JP2016000932A - 免震構造の原点復帰手段と原点復帰方法、並びに該手段を備えた改良地盤 - Google Patents

免震構造の原点復帰手段と原点復帰方法、並びに該手段を備えた改良地盤 Download PDF

Info

Publication number
JP2016000932A
JP2016000932A JP2014121511A JP2014121511A JP2016000932A JP 2016000932 A JP2016000932 A JP 2016000932A JP 2014121511 A JP2014121511 A JP 2014121511A JP 2014121511 A JP2014121511 A JP 2014121511A JP 2016000932 A JP2016000932 A JP 2016000932A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
foundation
ground
origin
building
origin return
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2014121511A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6635327B2 (ja
Inventor
武志 菊地
Takeshi Kikuchi
武志 菊地
和森 佐藤
Kazumori Sato
和森 佐藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Vic Ltd
Original Assignee
Vic Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Vic Ltd filed Critical Vic Ltd
Priority to JP2014121511A priority Critical patent/JP6635327B2/ja
Publication of JP2016000932A publication Critical patent/JP2016000932A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6635327B2 publication Critical patent/JP6635327B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Abstract

【課題】設置、取り外し、メンテナンスが容易であり、かつコスト的にも有利となる、免震構造の原点復帰手段及び原点復帰方法、ならびに該手段を備えた改良地盤を提供する。【解決手段】原点復帰手段20(20a)は、地盤1側と建物の基礎8側とを直接もしくは間接につなぐよう建物の基礎8の周囲に複数個配置され、ずれによって前記原点復帰手段20に生じた引張り力もしくは押圧力のいずれか一方もしくは双方を利用して前記ずれを解消させる。原点復帰手段20は、弾性材23(23a)もしくは伸縮部材23のいずれかとすることができ、弾性材23としては環状、棒状もしくは板状のゴム材、伸縮部材としてはガス封入ダンパとすることができる。ゴム材としては超低硬質ゴムを利用することが好ましい。地盤1側と建物の基礎8との間にはさらに、振動を減衰させるための減衰手段25、あるいは緩衝空隙70を埋める緩衝材62が配置されてもよい。【選択図】図1

Description

本発明は、地震の際に建物の基礎と地盤の間での相対移動を許容することにより建物側に伝わる地震力を低減させる免震構造において、地盤に対して相対移動した建物の基礎のずれを事後元の位置に復帰させる原点復帰手段及び原点復帰方法、並びに該原点復帰手段を備えた改良地盤に関する。
戸建て住宅などの小規模の建物の基礎に関して、比較的安価で且つ免震効果に優れた耐震性基礎構造が種々検討されており、その際に各種の免震構造が用いられている。このような免震構造では、建物の基礎と地盤との間の水平面での相対移動を許容するための機構が採用されており、その主なものとして両者間の相対移動を低摩擦材の滑りで許容する機構(以下、「摺動免震機構」という。例えば、特許文献1、特許文献2参照。)と、ボール、ローラ等の回転物を利用する機構(以下、「転がり免震機構」という。例えば、特許文献3参照。)を挙げることができる。このような免震構造では、地震による揺れが納まった事後において、一般には建物の基礎が地盤に対して位置ずれが残ることがあり、これを元の位置に復帰させる原点復帰手段を設けることが好ましい。なお、免震構造としてはこの他に、ゴム、スプリングなどの弾性部材を直接支承部材として使用することにより振動を吸収する手段も利用されているが、この場合には弾性部材が復元機能を兼ねることができるため、一般には改めて原点復帰手段を設ける必要はない。
図5は、特許文献1に開示された従来技術における摺動免震機構を備えた改良地盤構造の一部を断面で示している。この改良地盤は、例えば、木造や軽量鉄骨造による戸建て住宅などの軽量の建物(図示せず)の基礎8を敷設するための地盤である。具体的には、建物および基礎8を含む約50kN/m以下の鉛直荷重を支持する改良地盤であって、基礎8に対する地震力を低減させるために構築されている。図5において、当該改良地盤は、所望の建物の平面形状に応じて根切り部11で区画して掘削された地盤1の内部に構成される。掘削された部分に、50〜250mm厚ほどの調整地盤2が打設され、建築物を支持する地盤部分が形成される。
この調整地盤2と基礎8との間には摺動免震機構として振動減衰手段4が設けられ、調整地盤2と基礎8との間で相対摺動(スライド)を可能にすることによって振動を吸収するものとしている。振動を摺動により吸収するため、振動減衰手段4は、下から第1の摺動材41、第2の摺動材42の組み合わせからなり、下方に配置される下地調整シート3と、上方に配置される防振ゴム5に挟まれた構成となっている。振動減衰手段4は、基本的に建築物の平面投影形状の全面に渉って延展される。地盤1から調整地盤2に伝播される地震力は、対向する一対の摺動材41、42の間の摺動によって吸収され、基礎8およびその上に構築される図示しない建物への振動伝播を軽減する。
下地調整シート3は、表面の平坦度が確保できるものであることのほか、建築物の下に敷設されて永年使用されるものであることから、耐久性が高いこと、並びにコンクリートに触れることから耐アルカリ性に強い材料であることなどが望まれ、材料としてはアスファルトシート、ゴムシート、ゴムマットなどが考えられる。一例として、下地調整シート3は、2〜10mm厚のアスファルトシートが利用される。アスファルトシートは屋上等の防水シートとしての実績があり、防水性にすぐれ、地盤1、調整地盤2を介した水の浸入を防ぐ効果が優れる。また制振特性を評価する指標の1つである損失係数(tanδ)が0.35と大きく、防振材料としても好ましい材料であることから採用されている。その他として、ゴム系の防水シートが使用されてもよい。
下地調整シート3の上層に、第1の摺動材41が敷設される。当該摺動材41は、対向する第2の摺動材42との間で振動吸収のための相互摺動をすることから、両者間での静摩擦抵抗が極力低くなる材料であることが必須の条件となる。具体的には、第1と第2の摺動材41、42間の静摩擦係数が0.2ほどであることが好ましく、さらにはこれが0.15であればより好ましい。これを実現できる材料としては、フッ素樹脂系のシート、あるいは超高分子樹脂系のシートが挙げられる。
第1の摺動材41の材料としては、上述のように何よりもまず静摩擦係数が低いものであることのほか、耐熱、耐薬品、耐アルカリ性のあるものが好ましい。第1の摺動材41の例として、0.05〜2.0mm厚、好ましくは0.075〜0.5mm厚のフッ素樹脂シートが使用される。下層に位置するアスファルトシートからなる下地調整シート3には粘着性があるため、フッ素樹脂シートはその表面に延展するだけで下地調整シート3に粘着固定される。また、下地調整シート3にゴム系防水シートを使用する場合、第1の摺動材41との間に全面ないし部分的に両面粘着テープで貼付し固定してもよい。
第1の摺動材41より上の層は、基本的にこれまでの構成を反転したものとなり、すなわち、第1の摺動材41に対向してその上に第2の摺動材42が被せられ、コンクリートで構築される基礎8との間の平坦度を確保するため、さらに防振ゴム5がその上に被せられる。防振ゴム5の上には基礎8のコンクリートが打設されるが、これ以降の手順は従来建築と同様である。なお、ここでは調整地盤2と基礎8の間での相対摺動で振動を吸収するものであることから、この両者が全面で対向していることが好ましく、したがって基礎8は、いわゆる「べた基礎」であることが好ましく、あるいは「連続基礎(布基礎)」であっても良い。
第2の摺動材42は、第1の摺動材41の上に被せるように展開する。第1の摺動材41と同様、第2の摺動材42の例としては摩擦係数の低い0.075mm厚のフッ素樹脂シートが使用される。振動減衰手段4として、このフッ素樹脂シート41、42同士の配置が摩擦力の観点から現状で考えられる最も好ましい組合せとなるが、コスト的な問題もあり、この内のいずれか一方を超高分子樹脂シートに置き換えることも可能である。具体的には超高分子ポリエチレンシートが考えられ、この際の分子量は100万以上であることが好ましい。上記の様な材料で構成されていることにより、第1の摺動材(41)と第2の摺動材(42)との静摩擦係数を0.15〜0.4の範囲に設定することができる。
次に、第2の摺動材42の上層に、基礎8を含む建物(図示省略)の鉛直荷重を支持すると共に、鉛直方向および水平方向の地震の揺れを更に減衰するための平板状の防振ゴム5が配置されている。防振ゴム5の素材としては、下地調整シート3と同じアスファルトシートとすることもでもよいが、他の例として耐酸性、耐アルカリ性、耐水性、耐微生物性、耐油性、耐有機溶剤性に優れたゴムとすることができる。一例として、新幹線軌道のバラスト下にメンテナンスフリーとして使用されるなどの実績のあるゴムマット(バラストマット)の使用が可能である。このバラストマットは25mm厚、100mm×100mmで鉛直パネル定数が4,500kg/cmである。よってm当りでは鉛直パネル定数は450,000kg/cmとなる。標準的2階建て木造住宅の荷重はm当り1tであるので、25mm厚の歪み量は、1/450=0.002cm=0.02mm程度となる。よって25mmのバラストマットをスライスして厚みを2mm〜10mmに調整して使用することが好ましい。
最後に、基礎8のコンクリートが防振ゴム5の上に打設される。コンクリート打設の際、内部の空気穴を除くための特殊用具に振動を与えてコンクリートを突き、あるいは攪拌させる。このような場合にも、アスファルトシートと異なってゴムマット5であれば突き破られて特殊用具が摺動材41、42にまで突き当たる事態が回避され、都合がよい。
図5に戻って、根切り部11の内周部には、当該内周部の崩壊を防止するためコンクリートブロックや地先ブロックを配列したりコンクリートを打設したりして成る側壁61が設けられていてもよい。基礎8と側壁61との間には、基礎8が相対移動する際の移動代として約35cm〜50cmの緩衝空隙が設けられ、この空隙には基礎8の水平方向の揺動を緩衝するよう、例えば大きな粒径、好ましくは10〜50mmの粒径のゴムチップから成る緩衝材62が充填される。なお、緩衝材62としてゴムチップを充填する場合は、振動減衰手段4の第1の摺動材41と第2の摺動材42の間にゴムチップが入り込まない様、防振ゴム5の外周部および第1の摺動材41の外周部を覆う保護シート63が敷設される。
上記の様な緩衝材62を充填した場合には、地震動による防振ゴム5及び基礎8の水平方向への移動ならびに変形に追従して緩衝材62の層全体が変形し、防振ゴム5の変形を制限することがないため、揺れに対して防振ゴム5の減衰特性を十分に発揮させることが出来る。上記の緩衝材62は、地表面に相当する高さ(グランドレベル)まで充填され、そして、地盤内への雨水などの浸透を防止するため、側壁61及び緩衝材62の上端は、ブチルゴム等のゴム製あるいはポリエチレン等の樹脂製の防水シート7で覆われる。
上記の様に、特許文献1に開示された改良地盤は、根切り部11に対し、調整地盤2、下地調整シート3、シート状の振動減衰手段4及び防振ゴム5が順次積層された層構造を備え、且つ振動減衰手段4が防振ゴム5の下面全体に対応させて配置されているため、施工が簡単であるとされる。また、当該改良地盤においては、振動減衰手段4と防振ゴム5とが積層され、しかも、フッ素樹脂シート又は超高分子ポリエチレンシートからそれぞれ成る第1の摺動材41及び第2の摺動材42を重ね合わせて振動減衰手段4が構成されているため、地震の際に地盤1から基礎8へ伝わる地震力を低減でき、特に地震の水平方向の衝撃力を大幅に低減させることが出来る。
地震発生時の動作としては、地盤1から調整地盤2へ水平方向の地震動が伝わった際、下地調整シート3の上面の振動減衰手段4は、加速度(衝撃力)が所定の大きさ(例えば、約200gal)に至らない比較的弱い揺れに対しては調整地盤2及び下地調整シート3に追従して共に挙動する。しかしながら、地震動の加速度(衝撃力)が所定の大きさを越えると、振動減衰手段4において、第1の摺動材41と第2の摺動材42の相互の摩擦力が極めて低いため、基礎8の荷重が掛かる第2の摺動材42は、その慣性力により調整地盤2及び下地調整シート3と共に振動する第1の摺動材41に追従して振動することがなくなり、当初の位置を中心に微動する。更に、基礎8の荷重が掛かる防振ゴム5は、それ自体の弾性変形により、基礎8へ伝わる鉛直方向の振動を低減させる。その結果、上記の様に基礎8に対する鉛直方向の地震の衝撃力を低減することが出来る。しかも、当該改良地盤においては、シート状および板状の部材の積層によって構成され、機械構造部分がないため、優れた耐久性能を発揮できるものとされる。
特許文献4には、上述の特許文献1に示すような改良地盤に利用可能な原点復帰手段が開示されており、当該原点復帰手段は、地震時にずれが生じた建物の基礎を手動により原点復帰させるよう構成されている。図6はその構造を示しており、原点復帰手段30は、地盤側に固定されて上方に突出する基準心棒31と、それを囲むように建物の基礎に開けられた調整穴32とから構成されている。摺動免震機構(図6の符号10)の作用により建物の基礎が位置ずれした場合、この基準心棒31と調整穴32の間に図示しないジャッキをかませて操作することにより、ズレの調整が手動により可能となる。なお、この原点復帰手段30を用いることで、基準心棒31と調整穴32の間にスプリングなどの弾性部材を配して自動的な原点復帰を行うことも可能である。
次に図7は、特許文献2に示す、同じく地盤に対する建物の基礎の相対移動を摺動免震機構によって許容するよう構成された免震構造を示している。同図に於いて摺動免震機構(図7の符号5。同文献では「滑り手段」と呼称。)は、摺動面を構成する部材としてはセラミックコーティング膜を形成したセメント系硬化材、フッ素樹脂などの低摩擦材をコーティングした鋼板、セラミック板、FRP板などが用いられている。地震の後の建物の基礎のずれを調整するため、当該免震構造はゴム、熱可塑性エラストマーなどの弾性材からなる原点復帰手段(図7の符号16。同文献では「弾性復元装置」と呼称。)を備えている。基礎側にずれが生じた場合には、この原点復帰手段(16)が備える弾性力によって元の位置に復帰することが企図されている。
さらに図8は、特許文献3に開示された転がり免震構造の概要を示しており、ここでは複数の鋼板(符号2、3、4)の表面の表裏別々に設けられた図の直交するX方向、Y方向の複数の溝の中に多数のローラ(図8の符号5)を配し、地震による振動をX、Y両方向のローラの回転により吸収して地盤に対する建物の基礎の移動を許容している。ローラの嵌る溝はそれぞれ湾曲しているため、重力の作用によって建物の基礎(図8の符号6。同文面では「免震構造物」と呼称。)が元の位置に復帰するよう構成されている。
特許第4983326号公報 特開2008−150870号公報 特開平11−351319号公報 特開2010−059690号公報
しかしながら、上述した各原点復帰手段にはそれぞれ改善すべき余地があった。特許文献1並びに4に記載の復帰手段では、手動による原点復帰操作が要求されるほか、当該機構の設置は大掛かりとなり、コスト的に不利な面があった。特許文献2に記載の復元機構では、当該機構が少なくとも建物のほぼ中央の1箇所設置されるものであることから、取り付け、取り外し、メンテナンスなどの取り扱い時の困難性があった。特許文献3に記載の原点復帰手段では、建物の基礎全体の荷重を支えながら相対移動するため、強度的な要求が避けられず、且つローラが嵌る溝を備えた鋼板の加工、組み立てに高い精度が要求されるなど、コスト的にも不利な面があった。
以上より、本発明はこれら従来技術に見られる課題を解消し、設置、取り外し、メンテナンスが容易であり、かつコスト的にも有利となる免震構造の原点復帰手段及び原点復帰方法、ならびに該手段を備えた改良地盤を提供することを目的としている。
本発明は、建物の基礎と、当該基礎の周囲に配置される地盤の根切り部との間に引っ張り力又は押圧力を付加する原点復帰手段を配置することによって、着脱が容易であり、コスト的にも有利となる原点復帰手段を提供して上述の課題を解消するもので、具体的には以下の内容を含む。
すなわち、本発明に係る1つの態様は、免震構造によって地震時に地盤に対して相対移動した建物の基礎のずれを元の位置に復帰させる原点復帰手段であって、地盤側と建物の基礎側とを直接もしくは間接につなぐよう建物の基礎の周囲にある緩衝空隙内に複数個配置され、ずれによって前記原点復帰手段に生じた引張り力もしくは押圧力のいずれか一方もしくは双方を利用して前記ずれを解消させることを特徴とする原点復帰手段に関する。
前記原点復帰手段は、引張り力を提供する弾性材、もしくは押圧力を提供する押圧部材のいずれかから構成することができる。弾性材の場合、環状、棒状、もしくは板状のゴム材のいずれかの形態が利用することができる。ゴム材としては耐久性のあるゴム素材、好ましくは超低硬度ゴム材とすることができる。また、前記弾性材は、地盤側と基礎側との側面周囲を覆い、防水機構を兼ねる板状のゴム材とすることができる。
本発明に係る他の態様は、地震時に地盤と建物の基礎との間の水平方向の相対移動を許容することによって地震力を低減させる免震構造を備えた改良地盤であって、当該改良地盤は前記相対移動によって生じた建物の基礎のずれを元の位置に復帰させる原点復帰手段をさらに備えており、当該原点復帰手段が上述したいずれかの原点復帰手段であることを特徴とする改良地盤に関する。この改良地盤の建物の基礎の周囲にある緩衝空隙内には、プラスチック廃材から再生した小口径パイプ材を短く切断して形成された通称「排水パイプ」を緩衝材として充填することもできる。
本発明に係るさらに他の態様は、地震時に建物の基礎と地盤との間の水平方向の相対移動を許容して地震力を低減させる免震構造によって生じた建物の基礎のずれを元の位置に復帰させるための原点復帰方法であって、地盤側と建物の基礎側との間を直接もしくは間接につなぐよう、弾性材もしくは押圧部材からなる原点復帰手段を建物の基礎の周囲に設けられた緩衝空隙内に複数個配置し、ずれによって該原点復帰手段に生じた引張り力もしくは押圧力のいずれか一方もしくは双方を利用して前記ずれを解消させることを特徴とする原点復帰方法に関する。原点復帰手段は、ずれによって生じた超低硬度ゴムの引張り力を利用するものとすることができる。
本発明に係る原点復帰手段によれば、地盤1に対する基礎8の相対移動の際の移動代を確保するために必要となる緩衝空隙をそのまま利用して配置することができるため、例えば、特許文献4に記載された手段と比較すれば追加の設備対応が不要となってコスト的にも有利である。また、特許文献2に記載された手段と比較して緩衝空隙へのアクセスも容易であり、原点復帰手段の着脱も容易となることからメンテナンスも楽に行えるものとなる。さらに特許文献3に記載された手段に対しては曲面への精度の高い溝加工などが不要となり、コスト的に有利となる。これらの要因により、従来技術に見られる原点復帰手段に対してよりシンプルでより安価な原点復帰機能を提供することが可能となる。
本発明の実施の形態に係る原点復帰手段を備えた改良地盤の平面図(a)及び側面断面図(b)である。 図1に示す原点復帰手段の取付け状況を示す斜視図である。 図2に示す原点復帰手段に使用される弾性部材とその代替案を示す斜視図である。 本発明の他の実施の形態に係る原点復帰手段を備えた改良地盤の斜視図である。 従来技術に係る摺動免震機構を備えた改良地盤を示す側面断面図である。 図5に示す改良地盤に適用可能な原点復帰手段を示す側面断面図(a)及び平面概略図(b)である。 従来技術に係る摺動免震機構を備えた他の改良地盤を示す側面断面図である。 従来技術に係る転がり免震機構を備えた他の改良地盤を示す側面断面図である。
本発明の第1の実施の形態に係る原点復帰手段、並びに該原点復帰手段を備えた改良地盤について、図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態に係る原点復帰手段を備えた改良地盤の概要を示すもので、(a)は平面図、(b)は側面断面図である。両図において、本実施の形態に係る改良地盤は、基本的に従来技術の項で説明した特許文献1に開示された摺動免震機構を利用する改良地盤の構成を踏襲しており、これに加えて以下に述べる原点復帰手段20をさらに備えるものである。ただし、本発明の適用は図示の摺動免震機構によるものに限定されるものではなく、転がり免震機構による免震構造であっても、地盤に対する基礎の相対移動を許容するその他の免震構造に対しても適用可能である。
図1(a)、(b)において、当該改良地盤は、地盤1の根切り部11内で側壁61によって囲われた平坦な調整地盤2を備え、その上に振動減衰手段4を介して基礎8が設けられている。基礎8はやはり平坦なベタ基礎であることが好ましく、基礎8の上には図示しない建物が構築される。なお、図では説明簡略化のため下地調整シート3、防振ゴム5の表記を省略しているが、特許文献1と同様にこれらを設けることも勿論可能である。振動減衰手段4は、ここでは対向して配置された調整地盤2側の第1の摺動材41と基礎8側の第2の摺動材42とから構成されており、これらを保護シート71で包むことによって両摺動材41、42間への異物、水分の混入を防いでいる。保護シート71は、地震時の両摺動材41、42間における相対移動に追従できる柔軟性と伸縮性が求められ、本実施の形態では0.2mm厚のポリエチレンシートが用いられているが、ゴム材など他のシート材が用いられてもよい。地震の際の振動は、両摺動材41、42の間の摺動(滑り)によって吸収され、地盤側から基礎8への伝わる振動を減衰させる。この構造は先の従来技術で特許文献1を参照して説明したものと同様である。
側壁61と基礎8との間の間隙である緩衝空隙70は、地震の際に調整地盤2に対して摺動により相対移動する基礎8の移動代を見込むもので、一般には35cm〜50cmほどの幅を有する。図5に示す従来技術では、この緩衝空隙70内に緩衝材62(図5参照)が充填されており、緩衝材62としてゴムチップの他に砂などが使用できるが、好ましくはゴムチップ、さらには後述する排水パイプが好ましい。あるいは、緩衝材62を無充填とすることでもよい。本実施の形態ではこの緩衝空隙70を利用して原点復帰手段20が設けられ、複数の原点復帰手段20が基礎8の周囲に配置される。このように緩衝空隙70のスペースをそのまま利用することにより、本実施の形態では原点復帰のための特別な設備対応が不要となる利点がある。原点復帰手段20は、ゴムなどの弾性材23によって基礎8側と側壁61とをつないで結ぶもので、このため基礎8側と側壁61側のそれぞれに取付け具21、22が設けられる。図示の例では、このような原点復帰手段20が平面四辺形の基礎8の四辺にそれぞれ2個ずつ配置されているが、この数量と配置については後述するように建物を含む基礎8の重量、振動減衰手段4の諸元、基礎8の形状に応じて適切に設定可能である。例えば基礎8が四辺形であれば、各辺において少なくとも1個もしくは2個の原点復帰手段20が配置されていることが平面の2軸方向のズレを復元するために好ましく、他の平面形状の場合にあってもこれに準じた配置がされることが好ましい。なお、図1において根切り部11の内側には側壁61が設けられているが、この側壁61が設けられない場合もあり得る。そのような場合には、調整地盤2から垂直に取付具22を立ち上げ、これに弾性材23を取付けるようにしても良い。
図2は、原点復帰手段20が基礎8と側壁61(地盤1)の間に配置された状況を示す斜視図である。図2において、原点復帰手段20は、環状の弾性材23(以下「環状ゴム材23」とも言う。)を、基礎8側に設けられた取付け具21と側壁61側に設けられた取付け具22にそれぞれ嵌めることによって固定している。このため、環状ゴム材23の着脱は極めて容易となり、原点復帰手段20の着脱、メンテナンスに手間がかかることはない。図1(b)の側面断面図に見られるように、緩衝空隙70の上面には適当な強度を備えた防水カバー73を被せることで原点復帰手段20へのアクセスも容易である。地震時に防水カバー73は、基礎8と一体となって移動し、基礎8の相対移動を拘束することがない。あるいは図5に示す従来技術にあるように、緩衝空隙70には緩衝材62を充填してもよく、この際には緩衝材62として原点復帰手段20へのアクセスの障害とならない材料、また地震時の基礎8の相対移動を阻害しない材料、例えば排水パイプ、を選択することが好ましい。これに関しては後述する。
図3は、弾性材23の具体的な形状例を示しており、この内図3(a)は、図2に表示した所定幅の環状ゴム材23の例を示している。図3(b)は、同じく代替となる棒状(もしくは板状)ゴムからなる弾性材23を示している。この場合には長手方向両端に取付け用のフランジ部材23a、23aが焼き付けなどにより取付けられ、この部分が基礎8及び側壁61に設けられる取付け具21a、22bに差し込まれて固定される。これらの形態は一例であって、弾性材23の形状、取付け手段については他の従来技術で知られた形態、対応策の適用が可能である。
弾性材23のゴム材としては、優れた柔軟性、衝撃吸収性を備え、かつ強度や耐候性にも優れたゴム材を選択することが望まれる。具体的には、超低硬度ゴムを使用することが好ましく、ただし条件を満たすものであればその他のゴム材が使用されてもよい。超低硬度ゴムには、EPDM系、シリコーンゴム系、ブチルゴム系などが見られ、用途により選択可能である。一例として、テストに供した超低硬度ゴムの物性は、硬度(JIS−A):26、引張り強さ:5.6メガパスカル、破断伸び:872%、100%伸び時の引張り強さ:0.29メガパスカル、200%伸び時の引張り強さ:0.39メガパスカルであった。このような弾性材23を基礎8の周囲の緩衝空隙70内で対向する両側の取付け具21、22を介して適切に配置して取り付けることにより、基礎8がいずれかの方向に移動した際に少なくとも引っ張られた側に配置された原点復帰手段20の弾性材23が伸ばされ、これが収縮する際に基礎8を原点復帰させる復元力(引っ張り力)を提供するものとなる。
所定の寸法諸元を有する弾性材23を使用する場合の例として、原点復帰手段20の必要数量は以下のように算定できる。例えば、建物面積が8m×8mの2階建て建物を想定すると、建物荷重は約64トン(1トン/mとする。)となり、同質量は65.3kg・sec/cm(64,000÷980cm/ sec)となって、この質量をMとする。地震時には、固有振動数0.5Hz付近がキラーパルス領域(共振を起す危険な振動数領域)となるため、地震による建物の共振を回避するには原点復帰手段20を介した場合の建物の固有振動数を0.1Hzほどとすることが狙い目となる。その時の原点復帰手段20のバネ定数をK(kg/cm)、振動周波数をfrとすると、
fr=1/2π・(K/M)1/2
の関係より、バネ乗数Kは、
K=fr×4×π×M=25.7kg/cm
となる。
一方、図3(a)を参照して、弾性材23として厚さW=20mm、幅S=100mm、半折長L=300mmの超低硬度ゴムからなる環状ゴム材を使用した場合の環状ゴム材1本当たりの引っ張りバネ定数Kを算出すると、上述したように超低硬度ゴムの100%モジュラスは0.29メガパスカル(2.9kg/cm)、同じく200%モジュラスは3.9メガパスカル(3.9kg/cm)であるから、この間の100%伸び時の引張り強さの差は1.0kg/cmとなる。この間の100%伸び変化時の引張り力は
2(cm)×10(cm)×1.0kg/cm×2(環状ゴム材の両側)=40kg
となる。これより、変化量が300mmとした場合の環状ゴム材からなる弾性材23の一本当たりの引張りバネ定数Kを算出すれば、
K=40kg/30cm≒1.3kg/cm
となる。
次に、図1(a)に示すような平面が矩形形状の基礎8の周囲各辺に等しい数の弾性材23(図示の例では各辺に2本のみを表示)が配置されていると仮定して、その各辺に配置される弾性材23の必要本数Aを算出してみる。今、地震時に基礎8が図の左側に相対移動する場合を想定すると、図の右側の辺に位置するA本の弾性材23には引張り力が加わるが、左側の辺に位置する弾性材23は緩む方向の移動となるため何らの力も作用していない。これに対して上下面の2辺に位置する各A本の弾性材23には斜めに引張り力が加わり、この際の引張り力は仮に右側の辺に作用する引張り力の1/3と想定する。これにより、基礎8の周囲で引張り力として作用する弾性材23の合計本数は、A+2×A×1/3=5/3・A本と算出される。上述した1本当たりのバネ定数Kが1.3kg/cmであることから、
A=K/K・3/5=25.7kg/cm/1.3kg/cm・3/5=11.9本
となり、一辺当りの必要本数Aは約12本となる。すなわち基礎8の矩形形状の各辺に12本の環状ゴムの弾性材23を配置すれば、基盤8(建物含む)の固有振動数を0.1Hzに設定することができる。
ただし、ここに挙げた環状ゴムの各諸元並びに基礎8の形状、質量等は一例であって、条件が異なれば弾性材23の必要本数も当然に異なるものとなる。例えば、弾性材23としてEPDMなどのゴム系防水シートを使用し、図3(a)に示す寸法諸元を、厚さW=1.5mm、幅S=100mm、半折長L=300mmとしてこれを2枚かさねて1セットとした環状ゴム材を使用した場合を想定すると、100%伸び変化時の引張り力は78kg、1本当たりの引張りバネ定数は2.6kg/cmとなるため、1辺当りの弾性材23の必要本数は6セット(12枚)と算出される。
図1、2に戻って、万一の共振を回避するため、および弾性材23の伸縮による建物の振動継続を早期に減衰させるため、改良地盤には原点復帰手段20に沿って図示のようにダンパなどの減衰手段25が設けられていることが好ましい。この減衰手段25は、図示の例では2軸方向にそれぞれ1つずつ設けられているが、水平面での振動を減衰するため、このように平面上の2軸に沿って少なくとも各1つが設けられることが好ましいが、その数はこれに限定されない。減衰手段25は、基礎8の側面と側壁61とにジョイントを介してボルト止めされてもよく、あるいは着脱を容易にするために図2(b)に示すものと同様に差込式にして固定することでもよい。なお、減衰手段25の設置に関しては次に示す実施の形態についても同様に適用可能である。
図1に示す例では、緩衝空隙70を空洞のままとして原点復帰手段20を配置しているが、これを例えば図5に示すように原点復帰手段20をそのまま含めて緩衝材62を充填するか、あるいは原点復帰手段20の部分のみが空洞となるよう区画してその他の箇所に緩衝材62を充填してもよい。本実施の形態ではこの緩衝材62として、「排水マット」の材料として不織布の袋に詰めて使用される通称「排水パイプ」と呼ばれるプラスチック製小口径の中空円筒材を多数充填して用いられている。「排水パイプ」は、ポリエチレンなどのプラスチック廃材をペレット状にし、特殊加工によって例えば外径約8mm、肉厚約1.5mm、長さ約10mm程度の中空円筒状に再生した材料で、新潟県新潟市にある株式会社オリス、鳥取県米子市にあるフジ化成工業株式会社ほかから入手可能である。
緩衝材62としてこの「排水パイプ」を使用することのメリットは、廃材利用であるために資源的、コスト的に有利であることのほか、土、砂、砂利を充填材とした場合にはこれらがブレーキとなって地震時に振動減衰手段10のすべり性能を阻害させることがあるのに対し、「排水パイプ」にはそれが見られず、良好な干渉特性を得ることができる点が挙げられる。また特に寒冷地において、土、砂、砂利を緩衝材として使用されると水が内部に進入した際にこれが凍結して減衰手段のすべり性能に更なる悪影響を及ぼすことになるのに対し、「排水パイプ」では透水性に優れるためにこのような悪影響が生じ難く、また「排水パイプ」自身が凍結しても僅かなショックでこれが破砕されるため、緩衝特性が大きく損なわれることがない。加えて、土等と異なって「排水パイプ」自身が弾性材料であることから、振動のショックを吸収すると共に、ある程度の原点復帰効果をも期待することができる。従来技術で使用されているゴムチップからなる緩衝材62と比べても、中空材であるために柔軟性と排水性が高まり、特には凍結時の緩衝特性に優れている。この緩衝材62の上に防水シートをかぶせ、さらのその上から砕石又は砂利を敷設すれば、外観上の違和感がなくなる。例えば緩衝材62の厚さ(深さ)を10cm、砕石の厚さを5cmとすることで、踏み込み感もフワフワ感もなく、普通に歩行することができるようになり、一見して一般の建物との見分けができないほどとなる。
以上、本発明の第1の実施の形態に係る原点復帰手段20について説明してきたが、当該原点復帰手段20によれば、取付けが容易であり、材料と諸元を選択することによって地震による基礎8と調整地盤2(地盤1)との間のずれを解消して自動的に原点復帰させることができる。上述したような物性を有する超低硬質ゴムを使用して入力加速度800gal、周波数5Hzと3Hzの振動を付与して行ったテスト結果によれば、いずれも基盤8側の応答加速度は230galに減少し、また残留変位(ずれ)は0mmであった。なお、地震直後には完全に原点復帰できない場合であっても、例えば加速度200gal以下で摺動材41、42の間で滑りが発生しない程度の地震時などにも弾性材23の作用によっても復元力が作用して原点復帰ができるものとなる。この他にも体に感じない微小地震や鉄道、大型車両走行等に起因する住環境侵入振動によっても、基礎8にずれが残っている限りは原点復帰する方向への引張り力が働くことが想定でき、これらの作用によっても原点復帰能力を果たすものとなる。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る原点復帰手段、並びに該原点復帰手段を備えた改良地盤について、図面を参照して説明する。図4は、本実施の形態に係る原点復帰手段20aを備えた改良地盤の概要を斜視図で示している。図において、本実施の形態に係る改良地盤は、基本的に従来技術の項で説明した特許文献1あるいは特許文献4に開示され摺動免震機構を利用する改良地盤の構成を踏襲しており、これに原点復帰手段20aを備えたものである。ただし、本発明の適用は図示の摺動免震機構によるものに限定されるものではなく、転がり免震機構による免震構造であっても、地盤に対する基礎の相対移動を許容するその他の免震構造に対しても適用可能である。
図4において、当該改良地盤は特許文献1に開示されている構造と同様に、調整地盤2が地盤1の上に打設されており、さらにその上に振動減衰手段4を介して基礎8が設けられている。基礎8はやはり平坦なベタ基礎であることが好ましく、基礎8の上には図示しない建物が構築される。振動減衰手段4は、ここでは対向して配置された調整地盤2側の第1の摺動材41と基礎8側の第2の摺動材42とから構成されている。図4では説明簡略化のため省略しているが、これらの摺動材41、42を図1(b)に示す保護シート71で包んで異物、水分の混入を防ぐようにしてもよい。さらに同じく図4では省略されているが、図1(b)の場合と同様、下地調整シート3、防振ゴム5(図5参照)によって摺動材41、42を挟むように配置することも勿論可能である。
本実施の形態に示す改良地盤では、調整地盤2と基礎8の両側面をつなぐように板状の弾性材23aが両者に跨って配置され、取付け具21a、22b(図示の例では適切に配置された複数のコンクリートボルト)によってそれぞれ基礎8側と調整地盤2側に固定されている。固定のために必要であれば、弾性材23aの固定部分に固定用の鋼板などが焼き付けされていてもよい。弾性材23aのゴム材としては、先の実施の形態と同様に超低硬度ゴムを使用することが好ましいが、ただし条件を満たすものであればその他のゴム材が使用されてもよい。図示の例では、このような原点復帰手段20が平面四辺形の基礎8の四辺にそれぞれ1個ずつ配置されている。ただし、この数量と配置については後述するように、建物を含む基礎8の重量、振動減衰手段4の諸元、基礎8の形状に応じて適切に設定可能である。例えば基礎8が四辺形であれば、各辺において少なくとも1個もしくは2個の原点復帰手段20が配置されていることが平面の2軸方向のズレを復元するために好ましく、他の平面形状の場合にあってもこれに準じた配置がされることが好ましい。
なお、図4では表示を省略しているが、調整地盤2と基礎8の周囲は地盤1の根切り部によって取り囲まれており、根切り部との間には地震の際の基礎8の相対移動を許容するための緩衝空隙70(図1(b)参照)が設けられていること、そしてその緩衝空隙70内には緩衝材62の充填ができることは先の実施の形態と同様である。但し、根切り部11の内側に設ける側壁61(いずれも図1参照)の設置は、必ずしも必要ではない。
地震の際の振動は、両摺動材41、42の間の摺動(滑り)によって吸収され、地盤側から基礎8への伝わる振動を減衰させる。この構造は先の従来技術で説明したものと同様である。図4では、改良地盤2と基礎8とが地震によりX方向に相対移動した状態を示しており、この場合にはX方向の両側に配置された原点復帰手段20aの弾性材23aには、先の実施の形態とは異なって両側のいずれにも引張り力が発生し、また、Y方向の両側に配置された原点復帰手段20aの弾性材23aにはせん断力が加わることを示している。各原点復帰手段20aは、根切り部との間の緩衝空隙内に配置されているため、その着脱、メンテナンスを容易に行うことができるのは先の実施の形態と同様である。
弾性材23aのゴム材としては、優れた柔軟性、衝撃吸収性を備え、かつ強度や耐候性にも優れたゴム材を選択することが望まれ、具体的にはここでも超低硬度ゴムを使用することが好ましいが、ただし条件を満たすものであればその他のゴム材が使用されてもよい。所定の寸法諸元を有する弾性材23aを使用する場合の例として、原点復帰手段20の必要数量は先の実施の形態と同様にして算定することができる。建物面積等の条件を先の実施の形態と同様(8m×8m、2階建、建物荷重は約64トン)とすれば、地震時の固有振動数0.5Hz付近のキラーパルス領域を回避して固有振動数0.1Hzを狙い目とすると、バネ定数Kも同様に25.7kg/cmとなることが目標となる。
一方、図4において、弾性材23aが超低硬度ゴムとしてその厚さを5mm、上下方向の幅を100mm(可動領域)、長さを1mとし、先の実施の形態と同様に計算すると、100%伸び変化時の引張り力は50kg、弾性材23a一本当たりの引張りバネ定数は約5kg/cmとなる。基礎8の各周囲に配置される弾性材23aの数をAとすれば、X方向の両側の弾性材23aに引張り力が発生し、Y方向の両側に加わるせん断力を引張り力の1/3とみると、引張りに換算した場合の関与する弾性材23aの合計本数は2A+2A/3=8/3・Aとなる。上記共振を回避するに必要なバネ定数Kと、弾性材23aのバネ定数、ならびに関与する弾性材23aの本数とから、基礎8の一辺に必要な弾性材23aの必要本数Aは、
A=K/K・3/8=25.7kg/cm/5kg/cm・3/8≒2本
となり、すなわち基礎8の矩形形状の各辺に2本の板状ゴムの弾性材23aを配置すれば、基盤8(建物含む)の固有振動数を0.1Hzに設定することができる。ただし、ここに挙げた板状ゴムの諸元並びに基礎8の形状、大きさも一例であって、条件が異なれば必要本数も当然に異なるものとなる。例えば、弾性材23aとして、厚さ1.5mm、幅100mm、長さ0.5mの板状のゴム系防水シートを使用した場合、基礎8の各辺ごとの必要数量は1本となる。
本実施の形態における調整地盤2並びに基礎8の周囲に設けられる緩衝空隙70(図1参照)の処理については、先の実施の形態と同様とすることでよい。また、本実施の形態に係る原点復帰手段20aが、取付け容易であり、材料と諸元を選択することによって地震による基礎8と調整地盤2(地盤1)との間のずれを解消して自動的に原点復帰させることができるという効果を奏することも同様であるが、さらに加えて、特許文献4に示すような防水シート(同文献の符号21)としても機能させるという効果をも発揮させることができる。すなわち、弾性材23aが調整地盤2と基礎8とを跨いで配置されると言う特性から、弾性材23aで両者の周囲をぐるりと取り囲み、弾性材23aによって調整地盤2と基礎8との間の摺動材41、42を覆うことによって、両摺動材41、42の間に異物、水分が混入するのを防ぎ、振動吸収のための摺動抵抗を劣化させる要因を排除する効果を生ずるものとなる。
本発明に係る原点復帰手段には幾つもの変形が考えられる。上記各実施の形態に示す例では弾性材23としてゴム(超低硬度ゴム)を使用するものとしているが、これはコイルばねなどの他の弾性材料が使用されてもよい。弾性材23としてゴムが使用された場合には、復元力は基本的に引っ張り側のみとなるが、ばねを使用した場合には圧縮側と引張り側の両方で作用するため、復元力を分散することができる。ただし、このため振動の減衰には不利となることが考えられ、ダンパなどの減衰手段25が追加して設けられることが好ましい。
他の変形例として、弾性材23の代わりにガス封入ダンパが使用されても良い。この場合の復元力はゴムの場合が引張り力であるのとは異なって、圧縮された側のガス封入ダンパによる押圧力が利用されるものとなる。ガス封入ダンパの着脱には、図3(b)の弾性材23のような両端にブラケット23aを設けて、これを取付具21a、22aに差し込むようにすれば簡単であり、また封入されたガスが漏れて押圧力が減退した場合のメンテナンスも容易である。なお、本明細書ではゴム、ばねなどを「弾性材」と呼ぶのに対応し、ガス封入ダンパなどの押圧力を発生させる部材は「押圧部材」と呼ぶものとする。押圧部材には、ガス封入ダンパのような伸縮式(テレスコピックタイプ)のものに限定されず、圧縮されることによって押圧力を発生させる屈曲式(マニピュレータタイプ)のものが使用されてもよい。さらに、弾性材23からなる原点復帰手段20と、押圧部材からなる原点復帰手段とを基礎8の周囲に混在させて配置してもよい。
また、図2ほかに示す例では、原点復帰手段20を基礎8と側壁61(もしくは調整地盤2)に直接固定するものとしているが、間接的に固定する他の方法が用いられてもよい。例えば、基礎8と側壁61との間にパンタグラフ状部材やアーム状屈曲部材を配置し、これら部材の要素に取り付けられた弾性材、押圧部材の伸縮を利用してずれを復元するようにしてもよい。これによって振幅の大小に対する原点復帰手段の復元力、復元ストローク量を調整することもできる。
上記第1の実施の形態に係る原点復帰手段20の他の応用例として、上記説明では、基礎8と調整地盤2の相対移動によるずれを、基盤8の周囲に配置された原点復帰手段20を利用するものであった。同じ原点復帰手段20を利用して、図6に示すような調整地盤側(同図の符号4)に設けられた基準心棒31と、基礎(同、符号5)側に設けられた調整穴32との間に設けて基礎側のずれを原点復帰させてもよい。調整穴32側(基礎側)に設けられる取付け具と、心棒31側(調整地盤側)に設けられる取付け具とに上述した弾性材23を嵌めて固定する原点復帰手段20を心棒31の周囲に少なくとも3つ、好ましくは4つもしくはそれ以上配置し、弾性材23の引張り力によってずれを復元させる。このような例では原点復帰手段20の配置が屋内となるため、弾性材23の対候性要件が緩和され、また着脱等もさらに容易となる。このような原点復帰手段20としては、特許文献4に示すようなコイルばねなどの他の弾性調整手段が用いられても良い。
本発明に係る原点復帰手段及び原点復帰方法、並びに該原点復帰手段を備えた改良地盤は、免震構造を備えた建物の開発、製造、販売、利用を図る産業分野において広く利用することができる。
1.地盤、 2.調整地盤、 3.下地調整シート、 4.振動減衰手段、 5.防振ゴム、 7.防水シート、 8.基礎、 11.根切り部、 20、20a.原点復帰手段、 21、22.取付け具、 23.弾性材(環状ゴム材)、 23a.フランジ部材、板状弾性材、 25.減衰手段、 30.原点復帰手段、 41.第1の摺動材、 42.第2の摺動材、 61.側壁、 62.緩衝材、 70.緩衝空隙。
73.防水カバー、

Claims (9)

  1. 免震構造によって地震時に地盤に対して相対移動した建物の基礎のずれを元の位置に復帰させる原点復帰手段であって、地盤側と建物の基礎側とを直接もしくは間接につなぐよう建物の基礎の周囲に複数個配置され、ずれによって前記原点復帰手段に生じた引張り力もしくは押圧力のいずれか一方もしくは双方を利用して前記ずれを解消させることを特徴とする原点復帰手段。
  2. 前記原点復帰手段が、弾性材もしくは押圧部材のいずれかからなる、請求項1に記載の原点復帰手段。
  3. 前記弾性材が環状、棒状、もしくは板状のゴム材のいずれかである、請求項2に記載の原点復帰手段。
  4. 前記弾性材が、地盤側と基礎側との側面周囲を覆い、防水機構を兼ねる板状のゴム材である、請求項3に記載の原点復帰手段。
  5. 前記ゴム材が超低硬度ゴム材である、請求項3又は請求項4に記載の原点復帰手段。
  6. 地震時に地盤と建物の基礎との間の水平方向の相対移動を許容することによって地震力を低減させる免震構造を備えた改良地盤において、
    前記相対移動によって生じた建物の基礎のずれを元の位置に復帰させる原点復帰手段をさらに備え、
    当該原点復帰手段が、請求項1から請求項5のいずれか1に記載の原点復帰手段であることを特徴とする改良地盤。
  7. 建物の基礎の周囲にある前記緩衝空隙内に、プラスチック廃材から再生した小口径パイプ材を短く切断して形成された通称「排水パイプ」を緩衝材として充填したことを特徴とする、請求項6に記載の改良地盤。
  8. 地震時に建物の基礎と地盤との間の水平方向の相対移動を許容して地震力を低減させる免震構造によって生じた建物の基礎のずれを元の位置に復帰させるための原点復帰方法であって、地盤側と建物の基礎側とを直接もしくは間接につなぐよう弾性材もしくは押圧部材からなる原点復帰手段を建物の基礎の周囲に複数個配置し、ずれによって該原点復帰手段に生じた引張り力もしくは押圧力のいずれか一方もしくは双方を利用して前記ずれを解消させることを特徴とする原点復帰方法。
  9. 前記原点復帰手段が、ずれによって生じた超低硬質ゴムの引張り力を利用するものである、請求項8に記載の原点復帰方法。
JP2014121511A 2014-06-12 2014-06-12 建物の免震構造、および免震方法 Active JP6635327B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014121511A JP6635327B2 (ja) 2014-06-12 2014-06-12 建物の免震構造、および免震方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014121511A JP6635327B2 (ja) 2014-06-12 2014-06-12 建物の免震構造、および免震方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016000932A true JP2016000932A (ja) 2016-01-07
JP6635327B2 JP6635327B2 (ja) 2020-01-22

Family

ID=55076653

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014121511A Active JP6635327B2 (ja) 2014-06-12 2014-06-12 建物の免震構造、および免震方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6635327B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114737619A (zh) * 2022-05-23 2022-07-12 江西省第十建筑工程有限公司 一种减震式地基结构及减震式建筑结构

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111705836B (zh) * 2020-06-23 2021-07-02 山东大学 一种减震防渗排水地下结构

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001263417A (ja) * 2000-03-21 2001-09-26 Toyo Tire & Rubber Co Ltd 軽量構造物用免震装置
JP2003147357A (ja) * 2001-11-14 2003-05-21 Fuji Kasei Kogyo Kk 廃プラスチックを用いた透水性土壌改質材の製造方法およびその施工方法
WO2006038313A1 (ja) * 2004-10-04 2006-04-13 Hiroyasu Tubota 構造物に作用する水平加速度緩衝、位置復帰装置
JP2007070857A (ja) * 2005-09-06 2007-03-22 Panahome Corp 建造物の免震構造
JP2007070859A (ja) * 2005-09-06 2007-03-22 Panahome Corp 建造物の免震施工方法および免震構造
JP2007321439A (ja) * 2006-05-31 2007-12-13 Sumitomo Forestry Co Ltd 免震装置及び建物の免震構造
JP2010059690A (ja) * 2008-09-04 2010-03-18 Takeshi Kikuchi 振動吸収機構を含む改良地盤、同施工方法、及び該改良地盤を含む建築物
JP2013046743A (ja) * 2011-07-27 2013-03-07 Takeshi Kikuchi 免震方法及び免震台

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001263417A (ja) * 2000-03-21 2001-09-26 Toyo Tire & Rubber Co Ltd 軽量構造物用免震装置
JP2003147357A (ja) * 2001-11-14 2003-05-21 Fuji Kasei Kogyo Kk 廃プラスチックを用いた透水性土壌改質材の製造方法およびその施工方法
WO2006038313A1 (ja) * 2004-10-04 2006-04-13 Hiroyasu Tubota 構造物に作用する水平加速度緩衝、位置復帰装置
JP2007070857A (ja) * 2005-09-06 2007-03-22 Panahome Corp 建造物の免震構造
JP2007070859A (ja) * 2005-09-06 2007-03-22 Panahome Corp 建造物の免震施工方法および免震構造
JP2007321439A (ja) * 2006-05-31 2007-12-13 Sumitomo Forestry Co Ltd 免震装置及び建物の免震構造
JP2010059690A (ja) * 2008-09-04 2010-03-18 Takeshi Kikuchi 振動吸収機構を含む改良地盤、同施工方法、及び該改良地盤を含む建築物
JP2013046743A (ja) * 2011-07-27 2013-03-07 Takeshi Kikuchi 免震方法及び免震台

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114737619A (zh) * 2022-05-23 2022-07-12 江西省第十建筑工程有限公司 一种减震式地基结构及减震式建筑结构
CN114737619B (zh) * 2022-05-23 2023-10-03 江西省第十建筑工程有限公司 一种减震式地基结构及减震式建筑结构

Also Published As

Publication number Publication date
JP6635327B2 (ja) 2020-01-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4983326B2 (ja) 改良地盤およびその施工方法
KR101181987B1 (ko) 변위증폭형 제진시스템 및 이의 시공방법
JP2010070909A (ja) 免震構造
JP5621101B1 (ja) 建造物の防震基礎構造
JP2011144833A (ja) 制振ユニット、建物及び建物補強工法
JP2016000932A (ja) 免震構造の原点復帰手段と原点復帰方法、並びに該手段を備えた改良地盤
JP2014152448A (ja) 粘性壁の構造
JP2017166735A (ja) プレキャストコンクリート防振ベースプレート
JP4546290B2 (ja) 構造物の免震基礎構造及び構築方法
JP2002070943A (ja) 免震滑り支承装置
JP6055231B2 (ja) 橋梁および橋梁用制振ダンパー
JPH1037212A (ja) 免震地盤
JP3336481B2 (ja) 免震装置の設置方式
KR200467787Y1 (ko) 마찰형 내진댐퍼
JP6384809B2 (ja) 地震力減衰ユニット、該ユニットを使用する改良地盤並びにその施工方法
KR20110121312A (ko) 내진 보강용 이력 댐퍼
JP4828951B2 (ja) 積層ゴム支承体、及び免震防振構造
JP2010255324A (ja) 建物の制震構造
JP2008121399A (ja) 基礎減震装置
JP2005090101A (ja) 制震構造物
JP4680418B2 (ja) 遮音壁構造
JP7182443B2 (ja) 緩衝体、免震建物及び建物
JP5383944B1 (ja) 家屋の免震構造
JP2011184950A (ja) 滑り基礎構造
JP5332018B2 (ja) 地盤免震構造およびこれを用いた地盤免震工法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170424

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20170424

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170602

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180223

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180306

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180502

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20181030

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20181217

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190514

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190718

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20191126

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20191205

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6635327

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250