JP2016004816A - 熱電変換材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】フォノン散乱粒子を均一に分散させることにより熱特性を向上させると共に、電気特性の低下抑制を両立することができる、熱電変換材料の製造方法を提供する。【解決手段】母相を構成する元素のイオンと、この母相を構成する元素よりもイオン化傾向の高い金属のイオンを含む溶液を還元することにより母相を構成する元素の粒子及び金属粒子を析出させる工程、前記母相を構成する元素の粒子及び金属粒子を酸化処理し、前記金属粒子を優先的に酸化する工程、及び酸化処理後の粒子の混合物を熱処理し、複合化する工程を含む、熱電変換材料の製造方法。【選択図】図1
Description
本発明は、BiTe系熱電変換材料からなる母相中にナノサイズのフォノン散乱粒子が分散している熱電変換材料の製造方法に関する。
近年、地球温暖化問題から二酸化炭素排出量を削減するために、化石燃料から得られるエネルギーの割合を低減する技術への関心が益々増大しており、その1つとして未利用廃熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換し得る熱電変換材料が挙げられる。熱電変換材料とは、火力発電のように熱を一旦運動エネルギーに変換しそれから電気エネルギーに変換する2段階の工程を必要とせず、熱から直接に電気エネルギーに変換することを可能とする材料である。
そして、熱から電気エネルギーへの変換は熱電変換材料から成形したバルク体の両端の温度差を利用して行われる。この温度差によって電圧が生じる現象はゼーベックにより発見されたのでゼーベック効果と呼ばれている。
この熱電変換材料の性能は、次式で求められる性能指数ZTで表わされる。
ZT=α2σT/κ(=Pf・T/κ)
ここで、αは熱電変換材料のゼーベック係数、σは熱電変換材料の導電率、κは熱電変換材料の熱伝導率である。α2σの項をまとめて出力因子Pfという。そして、Zは温度の逆数の次元を有し、この性能指数Zに絶対温度Tを乗じて得られるZTは無次元の値となる。そしてこのZTを無次元性能指数と呼び、熱電変換材料の性能を表す指標として用いられている。
ZT=α2σT/κ(=Pf・T/κ)
ここで、αは熱電変換材料のゼーベック係数、σは熱電変換材料の導電率、κは熱電変換材料の熱伝導率である。α2σの項をまとめて出力因子Pfという。そして、Zは温度の逆数の次元を有し、この性能指数Zに絶対温度Tを乗じて得られるZTは無次元の値となる。そしてこのZTを無次元性能指数と呼び、熱電変換材料の性能を表す指標として用いられている。
熱電変換材料が幅広く使用されるためにはその性能をさらに向上させることが求められている。そして、熱電変換材料の性能向上には前記の式から明らかなように、より高いゼーベック係数α、より高い導電率σ、より低い熱伝導率κが求められる。
しかし、これらすべての項目を同時に改良することは困難であり、熱電変換材料の前記項目のいずれかを改良する目的で多くの試みがなされている。
例えば、特許文献1には、BiTe系熱電変換材料からなる母相中にナノサイズのセラミックス粒子をフォノン散乱用の粒子として熱電変換材料母材中に分散させ、熱伝導の担い手の1つであるフォノンを散乱させることにより熱伝導率を低減することが提案されている。
上記引用文献1においては、液相中において熱電変換材料を構成する元素のイオンとセラミックス粒子を含む溶液を共沈法により粒子を合成し、乾燥させた粒子を熱処理することにより、セラミックス粒子が複合化したナノコンポジット複合熱電変換材料を製造している。この方法により得られた熱電変換材料は、フォノン散乱用の粒子としてセラミックス粒子が熱電変換材料の母相中に分散しているため、熱伝導の担い手の1つであるフォノンを散乱させることにより熱伝導率を低減することができる。しかしながら、熱処理の際に母相を構成する元素が酸化して、電気特性が低下するという問題がある。
すなわち、共沈法により熱電変換材料を構成する元素の粒子は、大気に接触した際に酸化されやすいため、熱処理される際に酸化物(例えばBi2O3、TeO2、Bi2TeO5)として残存し、電気的な性能が著しく低下してしまう。また、この熱処理を水素雰囲気下で行うことにより、上記酸化物を還元することは可能であるが、蒸気圧の低いTe又はSeなどは高温下で蒸発するため、熱処理したときにBi/(Te,Se)比として組成がずれ、電気的な性能が低下してしまう。
従って、本発明の目的は、フォノン散乱粒子を均一に分散させることにより熱特性を向上させると共に、電気特性の低下抑制を両立することができる、熱電変換材料の製造方法を提供することである。
本発明によれば、BiTe系熱電変換材料からなる母相中にナノサイズのフォノン散乱粒子が分散している熱電変換材料の製造方法において、
母相を構成する元素のイオンと、この母相を構成する元素よりもイオン化傾向の高い金属のイオンを含む溶液を還元することにより母相を構成する元素の粒子及び金属粒子を析出させる工程、
前記母相を構成する元素の粒子及び金属粒子を、酸素を含有する気体をこれらの粒子を含む溶液中に通過させることにより酸化処理し、前記金属粒子を優先的に酸化する工程、及び
酸化処理後の粒子の混合物を熱処理し、複合化する工程
を含むことを特徴とする。
母相を構成する元素のイオンと、この母相を構成する元素よりもイオン化傾向の高い金属のイオンを含む溶液を還元することにより母相を構成する元素の粒子及び金属粒子を析出させる工程、
前記母相を構成する元素の粒子及び金属粒子を、酸素を含有する気体をこれらの粒子を含む溶液中に通過させることにより酸化処理し、前記金属粒子を優先的に酸化する工程、及び
酸化処理後の粒子の混合物を熱処理し、複合化する工程
を含むことを特徴とする。
本発明によれば、母相を構成する元素の粒子と金属粒子を酸化処理することにより、金属粒子のイオン化傾向が母相を構成する元素よりも高いため、母相を構成する元素の粒子よりも金属粒子が優先的に酸化され、その結果、熱処理時に母相を構成する元素の酸化が抑制され、熱電変換材料の電気特性の低下を抑制することができる。さらに酸化された金属粒子はフォノン散乱粒子として機能し、熱伝導率を低減することができる。
本発明は、BiTe系熱電変換材料からなる母相中にナノサイズのフォノン散乱粒子が分散している熱電変換材料の製造方法を提供する。以下、図1を参照し、本発明の製造方法の各工程について説明する。
<ナノ粒子合成>
本発明の製造方法においては、まず熱電変換材料の構成元素のナノ粒子を合成する。この工程は、BiTe系熱電変換材料の母相を構成する元素のイオンを溶液中で還元することにより行なう。この母相を構成する元素のイオンとしては、ビスマス及びテルルに加え、セレン、アンチモン、アルミニウム、マンガン、クロム等のイオンも加えることができる。このイオンは塩として、具体的には、塩化ビスマス、塩化テルル、塩化セレン等の塩化物として加えることが好ましい。このように、本発明の方法により得られる熱電変換材料の母相は、Bi2Te3のように、BiとTeのみからなるものや、BiとTeの他に、Sb、Al、Mn、Cr等が添加又は一部置換されたものである。
本発明の製造方法においては、まず熱電変換材料の構成元素のナノ粒子を合成する。この工程は、BiTe系熱電変換材料の母相を構成する元素のイオンを溶液中で還元することにより行なう。この母相を構成する元素のイオンとしては、ビスマス及びテルルに加え、セレン、アンチモン、アルミニウム、マンガン、クロム等のイオンも加えることができる。このイオンは塩として、具体的には、塩化ビスマス、塩化テルル、塩化セレン等の塩化物として加えることが好ましい。このように、本発明の方法により得られる熱電変換材料の母相は、Bi2Te3のように、BiとTeのみからなるものや、BiとTeの他に、Sb、Al、Mn、Cr等が添加又は一部置換されたものである。
この母相を構成する元素のイオンは、目的とする母相の熱電変換材料を構成する組成となるような比で用いる。例えば、Bi2Te3を目的とする場合、Bi:Te=2:3となるような比で用いる。
本発明の製造方法においては、上記のBiTe系熱電変換材料の母相を構成する元素のイオンに加え、この母相を構成する元素よりもイオン化傾向の高い金属のイオンを上記溶液に加える。この母相を構成する元素よりもイオン化傾向の高い金属としては、Sn、Fe、Ni、Cu、Co、Zn等を挙げることができる。
この母相を構成する元素よりもイオン化傾向の高い金属のイオンの添加量は、最終的に得られる熱電変換材料中のこの金属の酸化物の体積分率が1〜40vol%となるような量とすることが好ましい。この酸化物と母相の界面密度を高くして熱伝導率を下げるに有効な量とするためである。
この母相を構成する元素のイオンと、この母相を構成する元素よりもイオン化傾向の高い金属のイオンを含む溶液の還元は、熱電変換材料の構成元素等のイオンを含む溶液に還元剤を含む溶液を滴下して行う。この熱電変換材料の構成元素等のイオンを含む溶液の溶媒としては、水、アルコール等、上記熱電変換材料の構成元素等のイオンを分散できるものであれば特に制限されないが、水、エタノールを用いることが好適である。また必要に応じてpH調整剤を添加してもよい。pH調整剤は、スラリー中で粒子等が凝集するのを抑制するために用いられ、公知のものを適宜適用することができ、例えば、塩酸、酢酸、硝酸、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)などを用いることができる。
この母相を構成する元素のイオンと、この母相を構成する元素よりもイオン化傾向の高い金属のイオンを含む溶液のpHとしては、3〜6又は8〜11に調製することが好ましく、4〜6又は8〜10であることがより好ましい。こうして溶液を調製した後、還元剤を含む溶液を滴下する。還元剤としては、熱電変換材料を構成する元素等のイオンを還元できるものであればよく、例えばNaBH4、ヒドラジン等を用いることができる。
熱電変換材料の構成元素の塩を含む溶液中には熱電変換材料の原料イオン、例えばBiイオンやTeイオンが存在する。従って、還元剤を含む溶液と混合されると、下式に示すように、これらのイオンは還元され、熱電変換材料を構成する元素の粒子、例えばBi粒子やTe粒子が析出することになる。
BiCl3+NaBH4+H2O→Bi+NaCl+H3BO3+H2
BiCl3+NaBH4+H2O→Bi+NaCl+H3BO3+H2
この還元において、Bi粒子やTe粒子の他に、この母相を構成する元素よりもイオン化傾向の高い金属のイオン、例えばSnイオンも同様に還元され、Sn粒子が析出する。この際、副生物、例えばNaClとNaBO3等が生成する。この副生物を除去するために、濾過を行うことが好ましい。さらに、濾過後、アルコールや水を加えて、副生物を洗い流すことが好適である。
<酸化物合成>
次いで、得られた粒子の混合物を酸化処理する。この酸化処理は、例えば熱電変換材料を構成する元素の粒子とこの元素よりもイオン化傾向の高い金属の粒子を含むスラリー中に、酸素もしくは酸素を含有する気体を吹き込むことにより、熱電変換材料を構成する元素(例えば図1においてBi及びTe)の粒子の酸化よりも、この元素よりもイオン化傾向の高い金属(例えばSn)の粒子の酸化を優先的に行う。
次いで、得られた粒子の混合物を酸化処理する。この酸化処理は、例えば熱電変換材料を構成する元素の粒子とこの元素よりもイオン化傾向の高い金属の粒子を含むスラリー中に、酸素もしくは酸素を含有する気体を吹き込むことにより、熱電変換材料を構成する元素(例えば図1においてBi及びTe)の粒子の酸化よりも、この元素よりもイオン化傾向の高い金属(例えばSn)の粒子の酸化を優先的に行う。
この酸化処理により、酸化されやすい金属の粒子が優先的に酸化され、母相を構成する元素は酸化が抑制され、母相の電気的性能の低下を低減することができる。
<複合化>
得られた各構成元素のナノ粒子を熱処理することにより複合化し、熱電変換材料のナノ粒子が生成する。この熱処理は、通常オートクレーブ中にて、複合化に十分な温度、例えば350℃にて4時間加熱することにより行われる。この熱処理により、Bi粒子やTe粒子等の熱電変換材料の構成元素の粒子が合金化され、上記熱処理によって生成した金属酸化物がこの合金中に分散し、熱電変換材料粒子が形成される。
得られた各構成元素のナノ粒子を熱処理することにより複合化し、熱電変換材料のナノ粒子が生成する。この熱処理は、通常オートクレーブ中にて、複合化に十分な温度、例えば350℃にて4時間加熱することにより行われる。この熱処理により、Bi粒子やTe粒子等の熱電変換材料の構成元素の粒子が合金化され、上記熱処理によって生成した金属酸化物がこの合金中に分散し、熱電変換材料粒子が形成される。
実施例1
本発明の方法に従い、下記の手順および条件により、Bi2(Te,Se)3系熱変換材料母相中に、Snの酸化物が分散した熱電変換材料を製造した。
本発明の方法に従い、下記の手順および条件により、Bi2(Te,Se)3系熱変換材料母相中に、Snの酸化物が分散した熱電変換材料を製造した。
熱電変換材料母相構成元素をそれぞれ塩化物BiCl3(2.767g)、TeCl4(3.369g)、SeCl3(3.61g)としてエタノール500mL中に溶解し、さらにSnCl2(0.652g)を加え、これをA液とする。還元剤として水素化ホウ素ナトリウムNaBH4(3.61g)をエタノール500mLに加え、これをB液とする。B液をA液に滴下して、Bi、Te、Se及びSnの金属ナノ粒子を合成した。これは母相粒子4gに相当する。
得られたナノ粒子を含んだエタノールスラリーを、吸引ろ過器で蒸留水500mLとで撹拌しながらろ過洗浄し、不純物を除去した。この工程を4回繰り返した。
次に、回収したスラリーに蒸留水を500mL加え、室温にて大気をバブリングさせながら72時間撹拌した。
最後に、窒素雰囲気において350℃で4時間加熱し、乾燥・熱処理を行った。得られた熱電変換材料のTEM像を図2に示し、XRDパターンを図3に示す。また得られた粒子のSEM−EDXによる組成の定量分析結果を以下の表に示す。
比較例1
クエン酸ビスマス(3.858g)を9%アンモニア水35mLに溶解し、これをA液とする。Te(1.67g)及びSe(0.115g)を蒸留水34mLに溶解した溶液と、NaBH4(1.65g)を蒸留水25mLに溶解した溶液を混合し、10〜20時間撹拌後、フィルターでろ過し、得られたろ液をB液とする。
クエン酸ビスマス(3.858g)を9%アンモニア水35mLに溶解し、これをA液とする。Te(1.67g)及びSe(0.115g)を蒸留水34mLに溶解した溶液と、NaBH4(1.65g)を蒸留水25mLに溶解した溶液を混合し、10〜20時間撹拌後、フィルターでろ過し、得られたろ液をB液とする。
A液にB液を滴下して金属ナノ粒子を合成した。これは母相粒子4gに相当する。得られたナノ粒子を含んだスラリーを、吸引ろ過器で蒸留水500mLとで撹拌しながらろ過洗浄し、不純物を除去した。この工程を4回繰り返した。最後に、窒素雰囲気において350℃で4時間加熱し、乾燥・熱処理を行った。得られた粒子のXRDパターンを図4に示し、SEM−EDXによる組成の定量分析結果を以下の表に示す。
この結果から明らかなように、実施例1ではSnナノ粒子が合成された(表1)。また、熱処理後Bi−Te酸化物は生成されなかった(図2)。表1の結果より、Bi−Te−Se組成ずれが少なかった((Te+Se)/Bi=2.96/2)。一方、比較例1では、熱処理後、Bi2TeO5酸化物が生成された(図3)。表2の結果より、Bi−Te−Se組成ずれが大きかった((Te+Se)/Bi=2.85/2)。酸化物の生成と組成ずれ((Te+Se)/Bi=3.00/2からのずれ)により、性能が低下することは明らかである。
Claims (5)
- BiTe系熱電変換材料からなる母相中にナノサイズのフォノン散乱粒子が分散している熱電変換材料の製造方法であって、
母相を構成する元素のイオンと、この母相を構成する元素よりもイオン化傾向の高い金属のイオンを含む溶液を還元することにより母相を構成する元素の粒子及び金属粒子を析出させる工程、
前記母相を構成する元素の粒子及び金属粒子を、酸素を含有する気体をこれらの粒子を含む溶液中に通過させることにより酸化処理し、前記金属粒子を優先的に酸化する工程、及び
酸化処理後の粒子の混合物を熱処理し、複合化する工程
を含む、熱電変換材料の製造方法。 - 前記母相を構成する元素が、Bi、Te、及びSeを含む、請求項1記載の方法。
- 前記母相を構成する元素としてSbをさらに含む、請求項2記載の方法。
- 前記母相を構成する元素よりもイオン化傾向の高い金属が、Fe、Ni、Cu、Co、Zn及びSnからなる群より選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記母相を構成する元素よりもイオン化傾向の高い金属が、最終熱電変換材料中酸化物として1〜40vol%の体積分率を与える量で用いられる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
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---|---|---|---|
JP2014122495A JP2016004816A (ja) | 2014-06-13 | 2014-06-13 | 熱電変換材料の製造方法 |
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Cited By (1)
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JP2018107424A (ja) * | 2016-12-26 | 2018-07-05 | 三菱マテリアル株式会社 | ケース付熱電変換モジュール |
-
2014
- 2014-06-13 JP JP2014122495A patent/JP2016004816A/ja active Pending
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