JP2015229786A - アルミニウム又はアルミニウム合金に皮膜を形成する方法、それに用いる前処理液、およびそれに得られる部材 - Google Patents

アルミニウム又はアルミニウム合金に皮膜を形成する方法、それに用いる前処理液、およびそれに得られる部材 Download PDF

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Abstract

【課題】 封孔処理後の陽極酸化皮膜の表面の色調変化を防ぎ、封孔処理を短時間にでき、封孔処理液のpHの管理も容易にできる、アルミニウム又はアルミニウム合金に皮膜を形成する方法、それに用いる前処理液、およびそれに得られる部材を提供する。【解決手段】 アルミニウム又はその合金10の表面に皮膜20を形成するために、先ず、アルミニウムの表面に陽極酸化皮膜22を形成し、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム又はその合金を、前処理液に浸漬して前処理を行い、前処理を行ったアルミニウム又はその合金の表面の陽極酸化皮膜を、リチウムイオンを含む封孔処理液で封孔処理する。前処理液は、リン酸イオンと反応調整剤とを含むとともに、中性から酸性の範囲のpHを有している。反応調整剤は、カルボキシ基を有する化合物もしくはその塩又は水溶液中で水酸化物イオンを生じる化合物を含む。これによって皮膜孔24内に封孔生成物を均等に生成することができる。【選択図】 図1

Description

本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金に皮膜を形成する方法、それに用いる前処理液、およびそれに得られる部材に関し、さらに詳しくは、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に形成した陽極酸化皮膜に存在する孔を塞ぐための封孔処理に関する。
アルミニウムやアルミニウム合金の耐食性を向上させる方法として陽極酸化処理がある。陽極酸化処理によって、このアルミニウム又はアルミニウム合金の表面に陽極酸化皮膜が形成されるが、この陽極酸化皮膜は、微細な孔が多数存在する多孔質層を有し、耐食性低下の一因となっている。よって、更なる耐食性の向上を目的として、陽極酸化処理後に微細な孔を塞ぐ封孔処理が行われている。
封孔処理方法としては、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム部材を、沸騰水に浸漬する高温水和型の封孔処理方法がある。しかし、この方法は、処理時間が10分以上必要であること、沸騰水の沸騰状態を維持するために多量のエネルギーが必要であることが問題であった。そこで、これらの問題を解決するために、特開2010−077532号公報に開示するように、封孔処理液として、リチウムイオンを含む水溶液を用いる方法が開発された。この封孔処理方法では、処理液の温度を25℃、処理時間を1分としても封孔処理を行えるため、生産効率やエネルギー消費の観点において優れている。
また、特開2013−1957号公報には、アルミニウム部材の表面に形成された陽極酸化皮膜の表面を封孔処理する方法が開示されており、この方法で使用する封孔処理液は、リチウムイオンと、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等から選択された反応促進剤Aとポリビニルアルコール等から選択された反応促進剤Bの二種類の反応促進剤とを含有している。また、反応条件として、封孔処理液を弱アルカリ性のpH8.0〜10.0にすることや、封孔処理液への浸漬時間が30分であることが記載されている。
特開2010−077532号公報 特開2013−1957号公報
特開2010−077532号公報に開示されているリチウムイオンを用いた封孔処理方法は、陽極酸化皮膜を一部溶かし、リチウムイオンとの化合物を生成させて急速に封孔する方法である。そのため、孔内に生成される封孔生成物の量が孔底部と表面部でバラついてしまい、陽極酸化皮膜の表面付近に大量の封孔生成物が生成することによって、封孔後の陽極酸化皮膜が白く曇った色調に変化する。結果的に、陽極酸化皮膜上に無色塗装を施す場合や無塗装の場合に外観性が低下するという問題がある。
特開2013−1957号公報に開示されている封孔処理方法は、陽極酸化皮膜が白く曇った色調に変化してしまうことを防ぐことができるものの、以下の問題点がある。封孔処理液が弱アルカリ性のpH8.0〜10.0であることから、陽極酸化処理の後に水洗をしても、処理対象物に陽極酸化処理液が残存するため、次工程での封孔処理液に、強酸性もしくは強塩基性の陽極酸化処理液が混入することが避けられず、よって、封孔処理液のpHが大きく変動し、所定のpHの範囲内に維持することが困難である。封孔処理液のpHが12.0の場合、陽極酸化皮膜の表層部で皮膜溶解が発生して、表面が白くムラのある仕上がりとなることが記載されている。
そこで、本発明の目的は、封孔処理後の陽極酸化皮膜の表面の色調変化を防ぐことができ、封孔処理にかかる時間も短くすることができ、更に、封孔処理液のpHの管理も容易に行うことができる、アルミニウム又はアルミニウム合金に皮膜を形成する方法、それに用いる前処理液、およびそれに得られる部材を提供することである。
上記の目的を達成するため、本発明は、その一態様として、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に皮膜を形成する方法であって、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に陽極酸化皮膜を形成する工程と、前記陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金を、前処理液に浸漬して前処理を行う工程と、前記前処理を行ったアルミニウム又はアルミニウム合金の表面の陽極酸化皮膜を、リチウムイオンを含む封孔処理液で封孔処理する工程とを含み、前記前処理液は、リン酸イオンと、反応調整剤とを含むとともに、中性から酸性の範囲のpHを有しており、前記反応調整剤は、カルボキシ基を有する化合物もしくはその塩又は水溶液中で水酸化物イオンを生じる化合物である。
前記リン酸イオンの濃度は0.1〜4.0mol/Lが好ましい。前記反応調整剤の濃度は、0.05mol/L以上が好ましい。前記前処理液の温度は、10〜50℃とすることが好ましい。前記前処理液に浸漬する時間は、1.5分以上とすることが好ましい。前記カルボキシ基を有する化合物は、カルボン酸もしくはその塩とすることが好ましい。前記水溶液中で水酸化物イオンを生じる化合物は、水酸化物とすることが好ましい。前記陽極酸化皮膜は、3〜40μmの厚さを有してもよい。前記封孔処理工程において、前記陽極酸化皮膜の表面に存在する孔内に封孔生成物が生成し、この封孔生成物は、少なくともLiH(AlO・5HOを含むリチウム−アルミニウム水和物であってもよい。前記前処理液は緩衝液とすることが好ましい。
本発明は、別の態様として、リチウムイオンを含む封孔処理液を用いて陽極酸化皮膜の封孔処理を行う際のその前処理に用いる前処理液であって、この前処理液は、リン酸イオンと反応調整剤とを含むとともに、中性から酸性の範囲のpHを有しており、前記反応調整剤が、カルボキシ基を有する化合物もしくはその塩又は水溶液中で水酸化物イオンを生じる化合物を含むものである。
本発明は、更に別の態様として、アルミニウム又はアルミニウム合金と、その表面に形成された陽極酸化皮膜とを備えたアルミニウム又はアルミニウム合金部材であって、前記アルミニウム又はアルミニウム合金に形成された陽極酸化皮膜の表面の孔は、封孔生成物で封孔されており、この封孔生成物は、リチウム−アルミニウム水和物を含み、前記リチウム−アルミニウム水和物は、前記孔内において、陽極酸化皮膜の表面から孔底部まで均等に生成している。
このように本発明によれば、封孔処理工程の前に前処理工程を行い、この前処理工程での前処理液に、リン酸イオンと反応調整剤とを添加し、且つ中性から酸性の範囲のpHとし、また、反応調整剤として、カルボキシ基を有する化合物もしくはその塩又は水溶液中で水酸化物イオンを生じる化合物を用いることで、前処理工程において陽極酸化皮膜にリン酸イオンが適度に取り込まれ、このリン酸イオンは、封孔処理工程で生成するリチウム−アルミニウム水和物などの封孔生成物の生成を抑制する効果があり、よって、陽極酸化皮膜表面に存在する複数の微細な孔内に、皮膜表面から孔底部まで、均等に封孔生成物を生成させることができる。これによって、陽極酸化皮膜の色調が変化することを防ぐことができる。また、前処理工程および封孔処理工程は、数分程度の短時間であり、前処理液は中性から酸性の範囲のpHであることから、封孔処理液のpHの管理も容易に行うことができる。
本発明に係る皮膜形成方法によって得られる封孔処理された陽極酸化皮膜を模式的に示す断面図である。 従来の皮膜形成方法によって得られる封孔処理された陽極酸化皮膜を模式的に示す断面図である。 実施例および対照例において、封孔処理された陽極酸化皮膜の表面外観を示す写真である。 実施例において、封孔処理された陽極酸化皮膜の表面を写した電子顕微鏡写真である。 実施例および比較例において、耐食性試験での封孔処理された陽極酸化皮膜の表面外観を示す写真である。
以下、本発明に係る皮膜形成方法の一実施の形態について説明する。本実施の形態の皮膜形成方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に陽極酸化皮膜を形成する工程と、この陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金を、前処理液に浸漬して前処理を行う工程と、この前処理を行ったアルミニウム又はアルミニウム合金の表面の陽極酸化皮膜を封孔処理液で封孔処理する工程とを含むものである。
皮膜を形成する対象物は、アルミニウムの他、アルミニウム合金でもよい。アルミニウム合金としては、特に限定されず、シリコンや銅などの成分を広く含むことができる。また、アルミニウム又はアルミニウム合金の製法も、特に限定されず、展伸材や、鋳造材、ダイカスト材でも本方法を適用することができる。
陽極酸化皮膜の形成工程では、陽極酸化処理液中で、アルミニウム又はアルミニウム合金を作用電極として、陽極酸化処理液を電気分解する。これによって、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に、酸化アルミニウムを主成分とした陽極酸化皮膜を形成することができる。陽極酸化処理液としては、特に限定されず、例えば、硫酸、シュウ酸、リン酸、クロム酸等の酸性浴や、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム等のアルカリ性浴のいずれを用いてもよい。
電気分解の方法は、特に限定されず、直流電解、交流電解、交直重畳電解、Duty電解などのいずれを用いてもよい。また、電解処理後、水洗を最低1回は行うことが好ましい。水洗を行うことでアルミニウム又はアルミニウム合金に付着している陽極酸化処理液をある程度除去し、又は除去できなかった処理液の濃度も薄くし、次工程への混入量を減らすことができる。水洗で用いる水は、イオン交換水や純水などの不純物が少ない水が好ましい。
陽極酸化皮膜の膜厚は、特に限定されないが、3〜40μmが好ましい。陽極酸化皮膜にリチウムイオンを用いて封孔処理を行うため、陽極酸化皮膜はある程度の厚さが必要である。陽極酸化皮膜の厚さが3μm以上であれば、リチウムイオンを用いて封孔処理を行なっても、陽極酸化皮膜が消失することがない。また、少なくとも40μmの厚さがあれば、アルミニウム又はアルミニウム合金の皮膜として十分な機能を発揮することができるとともに、皮膜形成に必要な時間が短くてすみ、生産性を向上させることができる。
前処理工程では、この陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金を、陽極酸化皮膜の封孔処理をする前に、リン酸イオンと反応調整剤とを含み、酸性から中性の範囲のpHを有する前処理液に浸漬する。
このような前処理液に陽極酸化皮膜を浸漬することによって、陽極酸化皮膜の表面および孔内にリン酸イオンが取り込まれる。リン酸イオンは、水和反応を抑制する効果があるため、大量の水分子が必要な封孔生成物であるリチウム−アルミニウム水和物の生成反応が穏やかになり、孔内の孔底部と表面部での封孔生成物の生成量のバラつきを抑えることができる。そのため、皮膜に当たった光の反射や屈折による陽極酸化皮膜の色調変化を抑えることができる。
リン酸イオン源としては、水に可溶なリン酸イオンを含むリン酸またはリン酸塩が好ましい。例えば、オルトリン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸リチウム、リン酸アンモニウム等が挙げられる。好ましくは、安価で扱いやすいという観点から、リン酸のナトリウム塩であり、より好ましくはリン酸二水素ナトリウムである。
前処理液のリン酸イオンの濃度は、0.1〜4.0mol/Lが好ましい。リン酸イオンの濃度を0.1mol/L以上とすることで、陽極酸化皮膜にリン酸イオンが必要量取り込まれて、水和反応を抑制する効果を発揮することができる。また、リン酸イオンの濃度を4.0mol/L以下とすることで、陽極酸化皮膜にリン酸イオンが取り込まれ過ぎることを防ぐことができ、次工程の封孔処理の反応を適切に進行させることができる。
このようにリン酸イオンは水和反応を抑制する効果があるため、必要以上に陽極酸化皮膜に取り込まれると、封孔処理時間の長時間化や封孔反応の停止を招き得る。しかしながら、リン酸イオンの濃度の調整のみでは、陽極酸化皮膜に取り込まれるリン酸イオンの量を完全に調整するのは難しい。そこで、本発明では、前処理液に反応調整剤を添加し、陽極酸化皮膜にリン酸イオンが過剰に取り込まれることを防いでいる。
反応調整剤は、カルボキシ基を有する化合物もしくはその塩または水溶液中で水酸化物イオンを生じる化合物である。このようなカルボキシ基を有する化合物や、水溶液中で水酸化物イオンを生じる化合物は、陽極酸化皮膜と前処理液の固液界面において、カルボキシ基や水酸化物イオン単体がリン酸イオンを適度に消費させ、これによって、リン酸イオンが陽極酸化皮膜に過剰に取り込まれるのを防ぐことができる。
カルボキシ基を有する化合物としては、扱いやすく、酸性であるため、カルボン酸が好ましい。カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの飽和カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸などのジカルボン酸、安息香酸、サリチル酸、フタル酸、トリメシン酸などの芳香族カルボン酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸などのヒドロキシ酸、その他、ピルビン酸、アセト酢酸、アコニット酸など、広く用いることができる。また、安息香酸やサリチル酸などの水への可溶性が比較的に低い化合物は、これに代えて、安息香酸ナトリウムやサリチル酸ナトリウムなどのカルボン酸塩を用いてもよい。
水溶液中で水酸化物イオンを生じる化合物としては、アンモニアや、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩、水酸化物イオンを生じる金属塩など、広く用いることができる。水溶液中で水酸化物イオンを生じる化合物の中でも、水に可溶で、扱いやすいことから、水酸化物が好ましい。水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。中でも、手に入れやすく、安価であることから、水酸化ナトリウムが好ましい。
反応調整剤は、カルボキシ基とヒドロキシ基の両方を有する化合物であってもよい。このような化合物としては、上述したクエン酸、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸などのヒドロキシ酸や、サリチル酸などの芳香族ヒドロキシ酸がある。この中でも入手のしやすさや取扱いが容易なことから、クエン酸が好ましい。
前処理液の反応調整剤の濃度は、0.05mol/L以上が好ましい。0.05mol/L以上の濃度とすることで、リン酸イオンが過剰に陽極酸化皮膜に取り込まれることを防ぐことができる。反応調整剤の濃度の上限は、特に限定されないが、反応調整剤の濃度が高すぎると、前処理液の粘度が高くなり、水洗で前処理液を除去することが難しくなる。よって、反応調整剤の濃度の上限は、10mol/L以下とすることが好ましく、7mol/L以下がより好ましく、4mol/L以下が更に好ましい。
リン酸イオンの濃度と反応調整剤の濃度の比率は、特に限定されないが、例えば、リン酸イオン:反応調整剤を1:0.25〜1:4の範囲としてもよい。
前処理液のpHは、酸性から中性の範囲、例えば、pH1〜7とする。これは、前処理液のpHがアルカリ性である場合、次工程の封孔処理に悪影響を及ぼして陽極酸化皮膜に存在する孔が適切に塞がれなかったり、皮膜の色調変化が起きてしまうおそれがあるからである。また、前処理液を酸性から中性の範囲とすることで、例えば、カルボン酸塩を前処理液に加えた際には前処理液中でカルボン酸塩がカルボキシラートアニオンと金属イオンに電離し、この電離した状態にあるカルボキシラートアニオンの平衡がカルボキシ基へと傾き、リン酸イオンが陽極酸化皮膜に過剰に取り込まれることを防ぐ効果がある。
また、前処理液のpHは、弱酸性から中性の範囲、例えば、pH5〜7にすることが好ましい。このように前処理液を弱酸性から中性にすることで、前処理液が次工程の封孔処理液に混入しても、封孔処理液のpHの変化を抑えることができる。
前処理液のpHを酸性から中性の範囲にするために、リン酸イオンおよび反応調整剤の種類および濃度などを調整する他に、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸などの酸や、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニアなどの塩基を用いてもよい。なお、このようなpHを調整する酸や塩基には、ケイ酸ソーダなどのケイ酸化合物を用いることはできない。ケイ酸化合物を用いると、封孔処理を阻害する可能性がある。
また、前処理液は共役塩基として作用するリン酸イオンを含んでいることから、リン酸イオンと弱酸または弱塩基とを組み合わせて緩衝液としてもよい。pHが5〜7の弱酸性から中性の領域に広い緩衝能をもつリン酸緩衝液にすることで、強酸性または強アルカリ性の陽極酸化処理液が前処理液に混入しても、前処理液のpHが変化するのを抑えることができ、前処理液のpHを所定の範囲内に維持することができる。
前処理液の温度は、特に限定されないが、10〜50℃が好ましい。10℃以上にすることで、前処理液中におけるリン酸イオンの活動を活発にし、リン酸イオンを陽極酸化皮膜に適切に取り込むことができる。また、50℃以下にすることで、陽極酸化皮膜にリン酸イオンが大量に取り込まれてしまうことを防止できるとともに、前処理液中で陽極酸化皮膜が溶解して表面に微小な凹凸ができることによる皮膜の色調変化を防ぐことができる。前処理液の温度は、15〜40℃がより好ましい。この温度範囲にすることで、温度維持がより簡単にでき、また、常温に近いために温度の維持に必要なエネルギーを少なくすることができる。
前処理液に浸漬する時間は、1.5分以上が好ましい。浸漬時間を1.5分以上とすることで、前処理液中のリン酸イオンを陽極酸化皮膜に十分に取り込むことができる。浸漬時間の上限は、特に限定されないが、生産効率を考慮すると、20分以下が好ましい。
前処理液に浸漬した後、陽極酸化皮膜の形成工程と同じように、水洗を最低1回行ってから次工程の封孔処理を行うことが好ましい。
封孔処理工程では、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に形成された陽極酸化皮膜を、リチウムイオンを含む封孔処理液で封孔処理し、これによって、陽極酸化皮膜の表面に存在する微細な孔を塞ぐことができる。リチウムイオン源としては、硫酸リチウム、塩化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、リン酸リチウム、水酸化リチウムまたはそれらの水和物などを使用することができる。これらの中でも、水溶液がアルカリ性で且つ毒性がないことから、水酸化リチウム、炭酸リチウムが好ましい。
封孔処理液のリチウムイオン濃度は、0.02〜20g/Lが好ましく、0.08〜10g/Lがより好ましい。封孔処理液のpHは、10.5以上が好ましく、11以上がより好ましく、12以上がさらに好ましい。pHの上限は、特に限定されないが、14以下が好ましい。リチウムイオン源によってpHが異なるため、硫酸、シュウ酸、クロム酸などの酸や、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、フッ化ナトリウムなどの塩基を用いて、封孔処理液のpHを調整することができる。
封孔処理の方法は、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金を封孔処理液に浸漬したり、陽極酸化皮膜の表面に封孔処理液をスプレーしたり、筆などで塗布したりなどして、封孔処理液を陽極酸化皮膜に付着させればよい。封孔処理液の温度は、10〜65℃が好ましく、25〜50℃がより好ましい。封孔処理の時間は、0.5〜5分が好ましい。封孔処理液を付着させた後、陽極酸化皮膜を水洗または湯洗し、エアブローや乾燥機などで乾燥させることが好ましい。
このような封孔処理によって、図1に示すように、アルミニウム又はアルミニウム合金10に形成された陽極酸化皮膜22の表面に存在する複数の微細な孔24内に、皮膜表面から孔底部まで均等に封孔生成物26を生成させることができる。封孔生成物26としては、リチウム−アルミニウム水和物26aや、ベーマイト26bである。リチウム−アルミニウム水和物26aとしては、例えば、LiH(AlO・5HOがある。また、ベーマイト26bとしては、例えば、AlO・OHがある。
このLiH(AlO・5HOは5水和物であり、生成にはリチウム分子に対して5当量分の水分子が必要である。前処理工程において陽極酸化皮膜に取り込まれたリン酸イオンは、水和反応を抑制する効果があり、多くの水分子が必要なリチウム−アルミニウム水和物の生成に与える影響が大きく、リチウム−アルミニウム水和物の生成反応を穏やかにすることができる。その結果、陽極酸化皮膜の色調の変化を抑えるための条件(リン酸や反応抑制剤の必要量、浸漬時間、溶液温度)を少なく、短く、低くすることができる。
また、封孔生成物26は、上述したように、リチウム-アルミニウム水和物26aの他、ベーマイト26bを含む。従来の方法では、図2に示すように、陽極酸化皮膜22の表面付近に大量のリチウム−アルミニウム水和物26aが生成してしまうことから、光の屈折等に影響を与え、皮膜は白く見える。一方、本発明では、図1に示すように、陽極酸化皮膜の孔24内に、リチウム−アルミニウム水和物26aが均等に生成しているので、結果的に封孔処理による陽極酸化皮膜の色調の変化を抑えることができる。このように、本発明によれば、陽極酸化皮膜の色調が変化することを防ぎ、且つ耐食性の高いアルミニウム又はアルミニウム合金部材を製造することができる。
(試験例1:前処理液の反応調整剤の影響について)
試験片としてアルミニウム合金A1100材を用いた。これは、合金成分が多く含まれていると、合金成分の影響で陽極酸化皮膜に黒色や黄色などの色が付くので、合金成分がほとんど含まれておらず透明な皮膜ができるA1100材を用いることで、本発明による効果(色調変化抑制)を目視で容易に判断できるようにするためである。
試験例1では、このA1100材の試験片を、200g/Lの濃度の硫酸浴に陽極として浸漬し、電流密度1.5A/dmの直流電流を10分間通電した。これにより、10μmの厚さの陽極酸化皮膜が試験片の表面に形成された。次に、前処理のために、表1に示す各種リン酸イオン源(試薬1)および反応調整剤(試薬2)を用いて、リン酸イオンの濃度が0.5mol/L、反応調整剤の濃度が0.25又は0.5mol/L、pHが1〜5となる水溶液である前処理液(20℃)を調製した。なお、水溶液がアルカリ性の場合は、硫酸を添加してpHが酸性になるように調整した。この前処理液に試験片を5分間浸漬した後、この前処理した試験片を、リチウムイオンの濃度が0.8g/L、pHが13の水溶液である封孔処理液(20℃)に、1分間浸漬した(実施例1〜9)。
なお、比較のため、本発明の反応調整剤に該当しない化合物を用いて前処理液を調製した点を除き、上述の実施例と同様に試験片の一連の処理を行った(比較例1〜2)。
実施例および比較例の各試験片について、陽極酸化皮膜の色調変化が抑制されているか、また、陽極酸化皮膜が封孔されているかの評価を行った。皮膜の色調変化抑制の評価は、以下の対照例1および対照例2の試験片との色調の比較を目視で行った。
対照例1は、陽極酸化処理のみの試験片である。具体的には、対照例1は、濃度200g/Lの硫酸浴にA1100材の試験片を陽極として浸漬し、電流密度1.5A/dmで直流電流を10分間通電することにより、10μmの陽極酸化皮膜を形成したものである。
対照例2は、陽極酸化処理後に、前処理を行わずに封孔処理を行った試験片である。具体的には、対照例2は、濃度200g/Lの硫酸浴にA1100材の試験片を陽極として浸漬し、電流密度1.5A/dmで直流電流を10分間通電することにより、10μmの陽極酸化皮膜を形成した後、リチウムイオン濃度0.8g/L、pH13、温度20℃の封孔処理液に1分間浸漬して封孔処理を行ったものである。
皮膜の色調変化が抑制できたかどうかの評価基準は、目視にて、実施例または比較例の試験片の色合いが、対照例1の試験片に近い場合は効果があるとし(表中、○印)、対照例2に近い場合は効果がない(表中、×印)と判断した。対照例1と対照例2の各試験片の外観、および参考のために効果があると判断した試験片の外観(後述する実施例40)を図3に示す。
また、封孔状態は、陽極酸化皮膜の表面を電子顕微鏡にて観察し、陽極酸化皮膜が封孔されているか確認した。なお、封孔処理によって、陽極酸化皮膜の表面に存在する複数の微細な孔を塞ぐのに十分な封孔生成物が生成すると、図4に示すように、陽極酸化皮膜の表面に薄片状の物質が観察される。よって、本試験では、この薄片状の物質の有無で封孔状態の評価を行った。以上の各評価の結果を表1に示す。
表1に示すように、各種リン酸イオン源とカルボン酸または水溶液中で水酸化物イオンを生じる各種化合物とを用いて前処理液を調製した実施例1〜9では、陽極酸化皮膜の色調変化を抑制しつつ封孔を行うことができた。一方、硫酸やホウ酸といったカルボキシ基有しておらず、また、水溶液中で水酸化物イオンが単体では生じない化合物を用いて前処理液を調製した比較例1〜2では、皮膜に取り込まれるリン酸イオン量の調整を行うことができず、大量にリン酸イオンが取り込まれ、十分に封孔することができなった。
(試験例2:前処理液のpHの影響について)
前処理液として、リン酸とクエン酸を用いて、リン酸イオンの濃度が0.5mol/L、カルボン酸の濃度が0.25mol/Lになるように水溶液(20℃)を調製し、更にこれに水酸化ナトリウムを0〜3.5mol/Lの範囲で添加することで、水溶液のpHを1〜13に変化させた前処理液を調製した点を除き、上述した試験例1と同様に試験片の一連の処理を行った(実施例1、実施例10〜14、比較例3〜6)。そして、これら実施例および比較例の各試験片について、試験例1と同様に、皮膜の色調変化の抑制の評価および封孔状態の評価を行った。その結果を表2に示す。
表2に示すように、前処理液のpHが1〜7の酸性から中性の範囲である実施例1、10〜14では、陽極酸化皮膜の色調変化を抑制しつつ封孔を行うことができた。特にpHが2〜4のときは、変色抑制効果が高く、より好ましい結果が得られた。溶液のpHが8以上である比較例4〜7では、皮膜表面が前処理液に溶解して微小な凹凸が多数生成し、皮膜の色調が変化するため好ましくない。さらにpHが8以上の比較例3〜6では、封孔もされていなかった。これはアルカリ性の前処理液に浸漬することで陽極酸化皮膜もアルカリ性を帯びるようになり、皮膜と同じアルカリ性の封孔処理液に対してpH勾配が無くなるため、封孔処理液が皮膜内部に浸透されにくくなったためと考えられる。
(試験例3:前処理液の濃度の影響について)
リン酸二水素ナトリウムまたはリン酸を用いてリン酸イオンの濃度が0〜5mol/Lになるように、またクエン酸(カルボン酸)または水酸化ナトリウム(水酸化物)を用いてその濃度が0〜3mol/Lになるように前処理液を調製した点を除き、上述した試験例1と同様に試験片の一連の処理を行った(実施例3、実施例15〜33、比較例7〜13)。なお、前処理液のpHは3〜4であった。そして、これら実施例および比較例の各試験片について、試験例1と同様に、皮膜の色調変化の抑制の評価および封孔状態の評価を行った。その結果を表3に示す。
表3に示すように、リン酸イオンの濃度が0.1〜4mol/Lで、且つカルボン酸または水酸化物の濃度が合計で0.05〜4mol/Lである実施例3、15〜33では、陽極酸化皮膜の色調変化を抑制しつつ封孔を行うことができた。一方、リン酸イオンの濃度が0.1mol/L未満である比較例10〜12では、皮膜に取り込まれるリン酸イオンの量が少なくなるため、封孔反応が急速に進行してしまい、その結果、皮膜が白く変色していた。また、リン酸イオンの濃度が4mol/Lを超える比較例13や、カルボン酸や水酸化物の濃度が0.05mol/L未満である比較例7〜9では、リン酸イオンが過剰に皮膜に取り込まれてしまうため、封孔されていなかった。
(試験例4:前処理液の温度の影響について)
リン酸二水素ナトリウムとクエン酸を用いて、リン酸イオンの濃度が0.5mol/L、カルボン酸の濃度が0.25mol/Lであり、pHが3となるように前処理液を調製した点、及び前処理液の温度を5〜60℃の範囲で変化させて試験片を浸漬した点を除き、上述した試験例1と同様に試験片の一連の処理を行った(実施例3、実施例34〜37、比較例14〜15)。そして、これら実施例および比較例の各試験片について、試験例1と同様に、皮膜の色調変化の抑制の評価および封孔状態の評価を行った。その結果を表4に示す。
表4に示すように、前処理液の温度を10〜50℃とした実施例3、34〜37では、陽極酸化皮膜の色調変化を抑制しつつ封孔を行うことができた。一方、温度を10℃未満とした比較例14では、前処理液中におけるリン酸イオンの活動が鈍く、リン酸イオンが皮膜に取り込まれにくく、そのため、急速な封孔反応を抑制できず、皮膜の色調が変化した。また、温度を50℃超とした比較例15では、リン酸イオンの活動が活発になり過ぎ、リン酸イオンが大量に皮膜へ取り込まれることから、封孔されていなかった。また、前処理液に陽極酸化皮膜が溶解して表面に微小な凹凸が多数でき、皮膜の色調が変化した。
(試験例5:前処理液への浸漬時間の影響について)
リン酸二水素ナトリウムとクエン酸を用いて、リン酸イオンの濃度が0.5mol/L、カルボン酸の濃度が0.25mol/Lであり、pHが3となるように前処理液を調製した点、及び前処理液への試験片の浸漬時間を1〜20分の範囲で変化させた点を除き、上述した試験例1と同様に試験片の一連の処理を行った(実施例3、実施例38〜43、比較例16)。そして、これら実施例および比較例の各試験片について、試験例1と同様に、皮膜の色調変化の抑制の評価および封孔状態の評価を行った。その結果を表5に示す。
表5に示すように、前処理液への浸漬時間を1.5分以上とした実施例3、28〜43では、陽極酸化皮膜の色調変化を抑制しつつ封孔を行うことができた。一方、浸漬時間を1.5分未満とした比較例16では、陽極酸化皮膜に取り込まれるリン酸イオンの量が少なく、封孔反応を抑制することができず、よって、皮膜の色調が変化した。
(試験例6:耐食性試験)
試験例1〜5で用いたアルミニウム合金A1100材は腐食し難い合金であるため、耐食性を評価する試験例6では、汎用的に用いられるアルミニウム合金の1つであるADC12材を試験片として用いた。この試験例6では、このADC12材の試験片を、200g/Lの濃度の硫酸浴に陽極として浸漬し、電流密度1.5A/dmの直流電流を10分間通電した。これにより、4μmの厚さの陽極酸化皮膜が試験片の表面に形成された。次に、前処理のために、リン酸二水素ナトリウムのみを用いて、リン酸イオンの濃度が0.5mol/L、pHが4となる水溶液である前処理液(20℃)と、リン酸二水素ナトリウムとクエン酸を用いて、リン酸イオンの濃度が0.5mol/L、クエン酸の濃度が0.25mol/L、pHが3となる水溶液である前処理液(20℃)を調製した。これら前処理液に試験片を5分間浸漬した後、この前処理した試験片を、リチウムイオンの濃度が0.8g/L、pHが13の水溶液である封孔処理液(20℃)に、1分間浸漬した。
そして、封孔処理後の各試験片について、JIS Z 2371に準拠して塩水噴霧試験を120時間行い、白錆の有無による耐食性評価を行った。この時の試験片の表面の外観を図5に示す。また、電子顕微鏡にて陽極酸化皮膜が封孔されているかの評価も行った。
前処理液がリン酸イオンのみの場合の試験片では、図5(a)に示すように、耐食性試験後に白錆が発生していた。これは、リン酸イオンが皮膜へ過剰に取り込まれ、封孔反応が起こらなかったためである。一方、前処理液がリン酸イオンとクエン酸の両方を含む場合の試験片では、封孔反応が起こり、耐食性が向上し、図5(b)に示すように、白錆は発生しなかった。なお、ADC12材では黒っぽい色の皮膜が生成するため、皮膜の色調変化については評価できなかった。また、電子顕微鏡を用いた皮膜表面の観察では、前処理液がリン酸イオンのみの場合、封孔が確認できず、前処理液がリン酸イオンとクエン酸の両方を含む場合、封孔が確認でき、これらは実際の耐食性試験の結果と一致した。
10 アルミニウム又はアルミニウム合金
20 封孔処理された皮膜
22 陽極酸化皮膜
24 孔
26 封孔生成物

Claims (12)

  1. アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に皮膜を形成する方法であって、
    アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に陽極酸化皮膜を形成する工程と、
    前記陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金を、前処理液に浸漬して前処理を行う工程と、
    前記前処理を行ったアルミニウム又はアルミニウム合金の表面の陽極酸化皮膜を、リチウムイオンを含む封孔処理液で封孔処理する工程と
    を含み、
    前記前処理液が、リン酸イオンと反応調整剤とを含むとともに、中性から酸性の範囲のpHを有しており、前記反応調整剤が、カルボキシ基を有する化合物もしくはその塩又は水溶液中で水酸化物イオンを生じる化合物を含むものである方法。
  2. 前記リン酸イオンの濃度が0.1〜4.0mol/Lである請求項1に記載の方法。
  3. 前記反応調整剤の濃度が0.05mol/L以上である請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記前処理液の温度が10〜50℃である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記前処理液に浸漬する時間が1.5分以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記カルボキシ基を有する化合物が、カルボン酸もしくはその塩である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記水溶液中で水酸化物イオンを生じる化合物が、水酸化物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記陽極酸化皮膜が3〜40μmの厚さを有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記封孔処理工程において、前記陽極酸化皮膜の表面に存在する孔内に封孔生成物が生成し、この封孔生成物が、少なくともLiH(AlO・5HOを含むリチウム−アルミニウム水和物である請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記前処理液が緩衝液である請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. リチウムイオンを含む封孔処理液を用いて陽極酸化皮膜の封孔処理を行う際のその前処理に用いる前処理液であって、この前処理液が、リン酸イオンと反応調整剤とを含むとともに、中性から酸性の範囲のpHを有しており、前記反応調整剤が、カルボキシ基を有する化合物もしくはその塩又は水溶液中で水酸化物イオンを生じる化合物を含むものである前処理液。
  12. アルミニウム又はアルミニウム合金と、その表面に形成された陽極酸化皮膜とを備えたアルミニウム又はアルミニウム合金部材であって、前記アルミニウム又はアルミニウム合金に形成された陽極酸化皮膜の表面の孔が、封孔生成物で封孔されており、この封孔生成物が、リチウム−アルミニウム水和物を含み、前記リチウム−アルミニウム水和物が、前記孔内において、陽極酸化皮膜の表面から孔底部まで均等に生成しているアルミニウム又はアルミニウム合金部材。
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