JP2015224167A - 板状ヘマタイト微粒子、板状ヘマタイト複合体、板状鉄微粒子、及び板状酸化鉄微粒子 - Google Patents

板状ヘマタイト微粒子、板状ヘマタイト複合体、板状鉄微粒子、及び板状酸化鉄微粒子 Download PDF

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周祐 岡田
健太 高木
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健太 高木
尾崎 公洋
Koyo Ozaki
公洋 尾崎
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【課題】サイズの均一性が高く、非磁性元素含有量が少ないサブミクロンからマイクロメートルサイズの板状ヘマタイト微粒子及び板状酸化鉄微粒子と、同程度のサイズで高飽和磁化を有する板状鉄微粒子を提供する。【解決手段】板状ヘマタイト微粒子は、ストロンチウム、バリウム、及び鉛から選ばれる少なくとも1種の金属Mを含有する板状ヘマタイト微粒子であって、鉄とMの合計量を100at%としたとき、Mを0.1〜2.0at%含有し、板面径が0.1〜5μmである。板状鉄微粒子はこの板状ヘマタイト微粒子を還元熱処理して得られ、板状酸化鉄微粒子はこの板状ヘマタイト微粒子を酸化熱処理又は還元熱処理して得られる。【選択図】図8

Description

本発明は、サイズの均一性が高く、板面径がサブミクロンからマイクロメートルサイズの板状ヘマタイト微粒子及び板状ヘマタイト複合体、並びにこれらを酸化熱処理又は還元熱処理して得られる板状鉄微粒子及び板状酸化鉄微粒子に関する。
酸化鉄は様々な酸化状態をとることが知られており、我々の生活に広範に用いられている非常に重要な材料である。例えば、ヘマタイト(α−Fe23)は赤色材、ヘマタイトを還元して得られるマグネタイト(Fe34)は黒色材、マグネタイトを酸化して得られるマグヘマイト(γ−Fe23)は茶褐色材として、塗料、顔料、化粧品等に用いられている。また、マグネタイトやマグヘマイト、これらを前駆体として得られる純鉄粒子や鉄合金粒子等の磁性体は、電磁波吸収材、電磁波シールド材、磁気記録材料、磁性トナー等に用いられている。
様々な用途で用いられる酸化鉄微粒子であるが、中でも板状形状の酸化鉄は、配向しやすく被覆性に優れることから、防食・防錆性の塗料の材料として優れており、顔料や化粧品の材料として光輝感や滑らかさに優れている(例えば特許文献1及び特許文献2)。また、板状形状の酸化鉄は、電磁波吸収材やシールド材として磁気異方性が大きくなること、磁気的結合が働くことで、球状のフェライト系材料では対応できない高周波帯域まで対応可能となる(例えば非特許文献1)。板状の純鉄微粒子や鉄合金などが作製できれば、フェライトに比べ飽和磁化が高いため、より高周波帯域でのノイズ除去が可能となる(特許文献3)など、多くのメリットを含んでいる。
また、板状形状に加え、その粒子サイズは、それぞれの特性を左右することが広く知られている。例えば、板状ヘマタイトは、そのサイズにより赤紫色から黒紫色と変化するため、所望のサイズで高い均一性が求められる。また、板状酸化鉄を磁性材料の原料として用いる場合には、単磁区構造をとれる1μm以下のサイズが好ましいと考えられ、電磁波シールド材として用いる場合には、ポリマー等の有機物中への分散性が良く、かつ高充填化するため、サブミクロンサイズで高い均一性、さらには高い磁化を発現するためにも非磁性元素をなるべく含まないことが要求される。
上記のような観点から、これまでにサブミクロンサイズでサイズの均一性が高い板状酸化鉄微粒子、及び板状鉄微粒子が求められ、これらを製造する方法が広く検討されてきた。特許文献3では、珪素とマグネシウムを添加した鉄水酸化物含有水溶液を水熱処理することでサイズの均一性が高い板状ヘマタイト微粒子を作製し、これを各種雰囲気中で熱処理することで板状の各酸化鉄微粒子及び板状鉄微粒子を作製している。しかしながら、この方法でサブミクロンサイズに制御しようとした場合、鉄に対し珪素とマグネシウムを10at%以上添加する必要があり、この結果、得られたサブミクロンサイズの板状鉄粒子の飽和磁化は100〜180emu/g程度に低下してしまう。
特許文献4及び特許文献5では、針状α−FeO(OH)や第二鉄塩を、ナトリウム塩、水酸化ナトリウムと混合し水熱処理することで板状ヘマタイト微粒子を得ているが、平均径が1μm以上あり、サブミクロンサイズには至っていない。また、特許文献6ではサブミクロンサイズのα−FeO(OH)微粒子を作製し、これにシリカコーティングすることで熱安定性を付与し、還元処理することで各種酸化鉄を合成しているが、形状制御に劇物のモノエタノールアミンを大量に用いているため、環境負荷が大きい上、経済的ではなく、またシリカコーティングなど処理が煩雑で飽和磁化の低下を招く。
非特許文献2では、塩化鉄をエタノールに溶解し、これに酢酸ナトリウムと少量の水を加え、ソルボサーマル処理することでサブミクロンサイズの板状ヘマタイト微粒子を得ている。また、そのサイズは使用する有機溶媒により制御されているが、可燃性液体を高温・高圧にするための多くの安全対策が必要となるうえ、有機溶媒を多量に消費することから経済性・環境対応の点から好ましくない。また、これらの例では還元処理等は検討しておらず、熱処理した際の形状安定性や磁性特性は不明である。
特開2010−83727号公報 特開2013−245146号公報 特開2008−254969号公報 特開平1−93427号公報 特開平6−56429号公報 特開昭62−46925号公報
Magnetics Jpn.、2011年、第6巻、p.66-72 Inorg. Chem.、2010年、第49巻、p.8411-8420
上述のような背景から、高い磁性特性を有し、サイズの均一性が高いサブミクロンからマイクロメートルサイズの板状ヘマタイト微粒子、板状鉄微粒子、及び板状酸化鉄微粒子が求められている。そして、コストや安全性、環境への配慮から有機物や有機溶媒を用いない製造方法が好ましい。さらに、磁性特性の低下を抑えるため、製造した板状ヘマタイト微粒子、板状鉄微粒子、及び板状酸化鉄微粒子に非磁性元素をなるべく含まないことが好ましい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、サイズの均一性が高く、非磁性元素含有量が少ないサブミクロンからマイクロメートルサイズの板状ヘマタイト微粒子及び板状ヘマタイト複合体と、これらを酸化熱処理又は還元熱処理して得られる板状鉄微粒子又は板状酸化鉄微粒子を提供することを目的とする。
上記の課題に対し、発明者らは上述のような特徴を有する板状ヘマタイト微粒子及び板状鉄微粒子の製造方法について研究を行った結果、第二鉄塩水溶液にストロンチウム、バリウム、又は鉛の金属塩を加え、これとアルカリ水溶液を混合して非晶質な六方晶フェライト粒子を含む懸濁液を作製した後に水熱処理を行うことで、サブミクロンからマイクロメートルサイズの板状ヘマタイト微粒子が得られ、これを還元熱処理することで高い磁化を有する板状鉄微粒子が得られることを発見し本発明に至った。
本発明の板状ヘマタイト微粒子は、ストロンチウム、バリウム、及び鉛から選ばれる少なくとも1種の金属Mを含有する板状ヘマタイト微粒子であって、鉄とMの合計量を100at%としたとき、Mを0.1〜2.0at%含有し、板面径が0.1〜5μmである。本発明の板状ヘマタイト複合体は、この板状ヘマタイト微粒子にセラミックス絶縁体をコーティングしたものである。本発明の板状鉄微粒子は、これらの板状ヘマタイト微粒子又は板状ヘマタイト複合体を還元熱処理して得られる。本発明の板状酸化鉄微粒子は、これらの板状ヘマタイト微粒子又は板状ヘマタイト複合体を酸化熱処理又は還元熱処理して得られる。
本発明によれば、サイズの均一性が高く、非磁性元素含有量が少ないサブミクロンからマイクロメートルサイズの板状ヘマタイト微粒子、板状ヘマタイト複合体、及び板状酸化鉄微粒子と、高い磁化を有する板状鉄微粒子が得られる。
実施例1で得られた六角板状ヘマタイト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例2で得られた六角板状ヘマタイト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例3で得られた六角板状ヘマタイト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例5で得られた円盤状ヘマタイト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真である。 比較例1で得られた菱面体状ヘマタイト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例1で得られた板状鉄微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例2で得られた板状鉄微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例3で得られた板状鉄微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例4で得られた板状鉄微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例5で得られた板状鉄微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真である。 比較例1で得られた鉄微粒子焼結体の形態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例3で得られた板状ヘマタイト微粒子と比較例1で得られた菱面体状ヘマタイト微粒子のX線回折パターンである。 実施例3で得られた板状鉄粒子と比較例1で得られた鉄微粒子焼結体のX線回折パターンである。
以下、本発明の板状ヘマタイト微粒子、板状ヘマタイト複合体、板状鉄微粒子、及び板状酸化鉄微粒子について、表と図面を参照しながら実施形態と実施例に基づいて詳細に説明する。なお、重複説明は適宜省略する。また、2つの数値の間に「〜」を記載して数値範囲を表す場合には、この2つの数値も数値範囲に含まれるものとする。
本実施形態の板状ヘマタイト微粒子は、ストロンチウム、バリウム、及び鉛から選ばれる少なくとも1種の金属Mを含有する。Mは、MFe1219で表される六方晶フェライトを形成できる金属である。本実施形態の板状ヘマタイト微粒子は、鉄とMの合計量を100at%としたとき、Mを0.1〜2.0at%含有する。すなわち、板状ヘマタイト微粒子に含まれるMのモル量を、板状ヘマタイト微粒子に含まれる鉄とMの合計のモル量で割った値が0.1〜2.0%となる(以下、この値を「含有量」ということがある。板状鉄微粒子についても同様である)。板状ヘマタイト微粒子中に少量の金属Mが存在することによって、板状ヘマタイト微粒子を還元熱処理して板状鉄微粒子を作製する工程で、板状ヘマタイト微粒子が焼結しない。このため、板状の鉄微粒子が得られる。
本実施形態の板状ヘマタイト微粒子は、板面径が0.1〜5μmである。板面径は、その板状微粒子の板面の最大径である。「板状」とは、板面径を、板形状の最大厚み(以下単に「厚み」ということがある)で割った値が3以上である形状をいう。本実施形態の板状ヘマタイト微粒子は、サブミクロンからマイクロメートルサイズで、非磁性元素含有量が少ない。本実施形態の板状ヘマタイト微粒子は、MFe1219で表される非晶質六方晶フェライト粒子を水熱処理して得られる。この方法で得られる板状ヘマタイト微粒子は、サイズの均一性が高い。また、本実施形態の板状ヘマタイト複合体は、本実施形態の板状ヘマタイト微粒子にセラミックス絶縁体をコーティングしたものである。これは板状ヘマタイト微粒子に電気絶縁性を付与するために行い、公知の方法でシリカ、アルミナ、チタニア等をコーティングできる。
本実施形態の板状鉄微粒子は、本実施形態の板状ヘマタイト微粒子又は板状ヘマタイト複合体を還元熱処理して得られる。還元熱処理後に周囲を不活性ガスで置換し、徐々に不活性ガス中の酸素濃度を高める方法や、トルエン等の有機溶媒中に浸漬する方法など、公知の徐酸化法を行うことによって、還元熱処理後の板状鉄微粒子を空気中に取り出すことができる。本実施形態では、板状ヘマタイト微粒子の還元熱処理を経ても、鉄微粒子の板形状が維持される。本実施形態の板状鉄微粒子は、板状ヘマタイト微粒子に含まれる鉄とMの合計量を100at%としたとき、Mを0.1〜2.0at%含有し、板面径が0.1〜5μmであり、高い飽和磁化を有する。
本実施形態の板状酸化鉄微粒子は、本実施形態の板状ヘマタイト微粒子又は板状ヘマタイト複合体を酸化熱処理又は還元熱処理して得られる。すなわち、本実施形態の板状酸化鉄微粒子は、板状ヘマタイト微粒子又は板状ヘマタイト複合体を、公知の酸化雰囲気中又は還元雰囲気中で熱処理することによって得られる。本実施形態の板状酸化鉄微粒子としては、板状マグネタイト(Fe34)微粒子、板状マグへマイト(γ−Fe23)微粒子、板状ベルトライド化合物(FeOx)微粒子等の各種板状酸化鉄微粒子が挙げられる。
板状ヘマタイト微粒子の還元は、水素雰囲気下又は水素と不活性ガスの混合雰囲気下、400〜1000℃で行うことが可能であるが、激しい焼結を抑制するためには400〜700℃で還元熱処理するのが好ましい。板状ヘマタイト微粒子の水素還元温度を360℃程度とすると板状マグネタイト微粒子が得られ、板状マグネタイトを大気中200℃程度で焼成すると板状マグヘマイト微粒子が得られる。
板状ヘマタイト微粒子は、以下の手順によって製造される。まず、第二鉄塩水溶液に添加金属元素Mの塩の水溶液を加え、これに所定の量のアルカリ水溶液を添加・混合すると、共沈によって非晶質六方晶フェライトが得られる。すなわち、非晶質六方晶フェライトナノ粒子を含む懸濁液が得られる。つぎに、この懸濁液を水熱処理することで板状ヘマタイト微粒子が作製される。この方法によれば、有機物を用いずに板状ヘマタイト微粒子が製造できる。
第二鉄塩水溶液に添加金属元素Mを加えずに水熱処理をした場合には、得られたヘマタイト微粒子が板状にならないこと、また、第二鉄塩水溶液に添加金属元素Mの塩を加えた後、水熱処理を行わない場合は非晶質六方晶フェライト粒子となることから、水熱処理中に非晶質六方晶フェライト粒子から添加金属元素Mが溶出すると同時に、ヘマタイトの結晶成長が進行して板面径が0.1〜5μmの板状ヘマタイト微粒子が生成すると考えられる。
本実施形態では、第二鉄塩として、硝酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸第二鉄等を用いることができる。本実施形態では、ストロンチウムの金属塩として、硝酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、硫酸ストロンチウム等のストロンチウム塩を用いることができる。本実施形態では、バリウムの金属塩として、硝酸バリウム、塩化バリウム、硫酸バリウム等のバリウム塩を用いることができる。鉛の金属塩として同様の鉛塩を用いることができる。これらの金属塩は、それぞれ単独で又は混合させて用いることができる。懸濁液中の金属Mは、懸濁液中のMのモル量/(懸濁液中のFeのモル量+懸濁液中のMのモル量)が1〜50%となる量が好ましく、2〜25%となる量がより好ましい。
本実施形態では、アルカリとして、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の強塩基を用いることができる。アルカリ添加量は板状ヘマタイト微粒子を得るうえで重要であり、金属Mの塩の添加量により変動するが、懸濁液中のMのモル量/(懸濁液中のFeのモル量+懸濁液中のMのモル量)をXとし、懸濁液中のOH-のモル量/(懸濁液中のFeのモル量+懸濁液中のMのモル量)をYとしたときに、1.88X-0.22<Y<1.84X-0.32を満たすようなOH-存在下で水熱処理すれば板状ヘマタイト微粒子が作製できる。
第二鉄塩と金属Mの塩を含む水溶液(以下「金属塩水溶液」ということがある)と、アルカリ水溶液の混合時の条件によって、板状ヘマタイト微粒子のサイズを制御することが可能である。詳細は実施例で述べるが、アルカリ水溶液の濃度が高い方がサイズは大きく、また金属塩水溶液にアルカリ水溶液を加えるよりも、アルカリ水溶液に金属塩水溶液を加える方がサイズは大きくなる傾向が見られた。
本実施形態では、水熱処理を100℃以上の温度範囲で行うことができる。板状ヘマタイト微粒子の形成速度と装置の取扱い容易性や安全性を考慮すると、150〜300℃で水熱処理するのが好ましい。また、本実施形態では、磁性をはじめ種々の特性制御を行う目的でCo、Ni、Zn、Cu、Mn、Al等の金属塩を水熱処理前の懸濁液に添加してもよい。
実施例及び比較例により本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されない。実施例及び比較例の板状ヘマタイト微粒子の板面径と厚みは、走査型電子顕微鏡(FE−SEM)観察像から50個以上の粒子について測定したときの平均値である。なお、図5に示すように、実施例5で試料回収の際に破砕されて生じたと思われる不定形粒子が見られたが、これはカウントしていない。また、これら50個以上の粒子の各測定値の標準偏差を求めた。試料のストロンチウム又はバリウム(以下「ストロンチウム等」ということがある)の含有量は、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により定量した。試料の結晶相は、Co管球を用いたX線回折測定(XRD)により同定した。試料の磁性特性を示す飽和磁化は、振動試料型磁力計(VSM)を用いて、温度25℃、最大外部磁化2.5kOeの条件で測定した。
〔実施例1〕
(1)板状ヘマタイト微粒子の作製
鉄塩として硝酸第二鉄九水和物(Fe(NO3)3・9H2O)、添加金属Mの塩として硝酸ストロンチウム(Sr(NO3)2)又は硝酸バリウム(Ba(NO3)2)、アルカリとして水酸化カリウム(KOH)をそれぞれ用い、以下の手順によって板状ヘマタイト微粒子を作製した。
まず、0.49mol/Lの硝酸第二鉄九水和物水溶液13.6mLと、0.47mol/Lの硝酸ストロンチウム水溶液4.8mLと、純水22.1mLを混合した。つぎに、この混合液をマグネチックスターラーで撹拌しながら、0.5mol/Lの水酸化カリウム水溶液49.5mLを滴下して懸濁液を得た。得られた懸濁液には、Fe(NO3)3・9H2Oが6.75mmol、Sr(NO3)2が2.25mmol、KOHが24.75mmol含まれている。すなわち、この懸濁液には、Feが6.75mmol、Srが2.25mmol、OHが24.75mmol含まれている。
そして、この懸濁液を室温にて数時間撹拌した後、容量100mLのフッ素樹脂製の内筒とステンレス製の外筒からなる水熱処理容器に移した。つぎに、この容器を密閉して、強制対流式加熱オーブンに入れて180℃で12時間静置した。その後、自然降温させ、得られた試料を遠心分離により回収・水洗を行い、50℃で真空乾燥して板状ヘマタイト微粒子を得た。一方、水熱処理をする前の上記懸濁液を、遠心分離により回収・水洗を行い、50℃で真空乾燥した。得られた粉末についてFE−SEM観察、EDX測定、XRD測定を行ったところ、主として大きさ10nm程度の非晶質なSrFe1219粒子であった。
(2)板状ヘマタイト微粒子の還元熱処理による板状鉄微粒子の作製
得られた板状ヘマタイト微粒子を還元熱処理(真空中にて200℃で2時間、水素導入して0.1MPaにて360℃で2時間、水素気流下にて500℃で4時間)を行った後、室温まで降温した。これをアルゴン置換し、さらに1vol%酸素を含むアルゴンを導入することで徐酸化を行い、板状鉄微粒子を得た。
〔実施例2〕
金属塩水溶液を作製するときの純水の容量を65.4mLに、金属塩水溶液に滴下する水酸化カリウム水溶液の濃度と容量を4mol/Lと6.2mLにそれぞれ変更した点を除き、実施例1と同じ手順で板状ヘマタイト微粒子及び板状鉄微粒子を作製した。得られた懸濁液には、Feが6.75mmol、Srが2.25mmol、OH-が24.75mmol含まれている。
〔実施例3〕
純水59.2mlに2mol/L水酸化カリウム水溶液12.4mLを加え、これをマグネチックスターラーで撹拌しながら、0.49mol/L硝酸第二鉄九水和物水溶液13.6mLと0.47mol/L硝酸ストロンチウム水溶液4.8mLの混合液を滴下した。得られた懸濁液には、Feが6.75mmol、Srが2.25mmol、OH-が24.75mmol含まれている。この後の水熱処理、分離、回収、水洗、乾燥、及び還元熱処理の各工程は、実施例1と同様に行った。
〔実施例4〕
実施例3で作製した板状ヘマタイト微粒子に下記のシリカコーティングを行い、板状ヘマタイト複合体を得てから還元熱処理した点以外は、実施例3と同様に行った。すなわち、まず超音波照射下で、実施例1で得られた板状ヘマタイト微粒子0.2gをエタノール100mLに分散させた。これに水7.5mLとアンモニア水1.5mLを加えた後、マグネチックスターラーで撹拌しながら、エタノール5mLとテトラエトキシシラン15μLの混合液を滴下し、室温にて一晩撹拌を行った。その後、試料を遠心分離にて回収し、エタノールで洗浄を行い50℃で真空乾燥した後、還元熱処理を行って板状ヘマタイト複合体を得た。
〔実施例5〕
まず、0.49mol/Lの硝酸第二鉄九水和物水溶液13.6mLと、0.19mol/Lの硝酸バリウム水溶液11.8mLと、純水52.2mLを混合した。つぎに、この混合液をマグネチックスターラーで撹拌しながら、2mol/Lの水酸化カリウム水溶液12.4mLを滴下して懸濁液を得た。得られた懸濁液には、Feが6.75mmol、Srが2.25mmol、OH-が24.75mmol含まれている。この懸濁液の水熱処理時間を24時間に変更した点を除き、実施例1と同じ手順で板状ヘマタイト微粒子及び板状鉄微粒子を作製した。
〔比較例1〕
金属塩水溶液中にSr(NO3)2を含まなかった実験例である。すなわち、0.49mol/L硝酸第二鉄九水和物水溶液を18.2mL、純水を58.3mL、2mol/L水酸化カリウム水溶液を13.5mL用いて、実施例1と同様の手順で行った。水熱処理前の懸濁液には、Feが9mmol、OH-が27.0mmol含まれており、Srが含まれていない。
各実施例及び比較例で得られたヘマタイト微粒子の形状、板面径、厚み、標準偏差、ストロンチウム等の含有量、及び結晶相、並びに還元熱処理後の形状、板面径、標準偏差、磁性特性(飽和磁化及び保磁力)、ストロンチウム等の含有量、Siの含有量、及び結晶相を表1に示す。
Figure 2015224167
図1から図4は、実施例1〜3及び実施例5で得られた板状ヘマタイト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真である。図5は、比較例1で得られた菱面体状ヘマタイト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真である。図6から図10は、実施例1〜5で得られた板状鉄微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真である。図11は、比較例1で得られた鉄微粒子焼結体の形態を示す電子顕微鏡写真である。図1から図3と図6から図8のFE−SEM像より、実施例1〜3では、還元熱処理後の鉄微粒子は、還元熱処理前のヘマタイト微粒子の板状形状を維持していることがわかった。
また、還元熱処理後の板状鉄微粒子のサイズは、還元熱処理前の板状ヘマタイト微粒子のサイズと比べて1割余り小さくなった。これは還元熱処理によって酸素が除かれるからだと考えられる。実施例1〜3及び実施例5では、板面径が0.19〜3.61μmの板状ヘマタイト微粒子が得られた。また、実施例1〜5では、板面径が0.16〜3.14μmの板状鉄微粒子が得られた。これらの板状ヘマタイト微粒子及び板状鉄微粒子の板面径と厚みの標準偏差は、各平均値の15%前後であり、FE−SEM像からもわかるようにサイズの均一性が高かった。一方、ストロンチウムを含まない比較例1では、図5に示すように菱面体状ヘマタイト微粒子が生成し、この菱面体状ヘマタイト微粒子を還元熱処理すると、図11に示すように激しく焼結した。
硝酸バリウムを用いた実施例5でも、硝酸ストロンチウムを用いた実施例1〜3と同様に、板状ヘマタイト微粒子が得られた。このことよりストロンチウム、バリウムだけでなく、六方晶フェライトを形成する鉛でも同様の板状ヘマタイト微粒子が得られると考えられる。また、硝酸バリウムを用いて作製した板状ヘマタイト微粒子は、硝酸ストロンチウムを用いて作製した板状ヘマタイト微粒子と比べてサイズが大きかった。用いる金属Mの種類によってサイズの制御が可能であると考えられる。また、各実施例では、ストロンチウム等が0.7〜1.6at%含まれた板状ヘマタイト微粒子が得られ、0.7〜1.2at%含まれた板状鉄微粒子が得られた。すなわち、いずれの板状ヘマタイト微粒子及び板状鉄微粒子にも、ストロンチウム等が1at%程度含まれていることが、EDX測定よりわかった。
図12は、実施例3で得られた板状ヘマタイト微粒子と比較例1で得られた菱面体状ヘマタイト微粒子のX線回折パターンである。図12に示すように、比較例1で得られた菱面体状ヘマタイト微粒子からSrCO3が検出されなかったが、実施例3で得られた板状ヘマタイト微粒子からはSrCO3が検出された。これは、水熱処理の際に溶出したSr2+が水中のOH-と反応しSr(OH)2となり、さらにこれが溶液中に溶け込んだCO2と反応してSrCO3生成して、板状ヘマタイト微粒子に付着したからだと考えられる。
図13は、実施例3で得られた板状鉄粒子と比較例1で得られた鉄微粒子焼結体のX線回折パターンである。図13に示すように、実施例3で得られた板状ヘマタイト微粒子を還元熱処理して得られた板状鉄粒子からもSrCO3が検出された。SrCO3は分解温度が900℃程度であり、このSrCO3が還元熱処理の際に焼結を防いでいると考えられる。したがって、ストロンチウム等の添加金属塩は、ヘマタイト微粒子の形状を板状に制御するだけでなく、板状鉄微粒子を作製する上で欠かせないと考えられる。また、水素還元温度を360℃程度とすることで板状のマグネタイトが得られ、板状マグネタイトを大気中200℃程度で焼成することで板状マグヘマイトを作製することができる。
各実施例で作製した板状鉄微粒子のストロンチウム含有量は、1at%前後と少量であり、これにより飽和磁化が189〜205emu/gと高かった。各実施例で作製した板状鉄微粒子の飽和磁化は、特許文献3に記載されたSiとMgを添加した板状鉄微粒子で同等サイズの飽和磁化と比べて10%以上高かった。各実施例で作製した板状鉄微粒子は、サイズが大きいほど飽和磁化の増加と保磁力の低下がみられた。サイズが大きい板状鉄微粒子ほど表面積が低下するので、還元熱処理後の表面酸化相が減少して飽和磁化が増加したからだと考えられる。一方、サイズが小さい板状鉄微粒子ほど粒同士が磁気的に分断されるため、保磁力が高くなったと考えられる。
実施例3で得られた板状ヘマタイト微粒子にシリカコーティングを行って板状ヘマタイト複合体を作製し、この板状ヘマタイト複合体を還元熱処理して得られた実施例4の板状鉄微粒子は、実施例3で得られた板状鉄微粒子と比べて還元熱処理前の外殻形状を保っているが、還元熱処理による体積収縮に追随できないためか、空孔が目立つ外形となっている。また、保磁力の上昇が観察された。これは、板状ヘマタイト複合体から得られた板状鉄微粒子中の空孔により、鉄結晶粒が磁気的に分断されたからだと考えられる。本発明の板状鉄粒子は、板状形状に由来し、数百Oeの保磁力を発現することがわかった。また、その値はサイズやシリカコーティングにより特性が変化することもわかった。
本発明の板状ヘマタイト微粒子と、これを熱処理して得られる板状酸化鉄微粒子は、板状形状に由来する被覆性の良さから、顔料や塗料として利用した場合に滑らかさや光沢感の向上が期待できる。また、本発明の板状鉄微粒子は、高飽和磁化と板状形状に起因して、従来の材料では対応できない高周波域まで利用可能な電磁波吸収材や電磁波シールド材としての応用が期待される。

Claims (6)

  1. ストロンチウム、バリウム、及び鉛から選ばれる少なくとも1種の金属Mを含有する板状ヘマタイト微粒子であって、
    鉄とMの合計量を100at%としたとき、Mを0.1〜2.0at%含有し、板面径が0.1〜5μmである板状ヘマタイト微粒子。
  2. 請求項1において、
    MFe1219で表される非晶質六方晶フェライト粒子を水熱処理して得られる板状ヘマタイト微粒子。
  3. 請求項1又は2に記載の板状ヘマタイト微粒子にセラミックス絶縁体をコーティングした板状ヘマタイト複合体。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の板状ヘマタイト微粒子又は板状ヘマタイト複合体を還元熱処理して得られる板状鉄微粒子。
  5. 請求項4において、
    鉄とMの合計量を100at%としたとき、Mを0.1〜2.0at%含有し、板面径が0.1〜5μmである板状鉄微粒子。
  6. 請求項1から3のいずれかに記載の板状ヘマタイト微粒子又は板状ヘマタイト複合体を酸化熱処理又は還元熱処理して得られる板状酸化鉄微粒子。
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