定義
本発明がより容易に理解されるために、ある用語について最初に定義する。以下の用語および他の用語についての補足的な定義は、明細書の全体にわたって記載される。
動物:本明細書において使用されるように、用語「動物」は、動物界の任意のメンバーを指す。いくつかの実施形態において、「動物」が、発達の任意の段階のヒトを指す。いくつかの実施形態において、「動物」が、発達の任意の段階の非ヒト動物を指す。ある実施形態において、非ヒト動物が、哺乳動物(たとえば、げっ歯動物、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長動物、および/またはブタ)である。いくつかの実施形態において、動物が、哺乳動物、鳥、爬虫類動物、両生動物、魚、昆虫、および/または蠕虫を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、動物が、トランスジェニック動物、遺伝子操作された動物、および/またはクローンであってもよい。
およそまたは約:本明細書において使用されるように、関心のある1つ以上の値に適用される用語「およそ」または「約」は、明示される参照値と同様の値を指す。ある実施形態において、用語「およそ」または「約」が、他に明示されないまたはそうでなければ文脈から明白でない限り、明示される参照値のどちらかの方向(より大きなまたはより小さな)に、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ未満の範囲内にある、一連の値を指す(そのような数が、可能な値の100%を超過する場合を除いて)。本出願において使用されるように、用語「約」および「およそ」は、同意語として使用される。
生物学的に活性である:本明細書において使用されるように、語句「生物学的に活性な」は、生物系、特に生物において活性を有する任意の作用物質の特徴を指す。たとえば、生物に対して投与された場合に、その生物に対して生物学的効果を有する作用物質は、生物学的に活性であると考えられる。特定の実施形態において、ペプチドが生物学的に活性な場合、ペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を共有するそのペプチドの部分が、「生物学的に活性な」部分と典型的に呼ばれる。ある実施形態において、内在性の生物学的活性を有しないが、1つ以上の天然に存在するアンジオテンシン化合物の効果を阻害するペプチドが、生物学的に活性であると考えられる。
キャリヤまたは希釈剤:本明細書において使用されるように、用語「キャリヤ」および「希釈剤」は、医薬製剤の調製に有用である、薬学的に許容され得る(たとえば、ヒトに対する投与について安全でありかつ無毒性の)キャリヤまたは希釈物質を指す。例示的な希釈剤は、滅菌水、静菌性注射用水(BWFI)、pH緩衝液(たとえばリン酸緩衝食塩水)、滅菌生理食塩水、リンガー溶液、またはデキストロース溶液を含む。
〜を含む:本明細書において使用されるように、用語「含む」ならびに「含むこと(comprising)」および「含む(comprises)」などのようなその用語の変形は、他の添加物、構成要素、整数、またはステップを除外するようには意図されない。
剤形:本明細書において使用されるように、用語「剤形」および「単位剤形」は、処置されることになっている患者のための治療剤の、物理的に個別の単位を指す。それぞれの単位は、所望の治療効果をもたらすように計算された、所定の量の活性剤を含有する。しかしながら、組成物の総投薬量は、適切な医学的判断の範囲内で、主治医によって決定されるであろうということが、理解されるであろう。
投薬レジメン:「投薬レジメン」(または「治療レジメン」)は、その用語が本明細書において使用されるように、典型的にある期間によって分離される、被験体に対して個々に投与される、単位用量(典型的に2つ以上)のセットである。いくつかの実施形態において、所定の治療剤が、1つ以上の用量を含んでいてもよい、推奨される投薬レジメンを有する。いくつかの実施形態において、投薬レジメンが、それぞれが同じ長さの期間によって互いに分離される、複数の用量を含み、いくつかの実施形態において、投薬管理形態が、複数の用量および個々の用量を分離する、少なくとも2つの異なる期間を含む。いくつかの実施形態において、治療剤が、所定の期間にわたって継続的に投与される。いくつかの実施形態において、治療剤が、一日に一度(QD)または一日に二度(BID)、投与される。
機能不全:本明細書において使用されるように、用語「機能不全」は、異常な機能を指す。分子(たとえばタンパク質)の機能不全は、そのような分子に関連する活性の増加または減少によって引き起こされ得る。分子の機能不全は、分子自体または直接もしくは間接的にその分子と相互作用するもしくはそれを調節する他の分子に関連する欠陥によって引き起こされ得る。
機能的等価物または誘導体:本明細書において使用されるように、用語「機能的等価物」または「機能的誘導体」は、アミノ酸配列の機能的誘導体との関連で、本来の配列と実質的に同様の生物学的活性(機能または構造)を保持する分子を示す。機能的誘導体または等価物は、天然の誘導体であってもよいまたは合成して調製される。例示的な機能的誘導体は、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、または追加を有するアミノ酸配列を含む、ただし、タンパク質の生物学的活性が保存されることを条件とする。置換用のアミノ酸は、望ましくは、置換されるアミノ酸と同様の物理化学特性を有する。望ましい類似する物理化学特性は、電荷、かさ高さ、疎水性、親水性、およびその他同種のものにおける類似性を含む。
改善する、増加させる、または低下させる:本明細書において使用されるように、用語「改善する」、「増加させる」、もしくは「低下させる」または文法上の相当語句は、本明細書において記載される処置の開始前の同じ個体における測定値または本明細書において記載される処置の非存在下における1つのコントロール被験体(もしくは複数のコントロール被験体)における測定値などのようなベースライン測定値に関連のある値を示す。「コントロール被験体」は、処置されている被験体とほぼ同じ年齢である、処置されている被験体と同じ形態の疾患にかかっている被験体である。
インビトロにおいて:本明細書において使用されるように、用語「インビトロにおいて」は、多細胞生物内ではなく、人工環境において、たとえば試験管または反応容器において、細胞培養においてなどで起こるイベントを指す。
インビボにおいて:本明細書において使用されるように、用語「インビボにおいて」は、ヒトおよび非ヒト動物などのような多細胞生物内で起こるイベントを指す。細胞ベースの系との関連で、用語は、生細胞内で起こるイベントを指すために使用されてもよい(たとえばインビトロ系と対照的に)。
単離された:本明細書において使用されるように、用語「単離された」は、(1)最初に産生された時に関連していた、少なくともいくつかの構成要素から分離された(自然界におけるかおよび/もしくは実験環境におけるかどうかにかかわらず)ならびに/または(2)人の手によって産生された、調製された、および/もしくは製造された物質ならびに/または実体を指す。単離された物質および/または実体は、それらが最初に関連していた、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約98%、約99%、実質的に100%、または100%の他の構成要素から分離されてもよい。いくつかの実施形態において、単離された作用物質が、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%超、実質的に100%、または100%純粋である。本明細書において使用されるように、物質は、他の構成要素が実質的にない場合、「純粋である」。本明細書において使用されるように、用語「単離された細胞」は、多細胞生物中に含有されていない細胞を指す。
〜を予防する:本明細書において使用されるように、用語「予防する」または「予防」は、疾患、障害、および/または状態の存在に関連して使用される場合、疾患、障害、および/または状態を発症する危険性を低下させることを指す。「危険性」の定義を参照されたい。
ポリペプチド:本明細書において使用される用語「ポリペプチド」または「ペプチド」は、ペプチド結合を介してともに連結されるアミノ酸の連続する鎖を指す。用語は、任意の長さのアミノ酸鎖を指すために使用されるが、当業者は、用語が、長い鎖に限定されず、ペプチド結合を介してともに連結された2つのアミノ酸を含む最小の鎖を指すことができることを理解するであろう。当業者らに知られているように、ポリペプチドは、プロセシングされてもよいおよび/または修飾されてもよい。
タンパク質:本明細書において使用される用語「タンパク質」は、個別の単位として機能する1つ以上のポリペプチドを指す。単一のポリペプチドが個別の機能単位であり、個別の機能単位を形成するために、他のポリペプチドと永続的なまたは一時的な物理的関連を必要としない場合、用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、区別なく使用されてもよい。個別の機能単位が、互いに物理的に関連する1つを超えるポリペプチドから構成される場合、用語「タンパク質」は、物理的にカップルされ、かつ個別の単位として、ともに機能する、複数のポリペプチドを指す。
危険性:文脈から理解されるように、疾患、障害、および/または状態の「危険性」は、特定の個体が疾患、障害、および/または状態(たとえば線維症)を発症する見込みを含む。いくつかの実施形態において、危険性が、パーセンテージとして表現される。いくつかの実施形態において、危険性が、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%までである。いくつかの実施形態において、危険性が、参照サンプルまたは参照サンプルの群に関連する危険性に対して相対的な危険性として表現される。いくつかの実施形態において、参照サンプルまたは参照サンプルの群が、疾患、障害、状態、および/またはイベント(たとえば糖尿病)について、知られている危険性を有する。いくつかの実施形態において、参照サンプルまたは参照サンプルの群が、特定の個体と同等の個体由来のものである。いくつかの実施形態において、相対危険度が、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上である。
被験体:本明細書において使用されるように、用語「被験体」は、ヒトまたは任意の非ヒト動物(たとえばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、イノシシ(swine)、ヒツジ、ウマ、もしくは霊長動物)を指す。ヒトは、出生前および出生後の形態を含む。多くの実施形態において、被験体が、ヒトである。被験体は、患者とすることができ、疾患の診断または処置のために医療提供者に診察をうけにきているヒトを指す。用語「被験体」は、「個体」または「患者」と区別なく本明細書において使用される。被験体は、疾患または障害にかかり得るまたはかかりやすいが、疾患または障害の症状を示してもよいまたは示さなくてもよい。
実質的に:本明細書において使用されるように、用語「実質的に」は、完全なまたはほぼ完全な程度または度合いの、関心のある特質または特性を示すための質的状態を指す。生物学の技術分野における当業者は、生物学的および化学的現象が、完全な状態に向かうおよび/または完全性に向かって進むまたは絶対的な結果を実現するもしくは回避することは、あるとしても、まれであることを理解するであろう。そのため、用語「実質的に」は、多くの生物学的および化学的現象において、本来備わっている完全性の欠如の可能性をとらえるために本明細書において使用される。
〜に罹患している:疾患、障害、および/または状態「に罹患している」個体は、疾患、障害、および/または状態と診断されているまたはその1つ以上の症状を示す。
〜にかかりやすい:疾患、障害、および/または状態「にかかりやすい」個体は、疾患、障害、および/または状態と診断されていない。いくつかの実施形態において、疾患、障害、および/または状態にかかりやすい個体が、疾患、障害、および/または状態の症状を示さなくてもよい。いくつかの実施形態において、疾患、障害、状態、またはイベント(たとえば虚血発作)にかかりやすい個体が、1つ以上の以下のものによって特徴付けられてもよい:(1)疾患、障害、および/または状態の発症に関連する遺伝子の突然変異;(2)疾患、障害、および/または状態の発症に関連する遺伝子多型;(3)疾患、障害、および/または状態に関連するタンパク質の発現および/または活性の増加および/または減少;(4)疾患、障害、状態、および/またはイベントの発症に関連する習慣および/またはライフスタイル、(5)移植を受けたことがある、受ける予定である、または必要としている。いくつかの実施形態において、疾患、障害、および/または状態にかかりやすい個体が、疾患、障害、および/または状態を発症するであろう。いくつかの実施形態において、疾患、障害、および/または状態にかかりやすい個体が、疾患、障害、および/または状態を発症しないであろう。線維症の障害にかかりやすい被験体はまた、傷害を受けたことがあるまたは外科手技を受けたことがあるもしくは受けようとしている被験体をも含む。
治療有効量:本明細書において使用されるように、治療剤の「治療有効量」という用語は、疾患、障害、および/または状態に罹患しているまたはかかりやすい被験体に対して投与された場合に、疾患、障害、および/または状態の症状(複数可)の発症を処置する、診断する、予防する、および/または遅延させるのに十分な量を意味する。治療有効量が、少なくとも1単位用量を含む投薬レジメンを介して典型的に投与されることは、当業者らによって十分に理解されるであろう。
処置:本明細書において使用されるように、用語「処置する」、「処置」、または「処置すること」は、部分的にまたは完全に、特定の疾患、障害、および/または状態の発病を軽減する、寛解させる、緩和する、阻害する、予防する、遅延させる、その重症度を低下させる、および/または1つ以上の症状もしくは特徴の発生率を低下させるために使用される任意の方法を指す。処置は、疾患に関連する病態を発症する危険性を減少させる目的のために、疾患のサインを示さないおよび/または疾患の初期のサインのみを示す被験体に対して適用されてもよい。処置は、線維症の障害にかかりやすい被験体において、線維症の障害を予防するために適用されてもよい。
詳細な説明
数ある中で、線維症または他の関連する疾患、障害、もしくは状態を処置するための方法が、本明細書において記載される。いくつかの実施形態において、本発明による本発明の方法が、アンジオテンシン(1−7)、そのアナログ、もしくは誘導体またはそれを含有する医薬組成物を、必要とする被験体に対して投与するステップを含む。特に、アンジオテンシン(1−7)、そのアナログ、または誘導体は、線維症性疾患、障害、もしくは状態または他の関連する疾患、障害、もしくは状態の少なくとも1つの症状または特徴が、強度、重症度、または頻度において低下する治療有効量で投与されるまたは発病を遅延させた。
本発明の様々な態様は、以下の部において詳細に記載される。部の使用は、本発明を限定することを示すものではない。それぞれの部は、本発明の任意の態様に対して適用することができる。本出願において、「または」の使用は、他に明示されない限り、「および/または」を意味する。
線維症の障害および状態
本明細書において使用されるように、用語「線維症の障害」は、全身性硬化症、多巣性線維硬化症、強皮症性の移植片対宿主病、腎性全身性線維症、器官特異的線維症、およびその他同種のものを含むが、これらに限定されない、線維症によって特徴付けられる任意の疾患を指す。例証となる器官特異的線維症の障害は、肺線維症、肺高血圧症、嚢胞性線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、肝線維症、腎線維症、NASH、およびその他同種のものを含むが、これらに限定されない。多くの線維症性疾患、障害、または状態は、病気に冒された組織における細胞外マトリックスの障害性のおよび/または過度の沈着を有する。線維症は、炎症と関連し得る、基礎疾患の症状として起こり得る、および/または外科手技もしくは創傷治癒プロセスによって引き起こされ得る。線維症が抑えられないと、瘢痕と一般に呼ばれる、根本的な器官または組織の構造の破壊をもたらし得る。
本発明は、より詳細に下記に記載されるように、様々な線維症性疾患、障害、または状態を処置するための方法を提供する。
たとえば、肺の線維症は、消耗性のおよび可能性として致命的な形態の線維症に相当する。肺組織における線維症に対する処置の選択肢は、非常に限られている。一旦発症したら、瘢痕は、永続的であり、肺移植が、多くの場合、唯一の治療上利用可能な選択肢となる。
肺線維症は、線維芽細胞増殖、細胞外マトリックスタンパク質の過剰な蓄積、および異常な肺胞の構造が伴う、肺組織の進行性の瘢痕によって特徴付けられる。肥厚した堅い組織は、肺が適切に働くのを困難にし、息切れなどのような呼吸障害に至り、最終的に致命的になり得る。肺線維症は、急性肺傷害、ウイルス感染症、毒素に対する曝露、放射線、慢性疾患、医薬品によって引き起こされ得るまたは特発性となり得る(つまり未発見の根本的な原因)。
特発性肺線維症における古典的発見は、多くの場合、肺の底部の、肺の表面の外層(outer lining)に隣接している小さな気泡(ブラとして知られている)を有する、肺の散在性の周辺部の瘢痕を示す。特発性肺線維症は、多くの場合、遅く容赦がない進行を有する。初期のころに、患者は、多くの場合、乾いた不明の咳について不満を訴える。次に、息切れ(呼吸困難)は、進行し始め、ますます低下する活動が引き金となって、次第に悪化する。最終的に、息切れは、不能状態に変わり、活動をすべて制限し、じっと座っている間でさえ起こる。よりまれな症例において、線維症は、急速に進行し得、呼吸困難および能力障害が、疾患の発病の数週間〜数か月間で起こる。肺線維症のこの形態は、ハンマン−リッチ症候群と呼ばれている。
肺高血圧症は、肺動脈、肺静脈、および/または肺毛細管を含む肺血管の血圧における増加によって特徴づけられる。異常に高い圧力は、心臓の右室を引っ張り、それを拡大させる。次第に、右室は、弱まり、肺に十分な血液を送るその能力を失い、心不全の発症に至り得る。肺高血圧症は、慢性肝疾患および肝硬変;強皮症または全身性エリテマトーデス(狼瘡)などのようなリウマチ障害;ならびに腫瘍、気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、および肺線維症を含む肺の状態などのような、他の医学的状態の結果として起こり得る。肺線維症は、肺の血管の狭窄に至り、肺高血圧症をもたらし得る。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、慢性気管支炎または気腫に、多くの場合関連する、一般的な肺疾患である。症状は、多くの場合、咳、粘液増加、疲労、喘鳴、および呼吸器感染症を含むことができる。
慢性気管支炎および気腫は、気道が狭くなる肺の疾患である。これは、肺へのおよび肺からの空気の流量の制限に至り、息切れ(呼吸困難)を引き起こす。診療において、COPDは、肺機能試験の結果のその特徴的に乏しい気流によって定義される。
太い気道における肺損傷および炎症は、慢性気管支炎をもたらす。肺の気道において、慢性気管支炎の特徴は、気道の杯細胞および粘液腺の数の増加(過形成)およびサイズの増加(肥大)である。その結果として、気道に、通常よりも多くの粘液があり、気道の狭窄の一因となり、痰を伴う咳を引き起こす。顕微鏡的に、炎症性細胞による気道壁の浸潤がある。壁を肥厚し、さらに気道の狭窄をもたらす瘢痕およびリモデリングが炎症に続く。慢性気管支炎が進行するにつれて、扁平上皮化生(気道の内側を覆う組織における異常な変化)ならびに線維症(気道壁のさらなる肥厚および瘢痕)が起こる。これらの変化の結果として、気流の制限および呼吸窮迫がある。
喘息は、気道の炎症および収縮によって特徴付けられる慢性肺疾患である。喘息は、喘鳴の繰り返し(recurring period)、胸の圧迫感、息切れ、および咳を引き起こす。腫脹および粘液の生産過剰は、さらなる気道収縮および症状の悪化を引き起こし得る。マトリックス分解の増加が、喘息において起こり得るという証拠があり、これは、喘息における気道における機械的な変化の一因となり得る(Robertsら(1995) Chest 107:111S−117S、本明細書において参照によってその全体が組み込まれる。細胞外マトリックス分解の処置は、喘息の症状を寛解させ得る。
嚢胞性線維症は、上皮を介しての、塩素イオンおよびナトリウムの異常な輸送によって特徴付けられる劣性多形遺伝病であり、肺、膵臓、肝臓、腸管、および生殖器系における濃い粘性の分泌物に至る。嚢胞性線維症は、タンパク質嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)についての遺伝子における突然変異によって引き起こされる。肺疾患は、粘液増加、粘液線毛クリアランスの減少、および結果として生じる炎症による気道の閉塞に起因し、これらは、肺に対して、線維症の傷害および構造変化を引き起こし得る。線維症の肺損傷は、次第に進行し、何人かの嚢胞性線維症患者に肺移植を必要とさせる。
嚢胞性線維症について言及する場合、嚢胞性線維症(CF)を「処置する」または「処置すること」は、1つ以上の以下のものを達成することを意味してもよい:(a)被験体における炎症の低下;(b)被験体における炎症のあらゆる増加の制限;(c)1つ以上のCF症状の重症度の低下;(d)1つ以上のCF症状の発症の制限または予防;(e)1つ以上のCF症状の悪化の阻害;および(f)関連するCF症状について以前に徴候のあった被験体における1つ以上のCF症状の再発の制限または予防。
嚢胞性線維症に罹患している被験体の一般的な症状は、濃い粘液の蓄積、大量の粘液質産生、頻繁な胸部感染症、頻繁な咳、頻繁な息切れ、炎症、運動する能力の減少、肺および副鼻洞(sinus)の日和見感染症(Staphylococcus aureus、Haemophilus influenzae、Mycobacterium aviium、およびPseudomonas aeruginosaを含むが、これらに限定されない)、肺炎、結核、気管支拡張症、喀血、肺高血圧症(および結果として生じる心不全)、低酸素症、呼吸不全、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、副鼻腔における粘液、副鼻洞感染症、顔面痛、発熱、過剰な鼻漏、鼻ポリープの発生、心肺機能の合併症、CF関連性の糖尿病、直腸脱、膵炎、吸収不良、腸閉塞、膵外分泌機能不全、胆管封鎖、ならびに肝硬変を含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、嚢胞性線維症の症状が、炎症を含む。これらの実施形態において、本発明の範囲内のいくつかの方法が、炎症を処置するステップを含んでいてもよく、処置の有益な効果は、たとえば、気管支肺胞洗浄(BAL)液などのような、被験体由来の関連するサンプルにおける炎症性細胞数における低下によって評価することができる。非限定的な実施形態において、有益な効果が、被験体由来のBAL液体における好中球数における低下を実証することによって評価されてもよい。CFを有する患者の気道の中への好中球の過剰な動員は、CFにおける肺疾患重症度についての有意な予測因子であり、そのため、重要な治療標的となる。そのような細胞数を測定するための方法は、当技術分野においてよく知られており、FACS技術を含むが、これらに限定されない。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の範囲内の方法が、被験体において、炎症を低下させるステップを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、方法が、コントロールと比較して、被験体由来のBAL液体における好中球数を低下させるステップを含んでいてもよい。任意の適したコントロールは、ペプチドにより処置されていない嚢胞性線維症被験体などのように、比較のために使用することができる。いくつかの実施形態において、好中球数における減少が、被験体に対して、臨床上の有益性をもたらす。様々な実施形態において、好中球数における低下が、コントロールと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、またはそれ以上である。
他の実施形態において、本発明の治療方法の有益な効果が、BAL液などのような、被験体由来の関連するサンプルにおける、1つ以上の炎症性バイオマーカーにおける低下によって評価されてもよい。様々な非限定的な実施形態において、炎症性バイオマーカーが、BAL液における1つ以上のIL1β、KC、MIP2、IFNγ、TNFα、IL−6、MCP−1、およびIL−10を含んでいてもよいまたはそれからなってもよい。そのようなバイオマーカーの量を測定するための方法は、当技術分野においてよく知られており、ELISAを含むが、これらに限定されない。したがって、この実施形態において、方法が、コントロールと比較して、被験体由来のBALサンプルにおける、1つ以上の炎症性バイオマーカーの量を低下させるステップをさらに含んでもよい。
手術後の癒着形成は、外科手術の一般的な合併症である。機械的な損傷、虚血、および感染症由来の癒着の形成は、外科手術後の罹患率および死亡率を増加させ得る。正確な外科手技は、癒着形成の大きさを低下させることができるが、癒着は、取り除かれる(eviscerate)ことはめったになく、有効な補助療法が、必要とされる。このプロセスに関連する線維症の低下は、痛み、閉塞、および手術の他の合併症を軽減し、治癒および回復を促し得る。
哺乳動物組織における傷(つまり裂傷、開口)は、傷表面で、組織崩壊および微小血管系の凝固をもたらす。そのような組織の修復は、傷害に対する、順序正しくコントロールされた細胞の応答に相当する。軟部組織の傷は、サイズにかかわらず、同様の方式で治癒する。組織増殖および修復は、細胞の増殖および血管新生が酸素勾配の存在下において起こる、生物学的なシステムである。組織修復の間に起こる連続する形態学的および構造変化は、詳細に特徴付けられており、いくつかの事例において、定量化されている(たとえばHunt, T.K.ら、“Coagulation and macrophage stimulation of angiogenesis and wound healing,” in The Surgical Wound、pp.1−18、ed. F. Dineen & G. Hildrick−Smith(Lea & Febiger、Philadelphia:1981)を参照されたい)。細胞の形態は、3つの別個のゾーンからなる。中心の無血管性の傷の空間は、酸素が欠乏しており、アシドーシス性であり、過炭酸性であり、また、高い乳酸レベルを有する。この傷の空間に隣接して、分裂中の線維芽細胞が占める局所的貧血(虚血)の勾配ゾーンがある。主要なゾーンの後ろに、成熟線維芽細胞および多数の新しく形成された毛細管(つまり新血管新生)によって特徴付けられる活性なコラーゲン合成のエリアがある。米国特許第5,015,629号明細書および米国特許第7,022,675号明細書(それぞれ参照によって本明細書において組み込まれる)は、傷修復の速度を増加させるための方法および組成物を開示する。
瘢痕形成は、治癒プロセスの自然の一部である。傷における無秩序なコラーゲン合成および沈着は、過剰な、厚い、または隆起した瘢痕形成をもたらし得る。一般に、傷が大きなほど、治癒するのに時間がかかり、問題になる瘢痕の可能性が大きくなる。
いくつかのタイプの瘢痕がある。肥厚性瘢痕は、もとの傷害の境界線の内側に位置する、隆起した、ピンクがかった赤色をした(pinkish−red)エリアである。それらは、多くの場合、かゆいものとして説明される。いくつかの症例において、肥厚性瘢痕は、独力で縮小し、消える。ケロイドは、もとの傷害よりもさらに多くのエリアを包含する傾向がある、隆起した、深赤色の(deep−red)エリアである。外科的に除去された場合でさえ、ケロイドは、再発する傾向がある。萎縮性瘢痕は、重度のにきびから時々形成されるもののように、皮膚の陥凹である。それらは、再建プロセスの間にコラーゲンを破壊する炎症によって引き起こされ、くぼみ(indentation)のエリアを残す。
全身性硬化症は、微小血管系の改変、免疫系の障害によって、ならびに結合組織におけるコラーゲンおよび他のマトリックス物質の大量の沈着によって特徴付けられる全身性結合組織疾患である。全身性硬化症は、皮膚ならびに胃腸管、肺、心臓、および腎臓などのような内臓の結合組織に影響を与える、臨床的に異質性の全身の障害である。全身性硬化症に起因する線維症の低下は、病気に冒された組織において、症状を寛解させ得るおよび/またはさらなる合併症を予防し得る。
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、一般的な肝臓疾患である。それはアルコール性肝臓疾患に似ているが、アルコールをほとんどまたはまったく飲まない人々において起こる。NASHにおける主な特徴は、炎症および損傷に加えて、肝臓に脂肪が多いことである。しかしながら、NASHは、重度となり得、また、肝硬変に至り得、肝臓は、永続的に損傷を受け、傷跡を残し、もはや適切に働くことができなくなる。
NASHは、通常、症状がわずかであるまたは全くないサイレントディジーズである。患者は、一般に、初期段階では体調が良く、一旦、疾患がより進むとまたは肝硬変が発症すると、疲労、体重減少、および虚弱などのような症状をやっと有し始める。NASHの進行は、数年、さらに数十年かかり得る。プロセスは止まり得、いくつかの症例において、特異的療法を伴うことなく自然に逆転し始めさえする。または、NASHは、ゆっくり悪化し、肝臓において瘢痕または線維症を出現させ、蓄積させ得る。線維症が悪化するにつれて、肝臓が、ひどく傷跡を残し、硬くなり、正常に機能することができない肝硬変が発症する。NASHを有するすべての人が、肝硬変を発症するとは限らないが、一旦、重篤な瘢痕または肝硬変が存在すると、進行を停止させることができる処置はほとんどない。肝硬変を有する人は、水分貯留、筋肉消耗、腸管からの出血、および肝不全を経験する。肝移植は、肝不全を伴う重い肝硬変のための唯一の処置であり、移植は、NASHを有する人々においてますます実行されている。NASHは、C型肝炎およびアルコール性肝臓疾患に次ぐ、アメリカにおける肝硬変の主な原因のうちの1つに数えられる。
腎(腎臓)線維症は、腎臓における線維性結合組織の過剰な形成に起因する。腎線維症は有意な罹患率および死亡率の原因となり、透析または腎臓移植の必要性に至る。線維症は、腎臓の機能単位であるネフロンのろ過または再吸収構成要素において起こり得る。多くの因子は、腎臓瘢痕、特に、糸球体ろ過の自己調節に関与する生理機能の乱れの一因となり得る。これは、さらには、正常な構造の、蓄積された細胞外マトリックスとの置換に至る。個々の細胞の生理機能におけるさまざまな変化は、細胞外マトリックス合成および分解の間のバランスにおける改変を刺激して、瘢痕を促進する、多数のペプチドおよび非ペプチドフィブロゲン(fibrogen)の産生に至る。
アンジオテンシン(1−7)およびそのアナログまたは誘導体
アンジオテンシンは、レニン−アンジオテンシン系のポリペプチドである。循環レニン−アンジオテンシン系(RAS)は、循環系のホメオスタシスにおいて十分に説明されている役割を有する。局所的な組織ベースのRASもまた、肺においてなどのように、存在し、傷害および修復応答において役割を果たす。天然に存在するアンジオテンシン(1−7)は、Asp1−Arg2−Val3−Tyr4−Ile5−His6−Pro7(配列番号1)のアミノ酸配列を有する直鎖状ポリペプチドである。レニン−アンジオテンシン系において、アンジオテンシン−(1−7)の血管拡張性の活性は、アンジオテンシンIIの血管収縮性の活性に対抗する。Ang−(1−7)は、Mas受容体に対する内因性のリガンドである。Mas受容体は、7つの膜貫通型領域を含有するGタンパク質共役受容体である。理論によって束縛されることを望むものではないが、アンジオテンシン(1−7)ポリペプチドまたはそのアナログおよび誘導体の投与が、Mas受容体の活性化を介して抗線維症の効果を及ぼし得るということが仮定される。
本発明に適したアンジオテンシン(1−7)またはそのアナログもしくは誘導体は、天然に存在するアンジオテンシン(1−7)、その機能的等価物、およびアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストを含む任意のアンジオテンシン(1−7)アゴニストを含む。本明細書において使用されるように、天然に存在するアンジオテンシン(1−7)の機能的等価物は、天然に存在するアンジオテンシン(1−7)に対してアミノ酸配列同一性を共有し、天然に存在するアンジオテンシン(1−7)と同じまたは類似する活性を実質的に保持する任意のペプチドを指す。用語「ペプチド」および「ポリペプチド」は、本出願において区別なく使用される。本明細書において使用されるように、用語「アンジオテンシン−(1−7)受容体」は、Gタンパク質共役型Mas受容体を包含する。本明細書において使用されるように、「アンジオテンシン(1−7)アゴニスト」または「アンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニスト」は、アンジオテンシン−(1−7)またはアンジオテンシン−(1−7)受容体、特にGタンパク質共役Mas受容体の機能において陽性な影響を有する任意の分子を包含する。たとえば、アンジオテンシン(1−7)アゴニストまたはアンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニストは、アンジオテンシン(1−7)またはアンジオテンシン−(1−7)受容体(つまりMas受容体)活性を、直接または間接的に増強する、強化する、活性化する、および/または増加させる。いくつかの実施形態において、アンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニストが、アンジオテンシン−(1−7)受容体(つまりMas受容体)と直接、相互作用する。そのようなアゴニストは、たとえば、タンパク質、化学化合物、小分子、核酸、抗体、薬剤、リガンド、または他の作用物質を含めて、ペプチド性または非ペプチド性であってもよい。
ある実施形態において、Ang(1−7)ポリペプチドを含む組成物が、7つを超える隣接するアミノ酸を含有するようにAng(1−7)ポリペプチドに連結された、さらなるアミノ酸を含有する。ある実施形態において、Ang(1−7)ポリペプチドを含む組成物が、7つ未満の隣接するアミノ酸を含有するようにAng(1−7)ポリペプチドから欠失させた、1つ以上のアミノ酸を含有する。
ある実施形態において、Ang(1−7)ポリペプチドを含む組成物が、プロテアーゼ抵抗性、血清安定性、および/または生物学的利用率を増加させるために、Ang(1−7)ポリペプチドになされた1つ以上の修飾を含有する。いくつかの実施形態において、適した修飾が、アセチル化、グリコシル化、ビオチン化、ペグ化、D−アミノ酸および/もしくは非天然アミノ酸との置換、ならびに/またはペプチドの環化から選択される。
Ang(1−7)ポリペプチド誘導体は、所望されるように、機能的に等価な分子または機能的に増強されたもしくは減少された分子を提供するために、アミノ酸残基の置換、追加、または欠失によってアミノ酸配列を改変することによって、作製することができる。本発明の誘導体は、機能的に等価なアミノ酸残基の置換を含有する、改変された配列を含む、配列番号1のアミノ酸配列のすべてまたは一部を、一次アミノ酸配列として含有するものを含むが、これらに限定されない。たとえば、配列内の1つ以上のアミノ酸残基は、同様の極性の他のアミノ酸によって置換することができ、これは、機能的等価物として作用し、サイレント改変をもたらす。配列内のアミノ酸についての置換は、アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択されてもよい。たとえば、正に荷電している(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リシン、およびヒスチジンを含む。無極性(疎水性)アミノ酸は、ロイシン、イソロイシン、アラニン、フェニルアラニン、バリン、プロリン、トリプトファン、およびメチオニンを含む。非荷電極性アミノ酸は、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンを含む。負に荷電している(酸性)アミノ酸は、グルタミン酸およびアスパラギン酸を含む。アミノ酸グリシンは、無極性アミノ酸ファミリーまたは非荷電(中性)極性アミノ酸ファミリーのいずれかに含まれていてもよい。アミノ酸のファミリー内でなされる置換は、保存的置換であることが一般に理解される。たとえば、ペプチド阻害剤のアミノ酸配列は、修飾するまたは置換することができる。
本明細書において使用されるように、用語「アミノ酸」は、その最も広範な意味において、ポリペプチド鎖の中に組み込むことができる任意の化合物および/または物質を指す。ある実施形態において、アミノ酸が、一般的な構造H2N−C(H)(R)−COOHを有する。ある実施形態において、アミノ酸が、天然に存在するアミノ酸である。ある実施形態において、アミノ酸が、合成または非天然アミノ酸(たとえばα,α−二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸)であり、いくつかの実施形態において、アミノ酸が、D−アミノ酸であり、ある実施形態において、アミノ酸が、L−アミノ酸、D−アミノ酸およびL−アミノ酸の組み合わせ、ならびに/または特別の特性を運ぶための、様々な「デザイナー(designer)」アミノ酸(たとえばβ−メチルアミノ酸、Cα−メチルアミノ酸、およびNα−メチルアミノ酸など)である。いくつかの実施形態において、N−末端が、アセチル化されてもよいおよび/またはC−末端が、アミド化されてもよい。「標準アミノ酸」は、両方とも自然界におけるペプチド中に組み込まれているL−およびD−アミノ酸の両方を含む、天然に存在するペプチドにおいて一般に見出される、20種の標準アミノ酸のいずれかを指す。「非標準」または「特殊アミノ酸」は、それが合成して調製されるか、天然の供給源から得られるかどうかにかかわらず、標準アミノ酸以外の、任意のアミノ酸を指す。本明細書において使用されるように、「合成または非天然アミノ酸」は、塩、アミノ酸誘導体(アミドなど)、および/または置換体を含むが、これらに限定されない、化学的に修飾されたアミノ酸を包含する。
ペプチド中にカルボキシおよび/またはアミノ末端アミノ酸を含むアミノ酸は、メチル化、アミド化、アセチル化、および/またはその活性に悪影響を及ぼすことなく、ペプチドの循環半減期を変化させることができる他の化学基との置換によって修飾することができる。特殊または非天然アミノ酸の例は、シトルリン、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、4−(E)−ブテニル−4(R)−メチル−N−メチルトレオニン(MeBmt)、N−メチル−ロイシン(MeLeu)、アミノイソ酪酸、スタチン(statine)、またN−メチル−アラニン(MeAla)を含むが、これらに限定されない。アミノ酸は、ジスルフィド結合に関与してもよい。用語「アミノ酸」は、「アミノ酸残基」と区別なく使用され、遊離アミノ酸および/またはペプチドのアミノ酸残基を指してもよい。それが遊離アミノ酸またはペプチドの残基を指すかどうかは、用語が使用される文脈から明らかであろう。
ある実施形態において、Ang(1−7)ポリペプチドが、1つ以上のL−アミノ酸、D−アミノ酸、および/または非天然アミノ酸を含有する。
本明細書において使用されるように、用語「逆方向のDペプチド」は、L−アミノ酸を含有するペプチドに比べて逆方向の配列で配置されたD−アミノ酸を含有するペプチドを指す。たとえば、L−アミノ酸ペプチドのC−末端残基は、D−アミノ酸ペプチドについてはN−末端になるなどである。逆方向のD−ペプチドは、望ましくは、L−アミノ酸ペプチドと同じ3次コンホメーションおよびそのため、同じ活性を保持するが、望ましくは、インビトロおよびインビボにおける酵素的分解に対してより安定性であり、そのため、もとのペプチドよりも大きな治療上の効能を有することができる(Brady and Dodson、Nature 368:692−693、1994;およびJameson and McDonnel、Nature 368:744−746、1994)。
本明細書において使用されるように、用語「逆方向のLペプチド」は、親ペプチドに比べて逆方向の配列で配置されたL−アミノ酸を含有するペプチドを指す。親ペプチドのC−末端残基は、逆方向のLペプチドについてはN−末端になるなどである。
天然に存在するアミノ酸のみを含有するペプチドに加えて、ペプチド模倣薬またはペプチドアナログもまた、本発明によって包含される。ペプチドアナログは、鋳型ペプチドと類似する特性を有する非ペプチド薬剤として製薬産業において一般に使用される。非ペプチド化合物は、「ペプチドミメティック(peptide mimetic)」またはペプチド模倣薬と称される(Fauchereら、Infect. Immun. 54:283−287(1986);Evansら、J. Med. Chem. 30:1229−1239(1987))。治療上有用なペプチドと構造的に関係するペプチドミメティックは、等価なまたは増強された治療上のまたは予防的な効果をもたらすように使用されてもよい。一般に、ペプチド模倣薬は、天然に存在する受容体結合ポリペプチドなどのような模範ポリペプチド(つまり生物学的または薬理学的活性を有するポリペプチド)に構造的に類似するが、当技術分野においてよく知られている方法によって、−CH2NH−、−CH2S−、−CH2−CH2−、−CH=CH−(シスおよびトランス)、−CH2SO−、−CH(OH)CH2−、−COCH2−などのような連結によって任意選択で交換された1つ以上のペプチド連結を有する(Spatola、Peptide Backbone Modifications、Vega Data, 1(3):267(1983);Spatolaら Life Sci. 38:1243−1249(1986);Hudsonら Int. J. Pept. Res. 14:177−185(1979);およびWeinstein. B.、1983、Chemistry and Biochemistry, of Amino Acids, Peptides and Proteins、Weinstein eds、Marcel Dekker、New−York,)。そのようなペプチドミメティックは、より経済的な産生、より優れた化学安定性、増強した薬理学的特性(たとえば半減期、吸収、効力、効率など)、低下した抗原性、および他を含む、天然に存在するポリペプチドにまさる、有意な利点を有していてもよい。
ペプチドは、インビトロにおいて生物学的活性を誘起するのに有効であってもよいが、インビボにおけるそれらの有効性は、プロテアーゼの存在によって低下するかもしれない。血清プロテアーゼは、特異的な基質必要条件を有する。基質は、L−アミノ酸および切断のためのペプチド結合の両方を有するに違いない。さらに、エキソペプチダーゼは、血清におけるプロテアーゼ活性の最も傑出している構成要素に相当するが、通常、ペプチドの第1のペプチド結合に対して作用し、遊離N−末端を必要とする(Powellら、Pharm. Res. 10:1268−1273(1993))。これを考慮すると、多くの場合、ペプチドの修飾バージョンを使用することは有利である。修飾ペプチドは、Ang(1−7)の所望の生物学的活性を与えるが、好都合には、プロテアーゼおよび/またはエキソペプチダーゼによる切断に対して直ちに感受性ではない、もとのL−アミノ酸ペプチドの構造的な特質を保持する。
同じタイプのD−アミノ酸とのコンセンサス配列の1つ以上のアミノ酸の体系的な置換は、より安定性のペプチドを生成するために使用されてもよい(たとえばL−リシンの代わりにD−リシン)。したがって、本発明のペプチド誘導体またはペプチド模倣薬は、順方向または逆方向の順で、すべてL、すべてD、または混合D、Lペプチドであってもよい。ペプチダーゼが基質としてD−アミノ酸を利用することができないので、N−末端またはC−末端D−アミノ酸の存在は、ペプチドのインビボ安定性を増加させる(Powellら、Pharm. Res. 10:1268−1273(1993))。逆方向のDペプチドは、L−アミノ酸を含有するペプチドに比べて逆方向の配列で配置されたD−アミノ酸を含有するペプチドである。したがって、L−アミノ酸ペプチドのC−末端残基は、D−アミノ酸ペプチドについてはN−末端になるなどである。逆方向のDペプチドは、L−アミノ酸ペプチドと同じ2次コンホメーションおよびそのため、同様の活性を保持するが、インビトロおよびインビボにおける酵素的分解に対してより抵抗性であり、したがって、もとのペプチドよりも大きな治療上の効能を有することができる(Brady and Dodson、Nature 368:692−693(1994);Jamesonら、Nature 368:744−746(1994))。同様に、逆方向のLペプチドは、標準的な方法を使用して生成されてもよく、親ペプチドのC−末端が、逆方向のLペプチドのN−末端に代わる。有意な2次構造を有していない、L−アミノ酸ペプチドの逆方向のL−ペプチド(たとえば短いペプチド)は、L−アミノ酸ペプチドの側鎖の同じ間隔およびコンホメーションを保持し、そのため、多くの場合、もとのL−アミノ酸ペプチドと同様の活性を有することが企図される。さらに、逆方向のペプチドは、L−およびD−アミノ酸の組み合わせを含有してもよい。アミノ酸の間の間隔および側鎖のコンホメーションは、保持され、もとのL−アミノ酸ペプチドと同様の活性をもたらしてもよい。
そのうえ、コンセンサス配列または実質的に同一なコンセンサス配列変異を含む、束縛された(constrained)ペプチドは、当技術分野においてよく知られている方法によって生成されてもよい(Rizo and Gierasch, Ann. Rev. Biochem. 61:387−418(1992))。たとえば、束縛されたペプチドは、ジスルフィド架橋を形成することができるシステイン残基を追加することによって生成され、それによって、環状ペプチドがもたらされてもよい。環状ペプチドは、遊離N−末端またはC−末端を有しないように構築することができる。したがって、それらは、ペプチド末端で切断しないエンドペプチターゼに対して感受性となり得るが、それらは、エキソペプチダーゼによるタンパク質分解に対して感受性ではない。N−末端またはC−末端D−アミノ酸を有するペプチドおよび環状ペプチドのアミノ酸配列は、それぞれ、N−末端もしくはC−末端D−アミノ酸残基の存在またはそれらの環式構造を除いて、それらが対応するペプチドの配列と、通常、同一である。
本発明はまた、環化ペプチドをも含む。本明細書において使用されるように、環状ペプチドは、2つの隣接していない残基の間に分子内共有結合を有する。分子内結合は、骨格間、側鎖−骨格間、または側鎖間結合であってもよい(つまり、直鎖状ペプチドの末端官能基および/または末端もしくは内部の残基の側鎖官能基は、環化を実現するように連結されてもよい)。典型的な分子内結合は、ジスルフィド、アミド、およびチオエーテル結合を含む。ポリペプチドを環化するための様々な方法は、そのようなペプチドに対してなすことができる他の多くの修飾のように、当技術分野においてよく知られている。全般的な議論については、内容が参照によって本明細書において組み込まれる国際公開第01/53331号パンフレットおよび国際公開第98/02452号パンフレットを参照されたい。そのような環状結合および他の修飾もまた、本発明の環状ペプチドおよび誘導体化合物に適用することができる。
本明細書において記載される環状ペプチドは、L−アミノ酸、D−アミノ酸、または任意のその組み合わせの残基を含んでいてもよい。アミノ酸は、天然または非天然の供給源由来のものであってもよい、ただし、少なくとも1つのアミノ基および少なくとも1つのカルボキシル基が、分子中に存在することを条件とし、α−およびβ−アミノ酸が、一般に、好ましい。環状ペプチドはまた、1つ以上のまれなアミノ酸(4−ヒドロキシプロリンまたはヒドロキシリシンなど)、有機酸もしくはアミド、ならびに/または種々様々の側鎖修飾ならびに/または置換のいずれか(たとえばメチル化、ベンジル化、t−ブチル化、トシル化、アルコキシカルボニル化、ならびにその他同種のもの)を有するまたは有さない、エステル化された(たとえばベンジル、メチル、もしくはエチルエステル)またはアミド化されたC−末端カルボン酸を有するならびに/またはN−末端アミノ基の修飾(たとえばアセチル化もしくはアルコキシカルボニル化)を有するアミノ酸などのような、一般的なアミノ酸の誘導体を含有してもよい。適した誘導体は、N−アセチル基(環化前に直鎖状ペプチドのN−末端に相当するアミノ基がアセチル化される)ならびに/またはC−末端アミド基(つまり、環化前の直鎖状ペプチドのカルボキシ末端がアミド化される)を有するアミノ酸を含む。環状ペプチドと共に存在してもよい、一般的なアミノ酸以外の残基は、ペニシラミン、β,β−テトラメチレンシステイン、β,β−ペンタメチレンシステイン、β−メルカプトプロピオン酸、β,β−ペンタメチレン−β−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトベンゼン、2−メルカプトアニリン、2−メルカプトプロリン、オルニチン、ジアミノ酪酸、α−アミノアジピン酸、m−アミノメチル安息香酸、およびα,β−ジアミノプロピオン酸を含むが、これらに限定されない。
N−アセチル化および/またはC−アミド化を伴うまたは伴わない直鎖状ペプチドの合成後に、環化は、当技術分野においてよく知られている様々な技術のいずれかによって実現されてもよい。一実施形態内で、結合が、反応性アミノ酸側鎖間で生成されてもよい。たとえば、ジスルフィド架橋は、様々な方法のいずれかを使用してペプチドを酸化することによって、2つのチオール含有残基を含む直鎖状ペプチドから形成されてもよい。あるそのような方法内で、チオールの空気酸化は、塩基性および中性の水性媒体を使用して、数日の期間にわたって、ジスルフィド連結を生成することができる。ペプチドは、凝集および分子間副反応を最小限にするために、高希釈度で使用される。その代わりに、I2およびK3Fe(CN)6などのような強い酸化剤を、ジスルフィド連結を形成させるために使用することができる。当業者らは、Met、Tyr、Trp、またはHisの感受性の側鎖を酸化しないように注意しなければならないということを認識するであろう。さらなる実施形態内で、環化が、アミド結合形成によって実現されてもよい。たとえば、ペプチド結合は、末端官能基(つまり、環化前の直鎖状ペプチドのアミノおよびカルボキシ末端)の間で形成されてもよい。他のそのような実施形態内で、直鎖状ペプチドが、D−アミノ酸を含む。その代わりに、環化は、N−末端アセチル基および/またはC−末端アミドを伴ってまたは伴うことなく、一方の末端および残基側鎖を連結することによってまたは2つの側鎖を使用して、達成されてもよい。ラクタム結合を形成することができる残基は、リシン、オルニチン(Orn)、α−アミノアジピン酸、m−アミノメチル安息香酸、α,β−ジアミノプロピオン酸、グルタミン酸、またはアスパラギン酸を含む。アミド結合を形成するための方法は、当技術分野において一般によく知られている。あるそのような方法内で、カルボジイミド媒介性のラクタム形成は、DCC、DIC、ED AC、またはDCCIとのカルボン酸の反応によって達成することができ、環化を完成するために、遊離アミノ基と直ちに反応させることができるO−アシル尿素の形成がもたらされる。その代わりに、環化は、アジド法を使用して実行することができ、反応性アジド中間体は、ヒドラジドを介してアルキルエステルから生成される。その代わりに、環化は、活性化エステルを使用して達成することができる。エステルのアルコキシ炭素上の電子吸引置換基の存在は、アミノ分解に対するそれらの感受性を増加させる。p−ニトロフェノール、N−ヒドロキシ化合物、およびポリハロゲン化フェノールのエステルの高い反応性は、これらの「活性エステル」を、アミド結合の合成において有用にした。さらなる実施形態内で、チオエーテル連結が、チオール含有残基の側鎖および適切に誘導体化されたα−アミノ酸の間で形成されてもよい。例として、リシン側鎖は、カルボジイミドカップリング法(DCC、EDAC)を通して、ブロム酢酸にカップルし、次いで、上記に述べられるチオール含有残基のいずれかの側鎖と反応させ、チオエーテル連結を形成させることができる。ジチオエーテルを形成するために、任意の2つのチオール含有側鎖を、DMF中のジブロモエタンおよびジイソプロピルアミンと反応させることができる。
ペプチドのサブ配列(subsequence)における天然のアミノ酸に対する天然に存在しないアミノ酸の置換もまた、タンパク質分解に対する抵抗性を与えることができる。そのような置換は、たとえば、生物学的活性に影響を与えることなく、N−末端に対して作用するエキソペプチダーゼによるタンパク質分解に対する抵抗性を与えることができる。天然に存在しないアミノ酸の例は、α,α−二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、C−α−メチルアミノ酸、β−アミノ酸、およびβ−メチルアミノ酸を含む。本発明において有用なアミノ酸アナログは、β−アラニン、ノルバリン、ノルロイシン、4−アミノ酪酸、オルニチン(orithine)、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、シクロヘキシルアラニン、2−アミノイソ酪酸、6−アミノヘキサン酸、t−ブチルグリシン、フェニルグリシン、o−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、および他の特殊アミノ酸を含んでいてもよいが、これらに限定されない。さらに、天然に存在しないアミノ酸を有するペプチドの合成は、当技術分野において通常のものである。
ペプチドのN−末端またはC−末端残基に対して作用するペプチダーゼに対する抵抗性を与える他の有効なアプローチは、ペプチド末端に化学基を追加することであり、その結果、修飾ペプチドは、もはや、ペプチダーゼに対する基質ではなくなる。あるそのような化学修飾は、いずれかまたは両方の末端でのペプチドのグリコシル化である。ある化学修飾、特に、N−末端グリコシル化は、ヒト血清におけるペプチドの安定性を増加させることが示された(Powellら、Pharm. Res. 10:1268−1273(1993))。血清安定性を増強する他の化学修飾は、アセチル基などのような1〜20個の炭素の低級アルキルからなるN−末端アルキル基の追加および/またはC−末端アミドもしくは置換アミド基の追加を含むが、これらに限定されない。特に、本発明は、N−末端アセチル基および/またはC−末端アミド基を持つペプチドからなる修飾ペプチドを含む。
Ang(1−7)ポリペプチドはまた、通常ペプチドの一部ではない、さらなる化学成分を含有する、他のタイプのペプチド誘導体を含む、ただし、誘導体が、ペプチドの所望の機能的な活性を保持することを条件とする。そのような誘導体の例は、(1)アミノ末端または他の遊離アミノ基のN−アシル誘導体、ここで、アシル基が、アルカノイル基(たとえばアセチル、ヘキサノイル、オクタノイル)、アロイル基(たとえばベンゾイル)、またはF−moc(フルオレニルメチル−O−CO−)などのような保護基であってもよい;(2)カルボキシ末端または他の遊離カルボキシ基もしくは遊離ヒドロキシル基のエステル;(3)アンモニアまたは適したアミンとの反応によって産生されるカルボキシ末端または他の遊離カルボキシル基のアミド;(4)リン酸化誘導体;(5)抗体または他の生物学的リガンドに対してコンジュゲートされた誘導体および他のタイプの誘導体;ならびに(6)ポリエチレングリコール(PEG)鎖に対してコンジュゲートされた誘導体を含む。
Ang(1−7)ポリペプチドまたはAng(1−7)ポリペプチドのアナログもしくは誘導体は、合成(たとえば排他的(exclusive)固相合成法、部分的(partial)固相合成法、フラグメント縮合、古典的溶液合成、天然化学物質ライゲーション)および組換え技術を含む、当業者らに知られているペプチド合成の任意の方法によって得られてもよい。たとえば、ペプチドまたはペプチド誘導体は、固相ペプチド合成によって得ることができ、これは、手短かに言えば、樹脂(たとえばベンズヒドリルアミン樹脂、クロロメチル化樹脂、ヒドロキシメチル樹脂)に対してC−末端アミノ酸のカルボキシル基をカップルし、N−アルファ保護アミノ酸を連続的に追加することからなる。保護基は、当技術分野において知られている任意のそのような基であってもよい。それぞれの新しいアミノ酸が成長中の鎖に対して追加される前に、鎖に対して追加された直前のアミノ酸の保護基が、除去される。そのような固相合成法は、たとえばMerrifield、J. Am. Chem. Soc. 85: 2149(1964);Valeら、Science 213:1394−1397(1981)によって、米国特許第4,305,872号明細書および米国特許第4,316,891号明細書、Bodonskyら Chem. Ind.(London), 38:1597(1966);ならびにPietta and Marshall、Chem. Comm. 650(1970)において、Lubellら “Peptides” Science of Synthesis 21.11, Chemistry of Amides. Thieme、Stuttgart、713−809(2005)において概説される技術によって開示されている。適切な樹脂に対するアミノ酸のカップリングは、当技術分野においてよく知られており、米国特許第4,244,946号明細書において開示されている(Houver−Weyl、Methods of Organic Chemistry. Vol E22a. Synthesis of Peptides and Peptidomimetics、Murray Goodman、Editor−in−Chief、Thieme、Stuttgart. New York 2002において概説される)。
他に定義されない限り、本明細書において使用される科学用語および技術用語および命名法は、本発明が関係する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般に、細胞培養、感染、分子生物学法、およびその他同種のものの手順は、当技術分野において使用される一般的な方法である。そのような標準的な技術は、たとえばAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience、New York、2001;およびSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 3rd edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press、N.Y.、2001などのような参照マニュアルにおいて見つけることができる。
Ang(1−7)ポリペプチドまたはアナログもしくは誘導体の調製の任意のプロセスの間に、いずれかの関係する分子上の感受性の反応基を保護することは、望ましくてもよい。これは、Protective Groups In Organic Synthesis by T.W. Greene & P.G.M. Wuts、1991、John Wiley and Sons、New−York;およびPeptides: chemistry and Biology by Sewald and Jakubke、2002、Wiley−VCH、Wheinheim p.142において記載されるものなどのような、従来の保護基の手段によって実現されてもよい。たとえばアルファアミノ保護基は、アシル型保護基(たとえばトリフルオロアセチル、ホルミル、アセチル)、脂肪族ウレタン保護基(たとえばt−ブチルオキシカルボニル(BOC)、シクロヘキシルオキシカルボニル)、芳香族ウレタン型保護基(たとえばフルオレニル−9−メトキシ−カルボニル(Fmoc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、Cbz誘導体)、およびアルキル型保護基(たとえばトリフェニルメチル、ベンジル)を含む。アミノ酸側鎖保護基は、ベンジル(ThrおよびSerに対して)、Cbz(Tyr、Thr、Ser、Arg、Lys)、メチルエチル、シクロヘキシル(Asp、His)、Boc(Arg、His、Cys)などを含む。保護基は、当技術分野において知られている方法を使用して、好都合な続く段階で除去されてもよい。
さらに、Ang(1−7)ポリペプチドまたはAng(1−7)ポリペプチドアナログもしくは誘導体は、保護基を有する有機相において、FMOCプロトコールに従って合成されてもよい。望ましくは、ペプチドは、C18クロマトグラフィーカラムで高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により70%の収率で精製され、10〜60%のアセトニトリル勾配で溶出される。ペプチドの分子量は、質量分析法によって検証することができる(Fields, G.B. “Solid−Phase Peptide Synthesis” Methods in Enzymology. Vol. 289、Academic Press、1997において概説される)。
その代わりに、Ang(1−7)ポリペプチドまたはAng(1−7)ポリペプチドアナログもしくは誘導体は、たとえば、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を使用して、組換え系において調製されてもよい。ポリペプチドが、同じポリペプチド内に、1つを超える上記修飾を含有してもよいことが理解される。
本明細書において記載されるAng(1−7)ポリペプチド、アナログ、または誘導体はまた、線維症の障害を有するまたは線維症に対して感受性である被験体を処置するための医薬組成物において、製剤されてもよい。
例示的なアンジオテンシン(1−7)、アナログ、および/または誘導体
直鎖状アンジオテンシン(1−7)ペプチドならびにペプチドアナログおよび誘導体
本明細書において使用されるように、用語「アンジオテンシン(1−7)ペプチド」は、天然に存在するアンジオテンシン(1−7)および天然に存在するアンジオテンシン(1−7)の任意の機能的等価物、アナログ、または誘導体の両方を指す。本明細書において使用されるように、用語「ペプチド」および「ポリペプチド」は、直鎖状および環状ペプチドの両方を含む。用語「アンジオテンシン−(1−7)」、「アンジオテンシン−(1−7)」、および「Ang−(1−7)」は、区別なく使用される。
天然に存在するアンジオテンシン(1−7)
天然に存在するアンジオテンシン(1−7)(Ang−(1−7)とも呼ばれる)は、下記に示される7アミノ酸ペプチドである:
Asp1−Arg2−Val3−Tyr4−Ile5−His6−Pro7(配列番号1)。
それは、レニン−アンジオテンシン系の一部であり、アンジオテンシノゲンとしても知られている前駆物質から変換され、これは、主として肝臓によって恒常的に産生され、血液循環の中に放出されるα−2−グロブリンである。アンジオテンシノゲンは、セルピンファミリーのメンバーであり、レニン基質としても知られている。ヒトアンジオテンシノゲンは、452アミノ酸長であるが、他の種は、さまざまなサイズのアンジオテンシノゲンを有する。典型的に、最初の12個のアミノ酸は、アンジオテンシン活性にとって最も重要である:
Asp1−Arg2−Val3−Tyr4−Ile5−His6−Pro7−Phe8−His9−Leu10−Val11−Ile12(配列番号4)。
異なるタイプのアンジオテンシンは、様々な酵素の作用によって形成され得る。たとえば、アンジオテンシン(1−7)は、アンジオテンシン変換酵素2(ACE 2)の作用によって生成される。
Ang−(1−7)は、Mas受容体に対する内因性のリガンドである。Mas受容体は、7つの膜貫通型領域を含有するGタンパク質共役受容体である。本明細書において使用されるように、用語「アンジオテンシン−(1−7)受容体」は、Gタンパク質共役型Mas受容体を包含する。
本明細書において使用されるように、用語「天然に存在するアンジオテンシン(1−7)」は、天然の供給源から精製された任意のアンジオテンシン(1−7)ペプチドおよび天然に存在するアンジオテンシン(1−7)と同一なアミノ酸配列を有する、任意の組換えで産生されたまたは化学的に合成されたペプチドを含む。
様々な実施形態において、被験体に対して投与されるアンジオテンシン(1−7)ペプチドが、Asp−Arg−Val−Tyr−Ile、Asp−Arg−Val−Tyr−Ile−His、またはAsp−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Proである。A(1−7)は、国際公開第2008/018792号パンフレットにおいて記載されるものなどのような、任意の適した方式で直鎖状をしていてもよいまたは環化されてもよく、位置4および7の間にチオエーテルブリッジを含むA(1−7)を含むが、これらに限定されない。
Ang−(1−7)の機能的等価物、アナログ、または誘導体
いくつかの実施形態において、本発明に適したアンジオテンシン(1−7)ペプチドが、天然に存在するAng−(1−7)の機能的等価物である。本明細書において使用されるように、天然に存在するAng−(1−7)の機能的等価物は、天然に存在するAng−(1−7)に対してアミノ酸配列同一性を共有し、天然に存在するAng−(1−7)と同じまたは類似する活性を実質的に保持する任意のペプチドを指す。たとえば、いくつかの実施形態において、本明細書において記載される天然に存在するAng−(1−7)の機能的等価物が、本明細書において記載されるもしくは当技術分野において知られている方法を使用して決定される血管新生促進活性または一酸化窒素放出、血管拡張、内皮機能の改善、抗利尿、もしくは血管新生に陽性に影響を与える、本明細書において議論される他の特性のうちの1つなどのような活性を有する。いくつかの実施形態において、本明細書において記載される天然に存在するAng−(1−7)の機能的等価物が、本明細書において記載されるまたは当技術分野において知られている様々なアッセイを使用して決定されるように、アンジオテンシン−(1−7)受容体(たとえばGタンパク質共役型Mas)に対して結合するまたはそれを活性化することができる。いくつかの実施形態において、Ang−(1−7)の機能的等価物がまた、アンジオテンシン(1−7)類似体または誘導体または機能的誘導体とも呼ばれる。
典型的に、アンジオテンシン(1−7)の機能的等価物は、天然に存在するAng−(1−7)とアミノ酸配列類似性を共有する。いくつかの実施形態において、本発明によるAng−(1−7)の機能的等価物が、天然に存在するAng−(1−7)中に現われる7つのアミノ酸由来の少なくとも3つの(たとえば少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7つの)アミノ酸を含む配列を含有し、少なくとも3つの(たとえば少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、または少なくとも7つの)アミノ酸が、それらが天然に存在するAng−(1−7)中に現われるように、それらの相対的な位置および/または間隔を維持する。
いくつかの実施形態において、Ang−(1−7)の機能的等価物がまた、天然に存在するAng−(1−7)のアミノ酸配列と少なくとも約50%(たとえば少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、またはそれ以上)同一な配列を含有する、任意のペプチドをも包含する。アミノ酸配列同一性のパーセンテージは、アミノ酸配列のアライメントによって決定することができる。アミノ酸配列のアライメントは、たとえば、BLAST、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどのような、公的に入手可能なコンピューターソフトウェアを使用して、当技術分野における技術の範囲内にある様々な方法で実現することができる。当業者らは、比較されている完全長の配列に対して最大限のアライメントを実現するために必要とされる、任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。好ましくは、WU−BLAST−2ソフトウェアは、アミノ酸配列同一性を決定するために使用される(Altschulら、Methods in Enzymology 266、460−480(1996);http://blast.wustl/edu/blast/README.html)。WU−BLAST−2は、いくつかの検索パラメーターを使用し、これらの大部分は、デフォルト値に設定される。調整可能なパラメーターは、以下の値により設定される:overlap span=1、overlap fraction=0.125、word threshold(T)=11。HSPスコア(S)およびHSP S2パラメーターは、動的な値であり、特定の配列の組成に依存して、プログラム自体によって確立されるが、最小値は、上記に示されるように、調整され、設定される。
いくつかの実施形態において、Ang−(1−7)の機能的等価物、類似体、または誘導体が、天然に存在するAng−(1−7)のフラグメントである。いくつかの実施形態において、Ang−(1−7)の機能的等価物、類似体、または誘導体が、天然に存在するAng−(1−7)において、アミノ酸置換、欠失、および/または挿入を含有する。Ang−(1−7)機能的等価物、類似体、または誘導体は、置換、追加、および/または欠失によって、アミノ酸配列を改変することによって作製することができる。たとえば、天然に存在するAng−(1−7)(配列番号1)の配列内の1つ以上のアミノ酸残基は、同様の極性の他のアミノ酸によって置換することができ、これは、機能的等価物として作用し、サイレント改変をもたらす。配列内のアミノ酸に対する置換は、アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択されてもよい。たとえば、正に荷電している(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リシン、およびヒスチジンを含む。無極性(疎水性)アミノ酸は、ロイシン、イソロイシン、アラニン、フェニルアラニン、バリン、プロリン、トリプトファン、およびメチオニンを含む。非荷電極性アミノ酸は、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンを含む。負に荷電している(酸性)アミノ酸は、グルタミン酸およびアスパラギン酸を含む。アミノ酸グリシンは、無極性アミノ酸ファミリーまたは非荷電(中性)極性アミノ酸ファミリーのいずれかに含まれていてもよい。アミノ酸のファミリー内になされる置換は、保存的置換であることが一般に理解される。たとえば、ペプチド阻害剤のアミノ酸配列は、修飾するまたは置換することができる。
Ang−(1−7)機能的等価物、類似体、および誘導体の例は、下記の「例示的なアンジオテンシン(1−7)ペプチド」と表題をつけた部において記載される。
アンジオテンシン−(1−7)ペプチドは、任意の長さとすることができる。いくつかの実施形態において、本発明によるアンジオテンシン−(1−7)ペプチドが、たとえば、4〜25アミノ酸(たとえば4〜20、4〜15、4〜14、4〜13、4〜12、4〜11、4〜10、4〜9、4〜8、4〜7アミノ酸)を含有することができる。いくつかの実施形態において、直鎖状ペプチドが、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25アミノ酸を含有する。
いくつかの実施形態において、アンジオテンシン−(1−7)ペプチドが、プロテアーゼ抵抗性、血清安定性、および/または生物学的利用率を増加させるために、1つ以上の修飾を含有する。いくつかの実施形態において、適した修飾が、ペグ化、アセチル化、グリコシル化、ビオチン化、D−アミノ酸および/もしくは非天然アミノ酸との置換、ならびに/またはペプチドの環化から選択される。
例示的なアンジオテンシン−(1−7)ペプチド
ある態様において、本発明が、直鎖状アンジオテンシン−(1−7)ペプチドを提供する。上記に議論されるように、天然に存在するAng−(1−7)の構造は、以下のとおりである。
Asp1−Arg2−Val3−Tyr4−Ile5−His6−Pro7(配列番号1)
本発明のペプチドおよびペプチドアナログは、一般に、以下の配列によって示すことができる:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7(配列番号5)
またはその薬学的に許容され得る塩とすることができる。
Xaa1は、任意のアミノ酸またはジカルボン酸である。ある実施形態において、Xaa1が、Asp、Glu、Asn、Acpc(1−アミノシクロペンタンカルボン酸)、Ala、Me2Gly(N,N−ジメチルグリシン)、Pro、Bet(ベタイン、1−カルボキシ−N,N,N−トリメチルメタンアミニウム水酸化物)、Glu、Gly、Asp、Sar(サルコシン)、またはSuc(コハク酸)である。あるそのような実施形態において、Xaa1が、AspまたはGluなどのような、負に荷電しているアミノ酸、典型的に、Aspである。
Xaa2は、Arg、Lys、Ala、Cit(シトルリン)、Orn(オルニチン)、アセチル化Ser、Sar、D−Arg、およびD−Lysである。ある実施形態において、Xaa2が、ArgまたはLysなどのような、正に荷電しているアミノ酸、典型的に、Argである。
Xaa3は、Val、Ala、Leu、Nle(ノルロイシン)、Ile、Gly、Lys、Pro、HydroxyPro(ヒドロキシプロリン)、Aib(2−アミノイソ酪酸)、Acpc、またはTyrである。ある実施形態において、Xaa3が、Val、Leu、Ile、またはNleなどのような脂肪族アミノ酸、典型的に、ValまたはNleである。
Xaa4は、Tyr、Tyr(PO3)、Thr、Ser、homoSer(ホモセリン)、azaTyr(アザ−α1−ホモ−L−チロシン)、またはAlaである。ある実施形態において、Xaa4が、Tyr、Ser、またはThrなどのようなヒドロキシル置換アミノ酸、典型的に、Tyrである。
Xaa5は、Ile、Ala、Leu、norLeu、Val、またはGlyである。ある実施形態において、Xaa5が、Val、Leu、Ile、またはNleなどのような脂肪族アミノ酸、典型的に、Ileである。
Xaa6は、His、Arg、または6−NH2−Phe(6−アミノフェニルアラニン(6−aminophenylalaine))である。ある実施形態において、Xaa6が、ArgまたはHisなどのような、完全にまたは部分的に正に荷電しているアミノ酸である。
Xaa7は、Cys、Pro、またはAlaである。
ある実施形態において、1つ以上のXaa1〜Xaa7が、天然に存在するAng−(1−7)における対応するアミノ酸と同一である。あるそのような実施形態において、1つまたは2つのXaa1〜Xaa7の他すべてが、天然に存在するAng−(1−7)における対応するアミノ酸と同一である。他の実施形態において、Xaa1〜Xaa6すべてが、天然に存在するAng−(1−7)における対応するアミノ酸と同一である。
ある実施形態において、Xaa3が、Nleである。Xaa3が、Nleである場合、1つ以上のXaa1〜Xaa2およびXaa4〜7が、天然に存在するAng−(1−7)における対応するアミノ酸と任意選択で同一である。あるそのような実施形態において、1つまたは2つのXaa1〜Xaa2およびXaa4〜7の他すべてが、天然に存在するAng−(1−7)における対応するアミノ酸と同一である。他の実施形態において、Xaa1〜Xaa2およびXaa4〜7のすべてが、天然に存在するAng−(1−7)における対応するアミノ酸と同一であり、アミノ酸配列:Asp−Arg−Nle−Tyr−Ile−His−Pro(配列番号2)がもたらされる。
ある実施形態において、ペプチドが、アミノ酸配列Asp−Arg−Val−Ser−Ile−His−Cys(配列番号3)またはAsp−Arg−Val−ser−Ile−His−Cys(配列番号6)を有する。
例示的な環状アンジオテンシン(1−7)ペプチド
ある態様において、本発明が、Angにおける位置Tyr4およびPro7に対応するアミノ酸の側鎖の間になどのように、連結を含む環状アンジオテンシン−(1−7)(Ang−(1−7))ペプチドアナログを提供する。これらのペプチドアナログは、典型的に、7アミノ酸残基を含むが、切断可能な配列を含むこともできる。より詳細に下記に議論されるように、本発明は、フラグメントおよび1つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸によって置換されるアナログ(フラグメントを含む)を含む。そのようなフラグメントまたはアナログの1つの例は、Asp1−Arg2−Val3−Ser4−Ile5−His6−Cys7(配列番号3)であり、連結が、Ser4およびCys7の間で形成される。
以下の部は、4−位および7−位の残基を連結するチオエーテル結合に関して本発明の態様を記載するが、他の連結(上記に記載されるような)が、チオエーテルブリッジに取って代わることができ、他の残基を環化することができることが理解されたい。チオエーテルブリッジはまた、一硫化ブリッジまたはAla−S−Alaの場合には、ランチオニンブリッジとも呼ばれる。チオエーテルブリッジ含有ペプチドは、以下の式のうちの1つを有する2つのアミノ酸によって形成することができる。
これらの式において、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6が、独立して、−H、アルキル基(たとえばC1〜C6アルキル、C1〜C4アルキル)、またはアラルキル基であり、アルキル基およびアラルキル基が、1つ以上のハロゲン、−OH、または−NRR’基(ここで、RおよびR’が、独立して、−HまたはC1〜C4アルキルである)と任意選択で置換される。ある実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6が、それぞれ、独立して、−Hまたは−CH3である、すべて−Hである。
ある実施形態において、本発明が、式(I)によるチオエーテルブリッジを含むAngアナログまたは誘導体を提供する。典型的に、R1、R2、R3、およびR4は、−Hおよび−CH3から独立して選択される。式(I)によるチオエーテルブリッジを含むペプチドは、たとえば、ランチビオティック酵素によってまたはジスルフィドの硫黄押し出し(sulfur extrusion)によって、産生することができる。一実施例において、硫黄が押し出されるジスルフィドが、位置4におけるD−システインおよび位置7におけるL−システインによってまたは位置4におけるD−システインおよび位置7におけるL−ペニシラミンによって、形成することができる(たとえばGalande, Trent and Spatola(2003)Biopolymers 71、534−551を参照されたい)。
他の実施形態において、2つのアミノ酸の連結が、式(II)または式(III)において示されるブリッジとすることができる。式(II)によるチオエーテルブリッジを含むペプチドは、たとえば、位置4におけるD−ホモシステインおよび位置7におけるL−システインによって形成されるジスルフィドの硫黄押し出しによって、生成することができる。同様に、式(III)におけるチオエーテルブリッジを含むペプチドは、たとえば位置4におけるD−システインおよび位置7におけるL−ホモシステインによって形成されるジスルフィドの硫黄押し出しによって、生成することができる。
上記に議論されるように、本発明のAngアナログおよび誘導体は、長さおよびアミノ酸組成において変動する。本発明のAngアナログおよび誘導体は、好ましくは、生物学的活性を有するまたはタンパク分解により活性化することができる不活性前駆体分子である(10個のアミノ酸を有するアンジオテンシン(I)が、2つのアミノ酸の切断によって活性フラグメントに変換される方法など)。Angアナログまたは誘導体のサイズは、変動し得るが、3〜7 Nle−チオエーテル環構造を含む「コア」五量体セグメントが包含される限り、典型的に、約5〜10アミノ酸である。本発明のアナログまたは誘導体のアミノ酸配列は、変動し得るが、典型的に、それが、生物学的に活性であるまたはタンパク分解により活性化されるようになることができることを条件とする。アナログまたは誘導体の生物学的活性は、放射性リガンド結合分析、インビトロ細胞活性化アッセイ、およびインビボ実験を含む、当技術分野において知られている方法を使用して決定することができる。たとえばGodeny and Sayeski(2006)Am. J. Physiol. Cell. Physiol. 291:C1297−1307;Sarrら、Cardiovasc. Res.(2006)71:794−802;およびKoziarzら(1933)Gen. Pharmacol. 24:705−713を参照されたい。
代表的な環状Ang(1−7)アナログは、天然Ang(1−7)(Asp1−Arg2−Val3−Cyc4−Ile5−His6−Cyc7、配列番号7)から誘導される、[Cyc4−7]Ang(1−7)と命名される4,7−環化アナログを含む。これらのアナログは、Cyc4−7成分として、式(I)〜(III)において示されるチオエーテルブリッジのうちの1つを有することができ、たとえば、Cyc4およびCyc7が、一緒に、式(I)によって示され、ここで、R1〜R4が、それぞれ、−Hまたは−CH3、典型的に−Hであるなどである。
4および7以外の位置のアミノ酸は、天然に存在するペプチドと同じまたは異なるものとすることができる、典型的に、アナログが、生物学的機能を保持することを条件とする。1つの例として、Asp−Arg−Val−Ser−Ile−His−Cys(配列番号3)がある。不活性前駆物質について、生物学的機能は、生物学的に活性なフラグメント(たとえばAng(1−7))にそれを切断することができるアンジオテンシン変換酵素に対するアナログの感受性またはフラグメント自体の生物学的活性の一方または両方を指す。ある実施形態において、本発明のAngアナログが、内在性の機能を有しないが、1つ以上の天然に存在するアンジオテンシン化合物の効果を阻害する。
ペプチドの長さのみが変動するAngアナログおよび誘導体は、以下のものを含む:
天然Ang−(1−7)(Asp1−Arg2−Val3−Cyc4−Ile5−His6−Cyc7、配列番号7)から誘導される、[Cyc4−7]Ang−(1−7)と命名される4,7−環化アナログ
天然アンジオテンシンI(Ang−(1〜10))(Asp1−Arg2−Nle3−Cyc4−Ile5−His6−Cyc7−Phe8−His9−Leu10、配列番号8)から誘導される、[Nle3, Cyc4−7]Ang−(1〜10)と命名される4,7−環化アナログ;
天然アンジオテンシンII(Ang−(1〜8))(Asp1−Arg2−Nle3−Cyc4−Ile5−His6−Cyc7−Phe8、配列番号9)から誘導される、[Nle3, Cyc4−7]Ang−(1〜8)と命名される4,7−環化アナログ;
天然アンジオテンシンIII(Ang−(2〜8))(Arg2−Nle3−Cyc4−Ile5−His6−Cyc7−Phe8、配列番号10)から誘導される、[Nle3, Cyc4−7]Ang−(2〜8)と命名される4,7−環化アナログ;
天然アンジオテンシンIV(Ang−(3〜8))(Nle3−Cyc4−Ile5−His6−Cyc7−Phe8、配列番号11)から誘導される、[Nle3, Cyc4−7]Ang−(3〜8)と命名される4,7−環化アナログ;
天然Ang−(1−7)(Asp1−Arg2−Nle3−Cyc4−Ile5−His6−Cyc7、配列番号12)から誘導される、[Nle3, Cyc4−7]Ang−(1−7)と命名される4,7−環化アナログ;および
天然Ang−(1〜9)(Asp1−Arg2−Nle3−Cyc4−Ile5−His6−Cyc7−Phe8−His9、配列番号13)から誘導される、[Nle3, Cyc4−7]Ang−(1〜9)と命名される4,7−環化アナログ。
これらのアナログは、Cyc4−7成分として、式(I)〜(III)において示されるチオエーテルブリッジのうちの1つを有することができ、たとえば、Cyc4およびCyc7が、式(I)によって示され、ここで、R1〜R4が、それぞれ、−Hまたは−CH3、典型的に−Hであるなどである。
天然アンジオテンシンペプチドのアミノ酸配列と比較して、Cyc4−7アナログの位置4および7のアミノ酸は、上記に示されるチオエーテル環構造の導入を可能にするために修飾される。Angアナログの長さに加えて、3、4、および7以外の位置のアミノ酸は、天然に存在するペプチドと同じまたは異なるものとすることができる、典型的に、アナログが、生物学的機能を保持することを条件とする。[Cyc4−7]Ang−(1〜10)のような不活性前駆物質のアナログについては、生物学的機能は、生物学的に活性なフラグメント(たとえばAng−(1〜8)もしくはAng−(1−7))にそれを切断することができるアンジオテンシン変換酵素に対するアナログの感受性またはフラグメント自体の生物学的活性の一方または両方を指す。ある実施形態において、本発明のAngアナログまたは誘導体が、内在性の機能を有しないが、1つ以上の天然に存在するアンジオテンシン化合物の効果を阻害する。
ある実施形態において、本発明のAngアナログが、式(IV):
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cyc4−Xaa5−Xaa6−Cyc7(IV、配列番号14)によって示される。
Xaa1は、任意のアミノ酸であるが、典型的に、GluまたはAspなどのような負に荷電しているアミノ酸、より典型的には、Aspである。
Xaa2は、ArgまたはLysなどのような正に荷電しているアミノ酸、典型的に、Argである。
Xaa3は、Leu、Ile、またはValなどのような脂肪族アミノ酸、典型的に、Valである。
Cyc4は、Cyc7と協力して、チオエーテルブリッジを形成する。Cyc4は、D−立体異性体および/またはL−立体異性体、典型的に、D−立体異性体とすることができる。Cyc4(Cyc7と一緒に)の例は、式(I)、(II)、および(III)において示される。典型的に、式(I)、(II)、および(III)におけるR基は、−Hまたは−CH3、とりわけ−Hである。
Xaa5は、Leu、Ile、またはValなどのような脂肪族アミノ酸、典型的に、Ileである。
Xaa6は、Hisである。
Cyc7は、式(I)、(II)、または(III)においてなどのように、Cyc4と協力して、チオエーテルブリッジを形成する。Cyc7は、D−立体異性体および/またはL−立体異性体、典型的に、L−立体異性体とすることができる。Cyc7(Cyc4と一緒に)の例は、式(I)、(II)、(III)、および(IV)において示される。典型的に、式(I)、(II)、(III)、および(IV)におけるR基は、−Hまたは−CH3、とりわけ−Hである。
ある実施形態において、1つ以上のXaa1〜Xaa6(Cyc4およびCyc7以外)が、天然に存在するAng−(1−7)における対応するアミノ酸と同一である。あるそのような実施形態において、1つまたは2つのXaa1〜Xaa6の他すべてが、天然に存在するAng−(1−7)における対応するアミノ酸と同一である。他の実施形態において、Xaa1〜Xaa6すべてが、天然に存在するAng−(1−7)における対応するアミノ酸と同一である。
ある実施形態において、Cyc4およびCyc7が、Abu(2−アミノ酪酸)およびAla(アラニン)から独立して選択され、ここで、Alaが、少なくとも1つの位置にある。したがって、環状アナログは、−Ala4−S−Ala7−(式(I)、ここで、R1〜R4が、それぞれ−Hである);−Ala4−S−Abu7−(式(I):R1〜R3が−Hであり、R4が−CH3である)、または−Abu4−S−Ala7−(式(I):R1、R3、およびR4が−Hであり、R2が−CH3である)によって形成されるチオエーテル連結を有することができる。環状アナログの特定の例は、−Abu4−S−Ala7−または−Ala4−S−Ala7−連結を含む。
ある実施形態において、本発明は、以下の構造式によって示されるアミノ酸配列Asp−Arg−Val−Abu−Ile−His−Ala(配列番号15)またはアミノ酸配列Asp−Arg−Val−Ala−Ile−His−Ala(配列番号16)を有する、位置4および位置7の間にチオエーテルブリッジを有するAng−(1−7)アナログを提供する。
ある実施形態において、本発明のAngアナログまたは誘導体が、式(V):
Xaa1−Xaa2−Nle3−Cyc4−Xaa5−Xaa6−Cyc7−Xaa8−Xaa9−Xaa10(V、配列番号17)によって示される。
上記に議論されるように、1つ以上のXaa1、Xaa2、Xaa8、Xaa9、およびXaa10は、ある実施形態において不在である。たとえば、(1)Xaa10が、不在である、(2)Xaa9およびXaa10が、不在である、(3)Xaa8、Xaa9、およびXaa10が、不在である、(4)Xaa1が、不在である、(5)Xaa1およびXaa10が、不在である、(6)Xaa1、Xaa9、およびXaa10が、不在である、(7)Xaa1、Xaa8、Xaa9、およびXaa10が、不在である、(8)Xaa1およびXaa2が、不在である、(9)Xaa1、Xaa2、およびXaa10が、不在である、(10)Xaa1、Xaa2、Xaa9、およびXaa10が、不在である、または(11)Xaa1、Xaa2、Xaa8、Xaa9、およびXaa10が、不在である。これらの実施形態のそれぞれについて、残りのアミノ酸は、下記に記載される特徴を有する。
Xaa1は、存在する場合、任意のアミノ酸であるが、典型的に、GluまたはAspなどのような負に荷電しているアミノ酸、より典型的には、Aspである。
Xaa2は、存在する場合、ArgまたはLysなどのような正に荷電しているアミノ酸、典型的に、Argである。
Nle3は、ノルロイシンである。
Cyc4は、Cyc7と協力して、チオエーテルブリッジを形成する。Cyc4は、D−立体異性体および/またはL−立体異性体、典型的に、D−立体異性体とすることができる。Cyc4(Cyc7と一緒に)の例は、式(I)、(II)、および(III)において示される。典型的に、式(I)、(II)、および(III)におけるR基は、−Hまたは−CH3、とりわけ−Hである。
Xaa5は、Leu、Nle、Ile、またはValなどのような脂肪族アミノ酸、典型的に、Ileである。
Xaa6は、Hisである。
Cyc7は、式(I)、(II)、または(III)においてなどのように、Cyc4と協力して、チオエーテルブリッジを形成する。Cyc7は、D−立体異性体および/またはL−立体異性体、典型的に、D−立体異性体とすることができる。Cyc7(Cyc4と一緒に)の例は、式(I)、(II)、および(III)において示される。典型的に、式(I)、(II)、および(III)におけるR基は、−Hまたは−CH3、とりわけ−Hである。
Xaa8は、存在する場合、Pro以外のアミノ酸、典型的に、PheまたはIleである。ある実施形態において、Ileが、Ang(1〜8)の阻害剤をもたらす。ある実施形態において、Pheが、Ang(1〜8)またはAng(1〜10)の生物学的活性を維持する。
Xaa9は、存在する場合、Hisである。
Xaa10は、存在する場合、脂肪族残基、たとえばIle、Val、またはLeu、典型的に、Leuである。
ある実施形態において、1つ以上のXaa1〜Xaa10(Nle3、Cyc4、およびCyc7以外)が、天然に存在するAng(Ang−(1−7)、Ang(1〜8)、Ang(1〜9)、Ang(1〜10)、Ang(2〜7)、Ang(2〜8)、Ang(2〜9)、Ang(2〜10)、Ang(3〜8)、Ang(3〜9)、およびAng(3〜10)を含む)における対応するアミノ酸と同一である。あるそのような実施形態において、1つまたは2つのXaa1〜Xaa10の他すべて(存在するものについて)が、天然に存在するAngにおける対応するアミノ酸と同一である。他の実施形態において、Xaa1〜Xaa10すべて(存在するものについて)が、天然に存在するAngにおける対応するアミノ酸と同一である。
ある実施形態において、Cyc4およびCyc7が、Abu(2−アミノ酪酸)およびAla(アラニン)から独立して選択され、ここで、Alaが、少なくとも1つの位置にある。したがって、−Ala4−S−Ala7−(式(I)、ここで、R1〜R4が、それぞれ−Hである);−Ala4−S−Abu7−(式(I):R1〜R3が−Hであり、R4が−CH3である)、または−Abu4−S−Ala7−(式(I):R1、R3、およびR4が−Hであり、R2が−CH3である)によって形成されるチオエーテル連結を含む環状アナログが包含される。特定の環状アナログは、−Abu4−S−Ala7−または−Ala4−S−Ala7−連結を含む。
特に、本発明は、アミノ酸配列Asp−Arg−Nle−Abu−Ile−His−Ala(配列番号18)またはアミノ酸配列Asp−Arg−Nle−Ala−Ile−His−Ala(配列番号19)を有する、位置4および位置7の間にチオエーテルブリッジを有する、Ang−(1−7)アナログまたは誘導体を提供する。
他の態様において、本発明は、Ang−(1〜8)アンタゴニスト活性を有する、位置4および位置7の間にチオエーテルブリッジを有する、Ang−(1〜8)アナログまたは誘導体、特に、アミノ酸配列Asp−Arg−Nle−Abu−Ile−His−Ala−Ile(配列番号20)、アミノ酸配列Asp−Arg−Nle−Ala−Ile−His−Ala−Ile(配列番号21)、またはアミノ酸配列Asp−Arg−Nle−Abu−Ile−His−Ala−Ile(配列番号22)を有するAng(1〜8)アナログまたは誘導体を提供する。
アルキル基は、完全に飽和した直鎖または分岐非芳香族炭化水素である。典型的に、直鎖または分岐アルキル基は、1〜約20、好ましくは、1〜約10の炭素原子を有する。直鎖および分岐アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ペンチル、およびオクチルを含む。C1〜C4直鎖または分岐アルキル基はまた、「低級アルキル」基とも呼ばれる。
アラルキル基は、アリール基によって置換されたアルキル基である。芳香族(アリール)基は、フェニル、ナフチル、およびアントラシルなどのような炭素環式芳香族基ならびにイミダゾリル、チエニル、フリル、ピリジル、ピリミジル、ピラニル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、チアゾリル、オキサゾリル、およびテトラゾリルなどのようなヘテロアリール基を含む。芳香族基はまた、炭素環式芳香環またはヘテロアリール環が1つ以上の他のヘテロアリール環に対して縮合された、縮合多環式芳香族環系をも含む。例として、ベンゾチエニル、ベンゾフリル、インドリル、キノリニル、ベンゾチアゾール、ベンゾキサゾール、ベンゾイミダゾール、キノリニル、イソキノリニル、およびイソインドリルを含む。
アルケニル基は、1つ以上の二重結合を含む直鎖または分岐非芳香族炭化水素である。典型的に、直鎖または分岐アルケニル基は、2〜約20、好ましくは、2〜約10の炭素原子を有する。直鎖および分岐アルケニル基の例は、エテニル、n−プロペニル、およびn−ブテニルを含む。
芳香族(アリール)基は、フェニル、ナフチル、およびアントラシルなどのような炭素環式芳香族基ならびにイミダゾリル、チエニル、フリル、ピリジル、ピリミジル、ピラニル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、チアゾリル、オキサゾリル、およびテトラゾリルなどのようなヘテロアリール基を含む。芳香族基はまた、炭素環式芳香環またはヘテロアリール環が1つ以上の他のヘテロアリール環に対して縮合された、縮合多環式芳香族環系をも含む。例として、ベンゾチエニル、ベンゾフリル、インドリル、キノリニル、ベンゾチアゾール、ベンゾキサゾール、ベンゾイミダゾール、キノリニル、イソキノリニル、およびイソインドリルを含む。
非ペプチドアナログ
本発明はまた、Ang(1−7)の非ペプチドアナログを含む。そのようなアナログは、一酸化窒素放出、血管拡張、内皮機能の改善、抗利尿、または本明細書において議論される他の特性のうちの1つなどのような、Ang(1−7)の1つ以上の機能特性を有することができる。
例示的なクラスの非ペプチドアナログは、アンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストである。本明細書において使用されるように、用語「アンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニスト」は、アンジオテンシン−(1−7)受容体、特にGタンパク質共役Mas受容体の機能において陽性な影響を有する任意の分子を包含する。いくつかの実施形態において、アンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニストが、アンジオテンシン−(1−7)受容体(つまりMas受容体)活性を、直接または間接的に増強する、強化する、活性化する、および/または増加させる。いくつかの実施形態において、アンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニストが、アンジオテンシン−(1−7)受容体(つまりMas受容体)と直接、相互作用する。そのようなアゴニストは、たとえば、タンパク質、化学化合物、小分子、核酸、抗体、薬剤、リガンド、または他の作用物質を含めて、ペプチド性または非ペプチド性であってもよい。いくつかの実施形態において、アンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストが、非ペプチド性アゴニストである。
例示的なクラスのアンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニストは、1−(p−チエニルベンジル)イミダゾールである。これらの非ペプチドアンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニストの例は、式(VI)によって示され
またはその薬学的に許容され得る塩であり、
R1が、ハロゲン、ヒドロキシル、(C1〜C4)−アルコキシ、(C1〜C8)−アルコキシであり、1〜6の炭素原子が、ヘテロ原子O、S、またはNH(好ましくはOによって)、テトラヒドロピランまたはテトラヒドロフランなどのような飽和環状エーテルによって置換された(C1〜C4)−アルコキシ、非置換であるまたはハロゲン、(C1〜C3)−アルキル、(C1〜C3)−アルコキシ、およびトリフルオロメチルから選択される置換基によって置換されるO−(C1〜C4)−アルケニル、O−(C1〜C4)−アルキルアリール、またはアリールオキシによって交換され、
R2が、CHO、COOH、または(3)CO−O−(C1〜C4)−アルキルであり、
R3が、(C1〜C4)−アルキルまたはアリールであり、
R4が、水素、ハロゲン(クロロ、ブロモ、フルオロ)、または(C1〜C4)−アルキルであり、
Xが、酸素または硫黄であり、
Yが、酸素または−NH−であり、
R5が、水素、(C1〜C6)−アルキル、または(C1〜C4)−アルキルアリールであり、Yが、−NH−である場合、R5が、水素であり、
R6が、(C1〜C5)−アルキルである。
ある実施形態において、R2が、COOHまたはCO−O−(C1〜C4)−アルキルである場合、R1が、ハロゲンではない。
いくつかの実施形態において、アンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニストが、以下の構造によって示されるAVE 0991、5−ホルミル−4−メトキシ−2−フェニル−1[[4−[2−(エチルアミノカルボニルスルホンアミド)−5−イソブチル−3−チエニル]−フェニル]メチル]−イミダゾールである。
他の例示的なクラスのアンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニストは、p−チエニルベンジルアミドである。これらの非ペプチドアンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニストの例は、構造式(VII)によって示され
またはその薬学的に許容され得る塩であり、
R1が、非置換であるもしくはNH2、ハロゲン、O−(C1〜C3)−アルキル、CO−O−(C1〜C3)−アルキル、およびCO2Hから選ばれるラジカルによって置換される(C1〜C5)−アルキル、(C3〜C8)−シクロアルキル、(C1〜C3)−アルキル−(C3〜C8)−シクロアルキル、非置換であるもしくはハロゲンおよびO−(C1〜C3)−アルキルから選ばれるラジカルによって置換される(C6〜C10)−アリール、アリールラジカルが非置換であるもしくはハロゲンおよびO−(C1〜C3)−アルキルから選ばれるラジカルによって置換される(C1〜C3)−アルキル−(C6〜C10)−アリール、(C1〜C5)−ヘテロアリール、または(C1〜C3)−アルキル−(C1〜C5)−ヘテロアリールであり、
R2が、水素、非置換であるもしくはハロゲンおよびO−(C1〜C3)−アルキルから選ばれるラジカルによって置換される(C1〜C6)−アルキル、(C3〜C8)−シクロアルキル、(C1〜C3)−アルキル−(C3〜C8)−シクロアルキル、非置換であるもしくはハロゲン、O−(C1〜C3)−アルキル、およびCO−O−(C1〜C3)−アルキルの中から選ばれるラジカルによって置換される(C6〜C10)−アリール、または非置換であるもしくはハロゲンおよびO−(C1〜C3)−アルキルから選ばれるラジカルによって置換される(C1〜C3)−アルキル−(C6〜C10)−アリールであり、
R3が、水素、COOH、またはCOO−(C1〜C4)−アルキルであり、
R4が、水素、ハロゲン、または(C1〜C4)−アルキルであり、
R5が、水素または(C1〜C6)−アルキルであり、
R6が、水素、(C1〜C6)−アルキル、(C1〜C3)−アルキル−(C3〜C8)−シクロアルキル、または(C2〜C6)−アルケニルであり、
Xが、酸素またはNHである。
アンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニストのさらなる例は、内容が参照によって本明細書において組み込まれる米国特許第6,235,766号明細書において記載される。
上記に記載されるアンジオテンシン(1−7)またはそのアナログもしくは誘導体は、薬学的に許容され得る塩として存在することができる。本明細書において使用されるように、「薬学的に許容され得る塩」は、ペプチドまたは等価な化合物の所望の活性を保持するが、好ましくは、ペプチドを使用する系のペプチドまたは他の構成要素の活性に有害に影響を与えない塩を指す。そのような塩の例は、無機酸、たとえば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、およびその他同種のものにより形成される酸付加塩である。塩はまた、たとえば酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモ酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、およびその他同種のものなどのような有機酸により形成されてもよい。カチオン物質から形成される塩は、これらの無機および有機酸の共役塩基を利用してもよい。塩はまた、亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、およびその他同種のものなどのような多価金属カチオンによりまたはN,N’ジベンジルエチレンジアミンもしくはエチレンジアミンから形成される有機カチオンまたはその組み合わせ(たとえば亜鉛タンニン酸塩)により形成されてもよい。無毒性の、生理学的に許容され得る塩が、好ましい。
治療有効服用量の、誘導体およびアナログを含むアンジオテンシン(1−7)ペプチドは、様々な実施形態において、さまざまな量で存在してもよい。たとえば、いくつかの実施形態において、治療有効量のアンジオテンシン(1−7)ペプチドが、約10〜1000mgの範囲にわたる量であってもよい(たとえば約20mg〜1,000mg、30mg〜1,000mg、40mg〜1,000mg、50mg〜1,000mg、60mg〜1,000mg、70mg〜1,000mg、80mg〜1,000mg、90mg〜1,000mg、約10〜900mg、10〜800mg、10〜700mg、10〜600mg、10〜500mg、100〜1000mg、100〜900mg、100〜800mg、100〜700mg、100〜600mg、100〜500mg、100〜400mg、100〜300mg、200〜1000mg、200〜900mg、200〜800mg、200〜700mg、200〜600mg、200〜500mg、200〜400mg、300〜1000mg、300〜900mg、300〜800mg、300〜700mg、300〜600mg、300〜500mg、400mg〜1,000mg、500mg〜1,000mg、100mg〜900mg、200mg〜800mg、300mg〜700mg、400mg〜700mg、および500mg〜600mg)。いくつかの実施形態において、アンジオテンシン(1−7)ペプチドが、約10mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg以上の量で存在する。いくつかの実施形態において、アンジオテンシン(1−7)ペプチドが、約1000mg、950mg、900mg、850mg、800mg、750mg、700mg、650mg、600mg、550mg、500mg、450mg、400mg、350mg、300mg、250mg、200mg、150mg、または100mg以下の量で存在する。
他の実施形態において、治療有効服用量が、たとえば約0.001mg/kg体重〜500mg/kg体重、たとえば約0.001mg/kg体重〜400mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜300mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜200mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜100mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜90mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜80mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜70mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜60mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜50mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜40mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜30mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜25mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜20mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜15mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜10mg/kg体重であってもよい。
他の実施形態において、治療有効服用量が、たとえば約0.0001mg/kg体重〜0.1mg/kg体重、たとえば約0.0001mg/kg体重〜0.09mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.08mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.07mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.06mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.05mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜約0.04mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.03mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.02mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.019mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.018mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.017mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.016mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.015mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.014mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.013mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.012mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.011mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.01mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.009mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.008mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.007mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.006mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.005mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.004mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.003mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.002mg/kg体重であってもよい。いくつかの実施形態において、治療有効用量が、0.0001mg/kg体重、0.0002mg/kg体重、0.0003mg/kg体重、0.0004mg/kg体重、0.0005mg/kg体重、0.0006mg/kg体重、0.0007mg/kg体重、0.0008mg/kg体重、0.0009mg/kg体重、0.001mg/kg体重、0.002mg/kg体重、0.003mg/kg体重、0.004mg/kg体重、0.005mg/kg体重、0.006mg/kg体重、0.007mg/kg体重、0.008mg/kg体重、0.009mg/kg体重、0.01mg/kg体重、0.02mg/kg体重、0.03mg/kg体重、0.04mg/kg体重、0.05mg/kg体重、0.06mg/kg体重、0.07mg/kg体重、0.08mg/kg体重、0.09mg/kg体重、または0.1mg/kg体重であってもよい。特定の個体に対する有効用量は、個体の必要性に依存して、ある期間にわたって変動させることができる(たとえば増加させるまたは減少させる)。
いくつかの実施形態において、治療有効投薬量が、10μg/kg/日、50ug/日 μg/kg/日、100μg/kg/日、250μg/kg/日、500μg/kg/日、1000μg/kg/日、またはそれ以上の投薬量であってもよい。様々な実施形態において、アンジオテンシン(1−7)またはそのアナログもしくは誘導体またはその医薬の塩の量は、0.01μg/kg〜10mg/kg;0.1μg/kg〜5mg/kg;0.1μg/kg〜1000μg/kg;0.1μg/kg〜900μg/kg;0.1μg/kg〜900μg/kg;0.1μg/kg〜800μg/kg;0.1μg/kg〜700μg/kg;0.1μg/kg〜600μg/kg;0.1μg/kg〜500μg/kg;または0.1μg/kg〜400μg/kgの、患者に対する投薬量を提供するのに十分である。
本発明に従って投与される特定の用量または量は、たとえば、所望の転帰の性質および/もしくは程度、投与のルートおよび/もしくはタイミングの詳細、ならびに/または1つ以上の特質(たとえば体重、年齢、個体歴、遺伝子の特質、ライフスタイルパラメーター、心欠損の重症度および/もしくは心欠損の危険性のレベルなど、またはその組み合わせ)に依存して、変動してもよい。そのような用量または量は、当業者らによって決定することができる。いくつかの実施形態において、適切な用量または量は、標準的な臨床技術に従って、決定される。たとえば、いくつかの実施形態において、適切な用量または量が、疾患重症度インデックススコアを、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100%、またはそれ以上、低下させるのに十分な用量または量である。たとえば、いくつかの実施形態において、適切な用量または量が、疾患重症度インデックススコアを、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100%低下させるのに十分な用量または量である。その代わりにまたはそのうえ、いくつかの実施形態において、適切な用量または量が、投与される、望ましいまたは最適な投薬量範囲または量を同定するのを支援するための、1つ以上のインビトロまたはインビボアッセイの使用を通して決定される。
投薬スケジュール
様々な実施形態は、異なる投薬レジメンを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、アンジオテンシン(1−7)またはそのアナログもしくは誘導体が、継続的な注入を介して投与される。いくつかの実施形態において、継続的な注入が、静脈内のものである。他の実施形態において、継続的な注入が、皮下のものである。その代わりにまたはそのうえ、いくつかの実施形態において、アンジオテンシン(1−7)またはそのアナログもしくは誘導体が、2か月ごとに、毎月、毎月2度、3週間ごとに、2週間ごとに、毎週、毎週2度、毎週3度、毎日、毎日2度、または他の臨床的に望ましい投薬スケジュールで投与される。単一の被験体のための投薬レジメンは、一定間隔である必要がないが、被験体の必要性に依存して、ある期間にわたって変動させることができる。
併用療法
いくつかの実施形態において、アンジオテンシン(1−7)またはそのアナログもしくは誘導体が、併用療法の一部として使用されるであろう。1つ以上の脳状態のための、任意の知られている治療薬または治療が、本明細書において開示されるように、1つ以上のアンジオテンシン(1−7)またはそのアナログもしくは誘導体と共に使用されてもよいことが企図される。併用療法として、1つ以上のアンジオテンシン(1−7)またはそのアナログもしくは誘導体と共に使用されてもよい、例示的な化合物は、コルチコステロイド、シクロホスファミド(Cytoxan)、アザチオプリン(Imuran)、N−アセチルシステイン(NAC)、KALYDECO(商標)(N−(2,4−ジ−tert−ブチル−5−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン−3−カルボキサミド)、PULMOZYME(登録商標)(組換えヒトデオキシリボヌクレアーゼI)、TOBI(登録商標)(トブラマイシン)、および高張食塩水を含むが、これらに限定されない。
送達
様々な送達系は、知られており、ペプチド、ペプチド誘導体、ペプチド模倣薬、非ペプチドアゴニスト、またはポリペプチド、ペプチド誘導体、ペプチド模倣薬、および/もしくは非ペプチドアゴニストを含む医薬組成物を投与するために使用することができる。本明細書において記載される医薬組成物は、任意の適したルートによって投与することができる。静脈内もしくは筋肉内注射、脳室内もしくは髄腔内注射(中枢神経系投与のために)、経口的に、局所的に、皮下に、皮膚粘膜に、肺内に(たとえば吸入)、結膜下に、眼内に、または鼻内を介して、皮内、舌下、膣、直腸、もしくは硬膜外ルートを含むが、これらに限定されない。
当技術分野においてよく知られている他の送達系は、たとえば水溶液、微粒子またはマイクロカプセルにおけるカプセル化を介して、本明細書において記載される医薬組成物の送達のために使用することができる。本発明の医薬組成物はまた、放出制御系において送達することもできる。たとえば、高分子物質を使用することができる(たとえばSmolen and Ball、Controlled Drug Bioavailability, Drug product design and performance、1984、John Wiley & Sons;Ranade and Hollinger、Drug Delivery Systems, pharmacology and toxicology series、2003、2nd edition、CRRC Pressを参照されたい)。その代わりに、ポンプが使用されてもよい(Saudekら、N. Engl. J. Med. 321:574(1989))。本明細書において記載される組成物はまた、薬剤の放出制御を実現するのに有用である、ある種類の生分解性ポリマー、たとえばポリ乳酸、ポリオルトエステル、架橋両親媒性ブロック共重合体およびヒドロゲル、ポリヒドロキシ酪酸、ならびにポリジヒドロピランにカップルされてもよい。
いくつかの実施形態において、アンジオテンシン(1−7)またはそのアナログもしくは誘導体またはその塩が、エアロゾル製剤として調製される。エアロゾル調製物は、気体の媒体における固体物質および液滴の安定性の分散液または懸濁液である。この製剤を介して送達されたペプチドは、重力沈降、慣性による密着、および拡散によって気道中に沈着する。エアロゾル製剤を投与するために使用することができる例示的なエアロゾルデバイスのタイプは、ジェットまたは超音波ネブライザーおよび計量吸入器(MDI)を含む。計量吸入器は、最も頻繁に使用されるエアロゾル送達系である。いくつかの実施形態において、医薬組成物が、エアロゾル化製剤において、治療有効量のアンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはA(1−7)のうちの少なくとも5つの隣接するアミノ酸のそのアナログもしくは誘導体を含む。
いくつかの実施形態において、アンジオテンシン(1−7)またはそのアナログもしくは誘導体またはその塩が、粉末として調製され、肺に薬剤/賦形剤粉末を送達するために設計された乾燥粉末吸入器(DPI)の使用によってまたは注射器もしくは同様のデバイスを使用する通気によって、肺のルートを介して投与することができる。
医薬組成物
医薬組成物は、経口剤形、局所クリーム、局所パッチ、イオン導入形態、坐剤、鼻内噴霧剤および吸入器、点眼剤、眼内注射形態、デポー形態ならびに注射可能なおよび注入可能な溶液を含む様々な形態とすることができる。医薬組成物を調製するための方法は、当技術分野においてよく知られている。
医薬組成物は、典型的に、有害な副作用を回避しながらまたは最小限にしながら、所望の治療効果を実現するのに有効な量の活性作用物質(たとえばペプチド、ペプチド誘導体、ペプチド模倣薬、または非ペプチドアナログ)を含有する。活性作用物質の薬学的に許容され得る調製物および塩は、本明細書において提供され、当技術分野においてよく知られている。ポリペプチドおよびその他同種のものの投与については、有害な副作用がほとんどまたは全く伴わない、治療上有効である投与量が、望ましくは選ばれる。特定の疾患、障害、または状態の処置において有効である、治療薬または医薬組成物の量は、疾患の性質および重症度、作用の標的部位、被験体の体重、被験体が採り入れている特別な食事、使用されている併用医薬品、投与ルート、ならびに当業者らによって認識される他の因子に依存する。投薬量は、疾患の程度などのような従来の因子および被験体由来の様々なパラメーターに従って臨床医によって適合させることができる。典型的に、0.0001〜1,000mg/kg/日は、被験体に対して投与される。有効用量は、インビトロにおける試験系または動物モデル試験系に由来する用量応答曲線から外挿されてもよい。
いくつかの実施形態において、アンジオテンシン(1−7)またはそのアナログもしくは誘導体を含む医薬組成物が、固体形態(顆粒剤、粉末、もしくは坐剤を含む)において、エアロゾル化形態において、または液体形態(たとえば溶液、懸濁液、もしくはエマルション)において構成されてもよい。医薬組成物は、様々な溶液において適用されてもよい。本発明に従う使用に適した溶液は、滅菌されており、十分な量のアンジオテンシン(1−7)またはそのアナログもしくは誘導体を溶解し、提唱される適用に対して有害ではない。
上記に記載されるように、医薬組成物は、望ましくは、薬学的に許容され得るキャリヤと組み合わせられたアンジオテンシン(1−7)ペプチド、ペプチド誘導体、ペプチド模倣薬、および/または非ペプチドアゴニストを含む。キャリヤという用語は、ペプチド、ペプチド誘導体、ペプチド模倣薬、および/または非ペプチドアゴニストが共に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような医薬キャリヤは、水などのような滅菌の液体および鉱油、植物油(たとえばダイズ油もしくはコーン油)、動物油、または合成起源の油を含む油を含む。水性グリセロールおよびデキストロース溶液ならびに生理食塩水もまた、本発明の医薬組成物の液体キャリヤとして用いられてもよい。キャリヤの選択は、ペプチド、ペプチド誘導体、またはペプチド模倣薬の性質、その溶解性、および他の生理学的特性ならびに送達および適用の標的部位などのような、当技術分野において十分に認識されている因子に依存する。適した医薬キャリヤの例は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy by Alfonso R. Gennaro、2003、21th edition、Mack Publishing Companyにおいて記載される。さらに、経口投与に適したキャリヤは、当技術分野において知られており、たとえば米国特許第6,086,918号明細書、米国特許第6,673,574号明細書、米国特許第6,960,355号明細書、および米国特許第7,351,741号明細書ならびに国際公開第2007/131286号パンフレットにおいて記載され、これらの開示は、参照によってこれによって組み込まれる。
医薬調製物において組み込まれてもよい、さらなる薬学的に適した物質は、傍細胞吸収を増加されることが意図されるものを含む吸収促進薬、賦形剤、pH調節剤およびバッファー、容量オスモル濃度調整剤、保存剤、安定剤、酸化防止剤、界面活性剤、シックナー、皮膚軟化薬、分散剤、調味料、着色剤、ならびに湿潤剤を含む。
適した医薬賦形剤の例は、水、グルコース、スクロース、ラクトース、グリコール、エタノール、グリセロールモノステアレート、ゼラチン、デンプン粉(たとえば米粉)、チョーク、ステアリン酸ナトリウム、麦芽、塩化ナトリウム、およびその他同種のものを含む。Ang(1−7)ポリペプチドを含む医薬組成物は、溶液、カプセル、錠剤、クリーム、ゲル、粉末、徐放性製剤、およびその他同種のものの形態をとることができる。組成物は、トリグリセリドなどのような従来のバインダーおよびキャリヤと共に、坐剤として製剤することができる(Remington:The Science and Practice of Pharmacy by Alfonso R. Gennaro、2003、21th edition、Mack Publishing Companyを参照されたい)。そのような組成物は、被験体に対する適切な投与のための形態をもたらすために、適した量のキャリヤと一緒に、治療有効量の治療用組成物を含有する。製剤は、投与のモードおよび作用の標的部位(たとえば特定の器官または細胞型)に適するように設計される。
本発明に従って使用されてもよい増量剤またはバインダーの例は、アラビアゴム、アルギン酸、リン酸カルシウム(第二)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストリン、デキストレイト(dextrates)、スクロース、チロース、アルファ化デンプン、硫酸カルシウム、アミロース、グリシン、ベントナイト、マルトース、ソルビトール、エチルセルロース、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ゼラチン、グルコース、グアーガム、液状グルコース、圧縮糖(compressible sugar)、ケイ酸アルミウニムマグネシウム、マルトデキストリン、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリル酸、ポビドン、アルギン酸ナトリウム、トラガカントゴム、結晶セルロース、デンプン、およびゼインを含む。ある実施形態において、増量剤またはバインダーが、結晶セルロースである。
使用されてもよい崩壊剤の例は、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(低置換度)、結晶セルロース、粉末セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、メチルセルロース、ポラクリリンカリウム、ポビドン、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン、二亜硫酸ナトリウム、エダタミル二ナトリウム(disodium edathamil)、エデト酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)架橋ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrollidines)、アルファ化デンプン、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルナトリウムデンプン(sodium carboxymethyl starch)、結晶セルロースを含む。
潤滑剤の例は、ステアリン酸カルシウム、キャノーラ油、グリセリルパルミトステアラート、硬化植物油(I型)、酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸フマル酸ナトリウム(sodium stearate fumarate)、ステアリン酸、滑石、およびステアリン酸亜鉛、グリセリルベハペート(glyceryl behapate)、ラウリル硫酸マグネシウム、硼酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム/酢酸ナトリウム(組み合わせて)、DL−ロイシンを含む。
シリカフローコンディショナー(silica flow conditioner)の例は、コロイド状二酸化ケイ素、ケイ酸アルミウニムマグネシウム、およびグアーガムを含む。他の最も好ましいシリカフローコンディショナーは、二酸化ケイ素からなる。
安定剤の例は、アラビアゴム、アルブミン、ポリビニルアルコール、アルギン酸、ベントナイト、リン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素、シクロデキストリン、モノステアリン酸グリセリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、三ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミウニムマグネシウム、プロピレングリコール、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸ナトリウム、カルナウバろう、キサンタンガム、デンプン、ステアラート(複数可)、ステアリン酸、ステアリンモノグリセリド、およびステアリルアルコールを含む。
アンジオテンシン(1−7)またはそのアナログもしくは誘導体を含む医薬組成物はまた、中性または塩形態として製剤された組成物をも含む。薬学的に許容され得る塩は、遊離アミノ基により形成されるものおよび遊離カルボキシル基と反応するものを含む。製薬産業において一般に使用される、無毒性のアルカリ金属、アルカリ土類金属、およびアンモニウム塩は、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アンモニウム、およびプロタミン亜鉛塩を含み、これらは、当技術分野においてよく知られている方法によって調製される。適した有機または無機酸と本発明の化合物を反応させることによって一般に調製される、無毒性の酸付加塩もまた、含まれる。代表的な塩は、臭化水素酸塩、塩酸塩、吉草酸塩、蓚酸塩、オレイン酸塩、ラウリン酸塩(laureate)、ホウ酸塩、安息香酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、酢酸塩、リン酸塩、トシル酸塩(tysolate)、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、ナプシル酸塩(napsylate salt)、およびその他同種のものを含む。
いくつかの実施形態において、アンジオテンシン(1−7)またはそのアナログもしくは誘導体と塩を形成することができる適した酸が、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、リン酸、およびその他同種のものなどのような無機酸ならびにギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アントラニル酸、桂皮酸、ナフタレンスルホン酸、スルファニル酸、およびその他同種のものなどのような有機酸を含む。A(1−7)と塩を形成することができる適した塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、およびその他同種のものなどのような無機塩基ならびにモノ、ジ、およびトリアルキルならびにアリールアミン(たとえばトリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、およびその他同種のもの)ならびに任意選択で置換されたエタノールアミン(たとえばエタノールアミン、ジエタノールアミン、およびその他同種のもの)などのような有機塩基を含む、
いくつかの実施形態において、医薬組成物が、投与の示されるルートに適切な、1つ以上の補助剤と組み合わせられる。化合物は、ラクトース、スクロース、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、ステアリン酸、滑石、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、アラビアゴム、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidine)、ならびに/またはポリビニルアルコールと混合されてもよく、従来の投与のために錠剤にされてもよいまたはカプセル化されてもよい。その代わりに、本発明の組成物は、食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、ヒドロキシエチルセルロースコロイド溶液、エタノール、トウモロコシ油、ラッカセイ油、綿実油、ゴマ油、トラガカントゴム、および/または様々なバッファー中に溶解されてもよい。他の補助剤および投与のモードは、医薬の技術分野においてよく知られている。キャリヤまたは希釈剤は、単独でまたはろうもしくは当技術分野においてよく知られている他の物質と共に、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリルなどのような時間遅延物質(time delay material)を含んでいてもよい。
本明細書において記載される医薬組成物は、それらが、一旦被験体に対して投与されたら、より安定性となるように(つまり、一旦投与されたら、未修飾形態と比較して、半減期がより長いまたは有効性の期間がより長い)、Ang(1−7)ペプチドまたはアナログもしくは誘導体の修飾体を含有してもよい。そのような修飾は、当業者らによく知られている(たとえばポリエチレングリコール誘導体化、別名、ペグ化、マイクロカプセル化など)。
ある実施形態において、肺の組織(つまり肺)において起こる線維症を処置するための方法が、記載される。方法は、肺の線維症の障害に罹患しているまたはそれに対して感受性である被験体に対して、アンジオテンシン(1−7)ポリペプチドを含む組成物を投与するステップを含む。
本明細書において記載される方法のある実施形態において、アンジオテンシン(1−7)またはそのアナログもしくは誘導体の投与によって処置されることとなる障害が、肺線維症、肺高血圧症、COPD、喘息、および/または嚢胞性線維症である。ある実施形態において、線維症を低下させるまたは予防する方法が、記載される。方法は、アンジオテンシン(1−7)ポリペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を含む組成物を、線維症に対して感受性の被験体に対して投与するステップを含む。ある実施形態において、被験体が、手術後の癒着形成によって引き起こされる線維症に対して感受性である。
本明細書において記載される方法のある実施形態において、アンジオテンシン(1−7)ポリペプチドアナログまたは誘導体が、直鎖状である。方法のある実施形態において、本明細書において記載されるアンジオテンシン(1−7)ポリペプチドアナログまたは誘導体が、環状である。特定の環状アンジオテンシンポリペプチドの合成および構造は、本明細書において参照によってその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2010055146号明細書において開示される。
キット
いくつかの実施形態において、本発明が、Ang(1−7)ペプチド、アンジオテンシン(1−7)受容体アゴニスト、またはそれを含有する製剤を含有するキットまたは他の製品を提供し、その還元(凍結乾燥である場合)および/または使用のための説明書を提供する。キットまたは他の製品は、投与(たとえば皮下、吸入による)において有用な容器、注射器、バイアル、および任意の他の商品、デバイス、または機器を含んでいてもよい。適した容器は、たとえば、ボトル、バイアル、注射器(たとえばあらかじめ充填された注射器)、アンプル、カートリッジ、貯蔵バッグ(reservoir)、またはlyo−jectを含む。容器は、ガラスまたはプラスチックなどのような様々な物質から形成されてもよい。いくつかの実施形態において、容器が、あらかじめ充填された注射器である。適した、あらかじめ充填された注射器は、焼付シリコーンコーティングを有するホウケイ酸ガラス注射器、吹付シリコーンを有するホウケイ酸ガラス注射器、またはシリコーンを有していないプラスチック樹脂注射器を含むが、これらに限定されない。
典型的に、容器は、製剤ならびに還元および/または使用のための使用法を示してもよい、容器上のまたはそれに関連する標識を保持する。たとえば、標識は、製剤が上記に記載される濃度に還元されることを示してもよい。標識は、製剤が、たとえば皮下投与に有用であるまたはそれが意図されることをさらに示してもよい。いくつかの実施形態において、容器が、Ang(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストを含有する、単一の用量の安定性の製剤を含有してもよい。様々な実施形態において、単一の用量の安定性の製剤が、約15ml、10ml、5.0ml、4.0ml、3.5ml、3.0ml、2.5ml、2.0ml、1.5ml、1.0ml、または0.5ml未満の容積で存在する。その代わりに、製剤を保持する容器は、製剤の繰り返し投与(たとえば2〜6回の投与)を可能にする、多目的のバイアルであってもよい。キットまたは他の製品は、適した希釈剤(たとえばBWFI、食塩水、緩衝食塩水)を含む第2の容器をさらに含んでいてもよい。希釈剤および製剤の混合に際して、還元された製剤における最終タンパク濃度は、一般に、少なくとも1mg/mlになるであろう(たとえば少なくとも5mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも20mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも40mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/ml、少なくとも100mg/ml)。キットまたは他の製品は、使用のための説明書と共に、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、注射器、および添付文書を含む、商業上のおよび使用者の見地から望ましい他の物品をさらに含む。いくつかの実施形態において、キットまたは他の製品が、自己投与のための説明書を含んでいてもよい。
実施例1.嚢胞性線維症の処置
この実施例は、アンジオテンシン(1−7)ペプチドが嚢胞性線維症を処置するために使用されてもよいことを実証する。
実験は、Hoffmanら(2005)Infection and Immunity (73)4:2540−2514によって開示されるように、P. aeruginosaの慢性肺感染症のマウスモデルを使用して実行し、この材料および方法および結果の部が、参照によって本明細書において組み込まれる。慢性P. aeruginosaのマウスモデル由来の肺の組織病理は、嚢胞性線維症を有する患者の肺に匹敵し、嚢胞性線維症についての動物モデルとなる。手短かに言えば、クオラムセンシング因子を発現するムコイド型細菌(mucoid bacterium)の安定性の感染症を、肺の中に導入する。ムコイド型細菌を、1%グリセロールを補足したウシブロス(ox broth)中で培養する。細胞を、次いで、収集し、コロニー形成単位をカウントし、精製アルギン酸溶液中での希釈によって、適切なチャレンジ(challenge)接種材料に調整する。
嚢胞性線維症に対するアンジオテンシンの治療効果を試験するために、Jackson Laboratoriesから入手可能なメスおよびオスホモ接合体(CFTR−/−)トランスジェニックCftrtm1Unc−TgN(FABPCFTR)マウスを利用する。試験を始める時に、マウスをおよそ12〜20週齢とする。マウスに麻酔をかけ、気管を摘出し(tracheotomize)、その後、40μlのプランクトン様のムコイド型(たとえばNH57388A)、非ムコイド型(たとえばNH57388C) P. aeruginosa株による気管内チャレンジを続け、約4×106〜約4×107CFU/肺がもたらされる。チャレンジは、ビーズカーブ針(bead curved needle)により実行する。
それぞれのマウスの肺全体を無菌的に切り取り、5mlの滅菌0.9%食塩水においてホモジナイズし、100μlの適切に段階希釈した肺ホモジネートサンプルを、血液寒天培地プレート(BAP)上で平板培養し、37℃でインキュベートし、35〜40時間後に、P. aeruginosaコロニー(つまりCFU)について調査する。
ランダムに選択されたマウスを、肺病理組織診断のために使用する。肺を、少なくとも1週間、ホルマリンバッファー中で固定し、その後、パラフィンろう中に包埋し、次いで、5μm切片にカットする。マウントした切片を、エキソポリサッカライドについて、アルシアンブルー−過ヨウ素酸−シッフ染色と組み合わせたヘマトキシリン(hematoxin)およびエオシン(HE)により染色する。細胞の変化を、炎症性のフォーカスにおける多形核白血球(PMN)および単核白血球(MN)の割合に基づくスコアリングシステムによって、急性または慢性炎症グループに割り当てる。急性炎症は、PMNに優位に影響を与えるのに対して、慢性炎症は、MNに優位に影響を与える。
アルギン酸含有量を測定するために、マウス肺ホモジネート(500μl)を、氷冷エタノール(2ml)により抽出し、滅菌0.9%食塩水(500μl)中に再懸濁する。ウロン酸(アルギン酸)の含有量は、カルバゾールホウ酸アッセイによって定量化する。精製アルギン酸中の0.9%食塩水によりチャレンジしたマウス由来の肺ホモジネートは、ブランクとして使用する。
アンジオテンシン(1−7)ポリペプチドならびに/またはそのアナログおよび誘導体を含む組成物は、嚢胞性線維症の症状を低下させるために、P. aeruginosaによる接種の前に、それと同時に、ならびに/またはその後に投与する。
実施例2.肺線維症の処置
ブレオマイシン(BLEO)投与は、肺線維症を誘発し、ヒトにおける肺線維症についての動物モデルである。Ang 1〜7は、ラットにおける肺力学、肺の血行力学、および右心室リモデリングにおけるBLEO誘発性の改変に影響を与える。
ウィスターラットに、通常の固形飼料を与え、標準的な実験室条件下で収容する。動物はすべて、ミニポンプ移植、BLEO点滴注入、および研究登録前に、少なくとも7日間、慣らす。それぞれの動物に、ビヒクル(0.9% NaCl)またはビヒクル中に溶解された4用量(20.83、69.44、208.33、625ng/kg/分)のTXA127のうちの1つを含有する、静脈カテーテルと接続された、あらかじめ装填された浸透圧性ミニポンプ(Alzet 2ML2)を移植する。
カテーテルを大腿静脈の中に挿入し、胸部大静脈に向かって進め、正しい場所に固定する。開存性について検証した後、ミニポンプを、動物の背中の皮下の位置に固定する。翌日、それぞれの動物に、ビヒクル中に溶解されたBLEO(1.25mpk、i.t;0.133ml/100g BW)またはそのビヒクル(0.9% NaCl)の気管内点滴注入を受けさせる。動物は、投薬の初めから研究の期間の全体にわたって、毎日、体重および健康状態の評価にかけた。
研究の最終日に、100%酸素によって保たれた、閉鎖されたチャンバー中で、5%イソフルランによりラットに麻酔をかける。次いで、ラットは、直接的な頚動脈カニューレ挿入を介して得られる動脈血ガスの決定のために、ノーズコーン麻酔システムに移動させ、基準気圧で、正常酸素圧の(79% N2、21% O2)ガスを呼吸させる。ラットに、次いで、臭化パンクロニウム(1.5%、i.p.)を投与して、自発的な呼吸努力を阻害し、次いで、肺の力学(圧容積関係)の直接的な評価のために、FlexiVent人工呼吸器に移動させる。肺の機能測定の終結後に、ラットを、直接的な肺動脈カテーテル挿入による、定常状態の肺動脈血行力学の決定のために、陽圧人工呼吸器上に配置する。血行力学的評価の完了後に、動物に、10mlの滅菌PBSを点滴注入し、BALFを収集する。最後に、末端の血液を得、氷上に配置する。
心臓および肺を、収集し、氷冷(4℃)0.9% NaCl中に直ちに浸漬させ、次いで、形態学的分析にかける。右心室、肺動脈幹、および肺組織の生検材料を得、液体窒素中で直ちに急速冷凍し、後の分析のために、−80℃で保存する。肺の全肺葉および右心室の中央の横断切片を得、固定する。血液は、それぞれ、エンドポイントでのAng(1−7)およびバイオマーカーの評価のために、血漿および血清の産生のために適切に処理する。
全血の個別のサンプルについて、動脈ヘマトクリットを評価する。固定肺切片は、続くパラフィン包埋、切出し、および染色のために、70% EtOHに移動させる。マッソン三色染色法を使用する肺線維症についての定量分析および画像分析を、実行する。
肺の組織における、発現された線維症促進性(profibrotic)マーカー、CTGF、コラーゲン1a1、TGF−β1、およびTIMP−1のレベルを分析し、TNFαのレベルを、気管支肺胞洗浄液において測定する。肺線維症は、従来のヒドロキシプロリンアッセイ、コラーゲン沈着の代用のマーカーによって測定する。
実施例3.非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の処置
ストレプトゾトシン(STZ)の単一の投与は、マウスにおいて、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)様の状態を誘発することが知られており、ヒト被験体における疾患のモデルとして果たす。
この実施例において、NASHは、出生の2日後のストレプトゾトシン(STZ、Sigma−Aldrich、USA)溶液の単一の皮下注射および4週齢後に高脂肪食(HFD、57kcal%脂肪、cat#HFD32、CLEA Japan、Japan)を与えることによって、48匹のオスマウスにおいて誘発させた。マウスは、下記の表1に従って、7週齢時に8匹のマウスの6つのグループにランダム化した。STZ処置なしの、通常の食餌を与えた8匹のオス同腹仔を、正常グループに使用した。
グループの説明
グループ1(正常)は、いかなる処置も伴わない、通常の食餌を適宜与えた、8匹の正常マウスからなった。グループ2(ビヒクル)は、7〜10週齢に、毎日1回、5mL/kgの容積でビヒクルを皮下に投与した、8匹のNASHマウスからなった。グループ3(TXA127−30μg)は、7〜10週齢に、毎日1回、30μg/5mL/kgの用量で、TXA127を補足したビヒクルを皮下に投与した、8匹のNASHマウスからなった。グループ4(TXA127−100μg)は、7〜10週齢に、毎日1回、100μg/5mL/kgの用量で、TXA127を補足したビヒクルを皮下に投与した、8匹のNASHマウスからなった。グループ5(TXA127−300μg)は、7〜10週齢に、毎日1回、300μg/5mL/kgの用量で、TXA127を補足したビヒクルを皮下に投与した、8匹のNASHマウスからなった。グループ6(TXA127−1,000μg)は、7〜10週齢に、毎日1回、1,000μg/5mL/kgの用量で、TXA127を補足したビヒクルを皮下に投与した、8匹のNASHマウスからなった。グループ7は、8〜10週齢に、毎日1回、15mg/10mL/kgの用量で、テルミサルタンを補足した純水を経口的に投与した、8匹のNASHマウスからなった。
ビヒクル(食塩水)およびTXA127を、5mL/kg体重の容積で、マウスに対する皮下投与を介して投与した。テルミサルタンを、10mL/kg体重の容積で、マウスに対する経口経路によって投与した。TXA127は、食塩水中に溶解し、テルミサルタン(MICARDIS(登録商標))は、Boehringer Ingelheim GmbHから購入し、純水中に溶解した。TXA127は、30、100、300、または1000μg/kg体重の用量で、毎日1回、投与した。テルミサルタンは、15mg/kg体重の用量で、毎日1回、投与した。
C57BL/6マウス(妊娠15日目のメス)は、Charles River Laboratories Japan(Kanagawa、Japan)から得た。この研究において使用される動物はすべて、収容し、Japanese Pharmacological Society Guidelines for Animal Useに従って世話した。動物は、温度(23±2℃)、湿度(45±10%)、照明(12時間の人工明暗サイクル;8:00〜20:00まで明)、および空気交換のコントロールされた条件下で、SPF設備において維持した。高圧力(20±4Pa)は、設備内の汚染を予防するために、実験室中で維持した。滅菌固体HFDを、適宜提供し、ケージの上の金属の蓋の中に配置させた。蒸留水は、ゴム栓およびストローチューブを装備された水差しから適宜提供した。水差しは、週に一度、交換し、オートクレーブにおいてきれいにして、滅菌し、再利用した。
血中グルコース測定
非絶食時の全血グルコースレベルを、G Checker(Sanko Junyaku、Japan)を使用して、全血サンプルにおいて測定した。血漿生化学的組成について、血液を、抗凝固薬によりポリプロピレンチューブ中に収集し(Novo−Heparin、Mochida Pharmaceutical、Japan)、4℃で、15分間、1,000xgで遠心分離した。上清は、収集し、使用まで−80℃で保存した。ALT、AST、およびALPの血漿レベルは、FUJI DRI−CHEM 7000(Fuji Film、Japan)によって測定した。
肝臓ヒドロキシプロリン測定
肝臓ヒドロキシプロリン含有量を定量化するために、凍結した肝臓(40〜60mg)を刻み、室温で30分間、アセトン中で脂肪を除いた。遠心分離後、ペレットを空気乾燥し、65℃で、400μLの2N NaOH中に溶解した。肝臓溶解物を、20分間、121℃でオートクレーブした。次いで、サンプルは、20分間、121℃で、400μLの6N HClにより酸加水分解し、4N NaOH中、400μLの10mg/mL活性炭により中和した。中和したサンプルは、2.2M酢酸/0.48Mクエン酸バッファーによりバッファーし、上清を得るために遠心分離した。ヒドロキシプロリンの標準曲線を構築するために、trans−4−ヒドロキシ−L−プロリン標準物質(Sigma、USA)の段階希釈液を、16μg/mLから開始して調製した。500μLの上清および標準物質を、10% n−プロパノール/酢酸クエン酸バッファー中の500μLクロラミンTに追加し、室温で25分間、インキュベートした。500μLのエールリッヒ溶液を、追加し、混合し、20分間、65℃でインキュベートした。サンプルを氷上で冷却し、上清を収集するために遠心分離した後、それぞれの上清および標準物質の光学濃度を560nmで測定し、肝臓ヒドロキシプロリンの濃度を、ヒドロキシプロリン標準曲線から計算した。それぞれの上清のタンパク濃度は、BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Scientific、USA)を使用して決定した。肝臓ヒドロキシプロリン含有量は、肝臓中の総タンパク質量によって標準化した。
シリウスレッド染色
線維症エリアの定量分析のために、シリウスレッド染色切片の明視野画像を、200倍の倍率で、中心静脈のあたりを、デジタルカメラ(DFC280、Leica、Germany)を使用して撮り、5視野/切片における陽性なエリアについて、ImageJソフトウェア(National Institute of Health、USA)を使用して、定量化した。
血中グルコース結果
図1Aにおいて示されるように、全血における非絶食時の血中グルコースレベルは、正常グループと比較して、ビヒクルグループにおいて有意に増加した(正常:154±15mg/dL、ビヒクル:695±71mg/dL)。テルミサルタングループは、ビヒクルグループと比較して、血中グルコースレベルにおいて有意な増加を示した(テルミサルタン:900±0mg/dL)。テルミサルタングループにおけるサンプルはすべて、900mg/dLの検出限界を超えた。血中グルコースレベルは、ビヒクルグループと比較して、TXA127−100μg、TXA127−300μg、およびTXA127−1000μgグループにおいて、減少する傾向があった(TXA127−100μg:590±131mg/dL、TXA127−300μg:639±76mg/dL、TXA127−1000μg:632±92mg/dL)。ビヒクルグループおよびTXA127−30μgグループの間の血中グルコースレベルにおいて有意な差異はなかった(TXA127−30μg:675±103mg/dL)。
血漿アラニントランスアミナーゼ(ALT)結果
図1Bにおいて示されるように、ビヒクルグループの血漿ALTレベルは、正常グループと比較して、増加する傾向があった(正常:23±5U/L、ビヒクル:47±14U/L)。ビヒクルグループおよびテルミサルタングループの間のALTレベルにおいて有意な差異はなかった(テルミサルタン:41±10U/L)。TXA127−100μgグループは、ビヒクルグループと比較して、ALTレベルにおいて有意な増加を示した(TXA127−100μg:89±56U/L)。ビヒクルグループおよび他のグループのいずれかの間のALTレベルにおいて有意な差異はなかった(TXA127−30μg:46±15U/L、TXA127−300μg:43±17U/L、TXA127−1000μg:41±10U/L)。
血漿アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)結果
図1Cにおいて示されるように、ビヒクルグループの血漿ASTレベルは、正常グループと比較して、増加する傾向があった(正常:103±29U/L、ビヒクル:220±129U/L)。ビヒクルグループおよびテルミサルタングループの間のASTレベルにおいて有意な差異はなかった(テルミサルタン:232±141U/L)。TXA127−100μgグループのASTレベルは、ビヒクルグループと比較して、増加する傾向があった(TXA127−100μg:352±174U/L)。ビヒクルグループおよび他のグループのいずれかの間のASTレベルにおいて有意な差異はなかった(TXA127−30μg:160±94U/L、TXA127−300μg:149±50U/L、TXA127−1000μg:142±32U/L)。
血漿アルカリ性ホスファターゼ(ALP)結果
図1Dにおいて示されるように、ビヒクルグループおよび正常グループの間の血漿ALPレベルにおいて有意な差異はなかった(正常:368±36U/L、ビヒクル:360±53U/L)。テルミサルタングループは、ビヒクルグループと比較して、ALPレベルにおいて有意な増加を示した(テルミサルタン:605±130U/L)。TXA127−30μgおよびTXA127−300μgグループのALPレベルは、ビヒクルグループと比較して、増加する傾向があった(TXA127−30μg:428±61U/L、TXA127−300μg:472±100U/L)。ビヒクルグループおよび他のグループのいずれかの間のALPレベルにおいて有意な差異はなかった(TXA127−100μg:358±75U/L、TXA127−1000μg:397±96U/L)。
肝臓ヒドロキシプロリン結果
肝臓ヒドロキシプロリンレベルは、肝臓の線維症と関連していることが示されており、それは、コラーゲン中に特異的に見つけられる。図2において示されるように、ビヒクルグループの肝臓ヒドロキシプロリン含有量は、正常グループと比較して、増加する傾向があった(正常:0.92±0.16μg/mg、ビヒクル:1.72±1.04μg/mg)。ビヒクルグループおよびテルミサルタングループの間のヒドロキシプロリン含有量において有意な差異はなかった(テルミサルタン:1.46±0.69μg/mg)。TXA127−100μgグループは、ビヒクルグループと比較して、ヒドロキシプロリン含有量において有意な減少を示した(TXA127−100μg:0.88±0.17μg/mg)。ビヒクルグループおよび他のグループのいずれかの間のヒドロキシプロリン含有量において有意な差異はなかった(TXA127−30μg:1.22±0.29μg/mg、TXA127−300μg:1.24±0.51μg/mg、TXA127−1000μg:1.34±0.69μg/mg)。
シリウスレッド結果
図3において示されるように、ビヒクルグループのシリウスレッド染色肝臓切片は、正常グループと比較して、肝小葉の中心周囲の領域においてコラーゲン沈着の増加を示した。線維症エリア(シリウスレッド陽性領域)のパーセンテージは、正常グループと比較して、ビヒクルグループにおいて有意に増加した(正常:0.22±0.06%、ビヒクル:0.88±1.10%)。線維症エリアは、ビヒクルグループと比較して、テルミサルタングループにおいて有意に減少した(テルミサルタン:0.44±0.12%)。線維症エリアは、ビヒクルグループと比較して、TXA127−100μg、TXA127−300μg、およびTXA127−1000μgグループにおいて有意に減少した(TXA127−100μg:0.55±0.29%、TXA127−300μg:0.54±0.18%、TXA127−1000μg:0.51±0.09%)。ビヒクルグループおよびTXA127−30μgグループの間のシリウスレッド陽性領域のパーセンテージにおいて有意な差異はなかった(TXA127−30μg:0.88±0.33%)。
要約−テルミサルタン
このNASHモデルにおいて抗炎症および抗線維症の効果を示すことが知られているテルミサルタンは、この研究において陽性コントロールとして使用した。テルミサルタンによる処置は、Stelicの病歴データに一致して、ビヒクルグループと比較して、肝臓重量およびNASおよび線維症エリアを有意に減少させた。
要約−TXA127
シリウスレッド染色は、100、300、および1000μg/kgの用量のTXA127による処置が、用量依存的な方式で、中心周囲の領域におけるコラーゲン沈着を有意に減少させることを明らかにした(図3を参照されたい)。他方では、ヒドロキシプロリン含有量において、有意な減少が、100μg/kgの用量のTXA127による処置において観察された。そのうえ、すべての用量のTXA127による処置が、炎症性細胞浸潤を減少させた。100μg/kgの用量のTXA127による処置は、ALTおよびASTのレベルを増加させて、30および300μg/kg用量ではALPレベルを増加させた。総合的に考えると、TXA127は、この研究において、30μg/kgを超える用量で抗炎症効果の可能性および100μg/kgを超える用量で抗線維症の効果を示した。
実施例4.非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の処置の遺伝子分析
動物、グループ、処置条件、および時点は、上記の実施例3と同じとする。肝臓は、実施例3の動物から収集し、以下の分析にかけた。
定量RT−PCR
全RNAを、メーカーの指示に従って、RNAiso(Takara Bio、Japan)を使用して、肝臓サンプルから抽出した。1μgのRNAを、20μLの最終容積で、4.5mM MgCl2(Roche、Switzerland)、40U RNアーゼ阻害剤(Toyobo、Japan)、0.5mM dNTP(Promega、USA)、6.28μMランダムヘキサマー(Promega)、5×第1鎖バッファー(Promega)、6.6mMジチオスレイトール(Invitrogen、USA)、およびMMLV−RT(Invitrogen)を含有する反応混合物を使用して、逆転写した。反応は、37℃で1時間、その後99℃で5分間、行った。リアルタイムPCRは、リアルタイムPCR DICEおよびSYBR premix Taq(Takara Bio)を使用して、実行した相対的なmRNA発現レベルを計算するために、それぞれの遺伝子の発現を、参照遺伝子36B4(遺伝子記号:Rplp0)に対して標準化した。統計分析は、Prism Software 4でボンフェローニ多重比較検定を使用して実行した。P値<0.05は、統計的に有意であると見なした。I型コラーゲン、3型コラーゲン、α−SMA、TGF−β、CCR2、およびTIMP−1 mRNAの発現レベルについて評価した。
I型コラーゲンmRNAの発現
図4Aにおいて示されるように、コラーゲン1型mRNA発現レベルは、正常グループと比較して、ビヒクルグループにおいて有意にアップレギュレートされた(正常:1.00±0.34、ビヒクル:3.03±0.82)。ビヒクルグループおよびテルミサルタングループの間のコラーゲン1型mRNA発現レベルにおいて有意な差異はなかった(テルミサルタン:3.14±0.59)。コラーゲン1型mRNA発現レベルは、ビヒクルグループと比較して、TXA127−30μgグループにおいて有意にアップレギュレートされた(TXA127−30μg:4.48±0.91)。ビヒクルグループおよび他のグループのいずれかの間のコラーゲン1型mRNA発現レベルにおいて有意な差異はなかった(TXA127−100μg:3.37±1.58、TXA127−300μg:3.06±1.12、TXA127−1000μg:2.77±0.77)。
3型コラーゲンmRNAの発現
図(FIB)4Bにおいて示されるように、コラーゲン3型mRNA発現レベルは、正常グループと比較して、ビヒクルグループにおいて有意にアップレギュレートされた(正常:1.00±0.30、ビヒクル:2.64±0.60)。3型コラーゲンmRNA発現レベルは、ビヒクルグループと比較して、テルミサルタングループにおいてダウンレギュレートする傾向があった(テルミサルタン:2.09±0.50)。3型コラーゲンmRNA発現レベルは、ビヒクルグループと比較して、TXA127−30μgグループにおいてアップレギュレートする傾向があった(TXA127−30μg:3.23±0.54)。3型コラーゲンmRNA発現レベルは、ビヒクルグループと比較して、TXA127−1000μgグループにおいてダウンレギュレートする傾向があった(TXA127−1000μg:2.24±0.68)。ビヒクルグループおよび他のグループのいずれかの間のコラーゲン3型mRNA発現レベルにおいて有意な差異はなかった(TXA127−100μg:2.82±1.50、TXA127−300μg:2.81±0.89)。
α−SMA mRNAの発現
図4Cにおいて示されるように、α−SMA mRNA発現レベルは、正常グループと比較して、ビヒクルグループにおいてアップレギュレートする傾向があった(正常:1.00±0.67、ビヒクル:2.69±1.53)。α−SMA mRNA発現レベルは、ビヒクルグループと比較して、テルミサルタングループにおいてダウンレギュレートする傾向があった(テルミサルタン:2.07±0.87)。α−SMA mRNA発現レベルは、ビヒクルグループと比較して、TXA127−1000μgグループにおいてダウンレギュレートする傾向があった(TXA127−1000μg:1.92±0.67)。ビヒクルグループおよび他のグループのいずれかの間のα−SMA mRNA発現レベルにおいて有意な差異はなかった(TXA127−30μg:2.88±1.08、TXA127−100μg:2.65±2.46、TXA127−300μg:2.49±0.98)。
TGF−βmRNAの発現
図4Dにおいて示されるように、TGF−βmRNA発現レベルは、正常グループと比較して、ビヒクルグループにおいて有意にアップレギュレートされた(正常:1.00±0.28、ビヒクル:1.94±0.31)。TGF−βmRNA発現レベルは、ビヒクルグループと比較して、テルミサルタングループにおいてダウンレギュレートする傾向があった(テルミサルタン:1.58±0.23)。TGF−βmRNA発現レベルは、ビヒクルグループと比較して、TXA127−30μgグループにおいてアップレギュレートする傾向があった(TXA127−30μg:2.35±0.44)。TGF−βmRNA発現レベルは、ビヒクルグループと比較して、TXA127−300μgおよびTXA127−1000μgグループにおいてダウンレギュレートする傾向があった(TXA127−300μg:1.69±0.49、TXA127−1000μg:1.70±0.35)。ビヒクルグループおよびTXA127−100μgグループの間のα−SMA mRNA発現レベルにおいて有意な差異はなかった(TXA127−100μg:1.93±0.44)。
CCR2 mRNAの発現
図5Aにおいて示されるように、CCR2 mRNA発現レベルは、正常グループと比較して、ビヒクルグループにおいて有意にアップレギュレートされた(正常:1.00±0.35、ビヒクル:3.22±0.73)。CCR2 mRNA発現レベルは、ビヒクルグループと比較して、テルミサルタングループにおいてダウンレギュレートする傾向があった(テルミサルタン:1.94±0.37)。CCR2 mRNA発現レベルは、ビヒクルグループと比較して、TXA127−30μgグループにおいてダウンレギュレートする傾向があった(TXA127−30μg:2.60±0.60)。ビヒクルグループおよび他のグループのいずれかの間のCCR2 mRNA発現レベルにおいて有意な差異はなかった(TXA127−100μg:3.26±2.01、TXA127−300μg:2.82±0.88、TXA127−1000μg:3.10±1.55)。
TIMP−1 mRNAの発現
図5Bにおいて示されるように、TIMP−1 mRNA発現レベルは、正常グループと比較して、ビヒクルグループにおいて有意にアップレギュレートされた(正常:1.00±1.07、ビヒクル:7.46±3.66)。TIMP−1 mRNA発現レベルは、ビヒクルグループと比較して、テルミサルタングループにおいてダウンレギュレートする傾向があった(テルミサルタン:4.22±1.52)。ビヒクルグループおよび他のグループのいずれかの間のTIMP−1 mRNA発現レベルにおいて有意な差異はなかった(TXA127−30μg:6.74±1.93、TXA127−100μg:9.80±8.93、TXA127−300μg:7.54±3.05、TXA127−1000μg:8.54±6.41)。
要約
この研究において、テルミサルタンによる処置は、3型コラーゲン、α−SMA、TGF−β、CCR2、およびTIMP−1 mRNAの発現レベルをダウンレギュレートするように思われた。テルミサルタンによる処置は、実施例3において線維症エリアを有意に減少させたので、これらの結果は、テルミサルタンの抗線維症の効果および陽性コントロールとしてのその使用を支持するものである。
TXA127は、実施例3において抗線維症の効果および抗炎症効果を示した。この研究において、TXA127による処置は、用量依存的な方式で、TGF−β遺伝子発現レベルを低下させ、1,000μg/kgの用量のTXA127による処置は、3型コラーゲンおよびα−SMA mRNA発現レベルをダウンレギュレートする傾向があった。特定の理論によって束縛されることを望むものではないが、これらの結果は、TXA127が、TGF−βによって誘発される肝星細胞の活性化の抑制を通して線維症を寛解させることを示し得る。アンジオテンシン−(1−7)ペプチドが、mas受容体を介してマクロファージ(TGF−β産生細胞)および肝星細胞の活性化を抑制することが報告された。可能性のある1つの作用メカニズムとしては、TXA127が、マクロファージの活性化およびTGF−βにより刺激されたα−SMA陽性細胞の数を低下させ、線維症の低下に至る。
実施例5.直鎖状または環状A(1−7)による嚢胞性線維症の処置
嚢胞性線維症を模倣する慢性気道感染症モデルは、10〜12週齢BALB/cマウス(Charles River)の気道の中へのムコイド型の株のPseudomonas aeruginosa(NH57388A)の気管内点滴注入によって確立する。NH57388Aは、宿主免疫に対する抵抗性を与えるアルギン酸を過剰生産するmucAノックアウト突然変異体である。Ang(1−7)および環状A(1−7)を、2つの医薬調製物を使用して投与する。感染の24時間後、動物は、7日間、移植可能なポンプ(alzet)を介して、直鎖状Ang(1−7)(100もしくは300mcg/kg)または環状Ang(1−7)(10もしくは30mcg/kg)のいずれかによる処置を受ける。処置マウスおよびコントロールは、8日目に、20mgナトリウムペントバルビタールのi.p.注射によって安楽死させる。気管支肺胞洗浄(BAL)は、気管にカニューレを挿入し、0.8mL滅菌食塩水により3回洗浄することによって実行する。上清を等分し、さらなる生化学的測定のために−70℃で保存する。総細胞および示差細胞のカウントは、DIFFQUICK(商標)染色を使用して、サイトスピン調製物に対して実行する。肺傷害の程度を決定するために、病理組織診断を肺組織に対して実行する。ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を、肺組織の中への好中球浸潤について検査するために実行する。BAL液中の炎症性バイオマーカー濃度(たとえばIL1β、KC、MIP2、IFNγ、TNFα、IL−6、MCP−1、IL−10)は、マルチプレックスELISAを使用して決定する。Mas mRNAは、肺組織に対して実行されるqRT−PCRによって分析する。
グループ当たり8匹の動物のサンプルサイズは、95%の信頼度で、Ang(1−7)処置動物およびコントロール動物の間のBAL内の好中球数における2log減少を検出する90%の確率を提供する。好中球数およびサイトカイン/ケモカイン濃度は、Mann−Whitney U検定によって分析する。帰無仮説は、p<0.05で棄却される。統計分析は、GRAPHPAD(商標) Prism for Mac version 5.0b(GRAPHPAD(商標)、San Diego、CA、USA)を使用して実行する。これらの予備的な研究により、A(1−7)によるCF処置CFの有益性が示されるであろう。たとえば、A(1−7)によって誘起される抗炎症用量応答の大きさおよび期間が、実証されるであろう。
等価物
当業者らは、ルーチン的な実験のみを使用して、本明細書において記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物について認識するであろうまたは確認することができるであろう。本発明の範囲は、上記の説明に限定されることを意図するものではなく、むしろ、添付の請求項において記載されるとおりである。本明細書および請求項において、本明細書において使用される冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その」は、他に指定のない限り、複数の指示物を含むことが理解されるべきである。群の1つ以上のメンバーの間に「または」を含む請求項または説明は、他に指定のない限りまたは文脈から明白でない限り、1つの、1つを超える、またはすべての群のメンバーが、所定の産物またはプロセスにおいて存在する、用いられる、または他の場合には関連するかどうかに応じるものであると考えられる。本発明は、群のまさに1つのメンバーが、所定の産物またはプロセスにおいて存在する、用いられる、または他の場合には関連する実施形態を含む。本発明はまた、1つを超える群メンバーまたはすべての群メンバーが、所定の産物またはプロセスにおいて存在する、用いられる、または他の場合には関連する実施形態をも含む。さらに、本発明は、他に指定のない限りまたは矛盾もしくは不整合性が生じることが当業者に明白でない限り、1つ以上の請求項からの1つ以上の限定、エレメント、節、記述的な用語などが、同じ基本請求項に従属する他の請求項(または適宜、任意の他の請求項)に導入される変形物、組み合わせ、および並べ換えを包含することが理解されたい。エレメントがリストとして、たとえばマーカッシュグループまたは同様の形式で示される場合、エレメントのそれぞれのサブグループもまた開示され、任意のエレメント(複数可)を群から省くことができることが理解されたい。一般に、本発明または本発明の態様が、特定のエレメント、特徴などを含むと言及される場合、本発明のある実施形態または本発明の態様は、そのようなエレメント、特徴などからなる、本質的になることが理解されるべきである。簡潔さの目的のために、それらの実施形態は、すべての場合において、本明細書において、詳細には記載しなかった。明確な除外が本明細書において記載されているかどうかにかかわらず、本発明の任意の実施形態、たとえば、先行技術の範囲内で見つけられる任意の実施形態を、請求項から明確に除外することができるもまた、理解されるべきである。
他に指定のない限り、1つを超える行為を含む、本明細書において主張される任意の方法において、方法の行為の順は、必ずしも、方法の行為が列挙される順に限定されないが、本発明は、順がそのように限定された実施形態を含むこともまた、理解されたい。さらに、請求項が組成物を列挙する場合、本発明は、組成物を使用するための方法および組成物を生成するための方法を包含する。請求項が組成物を列挙する場合、本発明が、組成物を使用するための方法および組成物を生成するための方法を包含することが理解されたい。
参考文献の組み込み
本出願において引用される刊行物および特許文献はすべて、あたかもそれぞれの個々の刊行物または特許文書の内容が本明細書において組み込まれるのと同じ程度まで、参照によってそれらの全体が組み込まれる。