JP2015227728A - ラジアルころ軸受用保持器 - Google Patents

ラジアルころ軸受用保持器 Download PDF

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Abstract

【課題】強度低下及びころ数の減少を回避しつつ、割れ部を容易かつ十分に拡張可能であるとともに、軌道部材への乗り上げを防止可能なラジアルころ軸受用保持器を提供する。
【解決手段】一対のリム部4a,4bは、それぞれ一箇所ずつ欠損部8a,8bを有する非連続の欠円環状をなし、各リム部の欠損部が周方向に対して同一の位相をなした状態で、軸方向に対して同心上に所定間隔を空けて対向配置され、複数の柱部6は、ころを保持するポケット10を形成しており、一対のリム部は、その外周部が柱部の外周部よりも縮径され、径方向に対して肉薄とされた薄肉部42a,42bと、薄肉部よりも拡径され、径方向に対して肉厚とされた厚肉部44a,44bを有し、一対のリム部の外周部のうち、その中心に対して欠損部の反対側に位置する部位(起点部40a,40b)には、薄肉部を配し、当該薄肉部は、複数の柱部に跨って周方向に連続している。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、自動車や鉄道等の車両などに備えられた動力機構のように、大きなラジアル荷重(径方向への荷重)が負荷される回転系を軸支するためのラジアルころ軸受に用いられる保持器に関し、具体的には、自動車のトランスミッションなどに使用されるニードル(針状ころ)軸受に組み込まれる一つ割れ樹脂保持器の改良に関する。
自動車や鉄道等の車両などに備えられた動力機構における回転系にはラジアル方向(径方向)へ非常に大きな荷重が加わるため、その回転軸を回転自在に支持する軸受には、当該荷重に対する負荷能力に優れたラジアルころ軸受(以下、ころ軸受や軸受ともいう)が従来から広く用いられている。
かかる軸受は、内周面に円筒状の外方軌道を有する外方部材(例えば、常時非回転状態に維持される外輪やハウジング、あるいは、使用時に回転可能な歯車やローラなど)と、当該外方部材の内径側に配された内方部材(例えば、使用時に回転可能な内輪やシャフトなど)の外周面(内方軌道)と前記外方軌道との間へ転動可能に組み込まれる複数のころ(例えば、複数本のニードルなど)と、これらのころを周方向へ所定間隔(一例として、等間隔)で配して保持するとともに、前記外方部材及び内方部材へ組み付けられる保持器を備えている。そして、保持器は、所定間隔を空けて同心上に対向する一対の円環部と、これらを連結するとともに当該円環部間の領域を当該円環部の周方向に隔て、ころを挿入して回転自在に保持するためのポケットを形成する複数の柱部を備えて構成される。
ここで、外方部材として外輪、内方部材として回転シャフトを備えた軸受に用いられる保持器を当該回転シャフトの内方軌道部分へ組み付ける場合を一例として想定する。この場合、保持器を前記回転シャフトの端部から挿通し、当該シャフトの内方軌道部分まで軸方向へ移動させる。その際、かかるシャフト端部から内方軌道までのシャフト外周面域に対し、その外径寸法が保持器の内径寸法よりも大寸に設定された段部やフランジ状の鍔部などが突設されている場合、保持器の内周部がこれらの段部や鍔部と干渉し、当該保持器を内方軌道部分まで軸方向へ移動させることができなくなってしまう。
そこで、このような不都合を解消すべく、例えば、樹脂製保持器の一部に割れ部を備えた構成、すなわち、一対の円環部(リム部)を、その一部(一例として、一箇所)に切れ目(欠損部)を有する非連続の略円環状(欠円環状)とした保持器の構成が従来から知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。このような構成とすることにより、かかる保持器に対し、各円環部(リム部)の周方向両端面(欠損部における対向面)を離間させるように周方向へ力を加えることで、割れ部を拡張させることができ、保持器を拡径させることが可能となる。
この結果、例えば上述したように、外径寸法が保持器の内径寸法よりも大寸に設定された段部やフランジ状の鍔部などがシャフト外周面域に突設されている場合であっても、保持器の割れ部を拡張させること(保持器を拡径させること)で、保持器をかかる段部や鍔部と干渉させることなく、回転シャフトの内方軌道部分まで軸方向へスムーズに移動させることができる。
そして、保持器を前記回転シャフトの内方軌道部分まで移動させた後は、当該保持器に対し、各円環部(リム部)の周方向両端面(欠損部における対向面)を近接させるように周方向へ力を加えることで、割れ部を縮小させ(拡張前の状態に戻し)、保持器の径寸法をもとの状態まで戻す。これにより、保持器が前記回転シャフトの内方軌道部分に装着される。その際、保持器の割れ部が再度拡張されることのないように、当該割れ部を挟んで周方向に隣り合う柱部の各対向面には、所定の係止機構が備えられている。例えば、かかる係止機構として、一方の対向面に他方の対向面へ向けて突出する凸部を設けるとともに、他方の対向面に当該凸部を嵌合可能な凹部を設け、これらの凸部と凹部を相互に嵌合して位置決めさせることで、双方の対向面を係止し、割れ部の再拡張を防止している。
ここで、特許文献1に開示された保持器においては、一対の円環部(リム部)に対し、当該円環部の中心に対して欠損部の反対側、すなわち、欠損部から周方向に対して180°だけ位相をずらした外周部位に一条の溝(スリット)が断面視略V字状に軸方向へ沿って凹設されているとともに、当該部位を連結する柱部の外周面にも前記円環部(リム部)の溝と連通する一条の溝(スリット)が断面視略V字状に軸方向へ沿って凹設されている。
このように円環部(リム部)及び柱部にそれぞれ溝を設けることで、保持器に対して各円環部(リム部)の周方向両端面(欠損部における対向面)を離間させるように周方向へ力を加えた場合、円環部(リム部)及び柱部の溝を支点として、当該溝がつぶれるように保持器を弾性変形させている。これにより、割れ部を容易に拡張させること、すなわち、保持器を容易に拡径させることを可能としている。
また、特許文献2に開示された保持器においては、一対の円環部(リム部)の内周部を柱部の内周部よりも全周に亘って拡径させ、径方向に対して前記柱部よりも肉薄とすることで、割れ部を容易に拡張させること、すなわち、保持器を容易に拡径させることを可能としている。
独国特許出願公開第1815990号明細書 特開昭57−86619号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示された保持器では、割れ部を拡張させる際、保持器に対して加えた力の応力が円環部(リム部)及び柱部の溝とその近傍に集中することは避けられず、当該溝などから保持器の損傷を招き易く、保持器の強度を低下させる虞がある。これに対し、上記特許文献2に開示された保持器では、一対の円環部(リム部)が全周に亘って柱部よりも径方向に対して一律に肉薄となっているため、割れ部を拡張させる際、応力が特定部位に集中することをある程度回避することは可能であると考えられる。その一方で、一対の円環部(リム部)の内周部が全周に亘って一律に肉薄となっているため、内方軌道が内方部材の外周面に凹設され、保持器が端面案内となる場合、保持器が当該内方部材の外周面に乗り上げてしまう虞がある。特に、軸受周りの構成に制限を受けるような場合には、かかる事態を招き易い。
また、上記特許文献1に開示された保持器において、同一径の保持器に同一数のころを保持する場合、ころ径が大きくなるに従って、保持器の柱部は細くなる。一方、保持するころ径が大きくなれば、それに従って保持器の割れ部は拡張させ難くなる。すなわち、割れ部を容易に拡張させ、保持器を容易に拡径させるためには、柱部に設ける溝(スリット)を拡大させねばならないが、ころ径が大きくなるに従って柱部は細くなり、当該柱部に対して溝(スリット)を拡大し得るだけの太さ(断面積)を確保することにも限界がある。結果的に、保持器におけるころの保持数を減少させざるを得ず、軸受の負荷容量の低下を招く虞がある。
本発明は、このような課題を解決するためになされており、その目的は、強度の低下及びころ保持数の減少を回避しつつ、割れ部を容易かつ十分に拡張させることが可能であるとともに、軌道部材(内方部材や外方部材)への乗り上げを有効に防止可能なラジアルころ軸受用保持器(一例として、一つ割れ樹脂保持器)を提供することにある。
このような目的を達成するために、本発明に係るラジアルころ軸受用保持器は、一対のリム部と、複数の柱部を備え、前記一対のリム部は、それぞれ一箇所ずつ欠損部を有する非連続の欠円環状をなし、各リム部の欠損部が周方向に対して同一の位相をなした状態で、軸方向に対して同心上に所定間隔を空けて対向配置され、前記複数の柱部は、前記一対のリム部を連結するとともに当該リム部間の領域を当該リム部の周方向に隔て、転動体であるころを挿入して回転自在に保持するためのポケットを形成している。前記一対のリム部は、その外周部が前記柱部の外周部よりも縮径され、径方向に対して肉薄とされた薄肉部と、当該薄肉部よりも拡径され、径方向に対して肉厚とされた厚肉部を有し、前記一対のリム部の外周部のうち、その中心に対して前記欠損部の反対側に位置する部位には、前記薄肉部が配され、前記薄肉部は、前記複数の柱部に跨って周方向に連続している。
この場合、前記一対のリム部は、その内周部を前記柱部の内周部よりも拡径し、前記薄肉部を前記厚肉部よりも径方向の外径側及び内径側の双方から肉薄とした構成とすることが可能である。
本発明によれば、強度の低下及びころ保持数の減少を回避しつつ、割れ部を容易かつ十分に拡張させることが可能であるとともに、軌道部材(内方部材や外方部材)への乗り上げを有効に防止可能なラジアルころ軸受用保持器(一例として、一つ割れ樹脂保持器)を実現することができる。
本発明の第1実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器の全体構成を示す斜視図である。 本発明の第2実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器の全体構成を示す斜視図である。 本発明の第3実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器の全体構成を示す斜視図である。 本発明の第4実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器の全体構成を示す斜視図である。 本発明の第5実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器の全体構成を示す斜視図である。 本発明の第6実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器の全体構成を示す斜視図である。 本発明の第7実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器の全体構成を示す斜視図である。
以下、本発明のラジアルころ軸受用保持器について、添付図面を参照して説明する。なお、本発明に係るラジアルころ軸受用保持器が組み込まれる軸受としては、自動車や鉄道等の車両などに備えられた動力機構(一例として、自動車のトランスミッション)における回転系を軸支するための軸受などを想定することが可能であるが、これに限定されるものではない。
かかる軸受は、内周面に円筒状の外方軌道を有する外方部材(例えば、常時非回転状態に維持される外輪やハウジング、あるいは、使用時に回転可能な歯車やローラなど)と、当該外方部材の内径側に配された内方部材(例えば、使用時に回転可能な内輪やシャフトなど)の外周面(内方軌道)と前記外方軌道との間へ転動可能に組み込まれる複数のラジアルころ(一例として、複数本のニードル)を備えている。なお、軸受のサイズ、内輪の有無、ころのサイズ(径や長さ)及び個数などは、軸受の使用条件や使用目的などに応じて任意に設定することが可能であるため、ここでは特に限定しない。
そして、これらのころは、軌道間(外方軌道及び内方軌道)での転動時において、各ころが相互に接触して摩擦が生じることによる回転抵抗の増大や焼付きなどを防止すべく、軸受用保持器によってそのポケット内で回転自在に保持される。なお、このような回転抵抗の増大や焼付きなどをさらに効果的に防止すべく、軸受潤滑(油潤滑やグリース潤滑)を行っても構わない。また、軸受用保持器は、転動体案内(ころ案内)、外輪案内、及び内輪案内のいずれの案内方式としても構成可能である。
図1には、本発明の第1実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器(以下、単に保持器ともいう)2の構成が示されている。なお、本実施形態においては、保持器2が所定の弾性材製(一例として、樹脂製)であり、当該弾性材を金型へ射出することによって全体(後述するリム部4a,4b及び柱部6)が一体成形されている場合(射出成形)を想定するが、既知の他の方法によって成形することを排除するものではない。また、射出成形後の成形体に対して切削加工や研削加工などを別途施し、完成品としての保持器2を形成しても構わない。
かかる保持器2は、一対のリム部4a,4bと複数の柱部6を備えて構成されている。一対のリム部4a,4bは、それぞれ一箇所ずつ欠損部8a,8bを有する非連続の欠円環状(略C字状)をなし、各リム部4a,4bの欠損部8a,8bが周方向に対して同一の位相をなした状態(周方向に対する欠損部8a,8bの位置が一致している状態)で、軸方向に対して同心上に所定間隔を空けて対向配置されている。すなわち、保持器2は、周方向に対して一つの割れ部20を有する外観形状が略円筒状をなす(いわゆる一つ割れの保持器構造)。なお、リム部4aとリム部4bの径寸法や軸方向に対する対向間隔は、軸受のサイズなどに応じて任意に設定すればよい。
複数の柱部6は、一対のリム部4a,4bを軸方向に連結するとともに当該リム部4a,4b間の領域を当該リム部4a,4bの周方向に隔て、転動体であるころ(ニードル)(図示しない)を挿入して回転自在に保持するためのポケット10を形成している。すなわち、周方向に隣り合う二つの柱部6、及び一対のリム部4a,4bで囲まれた空間に一つのポケット10が形成されている。これにより、保持器2は、柱部6とポケット10が周方向へ交互に配された構造となる。ただし、各リム部4a,4bの欠損部8a,8bに対して周方向の両側に近接して配された二つの柱部6(以下、欠損部近接柱部62,64という)によって隔てられるリム部4a,4b間の領域には、割れ部20が存在し、ポケット10は形成されない。したがって、保持器2は、かかる領域(つまり割れ部20)に限ってころが欠落する構造、すなわち、当該領域以外は各ポケット10に一つずつころが挿入され、これらのころが周方向に対して等間隔(均一ピッチ)で配される構造をなす。
なお、柱部6により形成するポケット10の大きさは、ころの径寸法及び長さに応じ、ポケット10において当該ころを回転自在に保持可能となるように設定すればよく、ポケット10の数(別の捉え方をすれば、柱部6の数)は、保持器2の容量(保持させるころの個数)に合わせて任意に設定すればよい。また、ポケット面(ころの周面との接触面)の形態(別の捉え方をすれば、隣り合う柱部6の周方向対向面の表面形状)は、凹曲面状(例えば、ころの周面よりもわずかに曲率の小さな凹曲面状など)とすればよい。ポケット10の周縁部には、当該ポケット10へ挿入したころが脱落不能に保持されるように、ポケット開口を狭めるような突出部(例えば、ころを把持する爪状の突起など)を設けることも可能である。
このように、一対のリム部4a,4bにそれぞれ一箇所ずつ欠損部8a,8bを形成し、保持器2が周方向に対して一つの割れ部20を有する構造(いわゆる一つ割れの保持器構造)とすることで、かかる保持器2に対して割れ部20を拡張させる方向、別の捉え方をすれば、各リム部4a,4bの周方向両端面(欠損部8a,8bにおける対向面)をそれぞれ離間させる方向へ力が加わると、保持器2の全体が弾性変形される。この結果、割れ部20(欠損部8a,8b)を拡張させること、すなわち、保持器2(端的にはリム部4a,4b)を拡径させることができる。また、この状態から割れ部20を縮小させる方向、別の捉え方をすれば、各リム部4a,4bの周方向両端面(欠損部8a,8bにおける対向面)をそれぞれ近接させる方向へ力が加わると、保持器2の全体が上記割れ部20の拡張前のもとの状態に弾性変形される。この結果、割れ部20(欠損部8a,8b)を縮小させてもとの状態まで戻すこと、すなわち、保持器2(端的にはリム部4a,4b)を縮径させてもとの径寸法(拡径前の径寸法)まで戻すことができる。なお、保持器2に対して割れ部20を縮小させる方向へ力を加えることなく、割れ部20を拡張させる方向へ加えていた力を解除することによる保持器2自体の弾性復元力のみで、あるいは、当該弾性復元力に前記縮小方向への力を加えつつ、保持器2を縮径させ、もとの径寸法(拡径前の径寸法)まで戻すような保持器構成も想定可能である。
これにより、保持器2の径寸法を自由に拡縮させることができ、各種大きさの段部や鍔部などを有する回転シャフトへの軸受の組み付けに対応することが可能となる。軸受を前記回転シャフトへ組み付けた後は、保持器2の割れ部20(欠損部8a,8b)が再度拡張され、当該保持器2の脱落や位置ずれなどが生ずることを防止する必要があり、保持器2にはかかる事態を防止するための係止機構が備えられている。すなわち、係止機構は、欠損部8a,8bの拡張(端的には再拡張)を防止することで、一対のリム部4a,4bを一定の径寸法に維持し、保持器2を定常径寸法に保つことを可能とする。
図1には、相互に嵌合される凸部12aと凹部12bを係止機構として備えた保持器2の構成を例示している。この場合、割れ部20を挟んで周方向に隣り合い、対向配置された欠損部近接柱部62,64のうち、一方側(一例として、欠損部近接柱部62)には凸部12a、他方側(同、欠損部近接柱部64)には凹部12bをそれぞれ設けている。凸部12aは、欠損部近接柱部62における欠損部近接柱部64との対向面から周方向へ所定の形状及び大きさ(長さ)で突出し、凹部12bは、前記凸部12aを嵌合可能となるように、欠損部近接柱部64における欠損部近接柱部62との対向部分を、所定の形状及び大きさ(周方向への深さ)で内径側から外径側まで切り欠いている。なお、凸部12a及び凹部12bは、相互に嵌合可能であれば、これらの形状及び大きさ(長さや深さ)などは特に限定されず、保持器2の材質、大きさ(径寸法や幅)などに応じて任意に設定すればよい。また、前記係止機構は、保持器2の割れ部20(欠損部8a,8b)の再拡張を抑止することが可能であれば、相互に嵌合可能な凸部12aと凹部12bのような機構に限定されるものではなく、既知の各種機構に適宜変更可能である。
本実施形態において、一対のリム部4a,4bは、その外周部が柱部6の外周部よりも縮径され、径方向に対して肉薄とされた薄肉部42a,42bと、当該薄肉部42a,42bよりも拡径され、径方向に対して肉厚とされた厚肉部44a,44bを有している。そして、一対のリム部4a,4bの外周部のうち、その中心に対して欠損部8a,8bの反対側に位置する部位、換言すれば、欠損部8a,8bから周方向に対して180°だけ位相をずらした部位(図1において40a,40bで示す部位、以下、起点部40a,40bという)には、薄肉部42a,42bが配されている。このように、一対のリム部4a,4bの外周部に薄肉部42a,42b及び厚肉部44a,44bを配することで、保持器2に対して割れ部20を拡張させる方向(各リム部4a,4bの周方向両端面(欠損部8a,8bにおける対向面)をそれぞれ離間させる方向)へ力を加えた際、薄肉部42a,42bを厚肉部44a,44bよりも先んじて大きく弾性変形させることができ、保持器2の全体を容易に弾性変形させることができる。これにより、割れ部20(欠損部8a,8b)を容易に拡張させること、すなわち、保持器2を容易に拡径させることができる。
なお、一対のリム部4a,4bの内周部は、柱部6の内周部に対して縮径も拡径もされず、全周に亘って一定の径寸法(柱部6と同一の内径寸法)に設定されている。つまり、本実施形態に係る保持器2は、内輪案内の保持器として適した構成となっている。
これらの薄肉部42a,42b及び厚肉部44a,44bは、少なくとも薄肉部42a,42bが一対のリム部4a,4bの起点部40a,40bに配されていれば、その大きさや形状、数や配設間隔は特に限定されず、任意に設定することができる。
例えば、図1には、起点部40a,40b側に1つの薄肉部42a,42bを配し、欠損部8a,8b側に1つの厚肉部44a,44bを当該薄肉部42a,42bと連続して配している。すなわち、一対のリム部4a,4bの外周部には、薄肉部42a,42bと厚肉部44a,44bのみが双方のリム部4a,4bで周方向に対称をなして配され、これら薄肉部42a,42bと厚肉部44a,44bの境界に段差46a,46bが形成される構成となっている。その際、段差46a,46b、つまり薄肉部42a,42bと厚肉部44a,44bの境界は、一対のリム部4a,4bが柱部6によって連結される部位(リム部4a,4bにおける柱部6上)に位置付けられている。
薄肉部42a,42bと厚肉部44a,44bの境界(段差46a,46b)をリム部4a,4bにおけるポケット10上ではなく柱部6上に位置付けることで、保持器2の全体、すなわち、リム部4a,4b(薄肉部42a,42bと厚肉部44a,44b)及び柱部6を一体的に射出成形する場合、その金型の合わせ面が柱部6の断面上に位置付けられるため、前記境界(段差46a,46b)がリム部4a,4bにおけるポケット10上に位置付けられた場合と比べ、成形時に生じるバリの影響を抑制することができる。ただし、段差46a,46bを、リム部4a,4bにおける柱部6上ではなくポケット10上に位置付けた構成とすることも想定可能である。
また、リム部4aの薄肉部42aと、リム部4bの薄肉部42bは、周方向に対していずれも同一の位相をなして配されており、リム部4aの厚肉部44aと、リム部4bの厚肉部44bもまた、周方向に対していずれも同一の位相をなして配されている。つまり、薄肉部42a及び厚肉部44aと、薄肉部42b及び厚肉部44bとは、双方のリム部4a,4bで周方向に対称をなして配されている。
これらの薄肉部42a,42bと厚肉部44a,44bは、複数の柱部6及びポケット10(換言すれば、ころ)に跨って連続するリム部4a,4bの外周領域に配され、薄肉部42a,42bと厚肉部44a,44bの境界、つまり段差46a,46bは、リム部4a,4bにおける柱部6上に位置付けられている。その際、薄肉部42a,42bは、それぞれ複数の柱部6及びポケット10(換言すれば、ころ)に跨って、一定の径寸法(同一径寸法)で連続し、厚肉部44a,44bもまた、それぞれ複数の柱部6及びポケット10(換言すれば、ころ)に跨って、一定の径寸法(同一径寸法)で連続している。すなわち、薄肉部42a,42b、及び厚肉部44a,44bは、それぞれ径方向に対して一定の肉厚で前記所定の領域に亘って連続するとともに、薄肉部42a,42bは、厚肉部44a,44bよりも径方向に対して肉薄に前記所定の領域に亘って連続する。
なお、薄肉部42a,42bは、その周方向中間部位が起点部40a,40bと略一致するように位置付けられている。また、厚肉部44a,44bは、欠損部8a,8bにおいて2分割された状態となっているが、これらを一連のものとして1つと捉えた場合、前記所定の領域に亘って連続することなる。
このように、本実施形態においては、薄肉部42a,42bが複数の柱部6及びポケット10(換言すれば、ころ)に跨って連続して配されているため、割れ部20を拡張させる際、保持器2に対して加えた力の応力を薄肉部42a,42bの全体に分散して作用させ、これを緩和させることができる。したがって、かかる応力がリム部4a,4bや柱部6の極限られた特定の箇所に集中して作用することを有効に回避させることができる。
また、リム部4a,4bの外周部に薄肉部42a,42b及び厚肉部44a,44bを配することで、隣り合う薄肉部42a,42bと厚肉部44a,44bの境界に段差46a,46bが形成される。この結果、かかるリム部4a,4bの外周部の径方向に対する肉厚が全周に亘って均一となることを防ぎ、これを変化させることができる。したがって、例えば、外方軌道が外方部材(常時非回転状態に維持される外輪やハウジング、あるいは、使用時に回転可能な歯車やローラなど)の内周面に凹設され、保持器2が端面案内となる場合であっても、厚肉部44a,44bを前記凹設された外方軌道の縁に沿って干渉させることができ、保持器2が前記外方部材の内周面に乗り上げてしまうことを有効に防止することができる。この結果、軸受周りの構成に制限を受けることなく、保持器2、ひいては軸受を構成することが可能となる。
さらに、薄肉部42a,42b及び厚肉部44a,44bはリム部4a,4bに配されており、柱部6の構成には特段影響しない。このため、柱部6をより細くすることが可能となる。すなわち、同一径の保持器2に同一数のころを保持する場合、ころ径が大きくなるに従って柱部6は細くなるが、この場合であっても、割れ部20を拡張させ難くすること(換言すれば、保持器2を拡径させ難くすること)もない。したがって、保持器2におけるころの保持数を減少させずにころ径を大きくすることができ、軸受の負荷容量の向上を図ることが可能となる。
なお、上述したように、これらの薄肉部42a,42b及び厚肉部44a,44bは、少なくとも薄肉部42a,42bが一対のリム部4a,4bの起点部40a,40bに配されていれば、その大きさや形状、数や配設間隔は任意に設定することが可能であり、薄肉部42a,42b及び厚肉部44a,44bの構成は、本実施形態(図1)に限定されない。
例えば、薄肉部及び厚肉部を2個以上(一例として、3個)ずつ配した保持器構成とすることも可能である。この場合には、起点部40a,40bに位置付けた薄肉部から周方向の両側へ略等間隔で1つずつ薄肉部を配し、周方向に隣り合う薄肉部の間に厚肉部を1つずつ配することが好ましい。すなわち、複数(一例として、同数)の薄肉部及び厚肉部が1つずつ、各リム部4a,4bの外周部に対して周方向へ交互に並んで、周方向に隣り合う薄肉部と厚肉部の境界に段差が形成される構成とすればよい。この場合、リム部4aの複数の薄肉部と、リム部4bの複数(一例として、リム部4aの薄肉部と同数)の薄肉部は、周方向に対していずれも同一の位相をなして配し、リム部4aの複数(同、当該リム部4aの薄肉部と同数)の厚肉部と、リム部4bの複数(同、リム部4aの厚肉部(薄肉部)と同数)の厚肉部もまた、周方向に対していずれも同一の位相をなして配する。つまり、薄肉部及び厚肉部は、双方のリム部4a,4bで周方向に対称をなして配すればよい。
また、上述した第1実施形態(図1)においては、一対のリム部4a,4bの外周部を柱部6の外周部よりも縮径することで、薄肉部42a,42bを径方向に対して肉薄としているが、さらに、一対のリム部4a,4bの内周部を柱部6の内周部よりも拡径し、薄肉部42a,42bを厚肉部44a,44bよりも径方向の外径側及び内径側の双方から肉薄とした構成とすることも可能である。
このように、一対のリム部4a,4bの外周部を柱部6の外周部よりも縮径させるとともに、その内周部を柱部6の内周部よりも拡径させることで、厚肉部44a,44bよりも径方向の外径側及び内径側の双方から凹ませ、肉薄とした薄肉部42a,42bを有する保持器2の構成を、本発明の第2実施形態として図2に示す。本実施形態に係る保持器2は、転動体案内(ころ案内)の保持器として適した構成となっている。
この場合、一対のリム部4a,4bは、その内周部が外周部の縮径部位に対応して、換言すれば、周方向に対して同一の位相をなすように(同一の幅(周域)に亘って)一律に拡径され、一定の径寸法(同一径寸法)で連続する構成となっている。その際、リム部4aの外周部の縮径部位と内周部の拡径部位(つまり薄肉部42a)と、リム部4bの外周部の縮径部位と内周部の拡径部位(つまり薄肉部42b)は、周方向に対していずれも同一の位相をなして配されている。したがって、上述した第1実施形態(図1)と同様に、薄肉部42a及び厚肉部44aと、薄肉部42b及び厚肉部44bとは、双方のリム部4a,4bで周方向に対称をなして配された構成をなす。その際、一対のリム部4a,4bには、その外周部だけでなく、内周部にも薄肉部42a,42bと厚肉部44a,44bの境界に段差46a,46bが形成され、これら段差46a,46bは、一対のリム部4a,4bが柱部6によって連結される部位(リム部4a,4bにおける柱部6上)に、周方向に対していずれも同一の位相をなして位置付けられている(ただし、リム部4a,4bにおけるポケット10上に位置付けることも可能)。
なお、一対のリム部4a,4bにおいて、外周部の縮径寸法と内周部の拡径寸法は特に限定されず、同一寸法ずつ縮径及び拡径してもよいし(厚肉部44a,44bよりも径方向の外径側及び内径側の双方から同一寸法で凹ませた状態)、それぞれ異なる寸法ずつ縮径及び拡径させてもよい(厚肉部44a,44bよりも径方向の外径側及び内径側で異なる寸法で凹ませた状態)。
また、薄肉部42a,42b及び厚肉部44a,44bを2個以上ずつ配した保持器構成とする場合、リム部4a,4bの内周部は、外周部の各縮径部位に対応して(周方向に対して同一の位相をなすように)それぞれ拡径させればよい。これにより、リム部4a,4bの内周部には、外周部と同様に、薄肉部42a,42bと厚肉部44a,44bが交互に配され、隣り合う薄肉部42a,42bと厚肉部44a,44bの境界に段差46a,46bが形成される。
さらにまた、図3に示す本発明の第3実施形態、図4に示す本発明の第4実施形態、及び図5に示す本発明の第5実施形態に係る保持器2のように、薄肉部42a,42bは、リム部4a,4bにおける外周部の縮径部位と内周部の拡径部位を周方向に対して異なる位相で(異なる幅(周域)に亘って)連続させた構成とすることも可能である。すなわち、この場合、薄肉部42a,42bと厚肉部44a,44bの境界に形成される段差46a,46bは、その周方向位置(周方向に対する位相)がリム部4a,4bの径方向の外径側と内径側でそれぞれ異なった構成となる。なお、リム部4a,4bにおける外周部の縮径部位と内周部の拡径部位は、一律に縮径もしくは拡径し、一定の径寸法(同一径寸法)で連続させればよく、リム部4aの外周部の縮径部位及び内周部の拡径部位と、リム部4bの外周部の縮径部位及び内周部の拡径部位とは、周方向に対していずれも同一の位相をなして配すればよい。また、段差46a,46bは、一対のリム部4a,4bが柱部6によって連結される部位(リム部4a,4bにおける柱部6上)に、双方のリム部4a,4bにおいて周方向に対していずれも同一の位相をなして位置付ければよい(ただし、リム部4a,4bにおけるポケット10上に位置付けることも可能)。
第3実施形態(図3)においては、薄肉部42a,42bがその周方向中間部位を起点部40a,40bと略一致するように位置付けて配されるように、リム部4a,4bの外周部を周方向に対して所定の幅で(一例として、4つの柱部6及び3つのポケット10(換言すれば、ころ)に跨る外周領域に亘って)連続して縮径させるとともに、当該リム部4a,4bの内周部を周方向に対して前記外周部を縮径させた部位よりも大きな幅で(一例として、6つの柱部6及び5つのポケット10(換言すれば、ころ)に跨る内周領域に亘って)連続して拡径させた構成となっている。この場合、リム部4a,4bの外周部の縮径部位と内周部の拡径部位が周方向に対して重畳する周域、すなわち、厚肉部44a,44bよりも径方向の外径側及び内径側の双方から肉薄となっている(肉が盗まれている)周域が薄肉部42a,42bとなっており、内周部の拡径部位が外周部の縮径部位よりも周方向にはみ出した周域には、厚肉部44a,44bよりも径方向の内径側のみから肉薄となっている(肉が盗まれている)中間肉厚部48a,48bが形成されている。したがって、リム部4a,4bの内周部には、中間肉厚部48a,48bと厚肉部44a,44bの境界にも段差46a,46bが形成される。
なお、リム部4a,4bの内周部の拡径部位は、周方向に対して外周部の縮径部位よりも大きな幅で連続するとともに、当該縮径部位と周方向に対して重畳していれば、外周部の縮径部位に対する周方向幅は任意に設定して構わない。例えば、図4に示す本発明の第4実施形態のように、リム部4a,4bの内周部を全周に亘って連続して一律に拡径させた保持器2の構成とすることも可能である。この場合、リム部4a,4bの内周部においては、薄肉部42a,42bと厚肉部44a,44bが段差なく連続されている。
薄肉部42a,42bをこのような構成とすることで、例えば、各種大きさの段部や鍔部などを有する回転シャフトへの軸受の組み付け時において、割れ部20(欠損部8a,8b)を拡張させ、保持器2(端的にはリム部4a,4b)を拡径させた際に引っ張り側となるリム部4a,4bの起点部40a,40bの内径側近傍を、その外径側近傍よりも周方向に対して拡幅して肉薄とする(肉を盗む)ことができる。換言すれば、リム部4a,4bの起点部40a,40bの外径側近傍は、その内径側近傍と比べて薄肉とする周方向幅(周域)を極力小さくする(つまり、肉の盗み量を極力少なくする)ことができる。これにより、保持器2が端面案内となる場合であっても、その案内部となるリム部4a,4bの軸方向端面の面積を確保することができるとともに、外径側の連続性を高め、外径案内時における安定性向上を図ることができる。
これに対し、第5実施形態(図5)においては、薄肉部42a,42bがその周方向中間部位を起点部40a,40bと略一致するように位置付けて配されるように、リム部4a,4bの外周部を周方向に対して所定の幅で(一例として、6つの柱部6及び5つのポケット10(換言すれば、ころ)に跨る外周領域に亘って)連続して縮径させるとともに、当該リム部4a,4bの内周部を周方向に対して前記外周部を縮径させた部位よりも小さな幅で(一例として、4つの柱部6及び3つのポケット10(換言すれば、ころ)に跨る内周領域に亘って)連続して拡径させた構成となっている。すなわち、薄肉部42a,42bは、外周部の縮径部位と内周部の拡径部位が周方向に対して重畳する周域においては厚肉部44a,44bよりも径方向の外径側及び内径側の双方から肉薄となっており(肉が盗まれており)、外周部の縮径部位が内周部の拡径部位よりも周方向にはみ出した周域においては厚肉部44a,44bよりも径方向の外径側のみから肉薄となっている(肉が盗まれている)。つまり、本実施形態において、外周部の縮径部位と内周部の拡径部位が周方向に対して重畳する周域は、上述した第3実施形態(図3)と共通しているが、当該周域の周方向両側の周域は、径方向の外径側のみが厚肉部44a,44bよりも肉薄となっている点で、径方向の内径側のみが厚肉部44a,44bよりも肉薄となっている第3実施形態(中間肉厚部48a,48bが形成されている構成)と相違している。
なお、この場合、リム部4a,4bの外周部の縮径部位は、周方向に対して内周部の拡径部位よりも大きな幅で連続するとともに、当該拡径部位と周方向に対して重畳していれば、内周部の拡径部位に対する周方向幅は任意に設定して構わない。例えば、リム部4a,4bの外周部を全周に亘って連続して一律に拡径させた構成(つまり、リム部4a,4bの外周部において、薄肉部42a,42bと厚肉部44a,44bが段差なく連続された構成)とすることも可能である。
薄肉部42a,42bをこのような構成とすることで、リム部4a,4bの起点部40a,40bの外径側近傍を、その内径側近傍よりも周方向に対して拡幅して肉薄とする(肉を盗む)ことができる。換言すれば、リム部4a,4bの起点部40a,40bの内径側近傍は、その外径側近傍と比べて薄肉とする周方向幅(周域)を極力小さくする(つまり、肉の盗み量を極力少なくする)ことができる。したがって、例えば、段差のある穴部などへの軸受の組み付け時に保持器2(端的にはリム部4a,4b)を縮径させる必要があるような場合であっても、その際に引っ張り側となる起点部40a,40bの外径側近傍が内径側近傍よりも周方向に対して拡幅して肉薄となっている(肉の盗み量が多くなっている)ため、保持器2をスムーズに縮径させることができる。
なお、上述した第3実施形態から第5実施形態(図3から図5)において、薄肉部42a,42b(外周部の縮径部位、及び内周部の拡径部位)の大きさや形状、数や配設間隔は任意に設定することが可能である(上述した第1実施形態と同様)。
例えば、これらの実施形態においては、リム部4a,4bに対して外周部の縮径部位と内周部の拡径部位をそれぞれ1箇所のみに形成し、薄肉部42a,42bを1つだけ配した構成としているが、外周部の縮径部位と内周部の拡径部位をそれぞれ複数箇所形成し、複数の薄肉部を配した構成とすることも可能である。このような構成を本発明の第6実施形態として図6に示す。
図6には、リム部4a,4bの外周部に対して3箇所の縮径部位を形成するとともに、内周部に対して3箇所の拡径部位を形成し、薄肉部42a,42bを配した保持器2の構成を一例として示している。この場合、起点部40a,40bの外径側近傍を周方向に対して所定の幅で(一例として、2つの柱部6及び1つのポケット10(換言すれば、ころ)に跨る外周領域に亘って)連続して縮径させ、当該縮径部位(以下、起点縮径部位という)の周方向の両側に所定間隔(一例として、2つの柱部6及び1つのポケット10(換言すれば、ころ)に跨る外周領域)を空けてリム部4a,4bの外周部を周方向に対して起点縮径部位と同一の幅で連続して縮径させた縮径部位を1つずつ形成している。また、起点部40a,40bの内径側近傍を周方向に対して前記起点縮径部位よりも大きな幅(一例として、上述した第5実施形態(図5)に係るリム部4a,4bの内周部の拡径部位と同一幅)で連続して拡径させ、当該拡径部位(以下、起点拡径部位という)の周方向の両側に所定間隔(一例として、2つの柱部6及び1つのポケット10(換言すれば、ころ)に跨る内周領域)を空けてリム部4a,4bの内周部を周方向に対して起点拡径部位と同一の幅で連続して拡径させた拡径部位を1つずつ形成している。
すなわち、本実施形態において、リム部4a,4bの外周部の縮径部位及び内周部の拡径部位は、起点部40a,40bを中心として周方向の両側へ分散して配されている。換言すれば、リム部4a,4bを外径側から縮径して、もしくは内径側から拡径して肉薄とした肉盗み部が周方向に分散して配されている。したがって、本実施形態においても、リム部4a,4bには、厚肉部44a,44bよりも径方向の内径側のみから肉薄となっている(肉が盗まれている)部位に、中間肉厚部48a,48bが形成され、当該リム部4a,4bの内周部には、中間肉厚部48a,48bと厚肉部44a,44bの境界に段差46a,46bが形成される(上述した第3実施形態(図3)と同様)。
なお、外周部の縮径部位と内周部の拡径部位の配設個数(肉盗み部の外径側と内径側の配設個数)は特に限定されず、保持器2の大きさや材質などに応じて任意に設定することが可能であり、また、縮径部位と拡径部位の双方で同一であってもよいし、異なっていても構わない。
加えて、外周部の縮径部位の縮径寸法と内周部の拡径部位の拡径寸法(肉盗み部の肉盗み量に相当)は特に限定されず、同一寸法ずつ縮径及び拡径してもよいし(厚肉部44a,44bよりも径方向の外径側及び内径側の双方から同一寸法で凹ませた状態(同一量で肉を盗んだ状態))、それぞれ異なる寸法ずつ縮径及び拡径させてもよい(厚肉部44a,44bよりも径方向の外径側及び内径側で異なる寸法で凹ませた状態(異なる量で肉を盗んだ状態))。例えば、起点縮径部位及び起点拡径部位においては、リム部4a,4bを外径側から縮径するとともに内径側から拡径して(外径側及び内径側の双方から肉を盗んで)肉薄としているため、リム部4a,4b自体の強度を考慮すれば、外径側及び内径側の肉盗み量にはある程度限界がある。したがって、起点縮径部位及び起点拡径部位の肉盗み量は僅かに止め、これらの周方向両側の縮径部位及び拡径部位の肉盗み量を起点縮径部位及び起点拡径部位よりも多くすることで、保持器2(端的にはリム部4a,4b)の拡径性(別の捉え方をすれば、割れ部20(欠損部8a,8b)の拡張性)を確保するとともに、保持器2の強度も確保することができる。
すなわち、本実施形態によれば、保持器2の拡径性を向上させ、最適な開き量を確保しつつ、保持器2の強度向上を同時に図ることができる利点がある。
また、上述した第1実施形態から第6実施形態(図1から図6)においては、薄肉部42a,42bと厚肉部44a,44bの境界に段差46a,46bを形成し、これらの薄肉部42a,42b及び厚肉部44a,44bを一対のリム部4a,4bの外周部に配した構成、もしくは外周部に加えて内周部にも配した構成としているが、かかる境界に段差46a,46bを形成することなく、薄肉部42a,42bと厚肉部44a,44bを連続させた構成とすることも想定可能である。
このように、薄肉部42a,42bと厚肉部44a,44bを段差なく連続させた構成を、本発明の第7実施形態として図7に示す。本実施形態に係る保持器2は、外輪案内の保持器として適した構成となっている。
本実施形態において、一対のリム部4a,4bは、その内周部(リム部4a,4bの欠損部8a,8bを連続させてなる仮想内周円)の中心を保持器2の転がり軸(各ポケット10に保持されたころの中心を結んだ仮想円(ピッチ円)の中心に相当)に対して欠損部8a,8bとは反対側(欠損部8a,8bから周方向に対して180°だけ位相をずらした部位(起点部40a,40b)側)へ偏心した状態で対向配置されている。
この場合、一対のリム部4a,4bは、その内周部が柱部6の内周部よりも拡径され、径方向に対して肉薄とされた薄肉部42a,42bと、当該薄肉部42a,42bよりも縮径され、径方向に対して肉厚とされた厚肉部44a,44bを有する構成となっている。そして、一対のリム部4a,4bの内周部のうち、その中心に対して欠損部8a,8bの反対側に位置する部位(起点部40a,40b)には、薄肉部42a,42bが配されており、これらの薄肉部42a,42b及び厚肉部44a,44bは、薄肉部42a,42bの最薄肉部位から徐々に内径寸法が縮径され、厚肉部44a,44bの最厚肉部位に到るまで段差なく連続されている。
本実施形態では、リム部4a,4bの内周部には、薄肉部42a,42bと厚肉部44a,44bの境界に段差46a,46b(図1から図6)は形成されないが、かかるリム部4a,4bの内周部の径方向に対する肉厚が全周に亘って均一となることを防ぎ、これを変化させることは可能となる。したがって、例えば、内方軌道が内方部材(使用時に回転可能な内輪やシャフトなど)の外周面に凹設され、保持器2が端面案内となる場合であっても、薄肉部42a,42bから厚肉部44a,44bに到るリム部4a,4bの内周部の任意の領域を前記凹設された内方軌道の縁に沿って干渉させることができ、保持器2が前記内方部材の外周面に乗り上げてしまうことを有効に防止することができる。この結果、上述した第1実施形態から第6実施形態(図1から図6)と同様に、軸受周りの構成に制限を受けることなく、保持器2、ひいては軸受を構成することが可能となる。
なお、本実施形態においては、一対のリム部4a,4bの内周部を保持器2の転がり軸に対して偏心させた構成としているが、例えば、一対のリム部4a,4bの外周部の中心を保持器2の転がり軸に対して欠損部側(起点部の反対側)へ偏心した状態で対向配置した構成とすることも可能である。この場合、一対のリム部4a,4bは、その外周部が柱部6の外周部よりも縮径され、径方向に対して肉薄とされた薄肉部と、当該薄肉部よりも拡径され、径方向に対して肉厚とされた厚肉部を有する構成となる。そして、一対のリム部4a,4bの外周部のうち、その中心に対して欠損部8a,8bの反対側に位置する部位(起点部40a,40b)には、薄肉部を配し、これらの薄肉部及び厚肉部は、薄肉部の最薄肉部位から徐々に内径寸法が縮径され、厚肉部の最厚肉部位に到るまで段差なく連続する構成とすればよい。
さらに、一対のリム部4a,4bの内周部及び外周部の双方を保持器2の転がり軸に対して偏心させ、当該内周部の中心を保持器2の転がり軸に対して偏心し、起点部40a,40b側へ位置付けるとともに、当該外周部の中心を保持器2の転がり軸に対して偏心し、欠損部8a,8bへ位置付けた構成としても構わない。
以上、上述した本発明の第1実施形態から第7実施形態(図1から図7)に係る保持器2によれば、強度の低下及びころ保持数の減少を回避しつつ、割れ部20を容易かつ十分に拡張させることが可能であるとともに、軌道部材(内方部材(使用時に回転可能な内輪やシャフトなど)の外周面や、外方部材(常時非回転状態に維持される外輪やハウジング、あるいは、使用時に回転可能な歯車やローラなど)の内周面)への乗り上げを有効に防止することが可能となる。
4a,4b リム部
6 柱部
8a,8b 欠損部
10 ポケット
40a,40b 起点部
42a,42b 薄肉部
44a,44b 厚肉部

Claims (2)

  1. 一対のリム部と、複数の柱部を備え、
    前記一対のリム部は、それぞれ一箇所ずつ欠損部を有する非連続の欠円環状をなし、各リム部の欠損部が周方向に対して同一の位相をなした状態で、軸方向に対して同心上に所定間隔を空けて対向配置され、
    前記複数の柱部は、前記一対のリム部を連結するとともに当該リム部間の領域を当該リム部の周方向に隔て、転動体であるころを挿入して回転自在に保持するためのポケットを形成しており、
    前記一対のリム部は、その外周部が前記柱部の外周部よりも縮径され、径方向に対して肉薄とされた薄肉部と、当該薄肉部よりも拡径され、径方向に対して肉厚とされた厚肉部を有し、
    前記一対のリム部の外周部のうち、その中心に対して前記欠損部の反対側に位置する部位には、前記薄肉部が配され、
    前記薄肉部は、前記複数の柱部に跨って周方向に連続していることを特徴とするラジアルころ軸受用保持器。
  2. 前記一対のリム部は、その内周部が前記柱部の内周部よりも拡径され、前記薄肉部が前記厚肉部よりも径方向の外径側及び内径側の双方から肉薄とされていることを特徴とする請求項1に記載のラジアルころ軸受用保持器。
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