JP2015203088A - ポリビニルアルコール樹脂の製造方法 - Google Patents

ポリビニルアルコール樹脂の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】着色が少なくて100℃の高温環境下でより着色しにくい偏光フィルム等の光学フィルムが得られるPVA樹脂を簡便に製造することのできるPVA樹脂の製造方法を提供すること。
【解決手段】クロトン酸ビニルおよびクロトンアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも1種ならびにビニルエステル(但し、クロトン酸ビニルを除く)を含むビニルエステル組成物を重合反応に供する工程と、得られたポリビニルエステルをけん化する工程とを有するPVA樹脂の製造方法であって、ビニルエステル組成物におけるクロトン酸ビニルおよびクロトンアルデヒドの合計の含有量がビニルエステル(但し、クロトン酸ビニルを除く)に対して質量基準で0.1〜10ppmである、製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、着色の少ないポリビニルアルコール樹脂を簡便に製造することのできるポリビニルアルコール樹脂の製造方法、当該製造方法により製造されるポリビニルアルコール樹脂、および、当該ポリビニルアルコール樹脂を用いて製造されるポリビニルアルコールフィルムに関する。
光の透過および遮蔽機能を有する偏光板は、光の偏光状態を変化させる液晶と共に液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。多くの偏光板は偏光フィルムの表面に三酢酸セルロース(TAC)フィルムなどの保護膜が貼り合わされた構造を有しており、偏光板を構成する偏光フィルムとしてはポリビニルアルコールフィルム(以下、「ポリビニルアルコール」を「PVA」と称することがある)を一軸延伸してなるマトリックスにヨウ素系色素(I やI 等)や二色性有機染料といった二色性色素が吸着しているものが主流となっている。
LCDは、電卓および腕時計などの小型機器、携帯電話、ノートパソコン、液晶モニター、液晶カラープロジェクター、液晶テレビ、車載用ナビゲーションシステム、屋内外で用いられる計測機器などの広範囲において用いられるようになってきており、近年、特に屋外での耐久性が要求されている。これに伴い、偏光フィルムに対しても耐熱性が求められており、具体的には、車内での使用などを想定して、100℃の高温環境下で着色しにくい偏光フィルムが求められている。
車内で使用される偏光フィルムには二色性有機染料が用いられることが比較的多いが、偏光フィルムにおける着色度合いの経時変化の原因としては、この二色性有機染料の劣化による退色と、PVAフィルムの劣化による着色とに大別することができる。このうち、後者に関連するPVAフィルムの劣化を低減する方法としては、PVAフィルムの原料となるPVA樹脂の着色を低減することが有効である。すなわち、PVA樹脂の段階で既に着色が多いということは、一般的に100℃を下回る穏やかな温度条件が採用されるPVA樹脂の製造工程を経た後において既にPVA樹脂の劣化が進行していることを示しており、このようなPVA樹脂を用いてPVAフィルムひいては偏光フィルムを製造した場合には、100℃の高温環境下で着色度合いが経時変化しやすくなる。言い換えれば、PVA樹脂の着色度合いは、偏光フィルムにおける100℃の高温環境下での着色のしやすさの指標となる。
これまでに、着色の少ないPVA樹脂を得る方法がいくつか知られている。例えば、変性PVA樹脂を製造する際に、共重合後における重合系内のアルデヒド濃度を低く保つ、得られる変性PVA樹脂を低い乾燥温度、または、低い酸素濃度雰囲気下で乾燥処理する、けん化反応に用いる溶媒の種類を選択する、けん化反応に用いる触媒の種類を選択するなどの方法を組み合わせることにより、変性PVA樹脂の着色を効果的に抑制できることが知られている(特許文献1を参照)。また、PVAチップを用いてPVAフィルムを製造する前に酸素の存在下で乾燥するとPVAチップが着色しやすくなるため、窒素雰囲気下または真空もしくは減圧状態で乾燥する方法が知られている(特許文献2を参照)。
特開2003−342322号公報 特開2004−226707号公報
しかしながら、近年、偏光フィルムの着色に対する要求はますます厳しくなっており、このような観点から、従来公知の方法には、100℃の高温環境下で着色しにくい偏光フィルムを得るという点で、さらなる改良の余地があった。
そこで本発明は、着色が少なくて100℃の高温環境下でより着色しにくい偏光フィルム等の光学フィルムが得られるPVA樹脂を簡便に製造することのできるPVA樹脂の製造方法、当該製造方法により製造される着色の少ないPVA樹脂、および、当該PVA樹脂を用いて製造されるPVAフィルムを提供することを目的とする。
本発明者らが上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、使用される酢酸ビニル等のビニルエステルに対するクロトン酸ビニルおよびクロトンアルデヒドの合計量を特定の範囲にすることにより上記課題が解決されることを見出し、当該知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
[1]クロトン酸ビニルおよびクロトンアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも1種ならびにビニルエステル(但し、クロトン酸ビニルを除く)を含むビニルエステル組成物を重合反応に供する工程と、得られたポリビニルエステルをけん化する工程とを有するPVA樹脂の製造方法であって、ビニルエステル組成物におけるクロトン酸ビニルおよびクロトンアルデヒドの合計の含有量がビニルエステル(但し、クロトン酸ビニルを除く)に対して質量基準で0.1〜10ppmである、製造方法;
[2]ビニルエステルが酢酸ビニルである、上記[1]の製造方法;
[3]ビニルエステル組成物がクロトン酸ビニルを含む、上記[1]または[2]の製造方法;
[4]ビニルエステル組成物におけるクロトン酸ビニルの含有量がビニルエステル(但し、クロトン酸ビニルを除く)に対して質量基準で7ppm以下である、上記[1]〜[3]のいずれか1つの製造方法;
[5]ビニルエステル組成物におけるクロトンアルデヒドの含有量がビニルエステル(但し、クロトン酸ビニルを除く)に対して質量基準で10ppm以下である、上記[1]〜[4]のいずれか1つの製造方法;
[6]PVA樹脂に含まれるPVAにおけるビニルアルコール単位の含有率が80モル%を超える、上記[1]〜[5]のいずれか1つの製造方法;
[7]PVA樹脂がチップ状または粉末状である、上記[1]〜[6]のいずれか1つの製造方法;
[8]PVA樹脂のYI値が25以下である、上記[1]〜[7]のいずれか1つの製造方法;
[9]上記[1]〜[8]のいずれか1つの製造方法によって製造されるPVA樹脂;
[10]上記[9]のPVA樹脂を用いて製造されるPVAフィルム;
[11]光学フィルム製造用フィルムである、上記[10]のPVAフィルム;
に関する。
本発明によれば、着色の少ないPVA樹脂を簡便に製造することのできるPVA樹脂の製造方法、当該製造方法により製造される着色の少ないPVA樹脂、および、当該PVA樹脂を用いて製造されるPVAフィルムが提供される。
〔PVA樹脂の製造方法〕
PVA樹脂を製造するための本発明の製造方法は、クロトン酸ビニルおよびクロトンアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも1種ならびにビニルエステル(但し、クロトン酸ビニルを除く)を含むビニルエステル組成物を重合反応に供する工程と、得られたポリビニルエステルをけん化する工程とを有する。
上記のビニルエステルは、クロトン酸ビニル以外のビニルエステルである限りその種類に特に制限はなく、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸イソプロペニル等が挙げられる。これらのビニルエステルは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。これらのビニルエステルの中でも、PVAの製造の容易性、入手容易性、コスト等の点から、酢酸ビニルが好ましい。
重合反応に供される上記のビニルエステル組成物は、クロトン酸ビニルおよびクロトンアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも1種ならびにビニルエステル(但し、クロトン酸ビニルを除く)を含む。すなわち当該ビニルエステル組成物は、クロトン酸ビニルおよびそれ以外のビニルエステルを含みクロトンアルデヒドを含まないものであってもよいし、クロトンアルデヒドおよびビニルエステルを含みクロトン酸ビニルを含まないものであってもよいし、クロトン酸ビニル、クロトンアルデヒド、および、クロトン酸ビニル以外のビニルエステルを共に含むものであってもよい。これらの中でも、本発明の効果がより顕著に奏されることからビニルエステル組成物はクロトン酸ビニルを含むもの、すなわち、クロトン酸ビニルおよびそれ以外のビニルエステルを含みクロトンアルデヒドを含まないものであるか、または、クロトン酸ビニル、クロトンアルデヒド、および、クロトン酸ビニル以外のビニルエステルを共に含むものであることが好ましい。
ビニルエステル組成物におけるクロトン酸ビニルおよびクロトンアルデヒドの合計の含有量は、得られるPVA樹脂の着色度合いなどの観点から、ビニルエステル(但し、クロトン酸ビニルを除く)に対して質量基準で0.1〜10ppmであることが必要であり、0.3ppm以上であることが好ましく、0.5ppm以上であることがより好ましく、1ppm以上であることがさらに好ましく、2ppm以上であることが特に好ましく、また、8ppm以下であることが好ましく、6ppm以下であることがより好ましく、4ppm以下であることがさらに好ましい。
ビニルエステル組成物におけるクロトン酸ビニルの含有量は、得られるPVA樹脂の着色度合いなどの観点から、それに含まれるビニルエステル(但し、クロトン酸ビニルを除く)に対して質量基準で7ppm以下であることが好ましく、5ppm以下であることがより好ましく、3ppm以下であることがさらに好ましく、また、0.1ppm以上であることが好ましく、0.2ppm以上であることがより好ましく、0.4ppm以上であることがさらに好ましい。
ビニルエステル組成物におけるクロトンアルデヒドの含有量は、得られるPVA樹脂の着色度合いなどの観点から、それに含まれるビニルエステル(但し、クロトン酸ビニルを除く)に対して質量基準で10ppm以下であることが好ましく、7ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることがさらに好ましく、また、0.1ppm以上であることが好ましく、0.2ppm以上であることがより好ましく、0.4ppm以上であることがさらに好ましく、1ppm以上であることが特に好ましく、2ppm以上であることが最も好ましい。
ビニルエステル組成物は、そのまま重合反応に供してもよいし、溶媒やその他の成分などと混合した後に重合反応に供してもよい。溶媒やその他の成分などと混合する前のビニルエステル組成物におけるビニルエステル(但し、クロトン酸ビニルを除く)の純度は、80質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、97質量%以上、98質量%以上、さらには99質量%以上であってもよい。
ビニルエステル組成物を重合反応に供する際の重合方式は、回分重合、半回分重合、連続重合、半連続重合などのいずれの方式でもよく、重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法を適用することができる。無溶媒またはアルコールなどの溶媒中で重合を進行させる塊状重合法または溶液重合法が、通常採用される。高重合度のポリビニルエステルを得る場合には、乳化重合法も好ましい。溶液重合法の溶媒は特に限定されないが、例えばアルコールである。溶液重合法の溶媒に使用されるアルコールは、例えばメタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコールである。重合系における溶媒の使用量は、目的とするPVAの重合度に応じて溶媒の連鎖移動を考慮して選択すればよく、例えば溶媒がメタノールの場合、溶媒と重合系に含まれる全単量体との質量比{=(溶媒)/(全単量体)}として、好ましくは0.01〜10の範囲内、より好ましくは0.05〜3の範囲内から選択される。
ビニルエステル組成物を重合反応に供する際に使用される重合開始剤は、公知の重合開始剤、例えばアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤から重合方法に応じて選択すればよい。アゾ系開始剤は、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)である。過酸化物系開始剤は、例えばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのパーカーボネート系化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネートなどのパーエステル系化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート;過酸化アセチルである。過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などを上記開始剤に組み合わせて重合開始剤としてもよい。レドックス系開始剤は、例えば上記の過酸化物系開始剤と亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリットなどの還元剤とを組み合わせた重合開始剤である。重合開始剤の使用量は、重合開始剤の種類により異なるために一概には決められないが、重合速度に応じて選択すればよい。例えば重合開始剤に2,2’−アゾビスイソブチロニトリルあるいは過酸化アセチルを用いる場合、ビニルエステル組成物に含まれるビニルエステル(但し、クロトン酸ビニルを除く)に対して0.01〜0.2モル%が好ましく、0.02〜0.15モル%がより好ましい。重合温度は特に限定されないが、室温〜150℃程度が適当であり、好ましくは40℃以上かつ使用する溶媒の沸点以下である。
上記の重合反応は、連鎖移動剤の存在下で行ってもよい。連鎖移動剤は、例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどのアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;2−ヒドロキシエタンチオールなどのメルカプタン類;ホスフィン酸ナトリウム一水和物などのホスフィン酸塩類などである。なかでもアルデヒド類及びケトン類が好適に用いられる。連鎖移動剤の使用量は、使用する連鎖移動剤の連鎖移動係数及び目的とするPVAの重合度に応じて決定することができるが、一般にビニルエステル組成物に含まれるビニルエステル(但し、クロトン酸ビニルを除く)100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
本発明の製造方法では、上記のようにして得られるポリビニルエステルをけん化する工程を有する。ポリビニルエステルをけん化することによって、ポリビニルエステル中のビニルエステル単位はビニルアルコール単位に変換される。
ポリビニルエステルのけん化は、例えばアルコールまたは含水アルコールに当該ポリビニルエステルが溶解した状態で行うことができる。けん化に使用するアルコールとしては、例えばメタノール、エタノールなどの低級アルコールが挙げられ、好ましくはメタノールである。けん化に使用するアルコールは、例えばその質量の40質量%以下の割合で、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ベンゼンなどの他の溶媒を含んでもよい。けん化に使用する触媒は、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、ナトリウムメチラートなどのアルカリ触媒、鉱酸などの酸触媒である。けん化を行う温度は限定されないが、20〜60℃の範囲内が好適である。けん化の進行にしたがってゲル状の生成物が析出してくる場合には、生成物を粉砕した後、洗浄、乾燥して、目的とするPVA樹脂を得ることができる。けん化方法は、前述した方法に限らず公知の方法を適用することができる。
PVA樹脂に含まれるPVAは、ビニルアルコール単位のみから構成されていてもよいが、ビニルエステルと共重合可能な他の単量体に由来する構造単位をさらに含んでいてもよい。当該他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数2〜30のα−オレフィン;(メタ)アクリル酸またはその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体等の(メタ)アクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;イタコン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;不飽和スルホン酸などを挙げることができる。上記のポリビニルエステルは、前記した他の単量体の1種または2種以上に由来する構造単位を有することができる。当該他の単量体は、ビニルエステル組成物を重合反応に供する際にこれを重合系内に予め存在させておいたり、あるいは、重合反応の進行中に系内にこれを添加したりするなどして使用することができる。
上記のPVAは、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、1種または2種以上のグラフト共重合可能な単量体によって変性されたものであってもよい。当該グラフト共重合可能な単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸またはその誘導体;不飽和スルホン酸またはその誘導体;炭素数2〜30のα−オレフィンなどが挙げられる。PVAにおけるグラフト共重合可能な単量体に由来する構造単位の割合は、PVAを構成する全構造単位のモル数に基づいて、5モル%以下であることが好ましい。
上記のPVAは、その水酸基の一部が架橋されていてもよいし架橋されていなくてもよい。また上記のPVAは、その水酸基の一部がアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等のアルデヒド化合物などと反応してアセタール構造を形成していてもよいし、これらの化合物と反応せずアセタール構造を形成していなくてもよい。
PVA樹脂に含まれるPVAにおけるビニルアルコール単位の含有率は、本発明の効果がより顕著に奏されることから、PVAを構成する全構造単位のモル数に基づいて80モル%を超えることが好ましく、85モル%を超えることがより好ましく、90モル%を超えることがさらに好ましく、特に得られるPVAフィルムを光学フィルム製造用の原反フィルムとして使用するときのように耐水性が要求される場合などにおいて、当該含有率は、95モル%以上であることが好ましく、97モル%以上であることがより好ましく、98モル%以上であることがさらに好ましく、99モル%以上、99.5モル%以上、さらには99.8モル%以上であってもよい。
PVAの重合度は、1,500〜6,000の範囲内であることが好ましく、1,800〜5,000の範囲内であることがより好ましく、2,000〜4,000の範囲内であることがさらに好ましい。当該重合度が1,500以上であることにより、得られるPVAフィルムを光学フィルム製造用の原反フィルムとして使用する際に当該光学フィルムの耐久性をより向上させることができる。一方、当該重合度が6,000以下であることにより、製造コストの上昇や、製膜時における工程通過性の不良などを抑制することができる。なお、本明細書におけるPVAの重合度は、JIS K6726−1994の記載に準じて測定した平均重合度を意味する。
PVA樹脂の形状に特に制限はないが、その製造や取り扱いの容易さなどの観点から、チップ状または粉末状であることが好ましい。PVA樹脂におけるPVAの含有率に特に制限はないが、例えば、80質量%以上、90質量%以上、93質量%以上、95質量%以上、さらには98質量%以上とすることができる。PVA樹脂におけるPVA以外の成分としては、例えば水などが挙げられる。
本発明の製造方法によれば、着色の少ないPVA樹脂を簡便に製造することができる。PVA樹脂の着色度合いの程度としては、YI値として、25以下であることが好ましく、22以下であることがより好ましく、21以下であることがさらに好ましく、18以下であることが特に好ましい。YI値の下限に特に制限はないが、YI値は例えば5以上である。PVA樹脂のYI値は実施例において後述する方法により測定することができる。
本発明の製造方法により製造されるPVA樹脂の用途に特に制限はなく、PVA樹脂の用途として従来公知の用途に好ましく使用することができるが、本発明の製造方法によれば、着色の少ないPVA樹脂を簡便に製造することができることから、当該PVA樹脂はPVAフィルムの製造原料として使用することが好ましく、特に偏光フィルムや位相差フィルム等の光学フィルムを製造するための光学フィルム製造用フィルム(原反フィルム)の製造原料として使用することが好ましい。
〔PVAフィルム〕
上記のPVA樹脂を用いて製造されるPVAフィルムは、PVAの他に可塑剤を含むことができる。好ましい可塑剤としては多価アルコールが挙げられ、具体例としては、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。PVAフィルムはこれらの可塑剤の1種または2種以上を含むことができる。これらの中でも、延伸性の向上効果の点からグリセリンが好ましい。
PVAフィルムにおける可塑剤の含有量は、それに含まれるPVA100質量部に対して、1〜20質量部の範囲内であることが好ましく、3〜17質量部の範囲内であることがより好ましく、5〜15質量部の範囲内であることがさらに好ましい。当該含有量が1質量部以上であることによりPVAフィルムの延伸性がより向上する。一方、当該含有量が20質量部以下であることにより、PVAフィルムが柔軟になり過ぎて取り扱い性が低下するのを抑制することができる。
PVAフィルムには、さらに、充填剤、銅化合物などの加工安定剤、耐候性安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、他の熱可塑性樹脂、潤滑剤、香料、消泡剤、消臭剤、増量剤、剥離剤、離型剤、補強剤、架橋剤、防かび剤、防腐剤、結晶化速度遅延剤などの添加剤を、必要に応じて適宜配合できる。
PVAフィルムにおけるPVA及び可塑剤の合計の占める割合は、PVAフィルムの質量に基づいて、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
PVAフィルムの厚みは特に制限されないが、一般的には1〜100μm、さらには5〜75μm、特に10〜60μmであることが好ましい。当該厚みが薄すぎると、偏光フィルム等の光学フィルムを製造するための一軸延伸処理時に、延伸切れが発生しやすくなる傾向がある。また、当該厚みが厚すぎると、光学フィルムを製造するための一軸延伸処理時に延伸斑が発生しやすくなる傾向がある。
PVAフィルムの幅は特に制限されず、製造される偏光フィルムの用途などに応じて決めることができる。近年、液晶テレビや液晶モニターの大画面化が進行している点からPVAフィルムの幅を3m以上にしておくと、これらの用途に好適である。PVAフィルムの幅は好ましくは4m以上である。一方、PVAフィルムの幅があまりに大きすぎると実用化されている装置で偏光フィルムを製造する場合に一軸延伸自体を均一に行うことが困難になりやすいので、PVAフィルムの幅は7m以下であることが好ましく、6m以下がさらに好ましく、5m以下が特に好ましいい。
PVAフィルムの形状は特に制限されないが、より均一なPVAフィルムを連続して円滑に製造することができると共に、それを用いて偏光フィルムを製造する場合などにおいても連続して使用することができることから長尺のフィルムであることが好ましい。長尺のフィルムの長さ(長さ方向の長さ)は特に制限されず、用途などに応じて適宜設定することができ、例えば、5〜30,000mの範囲内とすることができる。
PVAフィルムの膨潤度は、160〜240%の範囲内であることが好ましく、170〜230%の範囲内であることがより好ましく、180〜220%の範囲内であることが特に好ましい。膨潤度が160%以上であることにより極度に結晶化が進行するのを抑制することができて、安定してより高倍率まで延伸することができる。一方、膨潤度が240%以下であることにより、延伸時の溶解が抑制され、より高温の条件下でも延伸することが可能となる。なお本明細書において、PVAフィルムの膨潤度とは、PVAフィルムを30℃の蒸留水中に30分間浸漬した際の質量を、浸漬後105℃で16時間乾燥した後の質量で除して得られる値の百分率を意味する。
上記のPVA樹脂を用いてPVAフィルムを製造する際の製造方法は特に限定されず、製膜後のフィルムの厚み及び幅がより均一になる製造方法を好ましく採用することができ、例えば、PVAフィルムを構成する上記したPVA、及び必要に応じてさらに、上記した可塑剤、添加剤、及び後述する界面活性剤などのうちの1種または2種以上が液体媒体中に溶解した製膜原液や、PVA、及び必要に応じてさらに、可塑剤、添加剤、界面活性剤、及び液体媒体などのうちの1種または2種以上を含み、PVAが溶融している製膜原液を用いて製造することができる。当該製膜原液が可塑剤、添加剤、及び界面活性剤の少なくとも1種を含有する場合には、それらの成分が均一に混合されていることが好ましい。
製膜原液の調製に使用される上記液体媒体としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。そのうちでも、環境に与える負荷や回収性の点から水が好ましい。
製膜原液の揮発分率(製膜時に揮発や蒸発によって除去される液体媒体などの揮発性成分の製膜原液中における含有割合)は、製膜方法、製膜条件などによっても異なるが、一般的には、50〜95質量%の範囲内であることが好ましく、55〜90質量%の範囲内であることがより好ましく、60〜85質量%の範囲内であることがさらに好ましい。製膜原液の揮発分率が50質量%以上であることにより、製膜原液の粘度が高くなり過ぎず、製膜原液調製時の濾過や脱泡が円滑に行われ、異物や欠点の少ないPVAフィルムの製造が容易になる。一方、製膜原液の揮発分率が95質量%以下であることにより、製膜原液の濃度が低くなり過ぎず、工業的なPVAフィルムの製造が容易になる。
製膜原液は界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤を含むことにより、製膜性が向上してフィルムの厚み斑の発生が抑制されると共に、製膜に使用する金属ロールやベルトからのフィルムの剥離が容易になる。界面活性剤を含む製膜原液からPVAフィルムを製造した場合には、当該PVAフィルム中には界面活性剤が含有され得る。上記の界面活性剤の種類は特に限定されないが、金属ロールやベルトからの剥離性の観点などから、アニオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウム等のカルボン酸型;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、オクチルサルフェート等の硫酸エステル型;ドデシルベンゼンスルホネート等のスルホン酸型などが好適である。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型;ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型;ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型;ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型などが好適である。
これらの界面活性剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
製膜原液が界面活性剤を含む場合、その含有量は、製膜原液に含まれるPVA100質量部に対して、0.01〜0.5質量部の範囲内であることが好ましく、0.02〜0.3質量部の範囲内であることがより好ましく、0.05〜0.1質量部の範囲内であることが特に好ましい。当該含有量が0.01質量部以上であることにより製膜性及び剥離性がより向上する。一方、当該含有量が0.5質量部以下であることにより、界面活性剤がPVAフィルムの表面にブリードアウトしてブロッキングが生じ取り扱い性が低下するのを抑制することができる。
上記した製膜原液を用いてPVAフィルムを製膜する際の製膜方法としては、例えば、キャスト製膜法、押出製膜法、湿式製膜法、ゲル製膜法などが挙げられる。これらの製膜方法は1種のみを採用しても2種以上を組み合わせて採用してもよい。これらの製膜方法の中でもキャスト製膜法、押出製膜法が、厚み及び幅が均一で物性の良好なPVAフィルムが得られることから好ましい。製膜されたPVAフィルムには必要に応じて乾燥や熱処理を行うことができる。
PVAフィルムの具体的な製造方法の例としては、例えば、T型スリットダイ、ホッパープレート、I−ダイ、リップコーターダイ等を用いて、上記の製膜原液を最上流側に位置する回転する加熱した第1ロール(あるいはベルト)の周面上に均一に吐出または流延し、この第1ロール(あるいはベルト)の周面上に吐出または流延された膜の一方の面から揮発性成分を蒸発させて乾燥し、続いてその下流側に配置した1個または複数個の回転する加熱したロールの周面上でさらに乾燥するか、または熱風乾燥装置の中を通過させてさらに乾燥した後、巻き取り装置により巻き取る方法を工業的に好ましく採用することができる。加熱したロールによる乾燥と熱風乾燥装置による乾燥とは、適宜組み合わせて実施してもよい。
〔偏光フィルム〕
上記のPVAフィルムを用いて偏光フィルムを製造する際の方法は特に制限されず、従来から採用されているいずれの方法を採用してもよい。このような方法としては、例えば、上記のPVAフィルムに対して染色及び一軸延伸を施したり、染料を含有する上記のPVAフィルムに対して一軸延伸を施したりする方法が挙げられる。偏光フィルムを製造するためのより具体的な方法としては、上記のPVAフィルムに対して、膨潤、染色、一軸延伸、及び必要に応じてさらに、架橋処理、固定処理、乾燥、熱処理などを施す方法が挙げられる。この場合、膨潤、染色、架橋処理、一軸延伸、固定処理などの各処理の順序は特に制限されず、1つまたは2つ以上の処理を同時に行うこともできる。また、各処理の1つまたは2つ以上を2回またはそれ以上行うこともできる。
膨潤は、PVAフィルムを水に浸漬することにより行うことができる。水に浸漬する際の水の温度としては、20〜40℃の範囲内であることが好ましく、22〜38℃の範囲内であることがより好ましく、25〜35℃の範囲内であることがさらに好ましい。また、水に浸漬する時間としては、例えば、0.1〜5分間の範囲内であることが好ましく、0.5〜3分間の範囲内であることがより好ましい。なお、水に浸漬する際の水は純水に限定されず、各種成分が溶解した水溶液であってもよいし、水と水性媒体との混合物であってもよい。
染色は、PVAフィルムに対して二色性色素を接触させることにより行うことができる。二色性色素としてはヨウ素系色素を用いるのが一般的である。染色の時期としては、一軸延伸前、一軸延伸時、一軸延伸後のいずれの段階であってもよい。染色はPVAフィルムを染色浴としてヨウ素−ヨウ化カリウムを含有する溶液(特に水溶液)中に浸漬させることにより行うのが一般的であり、本発明においてもこのような染色方法が好適に採用される。染色浴におけるヨウ素の濃度は0.01〜0.5質量%の範囲内であることが好ましく、ヨウ化カリウムの濃度は0.01〜10質量%の範囲内であることが好ましい。また、染色浴の温度は20〜50℃、特に25〜40℃とすることが好ましい。
PVAフィルムに対して架橋処理を施すことで、高温で湿式延伸する際にPVAが水へ溶出するのをより効果的に防止することができる。この観点から架橋処理は二色性色素を接触させる処理の後であって一軸延伸の前に行うのが好ましい。架橋処理は、架橋剤を含む水溶液にPVAフィルムを浸漬することにより行うことができる。当該架橋剤としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物の1種または2種以上を使用することができる。架橋剤を含む水溶液における架橋剤の濃度は1〜15質量%の範囲内であることが好ましく、2〜7質量%の範囲内であることがより好ましく、3〜6質量%の範囲内であることがさらに好ましい。架橋剤の濃度が1〜15質量%の範囲内にあることで十分な延伸性を維持することができる。架橋剤を含む水溶液はヨウ化カリウム等の助剤を含有してもよい。架橋剤を含む水溶液の温度は、20〜50℃の範囲内、特に25〜40℃の範囲内とすることが好ましい。当該温度を20〜50℃の範囲内にすることで効率良く架橋することができる。
一軸延伸は、湿式延伸法または乾式延伸法のいずれで行ってもよい。湿式延伸法の場合は、ホウ酸を含む水溶液中で行うこともできるし、上記した染色浴中や後述する固定処理浴中で行うこともできる。また乾式延伸法の場合は、室温のまま延伸を行ってもよいし、加熱しながら延伸してもよいし、吸水後のPVAフィルムを用いて空気中で行うこともできる。これらの中でも、湿式延伸法が好ましく、ホウ酸を含む水溶液中で一軸延伸するのがより好ましい。ホウ酸水溶液中におけるホウ酸の濃度は0.5〜6.0質量%の範囲内であることが好ましく、1.0〜5.0質量%の範囲内であることがより好ましく、1.5〜4.0質量%の範囲内であることが特に好ましい。また、ホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有してもよく、その濃度は0.01〜10質量%の範囲内にすることが好ましい。
一軸延伸における延伸温度は、30〜90℃の範囲内であることが好ましく、40〜80℃の範囲内であることがより好ましく、50〜70℃の範囲内であることが特に好ましい。
また、一軸延伸における延伸倍率は、得られる偏光フィルムの偏光性能の点から6.8倍以上であることが好ましく、6.9倍以上であることがより好ましく、7.0倍以上であることが特に好ましい。延伸倍率の上限は特に制限されないが、延伸倍率は8倍以下であることが好ましい。
長尺のPVAフィルムを一軸延伸する場合における一軸延伸の方向に特に制限はなく、長尺方向への一軸延伸や横一軸延伸を採用することができるが、偏光性能に優れる偏光フィルムが得られることから長尺方向への一軸延伸が好ましい。長尺方向への一軸延伸は、互いに平行な複数のロールを備える延伸装置を使用して、各ロール間の周速を変えることにより行うことができる。一方、横一軸延伸はテンター型延伸機を用いて行うことができる。
偏光フィルムの製造にあたっては、フィルムへの二色性色素(ヨウ素系色素等)の吸着を強固にするために固定処理を行うことが好ましい。固定処理に使用する固定処理浴としては、ホウ酸、硼砂等のホウ素化合物の1種または2種以上を含む水溶液を使用することができる。また、必要に応じて、固定処理浴中にヨウ素化合物や金属化合物を添加してもよい。固定処理浴におけるホウ素化合物の濃度は、一般に2〜15質量%、特に3〜10質量%程度であることが好ましい。当該濃度を2〜15質量%の範囲内にすることで二色性色素の吸着をより強固にすることができる。固定処理浴の温度は、15〜60℃、特に25〜40℃であることが好ましい。
乾燥の条件は特に制限されないが、30〜150℃の範囲内、特に50〜130℃の範囲内の温度で乾燥を行うことが好ましい。30〜150℃の範囲内の温度で乾燥することで寸法安定性に優れる偏光フィルムが得られやすい。
以上のようにして得られた偏光フィルムは、通常、その両面または片面に、光学的に透明で且つ機械的強度を有する保護膜を貼り合わせて偏光板にして使用される。保護膜としては、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどが使用される。また、貼り合わせのための接着剤としては、PVA系接着剤やウレタン系接着剤などを挙げることができるが、中でもPVA系接着剤が好適である。
上記のようにして得られた偏光板は、アクリル系等の粘着剤をコートした後、ガラス基板に貼り合わせてLCDの部品として使用することができる。同時に位相差フィルムや視野角向上フィルム、輝度向上フィルム等と貼り合わせてもよい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において採用された各測定または評価方法を以下に示す。
PVA樹脂のYI値
以下の実施例または比較例で得られたPVA樹脂のYI値をハンターラブ社製「LabScan」XEを用いて測定した。具体的には約20gのPVA樹脂を丸セルに入れ、容器の側面を軽く叩きながら充填し、黒のカップで蓋をしてから、YI値の測定を行った。
PVAフィルムのYI値
以下の実施例または比較例で得られたPVAフィルムを重ねて約600μmの厚みとし、株式会社日立製作所製の分光光度計「U−3000」を用いてそのYI値(加熱する前)を測定した。また、以下の実施例または比較例で得られたPVAフィルムを100℃で20時間加熱した後、重ねて約600μmの厚みとし、株式会社日立製作所製の分光光度計「U−3000」を用いてそのYI値(加熱した後)を測定した。
[実施例1]
(1)撹拌機、還流冷却管、アルゴン導入管、開始剤の添加口を備えた反応器に、各成分を表1に示す量で含む酢酸ビニル組成物(酢酸ビニルの純度99質量%以上)700質量部およびメタノール300質量部を仕込み、アルゴンバブリングをしながら30分間系内をアルゴン置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25質量部を添加し、重合を開始した。60℃で180分間重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止時の重合率は40モル%であった。続いて、30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応のモノマーの除去を行い、ポリ酢酸ビニル(PVAc)のメタノール溶液(濃度30質量%)を得た。
次に、これにメタノールを加えて調製したPVAcのメタノール溶液497質量部(溶液中のPVAcの量は100質量部)に、水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度10.0質量%)14.0質量部を添加して、40℃でけん化反応を行った。水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加後約1分でゲル化物が生成したので、これを粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で59分間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500質量部を加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得て、これにメタノール2,000質量部を加えて1時間加熱還流した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱水して得られた白色固体を真空乾燥機にて40℃で24時間乾燥させて、重合度が2,400、ビニルアルコール単位の含有率が99.9モル%のPVAから実質的になるチップ状のPVA樹脂(PVAの純度98質量%以上)を得た。当該PVA樹脂のYI値を上記の方法により測定し、結果を表1に記載した。
(2)上記のPVA樹脂100質量部、可塑剤としてグリセリン10質量部、および界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム0.1質量部を水と混合して、PVAの含有率が10質量%の水溶液を得た。この水溶液を製膜原液として用いて、これを80℃の金属ロール上で乾燥し、得られたフィルムを熱風乾燥機中で所定の温度で1分間熱処理をすることにより膨潤度を200%に調整して、厚み30μmのPVAフィルムを製造した。当該PVAフィルムのYI値(加熱する前および加熱した後)を上記の方法により測定し、結果を表1に記載した。
[実施例2および3ならびに比較例1および2]
各成分を表1に示す量で含む酢酸ビニル組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、重合度が2,400、ビニルアルコール単位の含有率が99.9モル%のPVAから実質的になるチップ状のPVA樹脂(PVAの純度98質量%以上)を得た。当該PVA樹脂のYI値を上記の方法により測定し、結果を表1に記載した。また、得られたPVA樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み30μmのPVAフィルムを製造した。当該PVAフィルムのYI値(加熱する前および加熱した後)を上記の方法により測定し、結果を表1に記載した。
Figure 2015203088

Claims (11)

  1. クロトン酸ビニルおよびクロトンアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも1種ならびにビニルエステル(但し、クロトン酸ビニルを除く)を含むビニルエステル組成物を重合反応に供する工程と、得られたポリビニルエステルをけん化する工程とを有するポリビニルアルコール樹脂の製造方法であって、ビニルエステル組成物におけるクロトン酸ビニルおよびクロトンアルデヒドの合計の含有量がビニルエステル(但し、クロトン酸ビニルを除く)に対して質量基準で0.1〜10ppmである、製造方法。
  2. ビニルエステルが酢酸ビニルである、請求項1に記載の製造方法。
  3. ビニルエステル組成物がクロトン酸ビニルを含む、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. ビニルエステル組成物におけるクロトン酸ビニルの含有量がビニルエステル(但し、クロトン酸ビニルを除く)に対して質量基準で7ppm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. ビニルエステル組成物におけるクロトンアルデヒドの含有量がビニルエステル(但し、クロトン酸ビニルを除く)に対して質量基準で10ppm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. ポリビニルアルコール樹脂に含まれるポリビニルアルコールにおけるビニルアルコール単位の含有率が80モル%を超える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. ポリビニルアルコール樹脂がチップ状または粉末状である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. ポリビニルアルコール樹脂のYI値が25以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されるポリビニルアルコール樹脂。
  10. 請求項9に記載のポリビニルアルコール樹脂を用いて製造されるポリビニルアルコールフィルム。
  11. 光学フィルム製造用フィルムである、請求項10に記載のポリビニルアルコールフィルム。
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