JP2015230258A - 干渉計測装置、及び変位量測定方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このようなレーザ干渉測長では、固体スケール等と比較して、アライメントを自由に設定でき、アッベ誤差を低減できるメリットがある。
しかしながら、このようなレーザ干渉測長では、例えば数μm程度となる微小領域に対する測定では、内挿により測定を実施する必要があり、測定の不確かさの影響が生じる。これに対して、測定の不確かさを改善するために、レーザ光の波長をより短い波長(例えば紫外域やX線領域)としたり、干渉計測装置と測定対象とのレーザ光の往復回数を増加させる光路長増倍法を用いたりする方法が知られている。また、光コムを用いて2種類の波長のレーザ光を生成し、これらのレーザ光を合成した安定波長レーザ光を用いて測定を行う装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、光路長増倍法では、光学素子内にレーザ光を複数回往復させる必要があるので光量低下が生じ、また、迷光や漏れ光等の影響も大きくなるので、光路長増倍法による測定の不確かさの改善には限界がある。
さらに、特許文献2に示される装置では、光コムが等間隔で多数の周波数成分を出力するため、個々のレーザ光の絶対波長を正確に把握することが困難であるとの課題があり、また、装置の大型化等の課題も残る。
この場合、2つの干渉信号の位相変化量が一致するため、第二光学素子の変位量は、第一光学素子の変位量、第一波長、第二波長、及び各波長に対する空気屈折率により表すことができ、第一波長、第二波長、及び空気屈折率が既知である場合は、第一光学素子の変位量を測定することで、第二光学素子の変位量を測定することが可能となる。
また、第二光学素子及び第三光学素子が移動しないとした場合では、同様の方法により、空気屈折率の微小な変動量の測定も可能となる。
本発明では、上述したように、2つの干渉信号の位相変化量を一致させると、第二光学素子の変位量を、第一光学素子の変位量、第一波長、第二波長、及び各波長に対する空気屈折率により表すことができる。したがって、制御部は、既知である第一波長、第二波長、及び空気屈折率を用い、第一光学素子の変位量を測定することで、第二光学素子の変位量を高精度に測定することができる。
本発明では、前記第二光学素子又は前記第三光学素子の変位量の測定範囲に応じて、第一波長及び第二波長を変更する。つまり、測定範囲を広げる場合には、第一波長及び第二波長の波長差を大きくし、測定範囲を狭める場合には、前記波長差を小さくする。これにより、変位量の測定範囲に応じた適切な波長を選択することで、測定範囲に応じた適切な精度での変位測定を実施することができる。
本発明では、第一光学素子を変位させて変位可能範囲の端点に到達した際に、変位方向を判定させ、かつ第一レーザ光及び第二レーザ光の波長を入れ替える。これにより、第一光学素子が変位可能範囲の端点に到達した後も、測定を継続して行うことができる。つまり、第二光学素子又は第三光学素子の変位測定における測定範囲を広げることができ、かつ、第一光学素子の変位可能範囲が狭くてもよいため、装置の小型化を図ることができる。
また、吸収線を用いて第一及び第二波長を安定化することで、これらの波長差を適度に小さくすることができる。このため、個々の波長に対する空気屈折率の変動の相関が高められる。すなわち、空気屈折率が変動した場合でも、その不確かさを小さくすることできる。
本発明では、各光学素子の絶対位置が測定できる。このため、第二光学素子及び第三光学素子の絶対位置の差を利用することで、空気屈折率や熱膨張係数の影響を補正することができる。また、第二光学素子及び第三光学素子の絶対位置の差が小さくなるように、測定の初期位置を設定することもでき、測定の高精度化を図ることができる。さらに、変位測定を実施する際に変位させる第一光学素子や、変位測定対象である第二光学素子又は第三光学素子の絶対位置を検出できるので、測定時において例えば干渉計内の光路が遮られる等のトラブルが生じた場合でも、原点復帰等の処置が不要となり、容易に測定に復帰することができる。
本発明では、制御部は、上述したように、第一干渉信号の位相変化量と、第二干渉信号の位相変化量を一致させるように、すなわち、位相変化量の差が0になるように、第一光学素子を変位させる。この際、上記のように、低膨張材料により、第二光学材料及び第三光学材料の移動がないと見なせるので、第一波長及び第二波長の波長差が十分に小さい場合、空気屈折率の変動量は、第一波長、第二波長、各波長に対する空気屈折率、第一光学素子の変位量、及び低膨張材料の寸法により表すことができる。したがって、第一光学素子の変位量が測定されることで、空気屈折率の変動量を測定することができる。
ことを特徴とする。
以下、本発明に係る第一実施形態の干渉計測装置について、図面に基づいて説明する。
[干渉計測装置の構成]
図1は、第一実施形態の干渉計測装置の概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の干渉計測装置1は、レーザ光源2、吸収セル部3、干渉計4、レーザ光源2からの光を吸収セル部3や干渉計4に導く導光部5、及びこれらを制御するためのコントローラ6を含んで構成されている。
これらの第一及び第二レーザ光源21,22は、例えば共振器を備え、共振器長を変化させることで出射させるレーザ光の波長を所望量だけ変化させることが可能となる。
第一ミラー51は、第一レーザ光源21から出射された第一レーザ光を第二ミラーに向かって反射する。
第二ミラー52は、第一レーザ光及び第二レーザ光をそれぞれ吸収セル部3に向かう方向と、干渉計4に向かう方向とに分岐させる。第二ミラー52としては、例えばハーフミラー等を用いることができる。なお、本実施形態では、第一レーザ光及び第二レーザ光が第二ミラー52のそれぞれ異なる位置に入射され、互いの主光軸が一致していない(ずれている)例を示す。
第三ミラー53は、第二ミラー52からの各レーザ光を吸収セル部3に向かって反射させる。
第三ミラー53で反射された各レーザ光は、図1に示すように、吸収セル31に入射され、第一レーザ光の透過光は第一ディテクタ32に、第二レーザ光の透過光は第二ディテクタ33にて受光され、その受光光強度に応じた検出信号(光出力信号)がコントローラ6に入力される。なお、図1は、吸収セルを単一回通過させる構成としているが、より狭窄な吸収線(飽和吸収線)を得るために、吸収セル内で光を往復させる構成などとしてもよい。この場合、吸収セルに入射するレーザ光に周波数変調信号を印加する。
図2は、吸収セルにおける吸収線(飽和吸収線)、及び各レーザ光の波長を示す図である。
本実施形態では、コントローラ6は、これらの検出信号に基づいて、各レーザ光の強度変化を検出し、各レーザ光の波長を図2に示すような吸収セル31の特定の吸収線の波長に一致するように、第一及び第二レーザ光源21,22の例えば共振器長を制御する等により波長を安定化させる。
つまり、吸収セル31は、例えばヨウ素セル等により構成され、複数の特定の波長に対して光の吸収特性を示す。したがって、吸収セル31の透過光を検出することで、吸収線を観測することができる。これらの吸収線は、吸収セルを構成する物質により定まっており、各吸収線における吸収強度が異なり、吸収線の波長間隔も等間隔とならない。従って、コントローラ6は、透過光(レーザ光)の波長を変化させることで各吸収線を容易に区別することが可能であり、これを利用することで、レーザ光の波長を高度に安定化させることが可能となる。
同様に、第二方向に透過された第二レーザ光は、λ/4板42Bを透過し、第三反射部45で反射され、再びλ/4板42Bを透過してビームスプリッタ41から位相検出部46側に反射される。すなわち、第一反射部43にて反射された第二レーザ光と第三反射部45で反射された第二レーザ光との干渉光が位相検出部46に入射される。
位相検出部46は、入射された第一レーザ光の干渉光、及び第二レーザ光の干渉光をそれぞれ受光し、各干渉光による干渉信号の位相変化量を検出する。
また、本実施形態において、第一反射部43は、コントローラ6により制御されることで第一方向に沿って移動可能に構成されている。第二反射部44は、変位量の測定対象である被測定物に設けられることで、被測定物の変形や変位等により第二方向に変位する。第三反射部45は、干渉計4に対して固定されている。
変位測定手段63は、各レーザ光の波長λi、各波長λiに対する空気屈折率ni(i=1,2)、第二レーザ光の干渉信号の位相変化量に基づいて、第二反射部44の変位量を測定する。
位置測定手段64は、各レーザ光の波長λi、各レーザ光を波長変化した際の波長変化量Δλiに基づいて、各反射部43,44の絶対位置を測定する。なお、本実施形態では、第三反射部45の位置は固定であるため、その位置は既知であるとする。
[変位測定原理]
次に、本実施形態における第二反射部44の変位測定の原理について説明する。
以下の説明にあたり、第二反射部44の変位量をdl、第一反射部43の変位量をdL、波長λiに対する空気屈折率をni、波長λiのレーザ光の干渉信号の位相変化量をdφi、空気中における波長λiの値をλiaとする。
本実施形態では、変位測定対象である第二反射部44が変位した際に、第一反射部43も変位させる。この時、各レーザ光に対する位相変化量は、下記式(1)(2)で表すことができ、これらの位相変化量の差は下記式(3)のようになる。
[変位測定方法]
以下、上記干渉計測装置1を用いた第二反射部44の変位測定量方法の詳細について、図面に基づいて説明する。
図3は、本実施形態における変位測定方法のフローチャートである。
干渉計測装置1において第二反射部44の変位量を測定するには、まず、コントローラ6の波長制御手段61は、吸収セル部3から入力される各レーザ光の光強度を用いて、図2に示すように、レーザ光の波長λiの波長を吸収セル31の吸収線の波長に安定化させる(ステップS1)。
ここで、第一反射部43の移動方向としては、波長λ1,λ2の大小関係により決定される。従って、波長制御手段61によりレーザ光源2を制御して、各レーザ光の波長λ1,λ2を変化させ、これらの波長λ1,λ2の大小関係を適宜設定することで、第三反射部45に対する第一反射部43の変位方向を決定することができる。
なお、上記において、ステップS2の後にステップS3を実施したが、例えばステップS4の処理の後ステップS3を実施してもよく、ステップS4の処理中にステップS3を実施してもよい。
上記のような変位測定を実施した際の測定の不確かさについて説明する。
上述した式(4)を偏微分すると以下の式(5)を導き出せる。
すなわち、本実施形態では、各レーザ光の波長を、吸収セル部3を用いて安定化させている。したがって、各レーザ光の波長λiの不確かさが低減されている。また、上記のように吸収セル部3を用いて各波長λiが特定されるので、空気中の各波長λiに対する屈折率niもより正確に求めることができる。したがって、各波長λiに対する空気中の波長λiaの不確かさも低減される。
以上により、本実施形態では、上記式(5)に示す、第1項の測定の不確かさが低減される。
この第2項においては、各波長λi間の波長差が小さい場合に、その影響を無視できる程度に低減できる。本実施形態では、吸収セル31を用いてレーザ光源の発振範囲内において現れる吸収線を利用して波長差が十分に小さくなるように、各レーザ光の波長を安定化できる。例えば、図2に示す吸収線において隣合う吸収線を用いて各波長λiを安定化させることで、波長差を十分に低減できる。より具体的な例を示すと、例えば、λ1=531nm、λ2=532nmとして設定することができ、この場合、δdLの影響を1/532程度に低減することが可能となる。また、このように、波長差が小さい波長λiを利用することで、光学系内の光学部品での波長差の影響を低減できるので、各光学部品の共通化を図れる。さらに、各波長λi間の空気屈折率の変動の相関が高まる、つまり、空気屈折率が変動した場合でも、その変動による影響が小さくなり、上記式(5)における第1項で示される測定の不確かさにおける空気屈折率の変動の影響に対して、さらに測定の不確かさを低減できる。
また、各波長λi間の波長差を小さくすることで、上述のように不確かさを小さくできる。この場合は、測定範囲が狭くなるが、第二反射部44の微小変位量を精度よく測定する場合に有効となる。
次に、本実施形態における第二反射部44の変位測定について説明する。
上述したような第二反射部の変位量測定では、変位量を算出するものであり、位相変化の累積値を求めても、第一反射部43や第二反射部44の絶対位置を求めることができず、第一反射部43や第二反射部44の可動範囲や、当該可動範囲内におけるどの位置に位置しているかを求めることができない。これに対して、本実施形態では、レーザ光の波長を変化させることで、さらに第一反射部43及び第二反射部44の絶対位置を検出する。
図4は、本実施形態における位置測定の原理を説明するための図である。
図4に示すように、第一レーザ光におけるビームスプリッタ41から第一反射部43までの光路長をL1、ビームスプリッタ41から第二反射部44までの光路長をl1、第二レーザ光のビームスプリッタ41から第一反射部43までの光路長をL2、ビームスプリッタ41から第三反射部45までの光路長をl2とする。
波長λi(i=1,2)のレーザ光のLiとliとの光路差Si(i=1,2)は、位相をφi(i=1,2)とした場合に、以下の式(6)により表すことができる。
以下、上記干渉計測装置1を用いた第一反射部43及び第二反射部44の絶対位置測定方法について、図面に基づいて説明する。
図5は、本実施形態における位置測定方法を示すフローチャートである。
干渉計測装置1において第一反射部43及び第二反射部44の絶対位置を測定する場合、まず、各反射部43,44を静止させる(ステップS11)。
次に、コントローラ6の波長制御手段61は、各レーザ光の波長λi(λ1,λ2)について、安定化させる吸収線を変更して、波長を変化させる(ステップS12)。すなわち、第一波長λ1をλ1+Δλ1に変化させ、第二波長λ2をλ2+Δλ2に変化させる。
コントローラ6の位置測定手段64は、検出された位相変化量Δφi、各波長λi、及び波長変化量Δλiから、上述した式(8)を用いて各レーザ光における第一方向及び第二方向の光路差Siを算出し、さらに、式(9)(10)により、第一反射部43及び第二反射部44の位置を測定する(ステップS14)。
本実施形態では、レーザ光源2から第一波長λ1の第一レーザ光、及び第二波長λ2の第二レーザ光を出射させ、これらのレーザ光をビームスプリッタ41により第一方向及び第二方向に2分岐させる。そして、位相検出部46は、第一方向において第一反射部43にて反射された第一レーザ光と、第二方向において第二反射部44にて反射された第一レーザ光との干渉光における位相変化量、第一反射部43にて反射された第二レーザ光と、第二方向において第三反射部45にて反射された第二レーザ光との干渉光の位相変化量を検出する。また、このような干渉計測装置1において、コントローラの測定駆動手段62は、第一反射部43を移動させて、第一レーザ光に対する位相変化量と第二レーザ光に対する位相変化量とを一致させる。そして、変位測定手段63は、式(4)を用いて、各波長λi、空気屈折率ni、及び第一反射部43の変位量により第二反射部44の変位量を測定する。
このような構成では、式(5)に示すように、各波長λiとして波長が安定化されたレーザ光を用いればよく、紫外線やX線等の低波長域のレーザ光を用いる必要がなく、構成の簡略化を図れる。また、光路長増倍法等のような複雑な光路設計、光コムのような大型の装置を用いる必要がなく、この点からも構成の簡略化を図れる。さらに光路長増倍法に比べて光量低下や迷光、漏れ光等の影響も低減でき、測定精度の向上を図れる。すなわち、本実施形態の干渉計測装置1では、簡素な構成で、かつ、微小領域に対しても不確かさを低減した変位測定を実施することができる。
そして、吸収セル31の互いに近接する(例えば隣り合う)吸収線に、第一波長λ1及び第二波長λ2を合わせることで、各レーザ光の波長差を小さくできる。これにより、光学部材内での波長差の影響が低減でき、光学部品の共通化を図れ、構成の簡略化を図れる。また、波長差を小さくすることで、式(5)における第2項に対する不確かさ(第一反射部43の変位量dLに対する不確かさδdL)を低減できる。
さらに、各レーザ光の主光軸の距離dが、例えば吸収セル31等の各光学部品のサイズに応じて設定された所定距離以内となるように設定されている。このように、各レーザ光の主光軸を近接させることで、レーザ光の光路上における空気屈折率が類似し、変動した場合でも影響を相殺することができる。これにより、測定の不確かさをより低減させることができる。
このような構成では、第二反射部44及び第三反射部45の絶対位置の差Dを算出することができる。したがって、第一波長λ1に対する空気屈折率n1を算出して、この差Dに相当する部分の空気屈折率のゆらぎや熱膨張の影響を補正することができる。これにより、測定精度をより高精度にすることができる。
また、変位測定時において、例えば干渉計4内の光路が遮られる等のトラブルが生じた場合、原点復帰等の処置が不要となり、容易に測定に復帰することができる。
次に本発明に係る第二実施形態について、図面に基づいて説明する。
第一実施形態では、干渉計測装置1を用いて、第二反射部44の変位を測定する例を示した。これに対して、第二実施形態は、第一実施形態の干渉計測装置1を利用した振動検出装置であり、第二反射部44を変位測定対象である振動部材に設け、振動部材の振動状態を検出する。
図6に示すように、本実施形態における振動検出装置1Aは、第一実施形態と同様、レーザ光源2、吸収セル部3、干渉計4、及び導光部5を備えている。この振動検出装置1Aでは、ベース面8を備え、このベース面8に第三反射部45が設けられている。また、ベース面8には振動部材71が設置され、振動部材71に対して第二反射部44が設けられている。
本実施形態では、振動部材71の振動により、第二反射部44が変位する。従って、上記第一実施形態と同様の変位測定方法を用い、第一反射部43を振動部材71の振動に合わせて変位させることで、振動部材71における振動による変位を検出することができる。このような本実施形態では、通常の干渉計では、振動の検出が困難である振動部材71における微小振動を高精度に測定することができる。
次に本発明に係る第三実施形態について、図面に基づいて説明する。
第三実施形態は、第一実施形態の干渉計測装置1を利用した熱膨張量検出装置であり、第二反射部44を変位測定対象である熱膨張量の測定対象に設けている。
図7に示すように、本実施形態における熱膨張量検出装置1Bは、第一実施形態と同様、レーザ光源2、吸収セル部3、干渉計4、及び導光部5を備えている。この熱膨張量検出装置1Bでは、ベース面8を備え、このベース面8に第三反射部45が設けられている。また、ベース面8には変位測定対象である熱膨張量の測定対象の被測定物72が設置され、被測定物72に対して第二反射部44が設けられている。なお、被測定物72のビームスプリッタ41側の面に第二反射部44が設けられ、反対側の面にビームスプリッタ41に対して対向して第三反射部45が設けられる構成などとしてもよい。
本実施形態では、被測定物72が熱膨張(又は熱収縮)により変形すると、第二反射部44が第二方向に対して変位する。従って、上記第一実施形態と同様の変位測定方法を用い、第一反射部43を熱変形による変位に合わせて、各レーザ光の干渉信号の位相変化量の差が0となるように変位させることで、被測定物72における熱膨張量(熱収縮量)を高精度に検出することができる。
また、本実施形態では、第二反射部44及び第三反射部45の絶対値を測定することで、被測定物72の寸法Uを測定することもできる。したがって、熱膨張量dl、被測定物の寸法U、被測定物の温度変化ΔTを用いることで、被測定物72における熱膨張係数αを次式(11)により算出することもできる。
次に本発明に係る第四実施形態について、図面に基づいて説明する。
第四実施形態は、第一実施形態の干渉計測装置1を利用した空気屈折率測定装置である。
図8に示すように、本実施形態における空気屈折率測定装置1Cは、第一実施形態と同様、レーザ光源2、吸収セル部3、干渉計4、及び導光部5を備えている。この空気屈折率測定装置1Cでは、ベース面8を備え、このベース面8に第二反射部44が設けられている。また、ベース面8には、熱膨張係数が所定値以下である低膨張材料73が設置され、この低膨張材料73に対して第三反射部45が設けられている。低膨張材料73の温度変化に伴う変形(熱膨張や熱収縮)は十分小さいものとする。すなわち、第二反射部44及び第三反射部45の物理的な寸法Uの変動は十分に小さい。
なお、低膨張材料73のビームスプリッタ41側の面に第三反射部45が設けられ、反対側の面にビームスプリッタ41に対して対向して第二反射部44が設けられる構成などとしてもよい。
また、本実施形態のコントローラ6は、上記第一実施形態と同様、波長制御手段61、測定駆動手段62、変位測定手段63、及び位置測定手段64を備え、さらに、屈折率の変動量を測定する屈折率測定手段65を備えている。
本実施形態では、低膨張材料73の長さ寸法をUとすると、各レーザ光における第一方向の光路及び第二方向の光路の光路差Siを用いて、S1=S2+Uと表すことができる。
なお、低膨張材料73の寸法Uは、位置測定手段64により、上記第一実施形態と同様に第二反射部44の位置を測定することで算出されてもよい。
ここで、各レーザ光の波長λiに対する空気屈折率niの変化をdni(i=1,2)とすると、各波長λi(i=1,2)に対する干渉信号の位相変化量dφiは次式(12)(13)のようになり、これらの位相変化量の差は式(14)で表される。
この際、測定駆動手段62により、式(14)における位相差がdφ1−dφ2=0となるように、第一反射部43を駆動させると、式(14)は、以下の式(15)のように変形できる。
これにより、本実施形態では、上記第一実施形態と同様に、測定の不確かさを低減した空気屈折率の変動量dn1を高精度に測定することができる。
次に本発明に係る第五実施形態について、図面に基づいて説明する。
上記第一実施形態では、変位が大きい第一反射部43の変位量を測定することで、第二反射部44の微小変位を高精度に測定する例を示した。
これに対して、本実施形態では、第二反射部44の微小変位を高精度に測定可能な変位計(変位測定機)を用いて、第一反射部43の変位を測定する点で上記第一実施形態と相違する。
図9に示すように、本実施形態における干渉計測装置1Dは、第一実施形態と同様、レーザ光源2、吸収セル部3、干渉計4、及び導光部5を備え、さらに、第二反射部44の変位量を高精度に計測可能な変位計9が設けられている。
この変位計9は、コントローラ6に接続され、第二反射部44の変位量をコントローラ6に出力する。
また、変位計9として、第二反射部44の変位量の絶対量(絶対位置)を測定可能な計測器を用いることで、第二反射部44の変位よりも大きい変位量となる第一反射部43の変位の絶対量dLを測定することができる。この場合、干渉計4において光路が遮られる等のトラブルが発生した場合でも、原点回帰等の処理を行うことなく、容易に測定に復帰することができ、変位の絶対量dLを測定できる。
次に本発明に係る第六実施形態について説明する。
第六実施形態では、上記第一実施形態におけるコントローラ6は、各レーザ光の波長λiを変更することにより、第二反射部44の変位量の測定範囲を変更する点で、上記第一実施形態と相違する。
より具体的には、測定範囲の変更指令として、測定範囲を狭くする旨の指令が入力された場合、各波長λi間の波長差を小さくし、第二レーザ光の波長λ2を大きくする。これにより、式(4)に示すように、第一反射部43の変位dLに対して、第二反射部44の変位dlが小さくなる。すなわち、より狭い測定範囲内に対して高精度な測定が可能となる。
一方、第二反射部の測定範囲を広げる場合は、各波長λi間の波長差を大きくし、第二レーザ光の波長λ2を小さくする。これにより、第一反射部43の変位量を大きくすることなく、より広い測定範囲に対する測定が可能となる。
逆に、第一反射部43の変位量が、変位可能範囲に対して小さい場合等では、第一反射部43の変位量をより大きくして、より不確かさを低減した測定が可能である。この場合、各波長λi間の波長差を小さくし、第二レーザ光の波長λ2を大きくすればよい。
また、第一反射部43の変位可能範囲が限られている場合でも、波長λiを設定して、第一反射部43の変位量を変位可能範囲に収めることができる。
次に本発明に係る第六実施形態について説明する。
上記第一実施形態では、第一反射部43を第一方向における一方向のみに移動させて、第一レーザ光に対する位相変化量と第二レーザ光に対する位相変化量とを一致する際の変位量を測定する。この場合、第二反射部44の変位量が大きい場合、第一反射部43の変位可能範囲を大きく設定する必要があり、装置が大型化するおそれがある。また、第一反射部43の変位可能範囲が狭い場合では、第二反射部44の変位量が大きいと、第一反射部43が変位可能範囲の端部(変位限界位置)まで移動し、それ以上変位させることができない。この場合、第二反射部44の変位量の測定範囲が限られてしまう。
これに対して、第七実施形態では、第一反射部43の変位可能範囲によらず、第二反射部44の変位測定範囲を広げることができる。以下に、その構成及び方法を説明する。
本実施形態では、図3のステップS3において、第一反射部43を変位させた際に、第一反射部43の変位位置が、変位可能範囲の端部に到達すると、コントローラ6は、第一レーザ光の波長λ1と、第二レーザ光の波長λ2とを入れ替え、第一反射部43の変位方向を逆転させる。すなわち、第一レーザ光源21から出力される第一レーザ光を波長λ2で安定化させ、第二レーザ光源22から出力される第二レーザ光を波長λ1で安定化させて、第一反射部43の変位方向を反転させる。
この際、第一反射部43の変位量は、第一方向のプラス方向に変位した変位量と、第二方向のマイナス方向に変位した変位量との和となる。
以降は、上記第一実施形態と同様の処理により、第二反射部44の変位量を測定する。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
上記各実施形態において、第一波長λ1の第一レーザ光と、第二波長λ2の第二レーザ光の主光軸を、距離dだけ離す例を示したが、これに限定されず、同軸としてもよい。
この場合、図10に示すように、第二反射部44と第三反射部45とを同軸に配置する。このような構成では、第二反射部44として、第一波長λ1の光を反射させ、第二波長λ2の光を透過させる等、第二反射部44として波長選択性を有する反射フィルターを用いればよい。
このように、各レーザ光の光軸を一致させる場合では、各波長λi(λ1,λ2)の波長差が十分小さい場合、レーザ光の光路上における空気屈折率変動の影響をより効果的に相殺でき、測定の不確かさをさらに低減できる。
上記各実施形態において、第一光学素子として第一反射部43、第二光学素子として第二反射部44、第三光学素子として第三反射部45を例示、つまり、入射光を反射界面で180度反転させる平面タイプの反射ミラーを各光学素子として用いる例を示したが、これに限定されない。
図11は、変形例2における干渉計測装置1Eの概略構成を示す図である。図11に示す干渉計測装置1Eでは、第一光学素子として、コーナーキューブ43Aと干渉計4に対して固定された固定ミラー43Bとを用いた構成とし、コーナーキューブ43Aを第一方向に沿って移動可能な構成としてもよい。
このようなコーナーキューブ43Aを用いることで、変位に伴う光軸ずれの影響を低減でき、より安定した干渉計測を実施することができる。また、このような構成では、第一光学素子であるコーナーキューブ43Aの変位量を半分にでき、干渉計測装置1Eの小型化を図ることができる。
なお、図11では、第一光学素子に対してコーナーキューブ43Aを用いる例を示したが、第二光学素子や第三光学素子に対しても同様にコーナーキューブ及び固定ミラーを用いてもよい。
第一実施形態において、第三反射部45を干渉計4に対して固定する例を示したが、これに限定されない。例えば、第二反射部44及び第三反射部45の双方が変位可能な構成としてもよい。この場合でも、測定時において、第二反射部44及び第三反射部45のいずれか一方を変位させず、基準位置として用いることで、上記各実施形態と同様の測定が実施できる。例えば、第二反射部44を変位させず、第三反射部45の変位量を測定してもよい。
上記実施形態において、第一レーザ光及び第二レーザ光の2つのレーザ光を用いる例を示したが、これに限定されない。3つ以上の波長が異なるレーザ光を用いてもよい。この場合でも、上記各実施形態と同様に、1つのレーザ光を基準位置となる光学素子(第一〜第三実施形態においては第三反射部45)で反射させる。そして、その他のレーザ光を、第二方向におけるそれぞれ異なる光学素子にて反射させる。この場合では、各光学素子の可動範囲をそれぞれ異なる領域に設定することで、被測定物のより大きな変位を測定することも可能となる。すなわち、測定精度を維持したうえで、測定範囲を広げることができる。
上記各実施形態において、吸収セル31の吸収線の波長にレーザ光源の励起光の波長を安定化させる例を示したが、これに限定されない。例えば、レーザ光源2として、安定した第一波長λ1及び第二波長λ2のレーザ光を出射可能な光源を用いる場合では、吸収セル部3を用いた波長安定化を実施しなくてもよい。
Claims (11)
- 第一波長の第一レーザ光、及び前記第一波長とは異なる第二波長の第二レーザ光を出射させるレーザ光源と、
前記第一レーザ光及び前記第二レーザ光をそれぞれ第一方向及び第二方向に分岐させる光分岐素子と、
前記第一方向に設けられ、前記第一レーザ光及び前記第二レーザ光を折り返す第一光学素子と、
前記第二方向に設けられ、前記第一レーザ光を折り返す第二光学素子と、
前記第二方向に設けられ、前記第二レーザ光を折り返す第三光学素子と、
前記第一光学素子及び前記第二光学素子により折り返された前記第一レーザ光の干渉信号、及び前記第一光学素子及び前記第三光学素子により折り返された前記第二レーザ光の干渉信号をそれぞれ検出する検出手段と、
前記第一光学素子を前記第一方向に沿って変位させて、前記第二光学素子又は前記第三光学素子の前記第二方向への変位による干渉信号の位相変化量と、前記第一光学素子の変位による干渉信号の位相変化量とを一致させる制御部と、を備えた
ことを特徴とする干渉計測装置。 - 請求項1に記載の干渉計測装置において、
前記制御部は、前記第一波長、前記第二波長、前記第一光学素子の前記第一方向への変位量、及び空気屈折率に基づいて、前記第二光学素子又は前記第三光学素子の変位量を測定する
ことを特徴とする干渉計測装置。 - 請求項2に記載の干渉計測装置において、
前記レーザ光源は、前記第一波長及び前記第二波長を変更可能であり、
前記制御部は、前記第一波長及び前記第二波長を変更することで、前記第二光学素子又は前記第三光学素子の変位量の測定範囲を変更する
ことを特徴する干渉計測装置。 - 請求項2又は請求項3に記載の干渉計測装置において、
前記レーザ光源は、前記第一波長及び前記第二波長を変更可能であり、
前記制御部は、前記第一光学素子を第一方向に変位させて、変位位置が変位可能範囲における端点に到達した際に、前記第一レーザ光の波長と前記第二レーザ光の波長とを入れ替えて、前記第一光学素子の変位方向を反転させる
ことを特徴とする干渉計測装置。 - 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の干渉計測装置において、
前記第一レーザ光の一部、及び前記第二レーザ光の一部が入射される吸収セルを備え、
前記レーザ光源は、前記第一レーザ光を前記吸収セルに照射して得られる光出力信号に含まれる吸収線に基づいて、前記第一波長を安定化させ、前記第二レーザ光を前記吸収セルに照射して得られる光出力信号に含まれる吸収線に基づいて、前記第二波長を安定化させる
ことを特徴とする干渉計測装置。 - 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の干渉計測装置において、
前記レーザ光源は、前記第一波長及び前記第二波長を変更可能であり、
前記制御部は、前記第一光学素子、前記第二光学素子、前記第三光学素子を静止させた状態で、前記第一波長及び前記第二波長をそれぞれ所定量変化させた際に前記検出手段により検出される前記第一レーザ光の位相変化量、及び前記第二レーザ光の位相変化量と、前記第一レーザ光の波長変化量と、前記第二レーザ光の波長変化量とを用いて、前記第二光学素子及び前記第三光学素子の絶対位置を測定する
ことを特徴とする干渉計測装置。 - 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の干渉計測装置において、
前記第二光学素子及び前記第三光学素子の少なくともいずれか一方は、変位測定対象に設けられている
ことを特徴とする干渉計測装置。 - 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の干渉計測装置において、
前記第二光学素子及び前記第三光学素子の少なくともいずれか一方は、環境変化による熱膨張変動量が所定値以下である低膨張材料に設けられている
ことを特徴とする干渉計測装置。 - 請求項8に記載の干渉計測装置において、
前記制御部は、前記第一波長、前記第二波長、及び前記第一光学素子の前記第一方向への変位量に基づいて、空気屈折率の変動量を測定する
ことを特徴とする干渉計測装置。 - 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の干渉計測装置において、
前記第二光学素子又は前記第三光学素子の変位量を計測する変位測定機を備え、
前記制御部は、前記変位測定機の計測結果に基づいて、前記第一光学素子の変位量を測定する
ことを特徴とする干渉計測装置。 - 第一波長の第一レーザ光を出射させる第一レーザ光源と、第二波長の第二レーザ光を出射させる第二レーザ光源と、前記第一レーザ光及び前記第二レーザ光をそれぞれ第一方向及び第二方向に分岐させる光分岐素子と、前記第一方向に設けられて前記第一レーザ光及び前記第二レーザ光を折り返す第一光学素子と、前記第二方向に設けられて前記第一レーザ光を折り返す第二光学素子と、前記第二方向に設けられて前記第二レーザ光を折り返す第三光学素子と、前記第一光学素子及び前記第二光学素子により折り返された前記第一レーザ光の干渉信号、及び前記第一光学素子及び前記第三光学素子により折り返された前記第二レーザ光の干渉信号のそれぞれの位相変化量を検出する検出手段と、を備えた干渉計測装置における変位量測定方法であって、
前記第一光学素子を変位させ、前記第二光学素子又は前記第三光学素子の変位による干渉信号の位相変化量と、前記第一光学素子の変位による干渉信号の位相変化量とを一致させる
ことを特徴とする変位量測定方法。
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