JP2015200005A - 成膜装置 - Google Patents

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Nariyuki Nakagawa
成幸 中川
宜郎 川下
Nobuo Kawashita
宜郎 川下
敏雄 龍輪
Toshio Tatsuwa
敏雄 龍輪
村上 亮
Ryo Murakami
亮 村上
粕川 実
Minoru Kasukawa
実 粕川
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Abstract

【課題】磁石粒子を吐出して皮膜を形成する成膜工法において、磁石粉末の磁化の方向を揃えつつ、成膜を妨げる要因となる磁石粒子(皮膜として構成されなかった磁石粒子)の成膜領域上への堆積を阻止する成膜装置を提供する。【解決手段】本発明の成膜装置1は、基板14の表面に成膜するために、粒子を基板14に向かって吐出する吐出部13と、成膜がなされる基板14上の成膜領域に位置する弱磁場領域と、弱磁場領域よりも磁場強度が相対的に高い強磁場領域とを、基板14の背面側から形成する磁場形成部16と、を有し、強磁場領域は、少なくとも磁場強度のピークが、成膜領域の外側に位置する。【選択図】図3

Description

本発明は、成膜装置に関する。
近年、電気モーター等の高性能化に伴い、磁気特性の高い磁石成形体の開発が望まれている。磁気特性の高い磁石成形体としては、希土類磁石が知られている。希土類磁石は、飽和磁化が高く、磁気異方性が高いといった特性を有する。希土類磁石の中でも、特に、Sm−Fe−N合金系の磁石粉末は、優れた磁気特性を有するため注目されている。
しかし、Sm−Fe−N合金系の磁石粉末は、500℃以上の高温に晒されると、熱分解によって窒素が脱離する反応が生じ、磁力を喪失してしまう。そのため、樹脂等のバインダーにより磁石粉末を固めたボンド磁石として使用される。ボンド磁石は、バインダーを使用するため、得られる磁石の形状の自由度が高く、寸法精度も高い。しかしながら、Sm−Fe−N合金系の磁石粉末にバインダーを混合する場合には、バインダーの体積が全体の約3割を占める場合もあり、十分な磁力を得ることができない。
そこで、磁石粉末以外の物質をなるべく含有させない磁石成形体を成形する方法が要求されるようになった。この要求に応えるべく、エアロゾルデポジッション(AD法)やコールドスプレイ等の、磁石粉末(粒子)の融点未満で成膜する固化成形方法が開発された。たとえば、特許文献1に開示された固化成形方法(コールドスプレイ)によれば、磁石粉末を基板の表面に向かって吐出して成膜することで、高密度な磁石成形体が容易に得られる。
しかし、特許文献1の固化成形方法を採用した場合には、各々の磁石粉末はランダムな方位を向いて飛行する。そのため、磁化の方向が等方的に分布した状態で基板上に磁石粉末が堆積し、十分に強い磁力を得ることができない。
これに対して、基板の背面側に永久磁石を設置し、基板の表面に向かって吐出された磁石粉末に磁場をかけて、各々の磁石粉末の磁化の方向を揃える、といった試みがなされた(たとえば、非特許文献1)。
特開2013−120798号公報 CiNii J.Magn.Magn.Mater.290−291,1202−1205,2005
しかし、非特許文献1に開示された成膜工法を用いると、基板上に皮膜として構成されずに単に堆積するだけの磁石粒子が発生する。このような成膜に供しない磁石粒子の堆積によって、ダンパ作用が生じ、磁石粒子同士の接合に必要なエネルギーが吸収されてしまう。この状態で磁石粒子が吐出され続けても、成膜に供しない磁石粒子がよりいっそう堆積されるだけで、磁力の強い磁石成形体は得られないという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものである。すなわち、磁石粒子を吐出して皮膜を形成する成膜工法において、磁石粉末の磁化の方向を揃えつつ、成膜を妨げる要因となる磁石粒子(皮膜として構成されなかった磁石粒子)の成膜領域への堆積を阻止する成膜装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明は、成膜装置である。成膜装置は、基板の表面に成膜するために、粒子を当該基板に向かって吐出する吐出部と、前記成膜がなされる前記基板上の成膜領域に位置する弱磁場領域と前記弱磁場領域よりも磁場強度が相対的に高い強磁場領域とを当該基板の背面側から形成する磁場形成部と、を有し、前記強磁場領域は、少なくとも磁場強度のピークが、前記成膜領域の外側に位置する。
本発明によれば、成膜がなされる成膜領域には弱磁場領域が形成され、その成膜領域の外側に強磁場領域が形成される。これにより、成膜領域には磁化の方向が揃った磁石粒子が堆積され、皮膜として構成されなかった磁石粒子は成膜領域の外側の強磁場領域に堆積される。そのため、成膜領域が常に清浄に保たれた状態で成膜可能となり、磁力が強く、密着強度の優れた磁石成形体が得られる。
第1実施形態に係る成膜装置の概略構成例を示す図である。 磁場形成部の詳細な構成例および成膜領域を示す図である。 基板の表面に形成される磁場分布について説明するための図である。 (A)直径20mmの電磁石を用いたときの磁場分布の例を示す図である。(B)直径50mmの電磁石を用いたときの磁場分布の例を示す図である。 第1実施形態に係る実施例および比較例について評価結果を示す図である。 第2実施形態に係る成膜装置の概略構成例を示す図である。 第2実施形態に係る成膜装置の詳細な構成例を示す図である。 第2実施形態に係る実施例および比較例について評価結果を示す図である。 磁場形成部の変形例を示す図である。 成膜領域の位置についての変形例1を示す図である。 成膜領域の位置についての変形例2を示す図である。 強磁場領域よりも外側の3箇所の領域で残留磁束密度を計測する方法を説明するための図である。 可動装置の変形例を示す図である。
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
<第1実施形態>
[成膜装置1]
第1実施形態の成膜装置1は、コールドスプレイ法を用いて磁石成形体を製造する装置である。コールドスプレイ法とは、所定の原料粉末を、溶融またはガス化させることなく、キャリアガスとともに超高速で固相状態のまま基板に衝突させて皮膜(磁石成形体)を形成する方法である。ここで、原料粉末には、磁石粒子(たとえば、SmFe14、n=2.5〜3.5))とバインダー(たとえば、SmFe14の質量に対して3質量%のCu粒子)を混合した粉末を用いる。また、キャリアガスには、Heガスを用いる。ただし、本発明の成膜装置1に適用される成膜工法は、上記のコールドスプレイ法に限定されず、本発明の作用効果を有効に発現し得るものであれば、いかなる成膜工法が適用されてもよい。
図1は、第1実施形態に係る成膜装置の概略構成例を示す図である。図2は、磁場形成部の詳細な構成例および成膜領域を示す図である。以下、図1、図2を参照して、第1実施形態に係る成膜装置1について説明する。
図1に示すとおり、成膜装置1は、ガス発生部10と、ガス加熱部11と、粉末供給部12と、吐出部13と、基板14と、基板保持部15と、磁場形成部16とを有する。
(1)ガス発生部10
ガス発生部10は、低温(たとえば、室温)の高圧ガス(以下では「低温ガス」と称する)を、所定の配管を介してガス加熱部11および粉末供給部12へ圧送する。ガス発生部10は、低温ガスを封入した高圧ガスボンベ、高圧ガスタンクであってもよいし、低温ガスを高圧下で液化して封入した高圧液化ボンベ、高圧液化タンク、ガスコンプレッサであってもよい。
(2)ガス加熱部11
ガス加熱部11は、ガス発生部10から圧送された低温ガスを、原料粉末の融点未満に設定された所定温度(たとえば、280℃)に達するまで加熱する。ガス加熱部11において加熱されたガスを一次キャリアガスと称する。ガス加熱部11は、所定温度まで加熱された一次キャリアガスを、所定の配管を介して吐出部13へ圧送する。具体的には、ガス加熱部11は、ガス発生部10から圧送された低温ガスを通すコイル状の内部配管を有する。ガス加熱部11は、内部配管のコイル状の部分に電流を流すことにより、内部配管内の低温ガスを加熱する。なお、内部配管の材料には、耐圧性、耐腐食性、耐候性、耐熱性等に優れた炭素鋼、ステンレス鋼等の鋼鉄が用いられる。あるいは、高強度Ni合金、高強度Fe合金、Ti合金等の超硬合金が用いられてもよい。なお、ガス加熱部11は、この形態に限定されず、低温ガスを所定温度まで加熱できれば、どのような形態、名称、構造のものであってもよい。
(3)粉末供給部12
粉末供給部12は、原料粉末(磁石粒子、バインダー)を、ガス発生部10から圧送された低温ガスと所定の混合比率で混合し、原料投入ガスとして、所定の配管を介して吐出部13へ圧送する。具体的には、粉末供給部12は、原料粉末を収容し、撹拌するための粉末収容室を有する。粉末収容室は、ガス発生部10から圧送された低温ガスが供給されて、加圧状態に維持されている。収容室内では、原料粉末と低温ガスが混合されて、原料投入ガスが生成される。粉末収容室の底部には開口部が設けられており、その開口部から原料投入ガスが排出される。なお、粉末供給部12は、この形態に限定されず、原料粉末が含まれている原料投入ガスを吐出部13へ供給できれば、どのような形態、名称、構造のものであってもよい。
(4)吐出部13
吐出部13は、基板14の表面に成膜するために、原料粉末(磁石粒子、バインダー)を基板14に向かって吐出(噴射)する。具体的には、吐出部13は、ガス加熱部11から供給された一次キャリアガスと、粉末供給部12から供給された原料投入ガスとを混合する。吐出部13において混合されてできたガスを、二次キャリアガスと称する。二次キャリアガスは、磁石粒子の融点よりも低温であり、原料粉末を基板14の表面に向かって吐出(噴射)するための媒体となる。また、図1に示すように、吐出部13は、アスピレーター式のノズル17を有しており、ノズル17の細い部分で二次キャリアガスの流速を加速させて、吐出口18から基板14の表面へ向けて噴射する。したがって、吐出部13は、キャリアガス加速部とも称される。また、吐出部13は、図1、図2に示すように、吐出口18が基板14から所定の距離(たとえば、10mm)だけ離れた位置に設けられ、基板14の表面に対して水平な方向および垂直な方向に移動可能なよう、ロボットアームに設置されている。たとえば、吐出部13は、原料粉末を吐出(噴射)しながら、主走査方向(図2の紙面の左方向、右方向)および副走査方向(図2の紙面の手前方向、奥行き方向)に移動して、所望の形状(たとえば、正方形)の皮膜Nを基板14上に形成する。なお、皮膜Nが形成される(すなわち、成膜がなされる)基板14上の領域を、成膜領域と称する。
(5)基板14
基板14は、図1、図2に示すように、吐出部13の吐出口18と、後述する磁場形成部16との間に配置される平板状の部材である。たとえば、基板14は、Cu、ステンレス鋼、Al、炭素鋼等の金属基板であってもよいし、シリカ、マグネシア、ジルコニア、アルミナなどのセラミック基板であってもよい。
(6)基板保持部15
基板保持部15は、基板14の表面に原料粉末が衝突して成膜可能なように、基板14を保持する。これとともに、基板保持部15は、後述する磁場形成部16に原料粉末が成膜しないように磁場形成部16を保護する。たとえば、基板保持部15は、板厚1mmのAl板を加工することによって、磁場形成部16を覆う形状に形成される。
(7)磁場形成部16
磁場形成部16は、鉄芯コイルまたは空芯コイルに電流を流して磁場を発生させる電磁石を含み、基板14の背面側から磁場を形成する。たとえば、図2には、磁場形成部16に鉄芯コイルを採用した例が示されている。鉄芯コイルは、FeCo合金棒、炭素棒などの鉄芯16aに、銅などの導線16bが巻かれて作製される。磁場形成部16が発生した磁場の影響を受けて、吐出部13の吐出口18から二次キャリアガスとともに吐出(噴射)された原料粉末に含まれる各磁石粒子は、磁化の方向が揃った状態で基板14に堆積し、皮膜Nを形成する。また、磁場形成部16は、磁場強度の異なる少なくとも2種類の磁場領域(たとえば、後述する強磁場領域、弱磁場領域)を形成する。
[磁場分布の詳細]
続いて、磁場形成部16が形成する磁場分布の詳細について説明する。
図3は、基板の表面に形成される磁場分布について説明するための図である。図3の下部には、図2と同様の基板14、基板保持部15、磁場形成部16が示され、図3の上部には、磁場形成部16によって基板14の表面に形成される磁場分布を示すグラフが示されている。グラフの横軸Xは、磁場形成部16(図示する例では、鉄芯コイル)の中心からの距離(mm)を示し、縦軸Hは、磁場強度(T)を示す。
図3に示されるように、磁場形成部16として鉄芯コイルを用いる場合、コイルに流す電流を制御することで、鉄芯コイルの中心領域(コア領域)の直上よりもその周辺領域(導線16b上)の方を、相対的に磁場強度を高くすることができる。これは、電流が流れる導線16bに近いほど、強い磁場が発生するためである。第1実施形態では、磁場強度が相対的に低い領域を弱磁場領域と称し、磁場強度が相対的に高い領域を強磁場領域と称する。図3に示す例では、鉄芯コイルの中心領域に相当するBからDの範囲(横軸X方向)に弱磁場領域が形成され、その周辺領域に相当するAからBの範囲(横軸X方向)およびDからEの範囲(横軸X方向)に強磁場領域が形成される。なお、図3のP1、P2は、磁場強度がピーク値となる位置(「ピーク位置」と称する)を示しており、Cは、ピーク位置P1、P2の間において磁場強度がボトム値となる位置(「ボトム位置」と称する)を示している。そして、A、Bは、磁場分布のグラフ上において、ピーク位置P1とボトム位置Cの中点(ただし、縦軸H方向の中点)となる位置に定義される。また、D、Eは、磁場分布のグラフ上において、ピーク位置P2とボトム位置Cの中点(ただし、縦軸H方向の中点)となる位置に定義される。
そして、成膜領域は、少なくとも弱磁場領域に重なる位置となるように設定される。このとき、強磁場領域は、少なくとも磁場強度のピークが、成膜領域の外側に位置するように形成される。たとえば、図3の例では、成膜領域の全領域が弱磁場領域に重なるように設定されており、強磁場領域内の磁場強度のピーク(位置)P1、P2は成膜領域の外側に位置している。また、成膜領域は、弱磁場領域に加えて、強磁場領域の一部に重なるように設定してもよい。この場合においても、強磁場領域のピーク(位置)P1、P2を成膜領域の外側に位置させる。
以上のように、第1実施形態では、成膜領域に弱磁場領域の少なくとも一部が重なるように形成され、強磁場領域のピークがその成膜領域の外側に位置するように磁場分布が形成されている。弱磁場領域の磁場の影響によって、吐出部13から吐出(噴射)された各磁石粒子は磁化の方向が揃った状態で基板14に堆積され、皮膜Nを形成する。これにより、成膜領域では、磁力が十分に強い磁石成形体が得られる。さらに、弱磁場領域の周囲に形成された強磁場領域の磁場の影響によって、成膜領域で皮膜Nとして構成されなかった磁石粒子は、成膜領域外の強磁場領域に引き寄せられ、そのほとんどが強磁場領域に堆積する。そのため、成膜領域が常に清浄に保たれた状態で成膜可能になる。これにより、磁力が強いだけでなく、密着強度も優れた磁石成形体が得られる。
また、第1実施形態では、磁場形成部16として上述のような鉄芯コイルまたは空芯コイルを用いることにより、永久磁石を組み合わせたり、複雑な磁気回路を設計したりしなくても、容易に好適な磁場分布が得られる。また、鉄芯コイルまたは空芯コイルへの通電を止めることで、発生する磁場強度を容易にゼロにすることができるため、基板14に残留している成膜に供しない磁石粒子を比較的容易に除去クリーニングできる。
また、第1実施形態では、吐出部13の吐出口18から基板14までの距離を10mm程度としている。このような距離に設定しているのは、吐出部13の吐出口18から基板14までの距離が、近すぎるとエロージョンが発生し、遠すぎると磁石粒子の速度が減速して成膜しないためである。但し、最適距離は、用いる粒子によって異なるため、通常は5〜20mmの範囲で、粒子径と粒子重量に応じて、成膜効率が最大になるように調整が必要である。
従来では、このような数mm程度の距離しかない吐出部13と基板14の間に磁場形成部16を配置していた。そのため、磁場形成部16は小さい永久磁石やコイルに限られ、第1実施形態の磁場形成部16のような十分に強い磁場(強磁場領域)を形成できなかった。これに対し、第1実施形態では、磁場形成部16と、吐出部13の吐出口18との間に、基板14が配置される構成となっているため、磁場形成部16のサイズが限定されず、磁石粒子の配向に要するトルクを発生するのに十分な強度の磁場を発生させることができる。そのため、磁力が強く、密着強度の優れた磁石成形体が得られる。
また、第1実施形態では、磁石粒子の融点よりも低温のキャリアガスによって磁石粒子を基板14に向かって吐出(噴射)しているため、磁石粒子のキューリ点以下の温度で成膜可能である。そのため、磁石粒子の強磁性の性質は失われず、各磁石粒子は磁場形成部16から発生した磁場の影響を受けて、磁化の方向が揃うようになる。
[実施例]
以下、第1実施形態に係る発明の実施例および比較例を示し、第1実施形態に係る発明をさらに詳細に説明する。図4(A)は、直径20mmの電磁石を用いたときの磁場分布の例を示す図である。図4(B)は、直径50mmの電磁石を用いたときの磁場分布の例を示す図である。図5は、第1実施形態に係る発明の実施例および比較例について評価結果を示す図である。以下、図4、5を参照して、実施例1〜5および比較例1〜4について説明する。
以下の実施例1〜5および比較例1〜4では、図1、2に示す成膜装置1を用いたコールドスプレイ法により、磁石成形体の形成を行った。実施例1〜5および比較例1〜4において共通して用いられる原材料と、実施例1〜5および比較例1〜4において共通する磁石成形体の製造方法は下記のとおりである。
(1)原材料
吐出部13から吐出(噴射)する原料粉末には、磁石粒子とバインダー効果を有する金属粒子を混合した粉末を用いた。
磁石粒子には、希土類磁石粒子に分類される日亜化学工業株式会社製のSmFe14(n=2.5〜3.5)を用いた。SmFe14の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)電子線表面イメージング顕微鏡装置(カールツァイス株式会社製)で解析したところ3μmであり、形状は球状であった。なお、分解温度を示差走査熱量測定(DSC)装置(ティー・エイ・インスツルメント社製)で解析したところ、450℃以上であった。
金属粒子には、非磁性金属粒子に分類される日本アトマイズ加工株式会社製の銅(Cu)粒子を用いた。Cu粒子の平均粒径は、SEMで解析したところ2μmであり、形状は球状であった。
基板14には、幅50mm、長さ80mm、厚さ1mmの平板状のCu基板(市中流通品、卸売りは白銅)を用いた。
基板保持部15には、板厚1mmのAl板を加工して製造されたカバーを用いた。
(2)磁石成形体の製造方法
磁石成形体の製造装置(すなわち、成膜装置1)としては、KM装置INOVATI社製)を用いた。磁石粒子と金属粒子は、Cu粒子がSmFe14の質量に対して3質量%となるように混合した。次いで、原料投入ガスには、Heガスを用いて、25℃、0.8MPaで原料粉末を吐出部(キャリアガス加速部)13に投入した。吐出部13には、一次キャリアガスであるHeガスが600℃、0.8MPaで供給されており、投入した原料投入ガスと混合された。このように混合されたガスは、SmFe14(n=2.5〜3.5)およびCu粒子を含むHeガスからなる二次キャリアガスである。二次キャリアガスは、原料投入ガスおよび一次キャリアガスの温度および供給圧力によって温度が調節され、吐出部13で加速して噴射された。二次キャリアガスのガス温度は280℃であり、ガス圧力は0.8MPaであった。吐出部13の吐出口18から10mmの距離で設置したCu基板14に二次キャリアガスを噴射しながら、主走査方向に100mm/sの走査速度でL1mm走査したら副走査方向に0.5mmずらすといった走査を繰り返した。最終的に、L1mm×L2mmの成膜領域に6層分の原料粉末を堆積させた。一回の積層ごとに0.05mmノズルの高さを上昇させた。その後、得られた堆積物の表面を研磨して磁石成形体を得た。膜厚をマイクロメーター(株式会社ミツトヨ製)で測定したところ250μmであった。
(実施例1)
磁場形成部16として、直径20mm、高さ150mmの円柱状の鉄芯16aに銅の導線16bを巻きつけた鉄芯コイルを作製した。この鉄芯コイルの導線16bに電流を流し、鉄芯16aの中心磁場が0.6Tとなる磁場を発生させた。このとき基板14の表面上に形成される磁場分布は、図4(A)に示すとおり、中心位置Oで約0.6T程度の磁場(弱磁場領域)が形成され、ピーク位置P1、P2で約0.8T程度の磁場(強磁場領域)が形成された。このとき、吐出部13からは、二次キャリアガスを基板14に向かって吐出(噴射)した。成膜領域は、鉄芯コイルの中心領域に設定し、サイズ(L1×L2)を10mm×10mmとした。
(実施例2)
成膜領域のサイズを12mm×12mmとした点以外は、実施例1と同様の方法で磁石成形体を製造した。
(実施例3)
磁場形成部16として、直径50mm、高さ150mmの円柱状の鉄芯16aに銅の導線16bを巻きつけた鉄芯コイルを作製した。この鉄芯コイルの導線16bに電流を流し、鉄芯16aの中心磁場が0.6Tとなる磁場を発生させた。このとき基板14の表面上に形成される磁場分布は、図4(B)に示すとおり、中心位置Oで約0.6T程度の磁場(弱磁場領域)が形成され、ピーク位置P1、P2で約1.6T程度の磁場(強磁場領域)が形成された。このとき、吐出部13からは、二次キャリアガスを基板14に向かって吐出(噴射)した。成膜領域は、鉄芯コイルの中心領域に設定し、サイズ(L1×L2)を30mm×30mとした。
(実施例4)
成膜領域のサイズを25mm×30mmとした点以外は、実施例3と同様の方法で磁石成形体を製造した。
(実施例5:参考)
磁場形成部16として、直径50mm、高さ150mmの円柱状の鉄芯16aに銅の導線16bを巻きつけた鉄芯コイルを作製した。この鉄芯コイルの導線16bに電流を流し、鉄芯16aの中心磁場が0.6Tとなる磁場を発生させた。このとき基板14の表面上に形成される磁場分布は、図4(B)に示すとおり、中心位置Oで約0.6T程度の磁場(弱磁場領域)が形成され、ピーク位置P1、P2で約1.6T程度の磁場(強磁場領域)が形成された。このとき、吐出部13からは、二次キャリアガスを基板14に向かって吐出(噴射)した。成膜領域は、鉄芯コイルの中心位置Oから25mm離れた位置を中心とする領域(周囲領域)に設定し、サイズを15mm×30mmとした。したがって、実施例5では、上記の実施例1〜4とは異なり、成膜領域内に強磁場領域のピーク位置P1、P2がくる。その代わりに、実施例5に限り、成膜工程において、成膜を1層ごとに中断し、磁場形成部16から発生する磁場を止めた状態で、エアガンにて表面に残留した磁石粒子を除去し、さらにワイプでふき取った。つまり、実施例5では、1層分の成膜が形成されるごとに、基板14および皮膜Nの表面に残留した磁石粒子をユーザーの手作業によってふき取る作業が加えられた。
(比較例1)
鉄芯コイルに通電しないで成膜した点、および、成膜領域のサイズを25mm×25mmとした点以外は、実施例1と同様の方法で磁石成形体を製造した。
(比較例2)
成膜領域のサイズを25mm×25mmとした点以外は、実施例1と同様の方法で磁石成形体を製造した。
(比較例3)
成膜領域のサイズを60mm×60mmとした点以外は、実施例3と同様の方法で磁石成形体を製造した。
(比較例4)
実施例5との比較のため、1層分の成膜ごとにワイプで拭き取ることなく、成膜を1層ごとに中断せずに6層連続して成膜した点以外は、実施例5と同様の方法で磁石成形体を製造した。
(磁石成形体の評価方法)
第1の評価方法として、得られた磁石成形体について目視で剥離の有無を観測した。第2の評価方法として、得られた磁石成形体の表面を研磨した後、6mm×8mm角に試料を切りだし、残留磁束密度を評価した。ここで、残留磁束密度とは、磁気特性の指標となるものである。残留磁束密度は、磁石成形体と接着しているCu基板14とともに、4.8MA/mのパルス着磁を行った後に、東英工業社製振動試料型磁力計(VSM)を用いて常温で測定した。残留磁束密度の算出のため、反磁界補正は、得られた膜厚から基板14の厚さを除くことにより、磁石成形体の厚さ(形状)を算出して実施した。また、残留磁束密度は、基板14から剥がした皮膜小片を用いてアルキメデス法によって測定した。
図5には、実施例1〜5と比較例1〜4について、目視で観測した剥離の有無と、残留磁束密度の測定値とが示されている。なお、残留磁束密度の測定値は、比較例1の測定値を1として、その相対値を示した。
(実施例1〜4の評価結果)
図5に示すように、実施例1〜4のいずれの場合でも、剥離は無く、残留磁束密度の値が大きい。このように、実施例1〜4の成膜方法によって、磁力が強く、密着強度の優れた磁石成形体が得られたのは、成膜領域が少なくとも弱磁場領域に重なり、強磁場領域における磁場強度のピークが成膜領域の外側に位置していることに起因すると考えられる。すなわち、実施例1〜4の成膜方法によれば、成膜領域には磁化の方向が揃った磁石粒子が堆積され、皮膜として構成されなかった磁石粒子は成膜領域外の強磁場領域に堆積される。そのため、成膜領域が常に清浄に保たれた状態で成膜可能となり、磁力が強く、密着強度の優れた磁石成形体が得られたと考えられる。
(実施例5の評価結果)
図5に示すように、実施例5の場合でも、剥離は無く、残留磁束密度の値が大きい。このように、実施例5の成膜方法によって、磁力が強く、密着強度の優れた磁石成形体が得られたのは、ユーザーのふき取り作業により成膜領域が常に清浄に保たれた状態で成膜されたことに起因すると考えられる。
(比較例1の評価結果)
実施例1〜5に対し、比較例1の場合には、剥離は無いが、残留磁束密度の値が比較的小さい。このように、比較例1の成膜方法によって、磁力の弱い磁石成形体しか得られなかったのは、基板14の表面上に磁場が形成されず、各々の磁石粉末の磁化の方向が揃っていなかったことに起因すると考えられる。
(比較例2〜4の評価結果)
実施例1〜5に対し、比較例2〜4の場合には、剥離が観測され、残留磁束密度を測定できなかった。このように、比較例2〜4の成膜方法によって、密着強度の低い磁石成形体しか得られなかったのは、強磁場領域における磁場強度のピークが成膜領域内に位置していることに起因すると考えられる。すなわち、比較例2の成膜方法によれば、成膜領域には磁化の方向が揃った磁石粒子だけでなく、皮膜として構成されなかった磁石粒子も堆積される。このような成膜に供しない磁石粒子の堆積によって、成膜領域でダンパ作用が生じ、密着強度の低い磁石成形体しか得られなかったと考えられる。
(総合評価結果)
以上のことから、成膜領域が少なくとも弱磁場領域に重なり、強磁場領域における磁場強度のピークが成膜領域の外側に位置してさえいれば、磁力が強く、密着強度の優れた磁石成形体が得られることがわかった。また、実施例5と比較例4を比べることにより、成膜領域が清浄に保たれた状態で成膜することが、密着強度の優れた磁石成形体を得るために重要であることもわかった。
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態に係る成膜装置の概略構成例を示す図である。図7は、第2実施形態に係る成膜装置の詳細な構成例を示す図である。以下、図6、図7を参照して、第2実施形態に係る成膜装置1について説明する。なお、第2実施形態については、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
第2実施形態に係る成膜装置1は、吐出部13を固定して、基板14を移動(可搬)させる点が、第1実施形態とは異なる。基板14の移動方向は、水平方向(2次元方向)であり、たとえば、主走査方向(図6、図7の紙面の左方向、右方向)および副走査方向(図6、図7の紙面の手前方向、奥行き方向)である。このとき、基板14は、磁場形成部16に密着(接触)するように、磁場形成部16と一定の距離を保ちながら平行移動する。
基板14の移動制御には、基板14に連結された可動装置20が用いられる。第2実施形態では、可動装置20として、図6、図7に示すようなロボットアーム20a、すなわち、数値制御によって可動する多軸制御のロボットが用いられる。可動装置20の先端には、基板14を安定かつ正確に移動させるための治具21が連結されてもよい。この場合、可動装置20は、治具21を介して、基板14を移動させることができる。また、可動装置20の先端に基板14や治具21などを把持できるハンド等を設けてもよい。
なお、可動装置20は、不図示の成膜制御部を有している。成膜制御部は、吐出部13および磁場形成部16に対して、基板14を相対移動させながら、吐出部13から原料粉末を吐出させる制御を行う。これにより、基板14上には、所望の形状(たとえば、正方形)の磁石成形体(皮膜N)が形成される。基板14の可動範囲は予め設定されており、設定された可動範囲によって、形成される磁石成形体の形状が決まる。たとえば、成膜制御部は、磁場形成部16(鉄芯コイル、空芯コイルなど)の直径より大きな範囲において、基板14を相対移動可能である。なお、成膜制御部は、たとえば、CPU(不図示)がストレージ(不図示)に予め格納されている所定の制御プログラムをメモリー(不図示)に読み出して実行することにより実現される。
また、可動装置20は、図6に示すようなチャンバー25内に収納される。
形成する磁石成形体(皮膜N)のサイズについては、特に制限されない。ただし、上記の第1実施形態に係る成膜装置1を用いる場合には、形成する磁石成形体のサイズに応じて、磁場形成部(鉄芯コイル、空芯コイルなど)16の直径を変更する必要があった。磁力が強く、密着強度の優れた磁石成形体を得るためには、第1実施形態に係る成膜装置1では、図3に示す強磁場領域のピーク位置P1、P2を、成膜領域の範囲外に位置させる必要があるからである。
しかし、一般的に、磁場形成部(鉄芯コイル、空芯コイルなど)16の直径が大きくなると、巻き幅や通電電流の大きさを変えない限り、磁場形成部16から発生する磁場の強度は低下する。特に、磁場形成部16の中心磁場の強度が著しく低下する。そのため、直径が大きい磁場形成部16を用いると、磁力が弱く、密着強度の低い磁石成形体しか得ることができない。結果的に、磁場形成部16の直径を小さくせざるを得ず、小型の磁石成形体しか得られない。
一方、第2実施形態に係る成膜装置1は、吐出部13と磁場形成部16が、図7に示すように同軸Z上に固定配置されている。そのため、基板14がどの位置に移動しても、吐出部13から吐出された原料粉末は、常に、磁場形成部16の中心位置付近(ただし、基板14上)に衝突する。磁場形成部16の中心位置(「成膜位置」とも称する)付近には、磁場形成部16の中心磁場によって弱磁場領域が形成されるため、原料粉末は、その弱磁場領域の影響を受けて、磁化の方向が揃った状態で基板14に堆積され、磁石形成体(皮膜N)を形成する。このとき、弱磁場領域の周辺には、第1実施形態と同様に、磁場強度が弱磁場領域よりも相対的に高い強磁場領域が形成される。強磁場領域は、磁石形成体(皮膜N)として構成されなかった磁石粒子(浮遊粒子)を引き寄せる。そのため、基板14がどの位置に移動しても、原料粉末が基板14に衝突する成膜位置においては、常に清浄に保たれた状態で成膜可能になる。そして、基板14を移動させながら、成膜領域全体に亘って成膜すれば、成膜を妨げる要因となる磁石粒子(皮膜として構成されなかった磁石粒子)の成膜領域への堆積を阻止しつつ成膜可能である。その結果、磁力が強く、密着強度の優れた磁石成形体が得られる。
以上の第2実施形態に係る成膜装置1を用いれば、固定配置された吐出部13および磁場形成部16に対して基板14を相対移動させているため、磁場形成部(鉄芯コイル、空芯コイルなど)16の直径を大きくしなくても、大型の磁石成形体が得られる。ただし、大型とは、磁場形成部16の直径より長尺のものを指す。
また、吐出部13と磁場形成部16を同軸Z上に固定配置するとともに、基板14を磁場形成部16に密着させながら平行移動するだけの単純な構造および制御によって、磁石成形体が得られるため、大型の磁石成形体を簡易かつ安価に製造できる。
また、基板14に可動装置20を連結し、数値制御により移動(可動)させることにより、任意の形状の磁石成形体を、容易に製造できる。また、可動装置20として、多軸制御のロボットを用い、数値制御により移動(可動)させることにより、任意の形状の磁石成形体を、容易かつ安価に製造できる。また、基板14の可動範囲を、磁場形成部(鉄芯コイル、空芯コイルなど)16の直径より大きくすることにより、大型かつ一体構造の磁石成形体を、極めて容易かつ安価に製造できる。
[実施例]
以下、第2実施形態に係る発明の実施例を示し、第2実施形態に係る発明をさらに詳細に説明する。図8は、第2実施形態に係る発明の実施例について評価結果を示す図である。以下、図8を参照して、実施例6〜8について説明する。
以下の実施例6〜8では、図6、7に示す成膜装置1を用いたコールドスプレイ法により、磁石成形体の形成を行った。実施例6〜8において用いられる原材料、および磁石成形体の基本的な製造方法は、上記の実施例1〜5と共通するので、説明を省略する。
(実施例6)
磁場形成部16として、直径Φが20mm、高さが150mmの円柱状の鉄芯16aに銅の導線16bを巻きつけた鉄芯コイルを作製した。この鉄芯コイルの導線16bに電流を流し、鉄芯16aの中心磁場が0.6Tとなる磁場を発生させた。このとき基板14の表面上に形成される磁場分布は、図4(A)に示すとおり、磁場形成部16の中心位置Oで約0.6T程度の磁場(弱磁場領域)が形成され、ピーク位置P1、P2で約0.8T程度の磁場(強磁場領域)が形成された。このとき、基板14をロボットアーム20aにより移動させながら、吐出部13から二次キャリアガスを基板14に向かって吐出(噴射)した。成膜領域(すなわち、基板14の可動範囲)は、鉄芯コイルの中心領域に設定し、サイズ(L1×L2)を10mm×60mmとした。つまり、実施例6では、Φ<L2となるようにした。
(実施例7)
成膜領域のサイズ(L1)×(L2)を25mm×60mmとした点以外は、実施例6と同様の方法で磁石成形体を製造した。つまり、実施例7では、Φ<L1、かつ、Φ<L2となるようにした。
(実施例8)
成膜領域のサイズ(L1)×(L2)を60mm×60mmとした点以外は、実施例6と同様の方法で磁石成形体を製造した。つまり、実施例8では、Φ<L1、かつ、Φ<L2となるようにした。
(磁石成形体の評価方法)
第1の評価方法として、得られた磁石成形体について目視で剥離の有無を観測した。第2の評価方法として、得られた磁石成形体の表面を研磨した後、6mm×8mm角に試料を切りだし、残留磁束密度を評価した。ここで、残留磁束密度とは、磁気特性の指標となるものである。残留磁束密度は、磁石成形体と接着しているCu基板14とともに、4.8MA/mのパルス着磁を行った後に、東英工業社製振動試料型磁力計(VSM)を用いて常温で測定した。残留磁束密度の算出のため、反磁界補正は、得られた膜厚から基板14の厚さを除くことにより、磁石成形体の厚さ(形状)を算出して実施した。また、残留磁束密度は、基板14から剥がした皮膜小片を用いてアルキメデス法によって測定した。
図8には、実施例6〜8について、目視で観測した剥離の有無と、残留磁束密度の測定値とが示されている。なお、残留磁束密度の測定値は、上述の比較例1の測定値を1として、その相対値を示した。
(実施例6〜8の評価結果)
図8に示すように、実施例6〜8のいずれの場合でも、剥離は無く、残留磁束密度の値が大きい。このように、実施例6〜8の成膜方法によって、磁力が強く、密着強度の優れた、大型の磁石成形体が得られたのは、固定配置した吐出部13および磁場形成部16に対して、基板14を相対移動させたことに起因すると考えられる。すなわち、実施例6〜8の成膜方法によれば、磁場形成部16の中心位置付近(弱磁場領域)には磁化の方向が揃った磁石粒子が堆積され、皮膜として構成されなかった磁石粒子は周辺部の強磁場領域へと引き寄せられる。そのため、基板14がどの位置に移動しても、原料粉末が基板14に衝突する位置においては、常に清浄に保たれた状態で成膜可能となる。その結果、磁力が強く、密着強度の優れた、大型の磁石成形体が得られるものと考えられる。
<変形例>
上記各実施形態は、本発明の要旨を例示することを意図し、本発明を限定するものではない。多くの代替物、修正、変形例は当業者にとって明らかである。変形例としては、以下のようなものがある。
たとえば、上記各実施形態では、磁場形成部16として鉄芯コイルや空芯コイルを用いる例について説明した。しかし、本発明は、これに限定されず、磁場強度の異なる少なくとも2種類の磁場領域(強磁場領域、弱磁場領域)を形成できれば、永久磁石を用いてもよい。
図9は、磁場形成部の変形例を示す図である。図9に示すように、磁場形成部16として永久磁石を用いる場合には、円柱状の永久磁石の中心部分に、相対的に弱い磁場強度を発生する第1永久磁石16cを配置し、永久磁石の外周部分に、相対的に強い磁場強度を発生する第2永久磁石16dを配置する。このような永久磁石を上述した鉄芯コイルと同位置に設置することによって、上記の鉄芯コイルを用いる場合と同様の理由によって、磁力が強く、密着強度の優れた磁石成形体が得られる。
また、上記第1実施形態では、図3に示したように、成膜領域の全領域が弱磁場領域に重なっている。しかし、本発明は、これに限定されない。図10は、成膜領域の位置についての変形例1を示す図である。図10に示すように、成膜領域は、弱磁場領域に加えて、強磁場領域の一部に重なるように設定してもよい。この場合においても、強磁場領域のピーク(位置)P1、P2を成膜領域の範囲外に位置させる。そうすれば、上記第1実施形態と同様に、磁力が強く、密着強度の優れた磁石成形体が得られる。
また、上記第1実施形態では、図3に示したように、成膜領域は強磁場領域の内側に位置している。しかし、本発明は、これに限定されない。図11は、成膜領域の位置についての変形例2を示す図である。図11に示すように、強磁場領域のさらに外側も弱磁場領域と定義し、成膜領域を、強磁場領域の外側の弱磁場領域に重なるようにしてもよい。この場合でも、強磁場領域のピーク位置P1、P2が成膜領域の範囲外に位置するようにすれば、磁力が強く、密着強度の優れた磁石成形体が得られる。
ただし、強磁場領域の外側といっても、あまりに磁場形成部16の中心から離れた位置で成膜すると、磁場が弱すぎて磁化の方向が揃っていない磁石粉末も存在し、磁力の弱い磁石成形体しか得られない。そこで、磁力が強く、密着強度の優れた磁石成形体を得るためには、磁場形成部16の中心からどの程度まで離れた位置で成膜する必要があるのか検証した。具体的には、成膜領域のサイズを100mm×100mmとした点以外は、実施例5と同様の方法で磁石成形体を製造し、強磁場領域よりも外側の3箇所の領域で残留磁束密度を計測した。
図12は、強磁場領域よりも外側の3箇所の領域で作製した磁石の残留磁束密度を計測する方法を説明するための図である。図12に示すA領域、B領域、C領域から6mm×8mm角に試料を切りだし、それぞれの残留磁束密度を評価した。A領域は、磁場形成部16の中心位置Oから48mm〜54mm(X軸方向)の範囲の領域であり、計測された残留磁束密度の相対値は1.4であった。B領域は、磁場形成部16の中心位置Oから68mm〜74mm(X軸方向)の範囲の領域であり、計測された残留磁束密度の相対値は1.1であった。C領域は、磁場形成部16の中心位置Oから88mm〜94mm(X軸方向)の範囲の領域であり、計測された残留磁束密度の相対値は1.0であった。以上の結果から、A領域、B領域で成膜すれば、磁力が強く、密着強度の優れた磁石成形体が得られることがわかった。ただし、強磁場領域のピーク位置P1、P2が成膜領域の範囲外に位置するようにするためには、強磁場領域のピーク位置P1、P2からB領域の間(すなわち、磁場形成部16の中心から約50mm〜74mm程度離れた領域)で成膜するとよい。
また、磁場形成部16の中心から50mm〜74mm程度離れた領域では、磁場強度が傾斜しているため、得られる厚膜中で配向度が傾斜した磁石成形体を製造できる。
また、上記第2実施形態では、可動装置20としてロボットアーム20aを用いる例について説明した。しかし、本発明は、これに限定されない。
図13は、可動装置の変形例を示す図である。図13に示すように、可動装置20として、ロボットアーム20aの代わりに、XYステージ20bを用いてもよい。
XYステージ20bは、基板14を、治具21により両端から挟み込んで移動させる。XYステージ20bにより基板14を移動させることにより、上記第2実施形態と同様に、吐出部13および磁場形成部16に対して、基板14を相対移動させることができる。その結果、上記第2実施形態と同様に、磁力が強く、密着強度の優れた、大型の磁石成形体が得られる。
また、図6、7、13には示していないが、磁場形成部16の周囲に冷却孔を設け、磁場形成部16において生じた熱を外部へ逃がすようにしてもよい。また、磁場形成部16を支持するための架台を設けてもよい。
また、上記各実施形態では、磁石粒子としてSmFe14(n=2.5〜3.5)を用いる例について説明したが、これに限定されない。磁石粒子は、Sm−Fe−Nを主成分とする粒子が配向した状態で堆積して形成される希土類磁石相を含有するものあればよい。そうすれば、従来のプロセスでは得られなかった配向度の高い磁石成形体が得られ、モーター等の小型化されたシステムにも適用できる点で優れている。Sm−Fe−Nを主成分とする粒子としては、たとえば、SmFe17(ここで、xは、好ましくは1.5〜4.0、より好ましくは2.0〜3.5、更に好ましくは2.5〜3.3、特に好ましくは2.8〜3.2)、SmFe17、(Sm0.75Zr0.25)(Fe0.7Co0.3)N(ここで、xは、好ましくは1.5〜4.0である)、SmFe11TiN(ここで、xは好ましくは1.5〜4.0である)、(SmZrFe848515、SmFe93(ここで、xは、好ましくは1〜20である)などが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。より好ましくは、SmFe14(x=2.5〜3.3)、特に好ましくは、SmFe14(x=2.8〜3.2)が望ましい。これは、SmFeNは、x=2.8〜3.2で異方性磁界と飽和磁化が最大になり、磁気特性に優れるためである。これらSm−Fe−Nは1種単独でもよいし、2種以上を有する磁石成形体でもよい。更に、異なる種類のSm−Fe−Nの希土類磁石相が積層されてなる多層構造の磁石成形体であってもよい。この場合、多層構造の各層のSm−Fe−Nに関しても1種単独でもよいし、2種以上を有する磁石成形体でもよい。
また、上記各実施形態では、バインダー効果を有する金属粒子としてCu粒子を用いる例について説明したが、これに限定されない。たとえば、バインダーはとして、粒子の塑性変形に伴うエネルギーの弾塑性比が50%以下の非磁性金属粒子が好ましい。弾塑性比が50%以下の変形しやすい粒子が、皮膜の厚膜化に伴う応力を緩和するため、厚膜化しても剥離しにくい、保磁力の高い磁石成形体を得ることができる。弾塑性比が50%以下の変形しやすい非磁性金属粒子としては、Ni、Co、Fe以外の金属元素などが挙げられる。具体的には、実施例で用いているような、CuやAlといった軟質の合金などが好適に用いられる。ただし、本発明は、これらに何ら制限されるものではない。
また、上記各実施形態では、キャリアガスとしてHeガスを用いる例について説明したが、これに限定されない。たとえば、キャリアガスとしては、より優れた磁気特性を得るために、希ガス(He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rn)、窒素ガス(N)などの不活性ガスが挙げられるが、Ar、He、Nなどの入手が容易で安価であり、磁気特性を劣化させない不活性ガスを用いることが好ましい。キャリアガスとして、こうした不活性ガスを使用することによって、より磁石粉末の磁気特性を損なうことなく、高密度な磁石成形体(バルク成形体)を得ることができる。Nガスは窒化物の分解が生じにくく、Nを用いることで耐熱性特性を高めることができる利点があり、Heガスは分子量が小さく、ガス速度が得やすい利点がある。特に、酸化防止のために水素を含有させてもよい。N−Hガスであれば、アンモニア分解ガスとして安価に入手できる利点がある。
1 成膜装置、
10 ガス発生部、
11 ガス加熱部、
12 粉末供給部、
13 吐出部、
14 基板、
15 基板保持部
16 磁場形成部、
17 ノズル、
18 吐出口、
20 可動装置。

Claims (11)

  1. 基板の表面に成膜するために、粒子を当該基板に向かって吐出する吐出部と、
    前記成膜がなされる前記基板上の成膜領域に位置する弱磁場領域と、前記弱磁場領域よりも磁場強度が相対的に高い強磁場領域とを、当該基板の背面側から形成する磁場形成部と、を有し、
    前記強磁場領域は、少なくとも磁場強度のピークが、前記成膜領域の外側に位置する成膜装置。
  2. 前記磁場形成部は、鉄芯コイルまたは空芯コイルに電流を流して磁場を発生させる電磁石を含む請求項1に記載の成膜装置。
  3. 前記磁場形成部と、前記吐出部の粒子の吐出口との間に、前記基板が配置される請求項1または2に記載の成膜装置。
  4. 前記強磁場領域が前記弱磁場領域の周囲に形成され、前記成膜領域は、少なくとも前記弱磁場領域に重なる請求項1〜3のいずれかに記載の成膜装置。
  5. 前記成膜領域は、前記弱磁場領域に加えて、前記強磁場領域の一部に重なる請求項1〜4のいずれかに記載の成膜装置。
  6. 前記吐出部は、前記粒子の融点よりも低温のキャリアガスによって前記粒子を加速して、前記基板に向かって吐出する請求項1〜5のいずれかに記載の成膜装置。
  7. 基板の表面に成膜するために、粒子を当該基板に向かって吐出する吐出部と、
    中心に位置する弱磁場領域と、当該弱磁場領域の周辺に位置して磁場強度が当該弱磁場領域よりも相対的に高い強磁場領域とを、前記基板の背面側から形成する磁場形成部と、
    固定配置した前記吐出部および前記磁場形成部に対して、前記基板を相対移動させながら、前記吐出部から前記粒子を吐出させて成膜する成膜制御部と、を有する成膜装置。
  8. 前記吐出部および前記磁場形成部は、同軸上に固定配置されており、
    前記成膜制御部は、前記基板を前記磁場形成部に密着させながら平行移動させる、請求項7に記載の成膜装置。
  9. 前記成膜制御部は、前記基板に連結された可動装置であって、数値制御によって前記基板を移動させる、請求項7または8に記載の成膜装置。
  10. 前記可動装置は、多軸制御のロボットである、請求項9に記載の成膜装置。
  11. 前記磁場形成部は、鉄芯コイルまたは空芯コイルに電流を流して磁場を発生させる電磁石を含み、
    前記成膜制御部は、前記鉄芯コイルまたは前記空芯コイルの直径より大きな範囲において、前記基板を相対移動可能である、請求項7〜10のいずれか一項に記載の成膜装置。
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