JP2016009679A - 全固体リチウム二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】正極層の導電助剤として繊維状炭素を利用しても、正極層の抵抗増大を抑制できる全固体リチウム二次電池の提供。【解決手段】正極層4と、リチウムイオン伝導性固体電解質5と、負極層6とを有する全固体リチウム二次電池1において、正極層4に正極活物質の導電助剤として繊維状炭素と球状炭素とが含有されていることによって繊維状炭素と球状炭素を予め複合化することができ、繊維状炭素同士の凝集を防いで正極活物質間に導電ネットワークを形成する全固体リチウム二次電池。前記繊維状炭素と前記球状炭素との重量割合は80/20〜50/50であり、前記球状炭素の平均粒子径が、150nm以下であり、前記繊維状炭素の平均繊維長が、10μm以上であり、前記固体電解質層が、ケイ素とリンとホウ素とから選ばれる一つ以上の元素と、硫黄とリチウムとを含有する硫化物系固体電解質を含む全固体リチウム二次電池。【選択図】図1

Description

本発明は全固体リチウム二次電池に係り、特に、正極の組成が改良された全固体リチウム二次電地に関するものである。
従来の全固体リチウム二次電池の正極層は、正極活物質と、導電助剤と、結着剤とから構成されていたが、導電助剤を添加することによってリチウムイオン伝導性が低下する傾向になり、正極層における抵抗の増大を抑制することが出来ない場合があった。そこで、正極層における導電パスを形成する上で長距離の電子伝導を可能とする繊維状の炭素材料が注目され、これを導電助剤として用いた全固体リチウムイオン電池が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
その他、本発明に関連する従来例として、特許文献3〜5に記載された物が存在する特に、正極層における導電パスを形成する上で長距離の電子伝導が可能となる繊維状の炭素材料が注目されていた。
特開2010-262764号公報 特開2008-176981号公報 特開平08-136878号公報 特開2011-108522号公報 特開2010-257878号公報
しかしながら、正極層に添加される導電助剤として繊維状炭素のみでは、正極活物質との接触面積が小さく正極活物質間に導電ネットワークを十分に作ることはできないため、正極層における抵抗の増大を抑制することはできなかった。そこで、本発明は、正極層の導電助剤として繊維状炭素を利用しても正極層の抵抗を低下させた全固体リチウム二次電池を提供することを目的とする。
前記目的を解決するために本発明は、正極層と、固体電解質層と、負極層とを有する全固体リチウム二次電池において、正極層に正極活物質の導電助剤として繊維状炭素と球状炭素とが含有されていることを特徴とする。
正極層に正極活物質の導電助剤として繊維状炭素と球状炭素とが含有されていることによって繊維状炭素と球状炭素を予め複合化することができ繊維状炭素同士の凝集を防いで正極活物質間に導電ネットワークを形成することができる。繊維状炭素の割合が少なくなることによる導電性の低下を球状炭素が補う。一方、球状炭素だけでは電極活物質間の導電ネットワークが十分形成されないが、これを繊維状炭素が補う。即ち、電極活物質の表面に球状炭素が付着し、球状炭素間を繊維状炭素が繋がるため、正極活物質間の導電ネットワークが十分に形成される。
本発明の全固体リチウム二次電池において、繊維状炭素と球状炭素との重量割合は80/20〜50/50であることが好ましく、繊維状炭素の平均繊維長が、10μm以上であることが好ましい。また、本発明において、球状炭素の平均粒子径が、150nm以下であることが好ましく、固体電解質層が、ケイ素とリンとホウ素とからなる群から選ばれる一つ以上の元素と、硫黄とリチウムとを含有する硫化物系固体電解質を含むことが好ましい。
以上説明したように、本発明によれば、正極層の導電助剤として繊維状炭素を利用しても正極層の抵抗を低下させた全固体リチウム二次電池を提供することができる。
本発明の実施形態に係る全固体リチウム二次電池の断面図である。 正極層中の繊維状炭素/球状炭素による電子電導ネットワークの形成を示す概念図である。 繊維状炭素が含有されていない場合の正極層中の状態を示す概念図である。
図1に基づいて、固体電池の構造の一例について説明する。固体電池1は、正極集電部材2、接着剤層3、正極層4、電解質層5、負極層6、負極集電部材7から構成される。なお、本発明は以後説明する実施形態に限定されるものではない。
正極集電部材2は、導電体であればどのようなものでもよく、例えば、アルミニウム、及び、ステンレス鋼等で構成される。
接着剤層3は、正極集電部材2と正極層4とを結着するためのものである。接着剤層3は、接着層導電性物質及び結着剤を含む。接着層導電性物質は、例えばケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、天然黒鉛、人造黒鉛等の導電性カーボンを使用することができる。接着剤層3の導電性を高めるためのものであれば特に制限されず、単独で使用されても、複数を混合されてもよい。
結着剤としては、例えば、SBS (スチレンブタジエンブロック重合体)、SEBS (スチレンエチレンブタジエンスチレンブロック重合体)、スチレン−スチレンブタジエン−スチレンブロック重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマー類、SBR (スチレンブタジエンゴム)、BR (ブタジエンゴム)、NR(天然ゴム)、IR (イソプレンゴム)、EPDM (エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)、NBR(ニトリルゴム)、CR(クロロプレンゴム)、および、これらの部分水素化物、あるいは完全水素化物、ポリアクリル酸エステルの共重合体、PVDF (ポリビニリデンフロライド)、VDF−HFP (ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、および、それらのカルボン酸変性物、CM(塩素化ポリエチレン)、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等が例示される。その他、ポリスチレン、ポリオレフィン、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリシクロオレフイン、シリコーン樹脂等が例示される。
なお、接着層導電性物質、結着剤の含有量の比については、特に制限されないが、例えば、接着層導電性物は接着剤層3の総質量に対して50〜95質量%、結着剤は接着剤層3の総質量に対して5〜50質量%である。
正極層4は、硫化物系固体電解質、正極活物質、正極層導電性物質(導電助剤)から構成される。硫化物系固体電解質は、第1の成分として少なくとも硫化リチウムを含み、第2の成分として硫化ケイ素、硫化リンおよび硫化ホウ素からなる群より選ばれる一つまたはそれ以上の化合物より合成された、特に、Li2S-P25が好ましい。この硫化物系固体電解質は、リチウムイオン伝導性が他の無機化合物より高いことが知られており、Li2S-P25の他に、SiS2、GeS2、B23等の硫化物を含んでいてもよい。また、固体電解質には、適宜、Li3PO4やハロゲン、ハロゲン化合物等を添加した無機固体電解質を用いてもよい。
また、硫化物系固体電解質は、Li2SとP25とを溶融温度以上に加熱して所定の比率で両者を溶融混合し、所定時間保持した後、急冷することにより得られる(溶融急冷法)。熱処理の所定時間は、0.1時間以上が好ましく。急冷時間は液体窒素中に投入して急冷し目的とするガラス化した無機固体電解質を得る方法である。あるいはガラス管中に真空封じしこれを加熱溶融した後、氷水などで急冷する方法である。またLi2S-P25をメカニカルミリング法により処理して得られる。
上記の元素を含有する化合物としては、Li2SとP25とをモル比で、好ましくは50:50〜80:20、より好ましくは60:40〜75:25で混合させて得られる硫化物が挙げられる。
固体電解質として、硫化物系固体電解質の他に、無機化合物からなるリチウムイオン伝導体を無機固体電解質として含有するものが例示される。このようなリチウムイオン伝導体としては、例えば、LiN、LISICON、LIPON(Li3+yPO4−x)、Thio−LISICON(Li3.25Ge0.250.75)、LiO−Al−TiO−P(LATP)がある。
固体電解質は、非晶質、ガラス状、結晶(結晶化ガラス)等の構造をとる。固体電解質がLi2S-P25からなる硫化物系固体電解質である場合、非晶質体のリチウムイオン伝導度1x10-4Scm-1である。一方、結晶質体のリチウムイオン伝導度は1x10-3Scm-1である。
正極、負極、電解質層の夫々における硫化物系固体電解質は非晶質体と結晶体との混合物から構成される。非晶質体は、既述の硫化物の第1成分と第2成分とを混合して、メカニカルミリング法によって処理することによって作製される。結晶質体は非晶質体を焼成処理することによって作製される。
正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能な物質であれば特に限定されず、例えば、コバルト酸リチウム(LCO)、ニッケル酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム(以下、「NCA」と称する場合もある。)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(以下、「NCM」と称する場合もある。)、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、硫化ニッケル、硫化銅、硫黄、酸化鉄、酸化バナジウム等が挙げられる。これらの正極活物質は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
正極活物質は、上記に挙げた正極活物質の例のうち、特に、層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物のリチウム塩であることが好ましい。ここでいう「層状」とは、薄いシート状の形状のことを意味し、「岩塩型構造」とは、結晶構造の1種である塩化ナトリウム型構造のことであり、陽イオン及び陰イオンのそれぞれが形成する面心立方格子が、互いに単位格子の稜の1/2だけずれた構造を指す。このような層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物のリチウム塩としては、例えば、Li1.1−xNiCoAl1−y−z(NCA)またはLi1.1−xNiCoMn1−y−z(NCM)(0<x<0.6、0<y<1、0<z<1、かつy+z<1)で表される3元系の遷移金属酸化物のリチウム塩が挙げられる。
正極中の硫化物系固体電解質、正極活物質、正極層導電性物質、及び、正極層結着剤の含有量の比については、特に制限されない。例えば、硫化物系固体電解質は正極層4の総質量に対して5〜50質量%、正極活物質は正極層4の総質量に対して45〜90質量%、正極層導電性物質は正極層4の総質量に対して0.5〜10質量%、正極層結着剤は正極層4の総質量に対して0.5〜4.5質量%である。
正極層の導電助剤は正極活物質間に導電ネットワークを構成して、正極層の抵抗を低減するために添加される。導電助剤は繊維状炭素と球状炭素とからなり、繊維状炭素と球状炭素との重量割合は80/20〜50/50であることが好ましく、70/30〜60/40であることがより好ましい。正極層中における導電助剤の割合は、正極合剤に対して、1〜10重量%であることが好ましい。1重量%より少ないと導電ネットワークが十分形成されず、10重量%より多いと正極の抵抗が増加する。
繊維状炭素は、例えば、SWCNT(シングルウォールカーボンナノチューブ)、MWCNT(マルチウォールカーボンナノチューブ)、カーボンナノーホーン、気相成長炭素繊維、電界紡糸法炭素繊維、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維などが例示され、これらの1種類または2種類以上である。
正極活物質間に導電ネットワークを構成する観点から、上記の繊維状炭素の平均繊維長は、長いほうが望ましい。具体的には10μm以上が望ましく、15μm以上がより好ましい。上記平均繊維長が上記範囲を満たない場合には、上記正極の抵抗の増加を抑制することが困難である。
正極活物質間に導電ネットワークを構成する観点から、上記の繊維状炭素のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は、大きいほど好ましい。具体的には3以上が望ましく、10以上がより好ましい。上記アスペクト比が上記範囲を満たす場合には、上記正極の抵抗の増加の抑制効果を高くすることができる。
正極活物質との接触頻度が増えるため、上記の繊維状炭素の平均繊維径は、小さいほど好ましい。具体的には2μm以下が望ましく、500nm以下がより好ましい。上記繊維径が上記範囲を満たない場合には、上記正極の抵抗の増加を抑制することが困難である。なお、本明細書でいう繊維状炭素の平均繊維長、平均繊維径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)像を基に算出した数平均繊維長、数平均繊維径を指す。詳細には、平均繊維長は、複数の炭素繊維をエタノールに分散させたものをSEMで観察し、得られたSEM像を画像処理して、複数の炭素繊維の繊維長を算出し、それを数平均したものである。平均繊維径は、SEM像から複数の炭素繊維の繊維径を算出し、それらを数平均したものである。
球状炭素は、例えば、黒鉛、ファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなどが例示され、これらの1種類または2種類以上である。球状炭素はいくつかの粒子同士が融着してつながっていても良い。
正極活物質表面上に導電ネットワークを構成する観点から、上記の球状炭素の平均粒子径は、小さいほど好ましい。具体的には1〜150nmが望ましく、5〜100nm以下がより好ましい。上記粒子径が上記範囲を満たない場合には、上記正極の抵抗の増加を抑制することが困難である。なお、球状炭素の平均粒子径は、複数の球状炭素をエタノールに分散させたものをSEM観察し、そのSEM像から複数の球状炭素の粒子径を算出し、この算出値の平均値を平均粒子径とすることができる。
電解質層5は、硫化物系固体電解質、及び、電解質結着剤を含む。電解質結着剤は、極性官能基を有しない非極性樹脂である。したがって、電解質結着剤は、反応性の高い固体電解質、特に硫化物系固体電解質に対して不活性である。
電解質層5内の第1の結着剤は、プレス(圧着)工程により正極層4と電解質層5との界面を通じて正極層4内の第1の結着剤と相互拡散することで、正極層4と電解質層5とが強固に結着する。なお、硫化物系固体電解質、及び、電解質結着剤の含有量の比については、特に制限されない。例えば、硫化物系固体電解質は電解質層5の総質量に対して95〜99質量%、電解質結着剤は電解質層5の総質量に対して0.5〜5質量%である。
負極層6は、負極活物質と負極結着剤と固体電解質を含む。負極結着剤としては、既述の第1の結着剤を含む。負極層6の第1の結着剤は電界質層5の第1の結着剤と相互拡散して、負極層6と電解質層5とを強固に密着させる。
負極活物質として、黒鉛系活物質グラファイト、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、人造黒鉛と天然黒鉛との混合物、人造黒鉛を被覆した天然黒鉛等が挙げられる。グラファイト粉末は無機化合物や金属などで少なくとも一部分を被覆しても良い。
負極活物質、固体電解質、第1の結着剤の含有量の比については、特に制限されない。例えば、硫化物系固体電解質は負極層6の総質量に対して0〜40質量%、負極括物質は負極層6の総質量に対して60〜100質量%、第1の結着剤は負極層6の総質量に対して0.5〜5重量%含んでいればよい。
負極集電体7は、導電体であればどのようなものでもよく、例えば、銅、ステンレス鋼、及びニッケルメッキ鋼等で構成される。なお、上記の各層には、公知の添加剤等を適宜加えてもよい。
図2は、正極層中の繊維状炭素/球状炭素による電子電導ネットワークの形成を示す概念図であり、図3は、繊維状炭素が含有されていない場合の正極層中の状態を示す概念図である。本発明の全固体電池では、図2に示すように、正極層4に正極活物質102の周りに球状炭素103が吸着、或いは、付着等しており、球状炭素103と繊維状炭素が104とが接触することによって、正極活物質間に導電ネットワークが形成されている。導電助剤として繊維状炭素104と球状炭素102とが含有されていることによって繊維状炭素102の割合を少なくでき、繊維状炭素の凝集を防ぎながら正極活物質間に導電ネットワークを形成することができる。一方、図3のように、繊維状炭素が存在しないと、正極活物質間に導電ネットワークを形成することが難しくなる。
液系電池では、活物質と液系電解質間でLiイオンが移動するためには電解液が侵入するための活物質間に空隙が必要であるが、固体電池の場合には、活物質と固体電解質の間でLiイオンが移動するため活物質と固体電解質との空隙は無いことが望ましい。高い圧力で電極をプレスさせることで、この空隙を減らすことができる。さらには、高圧力プレスによって、接触面積を増大させることになり、界面抵抗の低減による電池の高容量化の増加など電池特性の向上にも寄与する。よって、固体電解質を用いる電池では正極合剤を高い圧力でプレスするものであり、その中で導電助剤の形状などはよりプレス下の環境において、より空隙率を減らしなお且つ活物質間の電子電導性を確保する点から設定されなければならない。
次に、既述の全固体リチウム二次電池の実施例について説明する。この実施例は電池の内部抵抗を低減するために、結着剤の量を合剤中に5質量%以下として、集電体、正極層、負極層、固体電解質層とをプレスのみによって接合した。
[実施例1]
[正極構造体の作製]
正極活物質としてのLiNiCoAlO2粉末と、硫化物系固体電解質としてのLi2S-P2S5(80-20mol%)非晶質粉末と、正極層導電性物質(導電助剤)としての平均繊維径長20μmの繊維状炭素と平均粒径50nmの球状炭素とからなる導電助剤を、60/35/4/1の質量%比となるように秤量し、自転公転ミキサを用いて混合することにより正極合剤を作製した。繊維状炭素と球状炭素との重量比を80:20にした。
この混合粉に、結着剤としてのNBRが溶解した脱水キシレン溶液をNBRが混合粉の総質量に対して5.0質量%となるように添加して1次混合液を生成した。さらに、この1次混合液に、粘度調整のための脱水キシレンを適量添加することで、2次混合液を生成した。さらに、混合粉の分散性を向上させるために、直径5mmのジルコニアボールを、空間、混合粉、ジルコニアボールがそれぞれ混練容器の全容積に対して1/3ずつを占めるように2次混合液に投入した。生成された3次混合液を自転公転ミキサに投入し、3000rpmで3分撹拌することで、正極合剤を生成した。
正極集電体として厚さ15μmのアルミ箔集電体を用意し、卓上スクリーン印刷機に正極集電体を載置し、150μmのメタルマスクを用いて正極合剤をシート上に塗工した。その後、正極合剤が塗工されたシートを摂氏60度ホットプレートで30分乾燥させた後、80℃で12時間真空乾燥させた。これにより、正極集電体上に正極を形成した。乾燥後の正極集電体及び正極の総厚さは165μm前後であった。
正極集電体及び正極からなるシートをロールギャップ10μmのロールプレス機を用いて圧延することで、正極構造体を生成した。正極構造体の厚みは120μm前後であった。
[負極構造体の作製]
負極活物質としての黒鉛粉末(80℃で24時間真空乾燥したもの)と、結着剤としてのPVdFとを95.0:5.0の質量%比で秤量した。そして、これらの材料と適量のNMPとを自転公転ミキサに投入し、3000rpmで3分撹拌した後、1分脱泡処理することで、負極塗工液を生成した。
負極集電部材として厚さ16μmの銅箔集電部材を用意し、ブレードを用いて銅箔集電部材上に負極塗工液を塗工した。銅箔集電部材上の負極塗工液の厚さ(ギャップ)は150μm前後であった。負極塗工液が塗工されたシートを、摂氏80度に加熱された乾燥機内に収納し、15分乾燥した。さらに、乾燥後のシートを80℃で24時間真空乾燥を行った。これにより、負極構造体を生成した。負極構造体の厚みは140μm前後であった。負極極集電体及び負極からなるシートをロールギャップ10μmのロールプレス機を用いて圧延することで、負極構造体を生成した。負極構造体の厚みは120μm前後であった。
[電解質層の作製]
硫化物系固体電解質としてのLiS−P(80:20モル%)非晶質粉末に、NBRが溶解した脱水キシレン溶液をNBRが混合粉の総質量に対して2.0質量%となるように添加して1次混合液を生成した。さらに、この1次混合液に、粘度調整のための脱水キシレンを適量添加することで、2次混合液を生成した。さらに、混合粉の分散性を向上させるために、直径5mmのジルコニアボールを、空間、混合粉、ジルコニアボールがそれぞれ混練容器の全容積に対して1/3ずつを占めるように3次混合液に投入した。これにより生成された3次混合液を自転公転ミキサに投入し、3000rpmで3分撹拌することで、電解質層塗工液を生成した。
卓上スクリーン印刷機に負極構造体を載置し、500μmのメタルマスクを用いて電解質層塗工液を負極構造体上に塗工した。その後、電解質層塗工液が塗工されたシートを摂氏40度のホットプレートで10分乾燥させた後、摂氏40度で12時間真空乾燥させた。これにより、負極構造体上に電解質層を形成した。乾燥後の電解質層の総厚さは300μm前後であった。
[全固体二次電池の組立て]
負極構造体及び固体電解質層シート及び正極構造体をそれぞれトムソン刃で打ちぬき、シートの電解質層と正極構造体の正極とをロールギャップ150μmのロールプレス機を用いたドライラミネーション法により貼り合わせることで、固体電池の単セルを組み立てた。
[全固体二次電池の封入]
組み立てた単セルを、端子を取り付けたアルミニウムラミネートフィルムに入れ、真空機で真空排気してヒートシールを行いパックすることで、試験用の固体電池を得た。
正極の繊維状炭素と球状炭素との重量比、繊維状炭素の平均繊維長、球状炭素の平均粒子径を後述の表1のように変更して固体電池を作製した(実施例2-6、比較例1-3)。
[電池特性試験]
既述のようにして製造された固体電池を東洋システム製充放電評価装置 TOSCAT−3100により0.05mA/cm2の定電流密度で充電、引き続いて放電を行い、放電容量(mAh)を測定した(充電上限電圧4.0V、放電下限電圧2.5V)。実施例、比較例の正極活物質あたりの放電容量を表1に示す。
[インピーダンス特性試験]
4.0Vに充電した固体電池について、インピーダンス値は、LCZメーター(横河ヒューレットパッカード社製)を用い、交流周波数0.1Hz 〜1 MHzで測定した。実施例、比較例の結果を表1に示す。
表1から分かるように、正極層の正極活物質の導電助剤として、繊維状炭素と球状炭素からなる導電助剤によれば、繊維状炭素/球状炭素の混合比が60/40の場合において放電容量が大きく、セル抵抗を低減させていることが分かる。

Claims (5)

  1. 正極層と、固体電解質層と、負極層とを有する全固体リチウム二次電池において、前記正極層に正極活物質の導電助剤として繊維状炭素と球状炭素とが含有されている全固体リチウム二次電池。
  2. 前記繊維状炭素と前記球状炭素との重量割合は80/20〜50/50である請求項1に記載の全固体リチウム二次電池。
  3. 前記繊維状炭素の平均繊維長が、10μm以上であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の全固体リチウム二次電池。
  4. 前記球状炭素の平均粒子径が、150nm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の全固体リチウム二次電池。
  5. 前記固体電解質層が、ケイ素とリンとホウ素とからなる群から選ばれる一つ以上の元素と、硫黄とリチウムとを含有する硫化物系固体電解質を含む請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の全固体リチウム二次電池。
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