本発明は、とりわけ、アンジオテンシン(1−7)ペプチド、そのアナログもしくは誘導体、またはAVE0991の様なアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストの使用に基づく、筋ジストロフィーを処置するための改善された組成物および方法を提供する。一部の実施形態では、筋ジストロフィーの少なくとも1つの症状または特徴の強度、重症度、期間もしくは頻度が軽減される、またはその発生が遅延する。一部の実施形態では、1つまたは複数のアンジオテンシン(1−7)ペプチド、そのアナログもしくは誘導体、またはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストの投与により、筋再生、線維形成の軽減、筋力の向上、柔軟性の向上、可動域の増大、持久力の向上、易疲労感の軽減、血流の増加、認知力の改善、肺機能の改善、および/または炎症阻害がもたらされる。
本発明の様々な態様は、以下の項目において詳細に記載されている。項目の使用は、本発明を限定することを意図するものではない。それぞれの項目は、本発明の任意の態様に適用することができる。本出願において、「または」の使用は、他に明記されない限り、「および/または」を意味する。
筋ジストロフィー
筋ジストロフィー(MD)は、筋の変性を引き起こし、運動の弱化および障害に至らしめる、遺伝性障害の一群である。すべての筋ジストロフィーの中心的な特徴は、それらの性質が進行性であるという点である。筋ジストロフィーには、以下に限定されないが、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、ベッカー型先天性筋緊張症、エメリー−ドレフュス型筋ジストロフィー、三好型ミオパチー、先天性筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、眼咽頭筋ジストロフィー、原発性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、多発筋炎、ギラン−バレー症候群、アンダーセン−タウィル症候群、ベスレムミオパチー、球脊髄性筋萎縮症、カルニチン欠損、カルニチンパルミチルトランスフェラーゼ欠損、セントラルコア病、中心核ミオパチー、シャルコー−マリー−トゥース病、先天性筋無力症候群、先天性筋強直性ジストロフィー(ウォーカー−ワールブルグ症候群)、コーリ病(脱分枝酵素欠損症)、デジュリーヌ−ソッタス病、皮膚筋炎、遠位筋ジストロフィー、筋緊張性ジストロフィー(筋強直性ジストロフィー)、内分泌性ミオパチー、エーレンバーグ病(先天性パラミオトニア)、フィンランド型遠位型ミオパチー、フォーブズ病、フリードライヒ運動失調症、福山型先天性筋ジストロフィー、糖原病2型、3型、5型、7型、9型、10型、11型、Gowers−Laing遠位型ミオパチー、遺伝性封入体筋炎、甲状腺機能亢進性ミオパチー、甲状腺機能低下性ミオパチー、封入体筋炎、遺伝性ミオパチー、インテグリン欠損型先天性筋ジストロフィー、ケネディ病(球脊髄性筋萎縮症)、乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症、ランバート−イートン筋無力症候群、マックアードル病、メロシン欠損型先天性筋ジストロフィー、ミトコンドリアミオパチー、運動ニューロン疾患、筋・眼・脳病、重症筋無力症、ミオアデニレートデアミナーゼ欠乏症、筋原線維性ミオパチー、筋型ホスホリラーゼ欠損症、先天性筋緊張症(トムセン病)、筋細管ミオパチー、筋強直性ジストロフィー、ネマリンミオパチー、野中型遠位型ミオパチー、先天性パラミオトニア、ピアソン症候群、周期性四肢麻痺、ホスホフルクトキナーゼ欠損症(垂井病)、ホスホグリセレートキナーゼ欠損症、ホスホグリセレートムターゼ欠損症、ホスホリラーゼ欠損症、ポンペ病(酸マルターゼ欠損症)、進行性外眼筋麻痺、ウェランダー型遠位型ミオパチー、およびZASP関連性ミオパチーが含まれる。一部の実施形態では、先天性筋ジストロフィーは、ラミニン−α2−欠損型先天性筋ジストロフィー、ウルリッヒ型先天性筋ジストロフィー、ウォーカー−ワールブルグ症候群、福山型先天性筋ジストロフィー、ならびに精神遅滞および脳回肥厚症を伴う先天性筋ジストロフィーからなる群から選択される。一部の実施形態では、筋ジストロフィーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーである。
筋ジストロフィーの症状は、一部またはすべての筋が冒される、筋ジストロフィーのタイプにより、様々であり得る。筋ジストロフィーの例示的な症状には、筋運動技能の発達遅延、1つもしくは複数の筋群の使用困難、筋消耗、筋力低下、筋脆弱化、筋仮性肥大、関節拘縮、骨格変形、心筋症、筋虚血、脊柱側弯症、嚥下、発声もしくは摂食困難、腸および膀胱の機能障害、流涎、まぶたの垂れ下がり、頻繁な転倒、成人としての筋力もしくは筋群力の喪失、筋サイズの喪失、身体の弱化もしくは生体力学の変化による歩行上の問題、呼吸機能障害、ならびに/または認知障害もしくは行動機能障害/精神遅延が含まれる。
筋ジストロフィーに関する公知の治癒法は存在しないが、対症療法および疾患修飾療法の両方を含む、いくつかの支援的処置が使用される。コルチコステロイド、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、理学療法、装着装具、車椅子、またはADLおよび肺機能のための他の補助的医療用装具が、筋ジストロフィーにおいて一般に使用される。筋強直性ジストロフィーにおける、心不整脈による突然死を予防するため、心ペースメーカーが使用される。筋緊張症の症状(弛緩不能)を改善する抗筋緊張剤には、メキシリチンが含まれ、一部の場合、フェニトイン、プロカインアミドおよびキニンが含まれる。
デュシェンヌ型筋ジストロフィー
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、筋変性および最終的に死をもたらす、筋ジストロフィーの劣性X連鎖形態である。DMDは、近位筋の弱化、異常歩行、腓腹(腓)筋の肥大、およびクレアチンキナーゼの増加により特徴付けられる。DMD患者の多くは、5歳付近で診断を受け、この頃に、症状/徴候が、通常、一層明白になる。罹患個体は、およそ10〜13歳で歩行が止み、心肺機能障害により20代中盤から後半、またはそれら以前に死亡する。
障害DMDは、ヒトX染色体上に位置している、ジストロフィン遺伝子における変異により引き起こされ、この遺伝子は、細胞膜のジストログリカン複合体(DGC)に構造的安定性をもたらす、筋組織内部の重要な構造的構成要素である、タンパク質ジストロフィンをコードする。ジストロフィンは、内部細胞質性のアクチンフィラメントネットワークと細胞外マトリックスとを連結し、筋線維に物理的強度をもたらしている。したがって、ジストロフィンの改変または不在により、筋線維しょう膜の異常な裂けおよび筋線維の壊死がもたらされる。どちらの性別でもこの変異を保持し得るが、女性がこの疾患の重症な徴候を示すことはめったにない。
DMDの主な症状は、通常、最初に随意筋が冒されることに伴う筋消耗に伴う筋力低下であり、とりわけ、臀部、骨盤領域、大腿部、肩、および腓筋が冒される。筋力低下はまた、腕、頚および他の領域にも起こる。腓が肥大することが多い。徴候および症状は、通常、6歳前に現れ、早ければ幼児期に現れることがある。他の身体症状には、以下に限定されないが、独立歩行能力の遅延、歩行、足踏みまたは走ることの進行性困難、および歩行能力の最終的な喪失(通常、12歳まで)、頻繁な転倒、疲労、運動技能の困難(走ること、跳びはね、跳躍)、股関節屈筋の短小化に至る腰椎前弯の増大、アキレス腱の拘縮および膝屈曲筋の機能性障害(筋線維の短小化および線維形成が結合組織に起こるため)、筋線維変形、脂肪および結合組織による筋組織の置き換えにより引き起こされる舌および腓筋の仮性肥大(増大)、神経行動学的障害(例えば、ADHD)のより高いリスク、学習障害(ディスレクシア)、ならびに特定の認知技能の非進行性弱化(特に、短期言語記憶)、骨格変形(一部の場合、脊柱側弯症を含む)が含まれる。
ベッカー型筋ジストロフィー
ベッカー型筋ジストロフィーは、脚および骨盤の筋の進行性弱化により特徴付けられる、X連鎖劣性遺伝疾患である。DMDと同様に、ベッカー型筋ジストロフィーは、ジストロフィン遺伝子における変異により引き起こされるが、DMDとは異なり、ベッカー型筋ジストロフィーに罹患している対象は、一般に、機能的ジストロフィンを実質的に産生することができない、DMDの罹患者よりも、高いレベルの機能的ジストロフィンを産生する。その結果、ベッカー型筋ジストロフィーは、通常、DMDほど重症なものとして考えられていない。
ベッカー型筋ジストロフィーの症状には、特に下肢における進行性筋力低下、つま先歩き、頻繁な転倒、呼吸困難、脊柱側弯症などの骨格変形、疲労、およびクレアチンホスホキナーゼ(CPK)の増加が含まれる。重症度および様々な症状は、DMDにおける場合よりもかなり大きな程度で、個体毎に変わる。
肢帯型筋ジストロフィー
肢帯型筋ジストロフィーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーとベッカー型筋ジストロフィーの両方に一部の類似性を有するが、臀部および肩の筋(すなわち、「肢帯」筋)に最も大きな影響を及ぼす、異なった病変を示す。肢帯型筋ジストロフィーの根本にある正確なメカニズムは不明であるが、α、β、γおよびδサルコグリカンを含めた、いくつかのサルコグリカンが、この疾患の発症および進行に重要な役割を果たしていると考えられていると思われる。
肢帯型筋ジストロフィーの発症の経過を考慮に入れると、これは、致死性にはなり得ないことが多い(LGMD2Cとして公知の肢帯型筋ジストロフィーの最も重症な形態におけるものと同様に、心筋および呼吸筋の不全が起こる恐れはあるが)。しかし、対象は、この疾患の診断を受けて20年以内には、車椅子までに留まっているのが通常である。肢帯型筋ジストロフィーの一部の症状は、他のタイプの筋ジストロフィーと重なるが、肢帯型MDの罹患者に特に共通する症状には、歩行困難、前屈み困難、および歩行中または階段登り中の転倒が含まれる。
アンジオテンシン(1−7)ペプチドおよび/またはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニスト
本発明は、とりわけ、筋ジストロフィーに罹患しているか、または罹患しやすい対象に、アンジオテンシン(1−7)ペプチドを投与するステップを含む、筋ジストロフィーを処置する方法を提供する。
アンジオテンシン(1−7)ペプチド
本明細書で使用する場合、用語「アンジオテンシン(1−7)ペプチド」とは、天然に存在するアンジオテンシン(1−7)と、天然に存在するアンジオテンシン(1−7)の任意の機能的等価物、アナログ、または誘導体の両方を指す。本明細書で使用する場合、「ペプチド」および「ポリペプチド」とは、互換的な用語であり、ペプチド結合によって一緒に結合している2個またはそれ超のアミノ酸を指す。本明細書で使用する場合、用語「ペプチド」および「ポリペプチド」には、線状ペプチドと環状ペプチドの両方が含まれる。用語「アンジオテンシン(angiotensin)−(1−7)」、「アンジオテンシン(Angiotensin)−(1−7)」、「Ang−(1−7)」および「TXA−127」は、互換的に使用される。
天然に存在するアンジオテンシン(1−7)
天然に存在するアンジオテンシン(1−7)(Ang−(1−7)とも呼ばれる)は、以下に示される7個のアミノ酸ペプチドである。
Asp1−Arg2−Val3−Tyr4−Ile5−His6−Pro7(配列番号1)
それは、レニン−アンジオテンシン系の一部であり、アンジオテンシノーゲンとしても公知である前駆体から変換されるものであり、アンジオテンシノーゲンは、主に肝臓によって構成的に産生され、血液循環の中に放出されるα−2−グロブリンである。アンジオテンシノーゲンは、セルピンファミリーのメンバーであり、レニン基質としても公知である。ヒトアンジオテンシノーゲンは、452個のアミノ酸長であるが、他の種は、様々なサイズのアンジオテンシノーゲンを有する。通常、最初の12個のアミノ酸は、アンジオテンシン活性にとって最も重要である。
Asp1−Arg2−Val3−Tyr4−Ile5−His6−Pro7−Phe8−His9−Leu10−Val11−Ile12(配列番号3)。
異なるタイプのアンジオテンシンは、様々な酵素の作用によって形成され得る。例えば、アンジオテンシン(1−7)は、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の作用によって産生される。
Ang−(1−7)は、Mas受容体に対する内因性リガンドである。Mas受容体は、7つの膜貫通領域を含有するG−タンパク質共役型受容体である。本明細書で使用する場合、用語「アンジオテンシン−(1−7)受容体」は、Gタンパク質共役型Mas受容体を包含する。
本明細書で使用する場合、用語「天然に存在するアンジオテンシン(1−7)」には、天然源から精製された任意のアンジオテンシン(1−7)ペプチドおよび天然に存在するアンジオテンシン(1−7)と同一のアミノ酸配列を有する、任意の組換え産生されたかまたは化学的に合成されたペプチドが含まれる。
Ang−(1−7)の機能的等価物、アナログ、または誘導体
一部の実施形態では、本発明に適したアンジオテンシン(1−7)ペプチドは、天然に存在するAng−(1−7)の機能的等価物である。本明細書で使用する場合、天然に存在するAng−(1−7)の機能的等価物は、天然に存在するAng−(1−7)に対してアミノ酸配列の同一性を共有し、かつ天然に存在するAng−(1−7)と同じまたは類似する活性を実質的に保持する任意のペプチドを指す。例えば、一部の実施形態では、本明細書に記載されている天然に存在するAng−(1−7)の機能的等価物は、本明細書に記載されているか、もしくは当分野において公知の方法を使用して決定される血管新生促進活性、または一酸化窒素放出、血管拡張、内皮機能の改善、抗利尿、もしくは血管新生に正の影響を及ぼす、本明細書において議論されている他の特性の1つなどの活性を有する。一部の実施形態では、本明細書に記載されている天然に存在するAng−(1−7)の機能的等価物は、本明細書に記載されているかまたは当分野において公知の様々なアッセイを使用して決定される、アンジオテンシン−(1−7)受容体(例えば、Gタンパク質共役型Mas受容体)に結合するか、またはそれを活性化することができる。一部の実施形態では、Ang−(1−7)の機能的等価物は、アンジオテンシン(1−7)アナログ、または誘導体、または機能的誘導体とも呼ばれる。
通常、アンジオテンシン(1−7)の機能的等価物は、天然に存在するAng−(1−7)に対してアミノ酸配列の類似性を共有する。一部の実施形態では、本発明によるAng−(1−7)の機能的等価物は、天然に存在するAng−(1−7)に見られる7個のアミノ酸に由来するアミノ酸を、少なくとも3個(例えば、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個)含む配列を含有しており、この場合、少なくとも3個(例えば、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、または少なくとも7個)のアミノ酸が、それらが天然に存在するAng−(1−7)に見られる、それらの相対的な位置および/または間隔を維持している。
一部の実施形態では、Ang−(1−7)の機能的等価物は、天然に存在するAng−(1−7)のアミノ酸配列と少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、70%、80%、または90%)が同一な配列を含有する、任意のペプチドも包含する。アミノ酸配列同一性の百分率は、アミノ酸配列のアライメントによって決定することができる。アミノ酸配列のアライメントは、例えば、BLAST、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの、公的に入手可能なコンピューターソフトウェアを使用して、当分野の技術の範囲内にある様々な方法で実現することができる。当業者は、比較される完全長の配列に対して最大限のアライメントを実現するために必要とする任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。好ましくは、WU−BLAST−2ソフトウェアは、アミノ酸配列の同一性を決定するために使用される(Altschulら、Methods in Enzymology、266巻、460〜480頁(1996年);http://blast.wustl/edu/blast/README.html)。WU−BLAST−2では、いくつかの検索パラメータが使用され、これらのパラメータの大部分は、デフォルト値に設定されている。調整可能なパラメータは、以下の値により設定される:オーバーラップスパン(overlap span)=1、オーバーラップフラクション(overlap fraction)=0.125、ワード閾値(word threshold)(T)=11。HSPスコア(S)およびHSP S2パラメータは、動的な値であり、特定の配列の組成に応じて、プログラム自体によって確立されるが、最小値は、上記に示されている通り、調整して設定することができる。
一部の実施形態では、Ang−(1−7)の機能的等価物、アナログ、または誘導体は、天然に存在するAng−(1−7)のフラグメントである。一部の実施形態では、Ang−(1−7)の機能的等価物、アナログ、または誘導体は、天然に存在するAng−(1−7)において、アミノ酸の置換、欠失、および/または挿入を含有する。Ang−(1−7)機能的等価物、アナログ、または誘導体は、置換、付加、および/または欠失によりアミノ酸配列を改変することによって作製することができる。例えば、天然に存在するAng−(1−7)(配列番号1)の配列内の1個または複数のアミノ酸残基は、類似した極性の別のアミノ酸によって置換することができ、これは機能的等価物として作用し、サイレント改変をもたらす。配列内のアミノ酸に対する置換は、アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択されてもよい。例えば、正に荷電している(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リシン、およびヒスチジンが含まれる。非極性(疎水性)アミノ酸には、ロイシン、イソロイシン、アラニン、フェニルアラニン、バリン、プロリン、トリプトファン、およびメチオニンが含まれる。非荷電極性アミノ酸には、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれる。負に荷電している(酸性)アミノ酸には、グルタミン酸およびアスパラギン酸が含まれる。アミノ酸のグリシンは、非極性アミノ酸ファミリーまたは非荷電(中性)極性アミノ酸ファミリーのいずれかに含まれていてもよい。アミノ酸のファミリー内で行われる置換は、保存的置換であることが一般に理解される。例えば、ペプチド阻害剤のアミノ酸配列は、修飾または置換することができる。
Ang−(1−7)機能的等価物、アナログ、および誘導体の例は、以下の「例示的なアンジオテンシン(1−7)ペプチド」と題する項目に記載されている。
アンジオテンシン−(1−7)ペプチドは、任意の長さとすることができる。一部の実施形態では、本発明によるアンジオテンシン−(1−7)ペプチドは、例えば、5〜20個、5〜15個または5〜10個のアミノ酸残基などの、5〜25個のアミノ酸残基を含有することができる。一部の実施形態では、本発明によるAng−(1−7)ペプチドは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25個の残基を含有する。
一部の実施形態では、アンジオテンシン−(1−7)ペプチドは、プロテアーゼ抵抗性、血清安定性、および/または生体利用率を向上させるために、1つまたは複数の修飾を含有する。一部の実施形態では、適切な修飾は、ペグ化、アセチル化、グリコシル化、ビオチン化、D−アミノ酸および/もしくは非天然アミノ酸による置換、ならびに/またはペプチドの環化から選択される。
本明細書で使用する場合、用語「アミノ酸」とは、その最も広範な意味において、ポリペプチド鎖の中に組み込むことができる任意の化合物および/または物質を指す。ある種の実施形態では、アミノ酸は、一般的な構造H2N−C(H)(R)−COOHを有する。ある種の実施形態では、アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸である。ある種の実施形態では、アミノ酸は、合成または非天然アミノ酸(例えばα,α−二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸)であり、一部の実施形態では、アミノ酸はD−アミノ酸であり、ある種の実施形態では、アミノ酸はL−アミノ酸である。「標準アミノ酸」とは、天然のペプチド中に両方が組み込まれているL−アミノ酸とD−アミノ酸の両方を含めて、天然に存在するペプチドにおいて一般に見出される20個の標準アミノ酸のいずれかを指す。「非標準」または「非慣用アミノ酸」とは、それが合成して調製されるか、または天然源から得られるかどうかにかかわらず、標準アミノ酸以外の、任意のアミノ酸を指す。本明細書で使用する場合、「合成または非天然アミノ酸」は、以下に限定されないが、塩、アミノ酸誘導体(アミドなど)、および/または置換体を含む、化学的に修飾されているアミノ酸を包含する。ペプチド中にカルボキシおよび/またはアミノ末端アミノ酸を含むアミノ酸は、メチル化、アミド化、アセチル化、および/またはその活性に悪影響を及ぼすことなく、ペプチドの循環半減期を変化させることができる他の化学基による置換によって修飾することができる。非慣用または非天然アミノ酸の例には、以下に限定されないが、シトルリン、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、4−(E)−ブテニル−4(R)−メチル−N−メチルトレオニン(MeBmt)、N−メチル−ロイシン(MeLeu)、アミノイソ酪酸、スタチン、およびN−メチル−アラニン(MeAla)が含まれる。アミノ酸は、ジスルフィド結合に関与していてもよい。用語「アミノ酸」は、「アミノ酸残基」と互換的に使用され、遊離アミノ酸および/またはペプチドのアミノ酸残基を指すことができる。それが遊離アミノ酸またはペプチドの残基を指すかどうかは、用語が使用されている文脈から明らかとなろう。
ある種の実施形態では、アンジオテンシン−(1−7)ペプチドは、1個または複数のL−アミノ酸、D−アミノ酸、および/または非天然アミノ酸を含有する。
天然に存在するアミノ酸のみを含有するペプチドに加えて、ペプチド模倣薬またはペプチドアナログもまた、本発明によって包含される。ペプチドアナログは、鋳型ペプチドのそれと類似する特性を有する非ペプチド薬物として製薬産業において一般に使用されている。非ペプチド化合物は、「ペプチドミメティック」またはペプチド模倣薬と称される(Fauchereら、Infect. Immun.54巻:283〜287頁(1986年);Evansら、J. Med. Chem.30巻:1229〜1239頁(1987年))。治療上有用なペプチドと構造的に関連するペプチドミメティックは、等価なまたは増強された治療的または予防的効果をもたらすように使用することができる。一般に、ペプチド模倣薬は、天然に存在する受容体結合ポリペプチドなどのパラダイムポリペプチド(paradigm polypeptide)(すなわち、生物活性または薬理学的活性を有するポリペプチド)に構造的に類似しているが、当分野において周知の方法による−CH2NH−、−CH2S−、−CH2−CH2−、−CH=CH−(シスおよびトランス)、−CH2SO−、−CH(OH)CH2−、−COCH2−などの結合によって、場合により置き換えられている1個または複数のペプチド結合を有する(Spatola、Peptide Backbone Modifications、Vega Data、1巻(3号):267頁(1983年);Spatolaら、Life Sci.38巻:1243〜1249頁(1986年);Hudsonら、Int. J. Pept. Res.14巻:177〜185頁(1979年);およびWeinstein. B.、1983年、Chemistry and Biochemistry, of Amino Acids, Peptides and Proteins、Weinstein編、Marcel Dekker、New-York)。そのようなペプチドミメティックは、より経済的な産生、より高い化学安定性、増強されている薬理学的特性(例えば、半減期、吸収、効力、効率など)、低下した抗原性などを含む、天然に存在するポリペプチドにまさる、有意な利点を有することがある。
Ang−(1−7)ペプチドはまた、ペプチドの正常な一部ではない、追加の化学部位を含有する、他のタイプのペプチド誘導体も含むが、但し、その誘導体は、ペプチドの所望の機能的な活性を保持していることを条件とする。そのような誘導体の例には、(1)アシル基が、アルカノイル基(例えば、アセチル、ヘキサノイル、オクタノイル)、アロイル基(例えば、ベンゾイル)、またはF−moc(フルオレニルメチル−O−CO−)などのブロック基とすることができる、アミノ末端または別の遊離アミノ基のN−アシル誘導体、(2)カルボキシ末端または別の遊離カルボキシ基もしくは遊離ヒドロキシル基のエステル、(3)アンモニアまたは適切なアミンとの反応によって生成するカルボキシ末端または別の遊離カルボキシル基のアミド、(4)リン酸化誘導体、(5)抗体または他の生物的リガンドにコンジュゲートされている誘導体および他のタイプの誘導体、ならびに(6)ポリエチレングリコール(PEG)鎖にコンジュゲートされている誘導体が含まれる。
Ang−(1−7)ペプチドは、合成技法(例えば、完全固相合成法(exclusive solid phase synthesis)、部分的固相合成法、フラグメント縮合、古典的な溶液合成、ネイティブケミカルライゲーション)および組換え技法を含む、当業者に公知のペプチド合成のいかなる方法によっても得ることができる。例えば、ペプチドまたはペプチド誘導体は、固相ペプチド合成によって得ることができ、これは、手短に言えば、C−末端アミノ酸のカルボキシル基を樹脂(例えば、ベンズヒドリルアミン樹脂、クロロメチル化樹脂、ヒドロキシメチル樹脂)にカップリングし、連続的にN−α保護アミノ酸を添加することからなる。保護基は、当分野において公知のいかなるそのような基とすることができる。新たなアミノ酸の各々が成長中の鎖に添加される前に、該鎖に添加された前のアミノ酸の保護基が除去される。そのような固相合成法は、例えば、Merrifield、J. Am. Chem. Soc.85巻:2149頁(1964年);Valeら、Science213巻:1394〜1397頁(1981年)により、米国特許第4,305,872号および米国特許第4,316,891号、Bodonskyら、Chem. Ind.(London)、38巻:1597頁(1966年);ならびにPiettaおよびMarshall、Chem. Comm.650頁(1970年)において、Lubellらの「Peptides」Science of Synthesis 21.11、Chemistry of Amides. Thieme、Stuttgart、713〜809頁(2005年)において概説されている技法により開示されている。適切な樹脂へのアミノ酸のカップリングは、当分野において周知でもあり、米国特許第4,244,946号において開示されている(Houver-Weyl、Methods of Organic Chemistry.、E22a巻、Synthesis of Peptides and Peptidomimetics、編集主任Murray Goodman、Thieme、Stuttgart. New York 2002年において概説されている)。
他に定義されていない限り、本明細書で使用されている科学用語および技術用語および命名は、本発明が関係する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般に、細胞培養、感染、分子生物学的方法などの手順が、当分野において使用される一般的な方法である。そのような標準的技法は、例えば、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley Interscience、New York、2001年;およびSambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、N.Y.、2001年などの参照手引書において見出すことができる。
Ang−(1−7)ペプチドの調製の任意の過程の間に、関係するいずれかの分子上の感受性反応基を保護することが望ましいことがある。これは、T.W. Greene & P.G.M. WutsによるProtective Groups In Organic Synthesis、1991年、John Wiley and Sons、New-York、ならびにSewaldおよびJakubkeによる、Peptides: chemistry and Biology、2002年、Wiley-VCH、Wheinheim、142頁において記載されているものなどの、従来の保護基によって実現することができる。例えば、αアミノ保護基には、アシル型保護基(例えば、トリフルオロアセチル、ホルミル、アセチル)、脂肪族ウレタン保護基(例えば、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)、シクロヘキシルオキシカルボニル)、芳香族ウレタン型保護基(例えば、フルオレニル−9−メトキシ−カルボニル(Fmoc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、Cbz誘導体)、およびアルキル型保護基(例えば、トリフェニルメチル、ベンジル)が含まれる。アミノ酸側鎖の保護基には、ベンジル(ThrおよびSer用)、Cbz(Tyr、Thr、Ser、Arg、Lys)、メチルエチル、シクロヘキシル(Asp、His)、Boc(Arg、His、Cys)などが含まれる。保護基は、当分野において公知の方法を使用して、後続の好都合な段階で除去することができる。
さらに、Ang−(1−7)ペプチドは、保護基を含む有機相において、FMOCプロトコルに従って合成することができる。望ましくは、このペプチドは、C18クロマトグラフィーカラム上で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により収率70%で精製され、10〜60%のアセトニトリルグラジエントにより溶出される。ペプチドの分子量は、質量分析法によって確認することができる(Fields, G.B.「Solid-Phase Peptide Synthesis」、Methods in Enzymology、289巻、Academic Press、1997年において概説されている)。
あるいは、Ang−(1−7)ペプチドは、例えば、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を使用して、組換え系において調製することができる。ポリペプチドは、同じポリペプチド内に、上記修飾を2箇所以上、含有してもよいことが理解される。
ペプチドは、インビトロにおいて生物活性を誘発するのに有効なことがあるが、インビボにおけるそれらの有効性は、プロテアーゼの存在によって低下し得る。血清プロテアーゼは、特異的な基質要件を有する。この基質は、L−アミノ酸と開裂に対するペプチド結合の両方を有していなければならない。さらに、エキソペプチダーゼは、血清におけるプロテアーゼ活性の最も顕著な構成要素に相当し、通常、ペプチドの第1のペプチド結合に作用し、遊離N−末端を必要とする(Powellら、Pharm. Res.10巻:1268〜1273頁(1993年))。この点を考慮すると、ペプチドの修飾版を使用するのが有利であることが多い。修飾ペプチドは、Ang−(1−7)の所望の生物活性を与える、元のL−アミノ酸ペプチドの構造的な特徴を保持するが、有利には、プロテアーゼおよび/またはエキソペプチダーゼによる開裂に対して容易に影響を受けない。
同じタイプのD−アミノ酸(例えば、L−リシンの代わりにD−リシン)を含むコンセンサス配列の1個または複数のアミノ酸の体系的な置換を使用して、より安定なペプチドを生成することができる。したがって、本発明のペプチド誘導体またはペプチド模倣薬は、順方向または逆方向の順序のどちらかで、すべてLのペプチド、すべてDのペプチド、またはD、Lのペプチドの混合とすることができる。ペプチダーゼがD−アミノ酸を基質として利用することができないので、N−末端またはC−末端のD−アミノ酸の存在により、ペプチドのインビボ安定性が向上する(Powellら、Pharm. Res.10巻:1268〜1273頁(1993年))。逆方向のDペプチドは、L−アミノ酸を含有するペプチドに対して、逆方向の配列で配置されているD−アミノ酸を含有するペプチドである。したがって、L−アミノ酸ペプチドのC−末端残基は、D−アミノ酸ペプチドにとってN−末端などになる。逆方向のD−ペプチドは、L−アミノ酸ペプチドと同じ二次的な立体配座を、したがって、同様の活性を保持するが、インビトロおよびインビボにおける酵素的分解に対してより抵抗性があり、したがって、元のペプチドよりも大きな治療効力を有することができる(BradyおよびDodson、Nature、368巻:692〜693頁(1994年);Jamesonら、Nature、368巻:744〜746頁(1994年))。同様に、逆方向のLペプチドは、標準的な方法を使用して生成することができ、この場合、親ペプチドのC−末端は、逆方向のLペプチドのN−末端の場所をとるようになる。重要な二次構造を有していない(例えば、短鎖ペプチド)、L−アミノ酸ペプチドの逆方向のL−ペプチドは、L−アミノ酸ペプチドの側鎖と同じ間隔および立体配座を保持しており、それ故に、多くの場合、元のL−アミノ酸ペプチドと同様の活性を有することが考えられる。さらに、逆方向のペプチドは、L−およびD−アミノ酸の組合せを含有してもよい。アミノ酸の間の間隔および側鎖の立体配座は保持され、これにより、元のL−アミノ酸ペプチドと同様の活性をもたらし得る。
ペプチドのN−末端またはC−末端残基に作用するペプチダーゼに対する抵抗性を与える別の有効な手法は、ペプチド末端に化学基を追加することであり、その結果、この修飾ペプチドは、もはやペプチダーゼに対する基質ではない。そのような化学修飾の1つは、一方または両方の末端におけるペプチドのグリコシル化である。ある種の化学修飾、特に、N−末端グリコシル化は、ヒト血清におけるペプチドの安定性を向上することが示されている(Powellら、Pharm. Res.10巻:1268〜1273頁(1993年))。血清安定性を強化する他の化学修飾には、以下に限定されないが、アセチル基などの1〜20個の炭素の低級アルキルからなるN−末端アルキル基の追加、および/またはC−末端アミド基もしくは置換アミド基の追加が含まれる。特に、本発明は、N−末端アセチル基および/またはC−末端アミド基を有するペプチドからなる修飾ペプチドを含む。
ペプチドの部分配列(subsequence)における天然アミノ酸を天然に存在しないアミノ酸に置換すると、やはりタンパク質分解に対する抵抗性が付与され得る。そのような置換は、例えば、生物活性に影響を及ぼすことなく、N−末端に作用するエキソペプチダーゼによるタンパク質分解に対する抵抗性を付与することができる。天然に存在しないアミノ酸の例には、α,α−二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、C−α−メチルアミノ酸、β−アミノ酸、およびβ−メチルアミノ酸が含まれる。本発明において有用なアミノ酸アナログは、以下に限定されないが、β−アラニン、ノルバリン、ノルロイシン、4−アミノ酪酸、オルニチン(orithine)、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、シクロヘキシルアラニン、2−アミノイソ酪酸、6−アミノヘキサン酸、t−ブチルグリシン、フェニルグリシン、o−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、および他の非慣用アミノ酸を含むことができる。さらに、天然に存在しないアミノ酸を有するペプチドの合成は、当分野において決まった手順である。
さらに、コンセンサス配列または実質的に同一のコンセンサス配列の変異を含む、拘束性ペプチドは、当分野で周知の方法によって生成することができる(RizoおよびGierasch、Ann. Rev. Biochem.61巻:387〜418頁(1992年))。例えば、拘束性ペプチドは、ジスルフィド架橋を形成することができるシステイン残基を追加することによって生成され、それによって、環状ペプチドをもたらすことができる。環状ペプチドは、遊離N−末端またはC−末端を有しないように構築することができる。したがって、環状ペプチドは、エンドペプチターゼに対して影響を受け得るが、エキソペプチダーゼによるタンパク質分解に対して影響を受けず、ペプチド末端において開裂しない。N−末端またはC−末端D−アミノ酸を有するペプチド、および環状ペプチドのアミノ酸配列は、それぞれ、N−末端もしくはC−末端D−アミノ酸残基の存在またはそれらの環式構造を除いて、それらが対応するペプチドの配列と、通常、同一である。
環状ペプチド
一部の実施形態では、天然に存在するAng−(1−7)の機能的等価物、アナログ、または誘導体は、環状ペプチドである。本明細書で使用する場合、環状ペプチドは、隣接していない2つの残基の間に分子内共有結合を有する。分子内結合は、主鎖と主鎖、側鎖と主鎖、または側鎖と側鎖の結合であってよい(すなわち、線状ペプチドの末端官能基、および/または末端もしくは内部残基の側鎖官能基が、連結して環化を達成することができる)。通常の分子内結合には、ジスルフィド結合、アミド結合、およびチオエーテル結合が含まれる。こうしたペプチドに行うことができる多数の他の修飾と同様に、ポリペプチドを環化するための様々な手段が、当分野において周知である。一般的な議論に関すると、それらの内容が参照により本明細書に組み込まれている、国際特許出願番号WO01/53331およびWO98/02452を参照されたい。こうした環式結合および他の修飾も、本発明の環状ペプチドおよび誘導体化合物に適用することができる。
本明細書に記載されている環状ペプチドは、L−アミノ酸、D−アミノ酸、またはそれらの任意に組み合わせた残基を含むことができる。アミノ酸は、天然源または非天然源に由来することができるが、但し、少なくとも1つのアミノ基および少なくとも1つのカルボキシル基が、分子内に存在していることを条件とし、α−およびβ−アミノ酸が、一般に好ましい。環状ペプチドはまた、幅広い様々な側鎖修飾および/もしくは置換(例えば、メチル化、ベンジル化、t−ブチル化、トシル化、アルコキシカルボニル化など)を伴うかまたは伴わない、1個または複数の希アミノ酸(4−ヒドロキシプロリンまたはヒドロキシリシンなど)、有機酸もしくはアミド、および/または一般的なアミノ酸の誘導体(エステル化(例えば、ベンジル、メチル、またはエチルエステル)もしくはアミド化されているC−末端カルボキシレートを有する、および/またはN−末端アミノ基の修飾(例えば、アセチル化もしくはアルコキシカルボニル化)を有するアミノ酸など)を含有することができる。適切な誘導体には、N−アセチル基(環化前に線状ペプチドのN−末端に相当するアミノ基がアセチル化されているように)および/またはC−末端アミド基(すなわち、環化前の線状ペプチドのカルボキシ末端がアミド化されている)を有するアミノ酸が含まれる。環状ペプチドと共に存在することができる、一般的なアミノ酸以外の残基には、以下に限定されないが、ペニシラミン、β,β−テトラメチレンシステイン、β,β−ペンタメチレンシステイン、β−メルカプトプロピオン酸、β,β−ペンタメチレン−β−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトベンゼン、2−メルカプトアニリン、2−メルカプトプロリン、オルニチン、ジアミノ酪酸、α−アミノアジピン酸、m−アミノメチル安息香酸、およびα,β−ジアミノプロピオン酸が含まれる。
N−アセチル化および/またはC−アミド化を伴うまたは伴わない線状ペプチドの合成後に、当分野において周知の様々な技法のいずれかによって環化を実現することができる。一実施形態の範囲内では、反応性アミノ酸の側鎖間で結合が生成されてもよい。例えば、ジスルフィド架橋は、2個のチオール含有残基を含む線状ペプチドから、様々な方法のいずれかを使用してペプチドを酸化することにより形成することができる。そのような一方法の範囲内では、塩基性または中性の水性媒体を使用し、数日間にわたるチオールの空気酸化により、ジスルフィド結合を生成することができる。このペプチドは高希釈で使用され、凝集および分子間の副反応を最小限にする。あるいは、I2およびK3Fe(CN)6などの強酸化剤を使用して、ジスルフィド結合を形成させることができる。当業者は、Met、Tyr、Trp、またはHisの感受性側鎖を酸化しないように注意しなければならないということを認識するであろう。さらなる実施形態の範囲内では、環化は、アミド結合の形成によって実現することができる。例えば、ペプチド結合は、末端官能基(すなわち、環化前の線状ペプチドのアミノ末端とカルボキシ末端)間で形成することができる。別のそのような実施形態の範囲内では、線状ペプチドは、D−アミノ酸を含む。あるいは、環化は、N−末端アセチル基および/またはC−末端アミドを伴ってまたは伴うことなく、一方の末端と残基側鎖とを連結することによって、または2つの側鎖を使用することによって実施することができる。ラクタム結合を形成することができる残基には、リシン、オルニチン(Orn)、α−アミノアジピン酸、m−アミノメチル安息香酸、α,β−ジアミノプロピオン酸、グルタミン酸、またはアスパラギン酸が含まれる。アミド結合を形成する方法は、当分野において一般に周知である。こうした一方法の範囲内では、カルボン酸とDCC、DIC、EDAC、またはDCCIとの反応によって、カルボジイミドを媒介とするラクタム形成を実施することができ、これにより、環化を完了するための遊離アミノ基と直ちに反応させることができるO−アシル尿素が形成する。あるいは、環化は、アジド法を使用して実施することができ、この場合、反応性アジド中間体が、ヒドラジドを経てアルキルエステルから生成する。あるいは、環化は、活性化エステルを使用して実施することができる。エステルのアルコキシ炭素上の電子吸引性置換基が存在していることにより、アミノリシスに対するそれらの感受性が向上する。p−ニトロフェノール、N−ヒドロキシ化合物、およびポリハロゲン化フェノールのエステルの高い反応性により、これらの「活性エステル」は、アミド結合の合成において有用となる。さらなる実施形態の範囲内では、チオール含有残基の側鎖と適切に誘導体化されているα−アミノ酸との間に、チオエーテル結合を形成することができる。例として、リシン側鎖は、カルボジイミドカップリング法(DCC、EDAC)により、ブロモ酢酸とカップリングし、次いで、上記のチオール含有残基のいずれかの側鎖と反応させて、チオエーテル結合を形成させることができる。ジチオエーテルを形成させるために、任意の2個のチオール含有側鎖を、DMF中で、ジブロモエタンとジイソプロピルアミンと反応させることができる。
例示的なアンジオテンシン−(1−7)ペプチド
線状アンジオテンシン(1−7)ペプチド
ある種の態様では、本発明は、線状アンジオテンシン−(1−7)ペプチドを提供する。上で議論されている通り、天然に存在するAng−(1−7)の構造は、以下の通りである。
Asp1−Arg2−Val3−Tyr4−Ile5−His6−Pro7(配列番号1)
本発明のペプチドおよびペプチドアナログは、以下の配列
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7(配列番号4)
によって、一般に表すことができ、または薬学的に許容されるその塩である。
Xaa1は、任意のアミノ酸またはジカルボン酸である。ある種の実施形態では、Xaa1は、Asp、Glu、Asn、Acpc(1−アミノシクロペンタンカルボン酸)、Ala、Me2Gly(N,N−ジメチルグリシン)、Pro、Bet(ベタイン、水酸化1−カルボキシ−N,N,N−トリメチルメタンアミニウム)、Glu、Gly、Asp、Sar(サルコシン)、またはSuc(コハク酸)である。ある種のこうした実施形態では、Xaa1は、AspまたはGluなどの負に荷電しているアミノ酸であり、通常Aspである。
Xaa2は、Arg、Lys、Ala、Cit(シトルリン)、Orn(オルニチン)、アセチル化Ser、Sar、D−Arg、およびD−Lysである。ある種の実施形態では、Xaa2は、ArgまたはLysなどの正に荷電しているアミノ酸であり、通常Argである。
Xaa3は、Val、Ala、Leu、Nle(ノルロイシン)、Ile、Gly、Lys、Pro、HydroxyPro(ヒドロキシプロリン)、Aib(2−アミノイソ酪酸)、Acpc、またはTyrである。ある種の実施形態では、Xaa3は、Val、Leu、Ile、またはNleなどの脂肪族アミノ酸であり、通常、ValまたはNleである。
Xaa4は、Tyr、Tyr(PO3)、Thr、Ser、homoSer(ホモセリン)、azaTyr(アザ−α1−ホモ−L−チロシン)またはAlaである。ある種の実施形態では、Xaa4は、Tyr、SerまたはThrなどのヒドロキシル置換アミノ酸であり、通常Tyrである。
Xaa5は、Ile、Ala、Leu、norLeu、Val、またはGlyである。ある種の実施形態では、Xaa5は、Val、Leu、Ile、またはNleなどの脂肪族アミノ酸であり、通常Ileである。
Xaa6は、His、Arg、または6−NH2−Phe(6−アミノフェニルアラニン)である。ある種の実施形態では、Xaa6は、ArgまたはHisなどの、完全にまたは部分的に正に荷電しているアミノ酸である。
Xaa7は、Cys、Pro、またはAlaである。
ある種の実施形態では、Xaa1〜Xaa7の1つまたは複数が、天然に存在するAng−(1−7)における対応するアミノ酸と同一である。ある種のこうした実施形態では、Xaa1〜Xaa7の1つまたは2つ以外のすべてが、天然に存在するAng−(1−7)における対応するアミノ酸と同一である。他の実施形態では、Xaa1〜Xaa6のすべてが、天然に存在するAng−(1−7)における対応するアミノ酸と同一である。
ある種の実施形態では、Xaa3は、Nleである。Xaa3が、Nleである場合、Xaa1〜Xaa2およびXaa4〜7の1つまたは複数は、場合により、天然に存在するAng−(1−7)における対応するアミノ酸と同一である。ある種のこうした実施形態では、Xaa1〜Xaa2およびXaa4〜7の1つまたは2つ以外のすべてが、天然に存在するAng−(1−7)における対応するアミノ酸と同一である。他の実施形態では、Xaa1〜Xaa2およびXaa4〜7のすべてが、天然に存在するAng−(1−7)における対応するアミノ酸と同一であり、アミノ酸配列Asp1−Arg2−Nle3−Tyr4−Ile5−His6−Pro7(配列番号5)となる。
ある種の実施形態では、ペプチドは、アミノ酸配列Asp1−Arg2−Val3−Ser4−Ile5−His6−Cys7(配列番号2)またはAsp1−Arg2−Val3−ser4−Ile5−His6−Cys7(配列番号6)を有する。
例示的な環式アンジオテンシン(1−7)ペプチド
ある種の態様では、本発明は、AngにおけるTyr4位およびPro7位に相当するアミノ酸の側鎖間などの結合を含む環状アンジオテンシン−(1−7)(Ang−(1−7))ペプチドアナログを提供する。これらのペプチドアナログは、通常、7個のアミノ酸残基を含むが、開裂可能な配列も含むことができる。より詳細に以下に議論される通り、本発明は、フラグメント、および1個または複数のアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されているアナログ(フラグメントを含む)、例えば、Asp1−Arg2−Val3−Ser4−Ile5−His6−Cys7(配列番号22)を含み、結合が、Ser4とCys7との間に形成される。
以下の項目は、4位および7位における残基を連結するチオエーテル結合に関する本発明の態様を説明するが、他の結合(上記の通り)が、チオエーテル架橋に置き換えられて、他の残基が環化し得ることを理解すべきである。チオエーテル架橋はまた、一硫化架橋とも、またはAla−S−Alaの場合、ランチオニン架橋とも呼ばれる。チオエーテル架橋含有ペプチドは、以下の式
の1つを有する2個のアミノ酸によって形成することができる。
これらの式において、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6は、独立して、−H、アルキル基(例えば、C1〜C6アルキル、C1〜C4アルキル)、またはアラルキル基であり、これらのアルキル基およびアラルキル基は、1つまたは複数のハロゲン、−OH、または−NRR’基(RおよびR’は、独立して、−HまたはC1〜C4アルキルである)によって場合により置換されている。ある種の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立して、−Hまたは−CH3であり、こうした場合、すべて−Hである。
ある種の実施形態では、本発明は、式(I)によるチオエーテル架橋を含むAngアナログまたは誘導体を提供する。通常、R1、R2、R3およびR4は、−Hおよび−CH3から独立して選択される。式(I)によるチオエーテル架橋を含むペプチドは、例えば、ランチビオティック酵素によってまたはジスルフィドの硫黄押出しによって、生成することができる。一例では、硫黄が押し出されるジスルフィドは、4位におけるD−システインおよび7位におけるL−システインによって、または4位におけるD−システインおよび7位におけるL−ペニシラミンによって、形成することができる(例えば、Galande、TrentおよびSpatola(2003年)、Biopolymers、71巻、534〜551頁を参照されたい)。
他の実施形態では、2個のアミノ酸の結合は、式(II)または式(III)において示されている架橋とすることができる。式(II)によるチオエーテル架橋を含むペプチドは、例えば、4位におけるD−ホモシステインおよび7位におけるL−システインによって形成されるジスルフィドの硫黄押出しによって、作製することができる。同様に、式(III)にある通りのチオエーテル架橋を含むペプチドは、例えば、4位におけるD−システインおよび7位におけるL−ホモシステインによって形成されるジスルフィドの硫黄押出しによって、作製することができる。
上で議論されている通り、本発明のAngアナログおよび誘導体は、長さおよびアミノ酸組成が変動する。本発明のAngアナログおよび誘導体は、好ましくは、生物活性を有するか、またはタンパク質分解により活性化され得る不活性前駆体分子である(10個のアミノ酸を有するアンジオテンシン(I)が、2個のアミノ酸の開裂によってどのように活性フラグメントに変換されるかなど)。Angアナログまたは誘導体のサイズは、変動し得るが、3〜7個のNle−チオエーテル環構造を含む「コア」の五量体セグメントが包含されている限り、通常、約5〜10個の間のアミノ酸である。本発明のアナログまたは誘導体のアミノ酸配列は、変動し得るが、通常、それが、生物活性であるか、またはタンパク質分解により活性化されている状態になることができることを条件とする。アナログまたは誘導体の生物活性は、放射性リガンド結合の検討、インビトロ細胞活性化アッセイ、およびインビボ実験を含む、当分野において公知の方法を使用して決定することができる。例えば、GodenyおよびSayeski(2006年)Am. J. Physiol. Cell. Physiol.291巻:C1297〜1307頁;Sarrら、Cardiovasc. Res.(2006年)71巻:794〜802頁;ならびにKoziarzら(1933年)Gen. Pharmacol.24巻:705〜713頁を参照されたい。
ペプチドの長さしか変動しない、Angアナログおよび誘導体は、以下を含む:
天然Ang−(1−7)(Asp1−Arg2−Val3−Cyc4−Ile5−His6−Cyc7、配列番号7)から誘導される、[Cyc4−7]Ang−(1−7)と命名される4,7−環化アナログ
天然アンジオテンシンI(Ang−(1−10))(Asp1−Arg2−Nle3−Cyc4−Ile5−His6−Cyc7−Phe8−His9−Leu10、配列番号8)から誘導される、[Nle3,Cyc4−7]Ang−(1−10)と命名される4,7−環化アナログ;
天然アンジオテンシンII(Ang−(1−8))(Asp1−Arg2−Nle3−Cyc4−Ile5−His6−Cyc7−Phe8、配列番号9)から誘導される、[Nle3,Cyc4−7]Ang−(1−8)と命名される4,7−環化アナログ;
天然アンジオテンシンIII(Ang−(2−8))(Arg2−Nle3−Cyc4−Ile5−His6−Cyc7−Phe8、配列番号10)から誘導される、[Nle3,Cyc4−7]Ang−(2−8)と命名される4,7−環化アナログ;
天然アンジオテンシンIV(Ang−(3−8))(Nle3−Cyc4−Ile5−His6−Cyc7−Phe8、配列番号11)から誘導される、[Nle3,Cyc4−7]Ang−(3−8)と命名される4,7−環化アナログ;
天然Ang−(1−7)(Asp1−Arg2−Nle3−Cyc4−Ile5−His6−Cyc7、配列番号12)から誘導される、[Nle3,Cyc4−7]Ang−(1−7)と命名される4,7−環化アナログ;および
天然Ang−(1−9)(Asp1−Arg2−Nle3−Cyc4−Ile5−His6−Cyc7−Phe8−His9、配列番号13)から誘導される、[Nle3,Cyc4−7]Ang−(1−9)と命名される4,7−環化アナログ。
これらのアナログは、Cyc4−7部位として、式(I)〜(III)において示されているチオエーテル架橋の1つを有することができ、例えば、R1〜R4がそれぞれ、−Hまたは−CH3であり、通常−Hである場合などの、Cyc4およびCyc7が、式(I)によって表される。
天然アンジオテンシンペプチドのアミノ酸配列と比較して、Cyc4−7アナログの4位および7位のアミノ酸は修飾されて、上に示されているチオエーテル環構造の導入が可能になる。Angアナログの長さに加えて、3、4、および7以外の位置にあるアミノ酸は、天然に存在するペプチドと同じであるかまたは異なるものとすることができるが、但し、通常、アナログが、生物的機能を保持していることを条件とする。一例は、Asp1−Arg2−Val3−Ser4−Ile5−His6−Cys7(配列番号22)である。[Cyc4−7]Ang−(1−10)のような不活性前駆体のアナログに関すると、生物的機能とは、それを開裂して、生物活性なフラグメント(例えば、Ang−(1−8)またはAng−(1−7))にすることができるアンジオテンシン変換酵素に対するアナログの感受性またはフラグメント自体の生物活性の一方または両方を指す。ある種の実施形態では、本発明のAngアナログまたは誘導体は、内在性の機能を有していないが、1つまたは複数の天然に存在するアンジオテンシン化合物の効果を阻害する。
ある種の実施形態では、本発明のAngアナログは、式(IV)
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cyc4−Xaa5−Xaa6−Cyc7(IV、配列番号14)によって表される。
Xaa1は、任意のアミノ酸であるが、通常、GluまたはAspなどの負に荷電しているアミノ酸であり、より典型的にはAspである。
Xaa2は、ArgまたはLysなどの正に荷電しているアミノ酸であり、通常Argである。
Xaa3は、Leu、Ile、またはValなどの脂肪族アミノ酸であり、通常、Valである。
Cyc4は、Cyc7と一緒になって、チオエーテル架橋を形成する。Cyc4は、D−立体異性体および/またはL−立体異性体、通常、D−立体異性体とすることができる。Cyc4(Cyc7と一緒になって)の例は、式(I)、(II)、および(III)において示されている。通常、式(I)、(II)、および(III)におけるR基は、−Hまたは−CH3、とりわけ−Hである。
Xaa5は、Leu、Ile、またはValなどの脂肪族アミノ酸であり、通常、Ileである。
Xaa6は、Hisである。
Cyc7は、式(I)、(II)または(III)におけるものなどの、Cyc4と一緒になってチオエーテル架橋を形成する。Cyc7は、D−立体異性体および/またはL−立体異性体、通常、L−立体異性体とすることができる。Cyc7(Cyc4と一緒になって)の例は、式(I)、(II)および(III)において示されている。通常、式(I)、(II)および(III)におけるR基は、−Hまたは−CH3、とりわけ−Hである。
ある種の実施形態では、Xaa1〜Xaa6の1つまたは複数(Cyc4およびCyc7を除く)が、天然に存在するAng−(1−7)における対応するアミノ酸と同一である。ある種のこうした実施形態では、Xaa1〜Xaa6の1つまたは2つ以外のすべてが、天然に存在するAng−(1−7)における対応するアミノ酸と同一である。他の実施形態では、Xaa1〜Xaa6のすべてが、天然に存在するAng−(1−7)における対応するアミノ酸と同一である。
ある種の実施形態では、Cyc4およびCyc7は、Abu(2−アミノ酪酸)およびAla(アラニン)から独立して選択され、この場合、Alaは、少なくとも1つの位置に存在している。したがって、環状アナログは、−Ala4−S−Ala7−(式(I)、R1〜R4は、それぞれ−Hである)、−Ala4−S−Abu7−(式(I)、R1〜R3は−Hであり、R4は−CH3である)、または−Abu4−S−Ala7−(式(I)、R1、R3、およびR4は−Hであり、R2は−CH3である)によって形成されるチオエーテル結合を有することができる。環状アナログの具体例は、−Abu4−S−Ala7−または−Ala4−S−Ala7−結合を含む。
ある種の実施形態では、本発明は、以下の構造図
によって表される、アミノ酸配列Asp1−Arg2−Val3−Abu4−Ile5−His6−Ala7(配列番号15)またはアミノ酸配列Asp1−Arg2−Val3−Ala4−Ile5−His6−Ala7(配列番号16)を有する、4位と7位との間にチオエーテル架橋を有するAng−(1−7)アナログを提供する。
ある種の実施形態では、本発明のAngアナログまたは誘導体は、式(V)
Xaa1−Xaa2−Nle3−Cyc4−Xaa5−Xaa6−Cyc7−Xaa8−Xaa9−Xaa10(V、配列番号17)
によって表される。上で議論されている通り、Xaa1、Xaa2、Xaa8、Xaa9、およびXaa10の1つまたは複数が、ある種の実施形態において存在していない。例えば、(1)Xaa10が存在しない、(2)Xaa9およびXaa10が存在しない、(3)Xaa8、Xaa9、およびXaa10が存在しない、(4)Xaa1が存在しない、(5)Xaa1およびXaa10が存在しない、(6)Xaa1、Xaa9、およびXaa10が存在しない、(7)Xaa1、Xaa8、Xaa9、およびXaa10が存在しない、(8)Xaa1およびXaa2が存在しない、(9)Xaa1、Xaa2、およびXaa10が存在しない、(10)Xaa1、Xaa2、Xaa9、およびXaa10が存在しない、または(11)Xaa1、Xaa2、Xaa8、Xaa9、およびXaa10が存在しない。これらの実施形態のそれぞれの場合、残りのアミノ酸は、以下に記載される意味(value)を有する。
Xaa1は、存在している場合、任意のアミノ酸であるが、通常、GluまたはAspなどの負に荷電しているアミノ酸であり、より典型的にはAspである。
Xaa2は、存在する場合、ArgまたはLysなどの正に荷電しているアミノ酸であり、通常Argである。
Nle3は、ノルロイシンである。
Cyc4は、Cyc7と一緒になって、チオエーテル架橋を形成する。Cyc4は、D−立体異性体および/またはL−立体異性体、通常、D−立体異性体とすることができる。Cyc4(Cyc7と一緒になって)の例は、式(I)、(II)、および(III)において示されている。通常、式(I)、(II)および(III)におけるR基は、−Hまたは−CH3、とりわけ−Hである。
Xaa5は、Leu、Nle、Ile、またはValなどの脂肪族アミノ酸であり、通常、Ileである。
Xaa6は、Hisである。
Cyc7は、式(I)、(II)または(III)におけるものなどの、Cyc4と一緒になってチオエーテル架橋を形成する。Cyc7は、D−立体異性体および/またはL−立体異性体、通常、L−立体異性体とすることができる。Cyc7(Cyc4と一緒になって)の例は、式(I)、(II)、および(III)において示されている。通常、式(I)、(II)および(III)におけるR基は、−Hまたは−CH3、とりわけ−Hである。
Xaa8は、存在する場合、Pro以外のアミノ酸であり、通常、PheまたはIleである。ある種の実施形態では、Ileは、Ang(1−8)の阻害剤となる。ある種の実施形態では、Pheは、Ang(1−8)またはAng(1−10)の生物活性を維持している。
Xaa9は、存在する場合、Hisである。
Xaa10は、存在する場合、脂肪族残基、例えば、Ile、Val、またはLeu、通常、Leuである。
ある種の実施形態では、Xaa1〜Xaa10(Nle3、Cyc4、およびCyc7を除く)の1つまたは複数が、天然に存在するAng(Ang−(1−7)、Ang(1−8)、Ang(1−9)、Ang(1−10)、Ang(2−7)、Ang(2−8)、Ang(2−9)、Ang(2−10)、Ang(3−8)、Ang(3−9)、およびAng(3−10)を含む)における対応するアミノ酸と同一である。ある種のこうした実施形態では、Xaa1〜Xaa10の1つまたは2つ以外のすべて(存在するものについて)が、天然に存在するAngにおける対応するアミノ酸と同一である。他の実施形態では、Xaa1〜Xaa10はすべて(存在するものについて)が、天然に存在するAngにおける対応するアミノ酸と同一である。
ある種の実施形態では、Cyc4およびCyc7は、Abu(2−アミノ酪酸)およびAla(アラニン)から独立して選択され、この場合、Alaは、少なくとも1つの位置に存在している。したがって、−Ala4−S−Ala7−(式(I)、R1〜R4は、それぞれ−Hである)、−Ala4−S−Abu7−(式(I)、R1〜R3は−Hであり、R4は−CH3である)、または−Abu4−S−Ala7−(式(I)、R1、R3およびR4は−Hであり、R2は−CH3である)によって形成されるチオエーテル結合を含む環状アナログが包含される。特定の環状アナログは、−Abu4−S−Ala7−または−Ala4−S−Ala7−結合を含む。
特に、本発明は、アミノ酸配列Asp1−Arg2−Nle3−Abu4−Ile5−His6−Ala7(配列番号18)またはアミノ酸配列Asp1−Arg2−Nle3−Ala4−Ile5−His6−Ala7(配列番号19)を有する、4位と7位との間にチオエーテル架橋を有する、Ang−(1−7)アナログまたは誘導体を提供する。
別の態様では、本発明は、Ang−(1−8)アンタゴニスト活性を有する、4位と7位との間にチオエーテル架橋を有するAng−(1−8)アナログまたは誘導体、特に、アミノ酸配列Asp1−Arg2−Nle3−Abu4−Ile5−His6−Ala7−Ile8(配列番号20)またはアミノ酸配列Asp1−Arg2−Nle3−Ala4−Ile5−His6−Ala7−Ile8(配列番号21)を有するAng(1−8)アナログまたは誘導体を提供する。
Ang(1−7)受容体アゴニスト
一部の実施形態では、本発明は、筋ジストロフィーを処置する方法であって、筋ジストロフィーに罹患しているか、または罹患しやすい対象に、アンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストを投与するステップを含む、方法を提供する。本明細書で使用する場合、用語「アンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニスト」は、アンジオテンシン−(1−7)受容体、特にG−タンパク質共役型Mas受容体の機能に正の影響を及ぼす、いかなる分子も包含している。一部の実施形態では、アンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニストは、直接または間接的に、アンジオテンシン−(1−7)受容体(すなわち、Mas受容体)活性を増強する、強化する、活性化する、および/または向上させる。一部の実施形態では、アンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニストは、直接、アンジオテンシン−(1−7)受容体(すなわち、Mas受容体)と相互作用する。こうしたアゴニストは、例えば、タンパク質、化学化合物、低分子、核酸、抗体、薬物、リガンド、または他の作用剤を含む、ペプチドまたは非ペプチドとすることができる。一部の実施形態では、本アンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストは、非ペプチドアゴニストである。
例示的なクラスのアンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニストは、1−(p−チエニルベンジル)イミダゾールである。これらの非ペプチドアンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニストの例は、式(VI)
によって表されるか、または薬学的に許容されるその塩である[式中、
R1は、ハロゲン、ヒドロキシル、(C1〜C4)−アルコキシ、(C1〜C8)−アルコキシ(1〜6個の炭素原子が、ヘテロ原子O、SまたはNHによって(好ましくは、Oによって)置き換えられている)、(C1〜C4)−アルコキシ(テトラヒドロピランまたはテトラヒドロフランなどの飽和環状エーテルによって置換されている)、O−(C1〜C4)−アルケニル、O−(C1〜C4)−アルキルアリール、またはアリールオキシ(無置換であるか、またはハロゲン、(C1〜C3)−アルキル、(C1〜C3)−アルコキシ、およびトリフルオロメチルから選択される置換基によって置換されている)であり、
R2は、CHO、COOH、または(3)CO−O−(C1〜C4)−アルキルであり、
R3は、(C1〜C4)−アルキルまたはアリールであり、
R4は、水素、ハロゲン(クロロ、ブロモ、フルオロ)、または(C1〜C4)−アルキルであり、
Xは、酸素または硫黄であり、
Yは、酸素または−NH−であり、
R5は、水素、(C1〜C6)−アルキル、または(C1〜C4)−アルキルアリールであり、Yが−NH−である場合、R5は水素であり、
R6は、(C1〜C5)−アルキルである]。
ある種の実施形態では、R2が、COOHまたはCO−O−(C1〜C4)−アルキルである場合、R1はハロゲンではない。
一部の実施形態では、アンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニストは、以下の構造
によって表される、AVE0991、5−ホルミル−4−メトキシ−2−フェニル−1[[4−[2−(エチルアミノカルボニルスルホンアミド)−5−イソブチル−3−チエニル]−フェニル]−メチル]−イミダゾールである。
別の例示的なクラスのアンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニストは、p−チエニルベンジルアミドである。これらの非ペプチドアンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニストの例は、構造式(VII)
によって表されるか、または薬学的に許容されるその塩である[式中、
R1は、(C1〜C5)−アルキル(無置換であるか、またはNH2、ハロゲン、O−(C1〜C3)−アルキル、CO−O−(C1〜C3)−アルキルおよびCO2Hから選択されるラジカルによって置換されている)、(C3〜C8)−シクロアルキル、(C1〜C3)−アルキル−(C3〜C8)−シクロアルキル、(C6〜C10)−アリール(無置換であるか、またはハロゲンおよびO−(C1〜C3)−アルキルから選択されるラジカルによって置換されている)、(C1〜C3)−アルキル−(C6〜C10)−アリール(アリールラジカルは無置換であるか、またはハロゲンおよびO−(C1〜C3)−アルキルから選択されるラジカルによって置換されている)、(C1〜C5)−ヘテロアリール、または(C1〜C3)−アルキル−(C1〜C5)−ヘテロアリールであり、
R2は、水素、(C1〜C6)−アルキル(無置換であるか、またはハロゲンおよびO−(C1〜C3)−アルキルから選択されるラジカルによって置換されている)、(C3〜C8)−シクロアルキル、(C1〜C3)−アルキル−(C3〜C8)−シクロアルキル、(C6〜C10)−アリール(無置換であるか、またはハロゲン、O−(C1〜C3)−アルキル、およびCO−O−(C1〜C3)−アルキルのなかから選択されるラジカルによって置換されている)、または(C1〜C3)−アルキル−(C6〜C10)−アリール(無置換であるか、またはハロゲンおよびO−(C1〜C3)−アルキルから選択されるラジカルによって置換されている)であり、
R3は、水素、COOH、またはCOO−(C1〜C4)−アルキルであり、
R4は、水素、ハロゲン、または(C1〜C4)−アルキルであり、
R5は、水素または(C1〜C6)−アルキルであり、
R6は、水素、(C1〜C6)−アルキル、(C1〜C3)−アルキル−(C3〜C8)−シクロアルキル、または(C2〜C6)−アルケニルであり、
Xは、酸素またはNHである]。
アンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニストのさらなる例は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,235,766号において記載されている。
上記の様々なアンジオテンシン−(1−7)受容体アゴニストは、薬学的に許容される塩として存在することができる。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」とは、ペプチドまたは等価な化合物の所望の活性を保持しているが、好ましくは、ペプチドの活性またはペプチドを使用する系の他の構成要素の活性に悪影響を及ぼさない塩を指す。そのような塩の例は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸などにより形成される酸付加塩である。塩はまた、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモ酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸などの有機酸により形成されてもよい。陽イオン性物質から形成される塩は、これらの無機酸および有機酸の共役塩基を利用してもよい。塩はまた、亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケルなどの多価金属陽イオンにより、あるいはN,N’−ジベンジルエチレンジアミンもしくはエチレンジアミン、またはそれらの組合せから形成される有機カチオンにより形成されてもよい(例えば、タンニン酸亜鉛塩)。無毒性の、生理学的に許容される塩が好ましい。
塩は、この塩が不溶性である溶媒もしくは媒体中または水などの溶媒中(これらの溶媒または媒体は、次に真空で、または凍結乾燥により除去される)、遊離酸または遊離塩基形態の生成物を、1当量またはそれ超の適切な酸または塩基と反応させることによる、あるいは存在している塩の陽イオンを適切なイオン交換樹脂上の別の陽イオンで交換することによるなどの従来的な手段によって形成することができる。
アルキル基は、完全に飽和している直鎖または分岐非芳香族炭化水素である。通常、直鎖または分岐アルキル基は、1〜約20個、好ましくは1〜約10個の炭素原子を有する。直鎖および分岐アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ペンチル、およびオクチルが含まれる。C1〜C4直鎖または分岐アルキル基はまた、「低級アルキル」基とも呼ばれる。
アルケニル基は、1つまたは複数の二重結合を含む直鎖または分岐非芳香族炭化水素である。通常、直鎖または分岐アルケニル基は、2〜約20個、好ましくは2〜約10個の炭素原子を有する。直鎖および分岐アルケニル基の例には、エテニル、n−プロペニル、およびn−ブテニルが含まれる。
芳香族(アリール)基には、フェニル、ナフチル、およびアントラシルなどの炭素環式芳香族基、ならびにイミダゾリル、チエニル、フリル、ピリジル、ピリミジル、ピラニル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、チアゾリル、オキサゾリル、およびテトラゾリルなどのヘテロアリール基が含まれる。芳香族基には、炭素環式芳香環またはヘテロアリール環が1つまたは複数の他のヘテロアリール環と縮合している、縮合多環式芳香族環系も含まれる。例には、ベンゾチエニル、ベンゾフリル、インドリル、キノリニル、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、キノリニル、イソキノリニル、およびイソインドリルが含まれる。
アラルキル基は、アリール基によって置換されているアルキル基である。芳香族(アリール)基には、フェニル、ナフチルおよびアントラシルなどの炭素環式芳香族基、ならびにイミダゾリル、チエニル、フリル、ピリジル、ピリミジル、ピラニル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、チアゾリル、オキサゾリルおよびテトラゾリルなどのヘテロアリール基が含まれる。芳香族基には、炭素環式芳香環またはヘテロアリール環が1つまたは複数の他のヘテロアリール環と縮合している、縮合多環式芳香族環系も含まれる。例には、ベンゾチエニル、ベンゾフリル、インドリル、キノリニル、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、キノリニル、イソキノリニルおよびイソインドリルが含まれる。
医薬組成物
本発明の方法によれば、本明細書に記載されている、アンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストは、単独で(例えば、精製済みペプチドまたは化合物として)、または本明細書に記載されている組成物もしくは医薬の構成要素(例えば、疾患の処置のための医薬製造において)として、対象に投与することができる。本組成物は、生理学的に許容される担体または添加剤と一緒に製剤化して、医薬組成物を調製することができる。担体および組成物は、無菌とすることができる。製剤は、投与の形式に好適となるべきである。組成物の製剤化方法は、当分野で公知である(例えば、Remington's Pharmaceuticals Sciences、第17版、Mack Publishing Co.(Alfonso R. Gennaro編集)(1989年)を参照されたい)。
適切な薬学的に許容される担体には、以下に限定されないが、水、塩の溶液(例えば、NaCl)、生理食塩水、緩衝生理食塩水、アルコール、グリセロール、エタノール、アラビアガム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、炭水化物(ラクトース、アミロースまたはデンプンなど)、糖(マンニトール、スクロース、またはその他)、デキストロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(pyrolidone)など、およびそれらの組合せが含まれる。医薬調製物は、所望の場合、活性化合物と反応して有害とならないか、またはそれらの活性を妨害しない補助剤(例えば、滑沢剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、緩衝液、着色物質、風味物質、および/または芳香物質など)と混合することができる。好ましい実施形態では、静脈内投与に適した水溶性担体が使用される。
本組成物または医薬は、所望の場合、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝化剤も含有することができ、これらの一部は、以下でさらに議論される。本組成物は、液状溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放製剤、または粉末とすることができる。本組成物はまた、従来の結合剤およびトリグリセリドなどの担体と共に坐剤として製剤化することもできる。経口用製剤は、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を含むことができる。
本組成物または医薬は、ヒトに投与するようになされた医薬組成物として、決まった手順に従って製剤化することができる。例えば、好ましい実施形態では、静脈内投与向け組成物は、通常、無菌の等張水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、本組成物は、溶解補助剤、および注射部位における痛みを緩和するための局所麻酔薬を含んでもよい。一般に、成分は、別々または単位剤形中に一緒に混合されて供給される(例えば、乾燥した凍結乾燥散剤、またはアンプルなどの気密密封されている容器中の水不含濃縮製剤、または活性剤の量を示しているサシェ(sachette)として)。本組成物が注入によって投与されることになる場合、無菌医薬グレードの水、生理食塩水、またはデキストロース/水を含有している注入用ボトルに分注することができる。組成物が注射によって投与される場合、注射用の滅菌水または生理食塩水のアンプルを用意し、投与前に、成分を混合することができる。
一部の実施形態では、医薬製剤として提供されるものを含めた、提供される組成物は、以下に限定されないが、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、血清含有溶液、ハンクス溶液、他の水性の生理的平衡溶液、油、エステル、およびグリコールなどの液状担体を含む。
本明細書に記載されている、アンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストは、中性または塩形態として製剤化することができる。薬学的に許容される塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどの、遊離アミノ基と形成されるもの、および水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなどの、遊離カルボキシル基と形成されるものが含まれる。
経口用製剤
一部の実施形態では、好適な医薬組成物は、経口用製剤である。任意の医薬として許容される経口用製剤が、本発明の範囲内で使用することができるものと企図される。
一部の実施形態では、提供される組成物は、少なくとも1種のpH低下剤を含む。本発明の一部の実施形態において使用するために好適なpH低下剤には、任意の薬学的に許容されるpH低下剤、あるいはa)消化管に毒性を示さないpH低下剤、b)水素イオンを送達することができるかもしくは局部環境からより多くの水素イオン含有物を誘発することができるかのいずれかのpH低下剤、および/またはc)腸管において見出されるプロテアーゼに対して最適なpH未満に局部腸管のpHを低下させるのに十分な量で経口投与することができるpH低下剤の組合せが含まれることが企図される。様々な試験を使用して、pH低下剤が本発明に好適であるかどうか、およびどのような量が適切であるかどうかを決定することができる。例えば、1種のpH低下剤、または複数のpH低下剤の組合せは、0.1M炭酸水素ナトリウム10ミリリットルの溶液にある特定の量が加えられた場合、この量がこの溶液のpHを、5.5、4.7、または3.5以下まで低下させる場合、本発明に好適である。一部の実施形態では、1種または複数のpH低下剤の量は、0.1M炭酸水素ナトリウム10ミリリットルの溶液において、pHを3.4、3.2、3.0または2.8以下まで低下させるよう添加され得る。
一部の実施形態では、好適な1種または複数のpH低下剤には、pKaが4.2以下(例えば、4.0、3.8、3.6、3.4、3.2、3.0または2.8以下)を有する少なくとも1種のpH低下剤が含まれる。本発明に好適な、例示的なpH低下剤には、以下に限定されないが、アセチルサリチル酸、酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、フマル酸、グルクロン酸、グルタル酸、グリセリン酸、グリココール酸、グリオキシル酸、イソクエン酸、イソ吉草酸、乳酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、オキサロコハク酸、プロピオン酸、ピルビン酸、コハク酸、酒石酸および吉草酸などのカルボン酸;塩化アルミニウム;塩化亜鉛;アセチルグルタミン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、ベタイン、カルニチン、カルノシン、シトルリン、クレアチン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、ヒドロキシリシン、ヒドロキシプロリン、ヒポタウリン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチルヒスチジン、ノルロイシン、オルニチン、フェニルアラニン、プロリン、サルコシン、セリン、タウリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンの酸塩を含めたアミノ酸(またはその誘導体)の酸塩が含まれる。フルクトース1,6ジホスフェートおよびグルコース1,6ジホスフェートを含めたある種のリン酸エステルも、ある特定の実施形態では、適切なpH低下剤とすることができる。特定の実施形態では、クエン酸または酒石酸が、pH低下剤として使用される。
任意の特定のpH低下剤または複数のpH低下剤の組合せの必要な量は、様々であり得る。通常、好適な量は、当分野で公知の、および本明細書に記載されている様々な試験を使用して決定することができる(例えば、上記の0.1M炭酸水素ナトリウム10ミリリットルの溶液中でpH低下試験を使用する)。非限定例として、本発明による製剤中に使用されるpH低下剤の好適な量は、約100mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mgもしくは1,000mgの量、またはそれ超とすることができる。他の実施形態では、使用されるクエン酸の量は、1,000mgを超えてもよい。
一部の実施形態では、使用されるpH低下剤(例えば、クエン酸または酒石酸)の好適な量は、特定の剤形の総重量の%として測定することができる。非限定例として、使用されるpH低下剤の好適な量は、固形剤形の総重量の約10%(例えば15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%、またはそれ超)の量またはそれ超とすることができる。
様々な実施形態では、本発明の組成物は、1種または複数の吸収促進剤を含む。本明細書で使用する場合、吸収促進剤とは、それらが放出される水性もしくは疎水性環境のどちらかにおいて他の構成要素の溶解度を向上させる作用剤、および/または活性ペプチド(例えば、アンジオテンシン(1−7)ペプチド)の腸管壁への取込みを増強する作用剤を指す。一部の実施形態では、吸収促進剤は、溶解度増強剤および/または取込み増強剤と呼ばれる。
一部の実施形態では、吸収促進剤の混合物を持たせることができ、この場合、一部は、溶解度の増強をもたらし、一部は取込みの増強をもたらし、一部は、これらの両方をもたらす。所与の実施形態では、非限定的に、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10種の吸収促進剤を含めた、様々な数の吸収促進剤を持たせることが可能である。
表面活性剤は、溶解度増強剤と取込み増強剤の両方の特性を有する、有用な吸収促進剤の一例である。一部の実施形態では、表面活性剤が吸収促進剤として使用される場合、これらは、製造過程中の、混合およびカプセルへの充填を容易にするための、易流動性粉末とすることができる。他の実施形態では、表面活性剤がアンジオテンシン(1−7)ペプチドの生体利用率を向上させるために使用される場合、この表面活性剤は、(a)コレステロール誘導体などの陰イオン性表面活性剤(例えば胆汁酸)、(b)陽イオン性表面剤(例えばアシルカルニチン、リン脂質など)、(c)非イオン性表面活性剤、および(d)陰イオン性表面活性剤と負電荷中和剤との混合物、ならびにそれらの組合せからなる群から選択され得る。負電荷中和剤には、以下に限定されないが、アシルカルニチン、塩化セチルピリジニウムなどが含まれる。
一部の実施形態では、酸可溶性胆汁酸および陽イオン性表面活性剤が、吸収促進剤として一緒に使用されよう。アシルカルニチン(ラウロイルカルニチンなど)、リン脂質および胆汁酸が、一部の実施形態において特に有効な吸収促進剤となり得る。
様々な吸収促進剤が、様々な実施形態において使用するのに好適であるが、以下の例示的なリストは、本発明の一部の実施形態を例示するよう意図されている。非限定的に、一部の好適な吸収促進剤には、(a)サリチル酸ナトリウム、3−メトキシサリチル酸ナトリウム、5−メトキシサリチル酸ナトリウムなどのサリチル酸塩、およびホモバニリン酸塩、(b)タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、デオキシコール酸、コール酸、グリコール酸、リトコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、ウルソコール酸、デヒドロコール酸、フシジン酸などの胆汁酸、(c)ポリオキシエチレンエーテル(例えば、Brij36T、Brij52、Brij56、Brij76、Brij96、テキサホールA6、テキサホールA14、テキサホールA60など)、p−t−オクチルフェノールポリオキシエチレン(Triton X−45、Triton X−100、Triton X−114、Triton X−305など)、ノニルフェノキシポリオキシエチレン(nonylphenoxypoloxyethylenes)(例えば、Igepal COシリーズ)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えば、Tween−20、Tween−80など)などの非イオン性界面活性剤、(d)スルホコハク酸ジオクチルナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤、(e)リソレシチンおよびリソホスファチジルエタノールアミンなどのリソリン脂質、(f)ラウロイルカルニチン、ミリストイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、ラウリルコリン、ミリストイルコリン、パルミトイルコリン、ヘキサデシルリシン、N−アシルフェニルアラニン、N−アシルグリシンなどのアシルカルニチン、アシルコリンおよびアシルアミノ酸、g)ジヘプタノイルホスファチジルコリン、ジオクチルホスファチジルコリンなどの水溶性リン脂質、(h)中鎖長脂肪酸(カプリル酸、カプロン酸およびラウリン酸)を含有するモノ、ジ、およびトリグリセリドの混合物である、中鎖グリセリド、(i)エチレン−ジアミン四酢酸、(j)塩化セチルピリジニウムなどの陽イオン性界面活性剤、(k)ラブラゾール、ラブラファックなどのポリエチレングリコールの脂肪酸誘導体、ならびに(l)ラウロイルマルトシド、ラウロイルスクロース、ミリストイルスクロース、パルミトイルスクロースなどのアルキルサッカライドが含まれる。
一部の実施形態では、吸収促進剤は、医薬組成物の全重量(通常、腸溶コーティング剤を除く)に対する重量%として測定される量で存在することになろう。さらなる非限定例として、実施形態において存在する吸収促進剤の量は、0.1〜20重量%、0.5〜20重量%、1.0〜20重量%、2.0〜20重量%、3.0〜20重量%、4.0〜20重量%、5.0〜20重量%、5.0〜15重量%、5.0〜14重量%、5.0〜13重量%、5.0〜12重量%、5.0〜12重量%、5.0〜11重量%、5.0〜10重量%、6.0〜10重量%、7.0〜10重量%、8.0〜10重量%、9.0〜10重量%、5.0〜9.0重量%、5.0〜8.0重量%、5.0〜7.0重量%、および5.0〜6.0重量%の範囲とすることができる。
一部の実施形態では、pH低下剤と吸収促進剤との重量比は、約3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、または上記の例示的な比の任意の2つの間とすることができる。所与の医薬組成物におけるすべてのpH低下剤の総重量およびすべての吸収促進剤の総重量は、上記の例示的な比に含まれる。例えば、医薬組成物が、2種のpH低下剤および3種の吸収促進剤を含む場合、上記の比は、両方のpH低下剤の合わせた総重量と3種の吸収促進剤すべてを合わせた総重量に基づいて計算されよう。
一部の実施形態では、吸収促進剤はpH5.5未満、特にpH3.0〜pH5.0の間などの酸性pHにおいて可溶であろう。
一部の実施形態では、提供される組成物は、1種または複数の保護ビヒクルを含む。本明細書で使用する場合、保護ビヒクルとは、担体、層、コーティング剤または他のビヒクルなどの、胃のプロテアーゼから活性ペプチド(例えば、アンジオテンシン(1−7)ペプチド)を保護する、任意の保護性構成要素および/または構築物を指す。通常、保護ビヒクルは最終的に溶解し、その結果、特定の剤形中の活性成分および他の成分が放出され得る。保護ビヒクルの一般的な形態は、腸溶コーティング剤である。一部の実施形態では、好適な腸溶コーティング剤(costing)は、0.1N HCl中で少なくとも2時間、本発明の医薬組成物の崩壊を防止することができ、次に、この医薬組成物が1分間あたり100回転数で回転された溶出浴中で、pHが6.3まで上昇した後、30分以内に前記組成物のすべての内容物を完全に放出することができる。
多くの腸溶コーティング剤が当分野で公知であり、1つまたは複数の実施形態において有用である。腸溶コーティング剤の非限定例には、酢酸フタル酸セルロース、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルエチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシルメチルエチルセルロースおよびメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマーが含まれる。一部の実施形態では、アンジオテンシン(1−7)ペプチド、溶解度増強剤および/または取込み増強剤などの吸収促進剤、ならびにpH低下剤が、本実施形態の構成要素の胃への保護通過を可能にする、十分に粘ちょうな保護シロップ中に含まれる。
好適な腸溶コーティング剤は、例えば、本発明の活性な構成要素および他の構成要素がカプセル内に充填された後、カプセル剤に施用することができる。他の実施形態では、腸溶コーティング剤は、錠剤の外側上にコーティングされるか、または活性な構成要素の粒子の外側表面上にコーティングされ、次に、錠剤形態に圧縮されるか、またはカプセルに充填される。
一部の実施形態では、本発明のすべての構成要素は、担体またはビヒクルから放出されて、できる限り同時に、腸環境で溶解することが望ましいものとなり得る。一部の実施形態では、ビヒクルまたは担体は、小腸において活性な構成要素を放出し、ここで、細胞間輸送または傍細胞輸送を高める取込み増強剤が、同じ取込み増強剤が結腸において後から放出される場合よりも、望ましくない副作用を引き起こす可能性が低いことがやはり好ましいものとなり得る。しかし、本発明は、結腸においておよび小腸において有効であると考えられることが理解されよう。上で議論したものの他に、多数のビヒクルまたは担体が、当分野で公知である。
一部の実施形態では、(とりわけ、本発明の構成要素が、どのように同時に放出されるかを最適化する際には)腸溶コーティング剤の量を低く保つことが望ましいことがある。一部の実施形態では、腸溶コーティング剤は、固形剤形などの医薬組成物の残りの重量に対して30%以下で加える(「残り」とは、腸溶コーティング剤自体を除いた医薬組成物である)。他の実施形態では、腸溶コーティング剤は、20%未満、19%未満、18%未満、17%未満、16%未満、15%未満、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、または10%未満を加える。一部の実施形態では、腸溶コーティング剤などの保護ビヒクルは、医薬組成物(例えば、固形剤形)の総重量のおよそ25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%の量、またはそれ未満を構成する。
投与経路
本明細書に記載されているアンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニスト(または、本明細書に記載されているアンジオテンシン(1−7)ペプチドもしくはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストを含有する組成物もしくは医薬)は、任意の適切な経路によって投与することができる。一部の実施形態では、アンジオテンシン(1−7)ペプチドは、非経口投与される。一部の実施形態では、非経口投与は、静脈内、皮内、吸入、経皮(局所)、眼内、筋肉内、皮下、筋肉内、および/または経粘膜投与から選択される。一部の実施形態では、本明細書に記載されているアンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストは、皮下投与される。本明細書で使用する場合、用語「皮下組織」とは、皮膚の直下にある、緩く、不規則な結合組織の層として定義される。例えば、皮下投与は、以下に限定されないが、大腿部、腹部、殿部、または肩甲部を含む領域に組成物を注射することにより実施することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されているアンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストは、静脈内投与される。他の実施形態では、本明細書に記載されているアンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストは、心臓または筋(例えば、筋肉内)、腫瘍(腫瘍内)、神経系(例えば、脳、脳室内、くも膜下内への直接注射)などの標的組織への直接投与により投与される。あるいは、本明細書に記載されているアンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニスト(または、本明細書に記載されているアンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストを含有している組成物もしくは医薬)は、吸入、非経口、皮内、経皮、または経粘膜(例えば、経口または鼻内)により投与することができる。所望の場合、2つ以上の経路を、同時に使用することができる。
一部の実施形態では、本明細書に記載されているアンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストは、経口投与される。一部の実施形態では、本発明は、経口投与向けの、本明細書に記載されているアンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストの固形剤形であって、(a)アンジオテンシン(1−7)ペプチド、(b)少なくとも1種の薬学的に許容されるpH低下剤、(c)アンジオテンシン(1−7)ペプチドの生体利用を促進するのに有効な少なくとも1種の吸収促進剤、および(d)保護ビヒクルを含む、固形剤形を提供する。一部の実施形態では、固形剤形は、カプセル剤または錠剤である。経口用製剤を作製するための様々な方法および成分が当分野で公知であり、当業者であれば、これらの方法および成分のいずれが、本明細書において記載されている発明および/またはその全体の開示が本明細書に組み込まれている、2012年9月17日出願の米国仮特許出願第61/701,972号における発明に適合可能であるかを決定することができることが予期される。こうした方法および成分も、本発明の範囲内のものとして企図される。
投与
一部の実施形態では、組成物は、治療有効量で、および/または特定の所望の転帰(例えば、筋ジストロフィーの処置、またはそのリスクの低減)に相関する投与レジメンに従って投与される。
一部の実施形態では、アンジオテンシン(1−7)ペプチドは、筋ジストロフィーの少なくとも1つの症状もしくは特徴の強度、重症度、期間もしくは頻度が軽減されるよう、またはその発生が遅延するような投与間隔において、有効用量で定期的に投与される。一部の実施形態では、筋ジストロフィーの少なくとも1つの症状または特徴は、筋消耗、筋力低下、筋脆弱化、筋仮性肥大、関節拘縮、骨格変形、心筋症、嚥下障害、腸および膀胱の機能障害、筋虚血、認知障害、行動機能障害、社会性障害、脊柱側弯症、ならびに呼吸機能障害からなる群から選択される。
一部の実施形態では、本明細書に記載されているアンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストを含む製剤は、単回用量として投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載されているアンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストを含む製剤は、定期的な間隔で投与される。本明細書で使用する場合、「時間間隔」での投与は、治療有効量が定期的(1回用量とは区別される)に投与されることを示す。この時間間隔は、標準的な臨床技法により決定することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されているアンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストを含む製剤は、2か月毎、毎月、毎月2回、3週間毎、2週間毎、毎週、毎週2回、毎週3回、毎日、毎日2回、または6時間毎に投与される。単一の個体のための投与間隔は一定間隔である必要はないが、個体の必要性に応じて、経時的に変えることができる。
本明細書で使用する場合、用語「2か月毎」とは、2か月あたり1回(すなわち、2か月毎に1回)の投与を意味する。用語「毎月」とは、1か月あたり1回の投与を意味する。用語「3週間毎」とは、3週間あたり1回(すなわち、3週間毎に1回)の投与を意味する。用語「2週間毎」とは、2週間あたり1回(すなわち、2週間毎に1回)の投与を意味する。用語「毎週」とは、1週間あたり1回の投与を意味する。用語「毎日」とは、1日あたり1回の投与を意味する。一部の実施形態では、繰返し用量は、1日の同じ時間(例えば、10am)に与えられる。一部の実施形態では、繰返し用量は、1日の異なる時間に与えられる。
一部の実施形態では、本明細書に記載されているアンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストを含む製剤は、定期的な間隔で無期限投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載されているアンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストを含む製剤は、定期的な間隔で定められた期間、投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載されているアンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストを含む製剤は、定期的な間隔で、5年間、4年間、3年間、2年間、1年間、11か月間、10か月間、9か月間、8か月間、7か月間、6か月間、5か月間、4か月間、3か月間、2か月間、1か月間、3週間、2週間、1週間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間または1日間投与される。
本発明に従って投与すべき具体的な用量または量は、例えば、所望の転帰の特質および/もしくは程度、投与経路および/もしくはタイミングの詳細、ならびに/または1種もしくは複数の特徴(例えば、体重、年齢、個人の経歴、遺伝的特徴、生活スタイルパラメータ、心臓欠損の重症度および/もしくは心臓欠損のリスクレベルなど、またはそれらの組合せ)に応じて、変わり得る。そのような用量または量は、当業者によって決定することができる。一部の実施形態では、適切な用量または量は、標準的な臨床技法に従って決定される。例えば、一部の実施形態では、適切な用量または量は、筋肉量を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100%、またはそれ超増加させるのに十分な用量または量である。例えば、一部の実施形態では、適切な用量または量は、筋虚血の出現率または重症度を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100%低下させるのに十分な用量または量である。あるいは、または追加的に、一部の実施形態では、適切な用量または量は、投与すべき所望投与量または至適投与量の範囲または量を特定する手助けとなる、1種または複数のインビトロまたはインビボアッセイの使用により決定される。
様々な実施形態では、アンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストは、治療有効量で投与される。本明細書で使用する場合、用語「治療有効量」とは、本発明の医薬組成物に含有されている、治療剤の総量に基づいて、主に決定される。一般に、治療有効量は、対象に有意な利益(例えば、根本的な疾患または状態を処置する、変調する、治癒する、予防する、および/または寛解させる)を実現するのに十分である。一部の特定の実施形態では、投与されるべき適切な用量または量は、インビトロまたは動物モデルの試験システムに由来する用量応答曲線から推定することができる。
様々な実施形態では、誘導体、アナログ、および/または塩を含めた、アンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストの治療有効投与量は、様々な量で存在し得る。一部の実施形態では、治療有効投与量は、例えば、約1〜10,000μg/kg、約5〜1,500μg/kg、約100〜1,000μg/kg、または400〜500μg/kgとすることができる。一部の実施形態では、治療有効投与量は、例えば、約1μg/kg、2.5μg/kg、5μg/kg、10μg/kg、20μg/kg、30μg/kg、40μg/kg、50μg/kg、60μg/kg、70μg/kg、80μg/kg、90μg/kg、100μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、250μg/kg、300μg/kg、400μg/kg、500μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、1000μg/kg、または1500μg/kgとすることができる。特定の個体のための有効用量は、個体の必要性に応じて、経時的に変えることができる(例えば、増量または減量)。一部の実施形態では、本明細書に記載されている治療有効量は、1回用量で提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載されている治療有効量は、1日に提供される。
他の実施形態では、治療有効投与量は、例えば、約0.001mg/kg体重〜500mg/kg体重、例えば、約0.001mg/kg体重〜400mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜300mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜200mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜100mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜90mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜80mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜70mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜60mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜50mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜40mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜30mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜25mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜20mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜15mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜10mg/kg体重とすることができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されている治療有効量は、1回用量で提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載されている治療有効量は、1日に提供される。
さらに他の実施形態では、治療有効投与量は、例えば、約0.001mg/kg体重〜約1mg/kg体重、例えば、約0.001mg/kg体重〜約0.9mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜約0.8mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜約0.8mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜約0.7mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜約0.6mg/kg体重、約0.001mg/kg体重〜約0.5mg/kg体重、約0.01mg/kg体重〜約1mg/kg体重、約0.01mg/kg体重〜約0.9mg/kg体重、約0.01mg/kg体重〜約0.8mg/kg体重、約0.01mg/kg体重〜約0.7mg/kg体重、約0.01mg/kg体重〜約0.6mg/kg体重、約0.01mg/kg体重〜約0.5mg/kg体重、約0.02mg/kg体重〜約1mg/kg体重、約0.02mg/kg体重〜約0.9mg/kg体重、約0.02mg/kg体重〜約0.8mg/kg体重、約0.02mg/kg体重〜約0.7mg/kg体重、約0.02mg/kg体重〜約0.6mg/kg体重、約0.02mg/kg体重〜約0.5mg/kg体重、約0.03mg/kg体重〜約1mg/kg体重、約0.03mg/kg体重〜約0.9mg/kg体重、約0.03mg/kg体重〜約0.8mg/kg体重、約0.03mg/kg体重〜約0.7mg/kg体重、約0.03mg/kg体重〜約0.6mg/kg体重、約0.03mg/kg体重〜約0.5mg/kg体重、約0.04mg/kg体重〜約1mg/kg体重、約0.04mg/kg体重〜約0.9mg/kg体重、約0.04mg/kg体重〜約0.8mg/kg体重、約0.04mg/kg体重〜約0.7mg/kg体重、約0.04mg/kg体重〜約0.6mg/kg体重、約0.04mg/kg体重〜約0.5mg/kg体重、約0.05mg/kg体重〜約1mg/kg体重、約0.05mg/kg体重〜約0.9mg/kg体重、約0.05mg/kg体重〜約0.8mg/kg体重、約0.05mg/kg体重〜約0.7mg/kg体重、約0.05mg/kg体重〜約0.6mg/kg体重、約0.05mg/kg体重〜約0.5mg/kg体重とすることができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されている治療有効量は、1回用量で提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載されている治療有効量は、1日に提供される。
さらに他の実施形態では、治療有効投与量は、例えば、約0.0001mg/kg体重〜0.1mg/kg体重、例えば約0.0001mg/kg体重〜0.09mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.08mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.07mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.06mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.05mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜約0.04mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.03mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.02mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.019mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.018mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.017mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.016mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.015mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.014mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.013mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.012mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.011mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.01mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.009mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.008mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.007mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.006mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.005mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.004mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.003mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重〜0.002mg/kg体重とすることができる。一部の実施形態では、治療有効用量は、0.0001mg/kg体重、0.0002mg/kg体重、0.0003mg/kg体重、0.0004mg/kg体重、0.0005mg/kg体重、0.0006mg/kg体重、0.0007mg/kg体重、0.0008mg/kg体重、0.0009mg/kg体重、0.001mg/kg体重、0.002mg/kg体重、0.003mg/kg体重、0.004mg/kg体重、0.005mg/kg体重、0.006mg/kg体重、0.007mg/kg体重、0.008mg/kg体重、0.009mg/kg体重、0.01mg/kg体重、0.02mg/kg体重、0.03mg/kg体重、0.04mg/kg体重、0.05mg/kg体重、0.06mg/kg体重、0.07mg/kg体重、0.08mg/kg体重、0.09mg/kg体重、または0.1mg/kg体重とすることができる。特定の個体のための有効用量は、個体の必要性に応じて、経時的に変えることができる(例えば、増量または減量)。一部の実施形態では、本明細書に記載されている治療有効量は、1回用量で提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載されている治療有効量は、1日に提供される。
一部の実施形態では、アンジオテンシン(1−7)ペプチドは、約1〜1,000μg/kg/日(例えば、約1〜900μg/kg/日、1〜800μg/kg/日、1〜700μg/kg/日、1〜600μg/kg/日、1〜500μg/kg/日、1〜400μg/kg/日、1〜300μg/kg/日、1〜200μg/kg/日、1〜100μg/kg/日、1〜90μg/kg/日、1〜80μg/kg/日、1〜70μg/kg/日、1〜60μg/kg/日、1〜50μg/kg/日、1〜40μg/kg/日、1〜30μg/kg/日、1〜20μg/kg/日、1〜10μg/kg/日の範囲)の範囲の有効用量で投与される。一部の実施形態では、アンジオテンシン(1−7)ペプチドは、約1〜500μg/kg/日の範囲の有効用量で投与される。一部の実施形態では、アンジオテンシン(1−7)ペプチドは、約400〜500μg/kg/日の範囲の有効用量で投与される。一部の実施形態では、アンジオテンシン(1−7)ペプチドは、約1〜100μg/kg/日の範囲の有効用量で投与される。一部の実施形態では、アンジオテンシン(1−7)ペプチドは、約1〜60μg/kg/日の範囲の有効用量で投与される。一部の実施形態では、アンジオテンシン(1−7)ペプチドは、約1、2、4、6、8、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、または1,000ug/kg/日から選択される有効用量で投与される。
一部の実施形態では、提供される組成物は、医薬製剤として提供される。一部の実施形態では、医薬製剤は、筋ジストロフィーの少なくとも1つの症状もしくは特徴の強度、重症度、期間、頻度の軽減、またはその発生の遅延の達成に相関する投与レジメンに従う、投与のための単位用量の量であるか、またはそれを含む。
併用療法
一部の実施形態では、アンジオテンシン(1−7)ペプチドおよび/またはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストは、筋ジストロフィーの予防および/または処置に現在使用されている1種または複数の公知の治療剤(例えば抗筋ジストロフィー薬)と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、公知の治療剤は、その標準的または承認を受けた投与レジメンおよび/またはスケジュールに従い投与される。一部の実施形態では、公知の治療剤は、その標準的または承認を受けた投与レジメンおよび/またはスケジュールに比べると、変更されたレジメンに従い投与される。一部の実施形態では、こうした変更されたレジメンは、その標準的または承認を受けた投与レジメンとは、1つもしくは複数の単位用量の量が変更(例えば、減量または増量)されている、および/または投与の頻度が変更されているという点(例えば、単位用量間の1つまたは複数の時間間隔が広がり、より少ない頻度となる、または上記の時間間隔が狭まり、より多い頻度となるという点)で異なる。
一部の実施形態では、アンジオテンシン(1−7)ペプチドは、1種または複数の抗筋ジストロフィー薬と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、1種または複数の抗筋ジストロフィー薬は、グルココルチコイド(例えば、プレドニゾンまたはVBP15)、ホスホジエステラーゼ5型(pde5)阻害剤、または一酸化窒素ブースティング薬(boosting medication)(例えば、HCT1026またはNCX320)などの他の治療法、ドリサペルセン(drisapersen)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、AVI−4658)、および他のものである。一部の実施形態では、1種または複数の抗筋ジストロフィー薬は、エテプリルセン(AVI−4658)、HCT1026、NCX320、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、アバナフィル、イオデナフィル、ミロデナフィル、ウデナフィル、ザプリナスト、コルチコステロイド、およびそれらの組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、アンジオテンシン(1−7)ペプチドおよび/またはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストは、1種または複数の抗筋ジストロフィー薬と同時に投与される。一部の実施形態では、アンジオテンシン(1−7)ペプチドおよび/またはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニスト、ならびに1種または複数の抗筋ジストロフィー薬は、逐次投与される。
キット
本発明は、アンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニスト、またはそれを含有する製剤を含有するキットまたは他の製造品をさらに提供し、その再構成(凍結乾燥である場合)および/または使用のための指示書を提供する。キットまたは他の製造品は、投与(例えば、皮下、経口、吸入による)において有用な容器、注射器、バイアル、および任意の他の物品、デバイス、または機器を含むことができる。好適な容器は、例えば、ボトル、バイアル、注射器(例えば、予め充填されている注射器)、アンプル、カートリッジ、リザーバ、またはlyo−jectを含む。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成することができる。一部の実施形態では、容器は、予め充填されている注射器である。好適な予め充填されている注射器は、以下に限定されないが、焼成シリコーンコーティングを有するホウケイ酸ガラス注射器、吹付けシリコーンを有するホウケイ酸ガラス注射器、またはシリコーンを有していないプラスチック樹脂製注射器を含む。
通常、容器は、製剤、ならびに再構成および/または使用のための指示を表示することができる該容器上のラベル、またはその容器に付随したラベルを保持することができる。例えば、ラベルは、製剤が上記の濃度に再構成されることを表示することができる。ラベルはさらに、製剤が、例えば皮下投与に有用であること、または皮下投与向けであることを表示することができる。一部の実施形態では、容器は、アンジオテンシン(1−7)ペプチドを含有する、単回用量の安定な製剤を含有することができる。様々な実施形態では、単回用量の安定な製剤は、約15ml、10ml、5.0ml、4.0ml、3.5ml、3.0ml、2.5ml、2.0ml、1.5ml、1.0ml、または0.5ml未満の容量で存在する。あるいは、製剤を保持する容器は、製剤の繰り返し投与(例えば、2〜6回の投与)を可能にする、多目的のバイアルであってもよい。キットまたは他の製造品はさらに、好適な賦形剤(例えば、BWFI、生理食塩水、緩衝生理食塩水)を含む第2の容器を含んでもよい。賦形剤および製剤の混合に際して、再構成された製剤中の最終タンパク質濃度は、一般に、少なくとも1mg/ml(例えば、少なくとも5mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも20mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも40mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/ml、少なくとも100mg/ml)になろう。キットまたは他の製造品はさらに、使用のための指示書と共に、他の緩衝液、賦形剤、フィルター、針、注射器、および添付文書を含む、商業的および使用者の観点から望ましい他の材料を含むことができる。一部の実施形態では、キットまたは他の製造品は、自己投与のための指示書を含んでいてもよい。
(実施例1)
デュシェンヌ型筋ジストロフィーのmdxマウスモデルにおける、アンジオテンシン(1−7)、PanCyteまたは線状PanCyteの投与
この実施例では、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の公知の容認されているモデルである、mdxマウスを使用して、DMD患者において通常、観察される筋変性に及ぼす、いくつかのアンジオテンシン(1−7)ペプチド、およびアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストであるAVE0991の効果を評価する。DangainおよびVrbova、Muscle development in mdx mutant mice、1984年、Muscle Nerve7巻:700〜704頁を参照されたい。Tanabeら、Skeletal muscle pathology in X-chromosome-linked muscular dystrophy(mdx) mouse、1986年、Acta Neuropathol、69巻:91〜95頁;Kobayashiら、Endpoint measures in the mdx mouse relevant for muscular dystrophy pre-clinical studies、2012年、Acta Materialia、22巻:34〜42頁も参照されたい。具体的には、mdxマウスは、そのジストロフィン遺伝子内部に点変異を有しており、これにより、ジストロフィン産生の撹乱がもたらされ、機能的ジストロフィンがこのマウスにおいてほとんど存在しなくなる。機能的ジストロフィンの欠乏により、横隔膜を含む多くの筋全体にかなりの線維形成および深刻な弱化が最終的にもたらされ、通常、死に至る。
この実施例では、3種のアンジオテンシン(1−7)ペプチド、すなわちアンジオテンシン(1−7)(配列番号1)、PanCyte(配列番号22)、および線状PanCyte(「TXA301」とも称される。配列番号2)、ならびに低分子アンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストであるAVE0991を使用して、経時的な筋消耗の進行に及ぼすこれらの効果を試験する。具体的には、110匹のmdxマウス(群あたり10匹)を以下の表1に概説している群の1つに入れる。
この実施例では、線状PanCyte、PanCyteおよびAVE0991は、生理食塩水中で調製し、28日間、毎日、100μl/マウスの用量の体積で肩甲下注射により皮下投与する。投与用溶液は、3日毎に新しく調製する。
最後の注射をして1週間後、各動物を犠牲にして、いくつかの筋肉を切り取って秤量し、アンジオテンシン(1−7)ペプチドまたはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストの投与が、対照動物と比べて、処置mdxマウスの筋肉量を増加させるのに十分であるかどうかを決定する。この検討では、試験した筋とは、横隔膜、腓腹筋、大腿四頭筋および三頭筋である。
筋線維のサイズも、標準的な組織学的方法および免疫組織化学的方法を使用して、処置マウスと対照マウスの両方で決定する。公知の方法(例えば、ヘマトキシリンおよびエオシン染色)による組織病理学も使用して、筋肉量が健全な線維からなるかどうかを決定する。健全な筋組織の指標には、丸みを帯びた線維および中心核の存在が含まれる。筋組織を分析する例示的な方法には、これらの開示が、参照により本明細書に組み込まれている、Meola G、「Advanced microscopic and histochemical techniques: Diagnostic tools in the molecular era of myology」、2005年、Eur J Histochem49巻(1号):93〜96頁、およびKarpatiら、「Tracer and marker techniques in the microscopic study of skeletal muscles」、1981年、Methods Achiev Exp Pathol、10巻:101〜137頁において記載されているものが含まれる。
アンジオテンシン(1−7)ペプチドの投与により、mdxマウスにおける筋肉量が増加することが予期される。肥大は、様々な組織において観察されることになろう。アンジオテンシン(1−7)ペプチドの投与はまた、mdxマウスにおいて、健全な筋組織も増加させることになろう。
(実施例2)
筋ジストロフィーのSgcd−/−マウスモデルにおける、Ang(1−7)の投与
この実施例では、肢帯型筋ジストロフィーの公知モデルである、Sgcd−/−マウスを使用して、筋骨格線維、血圧、心拍数、心臓活動、圧反射感受性、酸化ストレス、AT1R受容体発現、ならびに安静時の心臓の交感神経緊張および迷走交感神経緊張に及ぼす、アンジオテンシン(1−7)ペプチドの効果を評価した。Sgcd−/−マウスは、サルコグリカン複合体の重要な構成要素がなく、具体的には、これらのマウスは、F−アクチン細胞骨格と細胞外マトリックスとの間にリンクがない。この欠陥により、筋線維の完全性の低下および筋細胞における細胞シグナル伝達の異常調節のために、筋消耗および弱化が引き起こされる。この欠陥により、若年において、歩行活動の低下および自律神経機能不全がもたらされることが既に示されている。この自律神経機能不全は、後年における心臓の機能異常をもたらすと考えられる。
Sgcd−/−マウスにおける正常な運動活動の撹乱に及ぼす、アンジオテンシン(1−7)ペプチドの効果を試験するため、意識のある若い(10〜15週)Sgcd−/−マウス、および対照のC57BL6マウスを無線遠隔測定法により解析した。マウスが10週齢になると、ケタミン−キシラジン麻酔下で、無線遠隔測定器を左の頸動脈から大動脈に埋め込んだ。回復後、血圧、心拍数および歩行活動を24時間/日、測定した。血圧測定は、収縮期動脈圧およびパルス間隔(PI)の心拍毎の測定を可能にするよう、1時間の期間、2000Hzでサンプリングした。心拍数の圧反射の対照は、公知のシークエンス技法を使用する、収縮期血圧およびパルス間隔における自発的変動から見積もった。
圧反射感受性は、このシークエンス技法を使用する、収縮期血圧およびパルス間隔における自発的変動から算出した。具体的には、圧反射感受性は、4つまたはそれ超の連続血圧パルスのシークエンスの平均傾きとして算出し、この場合、血圧およびパルス間隔の変化が、正に相関(r2>0.85)する。
心臓の交感神経緊張および副交感神経緊張は、それぞれ、β−アドレナリン作動性受容体遮断薬であるプロプラノロール、およびムスカリン様コリン作動性受容体遮断薬であるメチルアトロピンに応答する心拍数から算出した。具体的には、安静時の心臓の交感神経緊張および副交感神経(迷走神経)緊張は、それぞれ、プロプラノロール(1μg/g、IP)およびメチルアトロピン(1μg/g、IP)に応答する心拍数から見積もった。血管運動の交感神経緊張は、神経節遮断薬であるクロルイソンダミン(12μg/g、IP)の注射に応答する平均動脈血圧の低下から算出した。
3週齢のマウスの仔において、ケタミン−キシラジン麻酔下で、Ang(1−7)(「TXA127」とも称される)またはビヒクルと共に、浸透圧ミニポンプ(Alzet)を埋め込んだ。
データを2〜3日間かけて収集し、24時間の平均を算出した。対照およびSgcd−/−マウスの個別の群に、3週齢で開始して8週間、Ang−(1−7)(300ng/kg/分)を注入した。これらのマウスにおいて、上記と同じプロトコルを使用して測定値を得た。図1Aは、この実施例において適用したデータ収集技法の一部を図示したものを示し、図1Bは、この検討のための実験を示す。
筋骨格の表現型を評価するため、筋骨格(大腿四頭筋)のパラフィン切片をマッソントリクロームにより染色し、組織病理および線維形成を評価した。筋骨格の凍結切片をポリクローナル抗δおよび抗βサルコグリカン一次抗体、核染色剤ならびにAlexa Fluor488と共にインキュベートした。ウサギ抗AT1Rおよび抗Mas核染色剤、ならびに二次抗体のヤギ抗ウサギIgGにより、AT1R(Ang1型受容体)およびMas(Ang(1−7)受容体)を検出した。ジヒドロエチジウム(DHE)蛍光により、酸化ストレス(O2・−)を測定した。
この実施例におけるデータは、±SEとして表される。適宜、ANOVAならびに対応t検定および独立t検定により結果を解析し、有意性をp<0.05で求めた。
図2Aおよび2Bは、未処置、およびAng(1−7)処置対照、およびSgcd−/−マウスにおける、平均動脈血圧および心拍数のレベルを示す。パネルAは、Sgcd−/−マウスにおいて通常観察されたより低い血圧が、Ang(1−7)処置によって有意に影響を受けなかったことを示す。パネルBは、Sgcd−/−マウスのAng(1−7)処置により、未処置のSgcd−/−対照に比べて、動物の心拍数が穏やかに低下しているように思われる。
図3において示されている通り、歩行活動は、予期される通り、Sgcd−/−マウスにおいてかなり低下した。しかし、この歩行活動の低下は、Ang(1−7)による処置によってかなり軽減された。実際のところ、処置Sgcd−/−マウスにおける歩行移動のレベルは、対照のC57BL6マウスとは、それほど変わりがなかった。
図4は、対照とSgcd−/−マウスとの間、および未処置動物とAng(1−7)処置動物との間の、4A)圧反射感受性、4B)心臓の迷走神経緊張、4C)心臓の交感神経緊張、および4D)血管運動の交感神経緊張の比較を示す。パネルAおよびBにおいて示されている通り、正常マウスと比較して、Sgcd−/−マウスにおける圧反射感受性および心臓の迷走神経緊張の軽減は、Ang(1−7)による処置によって本質的に抑止された。パネルCおよびDは、Sgcd−/−マウスにおいて通常観察される、心臓の交感神経緊張および血管運動の交感神経緊張の向上も、Ang(1−7)による処置によって本質的に抑止されたことを示す。
図5は、筋骨格の線維形成、ここでは大腿四頭筋に関する、組織病理(パネル5A)と定量的(パネル5B)データの両方を示す。両方のパネルから分かる通り、Sgcd−/−マウスにおいて観察されたかなりの線維形成が、Ang(1−7)による処置により顕著に低下した。実際、パネル5Bは、Ang(1−7)により処置されたSgcd−/−マウスにおいて観察された線維形成のレベルは、対照のC57BL6マウスと同等であったことを示す。
Sgcd−/−マウスにおいて、アンジオテンシン1型受容体(AT1R)の増加が観察され、この増加は歩行活動の低減および自律神経機能不全と相関がある(Sabharwalら、Receptor activity-modifying protein 1 increases baroreflex sensitivity and attenuates Angiotensin-induced hypertension、2010年、Hypertension、55巻(3号):627〜635頁を参照されたい)。図6は、Ang(1−7)による処置により、未処置Sgcd−/−マウスにおいて観察されたAT1Rの増加が本質的に抑止されることを示す。
スーパーオキシドのレベル向上によるなどの、酸化ストレスのレベルの向上は、筋ジストロフィーの広範囲な症状と相関があった(Terrillら、Oxidative stress and pathology in muscular dystrophies: focus on protein thiol oxidation and dysferlinopathies、2013年、FEBS Journal doi: 10.1111/febs.12142頁を参照されたい。MurphyおよびKehrer、Oxidative stress and muscular dystrophy、1989年、Chem Biol Interact、69巻(2〜3号):101〜173頁も参照されたい)。類似の現象がSgcd−/−マウスにおいて通常観察され、これは、このモデルにおいて観察された歩行活動および自律神経機能の困難さに相関があると考えられる。図7Aおよび7Bは、未処置Sgcd−/−マウスにおいて観察されたスーパーオキシドの顕著なレベル向上が、Ang(1−7)による処置によって強力に弱められたことを示す。パネルAは、試料のジヒドロエチジウム蛍光を示す一方、パネルBは、各群におけるスーパーオキシドのレベルの定量的評価を示す。
Sgcd−/−マウスにおいて、血圧の低下なしに筋骨格線維形成を軽減し、かつ歩行活動および交感神経と迷走神経とのバランスを回復させる、Ang(1−7)ペプチドの能力は、筋ジストロフィーの処置として、Ang(1−7)ペプチドがかなりの治療可能性を有することを示す。この実施例において示されている通り、Ang(1−7)ペプチドは、未処置Sgcd−/−マウスと比較して、Sgcd−/−マウスにおいて毎回観察された機能異常の尺度を改善した。上の実施例により例示されている通り、この発見に基づくと、アンジオテンシン(1−7)ペプチドおよび/またはアンジオテンシン(1−7)受容体アゴニストの投与は、筋ジストロフィーの処置に対する、強力かつ新規な手法を提供することができる。
(実施例3)
mdxマウスへのPanCyteおよび線状PanCyte組成物の経口投与
この実施例では、特定のアンジオテンシン(1−7)ペプチド、すなわちPanCyte(配列番号22)および線状PanCyte(「TXA301」とも称される。配列番号2)を例示的な経口用製剤に使用し、mdxマウスの状態に及ぼす経口投与の効果を評価する。この実施例では、強制経口投与を使用して、公知の方法による薬剤を投与し、2012年9月17日出願の米国仮特許出願第61/701,972号に記載されている方法に従って、PanCyteおよび線状PanCyteの個別の水性製剤をそれぞれ、クエン酸、ラウロイルカルニチン、およびフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースと共に作製する。
PBS対照、およびそのままのアンジオテンシン(1−7)ペプチド対照を含めて、8群に分けた合計80匹のmdxマウスを、表2に示されている設計に従い、この実施例に使用する。
実施例1における場合と同様に、最後の投与をして1週間後、各動物を犠牲にして、いくつかの筋肉を切り取って秤量し、アンジオテンシン(1−7)ペプチド、および/またはPanCyteもしくは線状PanCyteのどちらかを含む組成物の経口投与が、対照動物と比べて、処置mdxマウスの筋肉量を増加させるのに十分であるかどうかを決定する。この検討では、筋とは、横隔膜、腓腹筋、大腿四頭筋および三頭筋である。
筋線維のサイズも、標準的な組織学的方法および免疫組織化学的方法を使用して、処置マウスと対照マウスの両方で決定する。実施例1の上記の通り、公知の方法(例えば、ヘマトキシリンおよびエオシン染色)による組織病理学も使用して、筋肉量が健全な線維からなるかどうかを決定する。健全な筋組織の指標には、丸みを帯びた線維および中心核の存在が含まれる。
PanCyteまたは線状PanCyteのどちらかを含む組成物の経口投与は、mdxマウスにおいて筋肉量を増加させるのに十分となることが予期される。肥大は、様々な組織において観察されることになろう。PanCyteまたは線状PanCyteのどちらかを含む組成物の経口投与はまた、mdxマウスにおいて健全な筋組織を増加させるであろう。
(実施例4)
筋ジストロフィーのSgcd−/−マウスモデルにおける、アンジオテンシン(1−7)ペプチドによる処置後の、機能的性能および線維形成の程度
この実施例では、定着している肢帯型筋ジストロフィー−2F(LGMD−2F)のマウスモデルである、サルコグリカンデルタ欠損マウス(Sgcd−/−)を使用して、この疾患の罹患者における機能障害および線維形成の進行に及ぼす、アンジオテンシン(1−7)ペプチドの効果を試験した。Sgcd−/−マウスは、若年において、歩行活動の低下、および筋骨格におけるジストロフィー性表現型を示すことが一般に公知であり、この実施例は、アンジオテンシン(1−7)ペプチドによる処置により、歩行活動の改善および線維形成速度の低下を示す。
合計32匹のSgcd−/−マウスを無作為に4つの処置群、すなわち生理食塩水群(ビヒクル)、TXA127群、Pancyte群、およびTXA301群の1つに割り当てた(それぞれ、n=8)。投与したアンジオテンシン(1−7)ペプチドの用量は、TXA127の場合、500μg/kg/日、Pancyteの場合、50μg/kg/日、およびTXA301の場合、50μg/kg/日であった。処置物を含有する浸透圧ミニポンプを、28〜35週齢のマウスに埋め込み、アンジオテンシン(1−7)ペプチドを8週間、注入した。処置の最後の3週間、マウスを各動物により行われる自発運動量を計算するために取り付けた回し車を有するケージ内に入れた。車の回転総数(走った距離)を毎日収集した。8週間の処置の終わりに、組織病理学的および酸化ストレス解析のために、大腿四頭筋をマウスから採取した。
図8は、6、7および8週目の間に、回し車において、各処置群のマウスによりなされた平均回転数を示す。生理食塩水の対照群におけるマウスと比べると、TXA127とTXA301の両方による処置により、行われた自発運動量が有意に改善し、TXA127が最も大きな改善程度を示した。図9は、3週間の試験期間(6、7および8週目)にわたり、処置群あたりの累積合計として図示されているに過ぎない、図8と同じデータを示す。やはり、TXA127とTXA301の両方による処置により、生理食塩水の対照動物と比べると、これらの群により行われた運動量が有意に増加することを示した。注目すべきことに、TXA127による処置によって、生理食塩水の対照動物と比べて、6倍超で改善した。
H&E染色を使用し、マウスの大腿四頭筋のジストロフィンの形態を試験した。図10Aは、処置マウスに由来する、例示的なH&E(上の列)ならびにマッソン(下の列)染色を示す。図10Aおよび10Bにおいて示されている通り、生理食塩水処置Sgcd−/−マウスは、中心核、脂肪酸の浸潤、およびコラーゲン沈着の増加が示される一方、TXA127による処置は、Sgcd−/−マウスの筋骨格において、有意に線維形成を軽減した。さらに、TXA301により処置されたマウスも一部の改善を示した一方、線維形成の軽減は、PanCyte処置マウスでは観察されなかった。
ジヒドロエチジウム(DHE)を使用して、処置Sgcd−/−マウスにおける酸化ストレスの程度を試験した。手短に言うと、DHE溶液を筋骨格の切片に施用し、画像を共焦点顕微鏡でとらえた(赤色が、酸化ストレスを示す)。例示的な共焦点画像が図11Aにおいて示されている。線維形成の程度を定量化するため、6枚の大腿四頭筋骨格の切片の平均を各マウスから得た。各マウスの蛍光強度を、NIH ImageJソフトウェアを使用して定量化し、生理食塩水処置Sgcd−/−マウスにおいて測定された平均蛍光強度の百分率に正規化した。図11Aおよび11Bに示されている通り、生理食塩水処置Sgcd−/−マウスは、酸化ストレスの増加を示しており、これは、TXA127によって有意に弱められた。
この実施例は、TXA127および/またはTXA301などのアンジオテンシン(1−7)ペプチドによる処置は、この実施例において、線維形成の程度、酸化ストレスの程度、および筋機能の障害の程度などの症状を含めた、筋ジストロフィーの処置に有意な効果を有することを明確に示す。
均等物および範囲
当業者は、決まった手順の実験だけを使用して、本明細書に記載されている本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または確認することができるであろう。本発明の範囲は、上の詳細説明に限定されることを意図するものではなく、むしろ以下の特許請求の範囲において説明される。