JP2016008706A - 真空断熱材用包装材及びそれを備えた真空断熱材 - Google Patents

真空断熱材用包装材及びそれを備えた真空断熱材 Download PDF

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Abstract

【課題】積層体のプレス加工に対する延性及び展性を増加させて、形状の自由度を向上させることが可能な、真空断熱材用包装材及びそれを備えた真空断熱材を提供する。
【解決手段】熱溶着層20とガスバリア層12と保護層16とを順に積層した二枚の積層体6の外周部を熱溶着で接合し、真空状態で芯材を充填可能な充填空間が内部に形成され、二枚の積層体6のうち少なくとも一方は、プレス加工により充填空間に対応する形状に形成された充填空間形成部61を備え、ガスバリア層12が、0.7質量%以上1.7質量%以下の範囲内で鉄を含有するアルミニウム合金で形成され、アルミニウム合金が含有するアルミニウム結晶の平均粒径は、6μm以上12μm以下の範囲内である真空断熱材用包装材と、真空状態で充填空間に充填される芯材を備える真空断熱材。
【選択図】図3

Description

本発明は、真空断熱材を形成するための真空断熱材用包装材と、その真空断熱材用包装材を備えた真空断熱材に関するものである。
家電製品、設備機器、住宅等の建築物における省エネルギー化、特に、住宅用途としては、夏や冬における冷暖房のエネルギーを抑制することを目的として、優れた断熱性能を有する断熱材による、省エネルギー化への推進が求められている。また、高齢化社会で懸念される、風呂場、トイレ、脱衣所等での温度差による心臓への負荷から発生するヒートショックによる心筋梗塞や脳梗塞のリスクを低減させることを目的として、優れた断熱性能を有する断熱材が要求されている。
優れた断熱性能を有する断熱材としては、気密性(ガスバリア性)を有する二枚の積層体を組み合わせて形成した真空断熱材用包装材と、微細な空隙を有する芯材とを備え、真空断熱材用包装材の内部に芯材を真空充填して形成された真空断熱材がある。
真空断熱材は、真空断熱材用包装材の内部を高い真空度に保持し、気体の対流による熱の移動を抑制することによって、高い断熱性能を発揮するが、真空断熱材の使用時には、真空断熱材を配置する壁内等の空間に応じて、シール領域を折り曲げる必要がある。
しかしながら、シール領域を折り曲げたときに、積層体が備えるガスバリア層が伸ばされ、ガスバリア層にピンホールと呼ばれるクラックが形成されてしまうと、真空断熱材の内部が大気圧となり、断熱性能が低下する。
ガスバリア層におけるピンホールの発生を抑制するために、例えば、特許文献1には、ガスバリア層の材料として、0.7質量%以上1.7質量%以下の範囲内で鉄を含有し、0.05質量%以上0.15質量%以下の範囲内でケイ素を含有したアルミニウム合金を用いた構成が開示されている。
特開2008−93933号公報
真空断熱材には、家電製品用、設備機器用、建築物用等、用途によって要求される形状がある。例えば、建築物の外壁等、複数の真空断熱材を敷き詰めて使用する用途では、予め、組み合わせる前の積層体にプレス加工を行い、芯材を真空充填する空間に対応した形状としておくことにより、プレス加工を行わない形状の積層体を組み合わせた場合と比較して、多量の芯材を充填可能な形状とした真空断熱材がある。
しかしながら、特許文献1に開示されている構成のように、鉄及びケイ素をアルミニウムに含有したアルミニウム合金で形成したガスバリア層は、プレス加工に対する延性及び展性が低い。このため、真空断熱材用包装材の形状が限定されるという問題が発生する。
本発明は、このような問題点を解決しようとするものであり、積層体のプレス加工に対する延性及び展性を増加させて、形状の自由度を向上させることが可能な、真空断熱材用包装材及びそれを備えた真空断熱材を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の一態様は、熱溶着層とガスバリア層と保護層とを順に積層した二枚の積層体の外周部を熱溶着で接合し、真空状態で芯材を充填可能な充填空間が内部に形成された真空断熱材用包装材であって、
前記二枚の積層体のうち少なくとも一方は、プレス加工により前記充填空間に対応する形状に形成された充填空間形成部を備え、
前記ガスバリア層は、0.7質量%以上1.7質量%以下の範囲内で鉄を含有するアルミニウム合金で形成され、
前記アルミニウム合金が含有するアルミニウム結晶の平均粒径は、6μm以上12μm以下の範囲内であることを特徴とするものである。
本発明の一態様であれば、二枚の積層体のうち少なくとも一方を、プレス加工により充填空間に対応する形状に形成された充填空間形成部を備える構成とする。これに加え、アルミニウム結晶の平均粒径が6μm以上12μm以下の範囲内であるとともに、0.7質量%以上1.7質量%以下の範囲内で鉄を含有するアルミニウム合金で、ガスバリア層を形成する。
このため、プレス加工に対するアルミニウム合金の延性及び展性を増加させることが可能となり、プレス加工によるガスバリア層の損傷を抑制して、積層体へのプレス加工により形成する充填空間形成部の、形状の自由度を向上させることが可能となる。
本発明の第一実施形態の真空断熱材を示す平面図である。 図1のII−II線断面図である。 図2中に円IIIで囲んだ範囲の拡大図である。 図2中に円IVで囲んだ範囲の拡大図である。 アルミニウム結晶の平均粒径の測定状態を示す図である。 アルミニウム結晶の平均粒径の測定状態を示す図である。 深絞り検証機の構成を示す図である。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1から図4中に示すように、真空断熱材1は、真空断熱材用包装材2と、芯材4を備えている。
真空断熱材用包装材2は、矩形状の積層体6を二枚組み合わせて、組み合わせた積層体6の外周部を接合することで、平面視で、外周側のシール領域8と、シール領域8よりも内側の充填空間形成領域10に区画されている。なお、以降の説明では、真空断熱材用包装材2を形成する二枚の積層体6を、それぞれ、図2中で上方に配置する積層体6uと、図2中で上方に配置する積層体6dと示す場合がある。また、図2から図4中では、説明のために、積層体6の厚さを誇張して示している。また、第一実施形態では、一例として、積層体6及び真空断熱材用包装材2を、平面視で正方形に形成した場合について説明する。
シール領域8は、二枚の積層体6の外周部において、二枚の積層体6がそれぞれ備える熱溶着層20同士を熱溶着して接合して形成されており、平面視で井桁状に形成されている。
充填空間形成領域10は、組み合わせた二枚の積層体6のうち、井桁状に形成したシール領域8で囲まれた部分であり、シール領域8の内周側に配置され、平面視で矩形状に形成されている。なお、第一実施形態では、一例として、充填空間形成領域10を、平面視で正方形に形成した場合について説明する。
また、充填空間形成領域10は、シール領域8と異なり、二枚の積層体6がそれぞれ備える熱溶着層20同士が離間している。また、二枚の積層体6がそれぞれ備える熱溶着層20同士が離間して形成された空間は、真空状態で芯材4を充填可能な空間(以降の説明では、「充填空間」と記載する場合がある)である。すなわち、充填空間形成領域10は、真空断熱材用包装材2のうち、充填空間を形成する領域である。
また、充填空間形成領域10は、熱溶着層20同士を熱溶着させる前に、二枚の積層体6u,6dのうち少なくとも一方に対するプレス加工(モールド成形)を行うことにより、充填空間に対応する形状(深絞り形状等)に形状されている。
すなわち、二枚の積層体6のうち少なくとも一方は、充填空間形成部61と、シール領域形成部62を備えている。
充填空間形成部61は、プレス加工により充填空間に対応する形状に形成されており、プレス加工を行った積層体6のうち、充填空間形成領域10に対応する部分を形成している。
シール領域形成部62は、充填空間形成部61の外周側に形成された平板状の部分であり、シール領域8に対応する部分を形成している。
プレス加工は、凸部を有する雄型と凹部を有する雌型との間に積層体6を配置した状態で、雄型と雌型とを閉じ合わせ、積層体6のうち充填空間形成領域10に区画される領域を変形させ(伸ばし)て、充填空間に対応する形状とする加工である。したがって、雄型が有する凸部と、雌型が有する凹部は、充填空間に対応する形状とする。
また、積層体6及び充填空間形成領域10は、平面視で矩形状である。
各積層体6は、シート状に形成されており、ガスバリア層12と、第一接着層14と、保護層16と、第二接着層18と、熱溶着層20を備えている。なお、以降の説明では、積層体6uが備える各構成に、符号「u」を付して記載する場合がある。同様に、以降の説明では、積層体6dが備える各構成に、符号「d」を付して記載する場合がある。
ガスバリア層12は、水蒸気や空気が充填空間内へ侵入することを防ぐことを目的とした層であり、気密性を有している。なお、ガスバリア層12の詳細な構成については、後述する。
第一接着層14は、ガスバリア層12と保護層16との間に配置されており、ガスバリア層12と保護層16とを接着している。
また、第一接着層14は、ドライラミネート加工を可能とするラミネート接着剤であり、アルミニウムと高分子フィルムとの強固なラミネート強度を必要とするため、好ましくは、接着剤が主剤と硬化剤からなり、ポリエステルポリウレタン結合を有する接着剤を用いる。
保護層16は、真空断熱材用包装材2に屈曲が生じたときにガスバリア層12を保護することを目的とした層であり、積層体6の最外層を構成している。
保護層16は、材料として、延伸ナイロンフィルム、または、延伸ポリエステルフィルムを用いて形成されている。
延伸ナイロンフィルムとしては、例えば、ポリアミド樹脂を基本骨格としたナイロンフィルムを用いる。
なお、ポリアミド樹脂を基本骨格としたナイロンフィルムとは、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6とナイロン66との共重合体、メタキシリレンアジパミド(MXD6)等である。
また、延伸ポリエステルフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート等のポリエステルフィルムを用いる。
保護層16の厚さは、シール領域8の折り曲げ加工の状態や、芯材4の構成に応じて変化させることが可能であるが、少なくとも6μm以上とする。これは、保護層16の厚さを6μ未満とすると、保護層16の材料とするフィルム材の製膜時に、ピンホール等の損傷が発生する可能性が高いためである。
第一実施形態では、一例として、保護層16の厚さを、9μm以上25μm以下の範囲内とした場合について説明する。保護層16の厚さを9μm以上とする理由は、保護層16の厚さを6μ未満とすると、保護層16の伸び性能が不足してしまい、真空断熱材用包装材2の屈曲時に、ガスバリア層12がネッキングを生じて破断してしまうためである。
第二接着層18は、ガスバリア層12と熱溶着層20との間に配置されており、ガスバリア層12と熱溶着層20とを接着している。
また、第二接着層18は、第一接着層14と同様、ドライラミネート加工を可能とするラミネート接着剤であり、アルミニウムと高分子フィルムとの強固なラミネート強度を必要とするため、好ましくは、接着剤が主剤と硬化剤からなり、ポリエステルポリウレタン結合を有する接着剤を用いる。
熱溶着層20は、シール領域8を形成することにより、充填空間内に真空状態で充填した芯材4を封止するための層であり、熱溶着が可能な材料、例えば、熱可塑性を有するポリオレフィン系の高分子材料を用いて形成されている。また、積層体6uが備える熱溶着層20uは、二枚の積層体6u,6dを組み合わせた状態で、第二接着層18と対向する面と反対側の面が、積層体6dが備える熱溶着層20dと面接触する。なお、第一実施形態では、一例として、熱溶着層20の材料を、ポリオレフィン系の高分子材料とした場合について説明する。
また、熱溶着層20を形成する熱溶着が可能な材料は、例えば、真空断熱材1の使用条件として、100℃以上の耐熱性を要求される場合では、キャストポリプロピレンを含む樹脂を用いる。
さらに、真空断熱材1を住宅の底材(床内に配置する断熱材等)として使用する場合、熱溶着層20の厚さは、10μm以上100μm以下の範囲内とし、樹脂の融点が70℃以上のものが好適である。これは、熱溶着層20の厚さが10μm未満であると、熱溶着におけるヒートシール強度が不十分であるため、衝撃に対して簡単にクラックが生じてしまうためである。また、熱溶着層20の厚さが100μmを超えると、ヒートシール強度は変化しないものの、熱溶着層20のバリア性が低いために、長期保存環境下における酸素及び水蒸気の透過が懸念されるためである。
芯材4は、例えば、ガラスウール、発泡ポリウレタン、シリカ粉末等の微細な空隙を有する材料を用いて形成されており、充填空間内に真空状態で充填されている。
(ガスバリア層12の詳細な構成)
図1から図4を参照しつつ、図5を用いて、ガスバリア層12の詳細な構成を説明する。
ガスバリア層12の厚さは、7μm以上40μm以下の範囲内とし、好ましくは、9μm以上とする。これは、ガスバリア層12の厚さを9μm未満とすると、積層体6にプレス加工を行った際に、ガスバリア層12にピンホールが発生する可能性が高くなり、また、ガスバリア層12の厚さが40μmを超えると、プレス加工に対するガスバリア層12の延性及び展性が、プレス加工に適した値よりも低下するためである。
第一実施形態では、一例として、ガスバリア層12の厚さを、9μm以上20μm以下の範囲内とした場合について説明する。
ガスバリア層12の材料としては、0.7質量%以上1.7質量%以下の範囲内で鉄を含有するアルミニウム合金を用いる。また、ガスバリア層12の材料として用いるアルミニウム合金は、アルミニウム結晶の平均粒径が6μm以上12μm以下の範囲内である。さらに、ガスバリア層12の材料として用いるアルミニウム合金は、焼きなましを行った、柔軟性がある軟質処理品が好適である。
ガスバリア層12の材料として、0.7質量%以上1.7質量%以下の範囲内で鉄を含有するアルミニウム合金を用いる理由は、0.7質量%未満で鉄を含有するアルミニウム合金をガスバリア層12の材料として用いると、積層体6にプレス加工を行った際に、ガスバリア層12にピンホールが発生する可能性が高くなるためである。さらに、1.7質量%を超えた量で鉄を含有するアルミニウム合金をガスバリア層12の材料として用いると、アルミニウムの柔軟性が阻害されて、真空断熱材用包装材2の製造効率が低下するためである。
また、アルミニウム結晶の平均粒径を6μm以上12μm以下の範囲内とする理由は、平均粒径が6μm未満であると、アルミニウム合金の焼きなまし温度や時間の調整が困難となるためである。さらに、アルミニウム結晶の平均粒径が12μmを超えると、アルミニウム合金のプレス加工に対する延性及び展性が、プレス加工に適した値よりも低下するためである。
なお、第一実施形態では、0.7質量%以上1.7質量%以下の範囲内で鉄を含有し、アルミニウム結晶の平均粒径が6μm以上12μm以下の範囲内であるアルミニウム合金として、JIS H 4160に規定されている「8079」、または、「8021」を用いる。
また、第一実施形態では、一例として、アルミニウム結晶の平均粒径が、ガスバリア層12の厚さ以下である場合を説明する。
(アルミニウム結晶の平均粒径を測定する方法)
図1から図4を参照しつつ、図5及び図6を用いて、アルミニウム結晶の平均粒径を測定する方法について説明する。
アルミニウム結晶の平均粒径は、蛍光X線分析装置により測定した値である。
具体的には、図5及び図6中に示すように、シート状のアルミニウム合金であるアルミニウム合金箔Alfに対し、蛍光X線分析装置を用いて、ガスバリア層12の平面視で、アルミニウム結晶Alcの平均粒径を測定する。なお、図5及び図6中には、基準値を示す長さとして、「100μm」の長さを双方向矢印で示している。
図5中に示す、アルミニウム結晶Alcの平均粒径が小さいアルミニウム合金箔Alfは、図6中に示す、アルミニウム結晶Alcの平均粒径が大きいアルミニウム合金箔Alfと比較して、アルミニウム結晶Alcの密度が小さい。
このため、平均粒径が小さいアルミニウム合金箔Alfは、平均粒径が大きいアルミニウム合金箔Alfと比較して、プレス加工時、すなわち、アルミニウム合金箔を延ばす際に、アルミニウム結晶Alcが移動する隙間が広いため、プレス加工時に対する延性及び展性が高くなる。
(真空断熱材1の製造方法)
図1から図6を参照して、真空断熱材1の製造方法について説明する。
真空断熱材1の製造方法は、積層体プレス工程と、積層体プレス工程の後工程である袋体作成工程と、袋体作成工程の後工程である真空充填工程を有する。
<積層体プレス工程>
積層体プレス工程では、二枚の積層体6u,6dのうち少なくとも一方に対し、雄型と雌型との間に配置した積層体6をプレス加工(モールド成形)して、充填空間形成部61を形成する。これにより、充填空間形成領域10を、充填空間に対応する形状(深絞り形状等)とする。
したがって、積層体プレス工程では、二枚の積層体6u,6dのうちプレス加工を行う積層体6に対し、シール領域8を構成する部分の形状と、充填空間形成領域10を構成する部分の形状とを、明確に区画する処理を行う。また、積層体6にプレス加工を行うことにより、プレス加工を行う積層体6に対し、充填空間形成領域10を構成する部分に、平面視で井桁状に連続するエッジ(縁部)を形成する。
<袋体作成工程>
袋体作成工程では、二枚の積層体6u,6dを合致させた状態で重ね合わせ、外周部のうち三辺に対し、それぞれが備える熱溶着層20同士を対向させた状態で、一回目の熱溶着を行う。
これにより、袋体作成工程では、熱溶着層20同士を結合させてコの字型のシール領域8を形成するとともに、外周部のうち残りの一辺が開口している袋体を作成する。
<真空充填工程>
真空充填工程では、袋体作成工程で形成した開口部から、二枚の積層体6間に形成されている空間内へ芯材4を挿入し、さらに、芯材4を挿入した空間内を、例えば、200Pa以下に減圧しながら、袋体作成工程で熱溶着を行っていない残りの一辺に対し、熱溶着を行う。
これにより、真空充填工程では、充填空間形成領域10と、充填空間と、井桁状のシール領域8を形成するとともに、芯材4を真空状態で充填空間に充填する。
(第一実施形態の効果)
(1)二枚の積層体6u,6dのうち少なくとも一方を、プレス加工により充填空間に対応する形状に形成された充填空間形成部61を備える構成とする。これに加え、アルミニウム結晶の平均粒径が6μm以上12μm以下の範囲内であるとともに、0.7質量%以上1.7質量%以下の範囲内で鉄を含有するアルミニウム合金で、ガスバリア層12を形成する。
このため、プレス加工に対するアルミニウム合金の延性及び展性を増加させることが可能となり、プレス加工によるガスバリア層12の損傷を抑制して、積層体6へのプレス加工で形成する、充填空間形成部61の、形状の自由度を向上させることが可能となる。
その結果、家電製品用、設備機器用、建築物用等の用途に応じて、真空断熱材1の形状への要求が異なる場合であっても、真空断熱材1の形状に対応が可能な真空断熱材用包装材2を形成することが可能となる。
また、ガスバリア層12の延性及び展性を増加させることが可能となるため、シール領域8を折り曲げたときにガスバリア層12が伸ばされた場合であっても、ガスバリア層12におけるピンホールの発生を抑制することが可能となる。
(2)ガスバリア層12の厚さが、9μm以上20μm以下の範囲内である。
このため、ガスバリア層12の厚さが9μm未満である場合と比較して、積層体6にプレス加工を行った際に、ガスバリア層12にピンホールが発生する可能性を低減させることが可能となる。これに加え、ガスバリア層12の厚さが20μmを超える場合と比較して、積層体6の熱伝導率を低下させることが可能となり、真空断熱材1の断熱性能を向上させることが可能となる。
(3)ガスバリア層12を形成するアルミニウム合金が含有するアルミニウム結晶の平均粒径が、10μm以下である。
このため、アルミニウム合金が含有するアルミニウム結晶の平均粒径が、10μmを超える場合と比較して、プレス加工に対するアルミニウム合金の延性及び展性を増加させることが可能となる。
これにより、プレス加工によるガスバリア層12の損傷を抑制することが可能となるため、積層体6へのプレス加工で形成する、充填空間形成領域10の形状の自由度を向上させることが可能となる。
(4)ガスバリア層12を形成するアルミニウム合金が含有するアルミニウム結晶の平均粒径が、ガスバリア層12の平面視で、アルミニウム合金に対する蛍光X線回折により測定した値である。
このため、積層体6を製造する前等に、アルミニウム合金が含有するアルミニウム結晶の平均粒径を、蛍光X線回折で測定して、アルミニウム合金の物性がガスバリア層12の材料として適切であるか否かを判定することが可能となる。
(5)真空断熱材1が、アルミニウム合金で形成されたガスバリア層12を備える積層体6へのプレス加工で形成された充填空間形成部61を備える真空断熱材用包装材2と、真空状態で充填空間に充填される芯材4を備えている。これに加え、アルミニウム結晶の平均粒径が6μm以上12μm以下の範囲内であるとともに、0.7質量%以上1.7質量%以下の範囲内で鉄を含有するアルミニウム合金で、ガスバリア層12を形成する。
このため、家電製品用、設備機器用、建築物用等の用途に応じて、真空断熱材1の形状への要求が異なる場合であっても、充填空間形成部61の形状の自由度が高い真空断熱材用包装材2を用いて、用途に応じた形状の真空断熱材1を形成することが可能となる。
(変形例)
以下、第一実施形態の変形例を記載する。
(1)第一実施形態では、ガスバリア層12の厚さを、9μm以上20μm以下の範囲内としたが、これに限定するものではない。すなわち、ガスバリア層12の厚さの上限値を、12μmとしてもよい。
この場合、ガスバリア層12の厚さの上限値が12μmを超える場合と比較して、積層体6の熱伝導率を低下させることが可能となり、真空断熱材1の断熱性能を向上させることが可能となる。
(2)第一実施形態では、0.7質量%以上1.7質量%以下の範囲内で鉄を含有し、アルミニウム結晶の平均粒径が6μm以上12μm以下の範囲内であるアルミニウム合金として、JIS H 4160に規定されている「8079」、または、「8021」を用いたが、これに限定するものではない。すなわち、ガスバリア層12を形成するアルミニウム合金は、0.7質量%以上1.7質量%以下の範囲内で鉄を含有し、アルミニウム結晶の平均粒径が6μm以上12μm以下の範囲内であるアルミニウム合金であれば、JIS H 4160に規定されている「8079」、または、「8021」に限定するものではない。
上述した第一実施形態の図1から図6を参照しつつ、図7を用いて、以下に記載する実施例により、本発明例及び比較例の真空断熱材1について説明する。
(構成)
実施例の真空断熱材1は、積層体6の構成を、上述した第一実施形態と同様、ガスバリア層12、第一接着層14、保護層16、第二接着層18、熱溶着層20を備える構成とし、各層をドライラミネート加工により積層させて形成する。また、ガスバリア層12を除く各層の具体的な構成は、以下に示すものとする。
・第一接着層14:ポリエステルポリウレタン系接着剤(DIC社製 LX500)を主剤とし、芳香族イソシアネート(DIC社製 KW75)を硬化剤として構成する。
・保護層16:延伸ナイロンフィルム(出光ユニテック社製 G100)を材料として用いる。
・第二接着層18:ポリエステルポリウレタン系接着剤(DIC社製 LX500)を主剤とし、芳香族イソシアネート(DIC社製 KW75)を硬化剤として構成する。
・熱溶着層20:キャスト加工により製膜された低密度直鎖型ポリエチレン(LLDPE:三井化学東セロ社製 TUX−FCS)を材料として用いる。
(比較例1)
比較例1の真空断熱材1は、ガスバリア層12の材料として、厚さが20μmであり、鉄の含有量が非常に少ない(例えば、0.1質量%未満)のアルミニウム合金(例えば、JIS H 4160に規定されている1N30)である合金Aを用いる。
(本発明例1)
本発明例1の真空断熱材1は、ガスバリア層12の材料として、厚さが20μmであり、1.0質量%の鉄を含有するとともに、アルミニウム結晶Alcの平均粒径が10μmのアルミニウム合金である合金Cを用いる。
(比較例2)
比較例2の真空断熱材1は、ガスバリア層12の材料として、厚さが12μmの合金Aを用いる。
(比較例3)
比較例3の真空断熱材1は、ガスバリア層12の材料として、厚さが12μmであり、1.0質量%の鉄を含有するとともに、アルミニウム結晶Alcの平均粒径が15μmのアルミニウム合金である合金Bを用いる。
(本発明例2)
本発明例2の真空断熱材1は、ガスバリア層12の材料として、厚さが12μmの合金Cを用いる。
(比較例4)
比較例4の真空断熱材1は、ガスバリア層12の材料として、厚さが9μmの合金Bを用いる。
(本発明例3)
本発明例3の真空断熱材1は、ガスバリア層12の材料として、厚さが9μmの合金Cを用いる。
なお、合金B及び合金Cでは、製造上のスラグと呼ばれるアルミニウムの原料の関係から、鉄の含有量にバラツキが生じるため、ある程度の範囲が存在することとなる。
(測定方法)
評価項目として、積層体6の深絞り性と、ガスバリア層12と熱溶着層20との第二接着層18によるラミネート強度と、積層体6の熱伝導率を測定した。
積層体6の深絞り性は、図7中に示す深絞り検証機22を用いて測定した。
深絞り検証機22は、雄型24と、雌型26と、ストリッパプレート28を備えている。
雄型24は、雌型26へ向けて下方へ突出する凸部30を備えている。
雌型26は、雄型24の下方に配置され、凸部30を配置可能な凸部配置空間32が形成されている。
ストリッパプレート28は、雌型26のうち凸部配置空間32が形成されていない平面部34に積層体6を押さえ付けるための板状部材であり、上下方向へ移動可能である。
深絞り検証機22を用いて積層体6の深絞り性を測定する際には、まず、雄型24と雌型26を開いた状態(型開き状態)で、雄型24と雌型26との間に配置した積層体6を、ストリッパプレート28により平面部34に押し付けて固定する。そして、雄型24と雌型26との距離を減少させて凸部30により積層体6を下方へ押し(プレスし)、さらに、凸部配置空間32内における凸部30の下方への移動距離(深絞り距離)を変化させ、ガスバリア層12にピンホールが発生するまでの平均距離を算出する。これにより、表1中に示す深絞り距離(mm)を、ガスバリア層12にピンホールが発生するまでの平均距離から算出する。
なお、凸部30の曲率半径Rは3とし、雄型24及び雌型26には、硬質クロムメッキを施している。また、全ての比較例及び本発明例において、深絞り距離の変化速度は一定とした。
ガスバリア層12と熱溶着層20との第二接着層18によるラミネート強度は、JIS K6848に従い、試作したサンプルを15mm幅に切った試料の強度を、テンシロンにより300mm/min.の速度で測定した。
積層体6の熱伝導率は、周期加熱法を用いて測定した。
(測定結果)
上述した方法により測定した各測定結果を、表1中に示す。
Figure 2016008706
表1中に示すように、全ての本発明例及び比較例において、ラミネート強度には殆ど変化が無いが、ガスバリア層12の厚さが等しい場合、本発明例は、比較例よりも深絞り距離が大きいという測定結果が確認された。また、全ての本発明例及び比較例において、ガスバリア層12の厚さが大きいほど、熱伝導率が高いという測定結果が確認された。
1…真空断熱材、2…包装材、4…芯材、6…積層体、8…シール領域、10…充填空間形成領域、12…ガスバリア層、14…第一接着層、16…保護層、18…第二接着層、20…熱溶着層、22…深絞り検証機、24…雄型、26…雌型、28…ストリッパプレート、30…凸部、32…凸部配置空間、34…平面部、61…充填空間形成部、62…シール領域形成部、Alf…アルミニウム合金箔、Alc…アルミニウム結晶

Claims (6)

  1. 熱溶着層とガスバリア層と保護層とを順に積層した二枚の積層体の外周部を熱溶着で接合し、真空状態で芯材を充填可能な充填空間が内部に形成された真空断熱材用包装材であって、
    前記二枚の積層体のうち少なくとも一方は、プレス加工により前記充填空間に対応する形状に形成された充填空間形成部を備え、
    前記ガスバリア層は、0.7質量%以上1.7質量%以下の範囲内で鉄を含有するアルミニウム合金で形成され、
    前記アルミニウム合金が含有するアルミニウム結晶の平均粒径は、6μm以上12μm以下の範囲内であることを特徴とする真空断熱材用包装材。
  2. 前記ガスバリア層の厚さは、9μm以上20μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載した真空断熱材用包装材。
  3. 前記ガスバリア層の厚さは、12μm以下であることを特徴とする請求項2に記載した真空断熱材用包装材。
  4. 前記平均粒径が、10μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した真空断熱材用包装材。
  5. 前記平均粒径は、前記ガスバリア層の平面視で、前記アルミニウム合金に対する蛍光X線回折により測定した値であることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した真空断熱材用包装材。
  6. 請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載した真空断熱材用包装材と、
    真空状態で前記充填空間に充填される芯材と、を備えることを特徴とする真空断熱材。
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