JP2016011378A - 地下層処理用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐塩性が高く、高い止水性を有する地下層処理用組成物を提供する。
【解決手段】カチオン基を0.15〜1.8mmol/g有する微細セルロース繊維を含有する地下層処理用組成物を、地下層の処理のために用いる泥水に配合する。本発明はまた、坑井処理の際に用いられる種々の流体を提供する。本発明はさらに、地下層の処理方法、例えば試掘井、評価井、探鉱井、探掘井、開発井、生産井、圧入井、観測井、サービス井等の掘削;セメンチング;フラクチャリング;ならびに石油資源の生産方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐塩性が高く、優れた止水性を有する地下層処理用組成物に関する。
地下の層または区域に存在しているガス、石油、および水のような天然資源は、通常は掘削孔中に掘削流体を循環させながら地下層まで掘削孔を掘ることで回収される。石油、ガスの回収では、フラクチャリング流体、泥水、セメンチング流体、 ウェルコントロール流体(well control fluid)、ウェルキル流体(well kill fluid)、酸フラクチャリング流体(acid fracturing fluid)、酸分流流体(acid diverting fluid)、刺激流体(stimulation fluid)、サンドコントロール流体(sand control fluid)、仕上げ流体(completion fluid)、ウェルボーン石化流体(wellbore consolidation fluid)、レメディエーション処理流体(remediation treatment fluid)、スペーサー流体(spacer fluid)、掘削流体(drilling fluid)、フラクチャリングパッキング流体(frac-packing fluid)、水適合流体(water conformance fluid)、または砂利パッキング流体(gravel packing fluid)等の地下層の処理のための流体が使用される。
地下層処理用流体には、逸泥防止剤、比重剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、増粘剤などの添加物が配合されている、例えば、泥水では、ドリルと坑壁との摩擦低減、ビットの冷却、砕かれた岩石の搬出、掘削作業中の逸水や逸泥の防止、掘進により形成される坑壁の崩壊防止などの目的で、ベントナイト、雲母、消石灰、カルボシキシメチルセルロース、シリコーン樹脂等を、水や有機溶剤等の液状担体に分散して調製される。
掘削する地層中に粘土鉱物が含まれている場合、坑井処理流体中の水に反応して膨潤を起こし、崩壊するなどのトラブルが発生する。そこで、粘土鉱物の水和膨潤を抑制するために、坑井処理流体に多量の塩を配合する処方がある。また、清水が入手しにくい場所では、海水などの塩濃度の高い分散溶媒を使用することとなり、坑井処理流体用の添加物には耐塩性が求められている。また、セメンチング流体ではセメント成分由来のカルシウムイオンが多量に存在する。
一方、このような用途における増粘剤の成分として、微細なセルロース繊維(特許文献1)、酸加水分解法にて製造したセルロースナノウィスカー(特許文献2)が知られている。またナノ結晶性セルロースを含む地下層処理のための組成物が提案されている(特許文献3)。さらに、近年、セルロースの結晶性を維持したまま、ナノサイズの微細セルロース繊維を製造する画期的な方法が開発された(非特許文献1)。この方法では、セルロース繊維表面にアルデヒド基やカルボキシル基を導入した後、機械処理により微細なセルロース繊維を生成させる。この方法で得られる微細セルロース繊維は、高い結晶性に加え、セルロースナノウィスカーに比べて長い繊維が得られ、水中で高粘度のゲルとなりうる。この方法で製造した微細セルロース繊維を化粧品用増粘剤や掘削用増粘剤に使用することが提案されている(特許文献4、5)。
US6348436公報 US2013/0196883公報 US2013/0274149公報 特開2010−37348公報(特許第5296445号) US2013/0035263公報
Saito T & al. Homogeneous suspentions of individualized microfibrils from TEMPO-catalyzed oxidation of native cellulose. Biomacromolecules 2006, 7 (6), 1687-91
しかしながら、上記の微細セルロース繊維は表面をアニオン化処理しており、塩水中に存在する陽イオンと容易に反応し、凝集を引き起こす。その結果、増粘性や止水性などの効果が十分でなくなる。また、表面修飾を行わない微細セルロース繊維は微細化の程度が十分でなく、その結果、増粘性も不十分である。
本発明の課題は、耐塩性の高い、優れた止水性を有する地下層処理用組成物を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、カチオン変性された微細繊維セルロースを地下層処理用組成物として流体に配合することにより、塩存在下ににおいて高い粘度を維持し、優れた止水性を発揮することを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] カチオン基を0.15〜1.8mmol/g有する微細セルロース繊維を含有する、地下層処理用組成物。
[2] 微細セルロース繊維の繊維幅が200nm以下である、1に記載の組成物。
[3] アルカリ性の地下層処理用流体に添加して使用するための、1または2に記載の組成物。
[4] 耐塩性を有する、1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
[5] 止水性を有する、1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
[6] フラクチャリング流体、泥水、セメンチング流体、 ウェルコントロール流体(well control fluid)、ウェルキル流体(well kill fluid)、酸フラクチャリング流体(acid fracturing fluid)、酸分流流体(acid diverting fluid)、刺激流体(stimulation fluid)、サンドコントロール流体(sand control fluid)、仕上げ流体(completion fluid)、ウェルボーン石化流体(wellbore consolidation fluid)、レメディエーション処理流体(remediation treatment fluid)、スペーサー流体(spacer fluid)、掘削流体(drilling fluid)、フラクチャリングパッキング流体(frac-packing fluid)、水適合流体(water conformance fluid)、または砂利パッキング流体(gravel packing fluid)に添加して使用するための、1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
[7] 1〜6のいずれか1項に記載の組成物を含み、セルロース繊維の固形分濃度が0.05〜2質量%である、地下層処理用流体。
[8] 1〜6のいずれか1項に記載の組成物、ならびに加重材、粘度調整剤、分散剤、凝集剤、逸泥防止剤、pH制御剤、摩擦低減剤、水和膨張制御剤、乳化剤、界面活性剤、殺生物剤、消泡剤、スケール防止剤、腐食防止剤、温度安定剤、樹脂コート剤、亀裂支持材、塩、およびプロパントからなる群から選択されるいずれかを含む、地下層処理用流体。
[9] 1〜6のいずれか1項に記載の組成物、およびアニオン性の添加剤を含む、地下層処理用流体。
[10] アニオン性の添加剤が鉱物である、9に記載の地下層処理用流体。
[11] フラクチャリング流体、泥水またはセメンチング流体である、7〜10のいずれか1項に記載の流体。
[12] 1〜6のいずれか1項に記載の組成物、または7〜11のいずれか1項に記載の流体を用いる、地下層の処理方法。
[13] 1〜6のいずれか1項に記載の組成物、または7〜11のいずれか1項に記載の流体を用いる、石油資源の生産方法。
[14] カチオン基を0.15〜1.8mmol/g有する微細セルロース繊維の水分散液を流体に添加する工程を含む、地下層処理用流体の製造方法。
[15] 微細セルロース繊維の分散液を濃縮、または乾燥させ、得られた濃縮液または乾燥物を水系溶媒に再分散させて再分散液を得る工程を含む、1〜7のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
[16] 濃縮が、濃縮剤および/または乾燥機により実施される、15に記載の製造方法。
本発明はまた、以下を提供する。
[1] カチオン基を0.15〜1.8mmol/g有する微細セルロース繊維を含有する組成物の、地下層の処理における使用。
[2] 微細セルロース繊維の繊維幅が200nm以下である、1に記載の使用。
[3] 組成物をアルカリ性の地下層処理用流体に添加して使用する、1または2に記載の使用。
[4] 組成物が耐塩性を有する、1〜3のいずれか1項に記載の使用。
[5] 組成物が止水性を有する、1〜4のいずれか1項に記載の使用。
[6] 組成物を、フラクチャリング流体、泥水、セメンチング流体、 ウェルコントロール流体(well control fluid)、ウェルキル流体(well kill fluid)、酸フラクチャリング流体(acid fracturing fluid)、酸分流流体(acid diverting fluid)、刺激流体(stimulation fluid)、サンドコントロール流体(sand control fluid)、仕上げ流体(completion fluid)、ウェルボーン石化流体(wellbore consolidation fluid)、レメディエーション処理流体(remediation treatment fluid)、スペーサー流体(spacer fluid)、掘削流体(drilling fluid)、フラクチャリングパッキング流体(frac-packing fluid)、水適合流体(water conformance fluid)、または砂利パッキング流体(gravel packing fluid)に添加して使用する、1〜5のいずれか1項に記載の使用。
[7] 1〜6のいずれか1項に定義された組成物の、地下層処理用流体における使用であって、流体中のセルロース繊維の固形分濃度が0.05〜2質量%である、使用。
[8] 1〜6のいずれか1項に定義された組成物の、加重材、粘度調整剤、分散剤、凝集剤、逸泥防止剤、pH制御剤、摩擦低減剤、水和膨張制御剤、乳化剤、界面活性剤、殺生物剤、消泡剤、スケール防止剤、腐食防止剤、温度安定剤、樹脂コート剤、亀裂支持材、塩、およびプロパントからなる群から選択されるいずれかとの、地下層処理用流体における使用。
[9] 1〜6のいずれか1項に定義された組成物と、アニオン性の添加剤との、地下層処理用流体における使用。
[10] アニオン性の添加剤が鉱物である、9に記載の使用。
[11] 流体が、フラクチャリング流体、泥水またはセメンチング流体である、7〜9のいずれか1項に記載の使用。
本発明はさらに、以下を提供する。
[1] カチオン基を0.15〜1.8mmol/g有する微細セルロース繊維を含有する組成物で、地下層を処理する、地下層の処理方法。
[2] 微細セルロース繊維の繊維幅が200nm以下である、1に記載の方法。
[3] 組成物をアルカリ性の地下層処理用流体に添加して使用する、1または2に記載の方法。
[4] 組成物が耐塩性を有する、1〜3のいずれか1項に記載の方法。
[5] 組成物が止水性を有する、1〜4のいずれか1項に記載の方法。
[6] 組成物を、フラクチャリング流体、泥水、セメンチング流体、 ウェルコントロール流体(well control fluid)、ウェルキル流体(well kill fluid)、酸フラクチャリング流体(acid fracturing fluid)、酸分流流体(acid diverting fluid)、刺激流体(stimulation fluid)、サンドコントロール流体(sand control fluid)、仕上げ流体(completion fluid)、ウェルボーン石化流体(wellbore consolidation fluid)、レメディエーション処理流体(remediation treatment fluid)、スペーサー流体(spacer fluid)、掘削流体(drilling fluid)、フラクチャリングパッキング流体(frac-packing fluid)、水適合流体(water conformance fluid)、または砂利パッキング流体(gravel packing fluid)に添加して使用する、1〜5のいずれか1項に記載の方法。
[7] 1〜6のいずれか1項に定義された組成物を含み、セルロース繊維の固形分濃度が0.05〜2質量%である流体で、地下層を処理する、地下層の処理方法。
[8] 1〜6のいずれか1項に記載の組成物、ならびに加重材、粘度調整剤、分散剤、凝集剤、逸泥防止剤、pH制御剤、摩擦低減剤、水和膨張制御剤、乳化剤、界面活性剤、殺生物剤、消泡剤、スケール防止剤、腐食防止剤、温度安定剤、樹脂コート剤、亀裂支持材、塩、およびプロパントからなる群から選択されるいずれかを含む流体で、地下層を処理する、地下層の処理方法。
[9] 1〜6のいずれか1項に定義されたの組成物、およびアニオン性の添加剤を含む流体で、地下層を処理する、地下層の処理方法。
[10] アニオン性の添加剤が鉱物である、9に記載の地下層の処理方法。
[11] 流体が、フラクチャリング流体、泥水またはセメンチング流体である、7〜10のいずれか1項に記載の方法。
本発明により、耐塩性の高く、優れた止水性を有する地下層処理用組成物が提供される。
以下、本発明について更に詳細に説明する。なお、本明細書に記載される材料、方法および数値範囲などの説明は、発明の実施態様を例示したものであり、当該材料、方法および数値範囲などに発明の範囲を限定することを意図したものではない。また、それ以外の材料、方法および数値範囲などの使用を除外するものでもない。
範囲「X〜Y」は、両端の値を含む。「%」は、特に記載した場合を除き、質量に基づく割合を表す。
[微細セルロース繊維含有組成物]
本発明においては、セルロース原料を化学的処理および解繊処理することによって得られる、カチオン基を有する微細セルロース繊維を使用することができる。
<微細セルロース繊維>
セルロース原料としては、製紙用パルプ、コットンリンターやコットンリントなどの綿系パルプ、麻、麦わら、バガスなどの非木材系パルプ、ホヤや海草などから単離されるセルロースなどが挙げられるが、特に限定されない。これらの中でも、入手のしやすさという点で、製紙用パルプが好ましいが、特に限定されない。製紙用パルプとしては、広葉樹クラフトパルプ(晒クラフトパルプ(LBKP)、未晒クラフトパルプ(LUKP)、酸素漂白クラフトパルプ(LOKP)など)、針葉樹クラフトパルプ(晒クラフトパルプ(NBKP)、未晒クラフトパルプ(NUKP)、酸素漂白クラフトパルプ(NOKP)など)が挙げられる。また、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ、楮、三椏、麻、ケナフ等を原料とする非木材パルプ、古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。これらの中でも、より入手しやすいことから、クラフトパルプ、脱墨パルプ、サルファイトパルプが好ましいが、特に限定されない。セルロース原料は1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
本発明でセルロース繊維というときは、特に記載した場合を除き、粗大セルロース繊維と微細セルロース繊維とを含む。
粗大セルロース繊維(単に、粗大繊維ということもある。)の平均繊維幅は、電子顕微鏡で観察して、例えば1μm以上であり、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。
微細セルロース繊維(単に、微細繊維ということもある。)の平均繊維幅は、電子顕微鏡で観察して、好ましくは2〜1000nm、より好ましくは2〜100nmであり、より好ましくは2〜50nmであり、さらに好ましくは2nm以上10nm未満であるが、特に限定されない。微細セルロース繊維の平均繊維幅が2nm未満であると、セルロース分子として水に溶解しているため、微細セルロース繊維としての物性(強度や剛性、寸法安定性)が発現しなくなる。ここで、微細セルロース繊維がI型結晶構造をとっていることは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14〜17°付近と2θ=22〜23°付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
セルロース繊維の電子顕微鏡観察による繊維幅の測定は以下のようにして行う。濃度0.05〜0.1質量%のセルロース繊維の水系懸濁液を調製し、該懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない表面部分の画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を読み取る。このように少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。セルロース繊維の平均繊維幅(単に、「繊維幅」ということもある。)はこのように読み取った繊維幅の平均値である。
微細セルロース繊維の繊維長は特に限定されないが、1〜1000μmが好ましく、5〜800μmがさらに好ましく、10〜600μmが特に好ましい。繊維長が1μm未満になると、微細繊維シートを形成し難くなる。1000μmを超えると微細繊維のスラリー粘度が非常に高くなり、扱いづらくなる。繊維長は、TEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
<化学的処理>
セルロース原料の化学的処理の方法は、微細繊維を得ることができる方法である限り特に限定されない。例えば、セルロースまたは繊維原料中の官能基と共有結合を形成し得る化合物による処理などが挙げられるがこれらに限定されない。
特開2011−162608号公報に記載されている四級アンモニウム基を有する化合物による処理は、繊維中の水酸基と四級アンモニウム基を有するカチオン化剤とを反応させて、該繊維をカチオン変性する方法である。
カチオン化反応工程に供するパルプの固形分濃度は50〜100質量%であることが好ましく、70〜100質量%であることがより好ましく、90〜100質量%であることがさらに好ましい。パルプの固形分濃度が前記範囲であれば、セルロースとカチオン化剤の反応効率が高まり、より低コストで微細セルロース繊維を製造できる。パルプ固形分濃度が前記下限値未満であると、後述するカチオン化反応時におけるパルプの固形分濃度を所定値以上にすることが困難になる。
下記にカチオン化微細セルロース繊維を製造する方法の一例を記載するが、カチオン化の方法は下記に限定されない。
(カチオン化反応工程)
本実施形態におけるカチオン化反応工程は、パルプにカチオン化剤およびアルカリ化合物を添加して反応させて、カチオン化パルプを得る工程である。具体的には、パルプに含まれるセルロースのヒドロキシ基にカチオン化剤をアルカリ化合物共存下で反応させて、カチオン化パルプを得る。
カチオン化剤としては、四級アンモニウム基と、セルロースのヒドロキシ基と反応する基とを有するものを用いることができる。セルロースのヒドロキシ基と反応する基としては、エポキシ基、ハロヒドリンの構造を有する官能基、ビニル基、ハロゲン基等が挙げられる。
カチオン化剤の具体例としては、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドなどのグリシジルトリアルキルアンモニウムハライド或いはそのハロヒドリン型の化合物が挙げられる。
カチオン化剤の添加量は特に制限されないが、パルプ絶乾質量1gあたりのカチオン化剤添加量が物質量で0.3〜10mmolであることが好ましく、0.9〜4.8mmolであることがより好ましく、1.6〜3.0mmolであることがさらに好ましい。カチオン化剤の添加量が前記下限値以上であれば、微細セルロース繊維の収率をより高くできる。しかし、前記上限値を超えると、カチオン化反応時におけるパルプの固形分濃度を所定値以上にすることが困難になる。また、カチオン化剤のコストが高くなる。
カチオン化工程に使用するアルカリ化合物は、カチオン化反応の促進に寄与するものである。アルカリ化合物は、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。
無機アルカリ化合物としては、アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩またはアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属のリン酸塩またはアルカリ土類金属のリン酸塩が挙げられる。
アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化カルシウムが挙げられる。
アルカリ金属の炭酸塩としては炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが挙げられる。アルカリ土類金属の炭酸塩としては、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
アルカリ金属のリン酸塩としては、リン酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属のリン酸塩としては、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウムなどが挙げられる。
有機アルカリ化合物としては、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族アンモニウム、芳香族アンモニウム、複素環式化合物およびその水酸化物、炭酸塩、リン酸塩等が挙げられる。例えば、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、シクロヘキシルアミン、アニリン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム等が挙げられる。
上記アルカリ化合物は1種単独でもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
上記アルカリ化合物の中でも、カチオン化反応がより起こりやすくなり、且つ、低コストであることから、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
アルカリ化合物の量はアルカリ化合物の種類に応じて異なるが、例えば、パルプ絶乾質量に対して1〜10質量%の範囲内とされる。
カチオン化剤およびアルカリ化合物は、パルプに容易に添加できることから、溶液化することが好ましい。溶液化する場合に使用する溶媒としては水または有機溶媒のいずれであってもよいが、極性溶媒(水、アルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒がより好ましい。
本製造方法では、カチオン化反応開始時のパルプ絶乾質量1gあたりの溶媒物質量を5〜150mmolにすることが好ましい。該溶媒の物質量は、5〜80mmolにすることがより好ましく、5〜60mmolにすることがさらに好ましい。カチオン化反応開始時のパルプ絶乾質量1gあたりの溶媒物質量を前記上限値より高くすると、カチオン化剤と水等の溶媒の反応が、カチオン化剤とセルロースとの反応と競合するため、カチオン化の反応効率が低下して微細セルロース繊維の収率が低くなる。一方、カチオン化反応開始時のパルプ絶乾質量1gあたりの溶媒物質量が前記下限値未満であると、パルプにカチオン化剤が均一に浸透しにくくなって、カチオン化反応が起こりにくくなる。
カチオン化反応時のパルプの固形分濃度を前記範囲にするためには、例えば、固形分濃度が高い(すなわち、水分が少ない)パルプを用いればよい。また、カチオン化剤およびアルカリ化合物の溶液に含まれる溶媒量を少なくすることが好ましい。
カチオン化工程における反応温度は、20〜200℃の範囲内であることが好ましく、40〜100℃の範囲内であることがより好ましい。反応温度が前記下限値以上であれば、充分な反応性が得られ、前記上限値以下であれば、反応を容易に制御できる。また、反応後のパルプの着色を抑える効果もある。
カチオン化反応の時間は、パルプやカチオン化剤の種類、パルプ固形分濃度、反応温度等によって異なるが、通常、0.5〜3時間の範囲内である。
カチオン化反応は密閉系で行ってもよいし、開放系で行っても構わない。また、反応中に溶媒を蒸散させ、反応終了時のパルプ絶乾質量1gあたりの溶媒物質量が反応開始時に比べて低くなっても構わない。
<洗浄工程>
洗浄工程は、カチオン化パルプを洗浄して、残留したカチオン化剤およびアルカリ化合物やパルプの分解物を除去する工程である。
具体的に、洗浄工程では、パルプを洗浄するために通常使用される各種洗浄機、例えば、フィルター洗浄機、ドラム洗浄機、ベルト洗浄機、ディフューザー洗浄機、フィルタープレス、スクリュープレスなどを用いることができる。これらのうちでも、洗浄後の脱水性に優れることから、フィルタープレス、スクリュープレスなどのプレス洗浄機が好ましい。
<酸添加工程>
酸添加工程は、洗浄工程において洗浄したカチオン化パルプに酸を添加して作用させる工程である。酸添加工程を有すると、微細化工程における解繊性がより高くなって、微細セルロース繊維の収率がより高くなる。
カチオン化パルプに添加する酸は無機酸であってもよいし、有機酸であってもよい。 無機酸の具体例としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ホウ酸等が挙げられる。
有機酸の具体例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリン酸、ステアリン酸、安息香酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、クエン酸等のカルボン酸、およびメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トシル酸等のスルホン酸等が挙げられる。 酸添加工程によってカチオン化パルプのpHを1〜9にすることが好ましく、3〜5にすることがより好ましい。pHを前記上限値以下にすると、酸添加による解繊性向上効果をさらに向上させることができる。また、pHを前記上限値以下にすると、酸の添加量が多くなり、セルロースに導入されたカチオン基に、酸を形成するアニオンが対イオンとして付加しやすくなる。セルロースに導入されたカチオン基に、酸を形成するアニオンが付加すると、セルロース同士の静電的な反発力がより大きくなり、その点からも、解繊性がより高くなると思われる。
一方、pHを前記下限値未満にすると、微細化に使用する装置を腐食させるおそれがある。
また、酸添加工程において、過剰の酸を加えた場合は、後述する微細化工程の前に、もう一度洗浄工程を含んでもよい。
<解繊処理工程>
前記で得られた化学的処理した微細繊維を、解繊処理工程で解繊処理することができる。解繊処理工程では、通常、解繊処理装置を用いて、繊維を解繊処理して、微細繊維含有スラリーを得るが、処理装置、処理方法は、特に限定されない。
解繊処理装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミルなどを使用できる。あるいは、解繊処理装置としては、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできる。解繊処理装置は、上記に限定されるものではない。
好ましい解繊処理方法としては、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミの心配が少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザーが挙げられるが、特に限定されない。
解繊処理の際には、繊維原料を水と有機溶媒を単独または組み合わせて希釈してスラリー状にすることが好ましいが、特に限定されない。分散媒としては、水の他に、極性有機溶剤を使用することができる。好ましい極性有機溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、若しくはジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられるが、特に限定されない。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、若しくはt−ブチルアルコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン若しくはメチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテル若しくはテトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。分散媒は1種であってもよいし、2種以上でもよい。また、分散媒中に繊維原料以外の固形分、例えば水素結合性のある尿素などを含んでも構わない。
カチオン化微細セルロース繊維を製造する場合の具体例について、さらに詳しく下記に記載する。微細化するカチオン化パルプは、通常、分散媒中に分散されて分散液とされる。分散液とした場合には、カチオン化パルプ分散液の固形分濃度を0.1〜20質量%にすることが好ましく、0.5〜10質量%にすることがより好ましい。カチオン化パルプ分散液の固形分濃度を前記下限値以上にすれば、微細化処理の効率が向上し、前記上限値以下にすれば、微細化処理装置内での閉塞を防止できる。
希釈するための分散媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合物が挙げられる。
微細化工程では、微細セルロース繊維の平均繊維幅が2〜1000nm、好ましくは2〜100nm、より好ましくは2〜50nm、さらに好ましくは2〜30nm、特に好ましくは2〜15nmになるように解繊して微細化する。 微細セルロース繊維の平均繊維幅を前記範囲にするためには、解繊時間、解繊のためにカチオン化パルプに付与する剪断力等を適宜調整すればよい。
<他の実施形態>
上記実施形態の製造方法では、洗浄工程、酸添加工程を有していたが、洗浄工程、酸添加工程は任意の工程であり、少なくとも一方を省略しても構わない。すなわち、カチオン化工程の後に微細化工程をおこなってもよいし、洗浄工程の後に微細化工程をおこなってもよいし、カチオン化工程の後に酸添加工程をおこなってもよい。
<カチオン基量>
本発明に用いるセルロース繊維におけるカチオン基の導入量は特に限定されない。セルロース繊維1g(乾燥重量)当たり、例えば0.1〜2.0mmol/gとすることができ、0.15〜1.8mmol/gが好ましい。このような量であれば、高塩濃度の地下層処理用流体に添加した場合においても凝集が抑制され、分散された状態を保つことができるからである。なお、カチオン基の導入量は、セルロース繊維に含まれる窒素量を、微量窒素分析装置(例えば、ダイアインスツルメンツ製 TN-110)を用いて測定することで定量することができる。この場合、単位質量あたりのカチオン基物質量(mmol/g)は、カチオン基を含有する微細セルロース繊維1gあたりの窒素含有量(g)をカチオン基に含まれる窒素原子数と窒素の原子量で除することで求められる。
<組成物の特性>
前記で得られたカチオン基を有する微細セルロース繊維を含有する地下層処理用組成物は、高い耐塩性を有し、優れた止水性を有する。
地下層処理用組成物が耐塩性を有するとは、塩を含んだ坑井処理流体と混合した場合に、流体の粘度を維持できることをいう。維持される泥水の粘度は、下記の方法で測定した際の測定値が、850mPa・s以上であることをいう。粘度は、好ましくは950mPa・s以上であり、より好ましくは20000mPa・s以上である。
粘度の測定:
繊維固形分が0・4質量%となるように水で希釈し、希釈液1000mLに対してベントナイト(例えば、クニゲルV1、クニミネ工業株式会社)を50g添加して十分に攪拌後、静置し、十分に水和した泥水を作液する。次いで、NaCl 15質量%、CaCl2 2質量%となるように添加し、さらに水酸化ナトリウムをpH12になるように添加し、繊維固形分が0・4質量%の、高塩濃度・アルカリ性の泥水得る。得られた液について、25℃にてB型粘度計(例えば、BLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T−LVT)を用いて、回転数3rpm(3分)で粘度を測定する。
地下層処理用組成物が高い止水性を有するとは、下記の止水性試験を行った際の濾水量が、30ml以下であることをいう。濾水量は、好ましくは20ml以下であり、より好ましくは10ml以下である。
止水性試験:
上述の、繊維固形分が0・4質量%の高塩濃度・アルカリ性の泥水200mLを、25℃にてAPI規格による濾過試験器を使用して、室温下で30分間、3kg/cm2Gの加圧を行ったときの濾水量を測定する。
なお、一般には、pHが8.0を超え、11.0以下である場合を弱アルカリ性ということがあるが、本発明に関し、アルカリ性というときは、pHが8.0を超える場合をいい、好ましくは、pH11.0を超える場合をいう。本発明に関し、高塩濃度というときは、塩類を(複数種類の塩類を含む場合は総量で)1質量%以上、より好ましくは3質量%以上含む場合をいう。
〔用途〕
<組成物としての用途>
本発明の、カチオン基を有する微細セルロース繊維を含有する地下層処理用組成物(単に、「本発明の微細セルロース繊維を含有する地下層処理用組成物」または「本発明の組成物」ということもある。)は、流体に添加することにより流体の特性を種々に改変しうるので、そのような特性を活かした種々の目的において使用することができる。本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物の使用目的(用途)は、地下層処理に関連する限り、特に限定されないが、例えば下記を挙げることができる。
本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物は、優れた耐塩性を発揮し、高い塩濃度の流体においても粘度が低下しないため、塩が大量に添加されるインヒビテッド泥水やフラクチャリング流体において、増粘剤として使用できる。
本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物はまた、優れた止水性を発揮しうるので、地下層処理用流体において逸泥防止剤、脱水調節剤として使用できる。
本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物は、チキソトロピー性を有することから、泥水に使用した際には、優れた坑壁形成能を発揮しうる。またセメンチング流体に使用した際には、セメント圧入を容易にすることができる。したがって、坑壁形成剤またはセメンチング調節剤として使用できる。
本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物はまた、地下層処理用流体において微細繊維のネットワーク間にオイルの液滴が捕捉されることで乳化機能を発現しうることから、乳化剤としての使用が期待できる。具体的には、エマルション系の地下層処理用流体への使用や、地下層処理用流体に配合されるエマルション物質の安定化に使用できる。本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物は、高温、例えば300℃までの環境下でも使用できる。微細セルロース繊維の分解温度は300℃であり、また、高い結晶性に起因し、融点やガラス転移点をもたないため、一般的な樹脂のようなヘタリがない。そのため、高深水の坑井でも使用できる。
本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物は、適切な分散媒に分散させて用いることができる。分散媒は微細セルロース繊維を分散することができるものであれば特に限定されず、水、有機溶剤、油(例えば、軽油、ミネラルオイル、合成油、食用油、非食用油)等を用いることができる。
本発明の本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物は、固形物、スラリー、乾燥物、濃縮(ゲル化も含む)物等の種々の形態とすることができる。使用される際には水系の分散媒に分散されることから、分散が容易なように、加工されていてもよい。濃縮する際、その方法は特に限定されないが、例えば、微細繊維を含有する液に濃縮剤を添加する方法、一般に用いられる乾燥機を用いる方法等が挙げられる。また、公知の方法、例えばWO2014/024876、WO2012/107642、およびWO2013/121086に記載された方法を用いることができる。
本発明の組成物に含有される微細セルロース繊維は、ブレーカーを用いて分解させることができる。分解させることで粘度のコントロールや地下層への残存を防ぐことができる。ブレーカーとしては、セルロース繊維を分解できる種々の成分が利用できる。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の酸化剤、塩酸や硫酸等の酸、およびセルラーゼ等の酵素が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の組成物に含有される微細セルロース繊維は、粘性効果等の向上を狙って、架橋させることができる。架橋剤としては、セルロース繊維を架橋できる種々の成分が利用できる。例えば、ホウ酸塩、水酸化カリウム、硝酸塩、ジルコニウム、チタン等が挙げられるが、これらに限定されない。
<流体>
本発明の組成物は、上述のように、増粘、逸泥防止、脱水調節、乳化、坑壁形成、セメンチング調節のために使用でき、また温度、酸、アルカリ、塩に対して耐性があるため、地下層処理、例えば、坑井掘削において使用される各種の流体に添加して使用することができる。このような流体には、フラクチャリング流体、泥水、セメンチング流体、ウェルコントロール流体(well control fluid)、ウェルキル流体(well kill fluid)、酸フラクチャリング流体(acid fracturing fluid)、酸分流流体(acid diverting fluid)、刺激流体(stimulation fluid)、サンドコントロール流体(sand control fluid)、仕上げ流体(completion fluid)、ウェルボーン石化流体(wellbore consolidation fluid)、レメディエーション処理流体(remediation treatment fluid)、スペーサー流体(spacer fluid)、掘削流体(drilling fluid)、フラクチャリングパッキング流体(frac-packing fluid)、水適合流体(water conformance fluid)、砂利パッキング流体(gravel packing fluid)等が含まれる。
本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物を流体に含有させて用いる場合、含有量は、意図した効果が発揮される限り特に限定されない。典型的には、流体は、セルロース繊維を固形分濃度で(セルロース繊維の総量として)、0.005〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%で含有しうる。より好ましくは、耐塩性、止水性を十分に発揮できるとの観点からは、流体中のセルロース繊維の固形分濃度は、0.05〜2質量%である。
<流体中の他の成分>
本発明により提供される流体は、本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物のほか、従来の地下層処理のための流体に添加される各種の成分を含有し得る。添加される成分の例として、鉱物、加重材、粘度調整剤、分散剤、凝集剤、逸泥防止剤、脱水調節剤、pH制御剤、摩擦低減剤、水和膨張制御剤、乳化剤、界面活性剤、殺生物剤、消泡剤、スケール防止剤、腐食防止剤、温度安定剤、樹脂コート剤、亀裂支持材、塩およびプロパントを挙げることができるが、これらに限定されない。また、添加される成分は、一種のみならず、二種以上であってもよい。
カチオン化微細セルロース繊維はアニオン性の添加剤と共存することにより、お互いに結合し、粘度のコントロールや止水性の向上が期待できる。アニオン性の添加剤として、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、グァーガムなどの増粘剤の他、アニオン性の鉱物、アニオン性の界面活性剤などを挙げることができるが、これらに限定されない。
アニオン性の鉱物が、カチオン性の微細セルロース繊維と共存することにより、お互いに結合し、粘度の向上や泥壁膜の強度向上などが期待できる。アニオン性の鉱物として、ベントナイト(モンモリロナイト)、カオリナイト、ハロイサイト、メタハロイサイト、イライト、バーミキュライト、モンモリロナイト、クロライト、アロフェン、腐植を挙げることができるが、これらに限定されない。
加重材は流体の比重を高め、裸坑壁の安定やガス、水等の噴出を防止するために用いられる。加重材としてはバライトやヘマタイト等の鉱物を使用できるが、これらに限定されない。
粘度調整剤はゲル化剤、増粘剤、調泥剤とも呼ばれ、流体の粘度を最適化するために用いられる。このための成分として、ベントナイト、アタバルジャイト、セピオライト、合成スクメタイト等の鉱物類の他、水溶性である天然および合成のポリマーが使用される。水溶性ポリマーの好ましい例の一つは、天然多糖由来のものである。粘度調整剤の具体例としては、天然物または天然物由来のものとして、グァーガムおよびグァーガム誘導体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、グリオキザール付加ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびカルボキシルエチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体、アラビアガム、アルギン酸およびそのエステル類、アルギン酸塩、エレミ樹脂、ガティガム、カラギナン、カラヤガム、カロブビーンガム、増粘多糖類、タマリンドガム、トラガントガム、デンプングリコール酸塩、デンプン酸塩、ファーセレラン、ブドウ糖、ブドウ糖多糖類、ショ糖、キサンタンガム等が挙げられるが、これらに限定されない。合成高分子としては、加水分解ポリアクリルアミド(PHPAポリマー)、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート系ポリマー等が挙げられるが、これらに限定されない。
逸泥防止剤は、地下層処理用流体の流出を防止するために用いられる。逸泥防止剤として、おがくず、わら、セロファン、セメント、パルプ繊維、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリアリレート等を使用できるが、これらに限定されない。
脱水調節剤は脱水の減少をはかり、坑壁の保護を強化するために使用される。脱水調節剤としては、スルホン化アスファルト誘導体、デンプン誘導体、ポリアリレート、ポリアニオニックセルロース系ポリマー等が使用されるが、これらに限定されない。
乳化剤は、一方の液体中にそれとは通常混合しにくい他方の液体を分散させるために用いられる。乳化剤としては、グリセリンエステル、サポニン、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、カプリン酸エチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、オクタン酸セチル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、イソノナン酸オクチル、イソノナン酸ドデシル、ステアリン酸グリセリン、パルミチン酸グリセリン、トリ(カプリル酸カプリン酸)グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、ステアリン酸プロピレングリコール、オレイン酸プロピレングリコール、ラウリン酸プロピレングリコール、ステアリン酸グリコール、ジオレイン酸グリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリコール、ラウリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ジメチルコンコポリオールが挙げられるが、これらに限定されない。
プロパントは、0.5mm程度の固形物であり、フラクチャリング等の際に割れ目に押し込まれ、支持体となって割れ目を閉じないようにするために用いられる。プロパントの例として、砂、ガラスビーズ、セラミック粒子および樹脂被覆した砂等が挙げられるが、これらに限定されない。
(泥水)
好ましい実施態様の一つは、本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物を含む、坑井掘削の際に使用される泥水である。泥水におけるセルロース繊維の含有量は、意図した効果が発揮される限り特に限定されない。泥水は、セルロース繊維を固形分濃度で(セルロース繊維の総量として)、例えば0.004〜40質量%含有し、0.04〜4質量%含有することが好ましく、0.08〜2質量%含有することがより好ましい。
坑井掘削の際に使用される泥水は、一般に、堀屑を坑底から除去し、地上へ運搬するために使用される。また、泥水は、坑井内の圧力を制御して意図しない流体の坑井内への流入や地上への噴出を防止し、また坑壁を保護して地下層の崩壊を防ぎ、さらにドリルストリングと坑壁との摩擦を減らし、坑井内機器を冷却する役割も有する。堀屑やガスを運搬することにより、地下の情報を提供する役割も有する。泥水には、ベントナイト泥水、リグノスルホネート泥水、KClポリマー泥水、油系泥水等があるが、本実施態様により各種の泥水が提供される。
一般に、ベントナイト泥水は安価で取扱いが容易であるが、塩分やセメントに弱く、ゲル化しやすい。これらの決定を補うため、従来、カルボキシメチルセルロース等が添加されることがあるが、本発明により、より高い性能のベントナイト泥水が提供されうる。
本実施態様により、本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物を含む、分散系泥水が提供される。このような泥水は、分散剤して従来のリグノスルホネート(リグニンスルホン酸ということもある。)やリグナイト(フミン酸誘導体)、pH調整剤(例えば、水酸化ナトリウム)、加重材を含有しうる。本実施態様により提供される分散系の泥水は、泥岩の保護機能、粘性や比重のコントロールの容易性、温度(一般のリグノスルホネート泥水の使用温度は約175℃、リグナイト泥水の使用温度は約190℃といわれる。)、塩、セメント等による耐力が、従来のリグノスルホネート泥水に比較して、より高められていることが期待できる。
本実施態様により提供される泥水は、KCl泥水としても構成できる。Kイオンは粘土類の膨潤や分散を抑制する作用に非常に優れていることが知られている。その一方で凝集力が強すぎるために、従来はKイオンを大量に含んだ液中でも増粘性や保護コロイド性を発揮しうる、キタンサンガムや部分加水分解ポリアクリルアミド(PHPA)ポリマーと組み合わせて用いられてきた。本実施態様においては、キタンサンガムやPHPAと共にまたはそれらに代えて、本発明により提供される微細セルロース繊維を含有する組成物を用いることができる。本実施態様により提供されるKCl泥水は、泥岩の保護機能、粘性や比重のコントロールの容易性、塩やセメント等による耐力が、従来のKCl−ポリマー泥水と比較して、より高められていると期待できる。
本実施態様により提供される泥水は、油系泥水としても構成できる。油系泥水には、油分95%以上のオイルマッド、さらに15〜35%の水および乳化剤を用いて調製した油中水型の乳化物であるインバートエマルジョンオイルマッドが含まれる。油系泥水は、一般に、水系の泥水に比較して、泥岩層の水和・膨潤の抑制、高温安定性、潤滑性、油層への水の浸入による生産性障害の防止、金属腐食を起こしにくい、腐敗による劣化が少ない等の利点がある。本実施態様により、これらの特性を生かしつつ、さらに改良された油系泥水が提供されると期待できる。
(フラクチャリング流体)
好ましい実施態様の一つは、本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物を含む、水圧破砕において使用されるフラクチャリング流体である。フラクチャリング流体は地層の崩壊を防ぐため、高濃度の塩が添加されている。さらにグァーガム等の増粘剤の架橋反応を促進するため、高アルカリ性に調整されることがある。本発明の微細セルロース繊維は耐塩性、耐アルカリ性に優れるため、フラクチャリング流体には好適である。フラクチャリング流体におけるセルロース繊維の含有量は、意図した効果が発揮される限り特に限定されない。フラクチャリング流体は、セルロース繊維を固形分濃度で(セルロース繊維の総量として)、例えば0.002〜20質量%含有し、0.02〜2質量%含有することが好ましく、0.04〜1質量%含有することがより好ましい。
フラクチャリング流体は、一般に、溶剤または分散媒として、水や有機溶剤を90〜95質量%程度含有し、プロパント(支持体)を5〜9質量%程度含有する。さらに場合により、ゲル化剤、スケール防止剤、岩石等を溶解するための酸、摩擦低減剤等の種々の添加剤を0.5〜1質量%程度含有する。これらの成分および添加剤は、本実施態様により提供されるフラクチャリング流体も同様の範囲で含有することができる。
微細セルロース繊維は、フラクチャリング流体において、プロパントの安定分散に加え、架橋反応による更なる粘度の向上や、使用後に分解して流体の粘度を低下させたりすることで柔軟な粘度コントロールを行うことができる。また、フラクチャリング流体において分解性の逸泥防止剤としての利用も可能である。逸泥を防止することで、坑内で圧力をかかりやすくできるため、より良い亀裂を形成させることができる。通常の逸泥防止剤をフラクチャリング流体に添加すると、ガスの産出流路を塞いでしまう恐れがあるが、微細セルロース繊維からなる逸泥防止剤は、使用後に分解すれば、産出流路を塞ぐことがない。
(セメンチング流体)
好ましい実施態様の一つは、本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物を含む、セメンチング流体である。セメンチング流体におけるセルロース繊維の含有量は、意図した効果が発揮される限り特に限定されない。セメンチング流体は、セルロース繊維を固形分濃度で(セルロース繊維の総量として)、例えば0.001〜40質量%含有し、0.01〜20質量%含有することが好ましく、0.05〜5質量%含有することがより好ましい。
セメンチング流体には、ケイ酸三カルシウム等の一般用セメントや高温度の坑井に使用するクラスGセメント等の高温度耐久性セメントを使用することができる。セメンチング時間の最適化のために、セメント速硬剤やセメント遅硬剤等の固結剤を添加剤として使用することができる。また、セメント分散剤、流動性改善剤、低比重、低脱水セメント添加剤等も使用することができる。その他には、脱水調節剤、強度安定剤、加重材、置換効率の改善や坑内洗浄のためのセメントスペーサー添加剤、坑壁洗浄を行うケミカルウォッシュ添加剤、セメントスラリー消泡剤、スケール防止剤、逸泥防止剤、アルミン酸カルシウム、ポリ燐酸ナトリウム、フライアッシュ、発泡剤、泡安定剤、及び泡を形成するに十分な量のガス等が添加されうる。セメンチング流体が硬化したものに弾力性を与えるためには、流体は、必要に応じて不活性で粉砕されたゴムの粒子を含んでいてもよい。
微細セルロース繊維は水中で三次元ネットワークを形成し、微細な物質であっても安定分散させることができる。例えば、セメンチング流体では、10μm以下のセメント粒子が存在している。微細セルロース繊維は10μm以下の粒子であっても安定分散させることができる。また、疎水性の粒子も水中に安定分散させることができ、例えば、疎水処理された顔料粒子、鉱物等も安定分散させることができる。また、微細セルロース繊維は親水性が高いため、セメンチング流体の水分離を抑えることができる。耐塩性も高いため、カルシウム分を多く含むセメンチング流体との相性も良好である。
また、地熱坑井のような二酸化炭素を含む高温井戸では、塩水を含む二酸化炭素の存在下で劣化しないセメンチング流体が望まれる。また、地熱坑井やそれに類する井戸で用いられるセメント組成物は軽量、例えば約9.5〜約14ポンド/ガロン(約1.14〜約1.68g/cm3)の範囲の密度であることが好ましい。本実施態様により、提供されるセメンチング流体を、このような密度範囲に構成することもできる。
〔地下層の処理方法、石油資源の生産方法〕
本発明はまた、本発明の組成物または上述の流体を用いた、地下層の処理方法を提供する。地下層(地層ということもある。)には、海底の地下層も含まれる。
地下層の処理には、種々の目的で使用する坑井の掘削が含まれる。坑井には、試掘井(exploratory well またはwildcat)、評価井(appraisal well)、探鉱井(exploratory wellまたはexploration well)、探掘井(delineation well)、開発井(development well)、生産井、圧入井(injection well)、観測井(observation well)、サービス井(service well)等が含まれるが、これらに限定されない。
また、地下層の処理には、下記のものが含まれる。
・セメンチング:主として坑井を掘った後、ケーシングと坑壁との隙間にセメントを充填してケーシングを固定するために行われる。
・坑井調査、検層作業(well logging): これには、泥水検層が含まれる。泥水検層は、循環している掘削泥水中の、ガスや掘り屑を観察、分析するものであり、それにより油ガス層を早期に察知し、また掘削中の岩相を知ることができる。
・石油資源の回収:これには、水攻法(water flooding)、ケミカル攻法(chemical flooding)が含まれる。
・坑井刺激:坑壁や坑井周辺の貯留層の性状を改善し、生産性の向上を図ること等を目的に行われる。これには、塩酸等を用いて洗浄する、酸処理(acidizing)、貯留層に亀裂を生じさせて流体の流路を確保する水圧破砕(hydraulic fracturing、hydrofracturing、fracking)が含まれる。さらに、砂層からの生産の場合の、砂の坑井への流入や砂を含む流体がチュービングや設備に被害を与えることを防止するための、砂対策(sand control)、樹脂を含む流体を地下層に圧入して砂岩を固める樹脂強化(plastic consolidation)等が含まれる。
・水系泥水、油系泥水、ケミカル・フルイド(chemical fluid)またはブライン(brine))を用いた坑井仕上げ。
・浸透率の低いタイトな地下層に通り道(割れ目、フラクチャ)を作るための、高圧のフラクチャリング流体を使用したフラクチャリング。
・坑井改修(well workover)。
・廃坑処理。
本発明はまた、本発明により得られる組成物または流体を用いた、石油資源(petroleum) の生産方法を提供する。石油資源とは、地下に存在する、固体、液体、気体のすべての鉱物性炭化水素を指す。石油資源の典型的な例は、一般的な区分である液体の石油(oil)と気体の天然ガスである。また石油資源には、在来型の石油(oil)、天然ガスのほか、タイトサンドガス、シェールオイル、タイトオイル、重質油、超重質油、シェールガス、炭層ガス、ビチュメン、ヘビーオイル、オイルサンド、オイルシェール、メタンハイドレートが含まれる。
以下の実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(製造例1)
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を抄き上げたシート(固形分濃度90質量%)を絶乾質量で4.0g相当分取した。ハンドミキサー(大阪ケミカル製、ラボミルサーPLUS)を用い、回転数20,000rpmで15秒処理して綿状のフラッフィングパルプ(固形分濃度90質量%)にした。
次いで、カチオン化剤(カチオマスターG、四日市合成株式会社製、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、純分73.1質量%、含水率20.2質量%)0.4gと1.5Nの水酸化ナトリウム水溶液2.8gとを混合した。得られたカチオン化剤混合液を、スプレーを用いて、前記フラッフィングパルプに添加し、ポリ塩化ビニリデン製の袋の中に入れ、その袋を手で揉むことにより、混合液をパルプに均一に浸透させて、反応用試料を調製した。この反応用試料のpHは25℃で13であった。
その後、袋内の空気を除去し、80℃で1時間反応させて、カチオン化パルプを得た。 得られたカチオン化パルプに400mlのイオン交換水を加え、攪拌しながら洗浄した後、脱水した。その洗浄・脱水の処理を4回繰り返し、4回目の脱水の後、洗浄したカチオン化パルプに0.1N塩酸とイオン交換水を添加して、pH4、固形分濃度0.5質量%のカチオン化パルプ分散液を得た。 次いで、そのカチオン化パルプ分散液を、高速回転解繊処理装置(エムテクニック社製、クレアミックス−2.2S)を用いて、21500回転/分の条件で30分間解繊処理して、カチオン化微細セルロース繊維1を得た。
(製造例2)
カチオン化剤混合液を、カチオン化剤0.6gと1.3Nの水酸化ナトリウム水溶液3.2gとを混合して得たものに変更した以外は製造例1と同様にして、カチオン化微細セルロース繊維2を得た。
(製造例3)
カチオン化剤混合液を、カチオン化剤4.0gと1.3Nの水酸化ナトリウム水溶液3.2gとを混合して得たものに変更した以外は製造例1と同様にして、カチオン化微細セルロース繊維3を得た。
(製造例4)
カチオン化剤混合液を、カチオン化剤6.0gと1.3Nの水酸化ナトリウム水溶液3.2gとを混合して得たものに変更した以外は製造例1と同様にして、カチオン化微細セルロース繊維4を得た。
(製造例5)
カチオン化剤混合液を、カチオン化剤15.0gと1.3Nの水酸化ナトリウム水溶液15.0gとを混合して得たものに変更した以外は製造例1と同様にして、カチオン化微細セルロース繊維5を得た。
(実験例1)
製造例1で製造したカチオン化微細セルロース繊維1を含有する懸濁液を、繊維固形分濃度が0.4質量%となるように希釈した。希釈液1000mLに対してベントナイト(クニゲルV1、クニミネ工業株式会社)を50g添加して3000rpmで60分間攪拌後、24時間静置して十分に水和した泥水を作液した。その後、NaCl濃度が、15質量%、CaCl2濃度が、2質量%となるように添加し、水酸化ナトリウムをpH12になるように添加して、下記の方法(粘度の測定)で粘度を測定した。また、得られた泥水を用いて下記の方法(止水性試験)で濾水量を測定した。結果を表1に示す。
(実験例2)
実験例1において、カチオン化微細セルロース繊維1の代わりに製造例2で製造したカチオン化微細セルロース繊維2を用いた以外は全て実験例1と同様の方法で試験した。
(実験例3)
実験例1において、カチオン化微細セルロース繊維1の代わりに製造例3で製造したカチオン化微細セルロース繊維3を用いた以外は全て実験例1と同様の方法で試験した。
(実験例4)
実験例1において、カチオン化微細セルロース繊維1の代わりに製造例4で製造したカチオン化微細セルロース繊維4を用いた以外は全て実験例1と同様の方法で試験した。
(実験例5)
実験例1において、カチオン化微細セルロース繊維1の代わりに製造例5で製造したカチオン化微細セルロース繊維5を用いた以外は全て実験例1と同様の方法で試験した。
(実験例6)
微細セルロース繊維の代わりにカルボキシメチルセルロース(500.0〜900.0 mPa・s(2 質量%、 溶媒:水、25 ℃)、東京化成工業株式会社)を添加して0.4質量%の希釈液を用いた以外は実験例1と同様の方法で試験した。
(試験方法)
<カチオン基量の測定>
カチオン基の含有量は、微細セルロース繊維に含まれる窒素量を、微量窒素分析装置(例えば、ダイアインスツルメンツ製 TN-110)を用いて測定することで定量することができる。この場合、単位質量あたりのカチオン基物質量(mmol/g)は、カチオン基を含有する微細セルロース繊維1gあたりの窒素含有量(g)をカチオン基に含まれる窒素原子数と窒素の原子量で除することで求められる。
<粘度の測定>
得られた泥水について、25℃にてB型粘度計(BLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T−LVT)を用いて回転数3rpm(3分)で粘度を測定した。
<止水性試験>
得られた泥水200mLを25℃にてAPI規格による濾過試験器を使用して、室温下30分間、3kg/cm2Gの加圧を行ったときの濾水量を測定した。すなわち濾水量が少ないほど、止水性能が良好であるといえる。
結果を下表に示した。
Figure 2016011378
表1に示すように、カチオン化微細セルロース繊維2〜4(実験例2〜4)を高塩濃度の泥水と混合した場合、高い粘度を維持し、かつ高い止水性を有することが確認できた。
本発明により、地下層処理で用いる塩濃度の高い泥水に微細セルロース繊維が配合される。本発明は、高い粘度が維持され、高い止水性を発揮することが期待される、地下層の処理のために特に有用である。

Claims (16)

  1. カチオン基を0.15〜1.8mmol/g有する微細セルロース繊維を含有する、地下層処理用組成物。
  2. 微細セルロース繊維の繊維幅が200nm以下である、請求項1に記載の組成物。
  3. アルカリ性の地下層処理用流体に添加して使用するための、請求項1または2に記載の組成物。
  4. 耐塩性を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 止水性を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 泥水、フラクチャリング流体、セメンチング流体、 ウェルコントロール流体(well control fluid)、ウェルキル流体(well kill fluid)、酸フラクチャリング流体(acid fracturing fluid)、酸分流流体(acid diverting fluid)、刺激流体(stimulation fluid)、サンドコントロール流体(sand control fluid)、仕上げ流体(completion fluid)、ウェルボーン石化流体(wellbore consolidation fluid)、レメディエーション処理流体(remediation treatment fluid)、スペーサー流体(spacer fluid)、掘削流体(drilling fluid)、フラクチャリングパッキング流体(frac-packing fluid)、水適合流体(water conformance fluid)、または砂利パッキング流体(gravel packing fluid)に添加して使用するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を含み、セルロース繊維の固形分濃度が0.05〜2質量%である、地下層処理用流体。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物、ならびに加重材、粘度調整剤、分散剤、凝集剤、逸泥防止剤、pH制御剤、摩擦低減剤、水和膨張制御剤、乳化剤、界面活性剤、殺生物剤、消泡剤、スケール防止剤、腐食防止剤、温度安定剤、樹脂コート剤、亀裂支持材、塩、およびプロパントからなる群から選択されるいずれかを含む、地下層処理用流体。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物、およびアニオン性の添加剤を含む、地下層処理用流体。
  10. アニオン性の添加剤が鉱物である、請求項9に記載の地下層処理用流体。
  11. フラクチャリング流体、泥水またはセメンチング流体である、請求項7〜10のいずれか1項に記載の流体。
  12. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物、または請求項7〜11のいずれか1項に記載の流体を用いる、地下層の処理方法。
  13. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物、または請求項7〜11のいずれか1項に記載の流体を用いる、石油資源の生産方法。
  14. カチオン基を0.15〜1.8mmol/g有する微細セルロース繊維の水分散液を流体に添加する工程を含む、地下層処理用流体の製造方法。
  15. 微細セルロース繊維の分散液を濃縮、または乾燥させ、
    得られた濃縮物または乾燥物を水系溶媒に再分散させて再分散液を得る
    工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
  16. 濃縮が、濃縮剤および/または乾燥機により実施される、請求項15に記載の製造方法。
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