JP2015214617A - 高分子電解質およびその利用 - Google Patents

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純平 三宅
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正人 日下部
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Abstract

【課題】高いプロトン伝導度を発現し、機械特性の湿度依存性が小さく、従って、含水状態と乾燥状態を繰り返しても膜の強度が損なわれず、燃料電池用の電解質膜としての使用に好適な炭化水素系高分子電解質およびその膜を提供すること。
【解決手段】ジベンゾチオフェン構造またはジベンゾフラン構造を、スルホン酸基含有親水部セグメントまたはスルホン酸基非含有疎水部セグメントの少なくとも一方に含むマルチブロックポリマーからなる高分子電解質、並びに、該高分子電解質を用いた燃料電池用高分子電解質膜、燃料電池用触媒層、燃料電池用膜/電極接合体、及び、燃料電池。
【選択図】なし

Description

本発明は、固体高分子形燃料電池に好適な高分子電解質、それを用いた高分子電解質膜、膜/電極接合体、これらを含む燃料電池に関するものである。
近年、地球温暖化等の環境問題等の観点から、高効率でクリーンなエネルギー源の開発が求められている。その要求に対する一つの候補として燃料電池が注目されている。燃料電池は、水素ガスやメタノール等の燃料と酸素等の酸化剤をそれぞれ電解質で隔てられた電極に供給し、一方で燃料の酸化を、他方で酸化剤の還元を行い、直接発電するものである。上述した燃料電池の材料のなかで、最も重要な材料の一つが電解質である。その電解質からなる燃料と酸化剤とを隔てる電解質膜としては、これまで様々なものが開発されているが、近年、特にスルホン酸基などのプロトン伝導性官能基を含有する高分子化合物から構成される高分子電解質の開発が盛んである。こうした高分子電解質は、固体高分子形燃料電池の他にも、例えば、湿度センサー、ガスセンサー、エレクトロクロミック表示素子などの電気化学素子の原料としても使用される。これら高分子電解質の利用法の中でも、特に、固体高分子形燃料電池は、新エネルギー技術の柱の一つとして期待されている。例えば、プロトン伝導性官能基を有する高分子化合物からなる電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池は、低温における作動、小型軽量化が可能などの特徴を有し、自動車などの移動体、家庭用コージェネレーションシステム、および民生用小型携帯機器などへの適用が検討されている。
固体高分子形燃料電池に使用される電解質膜としては、1950年代に開発されたスチレン系の陽イオン交換膜があるが、燃料電池動作環境下における安定性に乏しく、充分な寿命を有する燃料電池を製造するには至っていない。一方、実用的な安定性を有する電解質膜としては、ナフィオン(Nafion)(登録商標)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸膜が広く検討されている。パーフルオロカーボンスルホン酸膜は、高いプロトン伝導性を有し、耐酸性、耐酸化性などの化学的安定性に優れているとされている。しかしながら、ナフィオン(登録商標)は、使用原料が高く、複雑な製造工程を経るため、非常に高価であるという欠点がある。また、電極反応で生じる過酸化水素やその副生物であるヒドロキシラジカルで劣化すると指摘されている。さらに、その構造上、プロトン伝導基であるスルホン酸基の導入には限界がある。
このような背景から、再び炭化水素系電解質膜の開発が期待されるようになってきた。その理由としては、炭化水素系電解質膜は化学構造の多様性を持たせやすく、スルホン酸基などのプロトン伝導基の導入の範囲が広く調整できる、他の材料との複合化、架橋の導入などが比較的容易であるという特徴があるからである。
近年では、電解質膜にスルホン酸基を多く導入することでプロトン伝導性を改善する例があるが、このような膜は含水状態での膨潤が大きく、含水状態と乾燥状態を繰り返すことで膜の強度が損なわれ、燃料電池用の電解質膜として使用するには問題があった。
そこで、電解質膜に剛直な構造を導入することで膜の強度を高める試みが行われている。剛直な構造として例えば、ビフェニル構造やベンゾフェノン構造などが挙げられる。しかし、これらのように芳香環を多く含むポリマーは、非常に剛直または高結晶性のポリマーであることが多く、そのために重合中にポリマーが析出しやすいので、高分子量ポリマーを得ることが難しい(非特許文献1)。このような合成上の問題から、ビフェニル構造を含む高分子量ポリマー(特許文献1)や、ベンゾフェノン構造を含む高分子量ポリマー(特許文献2)は、一般にポリエーテル系ポリマーとして合成されている。しかし、これらスルホン化ポリエーテル系ポリマーは燃料電池用電解質膜として利用した場合、劣化しやすい(非特許文献2)という問題があった。エーテル結合を含まず、ビフェニル構造を含むポリマーの例としては、特許文献3で示されているように側鎖にカルボニル基を有するポリパラフェニレン系ポリマーが知られている。しかしながら、このポリマーは主鎖の芳香環にスルホン酸基を導入することが難しく、ポリマー中のスルホン酸密度を上げることが難しいという問題があった。また、特許文献4では、ポリフェニレンスルホン構造を有するポリマーとポリエーテルスルホンをブロック共重合体としている。しかしながら、これらのポリマーは剛直性が足りず、水への耐溶解性が不足していた。
特開平10−21943号公報 特開2006−261103号公報 特開2004−137444号公報 特開2008−88420号公報
「第4版実験化学講座 高分子合成」、丸善株式会社、1992年5月、p183−190、355−357 「Polymer」、2009年3月、第50巻、第7号、p.1671−1681
本発明の目的は、高いプロトン伝導度を発現し、機械特性の湿度依存性が小さく、従って、含水状態と乾燥状態を繰り返しても膜の強度が損なわれず、燃料電池用の電解質膜としての使用に好適な炭化水素系高分子電解質およびその膜を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、プロトン伝導度に有利なスルホン酸基を有し、ジベンゾフラン構造またはジベンゾチオフェン構造を導入することにより主鎖構造を剛直にした高分子電解質が、比較的低いイオン交換容量でありながら高いプロトン伝導度を有し、かつ機械特性の湿度依存性が小さくなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、スルホン酸基を有さない、主鎖が主に芳香環からなる疎水部セグメント、および、スルホン酸基を有し、主鎖が主に芳香環からなる親水部セグメントから構成されるマルチブロックポリマーを含み、かつ、疎水部セグメントが式(1)
Figure 2015214617
(式中、ZはOまたはSであり、RおよびRは独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、置換アリール基、および、パーフルオロアルキル基から選択されるいずれかの基である。aおよびbは1〜3の整数。)
で表される構造を含む高分子電解質に関する。
また、本発明は、スルホン酸基を有さない、主鎖が主に芳香環からなる疎水部セグメント、および、スルホン酸基を有し、主鎖が主に芳香環からなる親水部セグメントから構成されるマルチブロックポリマーを含み、かつ、親水部セグメントが式(2)
Figure 2015214617
(式中、ZはOまたはSであり、Mはプロトン又は陽イオンを示す。RおよびRは独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、置換アリール基、および、パーフルオロアルキル基から選択されるいずれかの基である。c、d、eおよびfはそれぞれ0〜3の整数であり、1≦c+d≦6、c+e≦3、d+f≦3を満足する。)
で表される構造を含む高分子電解質に関する。
本発明のさらに好ましい態様としては、疎水部セグメントが式(3)
Figure 2015214617
(式中、Zは上記に同じ。XおよびYは、それぞれ独立に、直接結合、S、O、SO、CO、−O−Ar−O−、および、−S−Ar−S−から選ばれるいずれかの基である。Arは少なくとも1つの芳香環からなる基を含む2価の基であり、芳香環からなる基を2つ以上有する場合、それらは直接結合、S、O、SOおよびCOから選ばれる基により連結されている。R〜Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、置換アリール基、および、パーフルオロアルキル基から選択されるいずれかの基である。g〜jは1〜3の整数、xは1〜100の整数である。)
で表される構造を含む高分子電解質である。
本発明のさらに好ましい態様としては、親水部セグメントが式(4)
Figure 2015214617
(式中、Zは上記に同じ。XおよびYは、それぞれ独立に、直接結合、S、O、SO、CO、−O−Ar−O−、および、−S−Ar−S−から選ばれるいずれかの基である。Arは少なくとも1つの芳香環からなる基を含む2価の基であり、芳香環からなる基を2つ以上有する場合、それらは直接結合、S、O、SOおよびCOから選ばれる基により連結されている。Mはプロトン又は陽イオンを示す。R、R、RおよびR10は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、置換アリール基、および、パーフルオロアルキル基から選択されるいずれかの基である。cおよびdは上記に同じ。hおよびiは1〜3の整数。kおよびlは0〜3の整数。1≦c+d≦6、c+k≦3、d+l≦3を満足する。yは1〜100の整数である。)
で表される構造を含む高分子電解質である。
本発明のさらに好ましい態様としては、式(1)で表される構造が、式(5)
Figure 2015214617
(式中、Z、R、R、aおよびbは上記に同じ、Aは塩素、臭素およびヨウ素から選ばれるいずれかの基である。)
で表される化合物を閉環することにより得られる高分子電解質である。
本発明のさらに好ましい態様としては、式(2)で表される構造が、式(6)
Figure 2015214617
(式中、Z、M、R、R、c、d、eおよびfは上記に同じ。Aは塩素、臭素およびヨウ素から選ばれるいずれかの基である。)
で表される化合物を閉環することにより得られる高分子電解質である。
本発明のさらに好ましい態様としては、スルホン酸基を有する親水部オリゴマーと、スルホン酸基を有さない疎水部オリゴマーとを、直接結合、−O−および−S−から選ばれる少なくとも一種を介してブロック共重合させることにより得られる高分子電解質である。
また、本発明は、本発明の高分子電解質を用いた、燃料電池用高分子電解質膜に関する。
また、本発明は、本発明の高分子電解質を用いた、燃料電池用触媒層に関する。
また、本発明は、本発明の高分子電解質を用いた、燃料電池用膜/電極接合体に関する。
また、本発明は、本発明の高分子電解質を用いた、燃料電池に関する。
本発明の高分子電解質は、高分子電解質膜として使用した時に、高いプロトン伝導度を発現し、機械特性の湿度依存性が小さく、従って、含水状態と乾燥状態を繰り返しても膜の強度が損なわれず、燃料電池用の電解質膜としての使用に好適である。
実施例1〜4及び比較例1で作製した高分子電解質膜のプロトン伝導度の測定結果である。 実施例1〜4及び比較例1で作製した高分子電解質膜の貯蔵弾性率の測定結果である。 実施例1〜4及び比較例1で作製した高分子電解質膜の損失弾性率の測定結果である。 実施例1〜4及び比較例1で作製した高分子電解質膜の損失正接の測定結果である。
本発明の一実施形態について説明すれば以下の通りである。なお、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
<1.本発明の高分子電解質>
本発明の高分子電解質は、スルホン酸基(−SO )を有さない、主鎖が主に芳香環からなる疎水部セグメントと、スルホン酸基を有し、主鎖が主に芳香環からなる親水部セグメントとから構成されるマルチブロックポリマーを含み、疎水部セグメントまたは親水部セグメントに、ジベンゾチオフェン構造またはジベンゾフラン構造を含むものである。
疎水部セグメントにジベンゾチオフェン構造またはジベンゾフラン構造が含まれる場合、該構造は式(1)
Figure 2015214617
(式中、ZはOまたはSであり、RおよびRは独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、置換アリール基、および、パーフルオロアルキル基から選択されるいずれかの基である。aおよびbは1〜3の整数。)
で表される。
、Rを具体的に例示するならば、ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜20のアルキル基、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ビフェニル基等の炭素数6〜20のアリール基、置換アリール基としては、トルイル基、キシリル基、メシチレン基、ベンジル基等の炭素数7〜20の置換アリール基、パーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基等の炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基が挙げられる。
、Rとしては、原料の入手容易性から水素が好ましい。
また、親水部セグメントにジベンゾチオフェン構造またはジベンゾフラン構造が含まれる場合、該構造は、式(2)
Figure 2015214617
(式中、ZはOまたはSであり、Mはプロトン又は陽イオンを示す。RおよびRは独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、置換アリール基、および、パーフルオロアルキル基から選択されるいずれかの基である。c、d、eおよびfはそれぞれ0〜3の整数であり、1≦c+d≦6、c+e≦3、d+f≦3を満足する。)
で表される。
、Rの具体例としては、R、Rの具体例として既に記載したものが挙げられるが、好ましくは水素である。
陽イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの第1族の金属イオンや、マグネシウム、カルシウムなどの第2族の金属イオン、アルミニウムなどの第13族の金属イオン、第3族〜第12族の遷移金属の金属イオンなどが挙げられる。Mとしては、高分子電解質の溶媒溶解性の観点から、プロトンおよび1価の金属イオンが好ましく、中でも、プロトン、ナトリウム又はカリウムが好ましい。
本発明の高分子電解質は、式(1)、あるいは、式(2)で表されるジベンゾチオフェン構造またはジベンゾフラン構造を含有するため、隣接する芳香環の主鎖に沿った回転が抑制され、主鎖が剛直となることにより、機械特性の湿度依存性が小さくなるものと考えられる。
次に、式(1)で表される構造を含む疎水部セグメントをより詳細に説明する。式(1)の構造を含む疎水部セグメントは好ましくは式(3)
Figure 2015214617
(式中、Zは上記に同じ。XおよびYは、それぞれ独立に、直接結合、S、O、SO、CO、−O−Ar−O−、および、−S−Ar−S−から選ばれるいずれかの基である。Arは少なくとも1つの芳香環からなる基を含む2価の基であり、芳香環からなる基を2つ以上有する場合、それらは直接結合、S、O、SOおよびCOから選ばれる基により連結されている。R〜Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、置換アリール基、および、パーフルオロアルキル基から選択されるいずれかの基である。g〜jは1〜3の整数、xは1〜100の整数である。)
で表される構造を有する。
xは1〜100の整数であるが、2以上が好ましく、5以上がより好ましい。また、50以下が好ましく、20以下がより好ましい。
〜Rの具体例としては、R、Rで例示したものが挙げられるが、好ましくは水素である。
X、Yにおける−O−Ar−O−、および、−S−Ar−S−を具体的に例示するならば、以下の構造のものが挙げられる。
Figure 2015214617
式(3)の構造を有する疎水部セグメントを具体的に例示するならば、以下の構造のものが挙げられる。
Figure 2015214617
次に式(2)の構造を含有する親水部セグメントを詳細に説明する。式(2)の構造を含む親水部セグメントは好ましくは式(4)
Figure 2015214617
(式中、Z、X、Y、Mは上記に同じ、R、R、RおよびR10は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、置換アリール基、および、パーフルオロアルキル基から選択されるいずれかの基である。cおよびdは上記に同じ。hおよびiは1〜3の整数。kおよびlは0〜3の整数。1≦c+d≦6、c+k≦3、d+l≦3を満足する。yは1〜100の整数。)
の構造を有する。
yは1〜100の整数であるが、2以上が好ましく、5以上がより好ましい。また、50以下が好ましく、20以下がより好ましい。
式(4)の親水部セグメントを具体的に例示するならば、以下の構造のものが挙げられる。
Figure 2015214617
Figure 2015214617
<2.本発明の高分子電解質の製造法>
次に、本発明の高分子電解質の製造法について説明する。
マルチブロックポリマーに式(1)のジベンゾチオフェン構造またはジベンゾフラン構造を導入する方法としては、特に限定されないが、例えば、式(5)
Figure 2015214617
(式中、Z、R、R、a、bは上記に同じ、Aは塩素、臭素、および、ヨウ素から選ばれるいずれかの基である。)
で示されるハロゲン含有構造を閉環することにより得ることができる。式(5)におけるAは塩素、臭素、および、ヨウ素から選ばれるハロゲンであり、脱ハロゲン化水素反応により式(1)の構造が得られる。Aは使用する閉環反応の種類に応じて好適なものを選択すればよい。閉環反応の好ましい例としては、Synthesis、1983年、3号、234〜235頁に記載されている、遷移金属触媒を用いた反応が挙げられる。遷移金属触媒としては、パラジウム系化合物が好ましく、具体例を挙げるならば、PdCl、Pd(OAc)、Pd(PPh等である。溶媒としてはジメチルアセトアミド等の極性の高い溶媒が好適に用いられる。反応系を塩基性にすることにより、高価なパラジウム系化合物の使用量を触媒量に抑えることが可能である。反応系を塩基性にするための塩基性化合物としては、特に限定はなく、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等を使用することができる。
式(3)の構造を有する疎水部セグメントは、例えば、式(3)の構造を有する疎水部オリゴマーによって構成することができる。該疎水部オリゴマーは、例えば、式(7)
Figure 2015214617
(式中、Y、R、R、h、i、Aは上記に同じ、Bは求核性置換基または脱離基である。)
で表される化合物と、式(8)
Figure 2015214617
(式中、X、R、R、g、jは上記に同じ、Cは、式(7)のBが求核性置換基である場合は脱離基であり、Bが脱離基である場合は求核性置換基である。)
で表される化合物を塩基性化合物の存在下に、求核置換反応により重縮合させた後、脱ハロゲン化水素反応することにより得ることができる。
式(7)の化合物と式(8)の化合物が求核置換反応により重縮合するためには、式(7)の化合物における置換基Bと式(8)の化合物における置換基Cのいずれかが求核性置換基であり、他方が脱離基である必要がある。例えば、BがOH基、SH基等の求核性置換基である場合は、Cはハロゲン等の脱離基である必要がある。式(7)の化合物のBが脱離基となる場合は、後に閉環反応時に使用される置換基Aと反応性が異なっていることが望ましい。例えば、Aが臭素である場合、Bは求核置換されやすいフッ素であることが好ましい。また、脱離基を有する化合物は、求核置換反応が効率的に進行するために、2つの芳香環を連結する置換基(XまたはY)がCOやSO等の電子吸引性基であることが好ましい。
式(7)の化合物を具体的に例示するならば、
Figure 2015214617
等が挙げられる。
また、式(8)の化合物を具体例に例示するならば、
Figure 2015214617
等が挙げられる。
式(7)の化合物と式(8)の化合物の重縮合反応は、公知の方法で行えばよい。反応を促進するために、通常は塩基性化合物が用いられる。塩基性化合物としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が好適に用いられ、例示するならば、LiOH、NaOH、KOH、LiCO、NaCO、KCO、LiHCO、NaHCO、KHCO等である。重縮合反応は、溶媒を用いない溶融状態で行うことも可能ではあるが、適当な溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、反応物質(モノマー)および生成する重合体の双方を溶解するものが好ましく、具体例としては、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキシド系溶媒などが挙げられ、中でも、溶解度からN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒が好ましい。これらは単独で用いても2種以上を混合してもよい。重縮合の反応温度は、重合反応に応じて適宜設定すればよく、20℃〜250℃、より好ましくは40〜200℃である。この温度範囲であっても、低温であれば、反応速度が遅く、高温すぎると主鎖が切断する場合がある。反応を促進するために、副生する水を系外に排出することが好ましい。その場合はトルエン等を共溶媒として少量添加し、共沸脱水する方法が用いられる。
式(7)の化合物と式(8)の化合物を重縮合したのち、既に説明した閉環反応を用いることにより、式(3)の構造を有する疎水部オリゴマーを得ることができる。
式(7)の化合物に対して式(8)の化合物を過剰に用いることによって、式(9)
Figure 2015214617
(式中、R〜R、A、C、X、Y、Z、g、h、i、jは上記に同じ。)
で表される化合物を製造し、式(3)の構造を有する疎水部オリゴマーの前駆体として用いることも可能である。
式(9)の化合物の具体例としては、例えば、
Figure 2015214617
等が挙げられる。
式(9)の化合物を、脱ハロゲン化水素反応により式(10)
Figure 2015214617
(式中、R〜R、C、X、Y、Z、g、h、i、jは上記に同じ。)
の化合物に変換した後、さらに式(11)
Figure 2015214617
(式中、R、R、B、X、g、jは上記に同じ。)
の化合物と重縮合反応を行って式(3)の構造を有する疎水部オリゴマーとすることもできるし、式(9)の化合物と式(11)の化合物を重縮合させてから、脱ハロゲン化水素反応によって、式(3)の構造を有する疎水部オリゴマーとすることもできる。重縮合反応は、公知の方法で行えばよい。
式(11)の化合物の具体例としては、式(8)の化合物の具体例として示した化合物を挙げることができる。
同様に、マルチブロックポリマーに式(2)の構造を導入する方法としては、例えば、式(6)
Figure 2015214617
(式中、Z、M、R、R、c、d、e、f、Aは上記に同じ。)
で示されるハロゲン含有構造の閉環反応が挙げられる。
閉環反応としては、式(1)の構造の製造法で記載した方法を同様に用いることができる。
式(4)の構造を有する親水部セグメントは、例えば、式(4)の構造を有する親水部オリゴマーによって構成することができる。該親水部オリゴマーの製造法は、特に限定されず、種々の方法を用いることができる。例えば、スルホン酸基を有するモノマーとスルホン酸基を有さないモノマーを重縮合した後に、閉環する方法によってもよいし、式(3)の構造を有する疎水部オリゴマーを予め製造しておいてから、スルホン酸基を導入してもよい。前者の親水部オリゴマーの製造例としては、例えば、式(7)の化合物と式(12)の化合物
Figure 2015214617
(式中、R、R10、C、X、M、k、lは上記に同じ。)
とを重縮合した後に、閉環する方法が挙げられる。
式(7)の化合物と式(12)の化合物におけるBとCの選択は、既に説明した式(7)の化合物と式(8)の化合物におけるBとCの選択と同様に行えばよい。
式(12)の化合物を具体的に例示するならば、
Figure 2015214617
Figure 2015214617
等が挙げられる。
式(7)の化合物と式(12)の化合物を重縮合し、脱ハロゲン化水素による閉環反応を行えば、式(4)の構造を有する親水部オリゴマーを得ることができる。
親水部オリゴマーの製造法としては、スルホン酸基を有さないオリゴマーを予め製造しておき、スルホン化する方法も使用することができる。スルホン酸基を有さないオリゴマーとしては、式(3)の構造を有する疎水性オリゴマー等の前述の疎水部オリゴマーを挙げることができ、これらを公知のスルホン化剤を用いてスルホン化すればよい。
スルホン化剤の例としては、硫酸、クロロスルホン酸、発煙硫酸等が挙げられ、中でも、クロロスルホン酸が、適度な反応性を有しているため好ましい。
スルホン化反応は、スルホン化剤そのものを溶媒として行ってもよく、また溶媒を用いてもよい。溶媒としては、スルホン化剤に対して不活性なものであればよく、例えば、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒が挙げられる。炭化水素系溶媒としては、飽和脂肪族炭化水素が挙げられ、特に炭素数5〜15の直鎖状または分岐状の炭化水素が好ましく、溶解度の点から、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンが好ましい。ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、ハロゲン化飽和脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素などが挙げられる。ハロゲン化飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、モノクロロメタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、モノクロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタンなどが挙げられ、取り扱の容易さから、ジクロロメタンが好ましい。ハロゲン化芳香族炭化水素としては、例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどが挙げられ、取り扱いの容易さから、クロロベンゼンが好ましい。
スルホン化工程の反応温度は、反応に応じて適宜設定すればよく、具体的にはスルホン化剤の最適使用範囲である−80℃〜200℃に設定すればよく、より好ましくは、−50℃〜120℃であり、さらに好ましくは、−20℃〜80℃である。−80℃よりも低温である場合は、反応が遅くなる傾向があり、200℃よりも高温であると、急激な反応が起こり、目的とするスルホン化が100%進行しない傾向がある。
予めモノマーにスルホン酸基を導入しておいてから、重縮合反応にてオリゴマーを製造する方法を用いると、スルホン酸基を位置選択的に導入することができ、より好ましい。
本発明の高分子電解質を構成するスルホン酸基を有する親水部セグメントには、スルホン酸基が1.0〜10.0meq./g含まれることが好ましく、1.5〜8.0meq./g含まれることがより好ましい。1.0meq./g未満であるとプロトン伝導度が不十分となる傾向があり、10.0meq./gを超えると膨潤が激しくなる傾向がある。スルホン酸基の含有量は、後述の実施例におけるイオン交換容量の測定と同様の方法にて測定することができる。なおここで、meq./gは、ミリ当量/gを意味する。
本発明においては、疎水部セグメントと親水部セグメントのいずれかに、式(1)または式(2)のジベンゾチオフェン構造またはジベンゾフラン構造が含まれていればよい。従って、疎水部セグメントが式(1)の構造を有する場合は、親水部セグメントは、必ずしも式(2)の構造を有している必要はない。式(2)の構造を有しない親水部セグメントとしては、特に構造は限定されず、主鎖が主に芳香環からなるものであればよい。そのような親水部オリゴマーとしては、例えば、特開2011−181278号公報、特開2012−99443号公報、特開2012−99444号公報、特開2012−229418号公報等に記載されているものを使用することができる。
また同様に、親水部セグメントが、式(2)の構造を有する場合は、疎水部セグメントは、必ずしも式(1)の構造を有している必要はない。式(1)の構造を有さない疎水部セグメントとしては、特に構造は限定されず、主鎖が主に芳香環からなるものであればよい。そのような疎水部セグメントとしては、やはり、上記の特許文献に記載されているものを好適に用いることができる。
疎水部セグメントが式(1)で表される構造を含み、かつ、親水部セグメントが式(2)で表される構造を含むことが好ましい。
スルホン酸基を有さない疎水部オリゴマーと、スルホン酸基を有する親水部オリゴマーとを、直接結合、−O−および−S−から選ばれる少なくとも一種を介してブロック共重合させることにより、本発明の高分子電解質を構成するマルチブロックポリマーを得ることができる。そのような連結方法としては、公知の方法を用いることができる。
例えば、両末端に脱離基を有する疎水部オリゴマーと、両末端に水酸基(−OH基)またはチオール基(−SH基)から選ばれる求核性置換基を有する親水部オリゴマーを用意し、重縮合反応を行う方法が挙げられる。重縮合反応は、疎水部オリゴマーの製造において説明した反応条件を用いて行うことができる。ここで、両末端に脱離基を有する疎水部オリゴマーは、例えば、式(7)の化合物と式(8)の化合物の反応において、脱離基を有する化合物を過剰に用いることにより得られ、両末端に求核性置換基を有する親水部オリゴマーは、例えば、式(7)の化合物と式(12)の化合物の反応において、求核性置換基を有する化合物を過剰に用いることにより得られる。
疎水部オリゴマーと親水部オリゴマーの末端を、いずれも求核性置換基としておき、ヘキサフルオロベンゼン、デカフルオロナフタレンなどの鎖延長剤を用いて重縮合させることによって、あるいは、疎水部オリゴマーと親水部オリゴマーの末端を、いずれも脱離基としておき、ヒドロキノン、ビフェノール等の鎖延長剤を用いて重縮合させることによっても、本発明の電解質を得ることができる。
さらに、疎水部オリゴマーと親水部オリゴマーの末端を、いずれもハロゲンとしておき、特開2012−229418号公報に記載されている方法に従い、遷移金属化合物を用いて重縮合する方法を用いることもできる。このような遷移金属化合物としては、ニッケル系化合物、パラジウム系化合物、銅化合物が好ましく用いられ、好ましくは、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、テトラキストリフェニルホスフィンニッケル等の0価ニッケル錯体が用いられる。また、ジクロロビストリフェニルホスフィンニッケル等の2価のニッケル錯体を、亜鉛等の還元剤の存在下に使用してもよい。
脱ハロゲン化水素による閉環反応で、ジベンゾフラン構造、またはジベンゾチオフェン構造を形成する工程は、疎水部オリゴマーと親水部オリゴマーを連結してマルチブロックポリマーを製造した後でも構わない。すなわち、例えば、式(7)の化合物と式(8)の化合物を重縮合して得られたオリゴマーを閉環する前に、親水部オリゴマーと連結してマルチブロックポリマーとし、しかる後に閉環反応を行うことができる。あるいは、例えば、式(7)の化合物と式(12)の化合物を重縮合して得られたオリゴマーを閉環する前に、疎水部オリゴマーと連結してマルチブロックポリマーとし、しかる後に閉環反応を行うことができる。
以上のようにして得られるマルチブロックポリマーの数平均分子量は、10,000〜500,000が好ましく、より好ましくは20,000〜200,000である。10,000より小さいと膜にした場合の強度が不足する傾向があり、一方、500,000より大きいと、溶媒への溶解性が低下し、ハンドリング性が悪化する傾向がある。当該数平均分子量は、後述の実施例に記載の方法から求めることができる。
親水部セグメントと疎水部セグメントから構成されるマルチブロックポリマーを含む高分子電解質には、スルホン酸基が、0.5〜4.0meq./g含まれることが好ましく、1.2〜3.8meq./gがより好ましく、1.4〜3.6meq./gがさらに好ましい。0.5meq./g未満であると、プロトン伝導度が不十分となる傾向があり、4.0meq./gを超えると、膜とした場合に強度を維持することが困難となる傾向がある。
本発明の高分子電解質は、様々な産業上の利用が考えられ、その利用(用途)については、特に制限されるものではないが、高分子電解質膜、燃料電池用触媒層、膜/電極接合体、燃料電池に好適である。
<3.本発明の高分子電解質膜>
本発明にかかる高分子電解質膜は、上記高分子電解質を任意の方法で膜状に成型したものである。このような製膜方法としては、公知の方法が適宜使用され得る。上記公知の方法としては、例えば、ホットプレス法、インフレーション法、Tダイ法などの溶融押出成形、キャスト法、エマルション法などの溶液からの製膜方法が例示され得る。例えば溶液からの製膜方法としては、キャスト法が例示される。これは粘度を調整した高分子電解質の溶液を、ガラス板などの平板上に、バーコーター、ブレードコーターなどを用いて塗布し、溶媒を気化させて膜を得る方法である。工業的には溶液を連続的にコートダイからベルト上に塗布し、溶媒を気化させて長尺物を得る方法も一般的である。
さらに、高分子電解質膜の分子配向などを制御するために、得られた高分子電解質膜に対して二軸延伸などの処理を施したり、結晶化度を制御するための熱処理を施したりしてもよい。また、高分子電解質膜の機械的強度を向上させるために各種フィラーを添加したり、ガラス不織布などの補強剤と高分子電解質膜とをプレスにより複合化させたりすることも、本発明の範疇である。
高分子電解質膜の厚さは、用途に応じて任意の厚さを選択することができる。例えば、得られる高分子電解質膜の内部抵抗を低減することを考慮した場合、高分子電解質膜の厚みは薄い程よい。一方、得られた高分子電解質膜のガス遮断性やハンドリング性を考慮すると、高分子電解質膜の厚みは薄すぎると好ましくない場合がある。これらを考慮すると、高分子電解質膜の厚みは、1.2μm以上350μm以下であることが好ましい。上記高分子電解質膜の厚さが上記数値の範囲内であれば、取り扱いが容易であり、破損が生じ難いなどハンドリング性が向上する。また、得られた高分子電解質膜のプロトン伝導性も所望の範囲で発現させることができる。
なお、本発明の高分子電解質膜の特性をさらに向上させるために、電子線、γ線、イオンビーム等の放射線を照射させることも可能である。これらにより、高分子電解質膜中に架橋構造などが導入でき、さらに性能が向上する場合がある。またプラズマ処理やコロナ処理などの各種表面処理により、高分子電解質膜表面の触媒層との接着性を上げるなどの特性向上を図ることもできる。
本発明の高分子電解質膜は、イオン交換容量が0.5meq./g以上であることが好ましく、1.2meq./g以上であることがより好ましく、1.4meq./g以上であることがさらに好ましい。また、4.0meq./g以下であることが好ましく、3.8meq./g以下であることがより好ましく、3.6meq./g以下であることがさらに好ましい。0.5meq./g未満であるとプロトン伝導性が低くなりすぎる傾向があり、4.0meq./gを超えると水による膨潤で機械強度が著しく低下する傾向がある。
<4.本発明の燃料電池用触媒層>
本発明の燃料電池用触媒層は、本発明の高分子電解質を含有してなるものである。具体的には、当該燃料電池用触媒層は、上述の高分子電解質、燃料電池用触媒、必要に応じて撥水剤やバインダー樹脂から構成されるものである。本発明の高分子電解質を使用することにより、固体高分子形燃料電池や直接メタノール型燃料電池のアノードまたはカソード触媒層に好適な、優れた発電特性を示すことができる。
本発明で使用される燃料電池用触媒とは、文字通り、当業者にとって従来公知の燃料電池用触媒であればよく、導電性触媒担体と当該導電性触媒担体に担持された触媒活性物質を含むものであればよく、その他の具体的な構成については特に限定されない。具体的には、燃料電池の電極反応に対して活性な触媒が使用される。アノード側では、燃料(水素やメタノールなど)の酸化能を有する触媒が使用される。
導電性触媒担体としては、具体的には、カーボンブラック、ケッチェンブラック、活性炭、カーボンナノホーン、カーボンナノチューブなどの高表面積のカーボン担体が挙げられ、触媒担持能や電子伝導性、電気化学的安定性などから、これらの材料が好ましい。
触媒活性物質としては、具体的には、白金、コバルト、ルテニウム等が例示でき、これらを単独で、あるいはこれらの少なくとも一種を含んだ合金、さらには任意の混合物として使用しても構わない。特に燃料の酸化能、酸化剤の還元能、耐久性を考慮すると、白金または白金を含む合金であることが好ましい。これらは必要に応じて、安定化や長寿命化のために、鉄、錫、希土類元素等を用い、3成分以上で構成してもよい。
本発明の燃料電池用触媒層は、本発明の高分子電解質、燃料電池用触媒および溶媒を含む触媒インクを支持体上に塗布し、溶媒を除去することによって調製することができる。
溶媒としては、高分子電解質を溶解でき、燃料電池用触媒を被毒しないものであれば何ら制限なく使用可能である。
当該触媒インクは、必要に応じて非電解質バインダー、撥水剤、分散剤、増粘剤、造孔剤などの添加剤を含んでいても構わない。また、これらの添加剤は、当業者にとって従来公知のものが使用可能であり、その他の具体的な構成については特に限定されない。
前記組成および方法で調製された触媒インクは、粘度や基材の種類に応じて、下記に示すような塗布方法が利用できる。前記触媒インクの基材への塗布方法としては、当業者にとって従来公知の塗布方法であればよく、その他の具体的な構成については特に限定されない。例えば、ナイフコーター、バーコーター、スプレー、ディップコーター、スピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷などを利用する方法が列挙できるが、これらに限定されるものではない
本発明において、基材として高分子フィルムを使用した場合には、燃料電池用触媒層転写シートが、基材として導電性多孔質シートを使用した場合には、燃料電池用ガス拡散電極が、それぞれ製造できる。
<5.本発明の膜/電極接合体、燃料電池>
本発明にかかる膜/電極接合体(以下、「MEA」と表記する)は、本発明の高分子電解質または高分子電解質膜を用いてなる。かかるMEAは、例えば、燃料電池、特に、固体高分子形燃料電池に用いることができる。
MEAを作製する方法は、従来検討されている、パーフルオロカーボンスルホン酸からなる高分子電解質膜やその他の炭化水素系高分子電解質膜(例えば、スルホン酸化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン酸化ポリエーテルスルホン、スルホン酸化ポリスルホン、スルホン酸化ポリイミド、スルホン酸化ポリフェニレンサルファイドなど)で行われる公知の方法が適用可能である。
上述した例以外にも、本発明にかかる高分子電解質は、例えば特開2006−179298号公報等で公知になっている固体高分子形燃料電池の電解質として、使用可能である。これらの公知の特許文献に基づけば、当業者であれば、本発明の高分子電解質を用いて容易に固体高分子形燃料電池を構成することができる。
以下実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
各測定は以下のように行った。
(分子量の測定)
GPC法により分子量を測定した。条件は以下の通り。
GPC測定装置:HLC−8220(東ソー株式会社製)
カラム:SuperAW4000及びSuperAW2500(昭和電工株式会社製)の2本を直列に接続
カラム温度:40℃
移動相溶媒:NMP(N−メチルピロリドン、LiBrを10mmol/dm3になるように添加)
溶媒流量:0.3mL/min
標準物質:TSK標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)
以下、標準ポリスチレンで換算した数平均分子量をMnと表記し、標準ポリスチレンで換算した重量平均分子量をMwと表記する。
(イオン交換容量の測定)
測定サンプルとして、酸処理後の膜を10〜20mg切り出し、80℃で減圧乾燥し、乾燥重量(Wdry)を測定した。この膜を、飽和NaCl水溶液(30mL)に室温で24時間浸漬させることで、イオン基をH型からNa型へ変換した。その後得られた溶液に含まれるHClを、電位差自動滴定装置AT−510(京都電子工業株式会社製)を用いて0.01M NaOH水溶液により定量し、以下の式を用いてイオン交換容量IEC値を算出した。同一の膜について2サンプル作成し、2回の測定の平均値を滴定による算出IEC値とした。
Figure 2015214617
(プロトン伝導度の測定)
電解質膜のプロトン伝導度測定は、日本ベル株式会社製電解質評価装置(MSB−AD−V−FC)を用いて行った。チャンバー内温度は80℃一定で、相対湿度(RH)20%、40%、60%、80%、および、90%の条件下で行った。測定は、RH=20%→40%→60%→80%→90%→80%→60%→40%→20%を1サイクルとして、2サイクル目の湿度降下時の値を測定結果として用いた。サンプルのサイズは1.0cm×3.0cm、Auプローブ間の距離は1.0cmとし、Solartron 1255B/1287(株式会社東陽テクニカ製)を用いて、交流4端子法(300mV、1−100000Hz)により測定を行った。インピーダンスZはボードプロットにより位相角が0°に近い値でかつ1000Hzに近い値を用いた。導電率σ(S/cm)は次式により計算した。
σ = (L/Z)×1/A
ここでLはAuプローブ間の距離(1.0cm)、Aはサンプルの断面積(1cm×膜厚Xcm)である。
(弾性率の評価)
電解質膜(0.5cm×3cm)を、アイティー計測制御株式会社製DV−200を用いて行った。測定周波数10Hz、80℃一定での1%RH/minの湿度上昇速度における相対湿度0%RHから90%RHの貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、および、損失正接(tanδ)の各データを取得した。測定は3サイクル行い、3サイクル目のデータを使用した。
(製造例1)
一口フラスコに、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(FBP)(101mmol)、濃硫酸(151mL)を加え、溶解するまで撹拌した。その後、Nーブロモスクシンイミド(NBS)(207mmol)を15分おきに4回に分けて加え、室温で24時間反応を行った。反応後、純水に滴下し、沈殿を濾過によって回収した。得られた沈殿物を純水で数回洗浄し、80℃で減圧乾燥することで白色固体を得た。その後、得られた固体をトルエン(20mL)に加え、加熱撹拌することで溶解し、ヘキサン(50mL)を加えた後に室温までゆっくり放冷することで再結晶を行った。同様の再結晶の操作を行い、下式に示す純度の高い目的物(Br−FBP)を得た。得られたBr−FBPはH NMR及び19F NMRスペクトル測定により構造決定した。
Figure 2015214617
(製造例2)
リービッヒ冷却管、ディーンスタークトラップ、窒素導入口を備えた三口フラスコに、Br−FBPに対して5倍モル量の4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(DHDPE)(33mmol)、KCO(66mmol)、および、脱水ジメチルアセトアミド(DMAc)(30mL)を加えた後、共沸剤としてトルエン(15mL)を加え、油浴温度を150℃に昇温、1時間撹拌した。共沸剤のトルエンを除去し油浴温度を140℃とした後に、脱水DMAc(9.9mL)に溶解した、製造例1で得られたBr−FBP(6.6mmol)を滴下し、油浴温度140℃で3時間反応を行った。反応液を室温まで放冷後、1M塩酸水溶液(600mL)に滴下した。ろ過によって沈殿を回収し、得られた沈殿物を純水中で洗浄し、吸引濾過によって沈殿を回収した。更に、未反応のモノマーを取り除くため、塩酸を加えたメタノール(MeOH)水溶液(MeOH:0.1M HCl=5:6)中で2回洗浄を行い、得られた固体を60℃で減圧乾燥することにより、下式に示す目的物を得た(Br−FBP−DHDPEモノマー)。得られた固体は、H NMR及び19F NMRスペクトル測定により構造決定した。
Figure 2015214617
(製造例3)
リービッヒ冷却管、ディーンスタークトラップ、窒素導入口を備えた三口フラスコに、製造例2で得られたBr−FBP−DHDPEモノマー(2.0mmol)、トリフェニルホスフィン(PPh)(0.41mmol)、CsCO(10mmol)、および、脱水DMAc(25.5mL)を加え、5分間窒素バブリングを行った。別のナスフラスコに、酢酸パラジウム(II)(0.20mmol)を溶解したDMAc(15mL)溶液を加え、5分間窒素バブリングを行った後に、Br−FBP−DHDPEモノマーを加えた三口フラスコに滴下し、油浴温度を100℃に昇温して、6時間反応を行った。その後、反応液を濾過し、得られた溶液を1M塩酸水溶液に滴下し析出した沈殿を濾過によって回収した。得られた沈殿物にメタノールを加え、濾過によって不溶物を取り除き、エバポレーターを用いて濃縮後、80℃で減圧乾燥することで、下式に示すジベンゾフラン構造を有するモノマーを黄色固体として得た。得られた固体は、H NMRスペクトル測定により構造決定した。
Figure 2015214617
(製造例4)
リービッヒ冷却管、ディーンスタークトラップを備え、窒素パージした三口フラスコに、製造例3で得られたジベンゾフラン構造を有するモノマー(1.0mmol)、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン(FPS)(0.92mmol)、CsCO(2.1mmol)および脱水DMAc(2.0mL)を加え溶解し、共沸剤としてトルエン(1.0mL)を加えた。反応中に生成する水を除去するため油浴温度150℃で1時間撹拌した。その後、ディーンスタークトラップ中のトルエンを除去し、油浴温度を170℃に昇温し、3時間反応を行った。末端を確実にエンドキャップするため、製造例3で得られたジベンゾフラン構造を有するモノマー(0.1mmol)を加え、さらに油浴温度170℃で1時間反応を行った。反応液を室温まで放冷した後、純水中に滴下した。濾過によって沈殿物を回収し、得られた沈殿物を純水中で洗浄した。濾過によって沈殿物を回収し、更に未反応のモノマーを除去するためにメタノール中で2回洗浄を行い、60℃で減圧乾燥することで下式に示す疎水性オリゴマーを得た。鎖長は、x=8となるようモノマーを仕込んだのに対し、GPC測定ではx=6.6、H NMR測定ではx=9.8であった。
Figure 2015214617
(製造例5)
製造例4と同様の方法で、x=16となるようにモノマーの仕込比を変えて合成を行った。疎水性オリゴマーの鎖長は、GPC測定ではx=6.4、H NMR測定ではx=12.3であった。
(製造例6)
リービッヒ冷却管、ディーンスタークトラップ、メカニカルスターラーを備え、窒素パージした三口フラスコに、鎖長y=4となるよう調整したモノマー混合物(4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(DHBP)(11mmol)、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン(FPS)(14mmol))、炭酸カリウム(22mmol)、および、炭酸カルシウム(220mmol)を加え、脱水DMAc(24.8mL)中に溶解し、共沸剤としてトルエン(12.4mL)を加えた。反応中に生成する水を除去するため、油浴温度150℃で1時間半撹拌した。その後、ディーンスタークトラップ中のトルエンを除去し、油浴温度を170℃に昇温し、1時間半反応を行った。末端を確実にエンドキャップするため、FPS(1.4mmol)を加え、さらに170℃で1時間反応を行った。反応液を1M塩酸水溶液に滴下し、濾過によって白色沈殿を回収した。その後、1M塩酸水溶液、メタノール、および、温メタノールによって洗浄を行い、吸引濾過によって沈殿を回収した後、60℃で減圧乾燥することで白色固体を得た。鎖長は、GPC測定ではy=7.5、H NMR測定ではy=5.7であった。
次に、三口フラスコに、得られたFPS末端オリゴマー(1.6mmol)、30wt%発煙硫酸(36mL)(オリゴマーの芳香族環モル比5倍量)を加え、室温で72時間撹拌した。反応液を氷上に滴下することで反応を終了し、得られた溶液にNaOH水溶液を加え、弱塩基性とし一晩撹拌した。その後、分画分子量1000のSpectra/Por(登録商標) 6Dialysis membraneを用いて塩分濃度が0になるまで透析した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、80℃で減圧乾燥することで下式に示すスルホン酸基含有オリゴマーを淡黄色透明固体として得た。H NMR及び19F NMRスペクトル測定により構造決定した。
Figure 2015214617
(製造例7)
100mLフラスコに、鎖長x=3となるよう調整したモノマー混合物(ビフェノール(BP)(1.862g,10.0mmol)、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン(FPS)(1.907g,7.50mmol))、KCO(3.455g,25.0mmol)、DMAc(20mL)、および、トルエン(1mL)を加え、150℃で16時間反応後、室温まで放冷した。DMAc(20mL)で希釈した後、1M塩酸水溶液(1L)に滴下することで固体を得た。これを1M塩酸水溶液、温水、温メタノールで数回洗浄した。80℃で12時間、減圧乾燥することで下式に示す目的物を得た。鎖長は、GPC測定ではx=6.4、H NMR測定ではx=4.8であった。
Figure 2015214617
(製造例8)
200mLビーカーに、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン(FPS)(10.0g,39.3mmol)、および、濃硫酸(60mL)を加え、室温で均一溶液とした。その後、N−ブロモスクシンイミド(NBS)(16.0g,89.9mmol)を20分おきに3回に分けて加え、室温で48時間撹拌を行った。反応溶液を超純水1.5L中に注入し、析出した白色個体をろ過により回収、温超純水500mLで3回洗浄することで、粗成生物を得た。これをトルエン/ヘキサンから2回、再結晶することで、下式に示す高純度の目的物(Br−FPS)を得た。構造は、H NMR及び19F NMRスペクトル測定から確認した。
Figure 2015214617
(製造例9)
100mLフラスコに、鎖長y=4となるよう調整したモノマー混合物(製造例8で得られたBr−FPS(2.210g,5.364mmol)、ジヒドロキシベンゾフェノン(DHBP)(0.919g,4.291mmol))、KCO(1.480g,10.71mmol)、CaCO(8.580g,85.70mmol)、DMAc(10mL)、および、トルエン(1mL)を加え、120℃で4時間撹拌した。反応溶液を室温まで放冷後、DMAc(10mL)で希釈した後、1M塩酸水溶液(1L)に注入することで固体が析出した。これを温水、温メタノールで数回洗浄後、80℃で12時間、減圧乾燥することで、下式で示すオリゴマーを固体として得た。得られたオリゴマーの鎖長は、GPC測定ではy=4.9、H NMR測定ではy=4.5であった。
Figure 2015214617
(製造例10)
製造例9と同様の手法により、仕込み鎖長y=10に対して、得られたオリゴマー鎖長は、GPC測定ではy=8.2、H NMR測定ではy=9.0であった。
(製造例11)
100mLフラスコに、製造例9で合成したオリゴマー(1.50g)、30%発煙硫酸(8.3mL)を加え、室温で48時間撹拌した。その後、氷冷水(500mL)に注入し、NaOH水溶液で中和し、透析と水の除去を行い、80℃で12時間、減圧乾燥することで、下式に示す目的物を得た。構造は、H NMR及び19F NMRスペクトル測定から確認した。
Figure 2015214617
(製造例12)
製造例9のオリゴマーのかわりに、製造例10で合成したオリゴマーを用いる以外は、製造例11と同様にして、目的物を得た。構造は、H NMR及び19F NMRスペクトル測定から確認した。
(製造例13)
100mLフラスコに、製造例11で得たオリゴマー(0.4857g,0.120mmol)、製造例7で得たオリゴマー(0.2549g,0.120mmol)、KCO(0.0415g,0.300mmol)、CaCO(0.1201g,1.20mmol)、ジメチルスルホキシド(DMSO)(3mL)、および、トルエン(0.5mL)を加え、120℃で15時間撹拌した。その後、1M塩酸水溶液(50mL)に注入し、6時間撹拌した。固体を1M塩酸水溶液、飽和食塩水、純水で洗浄後、80℃で12時間、減圧乾燥することで、下式に示す前駆ポリマーを得た。構造は、GPC、H NMR及び19F NMRスペクトル測定から確認した。
Figure 2015214617
(製造例14)
製造例11で合成したオリゴマーのかわりに製造例12で合成したオリゴマーを用いる以外は、製造例13と同様にして、目的とする前駆ポリマーを得た。構造は、GPC、H NMR及び19F NMRスペクトル測定から確認した。
(実施例1)
(高分子電解質樹脂の製造)
リービッヒ冷却管とディーンスタークトラップを備え、窒素パージした三口フラスコに、製造例6で得た親水性オリゴマー(0.070mmol)、製造例4で得た疎水性オリゴマー(0.070mmol)、CsCO(0.28mmol)、CaCO(2.8mmol)と脱水したジメチルスルホキシド(DMSO)(9.6mL)を加え溶解し、共沸剤としてトルエン(2mL)を加えた。その後、油浴温度140℃で48時間反応し、さらに湯浴温度を150℃に昇温して48時間反応を行った。反応液に、DMSO(4.8mL)を加え希釈し、室温まで放冷した後に1M塩酸水溶液中に滴下し、沈殿物を濾過によって回収した。得られた沈殿物を純水中で洗浄した後、濾過によって回収し、80℃で真空乾燥を行い、下式に示すマルチブロックポリマーを得た(設定鎖長x=8、y=4)。GPC測定の結果、Mn=40kDa、Mw=191kDaであった。またH NMRスペクトル測定結果から、親水部、疎水部ともにピークが確認できた。
Figure 2015214617
(高分子電解質膜の作製と評価)
得られたマルチブロックポリマー(0.17g)を、DMAc(4mL)に溶解し、シリコーンゴムで3cm×8cmに縁取りしたガラス板に流し込み、50℃に熱したホットプレート上に一晩静置し、黄色の膜を得た。得られた膜は、1M硫酸中に一晩浸漬することで酸処理し、純水で数回洗浄した後、メンブレンフィルターで膜を挟み、上から重しを乗せることで圧縮乾燥を行った。
得られた高分子電解質膜のイオン交換容量(IEC)を測定したところ、0.94meq./gであった。プロトン伝導度の湿度依存性の測定結果を図1に示した。また、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、損失正接(tanδ)の湿度依存性の測定結果を図2〜4にそれぞれ示した。
(実施例2)
製造例4の疎水性オリゴマーのかわりに、製造例5の疎水性オリゴマーを使用する以外は、実施例1と同様な操作により、マルチブロックポリマーを得た(設定鎖長x=16、y=4)。GPC測定の結果、Mn=33kDa、Mw=154kDaであった。またH NMRスペクトル測定結果から、親水部、疎水部ともにピークが確認できた。さらに、実施例1と同様にして、高分子電解質膜を得た。イオン交換容量は、0.73meq./gであった。プロトン伝導度の湿度依存性の測定結果を図1に示した。また、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、損失正接(tanδ)の湿度依存性の測定結果を図2〜4にそれぞれ示した。
(実施例3)
(電解質樹脂の製造)
窒素パージした200mL三口フラスコで、製造例13の前駆ポリマー(0.600g)をDMAc(100mL)に溶解させた。次いで、モノスルホン酸化トリフェニルホスフィン(s−PPh)(0.0339g,0.0932mmol)とCsCO(1.165g,3.576mmol)を加え、1時間撹拌した。次いで、酢酸パラジウム(II)(0.0105g,0.0467mmol)のDMAc(20mL)溶液をフラスコに加えた。窒素下、100℃で24時間反応後、室温に放冷した。反応溶液を濾過後、濾液を1M硝酸(400mL)に注入し、活性炭を加えた後、室温で12時間撹拌した。溶液を濾過後、再び活性炭を加え、室温で12時間撹拌した。この作業をさらに2回繰り返した。濾液を透析し、水を除去することで固体を得た。粗成生物を3時間、飽和食塩水中で撹拌し、濾過、純水洗浄した後、80℃で12時間、減圧乾燥することで下式に示すマルチブロックポリマー(設定鎖長x=5,y=5)を得た。
GPC測定の結果、Mn=65kDa、Mw=317kDaであった。またH NMRスペクトル測定結果から、親水部、疎水部ともにピークが確認できた。
Figure 2015214617
(高分子電解質膜の作製と評価)
得られたポリマー(0.2g)を、DMSO(3mL)に溶解し、シリコーンゴムで3cm×8cmに縁取りしたガラス板に流し込み、80℃に熱したホットプレート上に一晩静置することで、膜を得た。得られた膜は、1M硫酸中に一晩浸漬することで酸処理し、純水で数回洗浄した後、メンブレンフィルターで膜を挟み、上から重しを乗せることで圧縮乾燥を行った。イオン交換容量は、1.6meq./gであった。プロトン伝導度の湿度依存性の測定結果を図1に示した。また、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、損失正接(tanδ)の湿度依存性の測定結果を図2〜4にそれぞれ示した。
(実施例4)
製造例13の前駆ポリマーのかわりに製造例14の前駆ポリマーを使用すること以外は、実施例3と同様な操作により、マルチブロックポリマー(設定鎖長x=5,y=10)を得た。GPC測定の結果、Mn=82kDa、Mw=314kDaであった。またH NMRスペクトル測定結果から、親水部、疎水部ともにピークが確認できた。高分子電解質の作製は、実施例3と同様にして行った。イオン交換容量は、2.12meq./gであった。プロトン伝導度の湿度依存性の測定結果を図1に示した。また、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、損失正接(tanδ)の湿度依存性の測定結果を図2〜4にそれぞれ示した。
(比較例1)
ディーンスタークトラップを備えた100mL三口フラスコに、製造例6の親水部オリゴマー(Na型,0.13mmol)、製造例7の疎水部オリゴマー(0.13mmol)、KCO(0.52mmol)、CaCO(5.19mmol)、DMSO(10mL)、および、トルエン(4mL)を加え、140℃で72時間、攪拌を行った後、室温まで放冷した。1M塩酸を50mL加え、濾過、1M塩酸洗浄、超純水洗浄を行った。これを十分に乾燥させた後、メタノールで洗浄を行い、80℃で減圧乾燥さることにより、下式のマルチブロックポリマーを得た。GPC測定の結果、Mn=103kDa、Mw=341kDaであった。また、H NMR測定結果から、親水部、疎水部ともにピークが確認できた。
Figure 2015214617
(高分子電解質膜の作製と評価)
ポリマー0.8gをN−メチルピロリドン(NMP)10mLに溶解させ、ガラス基板上に50℃でキャスト製膜を行ったところ、透明な柔軟な膜となった。得られた膜を1M硫酸水溶液中でプロトン交換を行い、超純水中で洗浄を行った後、減圧乾燥を行った。イオン交換容量は、1.69meq./gであった。プロトン伝導度の湿度依存性の測定結果を図1に示した。また、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、損失正接(tanδ)の湿度依存性の測定結果を図2〜4にそれぞれ示した。
実施例1、2の、疎水部にジベンゾフラン構造を有するマルチブロックポリマーは、比較例1のポリマーと比較して、イオン交換容量が低いにもかかわらず、高いプロトン伝導率を有することがわかる。また、弾性率、特に貯蔵弾性率の湿度依存性に関し、比較例1のポリマーが、湿度が40%を超えると大きく低下するのに対し、実施例1、2のマルチブロックポリマーは、低下が小さく、機械的安定性にすぐれることがわかる。実施例3,4の、親水部にジベンゾフラン構造を有するマルチブロックポリマーは、比較例1のポリマーと比較し、イオン交換容量とプロトン伝導率の相関はほぼ同等であるものの、弾性率の湿度依存性が、損失弾性率を含めて極めて小さく、機械的安定性にすぐれることがわかる。

Claims (11)

  1. スルホン酸基を有さない、主鎖が主に芳香環からなる疎水部セグメント、および、スルホン酸基を有し、主鎖が主に芳香環からなる親水部セグメントから構成されるマルチブロックポリマーを含み、かつ、疎水部セグメントが式(1)
    Figure 2015214617
    (式中、ZはOまたはSであり、RおよびRは独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、置換アリール基、および、パーフルオロアルキル基から選択されるいずれかの基である。aおよびbは1〜3の整数。)
    で表される構造を含む高分子電解質。
  2. スルホン酸基を有さない、主鎖が主に芳香環からなる疎水部セグメント、および、スルホン酸基を有し、主鎖が主に芳香環からなる親水部セグメントから構成されるマルチブロックポリマーを含み、かつ、親水部セグメントが式(2)
    Figure 2015214617
    (式中、ZはOまたはSであり、Mはプロトン又は陽イオンを示す。RおよびRは独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、置換アリール基、および、パーフルオロアルキル基から選択されるいずれかの基である。c、d、eおよびfはそれぞれ0〜3の整数であり、1≦c+d≦6、c+e≦3、d+f≦3を満足する。)
    で表される構造を含む高分子電解質。
  3. 疎水部セグメントが式(3)
    Figure 2015214617
    (式中、Zは上記に同じ。XおよびYは、それぞれ独立に、直接結合、S、O、SO、CO、−O−Ar−O−、および、−S−Ar−S−から選ばれるいずれかの基である。Arは少なくとも1つの芳香環からなる基を含む2価の基であり、芳香環からなる基を2つ以上有する場合、それらは直接結合、S、O、SOおよびCOから選ばれる基により連結されている。R〜Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、置換アリール基、および、パーフルオロアルキル基から選択されるいずれかの基である。g〜jは1〜3の整数、xは1〜100の整数である。)
    で表される構造を含む請求項1記載の高分子電解質。
  4. 親水部セグメントが式(4)
    Figure 2015214617
    (式中、Zは上記に同じ。XおよびYは、それぞれ独立に、直接結合、S、O、SO、CO、−O−Ar−O−、および、−S−Ar−S−から選ばれるいずれかの基である。Arは少なくとも1つの芳香環からなる基を含む2価の基であり、芳香環からなる基を2つ以上有する場合、それらは直接結合、S、O、SOおよびCOから選ばれる基により連結されている。Mはプロトン又は陽イオンを示す。R、R、RおよびR10は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、置換アリール基、および、パーフルオロアルキル基から選択されるいずれかの基である。cおよびdは上記に同じ。hおよびiは1〜3の整数。kおよびlは0〜3の整数。1≦c+d≦6、c+k≦3、d+l≦3を満足する。yは1〜100の整数である。)
    で表される構造を含む請求項2記載の高分子電解質。
  5. 式(1)で表される構造が、式(5)
    Figure 2015214617
    (式中、Z、R、R、aおよびbは上記に同じ、Aは塩素、臭素およびヨウ素から選ばれるいずれかの基である。)
    で表される化合物を閉環することにより得られる請求項1または3記載の高分子電解質。
  6. 式(2)で表される構造が、式(6)
    Figure 2015214617
    (式中、Z、M、R、R、c、d、eおよびfは上記に同じ。Aは塩素、臭素およびヨウ素から選ばれるいずれかの基である。)
    で表される化合物を閉環することにより得られる請求項2または4記載の高分子電解質。
  7. スルホン酸基を有する親水部オリゴマーと、スルホン酸基を有さない疎水部オリゴマーとを、直接結合、−O−および−S−から選ばれる少なくとも一種を介してブロック共重合させることにより得られる請求項1〜6のいずれかに記載の高分子電解質。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の高分子電解質を用いた、燃料電池用高分子電解質膜。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の高分子電解質を用いた、燃料電池用触媒層。
  10. 請求項1〜7のいずれかに記載の高分子電解質を用いた、燃料電池用膜/電極接合体。
  11. 請求項1〜7のいずれかに記載の高分子電解質を用いた、燃料電池。
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