JP2015522258A - 子癇前症及び/またはhellp症候群の予測または早期検出のバイオマーカー検査 - Google Patents

子癇前症及び/またはhellp症候群の予測または早期検出のバイオマーカー検査 Download PDF

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子癇前症/HELLP症候群の初期試験を可能にする特異的バイオマーカーを開示し、妊婦の子癇前症を予測する方法を提供する。妊婦から採取した試料を特異的バイオマーカーの濃度について分析する手段を含むキットを開示する。【選択図】図2C

Description

本発明は、妊婦の子癇前症ならびに/または溶血、肝酵素の上昇及び血小板減少(HELLP)症候群を予測ならびに/または検出するのに使用できる検査を提供する。より具体的には、本開示は、子癇前症及び/またはHELLP症候群の早期予測及び/または検出に使用でき、かつ、これらに密接に関連した妊娠初期の妊娠合併症(着床不全、切迫流産及び自然流産などを含むがこれらに限定されない)の予測及び検出も可能にするバイオマーカーのパネルを提供する。
子癇前症は、妊娠誘発性の高血圧とタンパク尿とを特徴とする症候群で、子癇(痙攣)ならびに母体及び/または胎児に他の重篤な合併症をもたらす可能性がある。子癇前症は、着床不全及び/または胎盤発育不全によって妊娠初期に生じ、そのため、妊娠初期の妊娠合併症(着床不全、切迫流産及び自然流産などを含むがこれらに限定されない)に密接に関連している。子癇前症は、妊婦の約5〜7%(全世界で年間約837万人の妊婦)が罹患し、母体及び周産期死亡の主な原因となっている。さらに、子癇前症を発症した女性はその後の人生において心血管系死亡のリスクが8倍高く、子癇前症を発症した妊娠で生まれた子孫は、その後の人生において代謝疾患や循環器疾患するリスク及び死亡リスクが高い。
米国のNational High Blood Pressure Education Program Working Group on High Blood Pressure in Pregnancyが定める子癇前症の現在の診断基準には、それまで正常血圧であった女性において妊娠20週以降に発生するタンパク尿を伴う初発高血圧が含まれる。さらにこれらの基準では、子癇前症を、4時間以上かつ1週間以内の2つ以上の異なる時点に測定した収縮期血圧が≧140mmHg及び/または拡張期血圧が≧90mmHgであり、さらに、24時間尿採取で≧300mgのタンパク質、または4時間以上かつ1週間以内に採取された2つの無作為尿検体に尿試験紙で≧1+のタンパク質が含まれることと定義している。
臨床症状の時期に基づいて、子癇前症は歴史的に、「満期産」(≧37週)及び「早産」(<37週)、または代替用語として、「遅発型」及び「早発型」子癇前症などの異なる派生型に分類されている。後者の分類の使用は一様ではないが、さまざまな試験で、子癇前症の早発型と遅発型との区別に、28〜35週のそれぞれ異なる妊娠期間が採用されている。近年、早発型と遅発型の区切りを妊娠34週と定義することが提案されている。子癇前症は分娩中または分娩後に発症する場合もあることに注意する必要がある。したがって、子癇前症の症状の観察や評価は、分娩後も続ける必要がある。
子癇前症が溶血、異常肝機能及び血小板減少と関連している可能性があることは、1954年に初めて報告された。当初は子癇前症の重症型と解されたこの症状群は、のちに溶血、肝酵素の上昇及び血小板減少(HELLP)症候群と呼ばれる個別の臨床単位を構成するよう提案された。HELLP症候群は異なる疾患であるという考えの裏付けとして、HELLP症候群の患者の20%までが高血圧症を発症せず、5〜15%が最小限しか、またはまったくタンパク尿を伴わず、かつ、15%が高血圧もタンパク尿も発症しない。さらに、HELLP症候群の検査所見が高血圧またはタンパク尿の重症度と相関することはめったにない。
母親が患う内科的合併症や子孫へのリスクに加え、子癇前症及びHELLP症候群には、米国で年間約70億ドルの医療費が費やされている。そのため、子癇前症/HELLP症候群の信頼できる予測検査を提供する多くの試みがなされてきた。以前の試みには、母体血中を循環する生化学マーカーの濃度の測定などがあるが、これまで、こうした手法に関する科学文献は相反しており、結論が出ていない。当技術分野においては、これらの疾患を予測及び診断する改良された新規の方法が必要である。
米国特許第5,143,854号 米国特許第6,087,112号 米国特許第5,215,882号 米国特許第5,707,807号 米国特許第5,807,522号 米国特許第5,958,342号 米国特許第5,994,076号 米国特許第6,004,755号 米国特許第6,048,695号 米国特許第6,060,240号 米国特許第6,090,556号 米国特許第6,040,138号
Janssen,B.G.et al.,Particle and Fibre Toxicology,10:22(2013) Tabish,A.M.et al.,PLoS ONE 2012,7:e34674 Godderis,L.et al.,Epigenomics 4:269−277(2012) Proctor,M.et al.,Clin.Chem.52:1276−1283(2006) Shen,L.et al.,Curr.Opin.Clin.Nutr.Metab.Care.10:576−81(2007) Gu H et al.,Nature Methods 7:133−138(2010) Bock C et al.,Nature Biotech.28:1106−1114(2010) Harris RA et al.,Nature Biotech.28:1097−1105(2010) Sibai,B et al.Pre−eclampsia.Lancet 2005;365:785−99 Su,AI et al.,A gene atlas of the mouse and human protein−encoding transcriptomes.PNAS 2004;101:6062−67 Tarca,A.L.,Than,N.G.,&Romero,R.Methodological Approach from the Best Overall Team in the IMPROVER Diagnostic Signature Challenge.Systems Biomedicine提出済(2013) Rosenfeld,et al.,Anal.Biochem.(1992)203(1),173−179. Hellman,et al.,Anal.Biochem.(1995)224(1),451−455.
子癇前症及び/またはHELLP症候群の予測及び/または早期検出を可能にし、かつ、これらに密接に関連した妊娠初期の妊娠合併症(着床不全、切迫流産及び自然流産などを含むがこれらに限定されない)の予測及び検出も可能にする改良された新規の方法が必要とされている。
本発明は、子癇前症及び/またはHELLP症候群の予測及び/または早期検出を可能にし、かつ、これらに密接に関連した妊娠初期の妊娠合併症(着床不全、切迫流産及び自然流産などを含むがこれらに限定されない)の予測及び検出も可能にするバイオマーカーの組み合わせを提供する。
1つの実施形態は、女性における子癇前症の有無またはリスクを評価し、治療計画の必要性を判断する方法を含み、これには以下を含む:女性から採取した生体試料中の補体因子B;ゲルゾリンイソ型A前駆体;ホルネリン、フェチュインB;ヘモペキシン前駆体;アポリポタンパク質H前駆体;fms関連チロシンキナーゼ1;ヒドロキシステロイド(17−β)デヒドロゲナーゼ1;レプチン;可溶性ガラクトシド結合性レクチン14;パッパリシン2または胎盤特異性遺伝子1の1つまたは複数のレベルを測定する手順;測定されたレベルに基づいてデータセットを作成する手順;データセットに基づいて女性における子癇前症の有無または発症リスクを評価する手順;ならびに子癇前症の有無またはリスクの評価に基づいて治療計画を決定する手順。
別の実施形態は、女性における子癇前症の有無またはリスクを評価し、治療計画の必要性を判断する方法を含み、これには以下を含む:女性から採取した生体試料中の補体因子B、ホルネリン、ヘモペキシン前駆体、ヒドロキシステロイド(17−β)デヒドロゲナーゼ1、可溶性ガラクトシド結合性レクチン14、またはパッパリシン2の1つまたは複数のレベルを測定する手順;測定されたレベルに基づいてデータセットを作成する手順;データセットに基づいて女性における子癇前症の有無または発症リスクを評価する手順;ならびに子癇前症の有無またはリスクの評価に基づいて治療計画を決定する手順。
別の実施形態では、分析手順は少なくとも3つのバイオマーカーのレベルについて実施する。
別の実施形態では、試料は血液試料である。
別の実施形態では、試料はその他の体液、分泌物または排泄物(子宮頸膣液、唾液もしくは尿などを含むがこれらに限らない)試料である。
別の実施形態では、試料は羊水試料である。
別の実施形態では、試料は侵襲的または非侵襲的に採取した胎児細胞である。
別の実施形態では、試料は胎盤試料である。
別の実施形態では、生体試料は妊娠20週より前に、妊娠19週より前に、妊娠18週より前に、妊娠17週より前に、妊娠16週より前に、妊娠15週より前に、妊娠14週より前に、妊娠13週より前に、妊娠12週より前に、妊娠11週より前に、妊娠10週より前に、妊娠9週より前に、妊娠8週より前に、妊娠7週より前に、妊娠6週より前に、または分娩後に採取する。
別の実施形態では、治療計画は治療介入である。
別の実施形態では、治療介入は女性及び/または胎児に症状が顕在化する前に、子癇前症の症状を予防または軽減する。
別の実施形態は、女性における子癇前症の有無またはリスクを評価し、治療計画の必要性を判断するキットを含み、これには以下を含む:女性から採取した生体試料中の補体因子B;ゲルゾリンイソ型A前駆体;ホルネリン、フェチュインB;ヘモペキシン前駆体;アポリポタンパク質H前駆体;fms関連チロシンキナーゼ1;ヒドロキシステロイド(17−β)デヒドロゲナーゼ1;レプチン;可溶性ガラクトシド結合性レクチン14;パッパリシン2または胎盤特異性遺伝子1の1つまたは複数のレベルを測定する検出機構;(i)測定されたレベルに基づいてデータセットを作成する方法;(ii)データセットに基づいて女性における子癇前症の有無または発症リスクを評価する方法;ならびに(iii)子癇前症の有無またはリスクの評価に基づいて治療計画を決定する方法の指示。
別の実施形態は、女性における子癇前症の有無またはリスクを評価し、治療計画の必要性を判断するキットを含み、これには以下を含む:女性から採取した生体試料中の補体因子B、ホルネリン、ヘモペキシン前駆体、ヒドロキシステロイド(17−β)デヒドロゲナーゼ1、可溶性ガラクトシド結合性レクチン14、またはパッパリシン2の1つまたは複数のレベルを測定する検出機構;(i)測定されたレベルに基づいてデータセットを作成する方法;(ii)データセットに基づいて女性における子癇前症の有無または発症リスクを評価する方法;ならびに(iii)子癇前症の有無またはリスクの評価に基づいて治療計画を決定する方法の指示。
別の実施形態では、キットは少なくとも3つのバイオマーカーの検出機構を含む。
別の実施形態では、キットは上述のすべてのマーカーの検出機構を含む。
別の実施形態では、方法とキットは、本明細書に記載する図及び実施例で説明する少なくとも1つのマーカーのレベルを測定する。
子癇前症における発現変動遺伝子のゲノム地図。Circosで、内側の円内に実線で染色体を可視化している。曲線は、有意に相関する遺伝子と転写調節遺伝子のゲノム座標を結んでいる。有意性は、遺伝子と転写調節遺伝子対の発現レベル間の線形モデルをすべての試料に当てはめ、FDRを5%に制御して判断した。曲線は正相関及び逆相関を表す。2つめの円は、優勢胎盤発現(PPE)を示す遺伝子のゲノム上の位置を示す(黒色の線:非発現変動;灰色の線:上方または下方制御)。3つめの円及び4つめの円は、それぞれ発現変動転写調節遺伝子の位置と非調節遺伝子の位置を、内向きの棒(下方制御)及び外向きの棒(上方制御)で示す。3つめの円及び4つめの円の棒の長さは、遺伝子発現変化の大きさを示す。 子癇前症における2つの遺伝子モジュールが、PPE遺伝子で濃縮されており、かつ、平均動脈圧及び出生時体重パーセンタイルと関連していることを示す説明図。マイクロアレイデータのWGCNA解析により同定した遺伝子モジュール。調節不全の胎盤遺伝子発現は、グレーの濃度を変えて印し、子癇前症における1,409個の発現変動遺伝子内の5つの遺伝子モジュールによって特徴付けることができた。y軸上に表示した高さは、WGCNAで用いた距離(1−TOM)を示す。38個のPPE遺伝子(黒色の縦線)のうち、33個がグレースケールモジュールに属する(明るいグレー;n=22、濃いグレー;n=11)。これら2つのモジュールも上方制御遺伝子と下方制御遺伝子とで濃縮されており、それぞれ、グレーまたは黒色の線のモジュールの下に印した。 子癇前症における2つの遺伝子モジュールが、PPE遺伝子で濃縮されており、かつ、平均動脈圧及び出生時体重パーセンタイルと関連していることを示す説明図。100個の試料と選択した47個の遺伝子から得たqRT−PCRデータの階層的クラスタリング。明るいグレーと濃いグレーのモジュールの遺伝子が、検証用試料セットにおいて集まっている。重要なことに、子癇前症を有する女性から採取した60個の試料のうち34個が密集していた。距離、及び連結の平均についてピアソン相関を用いた。試料(カラムリーフ)は、患者群と発育状態に従って濃淡を付けた。 子癇前症における2つの遺伝子モジュールが、PPE遺伝子で濃縮されており、かつ、平均動脈圧及び出生時体重パーセンタイルと関連していることを示すグラフ。遺伝子発現と平均動脈圧及び出生時体重パーセンタイルとの関連性。各遺伝子について、線形モデルを当てはめた(発現〜血圧+出生時体重パーセンタイル+性別+発育状態)。2つの係数(血圧及び出生時体重パーセンタイル)の有意性p値(−log10)を47個の遺伝子すべてについて示した。遺伝子は、モジュールのメンバーシップに従って濃淡を付けた(マイクロアレイ上で非発現変動であった黒色を除く)。色付きの丸はPPE遺伝子を、破線はp=0.05での有意性閾値を示す。出生時体重パーセンタイルと関連している9個の遺伝子のうち7個は明るいグレーのモジュールで、血圧と関連している15個の遺伝子のうち10個は濃いグレーのモジュールであることに注意されたい。 (A)濃いグレーのモジュールの遺伝子の発現が、子癇前症のサブグループにおいて同じ方向に変化することを示すグラフ。各棒グラフにおいて、左右のパネルはそれぞれ早産と満期産の試料における有意差(「*」)を示す。遺伝子発現は、子癇前症のサブグループにおいて同様のパターンを示す。早産試料における子癇前症を伴う変化が、満期産試料における子癇前症を伴う変化と比べて有意差がある場合、「+」マークでこの相互作用を示す。 (B)濃いグレーのモジュールの遺伝子の発現が、子癇前症のサブグループにおいて同じ方向に変化することを示すグラフ。各棒グラフにおいて、左右のパネルはそれぞれ早産と満期産の試料における有意差(「*」)を示す。タンパク質免疫染色は、子癇前症のサブグループにおいて同様のパターンを示す。早産試料における子癇前症を伴う変化が、満期産試料における子癇前症を伴う変化と比べて有意差がある場合、「+」マークでこの相互作用を示す。4つのタンパク質に対する半定量的免疫スコアリングで、遺伝子発現データを検証した。 (C)濃いグレーのモジュールの遺伝子の発現が、子癇前症のサブグループにおいて同じ方向に変化することを示す写真。4種類の免疫染色の画像。早産対照(左、29週)とSGAを有する早産子癇前症を有する患者(右、31週)とから得た同じ胎盤に4種類の免疫染色を行ったものを示している(倍率40倍)。 ARNT2遺伝子の比較を示すグラフ。 BCL3遺伝子の比較を示すグラフ。 BCL6遺伝子の比較を示すグラフ。 BTG2遺伝子の比較を示すグラフ。 CDKN1A遺伝子の比較を示すグラフ。 CGB3遺伝子の比較を示すグラフ。 CLC遺伝子の比較を示すグラフ。 CLDN1遺伝子の比較を示すグラフ。 CRH遺伝子の比較を示すグラフ。 CSH1遺伝子の比較を示すグラフ。 CYP19A1遺伝子の比較を示すグラフ。 DUSP1遺伝子の比較を示すグラフ。 ENG遺伝子の比較を示すグラフ。 ERVFRDE1遺伝子の比較を示すグラフ。 ERVWE1遺伝子の比較を示すグラフ。 ESRRG遺伝子の比較を示すグラフ。 FBLN1遺伝子の比較を示すグラフ。 FLT1遺伝子の比較を示すグラフ。 GATA2遺伝子の比較を示すグラフ。 GCM1遺伝子の比較を示すグラフ。 GH2遺伝子の比較を示すグラフ。 HLF遺伝子の比較を示すグラフ。 HSD11B2遺伝子の比較を示すグラフ。 HSD17B1遺伝子の比較を示すグラフ。 IKBKB遺伝子の比較を示すグラフ。 INSL4遺伝子の比較を示すグラフ。 JUNB遺伝子の比較を示すグラフ。 KIT遺伝子の比較を示すグラフ。 LEP遺伝子の比較を示すグラフ。 LGALS13遺伝子の比較を示すグラフ。 LGALS14遺伝子の比較を示すグラフ。 LGALS16遺伝子の比較を示すグラフ。 LGALS17A遺伝子の比較を示すグラフ。 MAPK13遺伝子の比較を示すグラフ。 NANOG遺伝子の比較を示すグラフ。 PAPPA遺伝子の比較を示すグラフ。 PAPPA2遺伝子の比較を示すグラフ。 PGF遺伝子の比較を示すグラフ。 PLAC1遺伝子の比較を示すグラフ。 POU5F1遺伝子の比較を示すグラフ。 SIGLEC6遺伝子の比較を示すグラフ。 TEAD3遺伝子の比較を示すグラフ。 TFAM遺伝子の比較を示すグラフ。 TFAP2A遺伝子の比較を示すグラフ。 TPBG遺伝子の比較を示すグラフ。 VDR遺伝子の比較を示すグラフ。 ZNF554遺伝子の比較を示すグラフ。
上述のように、子癇前症及び/またはHELLP症候群の早期予測用バイオマーカーの開発及び検証のために、過去数年かけていくつかの試みが行われてきたが、結果は満足のいくものではなかった。考えられる理由として、分子背景が不均一である症候群の早期診断は、1つや2つのバイオマーカー分子だけを使っても解決できないということがある。
本開示は、妊娠7〜9週で繰り返し検出が可能な、遺伝子、タンパク質及びホルモンのバイオマーカーパネルの同定に至った総合的生物学的手法の使用について説明する。本開示の目的は、以下の複数の高次元技術を統合することによって実現した。1)胎盤の全ゲノムトランスクリプトミクス、2)胎盤のハイスループットqRT−PCR発現プロファイリング、3)胎盤のハイスループット組織マイクロアレイタンパク質発現プロファイリング、4)ニューラルネットワーク解析で、血圧及び出生時体重を予測する候補バイオマーカーの最良の組み合わせを選択、5)線形判別分析モデルで、子癇前症予測の感度及び特異度の指標を確認、6)妊娠初期の母体血清の2D−DIGEプロテオミクス。
17個の胎盤を用いた全ゲノムトランスクリプトミクス試験で、子癇前症及び/またはHELLP症候群の胎盤において胎盤特異的遺伝子及び妊娠特異的遺伝子の発現変動を同定した。この遺伝子群の産物は、妊娠中、母体血清中で大量に同定され得ることから、その発現及び分化調節は妊娠特異的である。しかしながら、その変化は、子癇前症だけでなく、他の産科症候群にも特異的である可能性がある。
100個の胎盤のハイスループットqRT−PCR発現プロファイリングで、選択された推定子癇前症バイオマーカーをRNAレベルで検証した。
100個の胎盤のハイスループット組織マイクロアレイタンパク質発現プロファイリングで、選択された推定子癇前症バイオマーカーをタンパク質レベルで検証した。
ニューラルネットワーク解析により、その発現が血圧及び出生時体重を予測できる、推定子癇前症バイオマーカー遺伝子の最良の組み合わせの選択を裏付けた。
線形判別分析により、子癇前症の検出用トランスクリプトームバイオマーカーの平均感度と特異度が、それぞれ91.5%と75%であったことが示された。
妊娠初期の母体血清の2D−DIGEプロテオミクスから、妊娠第一期の母体血のプロテオームは、早発型または遅発型子癇前症を有する女性と、正常な妊婦とで異なっており、この差異が、特に子癇前症の2つのサブタイプで異なっていることが明らかとなった。これらの炎症及び/または代謝マーカーは妊娠に特有ではないものの、子癇前症の2つのサブタイプ間で区別することができる。これらのトランスクリプトームバイオマーカー候補とプロテオミックバイオマーカー候補とを組み合わせることにより、母体血における子癇前症特異的変化を検出でき、かつ、子癇前症の異なるサブタイプ間で区別も可能な分子のパネルが得られた。発現データを得るための数多くの方法が、本開示の文脈において、発現パターン及び発現プロファイルを確認するために、単独で、または組み合わせて用いることができる。例えば、DNA及びRNAの発現パターンは、ノーザン解析、PCR、RT−PCR、TaqManアッセイを用いた定量的リアルタイムRT−PCR解析、FRET検出、1つまたは複数の分子標識のモニタリング、オリゴヌクレオチドアレイへのハイブリダイゼーション、cDNAアレイへのハイブリダイゼーション、ポリヌクレオチドアレイへのハイブリダイゼーション、液体マイクロアレイへのハイブリダイゼーション、微小電気アレイへのハイブリダイゼーション、分子標識、cDNA配列決定、クローンハイブリダイゼーション、cDNA断片フィンガープリント、遺伝子発現の連続解析(SAGE)、減法ハイブリダイゼーション、ディファレンシャルディスプレイ及び/またはディファレンシャルスクリーニングによって評価できる。
遺伝子発現変化は、後成的変動(例えば、DNAメチル化)に関連している可能性がある。後成的調節機構はDNA配列の変更に関与していない。代わりに、後成的変動は、DNA、RNA、及びDNAと関連するタンパク質の共有結合修飾を含む。これらは同様に、DNAの配座及びDNAへの調節因子の到達性に変化をもたらす可能性がある。そのような変化は、遺伝子配列決定によって容易に同定できない。非特許文献1は、非特許文献2及び3により公表されている方法を用いて胎盤組織におけるメチル化を研究した。例えば非特許文献4において、MS−MLPA(メチル化特異的多重ライゲーション依存性プローブ増幅法)を用いて特異的遺伝子のメチル化状態を調べることができる。公表された試験で用いられているMS−MLPAの材料及び方法は、MRC−Holland(オランダ、アムステルダム)から入手可能である。さらなる方法が、非特許文献5〜8で考察、比較されている。
タンパク質発現パターンは、定量的に測定でき、かつ、試料から抽出した複数のマーカーの評価に適した任意の方法を用いて評価できる。こうした方法の例に、ELISAサンドイッチ分析、質量分析検出、熱量測定分析、タンパク質アレイ(例えば、抗体アレイ)への結合、蛍光活性化細胞選別(FACS)などがある。手法では、ELISA、抗体アレイまたはFACS選別においてタンパク質産物の1つまたは複数のエピトープを認識する親和性標識試薬(例えば、抗体、小分子など)を使用できる。
通常、ハイスループットという用語は、1日に少なくとも約100件、または少なくとも約500件、または少なくとも約1000件、または少なくとも約5000件、または少なくとも約10,000件、またはそれ以上の分析を実施する方式を表す。分析を計測する際、分析する試料またはタンパク質マーカーの数を考慮できる。一般に、ハイスループット発現解析法には、対象試料かタンパク質マーカー、またはその両方の論理アレイまたは物理アレイが必要である。アレイ形式は、液相アレイと固相アレイのいずれも適している。例えば、核酸のハイブリダイゼーション、抗体またはその他の受容体とリガンドとの結合などに液相アレイを用いる分析は、マルチウェルまたはマイクロタイタープレートで実施できる。96、384または1536ウェルのマイクロタイタープレートが広く使用されているが、例えば、3456や9600ウェルなど、さらにウェル数の多いものも使用できる。一般に、マイクロタイタープレートの選択は、試料の調整や分析に用いられる方法や、ロボット処理システムやロボット充填システムなどの装置によって決定される。
別法として、さまざまな固相アレイも、発現パターンの測定に使用できる。例として、薄膜またはフィルターアレイ(例えば、ニトロセルロース、ナイロン)、ピンアレイ、ビーズアレイ(例えば、液体「スラリー」中で)などの形式がある。基本的に、特定の発現解析を実施するのに必要な試薬や条件に耐えられる任意の固相担体を利用することができる。例えば、機能化ガラス、シリコン、二酸化ケイ素、変成シリコン、各種ポリマー、例えば(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフルオリド、ポリスチレン、ポリカーボネートまたはそれらの組み合わせはすべて、固相アレイの基質として用いることができる。
1つの実施形態において、アレイは、例えば上述の材料の1つから成る「チップ」を含むことができる。候補ライブラリの個々の成分の発現産物と特異的に相互作用するポリヌクレオチドプローブ、例としてRNAまたはDNA、例えばcDNA、合成オリゴヌクレオチドなど、または結合タンパク質、例えば抗体もしくは抗原結合性フラグメントもしくはその誘導体などは、論理的に秩序のある方法で、すなわちアレイでチップに付着させる。さらに、(試料の標識化の設計に応じて)マーカーヌクレオチド配列のセンス配列またはアンチセンス配列に対して特異親和性を有する任意の分子を、マーカーに対する特異親和性が消失することなくアレイ表面に固定することができ、かつ、例えば、マーカー、リボザイム、ペプチド核酸(PNA)、または特異親和性を有するその他の化学物質もしくは分子の特定核酸配列を特異的に認識するタンパク質のアレイ作製用に、入手し、産生することができる。
核酸及びタンパク質をチップ基質に結合させる方法についての詳細な考察は、例えば、特許文献1〜12に見られる。
マイクロアレイ発現は、多様なレーザーまたはCCDベースのスキャナーを用いてマイクロアレイをスキャンし、例えばImagene(Biodiscovery、カリフォルニア州ホーソーン)、Feature Extractionソフトウェア(Agilent)、Scanalyze(Eisen,M.1999.SCANALYZE User Manual;Stanford Univ.,Stanford,Calif.Ver 2.32.)、またはGenePix(Axon Instruments)などのソフトウェアを用いて特徴を抽出して検出してよい。
1つの実施形態において、関心のマーカーに関して得られた定量的データ及びその他のデータセット要素は、選択パラメーターを用いて分析処理を行うことができる。分析処理のパラメーターは、本明細書において開示するもの、または本明細書に記載するガイドラインを用いて生成されたものであってよい。結果を出すために用いる分析処理は、試料を分類するのに役立つ結果をもたらすことのできる任意の処理、例えば、取得したデータセットと参照データセットとの比較、線形アルゴリズム、二次アルゴリズム、決定木アルゴリズム、または投票アルゴリズムであってよい。分析処理では、試料が所定の分類に属する確率を決定する閾値を設定してよい。確率は、好ましくは少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%以上である。
以下の実施例で、さらに本発明を説明するが、これらはその範囲を限定するものではない。
マイクロアレイ試験
本実施例に記載する研究は、ハンガリーのHealth Science Board及びWayne State UniversityのHuman Investigation Committeeにより承認された。インフォームドコンセントを得たのち、Semmelweis Universityの第一産婦人科でコーカサス人女性から胎盤組織試料を採取した。検体及びデータは匿名で保管した。妊娠期間は、超音波スキャンに基づいて妊娠8〜12週と定めた。多胎妊娠(双子、三つ子など)患者、及び胎児が先天性異常または染色体異常を有する患者は除外した。女性を以下の同種群に組み入れた:(1)HELLP症候群のある/ない早産の重度子癇前症(n=12)、(2)早産対照(n=5)(表1)。子癇前症は、米国産婦人科学会(ACOG)が定める基準に従って定義した(血圧:以前は血圧値が正常であり、妊娠20週以降に収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上;タンパク尿:24時間尿採取でタンパク質が0.3g以上(通常、尿試験紙で1+以上のタンパク質に相当))。重度子癇前症は、Sibai et al.に従って定義した[非特許文献9]。早産対照は、内科的合併症、絨毛羊膜炎の臨床徴候または組織学的所見が認められず、満期出産胎児齢相当(AGA)児を分娩した。全子癇前症例で症状が重かったため、また、全対照で帝王切開歴または妊娠37週以前の胎位異常が原因で帝王切開を実施した。
Figure 2015522258
RNA単離及びマイクロアレイ事件
胎盤(n=17)は分娩直後に採取した。組織検体は、遺伝子発現の局所差に起因するバイアスの可能性を減らすため、臍帯に近い中央の胎盤葉から切除し、ドライアイス上で絨毛脱落膜から切り分け、−80℃で保管した。組織は、Thermo Savant FastPrep FP120ホモジナイザー(Thermo Scientific,Wilmington、米国デラウェア州)とLysing MatrixD(MP Biomedicals、フランス、イルキルシュ)を用いてホモジナイズした。全RNAを、RNeasy Fibrous Tissue Mini Kit(Qiagen GmbH、ドイツ、ヒルデン)を用いて単離し、NanoDrop1000(Thermo Scientific)で定量化し、Agilent 2100 Bioanalyzer(Matriks AS、ノルウェー、オスロ)で評価した。全RNA(対照:n=5、子癇前症:n=12)を標識してから、Cy3−RNAを分解し、Whole Human Genome Oligo Microarray G4112Aでハイブリダイゼーションを行い、Agilentスキャナー(Agilent Technologies、米国カリフォルニア州サンタクララ)を用いた後、Agilent Feature Extractionソフトウェアv9.5を使い、製造者の使用説明書に従って処理した。
データ解析
人口統計データは、SPSSバージョン12.0(SPSS Inc.、米国イリノイ州シカゴ)を用いて、フィッシャーの正確確率検定とマンホイットニー検定で比較した。マイクロアレイデータ解析は、統計処理言語・環境Rを用いて実施した(ウェブサイト:r−project.org)。マイクロアレイ発現強度は、「limma」パッケージの「backgroundCorrect」機能で「minimum」法を用いてバックグラウンド補正を行った。log変換した後、データを変位値により正規化した。アレイ上の41,093個のプローブセットのうち93個は、アレイ定義ファイル(Agilent Technologies)にアノテーションがなかったため、差次的発現解析の前に取り除いた。次いで、発現フィルターを用いて、少なくとも2つの試料においてプローブセットをlogより高い強度に保ち、30,027個のプローブセット(15,939種類の遺伝子)の最終マトリックスを作成した。差次的遺伝子発現は調整t検定を用いて評価した。p値は偽発見率(FDR)法を用いて調整した。プローブセットについて対象遺伝子のEntrez IDを、Rパッケージ「hgu4112a.db」を用いて確認した。パッケージにアノテーションがないプローブセットについては、アレイ定義ファイル(Agilent Technologies)からEntrez IDを取得した。アノテートされていない(Entrez ID及び/または遺伝子記号がない)プローブセットは、その後の解析から除外した。本実施例では、プローブセットのFDRが≦0.2、かつ倍率変化(FC)が≧1.5であれば、発現変動と定義した(n=1409)。本明細書で使用する「差次的発現」、「有意な発現変動」及びこれに似た文言は、一般に、統計的検出力分析に基づいて遺伝子の発現に有意差があることを意味し、その結果は95%信頼区間でqPCRにより検証できる。
79個のヒト組織、細胞及び細胞株に関するヒトU133A/GNF1Hマイクロアレイデータを、Symatlasマイクロアレイデータベース[非特許文献10]からダウンロードし、優勢胎盤発現を有するヒト遺伝子を検索した。その胎盤発現が、1)蛍光強度≧1,000である、2)他の78個の組織及び細胞源における値の75番目の変位値より6倍高い、3)発現が2番目に高い組織における発現よりも2倍高い場合、プローブセットは優勢胎盤発現を有すると定義した。得られた215のプローブセットは153種類の遺伝子に相当した。Symatlasで用いられたマイクロアレイプラットフォーム(Affymetrix、米国カリフォルニア州サンタクララ)に存在しないこの他の11の遺伝子を、その潜在的関連性に応じてこのリストに追加した。164個の優勢胎盤発現遺伝子のうち157個が、使用したAgilentアレイに存在した。これらの遺伝子は、フィッシャーの正確確率検定を用いて、アレイ上の全遺伝子(15,939個のうち1,409個)と比較して発現変動遺伝子の濃縮を試験した。
Agilentアレイで試験した全遺伝子の染色体上の位置を、Rパッケージ「org.Hs.eg.db」から得た。アレイ上の15,939個の遺伝子及び1,409個の発現変動遺伝子のうち、それぞれ15,935個及び1,408個を染色体に割り当てることができた。AffymetrixヒトU133A/GNF1Hチップ上のマイクロアレイプローブセットのEntrez IDへのマッピングは、Bioconductor hgu133a.db及びhgfocus.dbパッケージを用いて実施した。できあがった遺伝子リストの染色体位置は、パッケージorg.Hs.eg.dbから、及び追加の11個の遺伝子についてはNCBIから得た。PPE遺伝子、発現変動遺伝子、及び転写制御因子をコードする発現変動遺伝子における染色体の濃縮解析は、フィッシャーの正確確率検定により試験した。PPE遺伝子及び発現変動遺伝子(転写制御因子、非転写制御因子)の染色体位置をCircosで可視化した(図1)。
17個の試料における1,409個の発現変動遺伝子で加重遺伝子共発現ネットワーク解析(WGCNA)を行い、異なる制御モジュールを同定し、qPCR検証の候補遺伝子について優先順位を決定した。最初に遺伝子のペアワイズ類似度(絶対ピアソン相関)行列を計算し、次いで、10乗してソフト閾値処理を行い(スケールフリートポロジー基準に基づいて選択)、隣接行列を得た。次いで、トポロジー重複行列(TOM)を隣接行列から得た。トポロジー重複でネットワーク内のノードの相互接続性を評価し、加重共発現ネットワークに一般化した。この評価により遺伝子内の相関及び外部での他の遺伝子との相関に基づいて、2つの遺伝子の類似度を定義する。遺伝子の距離行列は、1−TOMと定義し、階層的クラスタリングの平均連結法に用いた。ハイブリッド動的木切除法を用いてモジュール(木クラスター)を得た。この手法により同定された遺伝子モジュールを、フィッシャーの正確確率検定を用いて、PPE遺伝子の濃縮についてさらに試験した。高レベル(平均log2強度>9)で発現し、かつ、PPE遺伝子間でもっとも数の多い遺伝子と共発現(絶対ピアソン相関>0.8)した転写調節遺伝子を、モジュールのハブ遺伝子候補として処理した。
有効性確認試験
試験群、臨床的定義、試料採取
本実施例に記載する研究は、Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development(NICHD)のInstitutional Review Boards、National Institutes of Health(NIH)、Department of Health and Human Services(DHHS)及びWayne State Universityにより承認された。インフォームドコンセントを得たのち、周産期医学研究部門(NICHD、NIH、DHHS)の生物試料バンクから胎盤(n=100)を取得した。妊娠期間は、超音波スキャンに基づいて妊娠8〜12週と定めた。多胎妊娠(双子、三つ子など)患者、及び胎児が先天性異常または染色体異常を有する患者は除外した。検体及びデータは匿名で保管した。
qRT−PCR、組織マイクロアレイ、mRNA in situハイブリダイゼーション及びレーザーキャプチャーマイクロダイセクションのために、以下の同種群から成る大規模コホートから選択した女性の胎盤を用いた:(1)早産の重度子癇前症(PE;≦36週;n=20)、(2)低出生体重(SGA)を伴う早産の重度子癇前症(PE−SGA;≦36週;n=20)、(3)早産対照(PTC;≦36週;n=20)、(4)満期産の重度子癇前症(TPE;≧37週;n=10)、(5)SGAを伴う満期産の重度子癇前症(TPESGA;≧37週;n=10)、(6)満期産対照(TC;≧37週;n=20)。これらの群の女性は、主にアフリカ系アメリカ人であった(表2)。陣痛あり(n=10)または陣痛なし(n=10)の正常妊婦から成る満期産対照、ならびに早期陣痛及び分娩であった早産対照(n=20)は、内科的合併症、絨毛羊膜炎の臨床徴候または組織学的所見が認められず、AGA児を分娩した。陣痛の定義は、子宮頸部の変化を伴う規則的な子宮収縮が10分ごとに少なくとも2回生じ、分娩に至ることとした。子癇前症は、米国産婦人科学会(ACOG)が定める基準に従って定義した。重度子癇前症は、Sibai et al.(上記参照)に従って定義した。SGAは、在胎齢に対し新生児の出生時体重が10パーセンタイル未満と定義した。全子癇前症例で症状が重かったため、また、対照群では帝王切開歴または胎位異常が原因で帝王切開を実施した。
Figure 2015522258
全RNA単離、cDNA作製、定量的リアルタイムRT−PCR
全RNAを、急速凍結した胎盤絨毛組織(n=100)からTRIzol試薬(Invitrogen、米国カリフォルニア州カールスバッド)とQiagen RNeasyキット(Qiagen、米国カリフォルニア州バレンシア)とを用いて、製造者の推奨に従って単離した。28S/18S比及びRNA完全数をAgilent Bioanalyzer 2100(Agilent Technologies)を用いて評価し、RNA濃度をNanoDrop1000(Thermo Scientific)で測定した。全RNAの500ngを、ランダムヘキサマー(Applied Biosystems)を使用してHigh Capacity cDNA Reverse Transcription Kitで逆転写した。TaqMan Assays(Applied Biosystems)を、製造者の使用説明書に従って、Biomark(登録商標)qRT−PCRシステム(Fluidigm、米国カリフォルニア州サンフランシスコ)でのハイスループット遺伝子発現プロファイリングに使用した。
組織マイクロアレイ(TMA)作製、免疫染色、免疫スコアリング
FFPE絨毛組織ブロックからTMAを作製した(n=100)。簡潔に説明すると、20×35mmのレシピエントブロック3つを、Paraplast X−Tra組織包理剤(Fisher Scientific、米国ペンシルベニア州ピッツバーグ)で作製した。組織ブロックから直径1mmコアを、自動組織アレイヤー(Beecher Instruments,Inc.、米国メリーランド州シルバースプリング)を用いて、レシピエントパラフィンブロックに3連で移した。TMAの5μm切片を、シラン処理したスライドに載せ、抗体と試薬とを用いて手動で、またはVentana Discovery自動染色装置(Ventana Medical Systems,Inc、米国アリゾナ州ツーソン)もしくはLeica BOND−MAX(登録商標)自動染色装置(Leica Microsystems、ドイツ、ヴェッツラー)のいずれかで染色した。画像はOlympus BX41顕微鏡(Olympus America Inc.、米国ペンシルベニア州センター・バレー)で取り込んだ。免疫染色は、2人の試験者が臨床情報を見ずに修正免疫反応性スコアを用いて半定量的に評価した。免疫染色強度は、以下のように等級分けした:0=陰性、1=弱染色、2=中染色、3=強染色。3つのコアそれぞれの任意領域の絨毛すべてを2人の試験者が評価し、各コア内のスコアの平均値を求め、当該コアの対象タンパク質を示した。したがって、各胎盤につき、試験した3つのコアに対応する3つのスコアがあり、これらのスコアを用いた群間比較をqRT−PCRデータと同じ方法で実施した。
胎盤の病理組織学的評価
胎盤組織試料(n=100)を、系統的無作為標本抽出法により採取し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィンに埋め込んだ。5μm片を絨毛組織ブロックから切除し、ヘマトキシリンとエオシンで染色し、2人の解剖病理学者が臨床情報を見ずに明視野光学顕微鏡を用いて調べた。病理組織学的変化は、公表されている基準に従って定義した。「母体の低灌流」と「胎児の血管内血栓閉塞性疾患」のスコアは、所定の胎盤に存在するこれらの病変の種類と一致するさまざまな病理学的病変の数を合計して算出した。
qRT−PCRデータの統計解析と評価
人口統計データは、SPSSバージョン12.0(SPSS)を用いて、フィッシャーの正確確率検定とマンホイットニー検定で比較した。qPCRデータは、統計解析環境RでΔΔCt法を用いて解析した(ウェブサイト:r−project.org)。データは最初に参照遺伝子(RPLPO)に対して正規化し、バッチ効果を標準試料で調整した。各試料について、−ΔCt(遺伝子)=Ct(RPLPO)−Ct(遺伝子)としてlog2mRNA相対濃度を得た。代理遺伝子発現値(−ΔCt遺伝子)を使い、1−ピアソン相関距離と平均連結法とを用いて階層的クラスタリングを実施した。群間比較(群は患者の臨床所見に基づいて事前に定めた)は、共変量として群変数指標を用いると同時に、群変数と胎児の発育状態(満期産と早産)との相互作用を考慮し、線形モデルを−Ct値に当てはめて実施した。
これらの群間比較に加え、解析を拡張して100人の患者全員を検証段階に含め、遺伝子発現と血圧ならびに出生時体重との関連性について調べるとともに、妊娠期間について調整した。後の解析における変数はすべて、連続型として処理した。P値<0.05であれば、有意と判断した。
ニューラルネットワークベースの手法を用いて、qRT−PCRデータに基づいて血圧と出生時体重とを同時に最適に予測する2〜8個の遺伝子の最良の組み合わせを決定した。試料(n=100)は、交差検証として、等分に(子癇前症の有無に関して)均衡をとって無作為に10分割した。各分割で、試料の90%を使用し、血圧と出生時体重との予測に関して別々に単変量で遺伝子をランク付けしたのち、この2つの結果のそれぞれについて、単純線形モデルを用い、性別と発育(満期産/早産)について調整し、最良の15個の遺伝子を保持した。これらの遺伝子の組み合わせすべてを、訓練データを用いて血圧と出生時体重の両方を予測するよう訓練されたニューラルネットワークモデルへの入力データとして使用した。試料の残りの10%は、遺伝子の組み合わせそれぞれについて、ニューラルネットワークの平均絶対相対予測誤差(AARE)を決定するのに用いた。交差検証手順は10回くり返した。したがって、データが10種の10倍の分割になり、試料が合計で100の訓練セット及び100の試験セットとなった。所定の遺伝子の組み合わせが組み合わせの上位5%にあった(最小AARE)回数を記録し、血圧と出生時体重パーセンタイルとの両方を予測する能力について、その遺伝子の組み合わせをランク付けした。線形判別分析(LDA)モデルを使用し、疾患状態(子癇前症と対照)を予測するモデルの感度と特異度の現実的な指標を得た。LDAは、上位2個の予測因子及び/または胎盤特異性の高い遺伝子としてニューラルネットワーク解析の結果から選択した6個の遺伝子(FLT1、HSD17B1、LEP、LGALS14、PAPPA2、PLAC1)でまず実施し、次いで、4個の遺伝子(HSD17B1、LGALS14、PLAC1、PAPPA2)の制限セットでも繰り返した。100個の試料を繰り返し無作為に以下の2つの部分に分割した:LDAモデルに当てはめるために使用する訓練部分(試料の80%)、及び当てはめたモデルの感度と特異度とを計算するために使用する試験部分(試料の20%)。感度及び特異度の推定は、そのような100回の試行の平均値を求め、ロバスト推定を得た。各試行では、検討された遺伝子を、t検定を用いてランク付けし、内部の3重交差検証法によるLDAモデルの性能を用いて、LDAモデルに取り入れる最適な数を決定する。この手法については別途詳細に記載されている(非特許文献11)。
モデルは2セットのパラメーターを有していた。2つの群の4個の遺伝子の平均発現値(−ΔCt値)は以下の表3のとおりであった(m)。分散共分散行列(Σ)は以下の表4のとおりであった。任意の新しい固体については、発現プロファイルxが利用できると仮定した。例えばxは以下の表5のとおりである。
Figure 2015522258
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各患者分類(子癇前症と対照)の事後確率を、多変量正規式を用いて、新たなプロファイル値とモデルパラメーターから計算した。
Figure 2015522258
Figure 2015522258
p(x|PE)>p(x|Ctl)であれば、試料は子癇前症に分類し、p(x|Ctl)>p(x|PE)であれば、試料は対照に分類した。
統計的Rパッケージを使用し、これらのパラメーターを最初にRに読み込み、かつ、mvtnormライブラリも読み込むと仮定して、以下の構文を用いてこれらの確率を計算した。
Figure 2015522258
母体血清プロテオミクス
試験群、臨床的定義、試料採取
全被験者が、Maccabi Healthcare Services(イスラエル)の妊婦地域診療所における、2002年8月〜2003年3月の長期前向き多施設試験に組み入れられた。妊娠期間は、最終月経期に基づいて計算し、妊娠第一期の超音波検査で確認した。多胎妊娠(双子、三つ子など)患者、及び胎児が先天性異常または染色体異常を有する患者は除外した。ヒトの臨床試料の採取及び調査についてはMaccabi施設内審査委員会により、試験手順及びデータ解析については、ハンガリーのHealth Science Board及びWayne State UniversityのHuman Investigation Committeeにより承認された。被験者からは試料採取前にインフォームドコンセントを得た。検体及びデータは匿名で保管した。
子癇前症は、国際妊娠高血圧学会に従って、タンパク尿(24時間尿採取で≧300mg、または尿試験紙で≧2+)を伴う、妊娠20週以降に発症した高血圧(4時間〜〜1週間の間隔で2つの異なる時点に測定した収縮期血圧≧140mmHgまたは拡張期血圧≧90mmHg)と定義した。子癇前症は、1)タンパク尿を伴う重症高血圧(収縮期血圧が≧160mmHgもしくは拡張期血圧が≧110mmHg)、2)重症タンパク尿(≧5g/24時間、もしくは尿試験紙で≧3)を伴う高血圧、または、3)肺水腫、欠尿、異常肝機能、上腹部痛、右上腹部痛、血小板減少、もしくは発作を含む重度の中枢神経症状など、母体に多臓器障害がある場合には、重度と定義した。低出生体重は、在胎齢に対し新生児の出生時体重が10パーセンタイル未満と定義した。健常対照群は、内科的または産科的合併症がなく、在胎齢に見合った出生時体重の新生児を分娩した。
妊娠第一期の女性から静脈穿刺により末梢血試料を得た。これらの妊婦は、その後、早産の重度子癇前症(<36週;n=5)または満期産の重度子癇前症(≧37週;n=5)を発症したか、または、採血時の妊娠期間に合致した健常対照(≧37週;n=10)となった(表3)。試料は、室温(RT)で1〜2時間保管し、10,000Gで10分間遠心分離機にかけた。血清を採取し、2〜8℃で最大48時間保管したのちMaccabi Central Laboratoryに移動させ、そこでアリコートで−20℃で保管してから、ドライアイス上でハンガリーに送付した。
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I.発見段階
試料調製、多量の血清タンパク質の免疫除去
血清は、Biosystems International Ltd.(ハンガリー、デブレツェン)にて、Multiple Affinity Removal LC Column−Human 14(Agilent Technologies、米国カリフォルニア州サンタクララ)を用いて、Agilent 1100 HPLCシステムで14の多量の血清タンパク質について製造者の手順書に従って免疫除去した。2Dゲルの分解能を改善するために、Proteome Services,Ltd.(ハンガリー、ブダペスト)にて、免疫除去した血清試料を凍結乾燥させたのち、脱脂、脱塩した。簡潔に説明すると、全試料の1容量にメタノール4容量を混合し、十分にボルテックスした。次いで、これらの混合物にクロロホルム1容量を加え、再度ボルテックスしてから、水(HPLCグレード)3容量を混合する。遠心分離(14,000rpm、5分間、4℃)後、上の層を捨てた。次いで、メタノール3容量を加え、得られた混合物をボルテックスし、再度遠心分離を行った。上清を捨て、沈殿した血漿タンパク質を含むペレットを10分間風乾した。脱脂及び脱塩した血漿タンパク質試料を溶解緩衝液(7M尿素;2Mチオ尿素;20mMトリス;5mM酢酸マグネシウム、4%CHAPS)に溶解し、pHを8.0に調整した。
蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動(2D−DIGE)
免疫除去、脱塩、脱脂した血清試料のタンパク質濃度は、PlusOne Quant Kit(GE Healthcare、米国ペンシルベニア州ピッツバーグ)を用いた測定で、2〜4μg/μLであった。試料はタンパク質含有量を均一にし、次いで、各タンパク質試料の5μgをCyDye DIGE Fluor Labeling kit for Scarce Samples(飽和色素)(GE Healthcare)を用いて4nmol/5μgタンパク質の濃度で、製造者の使用説明書に従って標識した。症例(n=10)及び対照(n=10)の個々の試料をCy5で標識した。内部標準試料は、この試験セットにおけるすべての試料について等量(2.5μg)をプールし、Cy3で標識した。次いで、各Cy5標識試料5μgをCy3標識標準試料5μgと混合し、これら20の混合物を2×10ゲルで同時に処理した。簡潔に説明すると、標識タンパク質を、0.5%両性電解質、0.5%DTT、8M尿素、30%グリセリン、2%CHAPSを含有するIEF緩衝液に溶解し、20枚の24cm IPGストリップ(pH3〜10、GE Healthcare)で、少なくとも14時間、室温で受動的に再水和した。再水和後、IPGストリップは一次元目IEFを24時間行った(合計80kVh)。集まったタンパク質は、1%メルカプトエタノールを含有する緩衝液で20分間平衡化して還元した。還元後、IPGストリップを、10%ポリアクリルアミドゲル(24×20cm)に載せ、二次元目で10W/ゲルでSDS−PAGEを実施した。次いで、ゲルをTyphoon TRIO+スキャナー(GE Healthcare)で、適切なレーザーとフィルターを用い、PMTのバイアスを600Vとしてスキャンした。異なるチャンネルの画像は、選択した色を使ってオーバーレイし、差分をImage Quantソフトウェア(GE Healthcare)を用いて可視化した。DeCyder 6.0ソフトウェアパッケージ(GE Healthcare)のDifferential In−gel Analysis(DIA)とBiological Variance(BVA)モジュールとを用いて、差分タンパク質解析を実施した。
発現変動タンパク質スポットの同定
全試験で存在したすべてのタンパク質の内部標準試料の代表をすべてのゲルに均等に載せ、個々の試料を正規化するための平均画像を得た。全ゲルにおける内部標準間の蛍光シグナルの相対存在量の測定は、試験変動を排除し、ゲル間変動を低減して、ゲル間で標準化した。標準プロテオミクスプロトコルに従って、差次的発現の閾値を、最小倍率変化1.05倍に設定した。各タンパク質スポットについて、スチューデントのt検定を用いて、DeCyderソフトウェア(GE Healthcare)のBVA モジュールによってp値を求めた。p値が<0.05であれば、統計的に有意と判断した。
II.調製段階
試料調製、蛍光標識、2D−DIGE
Colloidal Coomassie Blueで標識した場合、スポットの濃度は試料中のタンパク質の濃度のみに依存するが、飽和色素で標識した場合、スポットの濃度は標識タンパク質のシステインの数にも依存する。その理由は、飽和色素標識法では各タンパク質で利用可能なシステインすべてが標識されるからである。このため、分析ゲル及び調製ゲルの試料において、異なる密度で同じパターンとなり、同定がより困難となる。この問題を排除し、関心スポットにおけるタンパク質を正確に同定できるようにするため、同じゲルでCyDye飽和蛍光標識とColloidal Coomassie Blue標識とを用いて調製二次元電気泳動を行った。2つのゲルのそれぞれにつき合計800μgのタンパク質を処理した。簡潔に説明すると、「早産」と「満期産」比較で、免疫除去した血清試料10−10をともにプールし、脱塩ステップを3回くり返した。プールしたこれら2つの試料のタンパク質5μgをCy3で標識し、同じ試料の未標識タンパク質800μgと混合したのち、ドライストリップに分割した。一次元目の分離後、集まったタンパク質をまず1%メルカプトエタノールを含有する緩衝液で20分間平衡化して還元し、次いで、2.5%ヨードアセトアミドを含有する緩衝液で20分間アルキル化した。電気泳動の後、ゲルを上述のようにTyphoon TRIO+スキャナーでスキャンし、発現変動スポットを、「マスター」分析ゲル及び蛍光調製ゲル画像間で、DeCyder 6.0ソフトウェアパッケージ(GE Healthcare)のBiological Variance(BVA)モジュールを用いてマッチングした。解像したタンパク質スポットを、Colloidal Coomassie Blue G−250染色プロトコルにより可視化した。発現変動の個々のスポットをゲルから切り出し、画像を比較した。
III.同定段階
ゲル内消化
切り出したタンパク質スポットは、Biological Research Center of the Hungarian Academy of Sciences(ハンガリー、セゲド)のProteomics Research Groupで分析した。詳細な手順は「In−Gel Digest Procedure」という表題でウェブサイト(msfacility.ucsf.edu/ingel.html)に掲載されており、以下のように再現した。簡潔に説明すると、塩、SDS、クマシーブリリアントブルーを洗い落とし、ジスルフィド架橋をジチオスレイトールで還元し、次いで、遊離スルフヒドリルをヨードアセトアミドでアルキル化した。側鎖保護ブタトリプシン(Promega)で、37℃で4時間消化し、得られたペプチドを抽出した。
ゲル内消化手順
1.手袋と袖カバーを装着し、メタノールまたは水で濡らした糸くずの出ない布で、使用する全試験管の外側(標示を拭き取らないように気を付ける)、Speed Vacと遠心分離機の内側と外側、試験管立て、ボトルなど、フード内の表面すべてをきれいに拭く。メタノールに浸した糸くずの出ない布で、かみそりの刃を拭く。
2.以下の溶液を調製する。
25mM NH4HCO3(100mg/50mL)
25mM NH4HCO3と50%ACNとの混合溶液
50%ACN/5%ギ酸(TFAまたは酢酸で代用してもよい)
12.5ng/μLトリプシンと25mM NH4HCO3との混合溶液(新たに希釈)
3.各ゲルスライスを小さなさいの目に切り(1mm2)、0.65mLシリコン処理試験管(PGC Scientific)に入れる。
4.100μLの(または十分に浸る)25mM NH4HCO3/50%ACNを加え、10分間ボルテックスする。
5.ゲルローディングピペットチップを用いて、上清を抽出し、捨てる。
6.手順3及び4を1回または2回くり返す。
7.Speed Vacでゲル片を完全に乾燥させる(約20分)。
低レベルタンパク質(<1pmol)の場合、特に1−D SDS−PAGEで分離した場合は、還元とアルキル化が推奨される。これらの手順は、手順6の後に行う。
a.新しい溶液を調製する。
10mM DTTと25mM NH4HCO3との混合溶液(1.5mg/mL)
55mMヨードアセトアミドと25mM NH4HCO3との混合溶液(10mg/mL)
b.25μLの(または十分に浸る)10mM DTT/25mM NH4HCO3を乾燥したゲルに加える。ボルテックスし、短時間スピンする。56℃で1時間反応させる。
c.上清を除去し、25μLの55 mM ヨードアセトアミドをゲル片に加える。ボルテックスし、短時間スピンする。暗所で45分間、室温で反応させる。
d.上清を除去する(捨てる)。ゲルを約100μLのNH4HCO3で洗い、10分間ボルテックスし、スピンする。
e.上清を除去する(捨てる)。約100μLの(または十分に浸る)25mM NH4HCO3/50%ACNでゲルを脱水し、5分間ボルテックスし、スピンする。この手順を1回くり返す。
f.Speed Vacでゲル片を完全に乾燥させる(約20分)。トリプシン消化を進める。
8.トリプシン溶液を、ゲル片がぎりぎり浸るくらいに加える。ゲルの量を推量し、約3倍量のトリプシン溶液を加える。この容量は試料ごとに異なるが、概して約5〜25μLで十分である。
9.ゲル片を氷上または4℃で10分間再水和したのち、スピンする。必要に応じて25mM NH4HCO3を加え、ゲル片を覆う。
10.短時間スピンし、37℃で4時間から一晩インキュベートする。
ペプチドの抽出
1.消化液(水抽出)を清潔な0.65mLシリコン処理試験管に移す。
2.ゲル片に30μLの(十分に浸る)50%ACN/5%ギ酸を加え、20〜30分間ボルテックスする。スピンし、5分間超音波で分解する。この手順を繰り返す。
3.抽出した消化物をボルテックスし、スピンして、Speed Vacで10μLに濃縮する。
4.C18 ZipTip(Millipore)で精製するか、またはLC−MSで分析する。2〜5μLの5%ギ酸を加える。低レベルのタンパク質を分析するときは、3μLの溶出液を用いてZipTipから溶出してペプチドを濃縮し、清潔な0.65mLシリコン処理試験管に入れる。
5.分離していない消化物1μLを用いてMALDIで分析する。
分離していない消化物のマトリクス:
α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸と50%ACN/1%TFAとの混合溶液(10mg/mL)。
2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)、飽和水溶液。
参考:非特許文献12、13
LC−MS/MS
試料は、イオントラップタンデム質量分析計(LCQ Fleet,ThermoScientific)にオンライン接続されたWaters Acquity nanoUPLCで、IDA(information−dependent acquisition)モードで分析した。MS取得(1秒サーベイスキャン)ののち、コンピューターで選択した多価イオンをCID分析(3秒MS/MSスキャン)した。HPLC条件は、nanoACQUITY UPLC捕集カラム(Symmetry、C18 5μm、180μm×20mm)(3%溶媒Bで15μL/分)でのインライン捕集と、その後の溶媒Bの直線勾配(40分で10〜50%、流量:250nL/分;nanoACQUITY UPLC BEH C18 Column、1.7μm、75μm×200mm)などであった。溶媒A:0.1%ギ酸水溶液、溶媒B:0.1%ギ酸アセトニトリル溶液。LC−MS/MS分析を、「トリプルプレイ」モードで450〜1600m/zの質量範囲で実施した。
データベース検索とデータ解釈
生データファイルは、Mascot Distillerソフトウェアv2.1.1.0.(Matrix Science,Inc、英国ロンドン)を用いて検索可能なピークリストのMascotジェネリックファイル形式(*.mgf)に変換した。得られたピークリストは、社内Mascotサーバーv2.2.04のMS/MSイオン検索モードでMascot Daemonソフトウェアv2.2.2(Matrix Science Inc)を用いて、National Center for Biotechnology Information(NCBInr 2008.07.18.、米国メリーランド州ベセスダ;6,833,826配列)の非冗長タンパク質データベースのヒトサブデータベースに対して検索した。ペプチド質量誤差が±50ppmで、フラグメント質量誤差が±0.1Daのモノアイソトピック質量を示した。Cysのカルバミドメチル化を固定修飾として設定し、タンパク質N末端のアセチル化、メチオニン酸化、及びペプチドN末端Gln残基からのピログルタミン酸形成は、可変修飾として認めた。判定基準は、1つのタンパク質に対し少なくとも2つの有意な(ペプチドスコア>40、p<0.05)個別ペプチドに設定した。
結果
I.子癇前症における発現変動遺伝子は、主に胎盤発現遺伝子及び3つの染色体で濃縮されている
子癇前症の病因は胎盤に由来するため、主に胎盤で発現する新しいバイオマーカー候補、及び子癇前症の胎盤病因に関与する遺伝子調節ネットワークを、システム生物学的手法を用いて探索した。マイクロアレイデータセットの解析より、早産対照と比べて、早産の子癇前症で1,409種類の発現変動遺伝子が明らかとなった。これらの発現変動遺伝子から、137個を見つけ、転写調節機能(転写因子、コアクチベーター、またはコリプレッサー)とともにタンパク質をコードした。BioGPSマイクロアレイデータの分析と以前の証拠から、164種類の遺伝子が主に胎盤で発現することが明らかとなり、そのうち157個が我々のマイクロアレイプラットフォームに存在した。
アレイ上の全遺伝子と比較すると、子癇前症における発現変動遺伝子はPPE遺伝子(157個中38個)において高度に濃縮されていた(OR=3.4、p=6.9×10-9)。関心遺伝子の染色体位置を調べると、発現変動遺伝子が、6及び7番染色体(それぞれOR=1.54、pFDR=1.6×10-3、OR=1.42、pFDR=0.02)に位置する遺伝子で濃縮されていた。興味深いことに、19番染色体は、発現変動転写調節遺伝子(OR=2.6、pFDR=0.02)及び優勢胎盤発現を伴う遺伝子(OR=2.5、p=1×10-4)において過剰に出現していた。こうした濃縮は、19番染色体が大型霊長類特異性及び胎盤特異性遺伝子ファミリー(例えば、CGB、LGALS、PSG)とジンクフィンガー転写因子遺伝子ファミリーとを持つという事実と一致している。可視化した遺伝子発現及び共発現データは、霊長類の胎盤遺伝子発現における19番染色体の調節「ハブ」の潜在的役割及び子癇前症におけるその調節不全を裏付けている。
図1.子癇前症における発現変動遺伝子のゲノム地図。Circosで、内側の円内に実線で染色体を可視化している。曲線は、有意に相関する遺伝子と転写調節遺伝子のゲノム座標を結んでいる。有意性は、遺伝子と転写調節遺伝子対の発現レベル間の線形モデルをすべての試料に当てはめ、FDRを5%に制御して判断した。曲線は正相関及び逆相関を表す。2つめの円は、PPE遺伝子のゲノム上の位置を示す(黒色の線:非発現変動;灰色の線:上方または下方制御)。3つめの円及び4つめの円は、それぞれ発現変動転写調節遺伝子の位置と非調節遺伝子の位置を、内向きの棒(下方制御)及び外向きの棒(上方制御)で示す。3つめの円及び4つめの円の棒の長さは、遺伝子発現変化の大きさを示す。
図2.子癇前症における2つの遺伝子モジュールが、PPE遺伝子で濃縮されており、かつ、平均動脈圧及び出生時体重パーセンタイルと関連している。2A)マイクロアレイデータのWGCNA解析により同定した遺伝子モジュール。調節不全の胎盤遺伝子発現は、グレーの濃度を変えて印し、子癇前症における1,409個の発現変動遺伝子内の5つの遺伝子モジュールによって特徴付けることができた。y軸上に表示した高さは、WGCNAで用いた距離(1−TOM)を示す。38個のPPE遺伝子(黒色の縦線)のうち、33個がグレースケールモジュールに属する(明るいグレー;n=22、濃いグレー;n=11)。これら2つのモジュールも上方制御遺伝子と下方制御遺伝子とで濃縮されており、それぞれ、グレーまたは黒色の線のモジュールの下に印した。2B)100個の試料と選択した47個の遺伝子から得たqRT−PCRデータの階層的クラスタリング。明るいグレーと濃いグレーのモジュールの遺伝子が、検証用試料セットにおいて集まっている。重要なことに、子癇前症を有する女性から採取した60個の試料のうち34個が密集していた。距離、及び連結の平均についてピアソン相関を用いた。試料(カラムリーフ)は、患者群と発育状態に従って濃淡を付けた。2C)遺伝子発現と平均動脈圧及び出生時体重パーセンタイルとの関連性。各遺伝子について、線形モデルを当てはめた(発現〜血圧+出生時体重パーセンタイル+性別+発育状態)。2つの係数(血圧及び出生時体重パーセンタイル)の有意性p値(−log10)を47個の遺伝子すべてについて示した。遺伝子は、モジュールのメンバーシップに従って濃淡を付けた(マイクロアレイ上で非発現変動であった黒色を除く)。色付きの丸はPPE遺伝子を、破線はp=0.05での有意性閾値を示す。出生時体重パーセンタイルと関連している9個の遺伝子のうち7個は明るいグレーのモジュールで、血圧と関連している15個の遺伝子のうち10個は濃いグレーのモジュールであることに注意されたい。
II.子癇前症における発現変動遺伝子を主な調節モジュールに分ける
調節不全の胎盤遺伝子発現を促進する可能性のある遺伝子及び転写調節遺伝子の調節モジュールを同定するために、マイクロアレイ上の発現変動遺伝子を用いてWGCNA解析を実施した。1,409個の遺伝子のうち1,403個を、506個、442個、381個及び74個の遺伝子を含む4つのモジュールに割り当てた。関心のある、優勢胎盤発現を有する38個の遺伝子のうち33個が、明るいグレー(n=22)及び濃いグレー(n=11)のモジュールに属していた。明るいグレーのモジュールが下方制御(OR=1.88、p=2.59×10-8)遺伝子で濃縮されているのに対し、濃いグレーのモジュールは上方制御(OR=6.47、p<2.2×10-16)遺伝子で濃縮されており、早産の子癇前症において調節不全の遺伝子ネットワークの存在を示唆している。
上方制御遺伝子のうち、濃いグレーのモジュールにあるのはFLT1であった。FLT1は、可溶性Flt−1の量を増やし、血圧上昇を促進することにより、子癇前症において病因的役割を有する。優勢胎盤発現を有する上方制御遺伝子には、CRH、LEP、PAPPA2、SIGLEC6及び新規のバイオマーカー候補などがある。下方制御遺伝子のうち、明るいグレーのモジュールにあるPPE遺伝子は、胎児発育(CSH1、HSD11B2)、代謝(ESRRG)、エストロゲン合成(HSD17B1)、ストレスホルモン代謝(HSD11B2)及び胎盤形成の免疫調節(LGALS14)の調節因子であった。
III.濃いグレー及び明るいグレーのモジュールにある発現変動遺伝子は、それぞれ血圧及び出生時体重パーセンタイルに関連している
説明した結果を、多様な民族的起源及び子癇前症のさまざまなサブタイプ(早産または満期産、SGAの有無)を含む大規模患者集団で検証するために、ハイスループット発現プロファイリング用の47個の遺伝子を選択した。これらの遺伝子は、1)マイクロアレイで発現変動、主に胎盤発現を示し、合胞体栄養膜により特異的で、潜在的に分泌される、2)PPE遺伝子と高い共発現を示す転写調節遺伝子であり、かつ、3)栄養膜分化(例えば、GCM1)、栄養膜特異的遺伝子発現(例えば、TEAD3)、または子癇前症の病因(例えば、ENG、LGALS13)に関連した役割を持つその他の遺伝子であった。
qRT−PCRデーの階層的クラスタリングから、子癇前症を有する妊婦の60個の胎盤のうち30個が集まっていることが示された。これは、明るいグレー及び濃いグレーのモジュールに属している遺伝子についても同様であった(図2B)。異なる病原経路におけるこれらのモジュールの関与の可能性に基づいて、その生物学的関連性を新規の方法で明らかにすることを試みた。「表現型分析」では、出生時体重パーセンタイルに関連する9個の遺伝子のうち7個が明るいグレーのモジュールにあるのに対し、血圧に関連する15個の遺伝子のうち10個が濃いグレーのモジュールにあることが示された(図2C)。
胎盤の病理組織学的データの評価も行った。濃いグレーのモジュールにおける遺伝子の発現が、「胎児の血管内血栓閉塞性疾患」(SIGLEC6、ENG、TPBG)及び「母体の低灌流」(関連性の高い遺伝子:LEP、FLT1、TPBG、ENG)、胎盤低酸素症及び/または虚血に相当する疾患の有無に関連していることがわかった。明るいグレーのモジュールの大多数(関連性の高い遺伝子:CLDN1、HSD17B1、CSH1、PLAC1、LGALS14)が、「母体の低灌流」に有意に関連していた。
加えて、古典的な手法として、子癇前症の満期産及び早産の2群と対照との群間比較を別々に実施した。qRT−PCRデータによってマイクロアレイの72%(34/47遺伝子)が実証されたことがわかった。選択した4つのタンパク質の組織マイクロアレイ免疫染色により、このモジュールについて、タンパク質レベルでマイクロアレイデータが実証された。
図3.濃いグレーのモジュールの遺伝子の発現が、子癇前症のサブグループにおいて同じ方向に変化する。3A、B)各棒グラフにおいて、左右のパネルはそれぞれ早産と満期産の試料における有意差(「*」)を示す。遺伝子発現(3A)及びタンパク質免疫染色(3B)は、子癇前症のサブグループにおいて同様のパターンを示す。早産試料における子癇前症による変化が、満期産試料における子癇前症による変化と比べて有意差がある場合、「+」マークでこの相互作用を示す。4つのタンパク質に対する半定量的免疫スコアリングで、遺伝子発現データを検証した。3C)4種類の免疫染色の画像。早産対照(左、29週)とSGAを有する早産子癇前症を有する患者(右、31週)とから得た同じ胎盤に4種類の免疫染色を行ったものを示している(倍率40倍)。
明るいグレーのモジュールでは、遺伝子発現変化は子癇前症の満期産群より早産群の方が大きかった。有意な調節不全が、満期産と早産の両方で認められた遺伝子もあれば(例えば、LGALS13、LGALS14)、早産でのみ認められた遺伝子もあった(例えば、CSH1)。これらのデータは、子癇前症の病因の背後にある胎盤病理が複雑であることや、早産では病理学的により重症となることを反映している。
図4A〜図4UUは、それぞれARNT2;BCL3;BCL6;BTG2;CDKN1A;CGB3;CLC;CLDN1;CRH;CSH1;CYP19A1;DUSP1;ENG;ERVFRDE1;ERVWE1;ESRRG;FBLN1;FLT1;GATA2;GCM1;GH2;HLF;HSD11B2;HSD17B1;IKBKB;INSL4;JUNB;KIT;LEP;LGALS13;LGALS14;LGALS16;LGALS17A;MAPK13;NANOG;PAPPA;PAPPA2;PGF;PLAC1;POU5F1;SIGLEC6;TEAD3;TFAM;TFAP2A;TPBG;VDR;及びZNF554の比較を示す。
IV.トランスクリプトームバイオマーカー
ニューラルネットワークに基づいた解析の結果は、訓練試料のさまざまなサブセットを用いたときの血圧及び出生時体重パーセンタイルの最良の予測因子として保持された回数により評価した、2〜8個の遺伝子の組み合わせのセットとなった(表7)。これらの組み合わせのセットから、6個の遺伝子(FLT1、HSD17B1、LEP、LGALS14、PAPPA2、及びPLAC1)を、上位2個の予測因子及び/または胎盤特異性の高い遺伝子として選択した。
Figure 2015522258
Figure 2015522258
Figure 2015522258
Figure 2015522258
Figure 2015522258
Figure 2015522258
Figure 2015522258
線形判別分析では、子癇前症の検出用トランスクリプトームバイオマーカーの選択されたセットの平均感度が91.5%、平均特異度が75%であったことが示された。
V.子癇前症の母体血清における発現変動タンパク質
発見段階では、正常な妊娠結果を有する正常な妊婦と、その後に早産の重度子癇前症を発症した妊婦とから採取した試料の比較で、ゲル上で2080〜2460個のタンパク質スポットを同定した。疾患試料5つのうち少なくとも3つで発現変動を示したタンパク質スポットが39個あった(下方制御29個、上方制御10個)。疾患試料における最大差は、3.1倍の上方制御及び3.1倍の下方制御であった。
正常な妊娠結果を有する正常な妊婦と、その後に満期産の重度子癇前症を発症した妊婦とから採取した試料の比較で、ゲル上で2130〜2380個のタンパク質スポットを同定した。疾患試料5つのうち少なくとも3つで発現変動を示したタンパク質スポットが20個あった(下方制御11個、上方制御9個)。疾患試料における最大差は、3.9倍の上方制御及び4.5倍の下方制御であった。
調製段階では、正常な妊娠結果を有する正常な妊婦と、その後に早産の重度子癇前症を発症した妊婦とから採取した試料の比較で、ゲル上で約2380個のタンパク質スポットを同定した。早産の子癇前症において先に同定された39個の発現変動から29個(下方制御25個、上方制御4個)を同定し、ゲルから切り出した。
正常な妊娠結果を有する正常な妊婦と、その後に満期産の重度子癇前症を発症した妊婦とから採取した試料の比較で、ゲル上で約2350個のタンパク質スポットを同定した。先に同定された20個の発現変動から18個(下方制御11個、上方制御7個)を同定し、ゲルから切り出した。
同定段階では、以下の発現変動タンパク質が同定できた。
Figure 2015522258
Figure 2015522258
それぞれの2つの比較において、これらの候補は、全疾患検体で発現変動を示し、倍率変化が高く、かつ、以下のp値が最高であったものから選択した:補体因子B、ゲルゾリンイソ型A前駆体、ホルネリン、フェチュインB、ヘモペキシン前駆体、及びアポリポタンパク質H前駆体。
別段の指示がない限り、成分の量、例えば分子量、反応条件などの特性を表す数字、ならびに明細書及び特許請求の範囲で用いられる数字は、すべての場合において、用語「約」で修飾されると理解されるべきである。したがって、それと反対の指示がない限り、明細書及び添付の特許請求の範囲で示される数値パラメーターは、本開示によって得ようとされる所望の特性に応じて変化する可能性のある近似値である。最低限でも、そして特許請求の範囲への均等論の適用を制限する試みとしてではなく、少なくとも各数値パラメーターは、報告された有効数字の数に照らして、かつ、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。発明の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメーターは近似値ではあるとはいえ、特定の実施例に示される数値は可能な限り正確に報告されている。しかしながら、いずれの数値も、本質的にそれぞれの試験測定に見られる標準偏差から生じる一定の誤差を含む。
本発明を説明する文脈で(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)使用される用語「a」、「an」、「the」及び類似の指示対象は、本明細書において別段の指示がない限り、または明らかに文脈と矛盾しない限り、単数形と複数形の両方を包含する。本明細書における値の範囲の列挙は、その範囲内に入るそれぞれ別個の値を個々に言及する簡便な方法として機能することを意図しているにすぎない。本明細書において別段の指示がない限り、それぞれ別個の値は、それが個々に本明細書に列挙されているものとして明細書に組み込まれる。本明細書において別段の指示がない限り、または明らかに文脈と矛盾しない限り、本明細書に記載のすべての方法は、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で記載されるすべての例示または例示的な文言(例えば、「〜などの」)は、本発明をより明らかにすることを意図しているにすぎず、特に本発明の特許請求の範囲を限定するものではない。明細書中のいかなる文言も、任意の非請求要素が本発明の実施に必要であると示すものではない。
本明細書に開示される発明の代替的な要素または実施形態のグループ分けは、制限ではない。各グループの構成物は、個別に、または本明細書中にあるグループの他の構成物もしくは他の要素との任意の組み合わせで言及または請求されてよい。予想されるように、グループの1つまたは複数の構成物が、便宜及び/または特許性を理由として、グループに包含、またはグループから削除されてもよい。そのような包含または削除が生じた場合、本明細書は添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマルクーシュグループの記載を満たすように改変されたグループを含むとみなされる。
本発明の特定の実施形態は、発明を実施するために発明者に既知の最良の態様を含め、本明細書中に記載されている。当然ながら、記載されたこれらの実施形態の変形は、前述の説明を読むことにより当業者に明らかとなる。発明者は、当業者がそのような変形を適宜採用することを予期し、本発明が本明細書に具体的に記載した以外の方法で実施されることを予定している。したがって、本発明は、適用法によって認められているように、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載された主題のすべての改変及び均等物を含む。さらに、本明細書において別段の指示がない限り、または明らかに文脈と矛盾しない限り、すべての可能な変形における前述の要素の任意の組み合わせが本発明に包含される。
本明細書に開示された具体的な実施形態は、「〜から成る」または「本質的に〜からなる」という文言を用いて特許請求の範囲に限定することができる。特許請求の範囲で使用する場合、出願であるか補正として追加するかにかかわらず、「〜から成る」という用語は、特許請求の範囲において指定されていない任意の要素、手順または成分を除外する。「本質的に〜から成る」という用語は、特許請求の範囲を、基本的で新規な特性に実質的に影響しない特定の材料または手順などに制限する。そのように請求された発明の実施形態は、本質的にまたは明示的に本明細書に記載及び本明細書で使用可能である。
さらに、本明細書を通して、特許及び刊行物に対して数多くの参照指示がなされている。上記に引用した参考文献及び刊行物はそれぞれ、参照によりその全体が個々に本明細書に援用される。最後に、本明細書に開示された本発明の実施形態は、本発明の原理を例示するものである。採用される可能性のある他の改変は、本発明の範囲内にある。したがって、一例として、ただしこれに限定されないが、本発明の代替的な構成は、本明細書の教示に従って利用することができる。したがって、本発明は、厳密に図示及び説明されるものに限定されない。

Claims (17)

  1. 女性における子癇前症/HELLP症候群の有無またはリスクを評価し、治療計画の必要性を判断する方法であって、
    前記女性から採取した生体試料中の補体因子B;ゲルゾリンイソ型A前駆体;ホルネリン、フェチュインB;ヘモペキシン前駆体;アポリポタンパク質H前駆体;fms関連チロシンキナーゼ1;ヒドロキシステロイド(17−β)デヒドロゲナーゼ1;レプチン;可溶性ガラクトシド結合性レクチン14;パッパリシン2または胎盤特異性遺伝子1の1つまたは複数のレベルを測定する手順;
    前記測定されたレベルに基づいてデータセットを作成する手順;
    前記データセットに基づいて前記女性における子癇前症の有無または発症リスクを評価する手順;
    前記子癇前症の有無またはリスクの評価に基づいて治療計画を決定する手順;を有する
    ことを特徴とする方法。
  2. 女性における子癇前症の有無またはリスクを評価し、治療計画の必要性を判断する方法であって、
    前記女性から採取した生体試料中の補体因子B、ホルネリン、ヘモペキシン前駆体、ヒドロキシステロイド(17−β)デヒドロゲナーゼ1、可溶性ガラクトシド結合性レクチン14、またはパッパリシン2の1つまたは複数のレベルを測定する手順;
    前記測定されたレベルに基づいてデータセットを作成する手順;
    前記データセットに基づいて前記女性における子癇前症の有無または発症リスクを評価する手順;
    前記子癇前症の有無またはリスクの評価に基づいて治療計画を決定する手順;を有する
    ことを特徴とする方法。
  3. 子癇前症/HELLP症候群に密接に関連した妊娠初期の合併症(女性における着床不全、切迫流産、自然流産に限定されない)のリスクを評価し、治療計画の必要性を判断する方法であって、
    前記女性から採取した生体試料中の補体因子B;ゲルゾリンイソ型A前駆体;ホルネリン、フェチュインB;ヘモペキシン前駆体;アポリポタンパク質H前駆体;fms関連チロシンキナーゼ1;ヒドロキシステロイド(17−β)デヒドロゲナーゼ1;レプチン;可溶性ガラクトシド結合性レクチン14;パッパリシン2または胎盤特異性遺伝子1の1つまたは複数のレベルを測定する手順;
    前記測定されたレベルに基づいてデータセットを作成する手順;
    前記データセットに基づいて前記女性における子癇前症の有無または発症リスクを評価する手順;
    前記子癇前症の有無またはリスクの評価に基づいて治療計画を決定する手順;を有する
    ことを特徴とする方法。
  4. 前記分析手順が、少なくとも3つのバイオマーカーのレベルについて実施される
    請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記試料が血液試料である
    請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記試料がその他の体液、分泌物または排泄物(子宮頸膣液、唾液、尿に限らない)試料である
    請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
  7. 前記試料が羊水試料である
    請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
  8. 前記試料が侵襲的または非侵襲的に採取した胎児細胞である
    請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
  9. 前記試料が胎盤試料である
    請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
  10. 前記生体試料が、妊娠20週より前に、妊娠19週より前に、妊娠18週より前に、妊娠17週より前に、妊娠16週より前に、妊娠15週より前に、妊娠14週より前に、妊娠13週より前に、妊娠12週より前に、妊娠11週より前に、妊娠10週より前に、妊娠9週より前に、妊娠8週より前に、妊娠7週より前に、妊娠6週より前に、または分娩後に採取される
    請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
  11. 前記治療計画が治療介入である
    請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
  12. 前記治療介入は前記女性及び/または胎児に症状が顕在化する前に、子癇前症の症状を予防または軽減する
    請求項11に記載の方法。
  13. 女性における子癇前症の有無またはリスクを評価し、治療計画の必要性を判断するキットであって、
    前記女性から採取した生体試料中の補体因子B;ゲルゾリンイソ型A前駆体;ホルネリン、フェチュインB;ヘモペキシン前駆体;アポリポタンパク質H前駆体;fms関連チロシンキナーゼ1;ヒドロキシステロイド(17−β)デヒドロゲナーゼ1;レプチン;可溶性ガラクトシド結合性レクチン14;パッパリシン2または胎盤特異性遺伝子1の1つまたは複数のレベルを測定する検出機構;(i)前記測定されたレベルに基づいてデータセットを作成する方法;(ii)前記データセットに基づいて前記女性における子癇前症の有無または発症リスクを評価する方法;ならびに(iii)前記子癇前症の有無またはリスクの評価に基づいて治療計画を決定する方法の指示を含む
    ことを特徴とするキット。
  14. 女性における子癇前症の有無またはリスクを評価し、治療計画の必要性を判断するキットであって、
    前記女性から採取した生体試料中の補体因子B、ホルネリン、ヘモペキシン前駆体、ヒドロキシステロイド(17−β)デヒドロゲナーゼ1、可溶性ガラクトシド結合性レクチン14、またはパッパリシン2の1つまたは複数のレベルを測定する検出機構;(i)前記測定されたレベルに基づいてデータセットを作成する方法;(ii)前記データセットに基づいて前記女性における子癇前症の有無または発症リスクを評価する方法;ならびに(iii)前記子癇前症の有無またはリスクの評価に基づいて治療計画を決定する方法の指示を含む
    ことを特徴とするキット。
  15. 前記キットが少なくとも3つのバイオマーカーの検出機構を含む
    請求項13または14に記載のキット。
  16. 前記キットが、請求項13または14に記載のすべてのマーカーの検出機構を含む
    請求項13または14に記載のキット。
  17. 前記キットが、請求項13または14に記載の少なくとも1つのマーカーの検出機構を含む
    請求項13または14に記載のキット。
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