JP2015230010A - 軸部材の抜け止め装置及びその装置を用いた等速ジョイント組立体 - Google Patents

軸部材の抜け止め装置及びその装置を用いた等速ジョイント組立体 Download PDF

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Abstract

【課題】分解意図がない場合には軸部材を支持部材に強固に固定し、且つ分解時には容易に分解可能な軸部材の抜け止め装置およびその装置を用いた等速ジョイント組立体を提供する。【解決手段】第一当接面22aを備える軸部材20と、第一当接面に対向する第二当接面124aを備える支持部材120と、軸部材を支持部材の第一開口部から引き抜く方向への移動を規制し、且つ縮径した状態にて第一開口部から脱離可能な抜け止め部材42と、装着時に支持部材に対する軸部材の位置を固定位置に規制し、且つ、脱離時に支持部材に対する軸部材の挿入方向への移動を許容するストッパ部材50と、を備える。【選択図】図2

Description

本発明は、軸部材の抜け止め装置に関するものであり、特に等速ジョイント組立体を構成する軸部材に内側部材を固定する構造に関する。
ボール型等速ジョイントの内輪(支持部材)とシャフト(軸部材)とが、止め輪により一体的に連結される技術がある。このとき、意図せぬときに等速ジョイントとシャフトとが分離しないようにすることが求められる。そのため、一度組み付けると、等速ジョイントとシャフトとを分離できないものが多く存在している(例えば、特許文献1)。特許文献1に開示される技術では、シャフトが抜け方向に移動しようとすると、シャフトの外周溝に収容された止め輪が、内輪の内周面に設けられた予め設定されたランプ角を有する当接面に当接して、抜け方向の移動が規制される。
しかし、市場においては、サービス性向上の観点から等速ジョイント組立体を分解可能とする構造が求められている。そこで、例えば、特許文献1の等速ジョイント組立体を分解可能、つまり、シャフトを内輪から引抜き可能とするため、当接面のランプ角が大きく設定される方法が考えられる。当接面のランプ角を大きくすると当接面が止め輪に当接した際に、止め輪を縮径する方向に作用する力が大きくなる。そして、所定値以上のランプ角に設定される場合、シャフトに対しシャフトの抜き方向に負荷を与えると、止め輪が当接面と当接しながら当接面の小径側の内径よりも縮径され、シャフトの引抜きが可能となる。
特開昭61−290219号公報
上記の構造では、シャフトに対しシャフトの抜き方向に所定値以上の負荷を与えると、シャフトが内輪から抜ける。このため、分解する意図がない場合でも、シャフトに対し所定値以上の負荷が加わると、シャフトが内輪から抜ける虞がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、分解意図がない場合には軸部材を支持部材に強固に固定し、且つ分解時には容易に分解可能な軸部材の抜け止め装置およびその装置を用いた等速ジョイント組立体を提供することを目的とする。
(請求項1)本発明の軸部材の抜け止め装置は、嵌合範囲において、先端側と反対方向を向く面であって、当該面の法線ベクトルが前記先端側と反対方向に向かう軸線ベクトルに対して第一角度だけ径方向外方に向くように形成された第一当接面を備える軸部材と、前記軸部材の先端側を挿入可能な第一開口部を有する筒状に形成され、前記軸部材の固定位置において内周面に前記第一当接面に対して第二角度を有して対向する第二当接面を備える支持部材と、径方向に縮径可能なリング状に形成され、前記固定位置で前記第一当接面及び前記第二当接面に挟まれた状態にて前記軸部材を前記支持部材の前記第一開口部から引き抜く方向への移動を規制し、且つ、前記固定位置よりも前記軸部材の先端側が前記支持部材の前記第一開口部より奥側へ移動した位置において前記固定位置における状態よりも縮径した状態にて前記第一開口部から脱離可能な抜け止め部材と、前記支持部材の前記第一開口部側の端面と前記軸部材との間に装着可能であり、装着時に前記支持部材に対する前記軸部材の位置を前記固定位置に規制し、且つ、脱離時に前記支持部材に対する前記軸部材の挿入方向への移動を許容するストッパ部材と、を備える。
このようにして、軸部材を支持部材に固定する場合、軸部材と支持部材との相対移動が可能な状態にて、抜け止め部材が、支持部材の第一開口部から軸部材及び支持部材の間を通って、第一当接面と第二当接面との間に挿入可能となる。これにより、抜け止め部材が、支持部材に対する軸部材の引き抜き方向への相対移動を規制する。この状態で、ストッパ部材が、軸線方向における支持部材の第一開口部側の端面と軸部材との間に装着される。これにより、ストッパ部材が、支持部材に対する軸部材の挿入方向への相対移動を規制する。これらによって、支持部材に対する軸部材の相対移動が容易に規制できる。また、軸部材を支持部材から引き抜き分解する場合には、上記の固定の場合と逆であり、ストッパ部材を脱離させ、軸部材を支持部材に対して挿入方向へ相対移動をさせた状態で、抜け止め部材が縮径されて第一開口部から脱離される。これにより、軸部材と支持部材とが容易に分解できる。
(請求項2)また、前記第一当接面と前記第二当接面との距離は、径方向内方に行くに従って短くなってもよい。これにより、固定位置にある抜け止め部材は、楔状に係合された第一当接面と第二当接面との間で縮径されることなく確実に保持される。このため、軸部材の支持部材に対する引き抜き方向への相対移動(抜け)は発生しない。
(請求項3)また、前記第一当接面と前記第二当接面とは、平行であってもよい。これにより、固定位置にある抜け止め部材が、第一当接面及び第二当接面の両側から軸方向に力を受けても、抜け止め部材には抜け止め部材を縮径させる力は作用しない。このため、抜け止め部材が、縮径し軸部材と支持部材の間および第一開口部を通って脱離し、支持部材に対する軸部材の引き抜き方向への相対移動(抜け)が発生する虞はない。
(請求項4)また、前記抜け止め部材は、前記抜け止め部材の縮径に連動する把持部を備え、前記把持部は、少なくとも前記固定位置において前記支持部材の前記第一開口部から突出してもよい。
つまり、抜け止め部材を第一当接面と第二当接面との間から脱離させるときには、支持部材の第一開口部から突出する把持部を掴み、抜け止め部材を縮径させて軸部材の引き抜き方向に引き出せばよい。このように容易に抜け止め部材を縮径させて、短時間で脱離させることができる。
(請求項5)また、前記ストッパ部材は、C型止め輪であってもよい。これにより、低コストで、軸部材の抜け止め装置が製作できる。
(請求項6)また、本発明の等速ジョイント組立体は、等速ジョイントの内側部材と前記内側部材に連結されるシャフトとが、請求項1〜5の何れか1項に記載の軸部材の抜け止め装置によって固定された等速ジョイント組立体であって、前記内側部材は、前記支持部材であり、前記シャフトは、前記軸部材であってもよい。これにより、請求項1〜5の何れか1項と同様の効果を有する等速ジョイント組立体が得られる。
本実施形態の等速ジョイント組立体の軸方向断面図である。 図1中2点鎖線部の拡大図である。 止め輪の把持部とストッパ部材との関係を示す図である。 図1中2点鎖線部の拡大図であり、固定時の第二工程を説明する図である。 図1中2点鎖線部の拡大図であり、固定時の第三工程を説明する図である。 図1中2点鎖線部の拡大図であり、固定時の第四工程を説明する図である。 第二実施形態を説明する図である。 第三実施形態を説明する図である。 第四実施形態を説明する図である。
<第一実施形態>
(1.等速ジョイント組立体の構成)
本発明に係る軸部材の抜け止め装置を適用した第一実施形態の等速ジョイント組立体1について、図1〜図3を参照して説明する。等速ジョイント組立体1は、例えば、車両の動力伝達シャフトに用いられる。等速ジョイント組立体1は、ディファレンシャル(図示せず)と車輪(図示せず)とを連結するドライブシャフトに好適に用いられる。
等速ジョイント組立体1は、図1に示すように、ボール型等速ジョイント10(以下、「等速ジョイント」と称する)と、シャフト20と、ブーツ30と、止め輪42と、ストッパリング50とを備える。等速ジョイント10は、ジョイント中心固定式ボール型等速ジョイント(「ツェッパ形等速ジョイント」とも称す)であって、自動車のドライブシャフトのアウトボードジョイントとして好適に使用されるものである。
等速ジョイント10は、外輪110と、内輪120と、複数のボール130と、保持器140とを備えて構成される。以下、各構成部品について詳細に説明する。
外輪110は、図1の右側に開口部を備え、図1の左側に底部を備える有底筒状(カップ状)に形成される。
この外輪110の底部の外方(図1の左側)には、連結軸111が外輪軸方向に延びるように一体形成される。外輪110の内周面112は、球面凹状に形成される。さらに、外輪110の内周面112には、複数の外輪ボール溝113が、外輪軸方向に延びるように形成される。複数の外輪ボール溝113は、周方向に等間隔に形成される。
内輪120は、抜け止め装置40の一部を構成する。内輪120は、筒状に形成され、外輪110の内側に配置される。この内輪120の外周面121は、球面凸状に形成される。また、内輪120の外周面121には、複数の内輪ボール溝122が、内輪軸方向に延びるように形成される。複数の内輪ボール溝122は、外輪ボール溝113と同数であり、周方向に等間隔に形成される。また、内輪120の内周には、内輪軸方向に貫通する、シャフト20の先端側が挿入される第一開口部120bを備えた挿入孔が設けられ、当該挿入孔内周面には内輪軸方向に延びる雌スプライン123が形成される。この雌スプライン123は、シャフト20の雄スプライン21に嵌合(噛合)される。内輪120は、内周面全周に亘って後に詳述する規制凹所124が形成される(図2参照)。
複数のボール130のそれぞれは、外輪110の外輪ボール溝113と、当該外輪ボール溝113に対向する内輪120の内輪ボール溝122に挟まれるように配置される。そして、それぞれのボール130は、外輪ボール溝113および内輪ボール溝122に対して、転動自在であって、周方向(外輪軸回りまたは内輪軸回り)に係合する。従って、ボール130は、外輪110と内輪120との間で回転駆動力を伝達する。
保持器140は、環状に形成される。この保持器140の外周面141は、外輪110の内周面112にほぼ対応する球面凸状に形成される。一方、保持器140の内周面142は、内輪120の外周面121にほぼ対応する球面凹状に形成される。この保持器140は、外輪110の内周面112と内輪120の外周面121との径方向間に配置される。この保持器140は、複数の窓部143を有する。複数の窓部143は、周方向(保持器軸心の周方向)に等間隔に形成されたほぼ矩形の貫通孔である。それぞれの窓部143に、ボール130が1つずつ収容される。
シャフト20は、いわゆるドライブシャフトの中間シャフトである。シャフト20は、抜け止め装置40の一部を構成する。このシャフト20の図1において左側の外周面には、雄スプライン21が形成される。シャフト20が内輪120の挿入孔に第一開口部120bから挿入された状態(図1において右から左に向かう方向)で、シャフト20の雄スプライン21が内輪120の雌スプライン123に嵌合する。以降、シャフト20が先端側から内輪120の挿入孔に第一開口部120bを通って挿入される方向を挿入方向と称す。
ブーツ30は、中心軸方向に伸縮可能で、かつ、中心軸を屈曲可能とするように、蛇腹筒状に形成される。ブーツ30の一端(図1左側)が外輪110の外周面の開口側に取り付けられ、ブーツ30の他端(図1右側)がシャフト20の外周面に取り付けられる。このようにして、ブーツ30は、外輪110の開口側を閉塞する。外輪110の内部領域にはグリースが封入されており、ブーツ30は、グリースが外輪110の開口部から漏出しないようにシールする。
図2に示すように、止め輪42は、内輪120の規制凹所124とシャフト20の停止部22との間に嵌め込まれる。ストッパリング50は、内輪120の端面のうちシャフト20が挿入される第一開口部120b側の端面に設けられる。止め輪42及びストッパリング50は、シャフト20に対する内輪120の軸方向移動を規制する。
(2.軸部材の抜け止め装置の構成)
次に、抜け止め装置40の構成について、図2を参照して説明する。抜け止め装置40は、内輪120に対するシャフト20の抜け止め作用を発揮させる構造部分である。抜け止め装置40は、シャフト20(軸部材に相当)と、内輪120(支持部材に相当)と、止め輪42(抜け止め部材に相当)と、ストッパリング50(ストッパ部材に相当)と、を備える。なお、図2に示すシャフト20と内輪120との相対位置を固定位置と称する。
図2に示すように、シャフト20(軸部材)は、第一当接面22aを備える停止部22と突起部23と、を有する。停止部22(第一当接面22a)は、軸線方向において内輪120がシャフト20に嵌合する嵌合範囲に形成される。詳細には、停止部22は、シャフト20の先端部の外周面に形成された雄スプライン21の反先端側端部に形成される。停止部22の第一当接面22aは、シャフト20の先端側と反対方向に向かって面が形成される。そして、第一当接面22aは、第一当接面22aの法線ベクトルV1が、シャフト20の先端側と反対方向に向かう軸線ベクトルV2に対して第一角度θ1だけ径方向外方に向くよう形成される。
突起部23は、停止部22に対しシャフト20の先端側と反対側に設けられる。突起部23は、軸方向断面が矩形を呈し、シャフト20の外周全周に形成される。突起部23は、ストッパリング50と当接する凸部側面23aを備える。凸部側面23aは、シャフト20の軸線と直交する平面である。
内輪120(支持部材)は、図1,図2に示すように、シャフト20が先端側から第一開口部120bを通って挿入可能なように筒状に形成される。図2に示すように、内輪120は、径方向内側に向かって開口する規制凹所124を有する。規制凹所124は、第二当接面124aと底面124bとを備える。
第二当接面124aは、固定位置において、シャフト20が有する停止部22の第一当接面22aに対して、第二角度θ2を有し、且つ対向して形成される。このとき、固定位置においては、第一当接面22aと第二当接面124aとの間の距離は、第一当接面22aと第二当接面124aとの間の距離が径方向内方に向かうに従い小さくなる。そして、シャフト20の挿入方向手前側の端部で第一当接面22aと第二当接面124aとの間の距離は、最小距離Lminとなる。つまり、本実施形態においては、第二角度θ2は、0degを超える角度となる。
規制凹所124の底面124bは、規制凹所124に嵌められた止め輪42が拡径し、初期状態(自由長状態)に戻る途中の状態で、その拡径を抑制する面である。つまり、止め輪42の自由長状態における外径は、底面124bの内径よりも大きい。この拡径の抑制によって、止め輪42が、規制凹所124に良好に保持される。また、この拡径の抑制によって、固定位置における止め輪42の外径がコントロールされる。
また、内輪120は、規制凹所124における挿入方向手前側、即ち、第二当接面124aの挿入方向手前側において、内輪120の内周面とシャフト20の外周面との間で、移動通路Fを形成する。移動通路Fは、内周面と外周面との間の距離が、図2に示す固定位置における状態よりも縮径した状態の止め輪42が軸線方向に通過可能に設定される。詳細には、抜け止め部材として、断面形状が円形の止め輪42が適用される本実施形態においては、移動通路Fは、図2に示す固定位置における第一当接面22aと第二当接面124aとの間の最小距離Lminよりも大きな通路距離Laを有して設定される。つまり、本実施形態においては、最小距離Lminは、止め輪42の線径(軸径)より小さく、止め輪42が通過できない距離である。また、移動通路Fの径方向の通路距離Laは、止め輪42の軸径より大きく止め輪42が通過可能な距離である。
止め輪42(抜け止め部材)は、径方向に縮径かつ拡径可能なリング状の弾性体からなる。前述の通り、止め輪42の軸断面形状は円形とする。また、止め輪42は、リング形状の両端部に把持部42a、42bを備える(図3参照)。把持部42a、42bは、挿入方向と反対方向に延在する。なお、この挿入方向と反対方向とは、内輪120に対するシャフト20の引き抜き方向のことであり、以降においては、この方向を単に引き抜き方向とのみ称す。固定位置において、把持部42a、42bは、少なくとも内輪120の挿入方向手前側の端面120a、即ち第一開口部120bから突出して形成される。
本実施形態では、把持部42a、42bの間の距離Aを狭めると、止め輪42が連動して縮径される。止め輪42は、固定位置で、第一当接面22a及び第二当接面124aに挟まれた状態にてシャフト20の内輪120に対する引き抜き方向への移動を規制する。前述したように、固定位置においては、第一当接面22aと第二当接面124aとの間の最小距離は、挿入方向手前側の端部で最小距離Lminとなる。最小距離Lminは、止め輪42の線径(軸径)より小さい。これにより、固定位置においては、止め輪42が第一当接面22aと第二当接面124aとの間、つまり規制凹所124内から脱離することはない。
また、止め輪42は、シャフト20が内輪120に対して固定位置から挿入方向に移動し、先端側が第一開口部120bより奥側に位置した状態にて、第一当接面22aと第二当接面124aとの間の最小距離が、止め輪42の線径(軸径)より大きくなれば、規制凹所124内から脱離可能となる。このような状態では、止め輪42は、固定位置における最小距離Lminより大きな径方向の通路距離Laで設定された移動通路Fの通過も可能である。
本実施形態において、ストッパリング50は、径方向に縮径かつ拡径可能な板状かつ円環状の弾性体からなるC型止め輪である。図1〜図3に示すように、ストッパリング50は、内輪120の挿入方向手前側の端面120aと、シャフト20との間に装着又は脱離される。詳細には、内輪120の端面120aと、端面120aより引き抜き方向側に配置されるシャフト20の突起部23の凸部側面23aとの間に装着又は脱離される。固定位置において、ストッパリング50は、軸方向両端面50a,50bが、内輪120の端面120aと、シャフト20の突起部23の凸部側面23aと、にそれぞれ当接する。ストッパリング50は、シャフト20への装着時に、ストッパリング50の円周方向において、切欠き部を有する。対向する切欠き部の両端部間には、止め輪42の把持部42a、42bが引き抜き方向に向かって進入し配置される。
ストッパリング50の軸方向の長さは、ストッパリング50を内輪120とシャフト20との間から脱離させた状態で、内輪120に対してシャフト20を挿入方向に移動させ、止め輪42を第一当接面22aと第二当接面124aとの間から脱離可能または第一当接面22aと第二当接面124aとの間に進入可能とする長さであればよい。
なお、内輪120に対するシャフト20の相対位置は、止め輪42がストッパリング50を脱離させた後の空間を通過する場合と、止め輪42が、規制凹所124を出入りする場合とでは、異なる。つまり、止め輪42がストッパリング50を脱離させた後の空間を通過する場合には、シャフト20が、内輪120に対して引き抜き方向に移動することで、通路を確保する。一方、止め輪42が、規制凹所124を出入りする場合には、シャフト20が、内輪120に対して挿入方向に移動することで、第一当接面22aと第二当接面124aとの間の最小距離を拡大させ、出入りの通路を確保する。
このように、ストッパリング50を内輪120とシャフト20との間に装着したときには、ストッパリング50は、内輪120に対するシャフト20の位置を固定位置に規制する。また、ストッパリング50の脱離時には、内輪120に対するシャフト20の挿入方向への移動を許容する。なお、図3に示すように、ストッパリング50の切欠き部の両端部と把持部42a、42bとの間には隙間を設ける。これにより、装着時に縮径するストッパリング50の切欠き部の両端部が把持部42a、42bと意図せず接触し、把持部42a、42bの間の距離Aを狭めることによって止め輪42が縮径してしまうことを防止する。
(3.シャフトと内輪との固定について)
次に、シャフト20と内輪120との固定について詳細に説明する。シャフト20と内輪120とを固定するときには、次の4つの工程により行なう。
(3−1.第一工程)
第一工程では、シャフト20と内輪120との固定のため、まずシャフト20が先端側から内輪120の挿入孔の第一開口部120bから挿入方向に向かって挿入される。そして、シャフト20と内輪120との相対位置を前述した固定位置よりもシャフト20が内輪120に対して挿入方向奥側に挿入された状態とする(図4のシャフト20と内輪120の状態に相当)。これにより、第一当接面22aと第二当接面124aとの間の最小距離が、止め輪42の線径(軸径)より大きくなる。
(3−2.第二工程)
次に、第二工程について図4に基づき説明する。第二工程では、止め輪42の把持部42a、42bが、例えば作業者によって掴まれ、把持部42a、42b間の距離Aが狭められて、止め輪42が所定量だけ縮径される。そして、止め輪42が、シャフト20と内輪120との軸方向の間、即ちストッパリング50を脱離させた後の空間を通って、シャフト20と内輪120との径方向間で形成される移動通路Fに挿入される。このとき、ストッパリング50を脱離させた後の空間は、止め輪42が、通過可能であるように、シャフト20と内輪120との間の距離が軸方向の相対移動によって調整される。
また、止め輪42が、移動通路Fを通過した後、止め輪42の線径より大きな距離を有した状態にされる第一当接面22aと第二当接面124aとの間を通過し、規制凹所124内に進入される。なお、ここにおいても、第一当接面22aと第二当接面124aとの間の距離は、縮径された止め輪42が通過可能となるよう、シャフト20と内輪120との間の距離が軸方向の相対移動によって調整される。そして、規制凹所124内において、止め輪42の把持部42a、42bを離す。これにより、止め輪42が規制凹所124の底面124bまで拡径される。図4の状態は、止め輪42を規制凹所124の底面124bまで拡径させた状態を示す。
(3−3.第三工程)
次に、第三工程について図5に基づき説明する。第三工程では、シャフト20が内輪120に対して引き抜き方向に相対移動され、両者の相対位置関係が固定位置とされる。これにより、止め輪42は、第一当接面22aと第二当接面124aとに挟まれる。このとき、第一当接面22aは、前述したように、第一当接面22aの法線ベクトルV1が、シャフト20の先端側と反対側に向かう軸線ベクトルV2に対して第一角度θ1だけ径方向外方に向くよう形成される(図2参照)。
また、第一当接面22aと第二当接面124aとは、0degを超える第二角度θ2を有して構成される(図2参照)。このため、シャフト20が内輪120に対して引き抜き方向に移動すると、第一当接面22aが、止め輪42を径方向外方に向かう成分を有して押す。つまり、止め輪42は、径方向外方に向かう成分の力を受ける。そして、止め輪42は、径方向外方に向かう成分の力を有しながら第一当接面22aに対して0degを超える第二角度θ2で形成された第二当接面124aを押す。これにより、止め輪42は、第二当接面124aから径方向内方に向かう成分を有する反力を受けるが、第一当接面22aから受ける径方向外方に向かう成分の力より、第二当接面124aから受ける径方向内方に向かう成分の力は小さいので、縮径されることはない。
また、例え、止め輪42を縮径させる何らかの外力が止め輪42に加わっても、固定位置においては、第一当接面22aと第二当接面124aと間の距離は、第一当接面22aと第二当接面124aとの間が径方向内方に行くに従い、且つ、引き抜き方向に行くに従って短くなる。そして、その最小距離Lminは、止め輪42の線径(軸径)より小さい。これにより、止め輪42は楔効果で第一当接面22aと第二当接面124aと間に確実に保持される。このため、止め輪42が第一当接面22aと第二当接面124aと間から脱離することはない。よって、固定位置においては、止め輪42によってシャフト20の内輪120に対する引き抜き方向への相対移動が確実に規制される。
(3−4.第四工程)
そして、最後に第四工程として、ストッパリング50が、内輪120の挿入方向手前側の端面120aと、シャフト20の突起部23との間に装着される(図6参照)。これにより、固定位置において、シャフト20の内輪120に対する挿入方向への相対移動が確実に規制される。このようにして、内輪120に対するシャフト20の各軸方向への移動が完全に規制される。
(4.シャフトと内輪の分解について)
次に、シャフト20及び内輪120の分解について説明する。シャフト20と内輪120とを分解するときには、上記で説明した固定のための4つの工程のうち第三工程を除く3つの各工程の動作を概ね逆に行なうものである。ただし、完全に逆の順序ではない。つまり、はじめに、ストッパリング50を拡径させて脱離させる(第四工程に対応する)。次に、内輪120に対してシャフト20を挿入方向に十分移動させる(第一工程に対応する)。その移動量は、シャフト20と内輪120との位置関係が固定位置を越え、第一当接面22aと第二当接面124aとの間の最小距離が、止め輪42の線径(軸径)よりも大きくなる量である。
次に、止め輪42の把持部42a、42bを掴み、把持部42a、42b間の距離Aを狭めて、拡径していた止め輪42を所定量だけ縮径させる(第二工程に対応する)。そして、縮径した止め輪42が、第一当接面22aと第二当接面124aとの間を通過し、シャフト20と内輪120との間の移動通路Fに移動される。これにより、止め輪42が、第一当接面22aと第二当接面124aとの間から脱離される。
次に、シャフト20が内輪120に対して引き抜き方向に十分移動される。この移動量は、内輪120の挿入方向手前側の端面120aと、シャフト20の突起部23の凸部側面23aとの間の距離が、止め輪42の軸径よりも大きくなる量である。そして、止め輪42を、内輪120の第一開口部120b、及び端面120aと凸部側面23aとの間から脱離させる(第二工程に対応する)。これにより、シャフト20と内輪120とは、挿入方向、及び引き抜き方向にそれぞれ自在に相対移動可能となり、分解可能となる。
上述の説明から明らかなように、上記第一実施形態によれば、シャフト20(軸部材)を内輪120(支持部材)に固定する場合、シャフト20と内輪120との相対移動が可能な状態にて、止め輪42(抜け止め部材)が、シャフト20及び内輪120の間の挿入方向手前側から第一開口部120b及び移動通路Fを通して、第一当接面22aと第二当接面124aとの間に挿入可能となる。これにより、止め輪42が、内輪120に対するシャフト20の引き抜き方向への相対移動を規制可能とする。この状態で、ストッパリング50(ストッパ部材)が、軸線方向において内輪120の挿入方向手前側の端面120aとシャフト20との間に装着される。
これにより、ストッパリング50が、内輪120に対するシャフト20の挿入方向への相対移動を規制する。これらによって、内輪120に対するシャフト20の相対移動が容易に規制できる。また、シャフト20を内輪120から引き抜き分解する場合には、上記の固定の場合と逆であり、ストッパリング50を脱離させ、シャフト20を内輪120に対して挿入方向へ相対移動をさせた状態で、止め輪42が脱離される。これにより、シャフト20と内輪120とが容易に分解できる。
また、上記第一実施形態によれば、止め輪42(抜け止め部材)を第一当接面22aと第二当接面124aとの間から脱離させるときには、内輪120の挿入方向手前側の端面120aから突出する把持部42a,42bを掴み、止め輪42を縮径させて手前側に引き出せばよい。これにより容易に止め輪42を縮径でき、短時間で止め輪42を脱離させることができる。
また、上記第一実施形態によれば、第一当接面22aと第二当接面124aとの距離は、径方向内方に行くに従って短い。これにより、固定位置にある止め輪42(抜け止め部材)は、楔状に係合された第一当接面22aと第二当接面124aとの間で縮径されることなく確実に保持される。このため、軸部材の支持部材に対する引き抜き方向への相対移動(抜け)は発生しない。
また、上記第一実施形態では、ストッパ部材(ストッパリング50)は、C型止め輪である。これにより、低コストで、シャフト20の抜け止め装置が製作できる。
<第二実施形態>
なお、上記第一実施形態においては、第一当接面22aと第二当接面124aとの関係を図2に示すように設定した。つまり、第一当接面22aは、第一当接面22aの法線ベクトルV1が、シャフト20の反先端側の軸線ベクトルV2に対して第一角度θ1だけ径方向外方に向くよう形成された。また、第二当接面124aは第一当接面22aに対して、0degを超える第二角度θ2を有し、且つ対向して形成された。しかしこの態様には限らない。例えば図7に示すように、第二実施形態として、第一当接面122aを第一当接面22aと同様に形成し、第二当接面224aを、第一当接面122aに対して平行となるよう形成してもよい。これにより、固定位置にある止め輪42(抜け止め部材)が、第一当接面22a及び第二当接面124aの両側から軸方向に力を受けても、止め輪42には止め輪42を縮径させる力は作用しない。このため、止め輪42が、縮径しシャフト20(軸部材)と内輪120(支持部材)の間および第一開口部120bを通って脱離し、内輪120に対するシャフト20の引き抜き方向への相対移動(抜け)が発生する虞はない。
<第三実施形態>
また、第三実施形態として、図8に示すように、第一当接面222aを第一当接面22aと同様に形成し、第二当接面324aをシャフト20の軸線と直交するよう形成してもよい。これによっても同様の効果が得られる。
<第四実施形態>
また、上記第一〜第三実施形態では、止め輪42は、把持部42a、42bの間の距離Aを狭めることで縮径する構造であった。しかし、この態様には、限らない。第一実施形態を説明する図3に対応する図9に示すように、第一実施形態に対し、止め輪242において、把持部242a、242bが移動通路Fで交差される態様としてもよい。これにより、止め輪242は、把持部242a、242bの間の距離を狭めることで、止め輪242は拡径する。この態様を第四実施形態とする。なお、把持部242a、242bが交差する部分では、両把持部242a、242bをそれぞれ交差する方向に潰す等の所定の手段によって交差を成立させるものとする。
この場合、シャフト20と内輪120とを固定するために、第一当接面22a,122a,222aと第二当接面124a,224a,324aとの間に止め輪242を縮径させて挿入する際、把持部242a、242bでは、両者の間の距離Aが広げられる。このようにして、止め輪242が、内輪120の第一開口部120bを通って、第一当接面22a,122a,222aと、第二当接面124a,224a,324aとの間に配置される。そして、装着時に縮径するよう形成されたストッパリング50の円周方向における開口部両端面が、把持部242a、242bにそれぞれ図9に示すように当接される。これにより、止め輪242は、ストッパリング50によって少なくとも縮径されることが規制される。このため、止め輪242が意図せぬ縮径によって、第一当接面22a,122a,222aと第二当接面124a,224a,324aとの間から脱離することが防止できる。
また、上記各実施形態においては、抜け止め部材として、断面形状が円形の止め輪42が適用された。しかしこの態様には、限らない。抜け止め部材は、断面形状が矩形の角形状線材であってもよい。この場合、移動通路Fは、固定位置における第一当接面22aと第二当接面124aとの間の最小距離Lminよりも小さな通路距離で設定されてもよい。
また、上記各実施形態においては、ストッパ部材(ストッパリング50)が、内輪120の端面120aと、端面120aよりさらに挿入方向手前側に配置されるシャフト20の突起部23の凸部側面23aと、の間に装着された。しかし、この態様には限らない。つまり、図2における、シャフト20の外周に設けられた突起部23を廃止してもよい。このとき、シャフト20に、凸部側面23aに相当する部位が少しでも形成されていればよい。これにより、ストッパリング50の挿入方向手前側の端面50bの受け面積が、突起部23を廃止した分だけ小さくなるが、上記各実施形態と同様の効果が期待できる。
また、上記各実施形態においては、ストッパ部材(ストッパリング50)をC型止め輪としたが、この態様には限らない。ストッパ部材は、装着時に内輪120(支持部材)に対するシャフト20(軸部材)の位置を固定位置に規制し、且つ、脱離時に内輪120に対するシャフト20の挿入方向への移動を許容することを可能とする部材であればよい。例えば、ストッパ部材は、ナットでもよい。具体的には、シャフト20の突起部23がナットに置き換わればよい。ナットをシャフト20の外周面に形成した雄ねじと螺着させ、ナットの軸周りの回転によってナットの軸方向への移動を可能とする。
このような状態で、内輪120に対するシャフト20の位置を固定位置に規制するときには、ナットの挿入方向奥側の端面を固定位置に位置する内輪120の挿入方向手前側端面120aと当接させる。また、内輪120に対するシャフト20の挿入方向への移動を許容する場合には、ナットを回転させ、ナットの挿入方向奥側の端面が、上記各実施形態における突起部23の凸部側面23aと同じ位置となるよう移動させればよい。これによっても、同様の効果が得られる。
また、上記各実施形態においては、抜け止め装置40が適用されるボール型等速ジョイント10が、ドライブシャフトの中間シャフトと車輪のハブユニットとの間、つまり、アウトボード側に設けられるものとして説明した。しかし、この態様には限らない。ボール型等速ジョイント10が、車両のディファレンシャルギヤに連結された軸部とドライブシャフトの中間シャフトとの連結部位に設けられるもの、つまり、インボード側に設けられてもよい。
また、上記各実施形態においては、等速ジョイントがボール型等速ジョイントでなく、トリポード型等速ジョイントでもよい。このとき、支持部材はトリポード(内側部材)であり、軸部材は、中間シャフトである。そして、そのトリポード型等速ジョイントはインボード側及びアウトボード側のいずれに設けられてもよい。このような構成においても同様の効果を奏する。
1・・・等速ジョイント組立体、 10・・・ボール型等速ジョイント、 20・・・軸部材(シャフト)、 21・・・雄スプライン、 22a,122a,222a・・・第一当接面、 40・・・抜け止め装置、 42,242・・・抜け止め部材(止め輪)、 42a,42b,242a,242b・・・把持部、 50・・・ストッパ部材(ストッパリング)、 120・・・支持部材(内輪)、 123・・・雌スプライン、 124a,224a,324a・・・第二当接面、 V1・・・法線ベクトル、 V2・・・軸線ベクトル、 θ1・・・第一角度、 θ2・・・第二角度。

Claims (6)

  1. 嵌合範囲において、先端側と反対方向を向く面であって、当該面の法線ベクトルが前記先端側と反対方向に向かう軸線ベクトルに対して第一角度だけ径方向外方に向くように形成された第一当接面を備える軸部材と、
    前記軸部材の先端側を挿入可能な第一開口部を有する筒状に形成され、前記軸部材の固定位置において内周面に前記第一当接面に対して第二角度を有して対向する第二当接面を備える支持部材と、
    径方向に縮径可能なリング状に形成され、前記固定位置で前記第一当接面及び前記第二当接面に挟まれた状態にて前記軸部材を前記支持部材の前記第一開口部から引き抜く方向への移動を規制し、且つ、前記固定位置よりも前記軸部材の先端側が前記支持部材の前記第一開口部より奥側へ移動した位置において前記固定位置における状態よりも縮径した状態にて前記第一開口部から脱離可能な抜け止め部材と、
    前記支持部材の前記第一開口部側の端面と前記軸部材との間に装着可能であり、装着時に前記支持部材に対する前記軸部材の位置を前記固定位置に規制し、且つ、脱離時に前記支持部材に対する前記軸部材の挿入方向への移動を許容するストッパ部材と、
    を備える、軸部材の抜け止め装置。
  2. 前記第一当接面と前記第二当接面との距離は、径方向内方に行くに従って短い、請求項1に記載の軸部材の抜け止め装置。
  3. 前記第一当接面と前記第二当接面とは、平行である、請求項1に記載の軸部材の抜け止め装置。
  4. 前記抜け止め部材は、前記抜け止め部材の縮径に連動する把持部を備え、
    前記把持部は、少なくとも前記固定位置において前記支持部材の前記第一開口部から突出する、請求項1〜3の何れか1項に記載の軸部材の抜け止め装置。
  5. 前記ストッパ部材は、C型止め輪である、請求項1〜4の何れか1項に記載の軸部材の抜け止め装置。
  6. 等速ジョイントの内側部材と前記内側部材に連結されるシャフトとが、請求項1〜5の何れか1項に記載の軸部材の抜け止め装置によって固定された等速ジョイント組立体であって、
    前記内側部材は、前記支持部材であり、
    前記シャフトは、前記軸部材である、等速ジョイント組立体。
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