JP2015224956A - 光散乱性光学薄膜の光学特性の評価方法、及び該光散乱性光学薄膜として用いられる光取り出し部材 - Google Patents

光散乱性光学薄膜の光学特性の評価方法、及び該光散乱性光学薄膜として用いられる光取り出し部材 Download PDF

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Abstract

【課題】内部で光散乱を生じる光散乱性光学薄膜の屈折率をより正確に測定可能な方法を提供する。
【解決手段】光散乱性光学薄膜の光学特性の評価方法は、高屈折率光散乱層の少なくとも反射光を測定し、該反射光の測定結果及び式(1−1)を用いて分光解析を行うことにより、高屈折率光散乱層の光学特性を求める。
Figure 2015224956

ここで、
Figure 2015224956

であり、Rは光散乱層22の反射率、nは光散乱層22の屈折率、nは光散乱層22と接する媒質30の屈折率、nは光散乱層22と接する基材21の屈折率、γは光散乱層22の光散乱係数、dは光散乱層22の厚さ、λは反射率の測定に用いられる光の波長である。
【選択図】図3

Description

本発明は、例えば面発光体の光取り出し部材などに用いられる光散乱性光学薄膜の光学特性の評価方法に関する。
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子)は、一般的に、有機EL層の一方の面上に透明電極が、他方の面上に反射電極がそれぞれ配置された面発光体である。有機EL素子は、バックライトや照明光源などへの応用が期待されている。
しかしながら、有機EL素子は、光取り出し効率が比較的低い(20〜30%程度)。その理由は、有機EL層内の発光部の屈折率が約1.75〜2.0と高いため、有機EL素子の発光部の光が高屈折率材質から低屈折率層へ進む場合(例えば、透明電極からガラス基板へ進む場合、あるいはガラス基板から大気へ進む場合)、それらの界面に対して臨界角を超えて入射する光は、全反射して、外部に出射できないからである。
有機EL素子における上述のような問題を解消するために、従来より、以下のような構成が知られている。
すなわち、透明電極において有機EL層とは反対側の面に、高屈折率層を設けるとともに、該高屈折率層において前記透明電極とは反対側の面に光の進行方向を乱す領域を設ける構成が知られている。また、他の対策として、透明電極において有機EL層とは反対側の面に、光の進行方向を乱す領域を設ける構成も知られている。これらの構成により、透明電極とガラス基板との界面や、ガラス基板と大気との界面において、全反射の影響が低減される。よって、上述の構成により、光取り出し効率を向上することができる。
なお、前記高屈折率層として、バインダとしての樹脂内に、該樹脂よりも屈折率が高く且つ光の波長よりも粒径が小さい微粒子を分散させることにより、屈折率が調整された複合材料を用いる場合がある。このような構成の場合には、微粒子の粒径や分散の度合いによって発生量は変化するが、レイリー散乱と呼ばれる光散乱が生じる。
また、前記光の進行方向を乱す領域として、バインダとしての樹脂内に、該樹脂とは異なる屈折率を有する微粒子を分散させて光散乱を積極的に生じさせることにより、光の進行方向を乱す、光散乱層を用いる場合がある。なお、高屈折率層内の微粒子の粒径や分散の度合いを調整して該高屈折率層に光散乱を積極的に生じさせることにより、該高屈折率層に光散乱の機能を持たせるようにしてもよい。
上述のような構成を有する高屈折率層及び光散乱層において、光取り出し効率に大きく影響する光学特性は、屈折率及び光散乱の性能(例えば光散乱係数など)を示すパラメータである。したがって、光取り出し効率の向上を図るためには、高屈折率層及び光散乱層において、屈折率及び光散乱の性能を示すパラメータを、精度良く測定して評価する必要がある。
例えば、屈折率の測定を行う場合には、特許文献1、2に開示されているような測定方法などが知られている。特許文献1には、樹脂内に、該樹脂よりも屈折率が高く且つ光の波長よりも粒径が小さい微粒子を分散させることにより得られる高屈折率透明層の屈折率を、アッベ屈折計を用いて測定する点が開示されている。なお、特許文献1には、光散乱層も兼ねる透明層のヘーズ値を、光散乱の性能を示すパラメータとして測定する点も開示されている。
また、特許文献2には、屈折率調整用の充填剤を分散させた複合薄膜の屈折率を、エリプソメータを用いて測定する点が開示されている。
ここで、ガラスやプラスチックの基材上に設けられた薄膜の反射率は、光入射物質と薄膜との界面における光反射と、該界面を透過した後に薄膜と基材との界面で反射して光入射物質と薄膜との界面を透過する光との干渉を考慮して、下記の(2−1)式によって求められる。一般的には、透明層及び光散乱層の反射光または透過光、もしくはその両方を利用した分光解析を行うことにより、屈折率が求められる。
Figure 2015224956
ここで、
Figure 2015224956
は光学薄膜の反射率、nは光学薄膜の屈折率、nは光学薄膜と接している光入射側物質の屈折率、nは光学薄膜と接している光透過側物質(基材)の屈折率、dは光学薄膜の厚さ、λは反射率の測定を行う際に用いる光の波長である。
なお、一般的に、物質の屈折率を測定する場合には、上述の特許文献1、2に開示されている方法も含めて、測定対象物において光散乱が生じていないことを前提として測定が行われる。
特開2004−296429号公報 特開2003−216061号公報
ところが、上述のように、光散乱性光学薄膜の屈折率の測定を、測定対象物において光散乱が生じていないことを前提として行う場合、測定によって得られる屈折率の値の精度が低下する。その理由は以下のとおりである。
特許文献1に開示されているアッベ屈折計を用いて屈折率を測定する場合、測定対象物の臨界角を測定し、その測定結果からスネルの法則を用いて、測定対象物の屈折率を求める。一般的には、測定対象物の測定面を、屈折率が既知で且つ該測定対象物よりも屈折率が高いプリズムに接触させた状態で、前記測定面に対して光を入射した場合に、該測定面とプリズムとの界面で屈折して出射した光の進行方向を測定する。
詳しくは、測定対象物の測定面に略平行に進む光は、該測定面とプリズムとの界面で屈折して略臨界角の角度で出射する。一方、測定対象物の測定面とプリズムとの界面から臨界角を超えた角度で出射する光は存在しない。よって、前記界面に対して臨界角に相当する方向から光の観察を行った場合には光のコントラストが観察される。すなわち、測定対象物の測定面とプリズムとの界面で屈折する光を利用して光のコントラストを観測することにより、測定対象物の測定面の臨界角を測定することができる。
ところが、測定対象物内で光散乱が生じると、該測定対象物に入射された光の一部が測定面に到達する前に散乱してしまう。そうすると、測定対象物の測定面に対して略平行に進む光も光散乱の影響を受けて、測定面とプリズムとの界面で屈折する光が減少する。これにより、測定対象物の測定面とプリズムとの界面で屈折した光を観察した際に、光のコントラストが低くなって、臨界角測定の精度が低下する。したがって、アッベ屈折計によって測定される測定対象物の屈折率に大きな誤差が含まれることになる。
特許文献2に開示されているエリプソメータを用いて屈折率を測定する場合や式(2−1)を用いて屈折率を測定する場合は、光を測定対象物に対して照射し、反射した光の強度を利用して屈折率を測定する。このような測定方法でも、測定対象物内で光散乱が生じると、光入射物質と薄膜との界面を透過した後、薄膜と基材との界面で反射して、光入射物質と薄膜との界面を透過する光が、光散乱によって減衰する。この光散乱による減衰は、屈折率を求める際の誤差の要因となるため、正確な屈折率の値が得られない。
また、特許文献1には、光散乱の性能を示すパラメータとして、JIS−K−7136で測定法が規格化されたヘーズ値を用いる例が示されているが、このヘーズ値は、光散乱の大きさを調整するためには良いパラメータではない。すなわち、ヘーズ値は、光散乱の性能を直感的に把握するには良いパラメータであるが、目標通りの光散乱であるか否かを判断したり、光散乱が目標通りでなかった場合に光散乱の調整を行ったりする場合のパラメータとしては適していない。
以上より、本発明の目的は、内部で光散乱を生じる光散乱性光学薄膜の屈折率をより正確に測定可能な方法を提供することにある。
本発明の一実施形態に係る光散乱性光学薄膜の光学特性の評価方法では、光散乱性光学薄膜の少なくとも反射光を測定し、該反射光の測定結果及び式(1−1)を用いて分光解析を行うことにより、前記光散乱性光学薄膜の光学特性を求める。
Figure 2015224956
ここで、
Figure 2015224956
であり、Rは光散乱性光学薄膜の反射率、nは光散乱性光学薄膜の屈折率、nは光散乱性光学薄膜と接する光入射側物質の屈折率、nは光散乱性光学薄膜と接する光透過側物質の屈折率、γは光散乱性光学薄膜の光散乱係数、dは光散乱性光学薄膜の厚さ、λは反射率の測定に用いられる光の波長である(第1の方法)。
上述の式(1−1)を用いることにより、光散乱性光学薄膜で生じた光散乱による光損失を考慮した分光解析が可能になる。すなわち、式(1−1)には、光散乱能を考慮したexp(−γ・d)の式が含まれているため、光散乱を考慮することができる。これにより、精度の良い屈折率を求めることが可能になる。
また、前記式(1−1)を用いることにより、光散乱の性能を示すパラメータとしての光散乱係数γを容易に求めることができる。すなわち、上述のように、式(1−1)のexp(−γ・d)は、光散乱能を考慮しているため、このexp(−γ・d)によって、光散乱係数γを容易に求めることができる。
なお、光学特性とは、対象物の屈折率、光散乱能など、光学的な特性を意味する。
前記第1の方法において、前記光散乱性光学薄膜の透過光も測定し、該透過光の測定結果、前記反射光の測定結果及び前記式(1−1)を用いて分光解析を行うことにより、前記光散乱性光学薄膜の光学特性を求める(第2の方法)。
反射光を計測しただけでは精度良く光学特性が得られない場合に、上述のように透過光を計測することにより、該透過光及び反射光によって光散乱性光学薄膜の光学特性を求めることができる。すなわち、例えば、基材における光散乱層とは反対側の面に、該基材の界面での反射を無視できるような表面処理を施していない場合、反射光だけでは光散乱性光学薄膜の光学特性を精度よく求めることができない。これに対し、上述のように、基材の透過光等も用いることによって、光散乱性光学薄膜の光学特性を精度良く求めることができる。
前記第1または第2に記載の方法において、計測によって得られた前記光散乱性光学薄膜の反射率Rのスペクトルにおける少なくとも一つのピークの波長と、前記式(1−1)によって得られた前記光散乱性光学薄膜の反射率Rのスペクトルにおける少なくとも一つのピークの波長とが一致するように、前記式(1−1)の厚さdの値を調整した後、前記調整された厚さdを用いて、前記計測によって得られた光散乱性光学薄膜の反射率Rのスペクトルにおける各ピークの屈折率nを求める。そして、前記調整された厚さd及び前記各ピークの屈折率nを用いて、各波長における屈折率n及び光散乱係数γを算出し、これらの値を用いて前記式(1−1)によって得られた反射率Rのスペクトルと、前記計測によって得られた光散乱性光学薄膜の反射率Rのスペクトルとを比較することにより、前記光散乱性光学薄膜の光学特性を求める(第3の方法)。
これにより、計測によって得られた光散乱性光学薄膜の反射率Rのスペクトルに対し、前記式(1−1)から得られた光散乱性光学薄膜の反射率Rのスペクトルを精度良く合わせこむことができる。よって、実際の光散乱性光学薄膜の光学特性及び厚さdにより近い値を、前記式(1−1)によって求めることが可能になる。
前記第1から第3の方法のうちいずれか一つの方法において、前記光散乱性光学薄膜は、面発光体の光取り出し部材に用いられる材料によって構成されている(第4の方法)。これにより、面発光体の光取り出し部材に用いられる光散乱性光学薄膜に対し、光散乱の度合いを示すパラメータとして光散乱係数を適用することができ、面発光体の光取り出し部材の改良を容易に行うことができる。
前記第1から第4の方法のうちいずれか一つの方法において、前記光散乱性光学薄膜は、バインダ内にフィラーを混入することにより形成されている(第5の方法)。このようにバインダ内にフィラーが混入された光散乱性光学薄膜においても、上述の第1から第4の方法を適用することにより、精度良く光学特性を測定することができる。
本発明の一実施形態に係る光取り出し部材の光学特性の評価方法は、前記第1から第5の方法のいずれか一つに記載の光散乱性光学薄膜の光学特性の評価方法を用いて、前記光取り出し部材の光学特性を求める(第6の方法)。
これにより、上述の第1から第5の評価方法を用いて、面発光体の光取り出し部材の光学特性を評価することができる。したがって、光取り出し部材の改良を容易に行うことができる。
本発明の一実施形態に係る光取り出し部材は、光散乱性薄膜を含む面発光体の光取り出し部材である。この光取り出し部材は、第1から第5の方法のいずれか一つに記載の光散乱性光学薄膜の光学特性の評価方法によって得られる屈折率が1.75以上であり、前記評価方法の式(1−1)におけるexp(−γ・d)が0.9以下である(第1の構成)。
このように、光散乱性薄膜の屈折率を1.75以上、exp(−γ・d)を0.9以下にすることにより、十分な光取り出し効果を有する面発光体の光取り出し部材が得られる。
本発明の一実施形態に係る光散乱性光学薄膜の光学特性の評価方法によれば、内部で光散乱を生じる光散乱性光学薄膜の屈折率をより精度良く測定することができる。また、光散乱の度合いを示すパラメータとして光散乱係数を求めることが可能になり、光散乱性光学薄膜の光散乱を容易に制御することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る高屈折率光散乱層を含んだ有機EL素子の構成を模式的に示す断面図である。 図2は、測定用部材の構成を模式的に示す斜視図である。 図3は、測定用部材の光散乱層に対して略垂直に光を入射した場合の光の反射の様子を模式的に示す図である。 図4は、式(1−1)を用いて計算したRスペクトルの一例を示すグラフである。 図5は、シミュレーションのモデルを模式的に示す断面図である。 図6は、シミュレーションによって得られた、exp(−γ・d)と光取り出し効率との関係の一例を示すグラフである。 図7は、シミュレーションによって得られた、光散乱層の屈折率と光取り出し効率との関係の一例を示すグラフである。 図8は、測定用部材に用いた液晶ガラスの屈折率の一例を示すグラフである。 図9は、測定によって得られたRスペクトルと計算によって得られたRスペクトルとの関係の一例を示すグラフである。 図10は、条件1の測定用部材において、測定によって得られたRスペクトルに対して式(1−1)を用いてフィッティングを行った場合の結果を示すグラフである。 図11は、条件1の測定用部材において、測定によって得られたRスペクトルに対して式(2−1)を用いてフィッティングを行った場合の結果を示すグラフである。 図12は、条件2の測定用部材において、測定によって得られたRスペクトルに対して式(1−1)を用いてフィッティングを行った場合の結果を示すグラフである。 図13は、条件2の測定用部材において、測定によって得られたRスペクトルに対して式(2−1)を用いてフィッティングを行った場合の結果を示すグラフである。 図14は、式(1−1)及び式(2−1)をそれぞれ用いてフィッティングを行った場合の光散乱層における屈折率の計算結果の一例を示すグラフである。 図15は、式(1−1)及び式(2−1)をそれぞれ用いてフィッティングを行った場合の光散乱層における屈折率の計算結果の一例を示すグラフである。 図16は、条件1の測定用部材において、式(1−1)を用いてフィッティングを行って求めた光散乱層の光散乱係数及びexp(−γ・d)の一例を示すグラフである。 図17は、条件2の測定用部材において、式(1−1)を用いてフィッティングを行って求めた光散乱層の光散乱係数及びexp(−γ・d)の一例を示すグラフである。
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
(有機EL素子の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る高屈率光散乱層10(光散乱性光学薄膜)を含んだ有機EL素子1(面発光体)の概略構成を示す断面図である。この有機EL素子1は、透明電極3と有機EL層4とが積層されているとともに、該透明電極3における有機EL層4とは反対側に、光の進行方向を乱すための高屈率光散乱層10が配置されている。
詳しくは、有機EL素子1は、ガラス基板2と、高屈折率光散乱層10と、透明電極3と、有機EL層4と、反射電極5とを備える。各層は、この順に積層されている。
透明電極3は、例えばITO(酸化インジウムスズ)などの無色透明の導電材料からなる。有機EL層4は、少なくとも発光層を有する。なお、有機EL層4は、ホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層等を有してもよい。具体的には、有機EL層4は、例えば、4、4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルを用いたホール輸送層と、トリス(8−ヒドロキノリン)アルミニウムからなる発光層兼電子輸送層とを有する2層構造である。反射電極5は、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。
なお、ガラス基板2、透明電極3、有機EL層4、反射電極5は、上述の材料及び構成に限らず、一般的な有機EL素子に用いられている材料及び構成であれば、どのような材料及び構成であってもよい。
高屈折率光散乱層10は、例えば、バインダ内に無機フィラー(例えばセラミックスのフィラーなど)を混入させた複合材料によって構成されている。なお、高屈折率光散乱層10に用いられる材料は、一般的に使用される光の波長領域において光を吸収しないものが用いられる。
高屈折率光散乱層10は、屈折率の値が有機EL層4の屈折率の値以上である。このような屈折率は、例えば、高屈折率光散乱層10を透過する光の半波長以下の粒子径を有し且つバインダとは異なる屈折率を有する微粒子を、該バインダ内に分散させることにより得られる。
上述のような構成を有する複合材料において、該複合材料を透過する光は、バインダ内の微粒子が電気双極子であるかのような振る舞いをする。具体的には、複合材料内での光の速度は、光がバインダのみを通過する場合の速度とは異なる。すなわち、複合材料の屈折率は、バインダのみの場合の屈折率とは異なる。
上述のような複合材料では、同時に、いわゆるレイリー散乱と呼ばれる光散乱を生じることが知られている。レイリー散乱は、微粒子の粒子径及び分散の度合いによって、光の散乱の度合いが変化するが、レイリー散乱を積極的に生じさせることにより、上述の複合材料を高屈折率光散乱層10として機能させることができる。
なお、上述のようなレイリー散乱などの光散乱が生じる物質中を光が伝搬するとき、ある地点の光の強度をIとすると、その地点から距離dまで散乱せずに進む光の強度Iは、以下の式で示されるランベルトの法則によって求められる。
Figure 2015224956
ここで、γは光散乱係数である。この光散乱係数は、光を散乱する光散乱層の光散乱性能を示す係数である。
なお、上述のような構成を有する有機EL素子1において、ガラス基板2上に高屈折率光散乱層10が形成された部材が、光取り出し部材6である。よって、光取り出し部材6上に、透明電極3、有機EL層4、反射電極5が順に積層されることにより、有機EL素子1が得られる。
(光学特性の評価方法)
次に、上述のような構成を有する高屈折率光散乱層10の光学特性の評価方法について説明する。なお、以下では、図1に示す有機EL素子1の代わりに、図2に示すように基材21上に光散乱層22が形成された測定用部材20を用いて光学特性の評価方法について説明する。以下の説明において、光学特性とは、対象物の屈折率、光散乱能など、光学的な特性を意味する。
基材21は、例えばガラス基板やプラスチックである。基材21は、屈折率が既知の材料、または、予め屈折率が測定された材料が利用される。光散乱層22は、厚さdが0.5μmから10μm、好ましくは0.5μmから5μmである光散乱性光学薄膜である。
なお、有機EL素子1の高屈折率光散乱層10の光学特性の測定を行う場合、該高屈折率光散乱層10の厚さが0.5μmから10μmであれば、ガラス基板2上に高屈折率光散乱層10が設けられた光取り出し部材6を、測定用部材20として用いることができる。また、高屈折率光散乱層10と同一の組成を有する光散乱層22を基材21上に形成して、測定用部材20としてもよい。
測定用部材20の光散乱層22に対して略垂直に入射した光の垂直反射光の分光測定を行う。そして、得られた結果を用いて分光解析を行う。
一般的に、厚さが10μm以下の薄膜に光を入射した場合、薄膜の表面で反射する光及び該薄膜と基材との界面で反射する光は、互いに干渉する。図3に、光散乱層22に対して略垂直に光を入射した場合の光の反射の様子を示す。なお、図3では、光の経路が見えやすいように、測定用部材20の断面のハッチングを省略している。
図3において、基材21(光透過側物質)の屈折率をn、光散乱層22の屈折率をn、該光散乱層22の光散乱係数をγ、測定用部材20の周囲の媒質30(光入射側物質)の屈折率をnとする。また、媒質30と光散乱層22との界面を界面0、光散乱層22と基材21との界面を界面1、基材21と媒質30との界面を界面2とする。なお、媒質30は、通常、空気であり、その屈折率は1である。媒質30は、屈折率が既知であれば、空気以外であってもよい。
まず、媒質30から光散乱層22に対して略垂直に光が入射した場合の光散乱層22での反射光を考える。なお、光散乱層22での光の反射のみを考慮するため、界面2での光の反射等は無視する。すなわち、ここでは基材21が無限に存在すると考える。
界面0では、一部の光が反射(図3中のr)して、残りの光が光散乱層22を透過して界面1に向かう。界面1に到達した光は、一部の光が反射して界面0に向かい、残りの光が界面1を透過する。
界面0に到達した光は、一部の光が反射して界面1に向かい、残りの光が界面0を透過する(図3中のr)。界面1に到達した光は、一部の光が界面1で反射して界面0に向かい、残りの光が透過する。界面0に到達した光は、一部の光が反射して界面1に向かい、残りの光が界面0を透過する(図3中のr)。このように、界面0及び界面1での光の反射及び透過が繰り返される。
つまり、媒質30から光散乱層22に対して略垂直に光が入射する場合、光散乱層22の反射光には、界面0で反射した光と、界面1で1回あるいは複数回反射して界面0を透過した光とが含まれる。それらの光が互いに干渉することで、光散乱層22の反射光となる。
ここで、光が互いに干渉するということは、それぞれの光の振幅が合成されるということである。よって、光散乱層22の反射光の強度は、干渉する光の振幅を求めて、それらを合成することにより求めることができる。すなわち、光散乱層22の界面0及び界面1での反射の繰り返しを考慮した反射波の振幅ρ00を算出することにより、光散乱層22の反射光の強度が得られる。
また、屈折率nの媒質30から屈折率nの光散乱層22に対して界面0に略垂直な方向に光が入射される場合、界面0での光の振幅反射率ρ及び振幅透過率τは、それぞれ、下式によって示される。
Figure 2015224956
同様に、屈折率nの光散乱層22から屈折率nの基材21に光が進む場合、界面1での光の振幅反射率ρ及び振幅透過率τは、それぞれ、下式によって示される。
Figure 2015224956
一方、屈折率nの光散乱層22から屈折率nの媒質30に光が進む場合、界面0での光の振幅反射率ρ−0及び振幅透過率τ−0は、それぞれ、下式によって示される。
Figure 2015224956
上述の各式を考慮して、光散乱層22の界面1での反射の繰り返しを考慮した場合の反射波の振幅ρ00を求める。
まず、媒質30から、光散乱層22に対して略垂直に光が入射した場合、界面0で反射された光(図3中のr)の振幅は、界面0での反射直後にρとなる。界面0を透過した光の振幅は、界面0を透過した直後にτとなる。光散乱層22の厚さをdとすれば、界面0から進んで界面1に到達した光には、δ=2πnd/λの位相変化が発生する。ここで、λは光の波長である。
なお、光散乱層22内で散乱した光は、光の進行方向が変化するため、垂直反射波の振幅には影響を及ぼさない。よって、振幅ρ00には、散乱していない光のみが関与する。
光散乱層22の光散乱係数をγとすれば、式(1)より、距離dの間、散乱を生じずに進む光の強度は、exp(−γ・d)倍になる。光の強度が振幅の二乗であることを考慮すると、距離dの間、散乱を生じずに進む光の強度がexp(−γ・d)倍になるということは、距離dの間に進んだ光の振幅が光散乱によってexp(−γ/2・d)倍になることと等価と考えることができる。よって、界面0を透過した光は、界面1の直前で、振幅が以下の式によって表される。
Figure 2015224956
次に、界面1で反射して、界面0に進む光について考える。界面1での振幅反射率はρであり、界面0の直前では、光に再びδ=2πnd/λの位相変化が発生する。界面に対して正確に垂直に光を入射させることは難しいため、界面1で反射する光は入射した光とは異なる光路を進む。界面1から界面0に光が進む場合も、光散乱によって、光の振幅がexp(−γ/2・d)倍になる。さらに、界面0での振幅透過率はτ−0なので、界面1で一度、反射して界面0から媒質30へ進む光の振幅は、以下のとおりである。
Figure 2015224956
同様に、界面1でm回反射して界面0から媒質30に進む光の振幅は、以下のとおりである。
Figure 2015224956
界面1での繰り返し反射を考慮した反射波の振幅ρ00は、これらの振幅の合成であり、下式によって表される。
Figure 2015224956
等比級数の和の公式より、式(8)は、
Figure 2015224956
となり、整理して、
Figure 2015224956
となる。
したがって、強度反射率Rは、
Figure 2015224956
であり、オイラーの式exp(−i2δ)=cos(2δ)−isin(2δ)を利用して整理すると、
Figure 2015224956
となる。この式(1−1)が、光散乱を考慮した光散乱性光学薄膜の垂直反射光の強度反射率を示す式となる。
(フィッティング)
上述の式(1−1)を用いることにより、光散乱層22の屈折率n、厚さd及び光散乱係数γをそれぞれ求めることができる。なお、光散乱層22の光学特性を評価する際には、複数の光の波長における光散乱層22の屈折率n及び光散乱係数γが必要になる。そのため、測定用部材20の光散乱層22に対して略垂直に光を入射して、垂直反射光の強度の分光測定を行って垂直反射率スペクトルを測定することにより、分光解析を行う。
具体的には、既知である媒質30の屈折率n、及び基材21の屈折率nを式(1−1)に代入して、光の各波長の強度反射率Rが、測定によって得られた光の各波長の垂直反射率スペクトルに合うようなn、d、γを求める。つまり、式(1−1)と測定によって得られた垂直反射率スペクトルとのフィッティングを行う。このように求めたn、d、γが、それぞれ、光散乱層22の屈折率、厚さ、光散乱係数となる。
なお、光散乱層22の厚さdについては、段差計などを用いて厚さの測定を行ってもよい。そして、このように測定された光散乱層22の厚さdを利用して、n、γをフィッティングしてもよい。
また、式(1−1)では、界面2における光反射を無視している。よって、測定用部材20の光散乱層22の垂直反射率を測定する場合、界面2に反射防止処理が行われた測定用部材が用いられる。反射防止処理は、例えば、界面2にサンドブラスト処理をして、艶消し黒色塗料を塗布することなどにより行われる。
なお、上述のような界面2の反射防止処理が困難な場合は、光が光散乱層22側から入射したときの強度反射率R、強度透過率T、及び、光が界面2から入射したときの強度反射率Rをそれぞれ測定することにより、Rを求めることができる。すなわち、界面2の反射防止処理が難しい場合には、光散乱層22の反射光及び透過光を用いて、該光散乱層22の光学特性を求めることができる。ここで、基材21の厚さは、一般的に100μm以上であり、基材21の界面1及び界面2から反射した光は干渉しない。
強度反射率Rは、光散乱層22の反射光強度と、界面2で反射して光散乱層22を透過した光の強度との足し合わせである。基材21から光散乱層22を透過して媒質30に向かう光の光散乱層22における強度透過率をT−0、基材21から光散乱層22へ向かう光が光散乱層22で反射して基材21の界面2に向かう光の強度反射率をR−0、媒質30から光散乱層22を透過して基材21に向かう光の光散乱層22における強度透過率をT、基材21から媒質30に向かう光の界面2での強度反射率をRとすると、T=T−0である。さらに、界面1及び界面2における繰り返し反射を考慮すると、光が光散乱層22側から入射したときの強度反射率Rは、下式によって表される。
Figure 2015224956
また、基材21には光吸収や光散乱を生じないものが用いられ、基材21から媒質30に向かう界面2での強度透過率はT=1−Rであることを考慮すると、光が光散乱層22側から入射したときの強度透過率Tは、
Figure 2015224956
である。
同様に、媒質30から基材21に光が向かう場合の強度反射率がR−1=Rであること、及び媒質30から基材21に向かう界面2での強度透過率がT−1=T=1−Rであることを考慮して、光が界面2から入射したときの強度反射率Rは、下式によって表される。
Figure 2015224956
上述の(12)〜(14)の式から、R−0、T−0を削除しRを求めると、
Figure 2015224956
となる。
ここで、基材21から媒質30に光が向かう場合の振幅反射率はρ=(n−n)/(n+n)であり、基材21から媒質30に向かう界面2での強度反射率Rは、その二乗として求められる。よって、既知の値であるnとn、測定値R、強度透過率T、界面2から光を入射したときの強度反射率Rから、Rが求まる。このRを利用して、上述のフィッティングを行ってもよい。
なお、上述のフィッティングを行う際には、n、d、γの初期値を実際の値により近い値に設定することにより、収束しやすくなる。
界面2に反射防止処理を行った場合において、媒質30から光散乱層22に光が入射した場合の強度反射率R、界面2に反射防止処理を行わない場合において、媒質30から光散乱層22に光が入射した場合の強度反射率R、媒質30から基材21へ光が入射した場合の強度反射率Rの分光測定を行い、各スペクトルの分光解析を行うことにより、特定の波長におけるn、γの値の算出が可能である。このように算出した値を、前記初期値として用いることができる。
図4は、n=1.0、n=1.8、n=1.52、γ=0.0001nm−1、d=2000nmとして、式(1−1)から得られたRのスペクトルである。図4に示すように、反射を繰り返す光の干渉の影響により、Rは、測定波長に対して、ピーク及びボトムを有する波状になる。
なお、上述の式(1−1)において、δ=2πnd/λ=(2a+1)π/2(a=0,1,2,・・・)の時は、sinδ=1となる。
図4に示すRのスペクトルにおいて、ピークになる波長は、sinδ=1になる波長である。同一箇所で測定を行う場合、R、R、Rの各スペクトルでピークになる波長(sinδ=1になる波長)は変わらない。このピークになる波長において、各波長のR、R、Rの測定値を用いて屈折率や光散乱係数を算出することができる。
ここで、sinδ=1となる場合、Rは、下式によって表される。
Figure 2015224956
上記式(16)に、式(2)のρ=(n−n)/(n+n)、及び式(3)のρ=(n−n)/(n+n)を代入して、整理すると、下式のようになる。
Figure 2015224956
ただしn>nの場合。(n<nの場合は−√Rが√Rとなる。)
よって、exp(−γ・d)は、下式によって表される。
Figure 2015224956
基材21から光散乱層22を透過して媒質30に向かう光の光散乱層22における強度透過率T−0は、式(1−1)を求めたときと同様、光散乱層22の界面0及び界面1の繰り返し反射による光の干渉を考慮して求めると、下式になる。
Figure 2015224956
そして、sinδ=1の場合には、下式になる。
Figure 2015224956
さらに、式(20)に、式(2)及び式(3)を代入して、整理すると、
Figure 2015224956
となる。この式(21)に式(18)を代入して整理すると、
Figure 2015224956
となる。
この(22)式には、測定を行っていないTが含まれるが、このTは、式(12)より、
Figure 2015224956
である。また、この式には、測定を行っていないR−0が含まれるが、式(14)より、
Figure 2015224956
である。
さらに、既述のように、
Figure 2015224956
であり、sinδ=1の場合には、既知の値n、nと測定値R、R、Rから屈折率nが求まる。
また、Rスペクトルにおいて、あるピークbの波長をλ、そのピークbにおいて式(22)で求めた屈折率をnとし、ピークbの隣りのピークcの波長をλ、そのピークcにおいて式(22)で求めた屈折率をnとすると、λ<λの場合、aを正の整数として、
Figure 2015224956
Figure 2015224956
となる。λ>λの場合は、
Figure 2015224956
そして、λ<λの場合、それらの差を求めることにより、下式が得られる。
Figure 2015224956
この式(26)を用いることにより、式(22)で求めた屈折率から、厚さdが求まる。さらに、式(18)から、ピークの波長における光散乱係数γを求めることができる。このように算出された光散乱層22の屈折率n、厚さd及び光散乱係数γは、光散乱を考慮した式(1−1)から求めた値である。
(フィッティングによる補正方法)
上述のように求めた値には、ピークの波長やその強度の読み取り誤差が含まれている。より正確な値を求める場合や、ピークの波長以外での屈折率や光散乱係数を求める場合には、上述のように求めた値を初期値として、屈折率n、厚さd、光散乱係数γをパラメータとした式(1−1)を用いて、Rスペクトルとのフィッティングをさらに行えばよい。このようにして求められたn、d、γが、光散乱層の屈折率、膜厚さ、光散乱係数となる。
上述の初期値を利用したフィッティング方法としては、例えば以下のような方法によって行われる。
まず、式(22)、式(18)及び式(26)によって得られたRスペクトルのピークの波長における屈折率、光散乱係数及び光散乱層の厚さを用いて、式(1−1)から、Rスペクトルを算出する。
そのために、式(22)及び式(18)を用いてそれぞれ求めたRスペクトルのピークの波長における屈折率及び光散乱係数から、ピークの波長以外の各波長の屈折率及び光散乱係数を推定する。例えば、最小二乗法を用いて近似曲線を求め、得られた近似曲線から各波長の屈折率や光散乱係数を推定する。
波長と屈折率との関係を求める場合、経験的に、波長と屈折率との間には下式で示されるCauthyの式の関係があるとされている。そのため、Cauthyの式を用いた最小自乗近似を利用することができる。
Figure 2015224956
ここで、nは屈折率、λは光波長、A、B、Cはそれぞれ定数である。
なお、波長と屈折率との関係を求める場合には、Cauthyの式以外の多項式近似を用いてもよい。例えば、ピーク間の屈折率の推定に、直線補間を用いてもよい。
また、光の波長と光散乱係数との関係を求める場合には、多項式近似、指数近似、累乗近似を用いてもよい。また、ピーク間の光散乱係数の推定に、直線補間を用いてもよい。
光の波長と光散乱係数との関係を求める場合、光の波長とexp(−γ・d)との関係を求めてもよい。しかしながら、式(26)を利用して光散乱層の厚さdの初期値を求め、求めたdの初期値を用いて光の波長と光散乱係数γとの関係を求めるほうが、より正確に最小自乗近似を行うことができ、より望ましい。
このようにして得られた各波長の屈折率、光散乱層の厚さ、光散乱係数を用いて、式(1−1)からRスペクトルを算出する。
式(1−1)から得たRスペクトルと、垂直反射率測定によって得たRスペクトルとが一致すれば、以上のようにして求めた屈折率、光散乱係数、光散乱層の厚さdが、それぞれ、光散乱層の屈折率、光散乱係数、厚さとなる。
ただし、式(1−1)から得たRスペクトルと垂直反射率測定によって得たRスペクトルとが一致しない場合が多い。これは、ピークの波長やその強度に読み取り誤差が存在するためである。このように一致しない場合には、以上のようにして求めた屈折率、光散乱係数、光散乱層の厚さdを用いてさらなるフィッティングを行う。
なお、屈折率、光散乱係数、光散乱層の厚さdを適当に変化させて、式(1−1)から得たスペクトルと測定スペクトルとを合わせてもよいし、特にピークの位置がずれている場合は、以下に説明する方法を利用しても良い。また、以下の方法に限定されず、別の方法を用いても良い。
前述の通り、Rスペクトルにおいて、
Figure 2015224956
を満たす波長でピークとなる。測定によって得たRスペクトルから読み取った各ピークの光波長、その波長における屈折率、及び光散乱層の厚さを式(28)に代入して、各ピークの光波長における係数aを求める。
ピークの光の波長においては、係数aは、0あるいは正の整数になるはずである。ただし、屈折率、光散乱係数、光散乱層の厚さの初期値を用いて式(1−1)から計算したRスペクトルと、測定によって得たRスペクトルとが一致しない場合は、各ピーク波長において、係数aが0や正の整数ではない。よって、この場合、各ピークの光の波長において、係数aが0あるいは正の整数になるように、光散乱層の厚さや、屈折率の初期値を変化させる。
まず、任意のピークの波長を選択する。この場合、各ピークの光の波長における係数aが最も0あるいは正の整数に近いピークの光の波長を選択してもよいし、各ピークの光の波長における係数aと最も近い正の整数との差が大きく変わらなければ、任意のピークの波長を選択してもよい。
選択した光の波長において、係数aが最も近い正の整数(係数aが0に最も近い場合は0)になるように、光散乱層の厚さの値を調整する。こうして求めた厚さが、光散乱層の厚さの初期値よりも正確な光散乱層の厚さの算出値になる。
次に、選択したピークの光の波長以外のピークの波長について、式(1−1)を利用して計算したRスペクトルと、測定から得たRスペクトルとを一致させる処理を行う。
選択したピークに対して長波長側にx個隣り(図4の例では、1つ隣り、2つ隣り)のピークの係数はa−x(図4の例ではa−1、a−2)であり、短波長側にx個隣り(図4の例では、1つ隣り、2つ隣り)のピークの係数はa+x(図4の例ではa+1、a+2)である。
各ピークにおいて、式(28)に、光波長λ、上記選択したピークで算出した厚さd、ピークの係数(選択したピークに対して長波長側にx個隣りのピークの係数はa−x、短波長側にx個隣りのピークの係数はa+x)をそれぞれ代入して、屈折率nを求める。求めた屈折率nがピークの波長でのより正確な屈折率の算出値となる。
さらに、こうして得た、光散乱層の厚さ及び屈折率と、式(18)とによって、各ピークの波長におけるexp(−γ・d)、さらには光散乱係数γを求める。
この処理で求めた、Rスペクトルのピークにおける屈折率及び光散乱係数から、ピーク以外の各波長の屈折率及び光散乱係数を、最小自乗近似を用いて再び推定する。こうして得た、光散乱層の厚さ、屈折率及び光散乱係数と、式(1−1)とによって、再びRスペクトルを算出する。
以上の処理を行うことにより、式(1−1)を用いて得たRスペクトルと、測定から得たRスペクトルとが一致する可能性は高い。この処理で式(1−1)を用いて得たRスペクトルと、測定から得たRスペクトルとが一致していれば、この処理で得た光散乱層の厚さ、屈折率及び光散乱係数が、それぞれ、実際の光散乱層の厚さ、屈折率及び光散乱係数となる。
一方、式(1−1)を用いて得たRスペクトルと測定から得たRスペクトルとが一致していなければ、得られた光散乱層の厚さ、屈折率及び光散乱係数を新たな初期値として同じ処理を繰り返す。特に、あるピークにおいて、計算と測定とでピークの位置が一致しない場合は、ピークの光の波長の読み取り誤差が存在するため、そのピークの波長を再度、読み取って実施する。
なお、上述の方法では、式(22)、式(18)、式(26)で得たRスペクトルのピークの屈折率、光散乱係数及び光散乱層の厚さを利用して、式(1−1)からRスペクトルを算出し、測定から得たスペクトルと計算によって得たスペクトルとの比較を行っている。しかしながら、測定から得たスペクトルと計算によって得たスペクトルとの比較を省略して、各ピークの光の波長において、式(28)を満たすように光散乱層の厚さ及び屈折率の値の調整を行ってもよい。また、おおよその光散乱層の厚さ、屈折率及び光散乱係数が分かっていれば、その値を初期値として、式(28)を満たすように光散乱層の厚さ及び屈折率の値の調整を行ってもよい。
以上より、光散乱層22の強度反射率の分光測定を行い、式(1−1)を用いた分光解析を行うことにより、光散乱層22の屈折率をより正確に求めることができる。さらに、以上の方法により、光散乱の度合いを示すパラメータである光散乱係数を求めることもできる。このように、光散乱の度合いを示すパラメータとして、光散乱係数γを測定することは、光散乱層22の設計において、有用である。
ここで、光散乱係数γは、光散乱層22を構成する材質自体の光散乱能を示す。γが大きければ散乱能が大きいことを示す。また、exp(−γ・d)は、光散乱層22の厚さも考慮した光散乱能を示し、exp(−γ・d)が小さければ、散乱能が大きいことを示す。例えば、光散乱層22を用いた光取り出し部材が目標の散乱能を達成しない場合、光散乱係数γの測定を行えば、厚さが目標値から外れているのか、材質自体の光散乱能が目標値から外れているのかが容易に判断がつく。
また、以上の方法によって、光散乱係数γの光波長依存性も求めることができるので、光散乱を生じさせる光の波長の光散乱能の設計が容易になる。
これらの点は、特に有機EL素子などの面発光体の光取り出し部材に用いられる光散乱性光学薄膜の設計に有用である。よって、光散乱層の強度反射率の分光測定を行って式(1−1)を用いた分光解析を行うことにより、屈折率や光散乱係数を求める方法は、面発光体の光取り出し部材の測定方法として有用である。
(光散乱層における光散乱能と光取り出し効率との関係)
既述のとおり、図1に示す有機EL素子1では、透明電極3において有機EL層4とは反対側の面に高屈折率光散乱層10が設けられている。この高屈折率光散乱層10は、光の進行方向を乱す機能を有する。
ここで、有機EL素子1内の有機EL層4内から発光された光の進行方向が、光の進行方向を乱す領域が存在しない場合に進行する方向とは異なる方向に変化させられた場合、光の進行方向が乱された、とする。
前述のように、有機EL素子1では、発光位置から光が高屈折率材質から低屈折率層へ進む場合、その界面に臨界角を超えて入射する光には全反射が生じる。よって、全ての光を外部に出射することができないため、光の損失が存在する。
これに対し、図1に示す有機EL素子1のように、光の進行方向を乱す領域が存在すれば、その領域で全反射を生じる光の進行方向を、全反射を生じない方向へ変化させることが可能になる。よって、光の取り出し効率を向上させることができる。例えば、前記光の進行方向を乱す領域として、高屈折率光散乱層10等の光散乱層を用いた場合には、該光散乱層の光散乱能により、光の取り出し効率を変化させることができる。
このような光散乱層の光散乱能と光取り出し効率との関係を説明するために、光散乱層の光散乱能であるexp(−γ・d)と光取り出し効率との関係を、シミュレーションによって求めた。なお、シミュレーションでは、光線追跡法を用いた。光線追跡法として、市販の光線追跡ソフトLightTools(Synopsys社製)(LightTools及びSynopsysともに登録商標)を利用した。
シミュレーションに用いたモデルを図5に示す。このモデルでは、有機EL素子を、ガラス基板31、透明電極32、光散乱層33、2層の有機EL層34、35及び反射電極36が順に積層された構造としてモデル化した。各層の屈折率は、表1に示すとおりである。また、反射電極36の反射率は88%として、残りの12%は反射電極36に吸収されると仮定した。光は、有機EL層35において、有機EL層34との界面から10nm内側の位置から全方位に同じ強度で出射されるとした(図5に発光部を符号37で示す)。
Figure 2015224956
なお、実際の有機EL素子では、通常、有機EL層の厚さが100nm以下と薄いため、光の干渉が生じ、出射方位によって光強度が異なる。そのため、本シミュレーションの光強度分布は実際の有機EL素子の光強度分布と多少異なるが、本シミュレーションを行った場合でも、得られる結果は、実際の有機EL素子の場合とあまり大きく異ならない。
また、本シミュレーションでは、光散乱層内には、屈折率2.3の微粒子が分散されていると仮定した。微粒子の粒径は、50nmから200nmまでの間の所定の粒径とする。この所定の粒径を有する粒子が光散乱層内に分散しているとし、該所定の粒径に対して、光散乱が1回生じた場合の光散乱光の配向分布を求めた。そして、その配向分布に沿って光散乱が生じるものとした。このシミュレーションでは、複数の種類の粒径について、計算を行った。なお、光散乱能は、光散乱係数γによって規定した。
上記の条件において、光線追跡を実施し、発光光のうち、ガラス基板31の一面(図5における光出射面38)から出射される光の割合を、光取り出し効率とした。
図6に、シミュレーションで得たexp(−γ・d)と光取り出し効率との関係を示す。なお、この図6に示すシミュレーション結果は、光散乱層の屈折率は1.80としてシミュレーションを行った結果である。
図7に、シミュレーションで得た光散乱層の屈折率と、各屈折率の条件下で得られた光取り出し効率の最大値との関係を示す。図7に示すように、光散乱層の屈折率が1.75以下になると、急激に光取り出し効率が低下する。これは、光散乱層の屈折率が光発光層の屈折率以下になると、光散乱層と透明電極との界面で全反射する光が発生するためである。一般的には、光発光層の屈折率は1.75以上であるため、光散乱層の屈折率を1.75以上とする必要がある。
また、図7によると、光散乱層の屈折率が1.50のときの光取り出し効率は35%である。光散乱層の屈折率が1.50の場合に光散乱層と透明電極との界面で全反射を生じる光量と、光散乱層が存在せずに直接、ガラス基板が透明電極と接触している構成においてガラス基板と透明電極との界面で全反射を生じる光量とを比較すると、光散乱層の屈折率とガラス基板の屈折率とがほぼ同じであることから、ほぼ同じ光量が全反射を生じる。
よって、透明電極に接触するように屈折率が1.50の光散乱層を配置した場合と、透明電極に接触するようにガラス基板を配置するとともに、該ガラス基板において透明電極とは反対側の面に光散乱層を配置した場合とで、光散乱層に入射する光量はほぼ同じである。したがって、光散乱層の屈折率が1.50の場合の光取り出し効率は、透明電極に接触するようにガラス基板を配置するとともに、該ガラス基板において透明電極とは反対側の面に光散乱層を配置した場合の光取り出し効率を示す。
よって、透明電極に接触するように光散乱層を配置した場合、光取り出し効率が35%を超えた場合に光取り出し効率の向上の効果が得られたことになる。
図6によると、exp(−γ・d)が0.9以下になれば、光取り出し効率が35%を超える。よって、光散乱層のexp(−γ・d)は0.9以下であることが望ましい。光散乱層のexp(−γ・d)は、バインダ内に分散された微粒子の粒径や分散具合を調整したり、光散乱層の厚さを調整したりすることによって、調整可能である。
(実施例1)
ガラス上に光散乱層を有する測定用部材を作製して、反射率の分光測定を行った。この測定結果を用いて、式(1−1)によって分光解析を行い、ガラス上に形成された光散乱層の屈折率及び光散乱係数を求めた。
測定用部材は、次のように作製した。まず100mm×100mmの大きさで且つ厚さ0.7mmの液晶用ガラス(コーニング社製「Eagle XG」(登録商標))の表面をアルカリ洗浄した。その液晶用ガラス上に、微粒子としてのチタン酸バリウムを分散させたシリコン樹脂の塗布液を塗布し、乾燥させることにより、光散乱層を形成した。これにより、液晶用ガラス上に光散乱層を有する測定用部材を得た。
表2に示すように、光散乱層の屈折率及び微粒子の粒径が異なる2種類の測定用部材を作製した。なお、塗布液中の微粒子であるチタン酸バリウムの濃度は、光散乱層の屈折率が表2の値になるように調整した。
Figure 2015224956
このようにして作製した測定用部材を用いて、光散乱性薄膜の垂直反射光の分光測定を行った。そして、その測定結果を用いて、式(1−1)によって分光解析を行うことにより、光散乱層の屈折率、光散乱係数、厚さを求めた。
なお、式(1−1)を用いた分光解析を行う場合には、液晶用ガラスの屈折率を予め求めておく必要がある。
ここで、液晶用ガラスの屈折率は、次のように求めた。屈折率測定用として、(光散乱層が設けられていない)液晶用ガラスを用意した。用意した液晶用ガラスの片面を紙やすり等によって粗面化し、該片面に艶消しの黒色スプレーを塗布することにより、該片面で光が反射しないような反射除去処理を行った。その後、反射分光測定装置において、粗面化処理を行っていない面の垂直反射率スペクトルを測定することにより、ガラスの裏面反射を無視した反射スペクトルを得た。このようにして得た反射率は、各測定波長の液晶用ガラスの屈折率n、光入射媒体の屈折率=1(空気)として、
Figure 2015224956
であるので、
Figure 2015224956
として求めた。得られた液晶ガラスの屈折率を図8に示す。
なお、垂直反射率スペクトルは、FILMETRICS社製のF20−UVを用いて測定した。なお、屈折率の測定を行わずに、カタログ値などの公開されている値を利用してもよい。
次に、測定用部材の垂直反射率の分光測定を行った。
まず、光散乱層から光を入射した場合の垂直反射率スペクトルR及び光散乱層が設けられた面とは反対側の面から光を入射した場合の垂直反射率スペクトルRの測定を行った。ここで、R及びRは、測定用部材の光が入射される面とは反対側の面での反射、いわゆる裏面反射を考慮した反射率である。
次に、測定用部材の光散乱層が設けられた面とは反対側の面の反射除去処理を行って、光散乱層から光を入射した場合の垂直反射率スペクトルRの測定を行った。このRは、測定用部材の光が入射される面とは反対側の面の反射、いわゆる裏面反射を無視した反射率である。
なお、R、R、Rは、測定用部材のほぼ同一の部分で測定した。垂直反射率スペクトルは、液晶ガラスの場合と同様、FILMETRICS社のF20−UVを用いて測定した。また、垂直反射率スペクトルは、有機EL素子から発光される光が含まれる、波長400nmから800nmの範囲で取得し、分光解析も波長400nmから800nmの範囲で行った。
得られたRスペクトルの分光解析を行うことによって、光散乱層の屈折率、光散乱係数及び厚さを求めた。
なお、Rスペクトルを式(1−1)に直接フィッティングしてもよいが、本実施例では、Rスペクトル、Rスペクトル、式(22)、式(18)を利用して得た、Rスペクトルのピークでの屈折率及び光散乱係数を初期値として、Rスペクトルの式(1−1)へのフィッティングを行った。
本実施例の場合、式(1−1)、式(18)、式(22)において、基材の屈折率nは、図8に示す液晶ガラスの屈折率である。また、測定用部材の周りの媒質は空気なので、屈折率nは1である。
まず、Rスペクトルにおいて、Rがピークとなる波長λpとその強度Rを読み取った。次に、Rスペクトル、Rスペクトルにおいて、波長λpの強度R、Rを読み取った。なお、Rスペクトル、Rスペクトルにおいて、波長λpでピークであれば、その強度をR、Rとした。
ただし、測定用部材のほぼ同一の部分で測定を行っているが、実際には、若干の測定位置のずれによって、光散乱層の厚さが変化し、R、Rのピークの波長がRのピークの波長からずれる場合がある。この場合は、スペクトルのピークの包絡線を求め、光波長λpの包絡線上の値を強度R、Rを強度とした。
こうして得た光波長λpの反射強度R、R、Rを用いて、式(22)、式(18)でのRスペクトルのピークでの屈折率及び光散乱係数を初期値とし、Rスペクトルのフィッティングを実施した。
表3及び表4に、測定用部材の条件1及び条件2のそれぞれの場合において、式(22)、式(18)におけるRスペクトルのピークの波長、屈折率、光散乱係数及び光散乱層の厚さを示す。
Figure 2015224956
Figure 2015224956
まず、式(22)、式(18)、式(26)で得たRスペクトルのピークの屈折率、光散乱係数及び光散乱層の厚さ(表3及び表4参照)を用いて、式(1−1)からRスペクトルを算出した。
詳しくは、式(22)、式(18)によって求めたRスペクトルのピークの屈折率及び光散乱係数から、最小二乗法を利用して、ピーク以外の各波長の屈折率及び光散乱係数の近似曲線を求めた。そして、得られた近似曲線から各波長の屈折率及び光散乱係数を推定した。
なお、光波長と屈折率との関係は、式(27)で示されるCauthyの式を用いた最小自乗近似を利用した。また、光波長と光散乱係数γとの関係は、累乗近似を用いた最小自乗近似を利用した。
このようにして得られた各波長の屈折率、光散乱層の厚さ及び光散乱係数を用いて、式(1−1)からRスペクトルを算出した(図9参照)。
図9に示すように、初期値を用いて算出したRスペクトル(図9における計算値)と垂直反射率測定から得たRスペクトル(測定値)とは一致していない(ピークがずれている)ので、さらなるフィッティングを行った。
まず、各ピークの波長において、式(28)の関係から、係数aを求めた。条件1については、波長595.97nmでa=8.036になったので、光散乱層の厚さの値を補正してa=8となるようにした。その後、得た光散乱層の厚さの補正値を用いて、他のピークでも屈折率の補正を行った。各ピークの補正後の屈折率を用いて、再びCauthyの式によって最小自乗近似を行った。そして、求めた屈折率及び光散乱層の厚さを用いて式(18)から光散乱係数を算出した。このように得られた光散乱層の厚さ、屈折率、光散乱係数を用いて、式(1−1)によってRスペクトルを算出した。
なお、比較例として、光散乱を考慮しない式(2−1)を用いた従来のRスペクトルのフィッティングも実施した。図10は、測定用部材が条件1の場合に、本発明の式(1−1)を用いたRスペクトルのフィッティング結果を、図11は、測定用部材が条件1の場合に、従来の式(2−1)を用いたRスペクトルのフィッティング結果をそれぞれ示す。また、図12は、測定用部材が条件2の場合に本発明の式(1−1)を用いたRスペクトルのフィッティング結果を、図13は、測定用部材が条件1の場合に従来の式(2−1)を用いたRスペクトルのフィッティング結果をそれぞれ示す。
図10から図13に示すように、各フィッティングにおいて、式(1−1)を用いたフィッティングの方が、従来の式(2−1)を用いた場合よりも誤差が少ない。表5に、測定によって得たスペクトルとフィッティングによって得たスペクトルとの誤差をRMS(二乗平均平方根)で評価した結果を示す。表5に示すように、今回作製した光散乱層、つまり光散乱性光学薄膜に対しては、式(1−1)を用いた方が、従来の式(2−1)を用いた場合よりも精度良くフィッティングを行うことができた。
Figure 2015224956
図14に、条件1の測定用部材における光散乱層の屈折率を、式(1−1)及び式(2−1)を用いて求めた結果を示す。図15に、条件2の測定用部材における光散乱層の屈折率を、式(1−1)及び式(2−1)を用いて求めた結果を示す。また、表6に、条件1及び条件2の各測定用部材において、式(1−1)及び式(2−1)を用いて求めた光散乱層の厚さ、及び、測定用部材の光散乱層の一部を取り除いて段差計で実際に計測した場合の光散乱層の厚さを示す。なお、段差計には、三鷹光器製NH−3Nを用いた。
Figure 2015224956
図14及び図15に示すように、式(1−1)を用いてフィッティングを行い、光散乱層の屈折率を測定した場合には、従来の式(2−1)を用いてフィッティングした場合と比較して、設計値により近い値が得られた。また、表6に示すように、光散乱層の厚さについても、式(1−1)を用いてフィッティングを行った場合には、段差計による測定値(物理的な厚さ)に、より近い値が得られた。
よって、以上の結果から、本発明の式(1−1)を用いた分光解析を行うことにより、光散乱性光学薄膜の屈折率及び厚さをより精度良く測定できることがわかる。
条件1の測定用部材において、式(1−1)を用いたフィッティングにより得た光散乱層の光散乱係数γ及びexp(−γ・d)を、図16に示す。また、条件2の測定用部材において、式(1−1)を用いたフィッティングにより得た光散乱層の光散乱係数γ及びexp(−γ・d)を、図17に示す。
このように、本発明の式(1−1)を用いて分光解析を行うことにより、光散乱性薄膜の光散乱係数γを求めることができる。
(実施例2)
表2に示す条件1及び条件2の各測定用部材をそれぞれ光取り出し部材に用いて、有機EL素子の作製を行った。
まず、裏面反射処理を行っていない条件1及び条件2の測定用部材を作製した。そして、測定用部材を200℃に加熱しながら、該測定用部材の光散乱層上にスパッタリング法によって厚さ100nmのITO膜(透明性導電膜)を形成した。次に、フォトリソグラフィー法によって前記ITO膜のパターンニングを行い、透明電極を形成した。その後、Alの蒸着パターンニングによって補助配線を形成した。さらに、ポリイミドを用いて、補助配線の絶縁処理を行った。
次に、前記透明電極上に有機EL層を真空蒸着によって形成した。この有機EL層は、4、4‘−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルを用いた正孔輸送層と、トリス(8−ヒドロキノリン)アルミニウムからなる発光層兼電子輸送層とを有する2層構造とした。
続いて、Alからなる反射電極を、真空蒸着により作製した。そして、封止処理を行い、有機EL素子を得た。このように作製された有機EL素子からは、約530nmの波長をピークとした緑色光が出射される。この有機EL素子において、光散乱層が光の進行方向を乱す領域として機能する。
条件1の測定用部材を用いた有機EL素子を条件11とし、条件2の測定用部材を用いた有機EL素子を条件12とする。また、比較のため、光散乱層を設けずに直接、ガラス上に透明電極が設けられた有機EL素子を作製した(条件13)。また、市販の有機EL素子から光取り出し部材を取り外して、該光取り出し部材を、条件13の有機EL素子のガラスの光出射面(ガラスと空気の界面)に取り付けることにより、有機EL素子を得た(条件14)。
条件11〜14の有機EL素子を用いて輝度の測定を行った。その結果を表7に示す。輝度はハイランド社製のZERO−FPによって計測した。なお、表7では、輝度の測定値を、条件13の輝度を1とした相対輝度比で示している。
Figure 2015224956
表7から、exp(−γ・d)=0.95の条件11の有機EL素子の輝度は、条件14の有機EL素子よりも低いことが分かる。また、表7より、exp(−γ・d)=0.81の条件12の有機EL素子の輝度は、条件14の有機EL素子の輝度よりも高いことが分かる。
よって、表7から、本発明の実施形態に係る光取り出し部材を用いることによって、有機EL素子から出射される光の輝度が高くなることが分かる。したがって、本発明の実施形態に係る光取り出し部材によって十分な光取り出し効果が得られる。
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
前記実施形態では、有機EL素子1に用いられる光取り出し部材6の高屈折率光散乱層10の光学特性を評価する方法について説明した。しかしながら、前記実施形態における光学特性の評価方法は、光を散乱させる光散乱層として機能する層であれば、高屈折率光散乱層以外の層に対して適用してもよいし、有機EL素子以外の用途の層に対して適用してもよい。
本発明は、例えば面発光体の光取り出し部材などに用いられる光散乱性光学薄膜の光学特性の評価に利用可能である。
1 有機EL素子(面発光体)
2 ガラス基板
3 透明電極
4 有機EL層
5 反射電極
6 光取り出し部材
10 高屈折率光散乱層(光散乱性光学薄膜)
20 測定用部材
21 基材
22 光散乱層
30 媒質(光入射側物質)
31 ガラス基板
32 透明電極
33 光散乱層
34、35 有機EL層
36 反射電極
37 発光部
38 光出射面

Claims (7)

  1. 光散乱性光学薄膜の光学特性の評価方法であって、
    前記光散乱性光学薄膜の少なくとも反射光を測定し、該反射光の測定結果及び式(1−1)を用いて分光解析を行うことにより、前記光散乱性光学薄膜の光学特性を求める、光散乱性光学薄膜の光学特性の評価方法。
    Figure 2015224956
    ここで、
    Figure 2015224956
    であり、Rは光散乱性光学薄膜の反射率、nは光散乱性光学薄膜の屈折率、nは光散乱性光学薄膜と接する光入射側物質の屈折率、nは光散乱性光学薄膜と接する光透過側物質の屈折率、γは光散乱性光学薄膜の光散乱係数、dは光散乱性光学薄膜の厚さ、λは反射率の測定に用いられる光の波長である。
  2. 請求項1に記載の光散乱性光学薄膜の光学特性の評価方法において、
    前記光散乱性光学薄膜の透過光も測定し、該透過光の測定結果、前記反射光の測定結果及び前記式(1−1)を用いて分光解析を行うことにより、前記光散乱性光学薄膜の光学特性を求める、光散乱性光学薄膜の光学特性の評価方法。
  3. 請求項1または2に記載の光散乱性光学薄膜の光学特性の評価方法において、
    計測によって得られた前記光散乱性光学薄膜の反射率Rのスペクトルにおける少なくとも一つのピークの波長と、前記式(1−1)によって得られた前記光散乱性光学薄膜の反射率Rのスペクトルにおける少なくとも一つのピークの波長とが一致するように、前記式(1−1)における厚さdの値を調整した後、
    前記調整された厚さdを用いて、前記計測によって得られた光散乱性光学薄膜の反射率Rのスペクトルにおける各ピークの屈折率nを求め、
    前記調整された厚さd及び前記各ピークの屈折率nを用いて、各波長における屈折率n及び光散乱係数γを算出し、これらの値を用いて前記式(1−1)によって得られた反射率Rのスペクトルと、前記計測によって得られた光散乱性光学薄膜の反射率Rのスペクトルとを比較することにより、前記光散乱性光学薄膜の光学特性を求める、光散乱性光学薄膜の光学特性の評価方法。
  4. 請求項1から3のいずれか一つに記載の光散乱性光学薄膜の光学特性の評価方法において、
    前記光散乱性光学薄膜は、面発光体の光取り出し部材に用いられる材料によって構成されている、光散乱性光学薄膜の光学特性の評価方法。
  5. 請求項1から4のいずれか一つに記載の光散乱性光学薄膜の光学特性の評価方法において、
    前記光散乱性光学薄膜は、バインダ内にフィラーを混入することにより形成されている、光散乱性光学薄膜の光学特性の評価方法。
  6. 光散乱性薄膜を含む面発光体の光取り出し部材の光学特性の評価方法であって、
    請求項1から5のいずれか一つに記載の光散乱性光学薄膜の光学特性の評価方法を用いて、前記光取り出し部材の光学特性を求める、光取り出し部材の光学特性の評価方法。
  7. 光散乱性薄膜を含む面発光体の光取り出し部材であって、
    請求項1から5のいずれか一つに記載の光散乱性光学薄膜の光学特性の評価方法によって得られる屈折率が1.75以上であり、
    前記評価方法の式(1−1)におけるexp(−γ・d)が0.9以下である、面発光体の光取り出し部材。
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