JP2016014180A - 耐水素脆化性の高強度鋼 - Google Patents

耐水素脆化性の高強度鋼 Download PDF

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Abstract

【課題】 水素ガス環境下で使用するバルブ、配管、継手あるいは圧縮機、蓄圧機、計測機器等の部材用で、時効処理により40.0HRC以上の硬さを有し、耐水素脆化に優れた高強度鋼の提供。
【解決手段】 質量%で、C:0.30〜0.60%、Si:0.20〜1.00%、Mn:6.0〜10.0%、P:0.050%以下、S:0.030%以下、Ni:7.0〜13.0%、Cr:8.0〜15.0%、V:0.90〜2.00%、O:0.0100%以下、N:0.100%以下、B:0.0100%以下を有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、式(1)及びV/Cの比が式(2)を満足し、硬さがHRC40.0以上である耐水素脆化性の高強度鋼。なお、式(1):Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−13.7Cr−29(Ni+Cu)−18.5Mo≦−100、式(2):3.0≦V/C≦5.1
【選択図】 なし

Description

本発明は水素ガスが使用される環境下において使用される、たとえばバルブ、配管、継手などの部材、あるいは圧縮機、蓄圧機、計測機器などの機器の部材用の耐水素脆化性に優れた高強度鋼に関する。
近年、排出ガスのゼロ化を目ざし、さらに石油資源の枯渇に備えて、燃料電池自動車を中心とした水素エネルギーを利用する技術開発が進められている。ところで、この燃料電池自動車に対しては、車載燃料電池用の高圧水素タンクライナー材や高圧水素ガス配管などの高圧水素ガス雰囲気下で使用される金属材料の研究開発が行われている。これらの高圧ガスに曝される部位に使用される金属材料は、水素脆化感受性が低いことは勿論、工業的に利用しやすい材料であることが強く要求されている。
上記のような観点から、上記の要求に適用可能な材料としてSUS 316Lオーステナイト系ステンレス鋼が適応されている。しかし、この鋼はNiの含有量が12.00〜15.00%およびMoの含有量が2.00〜3.00%と多い。そこで、SUS 316Lの溶製時にNi合金やMo合金の添加量を多くする必要があるので、このSUS 316Lオーステナイト系ステンレス鋼は高価となる。また、SUS 316Lは、C含有量が0.030%以下の低Cであるため、得られたSUS 316Lオーステナイト系ステンレス鋼も強度も低いという問題がある。
一方、従来のオーステナイト系ステンレス鋼として、高Mnのステンレス鋼、および該鋼からなる0.1〜120MPaの高圧水素ガスを貯蔵する高圧水素用ガスタンクまたは高圧ガスタンク用ライナーあるいは高圧水素ガス用配管の発明が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。さらに、高圧水素ガス環境下で優れた機械的性質と耐食性を有しかつ優れた耐応力腐食割れ性を備えた高強度ステンレス鋼、並びに該鋼からなる高圧水素用の容器、配管およびその他の機器が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照。)。また、さらに、水素ガスを使用する環境下において使用される部材に適用される耐水素脆化性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
15Cr−9Mn−6Ni−0.2Mo−0.16Nからなる水素用低Ni省Mo型オーステナイト系ステンレス鋼の溶体化材および20%冷間加工鋼材が、室温、85MPa水素ガス中での低速度引張試験において、JIS SUS316L材に比して、耐水素脆化特性および材料強度特性共に優れていることが示されている(例えば、非特許文献1参照。)。さらに、オーステナイト系ステンレス鋼のSUS304にMo、Nb、N、Cuを微量添加した材料に近い高強度オーステナイト系ステンレス鋼AHと、オーステナイト系ステンレス鋼のSUS316LにNb、N、V微量添加した材料に近い高強度オーステナイト系ステンレス鋼BXの化学組成およびビッカース硬さがその表1に示され、さらに、これらの耐水素脆化特性がNとNbの添加や化学成分調整でオーステナイト相を安定化した高強度オーステナイト系ステンレス鋼AHおよび高強度オーステナイト系ステンレス鋼BXが示されている(例えば、非特許文献2参照。)。
しかし、これらに記載の高強度オーステナイト系ステンレス鋼はNbおよびNなどの元素を固溶強化に利用しているが40HRCを超えるような十分な高強度材料とは言いがたいものである。
特開2007−126688号公報 国際公開第2004/83476号 国際公開第2004/83477号 特開2009−133001号公報
「低コスト70MPa級水素ガス充填対応ステーション機器に係わる研究開発(2008年度〜2012年度)成果報告」:JMCN NEWS 第324号p.2〜p.4 一般社団法人 金属系材料研究開発センター、2013年10月1日発行 「高圧水素ガス中における2種類の高強度オーステナイト系ステンレス鋼のSSRT(低速引張試験)特性と疲労き裂進展特性」:日本機会学会論文集(A編)79巻808号(2013−12)、p.1726〜1740
上記したように、耐水素脆化の観点から、水素ガスが使用される環境下でSUS 316Lのオーステナイト系ステンレス鋼が使用されている。しかしながら、このオーステナイト系ステンレス鋼はCの含有量が0.030%以下であるので強度が低く、さらにNiやMoを多量に含有するので高価な鋼である。
本発明が解決しようとする課題は、水素ガス環境下で使用される、バルブ、配管、継手などの部材用、あるいは圧縮機、蓄圧機、計測機器などの機器の部材用、のオーステナイト系ステンレス鋼における高価な元素のNiおよびMoをMnで代替し、時効処理によりV炭化物を析出させることで、40HRC以上の高強度かつ耐水素脆化に優れた安価なオーステナイト系ステンレス鋼を提供することである。
上記の課題を解決するための手段は、第1の手段では、質量%で、質量%で、C:0.30〜0.60%、Si:0.20〜1.00%、Mn:6.0〜10.0%、P:0.050%以下、S:0.030%以下、Ni:7.0〜13.0%、Cr:8.0〜15.0%、V:0.90〜2.00%、O:0.0100%以下、N:0.100%以下およびB:0.0100%以下を化学成分として有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、上記の化学成分は下記の限定式(1)を満足し、かつ化学成分のVおよびCの比のV/Cが下記の限定式(2)を満足し、かつ硬さがHRC40.0以上であることを特徴とする耐水素脆化性の高強度鋼である。
限定式(1):Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−13.7Cr−29(Ni+Cu)−18.5Mo≦−100
限定式(2):3.3≦V/C≦5.1
第2の手段では、第1の手段の化学成分に加えて、質量%で、Mo:0.10〜1.00%、Cu:0.10〜3.00%の1種または2種を化学成分として有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、上記の化学成分は上記の限定式(1)を満足し、かつ化学成分のVおよびCの比のV/Cが上記の限定式(2)を満足し、かつ硬さがHRC40.0以上であることを特徴とする耐水素脆化性の高強度鋼である。
本願発明の耐水素脆化性の高強度鋼は、上記の手段としたことで、いずれも十分な時効硬さ、耐水素脆化性を有し耐食性を兼備している。また、合金元素である、VとCの添加量のバランスに配慮することで、高価なVの添加量を最小限に抑え、水素ガスが使用される環境下において使用される、バルブや配管などの鋼として必要な特性を発現しうることにより、トータル的に比較的に安価な鋼材料を提供できる。
本発明の実施の形態について説明するに当り、先ず、本発明の耐水素脆化性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼である高強度鋼を構成する化学成分の成分範囲および限定式(1)および限定式(2)のそれぞれの限定理由を説明する。なお、成分範囲は質量%である。
C:0.30〜0.60%
Cは、炭化物を形成させることで、鋼の硬さを得るための元素である。Cが0.30%より少ないと十分な硬さを得られない。Cが0.60%より多いと硬さに寄与しない1次炭化物が多く析出し耐食性が低下する。そこで、Cは0.30〜0.60%とし、望ましくは0.30〜0.55%とする。
Si:0.20〜1.00%
Siは、製鋼での脱酸効果を有する。しかし、Siが0.20%より少ないとこれらの効果を得ることができない。一方、Siが1.00%より多いと、フェライトが生成して鋼の熱間加工性を低下させる。そこで、Siは0.20〜1.00%とする。
Mn:6.0〜10.0%
Mnは、オーステナイト形成元素で、Niの代替をする元素である。しかし、Mnが6.0%より少ないと、Niの代替を十分に果たせない。一方、Mnが10.0%より多いと、延性、靱性あるいは耐食性を阻害する。そこで、Mnは6.0〜10.0%とする。
Ni:7.0〜13.0%
Niは、オーステナイト形成元素である。ところで、Niが7.0%より少ないと、オーステナイトが安定して形成できない。そこで、Niは7.0%以上とする。しかし、Niは13.0%より多くしても、既に十分に安定してオーステナイトが形成されているので、Niの高価な価格ために価格が上昇するだけである。そこで、Niは7.0〜13.0%とし、望ましくは、8.0〜12.0%とする。
Cr:8.0〜15.0%
Crは、鋼の耐食性に効果を有する元素である。しかし、Crが8.0%より少ないと耐食性を十分に維持することができない。一方、Crが15.0%より多いとδフェライトが増加し、脆化を引き起こす。そこで、Crは8.0〜15.0%とし、望ましくは、10.0〜15.0%とする。
V:0.90〜2.00%
Vは、V炭化物を形成して硬さを得るための元素である。しかし、Vが0.90%より少ないと、V炭化物による硬さが十分に得られない。一方、Vが2.00%より多くなってもその効果は飽和する。そこで、Vは0.90〜2.00%とし、望ましくは、1.20〜2.00%とする。
Mo:0.10〜1.00%
Moは、耐食性を改善する元素である。Moが0.10%より少ないとその効果は小さい。一方、Moが1.00%を超えると、熱間加工性を低下する。そこで、Moは0.10〜1.00%とし、望ましくは、0.10〜0.50%とする。
Cu:0.10〜3.00%
Cuは、オーステナイト形成元素で、冷間加工性、耐食性を改善する元素である。しかし、Cuが0.10%未満では、その効果は得られない。一方、Cuが3.00%より多いと、熱間加工性を阻害するとともに、延性および靱性を低下する。そこで、Cuは0.10〜3.00%とし、望ましくは、0.30〜2.00%とする。
P:0.050%以下
Pは、鋼中において低融点化合物を生成したり、固溶強化したりすることにより、熱間加工性や溶接性、靭性などを悪化させる不純物元素であり、できるだけ低減したい元素である。しかし、原料由来である程度混入することが避けられない元素であることから、Pは最大0.050%まで許容する。
S:0.030%以下
Sは、鋼中において硫化物や低融点化合物を生成する。靭性や溶接性を低下させるので少ないほど良い。その一方で鋼の被削性を改善する効果もあるため、被削性を良くしたい場合には必要に応じて含有させてもよい。過度の添加は前者の低下を著しくするため、Sは0.030%以下とする。
O:0.0100%以下
Oは、鋼中において酸化物を形成し、疲労強度を低下させる不純物元素である。しかし、原料や精錬時の脱酸生成物などを由来としてある程度混入することが避けられない元素であることから、Oは最大0.0100%まで許容する。なお、このような有害なOを精錬により低減するため、脱酸元素であるAl、Ca、Mgの1種または2種以上を合計で0.050%以下添加しても差し支えない。
N:0.100%以下
Nは、鋼中において窒化物を形成し、疲労強度を低下させるが、硬さ向上や耐食性改善に効果がある元素であるため、必要に応じて添加してもよい。しかし、過度の添加は前者の低下を著しくし、ブローホールの発生の危険性もあることから、Nは0.100%以下とする。
B:0.0100%以下
Bは、少量の添加で鋼の熱間加工性改善効果があるため、必要に応じて添加してもよい。しかし、過度の添加は硼化物生成により逆に熱間加工性に悪影響を及ぼすので、Bは0.0100%以下とする。
限定式(1):Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−13.7Cr−29(Ni+Cu)−18.5Mo≦−100
Md30は、オーステナイト系ステンレス鋼のオーステナイト安定度を示す指標で、30%の歪を与えたときに50%のマルテンサイトを生じさせる温度(摂氏)を表す指標値である。Md30が低いほどオーステナイト安定度は高い。そこで、Md30の値を−100以下、望ましくは−130以下にすることで、加工による歪誘起マルテンサイトの生成を抑制した。マルテンサイト相は、母相であるオーステナイト相と比較して硬くて脆い相であり、また水素原子の拡散速度も速く、水素脆化に対する感受性が非常に高い。オーステナイト相の安定度が高くない場合、外部応力等に起因する歪によりオーステナイト相はマルテンサイト相(歪誘起マルテンサイト)に変態することがある。水素脆化感受性を低く、即ち水素脆化しにくくするためには、歪に起因するマルテンサイト相の生成を抑制することが有効であり、オーステナイト相の安定度を高める必要がある。そのためには、限定式(1)を−100以下、望ましくは−130以下とすれば、実質的にマルテンサイト変態が抑制され、水素脆化感受性が低い鋼が得られる。
限定式(2):3.0≦V/C≦5.1
V/Cの値は、硬さへの寄与が小さい1次炭化物の生成の抑制および耐食性の向上を示す指標である。V/Cの値が3.0未満の場合、V炭化物以外の合金炭化物、特にCr炭化物が増加して耐食性が低下するのみならず、時効時の析出V炭化物量が減少して十分な硬さが得られない。V/Cの値が3.0以上では満足する硬さおよび耐食性を得ることができる。しかし、V/Cの値が5.1を超えてもVによる効果は飽和してくるので、V/Cの値は5.1以下とし、かつ稀少元素で高価なVの使用量を低減することでコストの削減を図ることができる。V/Cの値は、望ましくは3.3〜4.7とする。
本願発明の実施の形態を以下に記載する。本発明の供試材の鋼を溶製するために、表1に示す合金組成からなる溶鋼の100kgをVIM(真空誘導溶解)炉にて溶製して鋼塊とし、該鋼塊を1150℃に加熱して径20mmの鋼材に鍛伸し、この鋼材を1180℃に30分保持して水冷する固溶化熱処理を施し、時効熱処理を750℃で2時間保持して空冷して、(1)の径20mmで長さ20mmの硬さ試料片、(2)の平行部の径6mmでエメリー紙♯600で仕上げた引張試験片、および(3)の径12mmで長さ21mmの耐食性試験片を作製した。
Figure 2016014180
注1)合金組成の残部はFeと不可避的不純物である。
注2)下線は、本発明以外および十分な特性が得られていない項目
注3)Mo列およびCu列の*印は不純物としての濃度を示す。
注4)耐食性欄のA〜D評価は以下を表す。A:発錆面積率1%未満、B:発錆面積率1%以上〜3%未満、C:発錆面積率3%以上〜10%未満、D:発錆面積率10%以上。
次いで、これらの試験方法について記載する。
硬さ試験は、時効処理した上記(1)の硬さ試験片を切断して得た切断面を測定面とし、これらの測定面の熱影響部層と、その反対面の表面にあるスケール層を平面研磨機にて除去して、平行精度を高めた後、ロックウエル硬度計にて上記の切断面の時効処理した硬さを測定し、この硬さを表1にHRCで示す。この場合、それぞれ5点の試験片の鋼材で得られた平均の値を示している。
引張試験は、上記(2)の引張試験片の端部にNi線を電気溶接し、平行部以外を樹脂被膜で覆って水素侵入を遮断させた試験片に形成する。次いで、この試験片を0.01規定の硫酸と1リットル当り0.5グラムのチオシアン酸アンモニウムからなる30℃の溶液に浸漬し、陰極チャージ法により、68アンペア/mm2の電流を流して24時間、引張試験片に水素をチャージした。この水素チャージ後、直ちに、常温で大気圧の下で、引張試験片に毎分当りストローク速度を1mmとして引張試験をした。水素チャージ後の引張試験片の伸び、絞り、引張強さの変化を、水素チャージ無しの引張試験片に毎分当りストローク速度を1mmとして引張試験を行った引張試験片の伸び、絞り、引張強さの変化で除した値を、表1において、水素チャージ後の伸び、絞り、引張強さとして示して評価した。この伸び、絞り、引張強さの評価は、引張試験結果のバラツキも考慮して、伸び、絞り、引張強さの値が0.90以上は、水素脆化が軽微または無かったと判断した。
耐食性試験は、上記(3)の耐食性試験片を用いて、塩水噴霧試験を実施した。塩水噴霧試験は、35℃の雰囲気の下で、濃度が50ppmの塩化ナトリウム水溶液を試験片の試料に16時間噴霧して実施した。塩水噴霧試験後の試験片を観察し、発錆面積率(試験片上で発錆している箇所の面積/試験片の全表面積)に応じて、A〜Dのレーティングを行った。A:発錆面積率1%未満、B:発錆面積率1%以上〜3%未満、C:発錆面積率3%以上〜10%未満、D:発錆面積率10%以上として、表1の耐食性の欄に示した。
表1において、本発明鋼のNo.1〜13では、Md30の値がいずれも−100以下であるので、加工による歪誘起マルテンサイトの生成が抑制され、水素脆化感受性が低く耐水素脆化に優れ、さらにV/Cの値が3.0〜5.1であるので、Cr系炭化物の生成が抑制されており、耐食性に優れ、さらに硬さがHRC40.0以上であるので十分に高強度で、またさらに、水素チャージ後の伸び、絞り、引張強さの値がいずれも0.90以上であるので水素脆化が無いかあるいは軽微であり耐水素脆性に優れている。
これら上記の表1の本発明鋼に対して、表1の比較鋼のNo.14〜26においては、No.14は、Cが0.24%で本願の請求項の範囲の値より低いため、硬さが低い。
No.15は、Cが0.72%で本願の請求項の範囲の値より高く、V/Cの値が2.8と低いため、耐食性が悪い。
No.16は、Siが1.54%で本願の請求項の範囲の値より高く、耐食性がやや低下傾向にある。
No.17は、Mnが4.9%で本願の請求項の範囲の値より低く、硬さが十分でない。
No.18は、Niが5.8%で本願の請求項の範囲の値より低く、Md30の値が高くなっており、オーステナイト相の安定度が高くないため、水素チャージ後の伸びや絞りの値が低く、耐水素脆性が劣っている。
No.19は、Niが14.7%で本願の請求項の範囲の値より高く、硬さや耐水素脆化は良好であるが、請求範囲以上にNiを増量したことによる効果は薄く、ただ高価である。
No.20は、Crが6.6%で本願の請求項の範囲の値より低く、耐食性が著しく劣っている。
No.21は、Crが17.8%で本願の請求項の範囲の値より高く、耐食性は良好だが、成分バランスが適切な値からずれているため、フェライト相が生成して、耐水素脆性が低下している。
No.22は、Vが0.63%で本願の請求項の範囲の値より低く、十分な硬さが得られていない。
No.23は、Vが2.56%で本願の請求項の範囲の値より高く、特性は良好だが、請求範囲以上にVを増量したことによる効果は薄く、Vの効果は飽和して、合金コストがただ高価になっているに過ぎない。
No.24は、合金元素の添加量は本願の請求項の範囲の値であるが、Md30の値が−44であるので、オーステナイト相が不安定となっており、水素チャージ後の伸びや絞りが著しく低下し、水素脆化を生じている。
No.25も、No.24と同様に、Md30の値が−78で、オーステナイト相の安定度が不十分で、水素脆化を起こしている。
No.26は、合金元素の添加量は本願の請求項の範囲の値であるが、V/Cの値が6.1で本願の請求項の範囲の値より高く、高価なVをCに対して過剰に添加しても効果は飽和することを表している。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.30〜0.60%、Si:0.20〜1.00%、Mn:6.0〜10.0%、P:0.050%以下、S:0.030%以下、Ni:7.0〜13.0%、Cr:8.0〜15.0%、V:0.90〜2.00%、O:0.0100%以下、N:0.100%以下、およびB:0.0100%以下を化学成分として有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、上記の化学成分は下記の限定式(1)を満足し、かつ化学成分のVおよびCの比のV/Cが下記の限定式(2)を満足し、かつ硬さがHRC40.0以上であることを特徴とする耐水素脆化性の高強度鋼。
    限定式(1):Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−13.7Cr−29(Ni+Cu)−18.5Mo≦−100
    限定式(2):3.0≦V/C≦5.1
  2. 請求項1の化学成分に加えて、質量%で、Mo:0.10〜1.00%、Cu:0.10〜3.00%の1種または2種を化学成分として有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、上記の化学成分は下記の限定式(1)を満足し、かつ化学成分のVおよびCの比のV/Cが下記記の限定式(2)を満足し、かつ硬さがHRC40.0以上であることを特徴とする耐水素脆化性の高強度鋼。
    限定式(1):Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−13.7Cr−29(Ni+Cu)−18.5Mo≦−100
    限定式(2):3.0≦V/C≦5.1
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