JP2016012688A - 圧粉磁心、及びコイル部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い透磁率を有しながらコアロスが低く、製造性にも優れる圧粉磁心、圧粉磁心を備えるコイル部品を提供する。
【解決手段】圧粉磁心1は、絶縁被膜14を備える被覆鉄粉10と、潤滑剤30とを含む。被覆鉄粉は、平均粒径が200μm以上450μm以下であり、粒径が75μm以下の粉末粒子の割合が10質量%以下である。潤滑剤は、含有量が0.3質量%以上0.8質量%以下であり、脂肪酸アミドを含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、コイル部品などに利用される圧粉磁心、及び圧粉磁心を備えるコイル部品に関する。特に、高い透磁率を有しながらコアロスが低く、製造性にも優れる圧粉磁心に関するものである。
コイル部品などの磁心として、原料粉末を金型成形して製造される圧粉磁心がある。特許文献1は、絶縁被膜を有する被覆鉄合金粉と、鉄合金粉よりも粒径が大きく、絶縁被膜を有する被覆鉄粉とを混合して成形した後、脱型した圧縮物を500℃以上の高温で熱処理することで製造した圧粉磁心を開示している。
特開2005−303006号公報
高い透磁率を有しながらコアロスが低く、製造性にも優れる圧粉磁心の開発が望まれる。
圧粉磁心の透磁率は、構成する軟磁性粉末が大きいほど高められる。そのため、鉄合金粉よりも大きい鉄粉を含む特許文献1の圧粉磁心は、透磁率を高め易い。また、鉄粒子などの金属粒子間に絶縁被膜などの絶縁材が介在する圧粉磁心は、電気抵抗が高められて、渦電流損といったコアロスを低くできる。特許文献1の圧粉磁心は、高温の熱処理によって鉄粒子の絶縁被膜が熱劣化しても、絶縁被膜の熱劣化が進み難く絶縁被膜を保持し易い被覆鉄合金粉が大きな鉄粒子間に介在して、鉄粒子間の絶縁を保持し易いとしている。しかし、高温の熱処理を行うと、工程数が多く、圧粉磁心の製造性に劣る。また、高温の熱処理による絶縁被膜の損傷を防止できない。
絶縁被膜の損傷は熱処理時だけでなく、熱処理前の成形時、粉末粒子同士の擦れ合いや圧縮物と金型との摩擦などによっても生じ得る。特許文献1では、原料粉末にシリコーン樹脂などの樹脂を添加すると、成形性を向上でき、成形時の絶縁被膜の損傷を抑制できるとしている。しかし、上記樹脂だけでは、成形時の潤滑性が十分とはいえず、成形時の絶縁被膜の損傷をより低減できることが望まれる。
そこで、本発明の目的の一つは、高い透磁率を有しながらコアロスが低く、更に製造性にも優れる圧粉磁心を提供することにある。また、本発明の他の目的は、高い透磁率を有しながらコアロスが低く、更に製造性にも優れる圧粉磁心を備えるコイル部品を提供することにある。
本発明の一態様に係る圧粉磁心は、絶縁被膜を備える被覆鉄粉と、潤滑剤とを含む。前記被覆鉄粉は、平均粒径が200μm以上450μm以下であり、粒径が75μm以下の粉末粒子の割合が10質量%以下である。前記潤滑剤は、含有量が0.3質量%以上0.8質量%以下であり、脂肪酸アミドを含む。
本発明の一態様に係るコイル部品は、コイルと、磁性コアとを備えるコイル部品であって、前記磁性コアの少なくとも一部に上記の圧粉磁心を備える。
上記の圧粉磁心及び上記のコイル部品は、高い透磁率を有しながらコアロスが低く、製造性にも優れる。
実施形態の圧粉磁心の組織を模式的に示す説明図である。 実施形態1のコイル部品を示す概略構成図である。 実施形態2のコイル部品を示す概略構成図である。 実施形態3のコイル部品を示す概略構成図である。 実施形態4のコイル部品を示す概略構成図である。 実施形態5のコイル部品を示す概略構成図である。 実施形態6のコイル部品を示す概略構成図である。
[本発明の実施の形態の説明]
本発明者らは、高い透磁率を有し、コアロスが低い圧粉磁心を製造するにあたり、被覆粉末を用いて種々検討した結果、以下の知見を得た。
・透磁率を高めるには、圧粉磁心を構成する軟磁性粉末は、磁束が通過し易いように、粉末粒子が多いことが好ましい。
・コアロスを低くするには、圧粉磁心の絶縁性を高めるために(電気抵抗を高めるために)、製造過程での絶縁被膜の損傷を低減することが効果的である。絶縁被膜の損傷を低減するには、変形能が高く、比較的大きな粒径の鉄粉を利用すること、熱処理を省略すること、原料粉末に潤滑性に優れる潤滑剤を十分に添加することが好ましい。
・上述の絶縁被膜の損傷を低減するための対策は、圧粉磁心の製造性を向上できる。
・熱処理の省略によって、原料粉末に添加した潤滑剤は、熱処理を行った場合とは異なり、実質的に熱変性せず、原料と同じ成分及び添加量を実質的に維持する。
上述の知見に基づき、高い透磁率を有し、コアロスが低く、製造性にも優れる圧粉磁心として、比較的大きな被覆鉄粉を含み、かつ潤滑剤を特定の範囲で含むと共に潤滑剤に特定の成分を含むことを提案する。最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1) 本発明の一態様に係る圧粉磁心は、絶縁被膜を備える被覆鉄粉と、潤滑剤とを含む。上記被覆鉄粉は、平均粒径が200μm以上450μm以下であり、粒径が75μm以下の粉末粒子の割合が10質量%以下である。上記潤滑剤は、含有量が0.3質量%以上0.8質量%以下であり、脂肪酸アミドを含む。
上記の圧粉磁心は、比較的大きな鉄粉を含むため、高い透磁率を有する。また、上記の圧粉磁心は、小さな被覆鉄粉が少ないことで、これらの粉末粒子に備える絶縁被膜によって磁性成分の割合が低下することを低減できることからも、透磁率を高められる。かつ、上記の圧粉磁心は、以下の理由により、鉄粒子間に絶縁被膜や潤滑剤が介在して電気抵抗が高いため、コアロスを低くできる。
上記の圧粉磁心は、比較的大きな鉄粉を含むこと、潤滑剤を比較的多く含むこと、特定成分の潤滑剤を含むことから、製造過程での絶縁被膜の損傷が効果的に低減、防止されて、原料粉末に用いた被覆鉄粉の絶縁被膜が健全な状態で存在するといえる。また、仮に損傷箇所が有っても、絶縁材である潤滑剤を十分に含むため、多くの鉄粒子間に潤滑剤が介在でき、これら鉄粒子間を絶縁できるといえる。従って、上記の圧粉磁心は、鉄粒子間に絶縁被膜や潤滑剤が介在して絶縁性に優れて、電気抵抗が高いといえる。渦電流損は、電気抵抗に反比例することから、電気抵抗が高い上記の圧粉磁心は、渦電流損が低く、ひいてはコアロスが低い。
更に、上記の圧粉磁心は、潤滑剤を十分に含むと共に、特定成分の潤滑剤を含むため、製造過程で用いた潤滑剤が残存している、即ち熱処理が省略されているといえ、この点から、製造性にも優れる。
その他、上記の圧粉磁心は、比較的大きな被覆鉄粉を含むため、原料粉末に比較的大きな被覆鉄粉を用いており、製造過程で(成形時に)粉末粒子同士が十分に噛み合うと共に緻密化しているといえ、強度に優れる上に、高い密度を有する。また、上記の圧粉磁心は、緻密化によっても、高い透磁率を有し易い。
(2) 上記の圧粉磁心の一例として、絶縁被膜を備えていない裸鉄粉を含み、上記裸鉄粉は、平均粒径が40μm以上150μm以下であり、粒径が200μm以上の粉末粒子の割合が10質量%以下である形態が挙げられる。
上記形態は、被覆鉄粉のみの場合と比較して、強度に優れる。裸鉄粉を含む上記形態は、原料粉末の裸鉄粉が変形し易い成分である上に絶縁被膜が無いために変形し易いことから、被覆鉄粒子間に塑性変形した裸鉄粒子が介在された場合には被覆鉄粒子同士を強固に接合できるからである。絶縁被膜が無い裸鉄粉の表面はあまり滑らかではないため、被覆鉄粒子に噛み合い易いことからも、強固に接合できると考えられる。また、被覆鉄粉よりも十分に小さい裸鉄粉が、大きな被覆鉄粒子がつくる隙間(三重点など)に介在して緻密化し易く密度を高め易い。上記隙間などで変形し易く、製造性にも優れる。更に、大きな被覆鉄粒子同士の結合状態の強化、緻密化、絶縁被膜による磁性成分の割合の低下抑制などの点から、上記形態は、比較的小さな裸鉄粉を含むものの透磁率を高められる。大き過ぎる裸鉄粒子による渦電流損の増大を抑制できること、裸鉄粒子の周囲に被覆鉄粉の絶縁被膜や潤滑剤が存在して裸鉄粒子同士が接触し難いため絶縁性にも優れることから、上記形態は、絶縁被膜を有していない裸鉄粉を含むもののコアロスが低い。その他、裸鉄粉の含有によって被覆鉄粉の使用量を低減でき、低コスト化が期待できる。
(3) 上記の圧粉磁心の一例として、上記圧粉磁心の磁性成分における上記被覆鉄粉の含有量が50質量%以上100質量%以下である形態が挙げられる。
上記形態は、磁性成分のうち、大きな被覆鉄粉が半分以上を占めるため、透磁率が高く、絶縁性にも優れてコアロスが低い。上述の裸鉄粉を含む場合(被覆鉄粉の含有量が100質量%未満の場合)には、上述のように高強度化、低コスト化などを図ることができる。被覆鉄粉のみ(被覆鉄粉の含有量が100質量%)であれば、透磁率が高く、絶縁被膜及び潤滑剤の介在によって絶縁性により優れて、コアロスがより低い。
(4) 上記の裸鉄粉を含む圧粉磁心の一例として、上記圧粉磁心の磁性成分における上記裸鉄粉の含有量が10質量%以上45質量%以下である形態が挙げられる。
上記形態は、磁性成分のうち、大きな被覆鉄粉が過半数を占めるため(55質量%以上)、透磁率が高く、コアロスも低い上に、裸鉄粉を特定の範囲で含むため、上述のように高強度化、低コスト化などを図ることができる。特に、上記形態は、裸鉄粉が多過ぎないため、裸鉄粒子同士の接触を低減又は抑制できて、裸鉄粉を含むものの絶縁性に優れる。上記範囲内では絶縁被膜が無く、比較的小さい裸鉄粉が多くても、透磁率が高く、コアロスが低くなり得る。
(5) 上記の圧粉磁心の一例として、上記脂肪酸アミドがステアリン酸アミドを含む形態が挙げられる。
ステアリン酸アミドは、樹脂に比較して潤滑性に優れ、製造過程(特に脱型時)での絶縁被膜の損傷を良好に防止できる。従って、上記形態は、製造過程での絶縁被膜の損傷が効果的に低減、防止されて絶縁性に優れ、ひいてはコアロスが低い。
(6) 本発明の一態様に係る圧粉磁心の一例として、上記潤滑剤が脂肪酸金属塩を含む形態が挙げられる。
脂肪酸金属塩は、潤滑性に優れており、絶縁被膜の損傷を良好に防止できる。上記形態は、潤滑剤に、潤滑性に優れる脂肪酸アミド及び脂肪酸金属塩の双方を含むことで、製造過程での絶縁被膜の損傷が効果的に低減、防止されて絶縁性に優れ、ひいてはコアロスが低い。
(7) 本発明の一態様に係る圧粉磁心の一例として、ポリアミド系樹脂を0超0.5質量%以下含む形態が挙げられる。
ポリアミド系樹脂は圧粉磁心を構成する粉末粒子同士の結着材として機能して、強度を高められる。従って、上記形態は、強度に優れる。
(8) 本発明の一態様に係るコイル部品は、コイルと、磁性コアとを備え、上記磁性コアの少なくとも一部に上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の圧粉磁心を備える。
上記のコイル部品は、高い透磁率を有し、コアロスが低く、製造性にも優れる上記の圧粉磁心を磁性コアの少なくとも一部(好ましくは全部)に備えるため、高い透磁率を有し、コアロスが低く、製造性にも優れる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、適宜図面を参照して、本発明の実施形態に係る圧粉磁心、及びその製造方法、コイル部品を詳細に説明する。図1では、説明の便宜上、粉末粒子の大きさ、形状や、粉末の配合割合などを模式的に示しており、実際の大きさや形状、配合割合は異なる場合がある。
[圧粉磁心]
実施形態の圧粉磁心1は、軟磁性粉末を主体とする成形体であり、図1に示すように鉄粒子12の外周が絶縁被膜14で覆われた被覆鉄粒子から構成される被覆鉄粉10を含む。圧粉磁心1は、代表的には、原料粉末Pが加圧圧縮されて、被覆鉄粉100を構成する各粉末粒子同士が塑性変形して相互に噛み合うなどして、形状が保持される。圧粉磁心1は、更に潤滑剤30を含む。また、圧粉磁心1は、被覆鉄粉10に加えて裸鉄粉20を含み得る。以下、各構成を詳細に説明する。
・被覆鉄粉
・・鉄粉(鉄粒子)
実施形態の圧粉磁心1は、磁性成分を純鉄とすることを特徴の一つとする。主成分を純鉄にすることで、圧粉磁心1は、透磁率や飽和磁束密度が高い。また、主成分を純鉄にすることで、圧粉磁心1は、原料粉末Pの主成分も純鉄となるため、塑性変形性に優れて成形し易く製造性にも優れる、緻密化し易く磁気特性(特に透磁率)を高め易い、粉末粒子同士が十分に噛み合って機械的強度に優れる、という効果を奏する。従って、圧粉磁心1では、必須成分である被覆鉄粉10の鉄粒子12、及び任意成分である裸鉄粉20のいずれも純鉄とする。
鉄粒子12及び裸鉄粉20を構成する純鉄はいずれも、99質量%以上がFeであり、残部は不可避不純物とする。純鉄中の不可避不純物が少ないほど、ヒステリシス損を低減でき、多ければ、電気抵抗が高められて渦電流損をある程度低減できると期待される。圧粉磁心1中の被覆鉄粉10の合計不純物量(裸鉄粉20を含む場合には、被覆鉄粉10と裸鉄粉20との合計量)は、例えば、2000質量ppm以上8000質量ppm以下が挙げられる。この範囲であれば、不純物の含有に起因する透磁率の低下を抑制でき、上記の合計不純物量がより少なければ(例えば、3000質量ppm以下)、上述のようにヒステリシス損を低減し易く、多ければ(例えば、3000質量ppm超、更に4000質量ppm以上)、渦電流損の低減に寄与すると期待される。上記の合計不純物量は、代表的には、圧粉磁心1を粉砕して、粉砕粉末とアセトンなどの有機溶剤との混合液から後述する潤滑剤30やその他の添加材を除去し、抽出した残部を分析することで測定できる(後述する試験例1の潤滑物量の測定方法参照)。有機溶剤に溶解しない成分が含まれ得る場合には、例えば、熱分析や赤外線分光分析などを行って、総合的に判断することが挙げられる。鉄粒子12と絶縁被膜14とを分離して厳密に成分分析することは困難である。そのため、被覆鉄粉10を含む状態で成分分析を行う。被覆鉄粉10と裸鉄粉20とを含む場合には、粉砕粉末を各粉末10,20に分離して、被覆鉄粉10と裸鉄粉20とをそれぞれ成分分析して、両者の不純物を合算する。裸鉄粉20の不可避不純物は、例えば、Mn,Cu,Ni,Cr,Mo,Zn,S,P,Si,炭素、酸素などが挙げられる。裸鉄粉20の不可避不純物の元素は、原料粉末Pの裸鉄粉200の成分に実質的に一致する。被覆鉄粉10の不純物は、代表的は、上記に列挙した元素が挙げられるが、絶縁被膜14の構成成分と考えられる成分(例えば、燐酸鉄であればP,酸素、シリコーン樹脂であればSi,酸素)は不純物としない。圧粉磁心1中の不純物は、被覆鉄粉10や裸鉄粉20に含まれるものの他、後述する潤滑剤30やその他の添加材にも不純物を含み得る。これらの不純物も、少ない方が透磁率の低下を低減できる。
圧粉磁心1における被覆鉄粉10の組成、裸鉄粉20の組成、潤滑剤30の組成は、製造過程で圧縮後に熱処理を行わないことで、原料粉末P(被覆鉄粉100、裸鉄粉200、潤滑剤300)の組成を実質的に維持する。
・・絶縁被膜
絶縁被膜14は、主として、鉄粒子12同士の直接接触を妨げて、圧粉磁心1の電気抵抗を高める絶縁材として機能する。実施形態の圧粉磁心1は、代表的には、後述するように原料粉末Pに潤滑剤300を特定量含むと共に特定成分を含み、かつ圧縮後に熱処理を行わないという特定の製造方法によって得られる。そのため、製造過程での絶縁被膜140の損傷が効果的に防止され、鉄粒子12は残存する絶縁被膜14によって十分に覆われた状態を維持できる。鉄粒子12の表面全体が絶縁被膜14で覆われていれば、渦電流損を低減し易く好ましい。鉄粒子12間や鉄粒子12と裸鉄粒子との間を絶縁できれば、絶縁被膜14は、鉄粒子12の全表面を覆っていなくてもよく、鉄粒子12の一部が露出されるような存在状態を許容する。
絶縁被膜14の構成材料は、種々の絶縁材料をとり得る。例えば、金属元素を含む化合物や非金属元素を含む化合物が挙げられる。前者は、Fe,Al,Ca,Mn,Zn,Mg,V,Cr,Y,Ba,Sr,及び希土類元素(Yを除く)などから選択された1種以上の金属元素と、酸素、窒素、及び炭素から選択された1種以上の化合物(例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物)、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物などが挙げられる。後者は、燐化合物、珪素化合物などが挙げられる。その他、燐酸金属塩化合物(代表的には、燐酸鉄や燐酸マンガン、燐酸亜鉛、燐酸カルシウムなど)、硼酸金属塩化合物、珪酸金属塩化合物、チタン酸金属塩化合物などの金属塩化合物が挙げられる。燐酸金属塩化合物を絶縁被膜14として備える圧粉磁心1は、絶縁被膜14を良好に備えて絶縁性に優れ、渦電流損が低く、ひいてはコアロスが低い。燐酸金属塩化合物は変形性に優れるため、燐酸金属塩化合物の絶縁被膜140を備える被覆鉄粉100を原料粉末Pに用いた場合、燐酸金属塩化合物は、成形時に鉄粒子120の変形に追従して容易に変形して損傷し難い上に、鉄に対する密着性が高いため、成形時などで鉄粒子120の表面から脱落し難いからである。一方、燐酸金属塩化合物に含まれるリンが鉄粒子12に拡散することで、コアロスが増大する恐れがある。そのため、圧粉磁心1全体に含まれるリンの含有量は1000質量ppm以下、更に600質量ppm以下が好ましいと考えられる。リン量が所望の値となるように鉄粒子120の成分や、絶縁被膜140の成分、厚さを調整するとよい。
その他の絶縁被膜14の構成材料として、例えば、種々の樹脂や、高級脂肪酸塩などが挙げられる。具体的な樹脂は、ポリアミド系樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。ポリアミド系樹脂は、ナイロン6、ナイロン66などが挙げられる。
絶縁被膜14の厚さは、例えば、10nm以上1μm以下が挙げられる。上記厚さが10nm以上であれば、鉄粒子12間の絶縁を良好に確保できる。上記厚さが1μm以下であれば、絶縁被膜14が少なく、圧粉磁心1中の磁性成分の割合の低下を抑制でき、透磁率を高め易い。より好ましい厚さは20nm以上100nm以下である。圧粉磁心1中の絶縁被膜14の厚さは、組成分析(透過型電子顕微鏡及びエネルギー分散型X線分光法を利用した分析装置(TEM−EDX))により得られる膜組成と、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)により得られる元素量とを鑑みて相当厚さを導出し、更に、TEM写真によって絶縁被膜14を直接観察して、先に導出された相当厚さのオーダーが適正な値であることを確認して決定される平均的な厚さとする。絶縁被膜14の厚さは、原料粉末Pの絶縁被膜140の厚さを概ね維持する。
・・大きさ
圧粉磁心1における被覆鉄粉10は、比較的大きい粉末粒子を含むことを特徴の一つとする。被覆鉄粉10が大きいことで、圧粉磁心1は、磁束の通路を十分に確保できて高い透磁率を有することができる。具体的には、被覆鉄粉10の平均粒径は200μm以上450μm以下が好ましい。被覆鉄粉10の平均粒径が200μm以上であれば、高透磁率に加えて、1.絶縁被膜14を良好に備えてコアロスを低くし易い、2.緻密化し易く製造性に優れる、3.粉末粒子同士が十分に噛み合って機械的強度に優れる、4.高密度化によっても透磁率を高め易い、といった効果を奏する。上記1.〜3.の効果を奏する理由は以下の通りである。被覆鉄粉10の平均粒径が上述の範囲である圧粉磁心1は、代表的には、平均粒径が上記の範囲を満たす被覆鉄粉100を原料粉末Pに用いることで製造できる。原料粉末Pの被覆鉄粉100の平均粒径が200μm以上であれば、圧縮成形性に優れるため、比較的低圧でも緻密化し易い。成形圧力を小さくすれば、成形時の絶縁被膜140の損傷を抑制でき、絶縁被膜14が健全な状態で存在し易い。原料粉末Pの被覆鉄粉100の平均粒径が大きいほど粉末粒子同士が噛み合い易く圧縮成形性に優れる、流動性に優れて金型に充填し易い、成形圧力を低減しても緻密化できるなどの点から製造性に優れる。上述の効果はいずれも、平均粒径が大きいほど得易いことから、圧粉磁心1における被覆鉄粉10の平均粒径は、220μm以上、更に235μm以上、更には300μm以上とすることができる。
圧粉磁心1における被覆鉄粉10の平均粒径が450μm以下であれば、鉄粒子12の大径化による鉄粒子12内に生じる渦電流損の増大を招き難く、コアロスを低くできる。この点から、圧粉磁心1における被覆鉄粉10の平均粒径は、425μm以下、更に400μm以下とすることができる。
圧粉磁心1における被覆鉄粉10は、微細な粉末粒子が少ないことが好ましい。具体的には、被覆鉄粉10を100質量%として、粒径が75μm以下である粉末粒子(被覆鉄粒子)の割合が10質量%以下であることが好ましい。更に、被覆鉄粉10のうち、粒径が100μm以下である粉末粒子の割合が10質量%以下、更には粒径が120μm以下である粉末粒子の割合が10質量%以下であることがより好ましい。即ち、被覆鉄粉10の90質量%以上が75μm超の粉末粒子、更に100μm超の粉末粒子、更には120μm超の粉末粒子であることが好ましい。上記の微細な粉末粒子が少ない圧粉磁心1は、粒径が大きな粉末粒子が多いため透磁率が高く、所定の磁界が印加された場合には磁束密度が高い。また、上記微細な粉末粒子が少ない圧粉磁心1は、以下の理由により、コアロスを低くし易い。上記微細な粉末粒子が少ない圧粉磁心1は、代表的には、粒径が75μm以下の粉末粒子が少ない被覆鉄粉100を原料粉末Pに用いることで製造できる。微細な粉末粒子が少なく、大きな粉末粒子が多い原料粉末Pは、圧縮変形し易い上に、平均粒径と相俟って粉末粒子が均一的な大きさになり易いため(粒度分布の幅が狭くなるため)、原料粉末Pの圧縮変形を均一的に行えて、不均一な圧縮に起因する成形時の絶縁被膜の損傷を抑制できる。上記の微細な粉末粒子が少ないほど大きな粉末粒子の絶縁被膜140の損傷が抑制され易く、絶縁被膜14を良好に備えて絶縁性に優れる圧粉磁心1となる。更に、微細な粉末粒子の絶縁被膜14は、磁性成分の低下を招き、ひいては透磁率の低下を招く原因となる。そのため、圧粉磁心1における被覆鉄粉10のうち、粒径が75μm以下(好ましくは100μm以下、更には120μm以下)である粉末粒子の割合は、9質量%以下、更に7質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、更には1.5質量%以下とすることができる。
圧粉磁心1における被覆鉄粉10は、大き過ぎる粉末粒子が少ないことが好ましい。具体的には、被覆鉄粉10を100質量%として、粒径が500μm以上である粉末粒子(被覆鉄粒子)の割合が1質量%以下であることが好ましい。上記の大き過ぎる粉末粒子が少ない圧粉磁心1は、粗大粒の存在に伴う渦電流損の増大を防止でき、コアロスが低い。また、大き過ぎる粉末粒子は、三重点などの粉末粒子がつくる隙間が大きくなるため、空孔が生じ易くなる結果、磁性成分の低下を招き、ひいては透磁率の低下を招く。この点から、圧粉磁心1における被覆鉄粉10のうち、粒径が500μm以上である粉末粒子の割合は、0.5質量%以下、更に0.1質量%以下、特に実質的に存在しないことが好ましい。なお、上記の大き過ぎる粉末粒子が少ない圧粉磁心1は、代表的には、粒径が500μm以上の粉末粒子が少ない被覆鉄粉100を原料粉末Pに用いることで製造できる。この原料粉末Pも、上述のように粒度分布の幅が狭くなるため、均一的に圧縮変形でき、成形時の絶縁被膜140の損傷を抑制できる。この点からも、上記の大き過ぎる粉末粒子が少ない圧粉磁心1は、絶縁性に優れて渦電流損を低くして、コアロスが低い。
更に、圧粉磁心1における被覆鉄粉10は、上述の微細な粉末粒子が少ないことと、上述の大き過ぎる粉末粒子が少ないこととの双方を満たすことが好ましい。
圧粉磁心1における被覆鉄粉10の大きさ、後述する裸鉄粉20の大きさは、上述のように原料粉末Pの大きさに依存する。原料粉末Pは、成形時の塑性変形によって偏平になるなど形状が変化するものの、この形状変化に起因する粒径の変化量はさほど大きくないと考えられる。従って、圧粉磁心1における被覆鉄粉10の大きさ、裸鉄粉20の大きさは、原料粉末Pの被覆鉄粉100の大きさ、裸鉄粉200の大きさと概ね等価として扱える。圧粉磁心1における被覆鉄粉10の平均粒径、裸鉄粉20の平均粒径、特定の粒径の粉末粒子の割合の測定方法は後述する。
・・含有量
圧粉磁心1の磁性成分における被覆鉄粉10の含有量が高いほど、特に高透磁率、低コアロスといった効果を得易い。従って、被覆鉄粉10の含有量は、圧粉磁心1の磁性成分を100質量%として、50質量%以上、50質量%超、更に55質量%以上、更には60質量%以上とすることができる。被覆鉄粉10の含有量が100質量%未満の場合、磁性成分の残部は、後述する裸鉄粉20が好ましい。被覆鉄粉10の含有量が100質量%の場合には、更に高透磁率及び低コアロスとし易い。圧粉磁心1の磁性成分の質量は、圧粉磁心の質量から潤滑剤の質量(後述の添加材を含む場合には潤滑剤及び添加材の合計質量)を除した値とする。
・潤滑剤
実施形態の圧粉磁心1は、特定量の潤滑剤30を含むと共に、潤滑剤30に特定成分を含むことを特徴の一つとする。圧粉磁心1における潤滑剤30は、主として、製造過程における原料粉末Pの粉末粒子同士の擦れ合い、脱型時の圧縮物と金型との擦れ合い(摩擦)などを低減する機能を有する。更に、潤滑剤30は、絶縁体であることから、上述のように鉄粒子12が露出した箇所がある場合に、鉄粒子12,12間や鉄粒子12と裸鉄粒子間に介在して絶縁材としても機能する。
・・含有量
実施形態の圧粉磁心1は、圧粉磁心1を100質量%として、潤滑剤30を0.3質量%以上0.8質量%以下含む。潤滑剤30を0.3質量%以上含むことで、上述の製造過程での擦れ合いなどを効果的に低減できて絶縁被膜140の損傷を低減できる上に、鉄粒子12,12間や鉄粒子12と裸鉄粒子間に十分に介在できる。従って、潤滑剤30を0.3質量%以上含む圧粉磁心1は、絶縁被膜14を良好に備えて絶縁性に優れ、コアロスが低い。圧粉磁心1における潤滑剤30の含有量は、0.36質量%以上、更に0.40質量%以上とすることができる。
圧粉磁心1における潤滑剤30の含有量が0.8質量%以下であれば、潤滑剤30の過多による磁性成分の割合の低下や、製造過程での粉末粒子同士の噛み合いの阻害を抑制できる。即ち、磁気特性の低下や強度の低下を抑制できる。また、原料粉末Pの被覆鉄粉100が比較的大きいため、潤滑剤300を過度に含まなくても、緻密化・高密度化が可能である。従って、潤滑剤30を0.8質量%以下含む圧粉磁心1は、密度や強度が高くなり易い。また、圧粉磁心1は、比較的大きな粉末粒子を含有するため、潤滑剤30は、上述の大きな粉末粒子がつくる隙間などに存在し得る。即ち、潤滑剤30は、粉末粒子に対して、その周囲に均一的に存在するのではなく、局所的に存在し得る。そのため、潤滑剤30の含有による透磁率の低下を防止し易く、圧粉磁心1は、高い透磁率を有することができると考えられる。圧粉磁心1における潤滑剤30の含有量は、0.75質量%以下、更に0.70質量%以下とすることができる。
圧粉磁心1における潤滑剤30の含有量が上記の範囲を満たすように、原料粉末Pにおける潤滑剤300の添加量を調整するとよい。
・・成分
実施形態の圧粉磁心1は、潤滑剤30に脂肪酸アミドを含むことを特徴の一つとする。脂肪酸アミドは、代表的には融点が70℃以上150℃以下程度、更に90℃以上120℃以下程度であり、比較的融点が高い。そのため、製造過程では、(1)融点以下の使用環境(例えば、20℃〜25℃程度の室温)であれば、原料粉末Pが流動性に優れて金型に均一的に充填し易い、(2)液状化した潤滑剤が金型に滞留し、この滞留物を原料粉末Pが巻き込むことによる圧縮物の低密度化を抑制できる、(3)脱型性に優れて絶縁被膜140の損傷を低減し易い、(4)原料粉末Pを取り扱い易く作業性に優れる、という効果を奏する。また、圧粉磁心1の使用温度が室温(気温)程度〜融点以下であれば、液状化を抑制でき、液状化に伴う潤滑剤30の過度の流出を防止して、潤滑剤30を絶縁材として機能できる。
具体的な脂肪酸アミドは、ステアリン酸アミド(融点100℃前後)、パルミチン酸アミドなどが挙げられる。市販のステアリン酸アミドは、一部にパルミチン酸アミドを含む場合がある。パルミチン酸アミドとステアリン酸アミドとは、物理特性が概ね同等程度であるため、ステアリン酸アミドとパルミチン酸アミドとの双方を含んでいてもよい。脂肪酸アミド中のパルミチン酸アミドの質量割合は、適宜選択できるが、例えば、55%以下程度が挙げられる。
潤滑剤30として、更に、脂肪酸金属塩を含むことができる。脂肪酸金属塩は、代表的には融点が100℃以上であるため、上述の脂肪酸アミドと同様に上述の(1)〜(4)の効果を奏する上に、絶縁材としても機能する。具体的な脂肪酸金属塩は、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウムなどが挙げられ、一種又は複数種含むことができる。
潤滑剤30は、脂肪酸アミドの含有割合(脂肪酸金属塩を含む場合には、脂肪酸アミドと脂肪酸金属塩との合計含有割合)が高い方が潤滑性に優れて好ましく、実質的に脂肪酸アミドのみ、又は、脂肪酸アミド及び脂肪酸金属塩のみとすることが好ましい。脂肪酸アミド及び脂肪酸金属塩の双方を含む場合には、両者の配合割合は、両者の合計を100質量%として、脂肪酸金属塩の含有量は0超70質量%以下が挙げられる。
圧粉磁心1における潤滑剤30が特定の成分となるように、原料粉末Pにおける潤滑剤300の成分を調整するとよい。
・・形状
潤滑剤30の存在形状として、例えば、粉末状が挙げられる。原料粉末Pの潤滑剤300として粉末状のものを利用すれば、圧縮成形後にも粉末状で存在し得る。その他、成形時に変形して、潤滑剤30は被覆鉄粒子や裸鉄粒子に沿った任意の形状で存在したり、より小さな粉末状やより大きな粉末状になって存在したりする。
・裸鉄粉
実施形態の圧粉磁心1は、磁性成分が被覆鉄粉10のみである形態の他、絶縁被膜14を備える被覆鉄粉10と、絶縁被膜を備えていない裸鉄粉20との双方を含む形態(図1)とすることができる。裸鉄粉20の成分は上述の鉄粒子12と同様である。裸鉄粉20を含む形態は、特に強度に優れることが期待できる。裸鉄粉20は成分及び構造(絶縁被膜無し)から塑性変形性により優れるため、被覆鉄粒子間に変形して介在する場合には、裸鉄粉20によって被覆鉄粒子同士を強固に結合できるからである。また、裸鉄粉20は、絶縁被膜を有さず、表面が比較的凹凸している傾向にあることからも、被覆鉄粒子に噛み合い易いと考えられるからである。
・・大きさ
裸鉄粉20を含む場合には、裸鉄粉20は、被覆鉄粉10よりも小さいことが好ましい。裸鉄粒子が小さければ、大きい被覆鉄粒子がつくる隙間に介在して緻密化、高密度化を図れる。その結果、小さい裸鉄粉20を含む圧粉磁心1は、絶縁被膜による磁性成分の割合の低下を抑制しつつ、高密度化によって透磁率を高められると期待される。また、裸鉄粒子が小さければ、裸鉄粒子間に介在する潤滑剤30によって裸鉄粒子間の絶縁を確保し易い。その結果、圧粉磁心1は、裸鉄粉20を含むものの、絶縁性に優れると考えられる。更に、裸鉄粒子が小さければ、粒子内に生じる渦電流を低減し易い。この点から、裸鉄粉20を含んでいながら、低コアロスの圧粉磁心1とすることができる。
具体的には、圧粉磁心1における裸鉄粉20の平均粒径は40μm以上150μm以下が好ましい。裸鉄粉20の平均粒径が40μm以上であれば、製造過程で裸鉄粉200を取り扱い易く流動性に優れる上に変形性に優れる。そのため、変形によって強度を高め易い上に、製造性にも優れる。この効果は上記平均粒径が大きいほど得易いため、圧粉磁心1における裸鉄粉20の平均粒径は、50μm以上、更に60μm以上、更には70μm以上とすることができる。
圧粉磁心1における裸鉄粉20の平均粒径が150μm以下であれば、被覆鉄粒子がつくる隙間に裸鉄粒子が介在して緻密化し易い。また、裸鉄粒子の大径化による裸鉄粒子内に生じる渦電流の増大を招き難く、コアロスを低くできる。更に、裸鉄粒子間に介在する潤滑剤30によって絶縁性を高め易いことからも、コアロスを低くできる。加えて、裸鉄粒子が小さければ、裸鉄粒子が大き過ぎると塑性変形によって裸鉄粒子同士が結合して大きな導通部分が生じるという不具合を低減できることからも、コアロスを低くできる。これらの点から、圧粉磁心1における裸鉄粉20の平均粒径は、120μm以下、更に100μm以下、更には95μm以下とすることができる。
圧粉磁心1における裸鉄粉20は、大き過ぎる粉末粒子が少ないことが好ましい。具体的には、裸鉄粉20を100質量%として、粒径が200μm以上である粉末粒子(裸鉄粒子)の割合が10質量%以下であることが好ましい。上記の大き過ぎる粉末粒子が少ない圧粉磁心1は、粗大粒の存在に伴う渦電流損の増大を防止でき、コアロスが低い。この点から、圧粉磁心1における裸鉄粉20のうち、粒径が200μm以上である粉末粒子の割合は、5質量%以下、更に3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、特に実質的に存在しないことが好ましい。なお、上記の大き過ぎる粉末粒子が少ない圧粉磁心1は、代表的には、粒径が200μm以上の粉末粒子が少ない裸鉄粉200を原料粉末Pに用いることで製造できる。このような裸鉄粉200は、粒度分布の幅が狭くなるため、製造過程で金型内における裸鉄粉200の移動や原料粉末Pの圧縮を均一的に行えて、不均一な圧縮に起因する絶縁被膜140の損傷を抑制できると期待される。
・・含有量
圧粉磁心1の磁性成分における裸鉄粉20の含有量は、圧粉磁心1の磁性成分を100質量%として、10質量%以上であれば、裸鉄粉20を含む効果(緻密化、高強度、優れた変形性など)が得られる。また、被覆鉄粉100の使用量を低減でき、低コスト化に寄与できる。裸鉄粉20の含有量が15質量%以上、更に20質量%以上、更には30質量%以上であれば、上記の効果を得易い上に、透磁率がより高くなったり、コアロスがより低くなったりすることがある。一方、裸鉄粉20の含有量が45質量%以下であれば、圧粉磁心1は、大きな被覆鉄粉10を十分に含むことから、絶縁性を高め易い。裸鉄粉20の含有量は、35質量%以下、更に30質量%以下とすることができる。
・その他の含有物
圧粉磁心1は、その他の添加材として、樹脂などを含有することができる。具体的には、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)などのエンジニアリングプラスチックが挙げられる。添加材の含有量は、圧粉磁心1を100質量%として、0超0.5質量%以下が好ましい。この範囲で樹脂などを含むことで、成形性や保形性を高められ、かつ樹脂の含有による磁性成分の割合の低下を防止できる。特に、ポリアミド系樹脂は、成形強度を高められて好ましい。ポリアミド系樹脂は、上述のように絶縁被膜14として存在する形態、粉末状に存在する形態などが挙げられる。粉末の場合には、原料粉末Pに樹脂粉末を混合するとよい。
・形状
実施形態の圧粉磁心1は、種々の形状の金型を用いることで、種々の形状をとり得る。代表的には、対向する二面を端面とする柱状体、両端面を貫通する貫通孔を有する筒状体が挙げられる。より具体的には、円柱、円筒、円環(厚さが薄いもの)、直方体などの角柱、端面が矩形枠状の角筒などが挙げられる。その他、一つ又は複数の段差を有する形状や、端部に一つ又は複数のフランジ部を備える形状といった外形が凹凸形状の異形の柱状体や筒状体などとすることができる。
具体的な形状として、圧粉磁心の圧縮方向の断面をとり、上記圧縮方向の長さL(以下、高さLと呼ぶことがある)と、上記圧縮方向に直交方向の長さD(以下、直径Dと呼ぶことがある)との比L/Dが2.5超であるものが挙げられる。即ち、高さLが直径Dに対して大きい柱状体である。端的に言うと、側面の大きさ(高さL)が端面の大きさ(直径D)に対して大きい細長い立体である(例えば、後述する図2、図4、図7のI字状のコア片10iを参照)。円柱では、その外径が直径Dに該当し、角柱では、端面の包絡円の直径が直径Dに該当する。具体的な大きさとして、例えば、高さLは、5mm以上100mm以下、更に5mm以上50mm以下、10mm以上30mm以下、10mm以上25mm以下が挙げられる。より具体的な形状として、直径Dが10mm、高さLが25mm超の円柱、端面の多角形の包絡円の直径Dが10mm、高さLが25mm超の角柱などが挙げられる。又は、上記長さDを肉厚とする円筒や角筒といった薄肉の筒体が挙げられる。具体的な肉厚Dは、2mm以上5mm以下が挙げられる。
上述のような細長い圧粉磁心や薄肉筒の圧粉磁心は、一般に製造し難い形状といえる。しかし、実施形態の圧粉磁心1は、上述のように圧縮成形性に優れる大きさ・材質である被覆鉄粉100及び適宜裸鉄粉200と、脱型性に優れる成分を含む潤滑剤300とを原料粉末Pに用いることで、このような形状であっても、良好に製造でき、製造性に優れる。また、このような細長い形状などであっても、上述のように成形性に優れる原料粉末Pを用いて製造されることで、均一的に圧縮されて圧縮状態のばらつきや密度のばらつきが小さく、圧粉磁心1は、磁気特性や機械的強度、形状精度や寸法精度にも優れる。
なお、圧粉磁心1の圧縮方向を判別する指標の一つとして、圧粉磁心1の断面をとり、断面に存在する粉末粒子の伸び方向、が挙げられる。圧粉磁心1は、原料粉末Pを加圧圧縮することから、原料粉末Pを構成する各粉末粒子は圧縮方向に押し潰されて(塑性変形して)、代表的には、圧縮方向と直交方向に伸びた形状になる。従って、断面に存在する粉末粒子の伸び方向に対して直交する方向が圧縮方向であると予想できる。上記判別する指標の別の一つとして、外形が挙げられる。圧粉磁心1は、代表的には一軸型の金型を用いた成形体であることから、その外形は、上記金型から抜出可能な形状に限られる。例えば、貫通孔を有する圧粉磁心(図7のコア片10fなど)であれは、貫通孔の軸方向が圧縮方向であると予想できる。上記判別する指標の別の一つとして、例えば、摺接痕の有無が挙げられる。圧粉磁心1の外周面を形成するダイとの接触面や、貫通孔を有する場合には圧粉磁心の内周面を形成するロッドとの接触面に、ダイからの圧縮物の抜き取り時やロッドの抜き取り時に圧縮物とダイやロッドとが摺接して、摺接痕が残存し得る。つまり、摺接痕がある面は、ダイやロッドによって形成された面、摺接痕が無い面がパンチによって形成された端面、と予想できる。そして、対向配置される一対の端面に直交する方向が圧縮方向であると予想できる。
・密度
実施形態の圧粉磁心1の一例として、密度が7.3g/cm以上7.7g/cm以下を満たすものが挙げられる。密度が7.3g/cm以上であれば、相対密度((見掛け密度/真密度)×100。真密度=純鉄粉の密度)が92%以上と緻密であり、透磁率が高く、強度に優れる。密度が高いほど、透磁率や強度が高まることから、圧粉磁心1の密度は、7.35g/cm以上、更に7.4g/cm以上を満たすことが好ましい。一方、圧粉磁心1の密度が7.7g/cm以下であれば、比較的低い成形圧力で製造されて、成形時の絶縁被膜の損傷が低減されているといえ、コアロスを低くできる。従って、圧粉磁心1の密度は、7.65g/cm以下、更に7.6g/cm以下とすることができる。
・特性
実施形態の圧粉磁心1は、高い透磁率を有する。例えば、圧粉磁心1の交流透磁率は、測定条件を0.1T/10kHzとするとき、150以上、更に160以上、更には170以上が挙げられる。
[コイル部品(圧粉磁心の使用例)]
実施形態の圧粉磁心1は、磁路の構成部材として利用できる。例えば、巻線を螺旋状に巻回してなるコイルと、このコイルが配置されて磁路を構成する磁性コアとを備えるコイル部品において、磁性コアの少なくとも一部に圧粉磁心1を利用できる。図2〜図7は、コイル部品の一例を示す。図中、同一符号は同一名称物を示す。
図2に示す実施形態1のコイル部品1Aは、磁性コア10Aとして、I字状のコア片10iと、Π字状のコア片10pとを備える(図2の右図)。この磁性コア10Aは、両コア片10i,10pを組み合わせて矩形枠状の閉磁路を構成するO字型の磁性コアである(図2の左図)。ここでは、両コア片10i,10p間にギャップGを備えると共に、I字状のコア片10iにコイルCが配置される例を示す。
図3に示す実施形態2のコイル部品1Bは、磁性コア10Bとして、一対のΠ字状のコア片10p,10pを備える(図3の右図)。磁性コア10Bは、両コア片10p,10pを組み合わせて矩形枠状の閉磁路を構成するO字型の磁性コアである(図3の左図)。ここでは、両コア片10p,10p間にギャップGを備えると共に、両コア片10p,10pのうち、ギャップGを介して接合されて構成される二つの接続脚部にコイルC,Cがそれぞれ配置される例を示す。実施形態1のコイル部品1Aのように、いずれか一方の接続脚部にのみコイルCを備えることができる。
図4に示す実施形態3のコイル部品1Cは、磁性コア10Cとして、四つのI字状のコア片10i〜10iを備える(図4の右図)。磁性コア10Cは、これら四つのコア片10i〜10iを組み合わせて矩形枠状の閉磁路を構成するO字型の磁性コアである(図4の左図)。ここでは、並列される二つのコア片10i,10iと、これら二つのコア片10i,10iを連結する別の一つのコア片10iとの間にギャップGを備えると共に、上述の並列される二つのコア片10i,10iにコイルC,Cがそれぞれ配置される例を示す。実施形態1のコイル部品1Aのように、いずれか一つのコア片10iにのみコイルCを備えることができる。
図5に示す実施形態4のコイル部品1Dは、磁性コア10Dとして、E字状のコア片10eと、I字状のコア片10iとを備える(図5の右図)。磁性コア10Dは、両コア片10e,10iを組み合わせて、図5の左図に二点鎖線で示すような閉磁路を構成するE−I型の磁性コアである。ここでは、E字状のコア片10eの中央の脚部にコイルCが配置されると共に、この脚部とコア片10iとの間にギャップGを備える例を示す。中央の脚部の両側にそれぞれ配置される外側の脚部の少なくとも一方にコイルCを備えることができる。
図6に示す実施形態5のコイル部品1Eは、磁性コア10Eとして、一対のE字状のコア片10e,10eを備える(図6の右図)。磁性コア10Eは、両コア片10e,10eを組み合わせて、図6の左図に二点鎖線で示すような閉磁路を構成するE−E型の磁性コア又はE−R型の磁性コアである。ここでは、両コア片10e,10eの中央の脚部間にギャップGを備えると共に、両コア片10e,10eの中央の脚部がギャップGを介して接合されて構成される接続脚部にコイルCが配置される例を示す。この中央の接続脚部の両側にそれぞれ配置される外側の接続脚部の少なくとも一方にコイルCを備えることができる。
図7に示す実施形態6のコイル部品1Fは、磁性コア10Fとして、貫通孔10hを有する矩形枠状のコア片10fと、このコア片10fの内側に配置されるI字状のコア片10iとを備える。磁性コア10Fは、I字状のコア片10iの各端面が、矩形枠状のコア片10fの対向する二つの内面に対向するように組み合せて、図7の左図に二点鎖線で示すような閉磁路を構成する。ここでは、I字状のコア片10iの端面と、矩形枠状のコア片10fの内周面との間にギャップGを備えると共に、I字状のコア片10iにコイルCが配置される例を示す。矩形枠状のコア片10fにおけるI字状のコア片10iに平行する外側の脚部の少なくとも一方にコイルCを備えることができる。
例えば、磁性コア10A〜10Fにおける磁性成分(ここではコア片10i,10p,10e,10f)を全て、実施形態の圧粉磁心1とすることができる。又は、磁性コア10A〜10Fにおける磁性成分の一部、例えばコイルCが配置される部分を含むコア片を実施形態の圧粉磁心1とすることができる。
図2〜図7に示す磁性コア10A〜10F、コア片10i,10p,10e,10fの形状は例示であり、公知の形状に適宜変更できる。例えば、角部を丸めた湾曲面を有する形状などが挙げられる。また、図2〜図7に示すような単純な形状ではなく、一つ又は複数の段差を有する形状や、端部に一つ又は複数のフランジ部を備える形状、などのように凹凸のある外形を有する異形の立体とすることができる。コイル部品に備えるコア片数は適宜変更でき、図2〜図7は例示である。
コイル20を構成する巻線は、導体の外周に絶縁層を備える被覆線が挙げられる。導体は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などの導電性材料から構成される線材が挙げられる。線材は、断面円形状の丸線や断面矩形状の平角線などが挙げられる。絶縁層の構成材料は、エナメルや、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、シリコーンゴムなどが挙げられる。公知の巻線を利用できる。コイル部品に備えるコイルCの数は適宜変更でき、図2〜図7は例示である。
ギャップGは、所望の磁気特性が得られるように、適宜設けることができる。例えば、ギャップGを備えていない形態とすることができる。また、ギャップGは、非磁性材料からなるギャップ材を用いた形態の他、エアギャップとすることができる。
[圧粉磁心の製造方法]
実施形態の圧粉磁心1は、例えば、以下の準備工程と、成形工程とを備え、成形工程後に熱処理を行わない製造方法によって製造できる。
(準備工程) 平均粒径が200μm以上450μm以下であり、粒径が75μm以下の粉末粒子の割合が10質量%以下である被覆鉄粉と、脂肪酸アミドを含み、0.3質量%以上0.8質量%以下の潤滑剤とを含む原料粉末を準備する工程
(成形工程) 上記原料粉末を金型に充填して加圧圧縮し、圧粉磁心を製造する工程
裸鉄粉20を含む圧粉磁心1を製造する場合には、上記準備工程では、上記被覆鉄粉と、上記潤滑剤と、平均粒径が40μm以上150μm以下であり、粒径が200μm以上の粉末粒子の割合が10質量%以下である裸鉄粉とを含む原料粉末を準備する。
上記の製造方法によれば、成形された圧縮物に対して、熱処理を行わないことで、絶縁被膜の熱損傷を効果的に防止できる。また、脱型性に優れる脂肪酸アミドを含む上に、潤滑剤を特定量含むことで、粉末粒子間の摩擦や圧縮物と金型との間の摩擦を低減して、成形時における絶縁被膜の損傷を効果的に防止できる。更に、変形能に優れる純鉄を主成分とする上に、比較的大きな被覆鉄粉を含むことで原料粉末が圧縮成形性に極めて優れるため、成形圧力を低くしても、緻密化し易い。成形圧力を低くすると、上述の摩擦を低減し易く、この点からも絶縁被膜の損傷を効果的に防止できる。従って、上記の製造方法によれば、絶縁被膜が健全な状態で存在して絶縁性に優れ、電気抵抗が高く、コアロスが低い圧粉磁心を製造できる。特定の大きさの原料粉末を用いることで、圧粉磁心を構成する被覆鉄粉が大き過ぎず、粗大な粉末粒子の存在に起因する渦電流損の増大を抑制できることからも、上述の製造方法は、コアロスが低い圧粉磁心を製造できる。かつ、上記の製造方法は、熱処理の省略、原料粉末が流動性に優れることによる金型充填の容易性、成形性に優れる原料粉末の使用、成形圧力の低減などによって、圧粉磁心を生産性よく製造できる。
上記の製造方法では成形後に熱処理を行わないため、得られた圧縮物(圧粉磁心1)の構成成分は、上述のように原料粉末Pの構成成分を実質的に維持する。また、原料粉末Pは成形によって若干変形するものの、圧粉磁心1を構成する粉末粒子の大きさ及び配合割合は、原料粉末Pに含まれる粉末粒子の大きさ及び配合割合に依存し、概ね維持する傾向にある。そのため、原料粉末Pの成分、大きさ、配合割合などの詳細な説明は省略する。圧粉磁心1に含む被覆鉄粉10、潤滑剤30、裸鉄粉20について述べた各事項は、原料粉末Pに含む被覆鉄粉100、潤滑剤300、裸鉄粉200にそれぞれ適用できる。その他の事項を以下に述べる。
・準備工程
原料粉末Pに用いる被覆鉄粉100は、純鉄粉に絶縁被膜140を形成することで製造できる。被覆鉄粉100及び裸鉄粉200に用いる純鉄粉は、ガスアトマイズ法や水アトマイズ法といったアトマイズ法などの公知の方法によって製造できる。絶縁被膜140の形成には、例えば、燐酸塩化成処理といった化成処理、溶剤の吹きつけ、前駆体を用いたゾルゲル処理などが利用できる。シリコーン系有機化合物の被覆を形成する場合、有機溶剤を用いた湿式被覆処理や、ミキサーによる直接被覆処理などを利用できる。被覆鉄粉100として、市販の被覆鉄粉を利用できる。被覆鉄粉100の大きさや裸鉄粉200の大きさは、純鉄粉を粉砕するなどしてその大きさを調整したり、被覆鉄粉100や裸鉄粉200を篩法などによって分級したりすることで調整できる。
原料粉末Pにおける被覆鉄粉100及び裸鉄粉200について、大きさや特定の粒径の質量割合は、市販の粒度測定装置を用いることで測定できる。簡易的な測定として、特定の粒径の質量割合は、篩を用いて分級すると共に、選別した特定の粒径の粉末粒子の質量を測定することが挙げられる。
原料粉末Pにおける潤滑剤300は、粉末状とすると、被覆鉄粉100や裸鉄粉200と混合し易く好ましい。この潤滑剤粉末の平均粒径は、絶縁被膜140の損傷を抑制するために、少なくとも被覆鉄粒子に付着し易いように、被覆鉄粉100の平均粒径よりも小さいことが好ましい。例えば、潤滑剤粉末の平均粒径は、1μm以上100μm以下、更に3μm以上50μm以下が挙げられる。なお、脱型時に圧縮物の表面から染み出た潤滑剤が金型と擦れ合って除去されることがある。この結果、圧粉磁心1の潤滑剤30の含有量が、原料粉末Pの潤滑剤300の含有量よりも少なくなり得る。例えば、減少量は、質量割合で3%以上25%以下程度が挙げられる。圧粉磁心1の潤滑剤30の含有量が上述の範囲を満たすように、原料粉末Pの潤滑剤300の含有量を調整するとよい。
原料粉末Pの混合には、V型ミキサーやダブルコーンミキサーといった適宜な混合機を利用できる。この混合は、被覆鉄粉100の絶縁被膜140を損傷しない程度に行うことが好ましい。その他、溶媒に溶かした潤滑剤300を被覆鉄粉100や裸鉄粉200の表面に被覆するように噴霧することでも、混合粉末が得られる。
・成形工程
準備した原料粉末P(混合粉末)を加圧圧縮する金型は、代表的には、貫通孔を有するダイと、原料粉末Pを加圧圧縮する一対のパンチとを備えるものが挙げられる。詳しくは、ダイの内周面の一部と、一方のパンチの一面(他方のパンチとの対向面)とで有底筒状の成形空間を形成し、この成形空間に原料粉末Pを充填して両パンチによって加圧圧縮して、所望の形状に成形する。そして、ダイから抜き出した圧縮物が圧粉磁心1である。貫通孔を有する筒状や環状の圧粉磁心(図7のコア片10fなど)を製造する場合には、金型として、ダイの貫通孔に挿通配置されて、圧縮物の貫通孔を形成するロッドを備えるものを利用するとよい。段差を有する形状の圧縮物を成形する場合には、一対のパンチをそれぞれ、複数に分割した組物を利用することができる。金型の構成は、公知の構成を利用できる。
成形圧力は、例えば、1200MPa未満、更に1000MPa以下、更には800MPa以下とすることができる。このような低圧で成形することで、絶縁被膜の損傷を良好に防止できる。上述のように原料粉末Pが圧縮変形性に優れるため、成形圧力を500MPa以上、更に550MPa以上、更には600MPa以上とすることで、絶縁被膜の損傷を抑制しつつ、緻密化、高密度化を図れる。
金型をある程度加熱した状態(連続成形に起因する加工熱でもよい)で成形することができる。この場合、被覆鉄粉100や裸鉄粉200の成形性を高めたり、潤滑剤300をある程度軟化して流動し易くしたりして、圧縮成形性を高められる。そのため、成形圧力をより低くできる。金型を加熱する場合には、金型温度は、潤滑剤の融点をTとするとき、例えば、(T/2)℃以上T℃以下が挙げられる。例えば、融点Tが90℃〜120℃であれば、45℃〜60℃程度が挙げられる。この範囲であれば、成形性に優れる上に、潤滑剤300の過度の軟化を抑制して(液状化による染み出しを抑制して)、圧粉磁心1の潤滑剤30が少なくなり過ぎることを抑制できる。
水冷装置などを用いて金型をより低い温度(例えば、室温以下)に保持することができる。この場合、寸法精度に優れる圧縮物を得易い。
成形時の雰囲気は、例えば、大気雰囲気が挙げられる。被覆鉄粉100は絶縁被膜を備えることで、裸鉄粉200は潤滑剤300に接することで、酸素を含む雰囲気としても、鉄成分の酸化を防止できる。大気雰囲気は、制御が容易であるため、作業性に優れる。
金型において、原料粉末Pや圧縮物と接触する領域に離型コーティングを施すことができる。離型コーティングは、例えば、DLC、TiN、TiC、CrN、及びTi−X−N(但しXは、C,Al,Cr,Mo,及びWから選択される少なくとも1種の元素)から選択される少なくとも1種が挙げられる。離型コーティングの形成には、公知の物理蒸着法、化学蒸着法、アーク法などを利用でき、特にスパッタリング法を好適に利用できる。離型コーティングを行うことで、脱型性をより向上でき、絶縁被膜140の損傷を防止し易い。
上述の細長い形状の圧粉磁心を成形する場合には、ダイとして、貫通孔の開口径D(円孔の場合には直径、多角形を含む非円形孔の場合には、その形状の包絡円の直径)に対して貫通孔の軸方向の長さが十分に長いものを用いるとよい。具体的にはダイとパンチとで形成する成形空間における開口径Dに対する深さLの比L/Dが2.5超を構築可能なものを用いるとよい。このような長い貫通孔を有するダイは、例えば、複数の環状の分割片を組み合わせて構成される組物であって、これらの分割片を貫通孔の軸方向に積み重ねて、連通する一つの貫通孔を形成するものを利用できる。上述の薄肉筒の圧粉磁心についても同様にして成形できる。
[試験例1]
種々の条件で圧粉磁心を製造し、透磁率とコアロスとを調べた。
ここでは、原料粉末として、被覆鉄粉と、潤滑剤と、適宜裸鉄粉(絶縁被膜の無い純鉄粉)とを含む混合粉末を用意した。
・試料No.1−1,1−110は、被覆鉄粉(後述する被覆鉄粉2)と潤滑剤とを含み、裸鉄粉を含まない混合粉末を用いた試料である。
・試料No.1−2,1−120,1−3,1−130は、被覆鉄粉(後述する被覆鉄粉1)と潤滑剤と裸鉄粉とを含む混合粉末を用いた試料である。被覆鉄粉と裸鉄粉との配合割合は、両粉末の合計量(磁性成分の全量)を100質量%とした場合に、試料No.1−2,1−120は、被覆鉄粉を90質量%、裸鉄粉を10質量%とし、試料No.1−3,1−130は、被覆鉄粉を60質量%、裸鉄粉を40質量%とした。
・試料No.1−200は、微細な被覆鉄粉を用いた比較試料である。この微粒被覆鉄粉は、市販品である(平均粒径:55μm、絶縁被膜:燐酸鉄)。
被覆鉄粉は、粒度分布が異なる2種類のもの(被覆鉄粉1,2)を用意した。被覆鉄粉1,2はいずれも、純鉄から構成される鉄粒子(Feが99質量%以上、残部不可避不純物)の周囲に、燐酸鉄から構成される絶縁被膜(平均厚さ約20nm〜100nm)を備える被覆鉄粒子の集まりである。用意した被覆鉄粉1,2はそれぞれ分級した。被覆鉄粉1,2について、平均粒径(μm)、粒径が75μm以下の粉末粒子の割合(質量%)、粒径が100μm以下の粉末粒子の割合(質量%)、粒径が500μm以上の粉末粒子の割合(質量%)を表1に示す。特定の粒径の粉末粒子の割合は、分級前の被覆鉄粉の総重量を100質量%とした場合の各粒度の割合を示す。粒度分布は、市販のレーザ回折・散乱式粒子径・粒度分布測定装置を用いて測定した。用意した被覆鉄粉1,2の平均粒径はいずれも、上記粒度分布測定装置で測定し、積算重量(質量)が50%となる粒径、即ち、50%粒径(質量)とする。
裸鉄粉は、純鉄から構成される鉄粒子(Feが99質量%以上、残部不可避不純物(合計1500質量ppm以上3500質量ppm以下))の集まりである。用意した裸鉄粉も、上述の被覆鉄粉と同様に分級すると共に、平均粒径、粒度分布を測定した。裸鉄粉について、平均粒径(μm)、分級前の裸鉄粉の総重量を100質量%とした場合の粒径が200μm以上の粉末粒子の割合(質量%)を表1に示す。
Figure 2016012688
いずれの試料も、各試料に用いた混合粉末を100質量%とするとき、潤滑剤の含有量を0.4質量%とした。いずれの試料の潤滑剤も、ステアリン酸アミド(融点:約100℃)を含む粉末とした。被覆鉄粉2を用いる試料No.1−1,1−110の潤滑剤は、ステアリン酸アミド及びステアリン酸亜鉛とした。ステアリン酸アミドとステアリン酸亜鉛との配合割合は、これらの合計量を100質量%とした場合に、ステアリン酸亜鉛の含有量を45質量%程度とした。それ以外の試料の潤滑剤はステアリン酸アミドとした。用いたステアリン酸アミド(市販品)を分析したところ、ステアリン酸アミドとパルミチン酸アミドとを含んでいた。潤滑剤粉末の平均粒径は1μm以上100μm以下の範囲から選択した。
金型に混合粉末を充填して加圧圧縮し、円柱状の圧縮物を成形した。いずれの試料も、直径Dが10mm(1cm)、高さLが30mm(3.0cm)の圧縮物を成形した。
いずれの試料も成形条件は、雰囲気を大気雰囲気とし、成形圧力は686MPa〜882MPa(7ton/cm〜9ton/cm)から選択し、金型温度(℃)は50℃〜60℃から選択した。特に、試料No.1−1〜1−3,1−110〜1−130については、密度が概ね等しくなるように成形圧力を上記の範囲から選択した。
試料No.1−110〜1−130,No.1−200の圧縮物には、熱処理を施した。熱処理条件は、雰囲気を大気フロー雰囲気とし、加熱温度を表2に示す温度(℃)、保持時間を30分とした。試料No.1−1〜1−3の圧縮物には、熱処理を施していない。
作製した試料No.1−1〜1−3の圧縮物(圧粉磁心)と、試料No.1−110〜1−130の熱処理物とについて、潤滑剤量を以下のようにして測定した。圧縮物、熱処理物をそれぞれ、粉砕機によって粉砕し(大気雰囲気)、原料に用いた粉末程度の大きさにした粉末を1g秤量する。秤量した1gの粉末にアセトンを添加した混合液を得る。この混合液から、超音波抽出によって潤滑剤(ここではステアリン酸アミド、パルチミン酸アミド)を溶解して回収する。回収した潤滑剤をガスクロマトグラフによって、定性・定量を行った。即ち、粉砕粉末1gあたりの潤滑剤量x(g)を求め、圧縮物の質量y(g)を用いて、圧縮物の質量に占める潤滑剤の質量割合((x×y)/y)×100を求めた。この潤滑剤量は、圧縮物又は熱処理物を100質量%とする割合である。測定結果を表2に示す。ステアリン酸亜鉛を含む試料No.1−1については、熱分析などを合せて行って総合的に判断した。また、回収した磁性成分について、不純物を分析したところ、試料No.1−1〜1−3はいずれも、合計不純物量が、5000質量ppm以上8000質量ppm以下であった(試料No.1−1の合計不純物量は、熱分析などしてステアリン酸亜鉛の成分を除去した量)。
試料No.1−1〜1−3,No.1−110〜1−130の原料粉末を用いて、同様の条件でトロイダル形状のテストピース(外径34mmφ、内径20mmφ、厚さ7mm)を作製し、各試料のテストピースを用いて、以下のようにして、交流透磁率及びコアロス(W/kg)(いずれも測定条件:0.1T/10kHz)を測定した。測定結果を表2に示す。
各試料のテストピースにそれぞれ銅線を巻回して、一次巻きコイル:300ターン、二次巻きコイル:20ターンを備える測定用部材(コイル部品)を作製する。作製した測定用部材及びAC−BHカーブトレーサを用いて、励起磁束密度Bmを1kG(=0.1T)、測定周波数を10kHzとしたときについて、AC−BHカーブの傾きから試料の交流透磁率を求めると共に、試料の渦電流損(渦損)とヒステリシス損(ヒス損)とを求めた。渦損とヒス損との合計である鉄損をコアロスとする。
Figure 2016012688
表2に示すように、熱処理を行っていない試料No.1−1〜1−3の圧縮物(圧粉磁心)の潤滑剤量は、若干の減量が認められたが(質量割合で15%以下程度)、原料粉末における潤滑剤量を実質的に維持していることが分かる。一方、熱処理を行った試料No.1−110〜1−130は、原料粉末に添加した潤滑剤が実質的に存在していないことが分かる。この理由は、熱処理によって潤滑剤が揮発して除去されたり、熱変性して他の物質(ススなど)になったりしたため、と考えられる。
表2に示すように、試料No.1−1〜1−3の圧縮物(圧粉磁心)は、微細な粉末を用いた試料No.1−200に比較して、高い透磁率を有することが分かる。この理由は、原料粉末に、比較的大きく、かつ微細な粉末粒子が少ない被覆鉄粉(ここで平均粒径220μm以上、粒径100μm以下の割合が8質量%以下)を用いたことで、圧粉磁心自体も比較的大きな粉末粒子が多く、かつ微細な粉末粒子が少ない被覆鉄粉を主体とするため、と考えられる。また、潤滑剤を含有するものの、潤滑剤が比較的不均一に存在することで、大きな粉末粒子同士の接触による磁束の通過が良好に行えるため、と考えられる。
大きな被覆鉄粉のみを用いた試料No.1−1の圧縮物(圧粉磁心)は、透磁率がより高いことが分かる。一方、原料粉末に被覆鉄粉よりも微細な裸鉄粉を用いた試料No.1−2,1−3も、試料No.1−1よりも低いもの、高い透磁率を有している。この理由は、微細な裸鉄粉によって緻密化できたこと、絶縁被膜の割合を低減して絶縁被膜に起因する磁性成分の割合の低下を防止できたこと、300μm以上の大きな被覆鉄粒子を含むこと、にあると考えられる。
表2に示すように、熱処理を行っていない試料No.1−1〜1−3の圧縮物(圧粉磁心)は、熱処理を行った試料No.1−110〜1−130に比較して、磁性成分が同じ試料同士で比較すると、渦電流損が低く、コアロスが低いことが分かる。この理由は、試料No.1−110〜1−130は、熱処理を行うことで絶縁被膜を損傷すると共に、絶縁材である潤滑剤が除去されたことで、鉄粒子同士が直接接触する導通部分が生じて電気抵抗が低くなったため、と考えられる。裸鉄粉を含む試料No.1−120,1−130は特に渦電流損が大きくなっており、導通部分が多いと考えられる。
大きな被覆鉄粉のみを用いた試料No.1−1の圧縮物(圧粉磁心)は、構成粉末の全体が絶縁被膜を備えることで絶縁性により優れて、コアロスがより低いことが分かる。この理由は、試料No.1−1は、500μm以上といった大きな鉄粒子を含まないため、粗大鉄粒子に起因する渦電流損の増大を抑制できたため、と考えられる。一方、原料粉末に被覆鉄粉よりも微細な裸鉄粉を用いた試料No.1−2,1−3も、試料No.1−1よりも高いものの、熱処理を施した場合に比較してコアロスが低い。この理由は、熱処理を行っていないことで、微細な裸鉄粒子間に潤滑剤が介在したり、被覆鉄粉の絶縁被膜が介在したりすることができ、裸鉄粒子間の絶縁性を高められたため、と考えられる。また、裸鉄粉が小さいことで、裸鉄粒子の大きさに起因する渦電流損の増大を抑制できたため、と考えられる。
その他、試料No.1−1〜1−3の圧縮物(圧粉磁心)について、密度を測定したところ、表1に示すように7.4g/cm以上であった(相対密度:94%以上)。密度は、アルキメデス法を用いて圧縮物の質量(g)を測定し、測定した質量を圧縮物の体積で除して求めた(密度=質量/体積)。試料No.1−1〜1−3は、原料粉末に比較的大きな粉末を用いると共に変形能の高い純鉄を主体とするため、成形圧力が1200MPa未満(ここでは更に1000MPa以下)といった比較的低圧であっても高密度化ができたと考えられる。また、高密度化によって磁気特性を高められ、強度にも優れると考えられる。
試料No.1−1〜1−3の圧縮物(圧粉磁心)について、目視にて確認したところ、圧縮物におけるダイとの接触面(円柱における側面)に擦り痕が少なく、この面を構成する被覆鉄粉の絶縁被膜の損傷が抑制されていることが確認できた。
得られた試料No.1−1の圧縮物(圧粉磁心)を構成する被覆鉄粉の平均粒径、試料No.1−2,1−3の圧縮物(圧粉磁心)を構成する被覆鉄粉の平均粒径及び裸鉄粉の平均粒径を以下のようにして測定した。
圧縮物(圧粉磁心)の外表面のうち、対向する二平面(ここでは円形の端面)に平行な断面をとり、この断面を顕微鏡観察して、観察像に視野をとり、視野中に存在する被覆鉄粒子(試料No.1−2,1−3では被覆鉄粒子と裸鉄粒子)を抽出する。観察像において、絶縁被膜を有する粒子を被覆鉄粒子、絶縁被膜を有しない粒子を裸鉄粒子として抽出する。抽出した被覆鉄粒子、裸鉄粒子の面積をそれぞれ測定し、この面積に等しい円(等価面積円)の直径をこの被覆鉄粒子の直径、裸鉄粒子の直径とする。視野中に存在する100個以上の被覆鉄粒子の直径、100個以上の裸鉄粒子の直径をそれぞれ測定し、それぞれの平均を圧粉磁心における被覆鉄粉の平均粒径、裸鉄粉の平均粒径とする。被覆鉄粒子や裸鉄粒子の抽出、直径の算出は、上記観察像を画像処理して、二値化などすることで容易に行える。画像処理には、市販の画像処理装置を用いると容易に行える。
得られた試料No.1−1の圧縮物(圧粉磁心)を構成する被覆鉄粉、試料No.1−2,1−3の圧縮物(圧粉磁心)を構成する被覆鉄粉において、粒径が75μm以下の粉末粒子の質量割合、粒径が100μm以下の粉末粒子の質量割合、粒径が500μm以上の粉末粒子の質量割合を以下のようにして測定した。また、試料No.1−2,1−3の圧縮物(圧粉磁心)を構成する裸鉄粉において、粒径が200μm以上の粉末粒子の質量割合を以下のようにして測定した。
上述の断面における被覆鉄粒子の面積割合を体積割合に換算し(例えば、体積割合=面積割合の1.5乗)、この体積割合と被覆鉄粒子の密度とを用いて、各質量割合を算出する。裸鉄粉についても同様に、面積割合から換算した体積割合と裸鉄粒子の密度とを用いて、200μm以上の粉末粒子の質量割合を算出する。被覆鉄粒子の密度、裸鉄粒子の密度は、上述の組成分析を行い、組成に基づいて算出できる。
測定の結果、試料No.1−1の圧粉磁心における被覆鉄粉の平均粒径、粒径が75μm以下の粉末粒子の質量割合、粒径が100μm以下の粉末粒子の質量割合、粒径が500μm以上の粉末粒子の質量割合は、原料粉末の各値を実質的に維持していた。試料No.1−2,1−3の圧粉磁心における被覆鉄粉の平均粒径、粒径が75μm以下の粉末粒子の質量割合、粒径が100μm以下の粉末粒子の質量割合、粒径が500μm以上の粉末粒子の質量割合、及び裸鉄粉の平均粒径、粒径が200μm以上の粉末粒子の質量割合は、原料粉末の各値を実質的に維持していた。
得られた試料No.1−2,1−3の圧縮物(圧粉磁心)において、被覆鉄粉と純鉄粉との配合割合を上述の体積割合と密度とを用いて算出したところ、原料粉末の配合割合を実質的に維持していた。
この試験から、原料粉末として、特定の大きさの被覆鉄粉と、特定量の潤滑剤であって特定成分を含むものと、適宜特定の大きさの裸鉄粉とを含有する混合粉末を圧縮成形することで、透磁率が高く、コアロスが低い圧粉磁心が製造できることが確認できた。また、熱処理を施すことなく、上記圧粉磁心が製造可能なことが確認できた。
[試験例2]
原料粉末として、試験例1で述べた試料No.1−2の混合粉末(被覆鉄粉1(310μm)+裸鉄粉(配合割合10質量%)+潤滑剤)と、裸鉄粉を含まない混合粉末(被覆鉄粉1(310μm)+潤滑剤)とを用いて、試験例1と同様の密度になる条件で圧縮成形した後、熱処理を施していない圧粉磁心(試料No.2−1:裸鉄粉無し、試料No.2−2:裸鉄粉有り)を製造し、強度を調べた。
作製した試料No.2−1,2−2の圧縮物(圧粉磁心、長さ55mmL、幅10mmW、厚さ5mmtの抗折試験片)を用いて、三点曲げ試験を行って抗折力を求めた。具体的には、試験片の両側をそれぞれ背面支持した状態で(抗折スパン40mmL)、試験片の表面中央部に上方から荷重を加えて、試験片が折れたときの最大荷重を求める。この最大荷重(n=5の平均)を抗折力(MPa)として、強度を評価した。
その結果、裸鉄粉を含まない混合粉末を用いた試料No.2−1の抗折力は、13.9MPaであり、被覆鉄粉と裸鉄粉とを含む混合粉末を用いた試料No.2−2の抗折力は、15.6MPaであり、いずれも高強度であった。この理由は、被覆鉄粒子同士が十分に噛み合うと共に、潤滑剤が比較的不均一に存在することで、粉末粒子同士の直接結合を阻害し難くなったため、と考えられる。特に、裸鉄粉を用いた試料No.2−2は、試料No.2−1よりも高強度である。この理由は、塑性変形した裸鉄粉が被覆鉄粒子間を強固に結合できたためと考えられる。この試験から、成形後に熱処理を行っておらず、潤滑剤を含有していながらも、緻密で高強度な圧粉磁心が得られることが確認できた。また、微細な裸鉄粉を含むことで、同じ密度であっても、強度により優れる圧粉磁心が得られることが確認できた。
なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。例えば、試験例において、被覆鉄粉の平均粒径・粒度分布、絶縁被膜の成分・厚さ、潤滑剤の成分・含有量、裸鉄粉の平均粒径・粒度分布、被覆鉄粉と裸鉄粉との配合割合、成形条件(金型温度、成形圧力、雰囲気など)を適宜変更することができる。また、磁性成分として、純鉄の少なくとも一部をFe−Si、Fe−Si−Alなどの鉄基合金に置換した形態などが考えられる。
本発明の圧粉磁心は、各種のコイル部品(例えば、リアクトル、トランス、モータ、チョークコイル、アンテナ、燃料インジェクタ、点火コイルなど)の磁性コアに利用することができる。本発明のコイル部品は、リアクトル、トランス、モータ、チョークコイル、アンテナ、燃料インジェクタ、点火コイルなどに利用することができる。
1 圧粉磁心
10 被覆鉄粉 12 鉄粒子 14 絶縁被膜 20 裸鉄粉
30 潤滑剤
P 原料粉末
100 被覆鉄粉 120 鉄粒子 140 絶縁被膜 200 裸鉄粉
300 潤滑剤
1A,1B,1C,1D,1E,1F コイル部品
10A,10B,10C,10D,10E,10F 磁性コア
10i I字状のコア片 10p Π字状のコア片 10e E字状のコア片
10f 矩形枠状のコア片 10h 貫通孔
G ギャップ C コイル

Claims (8)

  1. 絶縁被膜を備える被覆鉄粉と、潤滑剤とを含み、
    前記被覆鉄粉は、平均粒径が200μm以上450μm以下であり、粒径が75μm以下の粉末粒子の割合が10質量%以下であり、
    前記潤滑剤は、含有量が0.3質量%以上0.8質量%以下であり、脂肪酸アミドを含む圧粉磁心。
  2. 絶縁被膜を備えていない裸鉄粉を含み、
    前記裸鉄粉は、平均粒径が40μm以上150μm以下であり、粒径が200μm以上の粉末粒子の割合が10質量%以下である請求項1に記載の圧粉磁心。
  3. 前記圧粉磁心の磁性成分における前記被覆鉄粉の含有量が50質量%以上100質量%以下である請求項1又は請求項2に記載の圧粉磁心。
  4. 前記圧粉磁心の磁性成分における前記裸鉄粉の含有量が10質量%以上45質量%以下である請求項2に記載の圧粉磁心。
  5. 前記脂肪酸アミドは、ステアリン酸アミドを含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
  6. 前記潤滑剤は、脂肪酸金属塩を含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
  7. ポリアミド系樹脂を0超0.5質量%以下含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
  8. コイルと、磁性コアとを備えるコイル部品であって、
    前記磁性コアの少なくとも一部に請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の圧粉磁心を備えるコイル部品。
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