JP2016012023A - 振動素子および光走査装置 - Google Patents

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鈴木 成己
Shigemi Suzuki
成己 鈴木
若林 孝幸
Takayuki Wakabayashi
孝幸 若林
克美 新井
Katsumi Arai
克美 新井
慶吾 安藤
Keigo Ando
慶吾 安藤
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Abstract

【課題】移動速度の変化率をある範囲に収めたまま有効走査角を広げる。【解決手段】振動素子11は、ミラー部を含む第1振動部21を回転可能に支持する第1捻り梁101と、第1捻り梁を保持する第2振動部31と、第2振動部を回転可能に支持する第2捻り梁102とを有している。振動素子11は、第1振動部と第2振動部31が同相で回転振動する第1共振周波数と、第1振動部と第2振動部31が逆相で回転振動する第2共振周波数を有している。第2共振周波数は第1共振周波数の4倍または5倍の周波数に設定される。【選択図】図1A

Description

本発明は、レーザー走査などに用いられる振動素子およびそれを用いた光走査装置に関する。
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)タイプの振動素子が実用化され、レーザービームプリンターやレーザープロジェクターなどに応用されている。振動素子は、ミラーをトーションバー(捻り梁)で支持するように構成された振動子を有しており、ミラーの慣性モーメントと捻り梁のばね定数で決まる共振周波数の近傍の駆動周波数で駆動される。このような振動素子を用いた光走査装置では、レーザー光のビームウエストが走査角に依らずに所定の投射面上に位置するように、走査角に応じて焦点距離を補正するアークサインレンズなどの光学系が必要となる。
焦点距離の補正は可変焦点ミラーによっても実現できる。特許文献1によれば、光走査装置の光学系に可変焦点ミラーを配置してビームウエストの走査位置を変更できる光学的情報読み取り装置が提案されている。
特開平07−121645号公報
アークサインレンズなどの光学系に代えて可変焦点ミラーを配置すれば、焦点距離の補正に係わる光学部品を簡素化できるであろう。しかし、振動素子の走査角はサイン波状に変化するため、投射面上でのビームスポットの移動速度が場所によって大きく変化してしまう。光走査装置では、ビームを走査しながら時系列データに基づいてビーム強度を変化させることで画像の形成や投影を行う。また、ビーム走査時の反射光の強度変化を時系列データとして検出することで、光学パターンの読み取りが実行される。それ故、ビームの移動速度が大きく変化すると、画像の歪や読み取り分解能のばらつきが生じてしまう。移動速度の変化率を小さくしようとすると、今度は振動素子の有効走査角が狭くなってしまう。
そこで、本発明は、移動速度の変化率をある範囲に収めたまま有効走査角を広げることを目的とする。
本発明は、たとえば、
ミラー部を含む第1振動部と、
前記ミラー部を回転可能に支持する第1捻り梁と、
前記第1捻り梁を保持する第2振動部と、
前記第2振動部を回転可能に支持する第2捻り梁と
を有し、
前記第1振動部および前記第2振動部が同相で回転振動する第1共振周波数と逆相で回転振動する第2共振周波数とを持ち、
前記第2共振周波数は前記第1共振周波数の4倍または5倍の周波数であることを特徴とする振動素子を提供する。
本発明によれば、移動速度の変化率をある範囲に収めたまま有効走査角を広げることが可能となる。また、このような振動素子を光走査装置に採用すれば、投射面上でのビームスポット径、及び、ビームスポットの移動速度の変化を抑えることができる。
光走査装置の一例を示す図である。 振動素子の構成部品の一例を示す図である。 振動素子の回転振動の一例を示す図である。 振動素子の一例を示す図である。 振動素子の回転振動の一例を示す図である。 振動素子の一例を示す図である。 振動素子の一例を示す図である。 光走査装置および振動素子の一例を示す図である。 光走査装置の動作を説明する図である。 光走査装置の駆動信号を示す図である。 光走査装置の動作を説明する図である。 光走査装置の動作を説明する図である。 光走査装置の動作を説明する図である。 光走査装置の動作を説明する図である。 画像形成装置の一例を示す図である。 画像投影装置の一例を示す図である。 光学パターン読み取り装置の一例を示す図である。
[光走査装置]
図1Aは光走査装置1を例示している。図1Bは振動素子11の構成を例示している。振動素子11は、3つの振動部を有している。ミラー部を含む第1振動部21は、ミラー部材301と、第1導電性部材201と、圧電材401と、第3導電性部材203とを有し、振動部として機能する。第1捻り梁101は、第1振動部21を回転可能に支持する。第2振動部31は、第1捻り梁101を保持している。つまり、第1捻り梁101の一端は第1導電性部材201に接続されており、第1捻り梁101の他端は第2導電性部材202に接続されている。第2捻り梁102の一端は第2振動部31の第2導電性部材202に接続されており、第2振動部31を回転可能に支持している。第2捻り梁102の他端は光走査装置の筐体などに固定されている。圧電材401の第1電極501には第1導電性部材201が電気的に導通するように接続されている。なお、第1振動部21は、ミラー部を有するが、第1振動部21の表面層がミラー面として鏡面加工されたものでもよいし、別部材となるミラー部材を貼り付けてミラー面を持つ第1振動部であってもよい。
圧電材401の第2電極502には第3導電性部材203が電気的に導通するように接続されている。第3捻り梁103の一端は第3導電性部材203に接続されており、第3捻り梁103の他端は第4導電性部材204に接続されている。第4捻り梁104の一端は、第3振動部32の一部を構成する第4導電性部材204に接続されている。第4捻り梁104の他端は光走査装置の筐体などに固定されている。
振動素子11では、第2導電性部材202の第1面側に第1磁石601が設けられており、第2導電性部材202の第2面側には第2磁石602が設けられている。第4導電性部材204の第1面側には第3磁石603が設けられており、第4導電性部材204の第2面側には第4磁石604が設けられている。
第1捻り梁101、第2捻り梁102、第3捻り梁103、第4捻り梁104を導電性の素材で構成することで、これらは配線の代わりに駆動信号を圧電材401に供給することが可能となる。配線を使用しなければ、断線が生じないため、振動素子の耐久性が向上する。
第1導電性部材201としては平板状の導電性部材が使用され、第3導電性部材203としてはリング状の導電性部材が採用されている。よって、第3導電性部材203については軽量化を図ることが可能となる。
第2導電性部材202および第4導電性部材204だけでなく、第1磁石601、第2磁石602、第3磁石603および第4磁石604はほぼ同じ形状を有している。これは大量生産の観点から好ましいといえる。第1捻り梁101と第3捻り梁103は同一のばね定数を有している。同様に、第2捻り梁102と第4捻り梁104も同一のばね定数を有している。ミラー部材301にはミラー面が形成されている。よって、ミラー部を含む第1振動部21が回転振動することで、ミラー部材301のミラー面の法線方向が変化し、ミラー面に入射した光が走査される。なお、振動素子11が静止した状態においてミラー面の法線はy軸と平行である。回転軸はz軸と平行である。
駆動回路801が発生する駆動信号によってコイル等の磁界発生部701が磁界を発生し、この磁界と第1磁石601、第2磁石602、第3磁石603および第4磁石604の磁界とが作用して、振動素子11に回転振動が励起される。また、駆動回路802が発生する駆動信号が捻り梁や導電性部材を介して圧電材401の第1電極501および第2電極502に印加される。これにより、圧電材401が伸縮変形し、圧電材401に取り付けられたミラー部材301の曲率が変化する。曲率を適宜変化させることで、ビームウエストが走査面上に維持されることになる。つまり、走査面上でのビームスポット径が一定のサイズに維持される。このように、圧電材401とミラー部材301を有する第1振動部21は曲率可変ミラーとして機能し、駆動回路802からの駆動信号の大きさによってミラー部材301の曲率が制御され、走査光の焦点位置が補正される。
図2に振動素子の共振振動状態を示す。図2(a)は振動素子11が静止した状態を示している。図2(b)は第1振動部21と第2振動部31および第3振動部32が同相で回転振動する同相モードを示している。図2(c)は第1振動部21と第2振動部31および第3振動部32が逆相で回転振動する逆相モードを示している。通常、逆相モードの共振周波数のほうが同相モードの共振周波数よりも高くなる。振動素子11では、同相モードの共振周波数は光走査周波数近傍に設定される。逆相モードの共振周波数は同相モードの共振周波数の4倍または5倍となるように、振動部(第1振動部21、第2振動部31および第3振動部32)の慣性モーメントと各捻り梁のばね定数が調整される。
第2振動部31および第3振動部32の近傍には磁界発生部701が配置される。磁界発生部701は、駆動回路801から供給された駆動信号に基づいて磁界を発生する。これにより第1磁石601〜第4磁石604に回転トルクが生じ、第2振動部31および第3振動部32に回転振動が励起される。駆動回路801が出力する駆動信号は光走査周波数の信号とそれの4倍または5倍の周波数の信号とが適当な振幅比率で重畳されたものである。振動素子11の振動状態は、同相モードの振動に逆相モードの振動が重畳されたものとなる。
第1捻り梁101には第1導電性部材201の接続部付近に曲げ加工が施されている、これにより、振動素子11の回転振動の軸と、第1捻り梁101の長手方向の軸とが一致する。同様に、第3捻り梁103には第3導電性部材203の接続部付近に曲げ加工が施されている、これにより、振動素子11の回転振動の軸と、第3捻り梁103の長手方向の軸とが一致する。これは振動素子11を安定して回転振動させることに寄与する。
駆動回路802から供給された駆動信号に基づいて圧電材401の第1電極501と第2電極502の間に電界が生じ、圧電材401が伸縮して導電性部材201とミラー部材301の変形を生じさせる。
[振動素子]
図3ないし図6を用いて振動素子の他の実施形態について説明する。なお、複数の振動素子において共通する機能や部材についてはできるだけ同一の参照符号を付与することで、説明の簡明化を図ることにする。
図3が示す振動素子12は振動素子11と比較して、複数の捻り梁の位置関係と磁石の数が変更されている。つまり、第1捻り梁101と第3捻り梁103とが並行となるように配置され、第2捻り梁102と第4捻り梁104とが並行となるように配置されている。その結果、第2導電性部材202と第4導電性部材204とが対向するように配置されている。また、磁界発生部701の磁界と作用する磁界を発生する磁石605は、第2導電性部材202と第4導電性部材204に挟持されるように配置されている。回転振動の中心軸は並行する2本の捻り梁の中間になる。
振動素子11は第1振動部21を両側から支持する両持ち構造を採用しているが、振動素子12は第1振動部21を片側から支持する片持ち構造を採用している。片持ち構造では、振動素子を小型化できる反面、ミラー部が首を振る撓みモードの共振周波数が低くなりやすい。よって、外部からの衝撃などで回転振動モードに撓み振動モードが加わった振動状態が振動素子に生じ、走査線が副走査方向に変動することがある。
しかし、図3が示すように、振動素子12では2本の梁を並べた構成を採用しているため、撓み剛性が増加し、撓み振動の共振周波数が高くなる。よって、振動素子12は、衝撃によっても変動し難く、かつ、変動しても短時間で変動を減衰させることができる。
図4(a)は振動素子12が静止した状態を示している。図4(b)は第1振動部21と振動部31が同相で回転振動する同相モードを示している。図4(c)は第1振動部21と振動部31が逆相で回転振動する逆相モードを示している。振動素子11と同様に振動素子12についても逆相モードの共振周波数は同相モードの共振周波数のそれよりも高くなる。
図5(a)、図5(b)および図5(c)は、振動素子11の変形例である振動素子13を示している。振動素子13では第1導電性部材201と第3導電性部材203の形状がそれぞれ半円状となっている。圧電材401の第1電極501および第2電極502は圧電材の第1面側に設けられている。第1電極501および第2電極502も第1導電性部材201と第3導電性部材203の形状とそれぞれ一致している。圧電材401の第2面側には第3電極503が設けられている。第1電極501および第2電極502は、円形状の1つの電極を製造時にx軸方向に分割することで形成可能である。
第1電極501と第3電極503との間における分極Pの方向と、第2電極502と第3電極503との間における分極Pの方向とは反対になっている。これは製造時に第1電極501、第2電極502および第3電極503を利用して、これらの電極間に圧電材401の抗電界以上の電界を印加すること実現される。
駆動回路802は第2捻り梁102の他端と第4捻り梁104の他端とに接続されており、そこから駆動信号を振動素子13に印加する。駆動信号は捻り梁や導電性部材を介して第1電極501および第2電極502に印加される。これにより、図5(c)が示すように第1電極501と第3電極503との間には分極Pと同じ方向の電界が発生する。同様に、第2電極503と第3電極503との間にも分極Pと同じ方向の電界が発生する。よって、第1電極501の部分と第2電極502の部分とで同じ伸縮変形を生じる。駆動回路802からの駆動信号の振幅の大きさによってミラー部材301の曲率が制御され、走査光の焦点位置が補正される。
振動素子13では第1捻り梁101と第3捻り梁103はともに回転振動の軸を通っている。よって、振動素子13は、振動素子11と比較して、第1捻り梁101と第3捻り梁103とには曲げ加工を省略できる利点がある。また、第1導電性部材201、第1捻り梁101、第2導電性部材202および第2捻り梁102により構成される部分と、第3導電性部材203、第3捻り梁103、第4導電性部材204および第4捻り梁104により構成される部分とはそれぞれ形状が一致している。つまり、これらは同一部品として量産することが可能である。このように振動素子13は製造コストの面でも有利であろう。
図6(a)および図6(b)は、振動素子14を示している。振動素子14は、振動素子13を片持ち構造へと変形したものです。図6(b)が示すように、圧電材401の第1面側の円形電極が回転軸(z軸)に対して線対称に分割されて、第1電極501と第2電極とが形成されている。これは、振動素子13の圧電材401を90度回転させたものに他ならない。また、導電性部材や捻り梁の部分は、振動素子12の導電性部材や捻り梁を回転軸に対して線対称に分割することで形成されている。つまり、円形の導電性部材はz軸方向に沿って第1導電性部材201と第3導電性部材203とに分割されている。円形の導電性部材から矩形の導電性部材までの間に設けられている捻り梁も第1捻り梁101と第3捻り梁103とに分割されている。矩形の導電性部材も第2導電性部材202と第4導電性部材204とに分割されている。矩形の導電性部材から延びている捻り梁も第2捻り梁102と第4捻り梁104とに分割されている。
第1磁石601は第2導電性部材202と第4導電性部材204の第1面側に取り付けられる。第2磁石602は第2導電性部材202と第4導電性部材204の第2面側に取り付けられる。
なお、圧電材401の分極や電界の方向は図5(c)に示したものと同じである。
第1導電性部材201、第1捻り梁101、第2導電性部材202および第2捻り梁102により構成される部分と、第3導電性部材203、第3捻り梁103、第4導電性部材204および第4捻り梁104により構成される部分とはそれぞれ形状が一致している。つまり、これらは同一部品として量産することが可能である。このように振動素子14は製造コストの面でも有利であろう。
図7(a)および図7(b)は振動素子15を示している。圧電材401は円形をしており、第1面側に第1電極501を有して第2面側に第2電極502を有している。第1電極に接続した第1導電性部材201には、第1捻り梁101の一端と第5捻り梁105の一端とがそれぞれ接続されている。第1捻り梁101の他端は第2導電性部材202に接続している。第2捻り梁102の一端も第2導電性部材202に接続している。第2捻り梁102の他端は筐体に固定されているとともに、駆動回路803に接続している。第5捻り梁105の他端は第5導電性部材205に接続している。第6捻り梁106の一端も第5導電性部材205に接続している。第6捻り梁106の他端は筐体に固定されているとともに、駆動回路803に接続している。
第2電極に接続した第3導電性部材203には、第3捻り梁103の一端と第7捻り梁107の一端とがそれぞれ接続されている。第3捻り梁103の他端は第4導電性部材204に接続している。第4捻り梁104の一端も第4導電性部材204に接続している。第4捻り梁104の他端は筐体に固定されているとともに、駆動回路803に接続している。第7捻り梁107の他端は第6導電性部材206に接続している。第8捻り梁108の一端も第6導電性部材206に接続している。第8捻り梁108の他端は筐体に固定されているとともに、駆動回路803に接続している。第2導電性部材202と第6導電性部材206とを絶縁するために第1絶縁材621が設けられている。さらに、第4導電性部材204と第5導電性部材205とを絶縁するために第2絶縁材622が設けられている。
第2捻り梁102に沿ってその近傍に第1磁石611が配置されている。第8捻り梁108に沿ってその近傍に第2磁石612が配置されている。第6捻り梁106に沿ってその近傍に第3磁石613が配置されている。第4捻り梁104に沿ってその近傍に第4磁石614が配置されている。
駆動回路803は、第2捻り梁102、第2導電性部材204、第1捻り梁101、第1導電性部材201、第5捻り梁105、第5導電性部材205および第6捻り梁106を含むパスに駆動信号を流す。さらに、駆動回路803は、第8捻り梁108、第6導電性部材206、第7捻り梁107、第3導電性部材203、第3捻り梁103、第4導電性部材204および第4捻り梁104を含むパスに駆動信号を流す。つまり、第2捻り梁101と第6捻り梁106との間に印加される電流と、第4捻り梁104と第8捻り梁108との間とに印加される電流と、第1磁石611〜第4磁石614の磁界とが作用することで、各捻じり梁に捻りトルクが発生する。その結果、振動部に回転振動が励起される。
第1導電性部材201と第3導電性部材203との間に生じる電圧を調整することで、圧電材401の伸縮に応じてミラー部材301の曲率が制御される。
振動素子15では、振動素子11ないし振動素子14で必要であった磁界発生部701を不要にすることができる。また、振動素子15の駆動するための信号はすべて捻り梁に供給される。
[材料など]
捻り梁に用いられる材料としては、金属材料の他、カーボンを混合した樹脂材料など導電性材料であれば特に限定されるものではないが、繰り返し耐久性や耐衝撃性の観点から、SUS301やSUS631等のステンレスや銅合金、Co(コバルト)−Ni(ニッケル)基合金などの金属材料が採用されてもよい。その中でもSPRON(登録商標)510に代表されるCo−Ni−Cr(クロム)−Mo(モリブデン)合金などの時効硬化型Co−Ni基合金は特に疲労限が高く、繰り返し応力が加わる光走査装置には都合がよい。また、Co−Ni基合金は耐熱性や耐食性も高いため、通電やそれによる発熱が材料特性に影響を与えることは小さく、その点においても捻り梁に通電を行う光走査装置には適切であろう。さらに、Co−Ni基合金は内部摩擦が小さいという特徴もあり、振動素子11〜15を共振させて回転振動させる際のQ値が高く、駆動に要する消費電力を低減できる利点もある。Co−Ni−Cr−Mo合金を用いる場合には、加工率50%以上、より好ましくは90%以上の圧延加工、または、線引き加工により加工硬化処理を施した後、形状加工を行い、500〜600℃程度の温度で時効硬化処理が施されてもよい。最終的なヤング率や硬度は、加工率と時効熱処理の温度および時間で調整も可能である。形状加工には、エッチング加工やプレス加工、レーザー加工、ワイヤー放電加工等を用いることができる。加工硬化処理や形状加工において、その仕上がり具合によっては表面付近の内部摩擦が増加し、振動素子のQ値が低下してしまうことがある。そのような場合には、時効硬化処理前にエッチング処理を行うのが良く、目標寸法に対して大きめに形状加工を施したのち、硝酸系のエッチャントなどを用いて仕上げの形状加工を施すのが好ましい。また、加工硬化処理や形状加工時に生じた微少なクラックや表面の荒れがある場合にも、振動素子のQ値低下や耐久性低下の問題が生じる。そのような場合には、時効硬化処理前に電界研磨処理を行うのが良く、リン酸系やエチレングリコール系の液を用いた電界研磨処理によって表面を平滑化するのが好ましい。
導電性部材201〜206は、生産性の観点から、夫々捻り梁と同一材料で一体構造であるのが好ましい。しかしこれに限定されるものではなく、金属材料など導電性材料で形成して捻り梁と接合しても良い。接合する際には、形状加工を簡素化できることから捻り梁に線材を用いるのが好ましく、また、接合部の耐久性向上のために接合する線材の端部に鍛造などによって接合面を形成するのが好ましい。
圧電材401には、圧電定数の大きいチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が好適に用いられる。しかし、これに限定されるものではなく、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸鉛等、圧電特性を有する材料であればよい。圧電材401は両面に電極の形成された焼結体の他、成膜可能な形状であれば、導電性部材201〜206、ミラー部材301、または、導電性部材203を収納したミラー部材301など導電性部材とミラー部材の複合構成に対して成膜によって形成されたものであってもよい。焼結体を用いる場合には、電極501〜503と導電性部材201、202の直接接合、または、接着剤等を用いた接着により圧電材401が保持される。接着による場合には、接着部における導電性部材と電極の間の電気容量が圧電材401の両電極間の電気容量よりも大きくなるように、できるだけ対向面積を大きくし、かつ、接着層を薄くして、導電性部材と電極を近接させるのが好ましい。また、接着剤に導電性を付与して導電性を確保しても良い。成膜で形成する場合には、導電性部材201〜206に直接成膜され、その間に電極は形成されない。成膜の方法としては、ゾルゲル法など各種の成膜方法を用いることができるが、その中でも、成膜レートが高く膜質の良い厚膜形成が容易なエアロゾルディポジション法やガスデポジション法を用いるのが好ましい。圧電材401の材料にPZTを用い、導電性部材201〜206に金属材料を用いる場合には、鉛の拡散を防止する中間層が形成されてもよい。また、圧電特性の向上には熱処理温度を上げることが有効であるため、成膜の基材となる導電性部材201〜206は耐熱性が高い材料で形成されるのが好ましく、Co−Ni基合金などが好適に用いられる。
ミラー部材301は、シリコンウエハや薄板ガラスなどの表面平坦性の良い基材に反射膜や増反射膜を形成したものの他、導電性部材201に直接形成された反射膜等であってもよい。反射膜としては、蒸着等で形成されるAu、Ag、Al等の膜が挙げられる。また、必要に応じてその上に増反射膜が形成される。また、導電性部材201の研磨によって鏡面を形成することも可能であり、この場合には、導電性部材201がミラー部材301としても機能する。
磁石601〜605は、特に限定されるものではないが、捻り振動に係わる慣性モーメントを小さくするために出来るだけ小型で磁力の強いものが好ましい。よって、磁力の強いNd−Fe−B系磁石やSm−Co系磁石等や、小型形状形成が可能な加工性に優れたFe−Cr−Co系磁石などが好適に用いられうる。
[光走査装置の動作]
次に、図8〜図14を参照して光走査装置の動作を説明する。
図8(a)は振動素子11〜15のいずれかを採用した光走査装置によるレーザー光走査の状態を示したものである。図8(b)は第1振動部21に配置されたミラー部材301の変形の様子を示したものであり、光の走査方向、および、それに垂直な副走査方向に共通の変形である。ミラー部材301が圧電材401に加えられた電気信号により図8(b)の(R1)のような曲率を持った状態であるとき、ビームウエストが走査中心からR1の距離にある投射面P1の中央に位置しているとする。捻り梁の捻り振動により第1振動部21が回転して図8(b)の(R1’)の状態になったとき、ミラー部材301の曲率は圧電材401に加えられる電気信号の変化により(R1)の状態から小さくなる方向に変化し、ビームウエストは走査中心からR1’の距離にある投射面P1の右端に位置するようになる。仮に(R1)の状態から曲率が変化していない場合には、ビームウエストは走査端方向にR1の位置になり、投射面P1の右端ではビーム径が拡がってしまう。走査左端も同様に、図8(b)の(R”)の状態で曲率が変化することによりビームウエストは投射面P1上に保持される。このように、1回の往復走査の間に2回のミラー曲率変化を生じさせる制御、即ち、走査周波数に対して2倍の周波数を含む信号を用いたミラー曲率の制御を行うことにより、アークサインレンズなどのレンズ光学系を使用することなく、最小スポットが形成されるビームウエスト位置をほぼ同一平面上に保持した光走査が可能になる。図8(c)は、同様に面P1よりも投射距離の長い投射面P2にビームウエストを保持するためのミラー部材301の変形状態を示したものであり、図8(b)よりも曲率が大きい状態を維持することで、ビームウエスト位置は(R2)→(R2’)→(R2)→(R2”)→(R2)と移動する。このように、圧電材401の駆動信号の制御により、ビームウエストを保持する面を変化させることも可能である。
図9は、図8のような走査を行うための駆動信号の例である。駆動回路801が周波数f1の駆動信号を供給することで第1振動部21に回転振動が誘起する。一方、駆動回路802が周波数f1の2倍の周波数f2を持つ信号にオフセット電圧ΔVを加えて生成した駆動信号が捻り梁に印加される。これにより、ミラー部材301の曲率変形が誘起される。
周波数f2の駆動信号は一走査内でビームウエストを走査面上に維持するための駆動信号であり、ΔVはビームウエストを保持する面を変化させるためのオフセットである。第1振動部21を共振により回転振動させる場合には周波数f1の駆動信号と第1振動部21の回転角の位相が90度ずれる。そのため、回転角に合わせて第1振動部21のミラー部材301の曲率変形が制御されるよう、駆動回路802が出力する駆動信号の位相も駆動回路801が出力する駆動信号の位相とはずれている。
次に、投射面に形成されるビームスポットの移動速度について説明する。光走査装置では、ビームを走査しながら時系列データに基づいてビーム強度を変化させたり、ビーム走査時の反射光の強度変化を時系列データとして検出したりすることで、画像の形成や投影、光学パターンの読み取りなどを行う。その際、ビームの移動速度が大きく変化すると、画像の歪や読み取り分解能のばらつきが生じてしまう。時系列データを補正してビーム強度の変化をビームの移動速度の変化に対応させる方法や、読み取り速度を移動速度の変化に対応させる方法も考えられるが、それには高価な高速の制御手段が必要となる。投射面上のビームスポットの移動はできるだけ等速であるのが好ましく、サイン波状に角度変化する振動素子11〜15のビーム走査角に対して、投射面上での等速性が得られる範囲で使用するのが好ましい。
図10は図8(a)と同様に光走査の状態を示したものである。走査の中央を基準にして、ミラー部材301の回転振動によるビームの最大走査角をθo、その内実際に走査光が利用される有効範囲をθeffとし、走査中心から距離Lの位置にある投射面P上でθeffに相当する範囲をXeffとしている。投射面Pを図8(a)のP1とすると、Xeffの位置は投射面P1端部のR1’の位置に相当する。ビーム方向が角度θの方向であるとき、投射面P上に形成されるビームスポットの移動速度をVとすると、角度θ=0の時の移動速度Voを基準にして、角度θに対する移動速度Vの変化率V/Voは図11のようになる。図11において横軸はビームの方向を示す角度θであり、縦軸は移動速度Vの変化率V/Voである。最大走査角θoを増加させていくと図の(i)〜(v)のように角度θに対する移動速度Vが変化する。このとき、スポット移動速度の許容誤差をΔvとすると、(iii)のグラフでこの範囲内にある角度、即ち、有効走査角θeffはΘ3である。最大走査角を増加させた(iv)のグラフでは有効走査角がΘ4に拡がる。しかし、さらに最大走査角を増加させた(v)のグラフでは有効走査角がΘ5となって逆に狭まり、これ以上最大走査角を増加しても有効走査角を拡げることはできない。
以上の説明は、振動素子のビーム走査角がサイン波状に変化する場合のもの、即ち、本実施形態の振動素子の同相モードのみで走査を行った場合のものである。そこで、図12(a)および図12(b)を用いて同相モードに逆相モードを重畳させた場合のビームスポットの移動速度の変化率について説明する。
図12(a)は同相モードf1およびそれの5倍の周波数を持つ逆相モードf5の角度振幅の一例を示している。振動素子11〜15ではこれらを重畳した走査角変化を生じる。なお、逆相モードf5の角度振幅は同相モードf1の角度振幅に対して小さいためグラフのスケールを変えて示している。
同相モードf1の角度振幅と逆相モードf5の角度振幅の比率の設定は、同相モードf1と逆相モードf5の駆動信号を適当な振幅比率で重畳させることで得られる。逆相モードf5の共振周波数が同相モードf1の4倍の周波数であるときは、4倍の周波数の信号が重畳される。
図8(b)は、逆相モードf5を同相モードf1に重畳した場合に得られるビームスポットの移動速度の変化率の一例を示している。iii及びivのグラフは図11に示したものと同じグラフであり、縦軸が拡大されている。iv’はivと同じ最大走査角で4倍の周波数の逆相モードを重畳した場合のグラフである。iv”は5倍の周波数の逆相モードを重畳した場合のグラフである。逆相モードを重畳しない場合にはiiiから最大走査角を大きくするとivのように移動速度の変化率が大きくなってしまう。これに対して、逆相モードを重畳することで、iv’またはiv”のように移動速度の変化率をある範囲内に収めたまま有効走査角を拡大することができる。
つまり、走査周波数を持つ同相モードの駆動信号に対して4倍または5倍の周波数を持つ逆相モードの駆動信号を重畳させることで、最大走査角を大きくして有効走査角を広げることができる。光走査装置においては、短い投射距離で広い範囲の画像形成や読み取りを行うことができるのが望ましい。そのため、有効走査角はできるだけ広いほうが好ましい。小型の振動素子で最大走査角を大きくするには、ミラーを支持する捻り梁に高い強度と耐久性が必要であり、時効硬化型のCo-Ni基合金を用いた捻り梁はこの点からも非常に好ましい。
次に、光走査時の投射面に投射されるビームスポット径の変化について説明する。光走査装置において、ビームスポット径は光走査により形成や投影される画像の精細度や、光学パターン読み取りの分解能に大きく影響する。このため、有効走査領域内でのビームスポット径の変動は極力少ないのが好ましい。
図13(a)に投射面上の位置によるビームスポット径の変化の一例を示す。図10に示した投射距離Lを174mmに設定し、振動素子11〜15の回転振動によって投射面の中央Oからx軸方向へのビームスポットを移動したときのビームスポット径変化を示している。図13(a)の横軸は投射面中央からの距離xであり、縦軸はビームスポット径φである。また、図13(b)には、ミラー部材301の曲率を変化させるために圧電材401に印加する駆動信号の一例を示す。周波数f2の駆動信号は振動素子11〜15の回転振動の周波数、即ち、走査周波数(回転振動周波数)f1の2倍の周波数f2を持つ駆動信号であり、図9に示した周波数f2の駆動信号と同じである。周波数f4の駆動信号は周波数f1の4倍の周波数f4を持つ信号であり、周波数f2+f4の駆動信号は周波数f2の駆動信号と周波数f4の駆動信号を適当な比率で重畳した信号である。走査面上の位置によるビームスポット径の変化は、走査周波数と同期したミラー変形を行わない場合には図13(a)の“f2なし”のグラフに示されたものとなり、走査端に向うにしたがって急激にスポット径が増大する。これに対して、周波数f2の駆動信号によりミラー部材301の曲率を変化させた場合には、図13(a)の“f2のみ”のグラフに示されたものとなり、Xeffの有効走査範囲内でのビームスポット径の変動を大幅に抑えることができる。さらに、周波数f2とf4を重畳させた駆動信号でミラー部材301の曲率を変化させた場合には、図13(a)の“f2+f4”のグラフに示されたものとなり、位置に依らずにほぼ一定のビームスポット径を得ることができる。
上に述べた等速性やビームスポット径の安定化の効果は、振動素子11〜15が異常振動などを生じずに安定した光走査を行うことができる場合に限って得られるものである。振動素子11〜15を用いて最大走査角を適切に設定し、また、走査周波数の2倍および4倍の周波数を持つ信号でミラー部を含む第1振動部21の曲率を制御することにより、画像の形成や投影、光学パターンの読み取りなどを高精度に行うことが可能な光走査装置を実現できる。
[画像形成装置]
図14に光走査装置の実施例である画像形成装置7を示す。振動素子10は上述した振動素子11〜15のいずれか1つであり、振動部周辺の構成は省略してある。光源971は、画像データに応じて制御回路970が出力した駆動信号に基づき強度変調した光を射出する。射出された光は射出光学系972を通って振動素子10のミラー部材301で反射され、像担持体の一例である感光体975上を走査する。走査された光は、BDセンサ973、974で検出される。制御回路970は、BDセンサ973、974が出力する検出信号を基に走査角を制御するための制御信号を生成して出力する。制御信号は振動素子10の駆動回路870の駆動回路801にフィードバックされる。これにより駆動回路801は振動素子10の最大走査角を安定的に適切な値に維持する。また、駆動回路870に含まれている駆動回路802は検出信号に基づいてミラー曲率を制御するための制御信号を出力する。これにより、感光体975上でのビームスポット径がほぼ一定の大きさに維持される。
振動素子11〜15を用いた画像形成装置7は、断線や異常振動などが生じにくくなり安定した光走査およびミラー曲率制御を行うことができる。このため、最大走査角の適切化やミラー曲率制御信号の適切化により、等速性やビームスポット径の安定化の効果を発揮する。つまり、高精度で信頼性の高い画像形成が可能となる。また、振動素子11〜15を用いた画像形成装置7では、走査速度の変動を補正するレンズ光学系を簡素化できる。また、走査速度の変動に対応するための画像データの補正やレーザー光の強度変調信号の補正などが不要となる。これにより、小型で安価な画像形成装置が実現できる。
[画像形成装置]
図15(a)に光走査装置の実施例である画像投影装置8を示す。振動素子10は上記の振動素子11〜15のいずれか1つである。RGB3原色を含む光源装置981は、画像データに基づいて制御回路980から出力された信号にしたがって強度変調した光を射出する。振動素子10および垂直走査装置982により光は2次元走査され、スクリーン983に映像として投射される。垂直走査装置982の走査速度は振動素子10よりも遅い。垂直走査装置982には、たとえば、非共振駆動で高精度な位置決めができるガルバノミラーが用いられる。制御回路980から出力される制御信号に基づいて駆動回路880に含まれる駆動回路801は振動素子10の走査角を制御する。また、垂直走査装置982も同様に、制御回路980からの出力に基づいて走査角が制御される。さらに、駆動回路880の駆動回路802がミラー曲率制御信号(駆動信号)を出力することで、スクリーン983上でのビームスポット径がほぼ一定の大きさに維持される。また、制御回路980は、入力部984を通じて画像の台形補正が設定されると、垂直走査装置982の駆動信号の変化に応じてミラー曲率制御信号を変化させる。これにより、図15(b)のように斜め投影を行う際にも、スクリーン上部の走査では焦点距離を長く、下部では焦点距離を短くしてスクリーン上のビームスポット径をほぼ一定の大きさに維持することができる。
このように振動素子11〜15のいずれかを用いた画像投影装置8は、断線や異常振動などを生じずに安定した光走査およびミラー曲率制御を行うことができる。このため、最大走査角の適切化やミラー曲率制御信号の適切化により、等速性やビームスポット径の安定化の効果を発揮することができる。その結果、高精度で信頼性の高い画像投影が可能となる。また、画像投影装置8では、ミラー曲率制御信号の調整により斜め投影でもスクリーン上でビームスポット径をほぼ一定にすることができる。これにより、限られたスペースでも使用可能な高精細の画像投影装置8を実現できる。
[光学パターン読み取り装置]
図16に光走査装置の実施例である光学パターン読み取り装置9を示す。振動素子10は振動素子11〜15のいずれか1つである。光源991から射出された光は射出光学系992を通って振動素子10のミラー部材301で反射され、光学パターン上を走査する。光学パターンに応じて強度が変化する反射光は、振動素子10で再び反射された後に検出光学系994によって集光され、光センサ995で検出される。デコーダ996は、光センサ995が出力する検出信号を2値化する。これにより光学パターンの情報が読み取られる。駆動回路890は制御回路990からの信号に基づいて振動素子10の回転振動の駆動信号およびミラー曲率制御信号を出力する。これにより、光学パターンのある投射面上でビームスポット径がほぼ一定の大きさに維持される。
振動素子11〜15のいずれかを用いた光学パターン読み取り装置9は、断線や異常振動などを生じずに安定した光走査およびミラー曲率制御を行うことができる。このため、最大走査角の適切化やミラー曲率制御信号の適切化により、等速性やビームスポット径の安定化の効果を発揮できる。その結果、高精度でかつ信頼性の高い読み取りが可能となる。
[まとめ]
本実施形態によれば、振動素子11〜15は、第1振動部21と第2振動部31が同相で回転振動する第1共振周波数と、第1振動部21と第2振動部31が逆相で回転振動する第2共振周波数を有している。さらに、第2共振周波数は第1共振周波数の4倍または5倍の周波数である。これにより、移動速度の変化率をある範囲に収めたまま有効走査角を広げることが可能となる。この点は図12を用いて説明したとおりである。
また、このような振動素子11〜15を光走査装置1に採用すれば、投射面上でのビームスポット径およびビームスポットの移動速度の変化を抑えることができる。たとえば、補正光学系を簡略化しても、広い範囲でビームスポット径やビームスポットの移動速度のばらつき抑えることが可能となる。
なお、駆動回路802または駆動回路803は、第2振動部31に回転振動を励起する第1駆動手段として機能する。駆動回路802または駆動回路803は、第1共振周波数に一致した周波数を有する信号と、第1共振周波数の4倍または5倍の周波数を有する信号とを重畳させた信号を用いて振動素子11ないし15を駆動する。
図1ないし図7を用いて説明したように、ミラー部材301の曲率を変化させる圧電材401を採用することで可変曲率ミラーが実現されてもよい。この場合、光学系に可変焦点ミラーを配置する必要がなくなるため、製造コストを削減できる。また、光学系を簡素化して、光走査装置1をコンパクトにすることが可能となる。
図1ないし図6を用いて説明したように、圧電材401を駆動する第2駆動手段として駆動回路803が設けられてもよい。駆動回路803は、第1共振周波数の2倍の周波数を有する信号と第1共振周波数の4倍の周波数を有する信号を重畳した信号を用いて圧電材401を駆動してもよい。これによりいずれの走査位置でもビームスポット径を一定のサイズに維持しやすくなる。
図1、図2、図5および図7を用いて説明したように第3振動部32が採用されてもよい。第1共振周波数により第1振動部21、第2振動部31および第3振動部32が同相で回転振動し、第2共振周波数により第1振動部21、第2振動部31および第3振動部32が逆相で回転振動することになる。このように第1振動部21の両側に振動部が配置されるため、安定して第1振動部21が回転振動することが可能となる。
図3を用いて説明した振動素子12では第2導電性部材202と第4導電性部材204との間に磁石605を取り付ければよいため、磁石の数を減らすことが可能となる。なお、振動素子12はいわゆる片持ち構造を採用しているが、2本の捻り梁が並行に配置されているため撓み振動を抑制しやすい。
図1などを用いて説明したように第3導電性部材203はリング状の導電性部材とすることで、第1振動部21を軽量化することが可能となる。
図1Bを用いて説明したように、第1捻り梁101が振動素子11の回転振動の軸に近づくように第1捻り梁101には曲げ加工が施されていてもよい。このように捻り梁の長さ方向の軸を回転振動の軸に近づけて配置することで、振動素子11の回転振動が安定しやすくなる。
図5や図6を用いて説明したように、圧電材401の第1電極502および第2電極502は圧電材401の第1面側に設けられ、圧電材401の第2面側には第3電極503が設けられてもよい。このような構成は第1振動部21の軽量化をもたらすであろう。また、共通部品の数を増やすことも可能となり、生産コストの低減にも役立つであろう。
図7を用いて説明したように、第2捻り梁、第2導電性部材、第1捻り梁、第1導電性部材、第5捻り梁、第5導電性部材および第6捻り梁を含むパスを流れる信号と、第8捻り梁、第8導電性部材、第7捻り梁、第3導電性部材、第3捻り梁、第4導電性部材および第4捻り梁を含むパスを流れる信号とによって振動素子15を回転振動させてもよい。この場合、重量物である磁石を振動素子15に固定する必要がなくなり、振動素子15の重量を削減できる。また、磁界発生部701を省略できる利点もある。
ミラー部材301の回転角は±20度以上であってもよい。これはミラー部の走査角を広くしつつ、消費電力を削減するうえで有効である。
図14を用いて説明したように、光走査装置と像担持体とを備え、当該光走査装置によって走査された光によって当該像担持体に画像を形成することを特徴とする画像形成装置7が提供されてもよい。振動素子11〜15を用いた画像形成装置7は、断線や異常振動などが生じにくくなり安定した光走査およびミラー曲率制御を行うことができる。このため、最大走査角の適切化やミラー曲率制御信号の適切化により、等速性やビームスポット径の安定化の効果を発揮する。つまり、高精度で信頼性の高い画像形成が可能となる。また、振動素子11〜15を用いた画像形成装置7では、走査速度の変動を補正するレンズ光学系を簡素化できる。また、走査速度の変動に対応するための画像データの補正やレーザー光の強度変調信号の補正などが不要となる。これにより、小型で安価な画像形成装置が実現できる。
図15を用いて説明したように、光走査装置によって走査された光によってスクリーンに画像を投影することを特徴とする画像投影装置8が提供されてもよい。振動素子11〜15のいずれかを用いた画像投影装置8は、断線や異常振動などを生じずに安定した光走査およびミラー曲率制御を行うことができる。このため、最大走査角の適切化やミラー曲率制御信号の適切化により、等速性やビームスポット径の安定化の効果を発揮することができる。その結果、高精度で信頼性の高い画像投影が可能となる。また、画像投影装置8では、ミラー曲率制御信号の調整により斜め投影でもスクリーン上でビームスポット径をほぼ一定にすることができる。これにより、限られたスペースでも使用可能な高精細の画像投影装置8を実現できる
図16を用いて説明したように、光走査装置を備えたことを特徴とする光学パターン読み取り装置9が提供されてもよい。振動素子11〜15のいずれかを用いた光学パターン読み取り装置9は、断線や異常振動などを生じずに安定した光走査およびミラー曲率制御を行うことができる。このため、最大走査角の適切化やミラー曲率制御信号の適切化により、等速性やビームスポット径の安定化の効果を発揮できる。その結果、高精度でかつ信頼性の高い読み取りが可能となる。
なお、振動素子は、ミラー部と第1振動部が同相で回転振動する第1共振周波数と、ミラー部と第1振動部が逆相で回転振動する第2共振周波数を持ち、更に第2共振周波数は第1共振周波数の4倍または5倍の周波数とするのがよい。これにより、移動速度の変化率をある範囲に収めたまま有効走査角を広げることが有効となる。また、このような振動素子を光走査装置に採用すれば、投射面上でのビームスポット径、及び、ビームスポットの移動速度の変化を効果的に抑えることができる。

Claims (15)

  1. ミラー部を含む第1振動部と、
    前記ミラー部を回転可能に支持する第1捻り梁と、
    前記第1捻り梁を保持する第2振動部と、
    前記第2振動部を回転可能に支持する第2捻り梁と
    を有し、
    前記第1振動部および前記第2振動部が同相で回転振動する第1共振周波数と逆相で回転振動する第2共振周波数とを持ち、
    前記第2共振周波数は前記第1共振周波数の4倍または5倍の周波数であることを特徴とする振動素子。
  2. 前記第2振動部に回転振動を励起する第1駆動手段をさらに有し、
    前記第1駆動手段は、前記第1共振周波数に一致した周波数を有する信号と、前記第1共振周波数の4倍または5倍の周波数を有する信号とを重畳させた信号を用いて前記振動素子を駆動することを特徴とする請求項1に記載の振動素子。
  3. 前記第1振動部の前記ミラー部は、
    ミラー部材と、
    前記ミラー部材の曲率を変化させる圧電材と、
    前記圧電材の第1電極および前記第1捻り梁の一端に接続した第1導電性部材と、
    前記第1捻り梁の他端と前記第2捻り梁の一端とに接続し、前記第1振動部の一部を構成する第2導電性部材と
    を有することを特徴とする請求項1または2に記載の振動素子。
  4. 前記圧電材を駆動する第2駆動手段をさらに有し、
    前記第2駆動手段は、前記第1共振周波数の2倍の周波数を有する信号と前記第1共振周波数の4倍の周波数を有する信号を重畳した信号を用いて前記圧電材を駆動することを特徴とする請求項3に記載の振動素子。
  5. 前記圧電材の第2電極に接続した第3導電性部材と、
    前記第3導電性部材に一端を接続された第3捻り梁と、
    前記第3捻り梁の他端に接続し、第3振動部の一部を構成する第4導電性部材と、
    前記第4導電性部材に一端を接続された第4捻り梁と
    を有し、
    前記第1共振周波数により前記第1振動部、前記第2振動部および前記第3振動部が同相で回転振動し、前記第2共振周波数により前記第1振動部、前記第2振動部および前記第3振動部が逆相で回転振動することを特徴とする請求項3または4に記載の振動素子。
  6. 前記第2導電性部材の第1面側に設けられた第1磁石と、
    前記第2導電性部材の第2面側に設けられた第2磁石と、
    前記第4導電性部材の第1面側に設けられた第3磁石と、
    前記第4導電性部材の第2面側に設けられた第4磁石と
    をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の振動素子。
  7. 前記圧電材の第2電極に接続した第3導電性部材と、
    前記第3導電性部材に一端を接続された第3捻り梁と、
    前記第3捻り梁の他端に接続した第4導電性部材と、
    前記第4導電性部材に一端を接続された第4捻り梁と、
    前記第2導電性部材と前記第4導電性部材とに取り付けられた磁石と
    をさらに有し、
    前記第1捻り梁と前記第3捻り梁とが並行するように設けられており、
    前記第2捻り梁と前記第4捻り梁とが並行するように設けられている
    ことを特徴とする請求項3または4に記載の振動素子。
  8. 前記第1導電性部材は平板状の導電性部材であり、
    前記第3導電性部材はリング状の導電性部材である
    ことを特徴とする請求項5ないし8のいずれか1項に記載の振動素子。
  9. 前記第1捻り梁が前記振動素子の回転振動の軸に近づくように前記第1捻り梁には曲げ加工が施されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の振動素子。
  10. 前記圧電材の前記第1電極および前記第2電極は前記圧電材の第1面側に設けられており、前記圧電材の第2面側には第3電極が設けられていることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の振動素子。
  11. 前記圧電材の第2電極に接続した第3導電性部材と、
    前記第3導電性部材に一端を接続された第3捻り梁と、
    前記第3捻り梁の他端に接続し、第3振動部の一部を構成する第4導電性部材と、
    前記第4導電性部材に一端を接続された第4捻り梁と、
    前記第1導電性部材に一端を接続されて第5捻り梁と、
    前記第5捻り梁の他端に接続し、前記第4導電性部材とともに前記第3振動部を構成する第5導電性部材と、
    前記第5導電性部材に一端を接続された第6捻り梁と、
    前記第3導電性部材に一端を接続されて第7捻り梁と、
    前記第7捻り梁の他端に接続し、前記第2導電性部材とともに前記第2振動部を構成する第6導電性部材と、
    前記第6導電性部材に一端を接続された第8捻り梁と、
    前記第2導電性部材と前記第6導電性部材とを絶縁する第1絶縁材と、
    前記第4導電性部材と前記第5導電性部材とを絶縁する第2絶縁材と、
    前記第2捻り梁に沿ってその近傍に配置された第1磁石と、
    前記第8捻り梁に沿ってその近傍に配置された第2磁石と、
    前記第6捻り梁に沿ってその近傍に配置された第3磁石と、
    前記第4捻り梁に沿ってその近傍に配置された第4磁石と
    を有し、
    前記第2捻り梁、前記第2導電性部材、前記第1捻り梁、前記第1導電性部材、前記第5捻り梁、前記第5導電性部材および前記第6捻り梁を含むパスを流れる信号と、前記第8捻り梁、前記第6導電性部材、前記第7捻り梁、前記第3導電性部材、前記第3捻り梁、前記第4導電性部材および前記第4捻り梁を含むパスを流れる信号とによって回転振動することを特徴とする請求項3または4に記載の振動素子。
  12. 請求項1ないし11のいずれか1項に記載された振動素子を有し、光源からの光を前記振動素子のミラー部により走査することを特徴とする光走査装置。
  13. 請求項12に記載の光走査装置を備え、当該光走査装置によって走査された光によってスクリーンに画像を投影することを特徴とする画像投影装置。
  14. 請求項12に記載の光走査装置と像担持体とを備え、当該光走査装置によって走査された光によって当該像担持体に画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
  15. 請求項12に記載の光走査装置を備えたことを特徴とする光学パターン読み取り装置。
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