JP2015227289A - ジアルキルフェノールの製造方法 - Google Patents

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弘昭 五東
Hiroaki Goto
弘昭 五東
和久 榊原
Kazuhisa Sakakibara
和久 榊原
窪田 好浩
Yoshihiro Kubota
好浩 窪田
怜史 稲垣
Satoshi Inagaki
怜史 稲垣
宏紀 常松
Hiroki Tsunematsu
宏紀 常松
裕介 喜田
Yusuke Kida
裕介 喜田
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Abstract

【課題】比較的低い温度・圧力の条件下で反応が進行し、安全かつ高収率でジアルキルフェノールを製造する方法の提供。
【解決手段】ゼオライト系触、特にβ−型ゼオライトの触媒の存在下で、m−クレゾールと酢酸イソプロピル等の有機酸イソプロピルエステルとを組み合わせて用いることにより、0〜1.0MPa程度の反応圧力、180〜200℃程度の反応温度で、4−イソプロピル−3−メチルフェノール、チモール等のジアルキルフェノールを製造する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、触媒の存在下、m−クレゾールと有機酸のイソプロピルエステルとを反応させる、ジアルキルフェノールの製造方法に関する。
ジアルキルフェノール、とりわけ4−イソプロピル−3−メチルフェノール(以下、IPMPと称する場合もある)、2−イソプロピル−5−メチルフェノール(以下、チモールと称する場合もある)は、医薬品原料として有用である。IPMPは、殺菌性や抗酸化性に優れ、且つ低刺激性で安全性が高いことから、化粧品、口内洗浄液、シャンプー等において抗菌成分として使用されている。また、チモールは、防腐剤、香料、駆虫剤などに使用されている。
チモールの製造方法としては、m−クレゾールをイソプロピル化する方法が従来知られている。m−クレゾールをイソプロピル化する方法として、例えば、固体リン酸触媒の存在下でm−クレゾールとプロピレンガスとを反応させる方法が提案されている(特許文献1)。
この方法は、極めて可燃性の高いプロピレンガスを、高温高圧条件下で使用するため非常に危険であり、特殊な設備が必要となる。また、触媒の使用量が比較的多いにもかかわらず、転化率および収率が低く経済的に効率の悪い方法である。
また、m−クレゾールのイソプロピル化に際し、モルデナイト型ゼオライト触媒を用いる方法も提案されている(特許文献2)。しかし、この方法も高温高圧条件下のプロピレンガスを使用する必要があるため、工業的に有利な方法とは言えず、やはり収率および選択率の低いものであった。
危険性の高いプロピレンガスを使用しない方法として、金属酸化物触媒の存在下で、m−クレゾールとイソプロピルアルコールとを反応させることによりチモールを製造する方法も提案されている(特許文献3)。
しかしながら、この方法も400℃という高温条件下で反応させる必要があると共に、イソプロピルアルコールおよび副生する水の影響によって高圧状態になるため、やはり危険性が高く、工業的に有利な方法ではない。さらに、副生する水によって反応を阻害されることから、転化率および収率が著しく低下し、実用的な製法とは言えないものであった。
特公昭61−52130号公報 特開平2−78640号公報 特開2002−30011号公報
本発明の目的は、安全で穏やかな条件下で反応が進行する、ジアルキルフェノールを製造する方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、高収率でジアルキルフェノールを製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、m−クレゾールのイソプロピル化について鋭意検討した結果、触媒の存在下で、m−クレゾールと有機酸のイソプロピルエステルとを組み合わせて用いることにより、比較的穏やかな条件下でも反応が進行し、高収率でジアルキルフェノールが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、触媒の存在下、m−クレゾールと有機酸のイソプロピルエステルとを反応させる、ジアルキルフェノールの製造方法を提供する。
本発明によれば、低温・低圧の反応条件下であるにもかかわらず、ジアルキルフェノールを製造することができる。さらに、本発明によれば、高収率でジアルキルフェノールが得られることとなる。
本発明の方法においては、触媒の存在下、m−クレゾールと有機酸のイソプロピルエステルとを反応させる。
本発明において使用される触媒としては、ゼオライト触媒、AlCl、BF等のルイス酸、硫酸、イオン交換樹脂が挙げられ、これらの中でも、ゼオライト触媒が好ましい。ゼオライト触媒としては、A型、フェリエライト型、MCM−22型、ZSM−5型、モルデナイト型、L型、X型、Y型およびβ型のゼオライト触媒からなる群から選択される少なくとも1種が好適に使用でき、この中でも反応性に優れる点からβ型のゼオライト触媒が好ましく使用される。
反応に供するゼオライト触媒は十分に脱水されている必要があり、脱水が不十分であると転化率が低下する。ゼオライト触媒の脱水は、例えばマイクロウェーブを用いて加熱することにより行われ、水分量が5重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下となるまで脱水するのが良い。
本発明において、ゼオライト触媒の添加量は反応条件により適宜決定されるが、m−クレゾール100重量部当たり、10〜5000重量部、好ましくは1000〜2000重量部存在させることが好ましい。
ゼオライト触媒の添加量が10重量部を下回ると、m−クレゾールと有機酸のイソプロピルエステルとの反応が十分に進行せず、5000重量部を上回ると、反応器の攪拌装置に負荷がかかると共にコスト的にも不利となる。
反応終了後、ゼオライト触媒は濾過等の常套手段にて容易に除去できるため、蒸留等の特別な操作を行う必要がなく、操作性に優れ、コスト的にも有利である。
本発明において使用される有機酸のイソプロピルエステルとしては、飽和カルボン酸イソプロピルエステル(ギ酸イソプロピル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸イソプロピル等)、不飽和カルボン酸イソプロピル(アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル等)、芳香族カルボン酸イソプロピル(安息香酸イソプロピル、サリチル酸イソプロピル等)ジカルボン酸モノイソプロピル・ジイソプロピル(シュウ酸モノイソプロピル、シュウ酸ジイソプロピル、マロン酸モノイソプロピル、マロン酸ジイソプロピル等)、ハロゲン化カルボン酸イソプロピル(クロロ酢酸イソプロピル、フルオロ酢酸イソプロピルおよびトリフルオロ酢酸イソプロピル等)からなる群から選択される少なくとも1種が好適に使用できる。この中でも、入手容易性の点から、ギ酸イソプロピル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸イソプロピルおよびトリフルオロ酢酸イソプロピルが好ましく、反応性に優れる点から酢酸イソプロピルが特に好ましい。
本発明において、有機酸のイソプロピルエステルの添加量は反応条件により適宜決定されるが、m−クレゾール1.0モルに対して、好ましくは0.1〜30当量、より好ましくは0.5〜10当量、さらに好ましくは0.7〜1.5当量である。
有機酸のイソプロピルエステルの添加量が0.1当量を下回ると、m−クレゾールと有機酸のイソプロピルエステルとの反応が十分に進行せず、30当量を上回ると、ジイソプロピル化又はトリイソプロピル化された副生成物の生成が増加する傾向がある。本発明において、m−クレゾールと有機酸のイソプロピルエステルとの反応は、好ましくは100〜200℃、より好ましくは160〜200℃、さらに好ましくは180〜200℃の温度で行うのがよい。反応圧力は0〜1.0MPaの範囲内であるのがよい。
反応温度が100℃を下回ると反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を上回ると反応圧力が1.0MPa以上となるため高圧に耐える装置が必要になるなど工業的に不利となる。
反応時間は特に限定されないが、3分〜20時間、好ましくは10分〜10時間、より好ましくは30分〜5時間の範囲で適宜選択することができる。
本発明の方法によって、2−イソプロピル−5−メチルフェノールおよび/または4−イソプロピル−3−メチルフェノールなどのジアルキルフェノールを高収率で製造することができる。
本発明において使用される反応装置としては、通常の耐圧反応容器であればよく、例えば攪拌機を備え、高圧反応に対応可能なオートクレーブが好適に使用される。さらに温度制御装置を有し、温度計支持管、圧力計および排気管等を有する装置が好ましい。
本発明の方法による反応後、従来から知られている分離操作、例えばろ過、蒸留、再結晶、抽出等を行うことにより反応生成物を精製し、IPMPおよびチモールを得ることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
撹拌機、圧力計および温度センサーを備えた120mLのステンレス製オートクレーブに、m−クレゾール20.0g、酢酸イソプロピル22.7gおよびβ型ゼオライト(東ソー社製、HSZ930HOA)2.0gを加えて密閉し、攪拌しながら窒素置換した後180℃に昇温し、同温度で3時間反応させた。室温まで冷却した後、内容物を濾過により濾液とゼオライトに分別した。次いで、ゼオライトをアセトンで洗浄し、アセトン洗液を得た。更にゼオライトをアセトン中で超音波洗浄し、これを濾過して抽出液を得た。
このアセトン洗液とアセトン洗浄後の抽出液、および上記で得られた濾液とを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量分析を行った結果、仕込んだm−クレゾールからの転化率は、4-イソプロピル-3-メチルフェノール(IPMP)15.1mol%、2−イソプロピル−5−メチルフェノール(チモール)34.9mol%であり、未反応のm−クレゾールは32.1mol%であった。
尚、反応中における最大圧力は0.9MPaであった。結果を表1に示す。
比較例1(触媒を用いない以外は実施例1と同様の方法による)
β型ゼオライトを加えない以外は実施例1と同様にして反応を行った後、内容物を濾過分別せずにそのまま高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量分析を行った。仕込んだm−クレゾールからの転化率は、4-イソプロピル-3-メチルフェノール(IPMP)0mol%、2−イソプロピル−5−メチルフェノール(チモール)0mol%であり、未反応のm−クレゾールは97.6mol%であった。結果を表1に示す。
比較例2(固体リン酸触媒の存在下でm−クレゾールとプロピレンガスとを反応させる方法による)
撹拌機、圧力計および温度センサーを備えた120mLのステンレス製オートクレーブに、m−クレゾール20.0g、シリカ/チタニアを担体にリン酸処理を行った固体リン酸触媒3.0gを加えて、プロピレンを導入し加圧した状態で攪拌しながら250℃に昇温し、同温度で1時間反応させた。反応中は圧力が1.2〜1.8MPaの範囲になるように逐次プロピレンの減少分を補充した。反応終了後室温まで冷却した後、内容物を濾過により濾液と固体リン酸触媒に分別した。次いで、固体リン酸触媒をアセトンで洗浄し、アセトン洗液を得た。更に固体リン酸触媒をアセトン中で超音波洗浄し、これを濾過して抽出液を得た。このアセトン洗液とアセトン洗浄後の抽出液、および上記で得られた濾液とを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量分析を行った結果、仕込んだm−クレゾールからの転化率は、4-イソプロピル-3-メチルフェノール (IPMP)5.2mol%、2−イソプロピル−5−メチルフェノール(チモール)13.4mol%であり、未反応のm−クレゾールは78.6mol%であった。結果を表1に示す。
比較例3(金属酸化物触媒の存在下で、m−クレゾールとイソプロピルアルコールとを反応させる方法による)
撹拌機、圧力計および温度センサーを備えた120mLのステンレス製オートクレーブに、m−クレゾール10.0g、イソプロピルアルコール37.3g、酸化錫(和光純薬社製)0.8gを加えて密閉し、攪拌しながら窒素置換した後400℃に昇温し、同温度で0.5時間反応させた。室温まで冷却した後、内容物を濾過により濾液と酸化錫に分別した。次いで、酸化錫をアセトンで洗浄し、アセトン洗液を得た。更に酸化錫をアセトン中で超音波洗浄し、これを濾過して抽出液を得た。このアセトン洗液と、アセトン洗浄後の抽出液と上記で得られた濾液を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量分析を行った結果、仕込んだm−クレゾールからの転化率は、4-イソプロピル-3-メチルフェノール (IPMP)0.1mol%、2−イソプロピル−5−メチルフェノール(チモール)5.6mol%、m−クレゾール90.7mol%であった。結果を表1に示す。
実施例2
β型ゼオライトの添加量を4.0gとする以外は、実施例1と同様にして反応を行い、定量分析した。結果を表1に示す。
Figure 2015227289
実施例3および4
酢酸イソプロピルの添加量を表2に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。結果を表2に示す。
Figure 2015227289
実施例5
反応温度を140℃に変更した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。0.3MPaの極めて低い反応圧力にて、IPMPおよびチオールを製造することができた。
実施例6
反応温度を190℃に変更した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。1.0MPaの低い反応圧力にて、IPMPおよびチオールを製造することができた。結果を表3に示す。
Figure 2015227289
実施例7および8
反応時間を表4に示す時間に変更した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。結果を表4に示す。
Figure 2015227289
触媒の存在下、m−クレゾールと有機酸のイソプロピルエステルとを組み合わせて用いた実施例1乃至8では、低温・低圧の反応条件下であるにもかかわらず、良好な転化率でIPMPおよびチモールが得られた。また、実施例7および8から、本発明によるジアルキルフェノールの製造方法は、反応時間を適宜変更して行い得ることが分かる。
これに対し、触媒を用いない比較例1では、反応が進行せず、IPMPおよびチモールを製造することはできなかった。
また、m−クレゾールとプロピレンガスとを固体リン酸触媒の存在下で反応させた比較例2およびm−クレゾールとイソプロピルアルコールとを金属酸化物触媒の存在下で反応させた比較例3では、高温・高圧の反応条件下でしかIPMPおよびチモールが得られず、しかも、それらの転化率は低いものであった。

Claims (9)

  1. 触媒の存在下、m−クレゾールと、有機酸のイソプロピルエステルとを反応させる、ジアルキルフェノールの製造方法。
  2. m−クレゾール100重量部当たり、触媒10〜5000重量部を存在させる、請求項1に記載のジアルキルフェノールの製造方法。
  3. 触媒は、A型、フェリエライト型、MCM−22型、ZSM−5型、モルデナイト型、L型、X型、Y型およびβ型のゼオライト触媒からなる群から選択される1種類以上である、請求項1または2に記載のジアルキルフェノールの製造方法。
  4. 触媒はβ型のゼオライト触媒である、請求項1〜3のいずれかに記載のジアルキルフェノールの製造方法。
  5. m−クレゾール1.0モルに対して、有機酸のイソプロピルエステル0.1〜30当量を反応に供する、請求項1〜4のいずれかに記載のジアルキルフェノールの製造方法。
  6. 有機酸のイソプロピルエステルは、ギ酸イソプロピル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸イソプロピルおよびトリフルオロ酢酸イソプロピルからなる群から選択される1種以上である、請求項1〜5のいずれかに記載のジアルキルフェノールの製造方法。
  7. 有機酸のイソプロピルエステルが酢酸イソプロピルである、請求項1〜6のいずれかに記載のジアルキルフェノールの製造方法。
  8. ジアルキルフェノールが2−イソプロピル−5−メチルフェノールおよび/または4−イソプロピル−3−メチルフェノールである、請求項1〜7のいずれかに記載のジアルキルフェノールの製造方法。
  9. m−クレゾールと有機酸のイソプロピルエステルとを、圧力0〜1.0MPa、温度100〜200℃の条件下で反応させる、請求項1〜8のいずれかに記載のジアルキルフェノールの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN106008169A (zh) * 2016-06-22 2016-10-12 浙江新和成股份有限公司 一种百里酚的合成方法
WO2022124041A1 (ja) * 2020-12-09 2022-06-16 Eneos株式会社 4‐イソプロピル‐3‐メチルフェノール及び2‐イソプロピル‐5‐メチルフェノールの製造方法

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