本発明の実施形態の目的は、電離放射線への外部被ばくに依る、放射線防護服を着用している人によって受容される実効線量の推定についての良好かつ効率的な手段及び方法を提供することである。
本発明の実施形態の利点は、放射線防護服を着用している人の実効線量が、効率的かつ正確に推定され得ることである。例えば、インターベンショナルラジオロジー及び/またはインターベンショナルカーディオロジーにおいて働いている医療スタッフを表すそれぞれの被ばく条件下の鉛または鉛同等物エプロン、及び甲状腺シールドを着用している人の実効線量は、推定の元となる実際の実効線量の40%〜160%の推定範囲内、またはさらに実際の実効線量の50%〜150%の推定範囲内で推定可能であり、あるいはさらに50%未満の過小推定幅及び50%未満の過大推定幅を有する本発明の実施形態によって推定され得る。
このような推定幅は、非常に広いように見え得るが、本発明の実施形態は、例えば、インターベンショナルラジオロジー及び/またはインターベンショナルカーディオロジーにおいて被るものに類似する広い範囲の電離放射線被ばく条件下の最大限の不確実性に対して逆関係であるように、放射線防護服を着用している人に対する実効線量推定の正確さを実現し、これは、単一線量計データ記録に基づく先行技術の推定方法を含むとともに複数線量計データ記録に基づく先行技術の方法を含む、個人線量測定に基づく実効線量推定用の先行技術の方法論の大部分よりも良好、またさらに全てのものよりも良好であり得る。
本発明の実施形態の利点は、線量応答特性、例えば、線量記録の線質依存性及び/または角度依存性が、インターベンショナルラジオロジー及びインターベンショナルカーディオロジーにおいて働く医療スタッフのそれぞれの被ばく条件、例えば、それぞれの放射線場の下、放射線防護服、例えば、放射線防護エプロン及び/または甲状腺シールド襟を着用している人の実効線量のものに類似するような手法において設計された線量計によって収集された測定値から、実効線量推定が得られ得ることである。
本発明の実施形態の利点は、IR/ICにおいて働く医療スタッフの実効線量監視用に適した受動的個人全身線量計が提供されることである。
本発明の実施形態の利点は、人の実効線量が、所定の単一場所において身体上に装着された個人線量計によって監視され得ることである。
本発明の実施形態の利点は、実施形態による線量計が、例えば、実質的に機械的に分離されるが、一方で、実効線量の推定に対し、使用において所定の空間的構成に配列される所定の数個の線量測定機器の使用と対照的に、単一機器において実装可能なことである。このため、本発明の実施形態の利点は、実効線量を推定するために組み合わせて使用される一式の線量計における線量計を置き違えるリスクが低減され得ることである。さらに本発明の実施形態の利点は、一式の線量計の不正確な相対位置に依るか、またはこのような一式における線量計の不注意な交換に依る推定エラーが回避されることである。
上記の目的は、本発明による方法及び機器によって実現される。
第1の態様において、本発明は、放射線防護服を着用している成人の実効線量を推定する個人放射線量計(personal radiation dosimeter)に関する。個人放射線量計は、例えば、構造的支持要素の背面、例えば、平坦背面が成人の身体に向かって面し、構造的支持要素の正面、例えば、平坦正面が成人の身体の外方に面するように(または身体からは離れた方向から面するように)、着用中に放射線防護服の外面に取り付くように適合された構造的支持要素(structural support element)を備える。個人線量計はまた、構造的支持要素上に取り付けられているか、またはその中に収容されている少なくとも2つの電離放射線検出器(ionizing radiation detector)を備える。各電離放射線検出器は、実質的に異なる線量応答、例えば、光子エネルギー、及び基準方向に対する放射線の入射角の関数として異なる線量応答を有する、電離放射線検出器を有する。この基準方向は、正面から背面に向けられており、これらの面のいずれかまたは両方に直交し得る。
少なくとも2つの電離放射線検出器の線量応答の所定の線形結合(predetermined linear combination)は、複数の基準被ばく条件の各々において成人によって受容される実効線量の40%〜160%の範囲における推定に対応する。
複数の基準被ばく条件は、少なくとも、基準方向に伝播する実質的平面光子波(substantially planar photon wave)への被ばく、基準方向と45°の角度をなす方向に沿って伝播する実質的平面光子波への被ばく、及び基準方向と60°の角度をなす方向に沿って伝播する実質的平面光子波への被ばくを含む。平面光子波の各々は、
a)80kVのピークX線管電圧(peak X-ray tube voltage)によって得られ、0.50mmのCu及び4.00mmのAlによってフィルタリングされたX線線質(またはX線放射線質、X-ray radiation quality)であって、ISO4037−1標準(ISO 4037-1 standard)によって定義(または規定)されている広いX線スペクトルW−80に対応する、X線線質と、
b)60kVのピークX線管電圧によって得られ、0.60mmのCu及び4.00mmのAlによってフィルタリングされたX線線質であって、ISO4037−1標準によって定義されている狭いX線スペクトルN−60に対応する、X線線質と、
c)60kVのピークX線管電圧によって得られ、0.30mmのCu及び4.00mmのAlによってフィルタリングされたX線線質であって、ISO4037−1標準によって定義されている広いX線スペクトルW−60に対応する、X線線質と、
のうちの1つに対応するエネルギー分布を有する。
本発明の実施形態による個人放射線量計において、放射線防護服は、放射線防護エプロン及び放射線防護甲状腺シールドを備え得る。
本発明の実施形態による個人放射線量計において、少なくとも2つの電離放射線検出器の第1の電離放射線検出器の線量応答は、20keV〜30keVの範囲の光子エネルギーを有する入射光子放射線に関して、少なくとも2つの電離放射線検出器の第2の電離放射線検出器の線量応答よりも少なくとも5倍高いものであり得る。
本発明の実施形態による個人放射線量計において、第1の電離放射線検出器の線量応答は、75keV〜85keVの範囲の光子エネルギーを有する入射光子放射線に関して、第2の電離放射線検出器の線量応答よりも3倍未満高いものであり得る。
本発明の実施形態による個人放射線量計において、第1の電離放射線検出器(5)の空気カーマ1単位あたりの線量応答は、0°から少なくとも60°の角度の範囲に亘る基準方向に対する入射角から実質的に独立し得る。
本発明の実施形態による個人放射線量計において、基準方向に沿って伝播する80keVの入射光子放射線に対する第2の電離放射線検出器の空気カーマ1単位あたりの線量応答は、基準方向に沿って伝播する60keVの入射光子放射線に対する第2の電離放射線検出器の空気カーマ1単位あたりの線量応答の2.0倍以上であり得る。
本発明の実施形態による個人放射線量計において、基準方向に沿って伝播する80keVの入射光子放射線に対する第2の電離放射線検出器の空気カーマ1単位あたりの線量応答は、基準方向に沿って伝播する100keVの入射光子放射線に対する第2の電離放射線検出器の空気カーマ1単位あたりの線量応答の1.4倍以上であり得る。
本発明の実施形態による個人放射線量計において、基準方向に対して60°の角度をなす方向において伝播する80keVの入射光子放射線に対する第2の電離放射線検出器の空気カーマ1単位あたりの線量応答は、基準方向に対して60°の角度をなす方向において伝播する100keVの入射光子放射線に対する第2の電離放射線検出器の空気カーマ1単位あたりの線量応答の1.5倍未満であり得る。
本発明の実施形態による個人放射線量計において、各電離放射線検出器は、感放射線要素(radiation sensitive element)、ならびに光子エネルギー及び/または入射角に依存する様式で感放射線要素における放射線入射をフィルタリングする放射線フィルタを備え得る。感放射線要素及び/または放射線フィルタは、その異なる線量応答を得るために、各電離放射線検出器によって異なり得る。
本発明の実施形態による個人放射線量計において、感放射線要素は、熱ルミネセンス検出器、ラジオフォトルミネセンス検出器、及び/若しくは光刺激ルミネセンス検出器を備え得る、または別の種類の受動的放射線検出器を備え得る。
本発明の実施形態による個人放射線量計において、感放射線要素は、能動的放射線検出器、例えば、ダイオード検出器及び/または直接イオン蓄積(DIS)検出器を備え得る。
本発明の実施形態による個人放射線量計において、少なくとも2つの電離放射線検出器の第1の電離放射線検出器のフィルタは、0.20〜0.60の範囲の透過率係数によって20keV〜40keVの範囲の光子エネルギーを有する光子放射線を減衰させるように適合され得る。透過率係数は、入射光子放射線の強度に対するフィルタを通過した後の減衰された光子放射線の強度の比率として定義され得る。
本発明の実施形態による個人放射線量計において、第1の電離放射線検出器のフィルタは、プラスチックポリマー材料を含み得る。
本発明の実施形態による個人放射線量計において、少なくとも2つの電離放射線検出器の第2の電離放射線検出器のフィルタは、例えば、放射線防護服を通る光子エネルギーの関数として光子放射線の透過率に対し、実質的に比例する光子エネルギーの関数として、光子放射線の透過率を得るために、基準方向に沿って伝播する光子放射線を減衰させるように適合され得る。
本発明の実施形態による個人放射線量計において、第2の電離放射線検出器のフィルタは、基準方向に沿って伝播し、0.02〜0.25の範囲の透過率係数によって50keV〜60keVの範囲のエネルギーを有するように適合され得る。
本発明の実施形態による個人放射線量計において、第2の電離放射線検出器のフィルタは、基準方向に沿って伝播する光子放射線を感放射線要素に衝突する前に減衰させる第1のフィルタリング要素、及び基準方向と45°〜80°の範囲である角度をなす方向に沿って伝播する光子放射線を減衰させる第2のフィルタリング要素を備え得る。
本発明の実施形態による個人放射線量計において、構造的支持要素は、背面によって支持されているか、または背面の少なくとも一部を形成する、後方散乱フィルタを備え得る。この後方散乱フィルタは、構造的支持要素が放射線防護服の外面に取り付けられたときに、放射線防護服によって少なくとも2つの電離放射線検出器に向かって後方散乱される放射線を減衰させるように適合され得る。
第2の態様において、本発明はまた、本発明の第1の態様の実施形態による個人放射線量計を備える個人放射線量測定システムに関する。システムはさらに、個人放射線量計を読み出す読取器を備える。読取器は、少なくとも2つの電離放射線検出器の各々によって収集された線量を表す値を特定するように適合されている。システムはまた、その値の所定の線形結合を計算することによって、個人放射線量計によって記録された実効線量を推定するように構成された、例えば、適合された及び/またはプログラムされた処理機器(または処理デバイス、processing device)を備える。
本発明の実施形態による個人放射線量測定システムにおいて、処理機器は、実効線量推定を得るために値の所定の線形結合を計算するように適合され、この実効線量推定は、この後に定義されるN−100に対応するエネルギー分布を有し、基準方向に沿って伝播する、線量計上に衝突した平面光子波に対する空気カーマ1単位あたりの線量応答を有し、これは、この後に定義されるN−80に対応するエネルギー分布を有する平面光子波に対する空気カーマ1単位あたりの線量応答の1.2倍以上であり得る。
本発明の実施形態による個人放射線量測定システムにおいて、処理機器は、実効線量推定を得るために値の所定の線形結合を計算するように適合され、この実効線量推定は、この後に定義されるN−100に対応するエネルギー分布を有し、基準方向に沿って伝播する、線量計上に衝突した平面光子波に対する空気カーマ1単位あたりの線量応答を有し、これは、この後に定義されるN−120に対応するエネルギー分布を有し、基準方向に沿って伝播する、線量計上に衝突した平面光子波に対する空気カーマ1単位あたりの線量応答の1.1倍以上であり得る。
更なる態様において、本発明はまた、放射線防護服を着用する成人の実効線量を推定する個人放射線量測定方法に関する。方法は、少なくとも2つの電離放射線検出器の各々が、互いの電離放射線検出器から10cm未満、例えば、5cm未満またはさらに3cm未満の距離において分離されるように、少なくとも2つの電離放射線検出器を着用中の放射線防護服の外面に位置付けることを含む。少なくとも2つの電離放射線検出器は、光子エネルギー、及び基準方向に対する放射線の入射角の関数として実質的に異なる線量応答を有する。この基準方向は、成人の身体の方に向けられ、例えば、身体に対する入射の前頭角に対応し得る。方法はさらに、これらの電離放射線検出器によって電離放射線を検出することを含む。
方法はまた、少なくとも2つの電離放射線検出器の各々によって収集された線量を表す値を特定することを含む。方法はさらに、その値の所定の線形結合を計算することによって、成人によって受容される実効線量を推定することを含む。この少なくとも2つの電離放射線検出器の線量応答の所定の線形結合は、複数の基準被ばく条件の各々において成人によって受容される実効線量の40%〜160%の範囲における推定に対応する。
複数の基準被ばく条件は、少なくとも、基準方向に伝播する実質的平面光子波への被ばく、基準方向と45°の角度をなす方向に沿って伝播する実質的平面光子波への被ばく、及び基準方向と60°の角度をなす方向に沿って伝播する実質的平面光子波への被ばくを含む。平面光子波の各々は、
80kVのピークX線管電圧によって得られ、0.50mmのCu及び4.00mmのAlによってフィルタリングされ、ISO4037−1標準によって定義されている広いX線スペクトルW−80に対応するX線線質と、
60kVのピークX線管電圧によって得られ、0.60mmのCu及び4.00mmのAlによってフィルタリングされ、ISO4037−1標準によって定義されている狭いX線スペクトルN−60に対応するX線線質と、
60kVのピークX線管電圧によって得られ、0.30mmのCu及び4.00mmのAlによってフィルタリングされ、ISO4037−1標準によって定義されている広いX線スペクトルW−60に対応するX線線質と、
のうちの1つに対応するエネルギー分布を有する。
本発明の実施形態による方法において、値の所定の線形結合を計算することは、この後に定義されるN−100に対応するエネルギー分布を有し、基準方向に沿って伝播する、検出器上に衝突した平面光子波に対する空気カーマ1単位あたりの線量応答であって、この後に定義されるN−120に対応するエネルギー分布を有し、基準方向に沿って伝播する、検出器上に衝突した平面光子波に対する空気カーマ1単位あたりの線量応答の1.1倍以上である、線量応答を有する実効線量の推量を計算することを含み得る。
本発明の特定の及び好ましい態様は、添付する独立及び従属請求項において提示される。従属請求項からの特徴は、請求項に明白に提示されるのみならず、適宜、独立請求項の特徴及び他の従属請求項の特徴と組み合わされ得る。
本発明のこれらの及び他の態様は、この後に説明される実施形態の参照により明らかにかつ明瞭になるであろう。
本発明は、特定の実施形態に対して一定の図面を参照して説明されることになるが、本発明は、これに限定されるものではなく、請求項によってのみ限定される。説明される図面は、単に概略であり、非限定的である。図面において、要素のいくつかのサイズは、例示的目的のために誇張され実際の縮尺で描かれていないことがある。寸法及び相対寸法は、本発明の実施のための実際の縮図に対応していない。
さらに、説明及び請求項における第1の、第2の等の用語は、類似要素間の区別のために使用され、時間的、空間的、格付けまたは任意の他の様式のいずれかの順序を説明するわけではない。そのように使用される用語が、適当な状況下で置き替え可能であり、本明細書において説明される発明の実施形態が、本明細書において説明されるか、または例示された以外の他の順番において実施可能であることが理解されるべきである。
さらに、説明及び請求項における頂部、下等の用語は、説明の目的のために使用され、相対位置を説明するわけではない。そのように使用される用語が、適当な状況下で置き替え可能であり、本明細書において説明される発明の実施形態が、本明細書において説明されるか、または例示された以外の他の方向付けにおいて実施可能であることが理解されるべきである。
請求項において使用される「備える」の用語は、その後に列記される手段に限定されるものとして解釈されるべきではなく、他の要素またはステップを除外しないことに注意すべきである。したがって、参照される、記載された特徴、完成体、ステップまたは構成要素の存在を特定するものとして解釈されるが、1つ以上の特徴、完成体、ステップまたは構成要素、あるいはそれらのグループの存在または追加を排除しない。したがって、「手段A及びBを備える機器」の表現の範囲は、構成要素A及びBのみからなる機器に限定されるべきではない。それは、本発明に対して、単に機器の関連構成要素がA及びBであることを意味する。
この明細書を通して「一実施形態」または「実施形態」の参照は、実施形態に関して説明される特定の特徴、構造または性質が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、この明細書を通して種々の位置における「一実施形態において」または「実施形態において」の語句の出現は、同一実施形態への全ての参照であるというわけではないが、そうであってもよい。さらに、特定の特徴、構造または性質は、1つ以上の実施形態において、この開示から当業者にとって明らかであろうように、任意の適切な様式によって組み合わせられ得る。
同様に、本発明の代表的な実施形態の説明において、本発明の種々の特徴が、開示の合理化及び種々の発明の態様のうちの1つ以上の理解における補助の目的のために、単一の実施形態、図、またはその説明において一緒にグループ化されることがある。この開示の方法は、しかしながら、請求項に挙げられた発明が、各請求項において明確に列挙されるよりも多くの特徴を必要する意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、後続するクレームが反映するように、発明の態様は、単一の前述の開示された実施形態の全ての特徴よりも少ない中にある。したがって、詳細な説明に続く請求項は、この詳細な説明内に本明細書によって明確に組み込まれ、この発明の別個の実施形態として単独で成り立つ各請求項を含む。
さらに、本明細書において説明されるいくつかの実施形態は、当業者によって理解されるように、いくつかの特徴を含むが、他の実施形態に含まれる他の特徴を含まない一方で、異なる実施形態の特徴の組み合わせが本発明の範囲内であることを意味し、異なる実施形態を形成する。例えば、後続する請求項において、任意の請求項に挙げられた実施形態が、任意の組み合わせにおいて使用され得る。
本明細書に提供される説明において、多数の特定の詳細が明らかにされる。しかしながら、本発明の実施形態が、これらの特定の詳細なしで実施され得ることが理解される。他の実例において、公知の方法、構造及び技術は、この説明の理解が不明瞭にならないために詳細に示されていない。
本発明の実施形態において参照が「個人全身線量計」または「個人線量計」に対してなされるが、これは、全身線量、例えば、実効線量を推定するために適切な個人線量計を特に意味する。
本発明の実施形態において参照が個人全身線量または実効線量に対してなされるが、これは、身体の複数の所定の組織及び器官における等価線量の組織加重和を意味する。つまり、実効線量は、全体として身体によって受容された電離放射線の量の確率的な健康リスクを表すものである。したがって、実効線量は、電離放射線に対する所定の身体部の各々の特定の感度を考慮する。したがって、実効線量は、2007年のICRP103詳述における実効線量Eを参照し得るが、例えば、1990年のICRP60、または1977年のICRP26によって定義されている、等価線量の組織加重和に類似するものをまた参照し得る。同様に、本発明の実施形態における実効線量の参照はまた、例えば米国NRC規制10CFR20 1003において参照される実効線量等価物HEを参照し得る。
第1の態様において、本発明は、本発明は、放射線防護服を着用している成人、例えば、放射線防護衣服を着用している成人利用者の実効線量を推定する個人放射線量計に関する。線量計は、着用中に放射線防護服に取り付けるための構造的支持要素と、エネルギー及び基準方向に対する入射角の関数として異なる線量応答を有する少なくとも2つの電離放射線検出器を備える。検出器の線量応答の所定の線形結合が、基準方向、基準方向と45°の角度、基準方向と60°の角度に沿ったそれぞれの平面光子波を含む複数の基準被ばくの各々における成人によって受容される実効線量の40%〜160%の範囲の推定に対応し、各平面波は、
80kVのピークX線管電圧によって得られ、0.50mmのCu及び4.00mmのAlによってフィルタリングされ、ISO4037−1標準によって定義されている広いX線スペクトルW−80に対応するX線線質と、
60kVのピークX線管電圧によって得られ、0.60mmのCu及び4.00mmのAlによってフィルタリングされ、ISO4037−1標準によって定義されている狭いX線スペクトルN−60に対応するX線線質と、
60kVのピークX線管電圧によって得られ、0.30mmのCu及び4.00mmのAlによってフィルタリングされ、ISO4037−1標準によって定義されている広いX線スペクトルW−60に対応するX線線質と、
のうちの1つに対応するエネルギー分布を有する。
例えば、これらの平面光子波の各々は、ISO4037−1標準によって定義されているW−80線質に対応するエネルギー分布を有し得る。
したがって、本発明の実施形態による線量計は、例えば、インターベンショナルラジオロジー及びインターベンショナルカーディオロジーにおいて働いている医療スタッフを表す被ばく条件下における、+60%以下の過大推定及び−60%以上の過小推定を含む、甲状腺襟を有する鉛エプロンのような放射線防護服を着用している人の実効線量を推定するために使用され得る。
本発明の実施形態による個人放射線量計は、少なくとも1つの放射線防護服、例えば、エプロンの形式のものを着用している医療スタッフの実効線量、例えば、インターベンショナルラジオロジーまたはインターベンショナルカーディオロジーにおける職務を行っている間に受容する電離放射線の実効線量を推定するために特に適切であり得る。本発明の実施形態による個人放射線量計は、放射線防護エプロン、例えば、鉛エプロン及び甲状腺シールドを着用している人の実効線量を推定するために特に適切であり、この実効線量は、インターベンショナルラジオロジー及びインターベンショナルカーディオロジーにおいて働いている医療スタッフを表す被ばく条件下で受容される放射線の量に対応し得る。特に、個人放射線量計は、60%以下の過大推定及び60%以下の過小推定を有するこのような典型的照射条件下における、例えば、実効線量推定が40%〜160%の範囲内である、例えば、その範囲が50%〜150%である、被ばくのこのような典型的条件下における実効線量を推定するために適切であり得る。
例えば、少なくとも2つの電離放射線検出器が、基準方向、基準方向と45°の角度及び基準方向と60°の角度に沿ったそれぞれの平面光子波被ばくを含み、各平面波がISO4037−1によって定義されているW−80線質に対応するエネルギー分布を有する、複数の基準被ばくの各々において成人によって受容される実効線量の40%〜160%の範囲の推定に検出器の線量応答の所定の線形結合が対応するように、例えば、形式及び構成において適合され得る、例えば、空間的幾何形状及び材料組成において適合され得るように、構成され得る。
本発明の実施形態による個人放射線量計1が、図3に示される。この個人放射線量計1は、例えば、図4に例示されるように、放射線防護服を着用している成人12の実効線量を推定するように特に適合される。実効線量は、成人12の身体において預託された外部放射線の量に対応する放射線実効線量であり得る。外部放射線は、成人12の身体の外側の放射源に由来する放射線を意味し得る。この外部放射線は、光子放射線、例えば、200keV未満の光子エネルギーを含むか、またはこれからなる光子放射線、例えば、150keV未満、またはさらに100keV未満のエネルギーを有する光子から実質的になる光子放射線を例えば含み得る。外部放射線は、例えば、患者の身体に対応する、低原子番号(Z)材料から実質的になる容量において、例えば、200keV未満のピークエネルギーを有するX線管のようなX線医用撮像で使用されるX線発生器によって得ることができる一次放射線質の散乱によって例えば生成される、散乱放射線を例えば含み得る。
放射線防護服は、所定の身体部用の放射線シールドとして働き、例えば、放射線防護服は、甲状腺シールド襟を含むか、または含まないエプロンであり得る。放射線防護服は、放射線防護エプロン11及び放射線防護甲状腺シールド13を例えば備える。
放射線防護服は、鉛または別の強固な放射線吸収体、例えば、X線放射を減衰させる異なるより高度な減衰材料または複合材料を含み得る、病院エプロンの形状を有する放射線防護エプロンを備え得る。放射線防護エプロンは、0.2mm〜1.0mmの範囲の鉛の厚み、または鉛等価物の厚み、例えば、0.5mm、0.35mm、0.475mm、0.42mm、0.25mmまたは0.2mmの鉛の厚み、または鉛等価物の厚みを例えば有する。鉛等価物は、記載した厚みを有する鉛の層によって吸収されることになる断片と等価である、そこに入射する電離放射線の断片を減衰させる放射線防護エプロンを意味し得る。
したがって、生命の維持に重要な器官の電離放射線への被ばくが、低減され得る。放射線防護服はまた、例えば、鉛または別の強固な放射線吸収体を含む、着用中に甲状腺の電離放射線への被ばくを低減する甲状腺襟を備える。放射線防護服は、放射線防護エプロン及び甲状腺シールド襟の組み合わせを備え得る。ただし、放射線防護服はまた、代替的または追加的に、所定の身体部の放射線被ばくを低減するように特に適合された他の着用品、例えば、目を防護する放射線防護ゴーグルまたは生殖腺を防護する放射線防護ベルトを備え得る。
線量計は、複数の線量関連量を記録するように適合されていることによって実効線量を推定するように適合され、このため成人の実効線量は、これらの量を考慮して計算され得る。線量計は、線量の推定において放射線防護服の放射線防護効果を特に考慮することによって実効線量を推定するように適合され、例えば、線量計は、線量計と組み合わせて着用される放射線防護服の所定の放射線防護特性を考慮して成人の実効線量の計算を可能にするように、特に構成され得る。
本発明の実施形態による個人放射線量計1は、構造的支持要素2、例えば、ハウジングまたは容器、支持プレートまたは支持フレームを備える。構造的支持要素2は、閉じられた、閉じられさらに可逆的に開放可能であるか、または開いた箱であるか、あるいはさらに実質的に2次元、例えば、平面であってもよい。構造的支持要素2は、使用時に単独に接続される要素であり、例えば、放射線防護服を着用している人の実効線量を監視するために放射線防護服に取り付けられるときに少なくとも単独に接続され得る。
構造的支持要素2は、着用中に放射線防護服の外面に取り付けるように適合される。例えば、構造的支持要素は、服に取り付くためのクリップを備え得るか、または他の締結手段を備え得る。放射線防護服の外面は、着用されている間に着用者に対して外を向く、服の表面を意味する。これに代えて、構造的支持要素は、放射線防護服上に置かれたか、またはさもなければ提供されたポケット内にぴったり入るような寸法とされることによって、放射線防護服の外面に取り付けるように適合され得る。
構造的支持要素2は、放射線防護服を着用している間に構造的支持要素2の背面7が成人の身体に向かって面し、構造的支持要素2の正面3が成人の身体の外方に面するように、着用中に放射線防護服の外面に取り付けるように適合される。
基準方向4が、例えば、線量計が着用中の放射線防護服に取り付けられるときに、成人の身体の前後軸に対応するように、正面から背面に定義される。この基準方向4は、例えば、背面に直交及び/または正面に直交し、正面から背面に向かって方向付けられ得る。基準方向はまた、例えば、電離放射線検出器5、6用のハウジングとして働く円筒対称構造的支持要素の場合において、構造的支持要素2の対称軸に対応し得る。基準方向は、構造的支持要素の主軸、例えば、矩形箱として形作られた構造的支持要素の頂点の方向に例えば対応し得る。
構造的支持要素は、例えば、実質的に曲がらないハウジングであり、例えば、このようなハウジング内に収容された検出器に機械的防護を提供するために、例えば、実質的に非弾性材料からなり得る。
したがって、本発明の実施形態による個人放射線量計は、単一容器またはハウジングを備え得る。例えば、被ばく中に追加の場所に配置される追加の線量計を必要とすることなく実効線量の良好な推定を提供するために、線量計が単独で放射線防護服の所定の場所に位置付けられ得ることが実施形態の利点である。したがって複数線量計の不正確な相対的位置付けに依る推定エラーが、好適に回避され得る。さらに、実施形態によるこのような線量計の使用は、複数線量計の読み取りに基づく実効線量推定方法に比べてより軽度な複雑さであり得る。これはまた、先行技術の実効線量推定において使用される一式における個々の線量計の不測の交換、これによる収集した測定値の無効化のリスク、及びこのような一式における線量計の1つを紛失するか、または忘れるリスクを低減する。
本発明による実施形態において、構造的支持要素2は、背面によって支持されるか、または背面7を形成するか、または背面7の一部を形成する後方散乱フィルタを備え得る。この後方散乱フィルタは、構造的支持要素2が放射線防護服の外面に取り付けられるときに、放射線防護服によって少なくとも2つの電離放射線検出器に向かって後方散乱される放射線を減衰させるように適合される。例えば、このような後方散乱フィルタは、プレートまたはプレート様要素を備え、銅からなり、例えば、後方散乱フィルタは、少なくとも1mmの銅層を備え、例えば、1mm〜3mmの範囲、例えば、2mmの厚みを有し得る。
実施形態による線量計1はまた、構造的支持要素2内に収容されたか、またはこれの表面に取り付けられた少なくとも2つの電離放射線検出器5、6を備える。これらの電離放射線検出器の各々は、他の電離放射線検出器とは異なる線量応答を有し、この線量応答は、光子エネルギーと、基準方向4に対する放射線の入射角と、に依存する関数として表される。
本発明の実施形態による線量計1において、各電離放射線検出器5、6は、感放射線要素と、光子エネルギー及び/または入射角に依存する様式によって感放射線要素上の放射線入射をフィルタリングする放射線フィルタと、を備える。感放射線要素及び/または放射線フィルタはさらに、各電離放射線検出器に対して、その異なる線量応答を得るために異なり得る。
例えば、感放射線要素は、少なくとも1つの受動的検出器を備え得る。例えば、感放射線要素は、例えば、LiF:Mg,Tiのようなフッ化リチウムを含む、熱ルミネセンス検出器(TLD)を備え得る。感放射線要素、例えば、少なくとも1つの線量測定検出器は、例えば、Al2O3:Cのような酸化アルミニウム材料を含む、光刺激ルミネセンス検出器(OSLD)を備え得る。感放射線要素は、少なくとも1つのラジオフォトルミネセンス(RPL)検出器、例えば、ラジオフォトルミネセンスガラス材料を備え得る。
代替的または追加的に、感放射線要素は、ダイオード検出器または直接イオン蓄積(DIS)検出器のような、少なくとも1つの能動的検出器を備え得る。
少なくとも2つの電離放射線検出器5、6は、電離放射線検出器の線量応答の所定の線形結合が、成人によって受容される実効線量の推定に対応するように構成され、この実効線量の推定は、複数の基準被ばく条件の各々に対する実際の実効線量の40%〜160%の範囲内の推定である。好ましくは、本発明による実施形態において、実効線量の推定は、複数の基準被ばく条件の各々に対する実際の実効線量の50%〜150%の範囲内の推定である。
所定の線形結合が、例えば、単一線量計の単一支持要素内に収容されたか、またはこれに取り付けられた、単一線量計の検出器の検出器線量読み出し値に適用されることが留意されるべきである。先行技術の方法は、複数の線量計、例えば、使用中に放射線防護服の上に位置付けられた1つ、及び放射線防護服の下に位置付けられた1つから得られた線量読み出し値に線形結合を適用することが知られ得る。このため、先行技術の方法による1つのこのような線量計は、放射線防護服によって形成された素材の追加の層によって常にフィルタリングされる。単一線量計における異なる線量応答を有する少なくとも2つの検出器を提供することによって、本発明の実施形態により、種々の利点が提供される。これが、改善された使い易さ、ならびに低減された不正確さ及び誤配置のリスクを提供することは、明らかであろう。またこれが、製造、操作及び自動読み出しに関して利点を提供し得ることが明らかである。ただし、別の重要な利点として、少なくとも1つの追加の自由度が、線量計読み出し値によって得られた実効線量の推定を最適化するために使用され得ることが見出され得る。双線量測定の先行技術の方法において、1つの線量計は、線量計上に衝突する前の放射線防護服による放射線の減衰によって必然的に制限され得る応答を有するが、本発明の実施形態において、単一線量計の検出器は、より良好な実効線量推定を得るために、重度にフィルタリングされているようないくつかの線質を共有し得るにもかかわらず、異なる応答を有するように最適化され得る。
複数の基準被ばく条件は、例えば、図4において複数の矢印4によって示される基準方向4に伝播する平面光子波、例えば、一方向光子ビームへの被ばくを含む。さらに、この平面光子波は、0.50mmのCu及び4.00mmのAlによってフィルタリングされたときの80kVのピークX線管電圧によって得ることができるX線線質に対応するエネルギー分布を有する。このX線線質は、ISO4037−1標準によって定義されている広いX線スペクトルW−80に対応する。
複数の基準被ばく条件はまた、例えば、基準方向4に対して45°の角度をなす方向に沿って伝播する平面光子波、例えば、一方向光子ビームを含む。例えば、45°の角度は、成人の身体の左側に向かって45°の角度でもよく、身体の右側に向かって45°の角度でもよく、身体の下方向において45°の角度でもよく、または身体の上方向において45°の角度でもよい。さらに、この平面光子波は、上述のとおりに参照されるエネルギー分布、つまりISO4037−1標準によって定義されている広いX線スペクトルW−80に対応するX線線質を有する。
複数の基準被ばく条件はまた、例えば、基準方向4に対して60°の角度をなす方向に沿って伝播する平面光子波、例えば、一方向光子ビームを含む。例えば、60°の角度は、成人の身体の左側に向かって60°の角度でもよく、身体の右側に向かって60°の角度でもよく、身体の下方向において60°の角度でもよく、または身体の上方向において60°の角度でもよい。さらに、この平面光子波は、上述のとおりに参照されるエネルギー分布、つまりISO4037−1標準によって定義されている広いX線スペクトルW−80に対応するX線線質を有する。
これに加え、複数の基準被ばく条件は、例えば、他のビーム線質または他の入射角に対応する、他の被ばく条件を含み得る。例えば、X線質の以下の表が、ISO4037−1によって定義されている狭い(N)及び広い(W)スペクトル系列及びIEC61267によって定義されているRQR系列の基準被ばく条件の定義において使用され得る。これらの系列の最大エネルギーは、30keV〜120keVの範囲である。情報的目的のために作表された平均エネルギーは、IPEMレポート78に含有されるスペクトル発生器を使用することによって得ることができるX線スペクトルから計算され得る。
例のように、本発明の実施形態は、これに限定されるものではないが、鉛基盤放射線防護エプロン及び甲状腺防護シールドを着用する成人人型モデルの実効線量が、上述のとおり説明された基準被ばく条件及び適切な基準条件の追加の範囲に関して、以下に論じられる。鉛基盤放射線防護エプロンの効果的な厚みは、0.5mmのPbであったが、本発明の実施形態は、当分野において知られ得るか、または簡単な実験若しくはシミュレーションによって容易に得ることができ得るように、例えば、エネルギー及び入射角の関数として適切な基準線量値を適用することによって、異なる厚み、異なるエプロン組成及び異なる形式の放射線防護服をまた適用し得る。図5は、上述のとおり特定された40%〜160%の範囲に対応する、15個の異なるX線線質スペクトルの0°の入射角による一方向光子ビームへの被ばくに対する自由空気中の入射空気カーマあたりの線量計の線量応答(Ddosimeter/Kair)について、最大境界及び最小境界を示す。
本発明の実施形態による線量計の線量応答、例えば、検出器読み出し値の所定の線形結合の出力は、例えば、上述のX線線質の1つを有する一方向光子ビームによる0°の幾何学的照射に関して、被ばくの同一条件に対する実効線量の値の±60%内である。これは、基準条件が、線量計を使用している間に成人が遭遇する一般的な被ばく条件に十分に一般化され得る限り、実施形態による線量計1の実効線量の最大可能過大推定及び過小推定が、それぞれ、+60%及び−60%であることを意味する。
実効線量に対する同一の最大境界及び最小境界が、身体の横断面または矢状断面のいずれかに平行な−60°〜+60°の角度を有する光子ビームへの被ばくに関して、及び30〜120keVの最大エネルギーを有する異なるX線線質スペクトルに関して、図6に示される。角度ψは、身体の横断面に平行な光子ビームの入射角ψまたは身体の矢状断面に平行な光子ビームの入射角θのいずれかとして解釈され得る。
入射空気カーマ1単位あたりの実効線量の値が、0.5mmの鉛放射線防護エプロン及び防護甲状腺シールドの形式の放射線防護服を着用している人の実効線量を推定する実施形態による線量計に関するこの例において、身体の横断面に平行であり入射角φを有する、異なる標準放射線質の一方向光子ビームに関して以下に作表される。負及び正の角度は、それぞれ、身体の左側及び右側から来る光子ビームに対応する。
入射空気カーマ1単位あたりの実効線量の値が、0.5mmの鉛放射線防護エプロン及び防護甲状腺シールドの形式の放射線防護服を着用している人の実効線量を推定する実施形態による線量計に関するこの例において、身体の矢状断面に平行であり入射角θを有する、異なる標準放射線質の一方向光子ビームに関して以下に作表される。負及び正の角度は、それぞれ、身体の下及び上から来る光子ビームに対応する。
所定の線形結合は、実験的に特定される実効線量の40%〜160%の範囲内の推定を得るために、線形結合における線量応答に対する加重係数の最小二乗フィット、または代替的な数値最適化に例えば対応し得る。例えば、物理的放射線防護服またはそのシミュレーションモデルを含む、物理的人型ファントムによる実験または数値的ヒト型ファントムモデルによるコンピュータシミュレーションが、線形結合によって推定される基準実効線量として、複数の基準被ばく条件の各々に対する実効線量値を特定するために使用され得る。
光子エネルギー及び放射線の入射角に依存する関数として異なる線量応答を有する少なくとも2つの電離放射線検出器の使用の利点は、いくつかの典型的照射条件に対する厳格な推定境界内における、放射線防護服を着用している成人の実効線量を推定する電離放射線検出器の線量応答の線形結合を得ることができることである。
光子エネルギー及び入射角の関数として線量応答における十分な変形例を導入することによって、例えば、簡単な試行錯誤によって、及び十分に多いいくつかの検出器を許容することによって、線量読み出し値の線形結合が、生成され、実効線量の良好な推定を提供し得る。
さらに、本発明の特定の実施形態は、さらに以下に説明されるようにエネルギー及び入射角の関数としての線量応答の選択によって、わずか2つの検出器を好適に備え得る。それにもかかわらず、2つ以上の検出器を追加することが、例えば、より高度な材料及び読み出しコストにおいて、実効線量推定をさらに改善し得ることが当業者にとって明らかであろう。
本発明による実施形態において、少なくとも2つの電離放射線のうちの第1の電離放射線検出器5の線量応答は、20keV〜40keVの範囲の光子エネルギーを有する入射光子放射線、例えば、この範囲のエネルギーを有し基準方向4に沿った平面光子波に関して、少なくとも2つの電離放射線検出器のうちの第2の電離放射線検出器6の線量応答よりも少なくとも5倍高いものであり得る。さらに、第1の電離放射線検出器5の線量応答は、75keV〜85keVの範囲内の光子エネルギーを有する入射光子放射線、例えば、このエネルギー分布を有し基準方向4に沿って伝播する平面光子波に関して、第2の電離放射線検出器6の線量応答よりも3倍未満高いものであり得る。したがって、第1の電離放射線検出器は、X線エネルギーのより低い範囲において第2の電離放射線よりも感度が高く、一方で第2の電離放射線検出器の応答は、より低いエネルギーに対するよりも、より高いエネルギーに対して相対的により強く、このためより高いエネルギーに対するその感度は、依然としてより低いが、第1の電離放射線検出器のものに近いものであり得る。
本発明による実施形態において、少なくとも2つの電離放射線検出器のうちの第1の電離放射線検出器5の線量応答は、上述のとおり参照されるように、ISO4037−1の狭いスペクトルN−30及び/またはN−40によって定義されているX線スペクトルを有する入射光子放射線、例えば、上述のエネルギー分布を有し基準方向4に沿って伝播する平面光子波に関して、少なくとも2つの電離放射線検出器のうちの第2の電離放射線検出器6の線量応答よりも少なくとも5倍高いものであり得る。さらに、第1の電離放射線検出器5の線量応答は、ISO4037−1の狭いスペクトルN−100によって定義されているX線スペクトルを有する入射光子放射線、例えば、上述のエネルギー分布を有し基準方向4に沿って伝播する平面光子波に関して、第2の電離放射線検出器6の線量応答よりも3倍未満高いものであり得る。したがって、第1の電離放射線検出器は、X線エネルギーのより低い範囲においてより感度が高く、一方で第2の電離放射線検出器の応答は、第1の電離放射線検出器と比較したときに、より低いエネルギーに対するよりも、より高いエネルギーに対して総体的に強いものであり得る。
本発明による実施形態において、第1の電離放射線検出器5は、感放射線要素と、感放射線要素、例えば、熱ルミネセンス検出器上で放射線入射をフィルタリングする放射線フィルタと、を備え得る。フィルタは、0.20〜0.60の範囲の透過率係数によって20keV〜40keVの範囲における光子エネルギーを有する光子放射線を減衰させるように適合され得る。
例えば、図7及び図8は、光子エネルギーの関数として及び異なる入射角に関して、第1の電離放射線検出器及び第2の電離放射線検出器のそれぞれに対する空気カーマ1単位あたりの代表的な線量応答を示す。図9及び図10は、異なる標準光子放射線質に関して及び異なる入射角に関して、第1の電離放射線検出器及び第2の電離放射線検出器のそれぞれに対する空気カーマ1単位あたりの代表的な線量応答を示す。
本発明の実施形態の例に関して以下に提供される説明によってまた捕捉されるように、放射線防護鉛エプロン若しくは放射線防護非鉛エプロン及び/または甲状腺シールドのような放射線防護服を着用している成人の光子エネルギー及び身体の前後軸に対する入射角の関数としての実効線量は、低いエネルギー、例えば、30keV未満及び/または約30keVに対する低減された感度を有し、またより高いエネルギーに対して良好な感度を有する第1の線量応答と、放射線防護服によって提供される放射線フィルタリングと同様に、より広いエネルギー範囲において低減された感度、例えば、60keV未満のエネルギーに対して低減された感度を有する第2の線量応答と、の線形結合に特によく対応し得る。
さらに、本発明による実施形態において、第1の電離放射線検出器5の空気カーマ1単位あたりの線量応答は、基準方向に対して0°から少なくとも45°、例えば、60°、またはさらに最大で実質的に75°の入射角の範囲に亘る基準方向に対する入射角から実質的に独立し得る。「実質的に独立」は、この実例において、0°〜60°の範囲、またはさらに0°〜75°の範囲内の任意の入射角において検出器上に衝突する30keV〜120keVの範囲内の任意の所定のエネルギーの単一エネルギー光子に関して、0°、例えば、1°未満の入射角で検出器上に衝突する同一の所定のエネルギーの単一エネルギー光子に関するカーマ1単位あたりの線量応答に対する、カーマ1単位当たりの線量応答における20%未満、例えば、15%、例えば、10%未満、例えば、好ましくは5%未満の差を意味し得る。20%、15%、10%未満またはさらに5%未満の相対偏差は、0°の入射角で衝突する光子に対する空気カーマ1単位あたりの後の線量応答に関する差を意味し得る。例えば、30keV〜120keVの範囲内のエネルギーについて、0°に関する角度依存性は、0°〜75°の範囲内の任意の角度に対して5%以下であり、一方で約20keVのエネルギーについて、例えば、20keVのエネルギーについて、角度依存性は、60°の角度に対して7%未満、例えば6%、また75°の角度に対して20%未満、例えば、19%に達し得る。本発明による実施形態において、第1の電離放射線検出器5は、感放射線要素と、感放射線要素、例えば、熱ルミネセンス検出器上で放射線入射をフィルタリングする放射線フィルタと、を備え得る。フィルタは、プラスチックポリマー材料の実質的に半球状の容積を含み、半球状の容積は、3mm〜8mmの範囲内の半径を有する球の2分の1として形作られ得る。
本発明の実施形態の例に関して以下に提供される説明によってまた捕捉されるように、放射線防護鉛エプロン若しくは放射線防護非鉛エプロン及び/または甲状腺シールドのような放射線防護服を着用している成人の光子エネルギー及び身体の前後軸に対する入射角の関数としての実効線量は、低いエネルギー、例えば、30keV未満及び/または約30keVに対する低減された感度を有し、またより高いエネルギーに対して良好な感度を有する第1の線量応答と、放射線防護服によって提供される放射線フィルタリングと同様に、より広いエネルギー範囲において低減された感度、例えば、60keV未満のエネルギーに対して低減された感度を有する第2の線量応答と、の線形結合に特によく対応し、第1の線量応答は、例えば、人体の前後方向に対して、少なくとも60°を超える入射角から実質的に独立し得る。
低減された低いエネルギー応答及び弱い角度依存性のみを有する第1の電離放射線検出器の利点は、以下の考察によって理解され得るが、本発明の実施形態は、このような理論考察に限定されることを意図しない。シールドされていないか、または防護服によって単に部分的にシールドされる組織及び器官による実効線量への寄与は、一般に、このような組織または器官に到達する前に放射線を減衰させる他のヒト組織によってシールドされるのみである。このような組織または器官への実効線量寄与は、このため、ヒト組織の放射線減衰が、より高いエネルギーに対して、組織深さ、したがって入射角における強い依存を示すには弱過ぎるので、低い入射光子エネルギーに対して低感度であり、弱い角度依存性を有し得る。
本発明の実施形態による線量計1において、基準方向に沿って伝播する80keVの入射光子放射線に対する第2の電離放射線検出器6の空気カーマ1単位あたりの線量応答は、基準方向に沿って伝播する60keVの入射光子放射線に対する第2の電離放射線検出器6の空気カーマ1単位あたりの線量応答よりも2倍以上大きいものであり得る。さらに、基準方向に沿って伝播する80keVの入射光子放射線に対する第2の電離放射線検出器6の空気カーマ1単位あたりの線量応答は、基準方向に沿って伝播する100keVの入射光子放射線に対する第2の電離放射線検出器6の空気カーマ1単位あたりの応答よりも1.4倍以上大きいものであり得る。
さらに、第2の電離放射線検出器6の空気カーマ1単位あたりの線量応答は、例えば、鉛またはビスマスのような高原子番号(Z)材料のK端スペクトル特徴に対応し得るように、60keV〜100keVの特性ピークを有し得る。このような高Z材料は、一般に放射線防護服用の材料として使用され、このため第2の電離放射線検出器6が、このような放射線防護服の減衰にいくつかの類似性を示す線量応答を有し得ることが留意されるべきである。したがって、器官及び組織を最適にシールドしない実効線量構成要素に関連し得る第1の電離放射線検出器5の線量読み出し値と、器官及び組織が放射線防護服によって実質的にシールドされる実効線量構成要素に関連し得る第2の電離放射線検出器6の線量読み出し値との線形結合は、実効線量の良好な推定を提示し得る。
さらに、基準方向に対して60°の角度をなす方向に伝播する80keVの入射光子放射線に対する第2の電離放射線検出器6の空気カーマ1単位あたりの線量応答は、基準方向に対して60°の角度をなす方向に伝播する100keVの入射光子放射線に対する第2の電離放射線検出器の空気カーマ1単位あたりの線量応答の1.5倍未満、例えば、1.4倍またはさらに1.4倍未満であり得る。
第2の電離放射線検出器の線量応答のこのような角度依存性の利点は、本発明の実施形態がこのような理論考察に限定されるものではないが、角度を有して放射線防護服を貫通する放射線に対する増大された経路長による実効線量の強い角度依存性に対応することとして、理解され得る。防護されていないヒト組織に対する入射角のわずかな変化は、これらの組織を通って伝播する放射線質の変化をほとんど引き起こさないが、保護されたヒト組織について、角度のわずかな変化は、保護された組織に到達するときの放射線質の実質的な変化を引き起こすために放射線防護材料を通る十分に異なる経路長を伴い得る。
本発明による実施形態において、第1の電離放射線検出器6は、感放射線要素と、感放射線要素、例えば、熱ルミネセンス検出器上で放射線入射をフィルタリングする放射線フィルタと、を備え得る。フィルタは、放射線防護服を通る光子エネルギーの関数としての光子放射線の透過率に実質的に比例する光子エネルギーの関数として光子放射線の透過率を得るように、基準方向4に沿って伝播する光子放射線を減衰させるように適合され得る。
本発明による実施形態において、第1の電離放射線検出器6は、感放射線要素と、熱ルミネセンス検出器のような感放射線要素上で放射線入射をフィルタリングする放射線フィルタと、を備え得る。フィルタは、基準方向4に沿って伝播し、0.02〜0.25の範囲内の透過率係数による50keV〜60keVの範囲内のエネルギーを有する光子放射線を減衰させるように適合され得る。
第2の電離放射線検出器のフィルタは、基準方向4に沿って伝播する光子放射線を感放射線要素上に衝突する前に減衰させる第1のフィルタ要素と、基準方向と角度をなす方向に沿って伝播する光子放射線を減衰させる第2のフィルタ要素と、を備え、この角度は、30°〜80°の範囲内、例えば、45°〜80°の範囲内、例えば、60°または75°であり得る。この第1のフィルタ要素は、低いエネルギー、例えば、20〜60keVの範囲内での線量応答に主に効果を有するように、軽い材料、例えば、TiまたはAlを含み得る。
本発明の実施形態による個人放射線量計は、インターベンショナルラジオロジー及びインターベンショナルカーディオロジーにおいて働いている医療スタッフを表す放射線被ばくの条件下における、放射線防護服、例えば、鉛エプロン及び甲状腺シールドを着用している人の実効線量特性のもの、例えば、エネルギー及び角度依存性に類似する、線量応答のエネルギー及び角度依存性のような線量応答特性を有し得る。例えば、個人放射線量計は、例えば、シミュレーションまたは実験測定値によって得られた実効線量モデルのものに類似する線量応答特性を有するように特に適合され得る。
第2の態様において、本発明はまた、例えば、図11に示されるように、個人放射線量測定システム20に関する。この個人放射線量測定システム20は、本発明の第1の態様の実施形態による個人放射線量計1と、個人放射線量計1を読み出す読取器21と、を備える。読取器21は、個人放射線量計1の少なくとも2つの電離放射線検出器の各々によって収集された線量を表す値を特定するように適合される。システム20はさらに、本発明の第1の態様に関して参照されるように、読取器21によって特定された値の所定の線形結合を計算することによって個人放射線量計1によって記録された実効線量を推定するように構成された、例えば、プログラムされた、処理機器22、例えば、コンピュータまたは統合処理機器を備える。
例えば、読取器21は、線量計1内に統合され、例えば、能動的線量計の読み出し回路を形成してもよく、または分離され、例えば、受動的電離放射線検出器、例えば、TLD読取器またはOSLD読取器によって収集された線量値を特定するための当分野において知られるような読取器を形成し得る。
本発明の実施形態の利点は、放射線防護エプロン及び/または甲状腺シールドのような放射線防護服を着用する医療スタッフメンバーの実効線量の推定が、線量計を読み出すことによって直接的に得られ得ることであり、例えば、線量計の読み出し処理は、実効線量推定の不確実性を改善する特有の目的のため、例えば、当分野において知られる個人線量測定方法論におけるように、他の照射条件に対する過大推定の増大されたマージンのコストでの特定の照射条件に対する過小推定の安全マージンを課すために、1つまたは複数の補正率の適用を必要としないであろう。
本発明の実施形態による個人放射線量測定システムにおいて、処理機器は、実効線量推定を得るために値の所定の線形結合を計算するように適合され、この実効線量推定は、以下に定義されるように、N−100に対応するエネルギー分布を有し、基準方向に沿って伝播する、検出器上に衝突した平面光子波に対する空気カーマ1単位あたりの線量応答を有し、これは、以下に定義されるように、N−80に対応するエネルギー分布を有する平面光子波に対する空気カーマ1単位あたりの線量応答の1.2倍以上大きいものであり得る。
本発明の実施形態による個人放射線量測定システムにおいて、処理機器は、実効線量推定を得るために値の所定の線形結合を計算するように適合され、この実効線量推定は、以下に定義されるように、N−100に対応するエネルギー分布を有し、基準方向に沿って伝播する、検出器上に衝突した平面光子波に対する空気カーマ1単位あたりの線量応答を有し、これは、以下に定義されるように、N−120に対応するエネルギー分布を有し、基準方向に沿って伝播する、検出器上に衝突した平面光子波に対する空気カーマ1単位あたりの線量応答の1.1倍以上大きいものであり得る。
更なる態様において、本発明はまた、放射線防護服を着用している成人の実効線量を推定する個人放射線量測定方法に関する。方法は、少なくとも2つの電離放射線検出器の各々が互いの電離放射線検出器から10cm未満、例えば、5cm未満またはさらに3cm未満の距離で分離されるように、着用中の放射線防護服の外面上に少なくとも2つの電離放射線検出器を位置付けることを含む。少なくとも2つの電離放射線検出器は、光子エネルギー及び基準方向に対する放射線の入射角の関数として実質的に異なる線量応答を有する。この基準方向は、成人の身体の方に向けられ、例えば、身体に対する正面の入射角に対応し得る。方法はさらに、これらの電離放射線検出器によって電離放射線を検出することを含む。
方法はまた、少なくとも2つの電離放射線検出器の各々によって収集された線量を表す値を特定することを含む。方法はさらに、その値の所定の線形結合を計算することにより成人によって受容された実効線量を推定することを備える。この少なくとも2つの電離放射線検出器の線量応答の所定の線形結合は、複数の基準被ばく条件の各々の下において成人によって受容される実効線量の40%〜160%の範囲内の推定に対応する。
複数の基準被ばく条件は、少なくとも、基準方向に伝播する実質的平面光子波への被ばく、基準方向に対して45°の角度をなす方向に沿って伝播する実質的平面光子波への被ばく、及び基準方向に対して60°の角度をなす方向に沿って伝播する実質的平面光子波への被ばくを含む。これらの平面光子波は、
80kVのピークX線管電圧によって得られ、0.50mmのCu及び4.00mmのAlによってフィルタリングされ、ISO4037−1標準によって定義されている広いX線スペクトルW−80に対応するX線線質と、
60kVのピークX線管電圧によって得られ、0.60mmのCu及び4.00mmのAlによってフィルタリングされ、ISO4037−1標準によって定義されている狭いX線スペクトルN−60に対応するX線線質と、
60kVのピークX線管電圧によって得られ、0.30mmのCu及び4.00mmのAlによってフィルタリングされ、ISO4037−1標準によって定義されている広いX線スペクトルW−60に対応するX線線質と、
のうちの1つに対応するエネルギー分布を有する。
本発明の実施形態による方法において、値の所定の線形結合を計算することは、以下に定義されるように、N−100に対応するエネルギー分布を有し、基準方向に沿って伝播する、検出器上に衝突した平面光子波に対する空気カーマ1単位あたりの線量応答であって、以下に定義されるように、N−120に対応するエネルギー分布を有し、基準方向に沿って伝播する、検出器上に衝突した平面光子波に対する空気カーマ1単位あたりの線量応答の1.1倍以上大きいものである線量応答を有する実効線量の推量を計算することを含み得る。
本発明の実施形態は、以下に説明される例によって例示され、本発明はこのような例によって限定されることを意図されない。
本発明の実施形態による線量計の設計は、モンテカルロ放射線輸送シミュレーションによって補助され得る。このようなシミュレーションは、任意の形式の検出技術に対して、例えば、任意の形式の受動的検出器または能動的検出器に対して実行され、本発明の実施形態による適切な線量計は、以下の例において説明される代表的な方法論によって生成され得る。さらに、実施形態による線量計は、以下の代表的な方法論によって、例えば、異なる材料、減衰材料の厚み、ならびに/または異なる服の形式及び設計の種々の放射線防護服に対して特に設計され得る。
本発明の実施形態による線量計の設計の例は、LiF:Mg,Ti熱ルミネセンス検出器(TLD)に関して以下に示される。例は、異なる対応するフィルタ要素を有する、1つの線量計ホルダにおける2つの検出器に関する。第1の検出器は、例えば、他の材料中の鉛を備える強いフィルタを伴って提供され、一方で第2の検出器は、軽度なフィルタ、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)を伴って提供される。
ただし、本発明の実施形態による線量計の特有の設計は、使用される感放射線要素の特定の特性、例えば、エネルギー応答及び応答の角度依存性に強く依存し得る。例えば、感放射線材料、読み出し信号を生成する従来の方法、ならびに感放射線検出器の厚み及び形状は、感放射線要素のエネルギー及び角度応答に強く影響を及ぼす。図27を参照すると、入射空気カーマあたりの異なる感放射線要素材料によって吸収される線量の線質依存性が、20〜120keVのエネルギーを有する一方向単一エネルギー光子ビームに関して示される。放射線検出器によって吸収された線量の線質依存性が、感放射線材料の選択に強く依存することが観察されるであろう。FD−7は、線量計に有用なラジオフォトルミネセンス(RPL)特性を有する銀活性化リン酸ガラス(Asahi Techno Glass Corporation,Shizuoka,Japan)の形式である。TLD材料LiF:Mg,Ti及びLiF:Mg,Cu,P、ならびにOSL材料BeOのような感放射線材料は、20〜120keVの光子エネルギーにおけるピーク依存性を有する線量応答を示す。ただし、OSL検出器材料Al2O3:C及びRPL検出器材料FD−7の線量応答は、光子エネルギーによりいっそう依存し、70keV未満の光子エネルギーに関して、同一入射空気カーマに対するLiF:Mg,Ti TLDのものよりも、それぞれ、最大で2.2倍及び3.5倍、より高いものであり得る。
さらに、異なる感放射線材料の検出器は、異なる形状形式において市販されており、これはまた、特に低い光子エネルギーにおいて、線量応答のエネルギー及び角度依存性に影響を及ぼし得る。Al2O3:C検出器は、例えば、ポリエステルバインダー(Landauer,Glenwood,Illinois,USA)と混合されたAl2O3:C粉末からなる約0.2mmの厚みの薄肉円板の形状において得られ得るが、FD−7ガラスRPL検出器は、例えば、1mm及び1.5mmの小さなプレート、または1.5mmの直径及び異なる長さサイズの小さなシリンダの形状において得られ得る(Chiyoda Technol Corporation,Yokohama,JapanのSC−1、GD−450及びDose Ace線量計の内側のFD−7検出器参照)。
例えば、異なる材料及び形状形式からなる電離放射線検出器に対して観察される異なる線量応答により、図29及び図30に示されるように同一設計を有するが、例えば、1.5mmの厚さのFD−7ガラスRPLDに基づく線量計の線量応答(Dcombined/Kair)は、図29及び図30に示される例におけるように、0.9mmの厚みを有するLiF:Mg,Ti TLDを使用する同一線量計設計の線量応答とは異なることになる。この設計は、以下にさらに詳細に論じられることになるように、本発明の実施形態によって、LiF:Mg,Ti TLD感放射線要素の使用時に、放射線防護服を着用している人に対する実効線量の良好な推定を提供することが可能であるが、FD−7ガラスRPLD(または別の代替的な形式の感放射線検出器)に基づく同一線量計設計の線量応答は、LiF:Mg,Ti TLDを使用する代表的な線量計により得られる、−60%〜+60%の範囲内の正確さを有する放射線防護服を伴う実効線量の推定とは実際にかなり異なることになり、実現不可能であり得るので、線量計の同一特徴は、例えば、フィルタの材料及び/若しくは形状、ならびに/または線量計の放射線検出器の周囲の他の要素の結合のような適合が行われることを必要とすることになる。このような状況が図37に例示され、これは、以下にさらに検討される、図29及び図30に示されるものと類似設計の線量計であるが、1.5mmの厚みを有するFD−7ガラス(RPLD)の検出器を有する線量計により推定されるものとしての実効線量Dcombinedと、これもまた図15、図16、図17及び図18を参照して以下にさらに詳細に論じられる、放射線防護服を着用している人に対するベンチマーク実効線量ERP garmentsとの比率を示す。−60%の入射角を有する身体の矢状断面に平行な光子ビームに関して(例えば、下から来る光子放射線に関して)、比率Dcombined/ERP−garmentsは、X線線質N−60及びW−60に対して1.9(つまり、90%のRP服を伴う実効線量の過大推定に対応する)の上である。それにもかかわらず、このような例において、両方の検出器の値の線形結合に対する定数α及びβの適切な値、例えば、最適値が、可能な限り最小限の実効線量の過大推定及び過小推定を得るために使用された。
このため、以下に提供される例は、任意の適切な感放射線要素の選択に対する本発明の実施形態による線量計を設計する代表的な方法論の観点から見られるべきであり、ここで、説明されたような組成及び要素形状を有する一対のTLDの特有の例に適用される。それにもかかわらず、このような特有の設計は、感放射線要素の材料の選択及び幾何学的パラメータに強く依存するが、適正な方針が、この例によって、異なる感放射線要素の組み合わせについての本発明の実施形態による線量計を得るために、当分野において知られる、及び本説明において論じられるように、定常試験及びシミュレーション手順によって、当業者が適切な線量計設計、例えば、適切なフィルタの組み合わせ及びそれに伴うフィルタ特性を決定することを可能にするように提供される。さらに、このような定常最適化の結果は、当業者によって知られる、及び/若しくは本説明において適正に特定された試験ならびに/または手順によって不要な実験を行うことなく、直接的かつ実際的に検証され得る。例えば、本説明において参照される基準被ばく条件は、シミュレーションまたは実験において、標準化試験手順が標準化放射線質を使用して標準化人型ファントム上で実行されることを許容する。
線形アルゴリズムが、検出器によって受容された線量から、線量計の線量、したがって推定された実効線量を計算するために使用され得る。この例における実施形態による線量計の不確実性は、放射線防護(RP)服を伴う実効線量の計算された値の±50%以内であり、例えば、IR及びICで働いている医療スタッフを表す放射線被ばく場に対する実効線量の過大推定及び過小推定が、常にそれぞれ+50%及び−50%未満である。それにもかかわらず、線量計の更なる最適化が、更により低い不確実性を実現するために本発明の実施形態によって可能であり得る。
放射線場調査は、30〜120keVの最大エネルギー、及び身体の横断面または矢状断面のいずれかに平行な−60°〜0°〜60°の入射角(0°は、前後の幾何学的照射に対応する)を有する、IEC61267のRQR系列ならびにISO4037−1の狭い及び広いスペクトル系列からの異なる放射線線質を有する一方向光子ビームを含む。
この本発明の実施形態による線量計を設計する代表的な方法論の第1のステップにおいて、RP服を考慮する実効線量が計算される。この実効線量は、その後、線量計のエネルギー及び角度応答を最適化するための基準として用いられ得る。この例において、ICRP標準計算男性ファントムが、図12に示されるように、数学的に定義された放射線防護エプロン及び甲状腺襟を伴い、その実効線量が、IR及びICに関係するエネルギー及び入射角を有する光子ビームに対してモンテカルロシミュレーションを通して計算された。これらの計算において、0.5mmの鉛(Pb)からなるRP服がモデル化されたが、他の特性、例えば、鉛を有するか、または有しない組成のような異なる材料、及び/または0.35mmの鉛のような他の厚みを有するRP服がまた、このような他のRP服を伴う実効線量を計算するためにモデル化されてもよい。
自由空気中の空気カーマKairあたりのRP鉛服を伴う実効線量ERP−garments変換係数が、X線透視法及び個人放射線防護に関連して標準放射線質スペクトルを有する全身一方向光子ビームに対して計算された。これらのスペクトルは、30〜120keVの最大光子エネルギーを有する、IEC61267のRQR系列ならびにISO4037−1の狭い(N)及び広い(W)スペクトル系列を含む。IPEMレポート78のスペクトル発生器が、シミュレーションにおいて使用された標準放射線質のX線エネルギースペクトルを発生するために使用された。これらのスペクトルの明細は、上述のとおり提供された表において説明される
実効線量の角度変形例が、図13に例示されるように、例えば、ファントムの右側から来る光子に関して+60°、例えば、前後(AP)幾何学的照射における0°、及び、例えば、ファントムの左側から来る光子に関して−60°の間の入射角φを有する、身体の横断面に平行な光子ビームに対して、またさらに図14に示されるように、例えば、ファントムの下から来る光子に関して−60°、0°(AP)、及び、例えば、ファントムの上から来る光子に関して−60°の間の入射角(θ)を有する、身体の矢状断面に平行な光子ビームに対して計算された。
計算は、Los Alamos National Laboratory,USAのMCNPXコードバージョン2.7.0を使用して実行された。赤色骨髄及び骨表面線量が、ICRP勧告116において説明される海綿質の質量平均及び髄腔線量の方法を使用して推定された。実効線量をICRP (レポート103)の2007 Recommendationsに従って計算した。
入射空気カーマ(Kair)あたりのRP鉛服を伴う実効線量(ERP−garments)の係数が、異なる光子ビーム放射線質及び入射角に関して図に示される。図15及び図16は、それぞれ、例えば、正または負の入射角φを有する、ファントムの右側及び左側から来る身体の横断面に平行な光子ビームに依る実効線量に対応する。同様に、鉛服を伴う実効線量が、例えば、上からか、または下から来る、正または負の入射角θを有する身体の矢状断面に平行な光子ビームに対して計算され、それぞれ、図17及び図18に示される。全てのこれらの図は、鉛からなるRP服の使用時の実効線量のエネルギー及び角度依存性を示す。
狭いスペクトル系列(N−)に関して最も高いE
RP−garments/K
airの係数は、N−100スペクトルに対して観察され、88keVでの鉛の吸収ピークの効果は、最大エネルギー120keV及び平均エネルギー約100.4keVを有するN−120スペクトルで視認可能になる。広いスペクトル(W−)系列及びRQR系列に関して鉛の吸収ピークの効果は、視認可能にならなかった。さらに、より強い角度依存性が、身体の横断面に平行な光子と比較して身体の矢状断面に平行な光子ビームに対して観察される。
例示的目的のために、上の表は、上述のとおり論じられた例と類似の様式で模擬された、所定のエネルギーを有し所定の鉛エプロン厚さに関する、基準方向に沿った異なる単一エネルギー平面光子波入射、例えば、身体上の0°の正面入射に対する、空気カーマ1単位あたりの実効線量を列記する。
RP服を伴う実効線量を推定する上での先行技術の単一及び双線量測定方法論の性能が、本発明の実施形態の種々の利点を例示するために、評価された。最後に、Hp(10)線量計のエネルギー及び角度応答が、エプロンの上及びエプロンの下の条件に対して計算された。これは、図19に示されるように、ISO水スラブファントム193の上に配置された厚さ0.5mmの鉛シールド191の上及び下に配置されるときに、30〜120keVの最大エネルギーを有する異なるX線線質及び異なる入射角に関して、Hp(10)を測定することを意図された個人線量計190によって受容された線量を計算することによって実現された。Hp(10)の測定に使用されるLiF:Mg,Ti熱ルミネセンス検出器(TLD)に基づく線量計の現実的な設計が、Hp(10)線量計をモデル化する例として用いられた。異なる単一線量測定補正率及び双線量測定アルゴリズムが、文献において述べられたように、鉛シールドの上(Hover、Ho)及び/または該シールドの下(Hunder、Hu)の線量に適用され、補正された結果またはアルゴリズム推定線量が、事前に計算されたRP鉛服を伴う実効線量と比較された。
ISO水スラブファントムの上に配置されたときのHp(10)線量計の線量応答のエネルギー及び角度依存性が、ICRP勧告74において公開された空気カーマあたりのHp(10)係数のエネルギー及び角度依存性と一緒に、図1に示される。実施において、この構成は、RP服を着用することなく、人によって直接的に胸に装着されるときの線量計の後方散乱条件を模擬する、Hp(10)個人線量計(IEC62387)の性能試験のために使用される。
RP服の上及び下に装着された条件のときに線量計によって受容された線量を模擬するために、線量計がISOスラブファントムを覆う0.5mmの鉛シールドの上及び下に配置され、その線量が計算された。入射空気カーマあたりのHu(シールドの下の線量計)及びHo(シールドの上の線量計)の計算された値が、ISOの狭いスペクトル系列(N−)の異なるX線線質及び入射角に関して図20に示され、異なる単一エネルギー光子エネルギーに関して図2に示される。
異なる単一線量測定(SD)補正率及び双線量測定(DD)アルゴリズムが、計算された線量Ho及びHuに適用され、以下の表に要約される。得られたSD補正済み線量(DSD)及びDD計算済み線量(DDD)が、その後、事前に計算されたRP服を伴う実効線量と比較された。
図21及び図22は、Huyskensらによって提案された単一線量測定補正率により得られた線量と、それぞれ、身体の横断面及び矢状断面に平行な光子に依るRP服を伴う実効線量との間の比率を示す。両図において、80keV未満の最大光子エネルギーを有するX線線質(N−30、N−40及びN−60)に関して、このアプローチは、約2.5から最大で15よりも大きくなる倍率によって実効線量を過大推定するように、過度に保守的である。より高いエネルギー(N−80、N−100及びN−120)を有する線質に関して過大推定及び過小推定は、横断面において実効線量の±30%内に留まるが、矢状断面において、過大推定は、0°とは異なる角度に対して約1.2〜2.8の倍率に達する。それどころか、NCRPレポート122において及びPadovaniらによって提案されたSDアルゴリズムは、結果として、N−80、N−100、N−120の光子線質に関して、身体の平面及び入射角に依存して、−33%から最大で−90%(つまり、それぞれ0.67〜0.10のDSD/ERP−garments比率)になる実効線量の大きな過小推定をもたらす。N−30及びN−40線質に関して同一アルゴリズムは、1.12から最大で4よりも大きくなる倍率によって実効線量を過大推定する。
同様に、図23及び図24において、Rosenstein及びWebsterによって提案され、NCRPレポート122によって勧告された双線量測定アルゴリズムにより得られた線量が、それぞれ、身体の横断面及び矢状断面に平行な光子に依る実効線量と比較される。このアルゴリズムは、40keV(N−60、N80、N−100及びN−120)を超える最大光子エネルギーを有する全X線線質のほとんどのX線線質調査に対して実効線量を過小推定する傾向にある。N−60、N80、N−100及びN−120に関して過小推定のパーセンテージは、両方の平面において、光子ビームの入射角に依存して−27%〜−76%(それぞれ0.73〜0.24のDDD/ERP−garments比率)であるが、N−30に関して実効線量は、入射角に依存する1.3〜2.44の倍率によって実際に過大推定される。N−40に関してのみ、過大推定及び過小推定が、実効線量の±50%内に留まる。
以下の表は、甲状腺シールドを使用するRP服を伴う実効線量の推定のための、当分野において知られる、数個の双線量測定アルゴリズム及び単一線量測定アルゴリズムを示す。本明細書に参照されるアルゴリズムのより多くの情報は、上述の背景技術の節において掲載されたJaervinenらによる刊行物において見出され得る。
以下の表に示されるアルゴリズムの中で、Clerinxらによって提案されるものが、図25及び図26に示されるように、最良の性能を有するものであるように見える。このアルゴリズムは、±60°の入射角を有する横断面に平行な光子ビームに対するものを除いて、40keV(N−60、N80、N−100及びN−120)を超える最大光子エネルギーを有するX線線質に対して最大で2.2の倍率によって実効線量を過大推定する傾向にある。またN−30及びN−40に関して実効線量の大きな過大推定が観察された(倍率1.93〜7.3)。
これらの結果から、IR及びICで働いている医療スタッフを表す、ここでの全放射線場調査に対して±60%以下の過大推定及び過小推定を有する計算された実行先勝の推定を提供することが明らかである、試験された個人線量測定アプローチがないことが観察され得る。
この本発明の実施形態による線量計を設計する代表的な方法論の第2のステップにおいて、本発明の実施形態による線量計に対する設計が、計算された実効線量を考慮して決定される。
線量計の設計は、エネルギー及び角度の線量応答(Ddosimeter(Ephoton,φ))が、防護服を伴う計算された実効線量のもの(ERP−garments(Ephoton,φ))に可能な限り類似するように、換言すると、DdosimeterとERP−garmentsとの間の比率が、対象の範囲内の全光子エネルギー及び入射角に対して可能な限り近づくように選択され得る。
異なる倍率が与えられた被ばく条件の線量応答の特性を決定することは、当業者にとって明らかであろう。例えば、1つの倍率は、使用される感放射線要素の形式、例えば、固有の線量応答、材料組成及び検出器の幾何形状に関連し得る。別の倍率は、フィルタ、ホルダ、支持具のような感放射線要素の周辺の構成要素、例えば、材料組成、幾何形状及びその位置に関し得る。
線量測定検出器の形式は、線量計が構築される開始エネルギー及び角度の線量応答、受動的検出器の場合、その読み出しに使用される線量測定技術を決定する。図27は、20〜120keVのエネルギーを有する一方向単一エネルギー光子ビームに対する入射空気カーマあたりの異なる受動的検出器材料によって吸収された線量の線質依存性を示す。ただし、これらの値は、吸収したエネルギーの発光への変換における各線量測定材料の効率を考慮していない。
フィルタ及び検出器の周辺の他の要素の材料組成、厚み及び幾何形状は、放射線場の特性、例えば、放射線形式、エネルギー、角度及び流束量(つまり、放射線の数としての密度)を変更することになり、検出器が与えられた外部放射線場に対して被ばくされ、その後、その全体の線量応答、例えば、線質依存性及び角度依存性に影響を及ぼす。
本発明の実施形態による線量計の設計において、例えば、線量測定検出器の形式及び数、ならびに検出器の周辺の要素、例えば、フィルタ及び支持具の材料組成、幾何形状及び位置である、複数のパラメータが考慮され得る。LiF:Mg,Tiからなる熱ルミネセンス検出器(TLD)がこの例において考慮されているが、例として、例えばBeO及びAl2O3からなる光刺激ルミネセンス検出器(OSLD)、または例えばダイオード検出器若しくは直接イオン蓄積(DIS)検出器のような能動的検出器である、他の検出器の使用を排除するものではない。フィルタ及び検出器の周辺の他の要素の設計は、線量計に使用される検出器の特定形式に依存して変えられ得るが、最適化された構成を探す方法は、実質的に同一であり得る。
例として、線量計がLiF:Mg,Ti検出器の場合について説明される。この例において、フィルタ、ホルダ及び支持具は、検出器の特定形式、例えば、LiF:Mg,Ti TLDに対して選択されている。自由空気中の空気カーマ(Kair)あたりの新規の線量計の線量測定検出器に吸収された線量の係数は、異なる標準放射線質スペクトル(ISO4037−1の狭い及び広いスペクトル系列、IEC61267のRQR系列)及び異なる入射角(0°、45°、60°)に関して計算された。計算は、モンテカルロコードMCNPX2.7.0を使用して実行された。
この例は、医療スタッフによって着用されるRP服の上に装着される線量計に関するので、これらの条件は、図28に示されるように、鉛エプロンを表現する、厚さ0.5mmの鉛のシート281により覆われる、人の身体を表現する、ISO水スラブファントム282の上に配置された線量計設計モデル280によるシミュレーションを実行することによって再現された。
代表的な線量計は、上述のとおり説明された、事前に計算された基準実効線量によって、鉛エプロン及び甲状腺襟を着用している成人の実効線量を推定するように適合される。
代表的な線量計は、2つの検出器TLD1及びTLD2からなり、各検出器は、異なるフィルタを有する感放射線要素としてLiF:Mg,Ti TLDを備える。両TLDは、0.9mmの高さ及び5mmの直径の固体円板としてモデル化される。フィルタ及び各検出器の周辺の要素の幾何形状及び構成は、それぞれ、TLD2に関して図29、TLD1に関して図30に示される。
TLD2は、鉛(Pb、強いフィルタ)からなる薄いフィルタの下に配置される。このフィルタは、各1つが0.14mmの厚みを有する3つの薄いPb円板からなり、このため合計0.42mmのPb厚さを形成する。円板は、異なる直径(5mm、6mm及び7mm)を有し、最小の円板が頂部、最大の円板が底部になるように同心円状に重ねて配置される。
TLDの周辺、最上段において、Pbフィルタに空間を与える倒立円錐の形状の開口部を有するアルミニウム(Al)からなる3mmの厚みのフィルタがある。これは、大きな入射角を有する外部放射線を減衰するフィルタである。
このAlフィルタの下、ちょうどTLDの最上段において、チタン(Ti)からなる0.3mmの厚みのフィルタが配置される。このフィルタは、6mmの直径の円形開口部を中央に有し、TLDと底部Pb円板との間の0.3mm(Tiフィルタの厚み)の空隙にTLDを露出させる。Tiフィルタの下で、TLDが、3.9mm(TLDの下の3.0mmのAl)の合計厚さを有する一片のアルミニウムによって保持される。この一片は、タングステン(W)の厚さ0.5mmの層に伴われ、その後、底部において、線量計の下の鉛服によって生成された後方散乱放射線を減衰する銅(Cu)からなる厚さ2mmのプレートに伴われる。Cuプレートは、RP服の外面に接触(または接近)することになる線量計の一部である。
Tiからなる平坦フィルタ及びAlからなる円錐フィルタは、実質的な入射角、例えば、45°または75°において、例えば、20keV〜60keV範囲内の、例えば、低いエネルギーにおける線量応答に主に効果を有するように、軽い材料からなるフィルタを表す。チタンからなるフィルタは、その下の3.9mmのAl支持具から来る後方散乱の量を低減し、一方でAlからなる円錐フィルタはまた、低いエネルギーで検出器によって受容される線量を低減し得る。Pbフィルタと感放射線TLD材料との間の0.3mmの空隙はまた、角度の線量応答に効果を有し得る。
TLD1は、低いエネルギー光子をわずかに吸収する、半球形状を有するポリ塩化ビニル(PVC)からなる軽度なフィルタの下に配置される。アルミニウムからなる厚さ3mmのプレートは、その周囲のTLD及びPVCフィルタを保持する。底部において、Alプレートの下で、銅(Cu)からなる厚さ2mmのプレートが、TLD2に対するものと同一手法において、RP服から来る後方散乱放射線を減衰するように配置される。
TLD1に対する空気カーマ1単位あたりの線量応答に関する代表的な値が、所定のエネルギー及び基準方向に対する入射角の単一エネルギー平面光子波に関して、以下の表に提供される。
TLD2に対する空気カーマ1単位あたりの線量応答に関する代表的な値が、所定のX線線質及び基準方向に対する入射角の平面光子波に関して、以下の表に提供される。
TLD2に対する空気カーマ1単位あたりの線量応答に関する代表的な値が、所定のエネルギー及び基準方向に対する入射角の単一エネルギー平面光子波に関して、以下の表に提供される。
TLD1に対する空気カーマ1単位あたりの線量応答に関する代表的な値が、所定のX線線質及び基準方向に対する入射角の平面光子波に関して、以下の表に提供される。
線量計の線量(Dcombined)は、以下の式を使用してTLD1及びTLD2によって受容された線量の結合から得られる。
Dcombined=α(DTLD2+βDTLD1)
ここでDcombinedは、線量計により得られた線量であり、DTLD2は、TLD2によって受容された線量であり、DTLD1は、TLD1によって受容された線量であり、α及びβは、可能な限り多くの光子エネルギー及び入射角に対してDcombinedがERP−garmentsに近づくように選択される定数である。
本例に関して、α及びβの値は、0.238及び0.1であり、このため上式は、以下のようになる。
Dcombined=0.238×(DTLD2+0.1×DTLD1)
ただし、別の形式の検出器が使用される場合、感放射線要素の周辺の適切な要素の設計は、結果としてα及びβの他の適当な値をもたらすであろう。
上述の等式で計算されたような線量計(Dcombined)により得られた線量のエネルギー及び角度依存性が、異なる標準放射線質スペクトル及び異なる入射角に関して図31に示される。本例において、両検出器の構成が、図32に示されるように、横断面及び矢状断面において対称幾何形状を有し、エネルギー及び角度依存性が、両平面において、正及び負の角度に対して同一、例えば、+φ=−φ、例えば、θ=φであるように与えられる。
新規の線量計の線量(Dcombined)とRP鉛服を伴う実効線量(ERP−gaments)との間の比率は、被ばくの特定条件、例えば、光子ビームエネルギまたはX線線質、及び入射角に関して実効線量を測定する新規の線量計の性能を示す。比率が1に近いほど、実効線量の推定がより良好である。比率DCombined/ERP−garmentsが1を超える場合、線量計は、RP服を伴う実効線量を過大推定する。これに代えて、比率DCombined/ERP−garmentsが1未満である場合、線量計の線量は、実効線量を過小推定している。
この比率は、正及び負の入射角を有する、身体の横断面に平行な異なるX線線質を有する光子ビームに関して、それぞれ、図33及び図34に示され、また正及び負の入射角を有する、身体の矢状断面に平行な異なるX線線質を有する光子ビームに関して、それぞれ、図35及び図36に示される。
横断面に平行であり、身体の右側から来るX線線質を有する光子ビームに関して、線量計の線量が、N−系列に対して−15%〜−41%(0.85〜0.59のDCombined/ERP−garmentsの比率)、W−系列に対して−23%〜−40%(0.77〜0.60の比率)、及びRQR系列に対して−15%〜−37%(0.85〜0.63の比率)によって実効線量を過小推定することが図33において見られ得る。類似の性能が、身体の左側から来る光子ビームに対して観察される(図34)が、過小推定のパーセンテージは、N−系列に対して−49%、W−系列に対して−48%、RQR系列に対して−46%に達する。
矢状断面に平行であり、上から来るX線線質を有する光子ビームに関して(図35)、実効線量の過小推定及び過大推定のパーセンテージは、N−系列に対して−37%〜+9%(0.63〜1.09の比率)、W−系列に対して−38%〜+5%(0.62〜1.05の比率)及びRQR系列に対して−29%〜+5%(0.71〜1.05の比率)である。
矢状断面に平行であり、下から来るX線線質を有する光子ビームに関して(図36)、実効線量の過小推定及び過大推定のパーセンテージは、N−系列に対して−37%〜+48%(0.63〜1.48の比率)、W−系列に対して−38%〜+46%(0.62〜1.46の比率)及びRQR系列に対して−29%〜+44%(0.71〜1.44の比率)である。
線量計の全体の性能は、IR及びICで働いている医療スタッフを表す、本明細書に含まれる全放射線場に関して+48%以下の過大推定及び−49%以上の過小推定を伴い実効線量を推定可能なことである。
更なる例において、本発明の実施形態による別の代表的な実施形態は、参照が図29及び図30になされる、前の例において論じられたものと類似の設計に対応し得るが、2つの感放射線要素が、TLDに代えて、Al2O3:C OSL検出器要素である点において異なっており、例えば、検出器要素選択及びこれらの検出器要素の物理的寸法のみにおいて異なっている。これらのOSL検出器は、市販の形式に対応する、0.2mmの厚みを有する。図38は、異なるX線線質及び異なる入射角を有する光子ビームに関して、この代表的な線量計によって得ることができる実効線量Dcombined推定と、例えば、模擬された人型ファントムによって表現されるように、放射線防護鉛服を着用している成人のベンチマーク実効線量ERP−garmentsとの間の比率を示す。この代表的な線量計が、前の例においてTLD基盤線量計により得られたものに類似する、例えば、推定された実効線量がベンチマーク実効線量の+/−50%内である、線量計によって推定された線量と実効線量との比率を提供することが観察されるであろう。
この例において、前の例と類似の設計が適用されたが、可能な限り最小の実効線量の過大推定及び過小推定を得るために、両検出器の値の線形結合に対する定数α及びβの適当な値、例えば、最適値が使用された。