JP2015209702A - 外ケーブル構造におけるケーブル偏向部分用スペーサ、その偏向部分構造及びそのケーブル配設方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このとき、ケーブルPは複数の横桁Cや偏向部Dに通される場合があり、その場合、ケーブルPの偏向部分は、上下(横桁C上部(定着部)又は偏向部D)に交互に生じることとなり、この偏向部分の貫通孔は、ケーブルPの両端の緊張方向(長さ方向)に沿わせるため、所定曲率の曲線部分を有する形状となっている(本願図2、特許文献1、図6、図8、図9参照)。
この変形した形状のケーブルPは、その断面全域への力の不均衡が生じるため、耐久性の低下の恐れが生じる。また、各ストランドaには、防錆や傷防止のため、合成樹脂被覆したものがあり、上記外側のその合成樹脂被覆のストランドaに大きな緊張力が集中して前記合成樹脂被覆に亀裂が入ったり、場合によっては、破損したりする恐れがあり、その被覆による効果の低減を招く恐れがある。
しかし、ストランドaに導入される(付与される)緊張力は極めて大きいため、例えば、規格引張荷重の70%の緊張力、曲率半径:3m、長さ:1mの偏向部分であって、ストランドとスペーサの接触幅:3mmの時、その緊張力は15MPa以上のため、そのような可撓性を有するスペーサではその緊張力に抗することができず、破損したり、動いたりして、スペーサの役目を果たさなくなる恐れが高い。
しかし、緊張前といっても、各ストランドaは重いものであり、例えば、19本撚りケーブルP:20.9kg/mの場合、ストランドa:1.1kg/mであり、その数mにも及ぶストランド層の荷重がかかる各ストランド間に可撓性のあるスペーサ片を差し込むことは非常に難しく、その作業性に問題がある。時に、偏向部分は最大:7mにも及ぶ場合があり、その場合はなおさらである。さらに、ケーブルPのストランドaは全長に亘って図9に示す態様ではなく、ねじれたり、交差したりしているものもあり、そのような態様のストランド層間にスペーサ片を差し込むことは非常に困難である。このため、この技術のスペーサはせいぜい1m程度の偏向部分に適用できるにすぎない。
このような構成のスペーサであると、分割したスペーサ片間の屈曲によってスペーサの長さ方向を貫通孔の曲線部分に対応することができる。このため、スペーサ片に剛性、硬度の高い材料を使用できるため、ケーブルに大きな緊張力を付与してもスペーサ片が破損する等の恐れもない。
なお、スペーサの断面が四角形等の多角形であれば、スペーサの回転方向の位置ずれが無くなって好適である。
このとき、各スペーサ片の複数の挿通孔、好ましくはその中心の点対称位置の挿通孔にメッセンジャーワイヤをそれぞれ挿し通すようにすれば、メッセンジャーワイヤに対する各スペーサ片の位置決めが成されて、その各スペーサ片の各挿通孔が同一線上に位置する。各スペーサ片の各挿通孔が同一線上に位置すれば、スペーサとして全長に亘って同一配置のストランド挿通孔が位置することとなるため、残りのストランドをスペーサに挿し通し易いとともにスペーサ全長に亘って同一のストランド挿通断面(図3、図9参照)となって、安定した緊張力を付与することができ、また、各ストランドがねじれることもない。
このとき、スペーサが円柱(断面円形)の場合、ストランドの1本づつの緊張には、スペーサが中心軸周りに回転することを考慮する必要がある。スペーサがその中心軸周りに回転すると、ケーブルをなすストランドがねじれることとなり、1本づつの緊張ができなくなるからである。
このようにすると、各ストランドの緊張に伴うスペーサ(スペーサ片)に生じる回転モーメントをバランスさせてその回転を防止し得る。このとき、スペーサが回転しない程度の低い緊張力を全てのストランドに導入した(与えた)後、必要な緊張力をさらに1本づつ全てのストランドに導入するようにすれば、そのスペーサの回転を有効に防止し得る。
貫通孔20には、HDPE製パイプ23をその全長に嵌め込んでも良く、この実施例ではそのパイプ23を嵌めている。
下床版偏向部Dの貫通孔偏向部分にも同様にしてスペーサSを介在してストランドaを挿通する。
このように,各偏向部分にスペーサSを配置することにより、スペーサS設置部分の全長に亘りストランドa同士の配置間隔がスペーサSの剛性により一定に保たれる。
その張力は、ケーブルPの全体(全てのストランドa)に一度に行っても良いが、ストランドaを1本づつ行っても良い。何れの場合も、スペーサSの存在によって、各ストランドaは位置決めされて動くこと無く、所要の緊張力を付与することができる。
特に、ストランドaの1本毎の張力付与は、小さなジャッキ(シングルジャッキ)で行うことができるため、そのジャッキは軽く、作業性の良いものとなる(図4参照)。
すなわち、ストランドaを1本づつ緊張し得れば、ケーブルPの配設態様を様々に変えることができ、例えば、横桁C、C間の下床版E上に複数の偏向部Dがあったり、同床版下面に複数の偏向部分があったりする場合において、その偏向部や定着部にケーブルP、P1、P2を適宜に導いた態様を選択できるため、外ケーブル構造を構築する際の設計の自由度が増す。
このため、一偏向部分では、ストランドaを1本づつその円弧状保護管22(パイプ23)の内側(内径側)に位置するストランドaから順次、同外側(外径側)に位置するストランドaへと緊張していく。例えば、図7(a)ではストランドa19、a18等から同a2、a1等へと順次緊張していくことは可能であるが、他の偏向部分では、同外側から内側へは、例えば、図7(b)ではストランドa19、a18等から同a2、a1へと順次緊張していくこととなり、その外側のストランドa19、a18等の緊張により内側のストランドa2、a1等を拘束してしまうため、その緊張を行うことができない。
例えば、横桁Cに定着部を構成し、その定着部において、外側に位置するストランドaから内側に向かって緊張する場合、前記各ストランドaの配置態様の変動が生じ易いため、この発明のスペーサSを必ず介在する必要があり、一方、下床版偏向部Dにおける偏向部分においては内側のストランドaからの緊張となるため、この発明のスペーサSを必ずしも介在する必要はなくなる。
スペーサ片10の外周形状は、回転しない形状、例えば、縦断面三角形、同四角形、同五角形、同六角形、同七角形、同八角形(図5)、12角形、16角形等の同正多角形、同楕円形、及び同多角形等とすることができる。この時、貫通孔20(保護管22、パイプ23)もそのスペーサ片10の外周形状に対応する断面形状とすることが好ましい。さらに、スペーサ片10の外周面に摩擦抵抗を増す溝や凸条、多数の突起等を設けることもできる。
ケーブルPのストランドaは、図9に示す樹脂被覆eがされたものに限らず、その樹脂被覆eがされていないもの等を適宜に採用し得ることは勿論である。
このように、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
C 横桁
D 偏向部
E 橋梁の下床版
H 主桁
S スペーサ
P、P1、P2 ケーブル
a ケーブルのストランド
b ケーブル断面中心軸
10 スペーサSのスペーサ片
11 接続用突起
12 同係止孔
13 ストランド挿通孔
14 面取り
20 偏向部分のケーブル貫通孔
21 同貫通孔の曲線部分(偏向部分)
22 保護管
23 HDPE製パイプ
30a ラムチェア
30b アンカーデスク
31 シングルジャッキ
Claims (11)
- 外ケーブル構造のケーブル偏向部分に設けられるスペーサであって、そのケーブルの長さ方向に亘って複数に分割されたスペーサ片からなり、そのスペーサ片は、前記偏向部分の貫通孔に嵌り込む外周形状を有するとともに、前記ケーブルの各ストランドが貫通する挿通孔を有するケーブル偏向部分用スペーサ。
- 上記スペーサ片の縦断面形状を多角形とした請求項1に記載のケーブル偏向部分用スペーサ。
- 請求項1又は2に記載の偏向部分用スペーサにおいて、上記スペーサ片の分割面に他のスペーサ片の分割面の突起が嵌る係止孔を設け、その突起を前記係止孔に嵌めることによって各スペーサ片が同一心で連結されるケーブル偏向部分用スペーサ。
- 外ケーブル構造のケーブル偏向部分において、その偏向部分の貫通孔と、その貫通孔に嵌め込まれたスペーサと、そのスペーサに挿し通されたケーブルとを有し、前記スペーサは、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のスペーサからなるケーブル偏向部分構造。
- 請求項4に記載の外ケーブル偏向部分構造をなすためのケーブル配設方法であって、前記偏向部分の貫通孔の曲線部分に請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のスペーサ片の所要数を嵌め込んでスペーサを介在し、その各スペーサ片の挿通孔に前記ケーブルの各ストランドを挿通する外ケーブル構造におけるケーブル配設方法。
- 請求項5に記載のケーブル配設方法において、上記スペーサ片を上記貫通孔に嵌め込む際、その貫通孔を貫通するメッセンジャーワイヤに前記スペーサ片をその挿通孔を介して挿し通し、前記メッセンジャーワイヤをガイドとして前記スペーサ片を前記貫通孔に嵌め込むようにした外ケーブル構造におけるケーブル配設方法。
- 請求項6に記載のケーブル配設方法において、上記スペーサ片の複数の挿通孔に上記メッセンジャーワイヤをそれぞれ挿し通すようにした外ケーブル構造におけるケーブル配設方法。
- 請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載のケーブル配設方法において、上記各ストランドに1本づつ緊張力を与えるようにした外ケーブル構造におけるケーブル配設方法。
- 請求項8に記載のケーブル配設方法において、上記各ストランドに1本づつ緊張力を与えて上記ケーブルに所要の緊張力を付与する際、そのケーブルの曲線部分の外側から内側に向かってケーブル断面中心軸に対称に順々に、又はケーブルの曲線部分の内側から外側にケーブル断面中心軸に対称に順々に、緊張力を付与するようにした外ケーブル構造におけるケーブル配設方法。
- 請求項8又は請求項9に記載のケーブル配設方法において、上記スペーサが回転しない程度の低い緊張力を全てのストランドに導入した後、さらに、必要な緊張力を1本づつ全てのストランドに導入するようにした外ケーブル構造におけるケーブル配設方法。
- ケーブルをその長さ方向に向かって上下又は左右の偏向部分に交互に掛け渡す外ケーブル構造において、そのケーブルの偏向部分に請求項4に記載のケーブル偏向部分構造を採用し、前記ケーブルの偏向部分からそのケーブルのストランドを分けて異なる方向に導くようにした外ケーブル構造。
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