JP2015535690A - ミトコンドリア毒性試験 - Google Patents
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Abstract
Description
本願発明はミトコンドリアを含むヒト血液構成要素を伴う方法に関する。該開発された方法の利点は、薬物の毒性(又は有益な効果)の活性ヒトミトコンドリアを用いたex vivoでの測定であるが、可能な限りin vivoの状況に近い測定である。ミトコンドリアを含むヒト血液の構成要素(白血球及び/又は血小板)を血漿中で調べる。ここではin vivoとの密接な関係が提供される。そのため、すべての緩衝容量、血清アルブミン、電解質、加水分解酵素などは測定中存在する。
1.健常者からの血液由来の細胞における、又はいわゆるバフィーコート、つまり血小板及び白血球細胞が濃縮された液体において、初期、又は後期段階の薬物候補のスクリーニング、及び選択すること。
2.既知のミトコンドリア毒性物質に対する患者の感受性を試験すること。
3.臨床試験においてミトコンドリア毒性を分析すること。
4.ミトコンドリア機能を改善することを意図する薬物の有益な効果を分析すること。
i)ヒト血液サンプルより単離された活性ミトコンドリアを含む細胞サンプルを高解像度の呼吸計測にかけること、
ii)該細胞サンプルをミトコンドリア内膜のプロトン透過性を増加させる物質と接触させること、
iii)ビヒクル中に試験物質を含む試験サンプルを加えること、
iv)該試験サンプルを加える前と後の酸素消費量の比較、及び該試験サンプルの酸素消費量とビヒクル中の対照サンプルの酸素消費量との比較を行うこと;ここで酸素消費量の減少はミトコンドリアに対する負の効果を示す、
v) iii)で得られたサンプルをロテノンのようなミトコンドリア複合体Iの機能阻害剤と接触させ、複合体II−基質の酸化に依存する細胞呼吸を明らかにすること、及び
vi) v)で得られたサンプルをアンチマイシン-Aのようなミトコンドリア複合体IIIの機能阻害剤と接触させ、該サンプルの自動酸化のようなミトコンドリア非依存的な酸素消費活性を決定すること、を含む。
i)ヒト血液サンプルから単離された活性ミトコンドリアを含む細胞サンプルを高解像度の呼吸計測にかけること、
ii)該細胞サンプルを複合体I呼吸を阻害する物質と接触させること、
iii)ビヒクル中に試験物質を含む試験サンプルを加えること、
iv)細胞膜を透過する物質を加えること、
v) 参照物質をiv)で得られたサンプルに加えること、及び
v)複合体III呼吸を阻害する物質を加えること、を含む。
i)ヒト血液サンプルから単離した活性ミトコンドリアを含む細胞サンプルを、高解像度の呼吸計測にかけること、ここで、該細胞サンプルは臨床研究又は治療投薬下にあるヒトから採取したものであり、かつここで、臨床研究又は治療投薬の期間中、試験物質を該被験者に投与した;
ii)ミトコンドリア内膜のプロトン透過性を増加させる物質と、該細胞サンプルを接触させること、
iii)臨床研究下又は治療投薬下にあるヒトから採取したサンプルの酸素消費量と、対照群から採取した対照サンプルの酸素消費量とを比較すること、ここで、酸素消費量の減少はミトコンドリアへの負の効果を示す;
iv) iii)で得られる該サンプルを、ロテノンのようなミトコンドリア複合体Iの機能阻害剤と接触させることで、複合体II−基質の酸化に依存する細胞呼吸を明らかにすること、及び
v) iv)で得られる前記サンプルをアンチマイシン-Aのようなミトコンドリア複合体IIIの機能阻害剤と接触させることで、該サンプルの自動酸化のようなミトコンドリア非依存的な酸素消費活性を決定すること。
(1.健常者から採取した血液、又はいわゆるバフィーコートと呼ばれる血小板と白血球の濃縮された溶液由来の細胞における、初期又は後期の段階にある薬物候補のスクリーニング及び選択)
そのような方法は、下記を含む方法である:
i)ヒト静脈血サンプルから単離した活性ミトコンドリアを含む細胞サンプルを、37℃の恒温下400-25 μM O2の範囲の酸素濃度で高解像度呼吸計測にかけること、
ii) 該細胞サンプルをカルボニルシアニドp-(トリフルオロメトキシ)フェニルヒドラゾン(FCCP)、カルボニルシアニドm-クロロフェニルヒドラゾン(CCCP)、2,4-ジニトロフェノール(DNP)、又はその他のプロトンチャネル開口剤のような、ミトコンドリア内膜のプロトン透過性を増加させる物質と接触させることで、血小板中に存在するミトコンドリアの電子伝達系の最大容量を得ること、
iii)ビヒクル中に試験物質を含む試験サンプルを加えること、ここで、ビヒクルの追加と比較して、追加は標準的には段階的に投与量を上げながら加える;
iv)試験サンプルを加える前と後の酸素消費量を比較し、試験及びビヒクルの間の酸素消費量を比較すること、ここで、酸素消費量の減少がミトコンドリアに対する負の効果を示す;
v) 複合体II基質の酸化に依存的な細胞呼吸を明らかにするために、iii)で得られた前記サンプルをロテノンのようなミトコンドリア複合体Iの機能阻害剤と接触させること、
及び、
vi) v)で得られる該サンプルをアンチマイシン-Aのようなミトコンドリア複合体IIIの機能阻害剤と接触させ、該サンプルの自動酸化のようなミトコンドリア非依存的な酸素消費活性を決定すること。
今日、多くのミトコンドリア毒性を示す公知物質が登録され、かつ使用されている。しかしながら、医師が知りたいのは、薬物治療を開始する前に、患者がそれらの薬物に感受性があるかどうかである。一つの例は広く使用される抗てんかん薬、バルプロ酸であり、適当でない患者に投与すると重篤な脳又は肝臓の障害を引き起こす。
i)ヒト静脈血サンプルから単離された、活性ミトコンドリアを含む細胞を、37℃の恒温下400-25 μM O2の範囲の酸素濃度で、高解像度の呼吸計測にかけること、
ii)該細胞サンプルを、カルボニルシアニドp−(トリフルオロメトキシ)フェニルヒドラゾン(FCCP)、又はその他のミトコンドリア内膜のプロトン透過性を増加させる物質と接触させ、血小板中に存在するミトコンドリアの電子伝達系の最大容量を得ること、
iii) ビヒクルの追加と比較して、該物質を含む試験サンプルを段階的に投与量を上げて加えること、
iv)試験サンプルを加える前と後の酸素消費量を比較すること、ここで、酸素消費量の減少はミトコンドリアに対する負の効果を示す;
v) iv)で得られたサンプルを、ロテノンのような複合体Iの機能阻害剤と接触させ、複合体II-基質の酸化に依存的な細胞呼吸を明らかにすること、
及び
vi) v)で得られたサンプルを、アンチマイシン-Aのようなミトコンドリア複合体IIIの機能阻害剤と接触させ、該サンプルの自動酸化のような、ミトコンドリア非依存的な酸素消費活性を決定すること。
臨床試験はどのような試験でもよく、例えば、投与量を決定する試験、ヒトを用いた安全性試験等があり、該方法は単純な血液サンプルに基づいている。短期、急性、長期、そして慢性のいずれの効果も評価できる。特徴的な例はHIVの治療薬であり、これは長期の使用後に、ミトコンドリアの異常を示す症状を与え得る(ミトコンドリアDNAの喪失に起因する)。この目的で、薬物物質の複合的な毒性並びに対象の血漿中の循環代謝物を決定することを可能とする、本願方法は大きな利点がある。
i) 37℃の恒温下、400-25 μM O2の範囲の酸素濃度において、ヒト静脈血液サンプルから単離した活性ミトコンドリアを含む細胞を、高解像度の呼吸計測にかけること、ここで、臨床研究あるいは治療投薬を受けるヒトから、ヒト血液サンプルを得て、かつここで、臨床研究又は治療投薬の期間中、該ヒトに試験物質が投与される;
ii)細胞サンプルを、カルボニルシアニドp-(トリフルオロメトキシ)フェニルヒドラゾン(FCCP)、またはミトコンドリア内膜のプロトン透過性を増加させる別の物質と接触させ、血小板中に存在するミトコンドリアの電子伝達系の最大容量を取得すること、
iii)該臨床研究又は治療投薬を受けている被験者から採取したヒト血液サンプルの酸素消費量と、対照群の被験者から採取した血液サンプルの酸素消費量とを比較すること、ここで、対照と比較して酸素消費量が減少することは、ミトコンドリアに対する負の効果を示す;
iv) 複合体II-基質の酸化に依存的な、細胞呼吸を明らかにするために、ii)で得られたサンプルを、ロテノンのようなミトコンドリア複合体Iの機能阻害剤と接触させること、
及び
v) iv)で得られたサンプルを、アンチマイシン-Aのようなミトコンドリア複合体IIIの機能阻害剤と接触させ、該サンプルの自動酸化のような、ミトコンドリア非依存的な酸素消費活性を決定すること。
臨床試験に先立つ大規模なスクリーニングプログラムを、健常者より採取した血液又はバフィーコートに由来する細胞を用いて遂行することができる。また、治療前、治療中、及び薬物投与量を変えた後に、患者(しばしば子供)の該血液を用いても分析を遂行することが出来る。
i) 37℃の恒温下、400−25 μM O2の範囲の酸素濃度で、ヒト静脈血サンプルから単離された活性ミトコンドリアを含む細胞を、高解像度の呼吸計測にかけること、ここで、血液サンプルを採取する前に該ヒトに試験物質が投与される;
ii)該細胞サンプルを、カルボニルシアニドp-(トリフルオロメトキシ)フェニルヒドラゾン(FCCP)、又はミトコンドリア内膜のプロトン透過性を増加させる他の物質と接触させ、血小板中に存在する該ミトコンドリアの、該電子伝達系の最大容量を取得すること、及び、
iii)第一のヒト血液サンプルの酸素消費量を、第二の血液サンプルの酸素消費量と比較すること、ここで、酸素消費量の減少は、ミトコンドリアに対する負の効果を示し、かつ酸素消費量の上昇は、ミトコンドリアへの正の効果を示す;
iv)複合体II-基質の酸化に依存的な、細胞呼吸を明らかにするために、ii)で得られたサンプルを、ロテノンのような、ミトコンドリア複合体Iの機能阻害剤と接触させること、
及び、
v) iv)で得たサンプルを、アンチマイシン-Aのような複合体IIIの機能阻害剤と接触させ、該サンプルの自動酸化のような、ミトコンドリア非依存的な酸素消費活性を決定すること。
ミトコンドリアの機能不全は、核DNA又はミトコンドリアDNAの変異による第一の呼吸鎖の疾患であると認識されており、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病のような疾患、並びに敗血症のような、過度の炎症の結果に関与する(Brealeyらの文献、2002、 Ferreiraらの文献、2010、Konesの文献、2010、Rosenstockらの文献、2010)。
実施例で報告する研究の目的は、方法論を確立すること、及び未処置の生細胞におけるex vivoでの正常な血小板の呼吸機能、及び透過処理した細胞における、個別の複合体の機能を、高解像度の呼吸計測を用いて詳細に評価することであった。第二に、低温環境と室温での保存の影響、及び性別や年齢の影響を調べ、第三に、異なる参照集団に該方法を適用した時の一貫性を調べた。
血小板の呼吸測定は、ヒトミトコンドリアをex vivoの生理条件で調べるのに適している。微量のサンプルで24時間までの保存の後、高解像度呼吸計測を用いて信頼性の高い結果を得られることが示されている。異なるSUITプロトコルを適用することで、細胞の呼吸容量の詳細な情報が得られ、異なる集団間の相違も得ることができる。我々はこれらの結果を評価する方法を記載する。このアプローチは外因的に引き起こされた、並びに内因的なミトコンドリアの疾患を評価するのに適している。我々は現在、これらの目的で該方法を評価している。
(材料と方法)
(1.1 ヒトサンプルの取得)
本研究はLund、Swedenの地域倫理審査委員会(成人:113/2008、644/2009、子供:59/2009)および東京医科大学(日本)の倫理委員会(許可番号1514)に認可されている。スウェーデンの成人については、Skane University Hospital、Lundの血液ドナーセンターの健康な血液ドナー、および膝の負傷後のリハビリテーションを受けている健康な成人より血液サンプルを集めた。日本の集団は健康な成人ボランティアからなるものであった。サンプルは、明文のインフォームド・コンセントを得てから採取した。実験は、同じ手順及び同じプロトコルに従って、両方の調査地において同じ研究者たちにより行われた。小児の対照サンプルは、軽度の選択性手術を受けている患者から採取した。明文のインフォームド・コンセントを親、又は保護者から得て、血液は麻酔誘導前に採取した。臍帯血は、正常妊娠をしている健康な個人から出産後、採取した。サンプルは明文のインフォームド・コンセントを得た後に採取した。
血液ドナーについては、予定血液提供と同時に収集チューブにサンプルを採取した。ほかの成人集団と子供については、静脈穿刺を介してサンプルを採取した。臍帯血は、子供を経膣的に、又は帝王切開により出産した直後に採取した。成人からは21 ml、子供からは
6-12 ml、臍帯血からは3-6 mlの容量をK2EDTAチューブ(Vacuette(登録商標)、Greiner Bio-One GmbH、Kremmunster、Austria)に採取した。予備実験では、K2EDTAが最もよい収量につながり、抗凝固剤として用いるヘパリン、クエン酸及びクエン酸デキストロース(ACD)と比較して血小板の活性化を阻止した(データは示さない)。血液サンプルは採取してすぐに調製し、3-5時間以内に分析した。チューブを300×g、室温で15分遠心し、血小板に富む血漿(PRP)を得た。このPRPをピペットで取り、4600×g、室温で5分遠心し、細胞を含まない血漿に近いものと血小板のペレットを生じた。ペレットを1-3 mlの対照被験者自身の血漿に静かにピペッティングすることで溶解し、平均最終濃度1864×106/ml(941-2498の範囲にわたった)の非常に濃いPRPを得た。
高解像度オキシグラフ(Oxygraph-2k Oroboros Instruments、Innsbruck、Austria(Gnaigerらの文献、2000))を用い、撹拌子速度750 rpmで、2 mlのガラスチャンバー中で37℃の恒温下、呼吸を測定した。データをDatLab software 4.3. (Oroboros Instruments、Innsbruck、Austria)を用いて記録した。サンプリング速度は2秒に設定した。すべての実験は210-50 μM O2の酸素濃度で行った。必要に応じ、一時的な空気の平衡化のために、チャンバーのストッパーを部分的に上げることで再酸素化を行った。装置のバックグラウンドの酸素の流れはメーカーの指示書に従って、別セットの実験で測定し、続く実験のために自動で補正を行った。透過処理した細胞の呼吸測定については、血小板を110 mM スクロース、HEPES 20 mM、タウリン 20 mM、K-ラクトビオン酸 60 mM、MgCl2 3 mM、KH2PO4 10 mM、EGTA 0.5 mM、BSA 1 g/l、pH 7.1を含むミトコンドリア呼吸培地(MiR05)(Gnaigerらの文献、2000)に懸濁した。未処置の細胞を用いた実験については、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に5 mM グルコースを添加したもの、あるいは対照被験者自身の血漿に、血小板を懸濁した。空気飽和における校正は、各実験日ごとに、実験を始める前にミリポア水又は呼吸培地をオキシグラフチャンバーの空気中で撹拌し、平衡に達して安定信号が得られるまで続けることで行った。酸素濃度は気圧計の圧力と、可溶性係数から自動で計算した。可溶性係数は、水については1.0、MIR05とPBSグルコースについては0.92、血漿については0.89と設定した(Baumgartl及びLubbersの文献、1983)。
未処置の細胞の、内在のミトコンドリア基質を用いた統合された呼吸は、2つの異なる滴定プロトコルで評価した。血小板は、PBS-グルコース又は対照被験者自身の血漿に懸濁した。最初に、サンプルを常態呼吸状態に安定化した。これにより、休止期の細胞の酸化的リン酸化(OXPHOS)に対するエネルギー要求を明らかにした。ADPのリン酸化に依存しない呼吸の寄与を評価するため、オリゴマイシン(1μg/ml、ATPシンターゼ阻害剤)を続けて加え、LEAK呼吸状態(オリゴマイシン誘導性状態4呼吸としても知られる)を誘導した。ETSの最大容量を、プロトンチャネル開口剤であるカルボニルシアニドp-(トリフルオロメトキシ)フェニルヒドラゾン(FCCP)を、それ以上添加しても呼吸の増加が検出されなくなるまで(PBS中では平均濃度6 μM、血漿中では平均濃度100 μM)、注意深く滴定した後に測定した。ロテノン(2 μM、複合体I[CI]阻害剤)及びアンチマイシン-A(1 μg/ml、複合体III[CIII]阻害剤)を続けて加え、ETSを阻害して、後の分析で異なる呼吸パラメーターから差し引く分の、残存酸素消費量を与えた。
飽和した外因の基質と阻害剤をETSへと到達させるため、細胞膜を界面活性剤であるジギトニンで透過処理した。ミトコンドリア外膜又は内膜には影響を与えずに細胞膜の透過性を最大にする、至適ジギトニン濃度を確立するため、一連の実験を行った。血小板(200×106/ml)をMIR05に懸濁し、ADP 1 mM、コハク酸 5 mM、及びロテノン1 μMにプレインキュベートした。10 μg/μlのジギトニンを呼吸の最大応答が得られるまで滴定した(Gnaigerらの文献、1998)。図1に、滴定実験の代表的なグラフを示す。至適用量は1 μg/1×106血小板であった。外因のシトクロムcは呼吸に有意な効果を誘導せず、ミトコンドリア外膜は影響を受けていなかったことが示唆された(データは示さない)。
統計評価は、Graph Pad PRISM (GraphPad Software version 5.01、La Jolla、CA、USA)を用いて行った。値は平均±SEM、あるいは個別の値として提示した。異なる集団からの全ての値は、臍帯血と未処理の細胞に対する対照比(ETS/LEAK、ETS/常態)を除いて、ディアゴスティーノとピアソンの包括正規性検定において、正規分布を示した。多群比較は、パラメトリックなデータには、一元配置ANOVAを行い、群間の事後検定には、Tukeyの多重比較検定を用いた。ノンパラメトリックなデータには、Kruskal-Wallis検定と、Dunnの多重比較検定を用いた。年齢との相関については、線形回帰を用いた。p-値 < 0.05を統計学的に有意とみなした。
血液サンプルは46人の健康な成人ボランティア、25人の子供、および22検体の臍帯から血液を採取した。成人46人のうち、24人はスウェーデンで採取し、22人は日本で採取した。その28人が男性であり、18人が女性であった。その年齢は19から65歳におよび、メディアンは37歳であった。子供25人のうち、18人は男性で、7人が女性であった。その年齢は1か月から12歳におよび、メディアンは4歳であった。22検体の臍帯のうち、13検体が帝王切開で生まれたもので、9検体が膣を経て生まれたものであった。
血小板濃度を全血液より測定し、非常に血小板に富む血漿の調製の後算出された収率は、平均92%(± 8%、n = 16)であった。調製プロトコル後の血小板の生存性を評価するため、一段階の遠心操作を受けた、すなわち300×gで15分の遠心操作を受けた血小板を用いて呼吸計測を行い、ペレットにした後の呼吸と比較した。有意な差は見られず、単離のプロセスを通じて、血小板の安定性及び生存性は良いと結論付けられた(N = 16、データは示さない)。
未処置の細胞を用いた実験の、代表的なグラフを図2に示し、呼吸パラメーターの値を、表1に示す。未処置の細胞では、呼吸は内在基質によってのみ駆動される。常態呼吸はPBS-グルコースにインキュベートした細胞も、血漿にインキュベートした細胞も、同様であった。LEAK呼吸は非常に低く、1 pmol O2/s/108血小板であった。結果的に対照比ETS/LEAKが高くなることから、非常に強く共役した呼吸をしていることを示唆している。FCCPによるETSの最大刺激は、オリゴマイシンを用いない実験で有意に高く、対照比ETS/常態により示される余剰の呼吸容量は、血漿に懸濁した、オリゴマイシン処理をしていない血小板の方が、PBSグルコースに懸濁したものより、有意に高かった。ロテノンによる複合体Iの阻害は、〜99%の呼吸を抑制し、アンチマイシン-Aを加えた後には、さらなる阻害は見られなかった(表1)。異なる集団間では、日本人の対照群と対する臍帯血のFCCP刺激後の最大呼吸(ETS)の間で有意差があった(15 ± 1.3 vs 23 ±2.3 pmol O2/s/1×106血小板)。その他では差は見られなかった。
SUITプロトコルを開発し、1回の実験で、異なる呼吸複合体の容量について、可能な限り多くの情報を得た。基質と阻害剤を加えたときの、代表的な軌跡と異なる状態の定義を、図3に描いた。MiR05中の細胞の常態呼吸は、PBS-グルコース又は血漿中にインキュベートした未処置の血小板と、同じ範囲であった。ジギトニンを加えた後は、細胞質中の基質とアデニンヌクレオチドが周囲の培地へと拡散したため、安定した呼吸の減少がみられた。複合体Iの基質としてのリンゴ酸とピルビン酸の存在下、ADP刺激を行うと、常態呼吸と比較して、〜80%呼吸が増加した。さらに、NADHを生成させ、複合体Iの電子入力を行うために、グルタミン酸を加えると、呼吸はさらに〜10%増加した(表2)。コハク酸を加えた後、複合体Iと複合体IIの両方からETSへの入力を受け合流した電子の流れが得られ、常態呼吸の3倍の呼吸速度と、複合体Iの基質のみ受けたときの呼吸より〜50%増加した呼吸が引き起こされた。LEAK呼吸は、最大共役呼吸OXPHOSCI+IIの〜15%であった。〜7.0のOXPHOSCI+II/LEAK比は、効率よいATP合成と電子伝達との共役を示しており、ほかの組織と同程度である(Kuznetsovらの文献、2002)(表2)。最大呼吸容量ETSCI+IIは、プロトンチャネル開口剤FCCPに誘導され、OXPHOSCI+IIと比較して〜5%高かった。OXPHOS/ETS比は1に近く、外因基質が飽和している状態では、リン酸化システムによる流れの制限がほとんどないことが示唆している。ロテノンによる複合体Iの阻害の後、測定したETSCII活性は、複合体Iと複合体IIの活性が組み合わされたETSCI+IIの、〜35%であった。日本の参照材料では、統合された入力同様に、複合体Iの基質の最大呼吸は、スウェーデンの参照材料を用いたときと、同程度であった。しかしながら、LEAK呼吸と複合体IIに刺激された呼吸は、ともにETSCI+II/LEAK比が低下したスウェーデン及び小児集団からの値と比較して、〜25%高かった(表2)。臍帯血の値は、OXPHOSとETSの両方で、最大呼吸が高い値を示す点で、相違した。結果として得た比が低かったことから、LEAK呼吸は絶対値並びに比の双方において、有意に高かった(表2)。
2つの呼吸状態が、年齢との有意な相関を示した。図4A、Bに示すように常態呼吸は加齢に伴い上昇し(r2 = 0.15, p < 0.05)、ETSCIIは加齢とともにわずかに減少する(r2 = 0.14, p < 0.05)(臍帯血のデータは含まない)。ほかの全ての呼吸パラメーターの間では、図4CのOXPHOSCI+IIに例示されるように、有意な変化はなかった。未処置、透過処理した血小板のいずれにおいても、呼吸パラメーターと性別の間に相関はなかった(図4D)。
異なる血小板濃度における呼吸を評価した。100-400×106 plt/mlの範囲において呼吸は、全ての状態で線形性を残した。50×106 plt/mlの濃度では、最大のFCCP刺激は20-25%減少した(図5)。その後の実験の多くは、血小板濃度200×106/mlで行った。該方法は同じ個人に対し異なる日に行う実験によって評価すると、よい再現性を示した。異なる呼吸パラメーターにおいて、その分散係数は6-13%であった(表3)。
全血液保存の、ミトコンドリア呼吸への効果を評価した。採血したばかりの血液を、EDTAバイアルに取り、室温又は4℃で、傾斜台にのせ最長72時間保存した。24時間経過後、呼吸は安定したままであった。48時間経過後、基質で刺激した呼吸状態の呼吸容量、すなわちOXPHOSCI、OXPHOSCI+II及びETSCI+IIは明らかに減少する傾向を示した。72時間経過後、LEAK呼吸を除くすべてのパラメーターが有意に低下した(図6)。
(3.1サンプル調製)
患者においては、最大40 mlの血液を存在する動脈経路から、K2EDTAチューブ(Vacuette(登録商標)、 Greiner Bio-One GmbH、Kremmunster、Austria)へと採血した。対照群においては、静脈穿刺により、K2EDTAチューブへと血液サンプルを採取した。白血球は、フィコール勾配(Boyum REF)遠心により、全血液から単離した。標準生理食塩水で洗った後、細胞を200-400 μlの生理食塩水に再懸濁した。収量により、50-100 μlの被験者自身の血漿を混ぜた。呼吸計測は、サンプリングより5時間以内に行った。分析の済んだ呼吸計測チャンバーの内容物は、さらに使用まで凍結保存した。
白血球を、最終濃度2.5-5×106 cells/mlで2 mlのオキシグラフチャンバーに設置した。未処置細胞にあっては、呼吸培地は被験者自身の血漿からなり、透過処理した細胞にあっては、呼吸培地はスクロース 110 mM、HEPES 20 mM、タウリン 20 mM、K-ラクトビオン酸 60 mM、MgCl2 3 mM、KH2PO4 10 mM、EGTA 0.5 mM、BSA 1 g/l、pH 7.1を含む(MiR05)(Gnaigerらの文献、2000)。測定は37℃の恒温下で、高解像度オキシグラフ(Oxygraph-2k Oroboros Instruments、Innsbruck、Austria)を用いて行った。酸素濃度(μM)及び酸素の流れ(酸素濃度の負の時間の導関数;pmol O2×s-1×10-6cells)はDatLab software 4.3(Oroboros Instruments、Innsbruck、Austria)によって記録した。全ての実験は、210-50 μM O2の範囲の酸素濃度で行った。空気飽和時の校正は、各日ごとに行った。装置のバックグラウンドの酸素の流れは、メーカーの指示書に従って別セットの実験において測定し、次の実験のために自動で補正した。
(1)複合体II効果について、110 mM スクロース、HEPES 20 mM、タウリン 20 mM、K-ラクトビオン酸 60 mM、MgCl2 3 mM、KH2PO4 10 mM、EGTA 0.5 mM、BSA 1 g/l、pH 7.1を含む緩衝液中の単離した血小板又は白血球細胞を用いて、第一のスクリーニングを行った。内在の基質による、ベースライン呼吸を確立した後、複合体Iをロテノン2 mMで阻害した。DMSOに溶解した薬物候補を、最終濃度100 μM、500 μM、及び5 mMとなるように段階的に滴定した。
続いて、ジギトニン(1 mg/1×106 plt)により、細胞膜透過処理を行った。呼吸が安定した後、コハク酸10 mMを加え、呼吸が安定した後、アンチマイシン-Aを最終濃度1 μg/mlで加えることにより実験を終了し、残存呼吸を測定した。図11は、新規細胞透過性ミトコンドリア基質を評価するプロトコルを示す。該アッセイにおいて、未処置の細胞におけるミトコンドリア機能は、呼吸複合体Iの阻害剤であるロテノンにより抑制される。細胞膜透過処理の前と後に薬物候補を内在の基質と比較し、生物エネルギーの促進又は阻害を評価する。図11は、ミトコンドリア複合体IIスクリーニングアッセイの概略図である。この図は、新規細胞透過性ミトコンドリア基質を評価するプロトコルを示す。該アッセイにおいては、未処置細胞におけるミトコンドリアの機能を、複合体Iの阻害剤であるロテノンにより抑制する。薬物候補は、細胞膜の透過処理の前と後で内在基質と比較し、生物エネルギーの促進又は阻害を評価する。
(1)理想の化合物は、CIIスクリーニングプロトコルにおいて、未処置の状態で低濃度でロテノンにより阻害された呼吸を刺激し、透過処理後にコハク酸刺激された呼吸に対する阻害効果を示さないものである。ミトコンドリア毒性物による呼吸の阻害の後、呼吸は休止する。図1と、以下に示すものを参照されたい。
a >> bは、aがbよりずっと大きいことを意味する。
a → b、はaの値がbに近似することを意味する。
・薬物濃度が低濃度でaの値が最大に達し、
・a >> a'
・a → b'
・c → c'
・d → d'
細胞膜を透過しない化合物は、前記アッセイにおいて以下のように同定される。
・a → a'
薬物候補により誘導されるミトコンドリア非依存的な酸素消費は、以下の時に同定される。
・d > d'
Claims (32)
- i)ヒト血液サンプルから単離された活性ミトコンドリアを含む細胞のサンプルを、高解像度呼吸計測にかけること、
ii)ミトコンドリア内膜のプロトン透過性を増加させる物質に該細胞サンプルを接触させること、
iii)ビヒクル中に試験物質を含む試験サンプルを加えること、
iv)該試験サンプルを加える前と後の酸素消費量の比較、及び該ビヒクル中の対照サンプルの酸素消費量と該試験サンプルの酸素消費量の比較を行うこと、ここで酸素消費量の減少はミトコンドリアに対する負の効果を示す;
v)iii)から得られたサンプルをミトコンドリア複合体Iの機能阻害剤と接触させること、及び
vi)v)から得られたサンプルをミトコンドリア複合体IIIの機能阻害剤と接触させること、
を含む、方法。 - i)ヒト血液サンプルから単離した活性ミトコンドリアを含む細胞サンプルを、高解像度呼吸計測にかけること、ここで、該細胞のサンプルは臨床研究下または治療投薬下にあるヒトから採取したものである;
ii)ミトコンドリア内膜のプロトン透過性を増加させる物質に該細胞サンプルを接触させること
iii)臨床研究下、又は治療投薬下にあるヒトから採取した該サンプルの酸素消費量を対照サンプルの酸素消費量と比較すること、ここで酸素消費量の減少はミトコンドリアに対する負の効果を示す;
iv)iii)で得られたサンプルをミトコンドリア複合体Iの機能阻害剤に接触させること、及び
v)iv)で得られたサンプルをミトコンドリア複合体IIIの機能阻害剤に接触させること、
を含む、方法。 - 前記高解像度呼吸計測を37℃の恒温下、400−25 μM O2の範囲の酸素濃度において行う、請求項1、又は2記載の方法。
- ミトコンドリア内膜のプロトン透過性を増加させる物質を加え、前記サンプル中のミトコンドリア電子伝達系の最大容量を得る、請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
- 前記ミトコンドリア内膜のプロトン透過性を増加させる物質が、カルボニルシアニドp−(トリフルオロメトキシ)フェニルヒドラゾン(FCCP)、カルボニルシアニドm-クロロフェニルヒドラゾン(CCCP)、2,4-ジニトロフェノール(DNP)、及びその他のプロトンチャネル開口剤並びにそれらの混合物から選択される、請求項1から4のいずれか一項記載の方法。
- 前記ミトコンドリア内膜のプロトン透過性を増加させる物質が、その濃度を、0.1から10 μM、例えば0.5 μMから5 μM、1 μMから3 μM、約2 μMの範囲で加えられる、請求項1から5のいずれか一項記載の方法。
- 前記ミトコンドリア内膜のプロトン透過性を増加させる物質がFCCPである、請求項1から6のいずれか一項記載の方法。
- 前記ビヒクルが、有機溶媒、例えば、エタノール、イソプロノール、メタノール、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(ジメチルホルムアミド)、又はDMA(ジメチルアセトアミド)である、請求項1、及び3から6のいずれか一項記載の方法。
- 前記試験サンプルが液体状であり、かつ濃度既知の前記試験物質を含む、請求項1、及び3から8のいずれか一項記載の方法。
- 前記試験サンプルを段階的に濃度を上げて加える、請求項9記載の方法。
- 前記試験サンプルを段階的に加えることにより、該試験サンプルの最終濃度を1 μMから10 mMとする、請求項10記載の方法。
- iii)の対照サンプルが、前記試験サンプルと同一であるが試験物質を含まないものである、請求項1、及び3から11のいずれか一項記載の方法。
- 前記ミトコンドリア複合体Iの機能阻害剤を加えて、複合体II-基質の酸化に依存的な細胞呼吸を明らかにする、請求項1から12のいずれか一項記載の方法。
- 前記ミトコンドリア複合体Iの機能阻害剤が、その濃度を0.1から10 μM、例えば0.5から5 μM、1から3 μM、又は約2 μMの範囲で加えられる、請求項1から13のいずれか一項記載の方法。
- 前記ミトコンドリア複合体Iの機能阻害剤がロテノンである、請求項1から14のいずれか一項記載の方法。
- 前記ミトコンドリア複合体IIIの機能阻害剤を加えて、ミトコンドリア非依存的な酸素消費活性、例えば前記サンプルの自動酸化を決定する、請求項1から15のいずれか一項記載の方法。
- 前記ミトコンドリア複合体IIIの機能阻害剤を加えて、その最終濃度を、約0.1から10 μg/ml、例えば約0.5から5 μg/ml、約0.75から2 μg/ml、又は1 μg/mlの範囲とする、請求項1から16のいずれか一項記載の方法。
- 前記ミトコンドリア複合体IIIの機能阻害剤がアンチマイシン-Aである、請求項1から17のいずれか一項記載の方法。
- 前記対照サンプルが対照群から採取されたものである、請求項2から18のいずれか一項記載の方法。
- 前記対照サンプルが任意の治療開始前に採取されたものである、請求項2から19のいずれか一項記載の方法。
- 薬物候補物質のスクリーニングのための、請求項1、及び3から18のいずれか一項記載の方法。
- 薬物物質、又は薬物候補に対する被験者の感受性を検査するための、請求項1から20のいずれか一項記載の方法。
- 臨床試験における試験物質のミトコンドリア毒性を評価するための、請求項2から20のいずれか一項記載の方法。
- ミトコンドリア機能に対する物質の効果を分析するための、請求項1から20のいずれか一項記載の方法。
- 前記細胞サンプルが前記被験者から単離したものである、請求項22記載の方法。
- ミトコンドリア呼吸とATP産生を刺激できる化合物を評価するための、請求項1から20のいずれか一項記載の方法。
- i)ヒト血液サンプルから単離した活性ミトコンドリアを含む細胞サンプルを高解像度呼吸計測すること、
ii)該細胞サンプルを複合体I呼吸を阻害する物質に接触させること、
iii)ビヒクル中に試験物質を含む試験サンプルを加えること、
iv)細胞膜を透過する物質を加えること、
v)iv)で得たサンプルに参照物質を加えること、及び
vI 複合体III呼吸を阻害する物質を加え、かつ得られた酸素消費量を、工程iii)において参照物質を用いて試験サンプルを加えることを省いて該方法を実施した場合に得られる酸素消費量と比較すること
を含む、方法。 - 前記細胞膜を透過する物質が、ジギトニンである、請求項27記載の方法。
- ジギトニンを5 μg/mlから約250 μg/mlの濃度で加える、請求項28記載の方法。
- 前記参照物質がコハク酸のような複合体II結合基質である、請求項27から29のいずれか一項記載の方法。
- 前記参照物質の最終濃度が約0.1から約20 mMである、請求項30記載の方法。
- i)からvi)の各工程の詳細が請求項3、8、9、10、11、13、14、15、16、17、18、21、24、及び/又は26のいずれか一項に定義されたものである、請求項27から31のいずれか一項記載の方法。
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