポリスルフィド類としては、ジフェニルジスルフィドの他;ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5−トリフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6−テトラフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5−トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6−テトラクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5−トリブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6−テトラブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5−トリヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6−テトラヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタヨードフェニル)ジスルフィド等のハロゲン基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−メチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5−トリメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−t−ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5−トリ−t−ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタ−t−ブチルフェニル)ジスルフィド等のアルキル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;などが挙げられる。
チウラム類としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラムモノスルフィド類、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドなどのチウラムジスルフィド類、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラムテトラスルフィド類が挙げられる。チオカルボン酸類としては、例えば、ナフタレンチオカルボン酸が挙げられる。ジチオカルボン酸類としては、例えば、ナフタレンジチオカルボン酸が挙げられる。スルフェンアミド類としては、例えば、N−シクロへキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドが挙げられる。
(f)有機硫黄化合物としては、チオフェノール類および/またはその金属塩、チオナフトール類および/またはその金属塩、ジフェニルジスルフィド類、チウラムジスルフィド類が好ましく、より好ましくは2,4−ジクロロチオフェノール、2,6−ジフルオロチオフェノール、2,6−ジクロロチオフェノール、2,6−ジブロモチオフェノール、2,6−ジヨードチオフェノール、2,4,5−トリクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール、1−チオナフトール、2−チオナフトール、ジフェニルジスルフィド、ビス(2,6−ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドである。
(f)有機硫黄化合物の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは2.0質量部以下である。0.05質量部未満では、(f)有機硫黄化合物を添加した効果が得られず、ゴルフボールの反発性が向上しないおそれがある。また、5.0質量部を超えると、得られるゴルフボールの圧縮変形量が大きくなって、反発性が低下するおそれがある。
本発明に用いられるゴム組成物は、必要に応じて、顔料、重量調整などのための充填剤、老化防止剤、しゃく解剤、軟化剤などの添加剤を含有してもよい。ゴム組成物に配合される顔料としては、例えば、白色顔料、青色顔料、紫色顔料などを挙げることができる。
前記白色顔料としては、酸化チタンを使用することが好ましい。酸化チタンの種類は、特に限定されないが、隠蔽性が良好であるという理由から、ルチル型を用いることが好ましい。また、酸化チタンの含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは2質量部以上であって、8質量部以下が好ましく、より好ましくは5質量部以下である。
ゴム組成物が白色顔料と青色顔料とを含有することも好ましい態様である。青色顔料は、白色を鮮やかに見せるために配合され、例えば、群青、コバルト青、フタロシアニンブルーなどを挙げることができる。また、前記紫色顔料としては、例えば、アントラキノンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、メチルバイオレットなどを挙げることができる。
前記青色顔料の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.001質量部以上が好ましく、より好ましくは0.05質量部以上であって、0.2質量部以下が好ましく、より好ましくは0.1質量部以下である。0.001質量部未満では、青みが不十分で、黄色味がかった色に見え、0.2質量部を超えると、青くなりすぎて、鮮やかな白色外観ではなくなる。
ゴム組成物に用いる充填剤としては、主として最終製品として得られるゴルフボールの重量を調整するための重量調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤として特に好ましいのは、酸化亜鉛である。酸化亜鉛は、加硫助剤として機能して、球状コア全体の硬度を高めるものと考えられる。前記充填剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であって、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。充填剤の含有量が0.5質量部未満では、重量調整が難しくなり、30質量部を超えるとゴム成分の重量分率が小さくなり反発性が低下する傾向があるからである。
前記老化防止剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
本発明で使用するゴム組成物は、(a)基材ゴム、(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)有機過酸化物、(d)芳香族カルボン酸および/またはその塩、および、必要に応じてその他の添加剤などを混合して、混練することにより得られる。混練の方法は、特に限定されず、例えば、混練ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの公知の混練機を用いて行えばよい。
本発明のゴルフボールが有する球状コアは、混練後のゴム組成物を金型内で成形することにより得ることができる。球状コアに成形する温度は、120℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、160℃以上がさらに好ましく、170℃以下が好ましい。成形温度が170℃を超えると、コア表面硬度が低下する傾向がある。また、成形時の圧力は、2.9MPa〜11.8MPaが好ましい。成形時間は、10分間〜60分間が好ましい。
前記球状コアの表面硬度Hsと中心硬度Hoとの硬度差(Hs−Ho)は、JIS−C硬度で、12以上であり、より好ましくは16以上、さらに好ましくは20以上であり、80以下が好ましく、より好ましくは70以下、さらに好ましくは60以下である。コア表面とコア中心の硬度差が大きいと、高打出角および低スピンの飛距離が大きいゴルフボールが得られる。
球状コアの中心硬度Hoは、JIS−C硬度で、30以上が好ましく、より好ましくは35以上、さらに好ましくは40以上である。球状コアの中心硬度HoがJIS−C硬度で30未満であると、軟らかくなりすぎて反発性が低下する場合がある。また、球状コアの中心硬度Hoは、JIS−C硬度で70以下が好ましく、より好ましくは65以下であり、さらに好ましくは60以下である。前記中心硬度HoがJIS−C硬度で70を超えると、硬くなり過ぎて、打球感が低下する傾向があるからである。
球状コアの表面硬度Hsは、JIS−C硬度で、65以上が好ましく、より好ましくは70以上であり、100以下が好ましく、より好ましくは95以下である。前記球状コアの表面硬度を、JIS−C硬度で65以上とすることにより、球状コアが軟らかくなり過ぎることがなく、良好な反発性が得られる。また、前記球状コアの表面硬度をJIS−C硬度で100以下とすることにより、球状コアが硬くなり過ぎず、良好な打球感が得られる。
前記球状コアの直径は、34.8mm以上が好ましく、より好ましくは36.8mm以上、さらに好ましくは38.8mm以上であり、42.2mm以下が好ましく、41.8mm以下がより好ましく、さらに好ましくは41.2mm以下であり、最も好ましくは40.8mm以下である。前記球状コアの直径が34.8mm以上であれば、カバーが厚くなり過ぎず、反発性がより良好となる。一方、球状コアの直径が42.2mm以下であれば、カバーが薄くなり過ぎず、カバーの機能がより発揮される。
前記球状コアは、直径34.8mm〜42.2mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にコアが縮む量)が、2.0mm以上が好ましく、より好ましくは2.8mm以上、6.0mm以下が好ましく、より好ましくは5.0mm以下である。前記圧縮変形量が、2.0mm以上であれば打球感がより良好となり、6.0mm以下であれば、反発性がより良好となる。
本発明のゴルフボールのカバーは、樹脂成分を含有するカバー用組成物から形成される。前記樹脂成分としては、例えば、アイオノマー樹脂、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーなどが挙げられる。
前記アイオノマー樹脂としては、例えば、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、あるいは、これらの混合物を挙げることができる。前記オレフィンとしては、炭素数が2〜8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンが好ましい。前記炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。これらのなかでも、前記アイオノマー樹脂としては、エチレン−(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物、エチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。
前記アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井・デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM3711(Mg)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、ハイミラン1856(Na)、ハイミラン1855(Zn)など)」が挙げられる。
さらにデュポン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン6320(Mg)、HPF1000(Mg)、HPF2000(Mg)など)」が挙げられる。
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)など)」が挙げられる。
なお、前記アイオノマー樹脂の商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。前記アイオノマー樹脂は、単独で若しくは2種以上を混合して使用しても良い。
本発明のゴルフボールのカバーを構成するカバー用組成物は、樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンエラストマーまたはアイオノマー樹脂を含有することが好ましい。アイオノマー樹脂を使用する場合には、熱可塑性スチレンエラストマーを併用することも好ましい。カバー用組成物の樹脂成分中のポリウレタンまたはアイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
前記カバー用組成物は、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、酸化亜鉛、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
前記白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、カバーを構成する樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であって、10質量部以下が好ましく、より好ましくは8質量部以下である。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるカバーの耐久性が低下する場合があるからである。
前記カバー用組成物のスラブ硬度は、所望のゴルフボールの性能に応じて適宜設定することが好ましい。例えば、飛距離を重視するディスタンス系のゴルフボールの場合、カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で50以上が好ましく、55以上がより好ましく、80以下が好ましく、70以下がより好ましい。カバー用組成物のスラブ硬度を50以上にすることにより、ドライバーショットおよびアイアンショットにおいて、高打出角で低スピンのゴルフボールが得られ、飛距離が大きくなる。また、カバー用組成物のスラブ硬度を80以下とすることにより、耐久性に優れたゴルフボールが得られる。
また、コントロール性を重視するスピン系のゴルフボールの場合、カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で、50未満が好ましく、20以上が好ましく、25以上がより好ましい。カバー用組成物のスラブ硬度が、ショアD硬度で50未満であれば、ドライバーショットでは、本発明のコアにより、高飛距離化が図れるとともに、アプローチショットのスピン量が高くなり、グリーン上で止まりやすいゴルフボールが得られる。また、スラブ硬度を20以上とすることにより、耐擦過傷性が向上する。複数のカバー層の場合は、各層を構成するカバー用組成物のスラブ硬度は、上記範囲内であれば、同一あるいは異なっても良い。
本発明のゴルフボールのカバーを成形する方法としては、例えば、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する方法(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、あるいは、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する方法を挙げることができる。
圧縮成形法によりカバーを成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。カバー用組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いてカバーを成形する方法としては、例えば、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形してカバーに成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みを有するゴルフボールカバーを成形できる。
カバー用組成物を射出成形してカバーを成形する場合、押出して得られたペレット状のカバー用組成物を用いて射出成形しても良いし、あるいは、基材樹脂成分や顔料などのカバー用材料をドライブレンドして直接射出成形してもよい。カバー成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形によるカバーの成形は、ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、カバー用組成物を注入して、冷却することによりカバーを成形することができ、例えば、9MPa〜15MPaの圧力で型締めした金型内に、200℃〜250℃に加熱したカバー用組成物を0.5秒〜5秒で注入し、10秒〜60秒間冷却して型開きすることにより行う。
カバーには、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。ディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
前記カバーの厚みは、4.0mm以下が好ましく、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下である。カバーの厚みが4.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。前記カバーの厚みは、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、さらに好ましくは0.8mm以上、特に好ましくは1.0mm以上である。カバーの厚みが0.3mm未満では、カバーの耐久性や耐摩耗性が低下する場合がある。複数のカバー層の場合は、複数のカバー層の合計厚みが上記範囲であることが好ましい。
カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。前記塗膜の膜厚は、特に限定されないが、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。膜厚が5μm未満になると継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなり、膜厚が50μmを超えるとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するからである。
本発明のゴルフボールは、直径40mm〜45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)は、2.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.4mm以上であり、さらに好ましくは2.5mm以上であり、最も好ましくは2.8mm以上であり、5.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは4.5mm以下である。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を5.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
本発明のゴルフボールの構造は、球状コアと、前記球状コアを被覆する一層以上のカバーとを有するものであれば、特に限定されない。図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール2が示された一部切り欠き断面図である。ゴルフボール2は、球状コア4と、球状コア4を被覆するカバー12とを有する。このカバーの表面には、多数のディンプル14が形成されている。このゴルフボール2の表面のうち、ディンプル14以外の部分は、ランド16である。このゴルフボール2は、カバー12の外側にペイント層およびマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
前記球状コアは、単層構造であることが好ましい。単層構造の球状コアは、多層構造の界面における打撃時のエネルギーロスがなく、反発性が向上するからである。また、カバーは、一層以上の構造であればよく、単層構造、あるいは、少なくとも二層以上の多層構造を有していてもよい。本発明のゴルフボールとしては、例えば、球状コアと前記球状コアを被覆するように配設された単層のカバーとからなるツーピースゴルフボール;球状コアと前記球状コアを被覆するように配設された二層以上のカバーを有するマルチピースゴルフボール(スリーピースゴルフボールを含む);球状コアと前記球状コアの周囲に設けられた糸ゴム層と、前記糸ゴム層を被覆するように配設されたカバーとを有する糸巻きゴルフボールなどを挙げることができる。上記いずれの構造のゴルフボールにも本発明を好適に利用できる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
[評価方法]
(1)圧縮変形量(mm)
コアまたはゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にコアまたはゴルフボールが縮む量)を測定した。
(2)スラブ硬度(ショアD硬度)
カバー用組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、ASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて測定した。
(3)コア硬度分布(JIS−C硬度)
スプリング式硬度計JIS−C型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて、コアの表面部において測定したJIS−C硬度をコア表面硬度とした。また、コアを半球状に切断し、切断面の中心、および、中心から所定の距離において硬度を測定した。なお、コア硬度は、コア断面の中心から所定の距離の4点で硬度を測定して、これらを平均することにより算出した。
(4)ドライバー飛距離(m)およびスピン量(rpm)
ゴルフラボラトリー社製のスイングロボットM/Cに、メタルヘッド製W#1ドライバー(ダンロップスポーツ社製、XXIO S ロフト11°)を取り付け、ヘッドスピード40m/秒でゴルフボールを打撃し、打撃直後のゴルフボールのスピン速度、ならびに飛距離(発射始点から静止地点までの距離)を測定した。測定は、各ゴルフボールについて12回ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの測定値とした。なお、打撃直後のゴルフボールのスピン速度は、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによって測定した。ドライバー飛距離およびスピン量は、ゴルフボールNo.5との差で示した。
[ゴルフボールの作製]
(1)コアの作製
表1に示す配合のゴム組成物を混練ロールにより混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃、20分間加熱プレスすることにより直径39.8mmの球状コアを得た。
BR730:JSR社製、ハイシスポリブタジエン(シス−1,4−結合含有量=96質量%、1,2−ビニル結合含有量=1.3質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))=55、分子量分布(Mw/Mn)=3)
サンセラーSR:三新化学工業社製、アクリル酸亜鉛(10質量%ステアリン酸コーティング品)
2−チオナフトール:東京化成工業社製
安息香酸:シグマアルドリッチ社製(純度99.5%以上)
二安息香酸亜鉛:和光純薬工業社製(純度95%以上)
4−ジメチルアミノ安息香酸:東京化成工業社製(純度98%以上)
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺R」
硫酸バリウム:堺化学社製「硫酸バリウムBD」、最終的に得られるゴルフボールの質量が45.4gとなるように調整した。
パーヘキシン(登録商標)25B:日油社製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3
ジクミルパーオキサイド:日油社製、「パークミル(登録商標)D(ジクミルパーオキサイド)」
(2)カバーの作製
次に、表2に示した配合のカバー用材料を、二軸混練型押出機により押し出して、ペレット状のカバー用組成物を調製した。押出は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35で行った。配合物は、押出機のダイの位置で150〜230℃に加熱された。得られたカバー用組成物を上述のようにして得られた球状コア上に射出成形して、球状コアと前記コアを被覆するカバーを有するゴルフボールを作製した。
ハイミラン1605:三井・デュポンポリケミカル社製、ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
ハイミラン1706:三井・デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
表1の結果から、球状コアが、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)有機過酸化物および(d)芳香族カルボン酸および/またはその塩を含有するゴム組成物から形成されているゴルフボールNo.1〜4は、いずれもドライバーショットのスピン量が軽減されており、飛距離が向上している。
ゴルフボールNo.7は、有機過酸化物としてジクミルパーオキサイドを用いた場合であるが、ゴルフボールNo.5に比べて低スピン化、高飛距離化が図られているものの、その効果はゴルフボールNo.1〜4よりも小さかった。ゴルフボールNo.8は、(d)芳香族カルボン酸および/またはその塩を含有しない場合であるが、ゴルフボールNo.5に比べて低スピン量化、高飛距離化の効果が得られなかった。