以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。なお、共通する要素には共通する符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、相対的なものであり特に限定されず、上下左右が逆でも良いが、以下の説明では、図面の上下左右に基づき説明する。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。
(第1実施形態)
図1Aは、本発明による弓形磁石片の好適な一実施形態の構成を概略的に示す斜視図である。弓形磁石片1は、図示しないモータの回転軸の軸芯Oに対して周方向Wに湾曲する外周面2と、その外周面2に対向し、且つ、同一の軸芯Oを持って湾曲している内周面3とを有し、全体として弓形形状となっている。
この弓形磁石片1は、軸芯Oに対して垂直な面である上端面4と下端面5とを有し、これらの端面4,5は、外周面2および内周面3に対して、略垂直になっている。また、弓形磁石片1は、軸芯Oに対して平行な第1連結側面6と第2連結側面7とを有する。第2連結側面7は、第1連結側面6に対して周方向Wに離れて対向している。
第1連結側面6は、外周面2の湾曲方向の接線T1に対して第1所定角度θ1で交わる先端面6aを有する。先端面6aと外周面2とが交わる先端角部6bは、第1所定角度θ1の鋭角な角部になっており、角部6bには、必要に応じて面取り加工あるいは曲面加工(R加工)が施されている。
また、第1連結側面6は、図1Cに示すように、内周面3の湾曲方向の接線に対して鈍角な角度で交わる基端面6cを有する。基端面6cと内周面3とが交わる基端角部6dは、同様に鈍角になっており、角部6dには、必要に応じて面取り加工あるいは曲面加工(R加工)が施されていても良い。
本実施形態では、基端面6cと先端面6aとは、面一に形成してあることから、基端角部6dの鈍角と、先端角部6bの鋭角とをプラスすれば約180度になるが、本発明では、それに限定されない。たとえば基端面6cと先端面6aとの間には、凸状または凹状の角部を形成するように構成しても良い。あるいは、基端面6cと先端面6aとの間には、凸状または凹状の曲面を形成しても良い。
ただし、基端面6cと先端面6aとの間に、凸状または凹状の角部、あるいは、凸状または凹状の曲面を形成する場合には、それらが形成された連結側面6の相手側となる連結側面7に対しても、それらに対応する凹状または凸状の角部、あるいは、凹状または凸状の曲面を形成して幅が略等しい隙間8を形成することが好ましい。基端面6cと先端面6aを面一に形成する場合には、それらが形成された連結側面6の相手側となる連結側面7に対しても、それらに対応する面を形成し、略平行な隙間8が設けられるようにすることが好ましい。
第2連結側面7は、外周面2の湾曲方向の接線T2に対して鈍角な第2所定角度θ2で交わる先端面7aを有する。先端面7aと外周面2とが交わる先端角部7bは、第2所定角度θ2の鈍角な角部になっており、角部7bには、必要に応じて面取り加工あるいは曲面加工(R加工)が施されていても良い。
また、第2連結側面7は、図1Cに示すように、内周面3の湾曲方向の接線に対して鋭角な角度で交わる基端面7cを有する。基端面7cと内周面3とが交わる基端角部7dは、同様に鋭角になっており、角部7dには、必要に応じて面取り加工あるいは曲面加工(R加工)が施されている。
本実施形態では、基端面7cと先端面7aとは、面一に形成してあることから、基端角部7dの鋭角と、先端角部7bの鈍角とをプラスすれば約180度になるが、本発明では、それに限定されない。たとえば基端面7cと先端面7aとの間には、凸状または凹状の角部を形成するように構成しても良い。あるいは、基端面7cと先端面7aとの間には、凸状または凹状の曲面を形成しても良い。
ただし、基端面7cと先端面7aとの間に、凸状または凹状の角部、あるいは、凸状または凹状の曲面を形成する場合には、それらが形成された連結側面7の相手側となる連結側面6に対しても、それらに対応する凹状または凸状の角部、あるいは、凹状または凸状の曲面を形成して幅が略等しい隙間8を形成することが好ましい。基端面7cと先端面7aを面一に形成する場合には、それらが形成された連結側面7の相手側となる連結側面6に対しても、それらに対応する面を形成し、略平行な隙間8が設けられるようにすることが好ましい。
本実施形態においては、図1Dに示すように、第1所定角度θ1、すなわち∠PQY、と、第2所定角度θ2、すなわち∠RSZ、の和、すなわち、θ1+θ2は略180度であることが好ましく、また、図1Cに示すように、弓形磁石片1の相互が周方向に組み合わされた場合に、第1連結側面6と第2連結側面7とは、略平行に配置され、これらの間に、側面6,7に沿って略均一な隙間8が形成されることが好ましい。
好ましくは、前記第1所定角度θ1が60度以下、または、前記第2所定角度θ2が120度以上である。このような範囲にある時に、連結側面の一方の小さくなった隙間がより小さくなると共に、他方の大きくなった隙間がより大きくなる方向に、弓形磁石片1に働く吸着トルクが従来に比べ、小さく作用する、あるいは、連結側面の一方の小さくなった隙間がより大きくなると共に、他方の大きくなった隙間がより小さくなる方向に、弓形磁石片1に働く反発トルクが作用するので、位置決めの容易さが増大すると共に、コギングトルクやトルクリップルの低減効果が増大する。
さらに好ましくは、前記第1所定角度θ1が45度以下、または、第2所定角度θ2が135度以上である。このような範囲にある時に、連結側面の一方の小さくなった隙間がより大きくなると共に、他方の大きくなった隙間がより小さくなる方向に、弓形磁石片1に働く反発トルクが作用するので、自己整合的な位置決め効果が生じると共に、コギングトルクやトルクリップルの低減効果が増大する。
本実施形態では、第1連結側面6および第2連結側面7は、軸芯Oに対して平行であるが、本発明では、必ずしも平行である必要はなく、軸芯Oに対して、傾斜させて、ねじれの関係にあるように構成しても良い。ただし、傾斜させる場合には、周方向Wに対向する第1連結側面6および第2連結側面7は、略同一の傾斜角度が好ましい。このように構成することで、さらにコギングトルクを低減することが期待できる。
本実施形態に係る弓形磁石片1は、図1Bに示すように、たとえばヨーク20の内周面で、他の弓形磁石片1と周方向Wに組み合わされてモータ用の永久磁石となる。すなわち、弓形磁石片1における連結側面6が、他の弓形磁石片1における連結側面7に対して所定隙間8で向き合うように、周方向に偶数個の弓形磁石片1が組み合わされて、モータ用の永久磁石を構成する。
図1Bに図示する例では、弓形磁石片1が、周方向に順にN極とS極が交互に構成されるように配置されている。この時、4つの弓形磁石片1は、隙間8が等間隔となるように位置決めされているものとする。
このように構成された弓形磁石片1は、等方性フェライト焼結磁石、異方性フェライト焼結磁石、異方性希土類焼結磁石等の焼結磁石の連結側面部6,7を研磨加工し、先端面6a,7a,先端角部6b,7b,基端面6c,7c,基端角部6d,7dを形成することで得ることができる。さらに、本実施形態の弓形磁石片1は、磁石粉を樹脂に混練して成形した等方性フェライトボンド磁石、異方性フェライトボンド磁石、等方性希土類ボンド磁石、異方性希土類ボンド磁石等、圧縮成形や射出成形用の金型で連結側面部6,7,先端面6a,7a,先端角部6b,7b,基端面6c,7c,基端角部6d,7dを成形したボンド磁石でも得ることができる。
本実施形態では、連結側面6,7が、外周面2の湾曲方向の接線T1,T2に対して所定角度θ1,θ2で交わる先端面6a,7aを有するため、隣接する他の弓形磁石片1の連結側面7,6との間に略平行な隙間8を設けた場合に、その隙間8を大きくする方向に磁力の反発力が作用する。
先ず、たとえば図1Fにおいて、従来のモータ用の永久磁石を構成するためには、隣接する一方の従来の弓形磁石片10は、内周面3がN極となるように着磁され、他方の従来の弓形磁石片10は、内周面3がS極となるように着磁される。そして、所定角度θ1およびθ2が、それぞれ略90度である従来の弓形磁石片10を用いた従来のモータでは、連結側面6および7は、磁束線の分布状態から、磁極の発生状態が確認でき、隙間8を介して相互に反対極性となり、相互に引き合う磁力が発生する。弓形磁石片10の内周面3、および、連結側面6,7の間には、その隙間8を小さくする方向に吸着力のみが働いている。
これに対して、本願発明の実施形態では、図示省略するが、従来の弓形磁石片10と同様に、一方の弓形磁石片1は、内周面3がN極となるように着磁され、他方の弓形磁石片1は、内周面3がS極となるように着磁されているにも関わらず、図1Eに示すように、磁束線の分布状態から、磁極の発生状態が確認でき、内周面3の一部、および、連結側面6、7の一部が同じ極性を示し、それらの間に反発力が作用していることが、本発明者等により見出された。ここで、弓形磁石片1が、ラジアル方向に配向され、着磁された異方性磁石の場合、連結側面6、7近傍の磁化方向は、それぞれお互いに反対向きで実質的に平行になっている。また、弓形磁石片1が、等方性磁石の場合、ラジアル方向に着磁することにより、連結側面6、7近傍の磁化方向は、実質的に平行になっている。
隣接する他の弓形磁石片1の連結側面6,7の間に略平行の隙間8を設けた場合に、その略平行の隙間8を大きくする方向に部分的に磁力の反発力が作用することで、弓形磁石片1の湾曲方向(周方向W)の両側に形成してある連結側面6,7では、他の弓形磁石片1の連結側面7,6に対して部分的に反発力が作用する。その結果、弓形磁石片1の周方向Wの両側では、吸着力を減ずる反発力により、連結側面6,7の相互間の略平行の隙間8が円周方向Wに小さくなる方向の吸着力が弱まる。
すなわち、弓形磁石片1に働く吸着力が減じられ、組立の際の負荷を小さくすることが可能となる。さらには、第1所定角度θ1がある範囲より小さく、第2所定角度θ2が、ある範囲より大きくなると、吸着力よりも反発力が上回ることに伴い、自己整合的な位置決めが可能になり、組立時の位置決めの簡素化を図ることができるので、経済性および生産性を高めることが可能となる。
具体的には、次のように説明することができる。
ここで、4個の弓形磁石片1は、通常採用されている焼結磁石の成形工法で成形し、実質的にラジアル方向に配向され、着磁された異方性フェライト焼結磁石で構成してある。
また、本実施形態では、弓形磁石片1の内周面をR15.5mm、外周面をR17.5mm、長さを30mmで形成し、冷間圧延鋼板(例えばSPCC)のような磁性体でできた厚さ2mmのヨーク20の内周面に貼り付けているものとする。本実施形態の弓形磁石片1の連結側面6,7は、外周面2の接線に対し、所定角度θ1およびθ2をなすように研磨加工することで形成できる。
先ず、比較のために、図2Cのように、従来の弓形磁石片10が、ヨーク20の内周面に4個、周方向に順にN極とS極が交互に構成されるように配置されている場合を考える。4個の弓形磁石片10の隙間8が等間隔となるように位置決めされている場合には、どの弓形磁石片にもお互いに吸着および/または反発するようなトルクは生じない。しかし、一般的に、4個の弓形磁石片10は、それらの周方向長さを完全に同一にすることは製造上困難であり、位置決めして取り付けたとしても、周方向で隙間8を等間隔とすることは難しい。
そこで、図2Cに示すように、4個の弓形磁石片10,10aの内の1個の弓形磁石片10aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合を考える。この時、隙間8,8は、設計通りであるが、隙間8aは設計値より大きくなっており、もう一方の隙間8bは設計値より小さくなっているものとする。
この時、図1Cに示す弓形磁石片1に対応する前記弓形磁石片10aの第1所定角度θ1=90度、第2所定角度θ2=90度、すなわち、図1Dに示す∠PQY=90度、∠RSZ=90度となる。また、この時の隙間8の構成について、図1Dを用いて説明すると、隙間8aを構成する∠ROV=∠SOX=1.5度となっており、隙間8bを構成する∠POT=∠QOU=0.5度となっており、図示しない残りの2つの隙間8は1.0度となっている。また、このことから、隙間8aを構成する辺RSと辺VXおよび隙間8bを構成する辺PQと辺TUは、略平行となっており、図示しない残りの隙間8も略平行となっている。また、磁石の開角は、∠POR=∠Q0S=89度となっている。
図2Cのように配置された弓形磁石片10aに働くトルクを有限要素法により求めたところ、-10.2mNmであった。ここで、符号-は、時計回りにトルクが発生していることを示している。すなわち、時計回りにずれた弓形磁石片10aは、時計回りのトルクを受けるので、さらにずれが大きくなる方向、言い換えると、連結側面の一方の大きくなった隙間8aがより大きくなると共に、他方の小さくなった隙間8bがより小さくなる方向に、弓形磁石片10aに吸着トルクが働いている。
同様に、図示省略するが、従来の弓形磁石片10において、図2Cとは逆に弓形磁石片10aが反時計回りに0.5度ずれた場合に働くトルクは、+10.2mNmであった。この時、隙間8,8は、図2Cの隙間8,8と等しいが、隙間8aは図2Cの隙間8より小さくなっており、もう一方の隙間8bは大きくなっている。ここで、符号+は、反時計回りにトルクが発生していることを示している。すなわち、反時計回りにずれた弓形磁石片10aは、反時計回りのトルクを受けるので、さらにずれが大きくなる方向、言い換えると、連結側面の一方の小さくなった隙間8aがより小さくなると共に、他方の大きくなった隙間8bがより大きくなる方向に、弓形磁石片10aに吸着トルクが働いている。
この時の隙間8の構成について、図1Dを用いて説明すると、隙間8aを構成する∠ROV=∠SOX=0.5度となっており、隙間8bを構成する∠POT=∠QOU=1.5度となっており、図示しない残りの2つの隙間8は1.0度となっている。同様に、隙間8aを構成する辺RSと辺VXおよび隙間8bを構成する辺PQと辺TUは、略平行となっており、図示しない残りの隙間8も略平行となっている。
一方、図1Bに示すように、本実施形態では、4つの弓形磁石片1は、隙間8が等間隔となるように位置決めされているものとする。この場合、4個の弓形磁石片1は、隙間8が等間隔となっているので、どの弓形磁石片1の連結側面6、7にもお互いに等しい吸着力および/または反発力が働いており、吸着および/または反発するようなトルクは生じない。
この時の隙間8の構成について、図1Dを用いて説明すると、∠ROV=∠SOX=∠POT=∠QOU=1.0度となっており、図示しない残りの2つの隙間8も1.0度となっている。また、このことから、隙間8を構成する辺RSと辺VXおよび辺PQと辺TUは、略平行となっており、図示しない残りの隙間8も略平行となっている。また、磁石の開角は、∠POR=∠Q0S=89度となっている。
上の理由から、隙間8,8,8a,8bの間隔は異なっている。ここで、たとえば図2Aに示すように、4個の弓形磁石片1の内の1個の弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合を考える。この時、隙間8,8は、図1Bの隙間8,8と等しいが、隙間8aは図1Bの隙間8より大きくなっており、もう一方の隙間8bは小さくなっているものとする。
この時の隙間8の構成について、図1Dを用いて説明すると、隙間8aを構成する∠ROV=∠SOX=1.5度となっており、隙間8bを構成する∠POT=∠QOU=0.5度となっており、図示しない残りの2つの隙間8は1.0度となっている。また、このことから、隙間8aを構成する辺RSと辺VXおよび隙間8bを構成する辺PQと辺TUは、略平行となっており、図示しない残りの隙間8も略平行となっている。また、磁石の開角は、∠POR=∠Q0S=89度となっている。
一方、図1Cに示す本実施形態の4個の弓形磁石片1の第1所定角度θ1=60度、第2所定角度θ2=120度、すなわち、図1Dに示す∠PQY=60度、∠RSZ=120度とした場合、図2Aのように配置された弓形磁石片1aに働くトルクを有限要素法により求めたところ、-3.3mNmであった。この時、隙間8,8は、図1Bの隙間8,8と等しいが、隙間8aは図1Bより大きくなっており、もう一方の隙間8bは小さくなっている。ここで、符号-は、時計回りにトルクが発生していることを示している。すなわち、従来例と同一方向の吸着トルクが働いていることがわかるが、この吸着トルクの値は、前記従来例の33%、すなわち、吸着トルクは弱まっており、組立の際の負荷を小さくすることが可能となる。
同様に、図2Bに示すように、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働くトルクは、+3.3mNmであった。この時、隙間8,8は、図1Bの隙間8,8と等しいが、隙間8aは図1Bより小さくなっており、もう一方の隙間8bは大きくなっている。ここで、符号+は、反時計回りにトルクが発生していることを示している。すなわち、従来例と同一方向の吸着トルクが働いていることがわかるが、この吸着トルクの値は、従来例の33%、すなわち、吸着トルクは弱まっており、組立の際の負荷を小さくすることが可能となる。
この時の隙間8の構成について、図1Dを用いて説明すると、隙間8aを構成する∠ROV=∠SOX=0.5度となっており、隙間8bを構成する∠POT=∠QOU=1.5度となっており、図示しない残りの2つの隙間8は1.0度となっている。また、このことから、隙間8aを構成する辺RSと辺VXおよび隙間8bを構成する辺PQと辺TUは、略平行となっており、図示しない残りの隙間8も略平行となっている。
同様に、図1Cに示す弓形磁石片1の第1所定角度θ1=45度、第2所定角度θ2=135度、すなわち、図1Dに示す∠PQY=45度、∠RSZ=135度とした場合、図2Aのように配置された弓形磁石片1aに働くトルクを有限要素法により求めたところ、+1.7mNmであった。この時、隙間8,8は、図1Bの隙間8,8と等しいが、隙間8aは図1Bより大きくなっており、もう一方の隙間8bは小さくなっている。ここで、符号+は、反時計回りにトルクが発生していることを示している。すなわち、時計回りにずれた弓形磁石片1aは、反時計回りのトルクを受けるので、ずれが小さくなる方向、言い換えると、隙間8bがより大きくなる方向に隣接する弓形磁石片1から反発しており、反発トルクが働き、自己整合的な位置決め効果が生じていることがわかる。
同様に、図2Bに示すように、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働くトルクは、-1.7mNmであった。この時、隙間8,8は、図1Bの隙間8,8と等しいが、隙間8aは図1Bより小さくなっており、もう一方の隙間8bは大きくなっている。ここで、符号-は、時計回りにトルクが発生していることを示している。すなわち、図2Bに示すように反時計回りにずれた弓形磁石片1bは、時計回りのトルクを受けるので、ずれが小さくなる方向、言い換えると、隙間8aがより大きくなる方向に隣接する弓形磁石片1から反発しており、反発トルクが働き、自己整合的な位置決め効果が生じていることがわかる。
上述した図2A~図2Cに基づき説明した本実施形態と従来例との比較を示すために、図1Cに示す連結側面6の第1所定角度θ1を、90度(従来例)から30度まで変化させた場合における図2Aに示す弓形磁石片1aに作用するトルクの変化を図6に示す。なお、図2Aに示す弓形磁石片1aは、時計回り方向に0.5度位置ズレしている(-0.5度の位置ズレ)と仮定する。
また、ここでは、図1Cに示す連結側面7の第2所定角度θ2は、θ2=(180-θ1)度となるように設定している。
図6に示すように、本実施形態では、第1所定角度θ1が従来例(90度)に比べ80度辺りから吸着トルクが小さくなり始め、第1所定角度θ1が小さくなるほど、また、図示しないが、第2所定角度θ2が従来例に比べ大きくなるほど、吸着トルクが弱まっている。第1所定角度θ1が60度の時、すなわち、第2所定角度θ2が120度の時、従来例に比べ吸着トルクが33%に弱まっており、弓形磁石片1aの位置ズレを修正し、所望の位置決めが容易となる。さらに好ましくは50度以下の場合に、位置ズレを解消する方向に反発トルク(自己整合的な位置決めトルク)が作用することが確認できた。
なお、第1所定角度θ1を小さくし過ぎる、あるいは、第2所定角度θ2を大きくし過ぎると、設計上、弓形磁石片とならない。このような観点からは、前記所定角度の下限は、25度であり、上限は、155度である。
また、上述した図2A~図2Cに基づき説明した本実施形態と従来例との比較を示すトルクのグラフを図5に示す。図5に示すように、従来例では、時計(CW)方向にわずか0.1度でも位置ズレして弓形磁石片10aが配置された場合には、同じ時計(CW)方向に吸着トルクが発生してさらに位置ズレを大きくする方向にトルクが作用するため、位置ズレが大きくなることと吸着トルクが増大する相乗効果により、弓形磁石片10aは、隣接する弓形磁石片10に最終的に接触してしまう。
また、従来例では、反時計(CCW)方向にわずか0.1度でも位置ズレして弓形磁石片10aが配置された場合には、同じ反時計(CCW)方向に吸着トルクが発生してさらに位置ズレを大きくする方向にトルクが作用するため、位置ズレが大きくなることと吸着トルクが増大する相乗効果により、弓形磁石片10aは、隣接する弓形磁石片10に最終的に接触してしまう。
これに対して、図5に示すように、本実施形態では、時計(CW)方向に0.5度位置ズレして弓形磁石片1aが配置された場合、逆の反時計(CCW)方向に反発トルクが発生して位置ズレを解消する方向にトルクが作用する。このため、弓形磁石片1aは、隣接する弓形磁石片1に接触することがない。また、本実施形態では、反時計(CCW)方向に0.5度位置ズレして弓形磁石片1bが配置された場合には、逆の時計(CW)方向に反発トルクが発生して位置ズレを解消する方向にトルクが作用する。このため、弓形磁石片1bは、隣接する弓形磁石片1に接触することがない。
ここで、図5に示す本実施形態のトルクは、第1所定角度θ1=45度、第2所定角度θ2=135度の値とする。
本実施形態では、図1Cに示す鋭角な角部6bおよび7dには、たとえば図2dおよび図2Eに示すように、曲面加工または面取り加工が成されて、面取り部6b1,7d1や曲面加工部6b2,7d2などが形成されていることが好ましい。このように構成することで、弓形磁石片1の鋭角な角部6b,7dが組立時に欠けるという不具合を防止することが可能となり、歩留まりを向上させることができるので、経済性および生産性を高めることが可能となる。
本実施形態の弓形磁石片1では、図1Aに示すように、周方向Wに沿って反対方向に位置する一方の第1連結側面6には、先端面6bを有し、他方の第2連結側面7には、先端面7bを有する。このような構成を採用することで、図1Bに示すように、複数の同一構成の弓形磁石片1を周方向Wに略平行な所定隙間8で配置してモータ用磁石を組み立てることが可能になる。
なお、本発明では、図2Gに示すように、第1連結側面6および第2連結側面7に、所定角度θが鋭角をなす先端面6aおよび先端面7aを形成しても良い。その場合には、所定角度θが鋭角をなす先端面6aおよび先端面7aを両側に形成した弓形磁石片1と、所定角度θが鈍角をなす先端面6aおよび先端面7aを両側に形成した弓形磁石片1とを交互に配置して、磁石組立体を形成することになる。
本実施形態に係るモータは、上記に記載の弓形磁石片1が偶数個で組み合わされたモータ用磁石を有する。このような磁石を備えるモータによれば、コイルを巻回した電機子に対し、相対的に回転する面に2n(nは正の整数)個の弓形磁石片1を周方向に配置するので、低コストで簡便に、磁石の有する磁気特性を十分に発揮させることにより高出力化を図りつつ、コギングトルクやトルクリップルの低減を図り、設計の自由度を増大させることができる。
さらに、本実施形態の弓形磁石片1を個別にモータ組み付け前に着磁することができるので、未着磁部分を残すことなく、弓形の磁石の有する磁気特性を十分発揮させることができる。
なお、本実施形態に係る弓形磁石片1は、ブラシレスモータのアウターロータ側に筒状に取り付けても良いし、インナーロータ側に筒状に取り付けても良い。また、本実施形態に係る弓形磁石片1は、ブラシモータの電機子コア側に筒状に取り付けても良いし、ステータ側に界磁磁石として筒状に取り付けても良い。
また、本実施形態に係る弓形磁石片1における磁化方向は特に限定されず、図3(A)に示すように、厚み方向に平行に着磁しても良いし、図3(B)に示すようにラジアル方向でも良く、さらには、図3(C)に示すように、外側のステータコア50に対して磁化方向が集中するようなハルバッハ型でも良い。さらにまた、図3(D)に示すように、内側に配置されたステータコア50に対して、磁化方向が強く配向している強ラジアル型配向(またはハルバッハ型配向)でも良い。好ましくは、実質的にラジアル配向が良い。
また、本実施形態の弓形磁石片1によれば、連結側面6,7が、外周面2の湾曲方向の接線T1,T2に対して所定角度θ1,θ2で交わる先端面6a,7aを有する。そのため、図1Bに示すように、隣接する他の弓形磁石片1の連結側面7,6との間に略平行な隙間8を設けた場合に、その略平行な隙間8は、図1Cに示すように、湾曲方向の接線T1,T2に対して直角とはならずに角度θ1またはθ2となる。これに伴い、図8Aに示すように、従来例に比べ、連結側面6,7付近における磁束密度の径方向成分の変化が緩やかとなり、その結果、本実施形態の弓形磁石片1を、図1Bに示すように、ヨーク20の内側に配置してモータの磁石として用いた場合に、コギングトルクやトルクリップルの低減を図ることが可能になる。
具体的には、図4に示すように、スロット51を10個有する電機子50に対向して、4個の弓形磁石片1を外周に配置した、本発明の実施形態のモータ(図1Aに示す弓形磁石片1を配置)では、従来のモータ(図2Cに示すように、鋭角な先端面を持たない連結側面を有する弓形磁石片10を配置)に比較して、コギングトルクを、Peak to Peak 値比較で、θ1=60度の時3%、θ1=45度の時8%、θ1=30度の時38%、低減
することができる。
(第2実施形態)
図示省略するが、本発明の第2実施形態に係る弓形磁石片は、通常採用されている焼結磁石の成形工法で成形し、実質的にラジアル方向に配向され、着磁された異方性希土類焼結磁石で構成してある以外は、第1実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。
同様に、比較のために、図2Cに示すように、従来の弓形磁石片10aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-96.3mNmであった。
同様に、図2Cに示す弓形磁石片10aが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+96.3mNmであった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=60度の場合、図2Aに示すように、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-39.3mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの41%であった。
同様に、図2Bに示すように、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+39.3mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの41%であった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=45度の場合、図2Aに示すように、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、+5.3mNmであった。
同様に、図2Bに示すように、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、-5.3mNmであった。
同様に、第1所定角度θ1が47度以下の場合、反発トルクが作用することが確認された。
(第3実施形態)
図示省略するが、本発明の第3実施形態に係る弓形磁石片は、通常採用されている焼結磁石の成形工法で成形した等方性フェライト焼結磁石を実質的にラジアル方向に着磁して構成してある以外は、第1実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。
同様に、比較のために、図2Cに示すように、従来の弓形磁石片10aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-2.1mNmであった。
同様に、図2Cに示す弓形磁石片10aが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+2.1mNmであった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=60度の場合、図2Aに示すように、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-0.7mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの33%であった。
同様に、図2Bに示すように、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+0.7mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの33%であった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=45度の場合、図2Aに示すように、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、+0.3mNmであった。
同様に、図2Bに示すように、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、-0.3mNmであった。
同様に、第1所定角度θ1が49度以下の場合、反発トルクが作用することが確認された。
(第4実施形態)
図示省略するが、本発明の第4実施形態に係る弓形磁石片は、通常採用されているボンド磁石の成形工法で成形し、実質的にラジアル方向に配向され、着磁された異方性フェライトボンド磁石で構成してある以外は、第1実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。本実施形態の弓形磁石片1の連結側面6,7は、外周面2の接線に対し、所定角度θ1およびθ2をなすように成形金型を使用し、成形することで形成できる。
同様に、比較のために、図2Cに示すように、従来の弓形磁石片10aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-3.1mNmであった。
同様に、図2Cに示す弓形磁石片10aが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+3.1mNmであった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=60度の場合、図2Aに示すように、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-1.0mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの33%であった。
同様に、図2Bに示すように、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+1.0mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの33%であった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=45度の場合、図2Aに示すように、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、+0.3mNmであった。
同様に、図2Bに示すように、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、-0.3mNmであった。
同様に、第1所定角度θ1が49度以下の場合、反発トルクが作用することが確認された。
(第5実施形態)
図示省略するが、本発明の第5実施形態に係る弓形磁石片は、通常採用されているボンド磁石の成形工法で成形し、実質的にラジアル方向に配向され、着磁された異方性希土類ボンド磁石で構成してある以外は、第1実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。本実施形態の弓形磁石片1の連結側面6,7は、外周面2の接線に対し、所定角度θ1およびθ2をなすように成形金型を使用し、成形することで形成できる。
同様に、比較のために、図2Cに示すように、従来の弓形磁石片10aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-62.4mNmであった。
同様に、図2Cに示す弓形磁石片10aが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+62.4mNmであった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=60度の場合、図2Aに示すように、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-22.9mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの37%であった。
同様に、図2Bに示すように、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+22.9mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの37%であった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=45度の場合、図2Aに示すように、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、+6.5mNmであった。
同様に、図2Bに示すように、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、-6.5mNmであった。
同様に、第1所定角度θ1が48度以下の場合、反発トルクが作用することが確認された。
(第6実施形態)
図示省略するが、本発明の第6実施形態に係る弓形磁石片は、通常採用されているボンド磁石の成形工法で成形した等方性希土類ボンド磁石を実質的にラジアル方向に着磁して構成してある以外は、第1実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。本実施形態の弓形磁石片1の連結側面6,7は、外周面2の接線に対し、所定角度θ1およびθ2をなすように成形金型を使用し、成形することで形成できる。
同様に、比較のために、図2Cに示すように、従来の弓形磁石片10aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-13.4mNmであった。
同様に、図2Cに示す弓形磁石片10aが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+13.4mNmであった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=60度の場合、図2Aに示すように、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-4.7mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの35%であった。
同様に、図2Bに示すように、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+4.7mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの35%であった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=45度の場合、図2Aに示すように、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、+1.4mNmであった。
同様に、図2Bに示すように、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、-1.4mNmであった。
同様に、第1所定角度θ1が49度以下の場合、反発トルクが作用することが確認された。
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態に係る弓形磁石片は、通常採用されている焼結磁石の成形工法で成形し、実質的にラジアル方向に配向され、着磁された異方性フェライト焼結磁石で構成してある以外は、第1実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。
本実施形態では、図2Fに示すように、弓形磁石片1の内周面を構造用炭素鋼(例えばS45C)のような磁性体でできたシャフト21の外周面に貼り付ける。
同様に、比較のために、図示省略するが、従来の弓形磁石片10aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-10.6mNmであった。
同様に、図示省略するが、弓形磁石片10aが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+10.6mNmであった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=60度の場合、図示省略するが、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-3.7mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの35%であった。
同様に、図示省略するが、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+3.7mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの35%であった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=45度の場合、図示省略するが、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、+1.2mNmであった。
同様に、図示省略するが、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、-1.2mNmであった。
同様に、第1所定角度θ1が49度以下の場合、反発トルクが作用することが確認された。
(第8実施形態)
本発明の第8実施形態に係る弓形磁石片は、通常採用されている焼結磁石の成形工法で成形し、実質的にラジアル方向に配向され、着磁された異方性フェライト焼結磁石で構成してある以外は、第1実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。
本実施形態では、図2Dに示すように、弓形磁石片1の鋭角部6b,7dにC0.2の面取り部6b1,7d1を形成しているものとする。前記面取り部6b1,7d1は、鋭角部6b,7dを研磨加工することで形成できる。
同様に、比較のために、図2Cに示すように、従来の弓形磁石片10aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-10.2mNmであった。
同様に、図2Cに示す弓形磁石片10aが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+10.2mNmであった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=60度の場合、図示省略するが、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-3.9mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの38%であった。
同様に、図示省略するが、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+3.9mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの38%であった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=45度の場合、図示省略するが、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、+1.3mNmであった。
同様に、図示省略するが、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、-1.3mNmであった。
同様に、第1所定角度θ1が49度以下の場合、反発トルクが作用することが確認された。
(第9実施形態)
本発明の第9実施形態に係る弓形磁石片は、通常採用されている焼結磁石の成形工法で成形し、実質的にラジアル方向に配向され、着磁された異方性フェライト焼結磁石で構成してある以外は、第1実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。
本実施形態では、図2Eに示すように、弓形磁石片1の鋭角部6b,7dにR0.2の曲面加工部6b2,7d2を形成しているものとする。前記曲面加工部6b2,7d2は、鋭角部6b,7dを研磨加工することで形成できる。
同様に、比較のために、図2Cに示すように、従来の弓形磁石片10aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-10.2mNmであった。
同様に、図2Cに示す弓形磁石片10aが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+10.2mNmであった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=60度の場合、図示省略するが、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-4.0mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの39%であった。
同様に、図示省略するが、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+4.0mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの39%であった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=45度の場合、図示省略するが、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、+0.6mNmであった。
同様に、図示省略するが、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、-0.6mNmであった。
同様に、第1所定角度θ1が47度以下の場合、反発トルクが作用することが確認された。
(第10実施形態)
本発明の第10実施形態に係る弓形磁石片は、通常採用されている焼結磁石の成形工法で成形し、実質的にラジアル方向に配向され、着磁された異方性フェライト焼結磁石で構成してある以外は、第1実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。
本実施形態では、図2Gに示すように、弓形磁石片1c,1eの外周面2となす角部6b,7d共に鋭角となっており、弓形磁石片1d,1fの外周面2となす角部6b’、7d’は共に鈍角となっているものとする。
同様に、比較のために、図2Cに示すように、従来の弓形磁石片10aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-10.2mNmであった。
同様に、図2Cに示す弓形磁石片10aが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+10.2mNmであった。
同様に、図2Gに示す角部6b,7dの所定角度θ=60度であり、角部6b’,7d’の所定角度θ=120度の場合、弓形磁石片1cが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-3.4mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの33%であった。
同様に、図2Gに示す弓形磁石片1cが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+3.4mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの33%であった。
同様に、図2Gに示す角部6b,7dの所定角度θ=45度であり、角部6b’、7d’の所定角度θ=135度の場合、弓形磁石片1cが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、+1.7mNmであった。
同様に、図2Gに示す弓形磁石片1cが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、-1.7mNmであった。
同様に、角部6b,7dの所定角度θが50度以下の場合、反発トルクが作用することが確認された。
(第11実施形態)
本発明の第11実施形態に係る弓形磁石片は、通常採用されている焼結磁石の成形工法で成形し、実質的にラジアル方向に配向され、着磁された異方性フェライト焼結磁石で構成してある以外は、第1実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。
本実施形態では、図2Hに示すように、隙間8が幅0.4mmで平行となるように設定しているものとする。すなわち、辺RSと辺VX、および、図示しない辺PQと辺TU(図1D参照)は、平行となっており、図示しない残りの隙間8も幅0.4mmで平行となっている。また、角6b,7dの角度θ1、θ2は、それぞれ、隙間8の中心線T4が弓形磁石片の外周面2の延長線と交差する点Nにおける接線T3となす角度θ1’,θ2’とほぼ等しく、角度θ1’,θ2’を、それぞれ、第1および第2所定角度θ1,θ2とみなすことができる。
同様に、比較のために、図2Cに示すように、従来の弓形磁石片10aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-8.7mNmであった。
同様に、図2Cに示す弓形磁石片10aが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+8.7mNmであった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=60度の場合、図2Aに示すように、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-3.5mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの41%であった。
同様に、図2Bに示すように、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+3.5mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの41%であった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=45度の場合、図2Aに示すように、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、+0.2mNmであった。
同様に、図2Bに示すように、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、-0.2mNmであった。
同様に、第1所定角度θ1が46度以下の場合、反発トルクが作用することが確認された。
(第12実施形態)
本発明の第12実施形態に係る弓形磁石片は、通常採用されている焼結磁石の成形工法で成形し、実質的にラジアル方向に配向され、着磁された異方性フェライト焼結磁石で構成してある以外は、第1実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。
本実施形態では、図2Iに示すように、8つの弓形磁石片1が、内周面において周方向に順にN極とS極が交互に構成されるように配置されている。この時、8つの弓形磁石片1は、隙間8が等間隔となるように位置決めされているものとする。また、この時の隙間8の構成について、図1Dを用いて説明すると、∠ROV=∠SOX=∠POT=∠QOU=1.0度となっており、図示しない残りの隙間8も1.0度となっている。また、このことから、隙間8を構成する辺RSと辺VX、および、辺PQと辺TUは、略平行となっており、図示しない残りの隙間8も略平行となっている。また、磁石の開角は、∠POR=∠Q0S=44度となっている。
同様に、比較のために、図示省略するが、従来の弓形磁石片10aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-9.9mNmであった。
同様に、図示省略するが、弓形磁石片10aが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+9.9mNmであった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=60度の場合、図示省略するが、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-3.1mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの31%であった。
同様に、図示省略するが、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+3.1mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの31%であった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=45度の場合、図示省略するが、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、+1.9mNmであった。
同様に、図示省略するが、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、-1.9mNmであった。
同様に、第1所定角度θ1が51度以下の場合、反発トルクが作用することが確認された。
(第13実施形態)
図示省略するが、本発明の第13実施形態に係る弓形磁石片は、通常採用されている焼結磁石の成形工法で成形し、実質的にラジアル方向に配向され、着磁された異方性フェライト焼結磁石で構成してある以外は、第1実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。
図示省略するが、48個の弓形磁石片1が、周方向に順にN極とS極が交互に構成されるように配置されている。この時、48個の弓形磁石片1は、隙間8が等間隔となるように位置決めされているものとする。また、この時の隙間8の構成について、図1Dを用いて説明すると、∠ROV=∠SOX=∠POT=∠QOU=0.1度となっており、図示しない残りの隙間8も0.1度となっている。また、このことから、隙間8を構成する辺RSと辺VX、および、辺PQと辺TUは、略平行となっており、図示しない残りの隙間8も略平行となっている。また、磁石の開角は、∠POR=∠Q0S=7.4度となっている。
また、本実施形態では、弓形磁石片1の内周面をR150mm、外周面をR153mm、長さを30mmで形成し、冷間圧延鋼板(例えばSPCC)のような磁性体でできた厚さ3mmのヨーク20の内周面に貼り付けている。
同様に、比較のために、図示省略するが、従来の弓形磁石片10aが時計回りに0.05度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-97.3mNmであった。
同様に、図示省略するが、弓形磁石片10aが反時計回りに0.05度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+97.3mNmであった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=60度の場合、図示省略するが、弓形磁石片1aが時計回りに0.05度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-30.8mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの32%であった。
同様に、図示省略するが、弓形磁石片1bが反時計回りに0.05度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+30.8mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの32%であった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=45度の場合、図示省略するが、弓形磁石片1aが時計回りに0.05度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、+16.8mNmであった。
同様に、図示省略するが、弓形磁石片1bが反時計回りに0.05度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、-16.8mNmであった。
同様に、第1所定角度θ1が50度以下の場合、反発トルクが作用することが確認された。
(第14実施形態)
図示省略するが、本発明の第14実施形態に係る弓形磁石片は、実質的にラジアル方向に配向され、着磁された異方性フェライト焼結磁石で構成してある以外は、第1実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。
このように構成された弓形磁石片1を製造する方法の一例について、以下に説明する。
本実施形態では、まず、弓形磁石片1の外形に対し、樹脂バインダー除去に伴う変形、および、焼結工程での縮率を考慮した形状を有するキャビティ(内部空間)が形成された金型を準備し、樹脂バインダー中に磁性粉を含有するフェライト磁石材料(たとえばコンパウンドとしたもの)をキャビティ内に供給する(CIM成形の準備工程)。
磁性粉末の原料粉末としては、特に限定されないが、好ましくは、フェライトが用いられ、特に、マグネトプランバイト型のM相、W相等の六方晶系のフェライトが好ましく用いられる。
次に、キャビティ内を適宜の圧力および温度で加圧してフェライト磁石材料に配向磁界を印加しながら射出成形固化することにより、弓形の成形体を形成する(CIM成形工程)。
その後、得られた弓形の成形体に適宜の温度を加えて樹脂バインダーを除去した後、フェライト磁石材料に適した焼結温度パターンで焼結する(焼結工程)。
その後、適宜の磁場を印加し、着磁することにより、所定の方向に配向された異方性フェライト焼結磁石から成る弓形磁石片1を得る(着磁工程)。
この時、流動性の良いフェライト磁石材料に配向磁界を印加しながら射出成形固化するので、従来の乾式若しくは湿式の圧縮成形によって製造する方法に比べ、弓形磁石片1における連結側面6,7での磁石粉末の流動性が良いため、印加する配向磁界方向に異方性が揃いやすく、成形密度も十分確保されるので、磁石粉末の有する磁気特性を十分発揮させることができる。
本実施形態では、磁石の配向度を90%以上とすることができる。なお、磁石の配向度とは、飽和磁化(Is)に対する残留磁化(Ir)の比(Ir/Is)である。磁石の配向度は、配向磁界中の射出成形後の成形体における磁性粉末の異方性の揃い具合、および、焼結時に微細粒子が大きな粒子の配向に倣いやすいことに、大きく影響される。
また、本実施形態の弓形磁石片1では、CIM(ceramic injection molding)工法による射出成形によって、鋭角な先端面を持つ連結側面6,7を有する成形体を容易に成形することができるので、部品点数を増加させずに、しかも、加工コストを大幅に削減し、製造工程の簡素化を図ることができ、さらに、歩留まりと磁気特性を向上させることができるので、経済性および生産性を高めることが可能となる。また、連結側面6,7においても、磁石の配向度が90%以上であるという高い異方性フェライト焼結磁石を得ることができる。
同様に、比較のために、図2Cに示すように、従来の弓形磁石片10aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-10.4mNmであった。
同様に、図2Cに示す弓形磁石片10aが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+10.4mNmであった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=60度の場合、図2Aに示すように、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-3.4mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの33%であった。
同様に、図2Bに示すように、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+3.4mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの33%であった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=45度の場合、図2Aに示すように、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、+1.7mNmであった。
同様に、図2Bに示すように、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、-1.7mNmであった。
同様に、第1所定角度θ1が50度以下の場合、反発トルクが作用することが確認された。
(第15実施形態)
図示省略するが、本発明の第15実施形態に係る弓形磁石片は、成形法がCIM工法ではなく、MIM工法であり、実質的にラジアル方向に配向され、着磁された異方性希土類焼結磁石で構成してある以外は、第14実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第14実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。
このように構成された弓形磁石片1を製造する方法の一例について、以下に説明する。
本実施形態では、まず、弓形磁石片1の外形に対し、樹脂バインダー除去に伴う変形、および、焼結工程での縮率を考慮した形状を有するキャビティ(内部空間)が形成された金型を準備し、樹脂バインダー中に磁性粉を含有する希土類磁石材料(たとえばコンパウンドとしたもの)をキャビティ内に供給する(MIM成形の準備工程)。
希土類焼結磁石を製造する場合には、好ましくは、R(希土類)-T-B系金属粉末を用いる。なお、R-T-B系金属粉末の主成分における希土類R(RはYを含む概念を有しており、したがってY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuの1種または2種以上から選択される)の割合は、特に限定されないが、たとえば20質量%~40質量%、Bは0.5質量%~1.5質量%であり、残部Tは、FeまたはFeおよびCoを含む遷移金属元素から選択される1種または2種以上の元素で構成される。また、R-T-B系金属粉末は他の元素の含有を許容する。たとえばAl、Cu、Zr、Ti、Bi、Sn、Ga、Nb、Ta、Si、V、Ag、Ge等の元素を適宜含有させることができる。
次に、キャビティ内を適宜の圧力および温度で加圧して希土類磁石材料に配向磁界を印加しながら射出成形固化することにより、弓形の成形体を形成する(MIM成形工程)。
その後、得られた弓形の成形体に適宜の温度を加えて樹脂バインダーを除去した後、希土類磁石材料に適した焼結温度パターンで焼結する(焼結工程)。
その後、適宜の磁場を印加し、着磁することにより、所定の方向に配向された異方性希土類焼結磁石から成る弓形磁石片1を得る(着磁工程)。
この時、流動性の良い希土類磁石材料に配向磁界を印加しながら射出成形固化するので、従来の乾式若しくは湿式の圧縮成形によって製造する方法に比べ、弓形磁石片1における連結側面6,7での磁石粉末の流動性が良いため、印加する配向磁界方向に異方性が揃いやすく、成形密度も十分確保されるので、磁石粉末の有する磁気特性を十分発揮させることができる。
本実施形態では、磁石の配向度を90%以上とすることができる。なお、磁石の配向度とは、飽和磁化(Is)に対する残留磁化(Ir)の比(Ir/Is)である。磁石の配向度は、配向磁界中の射出成形後の成形体における磁性粉末の異方性の揃い具合、および、焼結時に微細粒子が大きな粒子の配向に倣いやすいことに、大きく影響される。
また、本実施形態の弓形磁石片1では、MIM工法による射出成形によって、鋭角な先端面を持つ連結側面6,7を有する成形体を容易に成形することができるので、部品点数を増加させずに、しかも、加工コストを大幅に削減し、製造工程の簡素化を図ることができ、さらに、歩留まりと磁気特性を向上させることができるので、経済性および生産性を高めることが可能となる。また、連結側面6,7においても、磁石の配向度が90%以上であるという高い異方性希土類焼結磁石を得ることができる。
同様に、比較のために、図2Cに示すように、従来の弓形磁石片10aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-96.3mNmであった。
同様に、図2Cに示す弓形磁石片10aが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+96.3mNmであった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=60度の場合、図2Aに示すように、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、-39.3mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの41%であった。
同様に、図2Bに示すように、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く吸着トルクは、+39.3mNmであり、従来の弓形磁石片10aに働く吸着トルクの41%であった。
同様に、図1Cに示す第1所定角度θ1=45度の場合、図2Aに示すように、弓形磁石片1aが時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、+5.3mNmであった。
同様に、図2Bに示すように、弓形磁石片1bが反時計回りに0.5度ずれて配置された場合に働く反発トルクは、-5.3mNmであった。
同様に、第1所定角度θ1が47度以下の場合、反発トルクが作用することが確認された。
以上から、第1実施形態~第15実施形態のいずれにおいても、外周面2と鋭角をなす所定角度θが60度以下であれば、従来例の弓形磁石片10に働く吸着トルクと比較して、弓形磁石片1に働く吸着トルクが50%以下と弱まっており、組立の際の負荷を小さくすることが可能となる。さらに、所定角度θが45度以下であれば、弓形磁石片1に反発トルクが働き、自己整合的な位置決め効果が生じていることが示された。
また、第2実施形態~第15実施形態における連結側面付近での径方向成分の磁束密度分布(縦軸)を、従来例と所定角度θ=60度(曲線α2)、45度(曲線α3)、30度(曲線α4)で比較したグラフの代表例を、図8Aに示す。いずれの実施形態においても、従来例(曲線α1)に比べ、連結側面付近での磁束密度の径方向成分が従来に比べなだらかに変化しており、コギングトルクおよびトルクリップルの低減が期待できる。
なお、図8Aにおいて、横軸の角度Δθは、図8Bに示すように、連結面6,7の相互間の内周面側で、径方向成分の磁束密度が0になる所をθ0として、そこから反時計回り方向にずれる角度を正方向のΔθとし、時計回り方向にずれる角度を負方向のΔθとしている。一般的には、連結面6,7の相互間の内周面側の中間地点で、径方向成分の磁束密度が0になる。
図7は、従来例に係るトルクを100%とした時の、本発明の実施例の鋭角な所定角度θ1を変化させた場合におけるトルクの変化を示すグラフである。上述したいずれの実施形態1~15においても、図7に示す曲線β1からβ2の範囲内で変化した。すなわち、各実施形態1~15において、所定角度θ1が60度以下になれば、従来例に比較して、ズレを大きくしようとする吸着トルクが従来例の50%以下となり、所定角度θ1が45度以下になれば、従来例とは逆に、ズレを補正しようとする反発トルクが発生することが確認できた。
(第16実施形態)
本発明の第16実施形態に係る弓形磁石片では、図1Aに示す軸芯O方向の少なくとも一方の端面4または5に、位置決め用凸部または凹部(図示省略)を形成してある以外は、第1実施形態~第15実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第1実施形態~第15実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。
本実施形態では、図1Aに示す弓形磁石片1における軸芯O方向の端面4または5の少なくとも一方には、位置合わせ用凸部が、端面4または5から軸芯O方向に突出して形成してある。あるいは、図1Aに示す弓形磁石片1における軸芯O方向の端面4または5の少なくとも一方には、位置合わせ用凹部が、端面4または5から軸芯O方向に凹んで形成してある。
これらの場合には、位置合わせ用凸部または凹部を、弓形磁石片1をヨークに接着する際の位置決めに利用することができるので、組み付け精度の更なる向上を図ることが可能となる。
さらに、端面4または5の周方向Wの略中央部に位置する位置合わせ用凸部の頂面、または位置合わせ用凹部の底面には、CIM成形またはMIM成形におけるゲートを位置させても良い。位置合わせ用凸部の側面が、主として位置合わせ面となり、凸部の頂面は、位置合わせ面には用いないため、この頂面にゲートの跡が残っていても問題は無い。また、位置合わせ用凹部の側面が、主として位置合わせ面となり、凹部の底面は、位置合わせ面には用いないため、この底面にゲートの跡が残っていても問題は無い。
さらに、位置合わせ用凸部の頂面、または位置合わせ用凹部の底面に、CIM成形またはMIM成形におけるゲートを位置させることで、成形型内でのフェライト粒子または金属粒子の流れが良くなり、均一に粒子を充填することが可能になり、配向度がさらに向上する。
(第17実施形態)
本発明の第17実施形態では、第1実施形態~第16実施形態とは異なり、図9Aに示すように、永久磁石片100が、弓形ではない単純平板形状を有している以外は、第1実施形態~第16実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第1実施形態~第16実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。
本発明の第17実施形態の永久磁石片100は、図9Aに示すように、第1面102と、その第1面102に平行に対向する第2面104と、第1面102および第2面104を連絡するように形成され、第1面102に対して、鋭角な所定角度θ3、且つ、第2面104に対して鈍角な所定角度θ4で交わる傾斜面106とを有する。なお、本実施形態において、第1面と第2面とは、相対的な概念であり、一般的には、いずれかの面が、何らかの部材に設置される設置面となり、いずれか他方の面が、何らかの磁力作用を行う機能面となるが、特に限定されず、両方が機能面となっても良く、双方が設置面となっても良い。
鈍角な所定角度θ4と鋭角な所定角度θ3の和は、略180度である。本実施形態では、永久磁石片100の鈍角な所定角度θ4が形成される鈍角な角部107は、図示しない他の永久磁石片の鋭角な所定角度θ3の角部105に組み合わされる。また、永久磁石片100の鋭角な所定角度θ3が形成される鋭角な角部105は、図示しない他の永久磁石片の鈍角な所定角度θ4の角部107に組み合わされる。なお、以下の説明において、鋭角な角部105における傾斜面106を連結側面と言うこともある。
本実施形態では、永久磁石片100の保磁力HCJ=1671000[A/m]であり、残留磁束密度Br =1.36[T]であるので、HCJ≧1.3×Br /μ0 (ただし、μ0 は真空の透磁率であり、保磁力HCJおよび残留磁束密度Br は20℃における値とする)を満足している。
また、鋭角な角部105には、必要に応じて面取り加工あるいは曲面加工(R加工)が施されている。また、鈍角な角部107には、必要に応じて面取り加工あるいは曲面加工(R加工)が施されていても良い。
鋭角な角部105に曲面加工または面取り加工が成されていると、たとえば第1面102を、図示しない部材に接着剤を用いて固着して設置する際、接着剤が、曲面加工または面取り加工が成された角部に盛り上がってはみ出ることで、永久磁石片100の角部方向への移動が規制され、位置ずれを抑制する作用がある。同様に、鈍角な角部107に曲面加工または面取り加工が成されていると、第2面104を、図示しない部材に接着剤を用いて固着して設置する際、接着剤が、曲面加工または面取り加工が成された角部に盛り上がってはみ出ることで、永久磁石片100の角部方向への移動が規制され、位置ずれを抑制する作用がある。さらに、永久磁石片100の角部105は鋭角を成しているので、組立時に欠けるという不具合を防止することが可能となり、歩留まりを向上させることができるので、経済性および生産性を高めることが可能となる。
本実施形態では、永久磁石片100は、第1面102および第2面104に略垂直な磁化を持つように着磁され、傾斜面106における主要部分の磁極が、第2面104の磁極と同一となり、第1面102の磁極とは反対の極性を示す。鋭角な角部105における所定角度θ3は、好ましくは60度以下、さらに好ましくは30~50度の範囲である。また、鈍角な角部107における所定角度θ4は、好ましくは120度以上、さらに好ましくは130~150度の範囲である。
本実施形態に係る永久磁石片100では、傾斜面106を連結側面として利用することができる。傾斜面106における主要部分の磁極が、第2面104の磁極と同一であることから、永久磁石片100を2つ以上用意して、相互の傾斜面106を向き合わせて連結する場合に、次に示す作用効果が期待できる。
すなわち、本実施形態では、下述する実施形態にも示すように、比較的大面積の単一な磁極面を形成するために、連結しようとする任意の二つの永久磁石片100の内の一方の永久磁石片100の第1面102と他方の永久磁石片100の第2面104とを実質的に連続的な面を形成するように配置することが考えられる。この場合に、一方の永久磁石片100の第1面102と他方の永久磁石片100の第2面104とが同じ磁極に磁化されている場合には、両者の傾斜面106の主要部は、反対の極性となり、これらの相互間には、吸着力が発生する。そのため、複数の永久磁石片100を組み合わせて、比較的大面積の単一な磁極面を持つ永久磁石組立体を組み立てることが容易になる。すなわち、比較的大面積の単一な磁極面を持つ永久磁石組立体を組み立てる際の経済性および生産性を高めることが可能になる。
なお、従来技術として、永久磁石片を複数の永久磁石片を予め接着し、比較的大面積の永久磁石組立体を組み合わせた後に着磁することも考えられるが、その場合には、大型の着磁器が必要となる。これに対して、本実施形態に係る永久磁石片100では、着磁済みの永久磁石片100を組み合わせて、集合体としての永久磁石組立体を形成することができるため、大型の着磁器を用いる必要がない。
本実施形態に係る永久磁石片100の着磁の際の作用効果を具体的に示すために、図9Aに示す永久磁石片100を単体で着磁した際、パーミアンス係数が最も小さくなることが予想される鋭角な角部105先端のパーミアンス係数Pcを算出した。その結果を、表1に示す。
表1から分かる通り、θ3が90度から小さくなるに従って、鋭角な角部105先端の最小パーミアンス係数Pcが徐々に小さくなっている。θ3=30度の時、最も小さくなり、-0.190である。
図9Hに、永久磁石のBH特性曲線を示す。図9Hにおいて、曲線γ1は、HCJ=1.2×Br /μ0 の時のBH特性曲線、曲線γ2は、HCJ=1.3×Br /μ0 の時のBH特性曲線、直線γ3はHCJ=1.2×Br /μ0 を示す直線、直線γ4はHCJ=1.3×Br /μ0 を示す直線、直線γ5は、Pc=-0.190を示す直線、Bd1はHCJ=1.2×Br /μ0 の時の最小パーミアンス係数Pcでの動作点、Bd2はHCJ=1.3×Br /μ0 の時の最小パーミアンス係数Pcでの動作点を表している。
図9Hから分かる通り、HCJ=1.2×Br /μ0 の時、Pc=-0.190だと、永久磁石の動作点Bd1が屈曲点付近となるため、減磁する恐れがある。HCJ=1.3×Br /μ0 の時、永久磁石の動作点Bd2は屈曲点を越えないので、減磁する恐れがない。このことから、永久磁石片100の保磁力をHCJとし、残留磁束密度Br とした場合、HCJ≧1.3×Br /μ0 (ただし、μ0 は真空の透磁率であり、保磁力HCJおよび残留磁束密度Br は20℃における値とする)を満足することが好ましい。
このことから、20℃における永久磁石片100の保磁力HCJが、HCJ≧1.3×Br /μ0を満足することで、着磁のために特別な環境を準備する必要がなく、また、着磁後の永久磁石片100を取り扱う際に、通常の室内環境で行なっても、永久磁石片100の減磁の恐れがないので、経済性および生産性を高めることが可能になる。
(第18実施形態)
本発明の第18実施形態は、第17実施形態の変形例であり、以下に示す以外は、第17実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第17実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。
図9Bに示すように、本実施形態に係る永久磁石組立体120aは、少なくとも第1永久磁石片100a1と、第2永久磁石片100a2とを有する。第1永久磁石片100a1は、第1設置面102a1と、第1設置面102a1に平行に対向する第1機能面104a1と、第1設置面102a1および第1機能面面104a1を連絡するように形成され、第1機能面104a1に対して鈍角な所定角度θ4で交わる第1傾斜面106a1とを有する。なお、本実施形態において、設置面は、何らかの部材に設置される面であるが、必ずしも部材に設置されていなくても良く、機能面とは、装置全体として必要な磁力を発生させる面(磁極面)を意味する。
第1永久磁石片100a1は、第1設置面102a1および第1機能面104a1に略垂直な磁化を持つように着磁してある。また、第1傾斜面106a1における主要部分の磁極は、第1機能面104a1の磁極と同一である。
第2永久磁石片100a2は、第2設置面102a2と、第2設置面102a2に対向する第2機能面104a2と、第2機能面104a2および第2設置面102a2を連絡するように形成され、第2設置面102a2に対して鈍角な所定角度θ4で交わる第2傾斜面106a2とを有する。
第2永久磁石片100a2は、第2機能面104a2および第2設置面102a2に略垂直な磁化を持つように着磁してある。また、第2傾斜面106a2における主要部分の磁極は、第2設置面102a2の磁極と同一である。
本実施形態に係る永久磁石組立体120aでは、第1永久磁石片100a1の鈍角な角部107a1と、第2永久磁石片100a2の鋭角な角部107a2とを連結すると共に、第1永久磁石片100a1の鋭角な角部105a1と、第2永久磁石片100a2の鈍角な角部105a2とを連結する。この時、第1永久磁石片100a1の第1設置面102a1と、第2永久磁石片100a2の第2設置面102a2とが、同じS極に磁化されているものとする。
この場合、第1設置面102a1がS極であることから、第1永久磁石片100a1の第1機能面104a1はN極となり、第1傾斜面106a1における主要部分の磁極も同一のN極となる。一方、第2永久磁石片100a2の第2設置面102a2はS極であり、第2傾斜面106a2における主要部分の磁極も同一のS極となる。この結果、2つの傾斜面は異なる磁極となり、これら第1傾斜面106a1と第2傾斜面106a2の相互間には、吸着力が発生する。そのため、複数の永久磁石片を組み合わせて、比較的大面積の単一な磁極面を持つ永久磁石組立体を組み立てることが容易になる。
すなわち、比較的大面積の単一な磁極面を持つ磁石を組み立てる際の経済性および生産性を高めることが可能になる。このように二つの永久磁石片100a1および100a2を、図面左右方向、すなわち図示するX軸方向に連結することで、少なくともX軸方向に比較的大面積の単一な磁極面を形成することができる。
なお、図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直であり、Z軸が、永久磁石片の厚み方向に対応する。本実施形態では、X軸方向に永久磁石片を連結する場合の説明を行ったが、Y軸方向に永久磁石片を連結させてもよく、X軸およびY軸両方の方向に連結してもよい。また、永久磁石片の形状によっては、永久磁石片の連結方向が周方向になる場合もある。
本実施形態に係る第1永久磁石片100a1と第2永久磁石片100a2を組み合わせた際の作用効果を具体的に示すために、図9Cに示すように、磁性体ヨーク110の上に第2永久磁石片100a2を配置した場合において、第1永久磁石片100a1に実際に作用する力をシミュレーションした。
第1永久磁石片100a1と第2永久磁石片100a2は、通常採用されている焼結磁石の成形工法で成形し、実質的に第1設置面102a1、第2設置面102a2、第1機能面104a1、および第2機能面104a2に対し垂直方向に配向されている。これらの磁石片100a1および100a2は、それぞれ着磁された異方性希土類焼結磁石で構成してある。本実施形態では、第2永久磁石片100a2の第2設置面102a2を、構造用炭素鋼(例えばS45C)のような磁性体でできた基材となる磁性体ヨーク110の上に、接着剤で貼り付けているものとする。
本実施形態では、第1永久磁石片100a1および第2永久磁石片100a2のそれぞれは、同じ永久磁石片100で構成され、その永久磁石片100は、図9Fに示すように、第1面102および第2面104を連絡するように形成され、第1面102および第2面104に対して直角に交わる端面108a、108b、108cを有する。図9Fに示す永久磁石片100の第1面102は、図9Cに示す第1永久磁石片100a1の第1設置面102a1、または第2永久磁石片100a2の第2機能面104a2となる。また、図9Fに示す永久磁石片100の第2面104は、図9Cに示す第1永久磁石片100a1の第1機能面104a1、または第2永久磁石片100a2の第2設置面102a2となる。
図9Fに示す永久磁石片100(第1永久磁石片100a1および第2永久磁石片100a2)では、長さLを20mm、幅Wを20mmにしてあり、第2面は、第1面102に対向して厚さT=10mmで平行に形成してある。ここで、長さLは、傾斜面106の厚さ方向の中心点Oと、傾斜面106に対向して形成してある端面108bの厚さ方向の中心点O’との間の長さとする。
本実施形態の永久磁石片100の傾斜面106は、第1面102に対して、鋭角な所定角度θ3、且つ、第2面104に対して鈍角な所定角度θ4をなすように研磨加工することで形成できる。同様に、端面108a、108b、108cは、第1面102および第2面104に対して直角をなすように研磨加工されている。また、図9Cに示すように、磁性体ヨーク110は、永久磁石組立体120aの長さL方向(X軸方向)に長さLaを100mm、幅W方向(Y軸方向)にWaを20mm、厚さTa10mmとなるように、機械加工で形成されている。
ここで、第2永久磁石片100a2は、その端面108bが磁性体ヨーク110の左側の端面110aから右方向にLb=30mmの位置に接着されている。また、端面108aおよび108cは、磁性体ヨーク110の幅方向と一致する位置に接着されている。
また、第2永久磁石片100a2の第2設置面102a2はS極に、第2機能面104a2はN極に着磁してある。
上述した、第1永久磁石片100a1に、第2永久磁石片100a2を、傾斜面106a1および106a2同士が図面左右方向に0.1mm隙間を開けた状態で、第1永久磁石片100a1が受ける力をシミュレーションで求めた。ここで、第1永久磁石片100a1の第1機能面104a1はN極に、第1設置面102a1はS極に着磁してある。すなわち、同じN極に磁化されている第1永久磁石片100a1の第1機能面104a1と第2永久磁石片100a2の第2機能面104a2とを組み合わせて、長さLc=40mmの単一な磁極面を持つ永久磁石組立体120aを組み立てることになる。
さらに、第1傾斜面106a1と第2傾斜面106a2の主要部は、反対の極性となるので、これらの相互間には、吸着力が発生する。鋭角な所定角度θ3を変化させて、第1永久磁石片100a2が受ける力の結果を、図9Gのグラフに示す。なお、鈍角な所定角度θ4は、θ4=180-θ3となっている。また、θ3=θ4=90度の時、従来例に相当する。
図9Gから分かる通り、θ3が90度から小さくなるに従って、第1永久磁石片100a1が第2永久磁石片100a2から受ける力(図9Cにおける右方向の力、すなわち反発力)が徐々に小さくなっている。これは、第1傾斜面106a1と第2傾斜面106a2の主要部相互間に、吸着力が発生することに伴い、反発力が減じていることを示している。
θ3が60度以下に小さくなると、第1傾斜面106a1と第2傾斜面106a2の主要部相互間の吸着力がさらに大きくなるため、第2永久磁石片100a2は、図9Cにおける左方向の力、すなわち、吸着力の作用に伴い、反発力がさらに減じていることを示している。このことから、図9Iに示すように、θ3が60度以下にあると、反発力が従来に比べ70%以下に抑えることが可能となる。この結果、第2永久磁石片100a2を磁性体ヨーク110に接着した際、隣接して組み合わせられる第1永久磁石片100a1との反発力が従来に比べ大きく減少する。その結果、経済性および生産性をさらに高めることが可能となる。
なお、図9Iにおいて、δ1とδ2の曲線は、永久磁石片の寸法や材質などを変化させても、δ1とδ2の曲線の範囲内において、同様な結果が得られていることを示している。その一例として、永久磁石片100の長さLを10mm、幅Wを10mm、厚さT=5mmで平行に形成し、磁性体ヨーク110として、永久磁石片100の長さ、幅に対し十分広い大きさと厚さを有した永久磁石組立体120aがある。他の一例として、永久磁石片100の長さLを100mm、幅Wを100mm、厚さT=50mmで平行に形成し、磁性体ヨーク110として、永久磁石片100の長さ、幅に対し十分広い大きさと厚さを有した永久磁石組立体120aがある。
さらに他の一例として、第1永久磁石片100a1の長さL1を20mm、幅W1を20mm、厚さT1=10mmで平行に形成し、第2永久磁石片100a2の長さL2を50mm、幅W2を20mm、厚さT2=10mmで平行に形成し、磁性体ヨーク110として、2つの永久磁石片100a1および100a2の長さ、幅に対し十分広い大きさと厚さを有した永久磁石組立体120aがある。
さらに他の一例として、永久磁石片100の材質を異方性焼結フェライト磁石とし、その長さLを20mm、幅Wを20mm、厚さT=10mmで平行に形成し、磁性体ヨーク110として、永久磁石片100の長さ、幅に対し十分広い大きさと厚さを有した永久磁石組立体120aがある。
いずれの例においても、第1永久磁石片100a1に作用する力の従来例に対する比率は、図9Iにおいて、δ1とδ2の曲線の範囲内にあることが確認された。このことから、永久磁石片の寸法や材質などを変化させても、2つの永久磁石片100を磁性体ヨーク110に接着した際、隣接して組み合わせられる2つの永久磁石片同士の反発力が従来に比べ大きく減少し、その結果、経済性および生産性をさらに高めることが確認された。また、このことから、複数の永久磁石片100から組み立てた永久磁石組立体120a自体を、一つの永久磁石片100と見なして扱えることが分かる。
θ3が40度より小さくなると、第1傾斜面106a1と第2傾斜面106a2の主要部相互間の吸着力がさらに大きくなるため、第1永久磁石片100a1は、図9Cにおける左方向の力、すなわち吸着力が作用していることを示している。
θ3が30度より小さくなると、第1傾斜面106a1と第2傾斜面106a2の主要部相互間の吸着力がさらに一層大きくなるため、第1永久磁石片100a1は、図9Cにおける左方向の力、すなわち吸着力がさらに大きく作用していることを示している。
一方、θ3が50度付近で、θ3が30度の吸着力と同程度の反発力を示しており、その範囲では、吸着力または反発力の絶対値が小さいことを示している。
以上のことから、θ3が30~50度の範囲にあると、吸着力または反発力の絶対値を、従来に比べ40%以内に抑えることが可能となる。この結果、第1永久磁石片100a1および第2永久磁石片100a2を磁性体ヨーク110に接着した際、2つの永久磁石片100a1および100a2の接着強度が劣化しても、吸着力または反発力が抑えられているので、接着剤に加わるせん断力が小さく抑えられ、継ぎ目部分が広がる恐れが低くなる、という効果を奏する。
また、本実施形態においては、傾斜面106a1,106a2同士が図面左右方向に0.2mm隙間を開けた状態の、所定角度θ3=60度における第1永久磁石片100a1が受ける反発力は、シミュレーションにて48[N]が得られた。一方、所定角度θ3=90度である従来例における隙間を0.2mmに変えた時の反発力は、シミュレーションにて79[N]、隙間を3mmに変えた時は52[N]が得られた。
このことから分かる通り、隙間が大きくなると、所定角度θ3=90度である従来例における第1永久磁石片100a1が受ける反発力を小さくすることできる。しかし、本実施形態における、隙間を0.2mmとした時の、所定角度θ3=60度の反発力は、隙間を3mmとした時の、所定角度θ3=90度である従来例の反発力よりも小さく、従来例に対し反発力を減じる効果が極めて大きいことを示している。さらには、隙間が大きければ大きいほど、その部分での磁束の乱れが増えてしまい、その上、総磁束量を減らしてしまう。したがって、本来、比較的大面積の単一な磁極面を持つ永久磁石組立体として得られる磁気特性を有効に発揮させるためには、隙間を0.2mm以下とすることで、十分好ましいことが分かる。
図9Dは、第1機能面104a1と第2機能面104a2とを、同じ磁極であるN極にした場合に、第1傾斜面106a1の主要部と第2傾斜面106a2の主要部とに、実際に吸着力が作用することを示す、磁束線の分布を示すシミュレーション結果である。図示するように、隙間を0.2mmとして近接する永久磁石片100a1,100a2の第1傾斜面106a1と第2傾斜面106a2との間には、磁束線の様子から磁極の分布状態が確認でき、それら磁極の間には吸着力が発生していることが確認できる。そのため、複数の永久磁石片100a1,100a2を組み合わせて、比較的大面積の単一な磁極面を持つ磁石を組み立てることが容易になる。すなわち、比較的に大面積の単一な磁極面を持つ磁石を組み立てる際の経済性および生産性を高めることが可能になる。
なお、図9Eに示すように、従来の永久磁石片100aでは、連結側面106aが内面102aおよび外面104aに対して、略垂直であったため、基材110の上に、同一極性で大面積の磁極面を複数の磁石片100aで形成しようとした場合に、連結側面106aの相互間には、磁束線の様子から磁極の分布状態が確認でき、それら磁極の間には強い反発力が発生していた。そのため、複数の永久磁石片100aを組み合わせて、比較的大面積の単一な磁極面を持つ磁石を組み立てることは困難である。
また、本実施形態では、鈍角な所定角度θ4と鋭角な所定角度θ3との和が略180度である。しかも、図9Bに示すように、第2永久磁石片100a2のZ軸方向の厚みt2は、第2永久磁石片100a2のZ軸方向の厚みt1と略同一である。このような関係にある時に、第1永久磁石片100a1の第1機能面104a1と第2永久磁石片100a2の第2機能面104a2とを連続した平面とすることができる。なお、第2永久磁石片100a2のZ軸方向の厚みt2は、第1永久磁石片100a1のZ軸方向の厚みt1と異なっていても、第1永久磁石片100a1の第1設置面102a1と第2永久磁石片100a2の第2設置面102a2との間にZ軸方向の段差を形成することで、第1機能面104a1と第2機能面104a2とを連続した平面とすることができる。
本実施形態では、第1永久磁石片100a1の第1機能面104a1および第2永久磁石片100a2の第2機能面104a2が、必要とされる大面積の単一な磁極面となり、第1永久磁石片100a1の第1設置面102a1および第2永久磁石片100a2の第2設置面102a2は、図9Cに示すように、基材110への接着面となる。基材110は、磁性体で構成されることが好ましい。基材110を磁性体で構成することで、基材110がヨークとして作用し、磁石片100a1,100a2の磁極面から発せられる磁束密度を増大させる。
なお、図9Cに示す第2永久磁石片100a2の第2設置面102a2が基材110に対して接着してあれば、第1永久磁石片100a1は、必ずしも基材110に接着しなくても良い。第1傾斜面106a1と第2傾斜面106a2との間に吸着力が作用する場合、第1永久磁石片100a1は、第2永久磁石片100a2と連結され、第2傾斜面106a2が第1傾斜面106a1に係合する。そして、第1永久磁石片100a1は、第2永久磁石片100a2の第2傾斜面106a2と基材に挟まれる方向に力が働くので、基材110から離れる方向の抜け止めがなされる。
本実施形態では、図10に示すように、永久磁石片100a1,100a2の組み合わせをX軸方向および/またはY軸方向に2対以上で隣接して組み合わせることも可能である。このように構成された永久磁石組立体は、大型化が容易なので、低コストで簡便に、磁石の有する磁気特性を十分に発揮させつつ、設計の自由度を増大させることができる。さらに、組み合わされた磁石片間の接着強度が劣化しても、反発力が抑えられているので、継ぎ目部分が広がる恐れが低く、磁束量の低下が起こりにくい。また、短時間で容易に、しかも高精度な寸法の大型磁石を製作することでき、加えて磁石間の隙間を小さくできるので、その隙間により生じ得る磁界の不均一性を可及的に小さくできる。
本実施形態では、鋭角な所定角度θ3は、好ましくは60度以下、さらに好ましくは30~50度の範囲である。また、鈍角な所定角度θ4は、好ましくは、120度以上、さらに好ましくは130~150度の範囲である。このような範囲にある時に、隣接して組み合わせられる永久磁石片100a1および100a2相互の反発力が従来に比べ大きく減少する。その結果、経済性および生産性をさらに高めることが可能となる。
本実施形態では、第1磁石片100a1および第2磁石片100a2を組み合わせたときの全体形状は、特に限定されず、たとえば四角板形状であっても良く、図11Aに示すように、円板形状であっても良い。また、第1設置面102a1、第2設置面102a2、第1機能面104a21、および第2機能面104a2の少なくともいずれか1つが、円筒面などの曲面であってもよい。
図11Aの一例として、2つの永久磁石片100a1、100a2の材質が異方性希土類焼結磁石であって、永久磁石片100a1、100a2の組み立て後の直径が100mm、厚さT=20mmとなるように形成し、図示しない磁性体ヨークとして、永久磁石片100a1、100a2の直径に対し十分広い大きさと厚さを有している永久磁石組立体がある。この図11Aに示すような形状においても、隣接して組み合わせられる2つの永久磁石片同士の反発力が従来に比べ大きく減少し、図9Iにおけるδ1とδ2の曲線の範囲内に入る同様な結果が得られている。
さらに本実施形態では、図11Bに示すように、先端面である第1傾斜面106a1と第1設置面102a1とが交わる鋭角な角部105a1には、曲面加工または面取り加工が成されていてもよい。あるいは、先端面である第2傾斜面106a2と第2機能面107a2とが交わる鋭角な角部107a2にも、曲面加工または面取り加工が成されていてもよい。
図11Bの一例として、永久磁石片100の材質が異方性希土類焼結磁石であって、長さLを20mm、幅Wを20mm、厚さT=10mmで平行に形成し、さらに鋭角な角部105a1には、R1の曲面加工またはC1の面取り加工が成されており、磁性体ヨーク110として、永久磁石片100の長さ、幅に対し十分広い大きさと厚さを有した永久磁石組立体がある。この図11Bに示すような形状においても、隣接して組み合わせられる2つの永久磁石片同士の反発力が従来に比べ大きく減少し、図9Iにおけるδ1とδ2の曲線の範囲内に入る同様な結果が得られている。
さらに、曲面加工または面取り加工が成されていると、たとえば第1設置面102a1を、磁性体から成る基材110に接着剤を用いて固着する際、接着剤が、曲面加工または面取り加工が成された角部に盛り上がってはみ出ることで、永久磁石片100a1の角部方向への移動が規制され、位置ずれを抑制する作用がある。さらに、永久磁石片100a1,100a2の角部105a1,107a2が鋭角を成す場合、組立時に欠けるという不具合を防止することが可能となり、歩留まりを向上させることができるので、経済性および生産性を高めることが可能となる。
(第19実施形態)
本発明の第19実施形態は、第18実施形態の変形例であり、以下に示す以外は、第18実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第18実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。
図12Aに示すように、本実施形態に係る永久磁石組立体は、第1永久磁石片100b1と、第2永久磁石片100b2と、第3永久磁石片100b3と、第4永久磁石片100b4とを有する。第1永久磁石片100b1は、第1設置面102b1と、第1設置面102b1に平行に対向する第1機能面104b1と、を有する。第1永久磁石片100b1のX軸方向端部には、第1設置面102b1および第1機能面104b1を連結するように、第1機能面104b1に対して鈍角な所定角度θ4で交わる第1傾斜面106b1が形成してある。
第1永久磁石片100b1のY軸方向端部には、第1設置面102b1および第1機能面104b1を連結するように、第1機能面104b1に対して鋭角な所定角度θ3で交わる第2傾斜面106b2が形成してある。
第1永久磁石片100b1は、第1設置面102b1および第1機能面104b1に略垂直な磁化を持つように着磁してある。第1機能面104b1の磁極は、N極である。
第2永久磁石片100b2は、第2設置面102b2と、第2設置面102b2に平行に対向する第2機能面104b2と、を有する。第2永久磁石片100b2のX軸方向端部には、第2設置面102b2および第2機能面104b2を連結するように、第2機能面104b2に対して鋭角な所定角度θ3で交わる第2傾斜面106b2が形成してある。
第2永久磁石片100b2のY軸方向端部には、第2設置面102b2および第2機能面104b2を連結するように、第2機能面104b2に対して鋭角な所定角度θ3で交わる第2傾斜面106b2が形成してある。
第2永久磁石片100b2は、第2設置面102b2および第2機能面104b2に略垂直な磁束を持つように着磁してある。第2機能面104b2の磁極はN極である。
第3永久磁石片100b3は、第3設置面102b3と、第3設置面102b3に平行に対向する第3機能面104b2と、を有する。第3永久磁石片100b3のX軸方向端部には、第3設置面102b3および第3機能面104b3を連結するように、第3機能面104b3に対して鈍角な所定角度θ4で交わる第1傾斜面106b1が形成してある。
第3永久磁石片100b3のY軸方向端部には、第3設置面102b3および第3機能面104b3を連結するように、第3機能面104b3に対して鈍角な所定角度θ4で交わる第1傾斜面106b1が形成してある。
第3永久磁石片100b3は、第3設置面102b3および第3機能面104b3に略垂直な磁化を持つように着磁してある。第3機能面104b3の磁極はN極である。
第4永久磁石片100b4は、第4設置面(図示せず)と、第4設置面に平行に対向する第4機能面104b4と、を有する。第4永久磁石片100b4のX軸方向端部には、第4設置面および第4機能面104b4を連結するように、第4機能面104b4に対して鋭角な所定角度θ3で交わる第2傾斜面106b2が形成してある。
第4永久磁石片100b4のY軸方向端部には、第4設置面および第4機能面104b4を連結するように、第4機能面104b3に対して鈍角な所定角度θ4で交わる第1傾斜面106b1が形成してある。
第4永久磁石片100b4は、第4設置面および第4機能面104b4に略垂直な磁化を持つように着磁してある。第4機能面104b4の磁極はN極である。
本実施形態に係る永久磁石組立体では、X軸方向とY軸方向に、各永久磁石片100b1~100b4の相互間に、第1傾斜面106b1と第2傾斜面106b2との組み合わせが形成される。前述した実施形態と同様にして、第1傾斜面106b1と第2傾斜面106b2とは、吸引力が発生することから、本実施形態では、X軸方向およびY軸方向に比較的大面積の単一な磁極(本実施形態ではN極だがS極でも良い)面を形成することができる。
図12Aの一例として、永久磁石片100の材質が異方性希土類焼結磁石であって、各永久磁石片100b1~100b4の組み立て後の長さLを50mm、幅Wを50mm、厚さT=20mmで平行に形成し、図示しない磁性体ヨークとして、各永久磁石片100b1~100b4の組み立て後の長さ、幅に対し十分広い大きさと厚さを有した永久磁石組立体がある。この図12Aに示すような形状においても、隣接して組み合わせられる2つの永久磁石片同士の反発力が従来に比べ大きく減少し、図9Iにおけるδ1とδ2の曲線の範囲内に入る同様な結果が得られている。
なお、各永久磁石片100b1~100b4の機能面104b1~104b4の組合せで形成される磁極面の形状は、平面形状に限定されず、たとえば図12Bに示すように、機能面全体が円筒面の一部などの曲面形状であっても良い。さらに、各永久磁石片100b1~100b4の組合せで形成される永久磁石組立体の全体形状は、四角板形状に限定されず、たとえば図12Cに示すように、リング板形状などであっても良い。
図12Bの一例として、永久磁石片100の材質が異方性希土類焼結磁石であって、各永久磁石片100b1~100b4の組み立て後の長さLを50mm、幅Wを50mm、厚さTが最大20mmとなるような曲面に形成し、図示しない磁性体ヨークとして、各永久磁石片100b1~100b4の組み立て後の長さ、幅に対し十分広い大きさと厚さを有した永久磁石組立体がある。この図12Bに示すような形状においても、隣接して組み合わせられる2つの永久磁石片同士の反発力が従来に比べ大きく減少し、図9Iにおけるδ1とδ2の曲線の範囲内に入る同様な結果が得られている。
また、図12Cの一例として、永久磁石片100の材質が異方性希土類焼結磁石であって、各永久磁石片100b1~100b4の組み立て後の外径が100mm、内径が60mm、厚さT=20mmとなるようなリング板形状に形成し、図示しない磁性体ヨークとして、各永久磁石片100b1~100b4の組み立て後の外径に対し十分広い大きさと厚さを有した永久磁石組立体がある。この図12Cに示すような形状においても、隣接して組み合わせられる2つの永久磁石片同士の反発力が従来に比べ大きく減少し、図9Iにおけるδ1とδ2の曲線の範囲内に入る同様な結果が得られている。
(第20実施形態)
本発明の第20実施形態は、第19実施形態の変形例であり、以下に示す以外は、第19実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第19実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。
図13に示すように、本実施形態に係る永久磁石組立体120cは、同一構成の複数の永久磁石片100cがX軸およびY軸方向に配列された組合せからなる。永久磁石片100cは、設置面102cと、設置面102cに平行に対向する機能面104cと、を有する。永久磁石片100cのX軸方向の両端部には、それぞれ設置面102cおよび機能面104cを連結するように、機能面104cに対して鈍角な所定角度θ4で交わる第1傾斜面106c1と、機能面104cに対して鋭角な角度θ3で交わる第2傾斜面106c2が形成してある。
永久磁石片100cのY軸方向の両端部には、それぞれ設置面102cおよび機能面104cを連結するように、機能面104cに対して鈍角な所定角度θ4で交わる第1傾斜面106c1と、機能面104cに対して鋭角な所定角度θ3で交わる第2傾斜面106c2が形成してある。
永久磁石片100cは、設置面102cおよび機能面104cに略垂直な磁化を持つように着磁してある。機能面104cの磁極は、N極である。なお、設置面と機能面とは、相対的な概念であり、特に限定されないが、たとえば設置面が基材などに取り付けられる面であり、機能面が、磁極面となる。
本実施形態に係る永久磁石組立体120cでは、X軸方向とY軸方向に、各永久磁石片100cの相互間に、第1傾斜面106c1と第2傾斜面106c2との組み合わせが形成される。前述した実施形態と同様にして、第1傾斜面106c1と第2傾斜面106c2とは、吸引力が発生することから、本実施形態では、X軸方向およびY軸方向に比較的大面積の単一な磁極(本実施形態ではN極だがS極でも良い)面を形成することができる。
(第21実施形態)
本発明の第21実施形態は、図10に示す第18実施形態の変形例であり、以下に示す以外は、第18実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第18実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。
図14に示すように、本実施形態に係る永久磁石組立体は、少なくとも第1永久磁石片100d1と、そのX軸方向の両側に配置される第2永久磁石片100a2とを有する。第1永久磁石片100d1は、第1設置面102d1と、第1設置面102d1に平行に対向する第1機能面104d1と、を有する。第1永久磁石片100d1のX軸方向の両側には、第1設置面102d1および第1機能面104d1を連結するように、第1機能面104d1に対して鈍角な所定角度θ4で交わる第1傾斜面106d1がそれぞれ形成してある。
第1永久磁石片100d1は、第1設置面102d1および第1機能面104d1に略垂直な磁化を持つように着磁してある。また、第1傾斜面106d1における主要部分の磁極は、第1機能面104a1の磁極(N極)と同一である。
第1永久磁石片100a1のX軸方向の両側に配置される第2永久磁石片100a2は、図10に示す第2永久磁石片100a2と同じである。すなわち、第2永久磁石片100a2は、第2設置面102a2と、第2設置面102a2に平行に対向する第2機能面104a2と、第2設置面102a2および第2機能面104a2を連結するように形成され、第2機能面104a2に対して鋭角な所定角度θ3で交わる第2傾斜面106a2とを有する。
第2永久磁石片100a2は、第2設置面102a2および第2機能面104a2に略垂直な磁化を持つように着磁してある。また、第2傾斜面106a2における主要部分の磁極は、第2機能面104a2の磁極(N極)と逆である。第1永久磁石片100d1と一対の第2磁石片100a2との組合せは、Y軸方向に連続して配置することもできる。Y軸方向に配置される第1永久磁石片100d1の相互間には、隙間を形成しても良いが、図13に示す実施形態と同様にして、第1永久磁石片100d1のY軸方向の両端にも、第1傾斜面106d1または第2傾斜面を形成しても良い。
本実施形態に係る永久磁石組立体では、少なくともX軸方向に沿って第1永久磁石片100d1と第2永久磁石片100a2との間に、第1傾斜面106d1と第2傾斜面106a2との組み合わせが形成される。前述した実施形態と同様にして、第1傾斜面106d1と第2傾斜面106a2とは、吸引力が発生することから、本実施形態では、少なくともX軸方向に比較的大面積の単一な磁極(本実施形態ではN極だがS極でも良い)面を形成することができる。
(第22実施形態)
本発明の第22実施形態は、図13に示す第20実施形態の変形例であり、以下に示す以外は、第20実施形態と同様な構成を有すると共に、同様な作用効果を奏する。以下、第20実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分の説明は省略する。
図15に示すように、本実施形態に係る永久磁石組立体では、比較的大面積の永久磁石組立体120c1と永久磁石組立体120c2とを、X軸方向および/またはY軸方向に交互に所定隙間122で配置してある。永久磁石組立体120c1は、図13に示す永久磁石組立体120cと同じ構成であり、機能面104c1がN極である。これに対して永久磁石組立体120c2は、機能面104c2がS極である以外は、永久磁石組立体120c1と同じ構成を有している。
隙間122は、異なる磁極(S極とN極)に着磁された機能面104c1と機能面104c2をそれぞれ持つ第1永久磁石片(永久磁石組立体)100c1と第2永久磁石片(永久磁石組立体)100c2との間の隙間となる。このため、第1実施形態~第16実施形態で示したように、隙間122を介して向き合う傾斜面106c1と傾斜面106c2との間には、吸引力ではなく反発力が作用することになる。
たとえば大型で異極の磁石を交互に並べる場合、たとえばリニアモータの磁極を考えた場合、熱膨張を考慮して異極の磁石間に隙間を空けることが考えられる。この時、図15に示す構造を用いれば、異極吸着することなく容易に、それぞれ大面積の磁石群(永久磁石組立体120c1,120c2)に、隙間を空けて磁石群の組立が可能となる。
なお、図15に示す構造において、永久磁石組立体として、異なる磁極(S極とN極)に着磁された機能面104c1と機能面104c2が交互に固定され、従来例においては吸着力が作用する。また、隙間122を介して向き合う傾斜面106c1と傾斜面106c2との間には、吸引力ではなく反発力が作用することになる。その結果、実施形態17~21に記載の力の方向は反対となるが、その比率は、図9Iのδ1とδ2の曲線の範囲内において、同様な結果が得られることが確認された。
すなわち、第1永久磁石片100c1に作用する力の従来例に対する比率は、図9Iにおいて、δ1とδ2の曲線の範囲内にあることが確認された。このことから、永久磁石片の寸法や材質などを変化させても、2つの永久磁石片100を磁性体ヨーク110に接着した際、隣接して組み合わせられる2つの永久磁石片同士の吸着力が従来に比べ大きく減少し、その結果、経済性および生産性をさらに高めることが確認された。
また、第2永久磁石片(永久磁石組立体)100c2は、図15に示すように、2つの第1永久磁石片(永久磁石組立体)100c1に挟まれる配置となっていて、その反発力によって、自己整合的な位置決め効果が生じる。
(第23実施形態)
上述した実施形態に係る永久磁石片および永久磁石組立体は、たとえばMRI用磁界発生装置、プラズマ装置の磁界発生装置、回転機の磁気回路、リニアモータ、リニア交通システムなどの幅広い分野に適用することができる。
図16Aは、MRI用磁界発生装置200を示す。磁界発生装置200は、強磁性体材料で構成してあるケーシング202を有し、その内部に、大面積の磁極面を持つN極磁石204と、大面積の磁極面を持つS極磁石206とが、所定の空間で向き合って配置される。本実施形態では、N極磁石204と、S極磁石206とを、それぞれ上述した実施形態の永久磁石組立体で構成することができる。
図16Bは、プラズマ装置300の磁界発生装置302を示す。磁界発生装置302は、リング状の磁石304と、円板状の磁石306とを有する。本実施形態では、リング状の磁石304と、円板状の磁石306とを、それぞれ上述した実施形態の永久磁石組立体で構成することができる。
図16Cは、モータ回転子400を示す。モータ回転子400は、回転軸402を有する。回転軸402には、その軸方向に沿って積層電磁鋼板404が積層してあり、その外周に、複数の磁石406が装着される。本実施形態では、各磁石406自体、または磁石406の組み合わせを、上述した実施形態の永久磁石組立体で構成することができる。
図16Dは、リニアモータ500を示す。リニアモータ500は、固定子502と移動子504とを有する。固定子502の表面には、移動子504の移動方向に沿って電磁コイル506が配置してある。固定子502に対して、所定間隔で向き合う移動子504を、移動方向に沿って、N極に着磁された永久磁石506aと、S極に着磁された永久磁石507aとを、それぞれ上述した実施形態の永久磁石組立体で交互に固定して構成することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。たとえば本発明では、上述した実施形態を単独で用いることなく、上述した2以上の実施形態を組み合わせて用いても良い。また、上述した実施形態では、傾斜面および連結側面が、全て平面形状であったが、平面に限定されず、曲面であっても良い。