JP2008286232A - ラジアルニードル軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】ニードル6、6の径を小さくしたり数を少なくせずに、保持器7aを構成する各柱部11a、11aの曲げ剛性を確保しつつ、潤滑油が軸方向に流通する事に対する抵抗を低く抑えられる構造を実現する。
【解決手段】保持器7aを構成する1対のリム部10a、10aの外端縁の円周方向複数個所に保持器側凹部13、13を形成する。又、上記各柱部11a、11aの軸方向中間部内接円の直径を上記両リム部10a、10aの内径よりも小さくして、これら各柱部11a、11aの軸方向中間部内径側端部をこれら両リム部10a、10aの内周面よりも径方向内方に突出させる。そして、上記各柱部11a、11aの内径側側面に凹溝19、19を形成する。更に、これら各凹溝19、19の長さ方向両端部を、上記各柱部11a、11aの長さ方向中間部で上記両リム部10a、10aの内周面よりも径方向内方に突出した部分の、長さ方向両端面に開口させる。
【選択図】図2

Description

この発明は、例えば自動車用手動変速機(手動変速機を基本に自動化した、所謂SMTを含む)等の回転機械装置に組み込まれるラジアルニードル軸受の改良に関する。具体的には、保持器の構造を工夫する事により、ラジアルニードル軸受内での潤滑油の流通が円滑に行なわれる様にする事で、自動車用手動変速機等の各種回転機械装置の高性能化を可能にするものである。
自動車用手動変速機では従来から、例えば特許文献1に記載されている様に、図6に示す様な構造により、変速用歯車1を動力伝達軸2の周囲に、ラジアルニードル軸受3により回転自在に支持している。このラジアルニードル軸受3は、外輪相当部材である上記変速用歯車1の内周面に設けた円筒状の外輪軌道4と、内輪相当部材である上記動力伝達軸2の外周面に設けた円筒状の内輪軌道5との間に複数本のニードル6を、円筒状の保持器7により保持した状態で、転動自在に設けて成る。上記内輪軌道5は、上記動力伝達軸2の外周面に直接設ける他、別途設けた円筒状の内輪の外周面に設ける場合もある。この場合には、図7に示す様に、内輪8の外周面と変速用歯車1の内周面との間に、上記保持器7を配置する。尚、この変速歯車1の側方には、シンクロ機構を構成する為の係合歯9を設けている。この係合歯9を含むシンクロ機構に就いては、後述する。
上記保持器7は、例えば図8に示す様な一体型、或いは図9に示す様な2分割型としている。何れの構造にしても、上記保持器7は、軸方向に間隔を開けた状態で互いに同心に配置された1対のリム部10、10同士の間に、円周方向に間隔を開けて配置された複数の柱部11、11を掛け渡した状態で設けている。そして、円周方向に隣り合う柱部11、11と上記両リム部10、10とにより四周を囲まれる空間を、それぞれ上記各ニードル6を転動自在に保持する為のポケット12、12としている。更に、上記両リム部10、10の軸方向両端縁のうちでこれら各ポケット12、12と反対側の端縁である外端縁の円周方向複数個所には、図6、7、10に示す様に(図8、9には省略)、軸方向に凹んだ保持器側凹部13、13を形成している。これら各保持器側凹部13、13は、上記保持器7の内径側に供給された潤滑油を、外径側に送り出す為に設けている。
自動車用手動変速機の場合、上記変速用歯車1は、上記動力伝達軸2の外周面に形成された段部14と、上記動力伝達軸2の外周面にスプライン係合したシンクロハブ15との間に位置する。又、このシンクロハブ15と前記係合歯9とを含んで、シンクロ機構を構成している。このシンクロ機構の非結合時には、上記変速用歯車1と上記動力伝達軸2との相対回転が自在となり、この変速用歯車1が動力伝達に寄与しない状態となる。これに対して、上記シンクロ機構の結合時には、上記変速用歯車1と上記動力伝達軸2とが同期して回転する様になり、この変速用歯車1が動力伝達に寄与する状態となる。この様なシンクロ機構の構成及び作用に関しては、従来から周知であり、本発明の要旨とも関係しない為、詳しい説明は省略する。
上述の様な変速用歯車1と動力伝達軸2との間に設けた、前記ラジアルニードル軸受3は、上記シンクロ機構を結合せず、上記変速用歯車1が動力伝達に寄与しない状態では、この変速用歯車1と上記動力伝達軸2とを高速で相対回転させる。この状態では、当然に、上記ラジアルニードル軸受3部分に十分な量の潤滑油を流通させる必要がある。これに対して、上記変速用歯車1が動力伝達に寄与する状態では、上記ラジアルニードル軸受3は、上記変速用歯車1と上記動力伝達軸2との相対回転を許容する必要はない。但し、この状態では、前記各ニードル6の転動面と前記外輪軌道4及び前記内輪軌道5との各接触部で微小な往復滑りが発生する。この様な微小な往復滑りに拘らず、これら各接触部でフレッチングが発生する事を防止する為には、上記シンクロ機構が結合されて、上記変速用歯車1と上記動力伝達軸2とが同期して回転する状態でも、上記ラジアルニードル軸受3部分に十分な量の潤滑油を流通させる必要がある。
この為従来から、前記特許文献1に記載されている様に、前記保持器7を構成するリム部10、10の外端縁に保持器側凹部13、13を形成すると共に、上記動力伝達軸2の内側中心部に形成した潤滑油の供給路16を形成していた。そして、この供給路16にその内端部を通じさせた分岐流路17の外端部を、上記ラジアルニードル軸受3に向け開口させていた。自動車の走行時には、変速機に組み込まれたポンプの作用に基づいて潤滑油を上記供給路16内に送り込み、上記分岐流路17を通じてラジアルニードル軸受3部分に送り込んで、このラジアルニードル軸受3を潤滑する。
上述の様な従来構造の場合、一般的な使用条件下では、前記シンクロ機構が結合されているか否かに関係なく、上記ラジアルニードル軸受3内に十分な量の潤滑油を流通させられる。そして、このラジアルニードル軸受3、及び、このラジアルニードル軸受3よりも下流側に存在する、前記変速用歯車1と前記段部14との当接部、上記シンクロ機構の構成部品同士の当接部等を潤滑できる。但し、スポーツカー等、より高性能の自動車用手動変速機に組み込まれるラジアルニードル軸受3の場合、上記保持器7及び前記各ニードル6が潤滑油流通に対する大きな抵抗になって、上記ラジアルニードル軸受3の内部、及び、上記各当接部等を十分に潤滑できなくなる可能性がある。この点に就いて、図10を参照しつつ説明する。
高性能の自動車用手動変速機に組み込まれるラジアルニードル軸受3を構成する保持器7には、運転時に遠心力に基づいて、径方向外方に向かう大きな力が作用する。一方、近年に於ける合成樹脂の改良(優れた耐熱性、耐油性、強度を有する合成樹脂の出現)と、慣性質量の低減に基づく変速機の性能向上とを目的として、上記保持器7を、金属製から合成樹脂製に変更する場合が増えている。但し、改良された合成樹脂とは言え、現状では鉄系金属材料に比べれば強度が低い為、上記の様な力に拘らず前記各柱部11、11の変形を抑える為には、これら各柱部11、11の断面積を大きくして、これら各柱部11、11の曲げ剛性を確保する必要がある。この為、図10の(A)に示す様に、これら各柱部11、11の内接円の直径R11を、両リム部10の内径R10よりも小さく(R11<R10)して、これら各柱部11、11の内径側端部をこれら両リム部10の内周面よりも径方向内方に突出させる事が考えられている。又、この様に各柱部11、11の内径側端部を上記両リム部10の内周面よりも径方向内方に突出させる事は、運転時に作用する遠心力に拘らず、2分割型の保持器7が外径側に変位し、上記両リム部10の外周面と外輪軌道4とが強く擦れ合うのを防止すべく、上記各柱部11、11の内径側端部と各ニードル6、6の転動面とを係合させる為にも必要である。
ところが、上記各柱部11、11の内径側端部を上記両リム部10の内周面よりも径方向内方に突出させると、図10の(A)から明らかな通り、ラジアルニードル軸受3を軸方向から見た場合に、上記両リム部10の内径側に、上記各柱部11、11の内径側端部と各ニードル6、6とが密に並んだ状態となる。この為、前記分岐流路17から前記動力伝達軸2(図6参照)の外径側に吐出した潤滑油が、上記ラジアルニードル軸受3の軸方向に流れにくくなり、前述した通り、上記ラジアルニードル軸受3の内部、及び、前記各当接部等を十分に潤滑できなくなる可能性がある。尚、上記保持器7の外周面と前記外輪軌道4とは、この保持器7の径方向位置を規制して、高速運転時にもこの保持器7が振動する事を防止する為、近接対向させる(外輪案内とする)場合が多い。この為、上記保持器7の外周面と上記外輪軌道4との間を流通する潤滑油の量も限られている。勿論、上記分岐流路17に通じる前記供給路16内に潤滑油を送り込む圧力を高くすれば、上記各部を十分に潤滑できるが、ポンプ駆動の為の動力損失が高くなる為、好ましくない。ニードル6、6の径を小さくしたり数を少なくする事も、上記ラジアルニードル軸受3の負荷容量、延ては耐久性を低下させる原因となる為、採用できない。尚、特許文献2には、金属板製保持器の加工途中で、円周方向に関する形状を波形にする技術が記載されている。但し、上記特許文献2には、完成後の保持器の一部に、軸方向に潤滑油を流通させ易くする為の溝等を設ける技術は記載されておらず、上記特許文献2に記載された発明は、本発明とは全く関係のないものである。
実願平5−15981号(実開平6−69439号)のCD−ROM 特開2005−188597号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、ニードルの径を小さくしたり数を少なくせずに、保持器を構成する各柱部の曲げ剛性を確保しつつ、潤滑油が軸方向に流通する事に対する抵抗を低く抑えられるラジアルニードル軸受を実現すべく発明したものである。
本発明のラジアルニードル軸受は、前述した従来から知られているラジアルニードル軸受と同様に、外輪相当部材と、内輪相当部材と、複数本のニードルと、保持器とを備える。
このうちの外輪相当部材は、円筒状の外輪、或いは自動車用手動変速機を構成する変速用歯車等で、内周面に円筒状の外輪軌道を設けている。
又、上記内輪相当部材は、円筒状の内輪、或いは自動車用手動変速機を構成する動力伝達軸等で、外周面に円筒状の内輪軌道を設けている。
又、上記各ニードルは、この内輪軌道と上記外輪軌道との間に、転動自在に設けられている。
更に、上記保持器は、上記各ニードルを保持する為のもので、軸方向に間隔を開けた状態で互いに同心に配置された1対のリム部同士の間に、円周方向に間隔を開けて配置された複数の柱部を掛け渡している。
そして、円周方向に隣り合う柱部と上記両リム部とにより四周を囲まれる空間を、それぞれ上記各ニードルを転動自在に保持する為のポケットとしている。
更に、上記両リム部の軸方向両端縁のうちでこれら各ポケットと反対側の端縁である外端縁の円周方向複数個所に、軸方向に凹んだ保持器側凹部を形成している。
特に、本発明のラジアルニードル軸受に於いては、上記保持器を構成する上記各柱部のうちの少なくとも一部の柱部の内径側側面に凹溝を、当該柱部の長さ方向に形成している。尚、この凹溝は、当該柱部のうちで上記両リム部の内周面よりも径方向内方に突出した部分の全長に亙り形成する事が好ましいが、例えば、当該柱部の長さ方向中間部の短い範囲で不連続であっても良い。この場合に好ましくは、潤滑油の吐出口を、この不連続部の内径側に配置し、吐出口の直径を、不連続部の長さよりも大きくする。
上述の様な本発明のラジアルニードル軸受を実施する場合に、好ましくは、請求項2に記載した様に、上記保持器を構成する各柱部の内接円の直径を両リム部の内径よりも小さくする。即ち、少なくとも一部の柱部のうちの少なくとも長さ方向中間部の内径側端部を、上記両リム部の内周面よりも径方向内方に突出させる。そして、当該柱部(内径側端部を両リム部の内周面よりも径方向内方に突出させた柱部)の内径側側面に形成した凹溝の長さ方向両端部を、当該柱部のうちで上記両リム部の内周面よりも径方向内方に突出した部分の長さ方向両端面に開口させる。
又、上述の様な本発明のラジアルニードル軸受を実施する場合に、上記保持器は、一体型であるか2分割型であるかを問わない。
一体型とする場合には、請求項3に記載した様に、上記保持器が、それぞれが閉鎖円環状である1対のリム部を有する事になる。
これに対して、2分割型とする場合には、請求項4に記載した様に、上記保持器が、それぞれが半円筒形である1対の保持器素子の円周方向両端縁同士を当接若しくは近接対向させて成る。
更に、本発明を実施する場合に好ましくは、請求項6に記載した様に、前記外輪相当部材の軸方向端縁の円周方向複数個所に、軸方向に凹んだ外輪側凹部を形成する。
又、これら各外輪側凹部のピッチと、上記保持器の外端縁に形成した各保持器側凹部のピッチとを異ならせる。
そして、上記保持器と、上記外輪相当部材との相対回転に拘らず、少なくとも1個の保持器側凹部の一部と、少なくとも1個の外輪側凹部の一部とを、径方向に関して整合させる。
上述の様に構成する本発明のラジアルニードル軸受によれば、ニードルの径を小さくしたり、数を少なくしたりせずに、保持器を構成する各柱部の曲げ剛性を確保しつつ、潤滑油が軸方向に流通する事に対する抵抗を低く抑えられる。
即ち、ラジアルニードル軸受の内径側に送り込まれた潤滑油の一部は、上記各柱部のうちの少なくとも一部の柱部の内径側側面に形成した凹溝を通じて、上記ラジアルニードル軸受の軸方向に流通する。この為、上記潤滑油を、このラジアルニードル軸受の軸方向全長に亙り行き渡らせる事ができる。これに加えて、上記潤滑油がこのラジアルニードル軸受を通過する事に対する抵抗を低く抑えて、このラジアルニードル軸受の下流側に存在する、潤滑油を必要とする部分にも、十分量の潤滑油を送り込める。
この為、自動車用手動変速機等の各種回転機械装置の高性能化を図り易くなる。
尚、本発明を実施する場合に、保持器を構成する各柱部の内接円の直径が両リム部の内径と同じである、即ち、各柱部の内径側端部がこれら両リム部の内周面と同一円筒面上に存在する構造を採用しても、上記各柱部の内径側側面に凹溝を形成する事で、潤滑油が軸方向に流通する事に対する抵抗を低く抑えられると言った効果を得られる。
但し、本発明は、この様な構造よりも、請求項2に記載した様に、少なくとも一部(好ましくは全部)の柱部の内径側端部が1対の両リム部の内周面よりも径方向内方に突出した構造で実施する事が好ましい。この様な構造で実施し、上記凹溝の長さ方向両端部を上記各柱部のうちで上記両リム部の内周面よりも径方向内方に突出した部分の長さ方向両端面に開口させれば、各柱部の曲げ剛性を確保しつつ、潤滑油が軸方向に流通する事に対する抵抗を低く抑えられると言った効果を、より高次元で得られる。
又、本発明を実施する場合に、2分割型の保持器を使用すれば、請求項5に記載した様に、保持器として、合成樹脂を射出成形する事により造られたものを使用する場合に、この射出成形の為の型を比較的(一体型の保持器を射出成形する場合に比べて)簡単に構成できる。又、2分割型の保持器の場合、1対の保持器素子の円周方向端面同士の間に隙間を介在させる事で、外輪相当部材と内輪相当部材とが相対回転しない状態でも、保持器を(1対の保持器素子を交互に)円周方向に変位させられる。この為、フレッチング防止の面からは、一体型の保持器を使用する場合に比べて有利である。
図1〜5は、請求項1、2、4〜6に対応する、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本例の特徴は、保持器7a(図3参照)を構成する複数本の柱部11a、11aの形状を工夫する事により、この保持器7aを組み込んだラジアルニードル軸受3(図6参照)の内径側に送り込まれた潤滑油を、このラジアルニードル軸受3の軸方向に流通し易くする点にある。その他の部分の構成及び作用に就いては、前述した従来構造の場合と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
本例の保持器7aは、それぞれが合成樹脂を射出成形して成る1対の保持器素子18、18の円周方向両端縁同士を当接若しくは近接対向させる事で、全体を円筒状に構成している。この様な保持器7aは、上記両保持器素子18、18を組み合わせた状態で、それぞれが(円周方向2個所位置で不連続になった)円環状である1対のリム部10a、10aを、軸方向に間隔を開けた状態で互いに同心に配置している。そして、これら両リム部10a、10a同士の間に掛け渡す状態で上記各柱部11a、11aを、円周方向に間隔を開けて配置している。そして、円周方向に隣り合う柱部11a、11aと上記両リム部10a、10aとにより四周を囲まれる空間を、それぞれ各ニードル6、6を転動自在に保持する為のポケット12、12としている。更に、上記両リム部10a、10aの外端縁の円周方向複数個所に、軸方向に凹んだ保持器側凹部13、13を形成している。
上記各柱部11a、11aのうち、上記両リム部10a、10aの近傍の長さ方向両端部を除く、長さ方向中間部の内接円の直径は上記両リム部10a、10aの内径よりも小さく、これら各柱部11a、11aの長さ方向中間部の内径側端部は、これら両リム部10a、10aの内周面よりも径方向内方に突出している。そして、上記各柱部11a、11aの内径側側面にそれぞれ凹溝19、19を、これら各柱部11a、11aのうちで、上記径方向内方に突出した、長さ方向中間部の全長に亙り形成している。そして、上記各凹溝19、19の長さ方向両端部を、これら各柱部11a、11aのうちで、上記両リム部10a、10aの内周面よりも径方向内方に突出した部分の長さ方向両端面に開口させている。但し、上記各凹溝19、19の底部を結ぶ円弧(これら各凹溝19、19の外接円)の直径は、上記両リム部10a、10aの内径以下として、上記各凹溝19、19の底部が、これら両リム部10a、10aの内周面よりも径方向外側に位置しない様にしている。尚、図示の例では、上記各凹溝19、19の断面形状を円弧形としているが、この断面形状は特に問わず、三角形、四角形等の角形であっても良い。更に、図示の例では、上記各ポケット12、12内から上記各ニードル6、6が内径側に抜け出る事を防止する為、上記各柱部11a、11aの円周方向両側面の内径側端部に形成した係止部22、22を、これら各柱部11a、11aの長さ方向中間部で上記径方向内方に突出した部分のうちの、長さ方向両端部にのみ設けている。言い換えれば、{前述の図10の(B)に示した従来構造とは異なり}上記各柱部11a、11aの長さ方向中間部に係止部を設けず、これら各柱部11a、11aの円周方向に関する幅w11{図3の(B)参照}を、長さ方向中間部で小さくしている。
上述の様な保持器7aを上記各ニードル6、6と組み合わせて、前述の図6に示した様に、変速用歯車1の内周面に設けた外輪軌道4と動力用伝達軸2の外周面に設けた内輪軌道5との間に設置してラジアルニードル軸受3を構成すれば、分岐流路17から吐出した潤滑油が軸方向に流通する事に対する抵抗を低く抑えられる。即ち、この分岐流路17の下流端に設けた吐出口から上記保持器7aの内径側に吐出した潤滑油の一部は、上記各柱部11a、11aの内径側側面に設けた各凹溝19、19内に捕集されて、これら各凹溝19、19内を、上記保持器7aの軸方向両端側に向けて流れる。そして上記潤滑油は、上記各ニードル6、6と上記各柱部11a、11aとの間の隙間を流れた潤滑油と共に、上記ラジアルニードル軸受3、及び、このラジアルニードル軸受3よりも下流側に存在する、変速用歯車1と段部14との当接部、シンクロ機構の構成部品同士の当接部等を潤滑できる。更に、本例の場合には、上記各柱部11a、11aの長さ方向中間部の幅w11を小さくしている為、これら各柱部11a、11aの長さ方向中間部と上記各ニードル6、6の長さ方向中間部との間にも、比較的大きな隙間が存在する状態となる。そして、これら各隙間を通じて潤滑油が、上記保持器7aの内径側から外径側に流通する。そして、この保持器7aの外径側に達した潤滑油は、この保持器7aの外周面と上記外輪軌道4との間に存在する微小隙間を通じて、この保持器7aの軸方向端部に向けて流れる。
上述の様に、上記各柱部11a、11aの内径側側面に設けた各凹溝19、19を通じて潤滑油の一部を流通させるので、上記各ニードル6、6の径を小さくしたり、数を少なくしたりせずに、上記保持器7aを構成する上記各柱部11a、11aの曲げ剛性を確保しつつ、潤滑油が軸方向に流通する事に対する抵抗を低く抑えられる。即ち、上記各凹溝19、19は、上記各柱部11a、11aの内径側側面の幅方向(円周方向)中央部にのみ形成しており、これら各柱部11a、11aの幅方向両端部の、径方向に関する厚さを小さくせずに済む。この為、上記各凹溝19、19を形成する事による、上記各柱部11a、11aの曲げ剛性の低下を最小限(実用上問題ない程度)に抑えられる。この為、自動車用手動変速機等の各種回転機械装置の高性能化を図り易くなる。
尚、上記各凹溝19、19内、及び、上記各ニードル6、6と上記各柱部11a、11aとの間の隙間、更には上記微小隙間を流れた潤滑油が、更に下流側に存在する変速用歯車1と段部14との当接部、シンクロ機構の構成部品同士の当接部等に円滑に送られる様に、合わせて、上記ラジアルニードル軸受3内の潤滑油の流通量を確保する為に、上記変速用歯車1の軸方向端面に、外輪側凹部20、20(図5、7参照)を形成する事が好ましい。又、前述の図7に示した様に、ラジアルニードル軸受を構成する独立した円筒状の内輪8を使用し、この内輪8の外周面と変速用歯車1の内周面との間に保持器を配置する構造の場合には、この内輪8の軸方向端面に内輪側凹部21、21(図7参照)を形成する事が好ましい。
この様な、外輪側、内輪側、各凹部20、21を形成する場合には、次の様な点を考慮する事が好ましい。即ち、シンクロ機構が結合され、変速用歯車1と動力伝達軸2(図6参照)とが相対回転しなくなる状態で、上記保持器7aと上記変速用歯車1(及び上記内輪8)との回転方向に関する位相がどの様になるかは定まっていない。そこで、例えば図5に斜格子で示す様に、この位相がどの様であっても、上記保持器7aの軸方向端縁部に形成した保持器側凹部13、13のうちの少なくとも1個の保持器側凹部13と、上記変速用歯車1の軸方向端面に形成した外輪側凹部20、20(及び上記内輪8の軸方向端面に内輪側凹部21、21)のうちの少なくとも1個の外輪側凹部20(及び上記内輪側凹部21)の一部とが径方向に関して整合する状態にする。
この場合に、上記各凹部13、20、21を形成する、各部材の軸方向端面は、それぞれ相手面と摺接してこれら各部材の軸方向位置を規制するガイド面としての役割を有する。従って、何れの凹部13、20、21にしても、円周方向に関する幅を徒に大きくしたり、或いは、数を徒に多くする事は好ましくない。そこで、図5に示す様に、回転方向に関する位相を、上記保持器側凹部13、13の位相と上記外輪側凹部20、20(及び上記内輪側凹部21、21)とで互いに異ならせて、上述の様な整合状態を確保する。或いは、合成樹脂製で、しかも、相手面との摺接面積を広くする必要性が比較的低い保持器7aの端部に設けた保持器側凹部13、13の数を、上記外輪側凹部20、20(及び上記内輪側凹部21、21)の数よりも多くする。又、例えば保持器7aの強度を確保できる範囲内で、保持器側凹部13、13の円周方向の幅を大きくしたり数を増やす事で、各凹部13、20、21同士を径方向に関して整合させても良い(強度を確保できれば、他の凹部20、21の円周方向の幅を大きくしたり数を増やしても良い)。尚、何れの凹部13、20、21に関しても、当該凹部13、20、21を形成する部材の回転バランスが崩れない位置に形成する事は勿論である。
本発明は、自動車用手動変速機に限らず、各種回転機械装置の回転支持部に組み込まれるラジアルニードル軸受に適用して、耐久性を中心とする性能向上に寄与できる。又、本発明を実施する場合に、金属製の保持器を利用しても、性能向上効果を得られる。
本発明の実施の形態の1例を示す、保持器を構成する保持器素子とニードルとを示す斜視図。 同じく部分拡大斜視図。 1対の保持器素子を組み合わせて成る保持器とニードルとを軸方向から見た正投影図(A)と、この(A)のイ矢印方向から見た展開図(B)。 図3の(A)のロ部拡大図。 保持器側凹部と外輪側凹部との位置関係を説明する為、保持器及び外輪相当部材である変速用歯車を軸方向から見た状態で示す模式図。 本発明の対象となるラジアルニードル軸受を組み込んだ自動車用手動変速機の1例を示す部分断面図。 変速用歯車及びラジアルニードル軸受を取り出して示す斜視図。 ラジアルニードル軸受に組み込まれる保持器の第1例を示す斜視図。 同第2例を示す斜視図。 従来構造で、保持器とニードルとを軸方向から見た正投影図(A)と、この(A)のハ矢印方向から見た展開図(B)。
符号の説明
1 変速用歯車
2 動力伝達軸
3 ラジアルニードル軸受
4 外輪軌道
5 内輪軌道
6 ニードル
7、7a 保持器
8 内輪
9 係合歯
10、10a リム部
11、11a 柱部
12 ポケット
13 保持器側凹部
14 段部
15 シンクロハブ
16 供給路
17 分岐流路
18 保持器素子
19 凹溝
20 外輪側凹部
21 内輪側凹部
22 係止部

Claims (6)

  1. 内周面に円筒状の外輪軌道を設けた外輪相当部材と、外周面に円筒状の内輪軌道を設けた内輪相当部材と、これら外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数本のニードルと、これら各ニードルを保持する為の保持器とを備え、この保持器は、軸方向に間隔を開けた状態で互いに同心に配置された1対のリム部同士の間に、円周方向に間隔を開けて配置された複数の柱部を掛け渡し、円周方向に隣り合う柱部と上記両リム部とにより四周を囲まれる空間を、それぞれ上記各ニードルを転動自在に保持する為のポケットとすると共に、上記両リム部の軸方向両端縁のうちでこれら各ポケットと反対側の端縁である外端縁の円周方向複数個所に、軸方向に凹んだ保持器側凹部を形成したものであるラジアルニードル軸受に於いて、上記各柱部のうちの少なくとも一部の柱部の内径側側面に凹溝を、当該柱部の長さ方向に形成している事を特徴とするラジアルニードル軸受。
  2. 保持器を構成する各柱部の内接円の直径が両リム部の内径よりも小さく、少なくとも一部の柱部のうちの少なくとも長さ方向中間部の内径側端部が上記両リム部の内周面よりも径方向内方に突出しており、当該柱部の内径側側面に形成した凹溝の長さ方向両端部が、当該柱部のうちで上記両リム部の内周面よりも径方向内方に突出した部分の長さ方向両端面に開口している、請求項1に記載したラジアルニードル軸受。
  3. 保持器が、それぞれが閉鎖円環状である1対のリム部を有する一体型である、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載したラジアルニードル軸受。
  4. 保持器が、それぞれが半円筒形である1対の保持器素子の円周方向両端縁同士を当接若しくは近接対向させて成る2分割型である、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載したラジアルニードル軸受。
  5. 保持器が、合成樹脂を射出成形する事により造られている、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載したラジアルニードル軸受。
  6. 外輪相当部材の軸方向端縁の円周方向複数個所に軸方向に凹んだ外輪側凹部を形成しており、これら各外輪側凹部のピッチと、保持器の外端縁に形成した各保持器側凹部のピッチとを異ならせる事により、この保持器と上記外輪相当部材との相対回転に拘らず、少なくとも1個の保持器側凹部の一部と、少なくとも1個の外輪側凹部の一部とを径方向に関して整合させる、請求項1〜5のうちの何れか1項に記載したラジアルニードル軸受。
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