JP2015224715A - 自動変速装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】スリーブの係合位置からニュートラル位置までの移動時間を短縮することができる自動変速装置を提供する。
【解決手段】変速制御装置26は、係合位置Peにあるスリーブ312をニュートラル位置Naに移動させる際に、係合位置Peから係合位置Peとニュートラル位置Naの間にある第一目標位置Pa1までスリーブ312が位置している場合には、スリーブ312の速度を制御する「速度制御」を実行し、第一目標位置Pa1からニュートラル位置Naにスリーブ312が位置している場合には、スリーブ312の位置を制御する「位置制御」を実行する。そして、変速制御装置26は、「速度制御」において、スリーブ312のニュートラル位置Naからの距離が小さくなるに従って、スリーブ312の速度が遅くなる「目標速度」を設定する。
【選択図】図11
【解決手段】変速制御装置26は、係合位置Peにあるスリーブ312をニュートラル位置Naに移動させる際に、係合位置Peから係合位置Peとニュートラル位置Naの間にある第一目標位置Pa1までスリーブ312が位置している場合には、スリーブ312の速度を制御する「速度制御」を実行し、第一目標位置Pa1からニュートラル位置Naにスリーブ312が位置している場合には、スリーブ312の位置を制御する「位置制御」を実行する。そして、変速制御装置26は、「速度制御」において、スリーブ312のニュートラル位置Naからの距離が小さくなるに従って、スリーブ312の速度が遅くなる「目標速度」を設定する。
【選択図】図11
Description
本発明は、車両等に用いられる自動変速装置に関する。
例えば、特許文献1に記載の自動変速装置は、クラッチリングと、クラッチリングに隣接した位置に軸線方向に移動可能に設けられたスリーブと、スリーブを軸線方向に移動させる軸動装置と、軸動装置を駆動する制御装置とを備えている。制御装置は、スリーブがクラッチリングと係合した係合位置から、スリーブがクラッチリングと係合していないニュートラル位置まで、スリーブを移動させるとき、以下の制御を行っている。すなわち、スリーブとクラッチリングの係合が解除されてから、スリーブに対して移動方向とは逆方向の力を加え、スリーブをニュートラル位置において停止させている。
近年、変速時間を短縮させるため、スリーブとクラッチリングの間隔を狭くした自動変速装置が開発されている。しかし、特許文献1に示される自動変速装置では、例えば機構にガタが有る場合、スリーブがニュートラル位置において移動停止したとき、スリーブが軸線方向に振れてニュートラル位置の先にあるクラッチリングに接触するおそれがある。スリーブがこのクラッチリングに接触すると、クラッチリングの回転数が高いときは、変速ショックや接触音が発生するという問題がある。そこで、スリーブに加える推力を小さくしてスリーブの軸線方向の振れを抑え、スリーブとクラッチリングとの接触を回避するようにすればよいが、変速時間が長くなるという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、スリーブの係合位置からニュートラル位置までの移動時間を短縮することができる自動変速装置を提供することを目的とする。
請求項1に係る自動変速装置の発明は、ケーシングと、前記ケーシングに軸線回りに回転可能に支承され、駆動装置から駆動力が入力される入力軸と、駆動輪に回転連結された出力部材と、前記入力軸及び前記出力部材の一方に回転連結され、前記ケーシングに前記軸線周りに回転可能に軸承された回転軸と、前記回転軸に回転可能に支承され、前記入力軸及び前記出力部材の他方に回転連結されたクラッチリングと、前記クラッチリングに隣接して前記回転軸に固定されたハブと、前記ハブと相対回転が規制され前記軸線方向に移動可能に嵌合され、前記クラッチリングと係合するとともに、前記クラッチリングから離脱するスリーブと、前記スリーブが前記クラッチリングと係合している係合位置と前記スリーブが前記クラッチリングから離脱しているニュートラル位置の間で前記スリーブを移動させる軸動装置と、前記スリーブの前記軸線方向の位置を検出するセンサと、前記センサによって検出された前記スリーブの前記軸線方向の位置に基づいて、前記軸動装置に駆動電流を供給して、前記軸動装置を制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記係合位置にある前記スリーブを前記ニュートラル位置に移動させる際に、前記係合位置から前記係合位置と前記ニュートラル位置の間にある目標位置まで前記スリーブが位置している場合には、前記スリーブの速度を制御する速度制御を実行し、前記目標位置から前記ニュートラル位置に前記スリーブが位置している場合には、前記スリーブの位置を制御する位置制御を実行し、前記速度制御において、前記センサによって検出された前記スリーブの前記ニュートラル位置からの距離が小さくなるに従って、前記スリーブの速度が遅くなる目標速度を設定して、前記スリーブの速度が前記目標速度となるように前記軸動装置を制御し、前記目標速度は、前記位置制御において、前記スリーブが前記ニュートラル位置を越えない速度に設定されている。
スリーブとクラッチリングとの間における回転方向のトルク(以下、ドグトルクと略す)は、車両の走行状態によって異なる。つまり、ドグトルクが比較的小さい場合には、スリーブは移動し易く、ドグトルクが比較的大きい場合には、スリーブは移動し難い。軸動装置に供給される駆動電流を一定にすると、ドグトルクの大小に関わらずスリーブがニュートラル位置を越えてしまわないような駆動電流を設定しなければならないので、ドグトルクが大きい場合には、スリーブをニュートラル位置に移動させるのに時間がかかってしまう。一方で請求項1に記載の発明では、係合位置から目標位置までスリーブが位置している場合には、スリーブの速度が制御される。これにより、ドグトルクの大小に関わらず、スリーブがニュートラル位置を越えない限度において速い速度でスリーブを移動させることができる。このため、係合位置にあるスリーブをニュートラル位置に移動させる時間が短縮される。
また、速度制御において、スリーブのニュートラル位置からの距離が小さくなるに従って遅い目標速度が設定される。言い換えると、スリーブのニュートラル位置からの距離が大きくなるに従って速い目標速度が設定される。これにより、スリーブがニュートラル位置から遠く、スリーブがニュートラル位置を越えてしまう可能性が無い状態では、スリーブが速く移動されるので、係合位置にあるスリーブをニュートラル位置に移動させる時間が短縮される。また、スリーブがニュートラル位置に近づくに従って、スリーブが遅く移動されるので、スリーブがニュートラル位置を越えてしまうことが防止される。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記制御装置は、前記速度制御において、前記センサによって検出された前記スリーブの前記ニュートラル位置からの距離が規定距離以上である場合には、前記目標速度を規定速度に設定し、前記スリーブの前記ニュートラル位置からの距離が前記規定距離よりも小さい場合には、前記規定速度より遅い速度で、前記スリーブの前記ニュートラル位置からの距離が小さくなるに従って、徐々に遅くなるような速度を前記目標速度として設定する。
このように、スリーブのニュートラル位置からの距離が規定距離以上であり、スリーブを速く動かしてもスリーブがニュートラル位置を越える可能性が無い状況では、スリーブのニュートラル位置からの距離が規定距離よりも小さい場合に比べて速い速度である規定速度でスリーブが移動される。これにより、係合位置にあるスリーブをニュートラル位置に移動させる時間がより一層短縮される。一方で、スリーブのニュートラル位置からの距離が規定距離よりも小さい場合には、規定速度より遅い速度で、スリーブのニュートラル位置からの距離が小さくなるに従って、徐々に遅くなるような速度でスリーブが移動されるので、スリーブがニュートラル位置を越えてしまうことが防止される。
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記制御装置は、前記スリーブを前記係合位置から前記ニュートラル位置に移動させる際に、前記センサによって前記スリーブの移動の開始が検出されるまでは、前記軸動装置に供給する駆動電流を徐々に大きくする始動制御を実行する。
スリーブの移動開始時に、軸動装置に一定の駆動電流を供給する方法では、ドグトルクが小さい場合であっても、スリーブがニュートラル位置を越えてしまわないような駆動電流が設定される。このため、車両の走行状態によってドグトルク大きい状態では、ドグトルクが小さい場合と比較してスリーブの移動開始に時間がかかってしまう。しかし、請求項3に記載の発明では、スリーブの移動が開始されるまでは、軸動装置に供給される駆動電流が徐々に大きくなるので、ドグトルクの大小に関わらず、スリーブがニュートラル位置を越えること無く、スリーブの移動をより早く開始させることができる。このため、係合位置にあるスリーブをニュートラル位置に移動させる時間がより一層短縮される。
請求項4に係る発明は、請求項1〜請求項3に記載の発明において、前記制御装置は、前記スリーブのスプラインが前記係合していたクラッチリングのドグクラッチ部から完全に離脱する前に、前記スリーブに移動方向とは逆方向の制動力が加えられるような制動電流を前記軸動装置に供給する。
このように、制御装置は、スリーブとクラッチリングの係合が解除される前に、スリーブに移動方向とは逆方向の制動力を加える制御を行う。これにより、当該係合解除後に制動力を加える制御と比較して、スリーブをニュートラル位置に収束させる時間を短縮させることができる。また、制御装置は、従来の制御よりも早い時点でスリーブに制動力を加えるので、スリーブがニュートラル位置へ移動開始する際に加える従来の推力よりも大きな推力を加えることができる。よって、スリーブをニュートラル位置に収束させる時間をさらに短縮させることができる。
(自動変速装置を備えた車両の構成)
以下、本発明による自動変速装置の一実施形態を備えた車両について図面を参照して説明する。図1に示すように、車両Mは、エンジン11、クラッチ12、自動変速装置13、ディファレンシャル装置14、制御装置15、駆動輪Wfl,Wfr等を含んで構成されている。本実施形態では、車両Mは、前輪駆動車である。そして、駆動輪Wfl,Wfrは、車両Mの前輪である。
以下、本発明による自動変速装置の一実施形態を備えた車両について図面を参照して説明する。図1に示すように、車両Mは、エンジン11、クラッチ12、自動変速装置13、ディファレンシャル装置14、制御装置15、駆動輪Wfl,Wfr等を含んで構成されている。本実施形態では、車両Mは、前輪駆動車である。そして、駆動輪Wfl,Wfrは、車両Mの前輪である。
エンジン11(駆動装置)は、燃料の燃焼によって駆動力を発生させるものである。エンジン11の駆動力は、クラッチ12、自動変速装置13、及びディファレンシャル装置14を介して駆動輪Wfl,Wfrに伝達されるように構成されている。クラッチ12は、制御装置15の指令に応じて自動で断接されるように構成されている。自動変速装置13は、例えば前進6段、後進1段のギヤを自動的に選択するものである。ディファレンシャル装置14は、ファイナルギヤ及びディファレンシャルギヤの両方を含んで構成されており、自動変速装置13と一体的に形成されている。
(自動変速装置の構成)
図2に示すように、自動変速装置13は、ケーシング21、入力軸22、メインシャフト23、カウンタシャフト24、ドグクラッチ変速機構251,252,253,254及び制御装置15に設けられている変速制御装置26等を含んで構成されている。ケーシング21は、ほぼ円筒状に形成された本体21a、本体21a内を左右方向に区画する第一壁21b及び第二壁21c等で構成されている。
図2に示すように、自動変速装置13は、ケーシング21、入力軸22、メインシャフト23、カウンタシャフト24、ドグクラッチ変速機構251,252,253,254及び制御装置15に設けられている変速制御装置26等を含んで構成されている。ケーシング21は、ほぼ円筒状に形成された本体21a、本体21a内を左右方向に区画する第一壁21b及び第二壁21c等で構成されている。
入力軸22及びメインシャフト23は、同軸で配置されている。カウンタシャフト24は、入力軸22及びメインシャフト23に平行に配置されている。入力軸22、メインシャフト23及びカウンタシャフト24は、ケーシング21に軸線回りに回転可能に支承されている。すなわち、入力軸22の一端(左端)は、クラッチ12を介してエンジン11の出力軸(不図示)に回転連結され、入力軸22の他端(右端)側は、軸受271を介して第一壁21bに支承されている。よって、クラッチ12が接続されているときには、エンジン11からの駆動力が入力軸22に入力される。
メインシャフト23の一端(左端)は、後述するドグクラッチ変速機構251を介して入力軸22の一端(右端)に回転連結可能に軸支されている。メインシャフト23の他端(右端)側は、軸受272を介して第二壁21cに支承されている。メインシャフト23が特許請求の範囲に記載の「回転軸」である。なお、カウンタシャフト24を、特許請求の範囲に記載の「回転軸」としても差し支え無い。
カウンタシャフト24の一端(左端)側は、軸受273を介して第一壁21bに支承されている。カウンタシャフト24の他端(右端)側は、軸受274を介して第二壁21cに支承されている。カウンタシャフト24には、出力ギヤ299(出力部材)が設けられている。出力ギヤ299は、ディファレンシャル装置14のリングギヤ(不図示)と噛合している。つまり、出力ギヤ299は、ディファレンシャル装置14を介して駆動輪Wfl,Wfrに回転連結されている。
メインシャフト23には、右側(クラッチ12側)から左側に順に、ドグクラッチ変速機構251、ドグクラッチ変速機構252が配置されている。ドグクラッチ変速機構251は、5速又はリバースのいずれかの変速段を形成するものである。ドグクラッチ変速機構252は、2速又は1速のいずれかの変速段を形成するものである。
カウンタシャフト24には、右側(クラッチ12側)から左側に順に、ドグクラッチ変速機構253、ドグクラッチ変速機構254が配置されている。ドグクラッチ変速機構253は、4速又は3速のいずれかの変速段を形成するものである。ドグクラッチ変速機構254は、6速の変速段を形成するものである。
入力軸22の他端(右端)には、五速ギヤ285がスプライン嵌合等で固定されている。メインシャフト23には、右側(クラッチ12側)から左側に順に、リバースギヤ28R、四速ギヤ284、三速ギヤ283、二速ギヤ282、一速ギヤ281、六速ギヤ286が設けられている。
リバースギヤ28Rは、メインシャフト23回転自在に支承されている。四速ギヤ284は、スプライン嵌合等でメインシャフト23に固定されている。三速ギヤ283は、スプライン嵌合等でメインシャフト23に固定されている。二速ギヤ282は、メインシャフト23に回転自在に支承されている。一速ギヤ281は、回転自在にメインシャフト23に支承されている。六速ギヤ286は、スプライン嵌合等でメインシャフト23に固定されている。
カウンタシャフト24には、右側(クラッチ12側)から左側に順に、第五カウンタギヤ295、第四カウンタギヤ294、第三カウンタギヤ293、第二カウンタギヤ292、第一カウンタギヤ291、第六カウンタギヤ296が設けられている。
第五カウンタギヤ295は、五速ギヤ285に噛み合い、スプライン嵌合等でカウンタシャフト24に固定されている。第二カウンタギヤ29Rは、リバースギヤ28Rと1つのギヤ29rを介して噛み合い、第二カウンタギヤ29Rの回転中心がスプライン嵌合等でカウンタシャフト24に固定されている。第四カウンタギヤ294は、四速ギヤ284に噛み合い、回転自在にカウンタシャフト24に支承されている。第三カウンタギヤ293は、三速ギヤ283に噛み合い、回転自在にカウンタシャフト24に支承されている。第二カウンタギヤ292は、二速ギヤ282に噛み合い、スプライン嵌合等でカウンタシャフト24に固定されている。
第一カウンタギヤ291は、一速ギヤ281に噛み合い、スプライン嵌合等でカウンタシャフト24に固定されている。第六カウンタギヤ296は、六速ギヤ286に噛み合い、回転自在にカウンタシャフト24に支承されている。一速ギヤ281及び第一カウンタギヤ291の各外周面には、互いに噛合するギヤ(ヘリカルギヤ)が形成されている。他の互いに噛合するギヤにおいても同様である。
このような構造によって、一速ギヤ281、二速ギヤ282、及び第三カウンタギヤ293、第四カウンタギヤ294は、出力ギヤ299に回転連結されている。
図3に示すように、ドグクラッチ変速機構252は、一速ギヤ281(クラッチリング)、二速ギヤ282(クラッチリング)、クラッチハブ311(ハブ)、スリーブ312、軸動装置313、位置検出センサ314等を含んで構成されている。ドグクラッチ変速機構253は、第三カウンタギヤ293(クラッチリング)、第四カウンタギヤ294(クラッチリング)、クラッチハブ321(ハブ)、スリーブ322、軸動装置323、位置検出センサ324等を含んで構成されている。他のドグクラッチ変速機構251も同様である。以下では、ドグクラッチ変速機構252の詳細な構成について説明する。
クラッチハブ311は、一速ギヤ281と二速ギヤ282との間にこれらと隣接してスプライン嵌合等でメインシャフト23に固定されている。一速ギヤ281のクラッチハブ311側の側面には、スリーブ312に形成されているスプライン312a(図4参照)に係合する第一ドグクラッチ部281aが形成されている。同様に、二速ギヤ282のクラッチハブ311側の側面には、スリーブ312のスプライン312aに係合する第二ドグクラッチ部282aが形成されている。ここで、一速ギヤ281の第一ドグクラッチ部281aは、二速ギヤ282の第二ドグクラッチ部282aと同一構成であるため、図4〜図7には一速ギヤ281、クラッチハブ311及びスリーブ312を示して以下詳細に説明する。
図4及び図5A,Bに示すように、第一ドグクラッチ部281aには、リング状の凸部281a1と、凸部281a1の外周において180度隔てて配置された2枚のクラッチ前歯281b1と、凸部281a1の外周において2枚のクラッチ前歯281b1の間に5枚ずつ等角度間隔で配置されたクラッチ後歯281c1とが形成されている。クラッチ前歯281b1及びクラッチ後歯281c1は、凸部281a1の外周に一定幅のクラッチ歯溝281d1を空けて形成されている。
凸部281a1は、外径がスリーブ312に形成されているスプライン312aの高歯312a1の内径より小さくなるように形成されている。クラッチ前歯281b1は、外径がスプライン312aの高歯312a1の内径より大きく、スプライン312aの低歯312b1の内径より小さくなるように形成されている。クラッチ後歯281c1は、スプライン312aのスプライン歯溝312c1と噛合可能に形成されている。すなわち、クラッチ前歯281b1は、低歯312b1とは噛み合わず、高歯312a1と噛み合い可能に形成されている。クラッチ後歯281c1は、高歯312a1及び低歯312b1と噛み合い可能に形成されている。
クラッチ前歯281b1は、高歯312a1と同数枚(本例では、2枚)形成されている。スリーブ312の回転速度と一速ギヤ281の回転速度に大きな差が生じていても、2枚の高歯312a1が2枚のクラッチ前歯281b1間に容易に入り込めるように、クラッチ前歯281b1は少歯とされている。そして、クラッチ前歯281b1は、高歯312a1と対応する位置で凸部281a1の前端面281a2から第一ドグクラッチ部281aの後端位置Penまで延在して形成されている。クラッチ後歯281c1は、凸部281a1の前端面281a2から第一所定量d1後退した位置から第一ドグクラッチ部281aの後端位置Penまで延在して形成されている。
クラッチ前歯281b1の高歯312a1と対向する前端部には、高歯312a1と当接可能な接触面281b4が形成され、さらに当該接触面281b4の円周方向両側から第一ドグクラッチ部281aの後端位置Pen側に向かって傾斜する傾斜面281b2が形成されている。クラッチ前歯281b1の接触面281b4は、凸部281a1の前端面281a2と面一もしくは平行な平面状に形成されている。
クラッチ後歯281c1には、高歯312a1及び低歯312b1と当接可能な接触面281c2、並びに接触面281c2の円周方向両側から両側面281c3まで延びる側方傾斜面281c4が形成されている。図5Bに示すように、クラッチ前歯281b1の傾斜面281b2がクラッチ前歯281b1の側面281b3と交差する位置Pcは、クラッチ後歯281c1の接触面281c2より凸部281a1の前端面281a2側となるように、クラッチ前歯281b1の傾斜面281b2は形成されている。なお、クラッチ前歯281b1の前端部の接触面281b4と両傾斜面281b2の交差部は、一般的な丸み面取り(R形状)に形成されている。
図4及び図6に示すように、クラッチハブ311の外周面には、スリーブ312の内周面に形成されているスプライン312aにメインシャフト23の軸線方向に摺動可能に係合するスプライン311aが形成されている。スプライン311aは、複数(例えば2つ)の溝311a1が残りの溝より深く形成されている。複数の溝311a1は、スリーブ312の複数の高歯312a1に対応するものである。
図4及び図7に示すように、スリーブ312は、クラッチハブ311と相対回転が規制されて一体回転するとともにクラッチハブ311に対して軸線方向に移動可能に嵌合され、リング状に形成されたものである。スリーブ312の内周面には、クラッチハブ311の外周面に形成されているスプライン311aに軸線方向に摺動可能に係合するスプライン312aが形成されている。
スプライン312aは、複数(例えば2つ)の高歯312a1が残りの低歯312b1より歯丈が高く形成されている。高歯312a1及び低歯312b1における一速ギヤ281側の前端面の両端角部は、クラッチ前歯281b1やクラッチ後歯281c1と当接したときに衝撃で破損しないように、一般的な45度面取り(C形状)に形成されている。また、スリーブ312の外周面には、周方向に沿って外周溝312dが形成されている。外周溝312dには、フォーク313aの先端円弧部が周方向に沿って摺動可能に係合する。
図3に示すように、軸動装置313は、スリーブ312を軸線方向に沿って往復動させるものであり、スリーブ312を一速ギヤ281または二速ギヤ282に押圧させている際に、一速ギヤ281または二速ギヤ282から反力が加わった場合に、スリーブ312がその反力によって移動することを許容するように構成されている。軸動装置323も同様である。
軸動装置313は、フォーク313a、フォークシャフト313b、ディテント機構313c、及びリニアアクチュエータ313d等を含んで構成されている。軸動装置323も同様に、フォーク323a、フォークシャフト323b、ディテント機構323c、及びリニアアクチュエータ323d等を含んで構成されている。以下では、軸動装置313について説明する。
フォーク313aの先端部は、スリーブ312の外周溝312bの外周形状にあわせて形成されている。フォーク313aの基端部は、フォークシャフト313bに固定されている。フォークシャフト313bは、ケーシング21に軸線方向に沿って摺動自在に支承されている。すなわち、フォークシャフト313bの一端(右端)が、軸受313eを介して第二壁21cに支承されている。そして、フォークシャフト313bの他端(左端)側が、ブラケット313fに固定されている。そして、ブラケット313fは、第一壁21bより軸線方向に突出するガイド部材(回り止め)313gによって摺動可能であるとともに、ナット部材313hに相対回転不能に固定されている。ナット部材313hはリニアアクチュエータ313dを備えた駆動シャフト313iに進退可能に螺合されている。駆動シャフト313iは軸受313jを介して第一壁21bに支承されている。
ディテント機構313cは、フォークシャフト313bの軸線方向の摺動位置、すなわちスリーブ312の移動位置を位置決めする機構である。ディテント機構313cは、図略のバネでフォークシャフト313bの軸線に直角な方向に付勢されているストッパ313c1を備えている。そして、ディテント機構313cは、ストッパ313c1がフォークシャフト313bに設けられている三角溝s1,sn,s2にバネ力で嵌まり込むことにより、フォークシャフト313bの軸線方向の摺動位置を位置決め可能に構成されている。
なお、ストッパ313c1は、スリーブ312のスプライン312a及び一速ギヤ281の第一ドグクラッチ部281aが係合したとき三角溝s1に嵌まり込む。また、ストッパ313c1は、スリーブ312が一速ギヤ281及び二速ギヤ282の中間に設定されているニュートラル位置(中立位置)Na(図10参照)に位置したとき三角溝snに嵌まり込む。また、ストッパ313c1は、スリーブ312のスプライン312a及び二速ギヤ282の第二ドグクラッチ部282aが係合したとき三角溝s2に嵌まり込む。
本実施形態では、リニアアクチュエータ313dは、ボールねじ機構を備えている。これは例えば、円筒状に形成され内周方向に複数のコイルをステータ(図略)として配設させたケーシングと、ステータに対して回転自在に設けられ該ステータと磁気的空隙を設けて対向する複数のN極磁石とS極磁石とが外周に交互に配設されたロータ(図略)と、ステータの回転軸線を中心にロータとともに一体回転する駆動シャフト313i(ボールねじ軸)と、駆動シャフト313iに螺合されるボールナットからなるナット部材313hとから構成される。
駆動シャフト313iはナット部材313hに複数のボール(図略)を介して相対回転可能に螺入されている。ステータの各コイルへの通電を制御することで、駆動シャフト313iが正逆双方向に任意に回転し、ナット部材313k及びフォークシャフト313bを往復動させるとともに、任意の位置に位置決め固定させる。また、このリニアアクチュエータ313dは、駆動シャフト313iのリードを長く形成することで、一速ギヤ281または二速ギヤ282から反力が加わった場合に、スリーブ312がその反力によって移動することを許容するように構成されている。これにより、スリーブ312のスプライン312a及び二速ギヤ282の第二ドグクラッチ部282aの係合を確実に行うことができる。
なお、本実施形態では、リニアアクチュエータ313dとしてボールねじ式リニアアクチュエータを採用したが、スリーブ312を一速ギヤ281または二速ギヤ282に押圧させている際に、一速ギヤ281または二速ギヤ282から反力が加わった場合に、スリーブ312がその反力によって移動することを許容するように構成されているものであれば、他の駆動装置であるソレノイド式駆動装置や油圧式駆動装置でもよい。
位置検出センサ314は、スリーブ312が移動するときの位置を検出するセンサであり、例えば光位置センサやリニアエンコーダ等の各種位置センサを使用する。
位置検出センサ314は、スリーブ312が移動するときの位置を検出するセンサであり、例えば光位置センサやリニアエンコーダ等の各種位置センサを使用する。
(ドグクラッチ変速機構の作動)
次に、ドグクラッチ変速機構252におけるスリーブ312の高歯312a1及び低歯312b1、並びに一速ギヤ281のクラッチ前歯281b1及びクラッチ後歯281c1の作動について、図8A〜D及び図9A〜Dを参照して説明する。ここで、例えば、スリーブ312が二速ギヤ282と噛み合って高速で回転し、一速ギヤ281が低速で回転している場合、スリーブ312をシフトさせて一速ギヤ281と噛み合わせるとスリーブ312は減速される。一方、スリーブ312が一速ギヤ281と噛み合って低速で回転し、二速ギヤ282が高速で回転している場合、スリーブ312をシフトさせて二速ギヤ282と噛み合わせるとスリーブ312は増速される。以下の説明では減速動作を説明する。
次に、ドグクラッチ変速機構252におけるスリーブ312の高歯312a1及び低歯312b1、並びに一速ギヤ281のクラッチ前歯281b1及びクラッチ後歯281c1の作動について、図8A〜D及び図9A〜Dを参照して説明する。ここで、例えば、スリーブ312が二速ギヤ282と噛み合って高速で回転し、一速ギヤ281が低速で回転している場合、スリーブ312をシフトさせて一速ギヤ281と噛み合わせるとスリーブ312は減速される。一方、スリーブ312が一速ギヤ281と噛み合って低速で回転し、二速ギヤ282が高速で回転している場合、スリーブ312をシフトさせて二速ギヤ282と噛み合わせるとスリーブ312は増速される。以下の説明では減速動作を説明する。
図8Aに示すように、自動変速装置13のシフト前においては、スリーブ312は、一速ギヤ281から離間している。そして、スリーブ312が、軸動装置313により軸線方向に沿って一速ギヤ281側に移動されると、図8B及び図9Aに示すように、高歯312a1の前端面312a2が、クラッチ前歯281b1の接触面281b4と当接する。このとき、低歯312b1は、何にも当接していない。これにより、多少ではあるが、スリーブ312は、減速される。
さらに、スリーブ312が、軸動装置313により軸線方向に沿って移動されると、図9Bに示すように、高歯312a1の前端面312a2(面取り部)が、クラッチ前歯281b1の傾斜面281b2と当接する。このとき、低歯312b1は、何にも当接していない。これにより、スリーブ312は、大きく減速される。
さらに、スリーブ312が、軸動装置313により軸線方向に沿って移動されると、図8C及び図9Cに示すように、高歯312a1の前端面312a2及び低歯312b1の前端面312b2が、クラッチ後歯281c1の接触面281c2と当接する。これにより、多少ではあるが、スリーブ312は、減速される。
さらに、スリーブ312が、軸動装置313により軸線方向に沿って移動されると、高歯312a1の前端面312a2(面取り部)及び低歯312b1の前端面312b2(面取り部)が、クラッチ後歯281c1の側方傾斜面281c4と当接する。クラッチ前歯281b1及びクラッチ後歯281c1は、凸部281a1の外周に一定幅のクラッチ歯溝281d1を空けて形成されているので、高歯312a1及び低歯312b1は、短時間で最寄りのクラッチ歯溝281d1に飛び込むことができる。これにより、スリーブ312は、大きく減速される。
さらに、スリーブ312が、軸動装置313により軸線方向に沿って移動されると、図8D及び図9Dに示すように、高歯312a1及び低歯312b1は、クラッチ後歯281c1と完全に噛み合い、スリーブ312と一速ギヤ281は係合して同期回転し、シフト動作が完了する。
(変速制御装置の制御動作)
次に、変速制御装置26により、2速から3速に変速する場合の制御動作について説明する。図10Aに示すように、変速制御装置26は、軸動装置313を制御し、二速ギヤ282に係合していたスリーブ312を、一速ギヤ281及び二速ギヤ282間に設定されているニュートラル位置Naに移動させて、二速ギヤ282から離脱させて、停止させる。そして、図10Bに示すように、軸動装置323を制御し、第三カウンタギヤ293及び第四カウンタギヤ294間に設定されているニュートラル位置Nbに停止していたスリーブ322を、第三カウンタギヤ293に向かって移動させ第三カウンタギヤ293に係合させる。
次に、変速制御装置26により、2速から3速に変速する場合の制御動作について説明する。図10Aに示すように、変速制御装置26は、軸動装置313を制御し、二速ギヤ282に係合していたスリーブ312を、一速ギヤ281及び二速ギヤ282間に設定されているニュートラル位置Naに移動させて、二速ギヤ282から離脱させて、停止させる。そして、図10Bに示すように、軸動装置323を制御し、第三カウンタギヤ293及び第四カウンタギヤ294間に設定されているニュートラル位置Nbに停止していたスリーブ322を、第三カウンタギヤ293に向かって移動させ第三カウンタギヤ293に係合させる。
ここで、本実施形態の自動変速装置13では、一速ギヤ281及び二速ギヤ282の間隔、並びに第三カウンタギヤ293及び第四カウンタギヤ294の間隔を狭くすることにより、変速時間の短縮化を図っている。しかし、例えば機構にガタが有る場合、スリーブ312がニュートラル位置Naにおいて停止したとき、スリーブ312が軸線方向に振れて一速ギヤ281に接触するおそれがある。スリーブが一速ギヤ281に接触すると、一速ギヤ281の回転数が高いときは、変速ショックや接触音が発生するという問題がある。
そこで、図11に示すように、本実施形態の変速制御装置26では、スリーブ312が係合していた二速ギヤ282とニュートラル位置Naとの間に第一目標位置Pa1を設定し、第一目標位置Pa1とニュートラル位置Naとの間に第二目標位置Pa2を設定する。なお、第一目標位置Pa1が特許請求の範囲に記載の「目標位置」である。
スリーブ312が二速ギヤ282に完全係合している係合位置Pe(図11のA)から、スリーブ312が第一目標位置Pa1(図11のB)に移動するまでは、スリーブ312は、後述する「速度制御」によって、その移動速度が制御される。次に、スリーブ312が第一目標位置Pa1(図11のB)から第二目標位置Pa2(図11のC)まで移動するまでは、後述の「初期フィードバック制御」(位置制御)によって、ニュートラル位置Naからのスリーブ312の位置が制御される。最後に、スリーブ312が第二目標位置Pa2(図11のC)からニュートラル位置Naまで移動(図11のD)するまでは、後述の「後期フィードバック制御」(位置制御)によって、ニュートラル位置Naからのスリーブ312の位置が制御される。
「速度制御」では、ニュートラル位置Naからのスリーブ312の距離が小さくなるに従って、スリーブ312の移動速度が小さくなるように制御される。これにより、「速度制御」から、「前期フィードバック処理」及び「後期フィードバック処理」からなる位置制御に遷移した際に、スリーブ312の位置がニュートラル位置Naを越えてしまうことが防止される。また、ニュートラル位置Naからのスリーブ312の距離が大きい状態では、スリーブ312の移動速度が高く制御されるので、スリーブ312の移動速度を高めることができる。
第二目標位置Pa2は、スリーブ312及び二速ギヤ282の係合が解除され、且つスリーブ312が第二目標位置Pa2に達したとき、スリーブ312が軸線方向に振れても一速ギヤ281に接触せず、ニュートラル位置Naに近い位置に設定される。これにより、スリーブ312の移動速度を高めて第二目標位置Pa2まで移動させることが可能となる。
そして、第二目標位置Pa2からニュートラル位置Naまでは、スリーブ312が軸線方向に振れても一速ギヤ281に接触しない移動速度でスリーブを移動させる。すなわち、第二目標位置Pa2までのスリーブ312の移動速度Vaが、第二目標位置Pa2からニュートラル位置Naまでのスリーブ312の移動速度Vbよりも速くなるように制御する。これにより、変速時間の短縮化を図ることができる。
(変速制御装置の構成)
図12Aに示すように、「速度制御」を実行するための変速制御装置26は、目標速度設定部268と、PI制御部267と、P制御部266と、速度演算部269とを備えて構成されている。この変速制御装置26は、周知のPI制御により、スリーブ312の位置から駆動電流を生成してリニアアクチュエータ313dに供給する。目標速度設定部268は、後述するように、位置検出センサ314によって検出されたスリーブ312のニュートラル位置Naからの距離に基づいて、図16に示す「目標速度設定マップ」を参照して、「目標速度」を演算する。速度演算部269は、位置検出センサ314からの検出信号に基づいて、現在のスリーブ312の速度である「スリーブ速度」を演算する。PI制御部267は、目標速度設定部268からの「目標速度」と、位置検出センサ324からの検出位置との偏差の積分に比例した制御を行うための制御指令値を演算する。このPI制御部267による演算によって、スリーブ312がニュートラル位置Naをオーバーシュートしないような速度で移動される。P制御部266は、発散を防止するために、PI制御部267からの制御指令値と位置検出センサ324からの検出位置との偏差に比例した制御を行うための「目標電流」を演算する。
図12Aに示すように、「速度制御」を実行するための変速制御装置26は、目標速度設定部268と、PI制御部267と、P制御部266と、速度演算部269とを備えて構成されている。この変速制御装置26は、周知のPI制御により、スリーブ312の位置から駆動電流を生成してリニアアクチュエータ313dに供給する。目標速度設定部268は、後述するように、位置検出センサ314によって検出されたスリーブ312のニュートラル位置Naからの距離に基づいて、図16に示す「目標速度設定マップ」を参照して、「目標速度」を演算する。速度演算部269は、位置検出センサ314からの検出信号に基づいて、現在のスリーブ312の速度である「スリーブ速度」を演算する。PI制御部267は、目標速度設定部268からの「目標速度」と、位置検出センサ324からの検出位置との偏差の積分に比例した制御を行うための制御指令値を演算する。このPI制御部267による演算によって、スリーブ312がニュートラル位置Naをオーバーシュートしないような速度で移動される。P制御部266は、発散を防止するために、PI制御部267からの制御指令値と位置検出センサ324からの検出位置との偏差に比例した制御を行うための「目標電流」を演算する。
図12Bに示すように、「位置制御」を実行するための変速制御装置26は、位置設定部261と、ローパスフィルタ部262と、I制御部263と、FF制御部264と、PD制御部265と、P制御部266と、PI制御部267とを備えて構成されている。この変速制御装置26は、周知のI−PD制御及びフィードフォワード制御により、スリーブ312の位置から駆動電流を生成してリニアアクチュエータ313dに供給する。位置設定部261は、第二目標位置Pa2及びニュートラル位置Naを切り替えて設定する。ローパスフィルタ部262は、位置設定部261で設定される第二目標位置Pa2及びニュートラル位置Naまでスリーブ312を滑らかに移動させるためのスリーブ312の位置を指令する。
I制御部263は、ローパスフィルタ部262からの指令位置と、位置検出センサ324からの検出位置との偏差の積分に比例した制御を行うための制御指令値を演算する。FF制御部264は、位置設定部261で設定される第二目標位置Pa2に基づいて、スリーブ312を速く移動させて第二目標位置Pa2に早く収束させるためのフィードフォワード指令値を出力する。FF制御部264は、初期フィードバック制御(図17の時点T1〜T3間の制御)の間、フィードフォワード指令値を出力する。このフィードフォワード指令値は、I制御部263で演算される制御指令値に加算される。
PD制御部265は、位置検出センサ324からの検出位置の偏差を時間微分して求めた速度に基づいて制御を行うための制御指令値を演算する。この制御指令値は、I制御部263で演算される制御指令値から減算される。P制御部266は、発散を防止するために、I制御部263、FF制御部264及びPD制御部265からの制御指令値と位置検出センサ324からの検出位置との偏差に比例した制御を行うための目標電流を演算する。PI制御部267は、P制御部266からの目標電流と、リニアアクチュエータ313dからの検出電流との偏差及び偏差の積分に応じて、実際の電流を目標電流と一致させる。
(係合解除処理)
次に、ギヤと係合しているドグクラッチ変速機構251,252,253,254のスリーブをニュートラル位置Naに移動させる「係合解除処理」について、二速ギヤ282と係合しているスリーブ312をニュートラル位置Naに移動させる例を用いて、図13のフローチャート及び図17のタイムチャートを参照して説明する。なお、図17において、ドグトルクとは、スリーブ312と二速ギヤ282との間における回転方向のトルクのことである。「係合解除処理」が開始されると、エンジン11は、その駆動力を徐々に低下させて、ドグトルクを低下させて、ドグトルクが0になるようにする。勿論、車両Mの走行状態によっては(例えば、車両Mに制動力が付与された場合)、ドグトルクは変動する。車両Mが走行可能な状態となると、図13に示す「係合解除処理」が開始され、プログラムはS1に進む。
次に、ギヤと係合しているドグクラッチ変速機構251,252,253,254のスリーブをニュートラル位置Naに移動させる「係合解除処理」について、二速ギヤ282と係合しているスリーブ312をニュートラル位置Naに移動させる例を用いて、図13のフローチャート及び図17のタイムチャートを参照して説明する。なお、図17において、ドグトルクとは、スリーブ312と二速ギヤ282との間における回転方向のトルクのことである。「係合解除処理」が開始されると、エンジン11は、その駆動力を徐々に低下させて、ドグトルクを低下させて、ドグトルクが0になるようにする。勿論、車両Mの走行状態によっては(例えば、車両Mに制動力が付与された場合)、ドグトルクは変動する。車両Mが走行可能な状態となると、図13に示す「係合解除処理」が開始され、プログラムはS1に進む。
S1において、変速制御装置26が、スリーブ312のニュートラル位置Naへの移動要求が有ると判断した場合には(S1:YES)、プログラムをS2に進め、スリーブ312のニュートラル位置Naへの移動要求が無いと判断した場合には(S1:NO)、S1の処理を繰り返す。なお、自動変速装置13において、2速から1速にダウン変速する場合、或いは、2速から3速にアップ変速する場合には、これらの変速に先立ち、二速ギヤ282と係合しているスリーブ312をニュートラル位置Naに移動させる必要が有るので、変速制御装置26は、スリーブ312のニュートラル位置Naへの移動要求が有ると判断する。
S2において、変速制御装置26は、リニアアクチュエータ313dに供給する駆動電流を徐々に大きくする「始動制御」を実行する。この「始動制御」については、図14に示す「始動制御」を表したフローチャートを用いて説明する。「始動制御」が開始されると、プログラムは図14のS21に進む。
S21において、変速制御装置26は、「初期指示電流値」を設定する。この「初期指示電流値」は、二速ギヤ282とスリーブ312との間のドグトルクが作用していない状態であっても、スリーブ312が急激に動かないような電流値(例えば、7A)である。S21が終了すると、プログラムはS22に進む。
最初にS22が実行される場合には、変速制御装置26は、「初期指示電流値」に、「規定増加電流値」を加算して、「駆動電流」を演算する。また、2回目以降に、S22が実行される場合には、変速制御装置26は、前回S22で演算された「駆動電流」に、上記「規定増加電流値」を加算して、「駆動電流」を演算する。つまり、S22が実行される度に、「駆動電流」は「規定増加電流値」分増加する。S22が終了すると、プログラムはS23に進む。
S23において、変速制御装置26は、S22で演算された「駆動電流」が、「第一規定電流」を越える場合には、「駆動電流」として「第一規定電流」を設定する。この「第一規定電流」は、リニアアクチュエータ313dに供給される「駆動電流」の上限値であり、リニアアクチュエータ313dの焼損が防止され、且つ、リニアアクチュエータ313dの減磁が防止されるような電流値である。また、変速制御装置26は、S22で演算された「駆動電流」が、「第二規定電流」を下回る場合には、「駆動電流」として「第二規定電流」を設定する。この「第二規定電流」は、リニアアクチュエータ313dの過剰な減磁が防止される電流値であり、「第一規定電流」よりも小さい電流値である。S23が終了すると、プログラムはS24に進む。
S24において、変速制御装置26は、S22で演算又はS23で設定した「駆動電流」をリニアアクチュエータ313dに供給する(図17の1)。S24が終了すると、プログラムはS25に進む。
S25において、変速制御装置26が、位置検出センサ314からの検出信号に基づいて、スリーブ312が動き始めたと判断した場合には(S25:YES)(図17の2)、「始動制御」を終了させて、プログラムを図13のS3に進め、スリーブ312が動き始めていないと判断した場合には(S25:NO)、プログラムをS22に戻す。なお、変速制御装置26は、スリーブ312のニュートラル位置Naからの距離が規定距離以上減少した旨の信号を、位置検出センサ314から規定回数以上連続で受信したと判断した場合には、スリーブ312が動き始めたと判断する。このようにして、位置検出センサ314が検出した信号にノイズが含まれていたとしても、S25における変速制御装置26の誤判断が防止される。
S3において、変速制御装置26は、スリーブ312のニュートラル位置Naからの距離が小さくなるに従って、スリーブ312の移動速度を遅くする「速度制御」を実行する。この「速度制御」については、図15に示す「速度制御」を表したフローチャートを用いて説明する。「速度制御」が開始されると、プログラムは図15のS31に進む。
S31において、目標速度設定部268は、スリーブ312の「目標速度」を設定する。具体的には、変速制御装置26は、位置検出センサ314によって検出されたスリーブ312のニュートラル位置Naからの距離に基づいて、図16に示す「目標速度設定マップ」を参照して、「目標速度」を演算する。この「目標設定マップ」によって、ニュートラル位置Naからのスリーブ312の距離が「規定距離」以上である場合には、「規定速度」に設定され、ニュートラル位置Naからのスリーブ312の距離が「規定距離」より小さい場合には、「規定速度」より遅い速度で、ニュートラル位置Naからのスリーブの距離が小さくなるに従って、徐々に遅くなる「目標速度」が設定される。この「目標速度設定マップ」によって、「位置制御」において、スリーブ312がニュートラル位置Naを越えないような速度に設定される。S31が終了すると、プログラムは、S32に進む。
S32において、速度演算部269は、位置検出センサ314からの検出信号に基づいて、現在のスリーブ312の速度である「スリーブ速度」を演算する。S32が終了すると、プログラムはS33に進む。
S33において、変速制御装置26は、S31において演算された「目標速度」とS32において演算された「スリーブ速度」の偏差である「速度偏差」を演算する。S32が終了すると、プログラムはS34に進む。
S34において、変速制御装置26は、以前S33で演算された「速度偏差」に基づいて、「速度偏差」の積分値である「速度偏差積分値」を演算する。S34が終了すると、プログラムはS35に進む。
S35において、PI制御部267は、S34で演算された「速度偏差積分値」に積分ゲインを乗算して制御指令値Iaを演算する。S35が終了すると、プログラムはS36に進む。
S36において、P制御部266は、S33で演算された「速度偏差」に比例ゲインを乗算して制御指令値Ibを演算する。S36が終了すると、プログラムはS37に進む。
S37において、変速制御装置26は、S35で演算された制御指令値Iaと、S36で演算された制御指令値Ibを加算して、スリーブ312を移動させるためにリニアアクチュエータ313dに供給する最終的な「駆動電流」を演算する。S37が終了すると、プログラムはS38に進む。
S38において、変速制御装置26は、S37で演算された「駆動電流」が、「第一規定電流」を越える場合には、「駆動電流」として「第一規定電流」を設定する。また、変速制御装置26は、S37で演算された「駆動電流」が、「第二規定電流」を下回る場合には、「駆動電流」として「第二規定電流」を設定する。S38が終了すると、プログラムはS39に進む。
S39において、変速制御装置26は、S37で演算された「駆動電流」又はS38で設定された「駆動電流」をリニアアクチュエータ313dに供給する。すると、スリーブ312は、「目標速度」で移動するようにフィードバック制御される。S39が終了すると、プログラムは図13のS4に進む。
S4において、変速制御装置26は、位置検出センサ314からの検出信号に基づいて、スリーブ312が動いていると判断した場合には(S4:YES)、プログラムをS5に進め、スリーブ312が停止していると判断した場合には(S4:NO)、プログラムをS2に戻す。なお、変速制御装置26による判断方法は、上述したS24における方法と同様である。なお、スリーブ312が停止する状況には、車両Mに制動力が付与され、スリーブ312と一速ギヤ281及び二速ギヤ282のいずれかとの回転方向のトルクが増大した場合が含まれる。
S5において、変速制御装置26は、位置検出センサ314からの検出信号に基づいて、スリーブ312が第一目標位置Pa1(図11のB、)を越えたと判断した場合には(S5:YES)(図17のT1)、プログラムをS6に進め、スリーブ312が第一目標位置Pa1を越えていないと判断した場合には(S5:NO)、プログラムを図15のS32に戻す。
S6において、変速制御装置26は、「初期フィードバック制御」を実行する。この「初期フィードバック制御」については、図18に示すフローチャートを用いて説明する。「初期フィードバック」が開始すると、プログラムはS61に進む。
S61において、位置設定部261は、第二目標位置Pa2(図11示)を設定し、プログラムをS62に進める。
S62において、ローパスフィルタ部262は、スリーブ312を第二目標位置Pa2まで滑らかに移動させるための「目標位置」を演算するローパスフィルタ処理を実行する。S62が終了すると、プログラムはS63に進む。
S63において、変速制御装置26は、スリーブ312の検出位置と「目標位置」との偏差を演算する。S63が終了すると、プログラムをS64に進む。
S64において、変速制御装置26は、以前S63において演算された偏差を積分して、偏差積分値を演算する。S64が終了すると、プログラムはS65に進む。
S65において、I制御部263は、S64で演算された偏差積分値に積分ゲインを乗算して制御指令値IAを演算する。S65が終了すると、プログラムはS66に進む。
S66において、PD制御部265は、S63で演算されえた偏差に比例ゲインを乗算して制御指令値IBを演算する。S66が終了すると、プログラムはS67に進む。
S67において、PD制御部265は、以前S63において演算された偏差に基づいて偏差の時間変化を演算する。次に、PD制御部265は、偏差の時間変化に微分ゲインを乗算して制御指令値ICを演算する。S67が終了すると、プログラムはS68に進む。
S68において、FF制御部264は、スリーブ312を速く移動させて第二目標位置Pa2に早く収束させるためのフィードフォワード指令値IDを第二目標位置Pa2に比例ゲインを乗算することにより演算する。S68が終了すると、プログラムはS69に進む。
S69において、FF制御部264は、S65で演算された制御指令値IAに、S68で演算されたフィードフォワード指令値IDを加算し、S66で演算された制御指令値IB及びS67で演算された制御指令値ICを減算して、駆動電流IA−IB−IC+IDを演算する。S69が終了すると、プログラムはS70に進む。
S70において、FF制御部264は、S69で演算された「駆動電流」が、「第一規定電流」を越える場合には、「駆動電流」として「第一規定電流」を設定する。また、FF制御部264は、S69で演算された「駆動電流」が、「第二規定電流」を下回る場合には、「駆動電流」として「第二規定電流」を設定する。S70が終了すると、プログラムはS71に進む。
S71において、変速制御装置26は、S69において演算された「駆動電流」又はS70で設定された「駆動電流」をリニアアクチュエータ323dに供給する。
すると、時点T1(図17示)から、リニアアクチュエータ313dには、「駆動電流」が供給されて、フォードバック制御され、スリーブ312は第二目標位置Pa2に向かって比較的速い速度で移動する。なお、フィードバック制御が開始される時点T1からT3の間(図17示)においてフィードフォワード電流が供給される。
そして、図17に示すように、スリーブ312のスプライン312aが、係合していた二速ギヤ282の第二ドグクラッチ部282aから離脱する前、すなわち、スリーブ位置が第二目標位置Pa2に達する前に、スリーブ312に移動方向とは逆方向の制動力が加えられる制御が行われる(図17の3)。なお、I−PD制御のみでもスリーブ312に移動方向とは逆方向の制動力を加える制御を行なうことは可能である。
上述のフィードフォワード制御を行うことにより、スリーブ312を速く移動させて第二目標位置Pa2に早く収束させることができ、また、上述のI−PD制御を行うことにより、スリーブ312のスプライン312aが、係合していた二速ギヤ282の第二ドグクラッチ部282aから離脱する前に、スリーブ312に制動を掛けることができるので、第二目標位置Pa2にて迅速に停止させることができる。S71が終了すると、プログラムは図13のS7に進む。
S7において、変速制御装置26が、位置検出センサ314からの検出信号に基づいて、スリーブ312が第二目標位置Pa2に収束したと判断した場合には(S7:YES)(図17のT3)、プログラムをS8に進め、スリーブ312が第二目標位置Pa2に収束していないと判断した場合には(S7:NO)、プログラムをS6に戻す。なお、スリーブ312の指令位置とスリーブ312の実際の位置との差が所定値より小さくなり、且つ当該差が所定値より小さくなった時点T2から規定時間Taが経過した時点T3において、スリーブ312が第二目標位置Pa2に収束した判断される。規定時間Taの経過を待っているので、第二目標位置Pa2に移動したスリーブ312の軸線方向の振れを減衰させることができ、第二目標位置Pa2からニュートラル位置Naまでのスリーブ312の移動速度を高めることができる。
ここで、変速制御装置26は、スリーブ312が第二目標位置Pa2に収束したと判断したら、スリーブ322のスプライン322a及び第三カウンタギヤ293の第三ドグクラッチ部293aの係合制御を開始する。すなわち、変速制御装置26は、スリーブ312が第二目標位置Pa2に収束してスリーブ312のスプライン312a及び二速ギヤ282の第二ドグクラッチ部292aの係合が解除されたと判断したら、ニュートラル位置Nbに停止していたスリーブ322を第三カウンタギヤ293に向かって移動開始させ、スリーブ322のスプライン322a及び第三カウンタギヤ293の第三ドグクラッチ部293aを係合させる。
S8において、変速制御装置26は、「終期フィードバック制御」を実行する。この「終期フィードバック制御」については、図19に示すフローチャートを用いて説明する。「終期フィードバック」が開始すると、プログラムはS81に進む。
S81において、位置設定部261は、ニュートラル位置Naを設定する。S81が終了すると、プログラムはS82に進む。
S82において、ローパスフィルタ部262は、スリーブ312をニュートラル位置Naまで滑らかに移動させるための「目標位置」を演算するローパスフィルタ処理を実行する。S82が終了すると、プログラムはS83に進む。
S83〜S87の処理は、それぞれ図18のS63〜S67の処理と同一である。S87が終了すると、プログラムはS88に進む。
S88において、FF制御部264は、S85で演算された制御指令値IAに、S86で演算された制御指令値IB及びS87で演算された制御指令値ICを減算して、駆動電流IA−IB−ICを演算する。S88が終了すると、プログラムはS89に進む。
S89において、FF制御部264は、S88で演算された「駆動電流」が、「第一規定電流」を越える場合には、「駆動電流」として「第一規定電流」を設定する。また、FF制御部264は、S88で演算された「駆動電流」が、「第二規定電流」を下回る場合には、「駆動電流」として「第二規定電流」を設定する。S89が終了すると、プログラムはS90に進む。
S90において、変速制御装置26は、S88において演算された「駆動電流」又はS89で設定された「駆動電流」をリニアアクチュエータ323dに供給する。すると、図17の4に示すように、リニアアクチュエータ313dには、一旦増加した後に0に向かって減少する「駆動電流」が供給され、スリーブ312はニュートラル位置Naに向かって比較的遅い速度、すなわち第二目標位置Pa2に向かう速度よりも遅い速度で移動する。S90が終了すると、プログラムは図13のS9に進む。
S9において、変速制御装置26が、スリーブ312がニュートラル位置Naに収束したと判断した場合には(S9:YES)、プログラムをS10に進め、スリーブ312がニュートラル位置Naに収束していないと判断した場合には(S9:NO)、プログラムをS8に戻す。なお、スリーブ312の指令位置とスリーブ312の実際の位置との差が所定値より小さくなった時点において、スリーブ312がニュートラル位置Naに収束したと判断される。
S10において、変速制御装置26は、リニアアクチュエータ313dに供給する電流を0に設定する。S10が終了すると、「係合解除処理」は終了する。
(本実施形態の効果)
以上の説明から明らかなように、スリーブ312が係合位置Pe(図11のAの状態)から第一目標位置Pa1(図11のBの状態)まで位置している場合には、スリーブ312の速度が制御される「速度制御」が実行される(図15示)。これによる効果を以下に説明する。
以上の説明から明らかなように、スリーブ312が係合位置Pe(図11のAの状態)から第一目標位置Pa1(図11のBの状態)まで位置している場合には、スリーブ312の速度が制御される「速度制御」が実行される(図15示)。これによる効果を以下に説明する。
スリーブ312とこれと係合するギヤ(クラッチリング)との間における回転方向のトルクであるドグトルクは、車両Mの走行状態によって異なる。つまり、ドグトルクが小さい場合には、スリーブ312は移動し易く、ドグトルクが大きい場合には、スリーブ312は移動し難い。リニアアクチュエータ(軸動装置)に供給される「駆動電流」を一定にすると、ドグトルクの大小に関わらずスリーブ312がニュートラル位置Naを越えてしまわないような「駆動電流」を設定しなければならないので、ドグトルクが大きい場合には、スリーブ312をニュートラル位置Naに移動させるのに時間がかかってしまう。一方で本実施形態では、図11に示すように、係合位置Peから第一目標位置Pa1までスリーブ312が位置している場合には、「速度制御」によって、スリーブ312の速度が制御されるので、ドグトルクの大小に関わらず、スリーブ312がニュートラル位置Naを越えない限度において速い速度でスリーブ312を移動させることができる。このため、係合位置Peにあるスリーブ312をニュートラル位置Naに移動させる時間が短縮される。
また、図16に示す「目標速度設定マップ」用いて「目標速度」を設定するので、スリーブ312のニュートラル位置Naからの距離が小さくなるに従って遅い「目標速度」が設定される。言い換えると、スリーブ312のニュートラル位置Naからの距離が大きくなるに従って速い「目標速度」が設定される。これにより、スリーブ312がニュートラル位置Naから遠く、スリーブ312がニュートラル位置Naを越えてしまう可能性が無い状態では、スリーブ312が速く移動されるので、係合位置Peにあるスリーブ312をニュートラル位置Naに移動させる時間が短縮される。また、スリーブ312がニュートラル位置Naに近づくに従って、スリーブ312が遅く移動されるので、スリーブ312がニュートラル位置Naを越えてしまうことが防止される。
また、図16に示す「目標速度設定マップ」用いて「目標速度」を設定するので、スリーブ312のニュートラル位置Naからの距離が「規定距離」以上であり、スリーブ312を速く動かしてもスリーブ312がニュートラル位置Naを越える可能性が無い状況では、スリーブ312のニュートラル位置からの距離が「規定距離」よりも小さい場合に比べて速い速度である「規定速度」でスリーブ312が移動される。これにより、係合位置Peにあるスリーブ312をニュートラル位置Naに移動させる時間がより一層短縮される。一方で、スリーブ312のニュートラル位置Naからの距離が「規定距離」よりも小さい場合には、「規定速度」より遅い速度で、スリーブ312のニュートラル位置Naからの距離が小さくなるに従って、徐々に遅くなるような速度でスリーブ312が移動されるので、スリーブ312がニュートラル位置Naを越えてしまうことが防止される。
また、スリーブ312が移動を開始するまでは、図14に示す「始動制御」によって、リニアアクチュエータ313dに供給される「駆動電流」を徐々に大きくされる(図17の1)。これによる効果を以下に説明する。リニアアクチュエータ313dに一定の「駆動電流」を供給する方法では、ドグトルクが小さい場合であっても、スリーブ312がニュートラル位置Naを越えてしまわないような「駆動電流」を設定するしかない。このため、車両Mの走行状態によってドグトルク大きい状態では、ドグトルクが小さい場合と比較してスリーブ312の移動開始に時間がかかってしまう。しかし、本実施形態では、スリーブ312の移動が開始されるまでは、リニアアクチュエータ313dに供給される「駆動電流」が徐々に大きくなるので、ドグトルクの大小に関わらず、スリーブ312がニュートラル位置Naを越えること無く、スリーブ312の移動をより早く開始させることができる。このため、係合位置Peにあるスリーブ312をニュートラル位置Naに移動させる時間がより一層短縮される。
このように、本実施形態では、スリーブ312を係合位置Peからニュートラル位置Naに移動させる際に、上述した「始動制御」や「速度制御」が実行される。これにより、図17の点線で示す「始動制御」及び「速度制御」が実行されず、スリーブ312の移動開始から所定距離まで、リニアアクチュエータ313dに一定の「駆動電流」を供給する比較例と比べて、スリーブ312を係合位置Peからニュートラル位置Naに移動させる時間を所定時間Tα短縮させることができる。
また、変速制御装置26は、スリーブ312とこれと係合するギヤ(二速ギヤ282、クラッチリング)の係合が解除される前に、スリーブ312に移動方向とは逆方向の制動力を加える制御を行う(図17の3)。これにより、当該係合解除後に制動力を加える制御と比較して、スリーブ312をニュートラル位置Naに収束させる時間を短縮させることができる。また、変速制御装置26は、従来の制御よりも早い時点でスリーブ312に制動力を加えるので、スリーブ312がニュートラル位置Naへ移動開始する際に加える従来の推力よりも大きな推力を加えることができる。よって、スリーブ312をニュートラル位置Naに収束させる時間をさらに短縮させることができる。
また、上記制動力を発生させるために、リニアアクチュエータ313dに供給される「制動電流」は、スリーブ312の移動を制御するフィードバック制御の開始時に加えるフィードフォワード電流である(図18のS68で演算)。これにより、リニアアクチュエータ313dに供給される「駆動電流」が所定電流からフィードフォワード電流に小さくなるので、リニアアクチュエータ313dの駆動速度は遅くなり、慣性力で移動しているスリーブ312には制動が掛かる。よって、「駆動電流」を大きくすることができるので、スリーブ312を迅速に移動させることができる。
また、リニアアクチュエータ313dは、ボールねじ機構を備えている。これにより、ボールねじ機構におけるリードを長く形成することで、スリーブ312のスプラインにクラッチリングのドグクラッチ部から反力が加わったときに、スリーブ312はその反力によって移動することができる。これにより、スリーブ312のスプライン及びクラッチリングのドグクラッチ部の係合を確実に行うことができる。
(第二実施形態の係合解除処理)
以下に、図13に示した「係合解除処理」と異なる点について、「第二実施形態の係合解除処理」について、図20に示すフローチャートを用いて説明する。「第二実施形態の係合解除処理」では、「始動制御」は実行されない。S1において、変速制御装置26が、スリーブ312のニュートラル位置Naへの移動要求が有ると判断した場合には(S1:YES)、プログラムをS3に進める。S3が終了すると、プログラムはS4−1に進む。
以下に、図13に示した「係合解除処理」と異なる点について、「第二実施形態の係合解除処理」について、図20に示すフローチャートを用いて説明する。「第二実施形態の係合解除処理」では、「始動制御」は実行されない。S1において、変速制御装置26が、スリーブ312のニュートラル位置Naへの移動要求が有ると判断した場合には(S1:YES)、プログラムをS3に進める。S3が終了すると、プログラムはS4−1に進む。
S4−1において、変速制御装置26が、位置検出センサ314からの検出信号に基づいて、停止しているスリーブ312が動き始めたと判断した場合には(S4−1:YES)、プログラムをS4−2に進め、スリーブ312が停止したままの状態である、或いは、スリーブ312が動いていると判断した場合には(S4−1:NO)、プログラムをS4−3に進める。なお、変速制御装置26の判断方法は、上述したS24における方法と同様である。
S4−2において、変速制御装置26は、「速度偏差積分値」をリセットし、プログラムを図15のS32に戻す。
S4−3において、変速制御装置26は、位置検出センサ314からの検出信号に基づいて、スリーブ312が動いていると判断した場合には(S4−3:YES)、プログラムをS5に進め、スリーブ312が停止していると判断した場合には(S4−3:NO)、プログラムをS3に戻す。なお、変速制御装置26による判断方法は、上述したS24における方法と同様である。
このような実施形態であっても、停止しているスリーブ312が動き出すまでは、リニアアクチュエータ313dに供給される「駆動電流」は徐々に増大する。つまり、スリーブ312が停止している状態で、「速度制御」が実行されると、「速度偏差積分値」が徐々に増大し、この結果、「駆動電流」が増大する。一方で、停止しているスリーブ312が動き出した場合には、「速度偏差積分値」が過大な値となっているので、S4−2において、「速度偏差積分値」がリセットされてから、「速度制御」が実行される。
(別の実施形態)
以上説明した実施形態では、図15のS31において、図16に示す「目標速度設定マップ」を用いて、「目標速度」を演算している。しかし、図16の点線で示すように、ニュートラル位置Naからのスリーブの距離が小さくなるに従って、徐々に遅くなる「目標速度」が設定される実施形態であっても差し支え無い。
以上説明した実施形態では、図15のS31において、図16に示す「目標速度設定マップ」を用いて、「目標速度」を演算している。しかし、図16の点線で示すように、ニュートラル位置Naからのスリーブの距離が小さくなるに従って、徐々に遅くなる「目標速度」が設定される実施形態であっても差し支え無い。
上述の変速制御装置26の処理においては、図13のS7において、スリーブ312が第二目標位置Pa2に収束したか否かの判断は、スリーブ312の指令位置と実際の位置との差が所定値より小さくなり、且つ当該差が所定値より小さくなってから所定時間Tが経過した時点T3で行っている場合を説明した。しかし、スリーブ312の指令位置と実際の位置との差が所定値より小さくなった時点で、すなわち所定時間Tの経過を待たずに直ちにスリーブ312が第二目標位置Pa2に収束したと判断し、終期フィードバック制御を開始するようにしてもよい。この場合も、第二目標位置Pa2までのスリーブ312の移動速度が、第二目標位置Pa2からニュートラル位置Naまでのスリーブ312の移動速度よりも速くなるように制御する。
以上説明した実施形態では、「速度制御」において、スリーブ312の移動開始前に、S31において、変速制御装置26は、位置検出センサ314によって検出されたスリーブ312のニュートラル位置Naからの距離に基づいて、図16に示す「目標速度設定マップ」を参照して、「目標速度」を演算する。しかし、スリーブ312の移動中に、変速制御装置26は、位置検出センサ314によって検出されたスリーブ312のニュートラル位置Naからの距離に基づいて、図16に示す「目標速度設定マップ」を参照して、「目標速度」を演算する実施形態であっても差し支え無い。
また、上述の処理では、時点T1において、リニアアクチュエータ313dにフィードフォワード電流を供給するフィードフォワード制御を行っているので、時点T1からT2において、ローパスフィルタ処理の時定数を大きくすることができる。一方、変速時間は若干長くなるが、時点T1からT2において、ローパスフィルタ処理の時定数を小さくすることにより、フィードフォワード制御を省略してフィードバック制御のみ行うようにしてもよい。
以上説明した実施形態では、入力軸22に駆動力を出力する駆動装置は、エンジン11である。しかし、当該駆動装置が、モータやモータジェネレータであっても差し支え無い。
11…エンジン(駆動装置)、13…自動変速装置、21…ケーシング、22…入力軸、23…メインシャフト(回転軸)、24…カウンタシャフト、252,253…ドグクラッチ変速機構、26…変速制御装置(制御装置)、281…一速ギヤ(クラッチリング)、282…二速ギヤ(クラッチリング)、283…三速ギヤ、284…四速ギヤ、293…第三カウンタギヤ(クラッチリング)、294…第四カウンタギヤ(クラッチリング)、299…出力ギヤ(出力部材)、311,321…クラッチハブ(ハブ)、312,322…スリーブ、313,323…軸動装置、314,324…位置検出センサ(センサ)、313d、323d…リニアアクチュエータ、Na…ニュートラル位置、Pa1…第一目標位置(目標位置)、Pa2…第二目標位置、Pe…係合位置。
Claims (4)
- ケーシングと、
前記ケーシングに軸線回りに回転可能に支承され、駆動装置から駆動力が入力される入力軸と、
駆動輪に回転連結された出力部材と、
前記入力軸及び前記出力部材の一方に回転連結され、前記ケーシングに前記軸線周りに回転可能に軸承された回転軸と、
前記回転軸に回転可能に支承され、前記入力軸及び前記出力部材の他方に回転連結されたクラッチリングと、
前記クラッチリングに隣接して前記回転軸に固定されたハブと、
前記ハブと相対回転が規制され前記軸線方向に移動可能に嵌合され、前記クラッチリングと係合するとともに、前記クラッチリングから離脱するスリーブと、
前記スリーブが前記クラッチリングと係合している係合位置と前記スリーブが前記クラッチリングから離脱しているニュートラル位置の間で前記スリーブを移動させる軸動装置と、
前記スリーブの前記軸線方向の位置を検出するセンサと、
前記センサによって検出された前記スリーブの前記軸線方向の位置に基づいて、前記軸動装置に駆動電流を供給して、前記軸動装置を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記係合位置にある前記スリーブを前記ニュートラル位置に移動させる際に、
前記係合位置から前記係合位置と前記ニュートラル位置の間にある目標位置まで前記スリーブが位置している場合には、前記スリーブの速度を制御する速度制御を実行し、
前記目標位置から前記ニュートラル位置に前記スリーブが位置している場合には、前記スリーブの位置を制御する位置制御を実行し、
前記速度制御において、前記センサによって検出された前記スリーブの前記ニュートラル位置からの距離が小さくなるに従って、前記スリーブの速度が遅くなる目標速度を設定して、前記スリーブの速度が前記目標速度となるように前記軸動装置を制御し、
前記目標速度は、前記位置制御において、前記スリーブが前記ニュートラル位置を越えない速度に設定されている自動変速装置。 - 前記制御装置は、前記速度制御において、前記センサによって検出された前記スリーブの前記ニュートラル位置からの距離が規定距離以上である場合には、前記目標速度を規定速度に設定し、前記スリーブの前記ニュートラル位置からの距離が前記規定距離よりも小さい場合には、前記規定速度より遅い速度で、前記スリーブの前記ニュートラル位置からの距離が小さくなるに従って、徐々に遅くなるような速度を前記目標速度として設定する請求項1に記載の自動変速装置。
- 前記制御装置は、前記スリーブを前記係合位置から前記ニュートラル位置に移動させる際に、前記センサによって前記スリーブの移動の開始が検出されるまでは、前記軸動装置に供給する駆動電流を徐々に大きくする始動制御を実行する請求項1又は請求項2に記載の自動変速装置。
- 前記制御装置は、前記スリーブのスプラインが前記係合していたクラッチリングのドグクラッチ部から完全に離脱する前に、前記スリーブに移動方向とは逆方向の制動力が加えられるような制動電流を前記軸動装置に供給する請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の自動変速装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014109790A JP2015224715A (ja) | 2014-05-28 | 2014-05-28 | 自動変速装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publication Number | Publication Date |
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JP2015224715A true JP2015224715A (ja) | 2015-12-14 |
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ID=54841635
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2014109790A Pending JP2015224715A (ja) | 2014-05-28 | 2014-05-28 | 自動変速装置 |
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JP (1) | JP2015224715A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US11085494B2 (en) | 2017-12-26 | 2021-08-10 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Dog clutch of vehicle power transmission device |
-
2014
- 2014-05-28 JP JP2014109790A patent/JP2015224715A/ja active Pending
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