JP2016006349A - 潤滑剤供給体、直動案内装置用潤滑剤供給体、直動案内装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】この発明の潤滑剤供給体24は、潤滑剤を含有する同じ材料からなる板状体241のみが複数枚積層された構造を有する。
【選択図】図2
Description
従来のエンドキャップのスライダ本体側の面には、さらに、グリースニップルを取り付ける給油口から方向転換路用凹部まで延びる油溝が形成されている。この油溝がスライダ本体のエンドキャップ側の面で塞がれることで、スライダ内に給油路が形成される。グリースニップルから供給された潤滑剤が、この給油路を介して方向転換路に入る。この潤滑剤が方向転換路内に入った転動体に付着して、この転動体が転動通路に入ることで転動通路が潤滑される。
特許文献1には、サイドシールのシール性能を長期に渡って維持できるようにするために、スライダのエンドキャップとサイドシールとの間に潤滑剤含有ポリマ部材を設けて、サイドシールのリップ部(案内レールと接触させる部分)に潤滑剤を直接または案内レールを介して供給することが記載されている。
高密封シール装置は、ホルダケースと、その内部に配置された積層体とからなる。積層体は、2枚の潤滑供給プレートと3枚のシールプレートとからなり、隣り合うシールプレート間に潤滑供給プレートが挿入されている。シールプレートは、多孔構造のメカニカルフロスウレタンフォームからなり、多孔構造の多孔部に潤滑剤が含浸されている。シールプレートは、主にサイドシールの機能を果たす。
この発明の課題は、直動案内装置のスライダなどに固定して使用される潤滑剤供給体として、潤滑剤供給性能を長期に渡って継続できるものを提供することである。
前記板状体としては、潤滑剤を含有する合成樹脂材料を射出成形して得られたものが挙げられる。
この発明の一態様の直動案内装置は、下記の構成(1) および(2) を有することを特徴とする。
この態様の直動案内装置において、前記突出部は、前記軌道面に接触してもよいし、前記軌道面に対して非接触であってもよい。
この発明の一態様の直動案内装置用潤滑剤供給体は、下記の構成(3) 〜(6) を有することを特徴とする。
(4) 潤滑剤を含有する同じ材料からなる板状体のみが複数枚積層された構造を有する。
(6) 前記板状体の厚さは0.50mm以上5.0mm以下であり、前記板状体の積層枚数は2枚以上10枚以下である。
この態様の直動案内装置用潤滑剤供給体において、前記突出部は、前記軌道面に接触してもよいし、前記軌道面に対して非接触であってもよい。
この発明の直動案内装置によれば、従来の潤滑剤供給体を有する直動案内装置と比較して、潤滑性能が長期に渡って継続できる。
図1に示すように、この実施形態の直動案内装置は、案内レール1とスライダ2と、図示されないボール(転動体)と、グリースニップル4とからなる。スライダ2は、スライダ本体21と、エンドキャップ22と、補強板23と、潤滑剤供給体24と、サイドシール25と、ボルト26とからなる。ボルト26により、スライダ本体21のスライダ移動方向両端に、エンドキャップ22、補強板23、潤滑剤供給体24、およびサイドシール25が、この順に固定されている。
サイドシール25は、エンドキャップ22の外形に合わせた略門形状の鋼板251と、これに一体化されたニトリルゴム板252からなる。鋼板251は、グリースニップル4を通す貫通穴251aと、ボルト26を通す貫通穴251bを有する。ニトリルゴム板252は、案内レール1の側面1bに形成された転動溝11に摺接する突出部252aと、案内レール1の角部に形成された転動溝12に摺接する突出部252bと、案内レール1の上面1aに摺接する部分252cを有する。
板状体241は、案内レール1の側面1bに形成された転動溝11に向かう第一の突出部241aと、案内レール1の角部に形成された転動溝12に向かう第二の突出部241bと、案内レール1の上面1aと対向する対向部241cを有する。また、板状体241は、各突出部241a,241bよりも幅方向外側に、側面が開口された貫通穴241dを有し、対向部241cの上側に、上面が開口された貫通穴241eを有する。
潤滑剤供給体24にボルト26を通す貫通穴は、五枚の板状体241の貫通穴241dにスリーブ242A,242Bを嵌めることで形成される。また、潤滑剤供給体24にグリースニップル4を通す貫通穴は、五枚の板状体241の貫通穴241eにスリーブ242Cを嵌めることで形成される。
スライダ2は、ボルト26を、サイドシール25の貫通穴251b、潤滑剤供給体24の貫通穴(五枚の板状体241の貫通穴241dに嵌まったスリーブ)242A,242B、補強板23の貫通穴23a、エンドキャップ22の貫通穴22aに通して、その先端をスライダ本体21に螺合することで組み立てられる。
直動案内装置10において、潤滑剤供給体24をなす五枚の板状体241の突出部241a,241bは、案内レール1の転動溝11,12に接触し、対向部241cが案内レール1の上面1aに接触する。直動案内装置10の使用時には、グリースニップル4に接続された給油管から、エンドキャップ22の給油口22cを介して方向転換路内に潤滑剤が供給されるとともに、潤滑剤供給体24から直接、案内レール1の転動溝11,12に潤滑剤が供給される。
また、この実施形態では、潤滑剤供給体が直動案内装置10のスライダ2に固定されている例を示しているが、この発明の潤滑剤供給体は、潤滑剤の供給を必要とする様々な装置(例えば、ボールねじやオイルシールなど)で使用することができる。
<サンプルNo.1>
図3に示す形状で、厚さが1.0mmの板状体241を以下の方法で作製した。
超高分子量ポリエチレンとして、三井化学(株)製の「ミペロン(登録商標)XM220」を用意した。高密度ポリエチレンとして、三井化学(株)製の「ハイゼックスミリオン(登録商標)6200BPU」を用意した。パラフィン系鉱油として、JX日鉱日石エネルギー(株)製の「FBKオイルRO100」を用意した。これらを、質量比で、超高分子量ポリエチレン:高密度ポリエチレン:パラフィン系鉱油=9:21:70の割合で混合した。この混合物を、厚さが1.0mmの板状体241を得るための金型が設置された射出成形機のホッパーに入れて、射出成形を行った。
得られた板状体241を五枚重ねた潤滑剤供給体24を、図2に示すように、補強板23とサイドシール25との間に配置してスライダ2を組み立てた。このスライダ2を用いて、直動案内装置(日本精工(株)の「リニアガイド装置LH25」)を組み立てた。
図4に示す潤滑剤供給体28を作製した。この潤滑剤供給体28は、図3に示すサンプルNo.1の板状体241と厚さが異なる以外は同じ形状を有する。つまり、潤滑剤供給体28は、案内レール1の側面1bに形成された転動溝11に向かう第一の突出部28aと、案内レール1の角部に形成された転動溝12に向かう第二の突出部28bと、案内レール1の上面1aと対向する対向部28cを有する。また、潤滑剤供給体28は、各突出部28a,28bよりも幅方向外側に、側面が開口された貫通穴28dを有し、対向部28cの上側に、上面が開口された貫通穴28eを有する。
この潤滑剤供給体28を潤滑剤供給体24の代わりに、図2の補強板23とサイドシール25との間に配置してスライダを組み立て、このスライダを用いて前記と同じ直動案内装置を組み立てた。
サンプルNo.2の潤滑剤供給体28を板厚方向で五等分に切断することで、厚さが1.0mmの板状体241を五枚得た。切断は切削加工により行った。
得られた板状体241を五枚重ねた潤滑剤供給体24を用いて、スライダ2を組み立てた。このスライダ2を用いて、サンプルNo.1と同じ直動案内装置を組み立てた。
図3に示す形状で厚さが1.25mmの板状体241を射出成形により作製した。この作製方法は、使用する金型を厚さが1.25mmの板状体241が得られるものとした以外は、サンプルNo.1の板状体241の作製方法と同じである。
得られた板状体241を四枚重ねた潤滑剤供給体24を用いて、スライダ2を組み立てた。このスライダ2を用いて、サンプルNo.1と同じ直動案内装置を組み立てた。
図3に示す形状で厚さが2.5mmの板状体241を射出成形により作製した。この作製方法は、使用する金型を厚さが2.5mmの板状体241が得られるものとした以外は、サンプルNo.1の板状体241の作製方法と同じである。
得られた板状体241を二枚重ねた潤滑剤供給体24を用いて、スライダ2を組み立てた。このスライダ2を用いて、サンプルNo.1と同じ直動案内装置を組み立てた。
サンプルNo.2の潤滑剤供給体28を板厚方向で二等分に切断することで、厚さが2.5mmの板状体241を二枚得た。切断は切削加工により行った。
得られた板状体241を二枚重ねた潤滑剤供給体24を用いて、スライダ2を組み立てた。このスライダ2を用いて、サンプルNo.1と同じ直動案内装置を組み立てた。
図3に示す形状で厚さが0.50mmの板状体241を射出成形により作製した。この作製方法は、使用する金型を厚さが0.50mmの板状体241が得られるものとした以外は、サンプルNo.1の板状体241の作製方法と同じである。
得られた板状体241を十枚重ねた潤滑剤供給体24を用いて、スライダ2を組み立てた。このスライダ2を用いて、サンプルNo.1と同じ直動案内装置を組み立てた。
図3に示す形状で厚さが2.0mmの板状体241と厚さが3.0mmの板状体241を射出成形により作製した。この作製方法は、使用する金型を厚さが2.0mmの板状体241および厚さが3.0mmの板状体241が得られるものとした以外は、サンプルNo.1の板状体241の作製方法と同じである。
得られた厚さが2.0mmの板状体241と厚さが3.0mmの板状体241を一枚ずつ重ねた潤滑剤供給体24を用いて、スライダ2を組み立てた。このスライダ2を用いて、サンプルNo.1と同じ直動案内装置を組み立てた。
図3に示す形状で厚さが0.45mmの板状体241を射出成形により作製した。この作製方法は、使用する金型を厚さが0.45mmの板状体241が得られるものとした以外は、サンプルNo.1の板状体241の作製方法と同じである。
得られた板状体241を11枚重ねた潤滑剤供給体24を用いて、スライダ2を組み立てた。このスライダ2を用いて、サンプルNo.1と同じ直動案内装置を組み立てた。
図3に示す形状で厚さが5.0mmの板状体241を射出成形により作製した。この板状体241はサンプルNo.2の潤滑剤供給体28と同じである。
得られた板状体241を二枚重ねた潤滑剤供給体24を用いて、スライダ2を組み立てた。このスライダ2を用いて、サンプルNo.1と同じ直動案内装置を組み立てた。
サンプルNo.1と同じ方法で得られた厚さが1.0mmの板状体241を五枚、ケース内に重ねて入れて、ケース入りの潤滑剤供給体24を作製した。ケースは、図2の潤滑剤供給体24の上面および両側面を覆うカバー部と、図2の補強板23とが一体化された形状を有する。このケースに板状体241を五枚入れた後に、図2のサイドシール25を接触させることで、五枚の板状体241は、案内レールとの接触面以外の面が覆われた状態になる。
この状態で、ケース入りの潤滑剤供給体24をサイドシール25と一緒に、ボルト26により、エンドキャップ22を介してスライダ本体21に固定して、スライダ2を組み立てた。このスライダ2を用いて、サンプルNo.1と同じ直動案内装置を組み立てた。
図3に示す形状で厚さが0.83mmの板状体241を射出成形により作製した。この作製方法は、使用する金型を厚さが0.83mmの板状体241が得られるものとした以外は、サンプルNo.1の板状体241の作製方法と同じである。
得られた板状体241を六枚重ねた潤滑剤供給体24を用いて、スライダ2を組み立てた。このスライダ2を用いて、サンプルNo.1と同じ直動案内装置を組み立てた。
サンプルNo.1〜No.12 の各直動案内装置について、以下に示す評価試験を行った。グリースニップル4からの潤滑剤供給は行わずに、雰囲気温度:60℃、送り出し量:平均28.4m/min、最大32m/min、ストローク:800mmの条件で作動させ、所定時間毎に潤滑剤供給体24の質量を測定した。この測定値から潤滑剤供給体24の質量の減少量を算出して、一日あたりの潤滑剤の滲み出し量を求めた。この滲み出し量が潤滑剤供給量に相当する。
さらに、サンプルNo.1〜No.12 の各直動案内装置を、グリースニップル4からの潤滑剤供給は行わずに上述の条件で作動させ、走行不能になるまでの時間(寿命)を調べた。走行不能には、潤滑剤供給体による潤滑効果がなくなって焼き付きが生じる場合と、潤滑剤の滲み出しにより潤滑剤供給体が収縮して、案内レールの走行トルクが増大する場合がある。得られた各サンプルの寿命値をサンプルNo.2の寿命値で除算することで、サンプルNo.2を基準とした相対値を得た。
これらの結果を、各サンプルの潤滑剤供給体の構成とともに表1に示す。
サンプルNo.1とNo.3は、板状体の厚さも積層枚数も同じであるが、板状体が射出成形により得られたものであるか、射出成形により得られたものを切断して得られたものであるかという点が異なる。しかし、両者において、潤滑剤供給量および寿命のいずれの結果にも差は生じなかった。
サンプルNo.5とNo.8は、板状体の積層枚数が同じであり、板状体が射出成形により得られたものであるという点でも共通するが、サンプルNo.5では同じ厚さ(2.5mm)の板状体を二枚重ねているのに対して、No.8では異なる厚さ(2.0mmと3.0mm)の板状体を二枚重ねているという点が異なる。しかし、両者において、寿命の結果に差は生じず、潤滑剤供給量の結果にも大きな差は生じなかった。
図6のグラフから以下のことが分かる。
潤滑剤供給体としての厚さが同じでも、板状体の積層枚数が多くなるほど(つまり、板状体の厚さが薄くなるほど)スライダ移動方向の表面積が大きくなるため、潤滑剤供給体からの潤滑剤の滲み出し量(潤滑剤供給量)が多くなる。
さらに、積層枚数が多いほど取り扱いが面倒になるため、作業効率の点から積層枚数は5枚以下であることが好ましい。
以上のことから、潤滑剤供給体を構成する板状体の厚さは0.50mm以上5.0mm以下であり、板状体の積層枚数は2枚以上10枚以下であることが好ましいことが分かる。また、潤滑剤供給体を構成する板状体の厚さは0.50mm以上5.0mm以下であり、板状体の積層枚数は2枚以上5枚以下であることがより好ましいことが分かる。
1a 案内レールの上面
1b 案内レールの側面
10 直動案内装置
11 案内レールの側面に形成された転動溝(軌道面)
12 案内レールの角部に形成された転動溝(軌道面)
2 スライダ
21 スライダ本体
22 エンドキャップ
22a ボルトを通す貫通穴
22c 給油口
23 補強板
23a ボルトを通す貫通穴
23c グリースニップルを通す貫通穴
24 潤滑剤供給体
241 板状体
241a 第一の突出部
241b 第二の突出部
241c 案内レールとの対向部
241d スリーブを通す貫通穴
241e スリーブを通す貫通穴
242A スリーブ(ボルトを通す貫通穴)
242B スリーブ(ボルトを通す貫通穴)
242C スリーブ(グリースニップルを通す貫通穴)
25 サイドシール
251a グリースニップルを通す貫通穴
251b ボルトを通す貫通穴
26 ボルト
4 グリースニップル
Claims (4)
- 潤滑剤を含有する同じ材料からなる板状体のみが複数枚積層された構造を有する潤滑剤供給体。
- 案内レールとスライダと複数の転動体とを有し、前記案内レールおよび前記スライダは互いに対向する位置に前記転動体の転動通路を形成する軌道面をそれぞれ有し、前記転動体を介して前記案内レールに対して前記スライダが直線移動する直動案内装置の、
前記スライダのスライダ移動方向両端の少なくとも一方に固定される潤滑剤供給体であって、
潤滑剤を含有する同じ材料からなる板状体のみが複数枚積層された構造を有し、
前記板状体は、前記案内レールの軌道面に向かう突出部を有し、
前記板状体の厚さは0.50mm以上5.0mm以下であり、前記板状体の積層枚数は2枚以上10枚以下である直動案内装置用潤滑剤供給体。 - 案内レールと、スライダと、複数の転動体と、を有し、
前記案内レールおよび前記スライダは、互いに対向する位置に、前記転動体の転動通路を形成する軌道面をそれぞれ有し、前記軌道面は案内レールの長手方向に延び、
前記スライダは、前記軌道面と前記転動体の戻し通路が形成されたスライダ本体と、前記スライダ本体のスライダ移動方向両端に固定されて前記転動体の方向転換路が形成されたエンドキャップと、前記エンドキャップのスライダ移動方向両端の少なくとも一方に固定された潤滑剤供給体とを有し、
前記転動体は、前記転動通路、前記戻し通路、および前記方向転換路で構成された循環路に配置され、
前記潤滑剤供給体は、潤滑剤を含有する同じ材料からなる板状体のみが複数枚積層された構造を有し、
前記板状体は、前記案内レールの軌道面に向かう突出部を有し、
前記転動体を介して、前記スライダが前記案内レールに対して直線移動する直動案内装置。 - 前記板状体の厚さは0.50mm以上5.0mm以下であり、前記板状体の積層枚数は2枚以上10枚以下である請求項3記載の直動案内装置。
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