JP2015212414A - 冷間鍛造部品用鋼 - Google Patents

冷間鍛造部品用鋼 Download PDF

Info

Publication number
JP2015212414A
JP2015212414A JP2015065055A JP2015065055A JP2015212414A JP 2015212414 A JP2015212414 A JP 2015212414A JP 2015065055 A JP2015065055 A JP 2015065055A JP 2015065055 A JP2015065055 A JP 2015065055A JP 2015212414 A JP2015212414 A JP 2015212414A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel
cold
less
amount
delayed fracture
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2015065055A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6459704B2 (ja
Inventor
徹志 千田
Tetsushi Senda
徹志 千田
根石 豊
Yutaka Neishi
豊 根石
直樹 松井
Naoki Matsui
直樹 松井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp filed Critical Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp
Priority to JP2015065055A priority Critical patent/JP6459704B2/ja
Publication of JP2015212414A publication Critical patent/JP2015212414A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6459704B2 publication Critical patent/JP6459704B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Abstract

【課題】冷間鍛造前の焼鈍や球状化焼鈍の省略が可能であり、冷間鍛造性に優れ、かつ、焼入れ、焼戻しなどの調質熱処理によって高強度化した機械部品等の耐遅れ破壊特性を確保することができる、冷間鍛造部品用鋼を提供する。
【解決手段】本発明に係る冷間鍛造部品用鋼は、質量%で、C:0.22〜0.40%、Si:0.01〜0.15%、Mn:0.1〜1.5%、Cr:0.1〜1.5%、Al:0.01〜0.10%、Ti:0.01〜0.10%、B:0.0003〜0.0060%、Nd:0.001〜0.050%、N:0.0010〜0.010%を含有し、残部が鉄及び不純物からなり、不純物におけるP及びSが、P:0.015%以下、S:0.015%以下である。また、本発明に係る冷間鍛造部品用鋼では、Mn及びPの含有量[質量%]が、Mn×P≦1.5×10−2の関係を満たすことが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、冷間鍛造部品用鋼に関するものである。
冷間鍛造(転造も含む。)は、製品の表面肌や寸法精度が良く、熱間鍛造に比べて製造コストが低く、歩留まりも良好であるため、ボルト、ギア部品、シャフトをはじめとする多くの分野に適用されている。これらの機械部品等の素材には、従来、JIS G 4051、JIS G 4052、JIS G 4053などの機械構造用炭素鋼鋼材、構造用鋼材、機械構造用合金鋼鋼材が用いられる。冷間鍛造部品用鋼は、例えば、熱間圧延によって製造される棒鋼などである。
従来の中炭素の炭素鋼や合金鋼は、圧延ままの硬度が高く、延性が不足しているため、ボルト等の部品に成形する際に割れを生じたり、冷間鍛造工具が著しく消耗してコスト高となったりする等の問題がある。そのため、冷間鍛造を行う前に、焼鈍や球状化処理を行って冷間鍛造性を確保し、冷間鍛造後に、焼入れ、焼戻しなどの調質熱処理を施して、部品の機械特性を向上させている。これらの熱処理のうち、特に、冷間鍛造前に行う焼鈍や球状化処理については、多大な製造コストを要するため、省略を可能とする素材及びプロセスが求められている。
そこで、焼鈍や球状化処理を省略するために、C、Cr、Mo等の合金元素量を低減して、熱間圧延ままでの硬度の低下及び延性の向上を図り、焼入れ性の低下を微量のBの添加によって補う、いわゆる低炭素ボロン鋼が提案されている(例えば、下記の特許文献1〜3を参照。)。Bが鋼中の固溶Nと結合してBNが生成すると、Bの持つ焼入れ性向上効果が失われてしまうため、かかる低炭素ボロン鋼では、Tiを添加し、TiNを析出させて鋼中のNを固定し、BNの生成を抑制することが必要とされる。
一方、低炭素ボロン鋼は、高強度を得るために低温での焼戻しを行うことが必要になり、耐遅れ破壊特性が低下するという問題がある。低炭素ボロン鋼を高強度部品に適用するため、鋼中の不純物を低減し、合金元素の添加量を制御することによって、冷間鍛造性と耐遅れ破壊特性とを両立させた鋼が提案されている(例えば、下記の特許文献4、5を参照。)。耐遅れ破壊特性は、これらの技術によって、ある程度向上するものの、部品の形状や使用環境によっては遅れ破壊の発生が懸念される。
特開平5−339676号公報 特公平5−63524号公報 特開昭61−253347号公報 特開平8−60245号公報 特開平11−92868号公報
本発明は、冷間鍛造前の焼鈍や球状化焼鈍の省略が可能であり、冷間鍛造性に優れ、かつ、焼入れ、焼戻しなどの調質熱処理によって高強度化した機械部品等の耐遅れ破壊特性を確保することができる、冷間鍛造部品用鋼を提供するものである。
本発明者らは、冷間鍛造性を確保し、高強度かつ耐遅れ破壊特性に優れた冷間鍛造部品が得られるように、冷間鍛造部品用鋼の合金元素について検討を行った。その結果、熱間圧延ままでの冷間鍛造性を確保するために析出強化元素の添加を制限した場合、Pの粒界偏析を抑制することが特に重要であるという知見を得た。そして、コスト制約のためにPの含有を許容させるには、鋼中のPの粒界偏析を抑制するNdの添加が有効であることを見出した。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは、以下の通りである。
[1]質量%で、
C :0.22〜0.40%、
Si:0.01〜0.15%、
Mn:0.1〜1.5%、
Cr:0.1〜1.5%、
Al:0.01〜0.10%、
Ti:0.01〜0.10%、
B :0.0003〜0.0060%、
Nd:0.001〜0.050%、
N :0.0010〜0.010%
を含有し、残部が、鉄及び不純物からなり、
不純物におけるP及びSが、
P :0.015%以下、
S :0.015%以下
である、冷間鍛造部品用鋼。
[2]Mn及びPの含有量[質量%]が、下記(式1)を満たす、上記[1]に記載の冷間鍛造部品用鋼。
Mn×P≦1.5×10−2 ・・・(式1)
[3]質量%で、
Nb:0.10%以下、
V :0.30%以下、
Mo:0.30%以下
のうち、1種又は2種以上を更に含有する、上記[1]又は[2]に記載の冷間鍛造部品用鋼。
[4]質量%で、
Ca:0.005%以下、
Mg:0.005%以下、
Zr:0.005%以下
のうち、1種又は2種以上を更に含有する、上記[1]〜[3]の何れか1つに記載の冷間鍛造部品用鋼。
[5]鋼のビッカース硬さHと、C、Si、Mn、Cr、Ti、Mo、Nbの含有量[質量%]とが、下記(式2)を満たす、上記[1]〜[4]の何れか1つに記載の冷間鍛造部品用鋼。
<273.5C+39.1Si+54.7Mn+30.4Cr+708Ti+136.7Mo+599Nb+20 ・・・ (式2)
なお、前記冷間鍛造部品用鋼が、Mo又はNbの少なくとも何れか一方を含有しない場合、上記式2において、該当する元素の含有量としてゼロを代入する。
[6]内部組織がフェライト分率40%以上のフェライト・パーライト組織である、上記[1]〜[5]の何れか1つに記載の冷間鍛造部品用鋼。
以上説明したように本発明によれば、冷間鍛造性を確保し、かつ高強度化させる、焼入れ、焼戻しなどの調質熱処理を施した冷間鍛造部品の耐遅れ破壊特性の低下を抑制し得る、冷間鍛造部品用鋼の提供が可能になり、産業上の貢献が極めて顕著である。
耐遅れ破壊特性の評価に用いた試験片を説明する図である。
以下に、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
(冷間鍛造部品用鋼について)
本発明の実施形態に係る冷間鍛造部品用鋼は、冷間鍛造によって製造される機械部品等の素材として用いられる。以下では、かかる冷間鍛造部品用鋼について、詳細に説明する。
まず、本発明の実施形態に係る冷間鍛造部品用鋼の化学成分について、説明する。本実施形態に係る冷間鍛造部品用鋼は、質量%で、C:0.22〜0.40%、Si:0.01〜0.15%、Mn:0.1〜1.5%、Cr:0.1〜1.5%、Al:0.01〜0.10%、Ti:0.01〜0.10%、B:0.0003〜0.0060%、Nd:0.001〜0.050%、N:0.0010〜0.010%、を含有し、残部が、鉄及び不純物からなり、不純物におけるP及びSが、P:0.015%以下、S:0.015%以下である。
[C:0.22〜0.40%]
Cは、鋼の強度を向上させる元素である。本実施形態では、冷間鍛造部品の強度を高めるため、C量を0.22%以上とする。C量は、好ましくは0.25%以上である。一方、C量が0.40%を超えると、冷間鍛造部品用鋼の冷間鍛造性が低下し、冷間鍛造部品の延性、靱性が低下し、遅れ破壊特性も劣化する傾向があるので、C量は、0.40%以下とする。C量は、好ましくは0.35%以下であり、より好ましくは0.30%以下である。
[Si:0.01〜0.15%]
Siは、鋼の脱酸に有効であり、また、鋼の強度、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を向上させる有用な元素である。本実施形態では、かかる効果を得るために、Si量を0.01%以上とする。一方、本発明では、Si量が0.15%を超えると、硬さの上昇によって冷間鍛造性が劣化するため、Si量を0.15%以下とする。Si量は、好ましくは0.10%以下であり、より好ましくは0.07%以下である。
[Mn:0.1〜1.5%]
Mnは、鋼の脱酸に有効であり、また、鋼の強度及び焼入れ性を向上させる有用な元素である。本実施形態では、かかる効果を得るためにMn量を0.10%以上とする。好ましくはMn量を0.40%以上とする。一方、本発明では、Mn量が1.50%を超えると、硬さの上昇によって冷間鍛造性が劣化するため、上限を1.50%以下とする。好ましくはMn量の上限を0.70%とする。
[Cr:0.1〜1.5%]
Crは、鋼の強度、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を向上させる有用な元素である。本実施形態では、かかる効果を得るためにCr量を0.1%以上とする。Cr量は、好ましくは0.2%以上である。一方、1.5%を超えるCrを添加すると、硬さの上昇によって冷間鍛造性が劣化するため、Cr量は、1.5%以下とする。Cr量は、好ましくは0.9%以下である。
[Al:0.01〜0.10%]
Alは、鋼の脱酸に有効であり、微細なAlやAlNを形成する元素であり、結晶粒の粗大化の抑制にも有効である。本実施形態では、かかる効果を得るために、0.01%以上のAlを添加する。一方、0.10%を超えるAlを添加しても効果が飽和するので、Al量は、0.10%以下とする。
[Ti:0.01〜0.10%]
Tiは、鋼中の固溶Nを固定する元素であり、本実施形態では、BNの生成を抑制して、Bによる焼入れ性向上効果を得るために、0.01%以上のTiを添加する。また、Tiは、微細なTi(CN)やTiCを形成し、結晶粒の粗大化の抑制にも有効な元素である。結晶粒が粗大化すると、粒界面積が減少し、粒界へのPの偏析が助長され、冷間鍛造部品の靱性や耐遅れ破壊特性が劣化することがある。冷間鍛造部品の結晶粒の粗大化を抑制するために、0.02%以上のTiを添加することが好ましい。一方、Ti量が0.10%を超えると、硬さの上昇によって冷間鍛造性が劣化するので、Ti量は、0.10%以下とする。Ti量は、好ましくは、0.05%以下である。また、鋼中の固溶Nを固定するためには、質量%で、N量の3.4倍以上のTi量を添加することが好ましい。
[B:0.0003〜0.0060%]
Bは、微量で鋼の焼入れ性を顕著に向上させる有用な元素である。本実施形態では、冷間鍛造部品の強度を高めるため、0.0003%以上のBを添加する。B量は、好ましくは、0.0010%以上である。一方、B量が0.0060%を超えると効果は飽和するので、B量を0.0060%以下とする。B量は、好ましくは、0.0030%以下である。
[Nd:0.001〜0.050%]
Ndは、本実施形態では最も重要な元素であり、Pを含む化合物を形成し、粒界に偏析するPを減少させる。熱間圧延ままの冷間鍛造部品用鋼の靱性及び冷間鍛造性を向上させるとともに、焼入れ、焼戻し後の冷間鍛造部品の結晶粒界を強化させ、耐遅れ破壊特性を向上させるために、本実施形態では、0.001%以上のNdを添加する。Nd量は、好ましくは0.005%以上である。一方、0.050%を超えてNdを添加すると効果が飽和するため、Nd量は0.050%以下とする。Nd量は、好ましくは0.030%以下である。
[N:0.0010〜0.010%]
Nは、AlNを形成することにより結晶粒の粗大化を抑制する効果があるため、0.0010%以上含有させる必要がある。一方、Nは、BNを生成してB添加による焼入れ性の向上効果を損なうため、N量を0.010%以下とする。N量は、好ましくは0.0050%以下である。
本実施形態に係る冷間鍛造部品用鋼の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は製造環境などから混入されるものであって、本実施形態の冷間鍛造部品用鋼の効果に悪影響を与えないで許容されるものを意味する。
[P:0.015%以下]
Pは、不純物として含有する。Pは、靱性を劣化させ、冷間鍛造時の変形抵抗を高める元素であり、含有量が0.015%を超えると冷間鍛造性が劣化するため、P量を0.015%以下に制限する。また、Pは、焼入れ、焼戻し後の冷間鍛造部品の結晶粒界を脆化させ、耐遅れ破壊特性を損なうことがあるので、P量を0.010%以下に制限することが好ましい。
[S:0.015%以下]
Pは、不純物として含有する。Sは、MnSを形成する元素であり、含有量が0.015%を超えると冷間鍛造時に割れを生じ、冷間鍛造性が劣化するため、S量を0.015%以下に制限する。S量は、好ましくは0.010%以下である。
本実施形態に係る冷間鍛造部品用鋼は、化学成分として、更に、Nb、V、Moの1種又は2種以上を含有してもよい。
[Nb:0.10%以下]
Nbは、微細な炭化物、窒化物、炭窒化物を形成し、特に、Tiとともに添加すると安定な(Nb、Ti)(CN)を形成し、結晶粒の粗大化を抑制する有用な元素である。かかる効果を得るには、0.003%以上のNbを含有させることが好ましい。Nbの含有量は、より好ましくは0.005%以上である。一方、0.10%を超えてNbを含有させても効果は飽和し、また、硬さの上昇によって冷間鍛造性が劣化することがあるため、Nb量は、0.10%以下とすることが好ましい。Nb量は、より好ましくは、0.030%以下である。
[V:0.30%以下]
Vは、微細な炭化物、窒化物を形成し、結晶粒の微細化に有効な元素である。かかる効果を得るには、0.01%以上のVを含有させることが好ましい。V量は、より好ましくは、0.10%以上である。一方、0.30%を超えてVを含有させても効果は飽和し、また、硬さの上昇によって冷間鍛造性が劣化することがあるため、V量は、0.30%以下とすることが好ましい。V量は、より好ましくは、0.20%以下である。
[Mo:0.30%以下]
Moは、鋼の強度及び焼入れ性を向上させる元素である。特に、MoはBの焼入れ性向上効果を非常に高める効果を有しており、かかる効果を得るには、0.01%以上のMoを含有させることが好ましい。一方、0.30%を超えてMoを含有させると、硬さの上昇によって冷間鍛造性が劣化することがあるため、Mo量は、0.30%以下とすることが好ましい。Mo量は、より好ましくは、0.15%以下である。
本実施形態に係る冷間鍛造部品用鋼は、化学成分として、更に、Ca、Mg、Zrの1種又は2種以上を含有してもよい。
[Ca:0.005%以下]
Caは脱酸元素であるほか、硫化物の形態制御に有効な元素である。MnSの圧延方向への伸長化を防止する形態制御の効果があり、加工性や靭性の劣化を改善する。かかる効果を得るには、0.0002%以上のCaを含有させることが好ましい。一方、0.005%を超えて含有させると粗大な介在物を生成し、かえって靭性を低下させるため、Caを含有する場合には、Ca量は0.005%以下とする必要がある。
[Mg:0.005%以下]
MgはCaと同様に硫化物の形態制御に有効な元素である。かかる効果を得るには、0.0002%以上のMgを含有させることが好ましい。一方、0.005%を超えて含有させても効果が飽和するため、Mgを含有する場合には、Mg量は0.005%以下とする必要がある。
[Zr:0.005%以下]
ZrはCaと同様に硫化物の形態制御に有効な元素である。かかる効果を得るには、0.0002%以上のZrを含有させることが好ましい。一方、0.005%を超えて含有させても効果が飽和するため、Zrを含有する場合には、Zr量は0.005%以下とする必要がある。
以上、本実施形態に係る冷間鍛造部品用鋼の化学成分について、具体的に説明した。
ここで、Mnは、Pの偏析を促進する傾向にあり、鋼中のP量だけでなくMn量も考慮することで、Pの偏析を更に抑制することができる。冷間鍛造部品の靱性や耐遅れ破壊特性を向上させるには、Mn及びPの含有量(単位:質量%)が、下記(式1)を満たすことが好ましい。
Mn×P ≦ 1.5×10−2 ・・・(式1)
冷間鍛造部品の耐遅れ破壊特性を更に向上させるには、Pの偏析を抑制することが好ましく、Mn×Pの値が小さいほど好ましい。本発明者らの検討の結果、冷間鍛造部品の耐遅れ破壊特性を向上させるには、下記(式3)を満たすことがより好ましいことがわかった。
Mn×P ≦ 1.0×10−2 ・・・(式3)
また、熱間圧延ままの冷間鍛造部品用鋼の硬さが上昇すると、冷間鍛造性が劣化する。そこで、硬さを上昇させるC、Si、Mn、Cr、Ti、及び、Moの含有量(単位:質量%)と、ビッカース硬さHと、が、下記(式2)を満たすと、冷間鍛造性がより良好になる。
<273.5C+39.1Si+54.7Mn+30.4Cr
+708Ti+136.7Mo+599Nb+20 ・・・(式2)
ここで、本実施形態に係る冷間鍛造用部品鋼が、Mo又はNbの少なくとも何れか一方を含有しない場合、上記式2において、該当する元素の含有量としてゼロを代入すればよい。
また、上記式2に適用される熱間圧延ままの冷間鍛造部品用鋼のビッカース硬さHは、JIS Z 2244に準拠した方法を用いて測定すればよい。
圧延鋼材の内部組織は、優れた冷間鍛造性を得るために、フェライト分率が40%以上であるフェライト・パーライト組織であることが好ましい。ここで、フェライトとは、パーライト組織に含まれるラメラセメンタイト間のフェライト相は含まれない。フェライト・パーライト組織とは、フェライトとパーライトの混合組織が面積率で全体の95%以上の組織であることを意味する。残部は、ベイナイト又はマルテンサイトである。
(冷間鍛造部品用鋼の製造方法について)
次に、本実施形態に係る冷間鍛造部品用鋼に用いられる鋼材の製造方法について説明する。
本実施形態に係る鋼の製造方法では、転炉、電気炉等の通常の方法によって鋼を溶製し、成分調整を行い、鋳造工程、必要に応じて分塊圧延工程を経て、圧延素材とする。得られた圧延素材を常法で熱間圧延することで、冷間鍛造用鋼を製造することができる。以下は、本発明の冷間鍛造用鋼の好ましい製造条件である。
分塊圧延工程の前に、鋳片を1200〜1350℃程度の温度に数時間保定する均熱拡散処理を行うと、偏析が軽減され、実部品での遅れ破壊特性が更に向上する。また、均熱拡散処理を行うと、鋳造工程で生じた粗大な析出物が鋼中に固溶し、次工程以降では、生成する析出物が微細になり、冷間鍛造部品用鋼及び冷間鍛造部品の特性が更に向上する。
また、熱間圧延を行う際には、圧延素材を1050℃以上の温度に加熱することが好ましい。加熱温度を1050℃以上にすると、TiC、Ti(CN)などの合金炭化物が鋼中に固溶し、熱間圧延後にTiC、Ti(CN)などの微細な粒子を析出させることができる。合金炭化物を固溶させる観点からは、加熱温度はできるだけ高温にすることが望ましい。加熱温度の好適範囲は、1150℃以上である。
次に、加熱した圧延素材を、線材又は棒鋼の形状に熱間圧延する。熱間圧延の仕上温度は、フェライト変態が開始する温度以上、900℃以下とすることが好ましい。熱間圧延後は、600℃以下の温度まで、2℃/s以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却速度が大きいと圧延材の硬さが上昇し、冷間鍛造性が劣化することがあるため、冷却速度は遅い方が望ましく、冷却速度の好適範囲は、1℃/s以下である。また、熱間圧延後、低い温度域、例えば500℃以下まで、2℃/s以下の冷却速度で徐冷すると、冷間鍛造部品用鋼が軟質化し、冷間鍛造性を更に向上させることができる。
以上、本実施形態に係る冷間鍛造部品用鋼の製造方法について説明した。
以下に、実施例を示しながら、本発明に係る冷間鍛造部品用鋼について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、あくまでも本発明に係る冷間鍛造部品用鋼の一例にすぎず、本発明に係る冷間鍛造部品用鋼が下記の例に限定されるものではない。
本実施例では、表1に示す成分組成を有する鋼を溶製した。ここで、表1中の下線は、本発明の成分組成から外れていることを示す。また、表中のP及びSは、不純物として検出されたP及びSの含有量を示し、意図的に添加したものではない。
Figure 2015212414



溶製した鋼を表2に示した条件で熱間圧延して、φ20mmの丸棒(冷間鍛造用鋼)を製造し、その後に表2に示した条件で焼入れ、焼戻しを行った。焼入れ、焼戻しを行う前の、熱間圧延ままの冷間鍛造用鋼の硬さと冷間鍛造性は、得られた丸棒を用いて評価し、引張強さ及び耐遅れ破壊特性は、丸棒に焼入れ、焼戻しを施して評価した。
冷間鍛造用鋼の熱間圧延ままのビッカース硬さHは、JIS Z 2244に準拠して測定した。測定箇所は、φ20mmの丸棒のL断面(圧延方向に平行な断面)が現れるように切断、研磨し、直径の1/4の位置にて、H10(98.07N)を測定した。
冷間鍛造用鋼は、熱間圧延ままで組織観察を実施した。表2に示した熱間圧延後のフェライト分率は、鏡面研磨後、ナイタール液でエッチングを行い、光学顕微鏡で上記の硬さ測定位置に相当する領域の5視野を500倍で観察して写真を撮影し、それを画像解析して求めた。なお、いずれの鋼も、フェライトとパーライトの混合組織の面積率は、95%以上であった。
冷間鍛造性は、冷間据込み試験で評価した。冷間据込み試験は、φ20mmの丸棒(焼入れ前)から直径14mm、高さ21mmで切欠き付き(深さ:0.8mm、角度:30°、R:0.12mm)の試験片を採取して行った。端面を拘束し、冷間で圧縮率が65%及び70%の圧縮試験を行った。表2の冷間鍛造性の欄には、き裂が発生した水準を記載しており、いずれもき裂が発生しなかった場合は、「>70」を示した。
焼入れ、焼戻し後の引張強さは、引張試験で評価し、耐遅れ破壊特性は、水素チャージを行いながら、定荷重を負荷した際に破断しない最大の負荷応力と引張強さとの比(遅れ破壊強度比)で評価した。水素チャージは、pH3.0の希硫酸中で、電流密度1.0mA/cmの陰極電解条件で行った。引張試験は、JIS Z 2241に準拠して、径が6mmの2号の丸棒引張試験片を採取して、実施した。また、遅れ破壊試験特性は、図1に示す環状切欠き付き遅れ破壊試験片を用いて評価した。
得られた結果を、表2に示す。
Figure 2015212414
No.1〜41は、65%以下の圧縮では割れが発生せず、引張強さは1200MPa以上であり、遅れ破壊強度比は0.50以上であり、冷間鍛造性、引張強さ及び耐遅れ破壊特性の全てが優れている。また、(式1)を満足すると耐遅れ破壊特性がより良好になり、(式2)を満足する、又は内部組織のフェライト・パーライト組織が40%以上だと冷間鍛造性がより向上している。一方、No.42〜54は、成分の何れか本発明の範囲外の比較例であり、冷間鍛造性、引張強さ及び耐遅れ破壊特性の何れかが劣っている。
No.43、44、46、49、51は、それぞれ、C、Si、Mn、Cr、Tiが多く、冷間鍛造性が低下している。例No.42、45,48は、それぞれ、C、Mn、Crが少なく、引張強さが低下している。
No.47は、Pの含有量が多く、Mn%×P%も大きくなり、冷間鍛造性及び耐遅れ破壊特性が低下している。No.50はTi量が少なく、No.52はBを含有していないため、B添加による焼入れ性の向上の効果が不十分になり、引張強さが低下している。
No.53、54は、Ndが含有されておらず、冷間鍛造性及び耐遅れ破壊特性が低下している。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C :0.22〜0.40%、
    Si:0.01〜0.15%、
    Mn:0.1〜1.5%、
    Cr:0.1〜1.5%、
    Al:0.01〜0.10%、
    Ti:0.01〜0.10%、
    B :0.0003〜0.0060%、
    Nd:0.001〜0.050%、
    N :0.0010〜0.010%
    を含有し、残部が、鉄及び不純物からなり、
    不純物におけるP及びSが、
    P :0.015%以下
    S :0.015%以下
    である、冷間鍛造部品用鋼。
  2. Mn及びPの含有量[質量%]が、下記(式1)を満たす、請求項1に記載の冷間鍛造部品用鋼。

    Mn×P ≦ 1.5×10−2 ・・・(式1)
  3. 質量%で、
    Nb:0.10%以下、
    V:0.30%以下、
    Mo:0.30%以下
    のうち、1種又は2種以上を更に含有する、請求項1又は2に記載の冷間鍛造部品用鋼。
  4. 質量%で、
    Ca:0.005%以下、
    Mg:0.005%以下、
    Zr:0.005%以下
    のうち、1種又は2種以上を更に含有する、請求項1〜3の何れか1項に記載の冷間鍛造部品用鋼。
  5. 鋼のビッカース硬さHと、C、Si、Mn、Cr、Ti、Mo、Nbの含有量[質量%]とが、下記(式2)を満たす、請求項1〜4の何れか1項に記載の冷間鍛造部品用鋼。

    <273.5C+39.1Si+54.7Mn+30.4Cr
    +708Ti+136.7Mo+599Nb+20 ・・・(式2)

    なお、前記冷間鍛造部品用鋼が、Mo又はNbの少なくとも何れか一方を含有しない場合、上記式2において、該当する元素の含有量としてゼロを代入する。
  6. 内部組織が、フェライト分率40%以上のフェライト・パーライト組織である、請求項1〜5の何れか1項に記載の冷間鍛造部品用鋼。
JP2015065055A 2014-04-16 2015-03-26 冷間鍛造部品用鋼 Expired - Fee Related JP6459704B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015065055A JP6459704B2 (ja) 2014-04-16 2015-03-26 冷間鍛造部品用鋼

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014084634 2014-04-16
JP2014084634 2014-04-16
JP2015065055A JP6459704B2 (ja) 2014-04-16 2015-03-26 冷間鍛造部品用鋼

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015212414A true JP2015212414A (ja) 2015-11-26
JP6459704B2 JP6459704B2 (ja) 2019-01-30

Family

ID=54696822

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015065055A Expired - Fee Related JP6459704B2 (ja) 2014-04-16 2015-03-26 冷間鍛造部品用鋼

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6459704B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3783127A4 (en) * 2018-04-20 2021-09-15 Nippon Steel Corporation STEEL, MACHINE COMPONENT AND CONNECTING ROD
CN117512468A (zh) * 2023-12-29 2024-02-06 山西建龙实业有限公司 一种免退火高强紧固件用ML35TiB-M冷镦钢及其制备方法

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0978183A (ja) * 1995-09-07 1997-03-25 Sumitomo Metal Ind Ltd 高周波焼入れ用高靱性熱間鍛造非調質鋼
JPH10158786A (ja) * 1996-11-28 1998-06-16 Sumitomo Metal Ind Ltd 疲労強度と靭性に優れた肌焼鋼
JPH10195599A (ja) * 1997-01-09 1998-07-28 Sumitomo Metal Ind Ltd 強度と靱性に優れた快削非調質鋼
US5922145A (en) * 1996-11-25 1999-07-13 Sumitomo Metal Industries, Ltd. Steel products excellent in machinability and machined steel parts
JP2002069577A (ja) * 2000-08-30 2002-03-08 Nippon Steel Corp 鍛造性と製品靭性に優れた冷・温間鍛造用鋼とその製造方法
JP2006083448A (ja) * 2004-09-17 2006-03-30 Sumitomo Metal Ind Ltd 微量油潤滑加工用鋼材
JP2006241572A (ja) * 2005-03-07 2006-09-14 Sumitomo Metal Ind Ltd 機械構造用鋼
JP2013234349A (ja) * 2012-05-08 2013-11-21 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corp 冷間加工性に優れた鋼線材・棒鋼とその製造方法

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0978183A (ja) * 1995-09-07 1997-03-25 Sumitomo Metal Ind Ltd 高周波焼入れ用高靱性熱間鍛造非調質鋼
US5922145A (en) * 1996-11-25 1999-07-13 Sumitomo Metal Industries, Ltd. Steel products excellent in machinability and machined steel parts
JPH10158786A (ja) * 1996-11-28 1998-06-16 Sumitomo Metal Ind Ltd 疲労強度と靭性に優れた肌焼鋼
JPH10195599A (ja) * 1997-01-09 1998-07-28 Sumitomo Metal Ind Ltd 強度と靱性に優れた快削非調質鋼
JP2002069577A (ja) * 2000-08-30 2002-03-08 Nippon Steel Corp 鍛造性と製品靭性に優れた冷・温間鍛造用鋼とその製造方法
JP2006083448A (ja) * 2004-09-17 2006-03-30 Sumitomo Metal Ind Ltd 微量油潤滑加工用鋼材
JP2006241572A (ja) * 2005-03-07 2006-09-14 Sumitomo Metal Ind Ltd 機械構造用鋼
JP2013234349A (ja) * 2012-05-08 2013-11-21 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corp 冷間加工性に優れた鋼線材・棒鋼とその製造方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3783127A4 (en) * 2018-04-20 2021-09-15 Nippon Steel Corporation STEEL, MACHINE COMPONENT AND CONNECTING ROD
CN117512468A (zh) * 2023-12-29 2024-02-06 山西建龙实业有限公司 一种免退火高强紧固件用ML35TiB-M冷镦钢及其制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6459704B2 (ja) 2019-01-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6573033B2 (ja) 耐摩耗鋼板および耐摩耗鋼板の製造方法
RU2674796C2 (ru) Высокотвердый горячекатаный стальной продукт и способ его производства
US8617462B2 (en) Steel for oil well pipe excellent in sulfide stress cracking resistance
US10837080B2 (en) Rolled steel bar or rolled wire rod for cold-forged component
US20160237515A1 (en) Hot-rolled steel sheet having excellent surface hardness after carburizing heat treatment and excellent cold workability
JP2008202124A (ja) 高強度ばね用鋼線及び高強度ばね並びにそれらの製造方法
US10829842B2 (en) Rolled steel bar or rolled wire rod for cold-forged component
JP5655366B2 (ja) ベイナイト鋼
JP6232324B2 (ja) 高強度で耐食性に優れたスタビライザー用鋼とスタビライザーおよびその製造方法
JP2018059188A (ja) 耐摩耗鋼板および耐摩耗鋼板の製造方法
JPWO2017115842A1 (ja) 肌焼鋼、浸炭部品および肌焼鋼の製造方法
JP2018059187A (ja) 耐摩耗鋼板および耐摩耗鋼板の製造方法
JP2018059189A (ja) 耐摩耗鋼板および耐摩耗鋼板の製造方法
JP5262740B2 (ja) 浸炭時の粗大粒防止特性と疲労特性に優れた肌焼鋼とその製造方法
JP5565102B2 (ja) 機械構造用鋼およびその製造方法
JP2006274373A (ja) 靭性および冷間加工性に優れた高強度ねじ用鋼および高強度ねじの製造方法
JP6679935B2 (ja) 冷間加工部品用鋼
WO2018061101A1 (ja)
JP2017066460A (ja) 時効硬化性鋼
JP6459704B2 (ja) 冷間鍛造部品用鋼
JP6390685B2 (ja) 非調質鋼およびその製造方法
US11098394B2 (en) Rolled wire rod
WO2013084265A1 (ja) 機械構造用鋼およびその製造方法
JP2019151866A (ja) 非調質鋼およびその製造方法
JP2010280978A (ja) 直接切削用非調質棒鋼

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20171106

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20181119

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20181204

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20181217

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6459704

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees