JP2010050440A - R−Fe−B系焼結磁石ユニットおよびそれを用いたリニアモータ用磁気回路並びにそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】リニアモータに用いるハルバッハ磁気回路では、永久磁石をひとつひとつ個別に表面処理を行い、皮膜を形成した永久磁石同士を組み立てて磁気回路を作製していたため、磁気回路を形成する永久磁石間は、接着剤からなる層と表面処理皮膜からなる層とが間に介在してしまい、隙間や位置ズレを発生した。
【解決手段】主面に対して直交する配向方向を有する第1R−Fe―B系焼結磁石とその両端部に主面に対して所定の角度傾いている配向方向を有する第2R−Fe−B系焼結磁石を各主面が同一平面となるようにして一体的に配置した希土類磁石ユニットで、前記希土類磁石ユニット外表面角部のみ面取り面を有し、かつ前記希土類磁石ユニット外表面にエポキシ樹脂、シリコン樹脂、Al、Niのいずれかからなる被膜を有するR−Fe−B系焼結磁石ユニットを用いてリニアモータ用磁気回路を作製する。
【選択図】 図1
【解決手段】主面に対して直交する配向方向を有する第1R−Fe―B系焼結磁石とその両端部に主面に対して所定の角度傾いている配向方向を有する第2R−Fe−B系焼結磁石を各主面が同一平面となるようにして一体的に配置した希土類磁石ユニットで、前記希土類磁石ユニット外表面角部のみ面取り面を有し、かつ前記希土類磁石ユニット外表面にエポキシ樹脂、シリコン樹脂、Al、Niのいずれかからなる被膜を有するR−Fe−B系焼結磁石ユニットを用いてリニアモータ用磁気回路を作製する。
【選択図】 図1
Description
この発明は、R−Fe−B系焼結磁石ユニットおよびそれを用いたリニアモータ用磁気回路およびR−Fe−B系焼結磁石ユニットの製造方法並びにリニアモータ用磁気回路の製造方法に関する。
R−Fe−B系焼結磁石は、R−Fe−B系希土類磁石(RはYを含む希土類元素)は、主にR2Fe14Bの正方晶化合物からなる主相、Nd等からなるRリッチ相、およびBリッチ相から構成されている。R−Fe−B系希土類磁石(RはYを含む希土類元素)は、高い残留磁束密度Brを有し、小型で高出力のリニアモータに多く採用されている。一般にリニアモータに用いられる磁気回路では、磁界発生空間を挟んで、異なる磁極が対向するよう配置される。図2にリニアモータ用磁気回路11の断面図を示す。矢印方向に配向方向を有するR−Fe−B系焼結磁石1が着磁された後、所定の空隙を形成して対向配置する一対のヨーク2の各々の対向面に異磁極が対向するように配置されている。対向して配置しているR−Fe−B系焼結磁石1の間に形成される磁界発生空間には、図2の白抜き矢印で示すように磁束Gが流れている。
近年、図2のようなリニアモータ用磁気回路に対し、磁気回路を構成する磁石の小型化によって、小型化、軽量化されたリニアモータ用磁気回路を作製することが検討されている。しかし、磁石の小型化だけでは、磁界発生空間に発生する磁界強度(磁束密度)が小さくなってしまう問題があった。
リニアモータ用磁気回路に用いるR−Fe−B系焼結磁石を小型化しても、磁界発生空間に高い磁束密度を得る方法として、所定方向に配向方向を有する複数の磁石を組み合わせ、目的とする所定部位に磁束を集中させる磁気回路、いわゆる、ハルバッハ磁気回路を採用することが知られている。図3にハルバッハ磁気回路を用いた例(リニアモータ用磁気回路構成12)を示す。対向する一対のヨーク2の対向する主面に対して直交する配向方向を有する第1R−Fe−B系焼結磁石1Aと、その両端部に配置する第1R−Fe−B系焼結磁石1A主面の直交する方向に対して所定の角度傾いている配向方向を有する第2R−Fe−B系焼結磁石1Bを有している。第1および第2R−Fe−B系焼結磁石は、各主面が同一平面となるようにして一体的に配置するとともに、両端に配置する第2R−Fe−B系焼結磁石の配向方向が、該磁石主面から発生する磁束が磁界発生空間に集中するように構成されている。磁界発生空間を介して対向する各R−Fe−B系焼結磁石は、異磁極が対向するように配置し、該磁界発生空間には、図3の白抜き矢印で示す磁束Gが流れる。
図3における第2R−Fe−B系焼結磁石1Bの配向方向が主面に対して所定の角度傾いている構成は、特許文献1にも開示されている。バックヨークに凹凸部を設け、その凹部に主磁極永久磁石(対向する一対のヨークの主面に対して直交する配向方向を有する永久磁石)を、凸部に副磁極永久磁石(対向する一対のヨークの主面に対して所定の角度傾いている配向方向を有する永久磁石)をそれぞれ配置し、副磁極永久磁石を少なくとも2個配置した磁界発生装置が提案されている。
図3に示すリニアモータ用磁気回路を組み立てる場合、まず図4に示す所定方向に配向方向(図中矢印方向)を有するR−Fe−B系焼結磁石1A、1Bに対し個別に表面処理を行い、被膜3を形成する。その後、被膜3を形成したR−Fe−B系焼結磁石1A、1Bを各々配向方向と同一方向に着磁(磁化)し、さらに図示しないヨークに配置し磁気回路を作製していた。この方法で作製したリニアモータ用磁気回路は図6に示すようにR−Fe−B系焼結磁石1A、1Bは、あらかじめ、各R−Fe−B系焼結磁石角部を面取りしてから(図において面取り部は図示せず。以下同様)被膜3を形成し、その後、被膜3を形成したR−Fe−B系焼結磁石1A、1Bを接着していた。面取りの目的は、磁石の加工や磁気回路の組み立て時に磁石角部の割れ・欠けを防止するためと表面処理の被膜の付きをよくするためである。しかし、R−Fe−B系焼結磁石1A、1Bに面取りを行うと、R−Fe−B系焼結磁石1A、1Bの角部が丸くなり、R−Fe−B系焼結磁石1A、1Bと接合面端部に空間(凹部)ができて磁束Gの流れが悪くなり集中しにくくなる。また、接着剤4からなる層と表面処理の被膜3からなる層とが介在してしまうため、これらの層からなる磁気的な隙間が発生する問題がある。また、各々磁石を着磁してから組み立てるため図7のように互いの吸引・反撥作用等による位置ズレも発生する問題もあった。
また、図6に示すR−Fe−B系焼結磁石間の磁気的な隙間の発生や図7に示すR−Fe−B系焼結磁石の位置ズレにより、当初磁場解析にて設計した仕様とは異なる磁気回路が作製されてしまう事態となり、実際に作製して得られる磁束密度(磁界発生空間の磁界強度)が、解析で算出した磁束密度より劣ってしまうだけでなく、バラツキも大きく、目的とする磁束密度が得られる磁気回路を安定して供給できないという問題があった。
また、位置ズレを起こさず、設計した磁気回路の通りに精度よく組み立てるためには専用治具を必要としたり、多くの時間がかかってしまう問題もあった。特許文献1に開示されるリニアモータ用磁気回路においては、バックヨークに形成された凹凸部を有効に使用することで位置精度を向上することが可能となるものの、あらかじめ着磁された磁石を個別に配置することにおいて、互いの吸引・反撥作用に基づく抜本的な問題は解決されず、主磁極永久磁石又は副磁極永久磁石の確実な固定後に、他方を配置・固定するのであれば、長時間を要するとの問題を解決することはできない。
本発明はかかる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、面取りや表面処理を施す前に焼結磁石をユニットにしてから面取り、表面処理、着磁及びヨークへの接着をすることにより、従来ユニット内の磁石同士の接着面で発生した空隙磁束密度の低下や磁石間の吸引反発力による接着時のズレが発生しないリニアモータ用磁気回路を提供することにある。
上記課題を解決するため、請求項1に記載のR−Fe−B系焼結磁石ユニットは、主面に対して直交する配向方向を有する第1R−Fe―B系焼結磁石とその両端部に主面の直交方向に対して所定の角度傾いている配向方向を有する第2R−Fe−B系焼結磁石を各主面が同一平面となるようにして一体的に配置した希土類磁石ユニットで、外表面角部のみ面取りを有し、かつ外表面にエポキシ樹脂、シリコン樹脂、Al、Niのいずれかからなる被膜を有する。
請求項2に記載のR−Fe−B系焼結磁石ユニットは、請求項1に記載のR−Fe−B系焼結磁石ユニットのヨークとの取付け面にセラミックス溶射膜を形成する。
請求項3に記載のリニアモータ用磁気回路は、所定の空隙を介して対向して配置した一対のヨークと、前記一対のヨークの対向面に配置した請求項1乃至2に記載の前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットと、からなる。
請求項4に記載のR−Fe−B系焼結磁石ユニットの製造方法では、主面に対して直交する配向方向を有する第1R−Fe−B系焼結磁石を準備する工程と、主面の直交方向に対して所定の角度傾いている配向方向を有する第2R−Fe−B系焼結磁石を準備する工程と、前記第1R−Fe−B系焼結磁石の主面に配向方向が向くように第2R−Fe−B系焼結磁石を前記第1R−Fe−B系焼結磁石の両端部に接続するR−Fe−B系焼結磁石ユニットの組立工程と、前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットの外表面角部を面取りする工程と、前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットの外表面を、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、Al、Niのいずれかにて被膜するR−Fe−B系焼結磁石ユニットの被膜形成工程にて、R−Fe−B系焼結磁石ユニットを製造する。
請求項5に記載のR−Fe−B系焼結磁石ユニットの製造方法では、請求項4に記載の前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットの製造方法にさらにR−Fe−B系焼結磁石ユニットのヨークとの取付け面に100μmから500μmのセラミックス溶射膜を形成し研磨加工もしくはラップ加工を行う。
請求項6に記載のリニアモータ用磁気回路の製造方法では、請求項4乃至5に記載の前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットの製造方法にて作製した複数のR−Fe−B系焼結磁石ユニットに磁場を印加し着磁する工程と、着磁した複数の前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットを一対のヨークの各々に主面が交互に異磁極となるように直線的に配置した後、前記一対のヨークを前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットが異磁極で対向するように配置したリニアモータ用磁気回路を作製する工程にて、リニアモータ用磁気回路を製造する。
リニアモータ用磁気回路において、ハルバッハ磁気回路を構成するR−Fe−B系焼結磁石をユニットにして、そのユニット外表面に被膜を形成することで、着磁後のヨークへの接合の際、主に中央部に磁石主面に対して直交する配向方向を有しているR−Fe−B系焼結磁石への面取り工程を省略したことによる面取り量の削減、磁気的隙間の減少や焼結磁石の位置ズレの発生が抑えられる。その結果、あらかじめ設定した計算値に近い磁界強度のリニアモータ用磁気回路を精度よくかつ効率よく作製することができる。
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。
[R−Fe−B系焼結磁石ユニット]
この発明の実施形態について、図5を参照して説明する。矢印で示すようにR−Fe−B系焼結磁石ユニット5は、中央部に磁石主面に対して直交する配向方向を有している第1R−Fe−B系焼結磁石1Aと、両端部に位置し各々磁石主面の直交方向に対して所定の角度傾いている配向方向を有する第2R−Fe−B系焼結磁石1Bと、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、Al、Niのいずれかからなる被膜3とからなる。図5に示すように第2R−Fe−B系焼結磁石1Bの配向方向は、該磁石ユニットをリニアモータ用磁気回路に配置した際、磁界発生空間に対向する面を主面とした場合において、該主面から発生する磁束が磁界発生空間に集中すべく、第1R−Fe−B系焼結磁石1Aの主面に向かって傾斜するように配置する。このような配向方向になるよう前記焼結磁石1Aと前記焼結磁石1Bとを組み合わせ、例えば接着剤等で固着一体化した後、前記焼結磁石ユニット外表面角部を面取りし、それから磁石ユニット外表面にエポキシ樹脂、シリコン樹脂、Al、Niのいずれかからなる被膜3を形成している。なお、この状態では、主に中央部に磁石主面に対して直交する配向方向を有しているR−Fe−B系焼結磁石1Aの面取り工程の省略により面取り量の削減ができ、焼結磁石角部を丸めたことによる組み立てた磁気回路の磁界強度低下がなくなる。また、焼結磁石1A及び1Bともに着磁されていないため、互いの焼結磁石1A、1Bを高精度に位置決めでき、又被膜3形成時にも取り扱いが容易である。
この発明の実施形態について、図5を参照して説明する。矢印で示すようにR−Fe−B系焼結磁石ユニット5は、中央部に磁石主面に対して直交する配向方向を有している第1R−Fe−B系焼結磁石1Aと、両端部に位置し各々磁石主面の直交方向に対して所定の角度傾いている配向方向を有する第2R−Fe−B系焼結磁石1Bと、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、Al、Niのいずれかからなる被膜3とからなる。図5に示すように第2R−Fe−B系焼結磁石1Bの配向方向は、該磁石ユニットをリニアモータ用磁気回路に配置した際、磁界発生空間に対向する面を主面とした場合において、該主面から発生する磁束が磁界発生空間に集中すべく、第1R−Fe−B系焼結磁石1Aの主面に向かって傾斜するように配置する。このような配向方向になるよう前記焼結磁石1Aと前記焼結磁石1Bとを組み合わせ、例えば接着剤等で固着一体化した後、前記焼結磁石ユニット外表面角部を面取りし、それから磁石ユニット外表面にエポキシ樹脂、シリコン樹脂、Al、Niのいずれかからなる被膜3を形成している。なお、この状態では、主に中央部に磁石主面に対して直交する配向方向を有しているR−Fe−B系焼結磁石1Aの面取り工程の省略により面取り量の削減ができ、焼結磁石角部を丸めたことによる組み立てた磁気回路の磁界強度低下がなくなる。また、焼結磁石1A及び1Bともに着磁されていないため、互いの焼結磁石1A、1Bを高精度に位置決めでき、又被膜3形成時にも取り扱いが容易である。
被膜3となるエポキシ樹脂、シリコン樹脂、Al、Niは、被膜するR−Fe−B系焼結磁石の耐候性や耐熱性を高め、かつ、後述するR−Fe−B系焼結磁石とヨークとの接合に用いる接着剤と強固に接合することができる。
ここで、前記第2R−Fe−B系焼結磁石1Bの配向方向は、磁石主面の直交方向に対して傾斜角度θを20°〜70°とするのが好ましい。図5に示す焼結磁石ユニット5では、前記第2R−Fe−B系焼結磁石1Bの傾きは45°にしている。70°を越えると、配向方向を傾斜することによって得られる本来の効果、すなわち磁気回路中の磁束の流れをスムーズとし、隣接する磁石間での漏れ磁束を低減し、磁束を磁界発生空間に集中する効果が得にくくなる。後述する第1R−Fe−B系焼結磁石1Aと第2R−Fe−B系焼結磁石1Bとで磁石ユニットを形成してから着磁する場合、磁石ユニットの厚さ方向、すなわち焼結磁石1Aの配向方向に着磁することから、焼結磁石1Bの配向方向と着磁方向(磁化方向)が一致しない。従って上記傾斜角度が20°未満となると、第2R−Fe−B系焼結磁石1Bが有する本来の磁気特性を有効に発現することが困難となり、不完全な着磁となり、ハルバッハ磁気回路として得られる磁界強度が低くなる。
一体化された前記第1R−Fe−B系焼結磁石1Aと前記第2R−Fe−B系焼結磁石1Bの外表面に形成する被膜3は、被膜するR−Fe−B系焼結磁石の耐候性や耐熱性を確保しかつR−Fe−B系焼結磁石とヨークと接合に用いる接着剤と安定して強固に接合する品質保証の観点からと、被膜時間等の生産性の観点から5μmから25μmの厚さに調整するのが好適である。ここで、一体化された前記第1R−Fe−B系焼結磁石1Aと前記第2R−Fe−B系焼結磁石1Bからなる磁石ユニット角部は面取りする。
[リニアモータ用磁気回路]
図1は、本発明のリニアモータ用磁気回路10の一例である。磁界発生空間を形成する空隙を介して磁石ユニット5を対向するように一対のヨーク2対向面に配置し、該磁界発生空間内をコイルを含む可動子(不図示)を移動させる。
図1は、本発明のリニアモータ用磁気回路10の一例である。磁界発生空間を形成する空隙を介して磁石ユニット5を対向するように一対のヨーク2対向面に配置し、該磁界発生空間内をコイルを含む可動子(不図示)を移動させる。
本発明のR−Fe−B系焼結磁石ユニット5をヨーク2に配置したリニアモータ用磁気回路10によると、ハルバッハ磁気回路を形成する焼結磁石同士をあらかじめ接着剤や非磁性体のボルト等を用いて一体的に組み合わせてR−Fe−B系焼結磁石ユニットにしてから被膜し、その後磁石ユニットの状態にて着磁して、ヨークに配置することで図6に示す磁石の磁気的隙間の低減や、図7に示すような磁石の位置ズレの発生を抑制することができる。
図8を参照して、本発明の他の実施形態であるリニアモータ用磁気回路13を説明する。
図8のリニアモータ用磁気回路13は、本発明のR−Fe−B系焼結磁石ユニット5、それに隣り合うR−Fe−B系焼結磁石6、及びヨーク2からなる。
図8のリニアモータ用磁気回路13は、本発明のR−Fe−B系焼結磁石ユニット5、それに隣り合うR−Fe−B系焼結磁石6、及びヨーク2からなる。
R−Fe−B系焼結磁石ユニット5は、図5に基づいて説明した構成と同一構成である。なお、前記R−Fe−B系焼結磁石6はそれぞれ個片でエポキシ樹脂、シリコン樹脂、Al、Niめっきのいずれかからなる被膜を有する。R−Fe−B系焼結磁石6は、図示のように主面に対して平行方向の配向方向を有する。このリニアモータ用磁気回路では、前記R−Fe−B系焼結磁石6を配置することにより、図1に示す実施形態よりも第1R−Fe−B系焼結磁石1Aに磁束を磁界発生空間に集中させ高い磁束密度を得ることができる。
次に、図9を参照して、本発明の他の実施形態であるリニアモータ用磁気回路14を説明する。図9のリニアモータ用磁気回路14は、複数のR−Fe−B系焼結磁石ユニット15、それに隣接して隣り合うR−Fe−B系焼結磁石6及びヨーク2からなる。
図9中のR−Fe−B系焼結磁石ユニット15は、磁界発生空間側に配置される第1R−Fe−B系焼結磁石1A、第2R−Fe−B系永久磁石1B、およびヨーク2側に配置される第1R−Fe−B系焼結磁石1C、第2R−Fe−B系焼結磁石1D、および外表面の被膜3とを含む。
磁石ユニットを構成する永久磁石において、第1R−Fe−B系焼結磁石1Aと第1R−Fe−B系焼結磁石1Cとは主面に対して直交する配向方向が一致するようにして積層している。また、その端部に配置される第2R−Fe−B系焼結磁石1Bと第2R−Fe−B系焼結磁石1Dも主面の直交方向に対して所定の角度傾いている配向方向が一致するようにして積層している。
図9のリニアモータ用磁気回路において、磁界発生空間側に配置される第1R−Fe−B系焼結磁石1A、第2R−Fe−B系焼結磁石1Bには、ヨーク側に配置される第1R−Fe−B系焼結磁石1C、第2R−Fe−B系焼結磁石1Dよりも残留磁束密度Brが大きい永久磁石が用いられる。具体的には、第1R−Fe−B系焼結磁石1A、第2R−Fe−B系焼結磁石1Bとして残留磁束密度Brが1.39T以上のNMX−S50BHやHS−55AH(いずれも日立金属株式会社製)等が用いられる。一方、ヨーク側に配置される第1R−Fe−B系焼結磁石1C、第2R−Fe−B系焼結磁石1Dには、磁界発生空間側に配置される第1R−Fe−B系焼結磁石1A、第2R−Fe−B系焼結磁石1Bよりも保磁力HcJが大きい永久磁石が用いられる。具体的には第1R−Fe−B系焼結磁石1C、第2R−Fe−B系焼結磁石1Dとして保磁力HcJが1200kA/m以上のNMX−S49CHやHS−51CH(いずれも日立金属株式会社製)等が用いられる。
ここで、第1R−Fe−B系焼結磁石1Aと第1R−Fe−B系焼結磁石1Cとの厚み方向の寸法(以下、厚みという)の比率は、用いるリニアモータの用途にもよるが、磁界発生空間側に配置される残留磁束密度Brが大きい永久磁石の比率が高くなるようにするのが小型で高出力のリニアモータを作製するために好ましい。一例として、図9のR−Fe−B系焼結磁石ユニット15では、第1R−Fe−B系焼結磁石1Aと第1R−Fe−B系焼結磁石1Cとの厚みの比率は、8:2程度にしている。言い換えれば、第1R−Fe−B系焼結磁石1Cは、R−Fe−B系焼結磁石ユニット15の厚みの20%程度である。ただし、厚みを薄くすることで減磁しやすくなることから高い保磁力を有するR−Fe−B系焼結磁石を配置することとなる。ここで、第1R−Fe−B系焼結磁石1Aと第1R−Fe−B系焼結磁石1Bとの厚みの比率は任意に設定できる。このことは、第2R−Fe−B系焼結磁石1Bと第2R−Fe−B系焼結磁石1Dとの厚みの比率でも同様である。
図では示していないが、第1R−Fe−B系焼結磁石1A、第2R−Fe−B系永久磁石1B、第2R−Fe−B系焼結磁石1C、第2R−Fe−B系永久磁石1Dとは、接着剤や非磁性体のボルト等を用いて結合される。これによって直方体のR−Fe−B系焼結磁石ユニット15が得られる。
R−Fe−B系焼結磁石ユニット15は、図1および図8におけるR−Fe−B系焼結磁石ユニット5と同じく、所定の磁気回路を形成するよう磁石を固定し、焼結磁石ユニットの角部を面取りしてから、R−Fe−B系焼結磁石ユニット15の外表面にエポキシ樹脂、シリコン樹脂、Al、Niのいずれかからなる被膜3を形成する。
前記R−Fe−B系焼結磁石6はそれぞれ個片でエポキシ樹脂、シリコン樹脂、Al、Niのいずれかからなる被膜を形成する。
図9のリニアモータ用磁気回路は、主に高残留磁束密度BrのR−Fe−B系焼結磁石にて磁気回路を構成し、磁気回路の減磁しやすい部位にのみ高い保磁力を有するR−Fe−B系焼結磁石を配置することで、高温にさらされても磁気回路の磁束密度が低下しない。
[R−Fe−B系焼結磁石ユニットの製造方法]
本発明のR−Fe−B系焼結磁石ユニットは、図10の工程にて作製される。以下に各工程を説明する。
本発明のR−Fe−B系焼結磁石ユニットは、図10の工程にて作製される。以下に各工程を説明する。
まず、主面に対して直交する配向方向を有する第1R−Fe−B系焼結磁石1Aと主面の直交方向に対して所定の角度傾いている配向方向を有する第2R−Fe−B系焼結磁石1Bとを準備する。第2R−Fe−B系焼結磁石1Bは、あらかじめ配向方向が所定の角度傾いているように磁場中成形して焼結磁石を作製してもよいし、主面の直交方向に対して所定の角度傾いている主面を有するように加工して作製してもよい。
R−Fe−B系焼結磁石の代表的組成は、R(Nd、Pr、Dy、Tbの少なくとも1種):6原子%以上、14.5原子%以下、B:5.5原子%以上、6.5原子%以下、M:10原子%以下(0原子%を含む)、ここでMは、Al、Ti、V、Cr、Ni、Zn、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Au、Pb、Bi、Coのうち、1種または2種以上、Fe:残部(Coにて一部置換をしてもよい)からなる。
次に、第1R−Fe−B系焼結磁石1Aと、主面の直交方向に対して所定の角度傾いている配向方向を有する第2R−Fe−B系焼結磁石1Bとを接着する。ここで、第1R−Fe−B系焼結磁石1Aと第2R−Fe−B系焼結磁石1Bは、接着剤や非磁性体のボルト等を用いて結合し、一体化し磁石ユニットを形成する。
次に所定寸法に仕上げ加工した後、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、Al、Niのいずれかにて被膜3を形成し、R−Fe−B系焼結磁石ユニットを製造する。この仕上げ加工では磁石ユニットの角部を面取りする加工も含まれる。
ここで、被膜の方法は、被膜の種類によって異なる。エポキシ樹脂、シリコン樹脂を被膜する場合は、スプレーコーティングによって被膜を形成するのが好ましい。
Alの場合、溶融加熱方式のイオンプレーティング表面処理装置 の処理室( 真空槽) 内の被処理物保持部に本発明のR−Fe−B系焼結磁石ユニットを収容した後、処理室内の真空排気を行い、その後、真空槽内にArガスを導入し、表面スパッタによってR−Fe−B系焼結磁石ユニットの表面を清浄化した後、処理室内への通電加熱によりワイヤー状Al蒸着材料を溶融し、蒸発させ、イオン化させてイオンプレーティングを行い、R−Fe−B系焼結磁石ユニット表面にAl被膜を蒸着形成する方法が挙げられる。
Niの場合、無電解めっき、電解めっきのいずれの方法で行ってもよい。無電解Niめっきの場合、例えば、本発明のR−Fe−B系焼結磁石ユニットに対し、硫酸ニッケル・6水和物150g/L、クエン酸アンモニウム53g/L、塩化ニッケル40g/L、ホウ酸20g/L、硫酸ナトリウム50g/Lを含み、アンモニアでpHを6.5に調整したNiめっき液を使用し、めっき浴の液温50℃、電流密度0.3A/dm2 、陽極としてNi板という条件にて、60分間の処理を行い、電解めっき法にて膜厚が5μmのNiめっき被膜を第1層めっき被膜として磁石表面に形成する方法がある。
無電解Niめっきにて被膜する場合は、例えば、次亜りん酸の還元作用を利用し、本発明のR−Fe−B系焼結磁石ユニットに被膜を形成する方法がある。Niめっき液は次亜りん酸を含んだNi−4〜10Pめっき液を用いるのが好ましい。
磁石ユニットのヨークとの取付け面に面精度を必要とする場合には、図12のように磁石ユニット16のヨークとの取付け面にセラミックスを溶射させた後、研磨加工もしくはラップ加工を行ってもよい。セラミックスを溶射させて膜を形成してからラップ加工を行うことにより、磁石ユニットを構成する磁石を加工することなく5μm以下の平面度(JIS規格B0621による平面度)を確保することが出来る。平面度の精度を出すことにより、ヨークが剛性の低い部材の場合でも、取付によるヨークの変形を抑えることができ、また、ヨークが靱性の小さい部材の場合でも、破壊を防ぐことができる。溶射するセラミックスはプラズマ溶射、フレーム溶射等公知の溶射法を用い、100μmから500μmの膜を形成する。溶射するセラミックスはアルミナ、ジルコニアなどが挙げられる。また、磁石ユニットの取付け面にセラミックスを溶射していることから、永久磁石、電磁石以外は非磁性材からなるパワーウェイト比に優れたリニアモータで、セラミックス、樹脂などの非磁性材からなるリニアテーブル等に磁石ユニットを直接取付けても線膨張特性差による温度変化時の変形を押える効果もある。
被膜処理をしたR−Fe−B系焼結磁石ユニットを着磁し、ハルバッハ磁気回路の磁石ユニットを作製する。ここで、着磁のために印加する磁場は、配向方向が主面に対して傾いている第2R−Fe−B系焼結磁石1Bが完全着磁できるように、3.5T以上の磁場にて印加する。異なる配向方向を有する複数の磁石からなる磁石ユニットを一度に着磁するための複雑な着磁用治具を用いなくとも、3.5T以上の高い磁場を加えるのみで済むので、3.5T以上の高い磁場を加えてR−Fe−B系焼結磁石ユニットを着磁することは製造上好ましい。第1R−Fe−B系焼結磁石1Aと第2R−Fe−B系焼結磁石1Bとの接合面には、被膜は形成されないが、磁石ユニット全体が被膜にて覆われることから、リニアモータ用磁気回路を使用する場合に要求される耐食性、耐候性の条件は十分に満足することができる。
[リニアモータ用磁気回路の製造方法]
リニアモータ用磁気回路は、以下の工程にて作製される。
リニアモータ用磁気回路は、以下の工程にて作製される。
まず、前述のR−Fe−B系焼結磁石ユニットの製造方法にて作製したR−Fe−B系焼結磁石ユニットを着磁する。この場合、着磁方向は磁石ユニットの厚み方向と一致させる。すなわち、第1R−Fe−B系焼結磁石1Aの配向方向と着磁方向(磁化方向)を一致して着磁する。
次に、着磁した前記複数のR−Fe−B系焼結磁石ユニットを一対のヨークの各々に対向する主面が交互に異磁極になるように直線的に配置した後、前記一対のヨークを前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットが磁界発生空間を介して異磁極が対向するように配置してリニアモータ用磁気回路が完成する。
以下の実施例、比較例を作製した。
(実施例1)
図1に記載のR−Fe−B系焼結磁石ユニットを用いたリニアモータ用磁気回路を作製した。ここで、第1R−Fe−B系焼結磁石1Aと第2R−Fe−B系焼結磁石1Bには、残留磁束密度Brが1.39T以上であり、保磁力HcJが1100kA/m以上である高残留磁束密度のNd−Fe−B系焼結磁石(日立金属社製 製品番号 NMX−S50BH)を用いる。中央部に磁石主面に対して直交する方向に配向方向を有している第1R−Fe−B系焼結磁石1Aと、R−Fe−B系焼結磁石主面の直交方向に対して配向方向が所定の角度を傾いた第2R−Fe−B系焼結磁石1Bを図5に示すように前記第1R−Fe−B系焼結磁石1Aの端部に配置し、エポキシ系からなる接着剤を用いて結合し一体化する。
(実施例1)
図1に記載のR−Fe−B系焼結磁石ユニットを用いたリニアモータ用磁気回路を作製した。ここで、第1R−Fe−B系焼結磁石1Aと第2R−Fe−B系焼結磁石1Bには、残留磁束密度Brが1.39T以上であり、保磁力HcJが1100kA/m以上である高残留磁束密度のNd−Fe−B系焼結磁石(日立金属社製 製品番号 NMX−S50BH)を用いる。中央部に磁石主面に対して直交する方向に配向方向を有している第1R−Fe−B系焼結磁石1Aと、R−Fe−B系焼結磁石主面の直交方向に対して配向方向が所定の角度を傾いた第2R−Fe−B系焼結磁石1Bを図5に示すように前記第1R−Fe−B系焼結磁石1Aの端部に配置し、エポキシ系からなる接着剤を用いて結合し一体化する。
一体化した焼結磁石ユニット角部を面取りしてから、外表面には5μmのエポキシ樹脂の被膜を形成し、本発明のR−Fe−B系焼結磁石ユニットを作製してから焼結磁石ユニットの厚み方向に3.5Tの磁場を印加して、R−Fe−B系焼結磁石ユニットを構成するR−Fe−B系焼結磁石1A、1Bのいずれも完全着磁する。着磁した前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットをヨークに接合してから、前記ヨークを前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットが磁界発生空間を介して異磁極が対向するように配置して図1に示すリニアモータ用磁気回路を作製した。
(比較例1)
第1R−Fe−B系焼結磁石1A及び第2R−Fe−B系焼結磁石1Bを一体化することなく各々磁石を個別に角部を面取りをし、被膜処理をし、第1R−Fe−B系焼結磁石1A及び第2R−Fe−B系焼結磁石1Bのユニットを組まず、各々焼結磁石の配向方向と一致するように2.5Tの磁場を印加して着磁し、各焼結磁石を所定の通りヨークに配置したこと以外は実施例1と同じ条件で図3のリニアモータ用磁気回路を作製した。
第1R−Fe−B系焼結磁石1A及び第2R−Fe−B系焼結磁石1Bを一体化することなく各々磁石を個別に角部を面取りをし、被膜処理をし、第1R−Fe−B系焼結磁石1A及び第2R−Fe−B系焼結磁石1Bのユニットを組まず、各々焼結磁石の配向方向と一致するように2.5Tの磁場を印加して着磁し、各焼結磁石を所定の通りヨークに配置したこと以外は実施例1と同じ条件で図3のリニアモータ用磁気回路を作製した。
実験方法について説明する。ここでは実施例1、比較例1の各リニアモータ用磁気回路を温度20℃に設定し、各磁気回路の磁界発生空間中央部(異磁極を対向して配置する中央部の一対の磁石ユニット間に形成される磁界発生空間中央部)の磁束密度B(T)を測定した。測定には、ガウスメータを用いた。
実施例1と比較例1とを比較して、実施例1は比較例1より磁束密度が2%向上していた。
また、実施例1、比較例1とについて、それぞれの寸法ずれおよび組み立て時間を比較した。比較して計測したところ、ヨーク長手方向に平行な方向では比較例1の方が実施例1と比べて3倍ずれていた。組み立て時間では、比較例1は実施例1と比べて2倍の時間で組み立てられた。
ここで、寸法ズレとは、第1R−Fe−B系焼結磁石と第2R−Fe−B系焼結磁石とを組み合わせ、被膜を形成して磁石ユニットとしたときの長手方向寸法が、磁束密度を解析する際のモデルである第1R−Fe−B系焼結磁石と第2R−Fe−B系焼結磁石を足し合わせた長手方向寸法を1として、どの程度長くなっているかを測定した。
また、組み立て時間は、磁石個片を図1及び図3に記載のリニアモータ用磁気回路に組み立て終わるまでの時間を測定した。
さらに以下の実施例、比較例を作製した。
(実施例2)
使用する磁石は残留磁束密度Brが1.39T以上であり、保磁力HcJが1100kA/m以上であるNd−Fe−B系焼結磁石(日立金属社製 製品番号 NMX−S50BH)からなる高残留磁束密度の磁石を用いて、図5に記載のR−Fe−B系焼結磁石ユニットをエポキシ系からなる接着剤を用いて結合し一体化する。一体化した焼結磁石ユニット角部を面取りし、その後、R−Fe−B系焼結磁石ユニット外表面に5μmの無電解Niめっきの被膜を形成し、その後、磁石ユニットの厚み方向に3.5Tの磁場を印加して着磁した。着磁した前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットをヨークに接合・配置してから、前記配置した前記R−Fe−B系焼結磁石ユニット側面に、磁石配向方向に2.5Tの磁場を印加して着磁したR−Fe−B系焼結磁石6をさらに接合・配置して、前記ヨークを前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットが異磁極で対向するように配置して図8に記載のリニアモータ用磁気回路を作製する。ここで、R−Fe−B系焼結磁石6は、残留磁束密度Brが1.39T以上であり、保磁力HcJが1100kA/m以上であるNd−Fe−B系焼結磁石(日立金属社製 製品番号 NMX−S50BH)からなる高残留磁束密度の磁石を用いている(以下の実施例、比較例で用いるR−Fe−B系焼結磁石6も同様)。R−Fe−B系焼結磁石6は、面取りをしてから5μmの無解Niめっきの被膜を形成している。
(実施例2)
使用する磁石は残留磁束密度Brが1.39T以上であり、保磁力HcJが1100kA/m以上であるNd−Fe−B系焼結磁石(日立金属社製 製品番号 NMX−S50BH)からなる高残留磁束密度の磁石を用いて、図5に記載のR−Fe−B系焼結磁石ユニットをエポキシ系からなる接着剤を用いて結合し一体化する。一体化した焼結磁石ユニット角部を面取りし、その後、R−Fe−B系焼結磁石ユニット外表面に5μmの無電解Niめっきの被膜を形成し、その後、磁石ユニットの厚み方向に3.5Tの磁場を印加して着磁した。着磁した前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットをヨークに接合・配置してから、前記配置した前記R−Fe−B系焼結磁石ユニット側面に、磁石配向方向に2.5Tの磁場を印加して着磁したR−Fe−B系焼結磁石6をさらに接合・配置して、前記ヨークを前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットが異磁極で対向するように配置して図8に記載のリニアモータ用磁気回路を作製する。ここで、R−Fe−B系焼結磁石6は、残留磁束密度Brが1.39T以上であり、保磁力HcJが1100kA/m以上であるNd−Fe−B系焼結磁石(日立金属社製 製品番号 NMX−S50BH)からなる高残留磁束密度の磁石を用いている(以下の実施例、比較例で用いるR−Fe−B系焼結磁石6も同様)。R−Fe−B系焼結磁石6は、面取りをしてから5μmの無解Niめっきの被膜を形成している。
(比較例2)
第1R−Fe−B系焼結磁石1A及び第2R−Fe−B系焼結磁石1Bを一体化することなく各々磁石を個別に角部を面取り、被膜処理をしてから、各々焼結磁石の配向方向と一致するように2.5Tの磁場を印加して着磁し、各焼結磁石を所定の通りヨークに配置したこと以外は実施例2と同じ条件でリニアモータ用磁気回路を作製した。
第1R−Fe−B系焼結磁石1A及び第2R−Fe−B系焼結磁石1Bを一体化することなく各々磁石を個別に角部を面取り、被膜処理をしてから、各々焼結磁石の配向方向と一致するように2.5Tの磁場を印加して着磁し、各焼結磁石を所定の通りヨークに配置したこと以外は実施例2と同じ条件でリニアモータ用磁気回路を作製した。
(実施例3)
使用する磁石は残留磁束密度Brが1.39T以上であり、保磁力HcJが1100kA/m以上であるNd−Fe−B系焼結磁石(日立金属社製 製品番号 NMX−S50BH)からなる高残留磁束密度の磁石と、保磁力HcJが1200kA/m以上であり、残留磁束密度Brが1.36T以上であるNd−Fe−B系焼結磁石(日立金属社製 製品番号 NMX−S49CH)からなる高保磁力磁石とを用いる。エポキシ系からなる接着剤を用いて積層した高残留磁束密度の磁石と高保磁力磁石とを一体化し結合し、図9に記載のR−Fe−B系焼結磁石ユニット15を作製する。この焼結磁石ユニットの角部を面取りしてから、ユニット表面に5μmの無電解Niめっきの被膜を形成し、その後、磁石ユニットの厚み方向に3.5Tの磁場を印加して着磁する。着磁した前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットをヨークに接合・配置する。それから前記配置した前記R−Fe−B系焼結磁石ユニット側面に、配向方向に2.5Tの磁場を印加して着磁したR−Fe−B系焼結磁石6をさらに接合・配置し、図9に記載のリニアモータ用磁気回路を作製する。ここで、R−Fe−B系焼結磁石6は、面取りをしてから5μmの無解Niめっきの被膜を形成している。
使用する磁石は残留磁束密度Brが1.39T以上であり、保磁力HcJが1100kA/m以上であるNd−Fe−B系焼結磁石(日立金属社製 製品番号 NMX−S50BH)からなる高残留磁束密度の磁石と、保磁力HcJが1200kA/m以上であり、残留磁束密度Brが1.36T以上であるNd−Fe−B系焼結磁石(日立金属社製 製品番号 NMX−S49CH)からなる高保磁力磁石とを用いる。エポキシ系からなる接着剤を用いて積層した高残留磁束密度の磁石と高保磁力磁石とを一体化し結合し、図9に記載のR−Fe−B系焼結磁石ユニット15を作製する。この焼結磁石ユニットの角部を面取りしてから、ユニット表面に5μmの無電解Niめっきの被膜を形成し、その後、磁石ユニットの厚み方向に3.5Tの磁場を印加して着磁する。着磁した前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットをヨークに接合・配置する。それから前記配置した前記R−Fe−B系焼結磁石ユニット側面に、配向方向に2.5Tの磁場を印加して着磁したR−Fe−B系焼結磁石6をさらに接合・配置し、図9に記載のリニアモータ用磁気回路を作製する。ここで、R−Fe−B系焼結磁石6は、面取りをしてから5μmの無解Niめっきの被膜を形成している。
なお、上記磁石ユニット15は、第1R−Fe−B系焼結磁石1A、第2R−Fe−B系焼結磁石1B、R−Fe−B系焼結磁石6として残留磁束密度Brが1.39T以上のNMX−S50BH(日立金属株式会社製)を用い、第1R−Fe−B系焼結磁石1C、第2R−Fe−B系焼結磁石1Dには、第1R−Fe−B系焼結磁石1A、第2R−Fe−B系焼結磁石1Bよりも保磁力(HcJ)が大きいNMX−S49CHを用いている。
(比較例3)
第1R−Fe−B系焼結磁石1A、1C、及び第2R−Fe−B系焼結磁石1B、1Dを一体化することなく各々磁石に個別に面取りをし、被膜処理をしてから、各々焼結磁石の配向方向と一致するように2.5Tの磁場を印加して着磁し、各焼結磁石を所定の通りヨークに配置したこと以外は実施例3と同じ条件であるリニアモータ用磁気回路を作製した。
第1R−Fe−B系焼結磁石1A、1C、及び第2R−Fe−B系焼結磁石1B、1Dを一体化することなく各々磁石に個別に面取りをし、被膜処理をしてから、各々焼結磁石の配向方向と一致するように2.5Tの磁場を印加して着磁し、各焼結磁石を所定の通りヨークに配置したこと以外は実施例3と同じ条件であるリニアモータ用磁気回路を作製した。
(実施例4)
使用する磁石は、保磁力HcJが1200kA/m以上であり、残留磁束密度Brが1.36T以上であるNd−Fe−B系焼結磁石(日立金属社製 製品番号 NMX−S49CH)からなる高保磁力磁石を用いて、図5に示すR−Fe−B系焼結磁石ユニットをエポキシ系からなる接着剤を用いて結合し一体化する。一体化した焼結磁石ユニット角部を面取りしてから焼結磁石ユニット表面に5μmの無電解Niめっきの被膜を形成し、その後、磁石ユニットの厚み方向に3.5Tの磁場を印加して着磁する。着磁した前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットをヨークに接合・配置する。それから前記配置した前記R−Fe−B系焼結磁石ユニット側面に、配向方向に2.5Tの磁場を印加して着磁したR−Fe−B系焼結磁石6をさらに接合・配置して図8に記載のリニアモータ用磁気回路を作製する。
使用する磁石は、保磁力HcJが1200kA/m以上であり、残留磁束密度Brが1.36T以上であるNd−Fe−B系焼結磁石(日立金属社製 製品番号 NMX−S49CH)からなる高保磁力磁石を用いて、図5に示すR−Fe−B系焼結磁石ユニットをエポキシ系からなる接着剤を用いて結合し一体化する。一体化した焼結磁石ユニット角部を面取りしてから焼結磁石ユニット表面に5μmの無電解Niめっきの被膜を形成し、その後、磁石ユニットの厚み方向に3.5Tの磁場を印加して着磁する。着磁した前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットをヨークに接合・配置する。それから前記配置した前記R−Fe−B系焼結磁石ユニット側面に、配向方向に2.5Tの磁場を印加して着磁したR−Fe−B系焼結磁石6をさらに接合・配置して図8に記載のリニアモータ用磁気回路を作製する。
(比較例4)
第1R−Fe−B系焼結磁石1A及び第2R−Fe−B系焼結磁石1Bを一体化することなく各々磁石を個別に角部を面取りをし、それから被膜処理をして、第1R−Fe−B系焼結磁石1A及び第2R−Fe−B系焼結磁石1Bのユニットを組まず、各々焼結磁石の配向方向と一致するように2.5Tの磁場を印加し着磁し、各焼結磁石を所定の通りヨークに配置したこと以外は実施例4と同じ条件であるリニアモータ用磁気回路を作製した。
第1R−Fe−B系焼結磁石1A及び第2R−Fe−B系焼結磁石1Bを一体化することなく各々磁石を個別に角部を面取りをし、それから被膜処理をして、第1R−Fe−B系焼結磁石1A及び第2R−Fe−B系焼結磁石1Bのユニットを組まず、各々焼結磁石の配向方向と一致するように2.5Tの磁場を印加し着磁し、各焼結磁石を所定の通りヨークに配置したこと以外は実施例4と同じ条件であるリニアモータ用磁気回路を作製した。
実験方法について説明する。ここでは実施例2から実施例4、比較例2から比較例4の各リニアモータ用磁気回路を熱処理炉に投入し、炉内の温度を20℃、40℃、60℃に設定し、各磁気回路の磁界発生空間中央部(異磁極を対向して配置する中央部の一対の磁石ユニット間に形成される磁界発生空間中央部)の磁束密度B(T)を測定した。
測定には、ガウスメータを用いた。測定した結果を表1に示す。
測定には、ガウスメータを用いた。測定した結果を表1に示す。
表1に示す結果を基にしてリニアモータ用磁気回路の磁界発生空間中央部の磁界強度(磁束密度)が温度の変化に伴って変化することを示すグラフを図11に作成した。
図11より高残留磁束密度の永久磁石のみを用いた実施例2と比較例2では、磁界発生装置では、実施例2の磁束密度が比較例2より2%向上していた。また、高保磁力の永久磁石のみを用いた実施例4と比較例4では、実施例4の磁束密度が比較例4より2%向上していた。さらに、高残留磁束密度及び高保磁力の永久磁石を用いた実施例3と比較例3では、実施例3の磁束密度が比較例3より2%向上していた。
実施例3が実施例2と同等の磁界強度を有しており、かつ実施例4と同じく40℃以上の高温下でも磁界強度の低下がないのは、実施例3の磁界発生装置では、減磁しやすい部分に高保磁力の磁石を用いることによって、温度上昇に伴う磁界強度の低下幅を小さくできたからであると推定される。
また、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3、実施例4と比較例4、について、それぞれの寸法ズレと組み立て時間を比較して計測したところ、ヨーク長手方向に平行な方向で、いずれの比較例も実施例と比べて3倍ずれていた。
また、組み立て時間では、いずれの比較例も実施例に対して2倍の時間で組み立てられた。
このように、本発明では、主面に対して直交する配向方向を有する第1R−Fe―B系焼結磁石とその両端部に主面に対して所定の角度傾いている配向方向を有する第2R−Fe−B系焼結磁石を各主面が同一平面となるようにして一体的に配置して焼結磁石ユニットを形成し、前記焼結磁石ユニット外表面角部のみ面取り面を有し、かつ焼結磁石ユニットの表面に被膜を形成してから磁気回路を組み立てることで、結果として、精度よくかつ効率よく、高い磁界強度の磁気回路を作製する。リニアモータ用磁気回路に好適である。
1、1A、1B、1C、1D R−Fe−B系焼結磁石
2 ヨーク
3 被膜
4 接着剤
5、15、16磁石ユニット
10、11、12、13、14 リニアモータ用磁気回路
17 セラミックス溶射膜
G 磁束
2 ヨーク
3 被膜
4 接着剤
5、15、16磁石ユニット
10、11、12、13、14 リニアモータ用磁気回路
17 セラミックス溶射膜
G 磁束
Claims (6)
- 主面に対して直交する配向方向を有する第1R−Fe―B系焼結磁石とその両端部に主面の直交方向に対して所定の角度傾いている配向方向を有する第2R−Fe−B系焼結磁石を各主面が同一平面となるようにして一体的に配置したR−Fe−B系焼結磁石ユニットで、外表面角部のみ面取りを有し、かつ外表面にエポキシ樹脂、シリコン樹脂、Al、Niのいずれかからなる被膜を有するR−Fe−B系焼結磁石ユニット。
- 前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットのヨークとの取付け面にセラミックス溶射膜を形成している請求項1に記載のR−Fe−B系焼結磁石ユニット。
- 所定の空隙を介して対向して配置した一対のヨークと、
前記一対のヨークの対向面に配置した請求項1乃至2に記載の前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットと、
からなるリニアモータ用磁気回路。 - 主面に対して直交する配向方向を有する第1R−Fe−B系焼結磁石を準備する工程と、
主面の直交方向に対して所定の角度傾いている配向方向を有する第2R−Fe−B系焼結磁石を準備する工程と、
前記第1R−Fe−B系焼結磁石の主面に配向方向が向くように第2R−Fe−B系焼結磁石を前記第1R−Fe−B系焼結磁石の両端部に接続するR−Fe−B系焼結磁石ユニットの組立工程と、
前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットの外表面角部を面取りする工程と、
前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットの外表面を、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、Al、Niのいずれかにて被膜するR−Fe−B系焼結磁石ユニットの被膜形成工程と、
からなるR−Fe−B系焼結磁石ユニットの製造方法。 - 前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットの製造方法において、磁石ユニットのヨークとの取付け面に100μmから500μmのセラミックス溶射膜を形成し研磨加工もしくはラップ加工を行う請求項4に記載のR−Fe−B系焼結磁石ユニットの製造方法。
- 請求項4乃至5に記載の前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットの製造方法にて作製した複数のR−Fe−B系焼結磁石ユニットに磁場を印加して着磁する工程と、
着磁した複数の前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットを一対のヨークの各々に主面が交互に異磁極となるように直線的に配置した後、前記一対のヨークを前記R−Fe−B系焼結磁石ユニットが異磁極で対向するように配置したリニアモータ用磁気回路を作製する工程と、
を有するリニアモータ用磁気回路の製造方法。
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