定義
特許請求の範囲の発明の主題をより明確に、かつ、簡潔に記載及び指摘するために、下記の定義が、下記説明及び本明細書に添付の特許請求の範囲に使用される特定の用語について提供される。
単数形の「a」、「an」及び「the」は、明確に反対に指示しない限り、複数の指示対象を含む。明細書及び特許請求の範囲全体を通して本明細書で使用する時、近似の言い回しが、それに関連する基本的な機能に変化をもたらすことなく許容される方法で変化し得る、任意の同等の表現を修飾するのに適用されてもよい。したがって、「約」等の用語で修飾される値は、特定された正確な値に限定されない。特に断らない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用される成分の量、特性、例えば、分子量、反応条件等を表す全ての数は、「約」という用語により全ての状況において、修飾されていると理解されたい。したがって、反対に指示しない限り、下記の明細書及び添付の特許請求の範囲で説明される数値パラメータは、本発明の実施形態により得るための所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも各数値パラメータは、報告された有効数字の数値を考慮し、通常の四捨五入法を適用することにより、少なくとも解釈されるべきである。
本明細書で使用する時、「固体支持体」という用語は、その上に生物学的試料が固定化され得る物品を意味する。タンパク質及び標的核酸配列は、本明細書に開示の方法により、続いて検出されてもよい。生物学的試料は、物理的吸着、共有結合の形式又はそれらの組み合わせにより固体支持体上に固定化されてもよい。固体支持体は、ポリマー、ガラス又は金属の材料を含んでもよい。固体支持体の例としては、膜、マイクロタイタープレート、ビーズ、フィルタ、試験片、スライド、カバーガラス及び試験管があげられる。
本明細書で使用する時、「蛍光マーカー」という用語は、特定の細胞内区画を選択的に染色する蛍光体を意味する。適切な蛍光マーカー(及びその標的細胞、細胞内区画又は該当する場合細胞成分)の例は、制限されず、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)(核酸)、エオシン(アルカリ性細胞成分、細胞質)、ヘキスト33258及びヘキスト33342(2つのビスベンズイミド)(核酸)、ヨウ化プロピジウム(核酸)、キナクリン(核酸)、フルオレセイン−ファロイジン(アクチン繊維)、クロモマイシンA3(核酸)、アクリフラビン−フォイルゲン反応(核酸)、オーラミン O−フォイルゲン反応(核酸)、臭化エチジウム(核酸)を含んでもよい。ニッスル染色(ニューロン)、高親和性DNA蛍光体、例えば、POPO、BOBO、YOYO及びTOTO等及びDNA結合タンパク質(例えば、ヒストン)に融合された緑色蛍光タンパク質、ACMA及びアクリジンオレンジ。好ましくは、蛍光マーカーは、核を染色する。
本明細書で使用する時、「蛍光体」という用語は、特定の波長の光に暴露されることにより励起され、(異なる波長で)光を発する化合物を意味する。「蛍光(fluorescence)」、「蛍光の(fluorescent)」又は「蛍光信号(fluorescent signal)」という用語は全て、励起された蛍光体による光の放射を意味する。蛍光体は、その発光プロファイル又は「色」に関して記載され得る。緑色の蛍光体(例えば、Cy3、FITC及びレオゴングリーン)は、一般的に、515〜540ナノメートルの範囲における波長での、その発光により特徴付けられ得る。赤色の蛍光体(例えば、テキサスレッド、Cy5及びテトラメチルローダミン)は、一般的に、590〜690ナノメートルの範囲における波長での、その発光により特徴付けられ得る。蛍光体の例としては、制限されず、4−アセトアミド−4’−イソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、アクリジン、アクリジンの誘導体及びアクリジンイソチオシアネート、5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸(EDANS)、4−アミノ−N−[3−ビニルスルホニル)フェニル]ナフタルイミド−3,5−ジスルホネート(Lucifer Yellow VS)、N−(4−アミノ−1−ナフチル)マレイミド、アントラニルアミド、Brilliant Yellow、クマリン、クマリン誘導体、7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC、クマリン120)、7−アミノ−トリフルオロメチルクマリン(クマラン151)、シアノシン、4’,6−ジアミニジノ−2−フェニルインドール(DAPI)、5’,5”−ジブロモピロガロール−スルホンフタレイン(ブロモピロガロールレッド)、7−ジエチルアミノ−3−(4’−イソチオシアナトフェニル)4−メチルクマリン、4,4’−ジイソチオシアナトジヒドロ−スチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4,4’−ジイソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、5−[ジメチルアミノ]ナフタレン−1−スルホニルクロリド(DNS、ダンシルクロリド)、エオシン、エオシンの誘導体、例えば、エオシンイソチオシアネート、エリスロシン、エリスロシンの誘導体、例えば、エリスロシンB及びエリスロシンイソチオシアネート;エチジウム;フルオレセイン及び誘導体、例えば、5−カルボキシフルオレセイン(FAM)、5−(4,6−ジクロロトリアジン−2−イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’7’−ジメトキシ−4’5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、QFITC(XRITC);フルオレスカミン誘導体(アミンとの反応に基づく蛍光);IR144;IR1446;マラカイトグリーンイソチオシアネート;4−メチルウンベリフェロン;オルトクレゾールフタレイン;ニトロチロシン;パラロサニリン;フェノールレッド、B−フィコエリスリン;o−フタルジアルデヒド誘導体(アミンとの反応に基づく蛍光);ピレン及び誘導体、例えば、ピレン、プレンブチレート及びスクシンイミジル 1−ピレンブチレート;レアクティブレッド4(Cibacron.RTM.ブリリアントレッド3B−A)、ローダミン及び誘導体、例えば、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、6−カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、スルホローダミンB、スルホローダミン101及びスルホローダミン101のスルホニルクロリド誘導体(テキサスレッド);N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA);テトラメチルローダミン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC);リボフラビン;ロゾール酸及びランタニドキレート誘導体、量子ドット、シアニン及びスクアラインがあげられる。一部の実施形態では、蛍光体は、例えば、免疫蛍光分析における抗体に付着され得る蛍光体を、本質的に含んでもよい。抗体にコンジュゲートされ得る適切な蛍光体としては、制限されず、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、Cy2、Cy3、Cy5、ベクターレッド、ELF.TM.(酵素標識されたフルオレセイン)、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy7、FluorX、カルセイン、カルセイン−AM、CRYPTOFLUOR.TM.’S,オレンジ(42kDa)、タンジェリン(35kDa)、ゴールド(31kDa)、レッド(42kDa)、クリムゾン(40kDa)、BHMP、BHDMAP、Br−オレゴン、Lucifer Yellow、Alexa染料ファミリー、N−[6−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ]カプロイル](NBD)、BODIPY、ホウ素ジプロメテンジフルオリド、オレゴングリーン、MITOTRACKER,レッド、DiOC.sub.7(3)、DiIC.sub.18、フィコエリスリン、フィコビリプロテイン BPE(240kDa)RPE(240kDa)CPC(264kDa)APC(104kDa)、スペクトルブルー、スペクトルアクア、スペクトルグリーン、スペクトルゴールド、スペクトルオレンジ、スペクトルレッド、NADH、NADPH、FAD、赤外(IR)染料、サイクリックGDP−リボース(cGDPR)、カルコフロールホワイト、リサミン、ウンベリフェロン、チロシン又はトリプトファンがあげられる。一部の実施形態では、蛍光体は、シアニン染料を本質的に含み得る。一部の実施形態では、蛍光体は、1つ以上のシアニン染料(例えば、Cy3染料、Cy5染料又はCy7染料)を本質的に含み得る。
本明細書で使用する時、「抗体」という用語は、別の分子の特定の空間及び極性組織と特異的に結合し、それにより、相補として規定される免疫グロブリンを意味する。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルでもよく、当該分野において周知の技術、例えば、宿主の免疫感作及び血清の収集(ポリクローナル)により、又は連続的なハイブリッド細胞株の調製及び分泌タンパク質の収集(モノクローナル)により、又は核酸配列もしくはその変異誘導された変異体のクローニング及び発現、天然の抗体の特異的結合に必要とされるアミノ酸配列を少なくともコードすることにより調製されてもよい。抗体は、完全な免疫グロブリン又はそのフラグメントを含み得る。免疫グロブリンとしては、種々の分類及びアイソタイプ、例えば、IgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2a、IgG2b及びIgG3、IgMがあげられる。機能性の抗体フラグメントは、全長の抗体と類似の親和性で結合することを保持可能な抗体の部分(例えば、Fab、Fv及びF(ab’)2又はFab’)を含み得る。さらに、免疫グロブリンの凝集体、ポリマー及びコンジュゲート又はそれらのフラグメントが、特定の分子に対する結合親和性が実質的に維持される限り適切であるように使用され得る。
本明細書で使用する時、「標的」は、一般的には、生物学的試料に存在する場合に検出され得る、生物学的試料の成分を意味する。標的は、天然の特異的バインダー(例えば、抗体)が存在する任意の物質でもよいし、又は特異的バインダーが調製されてもよい(例えば、小分子バインダー)。一般的には、バインダーは、標的の1つ以上の別々の化学部分又は標的の三次元構造成分(例えば、ペプチドフォールディング由来の3D構造)を介して、標的に結合し得る。標的は、1つ以上のペプチド、タンパク質(例えば、抗体、アフィボディもしくはアプタマー)、核酸(例えば、ポリヌクレオチド、DNA、RNAもしくはアプタマー);多糖類(例えば、レクチンもしくは糖)、脂質、酵素、酵素基質、リガンド、受容体、抗原又はハプテンを含んでもよい。一部の実施形態では、標的は、タンパク質又は核酸を含んでもよい。
本明細書で使用する時、「バインダー」という用語は、生物学的試料における1つ以上の標的に結合し得る生物学的分子を意味する。バインダーは、標的に特異的に結合し得る。適切なバインダーは、1つ以上の天然又は修飾ペプチド、タンパク質(例えば、抗体、アフィボディもしくはアプタマー)、核酸(例えば、ポリヌクレオチド、DNA、RNAもしくはアプタマー);多糖類(例えば、レクチン、糖)、脂質、酵素、酵素基質もしくは阻害剤、リガンド、受容体、抗原、ハプテン等を含んでもよい。適切なバインダーは、分析される試料及び検出に利用可能な標的に応じて選択され得る。例えば、試料における標的は、リガンドを含んでもよく、バインダーが受容体を含んでもよいし、又は標的が受容体を含んでもよいし、プローブがリガンドを含んでもよい。同様に、標的が抗原を含んでもよいし、バインダーが抗体もしくは抗体フラグメントを含んでもよいし、又はその逆でもよい。一部の実施形態では、標的が核酸を含んでもよいし、バインダーが相補の核酸を含んでもよい。一部の実施形態では、標的及びバインダーの両方が、互いに結合可能なタンパク質を含んでもよい。
本明細書で使用する時、「特異的結合」という用語は、他の分子を実質的にほとんど無認識と比較される他方に対して、2つの異なる分子の内の1つの特異的な認識を意味する。分子は、静電相互作用、水素結合又は疎水性相互作用の1つ以上から生じる2つの分子間の特異的認識をもたらす、その表面上又はキャビティ内の領域を有してもよい。特異的な結合の例としては、制限されず、抗体−抗原相互作用、酵素−基質相互作用、ポリヌクレオチド相互作用等があげられる。一部の実施形態では、バインダー分子は、標的に対して、大気条件(すなわち、約6から約8のpH及び約0℃から約37℃の範囲の温度)下において、約105M-1以上の固有平衡会合定数(KA)を有してもよい。
本明細書で使用する時、「インサイツ」という用語は、一般的に、元の位置、例えば、インタクトの器官もしくは組織又は器官もしくは組織の代表的なセグメントにおいて生じる事象を意味する。一部の実施形態では、標的のインサイツ分析は、各種の供給源、例えば、生物、器官、組織試料又は細胞培養由来の細胞において行われてもよい。In situ分析は、元のその場所から標的が除去された場合、失われる場合がある前後関係の情報を提供する。したがって、標的のインサイツ分析は、標的結合プローブが細胞内に残存する場合に、細胞膜が完全に無傷であるか、又は部分的に無傷であるかどうかについての、細胞全体又は組織の試料内に位置局在する標的結合プローブの分析を説明する。さらに、本明細書に開示の方法は、固定又は非固定の細胞又は組織の試料における、インサイツでの標的を分析するのに使用されてもよい。
「化学薬品」は、蛍光体又は(存在する場合)蛍光体とバインダーとの間の開裂可能なリンカーを修飾可能な、1つ以上の化学物質を含んでもよい。化学薬品は、固体、溶液、ゲル又は懸濁液の状態で、蛍光体と接触してもよい。信号を修飾するのに有用な適切な化学薬品としては、pHを修飾する薬剤(例えば、酸又は塩基)、電子供与体(例えば、求核試薬)、電子受容体(例えば、求電子試薬)、酸化剤、還元剤又はそれらの組み合わせがあげられる。一部の実施形態では、化学薬品は、塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アルミニウム、炭酸カリウム又は酢酸ナトリウムを含んでもよい。一部の実施形態では、化学薬品は、酸、例えば、塩酸、硫酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸又はジクロロ酢酸を含み得る。一部の実施形態では、化学薬品は、求核試薬、例えば、シアン化物、ホスフィン又はチオールを含み得る。一部の実施形態では、化学薬品は、還元剤、例えば、ホスフィン、チオール、ジチオニトナトリウム又は水の存在下で使用され得る水素化物、例えば、ホウ化水素又はシアノホウ化水素を含み得る。一部の実施形態では、化学薬品は、酸化剤、例えば、活性酸素種、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素、過酸化水素又はオゾンを含み得る。一部の実施形態では、化学薬品は、フッ化物、例えば、フッ化テトラブチルアンモニウム、ピリジン−HF又はSiF4を含み得る。
1つ以上の前述の化学薬品は、化学薬品に対する、蛍光体、バインダー、標的又は生物学的試料の感受性に応じて、本明細書に開示の方法に使用されてもよい。一部の実施形態では、バインダー、標的及び生物学的試料の完全性に本質的に影響を及ぼさない化学薬品が使用され得る。一部の実施形態では、バインダーと標的との間の結合の特異性に影響を与えない化学薬品が使用され得る。
一部の実施形態では、2つ以上の蛍光体が同時に使用される場合、化学薬品は、1つ以上の信号発生器を選択的に修飾可能でもよい。化学薬品に対する種々の信号発生器の感受性は、信号発生器の濃度、温度又はpHに一部依存し得る。例えば、2つの異なる蛍光体は、塩基の濃度に応じて塩基に対する異なる感受性を有し得る。
本明細書で使用する時、「明視野型画像」又は「バーチャル染色画像」(VSI)という用語は、明視野染色プロトコルから得られた画像のそれに類似する生物学的試料の画像を意味する。画像は、明視野画像と類似するコントラスト、強度及び着色を有する。このことは、生物学的試料、例えば、制限されず、核、上皮、間質内の特徴又は任意の種類の細胞外マトリクス材料の特徴を、明視野染色プロトコルが生物学的試料に直接使用された場合と同じように特徴付けることを可能にする。
本発明の全体的な説明
本発明は、概ね、免疫蛍光検出を、蛍光系核酸分析と組み合わせる、分析的、診断的又は予後的用途に適用可能な方法に関する実施形態を含む。本開示の方法は、概ね、1つの生物学的試料から、異なる種類の標的(すなわち、タンパク質及び核酸)の検出及び相関に関する。一部の実施形態では、同じ検出チャネルを使用して、同じ種類(すなわち、タンパク質又は核酸のそれぞれ)の複数の標的を検出する方法が開示される。このような実施形態では、相間は、複数の異なる種類の標的の間で描かれ得る。
本明細書に開示の方法は、生物学的試料の完全性にほとんど作用しない、又は同完全性に作用しない、同じ生物学的試料における複数の標的の検出を可能にし得る。同じ生物学的試料における標的を検出することは、生物学的試料における標的についての相対的、空間的情報をさらに提供してもよい。本明細書に開示の方法は、限定された量の生物学的試料が分析に利用可能である場合、及び同じ試料が複数の分析について処理されなければならない場合の、分析用途にも適用可能であり得る。さらに、同じ検出チャネルは、複数の標的の分析についてのわずかな化学要求を可能にして、試料における種々の標的の検出に使用されてもよい。本方法は、分解可能な信号の制限のために、同時に検出可能な標的の数において制限され得る検出法に基づく分析をさらに容易にし得る。
一部の実施形態では、生物学的試料における複数の標的を検出する本方法は、生物学的試料における標的の連続的な検出を含む。本方法は、概ね、生物学的試料における第1の標的を検出する工程、任意に、第1の標的からの信号を修飾する工程、及び生物学的試料における第2の標的を検出する工程を含む。本方法は、第1又は第2の標的からの信号を修飾する工程を繰り返し、続けて、生物学的試料における異なる標的を検出する工程等を、さらに含んでもよい。
したがって、本発明の一態様では、生物学的試料における所望の領域の画像を生成するための方法であって、(1)第1のプロトコルを受けているが、第2のプロトコルを受けていない、生物学的試料の所望の領域を含む第1の画像を生成する工程、及び(2)第2のプロトコルを受けた後の、生物学的試料の所望の領域を含む第2の画像を生成する工程を含み、所望の領域が、試料より小さい方法が提供される。一部の実施形態では、所望の領域は、所定の規準に対して、生物学的試料の第1の画像を比較することにより選択される。ある実施形態では、第1のプロトコルは、標的タンパク質の免疫蛍光検出を含む。ある実施形態では、第2のプロトコルは、プローブを標的核酸配列とハイブリダイズさせることによる、少なくとも1つの標的核酸配列の蛍光検出を含む。他の実施形態では、第2のプロトコルは、異なる標的タンパク質の免疫蛍光検出を含む。ある実施形態では、本方法は、第1及び第2の画像それぞれからの少なくとも所望の領域を含む合成画像を生成する工程をさらに含む。一部の実施形態では、合成画像は、第2の画像の生成中に取得された、選択された信号の位置と共に、第1の画像の生成中に取得された、選択された信号の位置を登録する工程を含む方法により生成される。ある実施形態では、選択された信号の位置は、所望の領域内からである。
ある実施形態では、第1又は第2のプロトコルは、形態学的情報を提供する蛍光マーカーで、試料を染色することを含む。
ある実施形態では、第1又は第2のプロトコルは、生物学的試料の自己蛍光を検出することを含む。
ある実施形態では、第1及び第2の画像は、蛍光画像である。
本発明の別の態様では、生物学的試料の画像を生成する方法であって、(1)第1のプロトコルが生物学的試料に行われた後で、第2のプロトコルが生物学的試料に行われる前に、生物学的試料の第1の画像を生成する工程、及び(2)第2のプロトコルが生物学的試料の所望の領域に行われた後の、試料の所望の領域をイメージングする工程を含み、所望の領域が試料より小さい方法が提供される。好ましくは、工程(2)は、第2の画像の生成を含む。
本発明の別の態様では、生物学的試料をイメージングする方法であって、(1)第1のプロトコルを行った後であるが、それについての第2のプロトコルを行う前に、生物学的試料の第1の画像を生成する工程、及び(2)第2のプロトコルを所望の領域に行った後の、試料の所望の領域の第2の画像を生成する工程を含み、所望の領域が試料より小さい方法が提供される。
ある実施形態では、第1の画像を生成するための方法は、(a)固体支持体上の試料を、標的タンパク質用の第1のバインダーと接触させる工程、(b)形態学的情報を提供する蛍光マーカーで、試料を染色する工程、(c)第1のバインダー及び蛍光マーカーからの信号を、蛍光により検出する工程、(d)検出した蛍光信号から、試料の少なくとも一部の第1の画像を生成する工程を含む。
ある実施形態では、生物学的試料における第2の画像を生成するための方法は、(a)同じ試料を、少なくとも1つの標的核酸配列のそれぞれについてのプローブと接触させることにより、プローブを標的核酸配列とハイブリダイズさせる工程、(b)任意に、蛍光マーカーにより試料を染色する工程、(c)標的核酸配列のそれぞれについてのプローブ及び蛍光マーカーからの信号を、蛍光により検出する工程、並びに(d)検出した蛍光信号から、試料の少なくとも一部の第2の画像を生成する工程を含む。
他の実施形態では、生物学的試料における第2の画像を生成するための方法は、(a)固体支持体上の試料を、異なる標的タンパク質用の第2のバインダーと接触させる工程、(b)任意に、蛍光マーカーで、試料を染色する工程、(c)第2のバインダー及び蛍光マーカーからの信号を、蛍光により検出する工程、(d)検出した蛍光信号から、試料の少なくとも一部の第2の画像を生成する工程を含む。
ある実施形態では、本方法は、第1の画像の生成及び第2の画像の生成において取得される信号情報を使用して、合成画像を生成する工程を含む、合成画像を生成する工程をさらに含む。ある実施形態では、合成画像を生成する工程は、第2の画像で取得された蛍光マーカーからの信号の位置と共に、第1の画像で取得された蛍光マーカーからの信号の位置を登録する工程を含む。
ある実施形態では、検出した蛍光信号から、試料の少なくとも一部の第1の画像を生成する工程(d)は、(i)検出した蛍光信号から、試料の少なくとも一部の最初の画像を生成する工程、及び(ii)最初の画像から所望の領域を選択し、少なくとも第1のバインダー及び蛍光マーカーからの信号を蛍光により検出して、最初の画像より高い解像度で第1の画像を生成する工程を含む。ある実施形態では、合成画像は、より高い解像度の画像及び第2の画像からの信号情報を組み合わせることにより生成される。他の実施形態では、合成画像は、第2の画像における蛍光マーカーからの信号の位置と共に、より高い解像度の画像における蛍光マーカーからの信号の位置を登録する工程を含む方法により生成される。さらに他の実施形態では、合成画像の生成は、第2の画像で取得された蛍光マーカーからの信号の位置と共に、第1の画像で取得された蛍光マーカーからの信号の位置を登録する工程を含む。
特定の実施形態では、本方法は、1つ以上のマーカー及び蛍光マーカー(例えば、DAPI)染色についての免疫蛍光により染色されている、ホルマリン固定された、パラフィン包埋組織試料の第1の低拡大画像を生成する工程、低拡大画像からバーチャルH&E又はバーチャルDABの画像を生成し、それらを使用して、染色強度又は形態に基づいて所望の領域を選択する工程、FISH及び蛍光マーカー染色により染色されている試料の第2の画像を生成する工程、合成画像を生成するために、蛍光マーカー染色を座標として使用して得られた共通画像に基づいて、画像の重ね合わせ又は登録をする工程を含む。ある実施形態では、本方法は、画像を分析して、個々の細胞におけるタンパク質発現及び標的核酸配列の量を測定する工程をさらに含む。
生物学的試料
本発明の一実施形態に基づく生物学的試料は、固体でもよいし、又は流体でもよい。生物学的試料は、生物学的対象から取得された試料、例えば、生物学的組織又はin vivoもしくはin vitroで取得された流体由来の試料を意味する。生物学的試料の適切な例は、制限されず、血液、唾液、脳脊髄液、胸膜液、乳、リンパ液、痰、精液、尿、糞便、涙、針穿刺吸引物、皮膚の外部切片、呼気、腸管及び尿生殖器管、腫瘍、器官、細胞培養又は固体状の組織切片を含んでもよい。一部の実施形態では、生物学的試料は、そのまま、すなわち、所望の標的の収集及び/又は単離をすることなく分析されてもよい。別の実施形態では、試料の収集は、分析前に行われてもよい。一部の実施形態では、本明細書に開示の方法は、生物学的試料のin vitro分析に特に適していてもよい。生物学的試料は、固体支持体上、例えば、ガラススライド、マイクロタイター又はELISAプレートに固定されてもよい。
生物学的試料は、その物理的条件、例えば、制限されず、凍結されている、もしくは、染色されている、又は別の方法で処理されているかに関わらず、前述の試料のいずれかを含み得る。一部の実施形態では、生物学的試料は、本質的に天然に試料と混合されていない化合物、保存剤、抗凝集剤、バッファー、媒染剤、中和剤、抗生物質等を含んでもよい。
生物学的試料は、原核生物由来又は真核生物由来(例えば、昆虫、原虫、鳥類、魚類、爬虫類)のものでもよい。一部の実施形態では、生物学的試料は、哺乳類(例えば、ラット、マウス、ウシ、イヌ、ロバ、モルモット又はウサギ)である。ある実施形態では、生物学的試料は、霊長類由来(例えば、チンパンジー又はヒト)のものである。
一部の実施形態では、生物学的試料は、組織試料、細胞全体、細胞構成物、サイトスピン又は細胞シミアを含んでもよい。一部の実施形態では、生物学的試料は、本質的に、組織試料を含む。組織試料は、類似の機能を有し得る生物学的対象の組織から取得された類似の細胞の収集物を含んでもよい。一部の実施形態では、組織試料は、ヒトの組織から取得された類似の細胞の収集物を含んでもよい。ヒトの組織の適切な例としては、制限されず、(1)上皮;(2)結合組織、例えば、血管、骨及び軟骨;(3)筋肉組織;並びに(4)神経組織があげられる。組織試料の供給源は、新鮮、凍結及び/又は保存された器官もしくは組織の試料又は生研もしくは吸引物から取得された固形組織;血液もしくは任意の血液構成物;体液、例えば、脳骨髄液、羊水、腹腔液もしくは間質液;又は対象の妊娠又は発育における任意のタイミングでの細胞であり得る。一部の実施形態では、組織試料は、初代細胞もしくは培養細胞又は細胞株を含んであり得る。
組織試料は、各種の手法、例えば、制限されず、外科的切除、吸引又は生研により取得されてもよい。一部の実施形態では、組織試料は、パラフィンに固定及び包埋されてもよい。組織試料は、従来の方法により固定又は別の方法で保存されてもよい。媒染剤の選択は、組織が組織学的に染色されるか、又は別の方法で分析されるための目的により決定され得る。固定の長さは、組織試料のサイズ及び使用される媒染剤により決まってもよい。例えば、中性に緩衝されたホルマリンであるBouin’s又はパラホルムアルデヒドが、組織試料を固定又は保存するのに使用されてもよい。
一部の実施形態では、生物学的試料は、正常又はガン由来の組織切片、例えば、結腸、乳房、前立腺、肺、肝臓及び胃由来の組織切片を含む。組織切片は、組織試料の一部分又は断片、例えば、組織の薄いスライス又は組織試料からの切断された細胞を含んでもよい。一部の実施形態では、組織試料の複数の切片が取得され、分析に供されてもよい。ただし、本明細書に開示の方法は、少なくとも2つの異なる標的(すなわち、これらの内の1つは、タンパク質由来であり、もう一方は核酸由来である)に関する組織試料の同じ切片の分析に使用され得る。生物学的試料として使用される場合、組織切片は、約100マイクロメートル未満の範囲、約50マイクロメートル未満の範囲、約25マイクロメートル未満の範囲、又は約10マイクロメートル未満の範囲の厚みを有してもよい。
標的タンパク質
本発明の実施形態に基づく標的タンパク質は、生物学的試料の表面上に存在してもよいし(例えば、組織切片の表面上の抗原)、又は試料のバルクに存在してもよい(例えば、緩衝液における抗体)。一部の実施形態では、標的タンパク質は、本質的に、生物学的試料の表面上に存在しない場合があり、生物学的試料が、表面上に利用可能な標的タンパク質を生じるように、処理されなければならない場合がある。一部の実施形態では、標的タンパク質は、組織にあり、細胞表面上又は細胞内のいずれかにある場合がある。
分析される標的タンパク質の適切性は、生物学的試料に必要とされる分析の種類及び性質により決定され得る。一部の実施形態では、標的は、生物学的試料における検体の有無についての情報を提供してもよい。別の実施形態では、標的タンパク質は、生物学的試料の状態についての情報を提供してもよい。例えば、生物学的試料が組織試料を含む場合、本明細書に開示の方法は、異なる種類の細胞又は組織の比較、異なる発生段階の比較、疾患もしくは異常の存在の検出、又は疾患もしくは異常の種類の決定に役立ち得る標的タンパク質を検出するのに使用されてもよい。
適切な標的タンパク質は、1つ以上のペプチド、タンパク質(例えば、抗体、アフィボディもしくはアプタマー)、酵素、リガンド、受容体、抗原又はハプテンを含んでもよい。1つ以上の前述の標的タンパク質は、特定の細胞を特徴付け得る。一方、他の標的タンパク質は、特定の疾患又は症状に関連付けられる。一部の実施形態では、本明細書に開示の方法を使用して検出及び分析され得る組織試料における標的タンパク質は、制限されず、予後マーカー、予測マーカー、ホルモンもしくはホルモン受容体、リンパ球系、腫瘍マーカー、細胞周期関連マーカー、神経組織及び腫瘍マーカー又はクラスター分化マーカーを含んでもよい。
予後マーカーの適切な例は、酵素の標的、例えば、ガラクトシルトランスフェラーゼII、ニューロン特異エノラーゼ、プロトンATPase−2又は酸ホスファターゼを含んでもよい。予後タンパク質又は遺伝子マーカーの他の例としては、Ki67、サイクリンE、p53、cMetがあげられる。
予測マーカー(薬剤応答)の適切な例は、タンパク質又は遺伝子の標的、例えば、EGFR、Her2、ALKを含んでもよい。
ホルモン又はホルモン受容体の適切な例は、ヒト絨毛性性ホルモン(HCG)、副腎皮質刺激ホルモン、ガン胎児抗原(CEA)、前立腺特異抗原(PSA)、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、アンドロゲン受容体、gC1q−R/p33補体受容体、IL−2受容体、p75ニューロトロフィン受容体、PTH受容体、甲状腺ホルモン受容体又はインスリン受容体を含んでもよい。
リンパ球系の適切な例は、アルファ−1−アンチキモトリプシン、アルファ−1−アンチトリプシン、B細胞の標的、bcl−2、bcl−6、Bリンパ球抗原36kD、BM1(骨髄の標的)、BM2(骨髄の標的)、ガレクチン−3、グランザイムB、HLAクラスI抗原、HLAクラスII(DP)抗原、HLAクラスII(DQ)抗原、HLAクラスII(DR)抗原、ヒト好中球ディフェンシン、免疫グロブリンA、免疫グロブリンD、免疫グロブリンG、免疫グロブリンM、カッパー軽鎖、カッパー軽鎖、ラムダ軽鎖、リンパ球/組織球抗原、マクロファージ標的、ムラミダーゼ(リゾチーム)、p80未分化リンパ腫キナーゼ、形質細胞標的、分泌型白血球プロテアーゼ阻害剤、T細胞抗原受容体(JOVI 1)、T細胞抗原受容体(JOVI 3)、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ又は非クラスター化B細胞標的を含み得る。
腫瘍マーカーの適切な例は、アルファフェトプロテイン、アポリポタンパク質D、BAG−1(RAP46タンパク質)、CA19−9(sialyl lewisa)、CA50(ガン関連ムチン抗原)、CA125(卵巣ガン抗原)、CA242(腫瘍関連ムチン抗原)、クロモグラニンA、クラステリン(アポリポタンパク質J)、上皮膜抗原、上皮関連抗原、上皮特異抗原、乳腺嚢胞液タンパク質−15(gross cystic disease fluid protein−15)、肝細胞特異抗原、ヘレグリン、ヒト胃ムチン、ヒト乳脂肪球、MAGE−1、マトリクス メタロプロテイナーゼ、melan A、メラノーマ標的(HMB45)、メソテリン、メタロチオネイン、小眼球症転写因子(MITF)、Muc−1コア糖タンパク質、Muc−1糖タンパク質、Muc−2糖タンパク質、Muc−5AC糖タンパク質、Muc−6糖タンパク質、ミエロペルオキシダーゼ、Myf−3(横紋筋肉腫標的)、Myf−4(横紋筋肉腫標的)、MyoD1(横紋筋肉腫標的)、ミオグロビン、nm23タンパク質、胎盤アルカリホスファターゼ、プレアルブミン、前立腺特異抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、前立腺インヒビンペプチド、PTEN、腎細胞ガン標的、小腸ムチン抗原、テトラネクチン、甲状腺転写因子−1、マトリクス メタロプロテイナーゼ1の組織阻害剤、マトリクス メタロプロテイナーゼ2の組織阻害剤、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質−1、ビリン又はフォン・ヴィルブランド因子を含み得る。
細胞周期関連マーカーの適切な例は、アポトーシスプロテアーゼ活性化因子−1、bcl−w、bcl−x、ブロモデオキシウリジン、CAK(cdk−活性化キナーゼ)、細胞アポトーシス感受性タンパク質(CAS)、カスパーゼ2、カスパーゼ8、CPP32(カスパーゼ−3)、CPP32(カスパーゼ−3)、サイクリン依存性キナーゼ、サイクリンA,サイクリンB1、サイクリンD1、サイクリンD2、サイクリンD3、サイクリンE、サイクリンG、DNAフラグメント化因子(N−末端)、Fas(CD95)、Fas−関連死ドメインタンパク質、Fasリガンド、Fen−1、IPO−38、Mcl−1、ミニクロモゾーム維持タンパク質、ミスマッチ修復タンパク質(MSH2)、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ、増殖性細胞核抗原、p16タンパク質、p27タンパク質、p34cdc2、p57タンパク質(Kip2)、p105タンパク質、Stat 1アルファ、トポイソメラーゼI、トポイソメラーゼIIアルファ、トポイソメラーゼIIIアルファ又はトポイソメラーゼIIベータを含み得る。
神経組織及び腫瘍マーカーの適切な例は、アルファBクリスタリン、アルファ−インターネキシン、アルファ−シヌクレイン、アミロイド前駆体タンパク質、ベータアミロイド、カルビンジン、コリンアセチルトランスフェラーゼ、興奮性アミノ酸トランスポーター1、GAP43、グリア線維性酸性タンパク質、グルタミン酸塩受容体2、ミエリン塩基性タンパク質、神経増殖因子受容体(gp75)、繊維芽細胞種標的、神経フィラメント 68kD、神経フィラメント 160kD、神経フィラメント 200kD、ニューロン特異エノラーゼ、ニコチン性アセチルコリン受容体アルファ4、ニコチン性アセチルコリン受容体ベータ2、ペリフェリン、タンパク質遺伝子産物9、S−100タンパク質、セロトニン、SNAP−25、シナプシンI、シナプトフィシン、tau、トリプトファンヒドロキシラーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ又はユビキチンを含み得る。
クラスター分化マーカーの適切な例は、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD1e、CD2、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8アルファ、CD8ベータ、CD9、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CDw12、CD13、CD14、CD15、CD15s、CD16a、CD16b、CDw17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD32、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD39、CD40、CD41、CD42a、CD42b、CD42c、CD42d、CD43、CD44、CD44R、CD45、CD46、CD47、CD48、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、CD50、CD51、CD52、CD53、CD54、CD55、CD56、CD57、CD58、CD59、CDw60、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD64、CD65、CD65s、CD66a、CD66b、CD66c、CD66d、CD66e、CD66f、CD68、CD69、CD70、CD71、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CDw92、CDw93、CD94、CD95、CD96、CD97、CD98、CD99、CD100、CD101、CD102、CD103、CD104、CD105、CD106、CD107a、CD107b、CDw108、CD109、CD114、CD115、CD116、CD117、CDw119、CD120a、CD120b、CD121a、CDw121b、CD122、CD123、CD124、CDw125、CD126、CD127、CDw128a、CDw128b、CD130、CDw131、CD132、CD134、CD135、CDw136、CDw137、CD138、CD139、CD140a、CD140b、CD141、CD142、CD143、CD144、CDw145、CD146、CD147、CD148、CDw149、CDw150、CD151、CD152、CD153、CD154、CD155、CD156、CD157、CD158a、CD158b、CD161、CD162、CD163、CD164、CD165、CD166及びTCR−ゼータを含み得る。
他の適切な標的タンパク質としては、セントロメアタンパク質−F(CENP−F)、ギアンチン(giantin)、インボルクリン、ラミンA&C(XB 10)、LAP−70、ムチン、核孔複合体タンパク質、p180ラメラ体タンパク質、ran、カテプシンD、Ps2タンパク質、Her2−neu、P53、S100、上皮標的抗原(EMA)、TdT、MB2、MB3、PCNA、Ki67、サイトケラチン、PI3K、cMyc又はMAPKがあげられる。
さらに他の適切な標的タンパク質としては、Her2/neu(乳ガン及び胃ガンにおいて過剰発現された上皮増殖因子、モノクローナル抗体による治療は、腫瘍の増殖を遅延させる。);EGF−R/erbB(上皮増殖因子受容体);ER(一部の乳ガン腫瘍の増殖に必要とされ、核に局在し、陽性患者におけるエストロゲン制限治療を決定するためのISHにより検出されるエストロゲン受容体);PR(プロゲステロン受容体は、DNAに結合するホルモンである。);AR(アンドロゲン受容体は、アンドロゲン依存性腫瘍増殖に関与する。);β−カテニン(ガンにおけるガン遺伝子が細胞膜から核に移動し、細胞接着と潜在遺伝子調節タンパク質との両方に機能する。);ホスホ−β−カテニン;リン酸化(型のβ−カテニンが、細胞質ゾルにおいて分解し、核に移動しない。);GSK3β(Wnt経路におけるグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3βタンパク質は、前口動物における急速な分解についてのホスホ−β−カテニンを示すβ−カテニンをリン酸化する。);PKCβ(メディエータG−タンパク質結合受容体);NFKβ(核に移動した際の炎症についての核因子カッパーBマーカー);VEGF(血管新生に関連する血管内皮成長因子);E−カドヘリン(上皮細胞上に発現される細胞間の相互作用分子、その機能は、上皮ガンにおいて損なわれる。);c−met(チロシンキナーゼ受容体)があげられる。好ましい実施形態では、標的タンパク質は、HER2である。
標的核酸配列
本発明の実施形態に基づく標的核酸配列は、生物学的試料における核酸分子に含まれる所望の配列を意味する。核酸分子は、生物学的試料における細胞の核に存在してもよいし(例えば、染色体DNA)、又は細胞質に存在してもよい(例えば、mRNA)。一部の実施形態では、核酸分子は、本質的に、生物学的試料の表面上に存在しない場合がある。生物学的試料は、プローブによりアクセス可能な核酸分子を生じるように処理されなければならない場合がある。例えば、試料のプロテアーゼ処理は、標的核酸配列を容易にもたらすことができる。
分析される核酸分子の適切性は、生物学的試料に必要とされる分析の種類及び性質により決定され得る。一部の実施形態では、分析は、生物学的試料における標的核酸配列の遺伝子発現レベルについての情報を提供してもよい。他の実施形態では、分析は、染色体DNAの有無又は増幅レベルについての情報を提供してもよい。例えば、生物学的試料が組織試料を含む場合、本明細書に開示の方法は、標的核酸配列を内部に持つ特定の染色体セグメントの増加したコピー数を有する細胞を特定し得る、標的核酸配列を検出するのに使用されてもよい。
一部の実施形態では、本明細書に開示の方法を使用して検出及び分析され得る組織試料における標的核酸配列は、制限されず、予後マーカー、ホルモンもしくはホルモン受容体、リンパ球系、腫瘍マーカー、細胞周期関連マーカー、神経組織及び腫瘍マーカー又はクラスター分化マーカーを含んでもよい。これらのマーカーの例は、「標的タンパク質」と題したセクションに記載されている。例えば、一実施形態では、標的核酸配列標的は、EGFR、TOP2A、cMyc、ALK、FGFR1又はHER2の遺伝子についての配列である。
ある実施形態では、標的核酸配列は、標的タンパク質をコードする遺伝子配列の一部である配列を含む。他の実施形態では、標的核酸配列は、標的タンパク質をコードする遺伝子配列の一部である配列を含まない。このため、標的核酸配列は、標的タンパク質とは異なるタンパク質をコードする遺伝子配列の一部である配列を含んでもよい。
標的核酸配列用プローブ
一部の実施形態では、プローブは、標的核酸配列を検出するのに使用される。プローブが、所望の配列を含む核酸分子の領域に特異的に結合するのが望ましい。このため、一部の実施形態では、プローブは、配列特異的である。配列特異的プローブは、核酸を含んでもよく、プローブは、ヌクレオチド又はその誘導体の特定の直線的配置を認識可能であり得る。一部の実施形態では、直線的配置は、プローブにおける対応する相補のヌクレオチドにそれぞれ結合し得る、連続的なヌクレオチド又はその誘導体を含んでもよい。別の実施形態では、配列は、プローブ上の対応する相補の残基を有しない場合がある1つ、2つ又はそれ以上のヌクレオチドが存在する場合があるように、連続的ではない場合がある。プローブの適切な例は、制限されず、DNAもしくはRNAのオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド、ペプチド核酸配列、ロックド核酸(LNA)配列又はアプタマーを含んでもよい。一部の実施形態では、適切なプローブは、核酸類似体、例えば、ジオキシゲニンdCTP、ビオチンdcTP−7−アザグアノシン、アジドチミジン、イノシン又はウリジンを含んでもよい。
一部の実施形態では、プローブは、標的核酸配列とワトソン−クリック結合を形成し得る。別の実施形態では、プローブは、標的核酸配列とHoogsteen結合を形成することにより、三重鎖を形成し得る。Hoogsteen結合により結合するプローブは、核酸配列の主溝に入ってもよく、そこに位置する塩基とハイブリダイズする。ある実施形態では、プローブは、標的核酸配列とワトソン−クリック及びHoogsteenの両方の結合を形成してもよい(例えば、ビスPNAプローブは、核酸分子に対してワトソン−クリック及びHoogsteenの両方の結合が可能である。)。
一部の実施形態では、プローブは、核酸プローブ、ペプチド核酸プローブ、ロックド核酸(LNA)プローブ、mRNAプローブ、miRNAプローブ又はsiRNAプローブを含み得る。
プローブの長さは、結合の特異性も決定し得る。プローブと標的核酸配列との間における1つのミスマッチのエネルギーコストは、より長いものについてより、短い配列について相対的に高い場合がある。一部の実施形態では、より長いプローブが、ミスマッチをより受け入れることができ、条件に応じて核酸に結合し続けることができる場合、より小さいプローブのハイブリダイゼーションは、より長いプローブのハイブリダイゼーションより特異的であり得る。ある実施形態では、より短いプローブは、所定の温度及び塩濃度において、より低い結合安定性を示す場合がある。短い配列に結合するためのより高い安定性を示し得るプローブが、この場合に使用され得る(例えば、ビスPNA)。一部の実施形態では、プローブは、約4個のヌクレオチドから約12個のヌクレオチド、約12個のヌクレオチドから約25個のヌクレオチド、約25個のヌクレオチドから約50個のヌクレオチド、約50個のヌクレオチドから約100個のヌクレオチド、約100個のヌクレオチドから約250個のヌクレオチド、約250個のヌクレオチドから約500個のヌクレオチド又は約500個のヌクレオチドから約1000個のヌクレオチドの範囲の長さを有してもよい。一部の実施形態では、プローブは、約1000個を超えるヌクレオチドの範囲の長さを有してもよい。プローブの長さに関わらず、プローブの全てのヌクレオチド残基が、標的核酸配列における相補のヌクレオチドにハイブリダイズしない場合がある。例えば、プローブは、長さが50個のヌクレオチドを含んでもよく、それらの残基の25個のみが、標的核酸配列にハイブリダイズしてもよい。一部の実施形態では、ハイブリダイズし得るヌクレオチド残基は、互いに連続的でもよい。プローブは、一本鎖でもよいし、又は二次構造を含んでもよい。
一部の実施形態では、生物学的試料は、細胞又は組織の試料を含んでもよく、生物学的試料は、プローブを使用してインサイツハイブリダイゼーション(ISH)に供されてもよい。一部の実施形態では、組織試料は、組織試料に関する所望の情報を取得するために、免疫蛍光(IF)に加えて、インサイツハイブリダイゼーションに供されてもよい。
プローブ及び標的核酸配列の種類に関わらず、プローブと標的核酸配列との間の結合の特異性も、結合条件に応じて影響され得る(例えば、相補の核酸の場合のハイブリダイゼーション条件)。適切な結合条件は、1つ以上のpH、温度又は塩濃度を調節することにより実現され得る。
プローブは、本質的に、蛍光体により標識化されてもよいし(蛍光体がプローブの合成中に付着される)、又は非本質的に、標識化されてもよい(蛍光体が後工程中に付着される)。例えば、本質的に標識化された核酸は、核酸鎖の伸長中に蛍光体標識化ヌクレオチドを直接包含する方法を使用して合成され得る。一部の実施形態では、プローブは、蛍光体が後段階で包含され得るような方法で合成されてもよい。例えば、この後の標識化は、核酸鎖内への、活性なアミノ基又はチオール基の導入による化学的手段により達成されてもよい。一部の実施形態では、プローブ、例えば、核酸(例えば、DNA)は、適切な化学を使用して、同様に直接化学的に標識されてもよい。
バインダー
本明細書に開示の方法は、特定の方法で標的に物理的に結合するバインダーの使用を含む。一部の実施形態では、バインダーは、十分な特異性を有して標的に結合し得る。すなわち、バインダーは、任意の他の分子にするより高い親和性で標的に結合してもよい。一部の実施形態では、バインダーは、他の分子に結合してもよいが、その結合は、非特異的結合がバックグラウンドレベルであるか、又は同レベル付近であり得るようにであり得る。一部の実施形態では、所望の標的に対するバインダーの親和性は、他の分子に対するその親和性より、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍又はそれ以上の範囲であり得る。一部の実施形態では、最も高い特異的な親和性を有するバインダーが使用されてもよいが、標的に最も高い親和性を有するものでなくてもよい。
標的とバインダーとの間の結合は、物理的結合により作用され得る。物理的結合は、非共有の相互作用を使用してもたらされた結合を含んでもよい。非共有の相互作用は、制限されず、疎水性相互作用、イオン性相互作用、水素結合相互作用、又は親和性相互作用(例えば、ビオチン−アビジン又はビオチン−ストレプトアビジンの複合体形成)を含んでもよい。一部の実施形態では、標的及びバインダーは、物理的結合をもたらす2つの間における特異的な認識を生じさせる、その表面上、又はキャビティ内の領域を有してもよい。一部の実施形態では、バインダーは、その分子形状の一部の相互嵌入に基づいて生物学的標的に結合してもよい。
バインダー及びその対応する標的は、結合対とみなされることができる。その非限定的な例としては、免疫型結合対、例えば、抗原/抗体、抗原/抗体フラグメント又はハプテン/抗ハプテン;非免疫型結合対、例えば、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、葉酸/葉酸塩結合タンパク質、ホルモン/ホルモン受容体、レクチン/特定の炭水化物、酵素/酵素、酵素/基質、酵素/基質類似体、酵素/擬基質(酵素活性により触媒され得ない基質類似体)、酵素/補因子、酵素/調節因子、酵素/阻害剤又はビタミンB12/内因子があげられる。結合対の他の適切な例は、相補の核酸フラグメント(例えば、DNA配列、RNA配列、PNA配列及びペプチド核酸配列、ロックド核酸(LNA)配列);タンパク質/抗体;タンパク質G/抗体;核酸/核酸結合タンパク質又はポリヌクレオチド/ポリヌクレオチド結合タンパク質を含んでもよい。
一部の実施形態では、バインダーは、配列−又は構造−特異的バインダーでもよい。バインダーにより認識及び結合される標的の配列又は構造は、その標的に対して十分に固有であり得る。
一部の実施形態では、バインダーは、構造特異的であることができ、標的の一次、二次、三次構造を認識し得る。標的の一次構造は、その原子組成及びそれらの原子を結合する化学結合の特異性(例えば、立体化学)、例えば、タンパク質におけるアミノ酸の直線的配置の種類及び性質を含んでもよい。標的の二次構造は、生体分子のセグメントにおける全体的な三次元形状を意味し得る。例えば、タンパク質に関して、二次構造は、互いに近接した、離れたアミノ酸をもたらし得る、種々のコンフォーメーション内のペプチド「骨格」鎖の折り畳みを意味し得る。二次構造の適切な例は、制限されず、アルファへリックス、ベータシート又はランダムコイルを含んでもよい。標的の三次構造は、その三次元構造全体であり得る。標的の四次元構造は、1つ以上の他の標的又は高分子とその非共有結合の相互作用(例えば、タンパク質の相互作用)により形成された構造であり得る。四次元構造の例は、ヘモグロビンを構成するために、4つのグロビンタンパク質サブユニットにより形成される構造でもよい。本発明の実施形態に基づくバインダーは、前述の構造のいずれかに特異的であり得る。
構造特異的なバインダーの例は、タンパク質標的に結合し得るタンパク質特異的な分子を含んでもよい。適切なタンパク質特異的な分子の例は、抗体及び抗体フラグメント、核酸(例えば、タンパク質標的を認識するアプタマー)又はタンパク質基質(非触媒性)を含んでもよい。
一部の実施形態では、標的は抗原を含んでもよく、バインダーは抗体を含んでもよい。適切な抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)又は標的抗原に特異的に結合可能な抗体フラグメントを含んでもよい。
一部の実施形態では、標的は、モノクローナル抗体を含んでもよい。「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体群から取得される抗体を意味し得る。すなわち、群に含まれる個々の抗体は、少量で存在し得る自然に発生する可能のある変異体を除いて同一である。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、1つの抗原部位に対し得る。さらに、種々の決定因子(エピトープ)に対する種々の抗体を典型的に含む、(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の1つの決定因子に対してもよい。モノクローナル抗体は、任意の公知の方法、例えば、ハイブリドーマ法、組換えDNA法により調製されてもよいし、又はファージ抗体ライブラリから単離されてもよい。
一部の実施形態では、生物学的試料は、細胞又は組織の試料を含んでもよく、本明細書に開示の方法は、免疫蛍光(IF)に使用されてもよい。免疫化学は、組織又は細胞についての情報(例えば、疾患の細胞対正常な細胞)を提供するための、抗体系バインダーに対する標的抗原の結合を含んでもよい。本明細書に開示の方法についてのバインダーに適した抗体(及び対応する疾患/疾患細胞)の例としては、制限されず、抗エストロゲン受容体抗体(乳ガン)、抗プロゲステロン受容体抗体(乳ガン)、抗p53抗体(複数のガン)、抗Her2/neu抗体(複数のガン)、抗EGFR抗体(上皮成長因子、複数のガン)、抗カテプシンD抗体(乳ガン及び他のガン)、抗Bcl−2抗体(アポトーシス性細胞)、抗E−カドヘリン抗体、抗CA125抗体(卵巣ガン及び他のガン)、抗CA15−3抗体(乳ガン)、抗CA19−9抗体(結腸ガン)、抗−c−erbB−2抗体、抗P−糖タンパク質抗体(MDR、多剤耐性)、抗CEA抗体(ガン胎児抗原)、抗網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)抗体、抗ras腫瘍性タンパク質(p21)抗体、抗Lewis X(CD15とも呼ばれる)抗体、抗Ki−67抗体(細胞増殖)、抗PCNA(複数のガン)抗体、抗CD3抗体(T細胞)、抗CD4抗体(ヘルパーT細胞)、抗CD5抗体(T細胞)、抗CD7抗体(胸腺細胞、未成熟T細胞、NKキラー細胞)、抗CD8抗体(サプレッサT細胞)、抗CD9/p24抗体(ALL)、抗CD10(CALLAとも呼ばれる)抗体(共通の急性リンパ芽球性白血病)、抗CD11c抗体(単球、顆粒球、AML)、抗CD13抗体(骨髄性単球、AML)、抗CD14抗体(成熟した単球、顆粒球)、抗CD15抗体(ホジキン病)、抗CD19抗体(B細胞)、抗CD20抗体(B細胞)、抗CD22抗体(B細胞)、抗CD23抗体(活性化B細胞、CLL)、抗CD30抗体(活性化T細胞及びB細胞、ホジキン病)、抗CD31抗体(血管新生マーカー)、抗CD33抗体(骨髄細胞、AML)、抗CD34抗体(内皮幹細胞、間質腫瘍)、抗CD35抗体(樹状細胞)、抗CD38抗体(形質細胞、活性化T細胞、B細胞及び骨髄細胞)、抗CD41抗体(血小板、巨核球)、抗LCA/CD45抗体(白血病共通抗原)、抗CD45RO抗体(ヘルパー誘導T細胞)、抗CD45RA抗体(B細胞)、抗CD39、CD100抗体、抗CD95/Fas抗体(アポトーシス)、抗CD99抗体(ユーイング肉腫マーカー、MIC2遺伝子産物)、抗CD106抗体(VCAM−1;活性化内皮細胞)、抗ユビキチン抗体(アルツハイマー病)、抗CD71(トランスフェリン受容体)抗体、抗c−myc(腫瘍性タンパク質及びハプテン)抗体、抗サイトケラチン(トランスフェリン受容体)抗体、抗ビメンチン(内皮細胞)抗体(B細胞及びT細胞)、抗HPVタンパク質(ヒトパピローマウイルス)抗体、抗カッパー軽鎖抗体(B細胞)、抗ラムダ軽鎖抗体(B細胞)、抗メラノソーム(HMB45)抗体(メラノーマ)、抗前立腺特異抗原(PSA)抗体(前立腺ガン)、抗S−100抗体(メラノーマ、唾液、グリア細胞)、抗tau抗原抗体(アミロイド関連疾患)、抗フィブリン抗体(上皮細胞)、抗ケラチン抗体、抗サイトケラチン抗体(腫瘍)、抗アルファ−カテニン(細胞膜)又は抗Tn−抗原抗体(結腸のガン種、腺ガン及び膵臓ガン)があげられる。
適切な抗体の他の具体的な例は、制限されず、抗増殖性細胞核抗原、クローンpc10(Sigma Aldrich、P8825);抗平滑筋アルファアクチン(SmA)、クローン1A4(Sigma、A2547);ウサギ抗ベータカテニン(Sigma、C2206);マウス抗パンサイトケラチン、クローンPCK−26(Sigma、C1801);マウス抗エストロゲン受容体アルファ、クローン1D5(DAKO、M7047);ベータカテニン抗体、クローン15B8(Sigma、C7738);ヤギ抗ビメンチン(Sigma、V4630);環状アンドロゲン受容体クローンAR441(DAKO、M3562);フォン・ヴィルブランド因子7、ケラチン5、ケラチン8/18、e−カドヘリン、Her2/neu、エストロゲン受容体、p53、プロゲステロン受容体、ベータカテニン;ロバ抗マウス(Jackson Immunoresearch、715−166−150);又はロバ抗ウサギ(Jackson Immunoresearch、711−166−152)を含んでもよい。
バインダー及び標的の種類に関わらず、バインダーと標的との間の結合特異性は、結合条件(例えば、相補の核酸の場合におけるハイブリダイゼーション条件)に応じて影響を受けてもよい。適切な結合条件は、pH、温度又は塩濃度の1つ以上を調節することにより実現されてもよい。
上記のように、バインダーは、本質的に、蛍光体により標識化されてもよいし(蛍光体がバインダーの合成中に付着される)、又は非本質的に、標識化されてもよい(蛍光体が後工程中に付着される)。例えば、タンパク質系バインダーに関して、本質的に標識化されたバインダーは、蛍光体標識されたアミノ酸を使用することにより調製されてもよい。一部の実施形態では、バインダーは、蛍光体が後段階で包含され得るような方法で合成されてもよい。一部の実施形態では、バインダー、例えば、タンパク質(例えば、抗体)又は核酸(例えば、DNA)は、適切な化学を使用して、同様に直接化学的に標識されてもよい。
一部の実施形態では、バインダーの組み合わせが使用されてもよく、それにより、より高い特異性が提供されてもよいし、又はある実施形態では、信号の増幅が提供されてもよい。このため、一部の実施形態では、バインダーのサンドイッチが使用されてもよく、第1のバインダーが標的に結合して、二次結合を提供するのに機能してもよい。二次バインダーは、蛍光体を含んでもよいし、又は含まなくてもよい。蛍光体は、(必要に応じて)三次結合をさらに提供してもよい。三次結合メンバーが蛍光体を含んでもよい。
バインダーの組み合わせの適切な例は、一次抗体−二次抗体、相補の核酸又は他のリガンド−受容体ペア(例えば、ビオチン−ストレプトアビジン)を含んでもよい。適切なバインダーペアの一部の具体的な例は、c−mycエピトープを含む組換え発現されたタンパク質についてのマウス抗myc;His−タグエピトープを含む組換えタンパク質についてのマウス抗HisG、エピトープタグを含む組換えタンパク質についてのマウス抗xpress、ヤギIgG一次分子についてのウサギ抗ヤギ、核酸についての相補の核酸配列;チオレドキシン融合タンパク質についてのマウス抗チオ、融合タンパク質についてのウサギ抗GFP、α−D−ガラクトースについてのジャカリン;及び炭水化物結合タンパク質、糖、ニッケル結合マトリクスもしくはハプテンについてのメリビオースを含んでもよい。
一部の実施形態では、一次抗体と二次抗体との組み合わせが、バインダーとして使用され得る。一次抗体は、標的の特定の領域に結合可能であり得る。二次抗体は、一次抗体に結合可能であり得る。二次抗体は、一次抗体に結合する前に、蛍光体に付着されてもよいし、又は後工程で蛍光体に結合可能であってもよい。別の実施形態では、一次抗体及び特異的結合リガンド−受容体のペア(例えば、ビオチン−ストレプトアビジン)が使用されてもよい。一次抗体は、ペアの一方のメンバー(例えば、ビオチン)に付着されてもよく、もう一方のメンバー(例えば、ストレプトアビジン)が、蛍光体により標識化されてもよい。二次抗体、アビジン、ストレプトアビジン又はビオチンは、蛍光体によりそれぞれ独立して標識化されてもよい。
一部の実施形態では、本明細書に開示の方法は、免疫蛍光法に使用されてもよく、一次抗体が、組織試料における標的抗原に特異的に結合するのに使用されてもよい。二次抗体は、一次抗体に特異的に結合するのに使用されてもよい。これにより、必要に応じて、一次抗体と次の試薬(例えば、蛍光体)との間の架橋を形成する。例えば、一次抗体は、マウスIgG(マウスにおいて形成された抗体)でもよく、対応する二次抗体は、マウスIgGにおける領域に結合可能な領域を有する、ヤギ抗マウス(ヤギにおいて形成された抗体)でもよい。
一部の実施形態では、信号増幅は、複数の二次抗体が一次抗体上のエピトープに結合し得る場合に得られ得る。免疫蛍光法において、一次抗体は、本方法に使用される第1の抗体であり得る。二次抗体は、本方法に使用される第2の抗体であり得る。一部の実施形態では、一次抗体は、IF法において使用される抗体のみであり得る。
生物学的試料の第1の画像を生成する工程
本発明のある実施形態では、本方法は、生物学的試料の第1の画像を生成する工程を含む。第1の画像は、(a)固体支持体上の試料を、標的タンパク質用の第1のバインダーと接触させる工程、(b)形態学的情報を提供する蛍光マーカーで、試料を染色する工程、(c)第1のバインダー及び蛍光マーカーからの信号を、蛍光により検出する工程、並びに(d)検出した蛍光信号から、試料の少なくとも一部の第1の画像を生成する工程により生成される。ある実施形態では、工程(a)及び(b)は、第1のプロトコルを構成する。ある実施形態では、本方法は、第1の工程において、試料を、更なる形態学的情報を提供する少なくとも1つの更なるバインダーと接触させる工程、及び蛍光による少なくとも1つの更なるバインダーからの信号を検出する工程も含む。ある実施形態では、工程(c)は、このような構造体、例えば、赤血球、fibrose及びリポフスシン顆粒由来の内因性蛍光信号(自己蛍光としても公知)を、蛍光により検出する工程も含む。ある実施形態では、第1の画像を生成する工程(工程(d))は、検出した蛍光信号から、試料の少なくとも一部のより低い拡大での最初の画像を生成する工程、最初の画像から所望の領域を選択し、少なくとも第1のバインダー及び蛍光マーカーからの信号を蛍光により検出して、最初の画像より高い解像度で第1の画像を生成する工程を含む。「所望の領域を選択する工程」は、(1)最初の画像に基づいて、ユーザが所望の領域を選択する;(2)コンピュータ(すなわち、本方法を実行するイメージングシステム)が最初の画像、アルゴリズム及びそれが受け取った命令に基づいて、所望の領域を選択する;又は(3)コンピュータが最初の画像及びアルゴリズムに基づいて、所望の領域を選択することを意味すると理解される。第1の画像が、生成された最初の画像を、必ずしも意味するとは限らないことを理解されたい。同様に、第2の画像が、本方法の実施形態により生成されたちょうどその第2の画像を文字通りには意味しない。
ある実施形態では、生物学的試料の第1の画像を生成する方法は、(a)固体支持体上の試料を、標的タンパク質用の第1のバインダーと接触させる工程、(b)形態学的情報を提供する蛍光マーカーで、試料を染色する工程、(c)第1のバインダー及び蛍光マーカーからの信号を、蛍光により検出する工程、並びに(d)第1のバインダー及び任意に蛍光マーカーの検出した蛍光信号から、試料の少なくとも一部の第1の画像を生成する工程を含む。したがって、このような実施形態では、第1の画像は、試料における標的タンパク質を特定するのに使用され得る。一方、蛍光マーカーから取得される信号は、本明細書に記載のように、画像を登録するのを可能にするために取得される。
ある実施形態では、最初の画像は、明視野染色プロトコルに類似する、1つ以上の明視野型画像であり得る。このため、最初の蛍光画像データは、アルゴリズムによる、疑似(バーチャル/分子)ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)画像を生成するのに使用されてもよい。又は疑似(バーチャル/分子)3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)画像が、類似のアルゴリズムにより生成されてもよい。蛍光画像データを明視野型画像に変換するための詳細な方法は、表題「画像取得及び分析」において、以下に記載される。次いで、明視野型画像は、所望の領域の選択に使用される。
一部の実施形態では、生物学的試料は、細胞全体、組織試料又はマイクロアレイを含んでもよい。一部の実施形態では、生物学的試料は、組織試料を含んでもよい。組織試料は、各種の手法、例えば、制限されず、外科的切除、吸引又は生研により取得されてもよい。組織は、新鮮でもよいし、又は凍結されてもよい。一部の実施形態では、組織試料は、パラフィンに固定及び包埋されてもよい。組織試料は、従来の方法により固定又は別の方法で保存されてもよい。媒染剤の選択は、組織が組織学的に染色されるか、又は別の方法で分析されるための目的により決定され得る。固定の長さは、組織試料のサイズ及び使用される媒染剤により決まり得る。例えば、中性に緩衝されたホルマリンであるBouin’s又はパラホルムアルデヒドが、組織試料を固定又は保存するのに使用されてもよい。
一部の実施形態では、組織試料は、まず固定され、次いで、アルコールの昇華により脱水され、組織試料が切片化され得るように、パラフィン又は他の切片化媒体により浸透及び包埋され得る。別の実施形態では、組織試料は、切片化され、次に固定されてもよい。一部の実施形態では、組織試料は、パラフィンにおいて包埋及び処理され得る。使用され得るパラフィンの例としては、制限されず、Paraplast、Broloid及びTissuecanがあげられる。組織試料が包埋された時点で、試料は、約3ミクロンから約5ミクロンの範囲の厚みを有し得る切片に、ミクロトームにより切片化され得る。切片化された時点で、切片は、接着剤を使用してスライドに接着され得る。スライド接着剤の例は、制限されず、シラン、ゼラチン、ポリ−L−リジンを含んでもよい。ある実施形態では、パラフィンが包埋材料として使用される場合、組織切片は、水において脱パラフィン化及び再水和され得る。組織切片は、例えば、有機剤(例えば、キシレン又はアルコールの降羃)を使用することにより脱パラフィン化されてもよい。
一部の実施形態では、上記試料調製手順は別として、組織断片は、免疫蛍光アッセイの前、同アッセイ中又は同アッセイ後に、更なる処理に供されてもよい。例えば、一部の実施形態では、組織切片は、エピトープ(すなわち、抗原)回復法、例えば、クエン酸バッファーにおける組織試料の加熱に供されてもよい。一部の実施形態では、組織断片は、場合により、任意の非特異的結合を最少化するために、ブロッキング工程に供されてもよい。
試料の調製後に、試料は、標的タンパク質(例えば、免疫蛍光法における抗原)へのバインダーの結合に適した十分な期間及び条件下において、バインダー溶液(例えば、免疫蛍光法における標識化抗体溶液)と接触してもよい。一部の実施形態では、生物学的試料は、接触工程において、2つ以上のバインダーと接触してもよい。複数のバインダーは、生物学的試料における種々の標的タンパク質と結合可能でもよい。例えば、生物学的試料は、2つの標的タンパク質:標的1及び標的2を含んでもよく、バインダーの2つのセット、この例では、バインダー1(標的1に結合可能)及びバインダー2(標的2に結合可能)が使用されてよい。複数のバインダーは、(例えば、1つの混合物として)生物学的試料と同時に接触してもよい。
試料を1つ以上の標的に対する1つ以上のバインダーと接触させることに加えて、試料は、形態学的情報を提供する、少なくとも1つの更なるバインダーによって染色されてもよい。一実施形態では、形態学的情報を提供するバインダーは、標的用のバインダーと同時に含まれてもよい。他の実施形態では、それらは、バインダー−標的反応後に、試料を染色するのに使用されてもよい。
形態学的情報としては、制限されず、組織の形態学的情報、例えば、組織の種類及び由来、特定の細胞の由来についての情報、細胞の細胞内構造体、例えば、膜、細胞質もしくは核についての情報、細胞の分化状態、細胞周期の段階、細胞の代謝状態、細胞の壊死もしくはアポトーシス、細胞の種類並びに腫瘍、正常及び間質の領域についての情報があげられる。例えば、形態学的情報は、上皮由来の細胞の細胞質局在についての情報を含んでもよいし、又は形態学的情報は、腫瘍のほとんど分化していない領域もしくは壊死領域の位置を示してもよい。
形態学的情報は、生物学的試料における特異的な標的に結合する、少なくとも1つの更なるバインダーにより提供されてもよい。一部の実施形態では、少なくとも1つの更なるバインダーは、制限されず、下記の標的タンパク質に結合する抗体である。
サイトケラチン:上皮細胞のマーカー
パンカドヘリン:細胞膜のマーカー
Na+K+ATPase:細胞膜のマーカー
平滑筋アクチン:平滑筋細胞、筋繊維芽細胞及び筋上皮細胞
CD31:血管のマーカー
リボソームタンパク質S6:細胞質のマーカー
Glut1:低酸素症のマーカー
Ki67:増殖性細胞のマーカー
コラーゲンIV:間質
形態学的情報を提供する他の標的は、ケラチン15、19、E−カドヘリン、クラウディン1、EPCAM、フィブロネクチン及びビメンチンも含み得る。
組織の内因性蛍光(自己蛍光)は、実験下での試料における、更なる形態学的情報、例えば、制限されず、赤血球、リポフスチン顆粒及びfibroseを提供するのに使用されてもよい。
例示として、少なくとも1つの更なるバインダーは、パンサイトケラチン抗体(例えば、1つの反応におけるサイトケラチン異性体のより広い範囲をカバー可能なサイトケラチン抗体のカクテル)を含んでもよい。サイトケラチンは、細胞骨格の一部であり、上皮における細胞の細胞質に局在する。このため、これらの抗体は、上皮細胞の細胞質を染色する。腫瘍試料において、これらの抗体は、間質又は他の支持組織/領域とは対照的に、腫瘍の上皮細胞を染色する。したがって、少なくとも1つの更なるバインダー、例えば、パンサイトケラチンマーカーの使用により、更なる分析用の腫瘍の上皮細胞領域の選択が可能となる。
好ましくは、バインダーは、蛍光体により標識される。2つ以上の標的が検出される場合、各標的用のバインダーは、好ましくは、信号が独立して検出されることができ、実質的に重ならないように、異なる発光波長を有する種々の蛍光体で標識される。好ましくは、形態学的情報を提供するバインダーも、それらが同様に異なる発光波長を有するように、他のバインダーとは異なる蛍光体で標識される。
十分な時間が結合作用に提供された後に、試料は、洗浄溶液(例えば、適切な緩衝液)と接触して、任意の未結合のプローブが洗い流されてもよい。使用されるプローブの濃度及び種類に応じて、生物学的試料は、各工程で使用される同じか又は異なる洗浄溶液による、数多くの洗浄工程に供されてもよい。
バインダーと標的タンパク質及び任意の形態学的マーカーとの間の反応後に、試料は、更なる形態学的情報を提供する蛍光マーカーによりさらに染色される。「蛍光マーカー」という用語は、組織又は他の生物学的試料の特定部分、例えば、特定の細胞内形状を、選択的に染色する蛍光体を意味する。適切な蛍光マーカー(及び該当する場合、その標的細胞、細胞内区画又は細胞成分)は、制限されず、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)(核酸)、エオシン(アルカリ性細胞成分、細胞質)、ヘキスト33258及びヘキスト33342(2つのビスベンズイミド)(核酸)、ヨウ化プロピジウム(核酸)、キナクリン(核酸)、フルオレセイン−ファロイジン(アクチン繊維)、クロモマイシンA3(核酸)、アクリフラビン−フォイルゲン反応(核酸)、オーラミン O−フォイルゲン反応(核酸)、臭化エチジウム(核酸)を含んでもよい。ニッスル染色(ニューロン)、高親和性DNA蛍光体、例えば、POPO、BOBO、YOYO及びTOTO等及びDNA結合タンパク質(例えば、ヒストン)に融合された緑色蛍光タンパク質、ACMA及びアクリジンオレンジを含んでもよい。好ましくは、蛍光マーカーは、核を染色する。より好ましくは、蛍光マーカーは、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)を含む。
生物学的試料に適用され得るバインダー及び蛍光マーカーの総数は、使用される蛍光体からのスペクトル分解可能な蛍光信号により達成可能なスペクトル分解により決まり得る。複数の蛍光体への言及において、スペクトル分解可能は、蛍光体の蛍光発光帯域が十分に分離される、すなわち、標準的な光検出システムを使用して各蛍光体により生成される蛍光信号に基づいて、各蛍光体が区別され得るように、十分に重なっていないことを意味する。一部の実施形態では、生物学的試料は、検出システムによる検出の各ラウンドにおいて、10個又は10個未満の蛍光体と反応し得る。他の実施形態では、生物学的試料は、検出システムによる検出の各ラウンドにおいて、6個又は6個未満の蛍光体と反応し得る。
バインダー−標識化蛍光体、蛍光マーカー及び試料の自己蛍光からの信号は、検出システムを使用して検出され得る。検出システムは、蛍光検出システムを含んでもよい。一部の実施形態では、信号強度、信号波長、信号位置、信号頻度又は信号シフトが決定されてもよい。一部の実施形態では、信号における1つ以上の前述の特性が、観察、測定及び記録されてもよい。一部の実施形態では、蛍光波長又は蛍光強度が、蛍光検出システムを使用して検出されてもよい。一部の実施形態では、信号は、インサイツで観察されてもよい。すなわち、信号は、生物学的試料における標的に対するバインダーを介して会合された蛍光体から、直接観察されてもよい。
一部の実施形態では、信号を観察する工程は、生物学的試料の画像をキャプチャする工程を含んでもよい。一部の実施形態では、イメージング装置に連結された顕微鏡が、本明細書に開示の方法に基づいて、検出システムとして使用されてもよい。一部の実施形態では、蛍光体が励起されてもよく、得られた蛍光信号が、デジタル信号の形式(例えば、デジタル化された画像)で観察及び記録されてもよい。同じ手順が、試料に結合した種々の蛍光体、及び試料の自己蛍光について、適切な蛍光フィルタを使用して繰り返され得る。
蛍光検出用の方法及びシステム並びに試料の第1の画像を生成するための方法及びシステムについての更なる詳細は、表題「画像取得及び分析」において、以下に提供される。
一部の実施形態では、生物学的試料の第1の画像が、検出した蛍光信号から生成された後に、バインダーからの蛍光信号が修飾される。その後、1つ以上の更なる画像が、上記方法に基づいて取得される。すなわち、各更なる画像は、(a)固体支持体上の試料を、異なる標的タンパク質用のバインダーと接触させる工程、(b)更なる形態学的情報を提供する蛍光マーカーで、試料を染色する工程、(c)バインダー及び蛍光マーカーからの信号を、蛍光により検出する工程、及び(d)検出した蛍光信号から、試料の画像を生成する工程により生成される。
化学薬品は、蛍光信号を修飾するために、生物学的試料に適用され得る。一部の実施形態では、信号の修飾は、信号の特性における1つ以上の変化、例えば、信号強度の低下、信号ピークのシフト、共振周波数の変化又は信号分離をもたらす信号発生器の開裂(分離)を含んでもよい。このような化学薬品は、当業者に公知であり、例えば、米国特許第7629125号を参照のこと。
一部の実施形態では、化学薬品は、溶液の形式でもよく、生物学的試料は、化学薬品の溶液と、所定量の時間接触し得る。化学薬品溶液の濃度及び接触時間は、所望の信号修飾の種類により決められてもよい。一部の実施形態では、化学薬品についての接触条件は、バインダー、標的、生物学的試料並びにバインダーと標的との間の結合が影響を及ばされ得ないように選択され得る。一部の実施形態では、化学薬品は、蛍光体にのみ作用することができ、化学薬品は、標的/バインダーの結合又はバインダーの完全性には作用しないことができる。このため、例として、バインダーは、一次抗体又は一次抗体/二次抗体の組み合わせを含んでもよい。化学薬品は、蛍光体にのみ作用することができ、一次抗体又は一次抗体/二次抗体の組み合わせは、本質的に、影響を受けないままであることができる。一部の実施形態では、バインダー(例えば、一次抗体又は一次抗体/二次抗体の組み合わせ)は、試料を化学薬品と接触させた後に、生物学的試料における標的に結合したままであることができる。一部の実施形態では、バインダーは、試料を化学薬品と接触させた後に、生物学的試料における標的に結合したままであることができ、バインダーの完全性は、本質的に影響を受けないままであることができる(例えば、抗体は、化学薬品の存在下において、実質的に、変性又は溶出され得ない。)。
一部の実施形態では、信号の特性は、信号修飾の有効性を決定するために、試料を化学薬品に接触させた後に観察されてもよい。例えば、蛍光信号発生器からの蛍光強度は、化学薬品との接触前、及び化学薬品との接触後に観察されてもよい。一部の実施形態では、所定量までの信号強度の低下が、信号修飾を意味してもよい。一部の実施形態では、信号の修飾は、約50%より大きい範囲の量での信号強度の低下を意味してもよい。一部の実施形態では、信号の修飾は、約60%より大きい範囲の量での信号強度の低下を意味してもよい。一部の実施形態では、信号の修飾は、約80%より大きい範囲の量での信号強度の低下を意味してもよい。ある実施形態では、信号修飾は、酸化、ストリッピング、光脱色又はそれらの組み合わせにより達成されてもよい。好ましい実施形態では、化学薬品は、水酸化ナトリウム、過酸化水素又は過ヨウ素酸ナトリウムからなる群から選択される。別の実施形態では、2011年12月23日に出願され、その内容全体が参照により本明細書に取り込まれる、発明の名称「PHOTOACTIVATED CHEMICAL BLEACHING OF DYES FOR USE IN SEQUENTIAL ANALYSIS OF BIOLOGICAL SAMPLES」である、米国特許出願番号13/336409号においてより完全に記載されるように、信号修飾は、試料を光及び/又は化学薬品と接触させることにより達成されてもよい。
生物学的試料の第2の画像を生成する工程
本発明のある実施形態では、本方法は、生物学的試料の第2の画像を生成する工程を含む。第2の画像は、第1の画像が取得された後に生成される。第2の画像は、(a)試料を、少なくとも1つの標的核酸配列のそれぞれについてのプローブと接触させることにより、プローブを標的核酸配列とハイブリダイズさせる工程、(b)任意に、第1の画像を生成するのに使用される蛍光マーカーにより、試料を染色する工程、(c)標的核酸配列それぞれについてのプローブ及び蛍光マーカーからの信号を、蛍光により検出する工程、並びに(d)検出した1つ以上の蛍光信号から、試料の第2の画像を生成する工程により生成され得る。ある実施形態では、工程(a)及び(b)は、第2のプロトコルを構成する。
第2の画像は、(a)試料を、異なる標的タンパク質についてのバインダーと接触させ、(b)任意に、第1の画像を生成するのに使用される蛍光マーカーにより、試料を染色し、(c)標的タンパク質のそれぞれについてのプローブ及び蛍光マーカーからの信号を、蛍光により検出する工程、並びに(d)検出した1つ以上の蛍光信号から、試料の第2の画像を生成することによっても生成され得る。第2のプロトコルが免疫蛍光プロトコルである場合に、本質的に、同じ工程が、第1の画像を生成するために、上記のように行われる。ある実施形態では、工程(a)及び(b)は、第2のプロトコルを構成する。
ある実施形態では、第1の画像が取得された後、第2の画像を生成する工程の前に、本方法は、第1のバインダーからの蛍光信号を修飾する工程を含む。ある実施形態では、信号修飾は、酸化、ストリッピング、光脱色又はそれらの混合により達成されてもよい。好ましい実施形態では、化学薬品は、水酸化ナトリウム、過酸化水素又は過ヨウ素酸ナトリウムからなる群から選択される。
ある実施形態では、第1の画像が取得された後、第2の画像を生成する工程の前に、本方法は、プロテアーゼにより試料を消化する工程をさらに含む。プロテアーゼ消化によるペプチド結合の切断は、標的核酸に対するプローブのアクセスを容易にする場合、信号品質に直接影響し、インタクトなタンパク質により生成される自己蛍光を低下させる。プロテアーゼ消化は、標的タンパク質からバインダーを除去するのにも役立つため、第1の画像に関連する免疫蛍光信号を除去するのに役立つ。プロテアーゼ消化のための典型的なプロテアーゼは、セリンプロテアーゼ、例えば、プロテイナーゼKである。別の典型的なプロテアーゼは、カルボキシルプロテアーゼ、例えば、ペプシンである。
標的核酸配列及びプローブは、上記で詳細に記載している。好ましくは、プローブは、蛍光標識されている。
ある実施形態では、標的核酸配列は、染色体レベルでのゲノム変異を含む。ある実施形態では、ゲノム変異は、染色体異常である。典型的な染色体異常としては、染色体転移、染色体欠失、染色体挿入及び染色体逆位及び遺伝子増幅イベントがあげられる。他の実施形態では、標的核酸配列は、個々の遺伝子レベルでのゲノム変異、例えば、一ヌクレオチド多型、小さな欠失、挿入及び点変異を含む。
ある実施形態では、プローブは、生物学的試料内の標的核酸配列の相補鎖にハイブリダイズされる。プローブ及び標的核酸配列は、適切なハイブリダイゼ―ション条件下において、ハイブリッドを形成し得る。ハイブリダイゼーションの当業者であれば、ハイブリダイゼ―ションのストリンジェンシーを課し、又は制御するのに一般的に使用される要因には、ホルムアミド濃度(又は他の化学変性剤)、塩濃度(すなわち、イオン強度)、ハイブリダイゼ―ション温度、界面活性剤濃度、pH及びカオトロープの有無が含まれることを認識するであろう。ブロッキング・プローブも、ストリンジェンシー要因をほとんど最適化できないことにより起こり得る制限を超える区別を改善するための手段として使用され得る。ハイブリッドの組み合わせを形成するための最適なストリンジェンシーは、前述の複数のストリンジェンシー要因を固定し、次いで、1つのストリンジェンシー要因を変化させることの効果を決定する、周知の技術により見出され得る。同じストリンジェンシー要因が調節されることにより、PNAのハイブリダイゼ―ションがイオン強度にかなり依存することを除いて、核酸に対するPNA又はLNAのハイブリダイゼ―ションのストリンジェンシーを制御し得る。アッセイについての最適又は適切なストリンジェンシーは、所望の度合いの区別が達成されるまで、各ストリンジェンシー要因の実験により、実験的に決定され得る。
核酸配列の検出、例えば、ハイブリダイゼ―ションのための方法は周知である。ある実施形態では、特定の核酸配列は、FISH(又はFISHのバリエーション、例えば、IQ−FISH)又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(又はPCRのバリエーション、例えば、インサイツPCR)、RCA(ローリングサークル増幅)又はPRINS(プライムドインサイツ標識)により検出される。典型的な実施形態では、特定の核酸配列は、FISHにより検出される。このため、生物学的試料における標的核酸配列は変性され、インサイツにおいて、変性された蛍光標識プローブとハイブリダイズする。ある好ましい実施形態では、標的核酸配列がFISHにより分析された場合、染色体特異的プローブ、例えば、同じ染色体についてのセントロメアプローブが、核酸配列についてのプローブと共に使用される。染色体特異的プローブからの信号は、標的核酸が同じ染色体上にあるかどうかを示す。好ましくは、染色体特異的プローブは、蛍光体により標識される。蛍光体は、核酸配列についてのプローブのそれと区別できる信号を生成する。
ハイブリダイゼ―ション反応後に、試料は、場合により、更なる形態学的情報を提供する蛍光マーカーにより染色される。好ましくは、蛍光マーカーは、第1の画像を取得するのに使用されるのと同じである。又は蛍光マーカーは、第1の画像を取得するのに使用されるそれとは異なるが、同じ細胞内区画を染色する。ある実施形態では、第1の画像についての染色からの蛍光信号は、この工程が任意であるため、十分に保持される。他の実施形態では、第1の画像についての染色からの蛍光信号は減衰していき、試料は、本明細書で提供されたように染色される。
ある実施形態では、蛍光マーカーが細胞の核を染色するのが好ましい。このため、染色は、FISH信号の焦点合わせを支援する。フォーカスされた核を取得することにより、FISHの信号が、フォーカスされた核の上下における複数の焦点面をイメージングすることによりキャプチャされ得る。染色は、FISH信号の計数も支援する。FISH信号は核を通して散乱される場合があるため、1つの焦点面を使用して行われるドット計数は、誤った計数をもたらす場合がある。しかしながら、各視野内での複数のz−スタックをキャプチャすることにより、可能な限り近い核の三次元視画像を生成するための、より多くのデータを提供する。したがって、FISH信号を計数するより正確な方法が提供される。
同じ細胞内区画を染色する同じ1つ以上の蛍光マーカーにより生物学的試料を染色することは、第1の画像と第2の画像とを重ね合わせるための基準点を提供するのにも役立つ。このため、染色は、合成画像の生成を容易にする。第1及び第2の画像の重ね合わせの詳細については、以下の「画像取得及び分析」のセクションを参照のこと。
好ましい実施形態では、生物学的試料はFFPE組織試料であり、第1のバインダーはHER2用の抗体であり、任意の1つ以上の更なるバインダーはパンサイトケラチン抗体カクテルであり、蛍光マーカーはDAPIであり、標的核酸配列はHER2である。
蛍光体標識されたプローブ及び蛍光マーカーからの信号は、上記の検出システムを使用して検出され得る。蛍光検出のための方法及びシステム並びに試料の第2の画像を生成するための方法及びシステムについての更なる詳細は、表題「画像取得及び分析」において以下に提供される。
一部の実施形態では、生物学的試料の第2の画像が検出された蛍光信号から生成された後に、標的核酸配列それぞれについてのプローブからの蛍光信号は、例えば、酸化、ストリッピング、光脱色又はそれらの混合により修飾される。その後、1つ以上の更なる画像が、本明細書において前述の方法に従って取得される。すなわち、各更なる画像は、(1)試料を、少なくとも1つの更なる標的核酸配列についてのプローブと接触させることにより、プローブと配列とをハイブリダイズさせる工程、(2)任意に、蛍光マーカーにより試料を染色する工程、(3)更なる配列のそれぞれについてのプローブ及び蛍光マーカーからの信号を、蛍光により検出する工程、並びに(4)検出した蛍光信号から、試料の画像を生成する工程により生成される。
画像取得及び分析
ある実施形態では、1つの生物学的試料の画像を提供するための方法は、生物学的試料の第1の画像を生成する工程と、生物学的試料の第2の画像を生成する工程とを含む。これらの第1及び第2の画像は、(1)生物学的試料からの信号を蛍光検出し、(2)検出した蛍光信号から、試料の第1及び第2の画像をそれぞれ生成することにより生成される。これらの工程は、好ましくは、蛍光顕微鏡を使用して行われ、接触工程及び染色工程に使用される蛍光体のそれぞれについて繰り返される。このため、各蛍光体が励起され、その蛍光発光が、標準的な機器、例えば、CCDカメラ又は蛍光スキャナを使用して、その波長で測定される。場合により、生物学的試料の自己蛍光も測定され、特定の蛍光体の測定におけるその作用が考慮される。例えば、1つ以上の発光波長におけるバックグラウンドの自己蛍光を差し引くために、アルゴリズムが使用されてもよい。
ある実施形態では、生物学的試料全体の第1の画像及び第2の画像の両方が、高解像度で取得される。このため、各蛍光体からの発光は、その発光波長において、高解像度で測定される。高解像度は、75〜375nmのピクセルサイズをサポートする、0.5と1.4との間の開口数に対応する、20×から100×の間の解像度で、画像が取得されることを意味する。好ましくは、画像は、40×、約0.85の開口数及び約170nmのピクセルサイズで取得される。40×での画像のキャプチャは、60×又は100×と比較して、相対的に大きいFOV’sをキャプチャしながら、解像度がFISH信号をキャプチャするのに十分高いために好ましい。
他の実施形態では、生物学的試料は、固体支持体の表面全体を占めなくてもよく、又は生物学的試料全体の高解像度画像が必要とされない場合がある。このため、第1の画像を取得しながら、まず、固体支持体の表面全体が、低解像度、例えば、2×でスキャンされてもよい。次いで、画像分析アルゴリズムが、低解像度の画像に適用され、生物学的試料を含む領域を検出する。生物学的試料の境界をマークする座標がキャプチャされ、次のより高い解像度でのスキャンを指示するのに使用される。1つの蛍光体からの発光の測定は、試料の境界についての座標を取得するのに十分であることができる。
したがって、生物学的試料を含む領域は、少なくとも1つのプロセッサを使用して生物学的試料の画像を取得する工程、画像をプロセッサにより、(a)Markovランダムフィールド(MRF)による周辺化最大事後確率(MPM)プロセス又は(b)Markovランダムフィールド(MRF)による最大事後(MAP)推定のいずれかを使用して、複数の領域にセグメント化する工程、並びに複数の領域を、バックグラウンド領域と組織領域とに分類して、バイナリーマスクを形成する工程を含むコンピュータにより実行される方法により検出されてもよい。本方法は、バイナリーマスクにアクティブ輪郭法を適用して、生物学的試料の境界線を精緻化する工程も含んでもよい。
さらに他の実施形態では、生物学的試料全体のより高い解像度の画像が必要でない場合がある。むしろ、より高い解像度の画像は、試料の選択された所望の領域(ROI)にのみ必要とされる。このため、第1の画像を生成しながら、まず、生物学的試料は、ROI選択を可能な、(例えば、10×、より高い解像度と比較して)より低い解像度でイメージングされる。場合により、より低い解像度でイメージングすることは、接触工程及び染色工程に使用される蛍光体のそれぞれについてのスキャンを含む。1つ以上のROIが、所定の基準(例えば、試料の完全性、表現型、例えば、腫瘍又は正常、筋肉又は管組織等)に基づいて選択されてもよい。ある実施形態では、ROIは、少なくとも一部において、第1のバインダーから検出された標的タンパク質のタンパク質発現レベルに基づいて選択される。このため、特定のROIは、第1の閾値と比較してより低い標的タンパク質の発現レベルに選択されてもよい。一方、他のROIは、第2の閾値と比較してより高いタンパク質の発現レベルのために選択されてもよい(第2の閾値は、第1の閾値とは異なる場合がある。)。ROIの座標は、ROIのみにスキャンする、より高い解像度を指示するのに使用される。ある実施形態では、第2の画像は、同じより高い解像度で、第1の画像用のROIのために取得される画像として、ROI単独で取得される。
上記のように、ある実施形態では、まず、最初の画像(すなわち、より低い解像度の画像)が、明視野染色プロトコルに類似する、1つ以上の明視野型画像に変換される。このため、最初の蛍光画像データは、アルゴリズムにより、疑似(バーチャル/分子)ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)画像を生成するのに使用されてもよい。又は疑似(バーチャル/分子)3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)画像が、類似のアルゴリズムにより生成されてもよい。蛍光画像データを明視野型画像に変換するための詳細な方法は、以下に記載される。次いで、明視野型画像は、少なくとも一部において、形態学的情報に基づいて、所望の領域の選択に使用される。
ある実施形態では、生物学的試料全体の画像又は試料内の選択されたROIは、顕微鏡の視野(FOV)の制限により1回のスキャンで取得できない場合がある。すなわち、イメージングされる領域は、顕微鏡のFOVがキャプチャできるより大きい場合がある。このような場合には、所望の画像は、スライド又は選択されたROIにわたる複数のFOVをキャプチャすることにより取得されてもよい。FOVのこれらの元画像は、視野変化を調節するのに補正され、次いで、別々のFOVを配列させるアルゴリズムに基づいて互いに、スライド全体又はROIの1つの画像にステッチされてもよい。このような画像ステッチングアルゴリズムは、当業者に周知であり、米国特許第6,674,884号を参照のこと。多くの場合、モノクロカメラが、そのより高い感度及びダイクロイックミラーと共に適切な励起及び発光フィルタを使用することにより所定の波長をキャプチャする能力のために、蛍光イメージングに使用される。このため、各チャネルのグレースケール画像が生成される。各蛍光チャネルのグレースケールデジタル画像は、疑似カラーであってもよく、所望の画像を追加するためにまとめてもよい。
好ましい実施形態では、第1の画像を生成する工程は、(1)任意に、固体支持体全体のより低い解像度の画像を生成し、固体支持体上の試料を位置決めする工程、(2)試料の中程度の解像度の画像を生成する工程、(3)所定の基準に基づいて、所望の領域(ROI)を特定する工程、及びROIそれぞれについてのより高い解像度の画像を生成する工程を含む。生成された第2の画像は、第1の画像の生成中に選択された各ROIのより高い解像度の画像である。これらの実施形態では、より低い、中程度及びより高い、という用語は、特定の拡大率に限定されない。むしろそれらは、互いに相対的である。最も好ましい実施形態では、低い解像度の画像は、2×の画像であり、中程度の解像度の画像は、10×の画像であり、高い解像度の画像は、40×の画像である。
ある実施形態では、標的タンパク質又は標的核酸の特徴をよりクリアに図示するためのコンピュータ向けの手段により、画像を強調するのが望ましい場合がある。このため、一例では、参照カラー・ルックアップ・テーブルに対して、標的タンパク質の発現レベルがマップされた、RGB混色ヒートマップ画像が形成される。このルックアップ・テーブルの例は、染色強度の異なるレベルを有する領域のより容易な特定のために、低レベルの強度を青の濃淡にマップし、中程度の強度を黄色の濃淡にマップし、高い強度を赤の濃淡にマップするであろう。別の例では、混色された合成画像は、標的タンパク質、形態学的バインダー及び蛍光マーカー同士の空間的な相関をより良好に表示するために、第1の画像について形成される。例えば、標的タンパク質バインダーは黄色に着色され、形態学的バインダーは青に着色されるであろう。その後、標的タンパク質が形態学的バインダーでマークされた領域に表され、染色は、容易かつ特異的な特定のために、緑色を表すであろう。さらに別の例では、特定の蛍光体チャネルの疑似カラーが形成されてもよい。例えば、所望の遺伝子についてのFISH信号が赤に着色され、同じ染色体の別の領域が緑に着色され、所定の細胞又は組織の領域における2種類の信号の相対量の区別が容易になるであろう。
ある実施形態では、第1及び第2の画像が、好ましくは、少なくとも一部において、蛍光マーカーから検出された信号から得られたいくつかの画像に基づいて配列される。好ましくは、第1及び第2の画像が重ね合わせられ、合成画像がさらに形成される。合成画像は、細胞ベースによる細胞上での、第1の画像から得られた結果を、第2の画像から得られたそれと、直接的な比較を可能にする。
合成画像は、第1もしくは第2の画像の全体又は第1の画像もしくは第2の画像の生成において取得される全ての信号を含まなくてもよい。スライド及び顕微鏡台の位置の移動により、第2の画像は、第1の画像に対して、回転又は移動してもよい。この回転又は移動は、合成画像を生成する前に、2つの画像を配列又は登録するのに補正されるべきである。
画像を登録するために、第1の画像及び第2の画像における同一の形態学的マーカーを使用するのが好ましい。このようなマーカーの例はDAPIであり、DAPIは細胞核を標識し、後の脱色、染色及び他の処理中の試料に残る。蛍光マーカーから得られた画像は、両画像における特定の細胞内区画に関する形態学的情報を提供し、細胞内区画の相対位置は、2つの画像において実質的に変化しないままである。このため、アルゴリズムは、この空間情報を使用して、(a)2つの画像のフーリエ変換を算出し、(b)振幅成分フーリエ変換をlog−polar座標に変換し、2つの画像それぞれの並進不変記号を形成し、(c)第2のフーリエ変換を2つの記号に適用し、(d)2つの記号間の相関関数を算出し、(e)相関関数を逆フーリエ変換し、2つの画像間の回転及び拡大縮小を求め、(f)回転及び拡大縮小を、両画像が同様に回転及び拡大縮小されるように、第2の画像に適用し、(g)同様に拡大縮小された画像間のクロス−パワー相関関数を算出し、(h)クロスパワー相関を逆フーリエ変換し、第1及び第2の画像間の置き換えを生成することにより、第1の画像と第2の画像との間の座標移動を確立することができる。次いで、置き換え、回転及び拡大縮小は、合成するために同一に配列された(登録された)画像を生成するのに使用される。クロスパワー相関は、従来の積率相関に好ましい。2つの画像間の強度差及び顕微鏡の視野にわたってゆっくり変化する強度差に非感受性であるためである。
ある実施形態では、第1及び第2の画像並びに形成された任意の合成画像は、標的タンパク質の発現及び標的核酸配列を特徴付けるのに使用される。このため、タンパク質の発現レベルは、信号の強度値(例えば、蛍光強度)を生物学的試料における標的の量に相関させることにより分析され得る。標的量と信号強度との間の相関は、較正基準を使用して決定されてもよい。一部の実施形態では、1つ以上のコントロール試料が使用されてもよい。試料における信号の有無(コントロールに対する所望の生物学的試料)を観察することにより、生物学的試料に関する情報が取得され得る。例えば、正常な組織試料に対して疾患の組織試料を比較することにより、疾患の組織試料における標的の存在に関する情報が取得されてもよい。同様に、試料(すなわち、所望の試料と1つ以上のコントロール)間の信号強度を比較することにより、試料における標的の発現に関する情報が取得されてもよい。
標的核酸配列は、その有無、発現又は増幅レベルにより分析され得る。所望のDNA配列の分析に関して、分析は、細胞核内の信号にフォーカスされてもよい。このため、所望のDNA配列がFISHにより検出される場合、好ましくは、まず、数多くの核が、少なくとも一部において、蛍光マーカー(例えば、DAPI染色)から得られた画像に基づいて、個々にセグメント化される。各核内には、標的核酸配列についてのFISHスポット、及び場合により、(染色体特異的プローブからの)対応する染色体についてのFISHスポットが位置決めされる。FISHスポットがさらに分析される。例えば、スポットの比が標的遺伝子の増幅又は再配列状態を評価するのに算出される。
タンパク質発現データ及び核酸分析データは、組み合わせられたデータセットを提供するためにさらに比較されてもよい。
本明細書に開示の方法により、生物学及び医学における、分析、診断及び治療用途への適用が見出され得る。本明細書に記載の方法に基づく患者からの細胞又は組織試料の分析は、(例えば、特定の疾患を有し、特定の毒物に曝されるか、又は特定の治療もしくは臓器移植に十分応答する、患者を特定するために)診断的に、(例えば、おそらく特定の疾患を患っている、特定の治療に十分応答するか、又は特定の臓器移植を受け入れられる、患者を特定するために)予後的に使用されてもよい。本明細書に開示の方法は、生物学的に同じ試料からの、複数の標的(例えば、疾患マーカー)の正確かつ信頼できる分析を容易にし得る。
ある実施形態では、第1及び/又は第2の蛍光画像は、明視野染色プロトコルに類似する明視野型画像に変換される。このため、形態学的情報を提供する1つ以上の更なるバインダー、蛍光マーカー及び生物学的試料の自己蛍光から検出される蛍光信号は、アルゴリズムにより、疑似(バーチャル/分子)ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)画像を生成するのに使用されてもよい。又は疑似(バーチャル/分子)3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)画像が、類似のアルゴリズムにより生成されてもよい。ある実施形態では、バーチャルH&E画像は、蛍光マーカー(例えば、DAPI)、更なる形態学的情報を提供する少なくとも1つの更なるバインダー(例えば、抗−パンサイトケラチン抗体)及び自己蛍光からの信号を含む。ある実施形態では、バーチャルDAB画像は、蛍光マーカー及び標的タンパク質(抗HER2抗体)についてのバインダーからの信号を含む。
したがって、ある実施形態では、合成画像は、明視野型画像、例えば、バーチャルH&E又はバーチャルDABの画像である。
蛍光画像を疑似明視野画像に変換する方法は公知である。蛍光画像から明視野画像を形成する方法も公知である。蛍光画像において、画像が特定の明視野染色プロトコルから直接取得された場合、生物学的試料の構造的特徴及び詳細が特定される。米国特許出願番号第12/569396号。本発明のある実施形態では、2011年8月17日に出願され、その内容全体が参照により本明細書に取り込まれる、発明の名称「SYSTEM AND METHODS FOR GENERATING A BRIGHTFIELD IMAGE USING FLUORESCENT IMAGES」である、K.Kennyによる米国特許出願番号第13/211725号により完全に記載されるように、生物学的試料の明視野染色プロトコルに類似する明視野型画像を生成するための改善された方法が使用される。本方法は、生物学的試料の明視野画像から取得されるか、又は予め選択された色もしくは所望の色を使用して規定された、較正関数の使用を含む。予め選択された色もしくは所望の色は、オペレータにより選択されてもよい。オペレータは、標準的な生物学的染色プロトコルに精通している、病理学者又は顕微鏡学者であり得る。較正関数は、蛍光画像を明視野色空間にマップする強度変換を、「吸光係数」と呼ばれる、3つのパラメータ、a[Red]、a[Green]、a[Blue]を使用して推定する。
推定されたパラメータは、1つ以上の生物学的試料を、所望のバイオマーカーにおける広い範囲の染色強度で調製することにより生成され、可視染料、例えば、ヘマトキシリン、エオシン又はジアミノベンジジン(DAB)により標識される。次いで、試料は、明視野においてイメージングされてもよく、赤、緑及び青のピクセル強度レベルの分布が算出されてもよく、ピクセル強度レベルは、間隔[0,1]に正規化される。平均(log強度)についての最も小さい値を有する色が特定される。一般性の損失なしに、特定の色を仮定し得る。例えば、色が緑の場合、(log Red/log Green)と(log Blue/log Green)との平均値が算出され、3つの、(平均[log Red/log Green]、1、平均[log Blue/log Green])が、吸光係数として使用される。
又は吸光係数は、実際の明視野染料への言及なしに生成されてもよい。代わりに、設計者は、中程度の強度の染料に使用されるべき色を選択してもよい。その色が、線形色モデルにおける(R,G,B)である場合、チャネルR、G及びBは、間隔[0,1]に正規化され、次いで、吸光係数は単に、(log R、log G、log B)である。このアプローチは、本方法を天然には存在しない染料を使用して、明視野染色に類似させる。
次いで、蛍光画像における点の対応が、2つの方法:強度系及び特徴系により確立されてもよい。
特徴系の方法では、核、上皮、間質又は任意の種類の細胞外マトリクス材料の画像が、蛍光画像及び明視野画像の両方について取得されてもよい。特徴系の構造は、手動の処理を使用して、又は自動的に選択され得る。対応する構造は、両方の種類からの画像において選択される。蛍光画像について、画像は、所定のバイオマーカーに変化する適切な励起エネルギー源を有し、発光を収集するのに適したフィルタを有する、蛍光顕微鏡を使用してキャプチャされてもよい。次いで、試料の明視野画像が取得され、次いで、赤(R)、緑(G)及び青(B)のチャネル並びに測定された特徴系の構造の色及び強度にセグメント化されてもよい。
強度系の方法では、顕微鏡下での試料領域の位置決定は、試料領域が次の画像取得のために同じ位置に近づいて繰り返し位置決定され得るように、電気的、磁気的、光学的又は機械的センサにより制御され得る。強度系の登録は、一般的には、広い分類のバイオマーカーに適用可能である。一般的には、生物学的試料は、基材、例えば、制限されず、TMA、スライド、ウェル又はグリッド上に固定又は他の方法で提供される。生物学的試料は、分子バイオマーカーにより標識され、蛍光顕微鏡によりイメージングされる。
強度系又は特徴系の方法のいずれかにおいて、蛍光画像から明視野色空間への変換には、非線形変換方程式において、推定されたマッピングパラメータが使用される。非線形変換方程式は、赤、緑、青の値又は色空間(R、G、B)を使用して表されてもよく、変換は、式:
R=255exp(−a[Dye1]*z[Dye1]−a[Dye2]z[Dye2]−...)
G=255exp(−b[Dye1]*z[Dye1]−b[Dye2]z[Dye2]−...)
B=255exp(−c[Dye1]*z[Dye1]−c[Dye2]z[Dye2]−...)
により表される。
式中、スカラーz[Dye1]、z[Dye2]、...は、所定のピクセル位置で観察された蛍光染料の量である。3つの、(a[Dyen]、b[Dyen]、c[Dyen])は、予め選択された色又は所望の色を使用して規定された仮想の染色における、n番目の染料の定数時間の吸光係数である。定数は、出力の色値(R、G、B)が画像において読み取り可能な範囲のコントラストを表すように選択される。R、G及びBは、明視野型画像において得られた、赤、緑及び青のピクセル値であり、zは、所定のピクセル位置において観察された蛍光染料量についての拡大縮小係数であり、a、b及びcは、明視野色空間に対応する吸光係数である。そして、3つの、a[Dyen]、b[Dyen]、c[Dyen]は、予め選択された色又は所望の色を使用して規定された仮想の染色における、n番目の染料の定数時間の吸光係数である。
好ましくは、0.995量が、z[Dye1]、z[Dye2]、...について見出され、定数は、
min(exp(−a[Dyen]*z[Dyen]),exp(−b[Dyen]*z[Dyen]),exp(−c[Dyen]*z[Dyen]))=1/255
のように選択される。これにより、8−bit画像の可能性のあるダイナミックレンジをほぼ満たす、ダイナミックレンジの出力色を生じ、強力なコントラストをもたらす。
合成後に、鮮明化変換がバーチャル染色画像に適用されてもよい。一実施形態では、鮮明化変換は、カーネルが、マトリクス:
である、線形回転フィルタとして実行され得る。鮮明化変換を適用することは、よりシャープなエッジを有するより鮮明な外観及びより視認可能な微細なディテールの出力画像を与える。
変換パラメータが算出された時点で、試料の1つ以上の選択された領域が、バーチャルH&Eマッピング又は類似の可視画像、例えば、褐色のDAB染色を使用する、蛍光画像のセットからVSIへの変換に使用され得る。分子バイオマーカーは、明視野画像のみを使用して、視認できない機能的情報及び区画情報を、有利に提供する。例えば、画像分析アルゴリズムは、病理学者又はオペレータの画像強度値を提供する間に、明視野種(H&E)を表す試料の区画を分離するための追加したチャネルに有益であり得る。例えば、ケラチン用のDAB染色プロトコルを代表するVSIは、紫色の濃淡で細胞核を示し、上皮細胞及び繊維芽細胞の細胞骨格を褐色の濃淡で表すであろう。
又はマッピングパラメータが推定された時点で、変換アルゴリズムが、VSIを生成するために、他の蛍光画像に適用されてもよい。他の蛍光画像は、同じ生物学的試料の異なる領域由来でもよい。又は他の蛍光画像は、異なる生物学的試料由来でもよい。異なる生物学的試料は、類似の機能を有し得る生物学的対象の組織から取得される類似の細胞の収集物を含んでもよい。
このため、明視野型画像を生成するための方法は、生物学的試料上の固定された領域の2つ以上の蛍光画像の画像データを取得する工程、少なくとも一部において、特徴系情報又はピクセル強度データ情報を使用して、画像データを分析し、マッピングデータを生成する工程であって、マッピングパラメータが、非線形推定モデルを含む工程、マッピングパラメータを、蛍光画像に適用する工程、2つ以上の蛍光画像を、明視野色空間に変換する工程、並びに明視野型画像を生成する工程を含む。本方法は、明視野型画像に対する鮮明化変換補正を適用する工程を、さらに含んでもよい。
本発明の別の態様では、生物学的試料を分析する方法が提供される。本方法は、前述の方法に基づいて、生物学的試料の合成画像を提供する工程、及び合成画像からタンパク質の発現及び所望の核酸配列を分析する工程を含む。ある実施形態では、生物学的試料を分析する方法は、参照カラー・ルックアップ・テーブルに対して、第1のバインダーからの蛍光信号をマッピングすることにより、標的タンパク質の発現レベルのRGB混色ヒートマップ画像を形成する工程を、さらに含む。他の実施形態では、生物学的試料を分析する方法は、第1の画像についての混色合成画像を形成する工程をさらに含み、合成画像が、標的タンパク質の画像、少なくとも1つの更なるバインダー及び蛍光マーカーにより表される形態学的情報を含む。ある実施形態では、生物学的試料は、細胞又は組織の試料を含む。更なる実施形態では、生物学的試料は、ホルマリン固定された、パラフィン包埋(FFPE)組織試料を含む。このため、好ましい実施形態では、試料はFFPE組織試料であり、第1のバインダーはHER2についての抗体であり、1つ以上の更なるバインダーはパンサイトケラチン抗体カクテルであり、蛍光マーカーはDAPIであり、所望の核酸配列はHER2である。
本発明のさらに別の態様では、同じ生物学的試料におけるタンパク質及び標的核酸配列を蛍光検出するためのキットが提供される。したがって、本発明の実施形態は、同じ生物学的試料におけるタンパク質及び標的核酸配列を蛍光検出するための成分を含むキットを提供する。
本発明のさらに別の態様では、同じ生物学的試料におけるタンパク質及び標的核酸配列を蛍光検出するためのシステムが提供される。したがって、本発明の一実施形態は、同じ生物学的試料におけるタンパク質及び標的核酸配列の蛍光検出を行うための手段を含むシステムを提供する。
記載の方法の実行において、特定のバッファー、媒体、試薬、細胞、培養条件、pH等への言及は、限定することを意図しないが、当業者が、検討が存在する特定の文脈において興味があるか、又は価値があると認識するであろう、全ての関連する材料を含むように読み取られるべきであると理解されたい。例えば、同一でない場合、類似の結果を達成する別のバッファー系又は培養媒体に多くの場合置換え可能である。当業者は、本明細書に開示の方法及び手順を使用するその目的に最適に役立つであろう場合に、過度の試行錯誤をすることなく、このような置換えを実行可能なように、このようなシステム及び方法の十分な知識を有するであろう。異なる置換え及び修飾が、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本明細書に開示の発明になされ得ることが、当業者に直ちに明らかとなるであろう。
下記の実施例は、本発明に基づく方法及び実施形態を説明することのみを意図しており、特許請求の範囲の限定を強いると解釈されるべきではない。
本発明の一実施において、乳ガン組織を、標準的な組織学的方法によるルーチンな組織学的試料から取得した。外科的に切断した腫瘍の小部分を、10%の中性緩衝ホルマリンに、8時間固定し、次いで、向上するエタノール濃度(50%、75%、80%、95%、100%)を含む溶液系列、続けて、キシレンの通過により脱水した。次いで、試料を、パラフィンに包埋した。4マイクロメートル厚の切片を、ミクロトームを使用して切片化した。切片を水浴上に浮かべ、標準的な顕微鏡スライド上に、1つずつ収集した。スライドを、60℃のオーブンで、2時間乾燥及びベーキングし、次いで、キシレンの通過により脱パラフィン化し、次いで、エタノール、続けて、低下するエタノール濃度を有する水−エタノール混合物の系列の通過により再水和し、最終的に、PBSで洗浄した。次に、スライドを、結合エピトープ回復溶液(Leica)において、100℃で20分間加熱することによる抗原回復法に供した。次いで、スライドを、Cy3とコンジュゲートしたサイトケラチン抗体のカクテルと組み合わせた、Cy5とコンジュゲートしたHer2抗体で染色し、続けて、DAPIで対比染色した。スライドにカバーガラスをかぶせ、スライド領域全体を、1.25×拡大の対物レンズ及びDAPIフィルタセットを備える蛍光顕微鏡を使用してイメージングした。画像を、デジタルモノクロカメラを使用してキャプチャし、次いで、コンピュータ的に組み合わせて、スライド全体の1つのステッチ画像を形成した。このステッチされた全体のスライド画像から、組織切片の位置が決定され、組織切片をイメージングするためのみの座標を記録した。この方法により、次の画像を収集するのに必要な時間が明らかに短くなる。
次いで、組織切片領域の10×画像を、DAPI、Cy3及びCy5のフィルタセットを使用して収集して、核、サイトケラチン及びHer2タンパク質染色にそれぞれ特異的な画像を取得した。これらの個々のマーカー画像をステッチして、1つの画像を形成し、次いで、重ね合わせて、蛍光疑似カラー画像並びにバーチャルH&E及びバーチャルDABの画像を形成した。ステッチされ、組み合わせられた画像により、病理学者は、浸潤ガンを特異的に含む組織切片から、所望の領域を選択が可能となった。これらの浸潤ガン領域についての座標を記録し、40×拡大及び全ての蛍光体、例えば、前述のDAPIについてのフィルタセットを使用して画像を収集するのに使用した。
次のFISH染色を可能にするために、カバーガラスを、2×SSCバッファーにおけるインキュベーションにより除去し、0.05%の、核DNAへのアクセスを可能にするためにタンパク質構造を部分的に除去したペプシンで10分間の処理に、スライドを供した。次いで、スライドを、4%のホルムアルデヒド水溶液を使用して、10分間固定し、洗浄し、スペクトルオレンジで標識されたHer2遺伝子及びスペクトルグリーンで標識された染色体17セントロメア用のFISHプローブ(Abbott Molecular、DesPlaines、IL)を使用するハイブリダイゼーションに供した。ハイブリダイゼーションを、向上する濃度のエタノールの水溶液系列、続けて、100%のエタノールによる通過により、スライドを脱水することにより行い、次いで、簡易に乾燥させた。プローブ混合物を、組織切片を含むスライドの領域上にアプライし、次いで、カバーガラスで覆い、スライドを加熱及び冷却可能なスライドインキュベータに入れた。プローブ混合物を含むスライドを、80℃に10分間加熱して、DNAハイブリッドを変性させ、37℃に冷却した。次いで、スライドを、その温度で16時間維持した。次いで、スライドを、0.3%の、界面活性剤であるNP−40を含む2×SSCバッファーにおいて洗浄し、0.3%のNP−40を含む2×SSCバッファーにおいて、72℃で2分間洗浄し、続けて、DAPIで対比染色した。次に、浸潤ガンを有した組織切片の領域を、免疫蛍光工程において記録した座標を使用してイメージングした。画像セットを、スペクトルオレンジ、スペクトルグリーン及びDAPIに特異的なフィルタセットを使用して、40×で記録した。
次いで、免疫蛍光画像セット及びFISH画像セットを、各ラウンドからのDAPI画像それぞれを使用して配列し、次いで、専門の可視化ソフトウェアを使用して、重ね合わせ及び可視化をした(図2及び3)。この方法により、浸潤ガン領域の正確な特定とHer2タンパク質発現及び遺伝子増幅の細胞間の比較が可能となる。先の実用化されている方法では、連続的な切片間の免疫染色とFISHとの比較を制限されている。この場合、直接的な細胞間の相関を行うことができない。
第2の実施において、肺ガン腫瘍生検を、ガラススライド上に取得し、上記のように、脱パラフィン化し、水和し、抗原回復した。次いで、スライドを、Cy3及びCy5それぞれでコンジュゲートしたサイトケラチン−7及びEGFRについての抗体を使用して染色し、続けて、DAPIで染色した。組織切片を、蛍光顕微鏡を使用して、20×拡大でイメージングし、デジタルカメラを使用して記録した。組織切片の各領域を、Cy5、Cy3及びDAPIについてのフィルタセットを使用してイメージングした。次いで、2011年12月23日に出願され、その内容全体が参照により本明細書に取り込まれる、発明の名称「PHOTOACTIVATED CHEMICAL BLEACHING OF DYES FOR USE IN SEQUENTIAL ANALYSIS OF BIOLOGICAL SAMPLES」である、米国特許出願番号第13/336409号により完全に記載されるように、スライドを染料不活性化法に供し、Cy3及びCy5それぞれとコンジュゲートしたNaKATPase及びIFG1Rについての抗体で染色し、DAPIで対比染色した。組織切片を、画像が先のラウンドにおけるのと同じ領域を収集するであろうように配列し、上記のように、各蛍光チャネルにおける20×拡大を使用して、再度イメージングした。
次いで、スライドを、先の実施例におけるのと同様に、ペプシン処理及び固定化に供し、次いで、EGFR(プラチナブライト415)、cMet(プラチナブライト550)及び染色体7セントロメア(プラチナブライト495)用のFISHプローブでハイブリダイズさせ、DAPIで対比染色した。免疫蛍光イメージングラウンドにおいて取得された領域内に含まれる腫瘍領域の選択領域を、DAPI並びに青、緑及び赤の蛍光体に特異的なフィルタセットを使用して、40×でイメージングした。次いで、全てのイメージングラウンドの切片を、イメージングラウンドセットそれぞれのDAPI画像を使用して登録し、画像を配列し、核、細胞質及び細胞膜の細胞区画並びにEGFR及びIFG1Rタンパク質の発現による、細胞の同時可視化を可能にする1つの視野画像に組み合わせた(データを示さず)。画像により、cMet及びEGFRの遺伝子についての、FISH信号の可視化も可能となり、これにより、同じ組織切片上での可能性のある遺伝子増幅及びタンパク質の過剰発現の相関が可能となる(データを示さず)。
本発明の別の実施において、顕微鏡スライド上の腫瘍切片を、脱パラフィン化及び再水和に供し、続けて、上記のように抗原回復に供した。試料を、Cy5コンジュゲートしたEGFR抗体と組み合わせたCy3コンジュゲートしたサイトケラチン−7抗体で染色し、DAPIで対比染色した。試料全体を、DAPI、Cy3及びCy5のフィルタセットを使用してイメージングする。画像を、デジタルで記録する。染料不活性化後、その試料を、マーカーの第2のセット、すなわち、Cy5コンジュゲートしたNaKATPase抗体及びCy3コンジュゲートしたIGF1R抗体で染色し、DAPIで対比染色した。試料を、DAPI、Cy3及びCy5のフィルタセットを使用して第1のラウンドと同じ位置でイメージングし、画像を、上記のようにデジタルで保存した。
次いで、試料を、ペプシン消化並びにHer2及び染色体17のセントロメア用のDNAプローブとのハイブリダイゼーション並びに上記第1の実施例に記載のようにDAPI対比染色に供する。次いで、試料を、FISHプローブ及びDAPIのそれぞれについてのフィルタセットを含む蛍光顕微鏡を使用してイメージングする。画像を、デジタルで保存する。
次いで、試料を、染料不活性化に供し、続けて、EGFR及び染色体7のセントロメア用のプローブセットによる第2のラウンドのFISHハイブリダイゼーションに供する。これを、向上する濃度のエタノールの水溶液系列、続けて、100%のエタノールの通過により、スライドを脱水することにより行い、次いで、簡易に乾燥させる。第2のプローブ混合物を、組織切片を含むスライドの領域にアプライし、次いで、カバーガラスでカバーし、スライドを加熱及び冷却可能なスライドインキュベータに入れる。プローブ混合物を含むスライドを、80℃で10分間加熱して、DNAハイブリッドを変性させ、第1のFISHラウンドから不活性化されたプローブを除去する。次いで、スライドを、37℃に冷却し、次いで、その温度で16時間維持した。次いで、スライドを、0.3%の、界面活性剤であるNP−40を含む2×SSCバッファーで洗浄し、0.3%のNP−40を含む2×SSCにおいて、72℃で2分間洗浄し、続けて、DAPIで対比染色する。
次いで、スライドを、FISHプローブ及びDAPIの第2のセットについてのフィルタセットを使用してイメージングする。次いで、全てのイメージングラウンドを、DAPI画像を使用して配列し、FISH及びIF信号をIF画像から遺伝子発現について分析し、FISHチャネルから遺伝子増幅について分析する。これにより、IF染色の複数のラウンドの細胞間の相関が可能となり、このため、複数のタンパク質マーカーの発現状態及びFISH染色の複数のラウンド並びに複数の遺伝子の増幅状態の細胞間の相関が可能となる。
本発明の特定の実施形態が示され、説明されてきたが、本発明の教示から逸脱することなく、変更及び修飾がなされ得ることは、当業者に明らかであろう。前述の記載及び添付の図面において説明された事項は、説明の例とそしてのみ提供され、制限するものではない。本発明の実際の範囲は、従来技術に基づくその適切な見方で見た場合、下記特許請求の範囲に規定されることを意図する。