JP2015522258A - 子癇前症及び/またはhellp症候群の予測または早期検出のバイオマーカー検査 - Google Patents
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Abstract
Description
本実施例に記載する研究は、ハンガリーのHealth Science Board及びWayne State UniversityのHuman Investigation Committeeにより承認された。インフォームドコンセントを得たのち、Semmelweis Universityの第一産婦人科でコーカサス人女性から胎盤組織試料を採取した。検体及びデータは匿名で保管した。妊娠期間は、超音波スキャンに基づいて妊娠8〜12週と定めた。多胎妊娠(双子、三つ子など)患者、及び胎児が先天性異常または染色体異常を有する患者は除外した。女性を以下の同種群に組み入れた:(1)HELLP症候群のある/ない早産の重度子癇前症(n=12)、(2)早産対照(n=5)(表1)。子癇前症は、米国産婦人科学会(ACOG)が定める基準に従って定義した(血圧:以前は血圧値が正常であり、妊娠20週以降に収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上;タンパク尿:24時間尿採取でタンパク質が0.3g以上(通常、尿試験紙で1+以上のタンパク質に相当))。重度子癇前症は、Sibai et al.に従って定義した[非特許文献9]。早産対照は、内科的合併症、絨毛羊膜炎の臨床徴候または組織学的所見が認められず、満期出産胎児齢相当(AGA)児を分娩した。全子癇前症例で症状が重かったため、また、全対照で帝王切開歴または妊娠37週以前の胎位異常が原因で帝王切開を実施した。
胎盤(n=17)は分娩直後に採取した。組織検体は、遺伝子発現の局所差に起因するバイアスの可能性を減らすため、臍帯に近い中央の胎盤葉から切除し、ドライアイス上で絨毛脱落膜から切り分け、−80℃で保管した。組織は、Thermo Savant FastPrep FP120ホモジナイザー(Thermo Scientific,Wilmington、米国デラウェア州)とLysing MatrixD(MP Biomedicals、フランス、イルキルシュ)を用いてホモジナイズした。全RNAを、RNeasy Fibrous Tissue Mini Kit(Qiagen GmbH、ドイツ、ヒルデン)を用いて単離し、NanoDrop1000(Thermo Scientific)で定量化し、Agilent 2100 Bioanalyzer(Matriks AS、ノルウェー、オスロ)で評価した。全RNA(対照:n=5、子癇前症:n=12)を標識してから、Cy3−RNAを分解し、Whole Human Genome Oligo Microarray G4112Aでハイブリダイゼーションを行い、Agilentスキャナー(Agilent Technologies、米国カリフォルニア州サンタクララ)を用いた後、Agilent Feature Extractionソフトウェアv9.5を使い、製造者の使用説明書に従って処理した。
人口統計データは、SPSSバージョン12.0(SPSS Inc.、米国イリノイ州シカゴ)を用いて、フィッシャーの正確確率検定とマンホイットニー検定で比較した。マイクロアレイデータ解析は、統計処理言語・環境Rを用いて実施した(ウェブサイト:r−project.org)。マイクロアレイ発現強度は、「limma」パッケージの「backgroundCorrect」機能で「minimum」法を用いてバックグラウンド補正を行った。log2変換した後、データを変位値により正規化した。アレイ上の41,093個のプローブセットのうち93個は、アレイ定義ファイル(Agilent Technologies)にアノテーションがなかったため、差次的発現解析の前に取り除いた。次いで、発現フィルターを用いて、少なくとも2つの試料においてプローブセットをlog2より高い強度に保ち、30,027個のプローブセット(15,939種類の遺伝子)の最終マトリックスを作成した。差次的遺伝子発現は調整t検定を用いて評価した。p値は偽発見率(FDR)法を用いて調整した。プローブセットについて対象遺伝子のEntrez IDを、Rパッケージ「hgu4112a.db」を用いて確認した。パッケージにアノテーションがないプローブセットについては、アレイ定義ファイル(Agilent Technologies)からEntrez IDを取得した。アノテートされていない(Entrez ID及び/または遺伝子記号がない)プローブセットは、その後の解析から除外した。本実施例では、プローブセットのFDRが≦0.2、かつ倍率変化(FC)が≧1.5であれば、発現変動と定義した(n=1409)。本明細書で使用する「差次的発現」、「有意な発現変動」及びこれに似た文言は、一般に、統計的検出力分析に基づいて遺伝子の発現に有意差があることを意味し、その結果は95%信頼区間でqPCRにより検証できる。
試験群、臨床的定義、試料採取
本実施例に記載する研究は、Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development(NICHD)のInstitutional Review Boards、National Institutes of Health(NIH)、Department of Health and Human Services(DHHS)及びWayne State Universityにより承認された。インフォームドコンセントを得たのち、周産期医学研究部門(NICHD、NIH、DHHS)の生物試料バンクから胎盤(n=100)を取得した。妊娠期間は、超音波スキャンに基づいて妊娠8〜12週と定めた。多胎妊娠(双子、三つ子など)患者、及び胎児が先天性異常または染色体異常を有する患者は除外した。検体及びデータは匿名で保管した。
全RNAを、急速凍結した胎盤絨毛組織(n=100)からTRIzol試薬(Invitrogen、米国カリフォルニア州カールスバッド)とQiagen RNeasyキット(Qiagen、米国カリフォルニア州バレンシア)とを用いて、製造者の推奨に従って単離した。28S/18S比及びRNA完全数をAgilent Bioanalyzer 2100(Agilent Technologies)を用いて評価し、RNA濃度をNanoDrop1000(Thermo Scientific)で測定した。全RNAの500ngを、ランダムヘキサマー(Applied Biosystems)を使用してHigh Capacity cDNA Reverse Transcription Kitで逆転写した。TaqMan Assays(Applied Biosystems)を、製造者の使用説明書に従って、Biomark(登録商標)qRT−PCRシステム(Fluidigm、米国カリフォルニア州サンフランシスコ)でのハイスループット遺伝子発現プロファイリングに使用した。
FFPE絨毛組織ブロックからTMAを作製した(n=100)。簡潔に説明すると、20×35mmのレシピエントブロック3つを、Paraplast X−Tra組織包理剤(Fisher Scientific、米国ペンシルベニア州ピッツバーグ)で作製した。組織ブロックから直径1mmコアを、自動組織アレイヤー(Beecher Instruments,Inc.、米国メリーランド州シルバースプリング)を用いて、レシピエントパラフィンブロックに3連で移した。TMAの5μm切片を、シラン処理したスライドに載せ、抗体と試薬とを用いて手動で、またはVentana Discovery自動染色装置(Ventana Medical Systems,Inc、米国アリゾナ州ツーソン)もしくはLeica BOND−MAX(登録商標)自動染色装置(Leica Microsystems、ドイツ、ヴェッツラー)のいずれかで染色した。画像はOlympus BX41顕微鏡(Olympus America Inc.、米国ペンシルベニア州センター・バレー)で取り込んだ。免疫染色は、2人の試験者が臨床情報を見ずに修正免疫反応性スコアを用いて半定量的に評価した。免疫染色強度は、以下のように等級分けした:0=陰性、1=弱染色、2=中染色、3=強染色。3つのコアそれぞれの任意領域の絨毛すべてを2人の試験者が評価し、各コア内のスコアの平均値を求め、当該コアの対象タンパク質を示した。したがって、各胎盤につき、試験した3つのコアに対応する3つのスコアがあり、これらのスコアを用いた群間比較をqRT−PCRデータと同じ方法で実施した。
胎盤組織試料(n=100)を、系統的無作為標本抽出法により採取し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィンに埋め込んだ。5μm片を絨毛組織ブロックから切除し、ヘマトキシリンとエオシンで染色し、2人の解剖病理学者が臨床情報を見ずに明視野光学顕微鏡を用いて調べた。病理組織学的変化は、公表されている基準に従って定義した。「母体の低灌流」と「胎児の血管内血栓閉塞性疾患」のスコアは、所定の胎盤に存在するこれらの病変の種類と一致するさまざまな病理学的病変の数を合計して算出した。
人口統計データは、SPSSバージョン12.0(SPSS)を用いて、フィッシャーの正確確率検定とマンホイットニー検定で比較した。qPCRデータは、統計解析環境RでΔΔCt法を用いて解析した(ウェブサイト:r−project.org)。データは最初に参照遺伝子(RPLPO)に対して正規化し、バッチ効果を標準試料で調整した。各試料について、−ΔCt(遺伝子)=Ct(RPLPO)−Ct(遺伝子)としてlog2mRNA相対濃度を得た。代理遺伝子発現値(−ΔCt遺伝子)を使い、1−ピアソン相関距離と平均連結法とを用いて階層的クラスタリングを実施した。群間比較(群は患者の臨床所見に基づいて事前に定めた)は、共変量として群変数指標を用いると同時に、群変数と胎児の発育状態(満期産と早産)との相互作用を考慮し、線形モデルを−Ct値に当てはめて実施した。
試験群、臨床的定義、試料採取
全被験者が、Maccabi Healthcare Services(イスラエル)の妊婦地域診療所における、2002年8月〜2003年3月の長期前向き多施設試験に組み入れられた。妊娠期間は、最終月経期に基づいて計算し、妊娠第一期の超音波検査で確認した。多胎妊娠(双子、三つ子など)患者、及び胎児が先天性異常または染色体異常を有する患者は除外した。ヒトの臨床試料の採取及び調査についてはMaccabi施設内審査委員会により、試験手順及びデータ解析については、ハンガリーのHealth Science Board及びWayne State UniversityのHuman Investigation Committeeにより承認された。被験者からは試料採取前にインフォームドコンセントを得た。検体及びデータは匿名で保管した。
試料調製、多量の血清タンパク質の免疫除去
血清は、Biosystems International Ltd.(ハンガリー、デブレツェン)にて、Multiple Affinity Removal LC Column−Human 14(Agilent Technologies、米国カリフォルニア州サンタクララ)を用いて、Agilent 1100 HPLCシステムで14の多量の血清タンパク質について製造者の手順書に従って免疫除去した。2Dゲルの分解能を改善するために、Proteome Services,Ltd.(ハンガリー、ブダペスト)にて、免疫除去した血清試料を凍結乾燥させたのち、脱脂、脱塩した。簡潔に説明すると、全試料の1容量にメタノール4容量を混合し、十分にボルテックスした。次いで、これらの混合物にクロロホルム1容量を加え、再度ボルテックスしてから、水(HPLCグレード)3容量を混合する。遠心分離(14,000rpm、5分間、4℃)後、上の層を捨てた。次いで、メタノール3容量を加え、得られた混合物をボルテックスし、再度遠心分離を行った。上清を捨て、沈殿した血漿タンパク質を含むペレットを10分間風乾した。脱脂及び脱塩した血漿タンパク質試料を溶解緩衝液(7M尿素;2Mチオ尿素;20mMトリス;5mM酢酸マグネシウム、4%CHAPS)に溶解し、pHを8.0に調整した。
免疫除去、脱塩、脱脂した血清試料のタンパク質濃度は、PlusOne Quant Kit(GE Healthcare、米国ペンシルベニア州ピッツバーグ)を用いた測定で、2〜4μg/μLであった。試料はタンパク質含有量を均一にし、次いで、各タンパク質試料の5μgをCyDye DIGE Fluor Labeling kit for Scarce Samples(飽和色素)(GE Healthcare)を用いて4nmol/5μgタンパク質の濃度で、製造者の使用説明書に従って標識した。症例(n=10)及び対照(n=10)の個々の試料をCy5で標識した。内部標準試料は、この試験セットにおけるすべての試料について等量(2.5μg)をプールし、Cy3で標識した。次いで、各Cy5標識試料5μgをCy3標識標準試料5μgと混合し、これら20の混合物を2×10ゲルで同時に処理した。簡潔に説明すると、標識タンパク質を、0.5%両性電解質、0.5%DTT、8M尿素、30%グリセリン、2%CHAPSを含有するIEF緩衝液に溶解し、20枚の24cm IPGストリップ(pH3〜10、GE Healthcare)で、少なくとも14時間、室温で受動的に再水和した。再水和後、IPGストリップは一次元目IEFを24時間行った(合計80kVh)。集まったタンパク質は、1%メルカプトエタノールを含有する緩衝液で20分間平衡化して還元した。還元後、IPGストリップを、10%ポリアクリルアミドゲル(24×20cm)に載せ、二次元目で10W/ゲルでSDS−PAGEを実施した。次いで、ゲルをTyphoon TRIO+スキャナー(GE Healthcare)で、適切なレーザーとフィルターを用い、PMTのバイアスを600Vとしてスキャンした。異なるチャンネルの画像は、選択した色を使ってオーバーレイし、差分をImage Quantソフトウェア(GE Healthcare)を用いて可視化した。DeCyder 6.0ソフトウェアパッケージ(GE Healthcare)のDifferential In−gel Analysis(DIA)とBiological Variance(BVA)モジュールとを用いて、差分タンパク質解析を実施した。
全試験で存在したすべてのタンパク質の内部標準試料の代表をすべてのゲルに均等に載せ、個々の試料を正規化するための平均画像を得た。全ゲルにおける内部標準間の蛍光シグナルの相対存在量の測定は、試験変動を排除し、ゲル間変動を低減して、ゲル間で標準化した。標準プロテオミクスプロトコルに従って、差次的発現の閾値を、最小倍率変化1.05倍に設定した。各タンパク質スポットについて、スチューデントのt検定を用いて、DeCyderソフトウェア(GE Healthcare)のBVA モジュールによってp値を求めた。p値が<0.05であれば、統計的に有意と判断した。
試料調製、蛍光標識、2D−DIGE
Colloidal Coomassie Blueで標識した場合、スポットの濃度は試料中のタンパク質の濃度のみに依存するが、飽和色素で標識した場合、スポットの濃度は標識タンパク質のシステインの数にも依存する。その理由は、飽和色素標識法では各タンパク質で利用可能なシステインすべてが標識されるからである。このため、分析ゲル及び調製ゲルの試料において、異なる密度で同じパターンとなり、同定がより困難となる。この問題を排除し、関心スポットにおけるタンパク質を正確に同定できるようにするため、同じゲルでCyDye飽和蛍光標識とColloidal Coomassie Blue標識とを用いて調製二次元電気泳動を行った。2つのゲルのそれぞれにつき合計800μgのタンパク質を処理した。簡潔に説明すると、「早産」と「満期産」比較で、免疫除去した血清試料10−10をともにプールし、脱塩ステップを3回くり返した。プールしたこれら2つの試料のタンパク質5μgをCy3で標識し、同じ試料の未標識タンパク質800μgと混合したのち、ドライストリップに分割した。一次元目の分離後、集まったタンパク質をまず1%メルカプトエタノールを含有する緩衝液で20分間平衡化して還元し、次いで、2.5%ヨードアセトアミドを含有する緩衝液で20分間アルキル化した。電気泳動の後、ゲルを上述のようにTyphoon TRIO+スキャナーでスキャンし、発現変動スポットを、「マスター」分析ゲル及び蛍光調製ゲル画像間で、DeCyder 6.0ソフトウェアパッケージ(GE Healthcare)のBiological Variance(BVA)モジュールを用いてマッチングした。解像したタンパク質スポットを、Colloidal Coomassie Blue G−250染色プロトコルにより可視化した。発現変動の個々のスポットをゲルから切り出し、画像を比較した。
ゲル内消化
切り出したタンパク質スポットは、Biological Research Center of the Hungarian Academy of Sciences(ハンガリー、セゲド)のProteomics Research Groupで分析した。詳細な手順は「In−Gel Digest Procedure」という表題でウェブサイト(msfacility.ucsf.edu/ingel.html)に掲載されており、以下のように再現した。簡潔に説明すると、塩、SDS、クマシーブリリアントブルーを洗い落とし、ジスルフィド架橋をジチオスレイトールで還元し、次いで、遊離スルフヒドリルをヨードアセトアミドでアルキル化した。側鎖保護ブタトリプシン(Promega)で、37℃で4時間消化し、得られたペプチドを抽出した。
1.手袋と袖カバーを装着し、メタノールまたは水で濡らした糸くずの出ない布で、使用する全試験管の外側(標示を拭き取らないように気を付ける)、Speed Vacと遠心分離機の内側と外側、試験管立て、ボトルなど、フード内の表面すべてをきれいに拭く。メタノールに浸した糸くずの出ない布で、かみそりの刃を拭く。
2.以下の溶液を調製する。
25mM NH4HCO3(100mg/50mL)
25mM NH4HCO3と50%ACNとの混合溶液
50%ACN/5%ギ酸(TFAまたは酢酸で代用してもよい)
12.5ng/μLトリプシンと25mM NH4HCO3との混合溶液(新たに希釈)
3.各ゲルスライスを小さなさいの目に切り(1mm2)、0.65mLシリコン処理試験管(PGC Scientific)に入れる。
4.100μLの(または十分に浸る)25mM NH4HCO3/50%ACNを加え、10分間ボルテックスする。
5.ゲルローディングピペットチップを用いて、上清を抽出し、捨てる。
6.手順3及び4を1回または2回くり返す。
7.Speed Vacでゲル片を完全に乾燥させる(約20分)。
低レベルタンパク質(<1pmol)の場合、特に1−D SDS−PAGEで分離した場合は、還元とアルキル化が推奨される。これらの手順は、手順6の後に行う。
a.新しい溶液を調製する。
10mM DTTと25mM NH4HCO3との混合溶液(1.5mg/mL)
55mMヨードアセトアミドと25mM NH4HCO3との混合溶液(10mg/mL)
b.25μLの(または十分に浸る)10mM DTT/25mM NH4HCO3を乾燥したゲルに加える。ボルテックスし、短時間スピンする。56℃で1時間反応させる。
c.上清を除去し、25μLの55 mM ヨードアセトアミドをゲル片に加える。ボルテックスし、短時間スピンする。暗所で45分間、室温で反応させる。
d.上清を除去する(捨てる)。ゲルを約100μLのNH4HCO3で洗い、10分間ボルテックスし、スピンする。
e.上清を除去する(捨てる)。約100μLの(または十分に浸る)25mM NH4HCO3/50%ACNでゲルを脱水し、5分間ボルテックスし、スピンする。この手順を1回くり返す。
f.Speed Vacでゲル片を完全に乾燥させる(約20分)。トリプシン消化を進める。
8.トリプシン溶液を、ゲル片がぎりぎり浸るくらいに加える。ゲルの量を推量し、約3倍量のトリプシン溶液を加える。この容量は試料ごとに異なるが、概して約5〜25μLで十分である。
9.ゲル片を氷上または4℃で10分間再水和したのち、スピンする。必要に応じて25mM NH4HCO3を加え、ゲル片を覆う。
10.短時間スピンし、37℃で4時間から一晩インキュベートする。
ペプチドの抽出
1.消化液(水抽出)を清潔な0.65mLシリコン処理試験管に移す。
2.ゲル片に30μLの(十分に浸る)50%ACN/5%ギ酸を加え、20〜30分間ボルテックスする。スピンし、5分間超音波で分解する。この手順を繰り返す。
3.抽出した消化物をボルテックスし、スピンして、Speed Vacで10μLに濃縮する。
4.C18 ZipTip(Millipore)で精製するか、またはLC−MSで分析する。2〜5μLの5%ギ酸を加える。低レベルのタンパク質を分析するときは、3μLの溶出液を用いてZipTipから溶出してペプチドを濃縮し、清潔な0.65mLシリコン処理試験管に入れる。
5.分離していない消化物1μLを用いてMALDIで分析する。
分離していない消化物のマトリクス:
α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸と50%ACN/1%TFAとの混合溶液(10mg/mL)。
2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)、飽和水溶液。
参考:非特許文献12、13
試料は、イオントラップタンデム質量分析計(LCQ Fleet,ThermoScientific)にオンライン接続されたWaters Acquity nanoUPLCで、IDA(information−dependent acquisition)モードで分析した。MS取得(1秒サーベイスキャン)ののち、コンピューターで選択した多価イオンをCID分析(3秒MS/MSスキャン)した。HPLC条件は、nanoACQUITY UPLC捕集カラム(Symmetry、C18 5μm、180μm×20mm)(3%溶媒Bで15μL/分)でのインライン捕集と、その後の溶媒Bの直線勾配(40分で10〜50%、流量:250nL/分;nanoACQUITY UPLC BEH C18 Column、1.7μm、75μm×200mm)などであった。溶媒A:0.1%ギ酸水溶液、溶媒B:0.1%ギ酸アセトニトリル溶液。LC−MS/MS分析を、「トリプルプレイ」モードで450〜1600m/zの質量範囲で実施した。
生データファイルは、Mascot Distillerソフトウェアv2.1.1.0.(Matrix Science,Inc、英国ロンドン)を用いて検索可能なピークリストのMascotジェネリックファイル形式(*.mgf)に変換した。得られたピークリストは、社内Mascotサーバーv2.2.04のMS/MSイオン検索モードでMascot Daemonソフトウェアv2.2.2(Matrix Science Inc)を用いて、National Center for Biotechnology Information(NCBInr 2008.07.18.、米国メリーランド州ベセスダ;6,833,826配列)の非冗長タンパク質データベースのヒトサブデータベースに対して検索した。ペプチド質量誤差が±50ppmで、フラグメント質量誤差が±0.1Daのモノアイソトピック質量を示した。Cysのカルバミドメチル化を固定修飾として設定し、タンパク質N末端のアセチル化、メチオニン酸化、及びペプチドN末端Gln残基からのピログルタミン酸形成は、可変修飾として認めた。判定基準は、1つのタンパク質に対し少なくとも2つの有意な(ペプチドスコア>40、p<0.05)個別ペプチドに設定した。
I.子癇前症における発現変動遺伝子は、主に胎盤発現遺伝子及び3つの染色体で濃縮されている
子癇前症の病因は胎盤に由来するため、主に胎盤で発現する新しいバイオマーカー候補、及び子癇前症の胎盤病因に関与する遺伝子調節ネットワークを、システム生物学的手法を用いて探索した。マイクロアレイデータセットの解析より、早産対照と比べて、早産の子癇前症で1,409種類の発現変動遺伝子が明らかとなった。これらの発現変動遺伝子から、137個を見つけ、転写調節機能(転写因子、コアクチベーター、またはコリプレッサー)とともにタンパク質をコードした。BioGPSマイクロアレイデータの分析と以前の証拠から、164種類の遺伝子が主に胎盤で発現することが明らかとなり、そのうち157個が我々のマイクロアレイプラットフォームに存在した。
調節不全の胎盤遺伝子発現を促進する可能性のある遺伝子及び転写調節遺伝子の調節モジュールを同定するために、マイクロアレイ上の発現変動遺伝子を用いてWGCNA解析を実施した。1,409個の遺伝子のうち1,403個を、506個、442個、381個及び74個の遺伝子を含む4つのモジュールに割り当てた。関心のある、優勢胎盤発現を有する38個の遺伝子のうち33個が、明るいグレー(n=22)及び濃いグレー(n=11)のモジュールに属していた。明るいグレーのモジュールが下方制御(OR=1.88、p=2.59×10-8)遺伝子で濃縮されているのに対し、濃いグレーのモジュールは上方制御(OR=6.47、p<2.2×10-16)遺伝子で濃縮されており、早産の子癇前症において調節不全の遺伝子ネットワークの存在を示唆している。
説明した結果を、多様な民族的起源及び子癇前症のさまざまなサブタイプ(早産または満期産、SGAの有無)を含む大規模患者集団で検証するために、ハイスループット発現プロファイリング用の47個の遺伝子を選択した。これらの遺伝子は、1)マイクロアレイで発現変動、主に胎盤発現を示し、合胞体栄養膜により特異的で、潜在的に分泌される、2)PPE遺伝子と高い共発現を示す転写調節遺伝子であり、かつ、3)栄養膜分化(例えば、GCM1)、栄養膜特異的遺伝子発現(例えば、TEAD3)、または子癇前症の病因(例えば、ENG、LGALS13)に関連した役割を持つその他の遺伝子であった。
ニューラルネットワークに基づいた解析の結果は、訓練試料のさまざまなサブセットを用いたときの血圧及び出生時体重パーセンタイルの最良の予測因子として保持された回数により評価した、2〜8個の遺伝子の組み合わせのセットとなった(表7)。これらの組み合わせのセットから、6個の遺伝子(FLT1、HSD17B1、LEP、LGALS14、PAPPA2、及びPLAC1)を、上位2個の予測因子及び/または胎盤特異性の高い遺伝子として選択した。
発見段階では、正常な妊娠結果を有する正常な妊婦と、その後に早産の重度子癇前症を発症した妊婦とから採取した試料の比較で、ゲル上で2080〜2460個のタンパク質スポットを同定した。疾患試料5つのうち少なくとも3つで発現変動を示したタンパク質スポットが39個あった(下方制御29個、上方制御10個)。疾患試料における最大差は、3.1倍の上方制御及び3.1倍の下方制御であった。
Claims (17)
- 女性における子癇前症/HELLP症候群の有無またはリスクを評価し、治療計画の必要性を判断する方法であって、
前記女性から採取した生体試料中の補体因子B;ゲルゾリンイソ型A前駆体;ホルネリン、フェチュインB;ヘモペキシン前駆体;アポリポタンパク質H前駆体;fms関連チロシンキナーゼ1;ヒドロキシステロイド(17−β)デヒドロゲナーゼ1;レプチン;可溶性ガラクトシド結合性レクチン14;パッパリシン2または胎盤特異性遺伝子1の1つまたは複数のレベルを測定する手順;
前記測定されたレベルに基づいてデータセットを作成する手順;
前記データセットに基づいて前記女性における子癇前症の有無または発症リスクを評価する手順;
前記子癇前症の有無またはリスクの評価に基づいて治療計画を決定する手順;を有する
ことを特徴とする方法。 - 女性における子癇前症の有無またはリスクを評価し、治療計画の必要性を判断する方法であって、
前記女性から採取した生体試料中の補体因子B、ホルネリン、ヘモペキシン前駆体、ヒドロキシステロイド(17−β)デヒドロゲナーゼ1、可溶性ガラクトシド結合性レクチン14、またはパッパリシン2の1つまたは複数のレベルを測定する手順;
前記測定されたレベルに基づいてデータセットを作成する手順;
前記データセットに基づいて前記女性における子癇前症の有無または発症リスクを評価する手順;
前記子癇前症の有無またはリスクの評価に基づいて治療計画を決定する手順;を有する
ことを特徴とする方法。 - 子癇前症/HELLP症候群に密接に関連した妊娠初期の合併症(女性における着床不全、切迫流産、自然流産に限定されない)のリスクを評価し、治療計画の必要性を判断する方法であって、
前記女性から採取した生体試料中の補体因子B;ゲルゾリンイソ型A前駆体;ホルネリン、フェチュインB;ヘモペキシン前駆体;アポリポタンパク質H前駆体;fms関連チロシンキナーゼ1;ヒドロキシステロイド(17−β)デヒドロゲナーゼ1;レプチン;可溶性ガラクトシド結合性レクチン14;パッパリシン2または胎盤特異性遺伝子1の1つまたは複数のレベルを測定する手順;
前記測定されたレベルに基づいてデータセットを作成する手順;
前記データセットに基づいて前記女性における子癇前症の有無または発症リスクを評価する手順;
前記子癇前症の有無またはリスクの評価に基づいて治療計画を決定する手順;を有する
ことを特徴とする方法。 - 前記分析手順が、少なくとも3つのバイオマーカーのレベルについて実施される
請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。 - 前記試料が血液試料である
請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。 - 前記試料がその他の体液、分泌物または排泄物(子宮頸膣液、唾液、尿に限らない)試料である
請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。 - 前記試料が羊水試料である
請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。 - 前記試料が侵襲的または非侵襲的に採取した胎児細胞である
請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。 - 前記試料が胎盤試料である
請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。 - 前記生体試料が、妊娠20週より前に、妊娠19週より前に、妊娠18週より前に、妊娠17週より前に、妊娠16週より前に、妊娠15週より前に、妊娠14週より前に、妊娠13週より前に、妊娠12週より前に、妊娠11週より前に、妊娠10週より前に、妊娠9週より前に、妊娠8週より前に、妊娠7週より前に、妊娠6週より前に、または分娩後に採取される
請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。 - 前記治療計画が治療介入である
請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。 - 前記治療介入は前記女性及び/または胎児に症状が顕在化する前に、子癇前症の症状を予防または軽減する
請求項11に記載の方法。 - 女性における子癇前症の有無またはリスクを評価し、治療計画の必要性を判断するキットであって、
前記女性から採取した生体試料中の補体因子B;ゲルゾリンイソ型A前駆体;ホルネリン、フェチュインB;ヘモペキシン前駆体;アポリポタンパク質H前駆体;fms関連チロシンキナーゼ1;ヒドロキシステロイド(17−β)デヒドロゲナーゼ1;レプチン;可溶性ガラクトシド結合性レクチン14;パッパリシン2または胎盤特異性遺伝子1の1つまたは複数のレベルを測定する検出機構;(i)前記測定されたレベルに基づいてデータセットを作成する方法;(ii)前記データセットに基づいて前記女性における子癇前症の有無または発症リスクを評価する方法;ならびに(iii)前記子癇前症の有無またはリスクの評価に基づいて治療計画を決定する方法の指示を含む
ことを特徴とするキット。 - 女性における子癇前症の有無またはリスクを評価し、治療計画の必要性を判断するキットであって、
前記女性から採取した生体試料中の補体因子B、ホルネリン、ヘモペキシン前駆体、ヒドロキシステロイド(17−β)デヒドロゲナーゼ1、可溶性ガラクトシド結合性レクチン14、またはパッパリシン2の1つまたは複数のレベルを測定する検出機構;(i)前記測定されたレベルに基づいてデータセットを作成する方法;(ii)前記データセットに基づいて前記女性における子癇前症の有無または発症リスクを評価する方法;ならびに(iii)前記子癇前症の有無またはリスクの評価に基づいて治療計画を決定する方法の指示を含む
ことを特徴とするキット。 - 前記キットが少なくとも3つのバイオマーカーの検出機構を含む
請求項13または14に記載のキット。 - 前記キットが、請求項13または14に記載のすべてのマーカーの検出機構を含む
請求項13または14に記載のキット。 - 前記キットが、請求項13または14に記載の少なくとも1つのマーカーの検出機構を含む
請求項13または14に記載のキット。
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