JP2016002520A - プリーツフィルター、プリーツフィルターカートリッジ、それを用いたバラスト水処理装置およびバラスト水の処理方法 - Google Patents

Abstract

【課題】使用による劣化や破断を防止し、長期間安定して使用することが可能なプリーツフィルターとその製造方法、およびそれを用いたバラスト水処理装置を提供する。【解決手段】 山部と谷部を繰り返すように折り目を有するフィルター基材を、前記折り目の稜線方向を軸方向とする筒形状としたプリーツフィルターであって、前記プリーツフィルターは筒形状外側に凸状となる山部および筒形状内側に凸状となる谷部の少なくともいずれか一方において、折り目を補強する補強構造を備えるプリーツフィルターとした。【選択図】 図９

Description

本発明は、主に液体の濾過に用いられるプリーツフィルターの構造に関するものであり、特に、船舶に貯留されるバラスト水の処理システムに用いられ大量の水の濾過に用いられるプリーツフィルターおよびそれを用いた装置に関する。

気体や液体から混入物としての固体を分離除去する目的では多種多様なフィルターが用いられており、フィルターをプリーツ形状とすることにより濾過面積を大きくしたプリーツフィルターも主に空気清浄機等の気体用途で用いられている。また、特許文献１には、工作機械の切削液からスラッジを除去するためのフィルター装置として、円筒形状に形成されたプリーツフィルターを用いた例が示されている。この装置では、円筒形状フィルターを回転させながら、フィルター外面に向かって液体を噴出させることで、フィルター洗浄効果の高いフィルター装置を提供できるとされている。

一方、近年、船舶に積載するバラスト水の処理が問題となっている。バラスト水は空荷状態でも安全に航行するために船舶に積載される海水であり、バラスト水を浄化処理して微生物を除去あるいは死滅、不活性化する方法が種々検討されている。比較的大きな微生物の除去の目的で濾過を用いる方法も検討されており、たとえば特許文献２には本願出願人による濾過膜を用いたバラスト水の処理装置が記載されている。特許文献３は同じく本願出願人による発明であって、プリーツフィルターの谷部の裂け等が課題となること、およびその補強手段を開示している。

特開２００８−９３７８３号公報 特許第４８３５７８５号公報 特開２０１２−２４５４２８号公報

海水淡水化やバラスト水などの汽水・海水利用、あるいは下水、生活排水、工業排水など水処理に際しては、水中の異物やゴミ、微生物を除去処理する前濾過処理が必要となる。本願発明者らは、このような濾過へのプリーツフィルターの適用を検討している。ここでは大量の水をできるだけ短時間で濾過する必要があるが、大規模・高流量の運転は概して早期の目詰まりによる処理量や濾過機能の低下を招きやすいことが技術的な問題となっている。

特許文献２に開示されている装置は、円筒状フィルターを筒状容器に内蔵し、円筒状フィルターの外側から内部に流入する液体を濾液として回収する濾過装置である。濾過対象液を筒状容器の側面に設けたノズルからフィルター濾過面の一部に噴出することでフィルター表面に堆積した濾過物を洗浄して透過流束を回復させると共に、洗い流した濾過物を濾過前室から排液することで、安定した濾過状態を連続して継続させている。このようなシステムが安定に連続濾過を維持するのに重要なのは、フィルター濾過面への濾過対象液の噴出による洗浄効果である。経時的にフィルターの洗浄部位を変えてフィルター全体を洗浄していくことを効率的かつ効果的に行うために、円筒状フィルターを濾過中にモーター駆動等で回転させて、噴出ノズルからの濾過対象液の噴出が当たる場所を連続的かつ周期的に変えている。この回転洗浄を確実に行って高い濾過流量を安定に保つためには、ノズルからの濾過対象液の噴出をある程度以上の高い流量レベルで維持する必要があるが、発明者らの検討ではこのような高流量の濾過対象液の噴出を受けた結果、円筒状フィルターは経時的に劣化して、破損が生じ、濾過対象液の一部がフィルターを通らずに濾液に直接混入してしまう可能性があることが判明した。

本願出願人らは、特許文献３に記載のように、破損の発生が谷部に生じることに着目して来た。そのメカニズムが谷部に拡がろうとする向きの力が加わり、フィルター基材に引っ張り応力が集中することである事から谷部の補強手段を検討してきた。しかし、谷部の補強を施してもなお長時間の運転を継続すると破損が生じることが判ってきた。

そこで、本発明は、使用による劣化や破損を防止し、長期間安定して使用することが可能なプリーツフィルター、およびそれを用いた濾過装置としてのバラスト水処理装置および処理方法を提供することを目的とする。

本願発明者らは、フィルターの劣化について鋭意検討の結果、高流量の濾過対象液の噴出を受けたフィルターの、プリーツの山側に当たる折り曲げ部分に破損が発生する現象を確認し、次の構成に至った。

すなわち、山部と谷部を繰り返すように折り目を有するフィルター基材を、前記折り目の稜線方向を軸方向とする筒形状としたプリーツフィルターであって、前記プリーツフィルターは筒形状外側に凸状となる山部において、折り目に対する補強構造を備えるプリーツフィルターである。

また、本願は上記プリーツフィルターを濾過膜として用いたバラスト水処理装置であり、前記プリーツフィルターは円筒上面と円筒底面をそれぞれ水密に封止し、かつ円筒軸を中心に回転可能に保持され、前記プリーツフィルターの外周面に向けて被処理水を流出する被処理水ノズルと、前記プリーツフィルターを囲むように設けられ前記被処理水ノズルのノズル口を内部に備えた外筒部を有するケースと、前記プリーツフィルターを透過した濾過水を前記プリーツフィルターの円筒内部から前記ケースの外部へ導出する濾過水流路と、前記プリーツフィルターで濾過されなかった排出水を前記ケースの外部へ排出する排出流路とを備えたバラスト水処理装置を含む。

さらに、当該バラスト水処理装置を船体内に搭載し、船体外部から取得した海水を被処理水として用い、前記バラスト水処理装置により処理された濾過水にさらに殺滅処理を加えた後に、バラスト水として船体内に貯留するバラスト水の処理方法である。

使用による破断を防止し、長期間安定して使用することに寄与するプリーツフィルター、およびそれを用いたバラスト水処理装置を提供することが可能となる。

プリーツフィルターの代表的構成例を説明する斜視模式図である。 図１のプリーツフィルターの横断面の一部を拡大した図である。 図１のプリーツフィルターを側面から見た一部を示す図である。（Ａ）は折れ曲がりが生じる前の状態、（Ｂ）は破損の原因となる折れ曲がり時の状態を模式的に示す。 補強構造の一例として樹脂補強された折り曲げ部を拡大した模式図である。 補強構造の一例として樹脂補強された折り曲げ部の別な態様を説明する模式図である。 補強構造の一例として樹脂補強された折り曲げ部の別な態様を説明する模式図である。 プリーツフィルターの折り曲げ部を拡大した模式図である。 補強構造の一例として樹脂補強された折り曲げ部の別な態様を説明する模式図である。 補強構造の一実施態様である補強板を備えたプリーツフィルターの構造例を示す斜視模式図である。 図９のプリーツフィルターの一部を拡大して説明する上面模式図である。 図９のプリーツフィルターの固定構造を説明する側面模式図である。 補強板の一例としてのメッシュ板の構造を説明する斜視図である。 補強構造の組合せの一例として、山部Ｍの折り目に樹脂補強構造を設けると共に、山部裏側に補強部材としての補強板を備えた構造を示す拡大模式図である。 補強構造の一実施態様である補強板を備えたプリーツフィルターの別な構造例を示す斜視模式図である。 補強構造の一実施態様である補強板を備えたプリーツフィルターの別な構造例を示す上面拡大模式図である。 エンボス加工を施したフィルター基材の一例を示す図である。 プリーツフィルターカートリッジの代表的構成例を説明する斜視模式図である。 本発明の実施態様であるバラスト水処理装置の一例を示す図であり、軸線を含む垂直断面の構成を示す断面模式図である。 図１８における水平Ａ−Ａ断面の構成を模式的に示す図である。 本発明の実施態様であるバラスト水処理装置を用いたバラスト水処理システムの全体構成例を説明する図である。 ワイブルプロットによる寿命推定結果を示すグラフである。

［本願発明の実施形態の説明］
以下、本願発明の態様について列記して説明する。

本願発明の一つの実施態様は、山部と谷部を繰り返すように折り目を有するフィルター基材を、前記折り目の稜線方向を軸方向とする筒形状としたプリーツフィルターであって、前記プリーツフィルターは筒形状外側に凸状となる山部において、折り目に対する補強構造を備えるプリーツフィルターである。折り目の稜線が山部と谷部を交互に、かつ平行に複数形成しつつ全体として環状をなすプリーツフィルターである。筒形状の外側から内側へ、または内側から外側に向けての濾過に使用することができる。

ここで補強とは、フィルター基材の折り目に生じる破断を発生し難くすること、すなわち破断に対する強度を上げることを言う。フィルター基材そのものの機械的な強度を上げるという意味や構造物としてのプリーツフィルター全体の機械的な強度を上げるという意味では用いない。破断とは、フィルター基材に生じる裂け目や微細な孔などであって、本来の濾過機能を損ねて濾過によって除去されるべき対象物が通り抜ける程の損傷をいう。補強構造とは補強を行うための構造全般を指し、補強手段や補強部と呼び変えることができる。補強構造とは破断を抑制あるいは防止する構造の総称であって、そのような破断が生じ難くするためにフィルターに付加する構造物、フィルター基材の加工、それらの組み合わせ、さらにはフィルター基材を含んだ補強部自体を言う。

プリーツフィルターにおいては、濾過対象である流体の圧力によって、あるいはその圧力の変動によってプリーツの折り曲げ部分である折り目に応力や応力変動が加わる。特に、濾過対象とする流体が水などの液体の場合は、空気等の気体の場合に比べてフィルターが受ける圧力が大きく、折り目が変形して破断を生じやすい。プリーツフィルター全体に均一の圧力が加わる使用形態でも折り目には圧力が集中したり、さらに圧力が変動する場合に折り目に変形が生じたりして破断の可能性が高くなる。発明者らの実験によると、破断は山部や谷部となる折り目にて生じやすいことが確認できた。また、山部と谷部とでは、折り目の挙動が異なり、破断が生じる様相が異なることも判明した。

以下、筒状外側から濾過対象液が供給され、フィルターの基材によって濾過された液が筒状内側から排出される場合を想定して山部と谷部を説明する。濾過対象液（被濾過液）の流れが逆の場合には山部と谷部は逆に定義される。すなわち、濾過対象液の流れを受ける側（濾過対象液が接する面）が山側となる折り目を山部と呼ぶ。逆に濾過対象液の流れを受ける側が谷側となる折り目を谷部と呼ぶ。仮にフィルターが筒状ではなく平板状の場合においても、補強については濾過の方向に応じて読み替えれば良い。

プリーツの奥まで濾過対象液が入りプリーツ幅が拡張される動きによってプリーツ内のフィルターが十分に洗浄される。このときに谷部には濾過対象液の圧力により折り曲げを開こうとする方向の力が加わる。また圧力変動によって折り曲げ部の曲げ角度が変動（すなわちプリーツが開閉）することから、引張応力と繰り返し曲げによって谷部の破断の可能性が高まる。

一方、山部では濾過対象液の圧力によって折り曲げが閉じる方向に圧力が加わるので、谷部のような開く方向の応力は加わり難く、同様のメカニズムでの破断は生じ難いと考えられていた。山部では、複数連続した山部のうちの一つまたは複数の山部間に濾過対象液の圧力が集中した場合に、山部同士が開こうとする力が加わる。プリーツフィルター全体として上下端は固定されているため、山部同士が開こうとすると、山部の稜線に張力が加わると共に、中央付近にて山部の稜線が鋭利に折れ曲がる変形を生じ易い。このような折れ曲がり部に破断が生じやすい。

このような破断を防止するために、補強構造を設けることによって、濾過不良の発生を抑止できると共に、プリーツフィルターの強度が増し、寿命を延ばし、ひいては濾過装置の長期運転が可能となる。また、濾過装置としてはフィルターの交換にかかる部品および作業を含めた運用コストの低減を図ることが可能となる。さらには、濾過装置の濾過量や濾過速度を向上することが可能となる。

補強構造の一の実施態様は、前記折り目において基材表面を覆う樹脂または前記折り目において基材に浸透した樹脂、を補強体とする樹脂補強構造である。フィルター基材に、より破断しにくい樹脂材料を複合することによって、破断の可能性を低減できる。フィルター基材として不織布等の繊維質の基材を用いる場合に特に有効である。中でも樹脂を浸透させる構造により大きな効果が得られる。

フィルター基材として特に好ましくはポリエチレンテレフタレート製不織布などの不織布が用いられる。不織布等のフィルター基材は微視的にみると繊維が多重に絡み合った構造を持つ。フィルター基材の破断の一つの態様は、基材の折り目が変形を繰り返すことによる基材に加わる局所的な力により、繊維の一部が破断するものである。このような破断の生じやすい折り目部分において基材表面を樹脂で覆ったり、特に基材に樹脂を浸透させたりすることによって、繊維のつながりを補強し、破断を抑止することができる。

樹脂の浸透は、基材に樹脂を含浸して形成すると良い。比較的簡便な手段により樹脂を内部まで強固に補強できる点で好ましい。基材と補強体樹脂が一体となることで強度が向上し、または破断抑制により寿命が効果的に向上する。含浸の手段は樹脂の塗布や浸漬など、基材中に樹脂が浸透した後に硬化する種々の手段を採用できる。含浸させる樹脂としては特にポリウレタンが好ましく用いられる。最も簡単な含浸方法は、折り目に沿って樹脂を塗布し、塗布された樹脂がフィルター基材に浸透した状態で硬化する方法である。樹脂は基材の塗布した面から反対側の面まで浸透していることが破断防止の効果が高く好ましい。塗布は少なくとも折り目の先端部分が含まれるようにローラーや刷毛によって塗布されると良く、折り目全体を覆うことが好ましい。折り目全体とは、基材の横断面において基材本来の直線部分から曲げ部に移る曲率の変曲点に挟まれた折り目部分を言う。

樹脂補強構造は、基材の表面に樹脂部材を貼付して形成されても良い。特に表面を覆う樹脂を厚くすることが可能となり、強固に補強できる点で好ましい。貼り付けは接着剤を用いても良く、樹脂自体の接着性を利用してもよい。これらの一形態として、補強体としての樹脂シートを熱融着により貼り付ける際に、融着された樹脂の一部が基材中に含浸する形態も挙げられる。

本願発明に含む別な態様を示す。それは、山部と谷部を繰り返すように折り目を有するフィルター基材を、前記折り目の稜線方向を軸方向とする筒形状としたプリーツフィルターであって、前記プリーツフィルターは筒形状外側に凸状となる山部に対する補強構造を備え、当該補強構造は、前記フィルター基材とは別体となる補強部材を、前記山部の折り目裏側に前記折り目に沿うように設けた部材補強構造であるプリーツフィルターである。

さらに、補強構造は、前記折り目において基材表面を覆う樹脂または前記折り目において基材に浸透した樹脂を補強体とする樹脂補強構造、および前記フィルター基材とは別体となる補強部材を前記折り目に沿うように設けた部材補強構造の双方で構成される、請求項１に記載のプリーツフィルターとすると好ましい。部材補強構造、または樹脂補強構造はそれぞれに有効であるところ、両方を備えることによってより一層効果的に補強することができる。

補強部材は、例えば山部を構成する折り目を補強するように折り目の凹部側近傍に折り目に沿うように設けることで、折り目の変形と共に変形可能な部材である。例えば、円柱状、角柱状などの棒状の部材や、板状の部材を利用できる。板状の部材の場合は、その端面をフィルター基材の折り目に沿うように（常に接しても良いが必ずしも接する必要はない）配置する。補強部材は折り目が全く変形しないように補強するのではなく、折り目の変形に追随して変形する事が好ましい。好ましくは、基材を支持することで局所的な変形、すなわち折れ曲がりを防止し、かつ変形からの復元を助けるように機能する部材である。板状部材（以下、補強板とも呼ぶ）は板が撓む方向、すなわち板の面に垂直な方向には変形しやすいが、板の面方向には変形しないという異方性を備えることから折り目の補強に好適である。

補強板には、表面から裏面に貫通する多数の孔を有する平板状基材、つまり多孔質の板材を用いることが好ましい。特に多孔質の板材としては網目状板材を用いることが簡便である。補強板はフィルターの折れ曲がり変形を防止する強度を持った部材であれば良い。同時にフィルターのプリーツが被処理水の圧力によって広がることを過度に妨げないことを考慮必要である。さらに、濾過液の流れを良くし、かつフィルター全体の軽量化をも考慮することが好ましい。

補強板の材質は上述の効果を奏する範囲であれば特に限定されない。代表的には、ポリプロピレン、ポリエチレン（特に復元力の点で中〜低密度ポリエチレン）、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、塩化ビニルからなる群から選択されるいずれかの樹脂により形成されていると良い。製造上の扱いやすさ、軽量化、コスト等の面で必要な強度を持った樹脂部材が好ましく用いられる。特に好ましくは適度な強度と復元力を備えている点でポリプロピレンである。金属系やガラス・セラミックなど非金属系の材料には強度の面で樹脂を凌ぐ性能を持つものもある。しかし、本実施の形態において変形に対する復元力も求められる。そのため、金属ならバネ材や焼き入れ処理などが必要となるが、網構造への加工や海水による腐蝕性をも総合的に勘案すると、上述の樹脂材料が適している。

後述のバラスト水処理装置への適用などを考慮して寸法を考えると、孔の大きさは０．５〜８ｍｍ程度（網目の場合としてピッチが１〜１０ｍｍ）が濾過液の透過と板強度のバランスの点で好ましく用いられ、より好ましくは３〜５ｍｍ（網目の場合としてピッチが３〜５ｍｍ）である。板厚はプリーツのピッチ（隣接する谷部どうしの間隔）と所望の強度とを考慮して選択される。０．３〜２ｍｍが好ましく用いられ、より好ましくは０．５〜１．５ｍｍである。

補強板は、一枚ずつ独立した板材に限定されるものではなく、例えば山部と谷部を繰り返すように折り目を有し、前記フィルター基材の筒形状内側表面に沿うように設けられていても良い。このような形状により、より一層高い補強効果を得ることができる。

さらにフィルター基材がエンボス加工されていると良い。エンボス加工とは、フィルター基材に多数の連続した凹凸を付ける加工として一般に用いられる加工方法である。このような表面を備えたフィルター基材を用いることによって、フィルター自身が折れ曲がりにくくなる。また、エンボスによって生じる隙間が、折りたたまれたプリーツの奥側への被処理水の流入および濾過された処理水の流出を妨げない流路となる点で好適である。

以上の山部の補強構造に加えて、さらに前記谷部をなす折り目において、基材表面を覆う樹脂または前記折り目において基材に浸透した樹脂を補強体とする樹脂補強構造を備えるプリーツフィルターとすることが特に好ましい。谷部には濾過対象液の流入によって拡がる向きの力が加わりフィルター基材に引っ張り応力が集中するために裂け等の破損が生じやすいためである。さらには、山部のプリーツ間への濾過対象液の流入によって１つのプリーツの幅が元の幅の数倍まで拡張するように膨らむと、当該拡がったプリーツ間の両隣のプリーツの谷部は元の位置から左右に押しやられることで、谷部でも山部と似た現象として稜線が鋭利に折れ曲がる変形を生じ得るからである。

さらに本願の実施態様は、上述のいずれかのプリーツフィルターと、当該プリーツフィルターの上底部および下底部にそれぞれ備えた蓋部材とを有するプリーツフィルターカートリッジである。筒状のプリーツフィルターを濾過に用いるためには上底部と下底部を封止して筒状の内部と外部で液漏れが無いように構成する必要がある。このような封止構造は濾過装置の一部として構成することも可能である。好ましくは、予めプリーツフィルターと一体に蓋部材を固定してプリーツフィルターカートリッジとして構成することが好ましい。製造、運搬等の取扱いが容易で有り、装置への取り付けにおいても扱い易い。

プリーツフィルターカートリッジの円筒形状外側から見た山部裏側に、蓋部材において上下を固定された補強部材を備えると良い。山部の折り目の破損を抑制する手段として、蓋部材において上下を固定された部材補強構造が有効である。補強部材の代表例は樹脂補強板である。なお、補強部材はこれに限定されるものではなく、他の部材や他の補強手段に代える、あるいは併用することも可能である。山部の他の補強手段の併用として、上述の樹脂補強構造が好ましい。相乗的な補強効果を得ることが期待できる。

また本願では、上述のプリーツフィルターを濾過膜として用いたバラスト水処理装置を開示する。すなわち、以上に述べた筒状のプリーツフィルターを濾過膜として用いたバラスト水処理装置であり、前記プリーツフィルターは円筒上面と円筒底面をそれぞれ水密に封止し、かつ円筒軸を中心に回転可能に保持され、前記プリーツフィルターの外周面に向けて被処理水を流出する被処理水ノズルと、前記プリーツフィルターを囲むように設けられ前記被処理水ノズルのノズル口を内部に備えた外筒部を有するケースと、前記プリーツフィルターを透過した濾過水を前記プリーツフィルターの円筒内部から前記ケースの外部へ導出する濾過水流路と、前記プリーツフィルターで濾過されなかった排出水を前記ケースの外部へ排出する排出流路とを備えたバラスト水処理装置である。

このような構造の装置においては、円筒形状プリーツフィルターの円筒外部のノズル口から被処理水がプリーツフィルターの外側面に向かって噴出するため、プリーツの一部に被処理水の圧力が集中する。すると、プリーツが開く方向に圧力が加わり、谷部と山部のそれぞれでフィルターが破損する可能性が高くなる。そこで、上述の補強構造を採用することにより、濾過不良の発生抑止、プリーツフィルターの長寿命化による装置の長期運転、運用コストの低減等の効果が期待できる。

なお、ここではプリーツフィルターの上下はそれぞれの蓋部材により封止される。予めプリーツフィルターと蓋部材を一体としたプリーツフィルターカートリッジとして用いる事も可能である。

また上述のプリーツフィルターを濾過に用いた方法として、上述のバラスト水処理装置を船体内に搭載し、船体外部から取得した海水を被処理水として用い、前記バラスト水処理装置により処理された濾過水にさらに殺滅処理を加えた後に、バラスト水として船体内に貯留するバラスト水の処理方法とすると良い。

このような装置を用い、あるいは方法を用いることにより、従来にも増してフィルターの破損が抑制され、濾過不良を起こすこと無く長期間安定して使用することが可能となる。よって、メンテナンスの人的コストおよび交換材料としてのコストを抑制することができ、バラスト水自体の製造を一層容易にすることが可能である。

［本願発明の実施形態の詳細］
本発明にかかるプリーツフィルターおよびバラスト水の処理装置の構成を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

（プリーツフィルターの構成）
図１は、本発明の実施形態としてのプリーツフィルターの代表的構成を説明する斜視模式図である。このプリーツフィルター１０は平面帯状の基材１を山谷交互に平行な折り目で折りたたむことで、いわゆるプリーツ形状とし、さらに円筒状につなぎ合わせて構成されている。以下、特に効果的な代表例として円筒状のプリーツフィルターについて説明するが、ここに開示する補強構造は筒状のプリーツフィルターに限定されることなく、平板状のフィルターとして用いる場合にも、破断防止という効果において適用できるものである。

図１において円筒状プリーツフィルター１０の円筒外側から濾過対象液が供給され、フィルターの基材１によって濾過された液が円筒内側から排出される場合を想定する。フィルターが平板等の場合においても、濾過の利用形態に応じて濾過対象液の流れの方向（圧力のかかる方向）に応じて読み替えれば良い。濾過対象液の圧力が加わる側に凸となる折り曲げ部を山部とする。図１においては、筒形状外側に凸状となる側の折り目部分であるＭの部分が山部であり、筒形状内側に凸状となる折り目部分であるＶの部分が谷部である。

フィルターの基材には多孔質樹脂シートが用いられる。材質として例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン（ＰＴＦＥ）、ポリフッ化ビニリデン（ＰＶｄＦ）等からなる延伸多孔質体、相分離多孔体、不織布等の多孔質構造物が利用される。高流量処理を行う目的においては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルからなる不織布が特に好適に用いられる。

図１において、折り曲げ部である谷部もしくは山部、または谷部と山部の両方に破断防止のための補強構造を設けることができる。谷部と山部についてそれぞれ説明する。図２は、図１のプリーツフィルターの円筒軸方向に直角な横断面の一部を拡大した図である。Ｖは谷部、Ｍは山部を指す。図２を用いてフィルター基材１に加わる力を説明する。図２において、並んだ矢印は濾過対象となる流体（ｆｌｕｉｄ）がＭ側から供給される状態を示している。フィルター基材１にはプリーツが開く方向に力Ｐが加わる。さらに、被処理液の流量や圧力の変動により、加わる圧力Ｐは変動し、振動や繰り返し曲げがフィルター基材１に作用する。このように濾過対象液の圧力を受けたプリーツフィルターにおいて、谷部には拡がろうとする向きの力Ｐが加わり、谷部の基材１に引っ張り応力が集中する。また、圧力の変動があると、折り曲げ部に繰り返し曲げが加わる。これらによって、特に谷部においては、折り曲げ部稜線に沿って裂けることによる孔が生じやすいと考えられる。このように、谷部においては、折り曲げ部を裂け難くする破断防止をおこなうことが好ましい。

図３は、図１のプリーツフィルターの一部を円筒側面方向から見た図である。図３（Ａ）および図３（Ｂ）を用いて、上述の圧力Ｐによりプリーツフィルターに生じる破損の一形態を説明する。図３（Ａ）は折れ曲がりが生じる前の状態、図３（Ｂ）は破損の原因となる折れ曲がり時の状態を模式的に示している。Ｍは山部、Ｖは谷部を示す。フィルターの上下端は形状固定と密封のために固定されているとする。そこで、図２のように山部を開く方向に圧力Ｐが繰り返し加わることで、図３（Ｂ）に示す方向にフィルター中央部付近Ｄ部が折れ曲がる場合がある。この折れ曲がりが繰り返されることにより、フィルター基材１にＤ部において割れや破れなどの破断が生じて濾過機能が損なわれる。特に、濾過対象液が水等の液体の場合は、空気等の気体の場合に比べてフィルターが受ける圧力が大きく、フィルターが折り曲げ部にて破断しやすい。このように、山部においては、折り曲げ部の稜線が屈曲し難いような破断防止を行うことが好ましい。

さらに上述の図３（Ｂ）の状態においては、Ｄ−Ｄ間の距離が元の幅の数倍以上に奥まで拡張すると、拡張したプリーツの左右（図ではＤの開いた外側に位置する谷部）のプリーツが左右に押しやられて図３（Ｂ）のＤと類似した屈曲が生じる場合がある。このように谷部においても従来知られていた開閉に起因する図のＥ部の破損とは異なるメカニズムによる破損も確認された。したがって、谷部においても、折り曲げ部の稜線が屈曲し難いような、また屈曲によって破断が生じ難いような破断防止を行うことが好ましい。

（樹脂補強構造）
このように多孔質樹脂シートであるフィルター基材を折り曲げた部分の破断防止構造の１つの実施形態として、折り曲げ部近傍を樹脂により補強することができる。樹脂を補強構造としてフィルター基材に適用する手段としては、基材表面への樹脂の塗布、含浸、樹脂シートの貼り付けなどが挙げられる。その他、樹脂を基材表面に一体化させる手段、樹脂を基材に含浸させる手段であれば種々の方法が利用できる。もっとも簡便な方法は、折り曲げた基材の稜線に沿って樹脂を塗布することである。塗布は筆やローラー、吹きつけ等の既知の手段により行うことができる。塗布された樹脂は基材表面に付着した後に硬化させる。フィルター基材へ樹脂が含浸されることが好ましい。基材を一層強固に補強できるからである。樹脂を基材表面に塗布した場合においても、樹脂の少なくとも一部が基材内に含浸された状態で硬化することが好ましく、樹脂を塗布した裏面側まで含浸・硬化されていることが一層好ましい。

図４から図６は、プリーツフィルターの折り曲げ部を拡大して樹脂補強構造を説明する模式図である。これらの図では折り曲げ部が山部Ｍであるとして説明するが、樹脂補強構造としては谷部にも同様に適用できる。図４は、山部Ｍにおいて、フィルター基材１の折り曲げ内側面（凹面側）に補強用の樹脂２が含浸されている様子を示す。フィルター基材１は多孔質樹脂であり、樹脂２はフィルター基材１の多孔質の孔部において基材表面に付着している。含浸により孔部を埋め、含浸部分が無孔質となってもよい。

図５および図６は含浸の別な態様を例示したものである。図５では折り曲げ部の基材１の外側表面に樹脂２を含浸、図６では基材１の両面に亘って全体に樹脂２を含浸している。図６ではまた、含浸した樹脂２がさらに基材１の表面を覆うように厚みを持って付着している様子を表現している。このように基材１の内部に含浸させることのみに限定されることなく表面への樹脂の付着であっても効果がある。最も好ましい態様は、樹脂は基材の一方表面から他方表面に亘るまで全体に浸透している態様である。

樹脂補強構造を適用する範囲について図７を用いて説明する。図７はプリーツフィルターの折り曲げ部を拡大した模式図である。折り目はマクロに見ると鋭利な角部であるが、拡大してみるとある曲率をもった曲げ部分になっている。山部または谷部の折り目の補強対象となる範囲は、少なくともフィルター基材に折り目としての曲げが加わっている範囲である。断面で見た場合、平板に相当する直線部であるＬ部から折り曲げた部分の曲線部であるＲ部に移行して、再び直線部Ｌ部に戻る形状をなす。折り曲げ部に相当する曲線部Ｒ部が補強構造を適用する範囲である。

折り目の横断面において、樹脂補強構造はＲ部全体に亘っており、樹脂補強部分の端部（境界部）が基材の直線部分Ｌ部に存在するように設けられていることが好ましい。補強部分と補強の無い部分の境界部には応力が集中しやすいため、変形しにくい直線部に境界部が存在する方が破断につながりにくい。

樹脂補強構造は、少なくとも折り曲げ部の長さ方向中央部に設けられれば良い。中央部とはプリーツの上下端を固定した場合の上下方向長さの中央付近であって、好ましくは折り曲げ部長さの少なくとも四分の一をいう。好ましくは、折り曲げ部の長さ方向全体に亘って補強すると良い。補強された部分と補強されていない部分の境界部分は硬さが不連続となることから、応力が集中しやすく、長期の使用において破断の原因となりやすいからである。

含浸される樹脂は、シリコーンやエポキシ、ポリウレタンなどの熱硬化性樹脂、ポリ塩化ビニル（ＰＶＣ）、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ＥＴＦＥ、ＰＶｄＦ等の熱可塑性樹脂、またはＰＶｄＦやシリコーンを溶剤で希釈したもの等、その他の合成ゴムや天然ゴムを含むエラストマー類が利用可能である。フィルターの素材に浸透しやすいものが望ましい。特に、プリーツ形成後に塗布により補強する場合には、ポリ塩化ビニルやポリウレタンが好ましく、塗布が容易等の理由でポリウレタンが特に好ましく用いられる。

また、含浸される樹脂は、含浸時には多孔質内に浸入する流動性が必要であるが、含浸後はフィルターと一体となって容易に分離できないようにすることが必要である。熱硬化性樹脂では含浸後加熱硬化すれば良い。二液性硬化樹脂では混合後すぐに含浸させた後に硬化させることができる。溶剤希釈して粘度を下げた樹脂の場合は含浸後に溶剤を乾燥するためにしばらく時間を置いて硬化させると良い。

さらに好ましくは、含浸される樹脂は硬度が小さい樹脂である。含浸された樹脂は、フィルター基材の多孔質内部、繊維の隙間を埋めるように樹脂が浸透した状態で硬化されている。フィルター基材の変形に伴って樹脂も柔軟にある程度の弾力を持って変形しつつ、基材の破断を抑制することができる。特にフィルター基材が不織布等の繊維質の場合には、含浸された樹脂が繊維を覆うと共に繊維同士を結着して繊維の動きを抑制することにより、繰り返し変形による繊維の破断を防止できるものと考えられる。樹脂の硬度は、デュロメータ硬さにおいて、ショア硬さ２０Ａ〜６０Ａ（ゴム・エラストマー（ＪＩＳ Ｋ６２５３）標準測定時間：加硫ゴム３秒、エラストマー１５秒による）またはショア硬さ５Ｄ〜３０Ｄ（プラスチック（ＪＩＳ Ｋ７２１５）１秒以内に指針の最大値を読取る）が好ましい。フィルター形状の変形（プリーツの拡がり）を過度に妨げず、かつフィルター基材の破損を抑制することが樹脂の特性として求められる。硬度が２０Ａ（または５Ｄ）未満では樹脂自体の強度不足によってフィルターの変形に伴って樹脂自体が破壊してしまう。このため、例えば不織布繊維の解れを防止することができない。また６０Ａ（または３０Ｄ）を超えると柔軟な変形性に乏しくなりプリーツフィルターの変形を過度に妨げる点で好ましくない。

特に軟質のポリウレタンが不織布との接着力の強さや塗布の容易さや破断抑制効果、コスト等の総合判断において好ましく用いられる。軟質と硬質の別についての知見として、例えばサンユレック社製ＳＡ−７０７３ＡとＳＡ−７５０２Ｂの二液からなる軟質ポリウレタンは同社製ＳＡ−７０７３ＡとＳＡ−７０６８Ｂの二液からなる硬質ポリウレタンに比べて柔軟で破断防止効果に優れる。

図８は、さらに別な樹脂補強構造を例示したものであり、基材１の表面に樹脂シート３を貼り付けた例である。このように含浸を伴わない手段によっても、濾過対象液の圧力を受け止め、また基材１との接着により基材の受ける力を分担することによって補強が可能である。図示はしないが樹脂シートを基材１の凸面側に貼り付ける構造、あるいは両面へ貼り付ける構造によっても効果が得られる。

（樹脂補強構造の製造方法）
樹脂の塗布以外の樹脂補強構造の製造方法として、樹脂シートを用いる場合の方法を記す。フィルター基材に貼付または含浸させたい樹脂をシートとして準備する。シートの大きさは樹脂補強した部分の大きさに合わせて準備すれば良い。まずフィルター基材の片側表面にシート状の樹脂を添える。樹脂はフィルター基材よりも融点の低い熱可塑性樹脂とする。例えば、多孔質樹脂シートとして融点が２６０℃前後のポリエチレンテレフタレートを主材料とするポリエステル製不織布を用い、含浸させる熱可塑性樹脂として融点が２３０℃前後のポリメチルペンテンや６６ナイロン、ポリカーボネート、さらには融点が一般に１２０℃前後のポリエチレン、１６０℃近辺のポリプロピレン等を好適に用いることができる。ヒートシーラー等の加熱加圧装置によって樹脂シートとフィルター基材を加熱することにより樹脂シートの一部または全部が溶融する。ここで、樹脂の一部または全部がフィルター基材の多孔体内部に含浸される。当該加熱の後または加熱と並行してフィルター基材を折り曲げる。折り曲げる際に所望の半径をもつ金属治具を当接させながら折り曲げることで、折り曲げ部分の曲率を一定にすることが可能である。

以上説明した製造方法は、平面状の基材を周期的に折り曲げることにより、山部と谷部が繰り返し連続して形成されるプリーツフィルターの製造方法であって、前記折り曲げ部となる基材の少なくとも一方面に樹脂シートを添える工程と、前記樹脂シートが添えられた部分の前記基材と前記樹脂シートとを加熱することにより、前記樹脂シートの少なくとも一部を前記基材内に含浸する含浸工程と、前記折り曲げ部を折り曲げた状態で冷却固定する冷却工程とを備えた、プリーツフィルターの製造方法である。

以上は、基材中に補強用の樹脂を含浸する場合について記載したが、樹脂シートを接着剤により貼り合わせる方法や、熱融着で接着する方法により、含浸以外の樹脂補強構造を形成することが可能である。また、含浸させる場合であっても樹脂シートを用いる事無く他の方法によって樹脂を基材の所定の部分に含浸させた後に、当該部分を折り曲げることでも良い。また、折り曲げられた後に樹脂を含浸させる方法でも良い。さらに、折り曲げにおいて必ずしも曲率を定める治具は必要ではなく、通常の折りたたむ動作によって折り曲げても良い。フィルター基材の材質や厚さにより、特段の治具を用いずに折りたたむ場合でも、折り目は一定以上の半径で曲線的に曲げられる。樹脂の塗布方法については既知の塗布方法によることができる。塗布とは例えばローラーによる塗布や、刷毛や筆による塗布の他、樹脂を直接基材表面に流し込む方法などが挙げられる。

（部材補強構造）
フィルター基材とは別体となる補強部材を折り目に沿わせて設けた部材補強構造の実施態様について図を用いて説明する。図９はその代表例としてのプリーツフィルター１０の構造を示す斜視図である。山部Ｍの裏側となる筒形状内側の各凹部に、山部折り目に沿うように個々に独立した補強板２０を備えている。この状態をわかりやすく説明するために、図９の一部を拡大した模式図が図１０である。折り目の凹部側近傍に補強部材を有するとは、山部裏側であって谷部側から見た凹部、すなわち図において谷部Ｖと隣接する谷部Ｖとの間の凹部側に、補強板を備えることを意味する。図１０のように隣接する谷部Ｖの中央付近に板状の補強板２０を山部Ｍの裏側に向けて装着すると良い。図１１は、図１０の部分を円筒内部側から見た側面模式図であり、形状の固定状態を説明する図である。補強板２０は、フィルター基材１１と共に、円筒上部に設けられた蓋部材１２と円筒下部に設けられた蓋部材１３により固定されている。蓋部材は円筒の上下に配置される円盤状、あるいは円環状の部材であり、フィルター基材１１と補強板２０の配置形状を固定しつつその固定部分の水密を保つ部材である。フィルター基材１１と補強板２０の上端部および下端部の固定方法は、接着剤としての樹脂で固定する方法が例示される。

かかる構造において、補強板２０はフィルター基材１の折り目に折れ曲がる方向に力が加わった際に、フィルター基材１をサポートして折れ曲がりにくくする。補強板２０は折れ曲がり変形を防止する強度を持った部材であれば良く、さらには各プリーツが濾過対象液の圧力によって広がることを過度に妨げないことが好ましい。すなわち、図３（Ｂ）のＤ部に示すように折れ曲がることは防止するものの、緩やかなカーブで湾曲することが好ましい。また、補強板２０は圧力から開放された時に元の形状に戻る復元力を持つことが好ましい。

補強板として用いられる部材の代表例として、図１２に網目状の補強板２０を示す。図１２は樹脂製の網目板の一例であり、このような凹凸を有する網目板を用いることで、補強板とフィルター基材との密着を防ぐことができ、濾過液の流れを妨げにくい効果が得られる。その他、多孔質の板材としては、板材に多数の孔を開けたパンチング材や、三次元網目状の連通孔を有する板材などを用いることが出来る。

図１３は、補強構造の組合せの一例として、山部Ｍの折り目に樹脂補強構造を設けると共に、山部裏側に補強部材としての補強板を備えた構造を示す。樹脂２の含浸部分に沿うように補強板２０を備えている。補強板２０は、判りやすいようにフィルター基材１１と接していないように図示しているが、実際の構成においては補強板２０の一部または全部がフィルター基材１１に接していても良い。このように双方の補強構造を併せ持つことで、双方の機能が相補的に発揮されて破断防止効果を一層高めることができる。

補強板は、一枚ずつ独立した板材で良いが、これに限定されるものではなく、例えば山部と谷部を繰り返すように折り目を有し、フィルター基材１１に対応した形状をなしており、筒形状内側表面に沿うように設けられていても良い。図１４はその代表例を示す斜視図である。補強板２１もフィルター基材１１と同様にプリーツ形状に加工し、全体としてフィルター基材１１と補強板２１が二重のプリーツ形状をなすように形成されている。補強板２１の材料としても濾過液の流れを妨げ難いように、多孔板材を用いる事が好ましい。

さらに異なる態様を図１５に示す。図１５は谷部側内面の片側面に沿うように設けられた補強板２２を示す。このように、補強板は谷部中央や谷部側のフィルター面に沿うように均等に配置されるものに限定されない。図１４や図１５のように補強板がフィルター基材１１の谷部を覆うように設けられることで谷部の補強効果も得ることができる。

このように、補強板をフィルター基材に沿わせて配置する構成においては、さらにフィルター基材がエンボス加工されていることが好ましい。図１６は、フィルター基材１１にエンボス加工を施した一例を示すものである。フィルター基材１１自体に多数の円形の凹部と凸部を繰り返し連続して形成している。エンボスの形状は限定されるものではなく、凹部、凸部あるいはその両方を連続して有するものであれば良い。エンボスによって、フィルターの面と隣接するフィルターの面や補強板の面が密着することが抑制される。フィルター面に適度な隙間が確保されることで、濾過液の流れを妨げ難くなる。

（プリーツフィルターカートリッジ）
図１７はプリーツフィルターカートリッジの代表的構成例を示す斜視模式図である。プリーツフィルター１０の円筒上底部に蓋部材１２を、また円筒下底部に蓋部材１３を有する。筒状のプリーツフィルターを濾過に用いるためには上底部と下底部を封止して筒状の内部と外部で液漏れが無いように構成する必要がある。そのため、蓋部材１２および蓋部材１３はそれぞれがプリーツフィルター１０と接着材により封止されている。最も簡単な製造方法は、板状の蓋部材の平板面に接着材を塗布し、プリーツフィルターのフィルター基材端面を接着材が塗布された蓋部材の平面に押し当てた状態で硬化させる方法である。製造方法は限定されるものではなく、他の方法であっても良い。例えば蓋部材にフィルター基材端面に沿った溝を構成しておいても良いし、接着材を溜める溝を設けて置いてもよい。またフィルター基材側に接着材を塗布して、蓋部材と組み合わせる方法でも良い。接着材は、使用するフィルター基材と蓋部材が接着されて濾過運転に耐えることが可能なものを選択すれば良く、特に限定されない。

プリーツフィルターが部材補強構造を備える場合は、当該補強構造に用いる補強部材を蓋部材に固定する。補強部材の固定はプリーツフィルターの固定と同様に接着材によることが好ましい。同じ接着材でフィルター基材と補強部材を同時に接着し固定できれば、組み立て工程が簡素化できる。

（濾過装置）
上述のプリーツフィルターを用いた濾過装置の好ましい適用例として、バラスト水処理装置の構成を、図面を参照して説明する。図１８および図１９は本発明の実施態様としての船舶用のバラスト水処理装置の一例を示す図である。図１８は軸線を含む垂直断面の構成、図１９は図１８における水平Ａ−Ａ断面の構成をそれぞれ模式的に示す図である。円筒形状のプリーツフィルター１０１は回転中心となる軸線を囲むように配置されており、中心に配置された中心配管１４０（配管は回転しない）の周囲を回転自在に取り付けられている。プリーツフィルターの上下面は水密に塞がれている。回転自在な取り付け構造は、同じく水密構造とする必要があるが、特に限定されることなく既知の構造が用いられる。フィルター全体を覆うようにケース１０３が設けられる。ケース１０３は外筒部１３１、蓋部１３２、底部１３３で構成され、底部１３３には排出流路１０８が設けられる。ケース１０３内に被処理水としての海水を導入するため被処理水流路１０６と被処理水ノズル１０２が設けられる。被処理水ノズル１０２は、そのノズル口１２１をケース１０３の外筒部１３１内に備えるように被処理水流路１０６から延設され、被処理水がプリーツフィルターの外周面に向かって流出するように構成されている。また、プリーツフィルターの回転のためにモーター１９０がプリーツフィルターの中心軸に備えられている。モーター１９０は駆動制御部（図示せず）からの電力により駆動される。

本例の場合、被処理水ノズルから噴出した被処理水はプリーツフィルターのプリーツ外周面に当たり、その圧力によってプリーツフィルターの洗浄効果が得られる。濾過されない被処理水および、ケース内に沈殿した濁質分は、ケース底部の排出流路から順次排出される。このように濁質分や残った被処理水が連続的に常に排出されつつ濾過が進行される点もこの装置の特徴であり、バラスト水に求められる５０〜１００ｔｏｎ／時間やさらに大きなシステムでは４０００ｔｏｎ／時間におよぶ大きな処理量を確保するために効果がある。このような大型でかつ大量の水を処理する濾過装置においてはプリーツフィルターが大型となり、その破断防止が特に重要である。なお、図では排出流路にバルブなどを記載していないが、保守用や流量調節用に必要な機器を設けることはできる。一方、プリーツフィルター１０１により濾過された濾過水はフィルター内部にて中心配管１４０に設けられた取水穴１４１を通して濾過水流路１０７に導かれ、ケース外部に流出される。

１００ｔｏｎ／時間の処理を行う装置の一例として、プリーツフィルターの外径は７００ｍｍ、軸方向長さ３２０ｍｍ、有効面積としての高さ２００ｍｍ、プリーツ深さ７０ｍｍ、プリーツ数４２０折、が挙げられる。また他の例として２５０ｔｏｎ／時間の処理を行う装置の一例として、プリーツフィルターの外径は８１０ｍｍ、軸方向長さ３９９ｍｍ、有効面積としての高さ３７７ｍｍ、プリーツ深さ７０ｍｍ、プリーツ数５１７折、が挙げられる。被処理水ノズル１０２はノズル口１２１が矩形開口であるとよい。被処理水ノズルから大量の水がプリーツフィルター面に噴出されることにより、プリーツフィルターの山部を押し開く向きの力が加わる。山部が拡がって、プリーツ間隔を液体が流入、流出することで、フィルター基材の表面に流れが生じてフィルターの洗浄効果が得られる。このように山部が開く際に、山部折目が折れ曲がると折り目の破損が生じやすい。また、谷部への応力集中によっても谷部の折り目に裂け等の孔が開きやすくなる。上述のように折り目が補強されたプリーツフィルターを用いることで、このような破断が効果的に抑止でき、装置の長期安定的な運転が可能となる。特に山部の折れ曲がりの防止には、補強板による部材補強構造が効果的であり、樹脂補強構造と組み合わせることによって一層強固な破断防止構造とすることができる。ここで、破断を抑制し、かつ洗浄効果を有効に得るために、樹脂の硬度がショア硬さ２０Ａ〜６０Ａまたは５Ｄ〜３０Ｄが好ましい。フィルター基材が不織布である場合に特にポリウレタン樹脂が好ましく用いられる。

図２０は、上述したバラスト水処理装置を濾過装置として用いた船舶用バラスト水処理システムの全体構成を模式的に示したブロック図である。図２０において、海洋から取水された海水である被処理水は配管３１を経てポンプ５２により送られ、配管３２を通じて濾過手段である濾過装置５３に供給される。濾過装置５３において濾過された濾過水は配管３３を経て紫外線照射装置などの殺滅手段５４（必須ではない。）に送られる。また、濾過装置５３において濾過されなかった排出水は、配管３５を経て装置外部へ導出される。殺滅処理を経た海水は、配管３４、配管３６を経てタンク５１に送られる。本例において、上述のプリーツフィルターを用いたバラスト水処理装置は濾過装置５３に用いられる。

（実験例１）
樹脂補強構造による効果を確認するため、樹脂の含浸と折り曲げを行った部分の強度比較を行った。使用した材料は次の通りである。
多孔質フィルター：ポリエチレンテレフタレート製不織布（商品名：東レ製 アクスターＧ２２６０−１Ｓ ＢＫ０）
含浸樹脂：ポリプロピレン製不織布（商品名：出光ユニテック製 ストラテックＲＷ２１００）
ヒートシール機：石崎電気製卓上シーラーＮＬ−３０１Ｊ
基材となる多孔質フィルターの折り曲げ部に含浸樹脂を載せて、ヒートシール機のシールタイマーの設定４（加熱時間約１秒）にてヒートシールをした。含浸樹脂を完全に熱溶融して多孔質フィルターに含浸させた状態で冷却した。さらに同じ加熱条件で加熱したあと、直ちに直径３ｍｍのステンレス棒を挟んでステンレス棒の形状に添って折り曲げ部を曲げて曲げ、半径１．５ｍｍとなったものを実施例とした。また、同じ多孔質フィルターをそのまま１８０度折り曲げたものを比較例とした。

折り曲げ部を開いて、折り曲げ部がダンベルの中心付近で引張方向に垂直になるようにダンベル型に打ち抜いた。また、全く折り曲げ部の無いフィルター基材そのものを比較のために同じ形状にした試料を準備した。これらのダンベルを試料として、チャック間隔３ｃｍ、引張スピード１００ｍｍ／分にて破断強度を測定した。結果、比較例は全て折り曲げた部分で破断し破断強度は３３ＭＰａであった。折り曲げ無しの基材そのものでの測定結果は４０ＭＰａであったため、折り曲げによって強度が低下していることが示唆された。これに対し、実施例では、樹脂を含浸した折り曲げ部分では破断せず全てが他の平坦部で破断し、その破断強度は４１ＭＰａであった。すなわち折り曲げ部は４１ＭＰａより強い強度であることが確認できた。

（実験例２）
ポリウレタン樹脂の塗布による破断防止効果を確認する実験を行った。フィルター基材を１８０度折り曲げ、山部にポリウレタン樹脂をローラー塗布した試料を実施例とした。塗布された樹脂は基材の裏側まで浸透して硬化した。比較例として同様に折り曲げて樹脂を塗布しない試料を準備した。使用したフィルターと樹脂は次の通りである。なお、メーカおよび型名等はこれらに限定されるものではない。本実施態様の効果を奏する範囲において、同種の代替品を用いることができる。
多孔質フィルター：ポリエチレンテレフタレート製不織布（商品名：東レ製 アクスターＧ２２６０−１Ｓ ＢＫ０）
塗布含浸樹脂：軟質ポリウレタン樹脂（商品名：サンユレック製 主剤ＳＡ−７０７３Ａと硬化剤ＳＡ−７５０２Ｂを２３：１００で混合）

実験例１と同様の方法によって破断強度を測定したところ、樹脂の含浸によっては実施例と比較例の強度の有意な差は見られなかった。次に、折り目を５万回屈曲（開閉）させたのちに、同様の手法によって破断強度を測定した。屈曲しない試料と、屈曲後の試料の強度の低下率を比較した。ポリウレタン樹脂を含浸した実施例は屈曲によって強度が約１０％低下していたのに比べ、含浸指定無い比較例では約４０％低下していた。試料の観察により、樹脂含浸した試料では基材繊維を繋ぐように樹脂が含浸していることから繊維のほつれや破断を防止できていることが確認された。

（実験例３）
樹脂塗布による効果を確認するため、円筒状プリーツフィルターを用いたバラスト水処理装置を用いて破断防止構造の有効性を確認した。破断防止構造は、プリーツフィルターの全ての山部に樹脂を塗布した樹脂補強構造を採用した。使用したフィルター基材と樹脂は実験例２と同じである。塗布はローラーにより山部にのみ施した。比較のために樹脂の塗布を行わないプリーツフィルターを用いた。また、実験例１で用いたポリプロピレン含浸を山部と谷部に施したものの効果を合わせて確認した。

使用したバラスト水処理装置は図１８、図１９に示す構造である。プリーツフィルターは単体のプリーツフィルターをフィルターカートリッジとして、３つのフィルターカートリッジを軸方向に積み重ねるように接続したものである。最下段の底部と最上段の蓋部は平板状の蓋部材で封止されており、カートリッジ間となる部分はリング状の蓋部材で固定されている。３段のプリーツフィルターの円筒内部は一つの空間でつながっている。これにより３倍の有効面積が得られる。単体プリーツフィルターの外径は７００ｍｍ、軸方向長さ３２０ｍｍ、有効面積としての高さ２８０ｍｍ、プリーツ深さ７０ｍｍ、プリーツ数４２０折である。ノズル口はプリーツの長さ方向に長辺、プリーツ間隔方向に短辺を持つ長形開口である。被処理水としての海水として、佐賀県伊万里市において採取した標準的な海水（塩分濃度２〜４％、濁度１〜１０００ＮＴＵ（Ｎｅｐｈｅｌｏｍｅｔｒｉｃ Ｔｕｒｂｉｄｉｔｙ Ｕｎｉｔｓ））を用いた。

運転時間が長くなるにつれ、プリーツ凸部に破損が発生し、破損箇所が次第に増えて行く。このような破損の発生時間と個数からワイブルプロットによる寿命推定を行った。図２１にフィルターの寿命をワイブルプロットにより推定したグラフを示す。ワイブルプロットは品質保証や寿命推定等で一般的に利用されるものである。本実験では縦軸に破損確率（＝破損プリーツ数／全プリーツ数）、横軸に時間をとり、運転時間と共に増える破損数をプロットして一定の傾きで寿命推定したものである。ここで破損は破断と同様の意味で用いられる。発明者らの過去の実験によると、破損確率が１．４％程度になるとバラスト水処理としては限界である。すなわち、海水中に含まれるプランクトンの有意な漏れが生じてしまうことが判っている。図２１を参照して、補強を施していないフィルターでは１．４％破損となる時間が５０時間であるのに対して、ポリウレタン含浸補強では約１８０時間、ポリプロピレン含浸補強では約１４０時間と、顕著に寿命が延びていることが確認できた。他の樹脂材料を用いた場合にも程度の違いはあるものの、同様に樹脂補強構造の効果が得られる。なおここで、寿命の絶対値自体には意味は無く、同一実験内での効果の比較のためだけに用いられることに注意が必要である。すなわち、プリーツフィルターの破損寿命は、プリーツフィルターの大きさや折り目数等の形状、流量などの濾過運転の条件によって異なる。

（実験例４）
ポリウレタン樹脂の塗布の有無と山部補強の効果を確認する実験を行った。用いたプリーツフィルターは単体のプリーツフィルターであり、外径は３５０ｍｍ、軸方向長さ２００ｍｍ、プリーツ深さ７０ｍｍ、プリーツ数２１０折である。その他の構造、条件は実験例３と同じである。軟質ポリウレタン樹脂と硬質ポリウレタン樹脂の塗布を山部または谷部に表１の試料１から試料７のように施した。塗布はプリーツフィルターの蓋部材間の全高に亘ってローラーにより塗布した。使用したポリウレタン樹脂（ＰＵ）は下記の通りである。なお、ここで、破断防止に効果においてポリウレタンの軟質とは、硬さで表すとショア硬さ２０Ａ〜６０Ａ（ゴム・エラストマー（ＪＩＳ Ｋ６２５３）標準測定時間：加硫ゴム３秒、エラストマー１５秒による）である。また、全てのプリーツの山部補強として補強板による部材補強構造を構成した。用いた補強板は次のものである。補強板は山部裏側に山部に沿って図９から図１３の如くに配置される。補強板の長さは、プリーツフィルターの軸方向長さ約２００ｍｍであって、フィルター基材と同様に上下を蓋部材に固定されている。補強板の幅（軸直角方向）は６０ｍｍである。なお、各材料のメーカおよび型名等はこれらに限定されるものではない。本実施態様の効果を奏する範囲において、同種の代替品を用いることができる。
補強板：ポリプロピレン製網目板（商品名：タキロン製 トリカルネットＳＮ−５９８）網目ピッチ４．８ｍｍ×４．８ｍｍ、厚さ１．５ｍｍ（縦糸１．５ｍｍ、横糸１．２ｍｍ）
軟質ポリウレタン樹脂：サンユレック製 主剤ＳＡ−７０７３Ａと硬化剤ＳＡ−７５０２Ｂを２３：１００で混合。硬度２３Ａ（ａｔ２３℃）
硬質ポリウレタン樹脂：サンユレック製、主剤ＳＡ−７０７３Ａと硬化剤ＳＡ−７０６８Ｂを１：２で混合。硬度９０Ａ（ａｔ２３℃）

プリーツフィルターカートリッジの２１０の折り目を３０毎のグループに分け、各グループを試料４−１から試料４−７の構造とした。このカートリッジを用いて、同時に濾過運転を行うことで、構造の違いによる効果を確認できる。通常よりも流量を多くした加速試験条件によって５０時間の濾過運転を行い、その後の山部の破損数を調べた。山部にも谷部にも樹脂補強構造を有しない試料４−７では折り目数３０中の２５に破損が見られたのに対し、山部に樹脂補強を行った試料４−１から試料４−６はいずれも樹脂含浸の効果が確認できる。また、樹脂として硬度の低い軟質ＰＵを用いた試料４−１から試料４−３が、硬質ＰＵを用いた試料４−４から試料４−６に比べて破損数が少なく、破断防止効果が大きいことが判る。さらに、谷部への樹脂塗布を併用することで山部の破損防止効果も高まることが、試料４−１、４−２と試料４−３との比較、および試料４−４、４−５と試料４−６との比較から読み取れる。

（実験例５）
ポリウレタン樹脂の塗布による破断防止効果を確認する別な実験を行った。用いたプリーツフィルターは単体のプリーツフィルターであり、外径は８１０ｍｍ、軸方向長さ３８０ｍｍ、プリーツ深さ７０ｍｍ、プリーツ数５１７折である。その他の構造、条件は実験例３と同じである。全ての山部に実験例４と同じ軟質ポリウレタン樹脂を塗布した。塗布はプリーツフィルターの蓋部材間の全高に亘って塗布した。また、全てのプリーツの山部補強として補強板による部材補強構造を構成した。用いた補強板は長さをプリーツフィルターにあわせて約３８０ｍｍとしたことを除き実験例４と同じである。

谷部の補強を次の通り３種類として、試料５−１〜試料５−３を作成し、破損寿命を比較した。試料５−１から試料５−３は、谷部の樹脂補強構造のみを変えている。山部の軟質ポリウレタン（ＰＵ）塗布と補強板による補強構造は共通である。試料５−１は谷部の高さ方向中央１／３のみに軟質ＰＵを含浸補強した。試料５−２は谷部全高に亘って軟質ＰＵを含浸した。試料５−３は谷部への樹脂含浸は無い。用いた樹脂は山部に塗布した樹脂と同じである。

結果を表２に示す。谷部にも樹脂補強構造を設けることによって破断寿命（時間）を大きく改善出来ていることが試料５−１、試料５−２と試料５−３の比較から判る。山部の補強構造に加えて、谷部への補強を採用することでさらに効果的に破断防止が出来ている。谷部の破断は谷部の中央付近で発生しやすいことから、中央付近（実験では中央１／３）を含浸補強することで効果が大きい（試料５−１）。しかし、この場合は非塗布部が相対的に弱くなり、破断が生じる。そこで、試料５−２のように谷部全高に軟質ポリウレタンを塗布することで、谷部の破断を特に効果的に防止できる。

（実験例６）
補強板による効果を確認するため、実験例５と同様の装置を用いて、濾過をおこなった。使用したフィルター基材および補強板材料は実験例５と同じである。上記補強板を短冊状に切断し、図９から図１３に示す方法でフィルター山部裏側に独立した補強板としてそれぞれ装着した。補強板を用いない場合に、５０時間の濾過運転にてフィルター山部に破損が生じたのに比べ、同条件の濾過において、補強板を設けた場合には、１５５時間まで破損が生じなかった。補強板としてポリエチレンやポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル等の他の樹脂を用いた場合においても、破損寿命に程度の差はあるものの同様の補強効果が得られる。

また、別な構造例として、次の補強板材料をフィルター基材と共に折りたたんで図１４のように構成したものを用いて濾過を行った場合も同様に効果が得られる。当該構造において７９時間以上破損が生じなかった。さらに、フィルター基材にエンボス加工を施すことで、フィルター基材面と補強板の接触を抑制することができさらに効果がある。
補強板:ポリプロピレン製網目板（商品名：タキロン製 トリカルネットＳＮ−１１）網目ピッチ３．９ｍｍ×３．９ｍｍ、厚さ０．９ｍｍ（縦糸０．９ｍｍ、横糸０．５ｍｍ）

本発明のプリーツフィルターは目詰まりによる性能低下を起こさず耐久性にも優れているため、海水淡水化やバラスト水などの汽水・海水利用、あるいは下水、生活排水、工業排水など水処理に際して、水中の異物やゴミ、微生物を除去処理する前濾過処理に好適に利用できる。また、高濁質・高ＳＳ（ｓｕｓｐｅｎｄｅｄ ｓｏｌｉｄｓ）の水処理や濃縮処理にも優れているため、食品分野などの有価物回収分野にも応用が可能である。

１、１１ 基材
２ 樹脂
３ 樹脂シート
１０、１０１ プリーツフィルター
１２、１３ 蓋部材
２０、２１、２２ 補強板
５１ タンク
５３ 濾過装置
５４ 殺滅手段
５２ ポンプ
３１、３２、３３、３４、３５、３６、３７、３８ 配管
１０２ 被処理水ノズル
１０３ ケース
１０６ 被処理水流路
１０７ 濾過水流路
１０８ 排出流路
１２１ ノズル口
１３１ 外筒部
１３２ 蓋部
１３３ 底部
１４０ 中心配管
１４１ 取水穴
１９０ モーター

Claims (12)

1. 山部と谷部を繰り返すように折り目を有するフィルター基材を、前記折り目の稜線方向を軸方向とする筒形状としたプリーツフィルターであって、
   前記プリーツフィルターは筒形状外側に凸状となる山部において、折り目に対する補強構造を備えるプリーツフィルター。
2. 前記補強構造は、前記折り目において基材表面を覆う樹脂または前記折り目において基材に浸透した樹脂、を補強体とする樹脂補強構造である、請求項１に記載のプリーツフィルター。
3. 前記樹脂はショア硬さ２０Ａ〜６０Ａ（ゴム・エラストマー（ＪＩＳ Ｋ６２５３）標準測定時間：加硫ゴム３秒、エラストマー１５秒による）またはショア硬さ５Ｄ〜３０Ｄ（プラスチック（ＪＩＳ Ｋ７２１５）１秒以内に指針の最大値を読取る）である、請求項２に記載のプリーツフィルター。
4. 前記樹脂はポリウレタンである、請求項２または請求項３に記載のプリーツフィルター。
5. 前記補強構造は、前記フィルター基材とは別体となる補強部材を、前記山部の折り目裏側に前記折り目に沿うように設けた部材補強構造である、請求項１に記載のプリーツフィルター。
6. 前記補強部材はポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル、塩化ビニルからなる群から選択されるいずれかの樹脂の板状体である、請求項５に記載のプリーツフィルター。
7. 前記補強構造は、前記折り目において基材表面を覆う樹脂または前記折り目において基材に浸透した樹脂を補強体とする樹脂補強構造、および前記フィルター基材とは別体となる補強部材を前記折り目に沿うように設けた部材補強構造の双方で構成される、請求項１に記載のプリーツフィルター。
8. さらに前記谷部をなす折り目において、基材表面を覆う樹脂または前記折り目において基材に浸透した樹脂を補強体とする樹脂補強構造を備える請求項１から請求項７のいずれか１項に記載のプリーツフィルター。
9. 前記フィルター基材はポリエチレンテレフタレート製不織布である、請求項１から請求項８のいずれか１項に記載のプリーツフィルター。
10. 請求項１から請求項９のいずれか１項に記載のプリーツフィルターと、当該プリーツフィルターの上底部および下底部にそれぞれ備えた蓋部材とを有するプリーツフィルターカートリッジ。
11. 請求項１から請求項９のいずれか１項に記載のプリーツフィルターを濾過膜として用いたバラスト水処理装置であり、
    前記プリーツフィルターは円筒上面と円筒底面をそれぞれ水密に封止し、かつ円筒軸を中心に回転可能に保持され、
    前記プリーツフィルターの外周面に向けて被処理水を流出する被処理水ノズルと、
    前記プリーツフィルターを囲むように設けられ前記被処理水ノズルのノズル口を内部に備えた外筒部を有するケースと、
    前記プリーツフィルターを透過した濾過水を前記プリーツフィルターの円筒内部から前記ケースの外部へ導出する濾過水流路と、
    前記プリーツフィルターで濾過されなかった排出水を前記ケースの外部へ排出する排出流路とを備えたバラスト水処理装置。
12. 請求項１１に記載のバラスト水処理装置を船体内に搭載し、船体外部から取得した海水を被処理水として用い、前記バラスト水処理装置により処理された濾過水にさらに殺滅処理を加えた後に、バラスト水として船体内に貯留するバラスト水の処理方法。

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