JP2015202600A - レーザー遮光シート - Google Patents
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Abstract
Description
クラス4のレーザーは、危険な拡散反射を引き起こし得るレーザーであり、拡散反射によるレーザーの暴露により眼の障害を生じる可能性があるだけでなく、火災発生の危険もあり、細心の注意が必要である。
例えばレーザーによる原子炉の廃炉解体、各種化学プラントの補修解体など様々な技術分野においてレーザーは使用されている。このレーザーを用いる作業は多種多様の作業が同時に進行している中で行われることが多いから、例えば廃炉解体の場合でも、全域を管理区域とすることは実際上困難であり、レーザーを使用して作業する区域を囲いなどで区画して、その区域内で作業する方法が採られる。
従来から一般的な溶接・切断時にスパッタシート(JIS A1323)が用いられているが、スパッタシートではレーザーを遮光することはできないから、レーザー作業域区画シートとしては使用できない。
また、下記特許文献1には、ガラス繊維表面に塩化ビニル系樹脂を含む被覆膜を設け、その被覆膜上にCu,Ni,Coなどの無電解メッキによる金属膜を設けた金属被覆ガラスクロスが記載されている。
本発明の目的は、レーザーを有効に吸収・散乱して、その機能が長期間発揮でき、しかも軽量で取扱い性の良いレーザー遮光シートを提供することにある。
レーザーを吸収・散乱する物質を含んでフィルム状に形成されたレーザー吸収・散乱層と、
そのレーザー吸収・散乱層の両側に設けられて、当該レーザー吸収・散乱層を保護する耐熱性保護層を備え、
前記レーザー吸収・散乱層と前記両側の耐熱性保護層を例えば接着剤などで一体に接合して屈曲性を有し、
前記両側の耐熱性保護層のうち少なくともレーザーが入射される側の耐熱性保護層は光透過性を有していることを特徴とするものである。
第2の手段は前記第1の手段において、
前記レーザーを吸収・散乱する物質が、酸化チタン、酸化スズ、カーボンナノファイバー、チタン系セラミックのグループから選択された少なくとも1種類の物質であることを特徴とするものである。
第3の手段は前記第1または第2の手段において、
前記耐熱性保護層が、例えばカーボン繊維、鉱物繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、金属被膜を形成したガラス繊維などの耐熱性繊維の織布または不織布で形成されていることを特徴とするものである。
第4の手段は前記第1ないし第3のいずれかの手段において、
前記耐熱性保護層の表面に、溶融粒子の付着を抑制する例えばシリコン樹脂などの溶融粒子付着抑制剤が塗布されていることを特徴とするものである。
第5の手段は前記第1ないし第4のいずれかの手段において、
当該レーザー遮光シートの周辺に沿って耐熱性のバイアステープを宛がい、前記バイアステープに沿って前記レーザー遮光シートと共に縫製して、前記バイアステープ上に所定の間隔をおいて例えばはと目状の金具などのシート設置具を複数個取り付けたことを特徴とするものである。
第6の手段は
前記第1ないし第5のいずれかの手段のレーザー遮光シートで、レーザーを使用して作業するレーザー作業域を囲んで他の区域と区画するためのレーザー作業域区画シートを構成していることを特徴とするものである。
レーザー吸収・散乱層2は、レーザーを吸収・散乱する物質と従来公知の耐熱性の結着剤、もしくは柔軟性を要求される場合は熱可塑性の結着剤の混練物でフィルム状に形成されている。レーザーを吸収・散乱する物質としては、例えば酸化チタン、酸化スズ、カーボンナノファイバー、チタン系セラミックなどが挙げられ、その中でも酸化チタンが性能的に優れている。このことについては、後述の具体的な実施例のところで説明する。
また、レーザー吸収・散乱層2を耐熱性保護層3a、3bで両側から挟んで被覆することによって、レーザー吸収・散乱層2は熱的にも保護される。さらに作業域区画シート1を長期間繰り返して使用してもレーザー吸収・散乱層2の一部脱落が防止でき、長期間の使用が可能となる。
特に内側、すなわちレーザーが入射される側の耐熱性保護層3aの表面はレーザーの使用によってスパッタ粒子11が付着する可能性が高いから、少なくともその方の耐熱性保護層3aには溶融粒子付着抑制剤が塗布される。
(実施例1)
内側耐熱性保護層3aには、従来公知の方法により100g/m2の片面シリコンコートを行った平織のカーボン繊維織物を使用した。レーザー吸収・散乱層2には、酸化チタン粒子と従来公知の耐熱性の結着剤の混練物でフィルム状に形成した50g/m2の酸化チタンフィルムを用い、従来公知の方法により40g/m2のウレタン系接着剤で、内側耐熱性保護層3aの反シリコンコート面とレーザー吸収・散乱層2を貼り合せた。
外側耐熱性保護層3bには内側耐熱性保護層3aと同様に作製したカーボン繊維織物を使用し、レーザー吸収・散乱層2と外側耐熱性保護層3bを貼り合せて、3層構造の作業域区画シートを作製した。
(実施例2)
前記実施例1と相違する点は、酸化チタンフィルムの代わりに酸化スズフィルムを使用した点である。
(実施例3)
前記実施例1と相違する点は、酸化チタンフィルムの代わりにカーボンナノファイバーフィルムを使用した点である。
(実施例4)
前記実施例1と相違する点は、酸化チタンフィルムの代わりにチタン系セラミックフィルムを使用した点である。
前記実施例1〜4に係る作業域区画シートのレーザー照射による評価を行った。この評価は、(a)レーザー透過率の測定、(b)レーザー照射時のシート外表面温度測定の2項目である。なお、作業域区画シート (試験片)のサイズは横、縦とも30cmとした。
(a).レーザー透過率の測定
試験に用いられるレーザー源と所定の間隔をおいて作業域区画シートを設置し、レーザー源と作業域区画シートの間に集光レンズを配置した。
レーザー遮光率(%)=100−(レーザー透過率)
(b).レーザー照射時のシート外表面温度測定
レーザー照射時における作業域区画シートの外側耐熱性保護層の外表面温度を放射温度計で測定した。
前記各実施例の作業域区画シートは、反射光や散乱光などを十分に低い強度まで減衰し、しかも作業時に発生するスパッタ粒子や火花の高温に耐えるシートである。
また、前記各実施例の作業域区画シートの全体の厚さは、高々2mm程度で薄いシートである。本発明者の諸種の実験結果から、作業域区画シートの全体の厚さを3mm以下に規制すれば、良好な屈曲性が得られることが分かった。
レーザーを吸収・散乱する物質を用いてフィルム状に形成したレーザー吸収・散乱層と、例えばカーボン繊維、鉱物繊維、セラミック繊維、ガラス繊維などで構成した耐熱性保護層は、共にフレキシブルであり、作業域区画シート全体として良好な屈曲性を有している。
そのため例えば原子炉内の廃炉解体場所や化学プラント内の補修解体場所のように、配管などの部材や各種機器などが三次元的に複雑に入り込んだ所でも、周囲の形状、構造に応じて作業域区画シートを屈曲してレーザー作業域を容易に区画形成することができる。また、作業域区画シートを折り畳んで持ち運びしたり、収納箱などに収納・保管することができ、取扱い性が良好である。
また、各実施例の作業域区画シートで、横2m、縦3mのシート重量は約9Kgである。これに対して鋼板をレーザーの遮蔽板として使用する場合は0.5mmの厚さは必要であり、その厚さで本実施例の作業域区画シートと同じサイズの鋼板の重量は約200Kgである。従って本実施例の作業域区画シートは、鋼板製遮蔽板に比較して22分1の軽量化が図れる。
さらに、本発明のレーザー遮光シートは鋼板と違ってレーザーを反射しないで減衰するため、反射光の悪影響がなく、特定の空間を囲んで、その中でレーザー作業を行う作業域区画シートに特に適している。
本発明のレーザー遮光シートの用途は、実施例で示した作業域区画シートに限定されるものではなく、例えばレーザーの反射光や拡散光による損傷を避けたい部分の保護シートとして、事前に当該部分をレーザー遮光シートで覆うなど他の用途もある。
2:レーザー吸収・散乱層、
3a:内側耐熱性保護層、
3b:外側耐熱性保護層、
4:レーザー作業、
5:レーザー作業域、
6:他の区域、
8:散乱光、
9:反射光、
10:副次光、
11:スパッタ粒子、
12:火花、
13:バイアステープ、
14:シート設置具。
Claims (6)
- レーザーを吸収・散乱する物質を含んでフィルム状に形成されたレーザー吸収・散乱層と、
そのレーザー吸収・散乱層の両側に設けられて、当該レーザー吸収・散乱層を保護する耐熱性保護層を備え、
前記レーザー吸収・散乱層と前記両側の耐熱性保護層を一体に接合して屈曲性を有し、
前記両側の耐熱性保護層のうち少なくともレーザーが入射される側の耐熱性保護層は光透過性を有していることを特徴とするレーザー遮光シート。 - 請求項1に記載のレーザー遮光シートにおいて、
前記レーザーを吸収・散乱する物質が、酸化チタン、酸化スズ、カーボンナノファイバー、チタン系セラミックのグループから選択された少なくとも1種類の物質であることを特徴とするレーザー遮光シート。 - 請求項1または2に記載のレーザー遮光シートにおいて、
前記耐熱性保護層が、耐熱性繊維の織布または不織布で形成されていることを特徴とするレーザー遮光シート。 - 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のレーザー遮光シートにおいて、
前記耐熱性保護層の表面に、溶融粒子の付着を抑制する溶融粒子付着抑制剤が塗布されていることを特徴とするレーザー遮光シート。 - 請求項1ないし4のいずれか1項に記載のレーザー遮光シートにおいて、
当該レーザー遮光シートの周辺に沿って耐熱性のバイアステープを宛がい、前記バイアステープに沿って前記レーザー遮光シートとともに縫製して、前記バイアステープ上に所定の間隔をおいてシート設置具を複数個取り付けたことを特徴とするレーザー遮光シート。 - 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のレーザー遮光シートで、レーザーを使用して作業するレーザー作業域を囲んで他の区域と区画するためのレーザー作業域区画シートを構成していることを特徴とするレーザー遮光シート。
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