JPH0776A - 浮沈式養殖生簀 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、養殖生簀を養殖魚の必要とする深さ
の外洋の海中に設置し、台風、赤潮等の被害を減少し、
肉質の締まった病気に罹り難い養殖魚を育成し、必要時
に生簀を海面に浮上させる、浮沈式養殖生簀。 【構成】養殖生簀本体はチタン線の亀甲網の密閉型で、
作業用窓を設け、生簀本体上部には、上端にフロートを
取付けた上下伸縮自在の給餌用パイプを設け、生簀本体
の上部外周の二本のフロートの内側フロートの浮力は、
生簀容量、生簀上下の適正張力、海流の速さ、沈下フロ
ートの浮力により設定し、外側フロートは伸縮性ある材
質で、エアーホースを連設して先端には常に海面に浮ぶ
フロート付空気弁を取付け、外側フロートの吸、排気を
行い、又生簀本体の底部に複数のワイヤーを取付け、該
ワイヤーには位置決めストッパーを設け、予め海底に設
置した位置固定用アンカーの通金具を通過させた先端に
沈下フロートを固着した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、養殖生簀であって、魚
に適当な深さの海中に設置し、必要に応じて海面に浮上
させる生簀の構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来の養殖用生簀は、殆ど波静かな入江
や内海で潮通しの良い処に、海面の筏に吊り下げて設置
されており、表面は開放されていて、外海での養殖には
不向きであった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の養殖
生簀は、海面の筏に吊り下げて定位置に設置され、波静
かな内海に於ける養殖であって、生産性を良好にする
為、生簀にできる限り多くの魚を養殖し、大量の餌を与
え続けるので運動不足となり、又、海流も流れが悪いか
ら、細菌が繁殖し、近年特に海洋汚染が進行し、病気が
発生するため、抗生物質等を多量に与える結果となり、
天然に育成した魚とは明らかに肉質に相違があり、２、
３年かけて成魚にしても、いわゆる「養殖もの」として
の価値しか与えられず、天然ものとは大きな価格差が生
じた。また海面で養殖するため台風や赤潮などの被害も
大きかった。

【０００４】これらの諸問題を解決し、養殖漁業の将来
を指向すると、それは海流の早い外洋で、海面ではな
く、それぞれの魚に適した深さの海中で養殖することが
理想的である。多少の海洋汚染が発生しても、外洋は自
浄作用が強く汚染の進行が阻止され、海中であるため台
風や赤潮の被害も無くなり、海流が早いから魚に適度な
運動を与え、天然ものと同じ肉質の魚の育成、提供が可
能となるから、従って市場価格も向上し、より有利な養
殖漁業を営むことが可能となる。

【０００５】

【課題を解決する為の手段】請求項第１項記載の浮沈式
養殖生簀に於いては、第１にチタン線で作成した亀甲網
を使用する。外洋海中に於ける養殖生簀は、製作、設置
費用が割高になるため、生簀本体の耐久性が必要であ
り、鉄製や化繊網は不向きであり、海水に対して絶対的
な耐蝕性を持つチタン線で、且つ構造強度の高い亀甲網
を使用する必要がある。

【０００６】第２には、従来の海面での養殖生簀は、上
部が開放され、給餌や、魚の移し替え、又は魚の取り上
げ等の作業は、海上で行うが、海中の養殖生簀は構造上
密閉型となるため、作業用の窓を設ける必要がある。更
に給餌の為の構造として、生簀本体の上部に上下伸縮自
在のアコーディオンタイプの給餌用パイプを取付け、給
餌パイプの上端が、常時海上に浮かんでいるようにフロ
ートを取付けた給餌口を設ける。給餌作業は、この給餌
口から餌を投入して行う。

【０００７】第３に、養殖生簀を海中に浮沈さなければ
ならない為、その構造として、生簀の上部外周に内外二
本のフロートを取付け、内側フロートの浮力は、生簀本
体の容量や、海流の速さ、生簀本体を上下に引っ張る適
正張力、及び沈下用フロートの浮力とのバランスヲ計算
した上で設定する。この内側フロートの材質は、ＦＲＰ
のような硬い材質のものでもよく、又ゴム製のものでも
よい。外側フロートはゴム製のような伸縮性のある材質
で出来ており、エアーホースを連設し、エアホースの先
端は、常に海上に浮かんでいるフロート付の空気弁が設
けられており、空気弁によって吸気、排気を行うことが
できるようになっている。

【０００８】第４に、養殖生簀の底部外枠の複数箇所
に、ワイヤーを取付け、このワイヤーは、予め海底に複
数個設置した、生簀の位置固定用アンカーのワイヤー通
し金具を通過して、その先端に沈下用フロートを固着す
る。更に、このワイヤーには、生簀本体の海中に於ける
深さを定める為の位置決めストッパーが取付けられてい
る。

【０００９】

【発明の作用】本発明は、以上のように構成されている
から、登録請求の範囲第１項に於いては、生簀本体は生
簀上部に設置した２本のフロートと、生簀の底部から、
予め海底に設置した位置固定アンカーに達するワイヤー
が、アンカーの通し金具を通過して後、ワイヤーの先端
に取付けられている沈下用フロートの浮力によって浮上
している。本発明の海中生簀の場合は、生簀上部に取付
け２本のフロートの１本が予め計算された浮力によって
生簀を上の方向に引っ張ることにより、生簀を安定させ
ている。従って生簀の底からワイヤーにより繋がってい
る沈下用のフロートの浮力は、浮上用フロート１本分の
浮力より大きく、２本分の浮力より小さく設定してあ
る。又、生簀本体を海中どの位置まで沈めるかを設定す
るには、生簀の底に取付けたワイヤーに取付ける位置決
め用のストッパーを、前記ワイヤーの適当位置に固定す
れば、生簀本体の静止位置が定められる。

【００１０】生簀を海中に沈める場合は、空気弁により
浮上用フロートの一本の空気を抜けば生簀は沈み、ワイ
ヤーの位置決めストッパーが海底に設置してあるアンカ
ーの通し金具で止まった処で生簀は静止する。即ち、生
簀本体底部から位置決めストッパーまでの距離が、生簀
本体の海中に於ける静止位置となる。反対に生簀を海面
に浮上させるには、船に積んだコンプレッサーを、海上
に浮かんでいる空気弁に挿着して、浮上用の空気を抜い
たフロートに空気を注入すれば、生簀は浮上することに
なる。

【００１１】生簀本体を浮上させれば、作業窓を設置し
たことにより、魚の移し替えや、取り上げ作業は、船上
で行うことができる。

【００１２】

【実施例】図１は、本発明にかかる浮沈式海中養殖生簀
の正面図であり、（イ）は生簀本体１が海上に浮上した
状態であり、（ロ）は生簀本体１が海中に沈下した状態
である。２は沈下用フロートで、生簀が浮上している状
態の位置であり、２′は生簀が沈下した状態の位置を示
している。Ａは海面、Ｂは海底を示す。

【００１３】３は海底Ｂに設置したアンカーで、生簀の
容量や、海流の速さ等によって重量や個数を設定する。
４は、前記アンカー３の上部にそれぞれ設けたワイヤー
通し金具であり、生簀本体１の底部１ｂに取付け、且つ
先端に沈下用フロート２を取付けたワイヤー５を通過さ
せると共に、前記ワイヤー５の必要位置に取付けた、位
置決めストッパー６の通過を阻止する役目を果たす。
６′は生簀本体１が海中定位置に沈下し、位置決めスト
ッパー６′がワイヤー通し金具４で通過を阻止された状
態を示す。（図２、図３参照）

【００１４】７は浮力固定フロートで、従来の生簀に於
ける錘の役目と同じく、適正な張力によって生簀本休１
の安定を保つ。浮力固定フロート７は、生簀の容量や海
流の状態などから浮力を設定固定する。７′は生簀本体
１が海中に沈下した状態を示す。８は生簀本体１の浮沈
用フロートであり、エアーホース９が連結され、前記エ
アーホース９の先端にはフロート付空気弁１０が設けら
れ、空気弁１０は常に海上に浮いており、浮沈用フロー
ト８は空気弁１０により空気の吸気、排気が行われ、こ
れによって生簀本体１の浮沈が行なわれる。

【００１５】１１は生簀本体１の上端に設けられた、上
下に伸縮可能の給餌パイプで、本実施例では、アコーデ
イオンタイプとなっており、生簀本体１が浮上した時
（イ）は、生簀本体の上に折り畳まれ、生簀本体１が海
中に沈下（ロ）している場合は海中に伸長されている。
給餌パイプ１１は、その上端には給餌口フロート１２が
取付けられており、給餌パイプ１１により必要な給餌が
行われる。１１′は生簀本体１が海中に沈下した伸長し
た状態の給餌パイプの状態を示す。

【００１６】図５は、魚の移し替えや、取上げ作業の窓
を示し、生簀本体の上部外枠１ａと底部外枠１ｂ間に左
右一対の縦枠１３、１４を設け、縦枠１３、１４の間に
窓枠１５を、開閉自在に取付け、生簀本体１の窓を構成
する。１６は閂及び閂棒である。

【００１７】

【発明の効果】以上の如く構成された、本発明に係る浮
沈式養殖生簀により、従来常識とされた、内海での養殖
漁業から脱出し、海流の早い外洋での養殖漁業が可能と
なり、生簀本体をチタン線の堅牢な亀甲網として、海水
の耐蝕性に耐え、然も浮沈式として、生簀本体の沈下時
に給餌口から給餌を行い、常時養殖する魚に適する海中
の深さに於いて養殖を行い得るようにしたから、従来の
養殖魚の肉質を改善することが可能となり、赤潮や台風
による被害も減少し、従来より効果な新しい価格の安定
した養殖漁業を提供できる産業上の効果は大なるものが
ある。

【００１８】

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の養殖生簀の正面図

【図２】 海底のアンカーとワイヤーの拡大図

【図３】 生簀の平面図

【図４】 窓の取付け図

【符号の説明】

１ 生簀本体 １ａ 上部外枠 １ｂ 底部外枠 ２ 沈下用フロート ３ アンカー ４ ワイヤー通し金具 ５ ワヘヤー ６ 位置決めストッパー ７ フロート ８ 浮沈用フロート ９ エアーホース １０ フロート付空気弁 １１ 給餌パイプ １２ 給餌パイプ １３、１４ 縦枠 １５ 窓枠 １６ 閂

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】養殖漁業用生簀において、生簀本体をチタ
   ン製の亀甲網の密閉型とし、生簀本体の側面には、開閉
   自在の作業窓を設け、生簀本体表面には上下伸縮自在の
   給餌用パイプを取付け、前記給餌用パイプの上端外周に
   は給餌口フロートを設け、生簀本体上部外枠に二本のフ
   ロートを固定し、内側フロートは、予め計算された浮力
   に固定し、外側フロートは、エヤーホースを介して、常
   時海上に浮上するフロート付空気弁と接続して吸気排気
   自在とし、更に、生簀本体底部外枠には、複数箇所にワ
   イヤーを取付け、前記ワイヤーは、予め海底に設置した
   生簀の位置固定用アンカーの、ワイヤー通し金具をそれ
   ぞれに通過し、その先端には沈下用フロートを取付け、
   前記ワイヤーには、更に、生簀本体の海中に於ける深さ
   を定める位置に、深さの位置決めストッパーを取付ける
   事を特徴とした浮沈式養殖生簀。