JP2016011231A - ガラス基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
なお、熱処理の上記開始時及び上記終了前の熱履歴の影響を抑えてガラス基板の上記歪の発生を抑制するために、雰囲気を最高温度に維持する時間を長時間にして、ガラス基板を熱処理することも考えられるが、熱処理に多大の時間を要し、ガラス基板の生産効率の点から好ましくない。
前記積層体作製工程で作製されたガラス基板の積層体を、前記ガラス基板の面内方向外側から加熱することで、前記複数のガラス基板の熱収縮率を低減させる熱処理工程と、
前記熱処理工程の処理時間に基づいて変化する前記ガラス基板の熱収縮率のばらつきによって生じる歪が、所定の閾値以上となる前記ガラス基板の縁を含む縁領域の前記縁からの幅を定め、定めた前記幅の縁領域を前記ガラス基板から切り落とす除去工程と、を備える、ことを特徴とするガラス基板の製造方法である。
図1は、本実施形態のガラス基板の製造方法の流れを示すフローチャートである。製造されるガラス基板は、特に制限されないが、例えば縦寸法及び横寸法のそれぞれが500mm〜3500mmであることが好ましい。ガラス基板の厚さは、0.1〜1.1(mm)の極めて薄い矩形形状の板であることが好ましい。
次に、成形されたシートガラスが所定の長さの素板であるガラス基板に順次採板される(ステップS2)。採板により順次得られる複数のガラス基板をそれぞれシート体の間に挟み、ガラス基板をガラス基板の厚さ方向に積層した構成のガラス基板の積層体を作製する(積層体作製工程:ステップS3)。次に、このガラス基板の積層体に対して作製されたガラス基板の積層体を、ガラス基板の面内方向外側から加熱する熱処理を行なう(熱処理工程:ステップS4)。この後、ガラス基板の縁領域をガラス基板から除去する(除去工程:ステップS5)。ステップS4〜S5はオフラインで行なわれる。
ステップS3,S4,S5各工程の詳細については後述する。
ガラス基板の歪点は、高精細ディスプレイ用ガラス基板とするために、600℃〜760℃であることが好ましい。例えば、歪点は、661℃である。
SiO2 55〜80モル%、
Al2O3 8〜20モル%、
B2O3 0〜12モル%、
RO 0〜17モル%(ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量)。
ROのうち、MgOが0〜10モル%、CaOが0〜10モル%、SrOが0〜10%、BaOが0〜10%であることが好ましい。
また、上記ガラス組成のガラス基板におけるアルカリ金属酸化物の含有率は、0モル%以上0.4モル%以下であってもよい。
また、ガラス中で価数変動する金属の酸化物(酸化スズ、酸化鉄)を合計で0.05〜1.5モル%含み、As2O3、Sb2O3及びPbOを実質的に含まないということは必須ではなく任意である。
図2は、ステップS3の積層体積層工程で用いる、ガラス基板11の積層体10(以下、積層体10という)を載せるパレット20を示す側面図である。ここで、図2の左側をパレット20の前側、図2の右側をパレット20の後側とする。パレット20には、積層体10が積層方向をほぼ前後方向として載置される。ここで、積層体10の積層方向は前後方向と完全に一致している必要はない。例えば、図2に示すように、ガラス基板11を斜めに立てかける場合、積層方向と前後方向とのなす角はガラス基板11の上下方向とのなす角となる。
基台部21、載置部22および背面板23は、例えば鋼鉄等の金属からなり、溶接等により一体に形成されている。
基台21は略長方形の板状であり、端面にフォークリフトの爪を挿入するための開口21aが設けられている。
載置部22は基台21の上部に固定されており、載置部22の上部にガラス基板の積層体10が載せられる。ここで、載置部22の上面は完全に水平である必要はない。例えば、図2に示すように、ガラス基板11を斜めに立てかける場合、ガラス基板11の立てかけ角度に応じて載置部22の上面を傾斜させておいてもよい。
背面板23は略長方形の板状であり、基台21の上部において、載置部22の後端に載置部22とほぼ垂直に固定されている。背面板23は載置部22の上部に載せられる積層体10の積層方向の後端部を支持する。ここで、背面板23は完全に垂直である必要はない。例えば、図2に示すように、ガラス基板11を斜めに立てかける場合、ガラス基板11の立てかけ角度に応じて背面板23を傾斜させておいてもよい。
シート体12は積層されるガラス基板11同士の密着を防ぐ役割を果たす。シート体12には、積層体10を熱処理する際の温度に耐えうる耐熱性を有する材料を用いることができる。シート体12は、ガラス基板11よりも高い熱伝導率を有することが、後述する熱処理工程において、複数のガラス基板11の熱処理の程度を揃えることができる点から好ましい。このようなシート体12の材料は、例えば、カーボングラファイト、アルミナ繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、及び、多孔質セラミックスから選ばれた一種、又は、それらの組合せからなることが好ましい。
シート体12の厚さは、ガラス基板11の面内方向の熱伝導率を高めるために厚いことが好ましい。一方、積層体10の体積を低減するためにシート体12の厚さは薄いことが好ましい。このため、シート体12の厚さは、0.02mm〜3mm程度であることが好ましい。シート体12の面積は、ガラス基板11同士の密着を防ぐ役割から、ガラス基板11と同程度またはそれ以上であることが好ましい。
次に、ステップS4の熱処理について説明する。
積層体作製工程で作製された積層体10に対して、製造ラインから外れたオフラインで熱処理が行われる。この熱処理では、ガラス基板11の積層体を所定の温度の雰囲気下に所定時間放置する。これにより、ガラス基板11の熱収縮率を低減させる。
ガラス基板11の積層体10が晒される高温の雰囲気は、特に制限されず、酸素含率が5〜50%である雰囲気であってもよく、例えば空気からなる大気雰囲気であってもよい。
なお、上述の熱処理では、熱処理によってガラス基板11は熱収縮するため、これ以降においてガラス基板に熱を加えても熱収縮は起こり難く、熱収縮率は小さくなる。しかし、上述したように、ガラス基板11の縁領域と中央領域では、熱処理における熱履歴が異なることから、熱処理によって生じる熱収縮の程度は異なる(熱収縮率はばらつく)。このため、上述したように、ガラス基板11には熱収縮率の低減のために行う熱処理によって生じる熱収縮の程度の差異(熱収縮率のばらつき)に起因してガラス基板11の縁領域に歪が生じる。そこで、本実施形態は、縁領域を除去するために、ステップS5の除去工程を備える。
除去工程は、ステップS4の熱処理工程の処理時間に基づいて変化するガラス基板11の歪が、所定の閾値以上となるガラス基板11の縁領域の縁からの幅を定め、定めた幅の縁領域をガラス基板11から切り落とす工程である。縁領域は、ガラス基板11の四辺の縁を含んだ、縁に沿った領域をいう。ここで、処理時間とは、熱処理の開始から終了までの全処理時間の他に、ガラス基板11を囲む雰囲気を加熱して昇温する昇温時間、雰囲気を一定の最高温度の状態に維持する最高温度維持時間、雰囲気を降温する降温時間等を含む。ここで、所定の閾値は、4 kgf/cm2〜9kgf/cm2の範囲内の値であることが好ましく、より好ましくは、7kgf/cm2〜9kgf/cm2の範囲内の値である。
図3では、ガラス基板11の主表面の中心(図心)に位置する地点Aと、一辺の中央部分から中心点Aに向かって縁から50mm内側に入った地点Bと、一辺の中央部分から中心点Aに向かって縁から20mm内側に入った地点Cにおける熱処理の処理時間に対する歪の変化を示している。処理時間については、上述した最高温度維持時間を用いている。
図3によると、地点A〜Cのいずれも、処理時間が増えるにつれて歪が低下している。しかし、閾値以上の歪を有する地点は、処理時間によって異なる。
処理時間T2では、地点Cの歪は閾値以上であるが、地点A,Bの歪は閾値未満である。このため、地点Bを含み、縁から例えば45〜49mmの範囲に縁領域の幅を定め、この定めた幅の縁領域を除去する。
処理時間T3では、地点A〜Cの歪みは閾値未満であるので、縁から例えば15〜19mmの範囲に縁領域の幅を定め、この定めた幅の縁領域を除去する。
図3に示す例は、地点B,Cの2地点を用いて切り落とす縁領域の幅を定める例であるが、勿論、縁からの距離が異なる3つ以上の地点における処理時間と歪の対応関係の情報を用いることで、切り落とす縁領域の幅をより細かく定めることができる。
また、図3では、処理時間として、雰囲気の温度の最高温度維持時間を例としてあげて説明したが、全処理時間の他に、昇温時間、降温時間等と歪の対応関係を情報として用いて、この対応関係の情報を予め取得しておき、この情報を用いて、切り落とす縁領域の幅を定めることができる。さらに、処理時間に代えて、雰囲気を加熱あるいは冷却するときの加熱速度の逆数や冷却速度の逆数と歪との対応関係を情報として用いて、切り落とす縁領域の幅を定めることができる。また、処理時間に代えて、ガラス基板が雰囲気から受ける熱の積算量と歪との対応関係を予め情報として取得しておき、この情報を用いて、切り落とす縁領域の幅を定めることができる。
図3に示す処理時間が長いほど、切り落とす縁領域の幅は小さくすることができるので、ガラス基板11から必要以上に大きな縁領域を切り落とすことを防止でき、生産の歩留まりを高めることができる。
以下に示すガラス組成を有するガラス基板をオーバフローダウンドロー法により複数作製した。ガラス基板の歪点は660℃であった。
SiO2 67.0モル%、
Al2O3 10.6モル%、
B2O3 11.0モル%、
RO 11.4モル%(ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量)。
実施例及び従来例で作製されたガラス基板の熱収縮率と歪を計測した。
熱処理前に所定のサイズの長方形にガラス基板を切りだし、長辺両端部にケガキ線を入れ、短辺中央部で半分に切断し、2つのガラスサンプルを得る。このうちの一方のガラスサンプルを、熱処理(昇温速度が10℃/分、450℃で1時間放置)する。熱処理をしない他方のガラスサンプルの長さを計測する。さらに、熱処理したガラスサンプルと未処理のガラスサンプルとをつき合わせてケガキ線のずれ量を、レーザ顕微鏡等で測定して、ガラスサンプルの長さの差分を求めることでサンプルの熱収縮量を求めることができる。この熱収縮量である差分と、熱処理前のガラスサンプルの長さを用いて、以下の式により熱収縮率が求められる。このガラスサンプルの熱収縮率をガラス基板の熱収縮率とした。
熱収縮率(ppm)=(差分)/(熱処理前のガラスサンプルの長さ)×106
ガラス基板は、歪によってガラス基板の屈折率が変化することから、ガラス基板の複屈折率に起因するリターデーション値を測定した。リターデーション値が大きいほど、歪が大きいことを表す。リターデーション値の測定には、ユニオプト社製の複屈折率測定器ABR−10Aを使用した。
また、実施例及び従来例のガラス基板のリターデーション値については、実施例のガラス基板の最大測定値は2kgf/cm2であり、従来例のガラス基板の最大測定値は15kgf/cm2であった。これより、実施例のガラス基板は歪みが小さいことがわかる。
これより、本実施形態のガラス基板の製造方法の効果は明らかである。
11 ガラス基板
12 シート体
15a、15b 断熱板
20 パレット
21 基台部
22 載置部
23 背面板
Claims (5)
- 複数のガラス基板をそれぞれシート体の間に挟み、前記ガラス基板を前記ガラス基板の厚さ方向に積層した構成のガラス基板の積層体を作製する積層体作製工程と、
前記積層体作製工程で作製されたガラス基板の積層体を、前記ガラス基板の面内方向外側から加熱することで、前記複数のガラス基板の熱収縮率を低減させる熱処理工程と、
前記熱処理工程の処理時間に基づいて変化する前記ガラス基板の熱収縮率のばらつきによって生じる歪が、所定の閾値以上となる前記ガラス基板の縁を含む縁領域の前記縁からの幅を定め、定めた前記幅の縁領域を前記ガラス基板から切り落とす除去工程と、を備える、
ことを特徴とするガラス基板の製造方法。 - 前記処理時間が長いほど前記幅は小さい、請求項1に記載のガラス基板の製造方法。
- 前記積層体の積層方向の両端には、前記ガラス基板及び前記シート体に比べて熱伝導率の低い断熱板が配されており、
前記熱処理工程では、前記積層体を囲む雰囲気を加熱あるいは冷却し、前記積層体の各ガラス基板を、各ガラス基板の周辺から昇温あるいは降温させ、
前記断熱板の間に位置する各ガラス基板の、前記除去工程における前記幅はお互いに同じである、請求項1または2に記載のガラス基板の製造方法。 - 前記シート体は、カーボングラファイト、アルミナ繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、及び、多孔質セラミックスから選ばれた一種、又は、それらの組合せからなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
- 前記所定の閾値は、4kgf/cm2〜9 kgf/cm2である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
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