以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明に係る油圧駆動装置の第1実施形態を備えた荷役車両を示す側面図である。同図において、本実施形態に係る荷役車両1は、バッテリ式のフォークリフトである。フォークリフト1は、車体フレーム2と、この車体フレーム2の前部に配置されたマスト3とを備えている。マスト3は、車体フレーム2に傾動可能に支持された左右1対のアウターマスト3aと、これらのアウターマスト3aの内側に配置され、アウターマスト3aに対して昇降可能なインナーマスト3bとからなっている。
マスト3の後側には、昇降用油圧シリンダとしてのリフトシリンダ4が配置されている。リフトシリンダ4のピストンロッド4pの先端部は、インナーマスト3bの上部に連結されている。
インナーマスト3bには、リフトブラケット5が昇降可能に支持されている。リフトブラケット5には、荷物を積載するフォーク(昇降物)6が取り付けられている。インナーマスト3bの上部にはチェーンホイール7が設けられ、チェーンホイール7にはチェーン8が掛装されている。チェーン8の一端部はリフトシリンダ4に連結され、チェーン8の他端部はリフトブラケット5に連結されている。リフトシリンダ4を伸縮させると、チェーン8を介してフォーク6がリフトブラケット5と共に昇降する。
車体フレーム2の左右両側には、傾動用油圧シリンダとしてのティルトシリンダ9がそれぞれ支持されている。ティルトシリンダ9のピストンロッド9pの先端部は、アウターマスト3aの高さ方向ほぼ中央部に回動可能に連結されている。ティルトシリンダ9を伸縮させると、マスト3が傾動する。
車体フレーム2の上部には、運転室10が設けられている。運転室10の前部には、リフトシリンダ4を作動させてフォーク6を昇降させるためのリフト操作レバー11と、ティルトシリンダ9を作動させてマスト3を傾動させるためのティルト操作レバー12とが設けられている。
また、運転室10の前部には、操舵を行うためのステアリング13が設けられている。ステアリング13は、油圧式のパワーステアリングであり、パワーステアリング(PS)用油圧シリンダとしてのPSシリンダ14(図2参照)により運転者の操舵をアシストすることが可能である。
また、フォークリフト1は、アタッチメント(図示せず)を動作させるアタッチメント用油圧シリンダとしてのアタッチメントシリンダ15(図2参照)を備えている。アタッチメントとしては、例えばフォーク6を左右移動、傾動、回転させるもの等がある。また、運転室10には、アタッチメントシリンダ15を作動させてアタッチメントを動作させるためのアタッチメント操作レバー(図示せず)が設けられている。
さらに、運転室10には、特に図示はしないが、フォークリフト1の走行方向(前進/後進/ニュートラル)を切り換えるためのディレクションスイッチが設けられている。
図2は、本発明に係る油圧駆動装置の第1実施形態を示す油圧回路図である。同図において、本実施形態の油圧駆動装置16は、リフトシリンダ4、ティルトシリンダ9、アタッチメントシリンダ15及びPSシリンダ14を駆動する装置である。
油圧駆動装置16は、単一の油圧ポンプモータ17と、この油圧ポンプモータ17を駆動する単一の電動モータ18とを備えている。油圧ポンプモータ17は、作動油を吸い込むための吸込口17aと、作動油を吐出するための吐出口17bとを有している。油圧ポンプモータ17は、一方向に回転可能な構成とされている。
電動モータ18は、電動機または発電機として機能する。具体的には、油圧ポンプモータ17が油圧ポンプとして作動する場合には、電動モータ18は電動機として機能し、油圧ポンプモータ17が油圧モータとして作動する場合には、電動モータ18は発電機として機能する。電動モータ18が発電機として機能すると、電動モータ18で発生した電力がバッテリ(図示せず)に蓄電される。つまり、回生動作が行われることとなる。
油圧ポンプモータ17の吸込口17aには、作動油を貯留するタンク19が油圧配管20を介して接続されている。油圧配管20には、タンク19から油圧ポンプモータ17への方向にのみ作動油を流通させる逆止弁21が設けられている。
油圧ポンプモータ17の吐出口17bとリフトシリンダ4のボトム室4bとは、油圧配管22を介して接続されている。油圧配管22には、リフト上昇用の電磁比例弁23が配設されている。電磁比例弁23は、油圧ポンプモータ17からリフトシリンダ4のボトム室4bへの作動油の流通を許容する開位置23aと、油圧ポンプモータ17からリフトシリンダ4のボトム室4bへの作動油の流通を遮断する閉位置23bとの間で切り換えられる。
電磁比例弁23は、通常は閉位置23b(図示)にあり、ソレノイド操作部23cに操作信号(リフト操作レバー11の上昇操作の操作量に応じたリフト上昇用ソレノイド電流指令値)が入力されると、開位置23aに切り換わる。すると、油圧ポンプモータ17からリフトシリンダ4のボトム室4bに作動油が供給され、リフトシリンダ4が伸長し、これに伴ってフォーク6が上昇する。なお、電磁比例弁23は、開位置23aにあるときは、操作信号に応じた開度で開く。油圧配管22における電磁比例弁23とリフトシリンダ4との間には、電磁比例弁23からリフトシリンダ4への方向にのみ作動油を流通させる逆止弁24が設けられている。
油圧配管22における油圧ポンプモータ17と電磁比例弁23との分岐点には、油圧配管25を介してティルト用の電磁比例弁26が接続されている。油圧配管25には、油圧ポンプモータ17から電磁比例弁26への方向にのみ作動油を流通させる逆止弁27が設けられている。
電磁比例弁26とティルトシリンダ9のロッド室9a及びボトム室9bとは、油圧配管28,29を介してそれぞれ接続されている。電磁比例弁26は、油圧ポンプモータ17からティルトシリンダ9のロッド室9aへの作動油の流通を許容する開位置26aと、油圧ポンプモータ17からティルトシリンダ9のボトム室9bへの作動油の流通を許容する開位置26bと、油圧ポンプモータ17からティルトシリンダ9への作動油の流通を遮断する閉位置26cの間で切り換えられる。
電磁比例弁26は、通常は閉位置26c(図示)にあり、開位置26a側のソレノイド操作部26dに操作信号(ティルト操作レバー12の後傾操作の操作量に応じたティルト用ソレノイド電流指令値)が入力されると、開位置26aに切り換わり、開位置26b側のソレノイド操作部26eに操作信号(ティルト操作レバー12の前傾操作の操作量に応じたティルト用ソレノイド電流指令値)が入力されると、開位置26bに切り換わる。電磁比例弁26が開位置26aに切り換わると、油圧ポンプモータ17からティルトシリンダ9のロッド室9aに作動油が供給され、ティルトシリンダ9が収縮し、これに伴ってマスト3が後傾する。電磁比例弁26が開位置26bに切り換わると、油圧ポンプモータ17からティルトシリンダ9のボトム室9bに作動油が供給され、ティルトシリンダ9が伸長し、これに伴ってマスト3が前傾する。なお、電磁比例弁26は、開位置26a,26bにあるときは、操作信号に応じた開度で開く。
油圧配管25における逆止弁27の上流側には、油圧配管30を介してアタッチメント用の電磁比例弁31が接続されている。油圧配管30には、油圧ポンプモータ17から電磁比例弁31への方向にのみ作動油を流通させる逆止弁32が設けられている。
電磁比例弁31とアタッチメントシリンダ15のロッド室15a及びボトム室15bとは、油圧配管33,34を介してそれぞれ接続されている。電磁比例弁31は、油圧ポンプモータ17からアタッチメントシリンダ15のロッド室15aへの作動油の流通を許容する開位置31aと、油圧ポンプモータ17からアタッチメントシリンダ15のボトム室15bへの作動油の流通を許容する開位置31bと、油圧ポンプモータ17からアタッチメントシリンダ15への作動油の流通を遮断する閉位置31cの間で切り換えられる。
電磁比例弁31は、通常は閉位置31c(図示)にあり、開位置31a側のソレノイド操作部31dに操作信号(アタッチメント操作レバーの一方側操作の操作量に応じたアタッチメント用ソレノイド電流指令値)が入力されると、開位置31aに切り換わり、開位置31b側のソレノイド操作部31eに操作信号(アタッチメント操作レバーの他方側操作の操作量に応じたアタッチメント用ソレノイド電流指令値)が入力されると、開位置31bに切り換わる。なお、アタッチメントシリンダ15の動作については省略する。また、電磁比例弁31は、開位置31a,31bにあるときは、操作信号に応じた開度で開く。
油圧配管30における逆止弁32の上流側には、油圧配管35を介してPS用の電磁比例弁36が接続されている。油圧配管35には、油圧ポンプモータ17から電磁比例弁36への方向にのみ作動油を流通させる逆止弁37が設けられている。
電磁比例弁36とPSシリンダ14のロッド室14a及びボトム室14bとは、油圧配管38,39を介してそれぞれ接続されている。電磁比例弁36は、油圧ポンプモータ17からPSシリンダ14のロッド室14aへの作動油の流通を許容する開位置36aと、油圧ポンプモータ17からPSシリンダ14のボトム室14bへの作動油の流通を許容する開位置36bと、油圧ポンプモータ17からPSシリンダ14への作動油の流通を遮断する閉位置36cの間で切り換えられる。
電磁比例弁36は、通常は閉位置36c(図示)にあり、開位置36a側のソレノイド操作部36dに操作信号(ステアリング13の左右一方側操作の操作速度に応じたPS用ソレノイド電流指令値)が入力されると、開位置36aに切り換わり、開位置36b側のソレノイド操作部36eに操作信号(ステアリング13の左右他方側操作の操作速度に応じたPS用ソレノイド電流指令値)が入力されると、開位置36bに切り換わる。なお、PSシリンダ14の動作については省略する。また、電磁比例弁36は、開位置36a,36bにあるときは、操作信号に応じた開度で開く。
油圧配管22における油圧ポンプモータ17と電磁比例弁23との分岐点は、油圧配管40を介してタンク19と接続されている。油圧配管40には、アンロード弁41及びフィルタ42が設けられている。また、油圧配管40と電磁比例弁26,31,36とは、油圧配管43〜45を介して接続されている。さらに、電磁比例弁23,26,31,36は、油圧配管46を介して油圧配管40と接続されている。
油圧ポンプモータ17の吸込口17aとリフトシリンダ4のボトム室4bとは、油圧配管47を介して接続されている。油圧配管47は、リフトシリンダ4からの作動油を油圧ポンプモータ17に送るための第1作動油流路を構成している。
油圧配管47には、リフト下降用の電磁比例弁48が配設されている。電磁比例弁48は、リフトシリンダ4のボトム室4bから油圧ポンプモータ17の吸込口17aへの作動油の流通を許容する開位置48aと、リフトシリンダ4のボトム室4bから油圧ポンプモータ17の吸込口17aへの作動油の流通を遮断する閉位置48bとの間で切り換えられる。
電磁比例弁48は、通常は閉位置48b(図示)にあり、ソレノイド操作部48cに操作信号(リフト操作レバー11の下降操作の操作量に応じたリフト下降用ソレノイド電流指令値)が入力されると、開位置48aに切り換わる。すると、フォーク6の自重によりフォーク6が下降し、これに伴ってリフトシリンダ4が収縮し、リフトシリンダ4のボトム室4bから作動油が流れ出る。なお、電磁比例弁48は、開位置48aにあるときは、操作信号に応じた開度で開く。
油圧配管47における油圧ポンプモータ17と電磁比例弁48との分岐点は、油圧配管49を介してタンク19と接続されている。つまり、油圧配管49は、油圧配管47とタンク19とを接続している。油圧配管49は、リフトシリンダ4からの作動油をタンク19に戻すためのバイパス作動油流路(第2作動油流路)を構成している。
油圧配管49には、リフトシリンダ4からタンク19に戻る作動油の流量を制御する圧力補償機能付きの流量制御弁50が配設されている。流量制御弁50は、パイロット圧に応じた開度で開くパイロット式流量制御弁である。なお、油圧配管49における流量制御弁50とタンク19との間には、フィルタ51が設けられている。
流量制御弁50は、作動油の流通を許容する開位置50aと、作動油の流通を遮断する閉位置50bと、作動油の流通量を調整する絞り位置50cとの間で切り換えられる。流量制御弁50の閉位置50b側のパイロット操作部と油圧配管47における電磁比例弁48の上流側とは、パイロット流路52を介して接続されている。流量制御弁50の開位置50a側のパイロット操作部と油圧配管49における流量制御弁50の上流側とは、パイロット流路53を介して接続されている。
流量制御弁50は、油圧配管47における電磁比例弁48の上流側の圧力と油圧配管49における流量制御弁50の上流側の圧力との圧力差(差圧)に応じた開度で開く。具体的には、流量制御弁50は、通常は開位置50a(図示)にある。そして、油圧配管47における電磁比例弁48の上流側の圧力と油圧配管49における流量制御弁50の上流側の圧力との差圧が大きくなるほど、流量制御弁50の開度が小さくなる。
油圧配管49における流量制御弁50の上流側には、タンク19に戻る方向にのみ作動油を通過させるパイロットチェック弁54が配設されている。パイロットチェック弁54と油圧配管49における流量制御弁50の下流側とは、パイロット流路55を介して接続されている。パイロット流路55上には、パイロット用電磁切換弁56が配設されている。パイロット用電磁切換弁56は、開位置56aまたは閉位置56bに切り換えられる開閉弁である。パイロット用電磁切換弁56は、通常は閉位置56b(図示)にあり、ソレノイド操作部56cにON信号が入力されると、開位置56aに切り換わる。
パイロットチェック弁54は、図3に示すように、電磁比例弁48と流量制御弁50との間の流路を開閉させるプランジャ57と、電磁比例弁48と流量制御弁50との間の流路を閉じる方向にプランジャ57を付勢するバネ58とを有している。プランジャ57には、リフトシリンダ4からの作動油をパイロット流路55に供給するためのオリフィス57aが形成されている。
フォーク6の下降動作(リフト下降動作)を行うときは、電磁比例弁48を閉位置48bから開位置48aに切り換えると共に、パイロット用電磁切換弁56を閉位置56bから開位置56aに切り換える。すると、上述したように、フォーク6の自重によりフォーク6が下降し、リフトシリンダ4が収縮する。このとき、パイロット用電磁切換弁56を開いた直後は、リフトシリンダ4からの作動油がパイロットチェック弁54のオリフィス57a及びパイロット流路55を通ってタンク19に戻る(矢印A参照)。
そして、オリフィス57aを通過する作動油の流量が増えると、オリフィス57aの上流側の圧力とオリフィス57aの下流側の圧力との圧力差(差圧)によってバネ58の付勢力に抗してプランジャ57が押し上げられることで、電磁比例弁48と流量制御弁50との間の流路が開くようになる。これにより、リフトシリンダ4からの作動油がパイロットチェック弁54及び流量制御弁50を通過してタンク19に戻るようになる(矢印B参照)。
このようにパイロットチェック弁54の開度は、オリフィス57aの上流側(油圧配管49におけるパイロットチェック弁54の上流側)の圧力とオリフィス57aの下流側(パイロット流路55)の圧力との差圧、つまり流量制御弁50の上流側の圧力と流量制御弁50の下流側の圧力との差圧(流量制御弁50の前後差圧)によって決まる。言い換えると、パイロットチェック弁54を開弁させる差圧としては、流量制御弁50の前後差圧が用いられる。
図4は、油圧駆動装置16の制御系を示す構成図である。同図において、油圧駆動装置16は、コントローラ60と、リフト操作レバー11の操作量を検出するリフト操作レバー操作量センサ61と、ティルト操作レバー12の操作量を検出するティルト操作レバー操作量センサ62と、アタッチメント操作レバー(図示せず)の操作量を検出するアタッチメント操作レバー操作量センサ63と、ステアリング13の操作速度を検出するステアリング操作速度センサ64と、電動モータ18の実回転数(モータ実回転数)を検出する回転数センサ65とを備えている。
コントローラ60は、操作レバー操作量センサ61〜63、ステアリング操作速度センサ64及び回転数センサ65の検出値を入力し、所定の処理を行い、電動モータ18、電磁比例弁23,26,31,36,48及びパイロット用電磁切換弁56を制御する。
図5は、コントローラ60により実行される制御処理手順を示すフローチャートである。なお、本制御処理では、フォーク6の下降(リフト下降)を含む動作のみを対象としている。また、本制御処理を実行する周期は、実験等により適宜決められている。
同図において、まず操作レバー操作量センサ61〜63により検出されたリフト操作レバー11、ティルト操作レバー12及びアタッチメント操作レバーの操作量と、ステアリング操作速度センサ64により検出されたステアリング13の操作速度とを取得する(手順S101)。
続いて、手順S101で取得されたリフト操作レバー11、ティルト操作レバー12、アタッチメント操作レバーの操作量及びステアリング13の操作速度に基づいて、操作条件としてのリフト下降モードを判定する(手順S102)。リフト下降モードとしては、リフト下降単独操作、リフト下降+ティルト操作、リフト下降+アタッチメント操作、リフト下降+パワーステアリング操作、リフト下降+ティルト+パワーステアリング操作がある。
続いて、手順S101で取得されたリフト操作レバー11、ティルト操作レバー12、アタッチメント操作レバーの操作量及びステアリング13の操作速度と手順S102で判定されたリフト下降モードとに応じた電磁比例弁ソレノイド電流指令値を求める(手順S103)。電磁比例弁ソレノイド電流指令値としては、リフト操作レバー11の下降操作の操作量に応じたリフト下降用ソレノイド電流指令値、ティルト操作レバー12の操作量に応じたティルト用ソレノイド電流指令値、アタッチメント操作レバーの操作量に応じたアタッチメント用ソレノイド電流指令値、ステアリング13の操作速度に応じたパワーステアリング(PS)用ソレノイド電流指令値がある。
続いて、手順S102で得られた操作条件に対するモータ必要回転数を求める(手順S104)。モータ必要回転数としては、リフト必要モータ回転数、ティルト必要モータ回転数、アタッチメント必要モータ回転数及びパワーステアリング(PS)必要モータ回転数がある。リフト必要モータ回転数は、リフト動作を行うのに必要な電動モータ18の回転数である。ティルト必要モータ回転数は、ティルト動作を行うのに必要な電動モータ18の回転数である。アタッチメント必要モータ回転数は、アタッチメント動作を行うのに必要な電動モータ18の回転数である。PS必要モータ回転数は、PS動作を行うのに必要な電動モータ18の回転数である。
続いて、手順S102で判定されたリフト下降モードと手順S104で得られたモータ必要回転数に基づいて、モータ回転数指令値(モータ指令回転数)を設定する(手順S105)。このとき、モータ指令回転数は、図6に示す通りである。具体的には、リフト下降単独操作の場合は、モータ指令回転数をリフト必要モータ回転数N_liftとする。リフト下降+ティルト操作の場合は、モータ指令回転数をティルト必要モータ回転数N_tiltとする。リフト下降+アタッチメント操作の場合は、モータ指令回転数をアタッチメント必要モータ回転数N_atmtとする。リフト下降+パワーステアリング操作の場合は、モータ指令回転数をPS必要モータ回転数N_psとする。リフト下降+ティルト+パワーステアリング操作の場合は、モータ指令回転数をティルト必要モータ回転数N_tiltとPS必要モータ回転数N_psとの最大値とする。
続いて、手順S102で判定されたリフト下降モードに基づいて、電動モータ18の力行トルク制限値を設定する(手順S106)。力行トルク制限値は、許容する力行トルクの値のことである。図6に示すように、リフト下降単独操作の場合は、力行トルク制限をONにする。このとき、力行トルク制限値は、例えば0Nm(0%)もしくはそれに近い値に設定される。リフト下降+ティルト操作、リフト下降+アタッチメント操作、リフト下降+パワーステアリング操作、リフト下降+ティルト+パワーステアリング操作の場合は、力行トルク制限をOFFにする。つまり、この時の力行トルク制限値は、100%に設定される。
続いて、手順S102で判定されたリフト下降モードと手順S105で設定されたモータ指令回転数と回転数センサ65により検出されたモータ実回転数とに基づいて、パイロット用電磁切換弁56の開閉(ON/OFF)動作を制御する。パイロット用電磁切換弁56の制御処理手順の詳細を図7に示す。
図7において、まずリフト下降モードがリフト下降単独操作であるかどうかを判断する(手順S111)。リフト下降モードがリフト下降単独操作であると判断されたときは、回転数センサ65により検出されたモータ実回転数を取得する(手順S112)。
続いて、手順S105(図4参照)で設定されたモータ指令回転数とモータ実回転数との差が一定値N以上であるかどうかを判断する(手順S113)。モータ指令回転数とモータ実回転数との差が一定値N以上であると判断されたときは、パイロット用電磁切換弁56のソレノイド操作部56cにON信号を送出することで、パイロット用電磁切換弁56を開位置56a(ON)にする(手順S114)。モータ指令回転数とモータ実回転数との差が一定値N以上でないと判断されたときは、パイロット用電磁切換弁56のソレノイド操作部56cにOFF信号を送出することで、パイロット用電磁切換弁56を閉位置56b(OFF)にする(手順S115)。
また、手順S111でリフト下降モードがリフト下降単独操作でない、つまりリフト下降モードがリフト下降+ティルト操作、リフト下降+アタッチメント操作、リフト下降+パワーステアリング操作、リフト下降+ティルト+パワーステアリング操作の何れかであると判断されたときは、図6にも示すように、パイロット用電磁切換弁56のソレノイド操作部56cにON信号を送出することで、パイロット用電磁切換弁56をONにする(手順S114)。
なお、本処理では、モータ指令回転数とモータ実回転数との差が一定値N以上であるときは、パイロット用電磁切換弁56をONにし、モータ指令回転数とモータ実回転数との差が一定値N以上でないときは、パイロット用電磁切換弁56をOFFにするようにしたが、特にその態様には限られない。例えばチャタリングを防止するために、モータ指令回転数とモータ実回転数との差が一定値N_on以上であるときは、パイロット用電磁切換弁56をONにし、モータ指令回転数とモータ実回転数との差が一定値N_off(<N_on)以下であるときは、パイロット用電磁切換弁56をOFFにするようにしても良い。
図5に戻り、手順S107を実施した後、手順S103で得られた電磁比例弁ソレノイド電流指令値を対応する電磁比例弁のソレノイド操作部に送出する(手順S108)。このとき、リフト下降用ソレノイド電流指令値を電磁比例弁48のソレノイド操作部48cに送出する。また、ティルト用ソレノイド電流指令値を求めたときは、その電流指令値を電磁比例弁26のソレノイド操作部26d,26eの何れかに送出し、アタッチメント用ソレノイド電流指令値を求めたときは、その電流指令値を電磁比例弁31のソレノイド操作部31d,31eの何れかに送出し、PS用ソレノイド電流指令値を求めたときは、その電流指令値を電磁比例弁36のソレノイド操作部36d,36eの何れかに送出する。
続いて、手順S105で設定されたモータ回転数指令値(モータ指令回転数)と回転数センサ65により検出されたモータ実回転数と手順S106で設定された電動モータ18の力行トルク制限値とに基づいて電動モータ18の出力トルクを求め、その出力トルクを制御信号として電動モータ18に送出する(手順S109)。手順S109の処理は、図8に示すように、コントローラ60に含まれるモータトルク出力部66により実行される。
図8において、モータトルク出力部66は、比較部67と、PID演算部68と、出力トルク決定部69と、モータ制御部70とを有している。比較部67は、上記手順S105で設定されたモータ指令回転数と回転数センサ65により検出されたモータ実回転数との回転数偏差を算出する。PID演算部68は、モータ指令回転数とモータ実回転数との回転数偏差のPID演算を行い、当該回転数偏差がゼロになるような電動モータ18の力行トルク指令値を求める。PID演算は、比例(Proportional)動作、積分(Integral)動作及び微分(Derivative)動作を組み合わせた演算である。
出力トルク決定部69は、PID演算部68で得られた力行トルク指令値と上記手順S106で設定された電動モータ18の力行トルク制限値とを比較し、電動モータ18の出力トルクを決定する。具体的には、力行トルク指令値が力行トルク制限値以下のときは、力行トルク指令値を電動モータ18の出力トルクとし、力行トルク指令値が力行トルク制限値よりも高いときは、力行トルク制限値を電動モータ18の出力トルクとする。モータ制御部70は、出力トルク決定部69で決定された出力トルクを電流信号に変換して電動モータ18に送出する。
以上において、リフト操作レバー操作量センサ61、ティルト操作レバー操作量センサ62、アタッチメント操作レバー操作量センサ63、ステアリング操作速度センサ64及びコントローラ60は、電動機18の指令回転数を設定する設定手段と、昇降操作手段11の下降操作が単独で行われたかどうかと、昇降操作手段11の下降操作を含む複数の手動操作手段の操作が同時に行われたかどうかとを判定する判定手段とを構成する。コントローラ60は、設定手段により設定された指令回転数と回転数検出手段65により検出された実回転数とに基づいて電動機18を制御する電動機制御手段を構成する。
また、コントローラ60は、判定手段により昇降操作手段11の下降操作が単独で行われたと判定された場合は、設定手段により設定された電動機18の指令回転数と回転数検出手段65により検出された電動機18の実回転数との差が所定値以上であるときに、弁手段56を開位置56aに切り換えるように制御し、判定手段により昇降操作手段11の下降操作を含む複数の手動操作手段の操作が同時に行われたと判定された場合は、弁手段56を無条件に開位置56aに切り換えるように制御する弁開閉制御手段を構成する。
さらに、コントローラ60は、判定手段により昇降操作手段11の下降操作が単独で行われたと判定された場合は、電動機18の力行トルクを制限し、判定手段により昇降操作手段11の下降操作を含む複数の手動操作手段の操作が同時に行われたと判定された場合は、電動機18の力行トルクの制限を解除するトルク制限制御手段を構成する。
ここで、図5に示す手順S101,102は、判定手段の一部として機能する。同手順S101,S103〜S105は、設定手段の一部として機能する。同手順S106は、トルク制限制御手段として機能する。同手順S107は、弁開閉制御手段として機能する。同手順S109は、電動機制御手段として機能する。
次に、本実施形態の油圧駆動装置16の動作を図9〜図12により説明する。図9は、フォーク6の積荷荷重が大きい状態(重負荷状態)において、リフト下降単独操作を行う場合のタイミングチャートを示す図である。
図9において、まず時刻t1では、リフト下降単独操作が開始されるため、電動モータ18の力行トルク制限がONになる。また、リフト操作レバー11の操作量(実線A参照)に応じたリフト下降用ソレノイド電流指令値(破線B参照)が求められ、その電流指令値が電磁比例弁48に出力される。すると、電磁比例弁48が閉位置48bから開位置48aに切り換えられる。このとき、フォーク6の積荷荷重が大きいため、油圧配管47における電磁比例弁48の上流側の圧力と油圧配管49における流量制御弁50の上流側の圧力との差圧が大きくなり、流量制御弁50が開位置50aから閉位置50b側に切り換えられる。そして、リフト下降用ソレノイド電流指令値に応じたリフト必要モータ回転数がモータ指令回転数(破線C0参照)として求められ、そのモータ指令回転数が電動モータ18に出力される。
その後の時刻t2では、モータ指令回転数とモータ実回転数(実線C参照)との差が一定値N以上になると、パイロット用電磁切換弁56がONになる(実線D参照)。このとき、油圧ポンプモータ17の吸込圧力によって油圧ポンプモータ17が回転させられるため、モータ実回転数がモータ指令回転数に近づくようになる。
その後の時刻t3では、モータ指令回転数とモータ実回転数との差が一定値Nより小さくなるため、パイロット用電磁切換弁56がOFFになる(実線D参照)。すると、タンク19に戻る作動油の流量(バイパス流量)Q3が0となり、リフトシリンダ4からの作動油の流量Q1が全て油圧ポンプモータ17に供給される作動油の流量Q2となる。従って、油圧ポンプモータ17が油圧モータとして作動しやすくなり、電動モータ18が発電機として機能するようになる。これにより、上述した荷役回生を効率的に行うことができる。
図10は、フォーク6の積荷荷重が小さい状態(軽負荷状態)において、リフト下降単独操作を行う場合のタイミングチャートを示す図である。
図10において、まず時刻t1では、リフト下降単独操作が開始されるため、電動モータ18の力行トルク制限がONになる。また、リフト操作レバー11の操作量(実線A参照)に応じたリフト下降用ソレノイド電流指令値(破線B参照)が求められ、その電流指令値が電磁比例弁48に出力される。すると、電磁比例弁48が閉位置48bから開位置48aに切り換えられる。このとき、フォーク6の積荷荷重が小さいため、油圧配管47における電磁比例弁48の上流側の圧力と油圧配管49における流量制御弁50の上流側の圧力との差圧が小さく、流量制御弁50が開いている。そして、リフト下降用ソレノイド電流指令値に応じたリフト必要モータ回転数がモータ指令回転数(破線C0参照)として求められ、そのモータ指令回転数が電動モータ18に出力される。
その後の時刻t2では、モータ指令回転数とモータ実回転数(実線C参照)との差が一定値N以上になると、パイロット用電磁切換弁56がONになる(実線D参照)。このとき、油圧ポンプモータ17の吸込圧力が低いため、油圧ポンプモータ17は回転させられず、モータ実回転数がモータ指令回転数に到達することは無い。このため、パイロット用電磁切換弁56は、ONの状態に維持される。
その状態で、タンク19に戻る作動油のバイパス流量Q3が必要な量になるまで、流量制御弁50の開度が大きくなる。すると、リフトシリンダ4からの作動油の流量Q1が必要な分だけ確保されるようになる。これにより、必要なリフト下降速度を確保することができる。また、電動モータ18を力行させることは無いので、消費電力を低く抑えることができる。
図11は、フォーク6の積荷荷重が大きい状態(重負荷状態)において、リフト下降とティルトとの同時操作を行う場合のタイミングチャートを示す図である。図11において、時刻t1〜t3での動作については、図9に示すものと同様であるため、省略する。
その後の時刻t4では、ティルト操作が開始されるため、電動モータ18の力行トルク制限がOFFになると共に、パイロット用電磁切換弁56がOFFからONになる(実線D参照)。そして、ティルト操作レバー12の操作量(実線E参照)に応じたティルト用ソレノイド電流指令値が求められ、その電流指令値が電磁比例弁26に出力される。すると、電磁比例弁26が閉位置26cから開位置26a,26bの何れかに切り換えられる。そして、ティルト用ソレノイド電流指令値に応じたティルト必要モータ回転数がモータ指令回転数(破線C0参照)として求められ、そのモータ指令回転数が電動モータ18に出力される。
このとき、電動モータ18の力行トルク制限はOFFであるため、モータ実回転数がモータ指令回転数に追従するようになる。なお、積荷荷重によっては荷役回生を行うことが可能である。
ここで、モータ指令回転数がリフト必要モータ回転数からティルト必要モータ回転数に下がるため、モータ実回転数が低下する。このため、油圧ポンプモータ17に供給される作動油の流量Q2が少なくなる。すると、流量制御弁50は、減少した流量Q2を補える開度になるまで開くようになる。従って、タンク19に戻る作動油のバイパス流量Q3が増加するため、リフトシリンダ4からの作動油の流量Q1がほぼ一定になる。これにより、リフト下降とティルトとの同時操作を行っても、リフト下降速度を一定に保つことができる。また、積荷の回生エネルギーを最大限利用して、リフト下降動作及びティルト動作を同時に行うことができる。
図12は、フォーク6の積荷荷重が小さい状態(軽負荷状態)において、リフト下降とティルトとの同時操作を行う場合のタイミングチャートを示す図である。図12において、時刻t1,t2での動作については、図10に示すものと同様であるため、省略する。
その後の時刻t4では、ティルト操作が開始されるため、電動モータ18の力行トルク制限がOFFになると共に、パイロット用電磁切換弁56がONの状態に維持される(実線D参照)。そして、ティルト操作レバー12の操作量に応じたティルト用ソレノイド電流指令値が求められ、その電流指令値が電磁比例弁26に出力される。すると、電磁比例弁26が閉位置26cから開位置26a,26bの何れかに切り換えられる。そして、ティルト用ソレノイド電流指令値に応じたティルト必要モータ回転数がモータ指令回転数(破線C0参照)として求められ、そのモータ指令回転数が電動モータ18に出力される。
このとき、電動モータ18の力行トルク制限はOFFであるため、モータ実回転数がモータ指令回転数に追従するようになる。なお、積荷荷重によっては荷役回生を行うことが可能である。
ここで、時刻t4以前ではモータ実回転数がモータ指令回転数に到達していないため、モータ実回転数が上昇する(実線C参照)。このため、油圧ポンプモータ17に供給される作動油の流量Q2が増加する。すると、増加した流量Q2分だけタンク19に戻る作動油のバイパス流量Q3を減少させるように、流量制御弁50の開度が小さくなるため、リフトシリンダ4からの作動油の流量Q1がほぼ一定になる。これにより、リフト下降とティルトとの同時操作を行っても、リフト下降速度を一定に保つことができる。
なお、リフト下降とアタッチメントとの同時操作、リフト下降とパワーステアリングとの同時操作を行う場合の動作については、リフト下降とティルトとの同時操作を行う場合の動作とほぼ同様である。
以上のように本実施形態にあっては、油圧ポンプモータ17とリフトシリンダ4とを油圧配管47により接続し、油圧配管47とタンク19とを油圧配管49により接続し、油圧配管49に流量制御弁50を配設し、油圧配管49における流量制御弁50の上流側にパイロットチェック弁54を配設し、パイロットチェック弁54と油圧配管49における流量制御弁50の下流側とをパイロット流路55により接続し、パイロット流路55上にパイロット用電磁切換弁56を配設した構成となっている。
このような構成により、パイロットチェック弁54を開弁させる差圧(パイロットチェック弁54の開弁差圧)は、流量制御弁50の上流側の圧力と流量制御弁50の下流側の圧力(タンク圧に相当)との差圧によって得られることになる。このため、油圧配管49におけるパイロットチェック弁54の上流側に流量制御弁50を配設する場合に比べて、流量制御弁50による圧力損失が発生しない分だけパイロットチェック弁54の開弁差圧が大きくなる。従って、パイロットチェック弁54の開度が大きくなり、油圧配管49を流れる作動油の圧力損失が低減される。これにより、軽負荷時においてリフト下降動作を行う際に、タンク19に戻る作動油の流量が多くなるため、リフト下降速度を速くすることができる。
また、本実施形態においては、重負荷状態のリフト下降単独動作時には、リフトシリンダ4からの作動油の流量全てが油圧ポンプモータ17に送られるので、荷役回生を高効率に行うことができる。また、軽負荷状態のリフト下降単独動作時には、リフトシリンダ4からの作動油の流量の大部分がタンク19に戻るので、必要最小限の電力で必要なリフト下降速度を確保することができる。
また、リフト下降単独動作時には、リフト下降速度が低速の状態では回生可能な積荷であっても、リフト下降速度が高速になると、作動油の圧力が回生不能な圧まで下がってしまう。しかし、この場合には、リフトシリンダ4からの作動油の流量の大部分がタンク19に戻るので、電動モータ18を力行させることが無く、消費電力を低減することができる。
さらに、リフト下降動作中に、ティルト及びアタッチメントといった他の荷役動作またはステアリング動作が行われた場合でも、リフトシリンダ4からの作動油の流量の一部がタンク19に戻るので、リフト下降速度の変動を抑えることができる。また、積荷荷重及び操作レバーの操作量によっては積荷の回生エネルギーを最大限利用して、他の荷役動作またはステアリング動作を行うことができるので、消費電力を低減することができる。
また、リフト下降動作と他の荷役動作またはステアリング動作とを同時に行う場合には、リフト必要モータ回転数がティルト必要モータ回転数、アタッチメント必要モータ回転数及びパワーステアリング必要モータ回転数よりも高くても、リフト必要モータ回転数以外の必要モータ回転数がモータ指令回転数として設定される。このため、ティルトシリンダ9、アタッチメントシリンダ15及びPSシリンダ14に必要以上の作動油が供給されることが防止されるため、損失の増大を防ぐことができる。
また、油圧配管47における電磁比例弁48の上流側の圧力と油圧配管49における流量制御弁50の上流側の圧力との圧力差が変動しても速度変化を小さくする圧力補償機能付きの流量制御弁50を使用するので、積荷荷重の変動によるリフト下降速度の変動を抑えることができる。
さらに、パイロット用電磁切換弁56のON/OFFの判断は、モータ指令回転数とモータ実回転数との差が一定値N以上であるか否かによって行うので、圧力センサ及びストロークセンサ等を必要としなくて済む。また、油圧ポンプモータ17及び電動モータ18も複数設けなくて済む。また、流量制御弁50として、安価なパイロット式流量制御弁を使用している。従って、油圧駆動装置16を安価に構成することができる。
図13は、本発明に係る油圧駆動装置の第2実施形態の制御系を示す構成図である。同図において、本実施形態の油圧駆動装置16は、図4に示す構成に加え、ディレクションセンサ75を更に有している。
ディレクションセンサ75は、ディレクションスイッチ(前述)により選択操作されたフォークリフト1の走行方向(前進/後進/ニュートラル)を検知するセンサである。ディレクションスイッチが前進または後進に切り換えられたときは、ディレクションセンサ75がONとなり、ディレクションスイッチがニュートラルに切り換えられたときは、ディレクションセンサ75がOFFとなる。
コントローラ60は、操作レバー操作量センサ61〜63、ステアリング操作速度センサ64及び回転数センサ65の検出値とディレクションセンサ75の検知信号とを入力し、所定の処理を行い、電動モータ18、電磁比例弁23,26,31,36,48及びパイロット用電磁切換弁56を制御する。コントローラ60は、図5に示した手順S101〜S109に従って、リフト下降を含む動作の制御処理を実行する。手順S101〜S104の処理については、上記第1実施形態と同様である。
手順S105において設定されるモータ指令回転数(モータ回転数指令値)は、図14に示す通りである。具体的には、ディレクションセンサ75がOFFであるときは、全てのリフト下降モードについて、モータ指令回転数は上記の実施形態と同様である。ディレクションセンサ75がONであるときに、リフト下降単独操作の場合は、モータ指令回転数をリフト必要モータ回転数N_liftとPS用のアイドル回転数N_psiとの最大値とする。なお、PS用のアイドル回転数N_psiは、実験等により予め求められている。ディレクションセンサ75がONであるときに、他のリフト下降モードの場合は、モータ指令回転数は上記第1実施形態と同様である。
続いて、手順S106において設定される電動モータ18の力行トルク制限値は、図14に示すように、2値制御により設定される。電動モータ18の力行トルク制限値の設定処理手順の詳細を図15に示す。
図15において、まずリフト下降モードがリフト下降単独操作であるかどうかを判断する(手順S121)。リフト下降モードがリフト下降単独操作であると判断されたときは、ディレクションセンサ75がONであるかどうかを判断する(手順S122)。ディレクションセンサ75がONであると判断されたときは、回転数センサ65により検出されたモータ実回転数を取得する(手順S123)。
続いて、モータ実回転数がアイドル回転数以上であるかどうかを判断する(手順S124)。モータ実回転数がアイドル回転数以上であると判断されたときは、電動モータ18の力行トルク制限値を最小設定値SL(図16参照)に設定する(手順S125)。このとき、最小設定値SL(第1設定値)は、例えば作動油の油温が十分高いときでも、油圧ポンプモータ17の回転数をアイドル回転数に維持するような値(トルク)であり、実験等により求められている。
モータ実回転数がアイドル回転数以上でないと判断されたときは、電動モータ18の力行トルク制限値を最大設定値SU(図16参照)に設定する(手順S126)。このとき、最大設定値SU(第2設定値)は、最小設定値SLよりも大きい値であり、実験等により求められている。最大設定値SUは、例えば作動油の油温が十分低いときでも、油圧ポンプモータ17をアイドル回転数で回転させるのに必要な値(トルク)である。
手順S122でディレクションセンサ75がONでなくOFFであると判断されたときは、上記第1実施形態と同様に力行トルク制限をONにする(手順S127)。手順S121でリフト下降モードがリフト下降単独操作でないと判断されたときは、上記第1実施形態と同様に力行トルク制限をOFFにする(手順S128)。
このように本処理においては、モータ実回転数がアイドル回転数以上であるときは、電動モータ18の力行トルク制限値を最小設定値SLに設定することで、電動モータ18が許容する力行トルクを小さくし、モータ実回転数がアイドル回転数以上でないときは、電動モータ18の力行トルク制限値を最大設定値SUに設定することで、電動モータ18が許容する力行トルクを大きくする。これにより、図16に示すように、積荷荷重が軽い軽負荷時のようにモータ実回転数Pがモータ指令回転数Qに追従することができない状態では、モータ実回転数Pがアイドル回転数に近づくようになる。
なお、その後の手順S107〜S109の処理については、上記第1実施形態と同様である。
以上において、図15に示す手順S127は、走行方向検知手段75により荷役車両1の走行方向がニュートラルであると検知された状態で、判定手段により昇降操作手段の下降操作が単独で行われたと判定された場合に、電動機18の力行トルク制限値を予め決められた値に設定する第1力行トルク制限値設定手段として機能する。同手順S123〜S126は、走行方向検知手段75により荷役車両1の走行方向が前進または後進であると検知された状態で、判定手段により昇降操作手段の下降操作が単独で行われたと判定された場合に、回転数検出手段65により検出された実回転数と油圧ポンプ17のアイドル回転数または当該アイドル回転数よりも高い回転数に相当する目標回転数とに基づいて電動機18の力行トルク制限値を設定する第2力行トルク制限値設定手段として機能する。
ところで、ディレクションスイッチ(前述)が前進または後進の状態にあるときは、ステアリング13の操作(操舵)に備えて、油圧ポンプモータ17をアイドル回転数以上の回転数で回転させる必要がある。他方で、作動油の油温が低くなるに従って、作動油の粘度が高くなり、圧力損失が増大するため、油圧ポンプモータ17をアイドル回転数以上の回転数で回転させるのに必要な力行トルクが大きくなる。従って、作動油の油温が低いときに油圧ポンプモータ17の回転数をアイドル回転数以上に確保可能となるように、力行トルク制限値を設定する必要がある。しかし、この場合には、作動油の油温が常温のときでも、油圧ポンプモータ17は大きな力行トルクを許容することになるため、油圧ポンプモータ17の回転数が必要以上に上昇し、結果的に消費電力が増大してしまう。
これに対し本実施形態では、ディレクションスイッチが前進または後進の状態にあって、リフト下降単独動作を行うときには、モータ実回転数をアイドル回転数と比較し、その比較結果に応じて電動モータ18の力行トルク制限値を最小設定値SLまたは最大設定値SUに設定するので、作動油の油温に関係無く、油圧ポンプモータ17の回転数をアイドル回転数に近づけることができる。これにより、リフト下降単独動作中に滑らかな操舵を行うことができる。
また、積荷荷重が軽い状態では、油圧ポンプモータ17はほぼアイドル回転数という必要最小限の回転数で回転するため、消費電力の増大を抑制することができる。一方、積荷荷重が十分に重い状態では、油圧ポンプモータ17はアイドル回転数よりも高いモータ指令回転数で回転するため、荷役回生を高効率に行うことができる。
図17は、図15に示した力行トルク制限値設定処理手順の変形例を示すフローチャートである。本フローチャートは、手順S124の処理のみが図15に示すフローチャートと異なっている。
手順S124では、モータ実回転数が(アイドル回転数+α)以上であるかどうかを判断する。αは、予め決められた一定の回転数である。モータ実回転数が(アイドル回転数+α)以上であると判断されたときは、電動モータ18の力行トルク制限値を最小設定値SL(図18参照)に設定し(手順S125)、モータ実回転数が(アイドル回転数+α)以上でないと判断されたときは、電動モータ18の力行トルク制限値を最大設定値SU(図18参照)に設定する(手順S126)。
本変形例では、力行トルク制限値を切り換える閾値をアイドル回転数+αとしたので、図18に示すように、モータ実回転数Pがモータ指令回転数Qに追従することができない状態では、モータ実回転数Pが目標回転数である(アイドル回転数+α)に近づくようになる。これにより、モータ実回転数Pがアイドル回転数付近で多少脈動しても、油圧ポンプモータ17の回転数を確実にアイドル回転数以上に確保することができる。
図19は、本発明に係る油圧駆動装置の第3実施形態においてコントローラ60の一部の構成を示すブロック図である。本実施形態は、図5に示すフローチャートにおける手順S106の処理のみが上記第2実施形態と異なっている。手順S106の処理は、コントローラ60に含まれるトルク制限値設定部80により実行される。なお、図19は、ディレクションセンサ75がONであると共に、リフト下降モードがリフト下降単独操作であるときの処理のみを示しており、他の処理については上記第2実施形態と同様である(図20参照)。
トルク制限値設定部80は、比較部81と、PID演算部82とを有している。比較部81は、上記のアイドル回転数と回転数センサ65により検出されたモータ実回転数との回転数偏差を算出する。PID演算部82は、アイドル回転数とモータ実回転数との回転数偏差のPID演算を行い、当該回転数偏差がゼロになるような電動モータ18の力行トルク制限値を求める。その力行トルク制限値は、図5に示す手順S109を実行するモータトルク出力部66の出力トルク決定部69に送られる。
ここで、トルク制限値設定部80は、走行方向検知手段75により荷役車両1の走行方向が前進または後進であると検知された状態で、判定手段により昇降操作手段の下降操作が単独で行われたと判定された場合に、回転数検出手段65により検出された実回転数と油圧ポンプ17のアイドル回転数または当該アイドル回転数よりも高い回転数に相当する目標回転数とに基づいて電動機18の力行トルク制限値を設定する第2力行トルク制限値設定手段を構成する。
このように本実施形態では、ディレクションスイッチが前進または後進の状態にあって、リフト下降単独動作を行うときには、電動モータ18の力行トルク制限値をPID制御により設定するので、図21に示すように、モータ実回転数Pがモータ指令回転数Qに追従することができない状態では、モータ実回転数Pがアイドル回転数付近で殆ど脈動すること無く、モータ実回転数Pがアイドル回転数に滑らかに安定して追従するようになる。従って、作動油の油温に関係無く、油圧ポンプモータ17の回転数をアイドル回転数に確保することができる。これにより、リフト下降単独動作中に滑らかな操舵を行うことができる。また、積荷荷重が軽い状態では、油圧ポンプモータ17はアイドル回転数という必要最小限の回転数で回転するため、消費電力の増大を抑制することができる。
なお、本実施形態では、電動モータ18の力行トルク制限値をPID制御するようにしたが、特にPID制御には限られず、アイドル回転数とモータ実回転数との回転数偏差がゼロになるように、PI制御等のフィードバック制御を行えば良い。
図22は、本発明に係る油圧駆動装置の第4実施形態を示す油圧回路図である。同図において、本実施形態の油圧駆動装置16は、第1実施形態における流量制御弁50に代えて、リフトシリンダ4からタンク19に戻る作動油の流量を制御する電磁比例弁90を備えている。電磁比例弁90は、制御信号に応じた開度で開く電磁比例式流量制御弁である。
電磁比例弁90は、リフトシリンダ4からタンク19への作動油の流通を許容する開位置90aと、リフトシリンダ4からタンク19への作動油の流通を遮断する閉位置90bとの間で切り換えられる。電磁比例弁90は、通常は閉位置90b(図示)にあり、ソレノイド操作部90cに操作信号(制御信号)が入力されると、開位置90aに切り換わる。なお、電磁比例弁90は、開位置90aにあるときは、操作信号に応じた開度で開く。パイロットチェック弁54は、油圧配管49における電磁比例弁90の上流側に配設されている。パイロット流路55は、パイロットチェック弁54と油圧配管49における電磁比例弁90の下流側とを接続している。パイロット流路55上には、パイロット用電磁切換弁56が配設されている。
また、油圧駆動装置16は、リフトシリンダ4のボトム室4bの圧力を検出する圧力センサ91と、この圧力センサ91と接続されたコントローラ92とを更に備えている。コントローラ92は、圧力センサ91の検出値に基づいて電磁比例弁90を制御する。コントローラ92による電磁比例弁90の制御処理手順の詳細を図23に示す。
図23において、まず圧力センサ91の検出値を入力する(手順S131)。続いて、圧力センサ91の検出値とリフトシリンダ4の径寸法とに基づいて、フォーク6の積荷荷重(負荷)を求める(手順S132)。続いて、フォーク6の積荷荷重に応じた操作信号を電磁比例弁90のソレノイド操作部90cに出力する(手順S133)。このとき、コントローラ92は、フォーク6の積荷荷重が小さくなる(負荷が軽くなる)に従って電磁比例弁90の開度が大きくなるような操作信号を設定する。
このように本実施形態においては、パイロットチェック弁54の開弁差圧は、電磁比例弁90の上流側の圧力と電磁比例弁90の下流側の圧力(タンク圧に相当)との差圧によって得られることになる。従って、第1実施形態と同様に、パイロットチェック弁54の開度が大きくなり、油圧配管49を流れる作動油の圧力損失が低減される。これにより、軽負荷時においてリフト下降動作を行う際に、タンク19に戻る作動油の流量が多くなるため、リフト下降速度を速くすることができる。また、流量制御弁として電磁比例弁90を使用することにより、リフト下降速度を滑らかに制御することができる。
なお、本実施形態では、上記のコントローラ60とは異なるコントローラ92を用いたが、コントローラ60により電磁比例弁90を制御するようにしても勿論構わない。また、本実施形態では、電磁比例弁90を用いたが、流量制御弁としては、電磁比例弁90の代わりに、開度を機械的に変えることが可能な機械式比例弁を用いてもよい。
以上、本発明の実施形態について幾つか説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、アタッチメント及びパワーステアリングが搭載されているが、本発明の油圧駆動装置は、アタッチメント及びパワーステアリングが搭載されていないフォークリフトにも適用可能である。また、本発明の油圧駆動装置は、フォークリフト以外のバッテリ式の荷役車両であれば適用可能である。