以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、遊休水田(以下、単に「水田」ともいう。)に適用し、養殖対象とする魚として、ドジョウを適用した場合について説明する。
まず、図1〜図5を参照して、本実施の形態に係る魚養殖支援具10の構成を説明する。なお、図1は、本実施の形態に係る魚養殖支援具10の構成を示す平面図である。また、図2は、図1のA−A線断面図であり、図3は、図1の矢印B方向に見た魚養殖支援具10の側面図である。さらに、図4は、図3の点線で囲まれた矩形の領域Rを拡大した側面図であり、図5は、後述する重り部42の説明に供する図である。なお、図1では、錯綜を回避するために、魚養殖支援具10の構成部材を一部省略した形で示している。
図1に示すように、本実施の形態に係る魚養殖支援具10は、水田12に複数個(本実施の形態では、9個。)配置されている。ここで、本実施の形態に係る魚養殖支援具10は、水田12に、予め定められた第1の方向(図1の矢印aの方向)および当該第1の方向に交差(本実施の形態では、直交)する第2の方向(図1の矢印bの方向)に各々予め定められた間隔を空けて、平面視マトリクス状に配置されている。
このように、本実施の形態では、水田12に9個の魚養殖支援具10が平面視マトリクス状に配置されているが、これに限らず、水田12における魚養殖支援具10の数や配置状態は、水田12の広さや地形等に応じて適宜変えてもよいことは言うまでもない。
また、図1および図2に示すように、水田12には、不図示のバルブが開閉されることにより水田12への給水を開始および停止する給水部14、水田12から排水する排水部16、および水田12の内側の側面からの漏水を防止するための漏水防止部18が設けられている。なお、本実施の形態では、漏水防止部18として、ビニールのシートを適用しているが、これに限らない。例えば、漏水防止部18として、ポリエチレンのシート等、他の漏水を防止する部材を適用してもよい。特に、漏水防止部18として、白色系の部材を適用することが好ましい。これにより、水田12の水の透明度が確認しやすくなる。
図2および図3に示すように、本実施の形態に係る魚養殖支援具10は、長手方向の両端部近傍の水田12の底に、固定部20を各々備えている。本実施の形態に係る固定部20は、直方体や立方体等の八面体の形状とされており、その外周面の1つの面にフック20Aが設けられ、フック20Aが設けられた面が上面となるように水田12の底に設けられている。なお、本実施の形態では、固定部20として、レンガを適用しているが、これに限らない。例えば、固定部20として、コンクリートブロックや鉄等の水に浮かない他の部材を適用してもよい。また、固定部20の形状として、八面体の形状ではなく、円柱状や三角柱状等の他の形状を適用してもよいことは言うまでもない。
また、本実施の形態に係る魚養殖支援具10は、長尺状の浮き部22を備えている。図2および図3に示すように、本実施の形態に係る浮き部22は、各々短手方向に切断した場合の断面の形状が円形の一対の浮力管24A、浮力管24B、一対の蓋部26、および一対の継手28を備えている。なお、以下では、浮力管24A、24Bを区別する必要がない場合は、符号の末尾のアルファベットを省略して説明する。
本実施の形態に係る浮力管24、蓋部26、および継手28は、内部が空洞とされており浮力管24および継手28は両端が開放されており、蓋部26は一端が開放され、かつ他端が閉塞されている。また、浮力管24の外径と蓋部26および継手28の内径とが略同一とされている。
そして、本実施の形態に係る浮き部22では、浮力管24Bの両端が、各々一対の継手28の各々の一端に差し込まれ、一対の浮力管24Aの各々の一端が、各々一対の継手28の各々の他端にそれぞれ差し込まれている。また、一対の浮力管24Aの各々の他端が、一対の蓋部26の各々の開放されている一端に差し込まれている。以上の構成により、本実施の形態に係る浮き部22は、外周部が密閉された状態となり、内部の空洞に水が入ることがないため、水に浮く。
なお、本実施の形態では、浮力管24、蓋部26、および継手28として、薄肉の塩化ビニル管(VU管)を適用しているが、これに限らない。例えば、浮力管24、蓋部26、および継手28として、厚肉の塩化ビニル管(VP管)や木材等を適用してもよいし、水に浮く部材であれば、他の部材を適用してもよいし、内部が空洞とされていなくてもよい。また、本実施の形態では、浮き部22として、浮力管24、蓋部26、および継手28が連結された部材を適用しているが、これに限らない。例えば、浮き部22として、両端が閉塞された1本のVU管等の単体の構成の部材を適用してもよい。
一方、本実施の形態に係る一対の浮力管24Aは、各々外周面に丸環30を備えている。図3および図4に示すように、本実施の形態に係る丸環30は、各々結束バンド32により一対の浮力管24Aに対して固定されている。なお、本実施の形態では、丸環30として、ステンレス製の丸環を適用しているが、これに限らない。例えば、丸環30として、プラスチック製や木材製等の他の材料のものを適用してもよい。
そして、本実施の形態に係る浮き部22では、固定部20のフック20Aと丸環30とが、複数の環状の部材が連結された鎖34により連結されている。従って、本実施の形態に係る浮き部22は、固定部20により水田12の底に対して固定され、鎖34の長さの範囲内で水田12の水中を浮遊することができる。また、鎖34の長さは、環状の部材を増やしたり、減らしたりすることにより、可変となっている。なお、本実施の形態では、鎖34として、ステンレス製のものを適用しているが、これに限らない。例えば、鎖34として、プラスチック製等の他の材料のものを適用してもよい。また、本実施の形態では、フック20Aと丸環30とを連結する部材として、鎖34を適用しているがこれに限らない。例えば、当該連結する部材として、鋼線等を適用してもよいし、ゴムやばね等の弾性部材を適用してもよい。
また、本実施の形態に係る一対の浮力管24Aは、外周面の周方向における丸環30の反対側の位置に各々断面視円形状の継手36を備えている。
一方、本実施の形態に係る浮き部22は、水田12の水面上に吹く風を受けるための変形部38を備えている。図2および図3に示すように、本実施の形態に係る変形部38は、略矩形状で、かつ平板状の風受板38Aと、当該風受板38Aに長手方向の一端部が溶接され、短手方向に切断した場合の断面の形状が円形の長尺状の支持部38Bと、を備えている。
本実施の形態に係る魚養殖支援具10では、支持部38Bの外径と継手36の内径とが略同一とされている。そして、支持部38Bの一端が、継手36の一端に差し込まれる。
なお、本実施の形態では、風受板38Aの材料として、塩化ビニルを適用しているが、これに限らない。例えば、風受板38Aの材料として、アクリル等の他のプラスチックや木材等を適用してもよい。また、本実施の形態では、支持部38Bとして、VU管を適用しているが、これに限らない。例えば、支持部38Bとして、VP管や木材等の他の部材を適用してもよい。また、本実施の形態では、風受板38Aの形状として、平板状の正面視矩形を適用しているが、これに限らない。例えば、風受板38Aの形状として、正面視円形や楕円形、矩形以外の多角形等の他の形状を適用してもよいことは言うまでもない。
一方、本実施の形態に係る魚養殖支援具10は、浮力管24Bに、外周面における周方向の位置が浮力管24Aの丸環30の位置に対応する位置で、かつ長手方向の端部近傍の位置に重り39が設けられている。この重り39により、風が吹いていない状態で、変形部38が直立する。なお、本実施の形態では、重り39として、鉄片を適用しているが、これに限らず、例えば、重り39として、銅片等の他の金属片やコンクリートブロック等の他の水に沈む部材を適用してもよい。
また、本実施の形態に係る魚養殖支援具10は、矩形状で、かつ柔軟性を有するシート状の被覆部40を備えている。本実施の形態に係る魚養殖支援具10では、被覆部40が浮き部22における浮力管24Bの上面に対して中間部が巻き掛けられた状態で、かつ当該中間部が浮力管24Bの胴部に対して不図示の結束バンドやターンクリップ等の固定部材により固定されている。なお、具体的には、本実施の形態では、被覆部40として、全面に網目を有するビニールのネットを適用している。
本実施の形態に係る魚養殖支援具10は、被覆部40の一対の対向する両端部(図2および図3の下端部)に、長尺状の重り部42の重り管42Aが各々不図示の結束バンドやターンクリップ等の固定部材により固定されている。本実施の形態に係る重り部42は、図5に示すように、一対の重り管42A、一対の補助管42B、および二対の継手42Cを備えている。なお、図5(A)は、図3の矢印E方向に見た重り部42の正面図であり、図5(B)は重り部42の平面図である。また、図5では、錯綜を回避するために、重り部42以外の魚養殖支援具10の各構成部材を省略した形で示している。
本実施の形態に係る魚養殖支援具10では、一対の重り管42Aおよび一対の補助管42Bは、長尺状で、浮力管24と同様に内部が空洞とされ、両端が開放されている。また、本実施の形態に係る継手42Cは、平面視略L字状で、内部が空洞とされ、両端が開放されている。また、重り管42Aおよび補助管42Bの外径と継手42Cの内径とが略同一とされている。そして、重り管42Aの両端が一対の継手42Cの一端に差し込まれ、一対の補助管42Bの両端が一対の継手42Cの他端に差し込まれる。
なお、本実施の形態に係る魚養殖支援具10では、重り管42A、補助管42B、および継手42Cとして、VU管を適用しているが、これに限らない。例えば、重り管42A、補助管42B、および継手42Cとして、VP管等の他の水に浮く部材を適用してもよいし、棒鋼等の水に浮かない部材を適用してもよい。なお、本実施の形態では、図5(B)に示すように、重り管42A、補助管42B、および継手42Cの少なくとも1つに穴42Dが設けられ、当該穴42Dから重り部42の内部に水が流入することにより、重り部42が水に沈む。
また、本実施の形態に係る魚養殖支援具10では、各部材が連結された状態での重り部42の短手方向(図2の左右方向)の長さが、浮力管24Bの外径より長くされている。従って、本実施の形態に係る被覆部40は、図2に示すように、水田12の底に近づくほど対向する部分の間隔が徐々に広くなっている。
また、本実施の形態に係る魚養殖支援具10では、浮き部22が水に浮き、被覆部40の下端部(重り部42)が水田12の底から離間している。従って、本実施の形態に係る被覆部40は、長手方向の両端部および水田12の底に対向する部分が開口部となっており、当該開口部を介してドジョウDが被覆部40の内側に入ることができる。
次に、図6を参照して、本実施の形態に係る排水部16の構成について説明する。なお、図6(A)は、図1の矢印C方向に見た排水部16の側面図であり、図6(B)は、図6(A)の矢印F方向に見た排水部16の正面図である。
図6に示すように、本実施の形態に係る排水部16は、正面視略T字状の流入部16A、長尺状の排水管16B、および側面視略L字状の継手16Cを備えている。本実施の形態に係る流入部16A、排水管16B、および継手16Cも内部が空洞とされており、各端部が開放されている。また、排水管16Bの外径と流入部16Aおよび継手16Cの内径とが略同一とされている。そして、図6に示すように、流入部16A、排水管16B、および継手16Cが連結されている。
なお、本実施の形態では、流入部16A、排水管16B、および継手16Cとして、VP管を適用しているが、これに限らない。例えば、流入部16A、排水管16B、および継手16Cとして、VU管やステンレス管等を適用してもよい。
また、本実施の形態に係る排水部16では、流入部16Aの水が流入する流入口16DにドジョウDが通過できない大きさの網目を有するネット16Eが設けられている。これにより、ドジョウDが排水部16を通って、水田12の外側へ移動することが防止される。
さらに、本実施の形態に係る排水部16は、図6(B)に示すように、長手方向が水平方向の排水管16Bを回転軸として矢印G方向に回動可能とされている。この構成により、当該回動によって、水田12の底に対する水面の高さ(以下、「水位」という。)を細かく調整することができる。
本実施の形態では、排水部16を回動させることにより、ドジョウDの成長に合わせて複数の段階で水田12の水位を変えている。本実施の形態では、一例として、図7に示すように、3段階で水田12の水位を変えており、ドジョウDが成長するに従い、図7(A)に示す第1の水位、図7(B)に示す第2の水位、図7(C)に示す第3の水位に順次増水させる。なお、図2および図3に示した水位が、上記第3の水位に対応する。
また、本実施の形態では、水位を、ドジョウDの体長が約3mm〜約3cmの期間は上記第1の水位とし、当該体長が約3cm〜約5cmの期間は上記第2の水位とし、当該体長が約5cm〜の期間は上記第3の水位としている。また、本実施の形態では、上記第1の水位を約20cmとし、上記第2の水位を約30cmとし、上記第3の水位を約40cmとしている。さらに、本実施の形態では、図7(A)、(B)に示すように、水位が上記第1の水位および第2の水位の場合、浮き部22が水面に浮いた状態で鎖34が伸張した状態となるように、水位が上記第3の水位の場合より鎖34の長さを各々短くしている。
そして、本実施の形態に係る魚養殖支援具10では、水位が上記第3の水位とされている場合に前述した変形部38が浮力管24Aの継手36に各々装着される。
このように、本実施の形態では、ドジョウDの成長に合わせて水田12の水位を変えているが、これに限らず、例えば、ドジョウDの養殖期間や水田12の水温、気温等の環境条件等に応じて、水田12の水位を変えてもよい。また、本実施の形態では、水田12の水位を3段階で変えているが、これに限らず、水田12の水位を2段階で変えてもよいし、当該水位を4段階以上で変えてもよいことは言うまでもない。
また、本実施の形態では、水位が上記第3の水位とされている場合に変形部38が継手36に装着されているが、これに限らない。例えば、水位が上記第1の水位とされている場合に変形部38が継手36に装着されてもよいし、水位が上記第2の水位とされている場合に変形部38が継手36に装着されてもよい。
次に、図8を参照して、変形部38が風を受けた場合における被覆部40の動きについて説明する。なお、図8(A)は、変形部38が風を受けてない場合における魚養殖支援具10の正面図であり、図8(B)は、変形部38が図8(A)の左から右への方向に風を受けた場合における魚養殖支援具10の正面図である。
本実施の形態に係る被覆部40は、図8(A)に示す変形部38が直立した状態で、変形部38が風を受けた場合、変形部38が受けた風の方向および風力に応じて変形し、結果的に図8(B)に示す状態となる。そして、本実施の形態に係る被覆部40は、風が収まると重り39の作用により比較的短時間で最終的に変形部38が直立した状態(図8(A)に示す状態)に戻る。
このように、本実施の形態では、水田12の水面上の風や、水田12の水中における水流等に応じて被覆部40が動いて変形するため、水田12の水が攪拌され、上記死水領域の発生が低減される。
次に、図9を参照して、本実施の形態に係る魚養殖支援具10を用いた魚の養殖を行う際の作業の流れを説明する。なお、図9は、当該作業を行う作業者によって実行される作業の流れを示すフローチャートである。また、本実施の形態では、当該作業が、水田12に水が蓄えられていない状態で開始されるものとする。
まず、同図のステップ100では、作業者は、前述したように、水田12の底に複数の固定部20を設置した後、次のステップ102にて、作業者は、前述したように、浮き部22と固定部20を鎖34で連結する。次のステップ104では、作業者は、前述したように、浮き部22の浮力管24Bに対して被覆部40を固定し、次のステップ106にて、作業者は、前述したように、被覆部40に対して重り部42の重り管42Aを固定する。
次のステップ108では、作業者は、流入口16Dの位置が上記第1の水位に対応する位置となるように排水部16を回動させる。次のステップ110では、作業者は、給水部14のバルブを開けることにより水田12への給水を開始し、水位が上記第1の水位になった時点で当該バルブを閉めることにより水田12への給水を停止する。これにより、流入口16Dの位置を上記第1の水位に対応する位置としているので、例えば、給水部14のバルブを閉めるタイミングが遅れたとしても、水田12の水位を上記第1の水位とすることができる。また、このステップ108およびステップ110の処理により、魚養殖支援具10は、図7(A)に示した状態となる。
次のステップ112では、作業者は、予め定められた数および体長のドジョウDの雄と雌の仔魚を水田12に放流する。なお、本実施の形態では、上記予め定められた数として、水田12の面積が広くなるほど多い数(一例として、1m2当り雄、雌ともに2匹ずつ)を適用しているが、これに限らない。例えば、水田12に生息するドジョウDの餌料の量、ドジョウDの放流の時期等に応じて、上記予め定められた数を適宜決定してもよいことは言うまでもない。また、本実施の形態では、上記予め定められた体長として、約3mmを適用しているが、これに限らない。例えば、ドジョウDの養殖期間、ドジョウDの放流の時期等に応じて、上記予め定められた体長を適宜決定してもよいことも言うまでもない。
次のステップ114では、作業者は、ドジョウDが予め定められた大きさまで成長するまでの期間として予め定められた期間待機する。なお、本実施の形態では、作業者は、ドジョウDの体長が約3cmになるまでの期間(本実施の形態では、約3週間)待機する。
次のステップ116では、作業者は、流入口16Dの位置が上記第2の水位に対応する位置となるように排水部16を回動させる。次のステップ118では、作業者は、給水部14のバルブを開けることにより水田12への給水を開始し、水位が上記第2の水位になった時点で当該バルブを閉めることにより水田12への給水を停止する。これにより、水田12の水位を上記第2の水位とすることができる。
次のステップ120では、作業者は、浮き部22の水田12の深さ方向に対する中央部の位置が、水面と略同一の位置となる状態となるように、鎖34を延長する。以上のステップ116〜ステップ120の処理により、魚養殖支援具10は、図7(B)に示した状態となる。次のステップ122では、作業者は、ドジョウDが予め定められた大きさまで成長するまでの期間として予め定められた期間待機する。なお、本実施の形態では、作業者は、ドジョウDの体長が約5cmになるまでの期間(本実施の形態では、約4週間)待機する。
次のステップ124では、作業者は、前述したように、変形部38を浮き部22に装着する。次のステップ126では、作業者は、流入口16Dの位置が上記第3の水位に対応する位置となるように排水部16を回動させる。次のステップ128では、作業者は、給水部14のバルブを開けることにより水田12への給水を開始し、水位が上記第3の水位になった時点で当該バルブを閉めることにより水田12への給水を停止する。これにより、水田12の水位を上記第3の水位とすることができる。
次のステップ130では、作業者は、被覆部40が全部水没した状態(図7(C)に示した状態)となるように、鎖34を延長する。以上のステップ124〜ステップ130の処理により、魚養殖支援具10は、図2、図3、および図7(C)に示した状態となる。
次のステップ132では、作業者は、ドジョウDの養殖を終了するタイミングが到来するまで待機し、当該タイミングが到来した時点で、本作業を終了する。なお、本実施の形態では、当該タイミングとして、ドジョウDが市場に出荷できる程度の体長(本実施の形態では、約12cm)まで成長したタイミングを適用しているが、これに限らない。また、作業者は、以上の作業の後、ドジョウDを水田12から回収し、回収したドジョウDを市場に出荷する作業を行う。
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、下端部に魚(本実施の形態では、ドジョウD)が養殖される水域(本実施の形態では、水田12)の底に固定される固定部(本実施の形態では、固定部20)を有すると共に、上端部に支持面を有する支持部(本実施の形態では、浮き部22)により、固定部が水域の底に固定された支持部の支持面を対向する両端部の中間部により被覆した状態で、支持面で支持されて、両端部が垂れ下がる柔軟性を有するシート状の被覆部(本実施の形態では、被覆部40)が支持される。そして、張力付与部(本実施の形態では、重り部42)により、被覆部が支持面で支持された状態で、被覆部の対向する部分の間に開口部が形成され、かつ被覆部の内側に魚が生息する領域が形成されるように、被覆部の両端部の各々に対して下方に張力が付与されるので、生産性の高い養殖を行うことができる。
また、本実施の形態では、前記被覆部を、柔軟性を有するシート状の部材としているので、設置される場所の地形および水域の水深等に合わせて、簡易に被覆部を魚が被覆部の内側に入りやすい形状とすることができると共に、より生産性の高い養殖を行うことができる。
また、本実施の形態では、前記被覆部を、前記水域に生息する植物プランクトンが光合成を行うための光エネルギーを透過するものとしているので、より生産性の高い養殖を行うことができる。
また、本実施の形態では、前記被覆部が、少なくとも一部(本実施の形態では、全部)に網目を有しているので、当該被覆部の内側と外側との間の通気性を良くすることができる。
また、本実施の形態では、変形部(本実施の形態では、変形部38)が、少なくとも一部が前記水域の水面より上に位置され、当該少なくとも一部が風を受けることにより前記被覆部を変形させているので、電力を必要とせず、簡易に当該被覆部を変形させることができる。
また、本実施の形態では、前記支持部が、水に浮くフロートを有しているので、簡易に被覆部を支持することができる。
また、本実施の形態では、前記張力付与部が、水に沈む重りを有しているので、簡易に被覆部の対向する両端部の各々に対して下方に張力を付与することができる。
さらに、本実施の形態では、前記魚の成長に応じて給水し、前記水域への給水により前記水域の水深が深くなるほど、前記水域に設けられた状態での前記被覆部の前記中間部における前記水域の深さ方向の位置を高くしているので、より生産性の高い養殖を行うことができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
例えば、上記実施の形態では、変形部38が風を受けることにより被覆部40を変形させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、浮き部22に、変形部38に代えてモータを設け、当該モータの駆動により浮き部22を上記実施の形態と同様の方向に回動および稼動させることにより被覆部40を変形させる形態としてもよい。
また、本実施の形態では、被覆部40の形状として、矩形を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、被覆部40の形状として、円形や楕円形、矩形以外の多角形等の他の形状を適用してもよい。
また、上記実施の形態では、被覆部40として、網目を有するネットを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、被覆部40として、寒冷紗を適用してもよい。
また、上記実施の形態では、被覆部40の材料として、ビニールを適用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、被覆部40の材料として、ポリプロピレン、ポリエステル、グラスファイバー、ステンレス等を適用する形態としてもよい。
また、上記実施の形態では、被覆部40として、全面に網目を有するネットを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図10に示すように、被覆部40として、一部に網目を有する部材を適用する形態としてもよい。この場合、被覆部40として、ドジョウDが通過可能な大きさとされた網目が、外敵によりドジョウDが捕食されにくい、水田12の底に近い位置(例えば、被覆部40の水田12における水深の半分以下となる位置)に設けられた部材を適用する形態が例示される。この場合、網目は外敵によりドジョウDが捕食されにくい部分に設けられているので、当該網目から外敵が被覆部40の内側に入る可能性を低減することができる結果、外敵によるドジョウDの捕食の頻度を低減することができる。
また、例えば、図11に示すように、被覆部40として、網目を有さない部材を適用してもよい。この場合、被覆部40として、例えば、ビニールやポリエチレンのシート等の柔軟性を有するシート状の部材を適用する形態が例示される。さらに、この場合、被覆部40として、透明や白色系等の水田12に生息する植物プランクトンが光合成を行うための光エネルギーを透過する部材を適用することが好ましい。特に、この場合、被覆部40として、白色系の部材を適用することが好ましい。これにより、水田12の水の透明度が確認しやすくなる。
また、上記実施の形態では、本発明の固定部として固定部20を適用し、本発明の支持部として浮き部22を適用し、本発明の張力付与部として重り部42を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図12に示すように、本発明の固定部として複数の杭50を適用し、本発明の支持部として支持部52を適用し、本発明の張力付与部として複数の重り部54を適用する形態としてもよい。
この形態例における魚養殖支援具10では、複数の長尺状の杭50の尖っている一端部が、支持部52の長手方向に沿って所定間隔で水田12の底に各々打ち込まれている。また、長尺状で、かつ短手方向に切断した場合の断面の形状が図12(A)における上方に向けて湾曲している支持部52が、各々の杭50の上端部に不図示の釘やねじ等の固定部材により固定されている。また、被覆部40の対向する両端部の中間部が、不図示の紐や結束バンド等の固定部材により、支持部52に対して固定されている。さらに、被覆部40の両端部上に、複数の重り部54が被覆部40の長手方向に沿って所定間隔で置かれることにより、当該両端部が水田12の底に接している。
なお、この場合、例えば、杭50の材料として、木材、コンクリート、鋼等を適用する形態が例示される。また、例えば、支持部52として、VU管やVP管等の内部が空洞で、かつ短手方向に切断した場合の断面の形状が円形の管を長手方向に沿って切断した部材が例示される。また、例えば、重り部54として、レンガ、コンクリートブロック、および鉄等の水に浮かない部材が例示される。さらに、この場合、被覆部40の両端部を杭等により、水田12の底に固定する形態としてもよい。
また、上記実施の形態では、水位が第3の水位とされている場合に、被覆部40の全体が水没する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図12(A)に示すように、水位が第3の水位とされている場合でも、被覆部40の下端部を含む一部のみが水没する形態としてもよい。
また、上記実施の形態では、被覆部40の長手方向の両端部が開放されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図13(A)に示すように、被覆部40の長手方向の一端部が閉塞され、他端部が開放される形態としてもよい。また、図13(B)に示すように、被覆部40の長手方向の一端部または両端部の一部が閉塞される形態としてもよい。なお、図13(A)では、図13(A)における被覆部40の手前側が閉塞され、奥側が開放されている場合を示している。また、図13(B)では、図13(B)における被覆部40の手前側の一部(図13(B)では上半分)が閉塞されている場合を示している。さらに、図12、図13に示すように、被覆部40の水田12の底に対向する部分が閉塞される形態としてもよい。
また、上記実施の形態では、水田12の水位の変更に応じて、鎖34の長さを変更する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、一例として図14に示すように、鎖34の長さを、水位が第3の水位の場合における鎖34の長さで固定する形態としてもよい。この場合、作業者は、図9に示した作業手順のステップ120およびステップ130の作業を省略することができるので、利便性が向上する。
また、上記実施の形態では、浮き部22として、複数の構成部材(浮力管24、蓋部26、および継手28)が連結されて一体化された物(以下、「連結物」という。)を適用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図15に示すように、浮き部22として、連結物を不図示の結束バンド等により複数結束した物を適用する形態としてもよい。なお、図15(A)は、上記実施の形態より小さい口径の2つの連結物を水田12の深さ方向に重ねて結束した場合を示し、図15(B)は上記実施の形態より小さい口径の3つの連結物を結束した場合を示している。また、図15(C)は、上記実施の形態と同一の口径の1つの連結物と上記実施の形態より小さい口径の2つの連結物とを結束した場合を示し、図15(D)は、上記実施の形態より小さい口径の2つの連結物を水面方向に並べて結束した場合を示している。
また、上記実施の形態では、重り部42に補助管42Bおよび継手42Cを設けて、被覆部40の対向する部分の間隔が、水田12の底に近づくほど徐々に広くなっていく場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、重り部42に補助管42Bおよび継手42Cを設けずに、被覆部40の対向する部分の間隔が変わらない形態としてもよい。
また、上記実施の形態では、人手による作業により給水部14のバルブを開閉することによって給水部14からの給水を開始および停止する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、給水部14にポンプ、および当該ポンプを制御する制御部を設け、不図示の制御部により当該ポンプを制御することによって、給水部14からの給水の開始および停止を制御する形態としてもよい。
また、上記実施の形態では、人手よる作業により排水部16を回動させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、排水部16にモータ等を設け、当該モータの駆動を不図示の制御部により制御することによって、排水部16の回動を制御する形態としてもよい。
また、上記実施の形態では、魚養殖支援具10の設置場所として、遊休水田を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、当該設置場所として、稲作等を行っている水田の空いている領域を適用してもよいし、水田以外の人工池や天然の池、水槽等、養殖対象とする魚が生息可能な他の水域を適用する形態としてもよい。
また、魚養殖支援具10の設置場所は、屋外に限定されず、屋内とする形態としてもよい。この場合、自然風による被覆部40の変形は、設置場所が屋外である場合より期待できないので、扇風機等により人工風を水面上に吹かせることが好ましい。
また、上記実施の形態では、養殖対象とする魚として、ドジョウを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、養殖対象とする魚として、メダカ、コイ、フナ、ナマズ等の他の魚を適用してもよい。
その他、上記実施の形態で説明した魚養殖支援具10の構成(図1〜図5参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な構成要素を削除したり、新たな構成要素を追加したりすることができることは言うまでもない。
さらに、上記実施の形態で示した魚の養殖を行う際の作業の流れ(図9参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、ステップの順序を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。