本発明のゴルフボールは、球状の内層コアと外層コアからなる球状コアと、この球状コアの外側に配設された第一中間層と、この第一中間層の外側に配設された第二中間層と、この第二中間層の外側に配設されたカバーとを有するゴルフボールであって、前記内層コアの中心硬度(Ho)と表面硬度(Hs1)との硬度差(Hs1−Ho)が、JIS−C硬度で5以下であり、前記外層コアの厚みを、球状コアの半径方向に12.5%間隔で等分した9点で測定したJIS−C硬度を、前記内層コアと外層コアとの境界点からの距離(%)に対してプロットしたときに、最小二乗法によって求めた線形近似曲線のR2が0.95以上であり、前記第一中間層の硬度(Hm1)が、前記第二中間層の硬度(Hm2)よりも小さく、前記第二中間層の硬度(Hm2)が、前記カバーの硬度(Hc)よりも大きいことを特徴とする。
(1)ゴルフボールの構造
本発明のゴルフボールは、球状の内層コアと外層コアからなる球状コアと、この球状コアの外側に配設された第一中間層と、この第一中間層の外側に配設された第二中間層と、この第二中間層の外側に配設されたカバーとを有するゴルフボールであれば、特に限定されない。以下、適宜図面を参照し、好ましい実施形態に基づいて本発明のゴルフボールを説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール2が示された一部切欠き断面図である。このゴルフボール2は、球状の内層コア4と前記内層コア4の外側に配設された外層コア6とからなる球状コア7、球状コア7の外側に配設された第一中間層8と、この第一中間層8の外側に配設された第二中間層9と、この第二中間層9の外側に配設されたカバー12とを有する。第二中間層9とカバー12との間には、第二中間層9とカバー12との密着性を向上させるための補強層10が設けられていても良い。カバー12の表面には、多数のディンプル14が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル14以外の部分は、ランド16である。このゴルフボール2は、カバーの外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
前記内層コアの形状は、球状である。前記内層コアの中心硬度(Ho)と表面硬度(Hs1)との硬度差(Hs1−Ho)は、JIS−C硬度で5以下であり、好ましくは4以下、より好ましくは2以下である。前記硬度差(Hs1−Ho)がJIS−C硬度で5を超えると、ゴルフボールの反発性が低下し、打撃直後のゴルフボール速度が低下する。なお、前記硬度差(Hs1−Ho)の下限は特に限定されないが、JIS−C硬度で0以上が好ましく、より好ましくは1以上である。
前記内層コアの中心硬度(Ho)は、JIS−C硬度で、40以上が好ましく、50以上がより好ましく、60以上がさらに好ましい。中心硬度が、JIS−C硬度で40以上であれば、反発性が向上する。また、ドライバーショットのスピン抑制の観点から、中心硬度はJIS−C硬度で80以下が好ましく、76以下がより好ましく、72以下がさらに好ましい。
前記内層コアの表面硬度(Hs1)は、JIS−C硬度で、50以上が好ましく、55以上がより好ましく、60以上がさらに好ましい。表面硬度がJIS−C硬度で50以上であれば、反発性がより向上する。また、ドライバーショットにおける低スピン化の観点から、表面硬度はJIS−C硬度で80以下が好ましく、75以下がより好ましく、70以下がさらに好ましい。
前記内層コアの直径は10.0mm以上が好ましく、12.0mm以上がより好ましく、14.0mm以上がさらに好ましい。内層コアの直径が10.0mm以上であれば、ドライバーショットのスピン量がより低減できる。また、前記内層コアの直径は、25.0mm以下が好ましく、22.0mm以下がより好ましく、19.0mm以下がさらに好ましい。内層コアの直径が25.0mm以下であれば、ゴルフボールの反発性能がより向上する。
前記外層コアは、内層コアの外側に配設される。外層コアの形態としては、前記内層コアの全体を被覆するように形成されていることが好ましい。
前記外層コアは、前記外層コアの厚みを、球状コアの半径方向に12.5%間隔で等分した9点で測定したJIS−C硬度を、前記内層コアと外層コアとの境界点からの距離(%)に対してプロットしたときに、最小二乗法によって求めた線形近似曲線のR2が0.95以上である。R2が0.95以上であれば、外層コアの硬度分布の直線性が高まり、ドライバースピン量が低下し、飛距離が大きくなる。
外層コアの硬度は、前記外層コアの厚みを球状コアの半径方向に12.5%間隔で等分した9点でJIS−C硬度を測定する。すなわち、外層コアの最内点(内層コアと外層コアとの境界点:0%)、前記内層コアと外層コアとの境界点からの距離が、12.5%、25%、37.5%、50%、62.5%、75%、87.5%、100%(球状コアの表面硬度Hs2)の9点において、JIS−C硬度を測定する。次に、上記のように測定されたJIS−C硬度を縦軸とし、境界点からの距離(%)を横軸として、測定結果をプロットしてグラフを作成する。本発明では、このプロットから最小二乗法により求めた線形近似曲線のR2が、0.95以上である。最小二乗法によって求めた線形近似曲線のR2は、得られたプロットの直線性を指標するものである。本発明において、R2が0.95以上であれば、外層コアの硬度分布が略直線であることを意味する。硬度分布が略直線状である外層コアを有するゴルフボールは、ドライバーショットのスピン量が低下する。その結果、ドライバーショットの飛距離が大きくなる。前記線形近似曲線のR2は、0.96以上が好ましく、0.97以上がより好ましい。直線性が高まることによって、ドライバーショットの飛距離がより大きくなる。
前記外層コアの最内点での硬度(Hb)と、外層コアの表面硬度(Hs2)との硬度差(Hs2−Hb)は、JIS−C硬度で20以上、より好ましくは22以上、さらに好ましくは24以上であり、45以下が好ましく、より好ましくは40以下、さらに好ましくは35以下である。前記硬度差(Hs2−Hb)がJIS−C硬度で20以上であればドライバーショットにおけるスピン量が一層小さくなり、45以下であれば耐久性の低下が抑制される。
前記外層コアの表面硬度(Hs2)は、JIS−C硬度で、80以上が好ましく、82以上がより好ましく、84以上がさらに好ましい。表面硬度がJIS−C硬度で80以上であれば、ドライバーショットのスピン量が一層低下する。また、耐久性の観点から、表面硬度はJIS−C硬度で96以下が好ましく、94以下がより好ましく、92以下がさらに好ましい。
前記外層コアの最内点の硬度(Hb)は、JIS−C硬度で、50以上が好ましく、55以上がより好ましく、60以上がさらに好ましい。最内点での硬度がJIS−C硬度で50以上であれば、打撃時のボール速度が向上する。また、ドライバーショットにおける低スピン化の観点から、最内点での硬度はJIS−C硬度で80以下が好ましく、75以下がより好ましく、70以下がさらに好ましい。
前記外層コアの厚さは、6mm以上が好ましく、より好ましくは8mm以上、さらに好ましくは11mm以上であり、16mm以下が好ましく、より好ましくは15mm以下、さらに好ましくは13mm以下である。前記厚さが6mm以上であれば、打撃時のボール速度の低下が抑制され、16mm以下であればドライバーショットにおける低スピン化の効果がより良好となる。
前記球状コアの表面硬度(Hs2)(外層コアの表面硬度と同義)と中心硬度(Ho)(内層コアの中心硬度と同義)との硬度差(Hs2−Ho)は、JIS−C硬度で20以上が好ましく、21以上がより好ましく、22以上がさらに好ましく、45以下が好ましく、40以下がより好ましく、35以下がさらに好ましい。外層コア表面とコア中心の硬度差が上記範囲内であれば、高打出角および低スピンの飛距離が大きいゴルフボールが得られる。
前記球状コアの直径は36.0mm以上が好ましく、37.0mm以上がより好ましく、38.0mm以上がさらに好ましい。球状コアの直径が36.0mm以上であれば、内層コアの直径を大きくすることができ、ゴルフボールの反発性能がより向上する。また、前記球状コアの直径は、40.0mm以下が好ましく、39.5mm以下がより好ましく、39.0mm以下がさらに好ましい。球状コアの直径が40.0mm以下であれば、耐久性の低下が抑制される。
前記球状コアは、直径34.8mm〜42.2mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にコアが縮む量)が、2.2mm以上が好ましく、より好ましくは2.5mm以上、4.0mm以下が好ましく、より好ましくは3.5mm以下である。前記圧縮変形量が、2.2mm以上であれば打球感がより良好となり、4.0mm以下であれば、反発性がより良好となる。
本発明のゴルフボールは、さらに前記球状コアの外側に配設された第一中間層と、この第一中間層の外側に配設された第二中間層と、この第二中間層の外側に配設されたカバーとを有する。前記中間層は、球状コアとカバーとの間に形成されるものであり、少なくとも第一中間層と第二中間層との二層有していればよく、三層以上有していてもよい。なお、中間層を三層以上有する場合、中間層の中で最も内側に配置されるものを第一中間層、中間層の中で最も外側に配置されるものを第二中間層とする。前記カバーは、ゴルフボール本体の最外層に形成される。
前記第一中間層のスラブ硬度(Hm1)と第二中間層のスラブ硬度(Hm2)との硬度差(Hm2−Hm1)は、ショアD硬度で8以上が好ましく、より好ましくは14以上、さらに好ましくは16以上であり、35以下が好ましく、より好ましくは30以下、さらに好ましくは25以下である。前記硬度差(Hm2−Hm1)が上記範囲内であれば、ゴルフボール(カバーを除く)の外剛内柔度合が高くなり、ドライバーショットにおいて一層低スピン化が図れる。また、アプローチショットにおけるスピン量が増大し、アプローチ性能が向上する。
前記第一中間層のスラブ硬度(Hm1)は、ショアD硬度で30以上が好ましく、より好ましくは40以上、さらに好ましくは45以上であり、60以下が好ましく、より好ましくは54以下、さらに好ましくは52以下である。第一中間層のスラブ硬度が、ショアD硬度で、30以上であれば、ドライバーショットにおいて一層低スピン化が図れる。また、第一中間層のスラブ硬度が、ショアD硬度で60以下であれば、アプローチ性能がより良好となる。
前記第二中間層のスラブ硬度(Hm2)は、ショアD硬度で55以上が好ましく、より好ましくは60以上、さらに好ましくは63以上であり、70以下が好ましく、より好ましくは68以下、さらに好ましくは67以下である。第二中間層のスラブ硬度が、ショアD硬度で、55以上であれば、ゴルフボール(カバーを除く)の外剛内柔度合が高くなり、ドライバーショットにおいて一層低スピン化が図れる。また、第二中間層のスラブ硬度が、ショアD硬度で70以下であれば、アプローチ性能がより良好となる。
中間層を三層以上とする場合、第一中間層と第二中間層の間に配置される中間層の硬度は、第一中間層の硬度よりも大きく、第二中間層の硬度よりも小さくすることが好ましい。また、各中間層の硬度は、第一中間層の硬度を最も小さくし、この外側に配置される中間層を、内側から順次高硬度となるように設計し、第二中間層の硬度を最も大きくすることが好ましい。
第一中間層および第二中間層の厚さは、0.5mm以上が好ましく、より好ましくは0.7mm以上、さらに好ましくは0.8mm以上である。第一中間層および第二中間層の厚さが、0.5mm以上であれば、耐久性が良好となる。第一中間層および第二中間層の厚さは、1.5mm以下が好ましく、より好ましくは1.2mm以下、さらに好ましくは1.1mm以下である。中間層の厚さが、1.5mm以下であれば、相対的に球状コアの直径を大きくすることができ、ゴルフボールの反発性がより向上する。
前記中間層の総厚さは1.0mm以上が好ましく、より好ましくは1.3mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上であり、3.0mm以下が好ましく、より好ましくは2.5mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下である。中間層の総厚さが1.0mm以上であれば、耐久性が良好となる。中間層の厚さが、3.0mm以下であれば、相対的に球状コアの直径を大きくすることができ、ゴルフボールの反発性がより向上する。
前記第二中間層のスラブ硬度(Hm2)と前記カバーのスラブ硬度(Hc)との硬度差(Hm2−Hc)は、ショアD硬度で30以上が好ましく、32以上がより好ましく、34以上がさらに好ましく、45以下が好ましく、42以下がより好ましく、38以下がさらに好ましい。前記硬度差(Hm2−Hc)が上記範囲内であれば、ドライバーショットにおける低スピン化、および、アプローチショットにおける高スピン化が図れる。
前記カバーのスラブ硬度(Hc)は、48以下が好ましく、より好ましくは40以下、さらに好ましくは32以下である。カバーのスラブ硬度が、ショアD硬度で、48以下であれば、アプローチショットのスピン量が増加して、コントロール性が向上する。カバーのスラブ硬度は、ショアD硬度で20以上が好ましく、より好ましくは24以上、さらに好ましくは28以上である。ショアD硬度で20以上であれば、カバーの耐擦過傷性が向上する。
カバーの厚さは、0.8mm以下が好ましく、より好ましくは0.7mm以下、さらに好ましくは0.6mm以下である。カバーの厚さが0.8mm以下であれば、ドライバーショットにおいて一層低スピン化が図れる。カバーの厚さは、0.1mm以上が好ましく、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上である。カバーが薄すぎると、カバーの成形が難しくなる傾向がある。
カバーには、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。ディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
本発明のゴルフボールは、第二中間層とカバーとの間に補強層を備えてもよい。補強層は、第二中間層と堅固に密着し、カバーとも堅固に密着する。補強層により、第二中間層からカバーの剥離が抑制される。特に、薄いカバーを有するゴルフボールが、クラブフェースのエッジで打撃されると、シワが生じやすい。補強層により、シワが抑制される。
シワの抑制の観点から、補強層の厚さは3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。補強層が容易に形成されるとの観点から、厚さは15μm以下が好ましく、12μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。厚さは、ゴルフボールの断面がマイクロスコープで観察されることで測定される。粗面処理により第二中間層の表面が凹凸を備える場合は、凸部の直上で厚みが測定される。
シワの抑制の観点から、補強層の鉛筆硬度は4B以上が好ましく、B以上がより好ましい。ゴルフボールが打撃されたときの、カバーから中間層までの力の伝達ロスが小さいとの観点から、補強層の鉛筆硬度は3H以下が好ましい。鉛筆硬度は、JIS K5400規格に準拠して測定される。
本発明のゴルフボールは、直径40mm〜45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)は、1.8mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.0mm以上であり、さらに好ましくは2.2mm以上であり、最も好ましくは2.3mm以上であり、3.6mm以下であることが好ましく、より好ましくは3.0mm以下である。前記圧縮変形量が1.8mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を3.6mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
ゴルフボール本体表面には、塗膜が設けられることが好ましい。前記塗膜の膜厚は、特に限定されないが、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。膜厚が5μm未満になると継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなり、膜厚が50μmを超えるとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するからである。
本発明のゴルフボールとしては、例えば、球状の内層コアと外層コアからなる球状コアと、この球状コアの外側に配設された第一中間層と、この第一中間層の外側に配設された第二中間層と、この第二中間層の外側に配設されたカバーとを有する5ピースゴルフボール;球状の内層コアと外層コアからなる球状コアと、この球状コアの外側に配設された第一中間層と、この第一中間層の外側に配設された一層以上の第三中間層と、この第三中間層の外側に配設された第二中間層と、この第二中間層の外側に配設されたカバーとを有するマルチピースゴルフボール(6ピース以上)などが挙げられる。
(2)外層コア用ゴム組成物
本発明のゴルフボールは、前記外層コアが、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤、および、(d)酸および/またはその塩を含有し、前記(b)共架橋剤として、(b1)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/または(b2)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩を含有する外層コア用ゴム組成物から形成されていることが好ましい。前記ゴム組成物から形成される外層コアは、コア硬度分布が、外層コアと内層コアとの境界点から表面に向かってほぼ直線的に増加しやすい。
前記ゴム組成物から形成される外層コアの硬度分布が、内層コアと外層コアとの境界点から表面に向かってほぼ直線的に増加する理由は、以下のように考えられる。外層コアを成形する際の外層コア内部温度は、外層コアの内部で高く、外層コア表面に向かって低下する。基材ゴムの架橋反応の反応熱が外層コア内部で溜まるからである。(d)前記酸および/またはその塩は、外層コア成形時において炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩と反応する。すなわち、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩とカチオンを交換し、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩による金属架橋を切断する。このカチオンの交換反応は、温度が高い外層コアの内部において起こりやすく、表面にむかって起こりにくくなる。その結果、外層コア内部の架橋密度が、内層コアと外層コアとの境界点から表面に向かって高くなるので、外層コア硬度が、内層コアと外層コアとの境界点から表面に向かってほぼ直線的に増加するものと考えられる。そして、(d)酸および/またはその塩とともに(e)有機硫黄化合物を用いることにより、硬度分布の勾配を制御することができ、コアの外剛内柔構造の度合を一層高めることができる。
前記(a)基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、特に、反発に有利なシス−1,4−結合を、40質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上有するハイシスポリブタジエンが好適である。
前記ハイシスポリブタジエンは、1,2−ビニル結合の含有量が2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.7質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。1,2−ビニル結合の含有量が多すぎると反発性が低下する場合がある。
前記ハイシスポリブタジエンは、希土類元素系触媒で合成されたものが好適であり、特に、ランタン系列希土類元素化合物であるネオジム化合物を用いたネオジム系触媒の使用が、1,4−シス結合が高含量、1,2−ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得られるので好ましい。
前記ハイシスポリブタジエンは、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が、30以上であることが好ましく、より好ましくは32以上、さらに好ましくは35以上であり、140以下が好ましく、より好ましくは120以下、さらに好ましくは100以下、最も好ましくは80以下である。なお、本発明でいうムーニー粘度(ML1+4(100℃))とは、JIS K6300に準じて、Lローターを使用し、予備加熱時間1分間、ローターの回転時間4分間、100℃の条件下にて測定した値である。
前記ハイシスポリブタジエンとしては、分子量分布Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が、2.0以上であることが好ましく、より好ましくは2.2以上、さらに好ましくは2.4以上、最も好ましくは2.6以上であり、6.0以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下、最も好ましくは3.4以下である。ハイシスポリブタジエンの分子量分布(Mw/Mn)が小さすぎると作業性が低下し、大きすぎると反発性が低下するおそれがある。なお、分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー社製、「HLC−8120GPC」)により、検知器として示差屈折計を用いて、カラム:GMHHXL(東ソー社製)、カラム温度:40℃、移動相:テトラヒドロフランの条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として算出した値である。
次に、(b)共架橋剤について説明する。前記(b)共架橋剤として、(b1)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/または(b2)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩を含有する。以下、(b1)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/または(b2)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩を、「(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩」と称する場合がある。
(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は、共架橋剤として、ゴム組成物に配合されるものであり、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有する。本発明で使用するゴム組成物が、(b1)共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸のみを含有する場合、ゴム組成物は、後述する(f)金属化合物を含有することが好ましい。ゴム組成物中で炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸を(f)金属化合物で中和することにより、共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩を使用する場合と実質的に同様の効果が得られるからである。また、共架橋剤として、(b2)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とその金属塩とを併用する場合においても、(f)金属化合物を用いてもよい。
(b1)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等を挙げることができる。
(b2)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの一価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属イオン;アルミニウムなどの三価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。前記金属成分は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。これらの中でも、前記金属成分としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属が好ましい。炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の二価の金属塩を用いることにより、ゴム分子間に金属架橋が生じやすくなるからである。特に、二価の金属塩としては、得られるゴルフボールの反発性が高くなるということから、アクリル酸亜鉛が好適である。なお、(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用しても良い。
(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量が15質量部未満では、ゴム組成物から形成される部材を適当な硬さとするために、後述する(c)架橋開始剤の量を増加しなければならず、ゴルフボールの反発性が低下する傾向がある。一方、(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量が50質量部を超えると、ゴム組成物から形成される部材が硬くなりすぎて、ゴルフボールの打球感が低下するおそれがある。
(c)架橋開始剤は、(a)基材ゴム成分を架橋するために配合されるものである。(c)架橋開始剤としては、有機過酸化物が好適である。前記有機過酸化物は、具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でもジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。
(c)架橋開始剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは2.5質量部以下である。0.2質量部未満では、ゴム組成物から形成される部材が柔らかくなりすぎて、ゴルフボールの反発性が低下する傾向があり、5.0質量部を超えると、ゴム組成物から形成される部材を適切な硬さにするために、前述した(b)共架橋剤の使用量を減量する必要があり、ゴルフボールの反発性が不足したり、耐久性が悪くなるおそれがある。
次に、(d)酸および/またはその塩について説明する。(d)酸および/またはその塩は、外層コア成形時に外層コア内部において、(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩による金属架橋を切断する作用を有するものと考えられる。
(d)酸および/またはその塩は、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩とカチオン成分を交換できるものであれば、脂肪族酸および/またはその塩、あるいは、芳香族酸および/またはその塩のいずれであってもよい。(d)酸および/またはその塩としては、例えば、プロトン酸および/またはその塩が好ましい。前記プロトン酸としては、カルボン酸、スルホン酸、リン酸などのオキソ酸;塩酸、フッ化水素酸などの水素酸;などが挙げられる。これらの中でも、オキソ酸が好ましく、カルボン酸がより好ましい。すなわち、(d)酸および/またはその塩としては、カルボン酸および/またはその塩が好適である。
(d)カルボン酸および/またはその塩は、脂肪族カルボン酸(本発明において、単に「脂肪酸」と称する場合がある)および/またはその塩、あるいは、芳香族カルボン酸および/またはその塩のいずれであってもよいが、脂肪族カルボン酸および/またはその塩が好ましい。前記カルボン酸および/またはその塩としては、炭素数が1〜30のカルボン酸および/またはその塩が好ましく、より好ましくは炭素数が4〜30のカルボン酸および/またはその塩、さらに好ましくは炭素数が5〜25のカルボン酸および/またはその塩である。なお、(d)カルボン酸および/またはその塩には、共架橋剤として使用する(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は含まれないものとする。
前記脂肪酸は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれであっても良いが、飽和脂肪酸であることが好ましい。前記飽和脂肪酸の具体例(IUPAC名)としては、メタン酸(C1)、エタン酸(C2)、プロパン酸(C3)、ブタン酸(C4)、ペンタン酸(C5)、ヘキサン酸(C6)、ヘプタン酸(C7)、オクタン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(C10)、ウンデカン酸(C11)、ドデカン酸(C12)、トリデカン酸(C13)、テトラデカン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、ヘキサデカン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)、オクタデカン酸(C18)、ノナデカン酸(C19)、イコサン酸(C20)、ヘンイコサン酸(C21)、ドコサン酸(C22)、トリコサン酸(C23)、テトラコサン酸(C24)、ペンタコサン酸(C25)、ヘキサコサン酸(C26)、ヘプタコサン酸(C27)、オクタコサン酸(C28)、ノナコサン酸(C29)、トリアコンタン酸(C30)などを挙げることができる。
不飽和脂肪酸の具合例(IUPAC名)としては、エテン酸(C2)、プロペン酸(C3)、ブテン酸(C4)、ペンテン酸(C5)、ヘキセン酸(C6)、ヘプテン酸(C7)、オクテン酸(C8)、ノネン酸(C9)、デセン酸(C10)、ウンデセン酸(C11)、ドデセン酸(C12)、トリデセン酸(C13)、テトラデセン酸(C14)、ペンタデセン酸(C15)、ヘキサデセン酸(C16)、ヘプタデセン酸(C17)、オクタデセン酸(C18)、ノナデセン酸(C19)、イコセン酸(C20)、ヘンイコセン酸(C21)、ドコセン酸(C22)、トリコセン酸(C23)、テトラコセン酸(C24)、ペンタコセン酸(C25)、ヘキサコセン酸(C26)、ヘプタコセン酸(C27)、オクタコセン酸(C28)、ノナコセン酸(C29)、トリアコンテン酸(C30)などを挙げることができる。
前記脂肪酸の具体例(慣用名)としては、例えば、ギ酸(C1)、酢酸(C2)、プロピオン酸(C3)、酪酸(C4)、吉草酸(C5)、カプロン酸(C6)、エナント酸(C7)、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、ミリストレイン酸(C14)、ペンタデシル酸(C15)、パルミチン酸(C16)、パルミトレイン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、エライジン酸(C18)、バクセン酸(C18)、オレイン酸(C18)、リノール酸(C18)、リノレン酸(C18)、12−ヒドロキシステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ガドレイン酸(C20)、アラキドン酸(C20)、エイコセン酸(C20)、ベヘニン酸(C22)、エルカ酸(C22)、リグノセリン酸(C24)、ネルボン酸(C24)、セロチン酸(C26)、モンタン酸(C28)、メリシン酸(C30)などを挙げることができる。前記脂肪酸は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。これらの中でも、前記脂肪酸として好ましいのは、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、または、オレイン酸である。
芳香族カルボン酸は、芳香環とカルボキシル基とを有する化合物であれば特に限定されない。芳香族カルボン酸の具体例としては、例えば、安息香酸(C7)、フタル酸(C8)、イソフタル酸(C8)、テレフタル酸(C8)、ヘメミリット酸(ベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸)(C9)、トリメリット酸(ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸)(C9)、トリメシン酸(ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸)(C9)、メロファン酸(ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸)(C10)、プレーニト酸(ベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボン酸)(C10)、ピロメリット酸(ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸)(C10)、メリット酸(ベンゼンヘキサカルボン酸)(C12)、ジフェン酸(ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸)(C12)、トルイル酸(メチル安息香酸)(C8)、キシリル酸(C9)、プレーニチル酸(2,3,4−トリメチル安息香酸)(C10)、γ−イソジュリル酸(2,3,5−トリメチル安息香酸)(C10)、ジュリル酸(2,4,5−トリメチル安息香酸)(C10)、β−イソジュリル酸(2,4,6−トリメチル安息香酸)(C10)、α−イソジュリル酸(3,4,5−トリメチル安息香酸)(C10)、クミン酸(4−イソプロピル安息香酸)(C10)、ウビト酸(5−メチルイソフタル酸)(C9)、α−トルイル酸(フェニル酢酸)(C8)、ヒドロアトロパ酸(2−フェニルプロパン酸)(C9)、ヒドロケイ皮酸(3−フェニルプロパン酸)(C9)などを挙げることができる。
また、ヒドロキシル基、アルコキシ基、またはオキソ基で置換された芳香族カルボン酸としては、例えば、サリチル酸(2−ヒドロキシ安息香酸)(C7)、アニス酸(メトキシ安息香酸)(C8)、クレソチン酸(ヒドロキシ(メチル)安息香酸)(C8)、o−ホモサリチル酸(2−ヒドロキシ−3−メチル安息香酸)(C8)、m−ホモサリチル酸(2−ヒドロキシ−4−メチル安息香酸)(C8)、p−ホモサリチル酸(2−ヒドロキシ−5−メチル安息香酸)(C8)、o−ピロカテク酸(2,3−ジヒドロキシ安息香酸)(C7)、β−レソルシル酸(2,4−ジヒドロキシ安息香酸)(C7)、γ−レソルシル酸(2,6−ジヒドロキシ安息香酸)(C7)、プロトカテク酸(3,4−ジヒドロキシ安息香酸)(C7)、α−レソルシル酸(3,5−ジヒドロキシ安息香酸)(C7)、バニリン酸(4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸)(C8)、イソバニリン酸(3−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸)(C8)、ベラトルム酸(3,4−ジメトキシ安息香酸)(C9)、o−ベラトルム酸(2,3−ジメトキシ安息香酸)(C9)、オルセリン酸(2,4−ジヒドロキシ−6−メチル安息香酸)(C8)、m−ヘミピン酸(4,5−ジメトキシフタル酸)(C10)、没食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)(C7)、シリング酸(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシ安息香酸)(C9)、アサロン酸(2,4,5−トリメトキシ安息香酸)(C10)、マンデル酸(ヒドロキシ(フェニル)酢酸)(C8)、バニルマンデル酸(ヒドロキシ(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)酢酸)(C9)、ホモアニス酸((4−メトキシフェニル)酢酸)(C9)、ホモゲンチジン酸((2,5−ジヒドロキシフェニル)酢酸)(C8)、ホモプロトカテク酸((3,4−ジヒドロキシフェニル)酢酸)(C8)、ホモバニリン酸((4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)酢酸)(C9)、ホモイソバニリン酸((3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)酢酸)(C9)、ホモベラトルム酸((3,4−ジメトキシフェニル)酢酸)(C10)、o−ホモベラトルム酸((2,3−ジメトキシフェニル)酢酸)(C10)、ホモフタル酸(2−(カルボキシメチル)安息香酸)(C9)、ホモイソフタル酸(3−(カルボキシメチル)安息香酸)(C9)、ホモテレフタル酸(4−(カルボキシメチル)安息香酸)(C9)、フタロン酸(2−(カルボキシカルボニル)安息香酸)(C9)、イソフタロン酸(3−(カルボキシカルボニル)安息香酸)(C9)、テレフタロン酸(4−(カルボキシカルボニル)安息香酸)(C9)、ベンジル酸(ヒドロキシジフェニル酢酸)(C14)、アトロラクチン酸(2−ヒドロキシ−2−フェニルプロパン酸)(C9)、トロパ酸(3−ヒドロキシ−2−フェニルプロパン酸)(C9)、メリロット酸(3−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン酸)(C9)、フロレト酸(3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸)(C9)、ヒドロカフェ−酸(3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン酸)(C9)、ヒドロフェルラ酸(3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロパン酸)(C10)、ヒドロイソフェルラ酸(3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロパン酸)(C10)、p−クマル酸(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリル酸)(C9)、ウンベル酸(3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)アクリル酸)(C9)、カフェー酸(3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)アクリル酸)(C9)、フェルラ酸(3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリル酸)(C10)、イソフェルラ酸(3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)アクリル酸)(C10)、シナピン酸(3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル)アクリル酸)(C11)などを挙げることができる。
(d)酸の塩のカチオン成分としては、金属イオン、アンモニウムイオン、および、有機陽イオンのいずれであってもよい。金属イオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀などの一価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウム、銅、コバルト、ニッケル、マンガンなどの二価の金属イオン;アルミニウム、鉄などの三価の金属イオン;錫、ジルコニウム、チタンなどのその他のイオンが挙げられる。前記カルボン酸塩のカチオン成分としては、亜鉛イオンが好ましい。前記カチオン成分は、単独または2種以上の混合物であってもよい。
前記有機陽イオンとは、炭素鎖を有する陽イオンである。前記有機陽イオンとしては、特に限定されず、例えば、有機アンモニウムイオンが挙げられる。前記有機アンモニウムイオンとしては、例えば、ステアリルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオンなどの1級アンモニウムイオン、ドデシル(ラウリル)アンモニウムイオン、オクタデシル(ステアリル)アンモニウムイオンなどの2級アンモニウムイオン;トリオクチルアンモニウムイオンなどの3級アンモニウムイオン;ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオンなどの4級アンモニウムイオンなどが挙げられる。これらの有機陽イオンは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(d)酸および/またはその塩の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、1.0質量部以上が好ましく、より好ましくは1.5質量部以上、さらに好ましくは2.0質量部以上であって、40質量部未満が好ましく、より好ましくは30質量部以下であり、さらに好ましくは20質量部以下である。含有量が少なすぎると、(d)酸および/またはその塩を添加した効果が十分ではなく、外層コアの外剛内柔度合が小さくなるおそれがある。また、含有量が多すぎると、得られる外層コアの硬度が全体的に低下して、反発性が低下するおそれがある。
なお、共架橋剤として使用されるアクリル酸亜鉛の表面は、ゴムへの分散性を向上するために(d)酸および/またはその塩で処理されている場合がある。(d)酸および/またはその塩で表面処理されたアクリル酸亜鉛を使用する場合、本発明では、表面処理剤である(d)酸および/またはその塩の量は、(d)成分の含有量に含まれないものとする。このような、アクリル酸亜鉛の表面処理に用いられている(d)酸および/またはその塩は、(b)共架橋剤とのカチオン交換反応にほとんど寄与しないと考えられる。
(d)酸および/またはその塩の含有量は、使用する酸および/またはその塩の種類およびその組合せによって、適宜設定することが好ましい。特に、(d)酸および/またはその塩の含有量は、酸および/またはその塩の炭素数およびその組合せに応じて適宜設定されることが好ましい。(d)酸および/またはその塩が、金属架橋を切断する作用は、添加する酸および/またはその塩のモル数に影響されると考えられる。同時に、酸および/またはその塩は、外層コアの可塑剤として作用する。添加する(d)酸および/またはその塩の配合量(質量)が増加すると、外層コア全体が軟化する。この可塑効果は、添加する酸および/またはその塩の配合量(質量)の影響を受ける。これらの作用を考慮すると、例えば、炭素数が小さい(分子量が小さい)酸および/またはその塩を使用すれば、炭素数が大きい(分子量が大きい)酸および/またはその塩を使用する場合に比べて、同じ配合量(質量)で、添加するモル数を大きくすることができる。すなわち、低炭素数の酸および/またはその塩は、可塑効果により外層コア全体が軟化するのを抑制しつつ、金属架橋を切断する作用効果を高めることができる。
例えば、(d)酸および/またはその塩として、炭素数が1〜14のカルボン酸および/またはその塩を使用する場合は、(a)基材ゴム100質量部に対して、1.0質量部以上が好ましく、より好ましくは1.2質量部以上、さらに好ましくは1.4質量部以上であって、20質量部以下が好ましく、より好ましくは18質量部以下であり、さらに好ましくは16質量部以下である。なお、炭素数が1〜14のカルボン酸塩の炭素数は、カルボン酸成分の炭素数であり、有機陽イオン中の炭素数は含まれない。
例えば、(d)酸および/またはその塩として、炭素数が15〜30のカルボン酸および/またはその塩を使用する場合は、(a)基材ゴム100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、より好ましくは6質量部以上、さらに好ましくは7質量部以上であって、40質量部未満が好ましく、より好ましくは35質量部以下であり、さらに好ましくは30質量部以下である。なお、炭素数が15〜30のカルボン酸塩の炭素数は、カルボン酸成分の炭素数であり、有機陽イオン中の炭素数は含まれない。
また、(d)酸および/またはその塩として、炭素数が15〜30のカルボン酸および/またはその塩を使用する場合は、前記(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、70質量部以下が好ましく、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下である。
本発明に用いられるゴム組成物は、さらに(e)有機硫黄化合物を含有することが好ましい。前記用ゴム組成物が(d)酸および/またはその塩に加えて、(e)有機硫黄化合物を併用することにより、コア硬度分布の略直線性を維持しつつ、外層コアの外剛内柔構造の度合を制御することができる。
(e)有機硫黄化合物としては、分子内に硫黄原子を有する有機化合物であれば、特に限定されず、例えば、チオール基(−SH)、または、硫黄数が2〜4のポリスルフィド結合(−S−S−、−S−S−S−、または、−S−S−S−S−)を有する有機化合物、あるいはこれらの金属塩(−SM、−S−M−S−、−S−M−S−S−,−S−S−M−S−S−,−S−M−S−S−S−など、Mは金属原子)を挙げることができる。また、(e)前記有機硫黄化合物は、脂肪族化合物(脂肪族チオール、脂肪族チオカルボン酸、脂肪族ジチオカルボン酸、脂肪族ポリスルフィドなど)、複素環式化合物、脂環式化合物(脂環式チオール、脂環式チオカルボン酸、脂環式ジチオカルボン酸、脂環式ポリスルフィドなど)、および、芳香族化合物のいずれであってもよい。
(e)有機硫黄化合物としては、例えば、チオフェノール類、チオナフトール類、ポリスルフィド類、チオカルボン酸類、ジチオカルボン酸類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、チアゾール類などを挙げることができる。球状コアの硬度分布が大きくなるという観点から、(e)有機硫黄化合物としては、チオール基(−SH)を有する有機硫黄化合物、または、その金属塩が好ましく、チオフェノール類、チオナフトール類、または、これらの金属塩が好ましい。金属塩としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、銅(I)、銀(I)などの一価の金属塩、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン(II)、マンガン(II)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、ジルコニウム(II)、スズ(II)等の二価の金属塩が挙げられる。
チオフェノール類としては、例えば、チオフェノール;4−フルオロチオフェノール、2,5−ジフルオロチオフェノール、2,4,5−トリフルオロチオフェノール、2,4,5,6−テトラフルオロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノールなどのフルオロ基で置換されたチオフェノール類;2−クロロチオフェノール、4−クロロチオフェノール、2,4−ジクロロチオフェノール、2,5−ジクロロチオフェノール、2,6−ジクロロチオフェノール、2,4,5−トリクロロチオフェノール、2,4,5,6−テトラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノールなどのクロロ基で置換されたチオフェノール類;4−ブロモチオフェノール、2,5−ジブロモチオフェノール、2,4,5−トリブロモチオフェノール、2,4,5,6−テトラブロモチオフェノール、ペンタブロモチオフェノールなどのブロモ基で置換されたチオフェノール類;4−ヨードチオフェノール、2,5−ジヨードチオフェノール、2,4,5−トリヨードチオフェノール、2,4,5,6−テトラヨードチオフェノール、ペンタヨードチオフェノールなどのヨード基で置換されたチオフェノール類;または、これらの金属塩が挙げられる。金属塩としては、亜鉛塩が好ましい。
チオナフトール類(ナフタレンチオール類)としては、例えば、2−チオナフトール、1−チオナフトール、2−クロロ−1−チオナフトール、2−ブロモ−1−チオナフトール、2−フルオロ−1−チオナフトール、2−シアノ−1−チオナフトール、2−アセチル−1−チオナフトール、1−クロロ−2−チオナフトール、1−ブロモ−2−チオナフトール、1−フルオロ−2−チオナフトール、1−シアノ−2−チオナフトール、1−アセチル−2−チオナフトール、またはこれらの金属塩を挙げることができ、1−チオナフトール、2−チオナフトール、または、これらの亜鉛塩が好ましい。
スルフェンアミド系有機硫黄化合物としては、例えば、N−シクロへキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドが挙げられる。チウラム系有機硫黄化合物としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドが挙げられる。ジチオカルバミン酸塩類としては、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸銅(II)、ジメチルジチオカルバミン酸鉄(III)、ジエチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルルなどを挙げることができる。チアゾール系有機硫黄化合物としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、亜鉛塩、銅塩、または、シクロヘキシルアミン塩、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モリホリノチオ)ベンゾチアゾールなどを挙げることができる。(e)前記有機硫黄化合物は、単独もしくは二種以上を混合して使用することができる。
(e)有機硫黄化合物の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは2.0質量部以下である。0.05質量部未満では、(e)有機硫黄化合物を添加した効果が得られず、ゴルフボールの反発性が向上しないおそれがある。また、5.0質量部を超えると、得られるゴルフボールの圧縮変形量が大きくなって、反発性が低下するおそれがある。
本発明に用いられるゴム組成物は、必要に応じて、顔料、重量調整などのための充填剤、老化防止剤、しゃく解剤、軟化剤などの添加剤を含有してもよい。また上述したように、本発明で使用するゴム組成物が、共架橋剤として(b1)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸のみを含有する場合、ゴム組成物は、(f)金属化合物をさらに含有することが好ましい。
(f)前記金属化合物としては、ゴム組成物中において(b1)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸を中和することができるものであれば、特に限定されない。(f)前記金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。(f)前記金属化合物として好ましいのは、二価金属化合物であり、より好ましくは亜鉛化合物である。二価金属化合物は、(b1)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸と反応して、金属架橋を形成するからである。また、亜鉛化合物を用いることにより、反発性の高いゴルフボールが得られる。これらの(f)金属化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。(f)金属化合物の含有量は、所望とする(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の中和度に応じて、適宜調整すればよい。
ゴム組成物に配合される顔料としては、例えば、白色顔料、青色顔料、紫色顔料などを挙げることができる。前記白色顔料としては、酸化チタンを使用することが好ましい。酸化チタンの種類は、特に限定されないが、隠蔽性が良好であるという理由から、ルチル型を用いることが好ましい。また、酸化チタンの含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは2質量部以上であって、8質量部以下が好ましく、より好ましくは5質量部以下である。
ゴム組成物が白色顔料と青色顔料とを含有することも好ましい態様である。青色顔料は、白色を鮮やかに見せるために配合され、例えば、群青、コバルト青、フタロシアニンブルーなどを挙げることができる。また、前記紫色顔料としては、例えば、アントラキノンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、メチルバイオレットなどを挙げることができる。
前記青色顔料の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.001質量部以上が好ましく、より好ましくは0.05質量部以上であって、0.2質量部以下が好ましく、より好ましくは0.1質量部以下である。0.001質量部未満では、青みが不十分で、黄色味がかった色に見え、0.2質量部を超えると、青くなりすぎて、鮮やかな白色外観ではなくなる。
ゴム組成物に用いる充填剤としては、主として最終製品として得られるゴルフボールの重量を調整するための重量調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤として特に好ましいのは、酸化亜鉛である。酸化亜鉛は、加硫助剤として機能して、球状コア全体の硬度を高めると考えられている。前記充填剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であって、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。充填剤の含有量が0.5質量部未満では、重量調整が難しくなり、30質量部を超えるとゴム成分の重量分率が小さくなり反発性が低下する傾向があるからである。
前記老化防止剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
(3)内層コア用組成物
内層コアの材料としては、ゴム組成物、あるいは、樹脂組成物を採用できる。
内層コア用ゴム組成物としては、例えば、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤を含むゴム組成物が挙げられる。(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤としては、外層コア用ゴム組成物と同様のものが使用できる。
前記内層コア用ゴム組成物には、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤に加えて、(f)有機硫黄化合物、(e)金属化合物、充填剤、老化防止剤、しゃく解剤などを適宜配合できる。これらの成分についても、外層コア用ゴム組成物と同様のものが使用できる。なお、内層コア用ゴム組成物には、前記(d)酸および/またはその塩を配合しないことが好ましい。なお、内層コア用ゴム組成物に(d)酸および/またはその塩を配合する場合、その含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、40質量部超が好ましい。
前記樹脂成分としては、オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物からなる二元系アイオノマー樹脂、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなる三元系アイオノマー樹脂などが挙げられる。
二元共重合体の具体例を商品名で例示すると、例えば、三井デュポンポリケミカル社から商品名「ニュクレル(NUCREL)(登録商標)(例えば、「ニュクレルN1050H」、「ニュクレルN2050H」、「ニュクレルN1110H」、「ニュクレルN0200H」)」で市販されているエチレン−メタクリル酸共重合体などが挙げられる。三元共重合体の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル社から市販されている商品名「ニュクレル(NUCREL)(登録商標)(例えば、「ニュクレルAN4318」、「ニュクレルAN4319」)」などが挙げられる。
二元系アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井・デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7311(Mg)、ハイミランAM7329(Zn)など」が挙げられる。三元系アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミランAM7327(Zn)、ハイミラン1855(Zn)、ハイミラン1856(Na)、ハイミランAM7331(Na)など)」が挙げられる。
なお、樹脂成分として二元共重合体、三元共重合体を用いる場合、金属化合物を配合してもよい。金属化合物としては、外層コア用ゴム組成物に用いられる(e)金属化合物が挙げられる。
内層コアに樹脂組成物を使用する場合、カチオン性部位とアニオン性部位とを有する両性界面活性剤を配合してもよい。両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン型、アミドベタイン型、イミダゾリウムベタイン型、アルキルスルホベタイン型、アミドスルホベタイン型などのベタイン型両性界面活性剤;アミドアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルアミノ脂肪酸塩;アルキルアミンオキシド;β−アラニン型両性界面活性剤、グリシン型両性界面活性剤;スルホベタイン型両性界面活性剤;ホスホベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、ジメチルラウリルベタイン、オレイルジメチルアミノ酢酸ベタイン(オレイルベタイン)、ジメチルオレイルベタイン、ジメチルステアリルベタイン、ステアリルジヒドロキシメチルベタイン、ステアリルジヒドロキシエチルベタイン、ラウリルジヒドロキシメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン、ミリスチルジヒドロキシメチルベタイン、ベヘニルジヒドロキシメチルベタイン、パルミチルジヒドロキシエチルベタイン、オレイルジヒドロキシメチルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドアルキルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシアルキルイミダゾリニウムベタイン、ラウリン酸アミドアルキルヒドロキシスルホベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドジアルキルヒドロキシアルキルスルホベタイン、N−アルキル−β−アミノプロピオン酸塩、N−アルキル−β−イミノジプロピオン酸塩、アルキルジアミノアルキルグリシン、アルキルポリアミノアルキルグリシン、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、N,N−ジメチルオクチルアミンオキサイド、N,N-ジメチルラウリルアミンオキサイド、N,N-ジメチルステアリルアミンオキサイドなどを挙げることができる。
前記両性界面活性剤の含有量は、基材樹脂100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、100質量部以下が好ましく、より好ましくは90質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下である。
また、内層コアに樹脂組成物を使用する場合、塩基性脂肪族金属塩を配合してもよい。塩基性脂肪族金属塩を配合することで、反発性能を向上させることができる。前記塩基性脂肪酸金属塩は、塩基性飽和脂肪酸金属塩であることが好ましい。また、塩基性脂肪酸金属塩は、炭素数が4〜22の塩基性脂肪酸金属塩が好ましく、炭素数が5〜18の塩基性脂肪酸金属塩が好ましい。塩基性脂肪酸金属塩の具体例としては、塩基性カプリル酸マグネシウム、塩基性カプリル酸カルシウム、塩基性カプリル酸亜鉛、塩基性ラウリン酸マグネシウム、塩基性ラウリン酸カルシウム、塩基性ラウリン酸亜鉛、塩基性ミリスチン酸マグネシウム、塩基性ミリスチン酸カルシウム、塩基性ミリスチン酸亜鉛、塩基性パルミチン酸マグネシウム、塩基性パルミチン酸カルシウム、塩基性パルミチン酸亜鉛、塩基性オレイン酸マグネシウム、塩基性オレイン酸カルシウム、塩基性オレイン酸亜鉛、塩基性ステアリン酸マグネシウム、塩基性ステアリン酸カルシウム、塩基性ステアリン酸亜鉛、塩基性12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、塩基性12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、塩基性12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、塩基性ベヘニン酸マグネシウム、塩基性ベヘニン酸カルシウム、塩基性ベヘニン酸亜鉛などが挙げられる。(d)塩基性脂肪酸金属塩としては、塩基性脂肪酸亜鉛が好ましく、塩基性ステアリン酸亜鉛、塩基性ラウリン酸亜鉛、および、塩基性カプリル酸亜鉛がより好ましい。前記塩基性脂肪酸金属塩は、単独若しくは2種以上の混合物として使用することもできる。
前記塩基性脂肪酸金属塩の含有量は、基材樹脂100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、80質量部以下が好ましく、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下である。
(4)中間層用組成物
中間層には、樹脂成分を含有する中間層用組成物が好適に用いられる。前記樹脂成分としては、アイオノマー樹脂、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー、および熱可塑性スチレンエラストマーが例示される。これらの中でも、樹脂成分としては、アイオノマー樹脂が好ましい。アイオノマー樹脂は高弾性である。
アイオノマー樹脂と他の樹脂とが併用されてもよい。併用される場合は、反発性能の観点からアイオノマー樹脂が樹脂成分の主成分とされる。樹脂成分中のアイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましい。
前記アイオノマー樹脂としては、例えば、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、あるいは、これらの混合物を挙げることができる。前記オレフィンとしては、炭素数が2〜8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンが好ましい。前記炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。これらのなかでも、前記アイオノマー樹脂としては、エチレン−(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物、エチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。
前記アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM3711(Mg)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、ハイミラン1856(Na)、ハイミラン1855(Zn)、ハイミランAM7329(Zn)など)」が挙げられる。
さらにデュポン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン6320(Mg)、HPF1000(Mg)、HPF2000(Mg)など)」が挙げられる。
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)など)」が挙げられる。
なお、前記アイオノマー樹脂の商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。前記アイオノマー樹脂は、単独で若しくは2種以上を混合して使用しても良い。
前記熱可塑性スチレンエラストマーとしては、例えば、三菱化学(株)から市販されている「ラバロン(登録商標)」が挙げられる。
前記中間層用組成物は、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、酸化亜鉛、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
(5)補強層用組成物
補強層は、第二中間層と堅固に密着し、カバーとも堅固に密着する。補強層により、第二中間層からカバーの剥離が抑制される。
特に、前記第二中間層が基材樹脂を含有する中間層用組成物から形成され、前記カバーが基材樹脂を含有するカバー用組成物から形成されており、前記第二中間層用組成物に含有される基材樹脂と前記カバー用組成物に含有される基材樹脂とが異なる場合(例えば、第二中間層用組成物が基材樹脂としてアイオノマー樹脂を含有し、カバー用組成物が基材樹脂として熱可塑性ポリウレタンを含有する場合)、前記第二中間層とカバーとの間に配設された補強層を配設することが好ましい。
補強層は、樹脂成分を含有する補強層用組成物から形成される。前記樹脂成分としては、二液硬化型熱硬化性樹脂が好適に用いられる。二液硬化型熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル系樹脂及びセルロース系樹脂が挙げられる。補強層の強度及び耐久性の観点から、二液硬化型エポキシ樹脂及び二液硬化型ウレタン樹脂が好ましい。
補強層用組成物は、着色材(例えば、二酸化チタン)、リン酸系安定剤、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を含んでもよい。添加剤は、二液硬化型熱硬化性樹脂の主剤に添加されてもよく、硬化剤に添加されてもよい。
(6)カバー用組成物
本発明のゴルフボールのカバーは、樹脂成分を含有するカバー用組成物から形成される。前記樹脂成分としては、例えば、アイオノマー樹脂、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFジャパンから商品名「エラストラン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー;三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーなどが挙げられる。これらの樹脂成分は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
本発明のゴルフボールのカバーを構成するカバー用組成物は、樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンを含有することが好ましい。カバー用組成物の樹脂成分中の熱可塑性ポリウレタンの含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
前記カバー用組成物は、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、酸化亜鉛、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの比重調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
前記白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、カバーを構成する樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であって、10質量部以下、より好ましくは8質量部以下であることが望ましい。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるカバーの耐久性が低下する場合があるからである。
(7)ゴルフボールの製造方法
本発明で使用する内層コアは、前記内層コア用のゴム組成物または樹脂組成物を用いて作製する。
内層コアをゴム組成物から形成する場合、内層コアは、混練後のゴム組成物を金型内で加熱成形することにより得ることができる。内層コアに成形する温度は、140℃以上が好ましく、145℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましく、160℃以下が好ましい。また、成形時の圧力は、5MPa〜30MPaが好ましい。成形時間は、10分間〜40分間が好ましい。
内層コアを樹脂組成物から形成する場合、内層コアは、射出成型により成形できる。射出成形による成形は、樹脂組成物を注入して、冷却することにより行うことができ、例えば、1MPa〜100MPaの圧力で型締めした金型内に、160℃〜260℃に加熱した樹脂組成物を1秒〜100秒で注入し、30秒〜300秒間冷却して型開きすることにより行う。
外層コアの成形方法としては、例えば、外層コア用のゴム組成物から中空殻状のシェルを成形し、内層コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する方法(好ましくは、ゴム組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、内層コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)が挙げられる。ゴム組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、100MPa以下の圧力で、10℃以上、60℃以下の成形温度を挙げることができる。ハーフシェルを用いて外層コアを成形する方法としては、例えば、内層コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形して外層コアに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、100MPa以下の成形圧力で、140℃以上、180℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みを有する外層コアを成形できる。
ゴム組成物は、(a)基材ゴム、(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤、(d)酸および/またはその塩、および、必要に応じてその他の添加剤などを混合して、混練することにより得られる。混練の方法は、特に限定されず、例えば、混練ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの公知の混練機を用いて行えばよい。
本発明のゴルフボールの中間層、カバーを成形する方法としては、例えば、中間層用組成物またはカバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、球状コアまたは中間層が形成された球状コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する方法(好ましくは、中間層用組成物またはカバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、球状コアまたは中間層が形成された球状コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、あるいは、中間層用組成物またはカバー用組成物を球状コアまたは中間層が形成された球状コア上に直接射出成形する方法を挙げることができる。
圧縮成形法により中間層またはカバーを成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。中間層用組成物またはカバー用組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、中間層用組成物またはカバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを圧縮成形して中間層またはカバーに成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、中間層用組成物またはカバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一なカバー厚みを有するゴルフボールカバーを成形できる。
中間層用組成物またはカバー用組成物を射出成形して中間層またはカバーを成形する場合、押出して得られたペレット状の中間層用組成物またはカバー用組成物を用いて射出成形しても良いし、あるいは、基材樹脂成分や顔料などの材料をドライブレンドして直接射出成形してもよい。成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形による中間層またはカバーの成形は、ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、中間層用組成物またはカバー用組成物を注入して、冷却することにより中間層またはカバーを成形することができ、例えば、9MPa〜15MPaの圧力で型締めした金型内に、200℃〜250℃に加熱した中間層用組成物またはカバー用組成物を0.5秒〜5秒で注入し、10秒〜60秒間冷却して型開きすることにより行う。
カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
[評価方法]
(1)スラブ硬度(ショアD硬度)
中間層用組成物、カバー用組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、ASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて測定した。
(2)コア硬度(JIS−C硬度)
下記の方法により、コア硬度を測定した。なお、コア硬度は、4点で硬度を測定して、これらを平均することにより算出した。
・コア表面硬度(Hs2)
スプリング式硬度計JIS−C型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて、球状コアの表面部において測定したJIS−C硬度を球状コア表面硬度とした。
・内層コア表面硬度(Hs1)
球状コアを半球状に切断し、内層コアと外層コアとの境界で形成される第一の円と、この第一の円と同心であって、かつ、半径が第一の円の半径よりも10%小さな第二の円とに囲まれた領域において測定したJIS−C硬度を内層コア表面硬度とした。各円の半径は以下の通りである。
第一の円の半径:r1=内層コアの半径
第二の円の半径:r2=r1×0.9
・外層コア最内点硬度(Hb)
球状コアを半球状に切断し、内層コアと外層コアとの境界で形成される第一の円と、この第一の円と同心であって、かつ、半径が第一の円の半径よりも外層コアの厚さの10%分大きな第三の円とに囲まれた領域において測定したJIS−C硬度を外層コア最内点硬度とした。各円の半径は以下の通りである。
第一の円の半径:r1=内層コアの半径
第三の円の半径:r3=r1+(外層コアの厚さ×0.1)
・内層コア中心硬度(Ho)、外層コア12.5%〜87.5%地点の硬度
球状コアを半球状に切断し、内層コアの中心点で測定したJIS−C硬度を内層コア中心硬度とした。また、内層コアと外層コアとの境界点から所定の距離において硬度を測定した。
(3)圧縮変形量(mm)
コアまたはゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にコアまたはゴルフボールが縮む量)を測定した。
(4)反発係数
各コアまたはゴルフボールに198.4gの金属製円筒物を45m/秒の速度で衝突させ、衝突前後の前記円筒物およびコアまたはゴルフボールの速度を測定し、それぞれの速度および質量から各コアまたはゴルフボールの反発係数を算出した。測定は各コアまたはゴルフボールについて12個ずつ行って、その平均値をそのコアまたはゴルフボールの反発係数とした。なお、反発係数は、ゴルフボールNo.19の反発係数を100として、指数化した値で示した。
(5)ドライバーショットの飛距離(m)およびスピン量(rpm)
ツルーテンパー社製のスイングロボットM/Cに、チタンヘッドを備えたドライバー(ダンロップスポーツ社製、XXIO S ロフト10.0°)を取り付け、ヘッドスピード45m/秒でゴルフボールを打撃し、打撃直後のゴルフボールのスピン速度、ならびに飛距離(発射始点から静止地点までの距離)を測定した。測定は、各ゴルフボールについて10回ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの測定値とした。なお、打撃直後のゴルフボールのスピン速度は、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによって測定した。
(6)アプローチショットのスピン量
ツルーテンパー社製スイングロボットM/Cに、サンドウエッジ(クリーブランドゴルフ社製CG15フォージドウエッジ(52°))を取り付け、ヘッドスピード21m/秒でゴルフボールを打撃し、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによってスピン量(rpm)を測定した。測定は、各ゴルフボールについて10回ずつ行い、その平均値をスピン量とした。
(7)耐久性
ツルーテンパー社製のスイングロボットM/Cに、チタンヘッドを備えたドライバー(ダンロップスポーツ社製、商品名「XXIO」、シャフト硬度:S、ロフト角:10.0°)を取り付け、ヘッドスピードを45m/秒に設定した。各ゴルフボールを、恒温器にて23℃で12時間保管した。各ゴルフボールを恒温器から取り出した後、すみやかに打撃して、ゴルフボールが壊れるまでの繰返し打撃回数を測定した。測定は、各ゴルフボールについて12個ずつ行った。各ゴルフボールの耐久性は、ゴルフボールNo.1の打撃回数を100として、各ゴルフボールについての打撃回数を指数化した値で示した。指数化された値が大きいほど、ゴルフボールが耐久性に優れていることを示す。
[ゴルフボールの作製]
(1)内層コアの作製
ゴム組成物No.1,2を用いる場合
表3に示す配合のゴム組成物を混練ロールにより混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で、表6〜8に示す条件で加熱プレスすることにより球状の内層コアを得た。
ゴム組成物No.18〜21を用いる場合
表3に示す配合材料をドライブレンドし、二軸混練型押出機によりミキシングして、ストランド状に冷水中に押し出した。押し出されたストランドをペレタイザーにより切断してペレット状の内層コア用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160〜230℃に加熱された。得られたペレット状の内層コア用組成物を220℃にて射出成型して、球状の内層コアを得た。
(2)球状コアの作製
表3に示す配合のゴム組成物を混練し、このゴム組成物からハーフシェルを成形した。ハーフシェルの成形は、ゴム組成物をハーフシェル成形用金型の下型の凹部ごとに一つずつ投入し、加圧した。圧縮成形は成形温度30℃、成形時間1分、成形圧力10MPaの条件で行った。上記で得た内層コアを2枚のハーフシェルで被覆した。この内層コアおよびハーフシェルを、共に半球状キャビティを備えた上型および下型からなる金型に投入し、表6〜8で示した条件で加熱プレスして球状コアを得た。なお、硫酸バリウムの配合量は、最終的に得られるゴルフボールの質量が45.6gとなるように調整した。
BR−730:JSR社製、ハイシスポリブタジエン(シス−1,4−結合含有量=96質量%、1,2−ビニル結合含有量=1.3質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))=55、分子量分布(Mw/Mn)=3)
サンセラーSR:三新化学工業社製、アクリル酸亜鉛(10質量%ステアリン酸コーティング品)
ZN−DA90S:日本蒸溜工業社製、アクリル酸亜鉛(10質量%ステアリン酸亜鉛コーティング品)
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製「銀嶺R」
硫酸バリウム:堺化学社製「硫酸バリウムBD」、最終的に得られるゴルフボールの質量が45.6gとなるように調整した。
2−チオナフトール:東京化成工業社製
ビスペンタブロモフェニルジスルフィド:川口化学工業社製
ジクミルパーオキサイド:日油社製、「パークミル(登録商標)D」
オクタン酸亜鉛:三津和化学薬品社製
ステアリン酸亜鉛:和光純薬工業社製
ミリスチン酸亜鉛:和光純薬工業社製
ハイミランAM7327:三井・デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル三元共重合体アイオノマー樹脂
ニュクレルAN4319:三井・デュポンポリケミカル社製、エチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル共重合体
塩基性オレイン酸Mg:日東化成工業社製(金属含有量:1.4モル%)
塩基性オレイン酸Mg:日東化成工業社製(金属含有量:1.7モル%)
水酸化マグネシウム:和光純薬工業社製
オレイルジメチルアミノ酢酸ベタイン:ルーブリゾール社製「Chembetaine OL」の精製品(水分と塩分を除去)
ノクラック200:大内新興化学工業社製、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール
(3)中間層用組成物、カバー用組成物の調製
表4、5に示した配合材料を用いて、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状の中間層用組成物およびカバー用組成物をそれぞれ調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160〜230℃に加熱された。
サーリン8945:デュポン社製、ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
ハイミランAM7329:三井・デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
ラバロンT3221C:三菱化学社製、スチレン系エラストマー
二酸化チタン:石原産業社製
エラストランNY82A:BASFジャパン社製、ポリウレタンエラストマー
エラストランNY85A:BASFジャパン社製、ポリウレタンエラストマー
エラストランNY90A:BASFジャパン社製、ポリウレタンエラストマー
エラストランNY97A:BASFジャパン社製、ポリウレタンエラストマー
チヌビン770:BASFジャパン社製、ヒンダードアミン系安定剤
(4)ゴルフボール本体の作製
第一中間層
前記で得た中間層用組成物を、前述のようにして得た球状コア上に射出成形することにより、前記球状コアを被覆する第一中間層を形成した。第一中間層成形時には、ホールドピンを突き出し、球状コアを投入後ホールドさせ、80トンの圧力で型締めした金型に260℃に加熱した中間層用組成物を0.3秒で注入し、30秒間冷却して型開きして第一中間層被覆球体を取り出した。
第二中間層
前記で得た中間層用組成物を、前述のようにして得た第一中間層被覆球体上に射出成形することにより、前記第一中間層被覆球体を被覆する第二中間層を形成した。第二中間層成形時には、ホールドピンを突き出し、球状コアを投入後ホールドさせ、80トンの圧力で型締めした金型に260℃に加熱した中間層用組成物を0.3秒で注入し、30秒間冷却して型開きして中間層被覆球体を取り出した。
補強層
成形した第二中間層に二液硬化型熱硬化性樹脂を塗布して、補強層を形成した。二液硬化型樹脂としては、二液硬化型エポキシ樹脂を基材ポリマーとする塗料組成物を用いた。この塗料組成物の主剤液は、30質量部のビスフェノールA型固形エポキシ樹脂と、70質量部の溶剤とからなる。この塗料組成物の硬化剤液は、40質量部の変性ポリアミドアミンと、5質量部の酸化チタンと、55質量部の溶剤とからなる。主剤液と硬化剤液との質量比は、1/1である。この塗料組成物を第二中間層の表面にスプレーガンで塗布し、23℃の雰囲気下で12時間保持して、補強層を得た。この補強層の厚みは6μmであった。
カバー
ハーフシェルの圧縮成形は、得られたペレット状のカバー用組成物をハーフシェル成形用金型の下型の凹部ごとに一つずつ投入し、加圧した。圧縮成形は成形温度160℃、成形時間2分、成形圧力11MPaの条件で行った。補強層を形成した中間層被覆球体を、2枚のハーフシェルで同心円状に被覆して、キャビティ―面に多数のピンプルを備えた金型に投入して、圧縮成形によりカバーを成形した。圧縮成形は成形温度150℃、成形時間3分、成形圧力13MPaの条件で行った。成形後のカバーには、ピンプルの形状が反転した形状のディンプルが多数形成された。
塗膜
得られたゴルフボール本体の表面を研磨することにより表面処理を行った後、2液硬化型ウレタンペイントをエアガンにより塗装し、乾燥硬化して、直径42.7mm、質量45.6gのゴルフボールを得た。得られたゴルフボールについて評価した結果を表6〜8に示した。
表6〜8の結果から、硬度差(Hs1−Ho)がJIS−C硬度で5以下であり、線形近似曲線のR2が0.95以上であり、第一中間層のスラブ硬度(Hm1)が第二カバーのスラブ硬度(Hm2)よりも小さく、第二中間層のスラブ硬度(Hm2)が前記カバーのスラブ硬度(Hc)よりも大きいゴルフボールは、いずれも、ドライバーショットの飛距離が大きく、アプローチショットにおけるスピン量が多く、且つ、耐久性に優れていた。
ゴルフボールNo.1,2,7は、アプローチショットにおけるスピン量は大きいが、線形近似曲線のR2が0.95未満でありドライバーショットにおける飛距離が小さかった。ゴルフボールNo.17は、ドライバーショットにおける飛距離は大きいが、中間層のスラブ硬度(Hm)がカバーのスラブ硬度(Hc)よりも小さいため、アプローチショットにおけるスピン量が小さかった。ゴルフボールNo.18は、アプローチショットにおけるスピン量は大きいが、第一中間層のスラブ硬度(Hm1)が第二中間層カバーのスラブ硬度(Hm2)よりも大きいため、ドライバーショットにおけるスピン量が大きく、飛距離が小さかった。ゴルフボールNo.19は、アプローチショットにおけるスピン量は大きいが、硬度差(Hs1−Ho)がJIS−C硬度で10と大きいため、ドライバーショットにおける飛距離が小さかった。ゴルフボールNo.22は、ドライバーショットにおける飛距離は大きく、アプローチショットにおけるスピン量も大きいが、中間層が一層であるため、耐久性が劣る。