以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態のディーゼルエンジン1の制御装置の概略構成図である。
吸気管2より吸入された空気(吸気)は、吸気バルブ12が開いたときに、主にシリンダ3とピストン4で区画される燃焼室5に導入される。吸気バルブ12が閉じ、ピストン4が上動することによって、燃焼室5内の作動ガスが圧縮される。この圧縮された空気に対して、燃焼室5に臨んで設けてある燃料噴射弁11より燃料を噴射供給することで、燃料が圧縮着火される。この圧縮着火されて燃焼する作動ガスの燃焼圧力がピストン4を押し下げる仕事をする。燃焼後の高温のガスは排気バルブ13を開くことによって、排気管6に排出される。
エンジン1には、NOx低減のためEGR装置21を備える。EGR装置21は、排気管6を流れる排気の一部を吸気管2に戻すEGR通路22、EGR通路22を流れるEGRガス量を調整可能なEGRバルブ23、EGRバルブ23を駆動するモータ25、EGRガスを冷却するEGRクーラ24で構成されている。燃焼室5内において燃料が高温で燃焼すると、空気中の窒素が酸化されてNOxが発生する。このとき、EGRバルブ23を開くことで、EGRガスと新気の混合である作動ガスが燃焼室5に流入する。燃焼室5内におけるEGRガスの分だけ燃料の燃焼が不活発となることから燃焼温度が低下し、NOxを低減することができる。
エンジンの暖機完了後にEGRガスを冷却することなく吸気管2に導入したのでは、高温のEGRガスにより空気が膨張して、吸気の充填効率が低下する。このとき、EGRクーラ24によってEGRガスを冷却することで、吸気の充填効率が低下することを抑制できる。
エンジン1には、冷却装置31を備える。エンジン1の冷却装置31は、ウォータジャケット32、ラジエータ33、冷却水通路34,35、ポンプ36、バイパス通路37、サーモスタット38から構成される。
各気筒の燃焼室5を被覆するウォータジャケット32とラジエータ33とは冷却水通路34,35で接続され、冷却水の循環路が形成されている。ポンプ36を駆動することで冷却水が冷却水通路34,35を循環する。エンジン1の暖機完了後にはウォータジャケット32で高温となった冷却水がラジエータ33で冷却される。ラジエータ33で冷却された冷却水がウォータジャケット32に戻される。
サーモスタット38はバイパス通路37とラジエータ33のいずれに冷却水を流すかを切換えるものである。エンジンの冷間始動直後にはサーモスタット38が全閉状態となり、ラジエータ33をバイパスするバイパス通路37に冷却水を流す。冷間始動直後にまで冷却水をラジエータ33に導いて冷却すると、エンジン1がなかなか暖まらないのであるが、ラジエータ33をバイパスして冷却水を流すことで、エンジンの暖機を早めることができる。
エンジンの冷間状態でエンジン1の早期暖機を行うため、EGRバルブ23を所定開度で開く。この場合に、上記のEGRクーラ24は、EGRガスと熱交換を行う冷却媒体を冷却水(冷却液)とするEGRクーラである。エンジン1の冷間状態でまだ十分には暖まっていない冷却水がEGRクーラ24に導かれると、EGRクーラ24を流れる高温のEGRガスとの間で熱交換が行われる。EGRガスの熱を受け取って冷却水の温度が上昇するわけである。EGRクーラ24での冷却水への熱交換量(EGRガスからの熱回収)の分だけエンジン1が早期に暖機することとなる。
その一方で、エンジン1の冷間状態ではEGRガスがEGRクーラ24において冷却される。この冷却されたEGRガスが吸気管2に導入されるため、EGRガスが冷却されない場合より、新気の温度が低下する。この温度低下した新気とEGRガスの混合である作動ガスがそのまま燃焼室5に導入されると、作動ガスの燃焼室内における温度が低下する。これによって、エンジンの冷間状態かつ低負荷側の失火しやすい領域では、燃焼室内の作動ガス温度が圧縮着火し得る温度に到達しないことがあり、失火が生じる恐れがある。
この場合に、エンジンの負荷により内部EGRと外部EGRを切換え可能な装置がある(特許第003040153号公報参照)。この装置を適用し、エンジンの冷間状態では、外部EGRを停止し、新気の温度が低下しない内部EGRに切換えることによって失火を防ぐことが考えられる。しかしながら、このとき外部EGRが停止されるため、EGRクーラでの冷却水への熱交換量が低下する。EGRクーラで冷却水に熱が与えられないのでは、冷却水の上昇が遅くなり、エンジン暖機完了までの時間が長引いてしまう。
そこで、本発明の第1実施形態では、排気バルブ13を吸気行程においても開くことが可能な可変バルブ開閉機構51を設ける。そして、エンジンの冷間状態かつ低負荷側の失火しやすい運転領域で、可変バルブ開閉機構51を用いて排気バルブ13を吸気行程で開き排気を燃焼室5に再導入する。これによって、排気バルブ13を吸気行程で開かない場合より吸気のスワール(以下「吸気スワール」ともいう。)を弱めるようにする。
これについて図2を用いて補足すると、図2は吸気のスワール(あるいはスワール比)に対する着火性の特性図である。ここで、「スワール」とは、とは、シリンダ3をシリンダ軸方向からみたときに、旋回する方向に流れるガス流れのことをいう。また、「スワール比」はスワールの相対的強さを表す指標である。例えばスワールの回転速度とエンジン回転速度の比、またはスワールのシリンダ軸方向に直交する方向の速度成分とシリンダ軸方向の速度成分の比である。
図2に示したように、横軸に吸気のスワール(あるいはスワール比)、縦軸にエンジンの冷間状態かつ低負荷側の失火しやすい領域(以下、単に「失火しやすい領域」ともいう。)における着火性(図2では単に「着火性」と略記。)を採る。このとき、吸気のスワールが弱くなる(スワール比が小さくなる)ほど失火しやすい領域における着火性が良くなる特性となる。このことは、低い作動ガス温度でも、吸気のスワールを弱くする(スワール比を小さくする)ことで、作動ガスが圧縮着火温度に到達して燃焼することを意味する。低い作動ガス温度でもよいことは、EGRガスの割合を増やす(つまり目標EGR比を大きくする)ことができることを意味する。目標EGR比を大きくすることができると、EGRクーラ24での冷却水への熱交換量が増え、その分エンジン1の暖機を早めることができることとなる。言い換えると、目標EGR比を大きくしても、吸気のスワールを弱くする(スワール比を小さく)することで、同じ着火性を確保できることを意味する。失火を防ぎつつ、EGRクーラ24での冷却水への熱交換量の低下を抑制しエンジン1の早期暖機をも図ることができるのである。
一方、エンジンの冷間状態かつ低負荷側の失火しやすい領域よりも高負荷側かつ高回転速度側にあってスモークの発生しやすい領域(以下、単に「スモークの発生しやすい領域」ともいう。)が存在する。エンジンの冷間状態であっても、低負荷側の失火しやすい領域よりもエンジンの負荷が大きい領域になると、燃焼室内の作動ガス温度が圧縮着火温度に必ず到達するため失火することはもうないのであるが、その一方で、今度はスモークが多く発生する。ここでいうスモークは、エンジン1が完全に暖機する前、あるいは極く低負荷で運転している場合に、燃焼室内温度が低すぎるなどの燃焼上の悪条件で、燃料または潤滑油が燃焼室内で完全に燃焼しないために発生するものである。
このスモークの発生しやすい領域でも吸気のスワールの変更によりスモークを低減できないかと本発明者が考えた。そして、第1実施形態では、スモークの発生しやすい領域では、可変バルブ開閉機構51を用いて排気バルブ13を吸気行程で開き排気を燃焼室5に再導入することで排気バルブ13を吸気行程で開かない場合より吸気のスワールを強めるようにする。
これについて図3を用いて補足すると、図3は吸気のスワール(あるいはスワール比)に対するスモークの特性図である。図3に示したように、横軸に吸気のスワール(あるいはスワール比)、縦軸にエンジンの冷間状態かつスモークの発生しやすい領域(以下、単に「スモークの発生しやすい領域」ともいう。)におけるスモーク(図2では単に「スモーク」略記)を採る。このとき、吸気のスワールが強くなる(あるいはスワール比が大きくなる)ほどスモークの発生しやすい領域におけるスモークが良好となる特性となる。スモークの発生しやすい領域では、吸気のスワールを強化する(あるいはスワール比を大きくする)ことで、スモークを良好にすることができるのである。
次に、低負荷側の失火しやすい領域、この失火しやすい領域よりも高負荷側かつ高回転速度側にあってスモークの発生しやすい領域を運転領域上で明確にする。図4Aは横軸にエンジンの回転速度Ne、縦軸にエンジンの負荷を採った運転領域図である。図4Aにおいて、上記低負荷側の失火しやすい領域は、エンジン回転速度Neが小さい側かつエンジン負荷が小さい側の領域Aである。一方、上記スモークの発生しやすい領域は、領域Aより高負荷側かつ高回転速度側の領域Cである。領域Cより高負荷側の領域Dは本実施形態の制御対象外の領域である。
実際の制御では、低負荷かつ低回転速度の領域を、A,B,Cの3つの領域に分けて設定している。つまり、本制御を行う領域は、低回転速度側かつ低負荷側の領域である。領域Aと領域Cに隣接して設けている領域Bは、通常の吸排気バルブ12,13のリフト量及び通常の吸排気バルブ12,13の開閉タイミングで運転する領域である。詳述すると、領域Bで着火性及びスモークの特性が各目標と一致するように、吸排気バルブ12,13のリフト量及び吸排気バルブ12,13の開閉タイミングを適合したとする。この場合に、エンジンの冷間状態で領域Bより低負荷側の領域Aになると、空気過剰率が領域Bより大きくなるため燃焼室内の作動ガス温度が低下して失火しやすくなる(着火性が悪くなる)。一方、エンジンの冷間状態で領域Bより高負荷側の領域Cになると、目標空気過剰率が領域Bより小さくなるため圧縮着火はするものの、燃焼が安定しないために今度はスモークが生じやすくなる。そこで、本実施形態では、エンジンの冷間状態でエンジンの運転条件(あるいは運転点)が領域Aにあるときに吸気のスワールを領域Bにあるときより弱化し、運転条件が領域Cにあるときに吸気のスワールを領域Bにあるときより強化する。
上記4つの領域A,B,C,Dの境界は、簡単には目標空気過剰率によって定まる。この理由は、エンジンの冷間状態での燃焼状態は目標空気過剰率と強く相関するためである。すなわち、上記3つの領域A,B,Cを含んだ低負荷域及び領域Dのうち領域Cに隣接する領域での目標空気過剰率tλの特性は図4Bに示したようになる。ここで、図4Bは図4AのX部の拡大図である。図4Bにおいてエンジン回転速度Neが一定の条件でエンジンの負荷が大きくなるほど目標空気過剰率tλは1.0へと小さくなる。エンジンの負荷が一定の条件ではエンジン回転速度Neが高くなるほど目標空気過剰率tλは小さくなる。3つの領域の境界を通過する目標空気過剰率tλをしきい値として設定することで、上記3つの領域A,B,Cのうちのどの領域にあるか否かを判定することができる。
例えば、領域Aと領域Bを分ける境界の目標空気過剰率を所定値a、領域Bと領域Cを分ける境界の目標空気過剰率tλを所定値b、領域Cと領域Dを分ける境界の目標空気過剰率を所定値cとして定める。すると、目標空気過剰率tλと所定値a,b,cを比較することで、次のように領域判定を行うことができる。すなわち、目標空気過剰率tλが所定値a未満の場合に領域Aにあると判定することができる。目標空気過剰率tλが所定値a以上所定値b未満の場合に領域Bにあると判定することができる。目標空気過剰率tλが所定値b以上所定値c未満の場合に領域Cにあると判定することができる。目標空気過剰率tλが所定値c以上の場合に領域Dにあると判定することができる。
図5はペントルーフ状の燃焼室5を下から透視した概略図である。ただし、図1に示したシリンダ3の軸が上下方向にある、つまり燃焼室5が上方にあるとする。ここで、図5左側は領域Bでの、図5中央は領域Aでの、図5右側は領域Cでの各吸気のスワールの状態を示している。
3つの各領域A,B,Cにおいて吸気のスワールがどうなるかを説明する前に、燃焼室5及びその周辺の構成を先に説明する。図5に示したように、ペントルーフ状の燃焼室5には、一方のルーフに2つの吸気ポート61A,61Bが他方のルーフに2つの排気ポート63A,63Bが並んで開口している。2つの吸気ポート61A,61Bの燃焼室5への開口部62A,62Bを2つの各吸気バルブ12A,12Bが開閉する。2つの排気ポート63A,63Bの燃焼室5への開口部64A,64Bを2つの各排気バルブ13A,13Bが開閉する。以下、一方の開口部64Aを開閉する排気バルブ13Aを「第1排気バルブ」と、他方の開口部64Bを開閉する排気バルブ13Bを「第2排気バルブ」という。これで、燃焼室5及びその周辺の構成の説明を終える。
いま、領域B,A,Cでは、図5に示したように、吸気行程で2つの吸気バルブ12A,12Bがともに開かれたとき、2つの吸気ポート61A,61Bから燃焼室5に流れ込む作動ガスによって、反時計方向にスワールが生じるものとする(黒塗り矢印参照)。
次に、図5中央に示したように、領域Aで吸気のスワールの向きに対して上流側に位置する第1排気バルブ13Aを吸気行程で所定のリフト量L1まで開く。ただし、吸気スワールの向きに対して下流側に位置する第2排気バルブ13Aは吸気行程で全閉状態を維持させる。このとき、一方の排気ポート63Aから燃焼室5に再導入される排気が時計方向に流れるように一方の排気ポート63Aの形状を工夫しておく。開いた第1排気バルブ13Aより燃焼室5に再導入される排気の流れる向き(網掛け矢印参照)が吸気のスワールの向きと逆になるので、吸気のスワールが弱められることとなる。
一方、領域Cで図5右側に示したように、吸気のスワールの向きに対して下流側に位置する第2排気バルブ13Bを吸気行程で所定のリフト量L2まで開く。ただし、吸気スワールの向きに対して上流側に位置する第1排気バルブ13Aは吸気行程で全閉状態を維持させる。このとき、他方の排気ポート63Bから燃焼室5に再導入される排気が反時計方向に流れるように他方の排気ポート63Bの形状を工夫しておく。開いた第2排気バルブ13Bより燃焼室5に再導入される排気の流れる向き(網掛け矢印参照)が吸気のスワールの向きと同じになるので、吸気のスワールが強められることとなる。
図6,図7は吸気行程における目標排気再導入量に対する2つの排気バルブ13A,13Bのリフト量の特性図である。このうち、図6は領域Aにおいて第1排気バルブ13Aを吸気行程で主にリフトさせて一方の排気ポート63Aから排気を燃焼室5に再導入する場合のものである。図7は領域Cにおいて第2排気バルブ13Bを吸気行程で主にリフトさせて他方の排気ポート63Bから排気を燃焼室5に再導入する場合のものである。
図6から説明すると、領域Aにおいて吸気行程における目標排気再導入量が所定値Qr1に到達するまでは第1排気バルブ13Aのリフト量を直線的に大きくする(図6実線参照)。このとき、第2排気バルブ13Bのリフト量はゼロに保つ(図6一点鎖線参照)、つまり第2排気バルブ13Bはリフトさせない。
続いて吸気行程における目標排気再導入量が所定値Qr1に到達した後には第1排気バルブ13Aのリフト量を所定値L1に維持する(図6実線参照)。そして、吸気行程における目標排気再導入量が所定値Qr1より大きくなるほど第2排気バルブ13Bのリフト量を直線的に大きくする(図6一点鎖線参照)。
このように、吸気行程における目標排気再導入量が所定値Qr1を超える領域で第1排気バルブ13Aに加えて第2排気バルブ13Bをリフトさせるのは次の理由からである。すなわち、吸気行程における目標排気再導入量が多い場合に第1排気バルブ13Aを所定のリフト量L1までリフトさせただけでは、吸気行程における実際の排気再導入量が吸気行程における目標排気再導入量から不足することがあるためである。このときには、第1排気バルブ13Aを最大のリフト量(L1)までリフトさせた後に、第2排気バルブ13Bのリフト量を直線的に大きくしていくことで、吸気行程における目標排気再導入量を得ることができる。吸気行程における目標排気再導入量が所定値Qr1を超える領域では、第1排気バルブ13Aを第2排気バルブ13Bに対し相対的に大きくリフトさせる(開く)わけである。このように2つの排気バルブ13A,13Bがともにリフトしても、最初にリフトした第1排気バルブ13Aから導入される排気再導入量のほうが、後でリフトした第2排気バルブ13Bから導入される排気再導入量より多いものとなる。このため、吸気行程における目標排気再導入量が所定値Qr1を超える領域においてもスワールを弱めることができることに変わりない。
次に、図7を説明すると、領域Cにおいて吸気行程における目標排気再導入量が所定値Qr2に到達するまでは第2排気バルブ13Bのリフト量を直線的に大きくする(図7実線参照)。このとき、第1排気バルブ13Aのリフト量はゼロに保つ(図7一点鎖線参照)、つまり第1排気バルブ13Aは開かない。
続いて吸気行程における目標排気再導入量が所定値Qr2に到達した後には第2排気バルブ13Bのリフト量を所定値L2に維持する(図7実線参照)。そして、吸気行程における目標排気再導入量が所定値Qr2より大きくなるほど第1排気バルブの13Aのリフト量を直線的に大きくする(図7一点鎖線参照)。
このように、吸気行程における目標排気再導入量が所定値Qr2を超える領域で第2排気バルブ13Bに加えて第1排気バルブ13Aをリフトさせるのは次の理由からである。すなわち、吸気行程における目標排気再導入量が多い場合に第2排気バルブ13Bを所定のリフト量L2までリフトさせただけでは、吸気行程における実際の排気再導入量が吸気行程における目標排気再導入量から不足することがあるためである。このときには、第2排気バルブ13Bを最大リフト量(L2)までリフトさせた後に、第1排気バルブ13Aのリフト量を直線的に大きくしていくことで、吸気行程における目標排気再導入量を得ることができる。吸気行程における目標排気再導入量が所定値Qr2を超える領域では、第2排気バルブ13Bを第1排気バルブ13Aに対し相対的に大きくリフトさせる(開く)わけである。このように2つの排気バルブ13A,13Bがともにリフトしても、最初にリフトした第2排気バルブ13Bから導入される排気再導入量のほうが、後でリフトした第1排気バルブ13Aから導入される排気再導入量より多いものとなる。このため、吸気行程における目標排気再導入量が所定値Qr2を超える領域においても吸気のスワールを強めることができることに変わりない。
次に、エンジン1には、2つの各排気バルブ13A,13Bを吸気行程においても独立にリフトする(開く)ことが可能な可変バルブ開閉機構51A,51Bを備える。2つの各排気バルブ13A,13Bがカム駆動である場合の可変バルブ開閉機構51A,51Bについて、図8,図9のモデル図を参照してその概略を説明する。
まず、第1排気バルブ13Aを吸気行程においても開くことが可能な可変バルブ開閉機構51Aから説明する。図8に示したように、第1排気バルブ用カムシャフト52Aに、第1のカム53Aと第2のカム54Aの2つのカムを並べて形成する。2つのカム53A,54Aにはバルブスプリング14Aを用いて第1排気バルブ13Aを閉弁側に付勢する。
第1のカム53Aを用いて第1排気バルブ13Aを駆動したとき、排気行程で第1排気バルブ13Aが所定のリフト量Lnrm1でリフトするように第1のカム53Aのカムプロフィールを定めておく。一方、第2のカム54Aを用いて第1排気バルブ13Aを駆動したとき、吸気行程で第1排気バルブ13Aが所定のリフト量L1(L1<Lnrm1)でリフトするように第2のカム54Aのカムプロフィールを定めておく。そして、これら2つのカム53A,54Aを、使用カム切換機構55Aを用いて切換可能に構成し、この使用カム切換機構55Aを駆動する油圧アクチュエータ56A及び油圧アクチュエータ56Aを駆動する電磁ソレノイドバルブ57Aを設けておく。
電磁ソレノイドバルブ57Aにエンジンコントローラ41からの信号が送られてないときには、排気行程で第1のカム53Aによって第1排気バルブ13Aが所定のリフト量Lnrm1でリフトするものとする。一方、電磁ソレノイドバルブ57Aがエンジンコントローラ41からの切換信号を受けると、油圧アクチュエータ56Aが駆動され、排気行程に続く吸気行程においても第2のカム54Aによって第1排気バルブ13Aが所定のリフト量L1でリフトするようにする。
さらに、図8に示したように、吸気行程で第2のカム54Aによって第1排気バルブ13Aをリフトするとき、そのリフト量を調整可能なリフト量調整機構58Aを備えさせる。このリフト量調整機構58Aを駆動する油圧アクチュエータ59A及び油圧アクチュエータ59Aの駆動量をデューティ制御可能な電磁ソレノイドバルブ60Aを設けておく。そして、電磁ソレノイドバルブ60Aに与えるデューティ比[%]に応じて油圧アクチュエータ59Aの駆動量、つまり第1排気バルブ13Aのリフト量を制御する。例えば、図10に示したように、デューティ比がゼロ[%]のとき第1排気バルブ13Aのリフト量がゼロ、デューティ比が100[%]のとき第1排気バルブ13Aのリフト量が最大リフト量(L1)となるよう定めておく。これによって、電磁ソレノイドバルブ60Aに与えるデューティ比によって第1排気バルブ13Aのリフト量を任意の量に制御できる。
次に、第2排気バルブ13Bを吸気行程においてもリフトする(開く)ことが可能な可変バルブ開閉機構51Bは、第1排気バルブ13Aを吸気行程においてもリフトする(開く)ことが可能な可変バルブ開閉機構51Aと同様の構成である。図9に示したように、第2排気バルブ用カムシャフト52Bに、第1のカム53Bと第2のカム54Bの2つのカムを並べて形成する。2つのカム53B,54Bにはバルブスプリング14Bを用いて第2排気バルブ13Bを閉弁側に付勢する。
第1のカム53Bを用いて第2排気バルブ13Bを駆動したとき、排気行程で第2排気バルブ13Bが所定のリフト量Lnrm2でリフトするように第1のカム53Bのカムプロフィールを定めておく。一方、第2のカム54Bを用いて第2排気バルブ13Bを駆動したとき、吸気行程で第2排気バルブ13Bが所定のリフト量L2(L2<Lnrm2)でリフトするように第2のカム54Bのカムプロフィールを定めておく。そして、これら2つのカム53B,54Bを、使用カム切換機構55Bを用いて切換可能に構成し、この使用カム切換機構55Bを駆動する油圧アクチュエータ56B及び油圧アクチュエータ56Bを駆動する電磁ソレノイドバルブ57Bを設けておく。
電磁ソレノイドバルブ57Bにエンジンコントローラ41からの信号が送られてないときには、排気行程で第1のカム53Bによって第2排気バルブ13Bが所定のリフト量Lnrm2でリフトするものとする。一方、電磁ソレノイドバルブ57Bがエンジンコントローラ41からの切換信号を受けると、油圧アクチュエータ56Bが駆動され、排気行程に続く吸気行程においても第2のカム54Bによって第2排気バルブ13Bが所定のリフト量L2でリフトするようにする。
さらに、図9に示したように、吸気行程で第2のカム54Bによって第2排気バルブ13Bをリフトするとき、そのリフト量を調整可能なリフト量調整機構58Bを備えさせる。このリフト量調整機構58Bを駆動する油圧アクチュエータ59B及び油圧アクチュエータ59Bの駆動量をデューティ制御可能な電磁ソレノイドバルブ60Bを設けておく。そして、電磁ソレノイドバルブ60Bに与えるデューティ比[%]に応じて油圧アクチュエータ59Bの駆動量、つまり第2排気バルブ13Bのリフト量を制御する。例えば、図11に示したように、デューティ比がゼロ[%]のとき第2排気バルブ13Bのリフト量がゼロ、デューティ比が100[%]のとき第2排気バルブ13Bのリフト量が最大リフト量(L2)となるよう定めておく。これによって、電磁ソレノイドバルブ60Bに与えるデューティ比によって第2排気バルブ13Bのリフト量を任意の量に制御できる。
図12は領域Aでの第1排気バルブ13Aの、図13は領域Cでの第2排気バルブ13Bの各リフト特性図である。比較のため、図12,図13には吸気バルブ12A,12Bのリフト特性を破線で重ねて示している。
まず、第1排気バルブ13Aのリフト特性から説明する。図12に示したように、領域Aで第1のカム63Aを用いて排気行程で第1排気バルブ13Aを所定のリフト量Lnrm1でリフトさせた(図12一点鎖線参照)後に、第2のカム54Aに切換える。これによって、排気行程に続く吸気行程で第1排気バルブ13Aが所定のリフト量L1までリフトしている(図12実線参照)。領域Aにおける吸気行程での第1排気バルブ13Aのリフト量L1は、吸気行程の直前の排気行程での第1排気バルブ13Aのリフト量Lnrm1よりも小さくしている。この理由は次の通りである。すなわち、領域Aにおける吸気行程で第1排気バルブ13Aをリフトさせる目的は、排気ポート63から排気を燃焼室5に再導入することによって吸気のスワールを弱めることにある。領域Aにおける吸気行程での第1排気バルブ13Aのリフト量L1を大きくしたのでは、燃焼室5に再導入される排気の量が多くなり吸気のスワールを弱めすぎてしまうことがあるので、これを避けるためである。
次に、図13に示したように、第2排気バルブ13Bのリフト特性は、第1排気バルブ13Aのリフト特性と同様である。領域Cで第1のカム63Bを用いて排気行程で第2排気バルブ13Bを所定のリフト量Lnrm2でリフトさせた(図13一点鎖線参照)後に、第2のカム54Bに切換える。これによって、排気行程に続く吸気行程で第2排気バルブ13Bが所定のリフト量L2までリフトしている(図13実線参照)。領域Cにおける吸気行程での第2排気バルブ13Bのリフト量L2は、吸気行程の直前の排気行程での第2排気バルブ13Bのリフト量Lnrm2よりも小さくしている。この理由は次の通りである。すなわち、領域Cにおける吸気行程で第2排気バルブ13Bをリフトさせる目的は、排気ポート63Bから排気を燃焼室5に再導入することによって吸気のスワールを強めることにある。領域Cにおける吸気行程での第2排気バルブ13Bのリフト量L2を大きくしたのでは、燃焼室5に再導入される排気の量が多くなり吸気のスワールを強めすぎてしまうことがあるので、これを避けるためである。
図1に戻り、エンジンコントローラ41には、アクセルセンサ42からの信号、クランク角センサ43からの信号、水温センサ44からの信号、エアフローメータ45からの信号が入力する。ここで、アクセルセンサ42はアクセルペダル開度(アクセルペダルの踏込量)を検出する。クランク角センサ43はエンジン回転速度Neを検出する。水温センサ45はウォータジャケット32の冷却水の温度(水温)Twを検出する。エアフローメータ45はエンジン1に吸入される新気量Qaを検出する。エンジンコントローラ41では、エンジンの冷間状態で、これらの信号に基づいて、EGRバルブ23の開度を算出すると共に、2つの電磁ソレノイドバルブ57A,57BのON、OFFを制御する。また、エンジンの冷間状態かつ領域A,Cでは、吸気行程での第1、第2の排気バルブ13A,13Bのリフト量を算出する。また、イグニッションキー46がOFFからONに切換えられたときには、ポンプ36を作動させる。
エンジンコントローラ41で実行される上記の制御を図14のフローチャートに基づいて説明する。図14のフローは、2つの電磁ソレノイドバルブ57A,57BのON、OFFの制御及び領域A,Cにおける吸気行程での第1、第2の排気バルブ13A,13Bのリフト量を算出するためのものである。図14のフローは一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。なお、図14のフローでは2つの各電磁ソレノイドバルブ57A,57Bを「バルブ57A,57B」で略記する。
ステップ1では、水温センサ44により検出される水温Twと所定値Tw1を比較する。所定値Tw1はエンジン1の暖機が完了したか否かを判定するためのしきい値である。水温Twが所定値Tw1以上であるときにはエンジン1が暖機完了していると判断する。このときには本実施形態の制御は必要ないので、そのまま今回の処理を終了する。
ステップ1で水温Twが所定値Tw1未満であるときにはエンジン1が暖機完了前にある、つまりエンジンの冷間状態にあると判断してステップ2以降に進む。ステップ2では、エンジンの負荷と回転速度Neから所定のマップを検索することにより、目標EGR比[無名数]を算出する。上記エンジンの負荷としては、アクセルセンサ42により検出されるアクセルペダル開度、あるいはアクセルペダル開度とエンジン回転速度から算出される燃料噴射量を用いればよい。
ここで、EGR比の定義は次の通りである。
EGR比=EGRガス量/(新気量+EGRガス量) …(1)
目標EGR比は排気性能から予め定めている。例えば、目標NOx量を超えないようにエンジンの運転条件(エンジン負荷とNeから定まる)に応じて目標EGR比を予め定めている。
ステップ3では目標EGR比から目標EGRバルブ開度を算出する。この算出方法については公知の手法を用いればよい。
ステップ4では、エンジンの負荷と回転速度Neから定まる運転点が、図4Aに示したA,B,C,Dのいずれの領域に属しているか否かを判定し、判定した結果をメモリに記憶する。ここでは、図4Bで前述したようにエンジンの負荷と回転速度Neから目標空気過剰率を算出し、算出した目標空気過剰率に基づいてA,B,C,Dのいずれの領域に属しているか否かを判定することであってよい。
ステップ5では、メモリに記憶させてあるデータより運転点が領域Dにあるか否かをみる。運転点が領域Dにあるときには本実施形態の制御は必要ないので、そのまま今回の処理を終了する。
ステップ5で運転点が領域Dにないときにはステップ6以降に進む。ステップ6では、内部EGR比[無名数]を算出する。ここで、「内部EGR比」を、次の式で定義する。
内部EGR比=排気再導入量/排気量 …(2)
(2)式の排気再導入量は、領域Aでは第1排気バルブ13Aを吸気行程で主にリフトさせることによって、領域Cでは第2排気バルブ13Bを吸気行程で主にリフトさせることによって、燃焼室5に再導入される排気量のことである。(2)式より内部EGR比は、同じ運転条件であれば、排気再導入量が多くなるほど大きくなる値である。
ここで、内部EGR比を全EGR比で除した値と燃焼室内の作動ガス温度との間には、図15に示した関係があり、内部EGR比を全EGR比で除した値が大きくなるほど燃焼室内の作動ガス温度が高くなる。上記の「全EGR比」とは外部EGR比と内部EGR比との合計のことである。ここでは、外部EGR比として目標EGR比を採用すると、全EGR比は次式で与えられる。
全EGR比=目標EGR比+内部EGR比 …(3)
いま、図15において燃焼室内の作動ガスの圧縮着火温度が所定値Tbでなければならないとすると、燃焼室内の作動ガスを圧縮着火させるためには内部EGR比を全EGR比で除した値が所定値R1として定まる。つまり、次式が成立する。
内部EGR比/全EGR比=R1 …(4)
(4)式に上記(3)式を代入して全EGR比を消去し、内部EGR比について整理すると、次式が得られる。
内部EGR比=目標EGR比×R1/(1−R1) …(5)
(5)式の目標EGR比はステップ2で算出されている。(5)式の所定値R1は実験や適合により予め定めておけばよい。このようにして、(5)式により内部EGR比を求めることができる。
次に、ステップ7では内部EGR比から次式により目標排気再導入量(図14では「目標再導入量」で略記。)を算出する。
目標排気再導入量=内部EGR比×排気量 …(6)
(6)式は上記(2)式を変形することによって得られる。(6)式の排気量はセンサにより検出してもよいが、次式により算出することができる。
排気量=Qa(1+全EGR比) …(7)
ただし、Qa:エアフローメータ45により検出される新気量、
ここで、(7)式の全EGR比は上記(4)式より全EGR比=内部EGR比/R1であるので、これを(7)式に代入して全EGR比を消去すると、次式が得られる。
排気量=Qa(1+内部EGR比/R1) …(8)
(8)式の内部EGR比はステップ5で得られている。R1は予め定められている。新気量Qaはエアフローメータ45により検出されている。よって、(8)式より排気量を算出することができる。そして、算出した排気量を上記(6)式に代入することによって目標排気再導入量を算出することができる。
ステップ8ではメモリに記憶させてあるデータより運転点が領域Aに属するか否かをみる。運転点が領域Aに属するときにはステップ9に進む。ステップ9では、排気行程に続く吸気行程で第2のカム54Aを選択して第1排気バルブ13Aを再リフトさせるため、排気行程に続く吸気行程になると第1排気バルブ13A用の電磁ソレノイドバルブ57AをOFFからONに切換える。
ステップ10では、目標排気再導入量(図14では「再導入量」で略記。)と所定値Qr1を比較する。所定値Qr1は予め定めておく。目標排気再導入量が所定値Qr1以下であるときにはステップ11,12,13に進む。まず、ステップ11では、目標排気再導入量から図6を内容とするテーブルを検索することにより、第1排気バルブ13Aのリフト量を算出し、この算出したリフト量を吸気行程における第1排気バルブ13Aの目標リフト量とする。
ステップ12,13では、第2排気バルブ13B用の電磁ソレノイドバルブ57BをOFFにし、吸気行程における第2排気バルブ13Bの目標リフト量をゼロとする。これは、目標排気再導入量が所定値Qr1以下であるときには第1排気バルブ13Aを開くだけで吸気行程における排気再導入量が足りており、第2排気バルブ13Bを開く必要がないためである。
一方、ステップ10で目標排気再導入量が所定値Qr1を超えているときにはステップ14,15,16に進む。まずステップ14では吸気行程における第1排気バルブ13Aの目標リフト量を所定値L1とする。
ステップ15,16では、第2排気バルブ13B用の電磁ソレノイドバルブ57BをONにし、目標排気再導入量から図6を内容とするテーブルを検索することにより、第2排気バルブ13Bのリフト量を算出する。この算出したリフト量を吸気行程における第2排気バルブ13Bの目標リフト量とする。これは、目標排気再導入量が所定値Qr1を超えているときには第1排気バルブ13Aを開くだけでは吸気行程における排気再導入量が足りず、第2排気バルブ13Bをも開く必要があるためである。
ステップ8で運転点が領域Aにないときにはステップ17に進み、メモリに記憶させてあるデータより運転点が領域Cにあるか否かをみる。運転点が領域Cに属するときにはステップ18に進む。ステップ18では、排気行程に続く吸気行程で第2のカム54Bを選択して第2排気バルブ13Bを再リフトさせるため、排気行程に続く吸気行程になると第2排気バルブ13B用の電磁ソレノイドバルブ57BをOFFからONに切換える。
ステップ19では、目標排気再導入量(図14では「再導入量」で略記。)と所定値Qr2を比較する。所定値Qr2は予め定めておく。目標排気再導入量が所定値Qr2以下であるときにはステップ20,21,22に進む。まず、ステップ20では、目標排気再導入量から図7を内容とするテーブルを検索することにより、第2排気バルブ13Bのリフト量を算出し、この算出したリフト量を吸気行程における第2排気バルブ13Bの目標リフト量とする。
ステップ21,22では、第1排気バルブ13A用の電磁ソレノイドバルブ57AをOFFにし、吸気行程における第1排気バルブ13Aの目標リフト量をゼロとする。これは、目標排気再導入量が所定値Qr2以下であるときには第2排気バルブ13Bを開くだけで吸気行程における排気再導入量が足りており、第1排気バルブ13Aを開く必要がないためである。
一方、ステップ19で目標排気再導入量が所定値Qr2を超えているときにはステップ23,24,25に進む。まずステップ23では吸気行程における第2排気バルブ13Bの目標リフト量を所定値L2とする。
ステップ24,25では、第1排気バルブ13A用の電磁ソレノイドバルブ57AをONにし、目標排気再導入量から図7を内容とするテーブルを検索することにより、第1排気バルブ13Aのリフト量を算出する。この算出したリフト量を吸気行程における第1排気バルブ13Aの目標リフト量とする。これは、目標排気再導入量が所定値Qr2を超えているときには第2排気バルブ13Bを開くだけでは吸気行程における排気再導入量が足りず、第1排気バルブ13Aをも開く必要があるためである。
ステップ17で運転点が領域Cにないとき(つまり運転点がBにあるとき)には本実施形態の制御は不要であるので、ステップ26,27,28,29に進む。ステップ26,27では第1排気バルブ13A用の電磁ソレノイドバルブ57AをOFFにし、吸気行程における第1排気バルブ13Aの目標リフト量をゼロとする。ステップ28,29では第2排気バルブ13B用の電磁ソレノイドバルブ57BをOFFにし、吸気行程における第2排気バルブ13Bの目標リフト量をゼロとする。
このようにして、ステップ3で目標EGRバルブ開度が算出される。また、ステップ11,14で領域Aでの吸気行程における第1排気バルブ13Aの目標リフト量が、ステップ13,16で領域Aでの吸気行程における第2排気バルブ13Bの目標リフト量が算出される。また、ステップ20,23で領域Cでの吸気行程における第2排気バルブ13Bの目標リフト量が、ステップ22,25で領域Cでの吸気行程における第1排気バルブ13Aの目標リフト量が算出される。図示しないフローでは、目標EGRバルブ開度が駆動信号に変換されてEGRバルブ23のアクチュエータであるモータ25に与えられる。これによってEGRバルブ開度が目標EGRバルブ開度と一致するまでモータ25がEGRバルブ23を駆動する。
図示しないフローでは、領域Aで吸気行程における第1排気バルブ13Aの目標リフト量がデューティ比に変換されて電磁ソレノイドバルブ60Aに与えられる。これによって、領域Aで吸気行程における第1排気バルブ13Aのリフト量が吸気行程における第1排気バルブ13Aの目標リフト量となるように油圧アクチュエータ59Aが第1排気バルブ13Aのリフト量を制御する。また、領域Aで目標排気再導入量が所定値Qr1を超えているときには吸気行程における第2排気バルブ13Bの目標リフト量がデューティ比に変換されて電磁ソレノイドバルブ60Bに与えられる。これによって、領域Aで吸気行程における第2排気バルブ13Bのリフト量が吸気行程における第2排気バルブ13Bの目標リフト量となるように油圧アクチュエータ59Bが第2排気バルブ13Bのリフト量を制御する。
同様に、図示しないフローでは、領域Cで吸気行程における第2排気バルブ13Bの目標リフト量がデューティ比に変換されて電磁ソレノイドバルブ60Bに与えられる。これによって、領域Cで吸気行程における第2排気バルブ13Bのリフト量が吸気行程における第2排気バルブ13Bの目標リフト量となるように油圧アクチュエータ59Bが第2排気バルブ13Bのリフト量を制御する。また、領域Cで目標排気再導入量が所定値Qr2を超えているときには吸気行程における第1排気バルブ13Aの目標リフト量がデューティ比に変換されて電磁ソレノイドバルブ60Aに与えられる。これによって、領域Cで吸気行程における第1排気バルブ13Aのリフト量が吸気行程における第1排気バルブ13Aの目標リフト量となるように油圧アクチュエータ59Aが第1排気バルブ13Aのリフト量を制御する。
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態では、吸気バルブ12と排気バルブ13を備え、排気バルブ13を閉状態として吸気バルブ12を吸気行程で開いたとき燃焼室内に吸気スワールが生じるエンジン1の制御装置を前提とする。そして、EGR通路22と、EGRバルブ23と、EGRクーラ24と、エンジンの冷却装置31と、可変バルブ開閉機構51とを備える。上記のEGR通路22は排気の一部を吸気管に戻す。上記のEGRバルブ23はEGR通路22を開閉する。上記のEGRクーラ24はEGR通路22を流れるEGRガスを冷却する。EGRクーラ24を流れるEGRガスとの熱交換を行う冷却媒体がエンジンの冷却液であり、上記のエンジンの冷却装置31はEGRクーラ24で熱交換した冷却液をエンジン1のウォータジャケット32に循環させる。上記の可変バルブ開閉機構51は排気バルブ13を吸気行程においても開くことが可能である。この場合に、エンジンの冷間状態かつ領域A(低負荷側の失火しやすい領域)で、可変バルブ開閉機構51を用いて排気バルブ13を吸気行程で開き排気を燃焼室5に再導入することで排気バルブ13を吸気行程で開かない場合より吸気スワールを弱めるようにする。エンジンの冷間状態かつ領域A(低負荷側の失火しやすい領域)における着火性と吸気のスワールとの間には、吸気のスワールが弱まるほど低負荷側の失火しやすい領域における着火性がよくなる関係がある。本実施形態によれば、エンジンの冷間状態かつ領域Aで吸気のスワールを弱めることで、冷却水(冷却液)をEGRクーラ24に流していても失火を抑制することができる。これによって、失火を防ぎつつEGRクーラ24での冷却水への熱交換量の低下を抑制してエンジン1を早期に暖機することができる。
本実施形態では、燃焼室5に開口する排気ポートが2つあり、排気バルブは2つの各排気ポート63A,63Bを開閉する2つの排気バルブ13A,13Bである。可変バルブ開閉機構51A,51Bは、吸気行程において2つの各排気バルブ13A,13Bを独立に開くことが可能である。この場合に、第1排気バルブ13A(吸気スワールの向きに対して上流側に位置する排気バルブ)を第2排気バルブ13B(下流側に位置する排気バルブ)よりも相対的に大きく開く。これによって、2つの排気バルブ13A,13Bを備えるエンジン1に対して、吸気行程においても2つの各排気バルブ13A,13Bを独立に開くことが可能な可変バルブ開閉機構51A,51Bを追加することで、吸気のスワールを弱めるようにすることができる(図5中央参照)。
本実施形態では、エンジンの冷間状態かつ領域Cで、可変バルブ開閉機構51を用いて排気バルブ13を吸気行程で開き排気を燃焼室5に再導入することで排気バルブ13を吸気行程で開かない場合より吸気スワールを強めるようにする。これによって、エンジンの冷間状態かつ領域C(つまり低負荷側の失火しやすい領域よりも高負荷側にあってスモークの発生しやすい領域)におけるスモークを減少させることができる。
本実施形態では、燃焼室5に開口する排気ポートが2つあり、排気バルブは2つの各排気ポート63A,63Bを開閉する2つの排気バルブ13A,13Bである。可変バルブ開閉機構51A,51Bは、吸気行程において2つの各排気バルブ13A,13Bを独立に開くことが可能である。この場合に、第2排気バルブ13B(吸気スワールの向きに対して下流側に位置する排気バルブ)を第1排気バルブ13A(上流側に位置する排気バルブ)に対し相対的に大きく開く。これによって、2つの排気バルブ13A,13Bを備えるエンジン1に対して、吸気行程においても2つの各排気バルブ13A,13Bを独立に開くことが可能な可変バルブ開閉機構51A,51Bを追加することで、吸気のスワールを強めるようにすることができる(図5右側参照)。
(第2実施形態)
図16は第2実施形態の領域B,A,Cでの吸気のスワールの状態を示す燃焼室5を下から透視した概略図である。第1実施形態の図5と同一部分には同一の符号を付している。ここで、図16左側は領域Bでの、図16中央は領域Aでの、図16右側は領域Cでの各吸気のスワールの状態を示している。
第2実施形態では、図5に示した第1実施形態に対し、2つの各排気ポート63A,63Bを独立に開閉するシャッターバルブ71A,71Bを追加して設けている。ここで、一方の排気ポート63Aを開閉するシャッターバルブ71Aを「第1シャッターバルブ」、他方の排気ポート63Bを開閉するシャッターバルブ71Bを「第2シャッターバルブ」とする。
第2実施形態でも、領域B,A,Cで、図16に示したように、吸気行程で2つの吸気バルブ12A,12Bをともに開いたとき、燃焼室5に流れ込む作動ガスによって、反時計方向に吸気のスワールが生じるものとする(黒塗り矢印参照)。この場合、領域Bでは図16左側に示したように2つの排気バブル13A,13Bは全閉状態にあり、2つのシャッターバルブ71A,71Bはいずれも開いているものとする。
第2実施形態では、2つのシャッターバルブ71A,71Bを用いて吸気のスワールの弱化と強化を行わせる。すなわち、図16中央に示したように、領域Aでの吸気行程では2つの排気弁13A,13Bを所定のリフト量まで開くと共に、第1シャッターバルブ71Aを開きかつ第2シャッターバルブ71Bを全閉状態とする。これによって、開いた第1排気バルブ13Aより燃焼室5に再導入される排気の流れる向き(網掛け矢印参照)が吸気のスワールの向きと逆になるので、吸気のスワールが弱められる。領域Aでは領域Bよりも吸気のスワールを弱化できるわけである。
図16右側に示したように、領域Cでの吸気行程では2つの排気弁13A,13Bを所定のリフト量まで開くと共に、第1シャッターバルブ71Aを全閉状態としかつ第2シャッターバルブ71Bを開く。これによって、開いた第2排気バルブ13Bより燃焼室5に再導入される排気の流れる向き(網掛け矢印参照)が吸気のスワールの向きと同じになるので、吸気のスワールが強められる。領域Cでは領域Bよりも吸気のスワールを強化できるわけである。
第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
(第3実施形態)
図17は第3実施形態の領域Aでの吸気のスワールを示す燃焼室5を下から透視した概略図である。第1実施形態の図5の中央と同一部分には同一の符号を付している。
第3実施形態はエンジンの冷間状態かつ領域Aのみを対象とするものである。すなわち、領域Aでの吸気行程で、2つの排気弁13A,13Bを所定のリフト量まで開いたとき、燃焼室5に再導入される排気の流れる向き(網掛け矢印参照)が吸気のスワールの向きと逆になるように2つの各排気ポート63A,63Bの形状を工夫しておく。これによって、エンジンの冷間状態かつ領域Aで吸気のスワールを弱化することができる。