JP2015218525A - 補修・補強用ボルト及びそれを用いた補修・補強工法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】補修・補強用ボルト3は、複数部分(例えば上下2つの部分)に分割され且つ内部に貫通孔が形成されている円筒部(4:スライドカラー)と、ナット(5:長ナット)と、半径方向外方に延在する部分と延在しない部分を有するワッシャ(6:花弁ワッシャ)と、ワッシャ(6)を貫通してナット(5:長ナット)の上方領域の雌ネジ(51)に螺合する第1のボルト(7:上側ボルト)と、円筒部(4:スライドカラー)を貫通してナット(5:長ナット)の下方領域の雌ネジ(52)に螺合する第2のボルト(8:下側ボルト)を有する。
【選択図】図1
Description
しかし、従来技術に係るせん断ボルトではダブルワッシャに近い側のナットを締めてから花弁ナットを締めており、個々のせん断ボルトについて、既設コンクリート層に取り付ける工程と、花弁ナットを適所に取り付ける工程の2工程を行う必要がある。そのため、多大な作業労力が要求され、作業時間に長時間が必要となる。
これに対して、電動工具を用いて作業時間を短縮して、作業労力を低減することが考えられるが、花弁ナットはボルトにおける適所(吹付け厚に対応して定めれる)に位置させる必要があり、電動工具では花弁ナットが下側のナットに当接するまで一気に締め付けてしまうため、電動工具を用いたのでは、花弁ナットをボルトの適所に位置させることができない。
この様に、従来技術に係るせん断ボルトでは、電動工具で一気に締め付けることができない。
しかし、個々のせん断ボルトの上端部をハンマーで叩いて、ネジ山を潰す作業には、莫大な労力を費やす必要がある。
すなわち、従来技術に係るせん断ボルトを用いた工法では、法面その他のコンクリート構造物における作業が煩雑であり、作業の安全性が高いとは言えなかった。
しかし、半径方向外方に延在する部材(花弁に相当する部材)をナットに溶接する作業は、それに費やされる労力が大きい。また、構造部材として機能するせん断ボルトにおいては、溶接を必要とする部材は使用しないことが望ましい。
補修・補強用ボルト(3)の円筒部(4)を埋設するべき層(1:既存コンクリート層)に挿入孔(10)を穿孔する工程と、
穿孔された挿入孔(10)内に補修・補強用ボルト(3)の円筒部(4)側を挿入する工程と、
第1のボルト(7:上側ボルト)を電動工具(20)で回転する工程と、
(新規吹付層(2)を構成する)吹付材料を吹き付ける工程を有することを特徴としている。
第1のボルト(7:上側ボルト)の雄ネジ(71)とナット(5:長ナット)の上側領域における雌ネジ(51:上側の雌ネジ)を螺合する工程と、
第2のボルト(8:下側ボルト)の雄ネジ(81)とナット(5)の下側領域における雌ネジ(52:下側の雌ネジ)を螺合する工程と、
円筒部(4:スライドカラー)をナット(5)と第2のボルト(8)のボルトヘッド(82)により軸線方向に圧縮して、半径方向外方に移動する工程と、
半径方向外方に延在する部分と延在しない部分を有するワッシャ(6:花弁ワッシャ)を、第1のボルト(7)のボルトヘッド(72)とナット(5)の上端部により挟み込む工程、
を有しているのが好ましい。
地山が安定している(S1がYES:法面に吹き付けられている)がモルタルが地山と密着しておらず(S2がNO)、湧水量が少なく(S3がNO:湧水による顕著な変状がなく)且つモルタルと地山の密着性が改善出来る(S4がYES)場合に、地山表層の補強が必要であれば(S5がYES)背面補強工(S7:空隙注入工あるいは空洞充填工)と表面補強工(S8)を組み合わせ、
地山表層の補強が必要でなければ(S5がNO)、背面補強工(S11:空隙注入工あるいは空洞充填工)と表面補修工(S12:表面被覆工あるいはひび割れ補修工)の組み合わせと、表面補強工(S14)の何れか有利(現場の状況に合致しており、あるいはコスト面で有利)な方を選択し、
前記表面補強工(S14)は、繊維補強モルタル吹付工と補強鉄筋工を含む方法と組み合わせて使用することが好ましい。
したがって、前記ワッシャ(6)が所望の鉛直方向位置となる様に、前記ナット(5)の長さ(電動工具20で締め付けた際における長ナット5の上端部の鉛直方向位置)を設定すれば、前記ワッシャ(6)は前記ナット(5)上端部の鉛直方向位置(所望の鉛直方向位置)において確実且つ正確に保持される。
そのため、前記ワッシャ(6)を所望の鉛直方向位置にしつつ、電動工具(20)で第1のボルト(7)のボルトヘッド(72)を回転して、本発明に係る補修・補強用ボルト(3:せん断ボルト)を一気に締め付けることが出来る。
その結果、円筒部(4)を貫通する第2のボルト(8)と前記ナット(5)の下側領域とが強固に螺合され、円筒部(4)を貫通する第2のボルト(8)が圧縮されて円筒部(4)を構成する部分(41、42)が半径方向外側に移動(半径方向に拡径)するので、本発明に係る補修・補強用ボルト(3)を確実に既設コンクリート層(1)に固定することが出来る。
そのため、作業者が現場においてハンマーでせん断ボルトの上端部を叩いてネジ山を潰す作業が不要であり、当該(ネジ山を潰す)作業の分だけ作業労力が低減される。それと共に、作業における安全性が向上する。
そして本発明によれば、前記ワッシャ(6)は単一の金属板をプレス成形等の加工を行うことで製造することができ、従来技術の様に半径方向外方に延在する部材をナットに溶接する必要がない。
そのため、施工に際して用いられる部材を製造する際に溶接作業を行なう必要がなく、せん断ボルトにおいて溶接を必要とする部材を使用せずに済む。
図1において、全体を符号3で示すせん断ボルト3は、既存コンクリート層1に固定されており、且つ、新規吹付層2に埋設されている。
図1、図2で示すように、せん断ボルト3(補修・補強用ボルト)は、スライドカラー4、長ナット5、花弁ワッシャ6、上側ボルト7、下側ボルト8、第2のワッシャ9を有している。
花弁ワッシャ6は、半径方向外方に延在する部分と延在しない部分とを有しており、板金等からプレス成形により製造される部品である。
図1では、スライドカラー4が軸方向(図1では上下方向)に締め付けられて軸方向圧縮力を受け、当該圧縮力により部分41及び42が境界面43に沿って相互に移動(スライド)して、半径方向(図1では左右方向)に拡径した状態を示している。
スライドカラー4に軸方向圧縮力が作用する以前の状態、すなわちスライドカラー4が半径方向に拡径する以前の状態は、図2及び図3に示される。
換言すれば、スライドカラー4の内部貫通孔内径寸法は、下部ボルト8の外径寸法に対して、スライドカラー4に軸方向圧縮力が作用して境界面43に沿ってスライドした際に、部分41、42が下部ボルト8と干渉しない程度に大きく設定されている。
上部ボルト7のボルトヘッド72と長ナット5の間に花弁ワッシャ6を介装することにより、上部ボルト7のボルトヘッド72を締め付けることにより、花弁ワッシャ6は上部ボル7と長ナット5により挟み付けられ、以って、花弁ワッシャ6は長ナット5の上端部の位置に強固に保持される。
長ナット5とスライドカラー4の間には、ワッシャ9(第2のワッシャ)が介装されている。図示はされていないが、ワッシャ9は省略することも可能である。
ワッシャ9は、上側ワッシャ91と下側ワッシャ92から構成されており、いわゆる「ダブルワッシャ」となっている。ただし、ワッシャ9をダブルワッシャとせず、単一のワッシャで構成することも可能である(図示せず)。
下部ボルト8のボルトヘッド82と長ナット5の間にスライドカラー4と第2のワッシャ9を挟み込み、ボルトヘッド82を締め付けると、下側ボルト8の雄ネジ81は長ナット5の下側領域に形成された雌ネジ52に螺合しているので、スライドカラー4が図1の上下方向(スライドカラー4の長手方向)に圧縮され、上述した様に半径方向に拡径して、せん断ボルト3が確実に既設コンクリート層1に固定される。
それと共に、長ナット5の長さ(軸線方向寸法:図1では上下方向寸法)は、上側ボルト7と長ナット5上側領域とを完全に螺合し、下側ボルト8と長ナット5下側領域とが完全に螺合して、花弁ワッシャ6が上部ボル7と長ナット5により挟み付けられて長ナット5の上端部の位置に強固に保持された際に、既存コンクリート層1から花弁ワッシャ6までの距離が所定距離となる様に設定されている。
ここで、既存コンクリート層1から花弁ワッシャ6までの所定距離は、既存コンクリート層1に吹き付けられる新規吹付層2の厚さ寸法の30〜70%の範囲に設定されている。
図示の実施形態では、半径方向外方に延在する部分61は、放射線状に延在する中心線に対して垂直な断面が山形に形成されており(図13参照)、以ってその強度を向上している。但し、当該断面形状を平板状にすることも可能である。
花弁ワッシャ6は、図12、図13で示す形状に限定されるものではない。例えば、図26で示すような概略丸形の花弁ワッシャ6を用いることも可能である。
せん断ボルト3が既存コンクリート層1に埋設されている部分(下半分:スライドカラー4及び下部ボルト8の下方部分)では、上述した様にスライドカラー4が半径方向に拡径しているので、せん断ボルト3は既存コンクリート層1に強固に固定されている。
そのため、花弁ワッシャ6の鉛直方向位置(長ナット5の上端位置)は、新規吹付層2の厚さによって、適宜設定される。そして、花弁ワッシャ6の鉛直方向位置(既存コンクリート層1表面からの高さ位置)は、上述の通り、既存コンクリート層1表面から、新規吹付層2の厚さの30〜70%の範囲内にあるのが好適である。
花弁ワッシャ6の位置が既存コンクリート層1表面に近過ぎる場合(既存コンクリート表面1からの距離が新規吹付層2の厚さの30%未満の場合)と、花弁ワッシャ6の位置が既存コンクリート層1表面から遠過ぎる場合(既存コンクリート表面1からの距離が新規吹付層2の厚さの70%よりも大きい場合)は、何れも、花弁ワッシャ6によってせん断ボルト3を新規吹付層2に定着する作用が発揮されなくないことが、発明者の実験によって確認されている。
それに加えて図示の実施形態では、花弁ワッシャ6は単一の金属板をプレス成形等の加工により製造されており、溶接部分を有していない。溶接部分は強度が劣るので、図示の実施形態で用いられる花弁ワッシャ6は、ナットに花弁(半径方向外方に延在する部分)を溶接した花弁ナット(従来技術で使用されるナット)に比較して、その強度が高い。
長ナット5についても、その断面形状は六角形に限定されるものではない。雌ネジが形成されていれば、長ナット5の断面形状については特に限定要件は存在しない。
花弁ワッシャ6は、上側ボルト7のボルトヘッド72と長ナット5の上端部により挟み込まれ、長ナット5の上端部の位置に強固に固定される。したがって、長ナット5の長さ(長ナット5の上端部の鉛直方向位置)を花弁ワッシャ6の鉛直方向位置が所望の位置となる様に(既設コンクリート層からの距離が所定の距離になる様に)設定すれば、花弁ワッシャ6は新規吹付層2の厚さ寸法に対応して、所望の鉛直方向位置となり、せん断ポルト3を新規吹付層2に定着する作用効果を確実に奏することが出来る。
このように、図示の実施形態では電動工具20で上側ボルト7のボルトヘッド72を回転して一気に締め付けてせん断ボルト3を固定することが出来ると共に、花弁ワッシャ6を所望の鉛直方向位置にして、せん断ボルト3を新規吹付層2に定着することが出来る。
そして、花弁ワッシャ6は長ナット5上端と上側ボルト7のボルトヘッド72により強固に挟み付けられて固定されるので、吹付の際等に作業者の足に触れて回動し、外れてしまうことが防止される。
また、花弁ワッシャ6は単一の金属板をプレス成形等の加工を行うことで製造することができるので、半径方向外方に延在する部材をナットに溶接する必要がなく、強度が劣る溶接部分を設ける必要がない。
図4は、せん断ボルト3を用いたコンクリート構造物の補修・補強工法の挿入孔削孔工程を示す工程図である。図4で示す工程では、既存コンクリート層1に、せん断ボルト3の下半分(スライドカラー4を設けた箇所とその下側で、具体的にはスライドカラー4及び下部ボルト8の下方部分)を埋設するための挿入孔10を穿孔する。
なお、挿入孔10の深さHを、せん断ボルト3の下半分(スライドカラー4を設けた箇所とその下側)の寸法と等しくして、上側ワッシャ91及び下側ワッシャ92を省略することも可能である。
挿入孔10の内径Dは、せん断ボルト3のスライドカラー4の拡径前の外径寸法よりも大きく、且つ、施工時におけるスライドカラー4の拡径時に、既存コンクリート層1に食い込み、強固に固定される寸法に設定されている。
図5で示す工程に先立って、図3で示すように、せん断ボルト3を組み立てた状態にする。図3の状態では、上側ボルト7は花弁ワッシャ6を貫通しており、その雄ネジ71と長ナット5の雌ネジ(上側の雌ネジ51)とが一部分のみ螺合している。そして、下側ボルト8はスライドカラー4を貫通しており、その雄ネジ81と長ナット5の雌ネジ(下側の雌ネジ52)は一部分のみが螺合している。なお、図3で示す状態では、せん断ボルト3は軸方向に締め付けられておらず、スライドカラー4には軸方向圧縮力は作用せず、拡径していない。
せん断ボルト3は、ダブルワッシャ9の下側ワッシャ92が既存コンクリート層1の表面101と当接するまで、挿入孔10内に挿入される。ここでワッシャ9の下側ワッシャ92が既存コンクリート層1の表面と当接すると、せん断ボルト3がそれ以上挿入孔10に挿入されない様に構成されている。
スライドカラー4には軸方向の圧縮力は作用しておらず、境界面43に沿って部分41、42はスライドしておらず、半径方向に拡径してはいない。すなわちスライドカラー4は円筒形状を保持している。
図6において、せん断ボルト3が既存コンクリート層1に埋設されている部分(下半分)において、スライドカラー4が半径方向に拡径しており、以って、せん断ボルト3の下半分は既存コンクリート層1に強固に取り付けられる。
また、上側ボルト7のボルトヘッド72と、長ナット5の上端部の間に、花弁ワッシャ6が強固に挟み込まれている。
図7は、せん断ボルト3を電動工具20で締め付ける状態を示す工程図である。
図7において、挿入孔10に挿入されたせん断ボルト3の上側ボルト7のボルトヘッド72に電動工具20のレンチ部21を係合する。そして、電動工具20を駆動してボルトヘッド72を回転させ、せん断ボルト3を締め付ける。
上側ボルト7の雄ネジ71と長ナット5の雌ネジ(上側の雌ネジ51)とが完全に螺合することにより、花弁ワッシャ6が上側ボルト7のボルトヘッド72と長ナット5の上端部により、強固に挟み付けられる。
ここで、図示の実施形態では長ナット5が存在するので、上側ボルト7と長ナット5の上側領域51が十分に螺合し、且つ下側ボルト8と長ナット5の下側領域52とが十分に螺合しても、上側ボルト7の下端と下側ボルト8の上端とは当接せず、長ナット5内に隙間δが存在する。
より詳細には、図9において、軸方向圧縮力Fが作用したスライドカラー4の2つの部分41及び42は、境界面43に作用する剪断力の水平方向分力(押圧力)Fhを受ける。その押圧力Fhにより、スライドカラー4の2つの部分41及び42は、摩擦抵抗や各種抵抗に打ち勝って境界面43で相互にスライド移動し半径方向外方に拡径する。その結果、スライドカラー4は既存コンクリート層1を強固に押圧し、或いは既存コンクリート層1に食い込む(図6参照)ので、せん断ボルト3が既存コンクリート層1に強固に取り付けられる。
図10は、スライドカラー4の2つの部分41及び42が境界面43で相互にスライド移動し、半径方向に拡径した最終的な状態を示している。
図10において、符号t1は上側ボルト7の呼び長さ(首下長さ)、符号t2は下側ボルト8の呼び長さ(首下長さとした時、上側ボルト7のボルトヘッド72下端部から下側ボルト8のボルトヘッド82下端部までの長さLは、
L=t1+t2+δ
ここでδは、上述の通り、長ナット5内で生じる上側ボルト7の下端と下側ボルト8の上端の間の隙間であり、 δ>0 に設定することで、せん断ボルト3によりを最大限に締め付けて、上側ボルト7と長ナット5の上側領域が十分に螺合し、且つ下側ボルト8と長ナット5の下側領域とが十分に螺合しても、上側ボルト7の下端と下側ボルト8の上端とは当接せず、干渉しない。
前述の通り、このように固定される花弁ワッシャ6の軸方向の位置は、新規吹付層)の厚さ寸法に対応して定められ、新規吹付層2の厚さの30〜70%である。
図11で示すように、吹付機械(図示せず)のノズル30から、既存コンクリート層1の上に、所定の厚さ寸法になるまで吹付材料31を吹付け、新規吹付層2を形成する。
上側ボルト7の雄ネジ71と、長ナット5の上側領域における雌ネジ51とを螺合する工程、
下側ボルト8の雄ネジ81と、長ナット5の下側領域における雌ネジ52とを螺合する工程、
スライドカラー4を長ナット5と下側ボルト8のボルトヘッド82により軸線方向に圧縮して、半径方向に拡径せしめる工程、
上側ボルト7の雄ネジ71と長ナット5上側領域における雌ネジ51とを増し締めし、下側ボルト8の雄ネジ81と長ナット5下側領域の雌ネジ52とを増し締めする工程、
上側ボルト7のボルトヘッド72と長ナット5の上端部とにより花弁ワッシャ6を強固に挟み込む工程、
の五つの工程を包含する。
これにより、せん断ボルト3が既設コンクリート層1に強固に固定され、花弁ワッシャ6が所定位置(長ボルト5の上端の位置)に強固に固定されるのである。
図14において、全体を符号60で示す工法選択システムは、コスト計算装置61と、施工法選択装置62と、記憶装置63を備えている。
そして、コスト計算装置61は、入力装置7でコスト計算に必要な事項(データ)が入力されると、記憶装置63から出力された施工法のデータから対象となる複数の施工法のコストを算出して、その計算結果を施工法選択装置62、記憶装置63及び表示装置8に出力する。
そして施工法選択装置62は記憶装置63とラインL32で接続され、表示装置8とはラインL28で接続されている。
入力装置7でコスト計算に必要な事項が入力されると、施工法選択装置62は、記憶装置63から出力された施工法のデータ(施工現場の状況と合致するか否かに関するデータ)と、コスト計算装置61から出力された複数のコスト計算結果を参照して、施工現場の状況に合致しており、及び/又はコストが低い施工方法を選択し、選択された施工方法を表示装置8に出力する。
工法選択システム60を起動すると、例えば、図15で示すフローチャートのステップS1〜ステップS5のような質問事項が表示装置8に表示される。
そして、工法選択システム60を操作する作業員(操作員)は、上記質問に対して入力装置7によって、回答する。
図15、図16、図22、図23で示す工法選択の制御では、上述したように、表示装置(図14の符号8)のモニタ8上に、システム100のシステム操作員(図示せず)に対して各種質問が表示される。そして、システム操作員は当該質問に対して、入力装置であるキーボード7により、例えば「YES」、「NO」等で答える。
あるいは、図示しないシステム操作員は、入力装置であるキーボード7により、コスト計算に必要な事項(データ)や、施工現場の状況と対象工法の施工条件が合致するか否かに関連する各種情報、データが入力される。
ここで、工法選択装置100を使用することに代えて、現場作業員が工法選択を実行することが可能である。換言すれば、工法選択の制御を、工法選択装置100ではなく、現場作業員が行なうことが可能である。
すると、ステップS2に進み、表示装置8のモニタ8上に「法面表面のモルタルが地山に密着しているか?」の質問が表示される。
操作員が「NO」を入力すると、ステップS3で、表示装置8のモニタ8上に「湧水による顕著な変状があるか?」の質問が表示される。
ステップS4に進み、表示装置8のモニタ8上に「密着性を改善できるか?」の質問が表示される。
ステップS5に進み、表示装置8のモニタ8上に「地山表層の補強が必要か?」の質問が表示される。
ステップS5において、地山表層の補強が必要ではない場合(ステップS5がNO)、ステップS9に進む。
ステップS7からステップS8に進み、「表面補強工を実施するべき」旨が表示される。表面補強工では、既存のモルタル吹付けの表面に更にモルタルを吹付け、モルタル層の厚みを増す施工(繊維補強モルタル吹付あるいは表面補強(増厚)工)が為される。その際に使用されるモルタルは、補強用繊維をセメントに混ぜた繊維補強モルタルである(図24参照)。
それに加えて、ステップS8では補強鉄筋工が施工される。すなわち、ステップS8では、繊維補強モルタル吹付と補強鉄筋工が行われる。
ここで、補強鉄筋工における補強鉄筋の長さ(例えば1m)は、不安定層の厚さ等により、ケース・バイ・ケースで決定される。
ここで、表面補強工における繊維補強モルタル吹付におけるコストは、施工現場の面積と底辺の長さから、容易に計算することが出来る。
一方、表面補強工の方が有利であれば(ステップSB3で「表面補強工の方が有利」)、ステップSB5で「表面補強工(具体的には繊維強化モルタルを表面に吹付けて表面モルタル層の厚みを増すと共に、長さ1mの補強鉄筋を法面に対して直角に埋設する工法)を行うべき」旨が表示される。
背面地山の風化は、地下水や、地下水の凍結による割れ目の緩み等に起因し、土圧によるすべりは、例えば、切土による応力の開放が考えられる。
風化の有無及び風化層の厚み(W)調査は、例えば、コア抜き調査時の丸鋼貫入量等により判断する。
図20は、風化した土砂201が、亀裂によって分離した表面の吹付けモルタル203Dと共に、法面から崩壊して落下する状態を示している。
図21は、地山200に亀裂が生じ、落石200D型の崩壊が起こったことを示している。
背面地山が安定していない場合には(ステップS1がNO)、図22の制御における「C」に進む。
現場調査員の調査結果等により、岩盤すべり或いは地すべりの可能性があると判断される場合には(ステップSC1がYES)、入力装置7により「YES」を入力する。そしてステップSC2に進み、表示装置8のモニタ8上に「地すべり対策工を行うべき」旨がモニタ8に表示される。
湧水による顕著な変状がない場合(ステップSC3がNO)は、入力装置7によって「NO」を入力する。
ステップSC4では、工法選択システム60は、既設モルタルの取壊しが有利か否かを判断する。ここで、前述したように、「有利」という文言は、施工現場の条件に適合しており、及び/又は、コストの点で有利であることを意味している。そしてコストについては、不利は工法選択システム60のコスト計算装置61によって演算する。
ステップSC6に進み、切土工と、モルタル吹付けと、吹付法枠工と鉄筋挿入工を行う「法面安定工」を行うべき旨がモニタ8に表示される。
一方、既設モルタルの取壊しが有利でなければ(ステップSC4がNO)、ステップSC7において、表示装置8上で背面地山の想定される不安定層の厚さを選択する旨が表示される。操作員は入力装置7によって不安定層の厚さを「0.5m以下」、「0.5m〜3.0m」、「3.0mm以上」の何れかから選択する。
発明者の経験上、崩壊深さが50cm以下である場合が非常に多い。
また、斜面の崩壊事例では、崩壊深さが3m未満のものが、全体の80%程度であることが、当業者には良く知られている。
図22のステップSC9〜SC11、SC13〜SC15、SC17〜SC19は、この様な知見から3種類に分類されている。
ステップSC8において、ステップSC9〜ステップSC11までのトータルコストが、決められた予算枠内に収まれば(ステップSC8がYES)、ステップSC9で「背面補強工を行うべき」旨がモニタ8に表示され、次いでステップSC10に進み、「地山補強工(長さ2mの鉄筋を法面に対して直角に挿入)を行うべき」旨がモニタ8に表示され、ステップSC11で「繊維補強モルタル吹付(あるいは表面補強(増厚)工)、吹付法枠工及び受圧板工を行うべき」旨がモニタ8に表示される。
ここで、繊維補強モルタル吹付では、既存のモルタル吹付け表面に新たに繊維補強モルタルを吹付けている。
一方、ステップSC9〜ステップSC11までのトータルコストが、決められた予算枠内に収まらなければ(ステップSC8がNO)、ステップSC4まで戻り、ステップSC4以降を繰り返す。
ステップSC12において、ステップSC13〜ステップSC15までのトータルコストが、決められた予算枠内に収まれば(ステップSC12がYES)、ステップSC13で「背面補強工を行うべき」旨がモニタ8に表示され、次いでステップSC14に進み、「地山補強工(長さ2〜5mの鉄筋を法面に対して直角に挿入)を行うべき」旨がモニタ8に表示され、ステップSC15でステップSC11と同様の「繊維補強モルタル吹付、吹付法枠工及び受圧板工」を行うべき旨がモニタ8に表示される。
一方、ステップSC13〜ステップSC15までのトータルコストが、決められた予算枠内に収まらなければ(ステップSC12がNO)、ステップSC4まで戻り、ステップSC4以降を繰り返す。
ステップSC16において、ステップSC17〜ステップSC19までのトータルコストが、決められた予算枠内に収まるのであれば(ステップSC16がYES)、ステップSC17で「背面補強工を行うべき」旨がモニタ8に表示される。そしてステップSC18に進み、「地山補強工(アンカー工)を行うべき」旨がモニタ8に表示される。
ここで、ステップSC8、SC12、SC16ではトータルコストに関する判断が実行されているが、それ以外の基準に基づいて判断することが可能である。あるいは、ステップSC8、SC12、SC16を削除することが可能である。
一方、ステップSC17〜ステップSC19までのトータルコストが、決められた枠内に収まらなければ(ステップSC16がNO)、ステップSC4まで戻り、ステップSC4以降を繰り返す。
その場合には、図23の制御におけるステップ「D」に進む。
ここで、排水対策工が必要か否かを判断する際には、施工現場の状況に加えて、排水対策や地下水排除工を行った際のコストが所定値以内に納まるか否かについても考慮する。
排水対策工が不要な場合(ステップSD1がNO)はステップSD2に進み、表示装置8のモニタ8上に「撤去工(取壊し工及び産業廃棄物処理)を行う」旨が表示される。そしてステップSD3において、表示装置8上に「モルタル吹付けによる法面安定工を行う」旨が表示される。
従来技術、例えば従来の遠赤外線影像法による吹付法面の老朽化診断技術では、地山が安定しているか否かを判断していない。そのため従来技術では、モルタルが地山と密着しておらず、その密着性が改善できない場合、換言すれば、地山の危険性が考慮されておらず、あるいは岩盤すべりや地すべりの危険性が考慮されていない場合には、そのような危険性を考慮すること無く、老朽化したモルタルの撤去を行う旨の診断をする可能性がある。
そして、地山における危険性を考慮すること無く、老朽化したモルタルの撤去を行う旨の診断をすることは、防災上、不適当である。
そのため図示の実施形態では地山が安定しているか否かを最初に判断し、地山の危険性を考慮した上で、あるいは岩盤すべりや地すべりがないことを判断して上で、老朽化したモルタルの撤去を行うかどうかの診断をする。
そのため、モルタルが地山と密着しておらず、その密着性が改善できない場合に、老朽化したモルタルの撤去を行う旨の診断をしてしまうことがなく、安全性が高く、防災技術として適切である。
湧水量が多い場合には裏込充填を行うことが出来ず、モルタルの地山に対する密着性は改善しない。図15で示す工法選択の制御では、密着性の改善が可能かどうかの判断以前に湧水量が多いか否かを判断するので、湧水量が多いにも拘らず裏込充填を行ってしまうことが防止される。
なお、吹付工におけるコストは、施工現場の面積と底辺の長さから、容易に計算することが出来る。
当該施工では、繊維補強モルタル吹付工と補強鉄筋工を含んでいる。
ここで、施工現場の法面TFには、地山200と既設コンクリート吹付け層202の間に、風化されて不安定となった層201が存在する。
図24では、当該不安定層201と既設コンクリート吹付け層202との間に空洞204(或いは空隙)も存在する。
ここで、法面TFに打ち込んだL字鉄筋90の頭部(L字部)は、吹付けられるモルタル層203の厚み内に残るように施工する。
「背面空洞注入工」SX3を実施する際には、法面TF下端に接続する地表GFに注入材圧送機(図示せず)を設置して行なう。そして吹付け作業員(図示せず)が前記図示しない注入材圧送機の吹付けホース(図示せず)の先端ノズル(図示せず)を抱え、空洞204に穿孔した注入用の孔から注入材を空洞204内に注入する。
そして、「繊維補強モルタル吹付工」SX7を施工する。
図24の例では、法面TF下端に接続する地表GFに湿式吹付機10Aを設置し、湿式吹付機10Aにコンクリートミキサ車CMからベルトコンベアBCを介して、繊維補強材を混入したセメントミルク(モルタルの材料)を投入する。
湿式吹付機10Aには、ノズル50Aを取り付けた吹付けホース17Aが接続されており、吹付け作業員Mが先端ノズル50Aを抱えて施工領域近傍まで移動する。
そして、ノズル50Aから施工領域の上端から下端に向かって繊維補強材を混入したセメントミルクを法面TFに吹き付ける。
繊維補強モルタル吹付工SX7が完了したならば、作業者Mは命綱80を法面から取り外し、吹付けホース17Aとともに法面から地表GFに戻る。
2・・・新規吹付層
3・・・せん断ボルト(補修・補強用ボルト)
4・・・スライドカラー(円筒部)
5・・・長ナット(ナット)
6・・・花弁ワッシャ(ワッシャ)
7・・・上側ボルト(第1のボルト)
8・・・下側ボルト(第2のボルト)
9・・・ダブルワッシャ(第2のワッシャ)
10・・・挿入孔
20・・・電動工具
21・・・レンチ部
30・・・吹付機械のノズル
Claims (6)
- 複数部分に分割され且つ内部に貫通孔が形成されている円筒部と、ナットと、半径方向外方に延在する部分と延在しない部分を有するワッシャと、ワッシャを貫通してナットの上方領域の雌ネジに螺合する第1のボルトと、円筒部を貫通してナットの下方領域の雌ネジに螺合する第2のボルトを有することを特徴とする補修・補強用ボルト。
- ナットの軸線方向寸法は、円筒部が埋設される層に吹き付けられる層の厚さ寸法の30〜70%である請求項1の補修・補強用ボルト。
- 円筒部は当該円筒部の中心軸に対して傾斜した境界面により2つの部品に分割されている請求項1、2の何れかの補修・補強用ボルト。
- ナットと円筒部の間に介装された第2のワッシャを有する請求項1〜3の何れか1項の補修・補強用ボルト。
- 請求項1〜4の何れか1項の補修・補強用ボルトを用いた補修・補強工法において、
補修・補強用ボルトの円筒部を埋設するべき層に挿入孔を穿孔する工程と、
穿孔された挿入孔内に補修・補強用ボルトの円筒部側を挿入する工程と、
第1のボルトを電動工具で回転する工程と、
吹付材料を吹き付ける工程を有することを特徴とする補修・補強工法。 - 前記電動工具で回転する工程は、
第1のボルトの雄ネジとナットの上側領域における雌ネジを螺合する工程と、
第2のボルトの雄ネジとナットの下側領域における雌ネジを螺合する工程と、
円筒部をナットと第2のボルトのボルトヘッドにより軸線方向に圧縮して、半径方向外方に移動する工程と、
半径方向外方に延在する部分と延在しない部分を有するワッシャを、第1のボルトのボルトヘッドとナットの上端部により挟み込む工程、
を有している請求項5の補修・補強工法。
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