以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の水溶性組成物は、黒生姜及び少なくとも2種類のシクロデキストリンを非限定的に含有する。
黒生姜(Kaempferia parviflora)は、東南アジアなどに自生することで知られているショウガ科バンウコン属の植物である。黒生姜は、精力増進、滋養強壮、血糖値の低下、体力回復、消化器系の改善、膣帯下、痔核、痔疾、むかつき、口内炎、関節痛、胃痛の改善などの作用があることが知られている。黒生姜は、長期にわたりヒトに摂取されてきた実績のある天然植物であって安全性が高いことから、本発明の水溶性組成物は、実用性が高く、そのままで、又は加工することにより、飲食品、化粧品、医薬品、医薬部外品などの種々の用途に適用可能である。
黒生姜の使用部位は、所望の薬理作用に寄与する成分を含有する部位であれば特に限定されず、例えば、根、葉、茎、花、枝などが挙げられるが、好ましくは5,7−ジメトキシフラボン(57DMF)などのポリメトキシフラボノイド(PMF)を多く含有する根茎である。
黒生姜は、採取した状態の未加工のものに加えて、例えば、加工品(乾燥物、裁断物など)又はその粉末、搾汁、抽出物などであり得る。ここで、抽出物とは、黒生姜における成分が抽出された物であれば特に限定されないが、例えば、黒生姜やその加工物を溶媒で抽出して得られる抽出液、その希釈液や濃縮液、又はそれらの乾燥物やその粉末が挙げられる。本発明において用いられる黒生姜は、飲食品や医薬品などの適用容易性を考慮すれば、黒生姜の抽出物又は搾汁などのエキスや該エキスの乾燥物であることが好ましい。
黒生姜粉末は、例えば、洗浄後にスライスした黒生姜を天日又は乾燥機を用いて乾燥後、そのままで、又は適当な形状や大きさに裁断して得た加工品を、粉砕装置を用いて粉砕することで得ることができる。粉砕装置としては通常使用されるものが広く使用できるが、例えば、原料ホッパー、粉砕機、分級機、製品ホルダーなどから構成される粉砕機を用いることができる。
黒生姜抽出物は、黒生姜やその加工品を溶媒で抽出することによって得られる。抽出に使用される溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの低級アルコール;酢酸エチル、酢酸メチルなどの低級エステル;アセトン;これらと水との混合溶媒などが挙げられる。水もまた抽出溶媒として挙げられ、熱水や温水などであってもよい。本発明の水溶性組成物は、ヒトが経口的に摂取する可能性があるものであることから、原料である黒生姜の抽出物は、水単独、エタノール単独又は水とエタノールとの混合溶媒(いわゆる含水エタノール)によって抽出されたものであることが好ましい。特に、40〜70vol%の濃度の含水エタノールを溶媒として使用することが好ましい。
溶媒として混合溶媒を使用する場合は、例えば、アセトン/水(2/8〜8/2、体積比)混合物、エタノール/水(2/8〜8/2、体積比)混合物などを用いることができる。エタノール/水の場合、黒生姜の根茎に対して、その質量の2〜20倍質量の溶媒を加え、室温又は加熱下で10分〜48時間程度抽出することが好ましい。
抽出方法は特に限定されないが、例えば、安全性、利便性及び工業化の観点から、可能な限り緩やかな条件で抽出操作を行うことが好ましい。例えば、黒生姜の部位やその乾燥物を、粉砕、破砕、細断などして、これに2〜20倍質量の溶媒を加え、0℃〜溶媒の還流温度の範囲で10分〜48時間、静置、振盪、攪拌、還流などの任意の条件下にて抽出を行う。抽出作業後、ろ過、遠心分離などの固液分離操作を行い、不溶な固形物を除去する。これに、必要に応じて希釈、濃縮などの操作を行うことにより、抽出液を得る。さらに、不溶物についても同じ操作を繰り返して抽出し、その抽出液を先の抽出液と合わせて用いてもよい。これらの抽出液は、当業者が通常用いる精製方法により、さらに精製して使用してもよい。
得られた抽出液は、そのままで、又は濃縮するなどして、例えば、液状物、濃縮物、さらにこれらを乾燥した乾燥物などの形態で用いることができる。乾燥は特に限定されず、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、流動乾燥などの当業者が通常用いる方法により行われる。さらに、以上の方法で得られた乾燥物を、当業者に知られる方法を用いて粉末化して使用することが可能である。
本発明の組成物において用いられる黒生姜抽出物の含有量は特に限定されないが、例えば、組成物全量に対する57DMF含有量の割合が0.3wt%以上、好ましくは0.5wt%以上、より好ましくは0.7wt%以上であり、30wt%以下、好ましくは20wt%以下、より好ましくは10wt%以下になる量であることが好ましい。
本発明の水溶性組成物は、上記した黒生姜抽出物に加えて、少なくとも2種類のシクロデキストリンを含有する。
シクロデキストリンは、数分子のグルコピラノース単位がα−1,4グルコシド結合にて環状に連なった環状オリゴ糖である。グルコピラノース単位の数によって種類分けされており、例えば、6個のグルコピラノース単位からなるものはαシクロデキストリンであり、7個のグルコピラノース単位からなるものはβシクロデキストリンであり、8個のグルコピラノース単位からなるものはγシクロデキストリンである。
また、シクロデキストリンには種々の誘導体が知られており、例えば、シクロデキストリンにα−1,6結合やβ−1,6結合などでグルコキシル基、マルトシル基、ガラクトシル基などの糖置換基を結合させた、グルコキシルシクロデキストリン、マルトシルシクロデキストリン、ガラクトシルシクロデキストリンといった分岐シクロデキストリンなどの酵素修飾シクロデキストリン;メチル化シクロデキストリン、ヒドロキシエチル化シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル化シクロデキストリン、アセチル化シクロデキストリン、モノクロロトリアジノ化シクロデキストリン、アミノ化シクロデキストリンなどの化学修飾シクロデキストリンなどがある。
シクロデキストリンやシクロデキストリン誘導体は、環の中心部に空洞を有し、この空洞の内側は疎水性を呈し、かつ、環の外側は親水性を呈することから、包接作用を示し、難水溶性物質を取り込む性質を有している。そこで、本発明の水溶性組成物では、黒生姜に含まれる難水溶性成分を、シクロデキストリンやシクロデキストリン誘導体に包接させ、又はシクロデキストリンやシクロデキストリン誘導体と複合体を形成させることにより、水に可溶化する水溶性組成物となす。
本発明において用いられるシクロデキストリンは、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体の両方を包含する。シクロデキストリンの好ましい態様は、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体の組み合わせであり、より好ましくはγシクロデキストリン及び分岐シクロデキストリンの組み合わせであり、さらに好ましくはγシクロデキストリン及びマルトシルシクロデキストリンの組み合わせである。ただし、本発明の好ましい態様として、γシクロデキストリン及びマルトシルシクロデキストリンの組み合わせを用いた場合であっても、その他のシクロデキストリンが存在してもよい。
γシクロデキストリン及びマルトシルシクロデキストリンの入手方法は特に限定されず、例えば、トウモロコシや馬鈴薯などのデンプンなどを原料として、これに微生物由来の糖転移酵素を作用させてシクロデキストリンやシクロデキストリン誘導体を製造する方法などが挙げられるが、市販されているものから入手してもよい。また、マルトシルシクロデキストリンは、例えば、特公平06−030601号公報や特許第2778975号公報などの公知文献に記載の方法に準じて製造することができる。
γシクロデキストリン及びマルトシルシクロデキストリンを用いる場合、γシクロデキストリン及びマルトシルシクロデキストリンのそれぞれの配合量は特に限定されないが、これらの質量比(γシクロデキストリン:マルトシルシクロデキストリン)については、1:0.01〜6であることが好ましく、1:0.1〜3であることがより好ましい。
本発明の水溶性組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、室温や加温下で、黒生姜、好ましくは黒生姜抽出物と、2種類のシクロデキストリン、好ましくはγシクロデキストリン及び分岐シクロデキストリン、より好ましくはγシクロデキストリン及びマルトシルシクロデキストリンとの混合物を、水に溶解させて水溶性組成物とすることができる。これらに加えて、黒生姜抽出物又はシクロデキストリンの一方を水に溶解又は分散しておき、次いで他方を加えて混合することにより水溶性組成物とすることができる。なお、得られた水溶性組成物は、乾燥処理を行って、粉末としても良い。乾燥処理の方法としては、噴霧乾燥、凍結乾燥などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において、黒生姜抽出物及びシクロデキストリンの配合量は特に限定されず、例えば、これらの質量比(黒生姜抽出物:シクロデキストリン)が1:1〜100であり、好ましくは1:5〜50であり、より好ましくは1:3〜20である。
本発明の水溶性組成物は、黒生姜及びシクロデキストリンの他に、本発明の目的を達成し得る限り、種々のものを配合できる。例えば、黒生姜のような薬理作用を有するような別の物質やシクロデキストリンと同じく黒生姜の可溶性を高め得る物質を配合してもよい。黒生姜の可溶化剤として、例えば、エタノールなどの有機溶媒が挙げられる。したがって、本発明の水溶性組成物は、数vol%〜数十vol%のエタノールを含有する含エタノール水溶性組成物などであってもよい。
本発明の水溶性組成物は、用途に応じて、非経口用組成物又は経口用組成物として、そのままで、又は他の成分と混合して使用することができる。本発明の水溶性組成物は、水に溶かした場合、溶液が透明又は澄明になるように、水に溶解又は分散するものである。このときの透明性又は澄明性の程度は、後述する実施例に記載の不溶解率を指標とする場合、例えば、0.5以下であり、好ましくは0.4以下であり、より好ましくは0.3以下である。
本発明の水溶性組成物は、非経口用組成物として、例えば、化粧品に適した形態として使用することができる。例えば、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤などの種々の形態に加工され得る。具体的には、化粧水、化粧クリーム、乳液、クリーム、パック、ヘアトニック、ヘアクリーム、シャンプー、ヘアリンス、トリートメント、洗顔剤、ファンデーション、育毛剤、水性軟膏、スプレーなどとして利用できる。
本発明の水溶性組成物は、経口用組成物として、例えば、飲食品に適した形態として使用することができる。例えば、本発明の水溶性組成物は、そのままで、又はデキストリン、デンプン、糖質、リン酸カルシウムなどの賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、香油などの通常飲食品の加工に使用される添加物と混合して、飲食品用組成物とすることができる。例えば、ローヤルゼリー、ビタミン、プロテイン、カルシウム、キトサン、レシチンなどを含有させて、栄養補助としての機能を付与するようにしてもよい。また、本発明の水溶性組成物の味を整えることを目的として、糖液や調味料などを含有させてもよい。添加物の使用量は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されず、適宜調整される。
飲食品用組成物としては、例えば、液状、ペースト状、クリーム状、カプセル状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、シロップ状などの各形態を採り得る。また、本発明の水溶性組成物を添加剤や担体に噴霧や付着し、乾燥させるなどして、飴状、粉末状、粒状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、カプレット状、タブレット状、ウエハース状、ビスケット状、クッキー状、チュアブル状、スティック状などの形態としてもよい。本発明の水溶性組成物は、その形態に応じて、そのまま経口摂取してもよいし、水などに溶解した後に経口摂取してもよい。
本発明の水溶性組成物に含有される黒生姜抽出物の配合量は特に限定されないが、その下限は、例えば、5wt%より大きい量であり、好ましくは6wt%以上であり、より好ましくは7wt%以上であり、さらに好ましくは8wt%以上である。また、黒生姜抽出物の配合量の上限は特に限定されず、例えば、30wt%以下であり、好ましくは20wt%以下であり、より好ましくは15wt%以下である。
本発明の液状組成物は、黒生姜、好ましくは黒生姜抽出物と、少なくとも2種類のシクロデキストリン、好ましくはγシクロデキストリン及び分岐シクロデキストリン、より好ましくはγシクロデキストリン及びマルトシルシクロデキストリンとを、水性溶媒中で接触させることにより、黒生姜の成分が水性溶媒中に溶解したものとして得られる。そこで、本発明の別の態様は、水性溶媒中で、黒生姜抽出物などの黒生姜と、γシクロデキストリン及びマルトシルシクロデキストリンのような少なくとも2種類のシクロデキストリンとを接触させることにより、黒生姜成分を可溶化する工程を含む、黒生姜成分の可溶化方法である。本発明の方法によれば、本発明の水溶性組成物が製造可能である。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
[実施例1〜3.2種類のシクロデキストリンを用いた黒生姜水溶性組成物]
(1)黒生姜粉砕物の製造
黒生姜の根茎を洗浄後、1〜10mm程度にスライスし、1日天日干しにした。その後、40〜100℃に設定したオーブン乾燥機で4〜6時間乾燥し、粗粉砕後、130〜200℃で5〜20秒間殺菌を行った。殺菌した粗粉砕物を粉砕機によって粉砕し、黒生姜の根茎粉砕物を得た。同様の方法により、黒生姜の茎粉砕物、葉粉砕物及び花粉砕物を得た。これらを黒生姜粉砕物とした。
(2)黒生姜抽出物の製造
上記した方法により得た黒生姜粉砕物 300gを秤量し、50vol%エタノール 3Lと共に三角フラスコに入れた。途中で何回か攪拌しながら室温で24時間静置して1回目の抽出を行った。これを減圧ろ過して、1回目の抽出液を得た。減圧ろ過後の残渣を50vol%エタノール 3Lに浸漬して、室温で24時間静置して2回目の抽出を行った。これを減圧ろ過して、2回目の抽出液を得た。これら1回目及び2回目の抽出液を併せた抽出混合液を約1/6に減圧濃縮して黒生姜抽出物を得た。得られた黒生姜抽出物は、57DMF含量が1.9wt%であった。
(3)黒生姜水溶性組成物の製造
得られた黒生姜抽出物とγシクロデキストリン(γCD)含有物及びマルトシルシクロデキストリン(G2CD)含有物とを表1に示す割合になるように混合した混合物を水 4Lに加えて、90℃まで加熱及び撹拌し、不溶部分をろ過することにより、紫色の澄明な均一溶液として黒生姜水溶物を得た。得られた黒生姜水溶物を噴霧乾燥により粉末化して、黒生姜水溶性組成物を得た。
(4)不溶解物の測定
黒生姜水溶性組成物を1%(W/V)水溶液となるように純水を用いて調製したものについて、黒生姜水溶性組成物の不溶解物を、目視により確認した結果を表1に示す。
(5)不溶解率の測定
黒生姜水溶性組成物の不溶解率を、以下の方法により測定した。すなわち、ガラス繊維ろ紙(Whatman GF/C)を105℃の乾熱滅菌機内で1時間乾燥し、デシケーター中で放冷後、恒量を測定した(測定値1)。次いで、黒生姜水溶性組成物を1.0g正確に量り取り(測定値2)、純水 100mLを加え、スターラーを使用して室温で60分間攪拌した。攪拌後、ガラス繊維ろ紙(恒量測定済)で吸引ろ過し、純水 300mLで残渣を洗浄した。次いで、ガラス繊維ろ紙を残渣ごと、105℃の乾熱滅菌機内で1時間乾燥させ、デシケーター中で放冷後、恒量を測定した(測定値3)。以下の式により、不溶解率を算出した。
不溶解率(%)=([測定値3]−[測定値1])/[測定値2]×100
[比較例1〜2.シクロデキストリン1種類を用いた黒生姜水溶性組成物]
エタノールの代わりに水で抽出した黒生姜抽出物とγCD含有物及び/又はG2CD含有物とを表1に示す割合になるように混合した混合物を水 4Lに加えて、90℃まで加熱及び撹拌したところ、実施例1とは異なり、濁りのある不均一溶液が得られた。得られた不均一溶液の不溶部分をろ過することにより、紫色の均一溶液として黒生姜水溶物を得た。得られた黒生姜水溶物を噴霧乾燥することにより黒生姜水溶性組成物を得た。また、実施例1〜3と同様に、比較例1〜2の黒生姜水溶性組成物における不溶解物を測定した。結果を表1に示す。
表1に示すとおり、G2CD含有量がγCD含有量に対して8倍以上である比較例1やγCDのみを用いた比較例2では、水に溶解させようとした場合に、多量の沈殿が見られた。それに対して、γCD:G2CDが1:0.01〜5.04である実施例1〜3は、水によく溶け、溶解性が顕著に増加し、不溶解物である沈殿が見られなかった。特に、γCD:G2CDが約1:1である実施例1において、良好な溶解性が得られた。なお、実施例1の不溶解率を測定した結果、0.272であった。また、比較例1及び2は不溶解率を測定できないほどの多量の沈殿が見られた。この結果から、不溶解率を指標とした場合、黒生姜水溶性組成物の不溶解率は0.5以下であることが好ましいことが示唆された。
[実施例4及び参考例1〜2.非特許文献1に記載の水溶性組成物との比較評価]
実施例1〜3と同様にして黒生姜抽出物を凍結乾燥して黒生姜抽出物粉末を得た。ただし、抽出溶媒は60vol%エタノールを用いた。このようにして得た黒生姜抽出物粉末の57DMF量は7wt%であった。
得られた黒生姜抽出物粉末を、実施例4として40.0mg、参考例1として16.3mg及び参考例2として27.7mgを秤量した。これらに、50vol%エタノールを20倍量(黒生姜抽出物1gあたり20ml)加えて溶解した。得られた溶解物を減圧濃縮することにより、目視により終点を判断してエタノールを除去し、各黒生姜抽出物懸濁液を得た。
次いで、実施例4の黒生姜抽出物懸濁液には、γシクロデキストリン 138mg及びマルトシルシクロデキストリン 322mgを加えた。また、参考例1及び2の黒生姜抽出物懸濁液には、引用文献1に記載の水溶性組成物(黒ショウガエキス−WSP;オリザ油化社) 500mgを加えた。なお、引用文献1に記載の水溶性組成物の57DMF量を測定したところ、0.27wt%であった。
次いで、これらの黒生姜抽出物懸濁液を、固形分濃度が25%となるように水を添加し、ロータリーエバポレーターで撹拌しながら常圧で加熱(90℃達温)した後、流水で室温まで冷却した。冷却後の黒生姜抽出物懸濁液を、ラジオライト(#900)でプリコートした5Bろ紙で減圧ろ過し、ろ液を凍結乾燥して各水溶性組成物粉末を得た。これらの水溶性組成物粉末について57DMF量を比較すると、実施例4は0.56wt%であり;参考例1は0.46wt%であり;参考例2は0.60wt%であった。
上記のようにして得られた実施例4、参考例1及び参考例2の水溶性組成物粉末を用いてそれぞれ1%(W/V)水溶液となるように純水を用いて調製した。このときの写真図を図1として示す。なお、このときの実施例4、参考例1及び参考例2の1%(W/V)水溶液について、波長600nmにおける吸光度を測定したところ、それぞれ0.174、0.269及び0.418であった。
次いで、これらの1%(W/V)水溶液を2日間静置した後に、3,000rpm、20分間で遠心分離することにより、不溶解物として発生した沈殿を目視により確認した。結果を、上記表1に示す。また、それぞれの遠心分離後の沈殿の様態について、上清を除去する前後で比べた写真図を図2及び3として示す。表1及び図1〜3が示すとおり、実施例4では沈殿がほとんど観察できなかったのに対し、参考例1及び2では多くの沈殿が見られた。特に、参考例1及び参考例2の比較から、黒生姜抽出物及び57DMFの含有量が大きいほど、多くの沈殿が見られた。
以上の結果から、実施例4では沈殿が見られなかったのに対し、不溶解成分である57DMF量が実施例4よりも小さい又は同程度である参考例1及び2では沈殿が見られたことより、本発明の水溶性組成物に含まれる特定比率のγシクロデキストリン及び分岐シクロデキストリンであれば溶解し得る黒生姜抽出物(57DMF)量を、非特許文献1に記載の水溶性組成物に含まれるシクロデキストリンでは溶解できなかったことを示す。したがって、本発明の水溶性組成物は、非特許文献1に記載の水溶性組成物では溶解し得ない黒生姜抽出物(57DMF)量を溶解することができるという格別顕著な効果を有することが示された。
以上の結果より、黒生姜抽出物と、特定比率のγシクロデキストリン及びマルトシルシクロデキストリンとを水に溶かすことにより、黒生姜中の成分がよく溶解し、かつ、黒生姜抽出物がほぼ均一に溶解又は分散した黒生姜水溶性組成物が得られることがわかった。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の水溶性組成物は、黒生姜及び少なくとも2種類のシクロデキストリンを非限定的に含有する。
黒生姜(Kaempferia parviflora)は、東南アジアなどに自生することで知られているショウガ科バンウコン属の植物である。黒生姜は、精力増進、滋養強壮、血糖値の低下、体力回復、消化器系の改善、膣帯下、痔核、痔疾、むかつき、口内炎、関節痛、胃痛の改善などの作用があることが知られている。黒生姜は、長期にわたりヒトに摂取されてきた実績のある天然植物であって安全性が高いことから、本発明の水溶性組成物は、実用性が高く、そのままで、又は加工することにより、飲食品、化粧品、医薬品、医薬部外品などの種々の用途に適用可能である。
黒生姜の使用部位は、所望の薬理作用に寄与する成分を含有する部位であれば特に限定されず、例えば、根、葉、茎、花、枝などが挙げられるが、好ましくは5,7−ジメトキシフラボン(57DMF)などのポリメトキシフラボノイド(PMF)を多く含有する根茎である。
黒生姜は、採取した状態の未加工のものに加えて、例えば、加工品(乾燥物、裁断物など)又はその粉末、搾汁、抽出物などであり得る。ここで、抽出物とは、黒生姜における成分が抽出された物であれば特に限定されないが、例えば、黒生姜やその加工物を溶媒で抽出して得られる抽出液、その希釈液や濃縮液、又はそれらの乾燥物やその粉末が挙げられる。本発明において用いられる黒生姜は、飲食品や医薬品などの適用容易性を考慮すれば、黒生姜の抽出物又は搾汁などのエキスや該エキスの乾燥物であることが好ましい。
黒生姜粉末は、例えば、洗浄後にスライスした黒生姜を天日又は乾燥機を用いて乾燥後、そのままで、又は適当な形状や大きさに裁断して得た加工品を、粉砕装置を用いて粉砕することで得ることができる。粉砕装置としては通常使用されるものが広く使用できるが、例えば、原料ホッパー、粉砕機、分級機、製品ホルダーなどから構成される粉砕機を用いることができる。
黒生姜抽出物は、黒生姜やその加工品を溶媒で抽出することによって得られる。抽出に使用される溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの低級アルコール;酢酸エチル、酢酸メチルなどの低級エステル;アセトン;これらと水との混合溶媒などが挙げられる。水もまた抽出溶媒として挙げられ、熱水や温水などであってもよい。本発明の水溶性組成物は、ヒトが経口的に摂取する可能性があるものであることから、原料である黒生姜の抽出物は、水単独、エタノール単独又は水とエタノールとの混合溶媒(いわゆる含水エタノール)によって抽出されたものであることが好ましい。特に、40〜70vol%の濃度の含水エタノールを溶媒として使用することが好ましい。
溶媒として混合溶媒を使用する場合は、例えば、アセトン/水(2/8〜8/2、体積比)混合物、エタノール/水(2/8〜8/2、体積比)混合物などを用いることができる。エタノール/水の場合、黒生姜の根茎に対して、その質量の2〜20倍質量の溶媒を加え、室温又は加熱下で10分〜48時間程度抽出することが好ましい。
抽出方法は特に限定されないが、例えば、安全性、利便性及び工業化の観点から、可能な限り緩やかな条件で抽出操作を行うことが好ましい。例えば、黒生姜の部位やその乾燥物を、粉砕、破砕、細断などして、これに2〜20倍質量の溶媒を加え、0℃〜溶媒の還流温度の範囲で10分〜48時間、静置、振盪、攪拌、還流などの任意の条件下にて抽出を行う。抽出作業後、ろ過、遠心分離などの固液分離操作を行い、不溶な固形物を除去する。これに、必要に応じて希釈、濃縮などの操作を行うことにより、抽出液を得る。さらに、不溶物についても同じ操作を繰り返して抽出し、その抽出液を先の抽出液と合わせて用いてもよい。これらの抽出液は、当業者が通常用いる精製方法により、さらに精製して使用してもよい。
得られた抽出液は、そのままで、又は濃縮するなどして、例えば、液状物、濃縮物、さらにこれらを乾燥した乾燥物などの形態で用いることができる。乾燥は特に限定されず、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、流動乾燥などの当業者が通常用いる方法により行われる。さらに、以上の方法で得られた乾燥物を、当業者に知られる方法を用いて粉末化して使用することが可能である。
本発明の組成物において用いられる黒生姜抽出物の含有量は特に限定されないが、例えば、組成物全量に対する57DMF含有量の割合が0.3wt%以上、好ましくは0.5wt%以上、より好ましくは0.7wt%以上であり、30wt%以下、好ましくは20wt%以下、より好ましくは10wt%以下になる量であることが好ましい。
本発明の水溶性組成物は、上記した黒生姜抽出物に加えて、少なくとも2種類のシクロデキストリンを含有する。
シクロデキストリンは、数分子のグルコピラノース単位がα−1,4グルコシド結合にて環状に連なった環状オリゴ糖である。グルコピラノース単位の数によって種類分けされており、例えば、6個のグルコピラノース単位からなるものはαシクロデキストリンであり、7個のグルコピラノース単位からなるものはβシクロデキストリンであり、8個のグルコピラノース単位からなるものはγシクロデキストリンである。
また、シクロデキストリンには種々の誘導体が知られており、例えば、シクロデキストリンにα−1,6結合やβ−1,6結合などでグルコキシル基、マルトシル基、ガラクトシル基などの糖置換基を結合させた、グルコキシルシクロデキストリン、マルトシルシクロデキストリン、ガラクトシルシクロデキストリンといった分岐シクロデキストリンなどの酵素修飾シクロデキストリン;メチル化シクロデキストリン、ヒドロキシエチル化シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル化シクロデキストリン、アセチル化シクロデキストリン、モノクロロトリアジノ化シクロデキストリン、アミノ化シクロデキストリンなどの化学修飾シクロデキストリンなどがある。
シクロデキストリンやシクロデキストリン誘導体は、環の中心部に空洞を有し、この空洞の内側は疎水性を呈し、かつ、環の外側は親水性を呈することから、包接作用を示し、難水溶性物質を取り込む性質を有している。そこで、本発明の水溶性組成物では、黒生姜に含まれる難水溶性成分を、シクロデキストリンやシクロデキストリン誘導体に包接させ、又はシクロデキストリンやシクロデキストリン誘導体と複合体を形成させることにより、水に可溶化する水溶性組成物となす。
本発明において用いられるシクロデキストリンは、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体の両方を包含する。シクロデキストリンの好ましい態様は、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体の組み合わせであり、より好ましくはγシクロデキストリン及び分岐シクロデキストリンの組み合わせであり、さらに好ましくはγシクロデキストリン及びマルトシルシクロデキストリンの組み合わせである。ただし、本発明の好ましい態様として、γシクロデキストリン及びマルトシルシクロデキストリンの組み合わせを用いた場合であっても、その他のシクロデキストリンが存在してもよい。
γシクロデキストリン及びマルトシルシクロデキストリンの入手方法は特に限定されず、例えば、トウモロコシや馬鈴薯などのデンプンなどを原料として、これに微生物由来の糖転移酵素を作用させてシクロデキストリンやシクロデキストリン誘導体を製造する方法などが挙げられるが、市販されているものから入手してもよい。また、マルトシルシクロデキストリンは、例えば、特公平06−030601号公報や特許第2778975号公報などの公知文献に記載の方法に準じて製造することができる。
γシクロデキストリン及びマルトシルシクロデキストリンを用いる場合、γシクロデキストリン及びマルトシルシクロデキストリンのそれぞれの配合量は特に限定されないが、これらの質量比(γシクロデキストリン:マルトシルシクロデキストリン)については、1:0.01〜6であることが好ましく、1:0.1〜3であることがより好ましい。
本発明の水溶性組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、室温や加温下で、黒生姜、好ましくは黒生姜抽出物と、2種類のシクロデキストリン、好ましくはγシクロデキストリン及び分岐シクロデキストリン、より好ましくはγシクロデキストリン及びマルトシルシクロデキストリンとの混合物を、水に溶解させて水溶性組成物とすることができる。これらに加えて、黒生姜抽出物又はシクロデキストリンの一方を水に溶解又は分散しておき、次いで他方を加えて混合することにより水溶性組成物とすることができる。なお、得られた水溶性組成物は、乾燥処理を行って、粉末としても良い。乾燥処理の方法としては、噴霧乾燥、凍結乾燥などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において、黒生姜抽出物及びシクロデキストリンの配合量は特に限定されず、例えば、これらの質量比(黒生姜抽出物:シクロデキストリン)が1:1〜100であり、好ましくは1:5〜50であり、より好ましくは1:3〜20である。
本発明の水溶性組成物は、黒生姜及びシクロデキストリンの他に、本発明の目的を達成し得る限り、種々のものを配合できる。例えば、黒生姜のような薬理作用を有するような別の物質やシクロデキストリンと同じく黒生姜の可溶性を高め得る物質を配合してもよい。黒生姜の可溶化剤として、例えば、エタノールなどの有機溶媒が挙げられる。したがって、本発明の水溶性組成物は、数vol%〜数十vol%のエタノールを含有する含エタノール水溶性組成物などであってもよい。
本発明の水溶性組成物は、用途に応じて、非経口用組成物又は経口用組成物として、そのままで、又は他の成分と混合して使用することができる。本発明の水溶性組成物は、水に溶かした場合、溶液が透明又は澄明になるように、水に溶解又は分散するものである。このときの透明性又は澄明性の程度は、後述する実施例に記載の不溶解率を指標とする場合、例えば、0.5以下であり、好ましくは0.4以下であり、より好ましくは0.3以下である。
本発明の水溶性組成物は、非経口用組成物として、例えば、化粧品に適した形態として使用することができる。例えば、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤などの種々の形態に加工され得る。具体的には、化粧水、化粧クリーム、乳液、クリーム、パック、ヘアトニック、ヘアクリーム、シャンプー、ヘアリンス、トリートメント、洗顔剤、ファンデーション、育毛剤、水性軟膏、スプレーなどとして利用できる。
本発明の水溶性組成物は、経口用組成物として、例えば、飲食品に適した形態として使用することができる。例えば、本発明の水溶性組成物は、そのままで、又はデキストリン、デンプン、糖質、リン酸カルシウムなどの賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、香油などの通常飲食品の加工に使用される添加物と混合して、飲食品用組成物とすることができる。例えば、ローヤルゼリー、ビタミン、プロテイン、カルシウム、キトサン、レシチンなどを含有させて、栄養補助としての機能を付与するようにしてもよい。また、本発明の水溶性組成物の味を整えることを目的として、糖液や調味料などを含有させてもよい。添加物の使用量は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されず、適宜調整される。
飲食品用組成物としては、例えば、液状、ペースト状、クリーム状、カプセル状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、シロップ状などの各形態を採り得る。また、本発明の水溶性組成物を添加剤や担体に噴霧や付着し、乾燥させるなどして、飴状、粉末状、粒状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、カプレット状、タブレット状、ウエハース状、ビスケット状、クッキー状、チュアブル状、スティック状などの形態としてもよい。本発明の水溶性組成物は、その形態に応じて、そのまま経口摂取してもよいし、水などに溶解した後に経口摂取してもよい。
本発明の水溶性組成物に含有される黒生姜抽出物の配合量は特に限定されないが、その下限は、例えば、5wt%より大きい量であり、好ましくは6wt%以上であり、より好ましくは7wt%以上であり、さらに好ましくは8wt%以上である。また、黒生姜抽出物の配合量の上限は特に限定されず、例えば、30wt%以下であり、好ましくは20wt%以下であり、より好ましくは15wt%以下である。
本発明の液状組成物は、黒生姜、好ましくは黒生姜抽出物と、少なくとも2種類のシクロデキストリン、好ましくはγシクロデキストリン及び分岐シクロデキストリン、より好ましくはγシクロデキストリン及びマルトシルシクロデキストリンとを、水性溶媒中で接触させることにより、黒生姜の成分が水性溶媒中に溶解したものとして得られる。そこで、本発明の別の態様は、水性溶媒中で、黒生姜抽出物などの黒生姜と、γシクロデキストリン及びマルトシルシクロデキストリンのような少なくとも2種類のシクロデキストリンとを接触させることにより、黒生姜成分を可溶化する工程を含む、黒生姜成分の可溶化方法である。本発明の方法によれば、本発明の水溶性組成物が製造可能である。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
[実施例1〜3.2種類のシクロデキストリンを用いた黒生姜水溶性組成物]
(1)黒生姜粉砕物の製造
黒生姜の根茎を洗浄後、1〜10mm程度にスライスし、1日天日干しにした。その後、40〜100℃に設定したオーブン乾燥機で4〜6時間乾燥し、粗粉砕後、130〜200℃で5〜20秒間殺菌を行った。殺菌した粗粉砕物を粉砕機によって粉砕し、黒生姜の根茎粉砕物を得た。同様の方法により、黒生姜の茎粉砕物、葉粉砕物及び花粉砕物を得た。これらを黒生姜粉砕物とした。
(2)黒生姜抽出物の製造
上記した方法により得た黒生姜粉砕物 300gを秤量し、50vol%エタノール 3Lと共に三角フラスコに入れた。途中で何回か攪拌しながら室温で24時間静置して1回目の抽出を行った。これを減圧ろ過して、1回目の抽出液を得た。減圧ろ過後の残渣を50vol%エタノール 3Lに浸漬して、室温で24時間静置して2回目の抽出を行った。これを減圧ろ過して、2回目の抽出液を得た。これら1回目及び2回目の抽出液を併せた抽出混合液を約1/6に減圧濃縮して黒生姜抽出物を得た。得られた黒生姜抽出物は、57DMF含量が1.9wt%であった。
(3)黒生姜水溶性組成物の製造
得られた黒生姜抽出物とγシクロデキストリン(γCD)含有物及びマルトシルシクロデキストリン(G2CD)含有物とを表1に示す割合になるように混合した混合物を水 4Lに加えて、90℃まで加熱及び撹拌し、不溶部分をろ過することにより、紫色の澄明な均一溶液として黒生姜水溶物を得た。得られた黒生姜水溶物を噴霧乾燥により粉末化して、黒生姜水溶性組成物を得た。
(4)不溶解物の測定
黒生姜水溶性組成物を1%(W/V)水溶液となるように純水を用いて調製したものについて、黒生姜水溶性組成物の不溶解物を、目視により確認した結果を表1に示す。
(5)不溶解率の測定
黒生姜水溶性組成物の不溶解率を、以下の方法により測定した。すなわち、ガラス繊維ろ紙(Whatman GF/C)を105℃の乾熱滅菌機内で1時間乾燥し、デシケーター中で放冷後、恒量を測定した(測定値1)。次いで、黒生姜水溶性組成物を1.0g正確に量り取り(測定値2)、純水 100mLを加え、スターラーを使用して室温で60分間攪拌した。攪拌後、ガラス繊維ろ紙(恒量測定済)で吸引ろ過し、純水 300mLで残渣を洗浄した。次いで、ガラス繊維ろ紙を残渣ごと、105℃の乾熱滅菌機内で1時間乾燥させ、デシケーター中で放冷後、恒量を測定した(測定値3)。以下の式により、不溶解率を算出した。
不溶解率(%)=([測定値3]−[測定値1])/[測定値2]×100
[比較例1〜2.シクロデキストリン1種類を用いた黒生姜水溶性組成物]
エタノールの代わりに水で抽出した黒生姜抽出物とγCD含有物及び/又はG2CD含有物とを表1に示す割合になるように混合した混合物を水 4Lに加えて、90℃まで加熱及び撹拌したところ、実施例1とは異なり、濁りのある不均一溶液が得られた。得られた不均一溶液の不溶部分をろ過することにより、紫色の均一溶液として黒生姜水溶物を得た。得られた黒生姜水溶物を噴霧乾燥することにより黒生姜水溶性組成物を得た。また、実施例1〜3と同様に、比較例1〜2の黒生姜水溶性組成物における不溶解物を測定した。結果を表1に示す。
表1に示すとおり、G2CD含有量がγCD含有量に対して8倍以上である比較例1やγCDのみを用いた比較例2では、水に溶解させようとした場合に、多量の沈殿が見られた。それに対して、γCD:G2CDが1:0.01〜5.04である実施例1〜3は、水によく溶け、溶解性が顕著に増加し、不溶解物である沈殿が見られなかった。特に、γCD:G2CDが約1:1である実施例1において、良好な溶解性が得られた。なお、実施例1の不溶解率を測定した結果、0.272であった。また、比較例1及び2は不溶解率を測定できないほどの多量の沈殿が見られた。この結果から、不溶解率を指標とした場合、黒生姜水溶性組成物の不溶解率は0.5以下であることが好ましいことが示唆された。
以上の結果より、黒生姜抽出物と、特定比率のγシクロデキストリン及びマルトシルシクロデキストリンとを水に溶かすことにより、黒生姜中の成分がよく溶解し、かつ、黒生姜抽出物がほぼ均一に溶解又は分散した黒生姜水溶性組成物が得られることがわかった。